公選法改正で選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたことを受け、高校生の政治活動への対応について、文部科学省が学校現場向けの「Q&A集」を作成したことが29日、同省への取材で分かった。「政治活動を校内では禁止する」という校則を定めることは可能か、との問いに「不当ではないと考えられる」と答えている。 文科省は昨年10月、高校生が校外で行う政治活動などを容認する一方、校内では禁止する通知を都道府県教育委員会などに出していたが、現場から「内容が分かりにくい」などと質問が多く寄せられていた。文科省は29日の会合で、教委の担当者にQ&A集を提供。活用方法は各教委に委ねるとした。 質問は計20問。「生徒からデモ参加の打ち合わせで、休日に空き教室を使いたいと申し入れがあった場合、許可するのは適切か」との問いには「打ち合わせは通常は政治活動などに該当」し、使用の可否は「管理規則に沿って判断」とした。 休日や放課後に校外で行う政治活動や選挙運動は通知で容認されたが「届け出制とすることができるか」という質問も示された。回答は「必要かつ合理的な範囲内の制約となるよう適切に判断すること」とした上で「個人的な政治的信条の是非を問うようなものにならないようにすること」と留意点を挙げた。 「公選法に違反していると考えられる生徒を停学や退学などの懲戒処分の対象としてもいいか」という問いには、あらかじめ基準を生徒や保護者に周知することなどで「可能と考えられる」と回答している。 「投票日当日に学校行事がある場合、投票を理由に公欠を認められるか」については「期日前投票、不在者投票といった制度を活用して期間内に投票することが適切」とし、基本的に認められないとの考えを示した。このほか、インターネットによる選挙運動で、公選法違反になる事例なども説明している。 校内で政治活動を禁止する校則を定めたり、校外の政治活動を届け出制にしたりするのは、各学校の自主性があるので否定はできないが、政治教育を制限しているように受け止められるのではないか。政治教育に「中立公正」を求めすぎていることが、「Q&A集」の作成につながつている。子どもたちがどのように政治を学ぶのか、文科省が決めるのではなく、社会全体で考える必要がある。 ![]() |
京都市右京区京北で全4小中学校を統合して小中一貫校にする計画で、市教育委員会は28日夜、同区の京北第一小で住民説明会を開き、一貫校の教育構想案を初めて示した。 構想案は、新校舎で小中学生が一緒に学習▽「6・3制」から「4・3・2制」へ変更▽1年生からの英語、独自科目「京北ふるさと未来科」の導入−という内容。説明会は地域住民約70人が参加した。 質疑応答では住民から、統合について「子どもや地域の未来にいい理由を説明して」「移住者が来なくなる。市の活性化策と矛盾する」など疑問の声が出た。 ![]() |
美しい木目と柔らかい香りの木材をふんだんに使った校舎に、タブレット端末が配備された教室やLED照明のある体育館。京都市東山区の小中一貫校「東山泉小・中」は少子化に伴い、3小学校と1中学校を統合し、2014年春に開校した。鳥屋原学副校長は「設備が整った環境で学ぶ喜びを子どもに感じてもらえる」と胸を張る。 「教育環境日本一を目指す」とする市では、同校のような新しい学校が相次いで誕生している。一方、現場では老朽化した学校の整備や改修を求める声も漏れる。ある40代の中学校教諭は、5年前の勤務先のプールにヒビが入り水が漏れていた光景を思い出す。学校統合が進む現状にも「学校は地域コミュニティーの核で、町の人が作り支えた歴史がある。なぜ残して教育内容を充実しようとしないのか」と首をかしげる。 公教育のハード面の「格差」を指摘する意見は少なくない。さらに、教育の機会均等を求め、現状の改善や充実を訴える市民も出ている。市内の不登校の子どもは14年度、小学生168人(全体の0・27%)、中学生785人(同2・57%)に上った。中学生は前年度より10人減ったが小学生は3年連続で増えている。 市内の小学校でのいじめが原因で、市外のフリースクールに通う小6男児(12)の母親は、校区外の中学への進学を市教育委員会などに求めたところ、制度の原則を理由に認められなかったという。「不登校の子は同じ校区内の人間関係ではなく違う学校でやり直したいと思う。柔軟に考えてほしい」と切に願う。 不登校の子どもを支援するため、市教委は不登校経験者を対象にした洛風中(中京区)や洛友中(下京区)を整備したほか、市教育相談総合センター(中京区)では子どもや保護者の相談に対応している。 「他都市と比べて、先進的な部分はある」。上京区の「安養寺フリースクール」代表の福島美枝子さん(63)はこうした取り組みを一定評価する。市教委と連携し、不登校の子どもの保護者ら向けの勉強会を年20回も開く。ただ、「子どもがSOSのサインを出した時に教育だけでなく、福祉や医療の関係者が素早く集まり、一緒に考えたり、対応したりする体制づくりが必要と注文もつける。 国会ではフリースクールを義務教育の場と位置づける法案を提出しようとする動きもあり、市内でも関係者は「個人の問題でなく、社会全体の問題としてとらえられ始めた」とみる。 教育委員会制度を見直す法改正により、教育行政への首長の権限は強まった。まちの未来を担う児童や生徒を育てる公教育に対し、市長の姿勢が問われる中で、福島さんは強く願う。「日本一の教育環境を目指すなら、不登校の子どもや親が苦しまないよう全国のモデルになるような取り組みをしてほしい」 |
「ちょっと信じられない」。12社が教員ら5147人に教科書を見せていた事実を明らかにした文科省の望月禎教科書課長は、力なく口にした。 公表の禁止がルール化されたのは2002年。2年前の00年に「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史教科書の内容が合格前に表沙汰になり、国内だけでなく中国や韓国からも「歴史をゆがめている」と抗議があったためだ。 国会でも追及され、「圧力」は今も苦い記憶として残る。同省幹部は「当時は審査をする教科書調査官にまで抗議が来た。検定に集中できない」と説明。今後、ルール違反があれば検定手続きを中断するペナルティーも検討するという。 検定期間は1年に及ぶ。出版社は作成した教科書を春に提出し、調査官らの審議を経て翌年3月ごろ合否が決まる。公立小中学校の場合は、夏までに市町村教育委員会がどれを使うか採択する。 1990年代までは、都市部を中心に教員の投票で採択を決める教育委員会が少なくなかった。編集者が検定中の教科書を学校に持ち込み、教員にチェックしてもらうのも日常茶飯事だった。元編集者は「文科省から修正を求められそうな記述について事前に対策できる。間違いが見つかることもあった」と明かす。 現在の採択は教育委員が主導し、学校教員の意見は反映されにくくなっている。「以前の採択は多くの教員に支持される必要があり、中身で勝負できた」と元編集者。 11年、沖縄県石垣市や竹富町など3市町の採択協議会が育鵬社の歴史教科書を選んだ際、保守色の強さを懸念した竹富町は別の教科書を選んだ。協議会メンバーから教員出身者を外したことが一因で、元編集者は「教科書は先生が自ら選ぶものだったが、与えられるものに変わった」と嘆く。 12年に自民党が政権を取り戻してからは、検定基準の改正も進んだ。近現代史を扱う際に政府見解を尊重することを明文化。昨年4月に合格した中学教科書には、領土に関する記述が倍増し、「竹島は日本固有の領土」といった政府の立場を代弁する言葉が並ぶ。 社会科の編集者は「検定中の教科書を公表すれば、専門家が『その政府見解は誤っている』と指摘し、記述すべきか議論のきっかけになりうる」と訴える。 「教科書の著作を民間に委ねて創意工夫に期待し、検定で内容の適切性を確保する」。国は検定の理念をそう掲げている。だが、政府見解が重視される一方で、多様な意見を反映させる機会が減っている現状に、ある編集者は「政府は国定教科書を目指しているのだろうか」といぶかしんだ。 ![]() |
2014年度に入学した私立大学生が支払った授業料の平均額は86万4384円で、前年度から0・5%増えたことが19日までの文部科学省調査で分かった。授業料増は3年連続。 入学金は1・3%減の26万1089円、施設整備費は0・9%減の18万6171円で、実験実習料などを含めて入学初年度に支払う合計額は、前年度の143万4329円とほぼ変わらない143万4996円だった。 調査は全国の578校を対象に実施。授業料を学部別にみると、最も高かったのは歯学部の304万8247円で、医学部の254万7939円、薬学部の141万2252円と続いた。(共同通信) ![]() |
京都市教育委員会は14日、2018年度以降、教科として格上げされる道徳について、新年度から、すべての小中学校と特別支援学校で新指導要領に基づいた授業をすることに決めた。文部科学省は本年度から移行期間として先行実施を認めており、市教委独自の教材を「教科書」として使い、年間35時間の授業を行う。一部の学校では評価も試行する。 新指導要領に基づく授業の実施にあたり、市教委は授業の指針となる移行措置要領を定め、今月中に各校に配布する。小学1年で「国や郷土を愛する態度」が追加されるなど内容が増える。教科書は、市教委による現行の独自教材などで代用する。 評価は、研究指定校の約20校で試行し、児童や保護者に通知表などで結果を示す。評価法は国が本年度中に指針を示す予定で、市教委は「指針に基づき方法や内容を検討する」という。市教委は本年度、小中学校のそれぞれ1校を研究指定校とし、現行指導要領での評価を実施している。 14日開催された市教委定例会では、委員からは「評価は子どもや保護者に強い関心事。完全実施までに家庭サイドから検証してほしい」「現状ある通知表の所見欄とどう違いを出すのか」との意見や質問が出たが、委員全員が賛成した。 道徳の教科化は小学校が18年度、中学校が19年度に完全実施する。文科省は、本年度から新指導要領を先取りし、検定教科書を使わずに、授業することが可能としている。 ![]() |
「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)と呼ばれる人種差別的な街宣活動の抑止を目的に実施団体名を公表する大阪市の条例が15日夜、市議会本会議で、大阪維新の会や公明、共産両党などの賛成多数で可決、成立した。市によると、ヘイトスピーチ対策の条例制定は全国初。各地方議会が国に法規制などを求める中、在日コリアンが多い大阪市は独自制度を導入した。 ヘイトスピーチは、東京・新大久保や大阪・鶴橋で一部の団体が「殺せ」などと叫びながらデモを繰り返し社会問題化した。条例に市民団体などが求めた表現規制や罰則は盛り込まれず、抑止の実効性を疑問視する声もある。(共同通信) |
1年ごとの契約更新で33年も働いたのに有給休暇が増えなかったのは違法として、大分県中津市の元非常勤職員の男性が、足りない有休日数に当たる賃金など約427万円を市に求めた訴訟の判決で、大分地裁中津支部は12日、男性の請求を一部認め、約22万円の支払いを命じた。 労働基準法は、継続して勤務すれば年数に伴って有休を増やすと定めており、1年契約の男性が継続勤務に当たるかどうかなどが争われた。 大垣貴靖裁判長は判決理由で、1979年度から33年間同じ中学校で図書館司書として勤めた点を挙げ「勤務実態は同一で、任用形態は職員定数の制限を回避する便宜的措置」と指摘した。(共同通信) |
選挙権の年齢引き下げにより、2016年の参院選で投票権を持つ可能性がある滋賀県内の高校2年生約1万2千人に、県選挙管理委員会がアンケートした結果、18歳への引き下げが「よかった」は27%にとどまり、「よかったと思わない」が29%、「分からない」が41%を占めたことが明らかになった。 県選管は14年まで、高校3年生を対象に選挙に関するアンケートをしてきた。今回初めて2年生に実施し、15年7〜9月に県内の高校へ協力を依頼した。回答数は1万2218人分で、調査票の回収率は約90%だった。 選挙権年齢引き下げを「よかった」と答えた人の理由は、「若者の意見を政治に反映できる」が50%、「政治への関心を高められる」が34%だった。「よかったと思わない」の理由では「18歳では責任を持って投票できない」が43%で最も多く、次いで「若者は政治にあまり関心がない」が33%だった。 選挙権があれば投票に行くかについて、「必ず行く」は18%、「できれば行く」が43%。被選挙権年齢を引き下げるべきかに関しては、「今のままでよい」が52%を占めた。 県選管事務局は16年以降も毎年、高校2年生へのアンケートを続けて関心度の変化をみていく。模擬投票の体験を中心に、これまで小中学校で実施してきた出前授業の対象を高校生にも広げる。 |
ことし夏の参議院選挙で新たに選挙権を得ることになる10代の男女を対象としたNHKの世論調査で、今の日本の政治の在り方にどの程度満足しているか尋ねたところ、「満足している」と答えた人は24%、「満足していない」は74%でした。 ことし夏の参議院選挙で選挙権が得られる年齢が引き下げられ、「18歳以上」となるのに合わせて、NHKは、改正公職選挙法が施行されることし6月19日の時点で、18歳・19歳になっている男女3000人を対象に郵送で世論調査を行い、調査対象の60%から回答を得ました。 この中で、今の日本の政治のあり方にどの程度満足しているか尋ねたところ、「大いに満足している」が1%、「ある程度満足している」が23%で、合わせて24%でした。これに対し、「あまり満足していない」が56%、「まったく満足していない」が18%で、合わせて74%でした。 生活に、政治はどの程度関係があると思うか聞いたところ、「大いに関係がある」が33%、「ある程度関係がある」が46%、「あまり関係がない」が16%、「まったく関係がない」が4%でした。 今の政治が変わってほしいと思うかについては、「大きく変わってほしい」が27%、「ある程度変わってほしい」が61%、「あまり変わってほしくない」が10%、「まったく変わってほしくない」が1%でした。 政治に関するテーマのうち、今興味のあるものを複数回答で尋ねたところ、「雇用・労働環境」が53%でもっとも多く、「年金や医療などの社会保障政策」が49%、「景気対策」が48%などとなっています。 戦争を放棄し、戦力を持たないことを決めている憲法9条については、「改正する必要がある」が16%、「改正する必要はない」が57%、「どちらともいえない」が26%でした。 年金や介護などの社会保障と税負担については、「社会保障が充実するなら、税負担が増えてもよい」が63%、「社会保障が後退しても、税負担が少ないほうがよい」が33%でした。 ![]() |
NHKは、ことし夏の参議院選挙で選挙権が得られる年齢が引き下げられ「18歳以上」となるのに合わせて、新たに選挙権を得ることになる10代の男女を対象とした世論調査を初めて行いました。この中で、参議院選挙で投票に行くか尋ねたところ、「行く」と答えた人はおよそ60%で、専門家は、投票意欲をさらに高めるためには若者への働きかけが重要になると指摘しています。 ことし夏の参議院選挙は、公職選挙法の改正により、選挙権が得られる年齢が、現在の「20歳以上」から引き下げられ、「18歳以上」で実施されます。 これに合わせて、NHKは、去年11月から先月にかけて、若者の政治や社会への意識を探ろうと、選挙権年齢を引き下げる改正公職選挙法が施行されることし6月19日の時点で18歳・19歳になっている男女を対象とした世論調査を郵送で初めて行いました。 調査の対象となったのは無作為に抽出した3000人で、60%に当たる1813人から回答を得ました。 この中で、今の日本の政治にどの程度関心があるか尋ねたところ、「大いに関心がある」が11%、「ある程度関心がある」が42%、「あまり関心がない」が35%、「全く関心がない」が12%でした。 ことし夏の参議院選挙から、選挙権が得られる年齢が引き下げられ、18歳・19歳も投票できるようになることを知っていたか聞いたところ、「知っていた」が94%、「知らなかった」が6%でした。 そして、参議院選挙で投票に行くか尋ねたところ、「必ず行く」が22%、「行くつもりでいる」が38%で、合わせておよそ60%となりました。これに対し、「行くかどうかわからない」が30%、「行かない」が9%でした。 また、自分が選挙で投票することに戸惑いや不安があるかについては、「大いにある」が12%、「ある程度ある」が37%、「あまりない」が34%、「まったくない」が16%でした。 「戸惑いや不安がある」と答えた人に、その理由を聞いたところ、「政治についてよくわからないから」が36%、「どの政党や候補者に投票すべきかわからないから」が30%、「選挙の経験がないから」が22%、「選挙結果がどのような影響をもたらすのかわからないから」が7%でした。 日本の選挙の仕組みやルールを、どの程度理解していると思うかについては、「大いに理解している」が4%、「ある程度理解している」が39%、「あまり理解していない」が45%、「まったく理解していない」が11%でした。 ふだん、支持している政党があるか尋ねたところ、「ある」が12%、「ない」が86%でした。 今回の調査結果について、若者の政治意識に詳しい埼玉大学の松本正生教授は「投票意欲は必ずしも高いわけではないが、悲観するほど低くもない。自分たちが実際に選挙で投票するという実感を持てず、本当に投票してよいのかという戸惑いがあるのではないか」としています。そのうえで、松本教授は「今後は選挙の手続きをきちんと周知したうえで、政治と自分たちの関わりを認識してもらい、1票を投じるということが実際の結果にどう結びついていくのか認識してもらうことが大事になってくる」と述べ、投票意欲をさらに高めるためには若者への働きかけが重要になると指摘しています。 |