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  • 被告襲撃の契機語らず.26
  • 構造改革で急増 不適切運営も.28
  • 城陽の小中、電話に自動音声.28
  • 基準一部改正へ.29
  • 7月29日 高校教科書検定 基準一部改正へ

     文部科学省は29日までに、高校教科書の検定基準を一部改正する案を公表した。2022年度の新入生から高校の次期学習指導要領が実施されることを受け、地理歴史や公民で多面的な考察につながる記載を求めたほか、英語は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を重視した事項を加えた。

     30日に意見公募を開始し、文科相が今秋に改正基準を告示。主に22年度の高1が使用する教科書の検定から適用する。

     次期学習指導要領では、主権者として必要な資質を育む公民の新科目「公共」を設け、近現代史を日本史と世界史の垣根なく教える「歴史総合」も新設する。いずれも知識の習得にとどまらず、生徒同士で議論し考察する内容となっている。

     検定基準の改正案では公民と地理歴史で「事象の取り上げ方に不適切なところがないことや、多面的・多角的に考えられるよう配慮してあること」とした。学説が定まらない歴史上の出来事や現代的な課題の教え方が一面的にならないことを念頭に置く。


    「教え方が一面的にならない」とはだれに向けての言葉なのだろうか。2国間で懸案となる領土問題の記述では日本政府の立場を強調する方針を示しているのだがこれを「一面的」ととらえるのは「自虐史観」なのだろうか。双方の立場を歴史的な背景も含めて検討できる資料を提供することこそが「主権者として必要な資質を育む」教育の根っこだと思うが。


    7月28日 働き方改革 城陽の小中、電話に自動音声

     教員の長時間労働の是正に向け、城陽市教育委員は8月1日から、市内の全15小中学校で、業務時間外の電話受け付けを自動音声にし、翌日以降にかけ直してもらう対応を始める。

     教職員が電話に出る時間を、小学校は平日の午前8時〜午後5時、中学校は午前8時〜午後6時とする。他の時間帯は自動音声で、かけ直しを促す。気象災害時や、校外のイベントに教員が児童・生徒を引率している時などは、教職員の対応時間を延ばす。

     時間外の問い合わせや相談は、市教委や、市教育相談室(平日午前8時半〜午後8時)が対応し、必要に応じて学校長らに連絡する。

     京都府内の府立高では保護者からの欠席連絡をメールにしたり、業務時間外の応答を留守番電話にしたりしている学校がある。府内 の自治体では、与謝野町が6月1日から自動音声を導入した。町教委によると現時点で保護者や住民から、不便や対応の遅れを指摘する意見はないという。

     城陽市教委は混乱を避けるため夏休み中の8月に試行し、保護者や市民の意見があれば9月以降の本格実施で時間帯などを見直す。「教員が子どもと向き合う本来の業務に注力できるよう理解をお願いしたい」としている。

     府教委の昨年の調査によると、京都市以外の公立校で「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業に相当する業務をした教員は、小学校で5割、中学で7割を超え、長時間労働が常態化している実態が明らかになった。


    市教委年末年始に学校閉鎖日

     働き過ぎが問題となっている教職員の休日取得を促進しようと、京都市教育委員会は、年末年始に学校閉鎖日を設けて原則として2日以上の有給休暇を取らせるように市立の学校と幼稚園に通知した。

     夏季や冬季の子どもらの長期休み中も教職員らは学校で業務を行っているが、閉鎖日では部活動や校内会議をはじめ全ての業務を行 わない。

     年末年始の休みは12月29日〜来年1月3日に定められているが、前後の12月27、28日と1月4日に2日以上の閉鎖日を設置するように求めている。

     夏休み期間の閉鎖日は2002年度から実施している。市教委は「働き方改革の一環として休暇の取得を推進し、教職員の健康を守りたい」としている。


    OECD 日本の教員は長時間勤務

     経済協力開発機構(OECD)は27日、日本の教育政策への評価結果を公表した。日本の子どもが国際調査で高成績を収めている点を成果とした一方、教員の勤務時間が長く、研修などの機会確保を困難にしているとして業務負担の緩和が必要だと指摘した。

     2013年のOECD調査によると、日本の中学校教員の1週間の勤務時間は、参加した34の国・地域の平均(38・3時間)を大きく上回る53・9時間で最長だった。授業時間は平均より短かったが、生徒指導を含めたそれ以外の業務時間が長かった。

     OECDは生徒指導なども含めた包括的な教育の実施が日本の長所だとしたが、「その代償として長時間労働がある。学校と地域の連携関係を構築し、改善していく改革の実施を目指すべきだ」とした。

     乳幼児期や高等教育に対する国の財政支援が限られていることも課題として挙げたほか、社会人の学び直しといった生涯教育の充実も提言した。


    働き方改革の中での具体策として「電話受け付けの自動音声化」や「冬休みの学校閉鎖日」も結構な事だが、そのバックヤードでどんな働き方が行われているのかについて目を配らないと、数字だけの「働き方改革」に終わってしまうという懸念がある。実は教員の最も問題なのは「勤務間インターバル」が健康を阻害するようなものになっていないかということだ。ストレスチェックと併せて「勤務間インターバル」の確保を含めた「働き方改革」が必要。


    7月28日 通信制高校 構造改革で急増 不適切運営も

     通信制高校は構造改革特別区城溝施行で「株式会社立」の学校が認められるようになったことなどから、2000年代中盤ごろから急増した。

     00年度に全国で113だった校数は10年後には209に。その後も昨年度まで毎年、増え続けている。

     一方、規制緩和以降に不適切な学校運営や指導を行う事案が相次ぎ発覚した。15年度、三重県の通信制高校で就学支援金の不正受給事件が判明。生徒がテーマパークで買った土産物のお釣り計算をすれば数学を履修したとみなすなど、不適切な教育も明らかになった。

     その後の文部科学省の調査で、全国はの広域通信制高校で教職員ではない施設職員が、本来行えない添削指導や面接指導などに携わっていた疑いがあることが分かった。16年度、同省は通信制高校の運営改善や所管自治体の監督指導のためのガイドラインを策定した。

     通信制高校に詳しい教育系出版社「学びリンク」(東京都)の山口教雄社長(59)は「通信制高校への目は厳し,くなってきており、通信制 は襟を正すことが必要だ」と指摘。その上で、「通信制高校は学力ランキングや施設の見た目の立派さ、学校規模の大小で選ぶものではな い。学校が適正に運営されているか、自分に合っているか。生徒や保護者は説明会などでしっかり情報を得て、自分の気持ちに素直になつて選んでほしい」と強調する。


    本紙夕刊1面の「土曜フォーカス2018」では、「通新制高校 夢の花咲く場所」として、「自分らしく成長できる」との学生の声を掲載している。全体的にポジティブな表現で多様な学びの場のひとつとの印象を受ける。ただ、教育における規制緩和が投げかける問題点も見落としてはならないとの視点で、一部を取り上げた。


    7月26日 相模原事件 被告襲撃の契機語らず

     19人が犠牲になった相模原市の障害者施設殺傷事件は26日で発生から2年。殺人罪などで起訴された元職員植松聖被告(28)は昨年11月以降、共同通信の接見取材に5回応じ、「あれしか方法はなかった」と自己正当化する一方、襲撃を決意したきっかけは「うまく説明できない」として語らなかった。なぜ事件が起きたのか問い続ける遺族らは、やり場のない思いを抱えたままだ。

     被告は起訴前の精神鑑定で、自分を特別な存在と思い込む自己愛性パーソナリティー障害と診断され、弁護側の請求で2度目の精神鑑定中。8月にも終了予定で、その後、数回の公判前整理手続きで争点を絞る。裁判員裁判の初公判は来年になる見通し。被害者参加制度の利用を希望する遺族もいる。

     植松被告は接見の中で、事件の舞台となった津久井やまゆり園で2012年末に働き始めた当初は「入所者が楽しく過どせるよう協力したい」との気持ちだったが、次第に「障害者は生きていくのに金がかかる」と考えるようになったと説明。意思疎通が困難な障害者への殺意を抱くようになったのは「社会からいなくなった方が良いと気付いたから」としたが、襲撃に関しては、刑務所に入るのが嫌でちゅうちょもあったとし、それでも計画の実行に踏み切ったきっかけを問われると「大事なことではない。どうでもいい」とかわした。

     事件当日は、抵抗されにくい女性の居住棟を狙って侵入し「通報されなかったら、次の施設に行こうと思っていた」と明かした。地元の警察署には「私がやりました」と出頭。「何人刺したか全く分からなかった」と話した。今後、公判で刑事責任能力が争点となる可能性もあるが、植松被告は「責任能力は争いたくない」としている。

     遺族の一人は取材に「障害者は不幸をもたらすような存在ではない。社会が被告にどれほどの罰を与えても許すことはできない」と語った。やまゆり園は今年5月に建て替え工事が始まり、18年度中に事件があった居住棟が撤去される。


    家族奪われ、癒えぬ悲しみ

     相模原殺傷事件の犠牲者遺族は2年がたった今も大切な家族を奪われた深い悲しみを抱えている。「寂しい。いてくれるだけで良かった」と涙をぬぐう姉。「生きている意味がないと思っている家族は一つもない。許せない」と憤る弟。多くは口を閉ざしたままだが、少しずつ思いを語り始めている。

     「津久井やまゆり園」の居住棟2階で殺害された男性=当時(67)=の姉(77)は3月、墓参りをした。「なんでこんなところに入っちやったんだろうね」。そう心の中で語りかけ、線香と花を供えた。

     セミの声を聞くと、虫捕りに夢中だった少年時代の弟を思い出す。風呂のまき割りもよく手伝ってくれた力持ち。「話すことが苦手だったが、いるだけでにぎやかだつた」と振り返る。

     「あの子が死んじゃったなんて…」と思い出すたびに涙があふれる。植松聖被告には「弟はどうしてこんなことをしたのか」と怒りをにじませた。

     1階で命を奪われた女性=当時(65)=の弟は昨年、弁護士を通じて「知的障害のハンディはあったが、かけがえのない家族。ストレッチャーの遺体袋を思い出すだけで胸が締め付けられる」とのコメントを出した。

     気が強いところは父親似、優しいところは母親似。一緒に電車やバスで出かけた際、お年寄りや子連れの人を見つけると、離れた場所にいても手を引いて席を譲ってあげたという。「母がしていたことを覚えていたのだろう」と記した。

     植松被告には「子どものこる障害のせいでいじめられていた姉が、このような形で命を奪われかわいそうでならない。絶対に許すことはできない」と、憤りをあらわにした。


    相模原事件にかかわるいろいろな文章で「内なる優生思想」ということばがかなり頻繁に出てくる。「内なる〇〇」に原因を求めるのは、自立した市民の思考としては全く正しいし、それによって「事件」を一定合理的に解釈する事が出きる。しかし、そのことが植松被告に了解される言葉ではないように思われてならない。公判が開かれるなかで徐々に解明されるだろうが、「市民社会の論理」だけから事件を断罪することはできないのではないだろうか。


    7月25日 日朝友好京都ネット 政府に国交回復提言

     京都府内の研究者や地方議員らでつくる「日朝友好京都ネット」は24日、日本と北朝鮮の早期の国交回復などを求める日本政府への 提言を発表した。

     提言は6項目。4月の南北首脳会談と6月の米朝首脳会談による情勢の変化を「日朝間の懸案解決の好機」ととらえ、日本政府に「友好と対話・交流」路線をとるよう求めている。2002年の日朝平壌宣言を履行し、日本人位致問題は国交正常化の過程で取り扱うべきと主張している。

     京都市上京区の府庁でメンバーが記者会見した。顧問の有馬頼底・臨済宗相国寺派管長は「(北朝鮮は)東洋の文化を大切にしており、悪い国ではない。まずは国交回復が先だ」と述べた。副会長の安井勉京都市議は「状況は大きく進展している。国同士がきちんと話し合うべきだ」と話した。提言は近く政府に送る。


    「提言」要旨は次の通り。

    1 日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)に対する従来の「敵対と制裁」路線に決別し、「友好と対話・交流」路線へ転換すべきである。

    2 日本政府は、日朝平壌宣言を誠実に履行すべきである。

    3 日本政府は、従来の在日コリアン政策を転換し、直ちに共生施策を実行すべきである。

    4 日本政府は、朝鮮半島の主人公は朝鮮民主主義人民共和国・大韓民国の双方であるとの大原則を確認し、板門店宣言を尊重して両者との友好・交流を促進すべきである。

    5 日本政府は、日朝間の諸問題は北東アジア・世界の平和と安定に深くかかわっていることを認識し、米・中・ロ各国との関係においても友好促進・平和創出の役割を果たすよう外交方針を確立し、努力すべきである。

    6 私たちは、昨年衆議院選挙直後の「明らかに北朝鮮のおかげで勝てた」などという閣僚の発言を決して忘れることはできない。市民には、とりわけ「北朝鮮」問題について、日本政府の虚偽宣伝に騙されない見識と主体性が必要となっている。日朝友好京都ネットはそれに資する役割を担っていく。



    7月25日 外国人労働政策 共生社会の構築課題

     政府は24日、新たな在留資格の創設による外国人労働者の受け入れ拡大への調整を本格化させた。来年4月に運用を始める予定の新資格は、これまで認めていなかった単純労働分野での就労を可能とするもので、高度な専門人材に限っていた受け入れ政策の転換点となる。政府は数十万人規模の受け入れを見込むと同時に、在留管理を強化する方針で、法務省入国管理局を改編し「入国管理庁」などの官庁を設置する検討に入った。新資格創設は、少子高齢化や深刻な人手不足が背景にある。政府は今後、対象となる業種などを検討し、秋の臨時国会で入管難民法改正案を提出する方針だが、外国人の権利擁護や日本人の雇用への影響について議論が出そうだ。

     政府が総合的な外国人受け入れ拡大策の検討に着手した。労働力不足が深刻な日本経済は、もはや外国人の助けなくして成り立たない。現実を後追いする形で急ごしらえの制度設計に乗り出すが、非人道的な一部職場の是正に加え、外国人が地域に溶け込める共生社 会の構築が課題となる。

     新たな在留資格を巡る政府の議論は初日の24日から前のめりだった。関係閣僚に「受け入れ業種の選定など準備を速やかに進めてほしい」と指示した安倍晋三首相の意を受け、菅義偉官房長官は来年4月の運用開始を目指すと表明。上川陽子法相は「入国管理庁のような外局」を設ける新官庁構想に踏み込んだ。

     背景には「外国人への期待と関「心がこれまでになく高まっている」(日本商工会議所)産業界の切迫した事情がある。

     人手不足を穴埋めする外国人労働者は年々増え、2017年10月末時点で約128万人が働く。ファミリーマートでは従業員約20万人の5%を外国人が占め「留学生抜きには考えられない」(担当者)のが実態だ。

     20年の東京五輪に向け工事量が来年ピークを迎える建設業も「政府の政策はタイムリーだ」(日本建設業連合会の山内隆司会長)と歓迎。政府は人手不足対策を成長戦略の重要課題に掲げるものの打てる手は限られ、外国人の受け入れ拡大を数少ない目玉施策に据えようとの思惑がにじむ。

     これまで外国人の大きな受け皿になってきたのが、1993年に創設された外国人技能実習制度だ。企業や農家で学んだ技術を母国で役立ててもらうのが本来の目的だが「安価な労働力」と見なされてきた面は否定できない。

     逃げられないようパスポートを取り上げ、違法な時間外労働を強いるといった不正も横行。厚生労働省によると、昨年監督指導した6千カ所近くの事業所のうち、約7割で違法残業といった法令違反があった。

     外国人の労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「技能実習制度には問題が多く、外国人労働者をまともに受け入れる制度を作るべきだった。その意味で(新在留資格は)一歩前進だ」と評価しつつ、問題点も指摘する。

     在留期間の上限を通算で原則5年とし、家族の帯同を認めない点を挙げ「5年も家族と離れて暮らすのは人道上許されない。『労働力は欲しいが、生身の労働者は要らない』というのが国の本音ではないか」と話す。

     外国人を低賃金で働かせる悪弊が続けば、その余波は日本の労働者にも及ぶ。厚労省幹部は「不当に安い賃金は外国人本人の不利益になるだけでなく、日本人の雇用を奪うことにもなりかねない」と不安を口にする。

     政府は24日の閣僚会議で「外国人との共生社会の実現」を打ち出した。日本語教育の充実や住宅確保などの支援策を年内にまとめ、自治体に積極的な取り組みを促す。

     総務省によると、今年4月時点で外国人住民向けの指針や計画を策定している都道府県や市町村は46%にとどまった。住民に占める外国人の割合は地域差が大きく、対応には温度差もある。

     政府が外国人受け入れの司令塔として創設の検討に入った新官庁が、これら山積する課題にどこまで横断的に対応できるか現時点では未知数だ。


    【解説】「移民」との違い明確説明を

     外国人の受け入れ拡大は国の在り方が問われる大きな政策転換となる。政府は今回の新たな在留資格について「移民政策とは異なる」と強調するが、将来的には日本での定住を容認する検討もしている。本当に必要な制度なら曖昧な説明で批判を回避するのではなく、真正面から国民的議論を喚起すべきだ。

     新資格には、安倍晋三首相の指示に基づき、「在留期間の上限は5年」「家族帯同は認めない」との条件を付けた。移民政策に反対する保守派の批判をかわすため、予防線を張った形といえる。

     一方で、6月に閣議決定した骨太方針は「より高い専門性が認められた者については、在留期間の上限を付さず、家族帯同を認める措置を検討する」と明記。長期で働ける人材を求める経済界にも配慮し、将来的な定住に可能性を残す玉虫色の文章に仕上げた。

     法務省は移民政策の定義を「一定規模の外国人を受け入れることで国家を維持する政策だ」と説明する。国内人口の減少に伴う人手不足を外国人で補おうとする今回の新資格は「移民」と、どう違うのか。政府が法改正を進めるためには、明確な説明が求められる。


    日本の労働政策が「人の命(過労死)」よりも成長戦略を中心に進められていることは先の国会でも明らか。この外国人労働者の受け入れ拡大も直に「成長戦略」の成果を求めるものでしかない。必要なことは外国人がいかに労働者としてまた地域の住民(もちろん子どもの就学を含めて)として日本人との共生社会を作れるかということだろう。外国人労働者によって日本人の職場が奪われる(低賃金に甘んじること)と偏見を含めた誤解が蔓延すれば、新たな「ヘイトスピーチ・ヘイトクライム」を導きかねない。当然、学校での問題にもなるだろうし、対策を地方自治体にのみ丸投げすることも無責任の謗りを免れない。


    7月24日 過労死防止大綱 勤務間インターバルを促進

     政府は24日、過労死や過労自殺防止対策のために国が進める方針を定めた「過労死防止大綱」の改定版を閣議決定した。終業から次の始業まで一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル」制度の普及促進に向け、数値目標を盛り込むことなどが柱。大綱は2015年に策定され、今回が初めての改定。

     改定版は勤務間インターバル制度を「働く者が生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要」と評価。一方、17年の厚生労働省調査によると、導入済みの企業がわずか1・4%にとどまっており、20年までに労働者30人以上の企業での導入割合を10%以上とするとした。


    「勤務間インターバル」よいう考え方を導入した事は評価できるが、「20年、30人以上の企業、10%」という数値目標は何も言わなかったことに等しい。働き方改革で超過勤務を月「100時間未満」としたことと同様に、働く側に立ったものではない。安倍首相の言葉の魔術か言葉の軽さ故のなせる技か。


    7月23日 市教委 小学校英語教育、教員支援が課題

     2020年度に実施される新学習指導要領で小学5〜6年生の英語が教科化されるのを前に、京都市の小学校で英語教育が本格化している。京都市では全国より3年早く08年度から導入。本年度も国の基準を超える授業数を確保した。一方で、不慣れな教員への対策や負担軽減が課題として浮かび上がる。

     「carrot(ニンジン)」「banana(バナナ)」。5月下旬、右京区の嵯峨野小。6年生の外国語活動で、外国語指導助手(ALT)の後に続き児童たちが元気に声を出した。大道菜月さん(11)は「ALTが優しく教えてくれるし、みんなで英語を話すのは楽しい」と笑顔を見せた。

     同小は14〜17年度に市の「英語教育推進研究拠点校」に指定されたのを機に、英語学習に積極的に取り組んできた。現在、全国の3年生以上は「外国語活動」として英語に親しんでいるが、同小は2学期以降、独自に1〜2年生でも外国語活動を始める予定だ。

     だが、ほとんどの教員は英語を専門に教えた経験がなく、間違った発音や文法を教えてしまうのではという懸念があるという。昨年から英語の授業をしている3年担任の村井俊之教諭(37)は「自分が話せないので不安はある。今は子どもと一緒に勉強しているという感じ。最近は少し発音が良くなってきた」と苦笑する。

     同小研究主任の小幡真弘教諭(39)は、ALTと豊富なメディア教材を使えば、誤った発音を教えることは避けられるという。「先生たちは教えることのプロなので、うまくかみ合わせたい」と話す。村井教諭も「子どもが発語する機会を増やすような授業展開を心掛けている」とし、教諭としての蓄積を生かして授業に臨む。

     文部科学省は英語の授業数(1コマ45分)について、18〜19年度の移行期間で小学3〜4年は年15コマ、5〜6年は年50コマを定めている。京都市では19年度で3〜4年が35コマ、5〜6年が70コマと、国の基準を上回るコマ数を確保した。指導要領にはないが、20年度からは1〜2年生に年10〜15コマの外国語活動を導入する。

     京都市教委学校指導課は「京都が国際都市であることとグローバル化を見据えると、先んじて進めることが子どものためになる」と英語教育に力を入れる理由を説明する。

     正式な教科になることで、教員は外国語活動の中心だった「聞く・話す」に加え、「読む・書く」を含めた4技能を教えることになり、児童への成績評価も必要となる。コマ数と教える内容が大幅に増え、長時間労働が指摘される教員の負担がさらに増えることも予想される。

     市教委は環境整備に乗り出している。英語教育を担当する指導主事を市教委事務局で増員。ALTを17年度と18年度に5人ずつ増やして47人とし、今後さらに増やす方針だ。従来の研修に加え、夏にはALTと教員の連携を深める研修を初めて実施する。

     市教委学校指導課は「4技能の力をまんべんなく付け、小中の接続がうまくいくように丁寧な指導をしていきたい。そのために、あらゆる面で現場への支援を強めていく」としている。


    ここにきてもやはり小学校での英語教育の必要性を感じられない。「京都が国際都市であることとグローバル化を見据えると…」という認識があるなら何故英語なのかの疑問の答えが見当たらないからだろう。言語をコミュヌケーションツールとして考えるなら「聞く・話す・読む・書く」の4技能よりも誰とコミュニケーションをとろうとするのかが重要ではないか。そこを見ないで4技能を重視する教育を小学校から始めると、「覚える英語教育」にならざるを得ないだろう。詰めこみを排除しようとする新学習指導要領とも齟齬をきたすことになる。


    7月22日 府教委 学び直し休暇、助成を新設へ

     政府は、社会人が仕事に役立つ技術や知識を大学などで学び直す「リカレント教育」の普及に向け、従業員に長期休暇を認めた企業への助成制度を来年度に新設する方針を固めた。高齢者雇用に積極的な企業への支援策も拡充する。年齢に関係なく挑戦できる社会を目指す安倍政権の看板政策「人づくり革命」の一環。

     リカレント教育は、働く人に大学などで高度な専門知識や技術を身に付けてもらい、仕事の実力向上や有利な転職につなげる狙いがある。

     新しい助成は、休暇期間の最低水準を「数カ月以上」へ引き上げ、より長期の休暇を促す方向だ。


    リカレント教育の自由度を上げることは意義のある事。しかし、この案では企業に所属する事が条件となっているので、結果的には企業内でのキャリアアップにかかわる費用を国が補助すると言うことになる。ある意味で余裕のある企業だけが利用する事ができるシステム。むしろ、リカレント教育のための個人への費用の支給なり補助なりが必要で、リカレント教育失業給付が1年間支給されるという制度がEUでは主流と聞く。


    7月20日 最高裁 再雇用拒否 合憲

     卒業式などで起立して君が代を歌うよう指示した校長の職務命令に反したことを理由に、退職後の再雇用を拒否したのは違法として、東京都立高の元教諭22人が都に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は19日、賠償を命じた二審判決を破棄し、元教諭の請求を棄却した。逆転敗訴が確定した。

     第1小法廷は「再雇用の合否判断は任命権者の裁量にゆだねられている。不合格とした結論は合理性を欠いていない」と判断した。

     最高裁は2011年、職務命令が思想、良心の自由を制約し、違憲かどうかが争われた訴訟で合憲と初判断。起立、斉唱しなかった教諭を再雇用しないことの是非については、具体的に判断していなかった。


    都教委の「不起立」を理由とした再雇用拒否には違和感が残る。そもそも再雇用は、年金支給開始年齢の引き上げ(年金行政の破綻)が原因であって、被雇用者の責任に帰されるべき問題ではないはず。にもかかわらず「不起立」を理由とするのは一種の「懲戒処分」にあたり、不起立と処分の均衡が議論されなくてはならないはず。それが一方的に都教委の判断に任されたことには納得が行かない。


    7月18日 文科省 「公共」で体験型授業

     文部科学省は17日、2022年度の新入生から順次実施する高校の次期学習指導要領の解説書を公表した。公民の新設科目「公共」では、主権者として必要な資質を育むため、模擬選挙などの体験型授業を要請。領土に関しては北方領土や竹島(島根県)、尖関諸島(沖縄県)に対する日本政府の立場の正当性を教えるよう求め、消費者教育の重要性にも言及した。

     日本史と世界史の縦割り改善に向け、双方の近現代史を統合した新設科目「歴史総合」では「中国の開港と日本の開国」など具体的 なテーマを例示し、国内外の動向を有機的に結びつける力の育成を目標に掲げた。

     解説書は生徒に教えなけれはならない学習内容などを定めた指導要領を詳しく説明するため、教員向けに作成したもので、指導や教 科書作成の指針となる。

     公共は18歳以上への選挙権年齢引き下げを受け、法や政治、経済に関わる幅広いテーマを扱う。解説書では、政治や司法に参加することの意義を学ぶ手段として模擬裁判や模擬選挙が有効だと説いた。

     「世論の形成に対する会員制交流サイト(SNS)の働き」や「人工知能(AI)が労働市場に及ぼす影響」なども内容に加えた。現代社会の課題を学ぶため各種統計や新聞を教材に活用することも有用だとした。

     北方領土と竹島で「未解決の問題が残されている」とし「わが国の立場が歴史的にも国際法上も正当で、平和的な手段による解決に向け努力している」と強調。尖閣議島は「解決すべき領有権の問題は存在していない」と説明し、いずれも日本政府の主張を理解させることが必要だとした。


    「主権者教育」へ積極的な姿勢を示したとはいい難い内容ではないだろうか。「模擬選挙などの体験型授業」で教育の中立性の呪縛から解かれる保障はないし、むしろあらかじめ設定された枠での授業にしかならない様に思える。また、領土問題で「日本政府の主張」を最低ラインとするなら、韓国や中国(意見の異なる他者)の考え方を尊重すると言う対話型の主権者教育(市民の育成としてのシティズンシップ教育)が成り立たないし、例えば「共同管理」というテーマはたち上がり様がないとも見え。


    7月16日 防衛予算 7年連続増、過去最大

     防衛省は、自衛隊の活動や装備に充てる2019年度予算の概算要求について、米軍再編関連経費を含め5兆3千億円近くを計上する方向で調整に入った。過去最大の見込み。北朝鮮は融和路線を取るものの、日本の安全保障環境は依然厳しいと判断した。防衛費(当初予算ベース)は安倍政権下、13年度に増加に転じており、来年度で7年連続増となる見通しだ。政府が15日、明らかにした。

     防衛予算は、15年度から4年続けて最高額を更新中。政府は、19年度からの新たな中期防衛力整備計画(中期防)を年末までに策定予定だ。この際に、現行中期防で自衛隊の主要装備費用の伸び率年平均0・8%を年平均1%前後へと拡大する意向で、防衛予算の押し上げ要因となる。

     概算要求では、23年度運用開始を目指す陸主配備型迎撃システム「イージス・アショア」導入に向けた費用を計上する。F35A最新鋭ステルス戦闘機や、敵基地攻撃が可能になるとの批判がある長距離巡航ミサイルなどに充てる考え。北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射停止を受け、野党から高額の装備品取得に関して再検討を求める声が出る可能性がある。

     新たな防衛分野となる宇宙、サイバー空間の対処力強化に取り組むほか、中国を見据え、南西諸島防衛の強化策も引き続き盛り込ま れる見通し。

     さらに政府は、地上から艦艇に対処する地対艦誘導弾(SSM)の新たな部隊を沖縄本島に配備する方針で、来年度以降に関連経費を計上する構えだ。政府が6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」では「防衛力を大幅に強化する」と明記された。


    安倍政権の防衛にかんする考え方「積極的平和主義」には大きな疑問がある。元来「積極的平和」と武力によらないものをさし、武力によるものは「消極的平和」とされている。ほとんど議論をまともに行わない現政権では「ことば」のもつ魔法性のみが優先されているように見える。戦争をさせない1000人委員会など護憲勢力は、意識的に防衛予算にコミットしていかなければならないだろう。また、予算要求をチェックする側の財務省は、「防衛予算増」に対するエビデンスを、教職員定数増を要求する文科省同様に厳しく求めるべきではないだろうか。


    7月15日 大津市教育委員会 「体罰の範囲超える」

     大津市の南郷中で、ソフトテニス部2年の男子生徒(14)が部活動中のミスを理由に、顧問の教諭から過度なランニングを強いられ熱中症で倒れた問題で、市教委の舩見順教育長は14日、市役所で記者会見し「体罰の範囲を超える許されざる行為として重く受け止めている」と謝罪した。

     市教委は再発防止に向けて16日に緊急の小中学校長会を開き、生徒への体罰防止や部活動指導の在り方を徹底するとともに、熱中症予防について周知を図る。同中に1学期が終わる20日までスクールカウンセラー1人を配置し、全校生徒の心のケアにも当たる。

     市教委によると、男子生徒は12日夕の部活動中に、サーブのミスが続いたため顧問の男性教諭(31)から「校舎周囲(1周約230メートル)を80周走れ」と命じられ、校内で作業していた工事業者が見つけたという。

     舩見教育長は「適切な指導としては技術的指導をするべきだった」と述べ、男性教諭の処分について状況を調査した上で県教委と協議する考えを示した。

     市は14日、趣直美市長を交えた総合教育会議を開き、市内全域で部活動指導の実態を把握し、今後の在り方を検討する方針を確認 した。


    「教員の働き方」について各方面から議論が起こっているのだが、そうした議論はほとんど現場には届いていないのではないかと思える。「体罰」については大阪桜ノ宮高校での事件以来すでに分かっているはずであり、教育長の「体罰の範囲」と言う言葉も解せない。また、担当教員が課した「80周」はどうした動機からなのだろうか。部活動について「ノー部活デー」が設定されたりしている事を快く思っていない現場があるのだろうか?


    7月14日 総務省 非正規労働 最多2133万人

     総務省が13日発表した2017年の就業構造基本調査によると、働く人全体の数は6621万人で、12年の前回調査から179万人増加した。このうちパートや有期契約、派遣などの非正規労働者は90万人増の2133万人となり過去最多を更新した。人口の多い団塊の世代が定年退職し、有期契約や派遣で再就職する事例が増えたためとみられる。

     前回調査からの5年間は安倍政権のアベノミクスと重なる。雇用情勢は改善し、人手不足を反映して女性や高齢者でも働く人が増えているが、非正規の割合は依然約4割と高い。6月に成立した働き方改革関連法では、定年後の再雇用を含む非正規労働者の待遇改善が盛り込まれており、企業側の対応が急務になっている。

     15〜64歳の生産年齢人口に占める働く人の割合は3・7ポイント増の76・0%で過去最高となった。都道府県別では福井が80・3%で最も高く、山形(79・7%)、富山(79・1%)が続いた。

     役員などを除く雇用者数は230万人増の5584万人。このうち非正規の占める割合は前回と同じ38・2%で横ばいだったが、60歳以上の高齢者では1・3ポイント増加。反対に15〜34歳の若年層では2・4ポイント減少した。総務省の担当者は「若い世代では正社員化が進んでいる」と分析した。

     都道府県ごとの非正親の割合は、沖縄が最も高い43・1%。京都が42・5%と2番目に高く、滋賀は40・6%だった。

     非正規の中ではパートとアルバイトが計1472万人で最多。契約社員は303万人、派遣労働者は142万人だった。希望しても正社員の働き口がない「不本意非正規」の割合は12・6%。特に東北地方で高い傾向があり、青森、秋田、山形、福島は16%を超えた。


    総務省は「若い世代では正社員化が進んでいる」としているが、働きの中身についてはどうなのだろうか?また、「不本意非正規」が12・6%であることも問題だろう。いつ働けない状態に追いやられるかもわからない。潜在的な失業者である可能性は否定できない。同日の本紙には「働き方改革」シンポの記事があった。そこで「非正規雇用は矛盾の縮図。生きては行けないほどの低賃金がこの社会にあることは法的問題」(中野麻美弁護士)、「働き方改革は意味がなく、本気を出すなら現行法の実効性を高めるべき」(派遣労働者の渡辺照子)、「働き方改革に先はない。この改革とは違った、ケアを抱える男女の労働者がまともに働ける社会をつくっていけるかどうかが重要になる」(三上雅子同志社大学教授)などの議論があったようだ。安倍政権がゴリ押しした「働き方改革」への不安は一向に収まらないだろう。少なくとも働く側、それも一括新規採用・年功序列・男性の働きによる家計維持を保障された正規社員ではない側の視点にたった「改革」出ない限りは。


    7月11日 労政審 働き方議論、まず残業規制

     罰則を伴う残業時間の上限規制や高度プロフェッショナル制度(高プロ)創設が盛り込まれた働き方改革関連法の成立を受け、厚生労働省の労働政策審議会(労政審)分科会が10日開かれ、企業や労働界への影響が大きい残業規制から優先的に議論していくことを決めた。規制の適用除外となる具体的な職種の範囲などを決定後、高プロの議論に入る。

     残業の上限規制や高プロは原則来年4月から実施されるが、関連法は詳細については「省令や指針で定める」としている。分科会では、経営者側の委員が「一日でも早く省令や指針を示してもらわないと、システムなど間に合わない」と要望。労働者側委員からも「中小企業では、納期など自社だけで解決できない問題も多い」との指摘があった。

     労政審は今後、残業規制に関し、労使協定(三六協定)の新しい書式や、5年間適用が除外される建設業や自動車運転従事者の範囲を決める。

     同じ5年間の適用除外となる医師については厚労省内の別の検討会が残業規制の在り方を検討する。

     一部専門職を労働時間規制の対象から外す高プロに関しては、年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなどが想定されており、具体的な対象業務の選定や年収の計算方法の検討が必要となる。

     1947年に労働基準法が.制定されてから、罰則を伴う残業規制が実施されるのは初めて。ただ「月100時間未満」という上限設定や高プロ導入により「長時間労働の歯止めがなくなる」との懸念も指摘されている。


    「生煮え」の法案を強行採決した後始末を労政審という国民の目からは遠いところでつけるという政権のあり方は疑問。しかし、「給特法」による救いようのない制度化に在る「教員」は、まさに「定額働かせ放題」状況にある。少なくともこの現状をどうするかももっと政策レベルで検討されなければならない。


    7月11日 川崎市 「障害理由の就学拒否 違法」

     重度の障害があるのを理由に地元の小学校への通学を認めず、就学先を県の特別支援学校に指定したのは違法だとして、川崎市の光菅和希君(6)と両親が同市と神奈川県を相手に、地元の小学校への就学を求めて横浜地裁に訴えを起こすことが、10日分かった。

     提訴は11日。和希君は難病の先天性ミオパチーで人工呼吸器を装着しており、母悦子さん(48)がたんの吸引などの医療的ケアをしている。

     障害のある子どもを巡っては、2013年に成立した障害者差別解消法ご、障害を理由にした差別的扱いを禁じ、文部科学省は同年分離別学システムだった学校教育法施行令を改正。子どもの就学先について「保護者の意向を最大限尊重する」と通知している。

     弁護団によると、16年の同法施行後、就学先の指定を巡って行政の違法性を問う訴訟は初めて。

     弁護団は「人工呼吸器を付けた児童生徒の地元小学校への受け入れは全国で進んでおり、市教育委員会の対応は時代に逆行してい る」と話している。

     訴状などによると、18年度から小学生になる和希君の就学先をめぐり、両親は川崎市や神奈川県の教委と複数回にわたって話し合い をしてきた。県の特別支援学校のほか複数の学校を見学した上で、地元の小学校への通学希望を伝えた。主治医の「保護者付き添いの 元での登校は可能」とする診断書も提出したが、市教委から「特別支援学校の方が専門家が多い」などと説明され、3月末に県の特別支援学校への就学が決定された。幼稚園生活では体調は安定しており、医療的ケアにも支障はなかった。母親が常に付き添っており、小学校入学後も続ける旨を伝えていた。

     父伸治さん(49)と悦子さんは「幼稚園では友達と接することで自ら意思表示ができるようになった。大人の指導が中心の特別支援学校では地元の学校のような成長は望めない」と話している。


    耳を疑うようなニュースに驚きを隠せない。40年以上も前にタイムスリップしたような出来事だ。かつて多くの子どもと保護者が閉ざされた門を開けようと苦闘したことが思い出される。その後多くの子どもたちが地域の学校に通うようになったが、選択の幅が広がったことから支援学校・学級への通学・通級も増えてインクルーシブ教育の中身が問われる事態になってきている。そうしたなかの提訴だが、非は明らかに行政側にあるのだが「合理的配慮」を裁判所がどう判断するかは注目に値する。


    7月2日 共同通信まとめ 教員不足 全国で600人超

     学校現場の長時間労働が深刻化し、教員の負担軽減が課題となる中、全国47都道府県と20政令指定都市のうち、26都道府県と9市で公立の小中高の教員が、定数に対し少なくとも計600人不足していたことが1日、各教育委員会への取材で分かった。5月16日時点で各教委が持つデータを共同通信がまとめた。滋賀県は1人不足していると回答、京都府と京都市はデータはないと回答した。

     定年による大量退職や、若手の志望者減などが背景にある。人員不足が続けば授業の実施が困難になったり、1人当たりの業務量が増加したりする恐れもあり、専門家は「現場の努力だけでは解決できない深刻なレベルの数字だ」と危機感を募らせている。今回の調査で教員不足の実態の一端が浮き彫りとなった。

     10人以上不足しているのは15都道府県市、10人未満は14県市だった。不足しているが人数を非公表としたのは6県市で、実際の不足数はさらに多いとみられる。兵庫県宝塚市と松江市、広島県呉市の中学校では4〜5月、教員不足で一部の授業が実施できなかったケースがあった。

     現在教員が足りているとした教委でも「産休や病欠で欠員が出た場合の補充に不安がある」「独自に取り組むj予定だった少人数学級化を断念した」と影響を指摘する。

     文部科学省などによると、50歳以上が今後、大量退職の時期を迎えるほか、育休や産休を取得する若手教員の増加で欠員を一時的に補う非正規教員のニーズが高まっている。ただ景気が上向く中で人材が民間企業に流れ、少ない人数を取り合っている状況だ。

     「教員は部活動などで多忙なイメージがある」(仙台市教委)などの理由から志望者数が伸び悩み、小中高の教員採用試験の受験者数は5年連続で減少。昨年度は約14万4千人だった。一度に大量採用すれば質の低下も懸念される。

     少子化で児童や生徒数は減っている一方、少人数教育や特別支援学級の需要が高まっており、クラス数の減り方が緩やかになっていることも不足の一因となっている。

     教員の定数には、学級や生徒数に応じて算出する「基礎定数と学校環場の課題に応じて政策的に配分される「加配定数」がある。今回の調査では原則どして基礎定数の不足数を計上。一部の教要は加配定数の不足分も含めて回答した。


    教員確保「綱渡り状態」

     教員不足で授業ができなかった事例が明らかになつたのは、これまで全国で3件だけ。多くの教育現場では、教頭や代わりの教員が授業を担当し、業務の負担増に拍車が掛かっている。4月の授業の一部ができなかった広島県呉市の中学校長は「教員確保は綱渡りの状態。全国どこでも起こり得る」と話す。

     呉市立吉浦中では本年度、1年生の国語と2年生の理科を担当する予定だった非正規の教員2人が、3月末に契約を辞退。小林浩樹校長も自ら教員免許を持つ知人約10人に後任を頼んだが、既に採用が決まっていたり「もう教員は辞めたい」と断られたりした。

     5月に入り、他の学年を担当していた教員がカバーしてやりくり。呉市教育委員会の担当者は「毎年、年度当初は非正規の先生が決まらない。代わりに入った教員の業務量が増えてしまう」と話す。

     兵庫県宝塚市のある中学校でも、家庭科の教員が別の自治体に採用されてしまい、4月から5月末まで授業ができずに全学年で別の授業に振り替えた。松江市の市立中でも英語の教員が見つからず、約1カ月授業が実施されなかった。

     授業ができないケースがなかった仙台市でも5月中旬で約20人が足りず、少人数学習の授業を取りやめるなどした。

     文部科学省教職員課によると、全国にある公立の小中高の教員数は約68万人。うち退職を前にした50歳以上は約26万人で、30〜40代はそれぞれ16万人前後にとどまる(2017年度)。教員不足が深刻さを増す中、福島県教委の担当者は「国による全国的な施策がほしい。人を育てる仕事に人かいないのは致命的だ」と訴えている。


    慶応大の佐久間亜紀教授(教育学)の話 非正規人材プール枯渇

      どこの自治体も決められた予算の中で教員数を確保するため、給料の高い正規よりも非正規への依存度を高めてきた。一方、教育の質を高めるための法改正で教員免許の取得が難しくなり、非正規の人材プールも枯渇しつつある。限られた資源の中で、教育界の努力が限界に達している。解決のため、給料や待遇の改善など教職の魅力向上が必須だ。国が十分な予算を確保し、正規の数も増やさなければならない。そのための政治力と、後押しとなる世論が必要だ。


    「教員不足」の問題はすでに10年近く前から指摘されてきたが一向に改善されることはなかった。新聞記事だけからの印象ではあるが「非正規教員」の不祥事が目立つのも十分な「質」の確保よりも「量」を優先しなければならない現場の悲鳴とも受けとめられる。文部科学省は常に「定数改善」を財務省に要求はしているものの「エビデンスに乏しい」との理由からほとんど受け入れられてはいない。結局「自然減」による教員減となってしまっている。「就学前教育」の必要性はあるとしても「安倍三選」を目的とする政策的?な配分は目に余るものがある。