h2109
 
  • 収入半分以上減3割.26
  • 職員の暴力で骨折 隠蔽か.27
  • 通信制高校 抜本改革へ.29
  • 私大 定員割れ277校.29
  • 2年連続 ボーナス引き下げ.29
  • 9月29日 府人事委 2年連続 ボーナス引き下げ

     京都府人事委員会は28日、府職員のボーナスを0・15月分引き下げるよう、西脇隆俊知事と菅谷寛志府議会議長に勧告した。民間企業との給与水準の差を解消するためで、引き下げ勧告は2年連続となる。

     府人事委などが4〜6月、50人以上の規模の府内事業所約220ヵ所を調べたところ、ボーナスの平均は4・30月分だった。府職員は4・45月分と民間を上回っており、引き下げにより差をなくすよう求めた。

     一方、民間の平均給与月額は37万4708円で、府職員平均が上回った額は23円にとどまったことから、給与は2年連続で据え置きとした。

     勧告通りとなれば、府職員平均(行政職、平均年齢41・8歳)の給与額は年間で5万8千円減り、612万7千円となる。人件費約15億5千万円が削減される。

     また公務員の定年延長を見据え、給与が比較的高い50代後半の昇級を抑制する措置を、2023年4月までのできる限り早い時期に実施するよう勧告した。

     今回は初めて新型コロナウイルス対応について盛り込み、特定の部局や職員に過度な負担とならない人事管理を検討する必要性を指摘した。

     京都市上京区の府庁で田原博明委員長から勧告を受けた後、西脇知事は「コロナ禍における社会経済情勢に加え、府を取り巻く厳しい行財政環境を踏まえて適切に対処していきたい」とのコメントを発表した。


    労働基準法適用除外の代償措置として人事委員会がある。本来的には当局との直接交渉という形で賃金が決まるということを考えると「引き下げ」はありえない話だ。労使双方が原則を再確認することは必要。


    9月29日 私大 定員割れ277校

     今春入学者が定員割れした四年制の私立大は46・4%に当たる277校で、前年度より15・4ポイント(93校)増えたことが28日、日本私立学校振興・共済事業団の2021年度調査で分かった。前年度まで4年連続の減少だったが、大幅増に転じた。私立大の定員全体に占める入学者り割合を示す定員充足率は2・8ポイント減の99・8%で、1999年度の調査開始以来初めて100%を下回った。

     全体の定員が約4千人増えた一方、18歳人口が妁2万6千人減となり、総入学者数は約9600人減った。事業団は@18歳人口の減少幅が大きくなる節目の年だったA新型コロナウイルスの影響で留学生が減った―など複数の要因が重なって定員割れが相次いだとみている。

     今後も進む18歳人口の減少は私立大の経営を直撃するため、再編が加速する可能性がある。  募集停止中などを除く全国597校の5月1日時点のデータを集計。規模別の充足率は、定員3千人以上は99・9%で前年度とあまり変わらなかったが、300人以上400人未満で9・2ポイント減の95・2%となるなど、小規模校で大きく下落する傾向が出た。

     地域別では、東京や大阪とその周辺、愛知を合わせた三大都市圈の充足率は100・6%だった一方、その他の地域は6・2ポイント減の97・3%と大きく落ち込んだ。地方の少子化が進んでいることや、困窮世帯に対する文部科学省の修学支援制度が拡充されて都会で下宿生活をしやすくなったことなどが背景に考えられるという。京都の充足率は0・5ポイント増の99・3%だった。

     私立短大286校の集計では、定員割れは83・6%(9・7ポイント増)に上り、全体の充足率は82・6%だった。


    【インサイド】18歳人口減、大学再編・統合も

     少子化により大学の経営環境は厳しさを増している。18歳人口は急速に減少し、2040年に現在の8割程度となる約88万人になる見通しだ。文部科学省は私立大だけでなく、国公立大にも統合や再編を促しており、各他で動きが活発化している。

     文科省によると、18歳人口は1992年の約205万人をピークに減り、ここ10年ほどは120万人前後で推移。2021年からは再び減少期に入る。

     20年春の大学入学者の定員は約61万9千人で、浪人生を含む志願者は約66万5千人、入学者は約63万5千人だった。今後、高卒者の大学進学率が大 上昇しなければ、定員が志願者数を回る状況が現実味を帯びる。

     文科省はこうしたことを踏まえ、大学の再編・統合を促す制度改正を進めてきた。私立大はこれまでも再編が進んできたが、19年には私立大同士で学部譲渡ができるように。これを活用て神戸山手大の現代社会学部が関西際大に譲渡され、運営法人も合併した。

     国公立大も無縁ではない。国立大法人を統合して傘下に複数大学を収る「アンブレラ方式」が可能となり、20年に名古屋大と岐阜大が東海国立大学機構を設立した。



    9月29日 文科省 通信制高校 抜本改革へ

     文部科学省は、不登校経験者の生徒が増えるなど状況が変化している通信制高校の制度を抜本的に見直す方針を決めた。対面授業の義務付けを想定しており、28日に有識者会議の初会合を開いて議論を始めた。近年の不祥事続発を受け、国の監督強化も論点となる。学校教育法や省令を改正し、2023年の新制度移行を目指す。

     通信制に在籍する生徒は約22万人に上り、増加傾向にある。半数が小中学校で不登校だったとの調査結果があり、自宅学習へのサポートが必要だとの意見が浮上。働きながら遠隔で学ぶという現行制度の前提が変化しており、文科省は、一定時間は校舎で対面授業を受ける方向で検討する。

     また、2015年にウィッツ青山学園高(三重県伊賀市、廃校)で就学支援金の不正受給が発覚するなど通信制を巡る不祥事も相次いだ。文科省によると、教員免許のない人に授業をさせたり、アルバイトを特別活動とみなして単位認定したりする不適切な事例が複数の学校で判明した。

     背景には、3都道府県以上にまたがって生徒を受け入れる「広域通信制高校」で、設置認可した自治体の監視が不十分な現状がある。本校舎とは別に、直接指導が受けられるとPRする「サテライト施設」が全国に多数あるが、法令上の根拠があいまいで設備が不十分なケースもあり、有識者会議では実態把握や規制の在り方を話し合う。

     また、自治体ではなく、文科省が認可する制度への変更も視野に対策強化を議論する見通しで、第三者機関を新設して教育内容をチェックすることも検討する。

     28日の会合では、対面授業導入について「自習中心の教育についていけない生徒が増えている。教員が学習習慣を身に付けさせる必要がある」との意見が出た。


    「働きながら学ぶ」という定時制や通信制という制度が時代にそぐわなくなってきているという意見は以前からもあった。私学でも公教育の一環とする考え方は教育界では定着しているのだが、知事部局の守備範囲であることから十分な指導・助言ができていない。私学への過度な介入は避けなければならないが、教育への規制緩和を求めることで公的な役割を逸脱すること(営利目的)を助長することは許されない。


    9月27日 神奈川県立障害者施設 職員の暴力で骨折 隠蔽か

     一部の入所者をほぼ終日、施錠した個室に閉じ込めている実態が明らかになった神奈川県立の知的障害者施設「中井やまゆり園」(同県中井町)で、2年前に職員が入所者に暴力を振るって骨折させたのに、事故として隠蔽した疑いのあることが26日、複数の職員への取材で分かった。

     同園は「事実関係を確認したい」としている。  職員らによると、2019年7月、施設内の床に横になっていた20代の男性入所者に対し、男性職員が「邪魔だ、どけ」と言って、洗濯物などを運ぶカートを肩に強くぷつけた。入所者が後日、医療機関で診察を受けると、鎖骨が折れていた。

     カートをぶつける様子を目撃した職員もいたが、園は「寝転がっていた入所者を、他の入所者が踏んだことが原因と推測される」と、事故扱いにして処理したという。

     問題の職員は19年11月に別の入所者を踏みつけるなどの虐待をしたとして、今年1月に減給処分を受け、その後異動した。

     同園は19年11月の虐待を受け、20年6月に「虐待防止マニュアル」を策定。入所者がけがをしているのを見つけた場合は「確認・情報共有シート」に記入することになっている。だが、取材に応じた職員らによると「書類仕事が増えた」と不満が出ており、徹底されていないという。


    障害を持つ人たちに対する暴言や暴行事件の報道が続く。やまゆり園での大量殺人事件からの教訓が生かされていないという印象を受ける。パラリンピックでの「感動」が語られることが多いのだが、知的な所外を持つ人へのインクルーシヴ的な「合理的配慮」についての議論がもっと進むべきではないか。


    9月26日 NGOアンケート 収入半分以上減3割

     国際非政府組織(NGO)「セーブーザーチルドレンージャパン」はこのほど、経済的に困難な状況にある子育て家庭約3千世帯へのアンケートを実施し、新型コロナウイルス感染拡大の影響で約3割の世帯で収入が半分以上減少し、1割強では収入がゼロになったとの結果を発表した。

     アンケートは今夏、緊急子ども支援として行った食料品配布事業(夏休み子どもの食応援ボックス)に参加した子育て世帯に対し、6月下旬に実施。対象は緊急事態宣言などが出た京都を含む21都道府県で、回答者の9割以上がひとり親世帯だった。正社員と無職がそれぞれ1割強。契約・派遣、パートーアルバイトが計6割ほどに上った。

     収入減の割合は5割減7・4%、6割減2・6%、7割減2・3%、8割減2・5%、9割減1・8%。12・7%は収入がゼロになった。仕事への影響(複数回答)は「勤務時間や日数が減った」が41・8%、「休業になった」が16・9%、「失業した(解雇・雇い止め・倒産・廃業)」が15・7%だった。

     経済的理由で過去1年間に支払いが困難だった経験があったのは、食料品費76・5%、衛生用品費68・9%、衣料品費84・1%。応援ボックスを申し込んだ理由(複数回答)は「十分な量の食料を買うお金がない」「今後長期休暇に入り給食がなくなるため食費が心配」が多かった。

     子どもの生活・学習については「子どものストレスがたまっている」が64・0%で「学校を休みがちになった、不登校になった」が15・2%に上った。オンライン学習に関しても「機器がない」が16・0%、「自宅にインターネット環境がない」が11・3%と困難な状況が浮き彫りになった。


    セーフーザーチルドレンージャパン国内事業部の田代光恵さんの話負の影響長期化

     コロナ禍では、昨年の全国一斉休校時から、給食がなくなることが困窮世帯の子どもたちの発達に影響しないか懸念されていた。今回、夏休みの食の支援に合わせてアンケートをしたが、もともと厳しい状況にあった親たちが収入や雇用に負の影響を強く受け、しかも長期化し、子どもに困難が生じている現状が明らかになった。コロナ禍でも安心して健康的に過ごし、子どもの権利が保障されるための即時的・継続的支援が求められる。


    コロナ感染拡大の中で高級車の売れ行きが伸びているとか。ナオミ?・クライン『ショックドクトリン』で惨事便乗型資本主義という考え方を書いている。富裕層のお金の行き場がなく高級消費財に向いているというのは、ある種の惨事便乗型資本主義といえる。こうした歪みを是正することが国民国家(政府)の役割なのだが、誤った「一斉休校」以来子どもに向けての対策はない。


    9月25日 市保健師 残業年千時間超 複数退職

     京都市で保健師の退職が相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って昨年度に年間千時間を超える時間外勤務(残業)をした20〜40代の若手・中堅職員が複数自己都合退職していることが市への取材で分かった。  市によると、過去3年間に定年ではない理由で退職した保健師の数は2018年度5人、19年度14人、昨年度19人と増加している。こうした傾向について市人事部は「保健師資格は民間企業でも活躍できるため、人材が流動化しやすい」と説明する。  ただ昨年度、自己都合退職した保健師の年間残業時間は最大1642時間に上り、他に1千時間超が3人いた。いずれもコロナ対応に当たっていた。市が特例で残業の上限とする年間720時間を大幅に超える長時間労働をしていたことになる。同部は「把握している退職理由は長時間労働ではないが、その可能性もあるかもしれない」としている。  労働基準監督署の役割を持つ市人事委員会は今月、門川大作市長に対し「新型コロナ対応について長時間労働を是正すべき」などとする勧告を出した。「任命権者(門川市長)は、職員の心身をすり減らす危険な状況であるとの認識のもと、安全配慮義務が課せられていることを今一度認識すべき」と強い表現で指摘。職員の離職についても分析・研究して対策につなげるよう求めている。


    コロナ感染拡大の中エッセンシャルワーカーへの負担が大きいことは何度も指摘されている。しかし、任命権者の責務についてどれだけの報道が行われているのだろうか。また、そうしたことが問題なる場面は圧倒的に少ない。労働組合が当局との直接交渉をするか人事委員会が意見表明するかしかないが故に、社会的な問題となりにくい。受益者サービスを削ることは得策でないと首長選挙も近づくと考えるのだろか。保健師と同じく教職員もコロナ感染拡大の中で勤務条件は悪化している。非正規職員においても同様だといえる。


    9月22日 兵庫県教委 特別支援学級教諭を免職

     兵庫県教育委員会は21日、担任する特別支援学級の複数の児童に「生きる価値がない」などの暴言や暴行を30回以上繰り返したとして、同県姫路市立城陽小の藪田侑亮教諭(39)を懲戒免職処分とした。事案を把握しながら口頭注意で済ませた50代男性校長も減給10分の1(1ヵ月)の懲戒処分とした。

     県教委によると、藪田教諭は2018年〜今年6月、かばんをしまわないなどした4年生男児に「生きる価値なし。死ぬしかない。早く転校しろ」と発言。また給食の準備に手間取った1年生男児に「おまえは必要ない。人間、必要ないと言われたらおしまいやな」などと言った。

     この他、複数の児童を床に押し倒したり、プールの授業中に泣いている児童の頭を無理やり水に押しつけたりした。

     藪田教諭は「怒りに任せてやってしまった」と行為を認めている。けがをしたり、ショックで登校できなくなったりした児童はいないという。

     県教委の担当者は「特別な配慮が必要な児童の人権を著しく侵害する行為で、重い処分とした」としている。

     県教委はまた、女子生徒と性交やわいせつな行為をしたとして、県立高の30代の男性臨時講師も懲戒免職処分とした。


    懲戒免職処分とされた教諭は39歳。どういった経過で採用に至ったのかは不明だけれども、少なくとも10年以上の経験を持っていただろう。にもかかわらず、こうした言動はなぜ起きたのだろうか。詳細は明らかではないけれども、相模原事件の植松死刑囚と同じ発想を感じてしまう。「能力」の有無が未来への切符とされているような「メリットクラシー」の中での狭隘な価値観で教員も育てられていると考えるのは、一面的なのだろうか。


    9月22日 山口、高専生の母 いじめ自殺で 処分申し入れ

     山口県の大島商船高等専門学校で2016年に男子学生=当時(15)=が自殺したのは、クラスメートによるいじめが原因と再調査委員会が結論付けたことを受け、母親が21日、未然に防げなかった教職員、いじめに関係したと認定された学生らを処分するよう高専側に書面で申し入れたと明らかにした。19日付。

     再調査委の報告書は17日に公表され、高専側は記者会見で加害者の学生らは処分せず、今月卒業させると説明した。これに対し、書面でいじめの中心となった2人に退学、追随するなどした学生らに停学を求めた。加害者の謝罪が形式的であれば民事訴訟を起こし、訴訟で自殺をどう受け止めているか問いただすとしている。

     母親は取材に「一度も謝罪せず、このまま社会に出ていいはずがない。学校は学生らの行為に向き合わせるべきだ」と話した。高専の担当者は「対応は協議中」とした。


    いじめ問題で行政の不作為などが問題となって裁判で争うということはいわば「常道」ともなっているが、行政に対して「退学、停学」の処分を求めるというケースはまれなように思える。こうした「申し入れ」が今後一つの手段として認識されるとすると教育行政はこれまで以上の「苦悩」を背負い込まざるを得ない。


    9月22日 文科省 町田小6自殺受け「学校、対応徹底を」

     昨年11月、東京都町田市立小6年の女子児童=当時(12)=がいじめを訴える遺書を残して自殺した問題を受け、文部科学省は21日学校全体でいじめを積極的に認知し組織的に対応することを改めて徹底するよう求める通知を都道府県教育委員会などに出した。

     この学校は昨年9月のアンケートでいじめの兆候を把握したが当事者同士で解決したと判断して女児の両親に伝えておらず、町田市教育委員会は適切ではなかったと認めた。北海道旭川市で今年3月、中学2年の女子生徒=当時(14)=が死亡し、背景にいじめが疑われる問題でも、遺族が学校などの対応が不適切だと批判している。

     通知では、いじめの兆候を察知した際は複数の教員で対応しノ自殺などいじめ防止対策推進法の「重大事態」が疑われれば速やかに教委に報告するよう求めた。

     町田市教委は常設の「いじめ問題対策委員会」が調査に当たっているが、女児の両親は第三者組織を立ち上げて調査をやり直すよう求めている。通知は「公平性や中立性が確保された組織を構成することが重要だ」として、人選などについて被害者側の意向を踏まえるよう要請した。


    文科省の20年10月の発表では「2019年度のいじめの認知件数は61万2496件で、5年連続で過去最多を記録」したとある。「いじめ防止法」が成立した2013年以降も、減少傾向にはなく現在に至っている。教員が疲弊する中でこれ以上の対策を学校に求めることはできるのだろうか。「令和の日本型学校教育」を中教審は評価しているようだが、その「日本型学校教育」にこそ問題が潜んでいるのではないかと思える。


    9月21日 京都市 学童クラブ 最大2・6倍上げも

     京都市が学童クラブ事業の利用料変更案を示したことに対し、保護者から「利用できなくなる」と悲鳴が上がっている。年収約300万円の共働き世帯で最大2・6倍の値上げになるケースがあり、子を預かる児童館側からも「1人で留守番する子が多くなるのでは」との不安が漏れる。財政難に陥った市の子育て支援が揺らぐ。

     「子どもは学童クラブが大好きだけど、もう通わせてあげられない」。小学2年の息子を預ける右京区の30代女性は変更案を知り、真つ先にそう感じた。

     女性は夫と共働き。2人の年収は計約400万円で、苦しい家計から捻出してきた。勤務が不規則なため土曜日も預け。現在は月5600円を支払う。変更案を基に試算すると、月1万2千円に上がることが分かった。

     「発達に不安がある息子を1人で留守番させるのは怖い。でも仕事を早く切り上げると給料が減る」と語り自分たちのような世帯の負疸がなぜ大きくなるのか」と憤る。

     現在は所得に応じて料金は11階層に分けられ、月額は無料から1万1100円(―人利用)。変更案では原則利用時間に応じて支払う制度になり、生活保護受給世帯やひとり親家庭などの軽減対象を除けば月9千〜1万3千円(同)になる。

     新制度では、軽減対象から外れる所得層の負担が大きくなる。年収約300万円の共働き世帯で、土曜日も含めた午後6時まで利用した場合、月4600円から1万2千円と2・6倍に跳ね上がる。 一方、高所得世帯では値下げになる場合がある。最も値下げ幅が大きくなるのは、年収1千万円以上の共働き世帯で、平日午後5時まで利用すれば、月額1万300円から9千円に下がる。

     なぜ弱者に厳しく、高所得者に優しい案にしたのか。市育成推進課は「同じサービスを受けたら同じ料金を払う公平感を重視した。急激な値上げにはならない配慮はする」と説明した。新料金で2倍以上になる可能性がある児童は約900人おり、市は経過措置を設ける方針だ。ただ、数年後に負担が増えることに変わりはない。

        ◇

     「経過措置が終われば、利用を控えるようになる。子育て支援とは到底言えない」。ある児童館長は低所得世帯への影響を不安視する。

     別の児童館からは利用時間区分の変更を懸念する声も出る。現在は午後「6時まで」と「6時半まで」だが、変更後は「5時まで」と「6時半まで」になる予定。この館長は「市の説明では、80〜90%の子が5時で帰宅しているとの話だが、地域性や年齢による違いを考慮しているのか」と指摘する。

     平日の基本額は午後5時までと比べ、午後6時半までだと月額2千円高くなる。「節約のために利用を短くした結果、子どもが1人で留守番をしなくてはならないケースも出くる。何のための学童クラブなのか」

     市は運営者側に変更案を説明したがヽ保護者の多くが変更案を知らないことも問題視する。「保護者には知る権利がある。市は決定してから通知するのではなく、現状をありのままに知らせるべきだと思う」

     市は22日から始まる9月市会に関係条例の改正案を提案し、可決されれば来年4月から新料金が導入される。


    現場では全国一番や全国初が飛び交う京都市の教育環境だが、コロナ禍のなかで子どもの生活に何が必要なのかが痛いほど実感されたにもかかわらず、子育ての環境の中でも大きな要素である「学童クラブ」の利用料金値上げは理解できない。税収の多くをインバウンドに頼ってきたツケが回ってきたとの見方もある。小手先の利用料アップではなく税源確保の議論を深くすべきだ。加えて「同じサービスを受けたら同じ料金」との市側の説明に見えてくる市政運営方針は、少子高齢社会というこれからの課題にはそぐわないものに見える。


    9月19日 学校配布の端末 「いじめの温床に」

     昨年11月、東京都町田市立小6年の女児=当時(12)=が自殺した問題では、国の政策として学校が配ったタブレット端末で悪口が送信されるなどのいじめがあったことが判明している。遺族は「端末がいじめの温床になった」と主張。専門家もいじめ対策が置き去りだった疑いを指摘する。

     「きもい」「死んで」。今月13曰に記者会見した両親らによると、女児が端末のチヤツト機能に書き込まれた悪口を目にしていたと、友人らが証言した。女児に直接送られたこともあった。遺書に複数の同級生の名前を挙げ「おまえらのおもちやじやない」と苦しみが記されていた。  全員のパスワードが共通の「123456789」に設定されて成り済ましが容易だったとの証言もあるといい、父親(58)は「完全な無秩序。モラルの教育も家庭任せだった」と学校の管理態勢を批判する。

     文部科学省は小中学生に1人1台の端末を配る「GIGAスクール構想」を進め、今春にほぼ全ての地域で配備を終えた。教員と通信でき、書き込み内容を即座に黒板に表示するなど授業の幅が広がるとする。この学校は先進校として2年前から導入していた。

     いじめの発覚で看板政策が傷つくことを恐れた文科省は、記者会見翌日に町田市教育委員会の担当者を聴取。端末を使ったいじめがあったと報告を受けた。悪用を防ぐ手引を示していたとする省幹部は「この学校は基本的なルールに穴があった。構想の印象が悪化しかねない」と噴る。

     当初から、端束配布がいじめにつながるとの懸念は多かった。都内の公立小の男性校長は、児童がチャットに悪口を書くトラブルに直面したことがある。保護者の同意の上で、教員が操作履歴をチェックしていたため、早期の発見と指導につなかった。

     新型コロナウイルス感染拡大で、遠隔授業に備えて文科省は構想を前倒しした。男性校長は「児童が自由に使えるのでブラックボックスになる恐れがある。端末整備を急ぐあまり、いじめ対策がおろそかな学校が多いのではないか」と危ぶむ。

     ネット教育アナリストの尾花紀子さんは「学校は学習面での活用方法にばかり関心が向いていたのではないか。学校だけでトラブルを抱え込まず、子どものネット利用の実態に詳しい専門家らと情報共有する仕組みを構築すべきだ」と指摘した。


    端末の管理の仕方が杜撰だったとする論調が多い。しかし、「デジタル庁」の創設という政治的な目的が優先される中でのスクールGIGA構想だったことを論議する必要がある。学校自体が個人持ちの端末という使い方をあまり経験していない。かつてはコンピュータ室での操作がベーシックであったのだから。問題は、デジタルを利用した学習ではなく学習の必要に応じたデジタルの利用という考え方が熟成していないことだろう。


    9月15日 厚労省 コロナ全面休園126ヵ所

     新型コロナウイルスの感染者が出たために全面休園している認可保育所や認定こども園などが、少なくとも16都道府県の126ヵ所だったことが、厚生労働省のまとめで分かった。集計は9日時点。過去最多だった前週から59ヵ所減った。

     16都道府県は、北海道、青森、秋田、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、愛知、京都、大阪、和歌山、島根、広島、山口、宮崎。厚労省の担当者は「休園数は、全国の新規感染者数の減少との相関がみられる」とした上で「まだコロナが収束しておらず、油断はできないと強調する。

     9日までの累計で、利用乳幼児の感染は6751人。感染者が発生した保育所などは5627ヵ所、保育士ら職員の感染は5550人だった。

     一方、放課後児童クラブ(学童保育)は9日時点で、21都府県の48力所が全面休所。うち27力所が感染者が出たことが理由で、残り21力所は自治体からの要請を受け休所した。感染者が発生した学童保育は累計で968ヵ所となった。

     厚労省は市区町村から報告を受け、保育所などの感染状況を1〜2週間に1度公表している。

     新型コロナウイルス感染者が出て休園する保育所が相次いでいる。子どもを預けられなくなった親から「仕事は無理だ」と悲鳴が上がる。国は、こうした親の事情に配慮し、感染防止策の強化や休園せず子どもを預かり続けるための指針策定に乗り出した。ただ子どもの健康を心配する保育関係者からは「原則開所」の方針に疑問の声も出ている。

     「全て親が抱えないといけなくて、本当につらかった」。東京都内に住む自営業の40代女性は、長男(4)と長女(2)が通う保育所が7月下旬に臨時休園になった時のことを、こう振り返る。

     保育士や園児の感染が続々と判明し、保健所による濃厚接触者特定や消毒作業で休園は12日間に。長男も濃厚接触者となり自宅で世話をすることになった。子どもたちにテレビを見せ、自分は別の部屋でオンライン会議をこなしたが、「ママー」と騒がれ仕事は「全然乗り切れなかった」。

     感染力の強いデルタ株が広がり、保育現場でも影響は深刻だ。厚生労働省の集計で利用乳幼児の感染は9日時点で6千人を超えた。全面休園している認可保育所や認定こども園は、7月1日時点は16力所だったが、9月9日時点では16都道府県126ヵ所に上る。

     厚労省は「原則開所」との姿勢を貫く。一律に休園を要請すれば親が働けず、経済活動に響くとの考えからだ。感染者が出ても全面休園せずに保育を続けられるよう、感染症の専門家や自治体、保育事業者による検討を進め、指針や事業継続計画(BCP)のひな型を年末までに作成する。

     都内のある認可保育所は保育士や園児の感染が相次ぎ、昨年12月以降、2度全面休園した。園長は悩みながらも、できる限りの感染対策をしてきた。食事の楽しさを実感してもらうために全員でランチルームに集まっていたが、今はクラスごとに部屋を分け、机をパーティションで区切って食べている。朝夕と園児の昼寝中に、保育士がおもちゃや床など室内を消毒。それでもウイルスの猛威は防ぎ切れない。

     「保護者は不安でも預けざるを得ない」と園長。休業補償など親が休みやすいような方策を、国として検討する必要があると説く。「経済よりも命を守ることを大切にしてほしい」


    公務員には有給の介護休暇制度がある。それでもその休暇を取らない人が結構いる。働くことに一義的な意味を持たせるような意識が強い。「働き方改革」というならそうした制度の充実を政府が後押しする必要がある。決して「自助」の範囲ではないはず。同時に学校でもそうなのだが、クラスターが発生する前に「濃厚接触者」という考え方を改めて、関係者全員のPCR検査を実施すべきだ。もうすでの1年半に及ぶ議論に決着はついていない。


    9月15日 府内小中高いじめ1万368件

     京都府教育委員会は14日、京都市立を除く府内の小中高校、特別支援学校を対象に実施したいじめ調査の2021年度1学期分の結果を発表した。認知件数は1万368件で前年度同期より16・6%増えた。昨年は新型コロナウイルスの影響による一斉休校があったが、今年は通常に戻ったことが影響した。心身に重大な被害を受けた「重大事態」は1件だった。

     20年度は4、5月に一斉休校があり、授業期間も短かったため認知件数は8890件と少なかった。21年度は、一斉休校がなかった19年度同期(1万2690件)と比べると18・3%の減少で、府教委は「給食は黙って食べるなど、感染予防のため子ども同士で接触する機会が減っていることも背景にあるのでは」とみている。

     21年度の認知件数の内訳は、小学校が9108件、中学校は954件、高校が215件、特別支援学校が91件だった。いずれも20年度よりは多く、19年度よりは少なかった。いじめの内容は「冷やかしやからかい」が最も多かった。

     重大事態は、高校生がクラスで複数人から冷やかしやからかいを受け、嫌なことを言われたという。不登校にはなっていないが、生徒側からの申し立てを受けて重大事態とした。府教委は今後、第三者調査委員会を設けて詳しく調べる。

     いじめ調査は年2回行っており、「嫌な思いをした」なども幅広くいじめと捉えて集計している。府教委は「コロナが影響したいじめの実例は聞いていない。ただコロナのまん延が長期化し、子どものストレス要因となっていると考えられるため、調査で把握しきれていない現状もあるとの意識を持って対応したい」としている。



    9月14日 東京町田市 小6自殺 遺書でいじめ告白

     東京都町田市立小6年だった女児=当時(12)=が昨年11月に自殺し、「いじめを受けていた」「おまえらのおもちやじやない」などと書かれた遺書が見つかっていたことが13日、分かった。女児の両親が都内で記者会見し明らかにした。学校が児童に配ったタブレット端末のチャット機能で悪口を送信される被害などがあったとしている。

     両親や代理人弁護士によると、昨年9月、女児が学校のアンケートに友人関係に悩みがあると回答したことでいじめが発覚。女児は同11月30日に自室で亡くなった。両親は「いじめがあったことは自殺後に知った。学校から報告がなく、当事者同士の話し合いで解決したと説明があった」と話している。町田市教育委員会はいじめ防止対策推進法が定める「重大事態」に認定し、今年3月に常設のいじめ問題対策委員会が調査を始めた。

     女児は遺書で同級生2人の各別を挙げ、何度も「縁を切る」などと言われたことが苦痛だと説明し「おもちやじやない」と訴えていた。

     他のクラスメートからは、この2人を含む計4人が授業中にチャットで女児について「きもい」「死んで」と書き込み、本人にも送信していたとの証言があった。また、「(女児の)ころしかた」と題した絵が描いてあるノートが見つかり、学校が保管していた。いじめは4年生の頃に始まったとみられる。

     父親(58)は記者会見で「亡くなってからも学校や市教委から十分な説明がなく、不誠実だ」と指摘し、独立性の高い第三者委員会を設置して調査するよう要求。文部科学省にも指導などを求める要望書を提出した。

     市教委は「遺族の意向に沿って対応してきた。市の条例に従いい常設の対策委員会で調査している」と説明した。


    携帯電話の校内持ち込み禁止が一時話題になった。いじめを防止する観点からのことだった。このいじめ事件では、学校が配布した端末がいじめのツールとして利用された可能性があるとのこと。大人が想像する以上に、子どもはすべてのツールを自在に利用するということが分かる。いじめの解決と同時に、ICT機器をどう教育に利用するのかも問われている。


    9月14日 「安心して託せる仕組み 必要」

     京都市立総合支援学校高等部の生徒が昨年7月、母親に殺害されたとされる事件を受け、障害者と家族への支援を考えるシンポジウム「第2回 子どもと親のSOSをキャッチする仕組みを考える」が、オンラインで開かれた。当事者らが悩みがちな高等部卒業後の進路と暮らしについて、成人した障害者の親や専門家が語った。

     事件は、母親が子どもの介護に疲れ将来を悲観して無理心中を図ったとみられる。シンポは同様の事件を防ぐため社会でできることを考えようと、府内の障害者団体などでつくる「京都障害児者の生活と権利を守る連絡会」が開催。障害者育児の難しさをテーマにした3月開催の初回に続き、この日は進路の問題を取り上げた。

     20代の自閉症の息子と自宅で暮らす京都市山科区の板野美由紀さんは、地域で息子の理解者を増やした経験や、家事や留守番の体験を積み重ねて家で自分らしく過ごす方法を身に付けたエピソードを話し、「成人して1人で過ごす力を持っているのはすごく良かった」と振り返った。

     一方、中京区の沖田友子さんは、30代の息子が利用中のグループホームの現状を報告。人手不足で利用が制限され、家庭の事情で週末に帰宅できなくなった利用者は別の施設に入所するケースが相次いでいるという。「年を重ねる障害者をグループホームで支えきれるのか、という課題に直面している。家族も自分の人生を生きたいが、親の介護なしに成立しない生活で、介護者は病気になるなと言われているよう」と切実に訴えた。

     佛教大の田中智子教授(障害者福祉論)は「今の社会に安心して障害のある人を託せるか、ということを問いたい。望ましい支援の仕組みについて、当事者の声を届けていくことが重要だ」と締めくくった。約140人の参加者がビデオ会議システム「Zoom」で視聴した。



    9月10日 府・市教委省 子2学期開始後に学級閉鎖59校

     新型コロナウイルスの緊急事態宣言延長を受け、京都府と京都市の両教育委員会は9日、現在行っている教育活動や部活動の制限を継続する方針を明らかにした。また、府は学校や保育所で陽性者が出た場合の検査を迅速化する方針も示した。

     両教委とも現在、実験や合唱など感染リスクが高い教育活動や修学旅行は取りやめ、部活動も公式大会に参加する場合以外は原則中止している。これを宣言延長期間の30日まで続ける。

     現在、保健所がひっ迫する地域では保育所や学校で感染者が出た場合に濃厚接触者のPCR検査が遅れている。そこで府は唾液を採取してPCR検査ができるキットを学校や保育所に配布して、保健所を介さずに学校側で感染確認ができるようにする。

     また市教委は9日、市立学校・幼稚園で8月25日から2週間で計426人の陽性が判明し、59校91学級で学級閉鎖したことを明らかにした。夏休み(7月22日〜8月24日)中は計423人だった。2学期が始まり早いペースで子どもの感染が広がっているとして「基本的な感染防止対策を徹底する」としている。


    迅速な休校措置がとれていないのは、昨年の一斉休校のトラウマが文科省内にあるといわれている。子どもの感染拡大防止をどするかを現場の裁量だけに任すのは無責任だろう。少なくとも児童生徒のいる家庭に休校支援金などの給付を行いながら、感染拡大を防ぐ手立てを打つことはできるのではないかと思える。エビデンスが明らかでなく手探り状態の昨年初めでは有効な手立てを打てなかったとの弁解を受け入れるとしても、政治的な思惑だけのアベノマスクの無駄遣いが悔やまれる。


    9月9日 文科省 教科書5社、従軍慰安婦を慰安婦に

     文部科学省は8日、慰安婦問題や第2次大戦中の朝鮮半島からの徴用を巡る教科書の記述について、教科書会社5社から「従軍慰安婦」「強制連行」との記述の削除や変更の訂正申請があり、同日付で承認したと明らかにした。現在使用されている教科書の他、来春から使われるものもある。

     政府は4月、「従軍慰安婦」という表現は誤解を招く恐れがあるとして、単に「慰安婦」とするのが適切とする答弁書を閣議決定。朝鮮半島から日本本土への労働者の動員を「強制連行」とひとくくりにする表現も適切でないとした。

     5社は山川出版社、東京書籍、実教出版、清水書院、帝国書院。教科書は、中学社会1点と、高校の地理歴史26点、公民2点の計29点。

     「従軍慰安婦」では、多くが「慰安婦」に変更。山川出版社の「中学歴史日本と世界」は「いわゆる従軍慰安婦」の部分を削除した。清水書院は「いわゆる従軍慰安婦」との記述を維持した上で、注釈として「政府の談話などを含めてこのように表現されることも多かったが(略)現在、日本政府は『慰安婦』という語を用いることが適切であるとしている」を追加した。

     「強制連行」「強制的に連行」では、「強制的な動員」としたり、「徴用」としたりした。

     教科書検定基準は、閣議決定などで示された政府の統一的な見解に基づいた記述にすると規定している。


    戦争という状況の中で起こるさまざまな出来事は単純には定義できない。兵士として従軍した人によってもその戦争体験は様々である。それを一律に言語化してしてしまうことの怖さをこの問題にかかわって考える。すなわち、閣議決定で「従軍」や「強制」を削除することへの違和感である。もちろんその言葉を付けることで「民主的」だと考えることも同時に危うい。


    9月9日 京都府 「0円ソーラー」促進

     2050年度までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを掲げる京都府は、再生可能エネルギーの導入支援を強化する。住宅に太陽光発電パネルを設置する際に初期投資が不要となる「0円ソーラー」の利用を促す制度を新たに始めるほか、事業者向けの再エネ設置に対する補助を拡充する。いずれも15日から受け付けを開始する。

     0円ソーラーは「屋根貸し方式」とも言われる仕組みで、京都市と連携して取り組む。府などが指定した専門事業者が住宅に発電パネルを設置する方式で、住宅を所有する利用者は電気料金や設備のリース料金を事業者に支払うものの、初期投資とメンテナンスの費用が不要となる。

     府は導入を促進するため、契約1件当たり最大10万円の補助金を事業者に対して出す。事業者は利用者に対し現金交付するか、電気代やリース料金を安くすることで還元する。方法は設置事業者が示すプランによって異なる。

     事業者向けの再エネ補助金は、木質チップやペレットを燃料とする木質バイオマスボイラーを補助対象に加える。補助率は5分の1で、上限額は400万円。また従来から対象だった太陽熱を利用した設備について、補助率を5分の1から3分の1に、上限額を倍の400万円に引き上げる。

     府は「さまざまな種類の再エネに関心を持ってもらい、広げることで、温室効果ガスの減少につなけたい」(エネルギー政策課)としている。  0円ソーラーは専用のサイトで申し込む。再エネ補助金は府ホームページからダウンロードした串請書類を府へ提出する。


    2005カーボンゼロの政策を推進する一つの手段。「屋根貸し方式」は飯田市のおひさま進歩エネルギーが嚆矢だったのではないか、参考になる。


    9月8日 コロナ拡大 休校1割超

     新型コロナウイルスの急速な感染拡大を受け、公立学校を設置する自治体のうち、小中学校で夏休み延長や臨時休校を実施している教育委員会が10%を超えることが7日、文部科学省の調査で分かった。土日を含めない休校日数は小中いずれも最大12日で、平均は4・7日。分散登校や短縮授業は20%超だった。文科省は「学校の感染防止策を支援しつつ、今後の状況を注視したい」としている。

     公立の小中高校などを設置する都道府県・市区町村教委に8月以降の対応状況を尋ねた。夏休みの終了時期は自治体によって異なり、9月1日時点で調査した。全教委の約9割に当たる1757教委が回答。学校種別では小学校1684教委、中学校1676教委、高校146教委などとなっている。

     夏休み延長や臨時休校を実施しているか、予定しているとしたのは、小学校が209教委(12・4%)、中学校は215教委(12・8%)。分散登校・短縮授業は、小学校387教委(23・0%)、中学校384教委(22・9%)だった。

     一方、高校は休校が28教委(19・2%)、分散・短縮が50教委(34・2%)で、ともに小中よりも割合が高かった。  都道府県別に見ると、休校の割合が最も高いのは茨城県で小中とも90・7%。京都府は小学校0%、中学校8・3%。滋賀県は小学校15・8%、中学校16・7%。分散・短縮は小学校が神奈川県の78・1%、中学校が福岡県の75・0%だった。  臨時休校と分散・短縮の両方に回答した教委もあり、いずれかの対策を取る教委の実数は、小学校467教委(27・7%)、中学校462教委(27・6%)、高校69教委(47・3%)となる。

     休校や分散・短縮をしている期間中の家庭学習の内容を複数回答で尋ねたところ、「教科書や紙の教材を活用」は小中とも半数を超えた一方で、「同時双方型のオンライン指導」は小学校127教委(27・2%)、中学校141教委(30・5%)にとどまった。    


    日本大の末冨芳教授(教育行政学)の話感染状況見極め柔軟に判断

     文部科学省の調査結果では、休校や分散登校の判断が教育委員会によって異なり、各地域で新型コロナウイルスの感染状況を見極めて柔軟に判断したことが分かる。昨春の全国一斉休校で児童生徒の学びが止まり、大きなダメージを負ったことが教訓になったとみられる。学校現場では現在、休校時にオンラインの指導を行い、自宅にいるのが難しい場合には学校を開放するなど、学習を保障する工夫が重ねられている。文科省は学校の取り組みを後押ししようとルールの弾力化を進めているが、一部の学校では十分周知されていない。取り残される児童生徒が出ないよう注視すべきだ。


    「ハイブリッド」に活路

     新型コロナウイルス感染拡大が続く中、夏休み明けの各地の学校で臨時休校や分散登校などを余儀なくされている実態が文部科学省の調査で判明した。現場は学びを止めないためにオンラインの活用を模索し、対面と組み合わせた「ハイブリッド」型の授業をする学校も。校内感染による休校も懸念されるが、自治体や学校によって体制整備にばらつきが大きいのが現状だ。

     「オンライン組の皆さん、教科書の地図を見てください」。緊急事態宣言下で分散登校を実施する横浜市立鴨居中。3日の1年生の授業で、男性教諭がパソコンのカメラに向かって丁寧に指示した。

     1クラスを2グループに分け、1日おきに登校と在宅を入れ替えるため、教室にいるのは半数。在宅の生徒は、政府の『GIGAスクール構想』で1人1台配備されたパソコンを自宅に持ち帰り、ビデオ会議システムを使って授業に参加する。教室内での感染リスクを抑えつつ、一体的に授業に加わることで「対面並み」の学びを実現できるメリットがある。

     ただ、ある女子生徒は「画面越しでは質問しにくい」と指摘。教員からも「オンライン組の反応をうまく引き出せず、一方通行になってしまう」との課題が挙がる。  斎藤浩司校長は「ここで力を高めれば休校時にも対応できる。オンラインで不十分な部分は登校日の対面指導で補いたい」と語った。

     現在は通常通りの授業を実施している学校でも、感染への不安から自主的に休む児童生徒は少なくなく、感染者や濃厚接触者になれば登校できない。

     1日から始まった沖縄県沖縄市では、全小中学生計約1万5千人のうち約1300人が感染不安や感染疑いなどを理由に登校しなかった。ただ、教員の情報通信技術(ICT)活用研修をこの夏から本格化したばかりで、オンライン授業の準備が整った学校は限られている。

     東京都品川区立城南小は授業の様子をオンラインで生中継し、自宅でも学べるようにした。休み時間には教室からクラスメートが手を振って話し掛けるなど、児童同士のつながりの維持にも役立っている。

     しかし、低学年は自宅での学習に集中するのが難しく、大幅な導入には慎重だ。宮崎朋子校長は「学校は友人とび、関わり合う中で心を育む場所。なるべく学校を開きけたい」と話す。

     子どものワクチン接種が進まない中、感染力の強いデルタ株のまん延により校内でのクラスター(感染者集団)発生の懸念は根強い。地域一斉の休校には慎重な文科省だが、8月下旬に感染者が出た場合の休校判断のガイドラインを策定した。

     同一学級で複数の児童生徒の感染が判明すれば5〜7日程度、学級閉鎖するとの目安を示し、別の学級に広がれば学年閉鎖、複数学年に及んだ場合は休校を実施するとしている。

     文科省幹部は「教育委員会や学校にオンラインの積極的な活用を促し、昨春の一斉休校のような学習に支障がる事態を坊ぎたい」としている。


    各自治体の工夫が展開されているなかで「ハイブリット」方式の授業も少しづつ進み始めている。「学びを止めるな」というのがそれぞれの目標になっているのだが、肝心の「学び」とは何なのかが問われているようには思えない。授業の進度を順守することのためのオンライン授業なら果たして意味があるのだろうか。ICTを活用した教育が目指すべきものは旧来の「学び」を超えるツールとして端末を導入することだったはずでは。


    9月7日 稲田市教育長 子の居場所多様な家庭支援

     約9万5千人の児童生徒がいる京都市立学校、幼稚園では、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中でも、オンライン授業などを実施せず、全員が通常通り登校して対面授業を受ける方針をとっている。その判断について、稲田新五最育長に聞いた。(聞き手・大西幹子)

     ―分散登校やオンライン授業を望む声がある。

     感染防止と学びの保障の両立は大切だが、公立学校が持つセーフティーネットの機能も重視している。毎日登校させることで、子どもの居場所を確保する必要があると考えている。オンライン授業については家庭での対応力に差があり、長期にわたると教育格差につながる恐れがある。集団生活と対面授業で身に付ける協調性や社会性といった発達の保障も大事だ。

     ―学校のセーフティーネット機能とは。

     公立には共働き世帯のほか、養育力に課題のある家庭の子や家族の介護や世話を担うヤングケアラーなど、社会的に支援が必要な児童生徒が多く通っている。京都市は就学援助世帯が約2割と、政令市でもその割合が比較的多い。そういった子どもたちが安心して過ごせる場としての学校、という意味だ。昨年の一斉休校でさまざまな困りごとを家庭から聞き、その役割の大切さを切実に感じた。

     ―感染不安とはどう向き合うのか。

     登校をためらう気持ちは理解できるので、学校に相談してほしい。実際にオンライン授業で応じたケースもあり家庭や子どもの状況に沿った対応を考えたい。もちろん、教室内で感染が広がる傾向が全市的にあれば、分散登校や一斉のオンライン授業もためらわず検討する。ただ現時点では、そこまでの状況ではないと考える。対応が鈍いと言われるかもしれないが、多様な家庭の子どもが通うこと、集団でしか得られない学びがあることを踏まえた公教育の在り方を追求していきたい。


    学校が閉じることの問題は昨年の「一斉休校」で様々な問題が浮かび上がった。多くの書物が出版されそれについて論じられてはいるが、政府としての総括はいまだになされていない。自治体によっては「羹に懲りて膾を吹く」とい対応もみられる。市にもそうした傾向がみられないか。とにかく休校しないようにとのことから過剰な圧力が教職員にかかることがないようにしてほしい。また、教職員も自らが感染源になることを自覚する必要がある。市教委の公報に面白いものがあった。教員の感染対策の啓蒙ポスターである。どこまで周知されているかどうか。


    9月6日 市教委 大文字駅伝2年連続中止

     第36回京都市小学校「大文字駅伝」大会(京都市教育委員会など主催、京都新聞など共催)の実行委員会は3日、来年2月13日に予定していた大会について新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止すると発表した。中止は2年連続。実行委は、参加対象だった6年生が出場できる代替の取り組みを実施する方針。

     市内の小学校は緊急事態宣言下で部活動が原則中止になっているため児童の練習時間が確保できないうえ、開催した場合に参加児童やスタッフに十分な感染対策を行うのは困難と判断した。

     大文字駅伝は児童の体力を向上させ、協力し合う姿勢を育む狙いで毎年2月に実施。昨年2月の第34回大会は地区別16支部と国私立・民族学校枠の各予選を勝ち抜いた48チームが出場した。


    「大文字駅伝」について現場では批判的な声が大きい。その一つは、小学生の段階で「勝利至上主義」が年々広がってきていることだ。出場選手の選抜についても「児童の体力を向上させ、協力し合う姿勢を育む」ことは二の次とされている。強行された五輪・パラにおいても、とりわけパラにおいて個々の選手の活躍はそれなりに素晴らしいものがあるが、それを国別のメダルの数に換算するという姿勢は、障害を持つ人の能力を確認することよりも逆に「できる障害者」と「できない障害者」の線引きを強化するすることになる。社会スポーツの在り方を検討するる時期でもあると思えることから、「大文字駅伝」も改革の時期にある。


    9月4日 文科省 教員研修履歴を一元管理

     文部科学省が教員免許更新制廃止後に導入を目指す新たな教員研修制度で、教員個別の研修受講履歴を管理するデータベースを都道府県の教育委員会ごとに整備する方向で検討していることが4日、関係者への取材で分かった。個々の受講実態を把握することで、効果的な教員育成を目指す。令和5年以降の新制度開始後にデータベースの共有を全国的に進め、研修の更なる充実を図る。

     教員の資質向上を目指して現在運用されている更新制では、各教員の更新講習の受講履歴を管理するシステムが未整備。7割以上の都道府県教委は教員のさまざまな研修履歴を個別に管理しているものの、更新講習についてはほとんど網羅されていなかった。このため、教員それぞれの課題に即した更新講習を実際に受講できているのか、実態を把握することが難しい状況にある。

     同省では現在、更新制廃止後の新たな教員研修制度を検討。新制度下では、研修履歴を教員個別で管理するデータベースの構築を目指している。

     新たなデータベースはまず、新制度開始にあわせて都道府県教委ごとに整備する。市区町村教委に加え、校長や教頭といった各学校の管理職もアクセス可能にする方向で調整していく。特に校長らが個別の受講状況を把握することで、各教員の長所を伸ばし弱点を補強するオーダーメード≠ネ育成を進めることを視野に入れている。

     データベースには新制度下の研修のほかにも、更新講習を含む制度開始前の各種研修の受講履歴を蓄積する。制度開始後、環境が整い次第、データベースを全国的に共有できるようにする。

     同省では今後、データベースで管理する情報の範囲などを検討。新制度に必要な法整備を行いつつ、都道府県教委に対しデータベース構築に向けたガイドラインなどを提示するとみられる。同省では更新制廃止に必要な法改正を来年の通常国会で行い、早ければ5年に新制度を始めたい考えだ。同省幹部は「各教員にとって本当に必要な研修を受けられる制度を目指したい」としている。

     「必要な研修」校長命令で

     文部科学省が教員免許更新制の廃止を決断した背景には、更新講習の効果的な運用に失敗したことへの反省がある。新たな研修制度下では校長の職務命令で、実力の備わっていない教員に必要な研修を受けさせることを想定。各教員の資質向上に必要な学びの機会を積極的に設ける考えだ。

     更新制は教員免許に10年間の有効期間を設ける制度で、期限前の2年間のうちに30時間以上の講習を受けて修了する必要がある。しかし、同省幹部が「体育の先生が国語の講習を受けても更新可能」と指摘するように、「30時間」の実績さえ積み上げさえすれば、各教員にとって効果的な講習を必ずしも履修する必要はなかった。

     同省が今年4、5月、現役教員約2000人に行ったアンケートでも制度のずさんな実態が明らかになっている。講習を選ぶ際に重視する点を聞いたところ、「とても重視する」の割合が最も高かったのは「受講会場」(61・3%)。「受講時期」(57・4%)、「講義内容」(40・7%)と続いた。

     アンケート結果からは、資質向上に必要な講習ではなく、場所と時間を考慮して受けやすい講習を選ぶ傾向がみてとれる。「自分にとって本当に必要な講習を受けていない教員が多く、更新制が正しく機能していなかった」(更新講習を行う大学関係者)との指摘は根強い。ただ、更新講習の内容自体には教育現場からも省内からも高く評価する声が多く、長年、更新講習を無駄遣いしてきた側面がある。

     同省が令和5年以降の導入を目指す新たな研修制度下では、各教員の研修履歴をデータベース化することが主眼の一つになっている。これが実現できれば、教員ごとに資質を伸ばしたり、弱点を補強したりするための研修受講を促すことができるオーダーメード≠フ制度として機能するからだ。

     同省は新制度で、各教育委員会に加えて校長や教頭といった各学校の管理職が、期待する水準の研修を受けていない教員に職務命令で研修を受けさせることも想定している。こうした職務命令に背けば、地方公務員法が定める懲戒処分の対象になり、最悪の場合には、懲戒免職で教育現場を追われる可能性も出てくる。

     職務命令による研修受講が運用されることになれば、30時間の受講実績さえあれば免許更新ができる現行制度よりも厳しくなるとの見方もできる。

     同省幹部は「何もしない教員にとってはよりシビアな制度になるかもしれない」としている。(産経新聞)


    なんのための免許更新制廃止なのかわからない。現場に対する不信感が根底にあるといってもいいかもしれない。これではブラック化がますます進み、人材確保も一層難しくなるという負のスパイラルに入ることは火を見るよりも明らか。


    9月3日 府教委 公立高 存在意義は―1年生アンケート

     公立高校の存在意義は何かを在校生たちの意見から考えようと、京都府教育委員会が府立高の1年生にアンケートを行った。入学先を選んだ理由で、最も多かったのは「自宅から近い、通いやすい」だった。府教委は現在、府立高の在り方を検討する会議を設けており、委員からは「公立高は通える範囲にあることが重要で、通えないエリアをつくってはいけない」などの意見が出された。

     在籍する府立高を選択した理由で最多は「自宅から近い、通いやすい」で21・0%だった。次いで「学校の雰囲気が良い」が11・9%、「合格できそう」が11・3%と続いた。府立高は通学圏を設けており、通学のしやすさが学校選びのポイントになっていた。

     ただ学科ごとに分けると、全日制普通科は3位に「入部したい部活動がある」が入った。その他の専門学科では1位が「特色ある取り組みを行っている」、職業学科・総合学科は1位が「将来就きたい仕事と関連している」で、中学時代から明確な目標や目的を持つ生徒はそれに合った学校を選ぶ傾向がうかがえた。

     在籍する府立高に満足しているかでは、「どちらかといえば」も含めて86・1%が「満足」と答えた。理由の上位三つは「友人との関係」「授業」「部活動」だった。逆に不満足の理由は「授業」「校風や教育方針」「学校の施設・設備」だった。在籍する府立高に改善してほしいことは、「教室・トイレ等の施設・設備」「スマホ等の利用」「校則」などが挙げられた。

     府立高にいま期待していることは、「基礎的・基本的な学力を身につける」と「大学等進学のための学力を身につける」で合わせて約4割に上り、入学後は学力向上のサポートを求めていることが分かった。

     アンケートは7月に行った。全日制、定時制の府立高1年生を対象とし、全体の55・2%に当たる5329人が回答した。

     このほど京都市内で開かれた府立高の在り方を検討する会議では「生徒が満足、不満足だと感じるのは授業次第だ」「部活や行事は生徒が多くないとできず、高校は一定規模が必要」などの意見が出された。


    高校生が何を望んでいるのかをアンケートとして取集することには意義がある。ただ、これをどう生かすのかが問題。シティズンシップ教育としてこのアンケート結果を利用し、高校生の手で改革を実現できる方向を望みたい。もっと身近で取り組みやすい「校則」から始めるのも方法だろう。


    9月3日 市教委 みさきの家 存廃含め検討

     京都市教委の野外活動施設「奥志摩みさきの家」(三重県志摩市)が今年、開所40周年を迎えた。年間1万人の児童を受け入れてきたが、新型コロナウイルスの影響で昨年度から学校単位での利用は中止され、財政難の市は存廃を含めた検討に入る。多くの子どもたちの思い出を彩ってきた施設が揺れている。

     みさきの家は、海に接する機会の少ない市内の児童生徒が自然と触れ合えるよう整備され、1981年4月に開所した。太平洋を望む広大な敷地の中に宿泊棟や野外炊事場があり、4年生が2泊3日で利用することが多かった。

     児童にとっては初めての宿泊学習で、緊張しながらも「磯観察でサザエやナマコが捕れてびっくりした」「バンガローに友だちと泊まったのが楽しかった」などと好評で、貴重な経験となっている。だが、宿泊棟は多人数が一緒に寝るタイプの部屋が多いため、感染対策を取りにくく、新型コロナの感染が広かった昨年度から児童の受け入れ中止が続く。

     さらに、財政難が追い打ちを掛けた。財政破たんの恐れが出る中、運営委託費や人件費などで年間7千万円以上の経費がかかっていることなどもあり、市教委生徒指導課は「市が管理する他の施設と同様に、指定管理制度や民間委託の導入、存廃を含めた検討の俎上に上がっていることは事実」と認める。見直しの時期は未定という。

     現地では、いつ子どもたちの利用が再開されてもいいように草刈りや傷んだ箇所の修繕などを行っているが、市教委は23年度まで小学校単位での利用は受け入れない方針を固めている。同課は「(みさきの家での学習は)教育効果の高い活動であることは理解している」としながらも、見通しの立たない状況が続いている。


    実は「奥志摩みさきの家」は教員には不評である。移動距離が多いこともあり引率できる教員が限られてくるということもある。かつては、(議会への設置意義説明のために)参加強制と思われるような指導がありとても学校に自主的判断が尊重されたとは言いがたい。一転、市財政の悪化を理由に廃止の検討。「子どもため」という原点に立った議論が市教委にあったのだろうか。


    9月1日 学テ 府内 正答率 全教科で平均以上

     京都府教育委員会は31日、5月に行われた2021年度全国学力テストの府内公立小中学校(京都市を含む)の結果を公表した。対象の小学6年生、中学3年生ともに全教科で平均正答率が全国平均並みかそれ以上だった。また新型コロナウイルスの感染拡大で一斉休校した昨年4、5月に「勉強に不安を感じた」とした割合が中3では約6割に上った。

     平均正答率は、全国平均値は小数第1位まで、都道府県ごとの値は過度な競争をあおらないよう四捨五入された整数で公表された。

     府内の平均正答率は、小6の国語は68%、算数は73%、中3の国語が65%、数学が57%だった。全国順位は小6が5位、中3が16位だった。京都市だけでみると、小6の国語は70%、算数は74%、中3の国語は65%、数学は58%で、いずれも全国平均を上回った。

     児童生徒に対する調査では、一斉休校した昨年4、5月に「勉強について不安を感じた」割合は、小6は「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計が53・4%、中3は60・5%だった。またこの時期に「計画的に学習を続けることができた」割合は、「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計が小6は61・2%で、中3では37・O%に下がった。

     また「勉強は好きだ」とする割合は小6、中3の国語、算数・数学のいずれも「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計が全国平均を下回った。府教委は「正答率は全国平均を上回ったが、学ぶ意義を実感する生徒が少ない可能性がある。自分たちで課題を見つけたり、社会の問題に取り組んだりして主体的に学ぶ姿勢を育みたい」としている。


    コロナ下実施「家庭環境で格差」懸念

     2年ぶりに実施された全国学力テストは新型コロナウイルスの影響が焦点だった。8月31日公表の結果は例年と大きく変わらず、安堵した様子の文部科学省。ただ教育関係者は「昨年の一斉休校以来、家庭の学習環境の差が学力格差に一層つながりやすくなった」と懸念する。感染の「第5波」で、各地で再び長期休校となる恐れが現実味を帯び始める中、子どもの学びをどう保障できるのか。

     「今日から長文問題をやっていこう」。経済的に困窮する世帯の中高生を対象に無料の学習支援を行う「八王子つぼめ塾」(東京都八王子市)。7月の平日夜、ボランティアの女性講師が中学3年の6人に語り掛けた。基礎を固めるため、中2の英語を復習できる問題集を一緒に解いていく。

     塾生はひとり親家庭が半数近く、保護者に勉強の相談をする時間が持ちにくい。小さなアパートで幼いきょうだいと生活し、自分の部屋がないこともある。一斉休校の際には「やる気が出ず、学校から配られたプリントは正解を見て穴埋めした」と嘆く声が上がった。小宮位之理事長は「対面で丁寧に指導する中で少しずつ意欲を取り戻した。学びには人とのつながりが不可欠」と話す。

     「コロナ下の学力と学習状況の把握」を目的に掲げた今回の全国学力テスト。同時に実施したアンケートでは、学校側に休校日数のほか、動画配信や同時双方向のオンライン指導といった学習支援を行ったかどうかを尋ねた。児童生徒には「勉強に不安を感じたか」など、一斉休校を振り返る四つの質問を設け、細かく調査した。

     文科省の分析では、学校、児童生徒ともに、いずれの項目も「アンケートの回答と平均正答率との間に相関関係が見られない」との結果に。「一斉休校の悪影響が明確化するかもしれない」と危ぶんでいたある幹部は、胸をなで下ろした。

     一方で担当者らはIコロナの影響は長期的に出る可能性がある」とも認める。教員らが最初に目を通すとされる結果の概要ペーパーには「さらに詳細な分析が必要」と慎重な言葉を加えた。

     民間調査では既に深刻な実態が浮かぶ。子どもの貧困問題に取り組むNPO法人「キッズドア」(東京)は4月、食料支援をした約2千世帯にアンケートを実施。「コロナ下で子どもの学力に変化があったか」との質問に、46・5%が「悪化した」と回答し、収入減などで学習塾や習い事の支出を負担できなかった家庭は半数超に上った。

     渡辺由美子理事長は「塾に好きなだけ通え、オンライン学習の環境が整う家庭との間で、格差が大きい。現在も感染状況によって臨時休校や分散登校、学校施設の利用制限が行われ、家庭学習が難しい子どもはハンディキャップがある」と警鐘を鳴らす。

     各地で新学期がスタートする中、感染力の強いデルタ株の拡大が続く。「休校になっても仕事は休めず、近くで勉強を見てあげられない」。小6の長男(11)ら3人を育てる福岡県のシングルマザーの女性会社員(39)は、自宅にパソコンやWI−FIがなく、オンライン授業になった場合の不安を訴える。

     琉球大の村上呂里教授(教育学)は「学習環境が整っていない子ほど、教員と関わり、友人と学び合う学校が重要な居場所になる。オンラインで学びを継続すると同時に、何らかの形で触れ合いや対面指導を模索する必要がある」と指摘した。


    【学力テスト】教科別分析

    【小6 国語】考えを書く力に課題  平均正答率は64・9%だった。語句の使い方などはよく身に付いていたが、目的に応じて情報を見つけながら読んだり、理由を明確にして考えを書いたりする力に課題が見えた。

     さまざまな製品の留め具として使われるファスナーを巡り、発明の経緯や現在の使われ方について取り上げた文章を題材にした出題で、文章中と同じ「より」の使い方を選ぶ設問は正答率87・6%に上った。一方、発明のヒントになった出来事や仕組みを文章や資料から見つけ、50〜80字でまとめる出題の正答率は34・6%にとどまった。

     学校での片付けをテーマに作文をすると想定し「掃除担当の人などが片付ければよい」という考えに反対であることと、その理由などを60〜100字で記述させる出題の正答率は56・7%。必ず盛り込むよう指示された言葉や文が入っていなかったり、意見と理由のつながりが明確でなかったりする答案が目についた。

    【小6 算数】データ活用、一部低調

     全体の平均正答率は70・3%。選択式問題では76・2%、短答式問題では75・9%と平均を上回ったが、記述式問題では53・2%と低かった。新学習指導要領が重視するデータの活用に関する問題でも一部に課題が見られた。

     学校図書室における学年ごとの本の貸出冊数を棒グラフから読み取らせる基本的問題は90・8%が正答。図書館で本をあまり借りない理由に関する5、6年生へのアンケート結果を反映した帯グラフから複数のデータを比較し、特徴ある項目とその割合を記述させる問題は52・2%だった。

     直角三角形の面積を求める短答式問題では55・4%、複数の三角形を組み合わせてできた平行四辺形の面積の求め方を記述させる問題でも46・2%と低調だった。

     出題内容は、日常的な場面を想定した問題が中心となった。時計を使って条件に合う時刻を求める短答式の正答率は89・3%と高かった。 【中3 国語】敬語の活用正答4割

     平均正答率は64・9%。登場人物の言動や文章の内容はよく理解できていたが、条件に合わせて自分の考えを記すことや敬語を使う力が不十分だった。

     夏目漱石の「吾輩は猫である」の一節を取り上げた出題では、「黒」の機嫌を取るために掛けた言葉が、反対の結果をもたらしたと分かる様子を文章から抜き出すよう求めた。71・5%が「すこぶるおこったようすで背中の毛を逆立てている」などと記し、正答した。

     ただ、「吾輩」が「黒」をどう評価し、接しているか、文章中の表現を引用した上、自分の考えを含め記述させた設問の正答率は20・8%と低迷。引用がない答案が4割、無解答も2割あった。

     生徒から焼き物館の担当者へのメール問い合わせを想定し、「行く」を適切な敬語に直して、その種類を答える設問でも「伺う」「参る」「お訪ねする」などと記述し、「謙譲語」を選んだのは40・9%にとどまった。

    【中3 数学】基礎的な計算力ある

     全体の平均正答率は57・5%。図形分野の問題で正答率の低さが目立った。全16間中5問あった記述式問題の正答率も低調で、大半の問題の正答率が平均を下回った。

     2枚の三角定規を組み合わせて作った四角形が平行四辺形となる条件を記述させる問題の正答率は44・6%。ある条件下でいつでも成立する図形の性質を見いだして短答式で答える問題では29・3%にとどまった。

     基本的な整式の加法・減法を計算したり一元一次方程式をつくったりする短答式問題の正答率は、いずれも70%を超えていた。

     「日照時間か6時間以上の日は6時間未満の日より気温差が大きい傾向がある」と主張できる理由をグラフの特徴を基に数学的に記述する問題の正答率は11・2%で、全問題中で最低だった。相対度数の必要性と意味を理解しているかどうかを問う選択式問題も37・1%にとどまった。


    毎回ほぼ同じ回答結果ではないだろうか。かつてのPISAショックによって記述式問題や推論型問題などが「弱点」指摘されていたが改善されたようには見えない。おそらくこれらは日本の構造的な問題で「高得点」を得ることで将来が描ける社会となていることで、手っ取り早く点数を稼げる「勉強」に力が入ることとなる。同じように、学校ごとの点数が明らかになることでの学校間競争・府県間競争もその要因になっている。
     また、家庭の経済格差が子どもの学力格差になるという指摘も珍しくなくなってしまったが、それへの対策はほとんどなされていないように見える。いわば教育の新自由主義路線の驀進の前には成す術がないかのように。