全国の国公私立の小中高、特別支援学校が2015年度に把握したいじめは22万4540件で、前年度から3万6468件増えて過去最多となったことが27日、文部科学省の問題行動調査で分かった。文科省は「件数増は、積極的な把握に努めた結果だと捉える方針が浸透したため」と分析している。年度間に30日以上欠席した不登校の小学生も1717人増の2万7581人と最多を更新。中学生は1395人増の9万8428人、高校生は3565人減の4万9591人だった。 いじめは、小学校が15万1190件(2万8456件増)で過去最多。中学校は5万9422件(6451件増)、高校は1万2654件(1250件増)だった。 内容は全体の63・5%を占めた「冷やかしや悪口」が最も多く、「パソコンや携帯電話でのひぼう・中傷など」は4・1%。現在の状況を見ると、88・6%でいじめは解消し、1・9%が解消に向けて取り組み中だった。 千人当たりのいじめ件数を都道府県別で見ると、最多が京都の90・6件、最少が佐賀の3・5件。前年度の30・5倍から縮小したが、依然26倍近い差があった。滋賀は15・7件だった。 児童生徒が心身に大きな被害を受けるなど、いじめ防止対策推進綾で規定されている「重大事態」は298校で313件(136件減)。自殺した児童生徒で、いじめがあったのは9人だった。 国のいじめ防止対策協議会は、学校によっていじめや重大事態の把握、いじめ解消の解釈に依然隔たりがあるとして、改善を求める 提言を24日に大筋でまとめている。 不登校の要因は家庭内の問題のほか、学校に関わるものでは友人関係、学業不振が多かった。不登校の日数別内訳も初めて調査項目に追加。小中学生の計12万6009人のうち、57・4%の7万2324人は欠席日数が90日以上、うち4402人は出席日数が0日だったことも判明した。長期の不登校が続く児童生徒への対応が改めて問われそうだ。 暴力行為は小学校で1・5倍に急増、1万7137件と過去最多を更新し、1、2年生の加害児童数が7割以上増えた。文科省は「いじめの件数増に伴うもので急激に学校が荒れたわけではない」とみている。一方、中学と高校の暴力行為件数は前年度を下回った。 いじめを広く捉えるよう国が学校に促した結果、2015年度のいじめの数は過去最多の22万件超に上った。「1件でも多く発見を」という姿勢が浸透しつつあるが、小さなトラブルにも相応の対応を求められ戸惑う教員も。膨大な数字は子どもたちのどんな実態を反映しているのか。現場では “件数至上主義”と一線を引き、「1件」に向き合う地道な取り組みが続く。 「『当事者が嫌な思いをしたらいじめ』という考え方が広がり、学校も保護者も敏感になっている」。九州地方の公立小教諭は、自身が対応した児童同士のトラブルを通して、社会の受け止め方の変化を実感した。 昨年、高学年の男児が「にらまれたり無視されたりした」と訴えた。だが、名指しされたクラスメートは「そんなことはしていない」と否定。いじめと認定できない中で、男児の親から「学校は隠蔽(いんべい)しているのではないか」と追及を受けた。 教諭は「悪口などは今までもたくさんあり、クラスの中で解決してきた。だが、社会がいじめにデリケートになり、教員も定義を広げるように考え方を変えなければならないのだろう」と戸惑い気味に話す。 埋もれていたいじめが深刻な事態に発展するのを避けるため、文部科学省は児童へのアンケートを効果的に活用して把握するよう働 き掛けている。15年度は全国で97・7%の学校が実施した。 鹿児島県教育委員会は、「仲間はずれ、集団による無視をされる」といったいじめの内容を九つ挙げ、子どもは「今も続いている」「あったが、今はない」「ない」のいずれかに必ず丸を付ける形式のアンケートを導入。全員に記入させることで、誰がいじめを申告したのか分からないように工夫している。 県教委によると、この様式に統一した12年度以降、認知件数が増加。15年度の千人当たり件数は30件を超え、全国平均を上回ってい る。他の自治体からも参考にさせてほしいと申し出があったといい、担当者は「1件でも多く発見し、解消していこうと呼び掛けている」としている。 同時に、件数を増やすこと自体を目的化させないように徹底。鹿児島市教委の山下敦宏青少年課長は「数字だけで安心せず、見えな いいじめが残っていないか気を付けるように指導している。教員が盛度を上げ、情報共有を密にすることが必要だ」と話す。 それでも事案を過小評価しようとする学校は後を絶たない。 静岡県の公立中3年の女子生徒は昨年、クラスで仲間はずれや執拗(しつよう)な陰口といったいじめに遭ったと訴え、学校に行けな い日が多くなった。修学旅行には参加したが、バスでいじめた側の生徒の隣に座ることになり、相談した教員には「席を決める日に休んだのが悪い」と言われたという。 母親は、いじめ防止対策推進法こ基づいた第三者の調査を求めたが、学校から「娘が悪い」と告げられ、取り合ってもらえない状態 が続く。 この母子をサポートする一般財団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」代表の井沢一明さん(58)は「大ごとになるのを嫌う学校は今でも多い」と指摘。「いじめ防止対策推進法を読んでいない教員も多く、学校で抱え込む体質が残っている」と述べ、意識の変革を迫った。 深刻文部科学省が27日に公表した2015年度問題行動調査で、京都府内の国公私立の小中高校が把握した暴力行為の発生件数は2 072件で、千人当たりは7・5件と、昨年の7・9件より改善したものの全国で4番目だった。いじめの認知件数は2万5279件で千人当たりは90・6件と全国1位。いずれも小学校低学年で増加しており、低年齢化が深刻になっている。 公立小の暴力行為の発生件数は641件と前年度より86件増えた。09年から増加を続け、1・8倍になった。さらに、小学校1、2年生で前年に比べ2倍近く増えた。公立中は200件減少し1147件。 いじめの認知件数は、公立小で前年より1376件増の2万1045件だった。うち小学1〜3年で計1270件増えた。スマホや携帯を使ったいじめは、公立小で515件(前年比137件増)、公立中で229件(13件減)だった。 府教育委員会は、13年度から全児童生徒にアンケートし「嫌な思いをした」といった軽微な事案も挙げているため、他の都道府県より突出して多い。 不登校の児童は47人増の542人、生徒は78人増の1848人。小6から中1で増加する割合が最も高く、2・94倍にのぼる。児童生徒とも指導の結果、約3割が再登校した。 学校教育課は「暴力行為といじめの低年齢化は、関連している可能性があり、原因を調査したい」としている。 文部科学省が27日に公表した2016年度の問題行動調査で、小学校での暴力行為が1万7137件となり、前年度の1万1472件から急増、現行方式の調査となった06年度の4・5倍に上った。文科省は「いじめの認知増と関連し、把握が進んだのではないか」としている。中学校と高校は前年度を下回った。 暴力行為は多くが学校内で発生。小学校での内訳は、子ども同士の暴力が1万1395件、器物損壊2475件、教員への暴力が2941件など。中学校では、子ども同士の暴力2万114件、器物損壊7416件、教員への暴力4787件などだった。 加害者数は、小学生1万5154人、中学生3万2760人でほとんどが男子。学年別では、中学2年の1万2153人が最多。小学校は1年が1098人 で、学年が上がることに増えた。 ![]() |
京都市立学校の教職員の給与負担が、2017年度に京都府から市に移譲されることに伴い、小中学校や総合支援学校で少人数教育を進めるための府独自の財源を巡り、府と市で、つばせり合いが起きている。府教育委員会は本年度まで、市にも加配教員の人件費約7億円を配分してきたが、「市への権限がなくなり、出す理由がない」として移譲財源に含めていないからだ。一方の市教委は「府の教育水準に差が出るのはおかしい」と譲らない。来春からの学級編成に影響を与えかねない問題だけに結論が注視される。 .「ターンライト」「ゴーバック」。南区の久世西小4年担任の中井良将教諭(39)は、英語活動のグループ学習で、一人一人の発音や理解度を確かめていた。28人が在籍し、集中力が続きにくい児童もいるが「目が届く人数だから、きめ細かい指導ができる」と話す。 ただ、これは府の少人数教育の予算を使って教員の加配を受けた特別な措置だ。文部科学省の基準では38人の学級が3クラスという計算になるが、4クラスに増やしている。府の予算がなくなると来年度から加配をもらえない恐れがあり、竹田佳弘校長は「児童のためにこの学級数を維持したいのだが…」と不安を隠さない。 府が小学3〜6年で30人程度の学級編成を可能にするため、国の基準を超える人数の教員を配置してきた独自予算が、来年度から京都市には配分されない可能性が浮上している。 これまで京都市など政令指定都市は、教職員の任命権や人事権は持つものの、給与は都道府県が負担してきた。しかし国の制度変更で、来年度からは政令市が給与負担し、財源も移譲される。府と市の教委によると市の教職員は約7千人で、14年度決算では給与費599億円。このうち国庫負担金を除く466億円を府が負担してきたが、今後は、市が地方交付税や府から移譲される新たな財源でまかなうことになる。 府は、市の教員定数に対して決定権を持っていたため、他の市町村と同様、加配分の人件費7億円を配分していた。だが府側は来年度からこの7億円を移譲しないと主張し、府教委は「何の権限もなくなる。本来自治体が負担すべき経費を他の自治体に負わせることはできないという地方財政法に抵触する」と理由を説明する。 一方、市教委はこの財源で本年度、小学校で39人、中学校で19人の教員を加配した。市教委は「本来の経費ではなく府の独自施策の範囲なので、財政負担については府市で協議できるはず。市民に不利益な影響が出ることは避けるべきだ」と主張する。 9月8日に開かれた府の山田啓二知事と京都市の門川大作市長の懇談会でも、少人数学級の財源移譲について議論されたが、結論は出なかった。今後も市は、府と調整を続けていくが、解決の見通しは不透明だ。(藤松奈美、山田修裕) ![]() |
都道府県の職員給与に関する2016年度の人事委員会勧告が25日、出そろった。共同通信の集計で、京都、滋賀など40都道府県が扶養手当の見直しを勧告し、配偶者を半減して子どもを手厚くする国の制度改定と足並みをそろえた。 扶養手当の見直しを勧告した自治体の多くは、「給与制度が国の制度に準じているため」と説明。18年度に月額で配偶者6500円(現行1万3千円)、子ども1万円(同6500円)とする国の水準が一つの目安となりそうだ。自治体の手当は、国と同じく年収130万円未満の配偶者を対象とするのが一般的とされ、女性の終業を抑制しているとの指摘がある。 月給は、京都、滋賀など41道府県が引き上げを勧告。16年度の減額は佐賀のみ。据え置きは東京、三重、高知、熊本だった。大阪は16年度を据え置き、17年度に0・28%引き下げる。月給の引き上げ率は鳥取の1・06%がトップ。静岡の0・88%が続いた。ボーナスは、熊本と鳥取を除く45都道府県がプラス。支給月数0・10力付き分引き上げ、4・30カ月の支給を求めた自治体が多かった。 熊本は、地震の影響で民間企業の給与実態調査を実できなかったため月給、ボーナスとも据え置きとした。鳥取は0・10力月分引き下げて4・00力月とした。 勧告通り実施されれば、行政職の平均年収の最高は東京の665万6千円(平均年齢40・9歳、最低は鳥取の550万8千円(同 43・3歳)となる。 都道府県の給与見直しは、人事委員会が知事と議会に勧告し、知事が給与条例改正案を提案。議会が決定すれば月給は4月にさかのぼって改定し、ボーナスの見直しは冬の支給額にまとめて反映させる。 ![]() |
国のいじめ防止対策協議会は24日、いじめ防止対策推進法で定義されているいじめや、子どもの心身に深刻な被害が出る「重大事態」について、具体例を示して解釈や範囲を明確化するよう文部科学省に求める提言案を議論した。同日中に取りまとめる予定。認識の違いを解消し、いじめ見逃しを防ぐのが狙い。重大事態を把握した際の調査や被害者側への説明の手続き指針作成も求める。 推進法は、いじめを「一定の関係にある子どもが行う「心理的または物理的な影響を与える行為で、当該の子どもが心身の苦痛を感じ ているもの」と定義。重大事態については、いじめで「心身や財産に深刻な被害が生じた疑いがある」状況などとしている。 協議会は定義の解釈が学校や教員で異なり、把握に差が出ていると指摘。いじめと扱われなかった事例や、重大事態かどうか判断 が分かれた事例を複数示すよう求めた。 重大事態を把握した場合、学校は事実関係を調査、被害者らに情報提供することになっているが、被害者側の意向が反映されないこ とがあるとして、調査方法や説明の手続きを定めた指針を作成すべきだとした。 また、謝罪だけでいじめが解消したとみなすケースがあるため、解消の定義を明確にし、支援を徹底するよう注文。推進法が義務付 けている、いじめの情報共有を怠ったなどとして、教員が地方公務員法に基づく懲戒処分を受けた事例があることを改めて周知することも挙げた。 ![]() |
厚生年金と健康保険の加入対象が10月から拡大される国の制度変更により、京都府内の小・中学校では一部の非常勤講師が、逆に対象から外れる可能性が高いことが21日までに分かった。対象者の週当たりの所定勤務時間が、常勤雇用者の「おおむね4分の3以上」から「4分の3以上」と厳密化されたことにより、約2時間不足してしまうためだ。400人以上が対象外になる恐れがあり「労働条件の低下は教育の質に跳ね返りかねない」とする京都教職員組合の要望も踏まえ、府教育委員会が改善策を探っている。 府教委と京都市教委では、小学1年生の指導補助や特別支援教育などで、週27時間勤務の非常勤講師を、近隣府県より多く雇用している。10月現在、府教委で205人、市教委で197人いる。 改正は短時間雇用者の待遇改善のために行われ、基準が常勤雇用者の「4分の3以上」と明確化された。4分の3以下でも、「年間通じて週20時間以上働いている人」が年金、保険の加入対象に加わった。 府教委によると、これまでの制度では、常勤雇用者である教諭の勤務時間が38時間45分のため、4分の3は約29時間で、27時間でも「おおむね」として対象にしていたが、「おおむね」が取れたため対象外となった。非常勤講師は学期ごとの採用で、夏休みなどは働いていないため加入拡大の対象にもならす、労働時間を延ばすと、長時間労働として総務省から指導されるという。 府教委が今年8月、京都南年金事務所に問い合わせたところ「例外は認められない」と回答があった。2学期末までは移行措置があるが、3学期から、非常勤講師は国民健康保険と国民年金に加入しなくてはならない。 京都教職員組合は「非常勤講師が対象外になるのは、短時間雇用者を守るという法律の趣旨から外れるためおかしい」と主張する。府教委は「対象外にしたくはないが、府だけでは判断できない」として、近く国に柔軟な運用を要望する。 ![]() |
京都府内の高校が、生徒の自学自習を支援する情報通信サービスを相次いで取り入れている。講義の勤画やテストなどの教材をインターネット経由で配信する仕組みで、パソコンやタフレット、スマートフォンがあれほ自宅でも利用できる。サービスを手がける事業著も多彩な機能を競い合っている。 京都橘高(京都市伏見区)は6月、べネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社「クラッシー」(東京都)が提供するサービスを導入した。教員作成のドリルや同社の用意した小テスト、大手出版社の問題集などを配信しており、生徒が学校内外で自習に活用している。教員が生徒を適切に指導できるよう、生徒の学習履歴や模試のデータを蓄積する機能も備える。 自宅でスマホを使って学習している2年石田真子さん(17)は「1日や1週間の学習履歴をグラフ化して振り返れるので、勉強時間が増えた」と手応えを語る。厚海賢三教諭は「予習の課題を配信するなど、さまざまな活用方法が考えられる」と利点をげる。 京都府教育委員会も本年度、府北部の府立高12校で進学希望の生徒向けにクラッシーのサービスを提供し始めた。高校教育課は「予備校や塾が少ない府北部の生徒の自学自習を支援するため」と狙いを説明する。京都市教委も市立高4校でクラッシーを導入。11月から順次、自宅で利用できるようにする。 リクルートホールディングスのグループ会社が手がける「スタディサプリ」を利用しているのは、福知山成美高(福知山市)。プロ講師による授業の動画や多彩なテストを配信するサービスで、同高は苦手分野の復習に主眼を置いている。 兒島裕之校長は「クラブ活動をしている生徒は、放課後の補習に参加する時間がないのが難点だった。スタディサプリを使えば、帰宅してからじっくり学習できる。今後は学校独自の課題も出していきたい」と話す。 スタディサプリはほかにも、京都聖母学院高(伏見区)や京都廣学館(京都府精華町)が導入している。今春には教員が各生徒のテスト結果や苦手分野を把握できるサービスが追加された。今後も成績の管理機能などを拡充していく予定だ。 京都両洋高(中京区)は、アニメーションによる解説や弱点診断などの機能を持つ「すらら」を利用している。藤井直樹教頭は「生徒の利用を定着させるには、教員による継続的な働きかけが必要だ」と活用のポイントを挙げている。(高野英明) ![]() |