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  • 「主権者教育「介入つながる」.20
  • 「通級指導教室」増 100校に.27
  • 6月27日 市教委 「通級指導教室」増 100校に

     発達障害などで学習や生活上の支障がある小中学生を対象にした「通級指導教室」が京都市で増えている。本年度で計100校に達し、設置率は小中ともに全国平均の2倍を超える。今後もニーズの高まりが予想され、市教育委員会は「児童生徒に必要な支援ができるよう拡大していきたい」としている。

     通級指導教室は言語障害や学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの特性がある児童生徒が、通常の学級で学びながら通う。基本的に教員と1対1で、週数回の授業を行う。

     市は1994年度から、言語や聴覚障害の「ことばときこえの教室」として始め、2006年度からはLDなど発達障害を対象とする教室を開いている。

     本年度は小中の計8校で教室が新設され、小学校は80校、中学校は20校となった。昨年度の調査によると設置率は小学校45・7%(全国22・2%)、中学校23・3%(同8・5%)と高い。市教委は、94年度の開始当初から力を入れてきたことが全国平均を上回っている要因とみている。

     市内で教室に通う児童生徒は、最新の統計で1190人(昨年5月現在)。2013年から419人増えている。専門教員の配置が追いつかず、待機状態の児童生徒が出ているのが現状で、対応が急がれる。高校では本年度から全国的に導入されている。

     市教委総合育成支援課は「重要課題として通級指導教室を増やしたい。教員の専門性を高め、幼稚園から高校まで切れ目のない支援をしていく」としている。


    「ことばと教育」という課題は、ひょっとして教育における永遠の課題ではないだろうか?おそらく言語学的あるいは心理学的な側面からはそう見えるだろう。つまり言葉は教えられる事以上にコミュニティーにおける相互の合意形成の課題なのだとはいえるのではないだろうか。そうした観点から考えれば、「1対1で、週数回の授業」で子どもは何を獲得するのだろうか?同じに指導者の側は何を獲得するのだろうか。そうした問題意識の上にはじめて「通級指導」の意義が見えてくる。でないと、インクルーシヴを目指すはずの障害を持つ子の教育は、ますますエクスクルージョン教育へと導かれてしまう。


    6月20日 城陽市議会が批判 「主権者教育「介入つながる」>

     京都府の城陽市議6人を授業に招いた府立西城陽高の主権者教育を巡り、教育長ら市幹部が府教育委員会や同高に問い合わせを行った問題で、市議会議会活性化推進会議が19日、調査報告書をまとめた。市教育長の行動を「主権者教育への介入につながる」と批判した。一方、奥田敏晴市長は同日、記者会見を行い「(市幹部の)問い合わせは圧力に当たらない」との見解を述べた。

     報告書は、教育長が主権者教育に対する十分な認識を持たず、授業内容に関する市議の否定的な意見を踏まえて府教委に問い合わせたとして「大きく失望する」とした。一方、西城陽高に対して「今後も先進的かつ積極的な主権者教育の展開」を期待した。

     記者会見した奥田市長は、市の顧問弁護士の聞き取り調査に同高校長が「圧力がかかったと考えたことはない」と回答したことを踏まえ、「西城陽高が萎縮している事実はない」と述べ、府教委や同高への問い合わせは「情報交換だ」と強調した。


    市長を含めた行政側の対応はおよそ教育的とは思えない。成人年齢の引き下げなどの大きな社会変化を全く理解できてない対応との批判は当然といわなければならない。しかし問題は行政側にだけ在るのではないだろう、議会・議員の側も「主権者教育」と自らの政治的な「中立」をどう捉えるのかと言う問題を債権とする機会を逃してはならない。活性化推進会議の報告書はこの問題を検討するための必読文献。


    6月15日  教員負担新技術で軽減

     多くの小中学校教員が「過労死ライン」を超えて働くなど、先生の過剰な多忙さが問題となる中、最新技術を取り入れて働き方を変えようとする動きが出てきている。先端的な試みをしている教育現場をのぞいた。

     テスト時間特有の緊張感ある静けさ。しかし、答案用紙を鉛筆が走る音は聞こえてこない。生徒は、机上のタブレットやノートパソコンのタッチパネルに指で器用に解答を書き込んでいる。

     多くの生徒がこれらの端末を所有し、全教室にWi‐Fiを完備するなどICT((情報通信技術)の環境が充実している東京都杉並区の文化学園大杉並中学・高校。4月から始業前の小テストに、高校入試の模擬テストで知られる企業「進学研究会」が販売する「タブレット解答システム」を導入した。教師が作成したテストを同社がシステムに取り込み、生徒は端末上で解答。採点も請け負い、昼休みまでに結果を学校に戻す。

     同校の小島浩司教務部長は「200〜300枚採点すると授業1〜2コマ分の時間が要る。導入で浮いた時間で、放課後に効果的な補習ができるなど、生徒のフォローに時間がかけられる」と手応えを感じている。

     一方、生徒用の端末がなくても効率的に採点できる商品も売れ行き好調だ。マークシートを開発・販売する「スキャネット」のソフト「デジらく採点」は、スキャナーで紙の答案を読み取り、パソコン上で採点できる。

     ソフトウエアは無料で、得点の自動集計はもちろん、設問ごとに全生徒分を一括して採点できる機能も。7月からは、記号問題を人工知能(AI)が自動的に採点するよう改良される予定だ。

     一昨年に導入した茨城県土浦市にある常総学院高校の教員の一人は、これまで定期テストことに休日を平均2・5日返上して行っていた採点がテスト当日で終わるようになったと喜ぶ。休日が、年12・6日も“増え”という。

     経済協力開発機構(OECD)の調査では、教員が採点や添削に費やす時間は、同僚との対話や生徒の教育相談より大きな割合を占めている。

     中教審で教員の働き方改革の特別部会委員を務める教育研究家の妹尾昌俊さんは、生徒の弱点や授業の浸透度をより把握できるという手作業の意義は認めつつも、「採点自体は外部に頼んで、分析と授業準備への反映は先生がやるというように、AIやICTを活用して見直しができる」と新技術の効果を期待する。


    仕事がビルド&ビルドに

     文部科学省が2016年度に行った「教員勤務実態調査」では、小学校教員の33・5%、中学校教員の57・7%が「過労死ライン」とされる月80時間を超えて残業しているのが明らかになった。

     なぜ先生は忙しいのか? 教育研究家の妹尾昌俊さんは、学校が担う役割の拡大が背景にあると指摘する。「スクラップ・アンド・ビルドではなく、ピルド・アンド・ビルドになっている」

     少ない教員数で幅広い活動に一層きめ細かい対応を求められる上、善意で部活動や宿題などに平日の勤務時間外や休日をつぶしているのが現状だ。さらに外国語数青やキャリア教育、プログラミング教育といった負荷が新しく加わつてくる。

     生徒指導や安全管理の一環で、給食や掃除、昼休みなどの時間帯の見守りも求められるほか、学校では前例や伝統が重視されがちで、見直しは簡単ではない。

     これらの積み重ねが長時間労働を招き、@教員が心身ともに疲れ、病気になるA授業準備や自己研さんの時間が減るB教師が不人気職になり、教員の質の低下につながる―などの弊害が生じているという。

     妹尾さんは「休憩時間が少ないなど、労働の密度も問題視されるべきだ。先生がよかれと思ってやっていても、結果として教育の質が落ちては、子どもたちのためにならない」と訴える。頑張ってしまいがちな先生たちの働き方改革は急務だ。


    採点の負担は大きい。小学校では給食中に「早食い」して採点するというのは常識らしい。しかし、AI技術によって効率化することで「早食い」は治るのか?むしろ数的な操作が先行して見えなくなってしまうものはないのだろうか?技術の導入よりも人の増員(定数改善)をベースに考える必要がある。
    もうひとつ、教職が不人気で質が低下するとの議論。確かに最近の新聞紙面に教員の不祥事(性的問題・窃盗など)が多く見えるように思える。「質の低下」として捉える事も可能だが、人事管理に問題はないだろうか?かつての職場文化をベースとした「子どものため」論が時代にマッチしなくなってきているとの考え方が必要にも思える。


    6月6日 【取材ノートから】 国挙げ仕組みづくりを

     5月末に本紙山城版で連載「ともに暮らす〜国を超えて」を始めた。在留外国人数が昨年末、256万人と過去最多となる中、地域の実情や共生への鍵を探るのが狙いだ。第1部は「学び」をテーマに、取材班が学校や日本語教室を訪れた。学習者の意欲とは裏腹に、指導や支援の態勢は十分でない。政府は働き手不足を背景に、外国人の受け入れ拡大を進めようとしている。支援関係者の熱意や善意に依存せず、場当たり的でもない日本語教育の仕組みづくりを、国を挙げて進める時に来ている。

     「学校はとても楽しい」と話すのは、鳥羽高定時制(京都市南区)の1年パッデャ・アリャル・ディパックさん(16))=城陽市平川。昨春ネパールから城陽市で働く両親の下にやって来た。日本語で知っていたのは「ありがとう」だけ。祖国で義務教育は未修了だったが、日本では「学齢超過」となり、行政から就学情報はなかった。

     日本語教室を運営する市国際交流協会を訪れたことで道が開ける。日本語の学習を始めたほか、協会職員らが市教育委員会に掛け合い、4カ月後の昨年11月、地元の中学3年に編入。今春には目標の鳥羽高定時制に合格した。協会の大久保雅由事務局長は「今回は本人がたまたま国際交流協会に来たので存在を把握できた。通訳を探すのも一苦労で、一度に複数人だったらどうなっていたか分からない」 と薄氷の対応を振り返る。

     学校でのマンパワー不足も顕著だ。中東出身の4人がいる南山城小(南山城村)は加配がなく、地元教委が日本語指導教員を配置。八幡小(八幡市)の日本語教室は7ヵ国15人が学ぶ中、指導者1人が複数の授業を同時にこなす。

     文部科学省によると、公立小中高校などで日本語指導が必要な児童生徒数は4万3947人(2016年度)と、10年前から約1万7千人増加。京都府内は442人(同)で、うち4人に1人は指導者不在などで特別な指導を受けられていない。日常生活が送れているので、学習言語が不十分でも日本語教育は不要と判断する例もあり、「実際は数字よりもっと多いはず」(府国際センター)。

     大人を主な対象とする地域の日本語教室も貴重な学び場だ。空白地だった久御山町では増える技能実習生の要望を愛け、住民が講師や場所探しに奔走し今春開講。運営費は講師と受講生が賄う。府内18の日本語教室でつくる「京都にほんごRings」の渡部真理代表は「教室は学習以外に、よりどころの役割も大きいが、数が足りていない。講師の大半はボランティアで、善意で成り立っている」。

     課題が山積する中、5月末に超党派の国会議員連盟が「日本語教育推進基本法」(仮称)の要綱を了承。日本語教育の推進について、国や地方自治体の責務を初めて明記した。日本語教育に詳しい浜田麻里・京都教育大教授は「もっと地方のことに踏み込まないと、自治体が行うべき施策の道筋が見えない」と注文。「外国人を『労働力』としてみるだけでは孤立化を招き、問題も起きる。日本語を身に付け社会参画できる多文化共生社会は、国際化の中で強みになる」と指摘する。

     連載では今後、労働や生活に目を向ける。多様で暮らしやすい社会へ、記者として、一市民として考え続けたい。(堤冬樹)


    政府「骨太方針」 外国人の就労拡大 単純労働で新在留資格

     人手不足に対応するため、外国人の積極活用を打ち出した。現在は原則認めていない単純労働分野で、就労目的の在留資格を新設し、高度な専門知識を持つ人材に限った小規模な受け入れから、拡大路線にかじを切る。

     資格の新設は、最長5年間しか滞在できない技能実習生が引き続き日本で働けるようにする狙いがある。日本人の雇用を奪わないように「国内人材を確保しても、なお外国人材の受け入れが必要」な分野に限ると明記。具体的には農業、建議、宿泊、介護、造船の5分野を想定した。

     求められる技能は各省庁が定める試験で確認する。原則として、日本語能力試験で「日常会話が可能」とされる「N4レベル」を条件とした。技能実習の修了者は、技能と日本語の試験がどちらも免除される。

     移民受け入れ政策につながるとの懸念が強いため「在留期間の上限は通算5年」「家族の帯同は認めない」と記載。 一方で、共生社会の実現に向け「生活環境の整備が重要だ」と掲げた。言葉や暮らしの面での支援が今後の課題になりそうだ。


    移民受け入れの是非の議論の前にすでに現実が負い越しているのは明らか。とりわけ子どもの教育に関わる問題は深刻なのだが大方がボランティアに頼るということになっている。また、日常言語と教育言語が異なるという事実は、教育の実勢にとっても大きな課題であり、英語教育においても認識されなければならないだろう。