文部科学省は、家庭の経済的困窮が原因で児童生徒の学力に課題があるとみている全国の公立小中学校約千校を対象とした集中支援事業の検討を始めた。教員の増員やスクールカウンセラーの配置、学力向上のためのアドバイザー派遣が主な内容で、2020年度までの課題解消を目指し、17年度予算の概算要求に必要経費を盛り込む方針。 文科省によると、経済的に困窮している小中学生の家庭に、学用品代や給食費などを補助する就学援助制度の13年度の対象者は約151万5千人で、6人に1人の割合。 文科省は家庭の困窮と子どもの学力に相関関係があるとみており、就学援助を受けている児童生徒の割合が20%以上を占め、かつ昨年の全国学力テストで@児童生徒の半数以上が国語、算数・数学、理科のいずれかで全国の下位25%に入っているA全科目の平均正答率が全国平均より5ポイント以上低い―のいずれかに該当する約千校を支援対象とした。文科省幹部は「貧困の連鎖を断ち切るためにも、学力向上をサポートしたい」と話した。 |
3月に検定合格した高校教科書のうち地理歴史と公民の計32点中20点で、教科書会社が、安全保障関連法と、選挙権年齢を18歳以上に引き下げた改正公選法がそれぞれ成立したとの記述追加を申請し、文部科学省が認めたことが28日、分かった。両法が検定申請後に 成立したため、各社が合格後に申請していた。これらの教科書は来春から使われる。 安保関連法を盛り込んだのは、日本史A3点、現代社会10点、政治・経済2点の計15点。第一学習社の政治・経済は「安全保障関連 法が制定され、自衛隊の海外派遣や米軍などへの後方支援に対する制約が緩和された」と記述した。 |
文部科学省が8月に、朝鮮学校への補助金に関して公益性や効果を検討するよう都道府県に通知を出したことを受け、京都府内の二 つの市民団体が26日、府と京都市に対して支援の継続などを求める要望書を提出した。 文科省の通知は、朝鮮総連が朝鮮学校の人事などに影響を及ぼしているとの認誠を示し、補助金交付について検討を求める内容。「補助金の減額・廃止など差別を誘発する」との指摘も出ていた。 要望したのは「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋」と「京都府・京都市に有効なへイトスピーチ対策の推進を求める会」。要望書では文科省の通知を「不当な干渉」とし、府と市に補助金交付の継続と充実を求めている。 府への要望後、京都市上京区の府庁で会見した両団体のメンバーは「通知は学校現場に混乱や動揺をもたらした」「補助金が止めら れるような事態になれば、へイトスピーチを行う排外主義団体を勢いづかせることになる」などと訴えた。 府と市はいずれも取材に対し、「補助金交付は適正」とし、交付を継続する考えを示した。 |
英語や音楽、体育などの教科を専門に教える専科教員を公立中学校に増員配置し、近くの複数の公立小学校でも指導させる制度を、文部科学省が検討していることが23日、同省への取材で分かった。教員には、複数校への兼務発令をする。小学校では全教科を学級担任が教えるケースが多いが、2020年度から教科化が予定される英語などで、専門性の高い授業を展開するのが狙い。 公立小中学校の教職員定数は、児童生徒数や学級数で決まる「基礎定数」と、いじめなど学校の課題に応じて政策的に配分される「加配定数」からなり、文科省は制度実現のため、加配枠の新設を目指す。教職員の減員を求める財務省の反発が予想されるが、17年度の概算要求に盛り込む方針だ。加配定数は毎年の予算に応じて人数が変動し、複数年にまたがる自治体の教員配置計画に取り入れにくい側面がある。文科省は、計画を立てやすくするため、新たな加配枠では数年間の単位で一定人数を確保する仕組みにしたいとして、17年度の要求規模を検討する。 新たな加配枠を使った教育施策は自治体側にも提案してもらい、文科省が増員配置する自治体を選ぶ。施策としては、専科教員の兼務のほかに、プログラミングや防災など、先進的な取り組みを想定。数r 凧の検証で効果があると判断すれば、ほかの自治体に広げるとしている。 ![]() |
大学生協京都事業連合(京都市左京区)は京都や滋賀、奈良の大学生に実施した生活実態調査の結果をまとめた。政治に関心を持ち、勉強や研究に大学生活の重きを置く姿が浮かび上がった。同連合は「先行きの見えない世相を反映し、政治に関心を持ち勉学に励む真面目な学生が増えているようだ」としている。 調査は2015年10〜11月、京都大や滋賀大、同志社大など3府県の15大学で行い、3132人から回答があった。国内外の政治動向について尋ねた質問には、64・7%が「関心がある」と回答、13年夏の参院選後の調査から1・4ポイント増えた。「関心がない」は32・9%で3・4ポイント減少した。今夏の参院選へ「投票に行く」と答えたのは72・6%だった。同連合は「安保関連法をめぐる議論や18歳以上に選挙権を認める公職選挙法の改正など、若者を取り巻く政治環境の変動を反映したのでは」と分析する。 大学生活の重点に関する質問では「勉強や研究第一」という答えが27・8%でトップ。読書時間が1日に「全くない」と答えたのは45・8%で12年から11・3ポイント増えた。一方、1日の勉強時間は306・1分と同年から21・9ポイント増加。勉強方法の変遷を示唆する。 自転車の交通事故が問題となる中、学生が入学後に自転車事故に遭遇した割合も初めて調べた。歩行者との接触や自ら転倒するな ど、事故に遭ったのは17・1%で、全国平均より2・9ポイント高かった。同連合は「道幅の狭い京都を生活場所にする学生の多さが背景にある」とみている。 |
京都府は19日、教育行政の指針となる教育振興に関する大綱を発表した。すべての子どもが夢を持ち、安心して学べる環境をつくるため、知事と教育委員会が一体となって取り組む理念を明記。質の高い学力の確保や貧困対策、いじめへの対応、文化財保護などの政策課題を列挙した。 基本方針は3本の柱で構成。まず子どもが変化の激しい社会を生き抜く力として、コミュニケーション能力や勤労観、学力、規範意識、クローバル社会に対応した教養などを育むことを目標に掲げた。 安心して学べる環境づくりでは、経済的に厳しい子どもの支援やいじめの早期発見、薬物乱用防止、不登校対策、地域との連携、交通安全対策や防災対策を盛り込んだ。 文化やスポーツ、生涯学習の振興では、京都ならではの文化財の保護や活用、伝統文化の継承、トップアスリートの育成やスポーツ施設の整備、生涯学習施設の整備を打ち出した。 昨年4月改正の地方教育行政法で教育行政における首長の権限が強化され、教育や文化に関する総合的な施策の大綱を定めることが盛り込まれた。このため、同5月から山田啓二知事や府教育委員でつくる総合教育会議で内容を検討してきた。 ![]() |
1日付で就任した京都教育大の細川友秀学長(65)が19日、京都市伏見区の同大学で記者会見を開き、「教員になりたいと思う学生をさらに増やす」と抱負を語った。 同大学は、本年度から6年間の第3期中期目標・中期計画において、学部卒業生と大学院教育学研究科修了生の教員就職率を、現状の6割合から7割以上に引き上げる目標を掲げている。細川学長は「学生が教育現場を体験する方法を工夫したい」と説明した。 また文部科学省が、教員養成系の国立大と地方の私立大など、国公私立の枠を超えた大学再編を検討していることについて「現実的とは思えない」と慎重姿勢を示した。京都市内の私立7大学と協力し、教員養成に特化した専門職大学院を運営している実績を挙げた上で、「さらに私立大と統合を進めることは考えにくい」と述べた。 細川学長は京都大理学部卒。京都教育大助教授を経て、1999年に同大学教授、2011年から副学長を務めた。専門は免疫学。 ![]() |
小学6年と中学3年の全員を対象にした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が19日、一斉に行われた。2007年度に学年全員を対象としたテストとして43年ぶりに復活し、今年で10年目。相次ぐ地震の影響を受け、今回は熊本県の全小中学校で実施を見送った。 このほか、福岡、大分、宮崎の3県では児童生徒の安全を考慮し、実施可否の判断を市町村教育委員会に委ねた。宮崎県の4町村の中学7校は18日に中止を決めた。 14日時点の参加予定は国公私立計3万76校の小6約108万人、中3約110万7千人だった。(共同通信) 19日に実施された文部科学省の全国学力テストは、過去に正答率が低く、課題と指摘された分野から多く出題された。学校生活などで向き合いやすい課題を取り上げ、解決の手だてを考えさせる問いもあった。主な出題の狙いは次の通り。 授業や遠足など、学校生活からの出題が多かった。本やグラフなどの資料を目的に応じて読み、それを基に自分の考えを示させる問題が目立った。 A問題の設問5は、遠足の行き先の公園案内図と、広場での飲食とボーレ使用の可否が表で示されたパンフレットが題材。図と表を関連付けて読み、「ボール遊びができて、お弁当が食べられる」などの希望に最も合う広場を五つの選択肢から選べるかをみた。 設問8では「りんご」「あさって」をローマ字で、「hyaku」をひらがなで書かせた。ローマ字は2009年度調査以来の出題。 B問題の設問2は「早寝早起き活動に取り組む学級の児童が書いた報告文と、休日の就寝時間が遅い児童の割合を示したグラフを踏まえ、課題と解決方法を文字数などの条件付きで書かせた。グラフなどから自分の考えをまとめ、文章の構成を考えることを求めた。 設問3では、パン職人の仕事内容やインタビューの資料を読んだ児童が、特に心に残ったことを紹介するメモの作成場面を想定。キーワードを踏まえて資料の内容を理解し、自分の考えを明確にしながら読むことができるかをみた。 過去の学力テストで正答率の低かった分野で、日常生活に絡めて出題したほか、分数の掛け算や図形などの問題が出た。 A問題の設問2では、分数の掛け算で約分した結果を求めさせたほか、設問3で二つの数字の大小を表す不等号を書かせ、数量の理解力をみた。いずれも初めての出題。 設問6は、4枚の二等辺三角形の定規を使ってできる図形を三つ選ばせるという、複薮回答の問題だった。 割合の関係を正しく捉えているかをみるため、設問9では、バスの定員を基にした時の乗客数の割合をどのように表すかを聞いた。 B問題の設問3は「学習発表会のメダル作り」をテーマにした。用意されたりボンの長さが足りるかとの問いに、1人分の長さや子どもの人数の関係から三つの計算式を示し、それぞれが何に着目した式なのかを考えさせた。 設問4では、二つの学校で月ごとに貸し出した本の冊数をまとめた表を提示し、1人当たりの貸出冊数を求めるには、ほかにどんな条件が必要なのかを質問。日常生活の中で生じた問題の解決に向け、必要な情報を収集し、適切な判断ができるかを確認した。 A問題では、現在の中3が小6の時に受けた2013年度の全国学力テストで課題があった分野からの出題が多かった。 13年度の小6国語では、スピーチの表現を工夫する問題の正答率が43・5%。今回も設問1で絵本の内容を紹介するスピーチを扱った問題が出た。話し手が聞き手の立場をどう想定しているかを尋ねており、話の中心部分と付加部分との関係に注意し、「ページの構成」に絵本の面白さがあると主張していることを見抜く必要がある。 文章を推敲(すいこう)する設問4では、一つの文を二つの文に分けた理由を尋ねた。異なる内容が混在していることを理解しなければならす、小6時の同様問題の正答率は23・6%。また、資料集の奥付が初めて題材となった。 B問題では設問3で小説と図鑑の文章を並べた出題があった。両者を併せて読み、目的に応じて必要な情報を読み取ることができるかどうか、それを根拠に自分の考えを書く力があるかをみた。 地上と宇宙を結ぶ「宇宙エレベーター」の雑誌記事を題材にした設問2では、記事の内容から課題を導き出し、その解決のために必要な本の探し方を尋ね、課題解決力を問うた。 A問題は過去のテストで課題があった分野からの出題が目立ち、B問題は必要な情報を適切に選んで数学的な表現で説明させる問題が中心となった。 A問題では、1次関数や確率、数量の関係を文字式や不等式で表す問題など、過去のテストで正答率が70%未満だった分野から多数出題された。 円柱と円すいの体積の関係は、過去のテストで約40〜50%の正答率。設問5で底面と高さが同じ円柱と円すいを並べ、円柱の体積だけを示し、円すいの体積を求めさせた。 反比例も過去のテストで正答率が低い。設問9で反比例の関係を説明した文章を選ばせたり、グラフから反比例の式を書かせたりした。 B問題の設問2では、関数の問題を解くのに必要な条件が不足している場面で、加えるべき条件は何か、その理由を説明できるかをみた。 設問5は、ボウリング場が、貸し出し用の靴を全て買い替えようとしているとの設定で、靴のサイズ別の貸し出し回数を表したグラフを提示。最も多く貸し出されたサイズの回数や、貸し出されたサイズの平均値を確認した上で、平均値のサイズの靴を最も多く買うのはなぜ適切でないのかを説明させた。 |
文部科学省は18日、人工知能(AI)やビッグデータ解析などのITの専門人材育成を加速させるため、2020年度以降実施される次期学習指導要領で、プログラミング教育を小中学校に取り入れ、高校では必修化する方針を固めた。数理・情報系大学の学部・大学院の新設や定員拡充も促し、小学校から大学院までを通じてIT教育の強化を図る。 19日の政府の産業競争力会議で馳浩文科相が提案する。 プログラミング教育は、小学校では体験学習を中心とし、中学校ではホームページ作成やロボット製作などの課題学習として取り入れる。高校では次期指導要領で必修化される見通しの情報の新科目で導入する考え。 ただ、情報の免許を持つ教員は少なく、文科省はIT企業などと連携した教材開発や教員研修、指導者派遣を検討する。 大学では数理・情報系だけでなく、文系学部でも情報系の授業を必修化し、医学や農学など専門分野と情報分野を融合した教育を実 施できる体制を整備する。滋賀大がビッグデータを扱うデータサイエンス学部を、名古屋大が情報学部を17年度に新設予定で、他の大学でも改組が進みそうだ。 また、データサイエンスや統計などを学んだ博士課程修了者に民間企業への就職を促す一方、国際的な研究拠点も整備し、研究者の 育成にも力を入れるとしている。 ![]() |
障害のある子どもの学習や生活を支援しようと、ITや教育関連の企業団体と東大が連携して、情報通信技術(ICT)を学校に提供し、活用法を指導するプログラムを18日始めた。参加を希望する学校を募集し、相談も受け付けている。 今回のプログラムは、読み書きが苦手な子どもがデジタル教材で学習したり、身体障害のある子どもがタブレット型パソコンでテストを受けたりするのを想定している。 支援が必要な児童・生徒の人数や状況などを書いて電子メールで応募する。宛先のアドレスはwic―consortium@seminar.jp(共同通信) |
国連児童基金(ユニセフ)は13日、先進工業国中心の経済協力開発機構(OECD)や欧州連合(EU)に加盟する41力国の子どもがいる世帯の所得の格差を数値化し、小ささを順位付けした調査報告書を発表した。日本は34位で、下から8番目だった。米国や韓国より格差が大きかった。 子どもの貧困に詳しい首都大学東京の阿部彩教授は「日本は子どもの格差が大きい国の一つ。日本と良く比較される米国でも日本より貧困の度合いは浅い」と指摘している。 報告書によると、最も格差が小さかったのはノルウェーで、アイスランド、フィンランドと続いた。北欧諸国が上位を占めており、社会保障の充実が背景にあるとみられる。韓国は15位で、米国は30位、最下位はルーマニアだった。 ユニセフは各国が公表している所得調査を基に0〜17歳までの子どもを持つ世帯の所得の中央値と、下から10%に当たる所得を比較して格差を数値化した。 自民党の赤枝恒雄衆院議員(比例東京)が12日に開かれた超党派議員連盟の会合で「高校や大学は自分の責任で行けばいい」「仕方なく親に行けと言われ進学しても駄目で、女の子はキャバクラに行く」などと発言していたことが13日分かった。出席者が明らかにした。 これに対し公明党の石田祝稔政調会長は13日の記者会見で「(発言が)事実なら納得いく話ではない」と述べた。民進党の安住淳国対委員長は党会合で「看過できない」と強調し、国会で追及する考えを示した。 議連は子どもの貧困対策推進が目的。出席者によると、赤枝氏は義務教育などについて持論を展開したという。 ![]() |
文部科学省が、公立小中学校1学級当たりの上限児童生徒数を定めた義務教育標準法を改正し、現在40人としている小2を、2017年度から小1と同じ35人に引き下げる検討を始めたことが13日、同省への取材で分かった。国として低学年での少人数指導を着実にする。財務省が提案し、文科省が受け入れた。 既に全国の公立小の小2学級は99%以上が35人以下。70%は少子化の影響だが、それ以外は学校の課題に応じて増員配置される「加配定数」という枠組みの教員を充てて実現している。加配定数は毎年予算折衝が必要だが、今後は児童生徒数や学級数で決まる「基礎定数」の枠組みになるため、自治体は長期的な学級編成計画が立てやすくなる。, 公立小中学校の教職員数は基礎定数と加配定数からなり、多様化する課題に対応するため加配定数の増員を求める文科省と、厳しい財政状況で削減したい財務省が対立してきた。基礎定数は少子化で毎年減っており、財務省には、加配定数の枠を基礎定数に移すことで、今後の教員数全体の削減を加速させたい思惑もありそうだち 16年度の加配定数のうち、少人数学級に充てられたのは1万1千人。法改正で、このうち小2の35人学級実施のために配置された人数分が、基礎定数に振り替えられることになる。 民主党政権下の義務教育標準法改正で、11年度から小1の1学級上限児童数は35人となり、12年度からは加配定数を使って小2でも35人学級を実施。文科省は中3までの35人学級化も目指したが、進んでいない。 財務省は、発達障害の児童生徒らが通常学級に在籍しながら一部の授業は別で受ける「通級指導」の担当教員や、現在は国が補助金を出して配置を進めているスク,ルカウンセラーなども、将来的に基礎定数に含めることを提案。文科省は具体的な定数算定方法を検討することにしている。 公立小中学校の1学級当たりの上限を定めている義務教育標準法に基づき、学級数や児童生徒数に応じて算出される「基礎定数」と、学校現場の課題に応じて政策的に配分される「加配定数」がある。2016年度は基礎定数が約62万7千人で、加配定数は6万4733人。加配定数の内訳は、少人数・習熟度別指導などに4万1057人(うち少人数学級実施に1万1千人)、いじめや不登校への対応に8767人、通級指導など特別支援教育に6326人などが配分されている。 ![]() |
文部科学省が、国公私立の枠組みを超えての統合を視野に入れた大学再編を検討していることが11日、同省関係者への取材で分かった。秋にも再編の在り方を中教審に諮問する。 大学進学率が頭打ちの中、今後18歳人口の急速な減少が見込まれ、主に地方で定員割れが続く私立大の経営は一層厳しくなる見通し。一方で地方創生を担う人材育成も求められており、文科省は、私立だけでなく国公立も巻き込んだ再編で、地方大学の教育力や財務基盤を強化したい考えだ。 主に教員養成系の国立大と地方の私立大の扱いが焦点になるとみられる。(共同通信) ここ数年120万人前後で推移していた18歳人口が今後減少に転じ、本格的な大学淘汰(とうた)時代が始まるとされる中、文部科学省が大学再編に本腰を入れることとなった。ただ、地方大学の生き残りには再編だけでなく、魅力的な教育をどう提供するかも重要で、地域との連携が鍵となりそうだ。 文科省によると2013年度、進学による人口流入が流出を上回ったのは東京都など10都府県だけ。37道県は流出超過で、進学を機に多くの若者が地方を離れ、就職で求人の多い都市部に集中する傾向がうかがえる。 「地方創生において地方の高等教育機関の役割は極めて大きい」。馳浩文科相は3月の記者会見で強調し、地方の私立大同士の統 合による教育力向上を検討すべきだとの持論を展開した。 文科省は中教審への諮問に当たり、国公立と私立との統合も排除しない考えだが、それだけで地方大学が都市部に対抗できる競争力を持つのは難しいとの指摘もある。 既に多くの地方国立大は、地域と連携した学部の新設や改組に取り組んでいる。私立大の中には、公立化して存続を図るケースもあるが、私立大の数を考えると多数派にはなるとは考えにくい。 文科省幹部は、私立大の選択肢として、職業教育に特化した新たな高等教育機関への衣替えを挙げる。19年度の創設を目指して国が検討中の新たな高等教育機関は、自治体や産業界と組んだ即戦力の育成を掲げている。 幹部は「例えば農業なら、小売業や流通業者、地元農協など地元と連携してマーケティングや経営を学ぶ。競争力のある農家を育てれ は、雇用を生み出し、若者が地元に残るようになるのではないか」と期待している。 京都府福知山市は22日、4月に開学する福知山公立大の2016年度の全入学志願者数が1669人だったと発表した。募集定員に対する志願倍率は33・38倍に上った。 入試は成美大公立化のため私学形式であり、一般やAO・推薦、センター利用などで実施。青森、佐賀、沖縄3県を除く全国44都道府県から、地域経営学科(定員40人)に1431人、医療福祉マネジメント学科(同10人)に238人が志願した。最多は兵庫県の213人で京都府135人、愛知県127人と続いた。 市大学政策課は「当初は400人の志願者を想定していたが、非常に多い数字。公立化や大学の理念が共感を得た」としている。 |
少子化により小学校を17校から7校に再編した京都府南丹市で、より良い学校教育を地域から考える動きが出てきた。美山町では一部の住民が昨年、プロジェクト委員会を組織。デンマークの事例も参考に、豊かな自然を生かした「美山式教育」を模索し始めた。市も、住民が学校運営に関わる「コミュニティースクール」制度の導入に向け、準備を進める。各地域の特色を生かした学校づくりが活発化しそうだ。 「美山らしい教育って何だろう」「自然の中で生きる力を育てることかな」。統廃合で誕生した美山小の教育を考えようと、同町で2日に開かれた勉強会。住民や保護者約30人が海外の教育事例を学び、理想の学校について意見を交わした。 同町では旧5校が1校に統廃合され、過疎や少子化への危機感が強い。こうした課題に向き合う取り組みとして着目したのが「教育の充実」だった。 「美山小で独自性やアピール力の高い教育を行い、『通いたい』と思える学校を作れば、さらなる少子化を食い止め、移住者も増やせるかもしれない」。中島隆章さん(52)は、「子どもが世界一幸せな町」を掲げるデンマーク・ヘルシンゲ地域の教育を参考にしようと2月に渡航し、現地在住の造形作家高田ケラー有子氏の案内で教育現場を視察した。 勉強会では、中島さんが現地で取材した映像を流し、森林の中で毎日遊んで社会性や体力を身につける「森のようちえん」や、授業で取り組む課題を各児童に決めさせて学習意欲を引き出す小学校など、独特の教育方法を紹介した。 参加者からは「子どもの自主性を重んじる教育が斬新」「自然を生かす授業が美山でもできるのでは」などの声が上がった。一方、「教育方針について、地域でどう合意形成するのか」「授業内容を変えるのは難しい。文部科学省の特例制度を利用できないか」など課題も整理された。 古北真里さん(37)は「魅力的な美山らしい学校を作ることが大事。良い教育を移住や地域おこしにもつなげ、統廃合のピンチをチャンスに変えたい」と将来を見据える。 一方、市教育委員会も小学校再編を契機に地域と学校の関係が希薄にならないよう、双方の協力でより魅力的な学校を作る「コミュニティースクール」制度の導入準備を市全域で進めている。学校、保護者、住民の3者による協議会を各校に設置し、学校の運営方針を地域ぐるみで決める文科省の制度だ。 既に準備委員会を設置した園部、八木町で17年度から本格始動する見通しで、日吉、美山町でも進める。市教委は「住民と学校との絆が深まるだけでなく、地域の特色を生かした学校づくりにつながる」とメリットを強調する。 小学校を、子どもたちの成長や地域づくりにどう生かすのか。住民の積極的な関与や議論が欠かせない。 ![]() |
自民、公明両党は5日、特定の人種や民族への差別をあおるへイトスピーチ(憎悪表現)対策を協議する作業部会(座長・平沢勝栄衆院議員)を開き「不当な差別的言.動は許されないことを宣言する」と明記した法案を了承した。議員立法として提出し、今国会での成立を目指す。 差別的言動のない社会に向けた国と自治体の責務や、国民の努力義務も盛り込まれた。憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れ があるとして、禁止規定や罰則を設けない「理念法」と位置付ける。平沢座長は「ヘイトスピーチを許さないというメッセージを出せた意味は大きい」と述べた。 へイトスピーチ対策をめぐっては、 旧民主、社民両党などが昨年5月に「人種等を理由とする不当な行為」を禁止する法案を参院に共同提出。自民党などから「規制の幅が広すぎる」との指摘が出ていた。 法案は日本以外の出身者や子孫に「差別意識を助長する目的で、公然と生命や身体、名誉、財産に危害を加える旨を告知する」こと などを不当な差別的言動と定義。相談体制の整備や、教育、啓発活動の充実を国や自治体に求めた。国民は「差別的言動のない社会の 実現に寄与するよう努めなければならない」とした。 野党案は、実態調査のため有識者で構成される審議会を内閣府に設置するとしているが、与党案には盛り込まれなかった。 与党が差別を許さないと宣言する法案を作ったことは評価する。ただ、日本は国連の自由権規約によりへイトスピーチを違法とする義務を負っているのに明記していないのは問題だ。違法でなければ、警察がデモを止めたり、自治体が施設の利用を制限したりすることをちゅ うちょし、実効性は乏しい。国や自治体の取り組みによる効果を検証するため、定期的な実態調査も盛り込むべきだ。 ![]() |
全国的に若手教員の大量採用が続く中、京都府内でも幼い子どもを育てながら働く女性教員が増えている。学校現場では長時間労働が常態化しており、短時間勤務などの支援制度は利用しにくいのが実態で、辞職を考える教員もいる。1日の女性活躍推進法施行を受け、教育委員会もさらなる支援策を検討中で、専門家も「子どもに不利益になる」と懸念し、教員の増員などの対策を国に求めている。 府内の小学校で担任学級を持つ女性教諭は昨春、育児休業から復帰し、フルタイムで働きながら長女(2)を育てる。保育園の送迎で学校を午後5時半に出る必要があり、授業準備や採点のため午前3時には起床する。それでも十分に仕事を担えない。復帰後に授かった2人目を流産したことなどから、しばらく子育て中心の生活にしようと管理職に短時間勤務を打診したが「教員数が少なと無理」と言われた。教諭は「仕事も育児もどちらも中途半端」と声を落とす。 2歳の長男がいる別の女性教諭は、学級を受け持たない教員として昨春復帰した。だが、その後に同僚が長期休養に入り、急きょ担任に。時には帰宅後も保護者対応を迫られ、休日出勤も強いられる。「誰かに相談する時間すらない」と辞職も考えているという。 団塊世代の退職で、府教委と京都市教委では、2004年度ごろから年間300人程度の大量採用を始めた。いま育児世代が急増し、14年度の府教委の育休取得者は243人と10年前の2倍を超え、市教委の産休取得者も183人と3倍超に上る。 両教委とも子どもが3歳になるまで育休の取得を認め、子どもの病気や行事で使える有給制度も設けているが、育休後の女性教員の多くが望む短時間勤務の取得は伸びない。14年度は府教委で24人、市教委で16人にとどまった。短時間勤務の際には専科や補助教員として働くが 、配置校が限られ、「現場の実態に合ってない」(市教組)ためだ。 文部科学省が15年に公表した教員の勤務時間調査では、平均在校時間は小学校が11時間35分、中学校が12時間超で、所定の7時間45分を大幅に上回り、持ち帰り仕事も1時間半を超えた。経済協力開発機構(OECD)の調査では中学教員の勤務時間は参加国で最も長く、教員数の裏付けとなる教育予算も少ない。 教員養成に関わる西岡正子佛教大教授(成人教育)は「結婚直後に赴任した学校で、『どうせすぐに出産する』と嫌がられた教え子もいる。教育現場に余裕がなさ過ぎる。人も予算も増やさないと立ちゆかなくなり、結果的に子どもに跳ね返る」と指摘する。 女性活躍推進法が1日に施行されたこともあり、府教委と市教委は、女性教員の仕事と家庭の両立を支援する対策を模索している。 府教委は推進法の行動計画を昨年度に策定し、男性教員による育休取得の促進や、育休取得に対する職場での理解拡大などを盛り込んだ。府教委は「根本解決のため、国に教員増を求めつつ、できることから取り組みたい」とする。 市教委は1月、今春に育休から復帰する予定の教員向けに研修会を初めて開き、14年度に導入したシステムの使い方や育児中に利用できる制度を説明した。「今後も充実させたい」としている。 ![]() |
京都府、京都市の両教育委員会は31日、4月1日付で発令する教職員4296人の人事異動を発表した。内訳は府教委が168人減の2408人、市教委が同105人増の1893人だった。 府教委の異動規模は、大量採用が一段落したことなどから、過去10年間で2番目に小さかった。女性教職員を積極的に登用し、管理職に占める女性の割合は19・3%と過去最高となった。 1 退職教員の経験や専門性を生かすため、聾学校の校長を再任用した。国際教育に力を入れる専門学料を2017年度に設置予定の鳥羽高には、副校長を複数配置。舞鶴こども療青センターの移転に伴い、舞鶴支援学校北吸分校を行永分校に統合した。須知高では立地する東丹波町との地域連携を図るため、地元中学の教頭を副校長に起用した。 市教委では、京都工学院高の開校や、東山総合支援学校の本校化などで異動規模が前年度を上回った。引き続き、管理職の若手登用を積極的に進め、2年連続で39歳の教頭を任命した。 . 英語教管推進のために、外国語指導助手(ALT)経験のある北米出身の男性2人を新規採用し、中・高に配置した。小中一貫の推進と総合育成支援教育の充実のため、小・中間と小中・総合支援学校間で計62人の校種間異動を行った。 京都市教育委員会は1日、事務局の人事異動を発令した。規模は134人と例年並み。 英語教育の推進のために、担当課長と係長のポストを学校指導課に新設、係長は専任で業務にあたる。塔南高を改編する普通科系 高校や定時制単独高の創設に向け、同課内に高校改革担当を新たに置いた。 2017年度に教職員の給与負担が府から市に委譲されるため、システム導入を担当する教職員人事課と学校事務支援室の人員を3年連続で増やした。 また、こどもみらい館の新館長に絵本作家の永田萠さん(67)を任命した。 |
教科書会社12社が検定中の教科書を外部に見せていた問題で、文部科学省は31日、閲覧した公立小中学校の教員らの22%に当たる延べ1009人がその後、資料を作成する調査員などとして採択に関与したとの調査結果を公表した。関与者がいた市町村教育委員会が、閲覧した教科書に採択を変更したケースが99件あった。文科省は「自分が閲覧した教科書を強く推薦したという記録などはなく、いずれも採択に影響はなかった」とする一方、採択の公正性確保を求める通知を出した。 1月公表の教科書会社の自己点検では5千人以上に閲覧させ、約4千人に謝礼を支払ったとしていた。今回、各都道府県教委が確認 し、公立校で閲覧したのは28日までの集計で延べ4525人、うち謝礼があったのは延べ3507人となった。謝礼を拒否した人数の計上の有無などで、文科省は各教委が個別に公表している人数と異なるケースがあるとしている。 公立校で採択に関わった1009人(うち謝礼ありが延べ818人)の内訳は、調査員が延べ992人(同延べ809人)、教育長・教育委員6人(同0人) 、複数の市町村で教科書を選ぶ採択地区協議会の委員11人(同9人)。都道府県別では、京都6人(同3人)、滋賀12人(同11人)などだった。採択を変更したのは99件(同89件)で、閲覧した教科書の採択を継続したケースは300件以上あった。国私立校では計170人以上が閲覧していた。 干渉を防ぐため、検定中の教科書を外部に見せることは教科書検定規則の実施細則で禁じられている。 文科省は通知で、今回の問題が採択の公正性や透明性に疑念を抱かせたとして、教科書会社の編集に協力したり、意見を聞かれたりした教員らが調査員となるのは適当でないと指摘。調査員になる際は、教科書会社との関係を申告させることなどを求めた。 検定中の教科書を見た教員ら延べ約千人がその後、採択に関与したことが31日、分かった。不正は確認されなかったが、文部科学 省は採択の公正性を徹底するため、教科書会社と教員との「適切な関係を保つ」よう通知。事実上規制を厳しくする方針に、会社や教員からは「教科書作成に現場の声が届く機会が少なくなる」と不安が漏れる。 「教科書作りの上でマイナスだ。質の向上という観点で、もう少し自由にやらせてほしい」。通知に、ある教科書会社の編集者は戸惑いを口にした。 問題発覚後、学校側の対応に変化があるという。「学校に入れてもらえないこともある。現場が求めるものを形にしたいが、この状況 で良い教科書ができるのか不安だ」 東京都の公立中の30代男性教諭は「通知の内容は理解できる」としつつ、「教科書会社も教員も、子どものために分かりやすいもの をというのは一緒。厳しく縛って現場が萎縮するのは、誰にとっても不幸だ」と嘆く。 調査員の経験がある岡山県の公立小の40代男樫教諭は「現場の声を反映させるのは当たり前。情報交換の場は重要なのに、自主規制の動きも出るのでは」と心配した。 ![]() |