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  • 5人に1人「精神不調」.22
  • 「ノート検定」効果.25
  • 残業申告「名ばかり」.26
  • 理数 小中で過去最高.30
  • 障害ある子にデジタル有効.30
  • 学費滞納の私立高生1%切る.30
  • 11月30日 私教連調査 学費滞納の私立高生1%切る

     4〜9月の半年間に、3カ月以上学費を滞納した私立高校生徒の割合は0・89%(前年度は1・09%)で、1998年度の調査開始以降、初めて1%を切り、過去最低になったことが29日、全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)の調査で分かった。これまでで最も低かったのは14年度の1・07%だった。

     経済的理由で中退した生徒の割合は0・01%と横ばいだが、中退者数で見ると過去最低の28人だった。

     全国私教連の担当者は「国の就学支援金制度や自治体の減免制度の拡充により、滞納や中退が減少したとみられる」と話している。


    民主党時代の忘れ形見?の高校無償化の影響がじわりと効果を発揮してきたというべきなのだろうか。


    11月30日 文科省有識者会議 障害ある子にデジタル有効

     タブレット端末などを使う「デジタル教科書」の導入を検討する文部科学省の有識者会議は30日、報告書の最終まとめ案を大筋で了承した。文字・図表の拡大や、音声での読み上げといったデジタル教科書ならではの機能は、障害のある子どもにとって効果的で、紙の教科書より使いやすい可能性があるとして、積極的に活用できる措置を講じるべきだと指摘した。

     有識者会議は6月の中間まとめで、次期学習指導要領が実施される2020年度から、紙の教科書と併用する形でデジタル教科書を導入する方針を既に承認している。



    11月30日 TIMSS 理数 小中で過去最高

     国際教育到達度評価学会(IEA、本部アムステルダム)は29日、2015年国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果を公表した。世界の小学4年と中学2年に当たる学年が対象で、日本は小、中とも全教科で平均得点が前回を上回り、過去最高となった。順位も前回に続き全て5位以内。学習意欲を尋ねた質問で「数学、理科は楽しい」「日常生活に役立つ」と答えた中学生が増え、国際平均との差が縮まるなど、理数離れが一定程度改善した。

     文部科学省は「授業時間や学ぶ知識量が増えた現行の学習指導要領の影響が大きい」と分析。「脱ゆとり教育」のほか、少人数学級の実践といった取り組みも功を奏したとみている。

     TIMSSは4年ごとに実施。経年比較がしやすいよう、1995年調査の国際平均を500点に設定、統計処理したデータを公表している。成績の国際比較で日本は、小4の算数が49の国・地域の中で5位(前回5位)、理科が47国・地域中3位(同4位)。中2は39国・地域の中で数学5位 (同5位)、理科2位(同4位)。成績上位のほとんどはアジア勢が占め、全てシンガポールがトップだった。

     日本の平均得点は、小4の算数が前回より8点増えて593点、理科は10点増の569点、中2は数学が16点増の586点、理科が13点増の571点で、全て前回から目に見える形で上がった。現行方式となった95年以降、中学の数学、理科の平均得点が統計上有意に上昇したのは初めて。

     得点層を分析したところ、前回と比べ、小4、中2ともに全教科で550点未満の児童生徒の割合が減り、550点以上の割合が増えた。一方で、他の上位国・地域と比べると、特に高い水準の625点以上の割合は低かった。

     質問調査で「勉強が楽しい」と思う児童生徒の割合は、小4の理科が前回と同じ90%で国際平均の87%を上回った。他は小4の算数が75%(前回73%)、中2の数学が52%(同48%)、理科が66%(同63%)でいずれも前回より上がったが、国際平均より低かった。

     中2で「勉強すると日常生活に役立つ」と答えたのは数学が74%、理数が62%で、いずれも前回より上昇したが、国際平均からは10ポイント以上下回った。「数学が得意」は35%から39%に増えたが、「理科が得意」は横ばいの45%だった。


    推論や説明に課題

     国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で一部が公表された問題からは、日本の子どもたちは推論や説明を書く問題に課題を抱えていることが浮き彫りになった。

     算数・数学では、基礎的な計算や図形に関する問題は国際平均を大きく上回るものの、自ら考えて推論する問題などを苦手としていた。

     小4は等差数列の次の数字を推測する問題で、正答率は79%。国際平均より10ポイント高いが、トップの国には10ポイント離された。中2は、5回ある試験のうち4回の結果をもとに、最後の1回で目標の平均点に達することの可否とその理由が問われた。平均の応用だが、正答率は45%にとどまり、文章で根拠を示す問題に課題を残した。

     理科は物理や化学、生物、地学の分野から幅広く出題され、図で示された現象の説明や選択式問題が多かった。いずれも国際比較では上位だが、説明を求められる問題は不得手としていた。

     木のスプーンや銀のチェーンなどが電気を通すかどうかの知識をみる小4の問題は、正答率78%で台湾と並んでトップ。一方で、異なる高さに置いた磁石にクリップがくっついている様子が図示され、より多くのクリップが付いている磁石が強力とする意見に対し、賛成か反対かを聞き、その理由を問う問題では正答率が50%にとどまった。


    シンガポールが首位独占

     2015年国際数学・理科教育動向調査で、調査対象の小学4年と中学2年に当たる学年ともに、全教科で平均得点が首位になったシンガポール。成績の分布を見ていくと、優秀者が占める割合が際だって高い状況が浮かぶ。特に高い水準を示す「625点以上」に達した割合は、小4算数で50%、中2数学54%、小4理科37%、中2理科42%にそれぞれ上った。

     一方、日本はシンガポールに続き平均得点が2位だった中2理科でこの割含が24%となり、3位の台湾(27%)を下回った。3位だった小4理科でも19%で、4位のロシア(20%)を下回った。

     「算数・数学の勉強的が楽しい」と思うシ,ンガポールの子どもたちの割合は、小4が85%(国際平均値85%)、中2が79%(同71%)。「理科の勉強が楽しい」は、小4が88%(同87%)、中2が86%(同81%)となった。シンガポールは1995年の初回調査以降、一貫して首位かそれに近い成績を維持している。文部科学省の担当者は「国家予算の約20%という多額の資金を教育に使い、能力に応じた指導を徹底していることなどが結果に反映している」と分析している。


    PISAも同様だけれども、成績順位の上下だけで日本の教育の現状を見ることは危うい。「学びとはなにか」という哲学的な視点がない実用主義的な発想では「較差」が拡大するだけ。改めて教育の再生産論を思い出さざるを得ない。


    11月26日 三菱電気労災認定事件 残業申告「名ばかり」

     三菱電機の研究所で新入社員時代に長時間労働を強いられ、労災認定を受けた元社員の男性(31)が「上司から勤務時間を短くつけ るよう指示された」と証言した。支援する嶋崎量弁護士は「名ばかりの自己申告制。勤務時間を正確に記録するよう法律で義務付けなければ、労働時間の上限規制を導入しても意味はない」と指摘する。

     男性によると、上司からは「残業時間は月40時間未満にするように。39時間ばかりだと怪しまれるので、数字をばらつかせるように」と指示されたという。

     入社後、仕事が徐々に増え、2014年1月の残業時間は100時間を超えたが「37時間台」と申告。2月には160時間を超えたが「59時間30分」としか申告しなかった。「先輩たちがごまかしに応じているのに、自分だけがきちんとつけるのは悪いという感覚があった」と振り返る。

     支援する労組によると、入退室の記録から15時間以上、研究室に居続けたにもかかわらず残業時間を2時間としていたケースもあっ た。その差を指摘すると、三菱電機側は「自己啓発時間だ」と主張したという。

     上司は「研究職は、ブラックとか言わずに死ぬ気でやれ」「おまえの研究者生命を終わらせるのは簡単だ」と言っていたといい、男性は「今となっては、長時間労働をさせるためにバワハラ発言を繰り返し、洗脳をしていたのかなと思う」と話していた。


    陸続として発覚する長時間労働。ほとんどが泣き寝入り状態の中、告発に踏み切ったこの研究者そして支援労組の努力には敬意を表したい。大手労働組合が本気でこの問題に取り組むのかどうか。これから問われるはず。その結果が組織率の拡大につながる。加えて状況は公務員も同じ、とりわけ教員は?


    11月25日 「ノート検定」効果

     京都市内の小中学校で、児童生徒のノートを教員が検定方式で評価する「ノート検定」が広がっている。授業で使う基本的な道具を通じ、学習の狙いやまとめを理解できているかなど定着度を測る試みだ。板書の丸写しに終わらず、自分なりに工夫してまとめる大切さを学ぶ効果を指摘する声もある。

     ノートやワークシートを手にした全校生徒が体育館に集まった。10月上旬、上京区の嘉楽中。生徒が指定されたページを開くと、教師が「学習の目当てを書けているか」「大切な内容は色を変えて強調しているか」などのチェック項目をもとに1〜5級の5段階で評価した。

     同中は本年度から「あしあと検定」と銘打ち、ノート検定を始めた。他県の事例を参考に考え出し、年5回行う。生徒は理科で学ぶ粒子の動きをサッカーに例えてイラスト入りでまとめたり、同級生の意見を書き込むなどして工夫を凝らす。1年の井上駿佑君(13)は「授業内容を覚えやすくなった」と語った。

     検定は小学校を中心に数年前から広がっている。10年前から活用している東山区の京都女子大付属小の長江柳子教頭(58)は「書くことは考えを深めること。授業で意見を発表できなくても、書いて残せる子どもはいる。教師にとって刺激になる」と強調する。発展的なノート作りを目指す学校もあり、南区の九条弘道小は本年度から「矢印や吹き出しを使い自分の意見を書き込んだ」などチェック項目を増やした。緩詰研二教頭(50)は「板書の丸写しでなく、重要部分をまとめられるようになった」と効果を語る。

     より効率的なノートづくりについて、東京大合格者のノートを分析した『東大合格生のノートほかならず美しい』の著者、大田あやさん(40)=東京都杉並区=は「『自分のため』ということが大事」と語る。

     太田さんが東大の学生に取材したところ「教科書や参考書に比べ、覚えやすいように編集できる」「アウトプットする力を養える」など丁寧にノートを取ることに自分なりの価値付けをする声が目立った。「形式や見た目の美しさなどを追い求めすぎて子ども子どもが『難しい』とか『書くことが嫌い』となってはいけない。教える側も、子どもが意味を感じられるようにしてほしい」と強調する。


    「ノートが美しい」ことは大切?勿論乱雑なノートやノートをとらない子どもの学びがどのようなものかは想像できる。ただ、ノートの後ろに隠れている学びをどうとらえるのかということが大切だと思う。検定という「技術」が先行するとするなら、更なる「労働過重」の状態が生まれるように思える。


    11月22日 能率協会調査 5人に1人「精神不調」

     日常的に残業している人の5人に1人が「精神面で不調を感じた」と訴えていることが21日、日本能率協会(東京)による「仕事と健康に関する意識調査」で分かった。

     担当者は「意欲の低下やすぐ落ち込んでしまう状態になると仕事の効率が落ち、長期化すればうつ病といった精神疾患になる恐れが ある」として、業務などを見直す必要があると指摘している。

     調査は7〜8月、正規、非正規で働く20〜69歳の男女にインターネットで実施、千人が回答。

     日常的に残業している人は514人。この人たちに残業の私生活への影響を複数回答で聞いたところ、「精神面で不調を感じた」が18・9%で5番目に多かった。そのほかは「趣味の時間が減った」(28・4%)が最多で、「睡眠不足になった」(25・1%)、「食生活が乱れた」(22・2%)、「身 体面で不調を感じた」(21・4%)が続いた。

     「精神面で不調」は、1日当たりの残業が2時間以上3時間未満の人では25・3%、3時間以上では25・0%で、「身体面で不調」をそれぞれ6・6ポイント、4・2ポント上回った。1日当たり8時間の残業は、月に20日間働くと60時間の残業となる。

     残業を減らすため職場に求めること(複数回答)は「必要ない業務をやめる」(29・8%)、「残業をしない職場の雰囲気づくり」(28・6%)、「特定の人に負荷がかからない仕事の割り振り」(24・9%)、「職場の人員を増やす」(24・1%)が上位だった。


    この調査で複数回答ではあるが、「特に影響がない」とした人が約35%あるようだ。おそらくこの35%の人たちの声が職場の主流になってしまっているケースが多いのではないだろうか。雇用者側に労働時間の管理をもとめることも必要だが、働く側が「自主的労働時間管理」を行うこともが必要だろう。教職員組合の「きょうと教組」は、スマホのアプリを作成してその動きを促進しようとしている。


    11月18日 愛知若手高校教師 無利子拡大など制度充実求める

     就職しても生活が厳しく、大学時代に借りた奨学金の返済に苦しむ人が増え、社会問題となっている。政府は、返す必要のない給付型奨学金の制度づくりを進めているが、財源や給付の条件は未確定だ。愛知県内では、返済に苦労する若手の高校教諭のグループが「教え子に同じ思いをさせたくない」と自らの体験を語り、奨学金制度の拡充を訴え始めている。

     「私の場合、返し終わるのは13年後。結婚や子育てができるのか正直、不安です」。学費や奨学金の問題を考える報告会に、高校生ら約600人が参加した名古屋市のホール。同市の私立高教諭、安藤端基さん(23)が奨学金を巡る体験や現在の悩みを率直に語ると、会場は静まり返った。

     安藤さんは大学時代、日本学生支援機構から計216万円を借り、月に約1万円を返済中だ。「幸い無利子の枠を利用できたが、当時は返すことがこれほど大変とは想像できなかつた」と言う。

     勤務先の教え子の多くが、当たり前のように機構の奨学金を申し込む姿を見て「心配だし、怖い気がする。でも進学して夢をかなえたいという生徒に『借りるな』とは言えない。ジレンマです」。

     同県美浜町の高校教諭、山田尚悟さん(28)も、教え子たちに体験を語り始めた一人。高校と大学時代に支援機構の有利子の奨学金計980万円を借りた。

     学業を続ければ、それだけ借入額も膨らむので、不安で大学中退を考えたこともあった。「教職の夢をかなえられたのも、諦めかけたのも奨学金のためでした」。月2万8千円の返済が、43歳まで続く見通しだ。

     山田さんは、生活に余裕がない家庭の生徒には切実な問題です。すぐに給付型の導入が難しくても、無利子の枠をさらに拡充するなど、制度の見直しを急いでほしい」と話す。

     支援機構の前身に当たる日本育英会の時代には、教職や研究職に就いて一定の条件を満たす人には、返還が免除される制度があったが、2003年度で廃止された。「そのこともあり、同じ教員でも世代間で問題意識に差がある」。若手の同僚らとこの問題に取り組む名古屋市の私立校教諭、佐藤元貴さん(28)はそう指摘する。「だからこそ当事者としての実感がある私たちが、これからも声を上げたい」

     佐藤さんらが愛知県内の私立高校の教員らに活動への協力を呼び掛けたところ、28校の約1100人が賛同したという。



    11月18日 震災避難士と生徒いじめ 危機管理のスイッチ入らず

     原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学生が同級生からいじめを受けていた問題で、学校や市教育委員会が深刻な被害を把握しながら「重大事態」と捉えていなかったことが判明した。いじめ防止対策推進法で設けられた危機管理の仕組みがあるにもかかわらず学校や教委によっていじめとの向き合い方に深刻な温度差があることが鮮明に。今も残る事なかれ主義、問題の過小評価が子どもの声をかき消している。

     「どこでも起こり得る事案だ。これを教訓に重大事態が発生したら、迅速、的確に対応してほしい」。17日、文部科学省内で開かれたいじめ防止の会議で、同省の担当者が呼び掛けた。

     会議は、国の基本方針の周知などを目的に定期的に非公開で開いており、この日は東日本を中心に学校関係者ら約200人が参加。同省によると冒頭、学校や横浜市教委の情報共有に不備があった可能性を指摘した。

     文科省は16日、横浜市教委に再発防止を指導。幹部は「いじめの情報があれば、重大事態かどうかに関係なく、早め早めに動くべきだ。一歩目の遅れが深刻な状況を招く」と批判した。

     いままでいろんなはなしをしてきたけどしんようしてくれなかった。だからがっこうはだいっきらい

     今回、被害に遭っていた中1の男子生徒は、自身に向き合おうとしない学校への不信感を手記につづっていた。

     大津市の中2いじめ自殺を機に2013年成立したいじめ防止対策推進法では、子どもの心身や財産に深刻な被害が生じた疑いがある場合などを「重大事態」と定義。学校や教委に事実関係の調査を義務付けている。

     今回、学校は生徒本人から中傷や身体的な暴力があったとの訴えを受けていただけでなく、神奈川県警を通じて金銭の授受があったことも把握していた。明らかな兆侯を再三突きつけられていたが、本格的対応のスイッチは入らなかった。

     文科省によると15年度に全国の小中高校などで把握された重大事態は318件。しかし、定義が曖昧なことや、問題を大きくしたくないという学校側の消極姿勢もあって、本来は重大事態と認定すべきいじめが漏れ、被害が見逃されている可能性が指摘されている。

     このため、国のいじめ防止対策協議会は今月初め、重大事態の具体例を示して解釈や範囲を明確化するよう文科省に提言。「いじめの情報共有は教職員の義務」と学校側の消極姿勢にくぎを刺し、注釈部分で、共有を怠り懲戒処分となった事例があると踏み込んだ。

     学校側がいじめを放置し、状況が深刻化するケースはなお存在する。尾木直樹法政大教授(臨床教育学)は「人事考課を気にして、いまだにいじめを少なく報告しようとする学校が多い。大津市の自殺以前と感覚が変わっていない」と指摘する。「対応を学校や教委だけに任せてはいけない。弁護士や警察OBなど外部の人材を活用して、学校の風通しを良くすることが必要だ」


    第三者委、教育放棄と批判

     東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市へ自主避難し、不登校となった中学1年の男子生徒(13)を巡っては、横浜市教育委員会の第三者委員会が11月、「いじめがあった」と認定し、市教委や学校の対応を「教育の放棄」などと批判する報告書をまとめていた。

     報告書によると、男子生徒は小学2年だった2011年8月、横浜市立小に転校。直後から名前に菌を付けて呼ばれるなどのいじめを受けていた。小5の時に同級生から「(原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、ゲームセンターでの遊興費などを負担していた。その後不登校が続いている。

     第三者委は、金銭トラブルそのものはいじめと認定していないが、いじめから逃れるためだったと推察できるとし、学校が事態を把握しながら指導しなかったことを「教育の放棄に等しい」と批判した。生徒側が昨年12月、調査を求める申し入れ書を市に提出。いじめ防止対策推進法に基づき、第三者委が調査していた。



    11月13日 過重労働改善 広がるか

     電通の新入社員の過労自殺が労働基準法違反事件に発展しつつあるのをきっかけに、企業に対し労働環境の改善を求める風圧が強まっている。背景には、電通問題を重大視し「働き方改革」への取り組みを強める安倍政権の方針がある。ただ取引先との関係や業界の商習慣など企業単位では限界がある面も多く、社会全体での取り組みに広がるかが鍵となる。

     「クライアントに『明日までに』と言われたら断れない」。電通と同じ広告代理店の関係者は過重労働が常態化している業界の実情を明かす。営業現場には、激しい競争で生き残るため顧客の無理な要求にも応えざるを得ないとの強迫観念が染みついているという。

     運送業界も同様だ。大手各社は内部通報制度など「労務問題を防ぎ手だてを取つている」(担当者)と強調するが、ある社の関東地方の物流拠点で責任者を務める40代の男性は「現場の実態はかけ離れている」と告白。労組の支援が受けられない中間管理職の勤務状況は特に過酷だと話す。

     政府の2016年版「過労死等防止対策白書」によると、過労死が危ぶまれる月80時間超の残業をした正社員がいる企業は約23%に上つた。業種別では情報通信や運輸などが目立つ。

     白書は背景として、業務量の多さや人手不足に加え「消費者からの不規則な要望」を挙げた。仕事などに強い不安や悩みを感じる労働者は50%を超え、過労死や過労自殺(未遂含む)と認定された事案が15年度189件あった。最近では、関西電力で原発の審査対応業務に従事していた課長職の40代男性が4月に自殺し、労災認定された。男性の残業は多い月で200 時間に達していた。

     一方、自主的に取り組みを始めた企業もある。ヤフーは全従業員を対象に週 3日制の導入を検討中。働 やすさを分かりやすい形で示し、優秀な人材確保につなげる狙いがある。ソフトウエア開発会社のサイボウズは勤務時間や場所を自由に選べる制度を導入し、離職率が 大幅に改善した。しかしこういった事例はごくわずかにとどまっているのが実情だ。

     「1億総活躍」を掲げる政府は9月、「働き方改革実現会議」を立ち上げ、長時間労働の解消や正社員と非正規の格差是正に向けた議論を姶めた。時代に合わなくなった日本流の働き方にメスを入れようとしている。

     日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは、少ない雇用で多くの仕事をこなすために「長時間労働が前提となってきた」と指摘。「業務を減らしたり、労働時間の上限規制を導入したりしないと過重労働は解消できない」と話している。


    長時間労働はなにも教員の世界だけではないことはこれまでも指摘してきた。この問題を解決するためには多角的な労働への研究が必要。企業の体質には勿論問題があるのだが、「労働者側」にも問題があると言える。一つは企業と一体となった労働組合の在りかた。もう一つは、労働者自身のライフスタイルに関する関心の低さである。こうした環境で育ってきた中間管理職が過重労働の現場意識を再生産しているという構造があるだろう。学校現場にしても、労働組合を敵視して育った管理職が労働条件を遵守する作風が身についていないのは当然。この春に国会で、勤務時間管理をほとんどの学校で行っていなかったということが問題になったが、まさにそうした問題を如実に示している例だろう。


    11月11日 京都市アンケート 勉強「遅れ」も割合高く

     貧困問題をテーマに、子育て世帯を対象に実施したアンケート結果を京都市がまとめた。ひとり親世帯や所得が低い世帯では、小学生や中高生がいる場合、学校の成績について、勉強の進度が「遅れている」と答えた割合が全体と比べて高く、携帯ゲームやスマートフォンの使用時間が長い傾向がみられた。

     無作為で選んだ市内の子育て世帯1万8千世帯の保護者宛てに8月、調査票を郵送し、8779件の回答があつた。100万円単位で聞いた手取り収入と家族の人数から、国の算出方法を参考に貧困にあたる基準を設けたところ、全体の13%が該当した。ひとり親世帯では49%を占めた。

     就労状況は、父親が「正社員・正規職員」なのは貧困世帯では48%で、回答者全体(79%)に比べて低かった。帰宅時間は、ひとり親世帯の母親の68%が午後6時以降で、全体(46%)より高かった。

     学校での成績を聞いたところ、ひとり親世帯と貧困世帯のいずれも、「遅れている」と答えた割合が20%前後あり、全体(10%)より、やや高かった。携帯ゲームやスマートフオンの利用時間では、「1日3時間以上」と答えた割合がひとり親世帯で21%、貧困世帯で16%となり、全体(10%)よりも長時間の傾向が出た。

     今回のアンケ,トでは、必要な支援策も聞いており、市は本年度末までに子どもの貧困に関する具体策を計画にまとめる。


    アメリカの貧困層で肥満が多いといわれているが、コカコーラなどのファーストフード企業が「健康」キャンペーンをしているという。「ポケモンGO」に費やす時間が多いのもおそらくそうした層だろう。京都市は「ポケモンGO」を慣行資源にしようとしているが、子どもの問題としてそれは正しいのか。また、アンケート実施以前から指摘されている問題をわざわざ再調査する必要があったのか。アンケート実施が単なるパフォーマンスでなければいいのだが。


    11月8日 文科省 給付型奨学金、高校推薦で

     返還不要の給付型奨学金の制度設計を議論している文部科学省の検討チームは7日の会合で、給付対象となる低所得世帯の大学進学予定者らの選定について、高校側の推薦を踏まえて決定する方式の導入を確認した。各校で推簾基準を設ける際に参照するガイドラインを文科省が今後策定する。

     会合では、国立大に通う自宅生に比べ、経済的な負担が大きい私立大生や下宿生など、所定の条件を満たす場合には、給付額を一定程度加算する方針も示された。具体的な額や、高校ごとの推薦枠などについてはさらに議論を進める。

     受給者の選定を巡り、文科省などはこれまで、低所得世帯などの進学予定者を対象に@5段階評定の平均4以上といった成績基準を設けるA成績基準を下回っても学校推薦で救済できる―の2段階の制度案をベースに検討。ただ、学校によって成績の付け方が異なるため、一律の基準とすることに公平性の観点から懸念も指摘されていた。

     このため検討チームは、選定を学校の推薦に委ねることとし、成績のほか、部活動や課外活動も加味して各校が総合的に判断する案で一致した。


    一歩前進かもしれないが、「成績基準を設ける」ことでは問題は解決できない。大学教育が大衆化しているなかで、好成績の学生は返済条件(就職など)を比較的容易に入手しやすい。しかし、そうでない学生は依然として借金を背負いながらの卒業とならざるを得ない。授業料の減額や給付枠の拡大、無利子貸与など総合的に議論する必要がある。


    11月5日 大学新テスト記述式 難度別2種類

     文部科学省は4日、2020年度に大学入試センター試験から替える予定の「大学入学希望者学力評価テスト」のうち、国語の記述式問題の実施方法案を公表した。解答文字数が80字より多く難易度の高い問題と、80字以下で難易度が下がる問題を、各1間程度盛り込む方針。受験生は志望大学の要件に従い、両方かいずれかを解答する。

     80字超の問題は大学入試センターが解答条件を満たしているか確認した上で各大学が採点し、80字以下の問題はセンター側が採点する。

     文科省が北海道小樽市で開かれた国立大学協会の総会後に示した。大学が採点しなくてよい問題を入れ、私立を含む多くの大学の利用を促す考え。文科省は制度設計を大学などと調整するが、採点の負担が課題。また、制度が複雑だと受験生が混乱する恐れもある。

     文科省によると新聞記事や統計資料などを読み、考えを書く問題を想定。マークシート式と記述式を一体化した形か、記述式だけで 出題し、試験時間は現行の80分より延長も視野に入れる。80字以下の問題は80字程度の2間に分ける案もある。

     1月実施だが、1月13日以降の最初の土日としている現行のセンター試験日程より前倒しし、大学への結果データ提供を現在より数日遅らせ、20日程度かかるセンター側の採点期間を確保する。

     80字超の問題はセンターが文字数や引用語句など解答条件を満たしているかを確認。画像データ化した答案や採点基準を大学に送 り、大学が教員や外部人材の手で採点する。受験生の力をより深く測れるが、大学の負担は大きい。

     80字以下の問題はセンターが委託した民間事業者が採点し、1点刻みではなく段階別に評価。大学に答案や採点基準を送り、大学の 教員が確認する。大学の負担が少なく利用しやすいが、測れる受験生の力は限られる。採点期間を考えると文字数は80字が限度という。各大学による採点では基準がばらつくとの懸念があるが、文科省は採点基準を示すことで公平性が担保できると主張した。

     数学の記述式問題については、数式など3問程度を出題し、センター側が採点する案を示した。


    大学入試改革が何をどうしたいのかは全く不明という感がますます増大する。中高一貫校での記述問題が、塾の受験対策対策として「目玉商品」になっていることを考えれば果たしてこの改革が大学生の質の向上につながるのかとい疑問が深まる。仮に、人材確保を大学側が厭わないのであれば自校で出題・採点の労をとるべきではないだろうか。受験生の負担というよりも。


    11月3日 東京高裁 再雇用後賃下げ「合理性」

     定年退職後に再雇用され、まったく同じ仕事を続けた場合に、定年前の賃金が維持されるべきかどうかが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は2日、「賃下げは社会的に容認され、合理性がある」との判断を示した。その上で、賃下げを違法とした一審東京地裁判決を取り消し、横浜市の運送会社に勤務する原告の運転手3人の逆転敗訴を言い渡した。3人は上告する方針。

     5月の一審判決ま「特段の事情がない限り、同じ仕事内容なのに賃金格差を設けるのは不合理だ」として引き上げを会社に命じた。

     しかし高裁の杉原則彦裁判長は「企業が再雇用で仕車内客を変えず、賃下げするのは公知の事実。企業には定年後の雇用確保措置が義務付けられた。人件費の無制限な増大を避け、若年層を含めた労働者全体の安定雇用を実現する必要性があることを考慮すると、減額には一定の合理性がある」と指摘した。

     さらに3人のケースを検討し「年収は定年前の約2割の減額で、同規模企業の引き下げ幅よりもかなり小さい。会社が本業の運輸業で赤字だと推認できる事情もあり、減額が不合理とはいえない」と判断。有期契約の労働者と正社員との間の不合理な格差を禁じた労働契約法20条に違反しないと結論付けた。

     判決によると、3人は横浜市の「長沢運輸」に正社員として勤務していた。2014年に定年退職した後、嘱託社員として再雇用され、定年前と同様に大型タンク車を運転している。


    南山大の緒方桂子教授(労働法)の話 理不尽くみ取らず

     

     同じ仕事をしながら賃金が異なるという、再雇用の嘱託社員が感じる理不尽さが全くくみ取られていない判決だ。労働契約法20条は、有期契約労働者の賃金水準が低い現状を克服することを目的とした規定だが、判決は「賃下げが社会的に容認されている」との現状を強調しており、非常に違和感がある。


    判決が現状を追認するだけのものになっているのは承服できない。「再雇用」はそもそも年金政策の破綻の縫方策であることを考えると尚更である。企業が社会的な責任を果たすならば、新たな「職」を作るなりして、労働者の心身の負担(理不尽さ)を少なくする務めがあるはず。


    11月2日 大学新テスト 家庭の経済力影響懸念も

     2020年度に現行の大学入試センター試験から替える「大学入学希望者学力評価テスト」のうち、国語や数学で導入予定の記述式問題の実施時期について尋ねた全国普通科高等学校長会のアンケートで、校長の67・5%が「マークシート式と同日」を希望していることが1日、分かった。また90%以上が、新テストへの移行で家庭の経済力が今まで以上に進学に影響するとみていた。

     記述式は採点に時間がかかるため、マーク式と分離して12月に前倒し実施する案もあったが、12月を含む3年生の2学期に実施した場合、授業や行事に何らかの影響があると答えたのは90・4%に上り、高校側の懸念が浮き彫りとなった。文部科学省は現在、1月実施を軸に検討している。

     アンケートは7月、都道府県ごとに、生徒の4分の3以上が大学に進学する4校と、それ以外の4校の計8校を任意で抽出し、計376校の校長が答えた。

     記述式問題の実施時期は「別の日でもやむを得ない」が12・9%、「どちらともいえない」が19・0%。新テストの教育効果を「期待できる」としたのは22・4%、「期待できない」は24・6%で、「どちらともいえない」は52・9%に上り、多くが今後の動きを注視する姿勢だった。

     文科省は英語に民間の検定試験を活用し、将来的には全面的に移行する方針だ。これについて「民間に頼るべきでない」は31・2%、「民間を活用しながら独自問題も作成」が56・0%。「全面的に民間を利用は12・9%で、文科省方針への賛同は広がっていない。

     英語の民間試験活用のほか、生徒の一層の塾・予備校利用も考えられると指摘した上で、家庭の経済力が今まで以上に進学結果に影響を及ぼすと思うか聞いたところ、「そう思う」「ある程度そう思う」が94・1%を占めた。「あまりそう思わない」は5・7%で、「そう思わない」との回答はなかった。

     調査をまとめたさいたま市立大宮北高の細田真由美校長は「家庭の事情で受験機会が失われることがないよう配慮が必要だ」と話した。

     校長会は2日に札幌市内で開かれる会議でアンケート内容を報告、文科省にも後日提供する。


    文科省のチグハグナ教育制度改革が浮き彫りになった形。競争よりも質を重視するという姿勢、学力テストによる競争主義とが混希している現状では、子どもも親も教員も手探りでしかない。