軍事AI 米中競争過熱(11/2) 医療・放送でAI規制(11/8) チャットGPTに新機能(11/8) 首相偽動画 1時間で作成(11/11) 政府 AI指針 人権配慮など10原則(12/22) |
AI兵器「対応が急務」(12/24) オープンAIとMS提訴(12/29) 人間の機械化に危機感(2024/1/5) EU議会 AI規制法可決(2024/3/14) 米巨大AI、ATで好業績(2024/5/4) |
AI投資額 米首位10兆円(2024/5/8) イスラエル 空爆にAI利用か(2024/5/12) 生成AI開発競争激化(2024/5/16) 初のAI国際条約採択(2024/5/19) 世論操作に人工知能利用(2024/6/1) |
AI軍事利用 枠組み必要(2024/6/3) EUのIT規制 米アップル違反(2024/6/25) AIデマ 巧妙化(2024/7/17) 新聞協会声明「検索連動AIは著作権侵害」(2024/7/18) 世界システム障害 収束へ(2024/7/21) 生成AI検索 日本でも(2024/8/17) |
ネット炎上 AIで回避(2024/8/27) AI機械学習ノーベル賞(2024/10/9) AI開発へ小型原発電力(2024/10/16) AIウイルス作成「簡単」(2024/10/25) 【教育】研究の在り方変えるAI(2024/10/27) |
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軍事AI 米中競争過熱(2023/11/2 京都新聞)
AI(人工知能)の軍事利用を巡る米国と中国の競争が激化している。民生分野では英国での「AI安全サミット」などでルール策定に向けた議論が進むが、軍事分野での開発は「歯止めのない」(米メディア)状況だ。過熱する覇権争いの中で、民生技術が軍事転用される懸念や、人間が介在しない自律型AI兵器が実用化される恐れも高まる。
「任務の多くでAIを活用している。技術革新のためAIに投資する」。ヒックス米国防副長官は6月、米メディアへの寄稿で軍事利用の必要性を強調。倫理面に配慮するとしつつも、巨費を投じて開発を進める意向を示した。
背景にあるのは中国への焦りだ。米AI企業幹部は7月、下院軍事委員会の小委員会で、中国の軍事予算に占めるAI関連支出の割合は米国の10倍だと指摘。このままでは米国が「後塵を拝する」と警告した。
米軍は昨年12月、AIが操縦する戦闘機の試験飛行を行い、離着陸や武器使用能力などを確認して実戦配備へ前進した。AIで自律飛行する無人機(ドローン)部隊創設の準備も進め「(中国の)先を行く」(ヒックス氏)と巻き返しを図る。
一方、人口減少が進む中国ではAIが軍の効率化に不可欠だ。「軍民融合」を掲げる習近平指導部は、地下鉄の改札や街の監視カメラなど市民生活の至る所でAIによる生体認証を実用化して技術力を高めてきた。ただ、こうした技術が人間の介在なしに敵味方を識別し殺傷する自律型兵器に転用される恐れもある。
中国は台湾統一を見据えた「認知戦」でもAI活用を重視。台湾世論分断を狙い、AIで生み出した偽情報を拡散し、自国に都合の良い世論をつくり出そうとしているとの指摘も後を絶たない。
米中を含む60力国超は今年2月、オランダーハーグで開かれた会議でAIの軍事利用について「責任ある利用を進める」とする文書に署名したが、法的拘束力はない。ウクライナに侵攻したロシアは招待されず、パレスチナ自治区との境界監視にAIを用いるイスラエルは署名を回避した。
習氏は10月、AIの秩序ある発展を目指す「グローバルAIガバナンスの提唱」を発表し、ルール作りの主導権確保へ動きを本格化させた。
中国軍事に詳しい京都先端科学大の土屋貴裕准教授は、中国のAI技術は世界トップレベルにあると指摘。米欧中心の既存の秩序に反対する一方、「先端技術を巡る新たなルール形成の過程で、自国に有利な方向に議論を向かわせようとしている」と解説した。(東京、北京共同)
医療・放送でAI規制(2023/11/8 京都新聞)
政府は7日、生成人工知能(AI)の利活用に関するルール作りなどを議論する「AI戦略会議」を開き、偽情報の拡散や人権侵害といったリスクを軽減するための新たな対策の検討に入る考えを示した。具体策として、政府部門や医療、放送などリスクの高い8分野における活用の規制や、開発者に情報開示を促す仕組 みの創設を挙げた。
先進7力国(G7)による国際ルールや国内向けの事業者ガイドラインの最終案が2023年末までに固まる見通しとなっている。政府はこうした動きも踏ま えて23年度末までに基礎調査を行い、具体策の構築を進める考えだ。
政府は高リスク分野として、政府部門、金融、エネルギー、運輸、交通、電気通信、放送、医療の8分野を例示。こうした分野で生成AIを用いたサービスを 提供する場合、追加ルールの策定などにより規制を強める方向だ。リスクの低い分野についてはAI運用を巡る「ガバナンスポリシー」のような情報開示策を課す 検討を進める。
AIの開発者に対しては、リスク軽減や透明性向上のための情報開示を促す枠組みとして、第三者機関による認証制度を設けたり、外部監査を実施したりすることが検討対象となる。
生成AIを巡っては、偽情報の拡散などが問題となっている。岸田文雄首相の声や画像を使い、性的な発言をしたように見せかけた偽動画がインターネットで 拡散。生成AIを用いたとみられ、民放のニュース番組のロゴも使われていた。
政府は今年10月、生成AIの国際ルール作りの枠組み「広島AIプロセス」に関するG7首脳戸明を発表した。開発者向けの行動規範ではプライバシー侵害 などを減らすため、開発段階で内部と外部による検証を要求。AIが生成したコンテンツと判別できる技術の開発や導入も求めた。
チャットGPTに新機能(2023/11/8 京都新聞)
【ニューヨーク共同】米オープンAIは6日、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」をベースにして開発者が目的別のさまざまな対話型ソフトを作れる新機能を発表した。特定のゲームのルールを教えたり、子どもに算数を教えたりする対話型ソフトを作り、共有することなどが可能。また、チャットGPTの基盤技術である言語モデルの最新版「GPT−4ターボ」も公表した。
米企業家のイーロン・マスク氏が率いるAI開発会社「x(エックス)AI」も新たな対話型AI「Grok(グロック)」を米国で一部の利用者に限定して公開した。マスク氏は自身がオーナーの米短文投稿サイトX(旧ツイッター)にこの対話型AIを組み込む考えも示すなど、関連の動きが活発化している。
オープンAIは、初の開発者会議で公開した。新機能を使えば対話型ソフトを「誰でも簡単に構築できる」と説明している。米アップルやグーグルのアプリ市場のように、開発者が作ったさまざまな対話型ソフトを販売するサイト「GPTストア」も今月中に立ち上げることも明らかにした。
GPT−4ターボは300ページを超える文書を扱えるようになり、回答を音声で読み上げるのも可能。今年4月までのデータで構築されているため、最近の 事象に関する質問に答えられるという。
サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は週間のユーザー数が約1億人に上っていると紹介し、「世界で最も広く使われているAIプラットフォームだ」と訴えた。
首相偽動画 1時間で作成(2023/11/11 京都新聞)
岸田文雄首相がニュース番組でみだらな発言をしたと見せかけた、人工知能(AI)による偽動画が交流サイト(SNS)で拡散し、波紋を呼んでいる。投稿した20代の男性は取材に応じ、動画や音声などを作る生成AIを使い、1時間ほどで偽動画を作ったと説明。「軽い冗談のつもりだった。ここまで大騒ぎになるとは想像していなかった」と明かした。
男性によると、岸田首相の偽動画を最初に投稿したのは今年7月。日本テレビのニュース番組が報じた実際の映像を使い、みだらな 発言を繰り返しているように加工した。投稿直後はそれほど注目されなかったが、11月に約3分半の長さに延ばして投稿すると閲覧数が急増した。
男性は趣味で生成AIを使った動画を投稿していたが、岸田首相がAI研究者らと会合したニュースを見たのが偽動画作成のきっか けだった。出席者の話し声を首相の話しぶりそっくりに変えるAI音声変換ソフトウエアの実演を受けた際、首相の関心が低いように見えたため、「同じソフトで偽動画を作ってちやかしてやろう」と考えたという。
男性はインターネットに公開されている岸田首相の声をAIソフトに学習させた上で、自分でみだらなせりふを読み上げて首相に似 せた声に変換した。日テレのニュース番組の画像をネット検索によって見つけ、声に合わせて口元を加工するAIで動画に仕立てた。AIソフトの音声学習に2時間ほどかけたが、動画そのものは1時間ほどでできた。男性は「日テレに申し訳ないことをした」と謝罪した。
生成AIの急速な進歩の裏側で、各国は高度な偽情報を危険視する。AIを使った海外の政治家の偽動画はSNSに多数、投稿され ている。2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、ゼレンスキー大統領がウクライナ軍に降伏を呼びかける偽動画が広がった。
選挙戦を有利に進めるため、対立候補をおとしめる偽動画の作成にAIが悪用される恐れもある。松野博一官房長官は6日の記者会 見で「偽情報の投稿は民主主義の基盤を傷つけ、罪になる場合もある」と強調した。
法政大の藤代裕之教授(ソーシャルメディア論)は「戦争や災害のような緊急時に、生成AIで作られた巧妙な偽動画を見抜くことは困難だ。事実かどうかを確認するファクトチェックでは到底間に合わず、利用者のリテラシーで対応するのは不可能だ」と指摘する。「ニュースの悪用は社会の混乱につながる。SNSやヤフーなどのプラットフォームに、投稿された内容が生成AIだと明示する仕組みが必要だ」と訴えた。
政府 AI指針 人権配慮など10原則(2023/12/22 京都新聞)
政府は21日、AI(人工知能)戦略会議を開き、AI関連事業者向けのガイドライン(指針)案を提示した。人権配慮や偽情報対策を求める「人間中心」など10原則が柱だ。2024年初めにも一般から意見公募し、3月をめどに正式な指針を公表する。AIの安全性評価の方法などを取り扱う研究所を24年 1月ごろに設けることも明らかにした。
利用者の指示に基づいてコンテンツを作成する生成AIが急速に普及し、偽情報拡散やプライバシー侵害が生じている。指針案や研究所の活動によりAIの適切な活用を進め、生産性向上につなげる狙いがある。戦略会議は今後、指針案の履行確保に向けた制度整備を検討する。
指針案は、先進7力国(G7)で合意した国際ルールの枠組み「広島AIプロセス」の内容を踏まえた。10項目は「安全性」「公平性」「プライバシー保護」「透明性」などを含み、開発者やサービス提供者、利用者に共通して求める。
人間の意思決定や感情の不当な操作を目的とせず、偽情報のリスクを認識した上で対策を要求。偏見や差別を排除し、AI単独ではなく、人間の判断を介在させる利用を検討することも求める。問題が生じた際に検証できるよう、AIの学習や判断根拠の記録保存も要請する。
生成AIを含む高度なAIシステムの開発者に対しては、AIが生み出した作品と識別できる「電子透かし」などの技術導入も促す。
安全性の研究組織に関し、会議に出席した岸田文雄首相は「海外機関と連携し、AIの安全性評価手法の研究や規格作成を行う機関が必要」と強調した。名称は「AIセーフティー・インスティテュート(安全研究所)」とし、経済産業省所管の情報処理推進機構(IPA)に置く方向だ。
政府が人工知能(AI)の開発や利用に関する指針案をまとめた。文章や画像を生み出す生成AIの普及に伴い、偽情報拡散や著作権侵害への対応が急務となる中、規制に一歩を踏み出した。ただ拘束力はなく、欧米が法的なルールを整備するのと比べ実効性確保が課題となる。日本でも今後、法制化が視野に入る可能性もある。
岸田文雄首相は21日、官邸で開いたAI戦略会議で「本日議論いただいた原案をパブリックコメント(意見公募)にかけ来年3月までに策定、公表する」と力を込めた。
日本は今年、先進7力国(G7)の議長国としてAIの国際ルール「広島AIプロセス」を主導した。ある内閣府幹部は「首相はAI関連施策への思い入れが強い」と話し、指針案は「欧米など世界の議論の進展に後れを取っていない」と出来栄えに満足げだ。
だが欧米では日本より事業者を拘束するルールが設けられつつある。対話型の「チャットGPT」で知られる新興企業オープンAIや、グーグルなど巨大IT企業の本拠米国では、開発・利用促進と規制が両輪となって進む。
「AIの可能性とリスク回避を実現するには、テクノロジーの統治が不可欠だ」。バイテン大統領は10月、AIの安全性確保に向けた、法的拘束力を伴う初の大統領令に署名した。安全試験の結果を政府に提供するよう義務付ける。対象は安全保障に関わる高度なAI開発企業などに限られるが、議会では11月、超党派議員がより踏み込んだ規制法案を提出した。
欧州連合(EU)も法規制を志向する。「欧州は先駆者どなった」。EUのブルトン欧州委員(域内市場担当)は12月上旬、加盟各国が大筋合意した包括的なAI規制案に自信を見せた。
AIのリスクに応じて段階的に規制する内容で、違反すれば巨額の制裁金を科す罰則を含む。2026年にも適用し、世界初の包括的AI規制となる可能性がある。
日本が来年3月までに正式に決める今回の指針は欧米と比べて緩く、どのように事業者に順守させるかは課題だ。企業からは「個人情報や著作権侵害を巡る問題には各社とも敏感だ。対策は既に進めている」(通信大手)との声が出ている。
ただ生成AIが普及するにつれ、偽動画やなりすまし、有害物の製造法拡散といった悪用は増えると想定される。自民党のデジタル社会推進本部は12月、法制化の検討を提含した。指針の実効性確保について、岸田首相は「国際的な動向を踏まえ検討していく」と表明した。法規制の在り方が今後、AI戦略会議で議論されることもありそうだ。(ワシントン、東京共同)
AI兵器「対応が急務」(2023/12/24 京都新聞)
【ニューヨーク共同】国連総会は22日、人工知能(AI)を使って敵を攻撃する自律型致死兵器システム(LAWS)への「対応が急務」とする決議案を日本や米国などの賛成で採択した。総会でのLAWS関連決議は初。課題をまとめて総会に報告するようグテレス事務総長に求めた。LAWSが実用化すれば、火薬と核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」になると指摘される。武力行使の判断が瞬時に下り、一気に紛争化する恐れがある。
日米など152力国が賛成し、ロシアとインド、ベラルーシ、マリの4力国が反対した。中国と北朝鮮、イスラエルを含む11力国は棄権した。
AIの軍事利用に関する国際的なルール作りは進んでおらず、グテレス氏はLAWSを禁じる法的枠組みを交渉し、2026年までに妥結させるよう各国に求めている。
決議はオーストリアが提出し、総会の第1委員会(軍縮)で11月に採択されていた。AI兵器に対しても国際法が適用されることを確認し、この分野で新たな軍拡競争が起きる危険性に懸念を表明した。
軍事分野で新たな技術利用が抱える深刻な課題に留意し、専門家を通じてLAWSについて理解を深める必要があるとも強調した。
倫理的問題や人間の役割について各国の見解を取りまとめ、来年9月に始まる次期会期に報告書として提出するようグテレス氏に要請した。
オープンAIとMS提訴(2023/12/29 京都新聞)
【ニューヨーク共同】米新聞大手ニューヨーク・夕イムズ(NYT)は27日、記事の無断利用で著作権を侵害されたとして対話型人工知能(AT)「チャットGPT」を開発した米新興企業オープンAIと提携先の米マイクロソフト(MS)を相手取って損害賠償を求める訴訟をニューヨークの裁判所に起こした。
NYTによると、米主要メディアがAI開発企業を著作権侵害で訴えるのは初めて。
訴えによると、チャットGPTや、MSの対話型AI「コパイロット」がNYTの記事を許可なく学習し、詳細な要約や抜粋を回答することによって、購読料や広告収入が損なわれたと主張。こうした「ただ乗り」の損害額は数十億ドル(数千億円)に上ると強調した。
NYTは同社の記事が組み込まれた対話型AIと、その技術基盤である大規模言語モデルを破棄することも求めた。
NYTは、オープンAIとMSが対価を支払い、コンテンツを利用することに向けて交渉したものの、合意に達しなかったと説明している。
オープンAIは「私たちとNYTの対話は生産的で前進していただけに、今回の(提訴の)動きに驚き、失望している」とコメントした。
オープンAIは7月に米AP通信と、12月にドイツのメディア大手アクセル・シュプリンガーとそれぞれ記事利用などに関する提携を発表した。
一方、日本新聞協会は日本の著作権法が対価を払わずに無断で生成AIに学習させることを認めていることに懸念を表明し、早急な法改正を検討するよう求めている。
【新春インタビュー 西垣通さん】人間の機械化に危機感(2024/1/5 京都新聞)
私たちの暮らしのあらゆる場面でデジタル化が進み、その動きはとどまるところを知らない。「チャットGPT」に代表される生成人工知能(AI)とどう向き合うか、世界が揺れる中で迎えた新たな年。デジタル技術と人間との関係性はどうあるべきか。情報学者の西垣通さんに聞いた。
私がAIと人間の関係を考え始めたのは1980年代のことです。会社勤めをしていた30代の時、客員研究員として留学した米スタンフォード大で第2次AIブームを目の当たりにしました。その時既にAIが作曲したり、絵を描いたりしていました。そもそも機械にものを考えさせるというのはどういうこと か、文化論として捉えないといけないと思いました。
デジタル技術は今、新しい局面を迎えています。新幹線の運行管理システムや全国銀行協会(全銀協)のネットシステムなど、昔はプロしか扱えなかったコンピューター技術が、インターネットの普及、スマートフォンや交流サイト(SNS)の広がりで大衆化しました。
現在の第3次AIブームでは、データの統計処理が中心となり、人間が多少の誤りを許容するようになった結果、実用化が進みました。2022年11月に発表されたチャットGPTなどの生成AIの登場以来、一般の人たちにとってAIが急速に親しみやすい身近なデジタル技術になりました。
ただ、現代はデジタル化イコール効率化という風潮が強いと感じます。欧米に追従し、新自由主義経済の中で市場価値ばかりが追求され、文化的な多様性、人間の個性がつぷされてしまいます。効率化が進むと人間自体が機械化する、そんな危機感があります。特に子どもたちや芸術分野に携わる人たちを追い込んでいくと思います。
デジタル化は膨大な情報を機械的に処理することが目的ですが、この情報という概念をいま一度捉え直さなければならないでしょう。本来情報とは、個々の生命体それぞれが生きていく上で必要なものだと思うんです。
同様に、進歩という概念についても見直す必要があります。科学技術の進歩は絶対善で人類に幸福をもたらすでしょうか。核兵器や環境破壊の例を挙げるまでもなく、そこには疑問があります。
今後、デジタル情報技術はますます威力を増していくと思います。人間の仕事の在り方も変わっていくでしょう。人間にとって本当に大切な技術とは何 か、人間自身が考えないといけません。
生成AIの活用についても、もう少し冷静に議論すべきです。機械に知性や感情が宿る、といったことは、私は「ない」と言い切ります。
日本社会は緻密な作業を積み重ねて高品質で信頼できるものを作ってきた伝統があります。今こそ、そうした積み重ねが生み出す情報技術が求められると思います。
EU議会 AI規制法可決(2024/3/14 京都新聞)
【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)欧州議会は13日の本会議で、対話型人工知能(AI)チャットGPTなど生成AIを含む世界初の包括的なAI規制法案を可決した。偽情報を排除し、2026年から適用の見通し。企業に生成AIで作成した画像の明示などを義務付け、違反時には巨額の制裁金を科す。背景にはAIの人権に与える負の影響への危機感があり、EUルールの世界標準化を目指す。
加盟国で構成する理事会が近く承認し、成立する見通し。日本政府はAI開発や利用を巡る事業者向けのガイドライン(指針)を今月公表するが、法制化のめどは立っていない。米政府は昨年10月、偽情報拡散を含むAIのリスク管理のための大統領令を出し、対策を急いでいる。
企業が違反した場合、最も重いケースで3500万ゆーろ(約56億円)か、年間売上高の7%のいずれか高い方が制裁金として科される。EU域内で活動する外国企業も対象となる。
法案は社会的行動や個人の特徴に基づき信用の格付けをするソーシャルスコアリングのほか、宗教や性的指向、人種を利用した分類システムへのAI利用を禁止。インターネットや監視カメラからの顔画像の無差別収集や職場での感情認識技術への利用も禁じられる。
加盟国の捜査当局に関しても、生体認証への使用を原則禁じる一方、テロ対策や人身売買、誘拐事件など特定の犯罪捜査では例外的に使用を認める。
欧州委員会は21年4月、AIをリスクの高さによって分類し、リスクに応じて規制を設ける内容の法案を発表した。その後の生成AIの発展を受けてAI作成画像の明示やシステム開発に使用した著作物の開示を義務付ける規制案も加わった。
理事会と欧州議会、欧州委員会の3者は昨年12月、法案に大筋合意していた。
欧州連合(EU)が世界に先駆け、人工知能(AI)の包括規制に乗り出す。文章や画像を作り出す生成AIが急速に普及する中、これまで巨大IT企業の規制で世界をリードしてきたEUが、AIを巡っても先鞭をつけた形だ。ただ開発競争は激化している。巨額の制裁金を科され、域内企業は不利な立場に追い込まれるとの懸念が強く、規制と活用の両立が課題となる。
AI規制法は2026年からの適用が見込まれる。EU域内でAIを使った製品やサービスを提供する企業は、最も重い違反をしたと判断された場合、3500万ユーロ(約56億円)か、年間売上高の7%のいずれか高い方を制裁金として科される。規制法により偽情報の拡散防止をはじめ、人権や民主主義を守ることを目指す。
EUは近年、IT企業を標的に膨大な制裁金を科す規制を相次いで導入してきた。18年には個人情報管理をより厳格化する一般データ保護規則(GDPR)、22年に違法コンテンツの排除を義務付けるデジタルサービス法(DSA)が施行された。今月7日にはIT企業の自社サービス優遇を禁じるデジタル市場法(DMA)の適用も始まった。
運用は厳格で、日本の検索大手ヤフーは22年から「法令への対応コスト」を理由に、EUで日本語検索サイトのヤフージャパンやヤフーニュースの提供を中止した。
「イノベーションを進めるという点では、良い雰囲気にはならない」。EUの欧州議会でAI規制法案採決前日の12日、最大グループのフォス議員は域内企業が萎縮することを不安視した。
米国は23年10月、大統領令で高度なAI技術を開発する企業に情報提供を義務付けたものの、企業への罰則は直接定めなかった。日本政府はAI事業者向けのガイドライン(指針)を今月をめどに公表する。人権配慮や偽情報対策を求める「人間中心」や「安全性」など10原則が柱だが、法的拘束力はない。
過度な規制は他国との競争の足かせになりかねない。こうした意見に配慮し、EUの行政府に当たる欧州委員会は今年1月、新興企業や中小企業を支援するため、スーパーコンピューターを開放してAI開発の費用軽減を図ると発表した。
規制と技術革新の促進を担う「AI事務所」を開設し、企業が開発に利用できる設備を備えた「AI工場」構想も掲げる。ただ具現化するには時間がかかるとみられている。(ブリュッセル共同)
米巨大AI、ATで好業績(2024/5/4 京都新聞)
【ニューヨーク共同】米巨大IT5社の2024年1〜3月期決算が2日、出そろった。生成人工知能(AI)の需要の高まりを追い風に、アップルを除ぐ4社で純利益が前年同期と比べ増益となった。純利益の合計は920億3700万ドル(約14兆円)に上った。
各社は競って生成AIを使ったサービスの導入を進め、成長を後押ししている。ただ過熱するブームの中で投資負担が重くなっており、収益への影響を懸念する声も出ている。
グーグルの持ち株会社アルファベットは純利益が57%増の236億6200万ドルとなり、四半期ベースで過去晟局を更新した。マイクロソフト(MS)は20%増の219億3900万ドル、アマソン・コムは3・3倍の104億3100万ドルだった。
各社ともに生成AIの活用を進めるクラウドサービスの成長がけん引した。
アルファベットは主力の検索連動広告も堅調だった。メタ(旧フェイスブック)もネット広告が好調で2・2倍の123億6900万ドルだった。
一方、アップルは中国市場での販売不振が響いて売上高が4%減の907億5300万ドル、純利益が2%減の236億3600万ドルとなり、1年ぶりの減収減益だった。
主力のIPhone(アイフォーン)の売り上げが10%減と落ち込んだ。近く生成AIを使った新機能を発表するとみられており、巻き返しを図る。
AI投資額 米首位10兆円(2024/5/8 京都新聞)
人工知能(AI)に対する2023年の各国の民間投資額で、米国が672億2千万ドル(約10兆円)と首位だったことが7日、米スタンフォード大の推計で分かった。6億8千万ドルで12位にとどまった日本のほぼ100倍に達する。2位の中国は77億6千万ドル、3位英国は37億8千万ドルで、日本は大きく後れを取っている。
4位はドイツ(19億1千万ドル)、5位はスウェーデン(18億9千万ドル)だった。韓国とインドは9位でともに13億9千万ドル、シンガポールが11位の11億4千万ドルと、日本の投資額はアジアでも見劣りした。
米国はデータを学習する仕組み「AIモデル」も23年に計61と最も多く生み出した。欧州連合(EU)の21、中国の15を大幅に上回った。日本は同大が公表した国別の上位10力国までに入らなかった。10位はエジプトの2だった。一方、AIに関して22年に成立した特許件数では、中国が全体の61・1%を占めた。米国は20・9%だった。
同大は調査報告書で、最先端のAIモデルの開発費用は「かつてない高水準だ」と指摘した。グーグルの「ジェミニ・ウルトラ」は1億9100万ドル、対話型AIのチャットGPTを開発したオープンAIは、最新のAIモデル「GPT4」の開発に7800万ドルを費やしたとの試算を紹介した。
生成AIで本物そっくりに作った偽動画など「ディープフェイク」に関して「利用者の政治的な見解に影響を与える可能性について懸念を抱かせる」との警鐘も鳴らした。ディープフェイクは簡単に作成できる半面、発見は難しい。選挙への影響を分析し、チャットGPTを例に、AIの回答は政治的に偏っている場合があるとした。
スタンフォード大はIT企業が集積する米西部シリコンバレーの名門大で、多くの著名なAI開発者を輩出している。
イスラエル 空爆にAI利用か(2024/5/12) ↑トップへ
イスラエル 空爆にAI利用か(2024/5/12 京都新聞)
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザでの空爆で、標的の選定と追跡に人工知能(AI)を使っていると、イスラエルを拠点とするオンラインメディアが報じた。昨年10月に始まった戦闘で、ガザでは甚大な民間人被害が出ており、作戦に関わった関係者は、複数のAIシステムを組み合わせ、標的を家族もろとも殺害してきた結果だと指摘。国連はAIの軍事利用に深い憂慮を表明している。
報道によると、イスラエル軍が使用しているのは「ラベンダー」「父さんはどこ?」と呼ばれるAIシステム。イスラエル情報部門に所属する6人が証言した。いずれもガザでの戦闘中に兵役に就き、AIの使用に直接関わったとしている。
軍が過去のイスラム組織ハマスとの戦闘で標的としたのは幹部だけだったが、ハマスのイスラエル奇襲攻撃を受け、標的をハマス軍事部門全員に拡大。それに伴って軍はAIに頼るようになった。
ラベンダーはハマスなどの軍事部門に所属している疑いがある全ての人物を「潜在的な空爆対象」としてマークするように設計。下級の工作員も含め、その数は最大で3万7千人に上る。監視システムを通じて収集した情報を分析し、戦闘員である危険度を100段階で評価。危険度が高ければ自動的に標的になるという。
ただ軍事部門と全く関係のない人物をマークするなど、約10%の確率でエラーがあることも知られているが、人間が確認するのは標的が「男性かどうか」だけ。戦闘の初期段階で軍はラベンダーが生成する「殺害対象者リスト」を全面的に承認。選定の裏付けも確認せず、関係者は「人間は機械が下した決断の”ゴム印”としての役割しか果たさなかった」とした。
ラベンダーの標的を追跡するのが「父さんはどこ?」というAIだ。ガザを監視するシステムが、標的の自宅を特定。数千の標的を同時に追跡し、自宅入りを確認すると、自動的に軍担当者に警告が送信され空爆が実行される。空爆は家族がそろう夜間が多く、多くの女性や子どもが犠牲になったとしている。
国連によると、今年4月29日までのガザ側死者3万4488人のうち約7割、2万4千人が女性と子どもだった。
また関係者は警告の送信と実際の空爆には時間差があり、空爆時には標的が自宅を離れ、家族だけが犠牲になることもあったと説明。最初の数週間はハマスの下級工作員1人の殺害に15〜20人の巻き添えが、標的がハマス幹部の場合は100人以上の民間人殺害がそれぞれ許容されたという。
国連のグテレス事務総長は4月、記者団に対し「AIは戦争の遂行や、説明責任を曖昧にするために使われるべきでない」と警鐘を鳴らした。(エルサレム共同)
生成AI開発競争激化(2024/5/16 京都新聞)
【シリコンバレー共同】米オープンAIは13日、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」の基盤となる言語モデルの最新版「GPT−4o(オー)」を発表した。性能が向上して高速化し、音声でスムーズに対話できるのが特徴。日本語にも対応している。有料会員に段階的に提供を開始し、無料会員も一部機能が利用できるようになる。
米グーグルなどとの競争が激化しており、オープンAIは利用者増を図りたい考えだ。無料会員はチャットGPTに提供されていた言語モデルの性能が大きく向上する。
GPT−4oは既存の最新言語モデル「GPT−4ターボ」から改良し、音声、文章、画像を組み合わせた質問と回答も可能になった。
オープンAIがオンラインで開いた発表会では、ロボットについての物語を作ってと話しかけられたチャットGPTが、芝居がかった口調やロボット調、歌うようになどさまざまな指示に基づいて、音声で回答する様子が披露された。
【シリコンバレー共同】米グーグルは14日、生成人工知能(AI)「ジェミニ」の検索サービスへの導入を拡大すると発表した。検索結果の上部に、ジェミニによる回答が表示される。対話型AIの性能向上や高画質な動画を生成できるAIも発表した。サービスをAIで強化し「チャットGPT」を開発した米オープンAIなどに対抗。生成AIを巡る各社の開発競争が激化している。
グーグルが西部カリフォルニア州シリコンバレーで開いた開発者会議で発表した。検索へのジェミニによる回答「AIオーバービュー」は同日から米国で展開し、近く他国に拡大する。
グーグルのAIオーバービューは一部の質問に対応し、参照されたページへのリンクも表示される。検索サービスには動画を撮影してAIに質問できる機能も搭載する計画だ。
生成AIの基盤となる言語モデルの最新版「ジェミニ1・5プロ」は、より長文を理解できるようになった。これまでは試験的に提供していたが、有料の対話型AI「ジェミニアドバンスト」に搭載して広く利用できるようにする。日本語にも対応している。生成AIと音声で会話できる機能も数力月以内に追加する。
文章から高画質な映像を生成できるAI「Veo(ベオ)」も公開した。オープンAIも同様のAI「Sora(ソラ)」を発表しており、動画分野でも対抗する。
初のAI国際条約採択(2024/5/19 京都新聞)
【パリ共同】人権保護などを目的とする国際機関、欧州評議会(本部フランス・ストラスブール、加盟46力国)は17日、人工知能(AI)の使用に関し人権保護や法の支配、民主主義の尊重を目的とした初の国際条約を採択した。9月に署名が予定され、その後各国の批准を経て発効する。日本も策定に関わった。
「チャットGPT」に代表される生成AIの急速な普及に伴い、偽情報の拡散など民主主義や人権が脅かされる懸念が高まる中、各国・地域や国際機関は急ピッチで対策を進めている。条約は欧州諸国以外にも門戸が開かれており、今後加盟国が世界的に広がる可能性がある。
条約はAIの技術革新を促進しつつ、AIがもたらす潜在的なリスクに対処するための法的枠組みを規定、各国に立法化などの対応を求めている。人権侵害を受けた人への法的救済措置を講じることも盛り込んだ。
条約の策定作業は約2年前から開始。加盟国や欧州連合(EU)のほか、日本や米国なども草案作成に関わった。欧州評議会のペイチノビッチブリッチ事務局長は声明で「責任あるAIの利用を目指す」と述べた。
AIを巡るルール作りでは、昨年10月にバイテン米大統領がAIのリスクを管理するための大統領令を発令。EU欧州議会は今年3月、世界初の包括的なAI規制法案を可決した。
世論操作に人工知能利用(2024/6/1 京都新聞)
【ニューヨーク共同】対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を開発した米オープンAIは30日、ロシアや中国などを拠点とする五つの組織が世論を操作する目的でAIを利用していることを特定したと明らかにした。オープンAIが同日、自社製品を利用した脅威についての報告書を発表した。
身元を隠した組織が、文章やソーシャルメディアのアカウント作成のほか、プログラミングなどにも生成AIを利用していた。イランやイスラエルの組織も含まれ、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの戦闘、米国の政治などに焦点を当てていた。
このうち中国拠点の組織は東京電力福島第1原発の処理水放出を非難する内容の文章などを作成しており、日本語でも投稿していた。生成された文章は交流サイト(SNS)上に投稿されたが、多く閲覧された形跡はないとしている。プロパガンダのための画像の生成指示をAIツールが拒否した事例もあった。
AI軍事利用 枠組み必要(2024/6/3 京都新聞)
日米欧の先進7力国(G7)は、イタリアで13〜15日に開く首脳会議(サミット)で取りまとめる共同声明に、人工知能(AI)に関し「軍事分野での責任ある開発と使用を推進する枠組みの必要性」を明記する方向で調整に入った。国際人道法の準拠に言及し、兵器利用を巡る一定のルール共有を目指す。「安全、安心で信頼できるAIを促進し、人間中心のデジタル変革を追求する」と指摘。AIが生産性向上や質の高い仕事に資するよう労働分野の行動計画の策定に着手する。
G7外交筋が2日、明らかにした。
AIを巡っては、偽情報拡散の懸念から欧州連合(EU)で5月に規制法が成立し、日本でも大規模な開発事業者などを対象に法規制の検討が始まっている。サミット共同声明が示す内容は、今後の各国の議論に影響を与えそうだ。
声明案は、AIを「社会の進化と発展に極めて重要な役割を果たせる」と位置付ける。2023年のG7広島サミットで推進を決めた生成AIの国際的なルール形成の枠組み「広島AIプロセス」に言及。この成果を前進させる重要性を確認し、G7以外の国や地域からの支援を歓迎する。
AIの軍事利用に当たっては国際法の順守を求め、特に人道上の配慮を各国に呼びかける。司法への影響にも触れ「AIの使用が裁判官の判断や司法の独立を妨げてはならない」と警告する。
労働分野では、AIによる生産性の向上と労働政策の強化に取り組むと盛り込む。働きがいのある人間らしい仕事と労働者の権利を実現し、適切な再教育を受けられるようにする行動計画の策定を担当閣僚に指示する。
韓国で今年5月に開催された「AIソウルサミット」の成果を踏まえ、9月に国連で開かれる「未来サミット」に向けて協力していくことも申し合わせる。
先進7力国首脳会議(G7サミット)の共同声明に、人工知能(AI)活用へ「人間中心」の考えを明記する方向となった背景には、兵器利用や偽情報の拡散とい ったAIがもたらす負の側面への対応が急務との現状認識がある。AIを巡る国際的なルール作りは各国共通の課題となっており、日本も議論を主導したい考えだ。
AIの軍事利用と管理の在ぴ方については、米中両国が5月にスイスで開いた政府間対話で主要議題になった。中国による軍事利用を防ぐため対中投資規制を進める米国に対し、中国は不満を表明。中国側は国連主導の国際規範作りを主張し、米欧の価値観に基づく議論をけん制した。
中国はその後、軍事演習でライフル銃で敵を撃退するロボット犬を導入し、先端技術の軍事利用をいとわない姿勢を印象付けた。
ロシアによるウクライナ侵攻では無人機が投入された。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザでの空爆でも、標的の選定と追跡にAIを使用したと報じられている。人間が介在しない自律型AI兵器が実戦配備される懸念は高まっている。
選挙戦で生成AIが生み出した偽情報が拡散されるケースも後を絶たない。今年は先進国で大型選挙が相次いで予定されており、民主主義の根幹を揺るがしかねない偽情報対策は先送りできない課題だ。
日本は2023年のG7広島サミットの議長国として、生成AIの国際ルール形成枠組み「広島AIプロセス」の取りまとめを主導した。今年5月には友好国会合を設置し、賛同する国の拡大を目指している。
各国はAIがもたらす生産性向上などの利点を確保しつつ、非人道兵器の開発や利用に歯止めをかける難題に向き合う責任を負っている。
EUのIT規制 米アップル違反(2024/6/25 京都新聞)
【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)欧州委員会は24日、米アップルのアプリ市場「アップストア」について、IT規制「デジタル市場法(DMA)」に違反しているとの予備的見解を公表した。開発者が、アップストア外で消費者にアプリを提供することを妨げているとみている。欧州委が、3月に適用が始まったDMAへの違反を指摘するのは初めて。
今後、アップルには反論の機会が与えられる。同社は欧州で3月から、自社市場外からもダウンロードを認めていたが、EU側は、対応が不十分だと判断した。違反が最終的に確認されれば、年間売上高の最大10%、繰り返された場合には最大20%の制裁金が科される可能性がある。DMAでは巨大IT企業に自社サービスの優遇を禁じており、欧州委は来年3月までに判断を下す見通し。
欧州委によると、アップルはアプリ開発者に対し、アップストアの外で製品を購入できると消費者に伝える機会を制限。また市場外で製品が売れた場合に開発者に求める手数料も過大だとみており、新たな調査も始めた。
欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策)は「アプリ開発者と消費者は、アップストアに代わる手段を熱望している」と述べ、アップルに対応を求めた。ロイター通信によると、アップルは「開発者や欧州委からの意見に対応し、多くの変更を加えてきた。私たちの計画が法律に従っていると確信している」と説明した。
欧州委は3月、アップルとグーグルの親会社アルファベット、メタ(旧フェイスブック)の米大手3社に対し、DMA違反の疑いで調査を始めたと発表した。
AIデマ 巧妙化(2024/7/17 京都新聞)
総務省の有識者会議が16日、人工知能(AI)の発展で巧妙化するデマへの対策案をまとめた。海外では欧州連合(EU)が法整備に踏み込んだ対策で先行。日本ではIT企業が政府の動きを先回りする形で自主的な対応を急ぐ。
EUでは巨大IT企業に違法コンテンツの排除を義務付ける「デジタルサービス法(DSA)」が2022年に施行された。違反すれば世界的な売上高の最大6%の制裁金を科す厳しい内容だ。
EU欧州委員会は、ガザ情勢に関する偽情報が氾濫したことを受け、同法に基づいて昨年12月から米短文投稿サイトX(旧ツイッター)への正式調査を行うなど、偽情報に厳正な対応を開始。英国でも23年に「オンライン安全法」が成立し、詐欺広告の掲載防止や、違法コンテンツの迅速な削除が義務化された。
日本はEUなどに比べて後手に回るが、中傷投稿や投資詐欺広告などの氾濫を受けて政府内の規制論議が加速。こうした動きを注視するIT各社は、厳しい規制を避けるため自主的な対応に取り組み始めている。
フェイスブックを運営する米IT大手メタは、著名人の成り済まし詐欺広告を検出する技術を開発。規定違反の広告は削除し、広告主のアカウントを無効にして新たな広告を配信できないようにしている。
LINE(ライン)ヤフーは、利用者が「友だち」登録をしている人以外からグループトークに追加された場合に「LINEを悪用した詐欺にご注意ください」との警告を表示。広告主の本人確認強化も「必要に応じて実施している」という。
動画投稿アプリ「TikTOk(ティックトック)」を国内で運営するティックトック日本法人は、著名人の肖像を無断で使用した広告を禁じ、広告審査を3段階で実施。広告を押すと表示されるページの信頼性の確認を配信後も行っている。
新聞協会声明「検索連動AIは著作権侵害」(2024/7/18 京都新聞)
日本新聞社協会は17日、米大手ITのグーグルやマイクロソフトなどによる、インターネット検索と生成人工知能(AI)を組み合わせた「検索連動型生成AIサービス」について、著作権侵害に当たる可能性が高いとする声明を発表した。情報源として記事を無断利用し、記事に類似した回答を表示させることが多いと指摘。米大手ITに対して報道機関の利用承諾を得るよう求めた。
検索連動型AIは記事を不適切に転用や加工するため、事実関係に誤りのある回答をする例があると分析。正確性や信頼性を確保してからサービスを始めるべきだと強調した。政府に対し、著作権法改正など知的財産に関連する法律について、早急な見直しや整備を要請した。
検索連動型AIは、利用者が知りたい事柄を入力して検索すると、AIが複数の関連サイトを参照し、要約などの加工をした文章を表示する。グーグルは昨年から導入を始めた。
声明では、ネットのさまざまな著作物への「道案内」の役割を果たすネット検索に対し、検索連動型AIは「種明かし」であり、全く別のサービスだとした。参 照元の記事の本質的な内容をそのまま表示しており、著作権侵害に当たる事例が多いと強調した。
利用者が参照元のサイトのニュースを閲覧しない「ゼロクリックサーチ」が増え、報道機関に不利益が生じる弊害も指摘した。報道機関の取材活動が痩せ細ると、民主主義や文化に損失をもたらすとして、政府に著作権法などの見直しや整備を求めた。
また検索連動型AIが事実と異なるなど誤情報を生むことに懸念を表明した。AIの誤りであっても、参照元の記事が間違いであるとの印象を持たれてしまい、報道機関の信頼性を傷つける恐れもあるとした。
公正取引委員会が昨秋の報告書で、ニュースサイ卜の入り口となるネット検索の運営会社は、独禁法上の優越的地位にある可能性があると指摘したことに触れ、記事利用許諾を得ないまま検索連動型AIを提供すると、独禁法に抵触する可能性にも言及した。
グーグルの広報担当は取材に対し「生成AIによる検索サービスは、日本の著作権法を含む法令を順守している」とコメントした。
検索連動型生成人工知能(AI)サービスが生成した文章に、参照元の記事の創作的な表現がかなり含まれていた場合、著作権法が従来のインターネット検索を認めてきた「参照元記事の軽微な利用」の範囲を超え、侵害の可能性がある。AIによる検索技術は有用性も高いが、バランスが重要だ。仮に記事への過度なただ乗 りで報道機関が取材活動を維持できなくなれば、AIが参照できる信頼性の高い記事もなくなり、社会全体の損失になりかねない。特に著作権については、報道機関は現行法への違反があると考えるなら、プラットフォーム事業者に対して損害賠償や記事利用差し止めの訴訟を起こせば良いのではないか。法改正など政府を頼るのは、本来その後だろう。またAI事業者側も適正な対価を支払い、報道機関や創作者と積極的に共存する試みはあって良い。
生成人工知能(AI)は日常会話のように質問や指示を入力するだけで、誰でも簡単に回答を得たり自然な文章を作り出せたりする。2022年11月に公開された「チャットGPT」が火付け役となり、個人利用からビジネス業務まで急速に普及した。一方、生成AIによる誤情報の生成は登場当初から問題視され続けている。インターネット検索と連動させた検索連動型生成AIでも誤情報の確認が相次いでおり、社会に深刻な影響を及ぼす恐れがある。
米グーグルの検索連動型AIに「チーズがピザにくっつかない」と入力すると、「ソースに接着剤を混ぜると粘着性が増す」と回答した。今年5月、X(旧ツ イッター)にこんな事例が投稿されて交流サイト(SNS)に拡散した。SNSでは過去にネットに投稿された冗談を引用したとの推測も飛び交い、批判が殺到したグーグルはAIの修正に追われた。
日本新聞協会の声明が指摘しているように、検索連動型AIはネット検索で上位に表示される複数の記事を転用、加工している。参照元の記事の文脈を考慮せず、必要な要素を省略するなどし、事実と異なる要約記事が生成されることもある。利用者にとって不利益があるだけでなく、参照元の信頼も失われてしまう。
生成AIは文章を巧みに扱い、自信たっぷりに回答しているように見えるため、誤情報に説得力を持たせてしまう危険がある。選挙や医療に関する情報や、利用者にとって重要な決定につながる情報をAIに頼り切ってしまうことが危険だとの認識を、社会全体で共有する必要がある。
世界システム障害 収束へ(2024/7/21 京都新聞)
【ニューヨーク共同】世界的な大規模システム障害は、運輸や金融といった基幹インフラに打撃を与えたほか、病院や政府機関にも影響が出て、20日も一部でなお余波が残ったが、混乱は収束へと向かった。原因となったセキュリティーソフトを提供する米IT企業クラウドストライクは「前例のない規模」の復旧作業を急いだ。19日に航空便の欠航があった日本国内の空港では19日、おおむね通常通りの運航に戻った。
障害は米IT大手マイクロソフト(MS)の基本ソフト(OS)ウィンドウズ搭載のシステムで発生。グラウドストライクのソフトの更新プログラムにあった欠陥が原因だった。大規模障害はITサービスを一握りの企業に頼る脆弱性をあらわにした。
26日に開幕するパリ五輪の各国選手団の到着便やユニホームの配送に影響したほか、米国の一部で緊急通報にも影響が出た。19日のニューヨーク株式市場では主要な株価指数が下落し、グラウドストライクの株価は前日比で11%以上急落した。グラウドストライクのソフトは、サイバー攻撃への先端的な対策とされ、各国の名だたる大手企業が採用しており、影響が広がった。米実業家のイーロン・マスク氏は障害発生後、Xに「全てのシステムからグラウドストライクを削除した」と書き込んだ。
米IT企業グラウトストライクのソフトウエアの欠陥が、利用者の多い基本ソフト(OS)ウィンドウズを通じて、世界を瞬く間に混乱に陥れた。各地の航空運航が停止、病院や行政サービスも滞った。史上最大級との指摘もある今回のシステム障害は、世界の大企業・組織が一部のIT企業に依存するデジタル社会の危うさを露呈した。
「顧客、旅行者、障害の影響を受けた全ての人に深くおわびする」。グラウドストライクのジョージ・カーツ最高経営責任者(CEO)は障害発生後の19日朝、米NBCテレビに出演し、やつれた表情で陳謝した。株価は急落、2011年の設立から急成長を遂げた「ソフトウエア界の花形」が失墜した。
障害は日本時間19日午後に始まった。グラウドストライクがセキュリティーソフト「ファルコン」の更新作業を始めた直後、米マイクロソフト(MS)のウィンドウズを搭載したパソコンなどに異常が出始め、画面が青くなり動作しなくなる現象が頻発。航空会社への影響が顕著で、航空情報サイト「フライトアウェア」によると、19日には世界で4万便超が遅延し5千便以上が欠航した。。
要因はサイバー攻撃への防御力を高めるため通常行っている更新作業のプログラムにバグがあったためだ。「1回のアップデートが世界中の多くのウィンドウズシステムをダウンさせた」(MS関係者)
ファルコンはパソコンなどの端末をサイバー攻撃から守る「エンドポイントセキュリティー」と呼ばれる機能を持つ。端末の不審な動作や通信を、グラウトを通じて常時防視し被害を最小限に抑える仕組みだ。
新型コロナウイルスの世界的な流行以降、外部からVPN(仮想専用線)機器を使ってシステムに接続するリモートワークが増えた。この接続の欠陥を狙って、身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」などに感染させるサイバー攻撃の被害が拡大し、端末側でのセキュリティー対策を後押しした。
グラウドストライクはこの波に乗って顧客基盤を拡大、世界の大企業など3万近くか抱えるトップクラスのセキュリティー企業に。顧客側が小数のIT企業への依存を高めたことで障害の規模が一気に拡大した。
サイバー攻撃を防ぐ取り細みが、逆に攻撃を受けたかのような大規模な障害を招く結果になり、米実業家イーロルン・マスク氏はこう皮肉った。「ウイルス対策がウイルスだった」(ニューヨーク、東京共同)
生成AI検索 日本でも(2024/8/17 京都新聞)
【ニューヨーク共同】米グーグルは15日、検索結果を生成人工知能(AI)が要約する新機能「AIオーバービュー」を日本や英国など6力国で順次始めると発表した。検索の利便性の向上が期待されるが、間違った情報の表示や著作権侵害を懸念する声もある。
AIオーバービューは利用者が質問を入力すると、AIが検索結果を要約した回答を作成。例えば「結婚式に出席できない場合のお祝い」と入力すると、相場について「友人や知人の場合は5千円から1万円程度」などと解説した回答が一番上に表示される。引用元のリンクも示され、追加の情報を集めやすくなる。
米国で5月に提供を開始し、今回は日英やインド、インドネシア、メキシコ、ブラジルを追加。各地の言語に対応する。
生成AIを使った検索では「チャットGPT」を手がける米オープンAIが新たな検索サービス「サーチGPT」の試験運用を開始。ソフトバンクと提携して日本でサービスを提供する米新興企業のパープレキシティも利用者を増やしている。
生成AIを巡っては、報道機関などが著作権侵害で関連企業を訴える事例が起きているほか、誤った回答をAIが生成し拡散してしまうケースがあることも課題となっている。
ネット炎上 AIで回避(2024/8/27 京都新聞)
インターネット投稿サイトの「note(ノート)」は人工知能(AI)を使い、ネット上で批判を集める「炎上」につながりかねない記事を公開前に検知し、投稿者に注意を促す機能を年内にも導入する。炎上や誹膀中傷が社会問題となる中、AIでリスクを回避する。法律相談サービスを手がける「弁護士ドットコム」の監修を仰いで開発する。ノートが発表した。
誰かを強く攻撃したり、差別的だったりする記述などをAIが事前に検知する。そのまま投稿しようとすると「攻撃的すぎるかも」「誰かを傷つけていませんか?」といったメッセージを表示し、注意喚起することを検討。将来、こうした仕組みを他のメディア運営会社などに販売することも視野に入れる。
ノートの投稿サイトは個人や企業が記事や写真、漫画を自由に掲載できる。閲覧回数によるランキングや広告を掲載しないのが特徴で、2014年の開設以来4千万件を超える投稿があった。
ノートの津隈和樹note事業本部長は「利用者を守ることはわれわれの重要な責任だ」と強調する。その上で「表現の自由に寄り添うことも重要であり、慎重に進める」と話す。
開発に当たり、弁護士コムが自社サービスを通じて蓄積した法律相談のデータを類型化し、個人情報を除いたものをAIの学習で使う。同社プロフェッショナルテック総研の新志有裕部長は、炎上を起こさせないようにする「未炎」の取り組みが大事だとし「IT企業で連携できることは連携したい」と述べた。
ノートと弁護士コムは、トラブルに巻き込まれた投稿者が無料で相談できる自動対話システム「チャットポット」も整備する方向だ。
AI機械学習ノーベル賞(2024/10/9 京都新聞)
【ストックホルム共同】スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、2024年のノーベル物理学賞を、人の脳の仕組みをまねて人工知能(AI)の機械学習の基礎となる手法を開発した、米プリンストン大のジョン・ホップフィールド教授(91)と、カナダ・トロント大のジェフリー・ピントン教授(76)に授与すると発表した。
両氏の成果を基に発展したAIは、スマートフォンなどの顔認識機能や、翻訳など生活に欠かせない技術となった。医療での画像診断や、宇宙の太陽系外惑星の探索などでも活用されている。一方でAIの高度化により雇用が奪われるとの声は根強い。ディープフェイクと呼ばれる精巧な偽画像の氾濫や、AI兵器への懸念も高まっている。
授賞理由は「人エニューラルネットワーク(神経回路)による機械学習を可能にする基礎的な発見と発明」。ピントン氏は、発表会場からの電話インタビューで「こんなことになると思っていなかった。大変驚いた」と語った。一方で技術が制御不能になることを危惧した。
ホップフィールド氏は1982年、脳の構造をヒントに機械学習の原型となる手法を発表した。ピントン氏は85年これを拡張。AIがより深ぐ学習した上で、新たな答えを生み出す仕組みを提示した。「生成AI」の先行例とされる。
その後のデータ量の増大や、コンピューターの処理能力の向上と相まって、2010年以降、AIは急速に発展した。
機械学習の代表的な手法で、自ら学習を繰り返す「ディープラーニング(深層学習)」では、福島邦彦電気通信大特別栄誉教授(88)が1979年に基本構造を 発表し、大きく貢献。王立科学アカデミーの発表資料でも言及された。授賞式は今年12月10日にスウェーデンで開かれる。賞金1100万ユーロ(約1億5千万円)を2氏で均等に分ける。
人工知能の根本
大阪大大学院生命機能研究科の西本伸志教授(システム神経科学)の話 人工知能(AI)の根本になった人工神経細胞の技術が評価されたと言える。2人の 研究で人間の脳が記憶したり、考えたりするのと同じことのできるモデルが数式によって実現。物体を認識するといった人間が当たり前にやっていることを、機械でもできるということを発見した。研究は1980年代ごろから進められていたが、特に大きな成果は、ジェフリー・ピントン教授による2012年の深層習の技術だろう。これが現在のAIブームにつながった。
機碩学習の中核技術を研究し、チャットGPTなど人間の求めに応じて文章や画像を出力する人工知能(AI)の誕生に大きく貢献したジェフリー・ピントン氏は「AIのゴッドファー・‐ザー」とも呼ばれる。一方、偽の画像や動画が拡散する問題も発生しているため、危険性について警鐘を鳴らし続けている。
「私たちは自分たちより賢いものを手にした経験がない。起こり得る悪い結果、特に制御不能になる脅威を心配しなければならない」。ノーベル物理学賞の発表会見に電話で参加したピントン氏はこう指摘。受賞の驚きと同時に「やってはいけないことをやってしまったとの後悔もある」と複雑な心中を吐露した。
米グーグルの副社長も務め、AI分野の製品開発に関わったが、性能向上によって危険が高まると懸念を抱き、2023年に退社。その後のインタビューでは「悪意 ある人たちに利用されるのを防ぐ手だてが想像できない」とまで語っていた。
物理学賞の選考委員長も発表会見で「急速な発展は私たちの将来に対する懸念も引き起こしている。人類には、この新技術を倫理的に使う責任がある」と言及した。
AI開発へ小型原発電力(2024/10/16 京都新聞)
【ニューヨーク共同】米グーグルは14日、次世代型原発「小型モジュール炉(SMR)」の開発を手がける米企業カイロス・パワーと電力の購入契約を締結したと発表した。人工知能(AI)開発で高まる電力需要に対応するためとしている。米IT大手ではマイクロソフトも原発からの電力供給契約を結んでおり、AI開発の激化とともに電力需要が増大していることが浮き彫りとなった。
米オープンAIが手がける最新の「チャットGPT」など生成AIには膨大なデータ処理が必要とされ、コンピューターを絶えず動かす安定的な電力も欠かせない。
グーグルは2030年ごろから35年にかけて複数のSMRの建設を支援し、計500メガワットの電力供給を可能にする。
また米コンステレーション・エナジーは9月に、ペンシルベニア州スリーマイルアイランド原発1号機を再稼働させ、マイクロソフトに電力を供給する契約を締結した。1号機は1979年に炉心溶融事故を起こした2号機の隣で運転を続け、2019年に運転を停止した。
AIウイルス作成「簡単」(2024/10/25 京都新聞)
対話型生成人工知能(AI)を使い、身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」を作成したとして、不正指令電磁的記録作成などの罪に問われた無職林琉輝被告(25)が、24日までに東京拘置所で共同通信の接見取材に応じた。無料の生成AIを使い「6時間ほどで作った。簡単だった」と証言した。検察側は懲役4年を求刑。25日に東京地裁で判決が言い渡される。
生成AIは通常、犯罪に悪用されるような指示には回答しない。だが被告は複数の生成AIを利用し、回答を組み合わせウイルスを作成したと説明しており、対策の難しさが浮き彫りになった。
SIMカード詐取などの「闇バイト」をしていた被告は、より楽に稼げる方法を探す中、トラブルになった知人からランサムウェアを送られた。以前から生成AIに興味があり「ウイルス」を作って身代金を要求することを思いついた」と話す。
専門知識がなかったため、インターネットで知り合った知人らから助言をもらいながら、複数の生成AIを無料で使えるサイトを利用し、既存のものをベースに独自の生成AIを作ったという。「暗号化するコード(ウイルスの設計図)を作って」「暗号資産(仮想通貨)を要求するテキストを作って」と、生成AIが違法と判断しないような質問を複数して回答を組み合わせた。作業に費やしたのは6時間ほどだった。
被告は自分のパソコンにウイルスを送り、作動するかどうかを確認している途中、別事件で逮捕された。その後に警察官からパソコンが使用不能になっていると聞かされ、ウイルスが完成したと知ったという。
「軽い気持ちで作ったもので罪に問われてしまった。生成AIを悪用するのはやめた方が良い」と語った。
詳しいIT知識がなくても対話型生成人工知能(AI)を悪用すれば、誰でもコンピューターウイルスを作成できる可能性があることが明らかになづた。開発が進むAI技術は業務の効率化や生産性向上に役立つ一方で、犯罪に悪用される恐れがある。専門家は「生成AIは使う人次第で危険性をもたらす」と警鐘を鳴らしている。
共同通信の接見取材に応じた無職林琉輝被告が、身代金要求型ウイルスの作成に使ったとしているサイトは、チャットGPTなど複数の生成AIを選択して使うことができる。米企業が運営しており日本語版もある。
通常、ウイルスを作成する指示を出しても違法な内容の回答はしないよう制限がかかる。しかし被告は複数の質問に分けてウイルスの設計図に当たるコードを作成したと証言しており、制限をくぐり抜ける「脱獄」と呼ばれる手法が用いられたとみられる。
サイバーセキュリティーに詳しいSBテクノロジーの辻伸弘さんは「回答を拒まれないような質問にし、違法性がない回答を組み合わせて作成するのはよくある手法だ」と指摘する。
元人工知能学会会長の松原仁・京都橘大教授(知能情報学)は「AIは便利で人間を幸せにしてくれる面と、偽情報やウイルスも作れてしまう危険性も持ち合わせている。使う人次第で危険性や不幸な結果をもたらす」と話している。
【教育】研究の在り方変えるAI(2024/10/27 京都新聞)
今月発表された2024年のノーベル賞は、自然科学3賞のうち物理学賞と化学賞を人工知能(AI)が関連する研究業績が占め、研究分野におけるAIの影響力の大きさがあらためて示された。AIを材料設計や生物の分布予測に用いる京都の研究者は「AIは研究の在り方を大きく変える」などとツールとしての有用性を評価する一方で、活用の在り方を巡っては危険性も十分に認識すぺきだと指摘する。(鈴木雅人、川辺晋矢)
8日発表の物理学賞ば.AIの機械学習の基礎となる神経回路を模した「ニューラルネットワーク」の手法を開発した、米プリンストン大のジョン・ホップフィールド教授とカナダ・トロント大のジェフリー・ピントン教授が選ばれた。翌9日の化学賞も、タンパク質の立体構造を予測するAI「アルファフォールド」を開発したグーグル傘下ディープマインド最高経営責任者(CEO)デミス・ハサビス氏ら3氏が発表された。
アルファフォールドは、タンパク質の立体構造に関する大量のデータを学習し、未知の構造を高精度に予測するモデルだ。立体構造はタンパク質の性質に深く関わる。AIによる成果は既に医薬品などの開発に活用され、公開からわずか4年での授賞につながった。
そのアルファフォールドの「半導体版」とも言えるAI予測モデルの開発に取り組むのが、京都大工学研究科の田辺克明教授らの研究クループだ。
新たに半導体材料を開発する上で、どのくらいの電圧をかければ電流が流れ始めるかを知ることは、どんな用途に適しているかを見極める最も重要な手がかりになる。ただ、化合物を構成する元素の組み合わせやその比率は無数で、実験で試せる数に限りがある。未知の材料の性質を予測して候補を絞りこめれば、新規開発が飛躍的に進む。
田辺教授らが9月に米国際誌に発表したモデルは、複数のニューラルネットワークを組み合わせて予測精度を高めた「アンサンブル学習」を半導体分野で初めて導入した。最も予測精度が高いとされてきたモデルよりも、電圧の実測値との誤差を5・7%縮め、世界最高の精度を実現した。既存のモデルを組み合わせたため計算負荷も軽く、ノートパソコンでも数時間で計算が可能という。
「半導体材料を一つ作るにも高温で結晶化したり、デバイス作製のため微細加工したりし時間も労力もかかっていた。2〜3年後には製造現場の一部で実用化も始まるのではないか」と田辺教授はみる。
また、京大化学研究所などのチームは、宇宙の人工衛星が収得した海の色などの海洋データから、そこに生息するプランクトンの種類を群集レベルで予測するAIモデルを開発した。ミクロな生物の動きをマクロな視点から把握する新たな手法で、昨年9月に国際学術雑誌にオンライン公開された。
海洋プランクトンは、植物プランクトンが光合成によって二酸化炭素を取り込むなど、地球上の炭素の動向を考えるうえで大きな存在で、季節による変化などが研究者の注目を集めている。
同研究所の緒方博之教授らは、過去の海洋調査で得られたデータからプランクトンや原生生物の組成に基づく6種類の群集に分類。そのうえで海の色のほか、海色から導き出されるクロロフィル(葉緑素)濃度など計17項目を手がかりに、この6種類のどれに分類できるかを衛星データから予測するモデルをつくった。
このモデルを用いて過去20年のプランクトンの分布を地球規模で算出したところ、現場観測で既に知られている季節変動とパターンが一致したという。将来的に同様の手法でウイルスや細菌のタイプも予測できると見込む。緒方教授は「学術船による現場調査を高頻度かつ広範囲に実施することは現実的ではない。AIを活用した成果は漁業などに幅広く応用できる可能性がある」と話している。
AIによる機械学習などを活用した研究手法は近年、幅広い研究分野で急速に普及しているが、万能ではない。緒方教授は「機械学習はあくまでツール。AIを活用するにも仮説や問題設定が最も重要で、現段階では科学者が研究の根幹を考える必要がある」と語り、研究目的に沿ったAIの柔軟な使い方が重要だと強調する。
AIの活用を巡っては物理学賞の受賞が発表されたピントン氏自身が、「起こり得る悪い結果、特に制御不能になる脅威を心配しなければならない」とかねてから警鐘を鳴らしてきた。物理学賞の選考委員会も会見で「人類にはこの新技術を倫理的に使う責任がある」とAIの発展にはらむ危険性 に言及した。
田辺教授もこの懸念に同調する。既に存在する個体と同じ遺伝情報を持つ「クローン人間」に対し、倫理的な懸念から規制が進む生命科学分野を引き合いに出しながら、道徳的に守るべきところを考えるリテラシー(知識や判|断力)や、技術の進化に伴う危険性に対応する姿勢が、急迎に発展し た情報分野にはまだ希溥だ」と指摘。「ノーベル賞を機にAIへの関心はさらに高まるはずで、合わせて危険性についても世界の専門家や政府が考えるぎっかけとすべきだ」と強調する。