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  • 部活指導員京滋で拡大.21
  • 支援学校4割運動部なし.21
  • 基本と活用力 一体化.23
  • 部活動指導員1万2000人.23
  • 支援学校でミサイル避難訓練.31
  • 8月31日 秋田県 支援学校でミサイル避難訓練

     北朝鮮から弾道ミサイルが飛来した想定の避難訓練が31日、秋田県大館市の県立比内支援学校で行われた。北朝鮮を巡る緊張が緩和し、ミサイル発射の可能性は下がったとされるが、学校は「情勢変化にも対応できるように」と実施を決めた。

     訓練には知的障害のある児童と生徒、教職員の計約200人が参加。発射が校内放送で知らされると、窓ガラスの破片が飛び散ることを想定し、子どもたちは教室の中央に集まり両手で頭を覆って身をかがめていた。

     佐藤正好校長は「子どもたちの安全を守るため、今後も訓練を行いたい」と話した。


    信じ難い出来事。防衛省ですら、南北会談後の情勢判断から迎撃ミサイル部隊の撤収を決めているというのに。障害を持つ子を人質に取った「訓練」としかいいようがない。


    8月23日 文科省 部活動指導員1万2000人

     文部科学省は22日、来年度予算の概算要求で、全国の公立中学校に部活動指導員を1万2千人配置する経費として13億円を盛り込む方針を決めた。部活動指導は教員の長時間勤務の主な要因とされており、2018年度予算の5億円(45.00人)から大幅増を図る。文科省は他の学校業務でも外部人材の拡充を求め、教員の働き方改革を進める考えだ。

     スポーツ庁は3月に示した中学の運動部活動のガイドラインで、教員の負担軽減や子どものけが防止のため、週2日以上の休養日を設けると明記。文科省は、ガイドラインを順守していることなどを条件に、指導員確保の経費の3分の1を補助する。

     運動部の顧問を務める教員には、自身の経験がない競技を教えている人も多く、知識や経験が豊富な外部指導者を活用して、短時間で効率の良い練習を目指す。

     ただ、部活動指導では教育上の配慮なども求められ、適切な人材を確保できるかが鍵となりそうだ。吹奏楽部といった文化部活動も対象とする見込み。

     公立小中学校で事務作業を代行する「スクール・サポート・スタッフ」の配置にも17億円を要求。教員の教材準備などを手伝うスタッフを現行の3千人から3600人に拡充し、副校長や教頭が学校運営に専念できるよう、教員勤務費理や来客対応などを補助する要員も新たに400人置く。

     これとは別に、児童生徒の学習支援や進路指導を手伝う教員OBなどを確保するため31億円も盛り込む。


    タイムカード導入校は4割

     文部科学省許ま22日、教員の働き方改革に関連し、全国の教育委員会が、所管する小中高校に対して取り組んでいる業務改善状況の調査結果を公表した。勤務時間把握のためタイムカードなどを導入している市区町村教委は全体の40・5%。部活動の休養日を週2日以上とするなどの基準を設けているのは50・3%だった。

     調査は4月1日時点。文科省は教員の長時間勤務抑制には正確な実態把握が欠かせないとしてタイムカードなどの導入を促している。

     調査結果によると、導入しているのは政令指定都市を除く1719市区町村教委のうち696教委。昨年4月時点の8・1%から大幅に増えたが、半数には届かなかつた。都道府県教委では38・3%。政令市教委では45・0%だった。


    学校での仕事を様々な人で分担していくというのは一つの解決方法かもしれないが、基本的には「定数改善」が必要であり、また「定年延長」も含めて新たな「職」をどうするかを検討課題として上げなければならないだろう。


    8月23日 学テ 基本と活用力 一体化

     文部科学省は22日、小学6年と中学3年の全員が対象の全国学力テストに関する専門家会議で、2019年度以降の国語と算数・数学の新たな出題形式の考え方を示した。今年2月に公表した検討方針通り、基本的知識を問うA問題と活用力を問うB問題を一体化。日常生活の場面を設定した一つの大問の中に、知識を問う小問と活用力を問う小問を並べる構成が考えられるとした。一体化で2教科全体のテスト時間は短編される。

     A問題を通じて学力の底上げが図られたほか、小学校で20年度、中学校で21年度から全面実施される新学習指導要領が、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」の結びつきをより重視していることなどを、一体化の理由に挙げた。

     現行の小6は国語、算数のA問題が各20分、B問題が各40分で計120分だが、19年度以降は国語と算数の各45分で計90分。中3の国語と数学はA問題、B問題とも各45分の計180分だが、新形式では国語、数学各別分で計100分となる。

     文科省は過去のテストで出題されたB問題に、知識を問う小間を加える形で作成したサンプルも提示。小6算数のサンプルでは、調理実習に必要な食材をそろえる買い物で、食材の割引額計算を間違った理由を分析する15年度出題のB問題の冒頭に、財布の中の紙幣や硬貨の枚数から合計額を問う基礎的な計算小間を加えていた。


    桃山学院教育大の梶田叡一学長(心理学・教育研究)の話試験時間短縮合理的な選択.

     全国学力テストは11回を数え、そろそろ変化が必要だ。理科や英語など実施教科が増える中で、知識と活用の融合問題として試験時間を短縮するのは合理的な選択だろう。これからの子どもたちに必要なのは知識を土台に新たな問題を解決する力で、国際的にも重視されている。

     単なる応用にとどまらない問題解決力に軸足を置くことが、今後のテストには求められる。これまでのテストでは毎回活用力に課題があるとされており、文部科学省にはこれを機に、教育現場に対してより丁寧に指導改善を促してほしい。


    PISA型の学力モデルを念頭に置いた「改善」であることは間違いないのだが、梶田が言う「毎回活用力に課題がある」ことへの根本的な改革への哲学がない中では、小手先の改善にしかならない。結果として現場はテストの結果のみに追い立てられるというこれまでの繰り返しを迫られるだけではないか。


    8月21日 特別支援!学校長会 支援学校4割運動部なし

     障害のある児童・生徒が通う特別支援学校の4割がスポーツの部活動やクラブ活動を行っていないことが20日、全国特別支援!学校長 会による初の実態調査で分かった。東京パラリンピックまで25日で2年。国は障害者スポーツの普及を図るが、専門知誠を持つ指導者や用具、施設が不足し、裾野は広がっていない。

     調査は2016年8月〜17年1月、全国の特別支援学校1313校を対象に実施し、1179校(うち私立11校)から回答を得た。今年1月にかけて追加調査も行った。

     スポーツの部活動・クラブ活動を行っていると答えたのは699校(59%)で、残りの480校(41%)は行っていなかった。高等部普通科、中学部、小学部と年齢が下がるほど実施率は低かった。香川県は回答した9校がすべて活動しており実施率は100%で、茨城(96%)、岐阜(90%)が続いた。実施率が最も低いのは新潟(19%)。活動は月平均6回で、種目別では陸上競技、卓球、サッカー(ブラインドサッカーを含む)が上位三つを占めた。

     スポーツ活動を充実させるために必要なものを複数回答で聞いたところ、「用具や器具」「教職員の専門知識・ノウハウ」「校内の 施設やスペースの確保・拡充」「教職員の指導時間」「外部人材」「児童・生徒の移動手段」の順だった。

     特別支援学校の体育の授業はストレッチやウオーキングなどが主だが、部活動やクラブ活動では障害の種類や程度に応じた配慮や専門知識が求められる。教職員以外に外部の指導者がいるのはわずか13%。障害者スポーツの用具は特殊な仕様が多く、車いすバスケットボールの車いすは1台数十万円近年人気のボッチャの用具も約8万円と高額で、予算不足を訴える声目立った。

     自由回答では「人数が少なく、集団スポーツが成立しにくい」「放課後や休日には保護者による送迎が必要」「区立プールを利用 ようとしたら、生徒1人に教職員1人を介助役とし付けるよう言われた」などがあり、活動には周囲の理解や支援が欠かせない。

     調査をまとめた東京都八王子東特別支援学校の三浦浩文校長は「日常生活では介助を受けている子どもスポーツでは積極性が 身につき、自己肯定感につがる。部活動は教職員や保護者の負担が重く、子ども一人一人の特性を理解する外部指導者が不可欠だ」としている。


    障害を持つ子どものスポーツはこれまであまり問題とされてこなかったように思える。パラリンピック開催を契機に広げていきたいというのが関係者の想いだろう。ただ、支援学校の内部だけで完結してしまうような部活動では面白味はない。例えば、ハンディー戦のようなインクルーシヴなスポーツや障害の有無を問わない演劇や合唱などの活動が進められてもいいのではないか。


    8月21日 【フォローアップ】 部活指導員京滋で拡大

     教員の長時間労働の解消に向け、部活指導を学校外部の人材が担う「部活動指導員」を国が制度化し、京都、滋賀でも導入が進んでいる。これまで教諭しかできなかった単独での指導や大会への引率ができる制度で、京都市教育委員会では本年度に中高50校で51人が活動している。負担軽減に効果があり、現場からは歓迎の声が上がるが、制度の利用が進めば担い手不足が生じる可能性がある。

     上京区にある烏丸中の放課後。テニスコートではネットをはさんでポールが行き交う。「しっかりと、高い所でボールを捉えて」。5月からソフトテニス部を教える部活動指導員の五十嵐馨さん(23)の声が響く。

     同部の2人の顧問は、多忙な進路主事と、育休中の教諭。そのため保健体育科の非常勤講師として同中に勤務する五十嵐さんに指導員の声が掛かった。ソフトテニスは未経験だが、剣道で全国大会出場の実績を持つ。「動画などで指導法を勉強している。経験者の友人にも練習法を聞きたい」と意気込む。

     同中では昨年度、バレーボール部に指導員が配置された。部活動に関連する同部主顧問の時間外勤務は昨年4〜9月(8月は除く)は月平均38・4時間だったが、試行した昨年10月〜今年2月は27・0時間と大幅に短縮された。

     サッカー部で試行的に導入した山科区の大宅中でも、月平均26・8時間から21・6時間に減っている。

     同中では今年、非常勤講師の野町祐輝さん(22)がバドミントン部の指導員を務める。「教職を目指しているので、とても良い経験になる」と話す。顧問の東浩子教諭(29)は「生徒指導や授業の準備などに集中できる時間ができて助かっている。昨年より早く帰宅できるようになった」と歓迎する。

     部活動指導員は昨年度に学校教育法施行規則改正で制度化された。指導員は学校職員に位置づけられ、顧問になれる。京都市では国の補助がある週6時間分に独自の予算を追加し、最大で週8時間までを可能にした。

     だが給与は高くても月5万円半ば程度。「指導員だけでは生活できず、対象者は限られる」と市教委体育健康教育室は話す。市教委は当初、定年退職した教員OBも対象に考えていたが、本年度は4人にとどまった。「再任用などフルタイムで働きたい人がほとんどで、あてが外れた」という。非常勤講師が29人と大半を占め「後は学生などが務める。

     国は積極的な活用を呼び掛けている。今年の春と夏の大会を通じて指導員の長所を実感した市内の学校からは、増員を求める声が上がっているという。しかし、非常勤講師に頼り切っている現状では将来的になり手が不足すると市教委はみている。

     市の制度では、学校が適任者を選んで市教委が審査する。烏丸中の渡辺直毅校長(57)は「夕方の忙しい時間帯に、部活動のためだけに学校へ来てくれる人を探すのは難しい」と実情を語る。

     京都府教委は昨年度にモデル事業として中高6校で実施し、本年度は府内の中学で50人の配置を予定している。滋賀県では、市町立の中学校に約20人を配置する。


    教員の長時間労働削減で外部指導員導入の効果は期待できる。ただ「月平均26・8時間から21・6時間に減っている」といっても週当たり1時間程度、「月平均38・4時間だったが、…27・0時間」で週当たり2時間程度だ。部活だけが長時間勤務の要員ではないことは明らかで、抜本的な改革が必要という認識が求められる。
    一方で「指導員」に対する報償額が低い事も問題であり、職業として成り立つようなスポーツ振興策が国に求められることも付言しておく必要がある。


    8月20日 全国一斉イベント 「不登校は不幸じゃない」

     「不登校は不幸じゃない」と題した全国一斉イベントが19日あり、滋賀県内でも趣旨に賛同した人々がパネル討論や座談会などを開いた。不登校経験者や保護者、研究者らが不登校に対する偏見を変えようと意見を出し合い、地域住民が熱心に聞き入った。

     夏休み明け前後に子どもの自殺が増えることから、和歌山県出身の起業家が全国100カ所でのイベント開催を呼び掛け、実現した。

     大津市におの浜1丁目のピアザ淡海では、市民グループ「異才ネットワーク」主催のパネル討論があり、約50人が参加した。小学1年の夏休み明けから2年間、学校を休んだという西田有紀美さん(28)が「教室は圧迫感があり、息苦しかった。両親が悲しんでいたのがつらかった」と振り返った。

     不登校になった児童の母親は「『学校って、行って帰ってきたら死にたくなる場所?』と聞かれ、そんなにつらかったのかと」と声を詰まらせた。休ませると笑顔が戻ったという。

     軽度発達障害があり、小学4年から休みがちになった高校1年谷川友士さん(16)は、教科書の文字が動いて見えたり、口頭の指示が頭に入らなかったりといった状況を説明。「ゴシック体なら読みやすいので、書体が変えられる電子書籍の使用を認めてほしかった。不登校は不幸じゃないけど、幸福でもない。やりたい勉強ができる環境ではないのが問題ではないか」と提起した。

     訪れた同市和邇高城の主婦新田まゆみさん(50)は「発達には偏りがあるというのがよく分かった。困っている子はたくさんいると思う」と話した。

     大津市中央1丁目の大津百町館では、滋賀医科大の学生有志が座談会を開き、教育に関心をもつ地域住民と語り合った。古い町家を活用した同館の和室で、くつろいだ雰囲気で意見を交換。「学力や社会性を身につけられる多様な『居場所』や選択肢のある社会に」とうなずきあっていた。


    近代の制度として生まれた「学校」。その学校への問い直しが「不登校」という形で表れていると考えてみたい。近代学校への本質的な問い直しがないまま「多様な学び場の保障」をすることが決して権利の保障ではないだろう。また、「合理的配慮」の名のもとに分離教育が行われることも学校への忌避感を生み出すとも言える。


    8月17日 大阪市長 学テ最下位なら賞与返上

     全国学力テストの結果を教員の給与に反映させる方針を示している大阪市の吉村洋文市長は16日、来年のテストで全政令指定都市中最下位を脱することができなけれは、自身の夏の賞与を全額返上すると明らかにした。

     吉村市長は「教員らに対して結果に責任を負うよう求める以上、自身もそうあるべきだ」と述べた。学力向上の指導をする教育委員会の担当者にも責任を持ってもらうとして、教員と同様にテスト結果が給与に反映する制度の構築を検討するとした。各学校の目標については個別に決める可能性にも言及した。


    決意を示すためのパフォーマンスだろうがあまりにも稚拙。順位がどれほどの問題を示しているのかは無頓着で、単に競争を煽るだけの教育政策では、教育委員会も現場も戸惑いと不信だけが募るのではないかと思う。


    8月11日 人勧 続報 人材確保へ初任給増を

     5年連続で国家公務員給与の引き上げが必要とした10日の人事院勧告は、民間に比べて低水準となっている行政職の初任給を月額1 500円アップするよう求めた。人手不足で新卒の獲得競争が激化する中、格差を縮めて優秀な人材を確保するのが狙い。

     民間の実態を把握するために人事院が5〜6月に実施した調査によると、新規採用を行った企業のうち34%が大卒の初任給を増やしていた。高卒は37%。就職活動が学生優位の「売り手市場」となっていることが要因とみられる。

     行政職の公務員と比較できる民間の事務員や技術者の初任給は、平均で大卒が約20万2千円、高卒が約16万4千円だった。公務員の初任給は手当や勤務地によって異なるが民間を下回る傾向にあり、格差が拡大しているという。

     人事院は若手の待遇改善へ、20代職員の月給を千円程度増やすことも求めた。一方、幹部職員の月給は3年連続で据え置きを勧告。 担当者は「全体のバランスを考えて判断した」としている。



    8月10日 人事院勧告 国家公務員“定年65歳”

     人事院は10日、国家公務員の定年を現在の60歳から段階的に65歳まで延長するよう求める意見書を国会と内閣に提出した。延長後の給与は7割程度に抑える。実現すれば民間や自治体にも波及しそうだ。2018年度の給与改定は月給、ボーナスともに5年連続で引き上げを勧告。学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書改ざんを踏まえ、公文書偽造など悪質な行為をした職員の処分は懲戒免職か停職と指針で定めることも報告した。

     定年延長の実施時期は明示せず、政府に判断を委ねた。政府内では21年度から3年ごとに1歳ずつ延長し、33年度に65歳とする案が浮上。検討を進め、19年の通常国会での関連法案提出を目指す。官邸で一宮なほみ人事院総裁から意見書と勧告を受け取った安倍晋三首相は、定年延長について「少子化が進む中、人材をどのように活用するかが官民に関わる大きな課題だ」と述べた。

     政府は昨年6月に「定年引き上げの検討を進める」と閣議決定し、今年2月に延長の必要性などを検討するよう人事院に要請していた。意見書は、少子高齢化で労働力が減少しているとして「行政サービス維持のために必要だ」と指摘した。

     具体的な仕組みでは、若手の昇進ベースが遅くなるのを防ぐため、60歳に達した管理職を下位のポストに降格させる「役職定年制」の導入を提言。人件費の抑制策として、60歳になった翌年度以降の月給の3割カットを求めた。

     18年度の給与は一般的な職員で月給を前年度より平均655円(0・16%)引き上げ、ボーナスは夏と冬を合わせて月給の4・45ヶ月分(0・05ヶ月増)とするよう勧告した。政府は関係閣僚会議で協議の上、対応を決める。長時間労働の是正を巡っては、残業時間の上限を原則年間360時間、多忙な部署は同720時間と人事院規則に明記する。


    「定年延長」は年金との接続の問題を考えるとこれまでの懸案だといえるが、60歳以降の仕事=職をどうするのかは大きな問題となるだろう。小学校のヒラ教員で60歳を越えた人も夏はプール指導、冬はスキー指導となると勤務時間以上に過酷な仕事となりはしないか。早期退職を望む人も増えるだろう。当局の真摯な議論が期待されるだろう。


    8月10日 三六協定 曖昧な残業理由認めず

     来年4月から罰則付きの残業時間の上限規制が実施されることを受け、厚生労働省は9日、時間外労働(残業)や休日労働に関する労使協定(三六協定)に特別条項を設け、労働者に月45時間を超える残業をさせる場合の理由として「業務上やむを得ない場合」といった曖昧なものは認めない方針を明らかにした。

     この日、同省の諮問機関で、労使の代表が話し合う労働政策審議会に、三六協定を結ぶ際に注意すべき点をまとめたガイドラインのたたき台を提示。特別条項を結ぶ場合の注意点として、曖昧な理由は恒常的な長時間労働を招く恐れがあり、できる限り具体的な理由を提示することを求める考えを示した。同省は9月中にもガイドラインをまとめ、厚労相告示として定める方針。

     たたき台では、使用者が労働者に残業をさせる場合、安全配慮義務を負うことを改めて明記。法改正で、最長月100時間未満までの残業が認められることになったが、月45時間を超えて長くなるほど、脳・心臓疾患発症との関連性が強くなることも留意しなければならないとしている。

     また、労働時間が一定時間を超えた労働者に医師の面接指導を実施したり、終業から始業までに一定時間以上の休息を与えたりするなど健康確保措置を取ることも求める。

     既に三六協定を結んでいる企業などには経過措置が認められているが、その後は、同省が定めるガイドラインに沿って労使協定を結ぶことが求められる。


    本来「三六協定」は労働者保護のためのものであったが、労使双方が無限定の長時間労働を容認する抜け道になっていた。また、「三六協定」の適用除外となっている教員も知られているように長時間労働のブラックな職場となっている。これを機会に労働者側からも使用者側からも一層の「働き方改革」に取り組む決意が必要。また、連合、全労連などのナショナルセンターも改めて大手労働組合の旧弊を是正するようにしてもらいたい。


    8月9日 城陽市情報審査会 府学テ成績開示答申

     城陽市の情報公開・個人情報保護審査会(会長・松本哲治同志社大教授、5人)は8日、2017年度に京都府が実施した学力診断テストの学校別成績などを市教育委員会が不開示としたのは妥当でないと判断し、開示を求める答申を市教委に出した。

     学力テストの学校別成績を巡っては、全国学力テストに関して、配慮をせず公表することを認めない大阪高裁の判決が、昨年6月に.確定した。今回の審査会の答申では、高裁判決の効力が及ぶ範囲は全国学力テストの訴訟に限られ、「審査会の結論を直接的に拘束しない」とした上で「(市教委が)適切な説明を行うことで過度な競争意識が生じることは回避できる」と指摘した。

     府の学力テストは小学4年と中学1年が対象。同市のNPO法人「行政監視機構」が昨年9月に開示請求したが、市教委は「学校間の過度な競争を生む恐れがある」として学校別成績などを不開示とした。法人側の不服申し立てを受けた市教委が審査会に諮問していた。

     15、16年度の実施分でも審査会が同様の答申をしたが市教委は開示しておらず、同法人が開示を求めて京都地裁に提訴している。


    本来「学力テスト」は教科の内容や構成(学習指導要領の内容)が適当かどうかを判断するためのサンプルを得るために実施されるもので、「毎年・悉皆」で実施する必要はないはず。不必要なものを実施するならその結果や方法について市民への情報開示が求められるのは当然といえる。ただ、審査会が言う「(市教委が)適切な説明を行うことで過度な競争意識が生じることは回避できる」との説明は理解に苦しむ。大阪市では全国学力テストではあるが「教員給与に反映」との議論も出てくるのだから。


    8月7日 最低賃金 京滋で26円引き上げ

     労働者に支払う時給の下限である最低賃金(最賃)が、京都府、滋賀県ともに現状より26円引き上げられる方針が6日決まった。上げ幅は現行の方式となった2002年以降最大で、経済団体や中小企業の経営者からは「経営への負担が大きすぎる」と悲鳴が上がる。一方、労働者からは「まだまだ低い」との不満も根強い。労使双方が満足する水準とするには、経営体力が弱い中小企業への支援策が不可欠だ。

     「京都府北部は特に景況感が悪い。最賃がこれ以上引き上げられると、企業の存続に関わる」。6日に開かれた京都地方最低賃金審議会。会議の終了後、経営者側の委員である京都北都信用金庫の京崎操専務理事は危機感をあらわにした。

     今回決定した10月1日発効予定の最賃は、京都府は882円、滋賀県は839円。いずれも7月に厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が示した目安通りの決着となった。

     近年の最賃引き上げは、個人消費を増やし、経済の好循環を生み出したい政府の方針によるところが大きい。政府は千円を目指すが、経済界からは「努力はしたいが、官製主導のため引き上げ幅が大きすぎ、ついていけない」(京都経営者協会)との声が上がる。

     府南部でコンビ二工ンスストア5店を運営するストリーム(木津川市)の小川明人社長は「最賃が上がればアルバイトの時給を上げざるを得ないが、その分のコストを商品の価格に上乗せすることもできない。役員報酬を減らすしかない」とこぼす。府内の食品販売会社の人事担当者は「本末転倒だが、バートの契約時間を短くすることも検討しないといけない」と漏らす。

     政府も企業の支援策として、事業所内で最も低い賃金を30円以上引き上げた場合、業務改善で導入した設備の購入費の一部を助成する制度を設けている。だが、京都中小企業家同友会は、設備投資をしにくい業種では利用のハードルが高いとして、「実態に即した支援をするべきだ」と訴 える。

     企業側が賃金の引き上げに二の足を踏む一方、労働者側は「一人で家計を支えるシングルマザーなどは時給1500円はないと自立できない」(京都生協パート職員労働組合)などと強調。京都総評やきようとユニオンなどの労働団体は、時給1500円にすべきだと主張している。

     京都地方最低賃金審議会は「現在の最賃引き上げに向けた助成金は不十分」として、中小企業への支援策の拡充を行政に求める付帯決議を労使双方の賛成で採択した。今後、労使双方が満足する最賃を実現するには、支援制度の拡充に加え、戦後最長に迫る景気拡大の恩恵を中小企業や地方にまで波及させる努力が政府や大企業に求められそうだ。


    「最賃」ということばがどこまで学校の中に浸透しているのだろうか。現在でも不当に「最賃」以下で働かされている人たちからの労働相談が絶えないという。少なくとも高校生に「最賃」の額と意義を教えられるような「普通職業教育」が、せめて新設される「公共」の内容としてでも行われる必要がある。


    8月6日 全教調査 教員未配置、667件報告

     全日本教職員組合(全教)は6日、病気休暇や産休・育休などの影響で教職員が未配置となっている事例が、4月からの2カ月間で京都府、滋賀県など23都道府県と3政令指定都市から計667件報告されたとの実態調査結果を発表した。

     全教は各地の教職員組合に協力を求め、1日でも未配置の状況にあった件数を集計した。全ての学校を調べるかどうかなど調査手法は各組合に任せた。

     教職員の未配置が生じた理由は、年度当初に配置が決まったものの適切な人材が見つかっていないケースが187件で最も多く、病気休暇179件、産前産後休暇19件の順。667件のうち319件は5月末までに解消していなかった。


    この調査事態の信憑性は薄いのだが、教員確保が思うように行っていないのは確かで、兎に角「名簿搭載者」に手当たり次第に連絡をしているという主事の話は聞こえてくる。また、講師や非常勤講師(だけではないのだが)の「問題行動」も連日報道されている。それなりの人材を確保するためには「処遇改善」と「定数の縛り」(新たな職の創設)を柔軟にしていくことが必要だろう。自在を高氏背は最近の議いう数字ではないのである。


    8月3日 新潟県加茂市 夏休み、部活も休もう

     新潟県加茂市は2日、市内の五つの市立中で夏休みなど長期の休暇期間中は原則として運動部活動を休止するとの方針を決めたと発表した。生徒や教員への負担軽減が狙い。吹奏楽部など一部の文化部にも適用する。1日付で各中学校に通達した。

     スポーツ庁の担当者は「同様の事例はこれまでに聞いたことがない」としている。競技力向上などの面から練習を望む生徒もいるとの指摘に対し、、池清彦市長は「方針に従ってもらうしかない。自主練習をしてほしい」と話しており、議論を呼びそうだ。

     方針によると、夏休み期間中は2日、冬休みと春休みは1日だけ活動日を設定。休み期間以外も平日のいずれか1日と土、日、祝日を休養日とし、部活を休むよう求める。


    子どもや保護者からの要望は強いと思われるけれども、学校のスリム化は必要との立場から考えれば有効な方針だといえる。ただここにも家庭の経済力や文化資本の違いによって子どもが受ける利益が変わってくることをかんがえれば、別の行政支援が求められる。


    8月3日 文科省 学校基本調査

     文部科学省が2日に公表した本年度の学校基本調査(速報値)で、京都府と府教育委員会は同日、府内分の結果を明らかにした。今春卒業した高校生全日制と定時制の大学や短期大学などへの進学率は3年連続で全国1位だった。小学校児童数や中学校生徒数は減少を続け、過去最少を更新。特別支援学校の在籍者数は2年ぶりに増加した。

     高校卒業生の進学率は65・9%で、全国平均よりも11・2ポイント高かった。前年度と比べると0・3ポイント減っており、府教委高校教育課は「私立大での定員超過抑制が進んだ影響ではないか」と分析している。

     小学校在籍者数は12万5952人で10年連続、中学校は6万6058人で5年連続の減少となった。小学校は8年連続、中学校は3年連続で過去最少だった。

     幼稚園児数は14年連続、高校の生徒数は2年連続で減った。特別支援学校の児童生徒数は2774人と、前年度から17人増えた。


    少子化の流れは止まらず児童・生徒の減少は続いている。このことを否定的また機械的に見るのではなく、教員vs児童・生徒数の改善に生かして欲しい。財務省は特に機械的な削減を要求すべきではない。
    そうしたなか特別支援学校の在籍者数が増加していることは、インクルーシブな社会を目指すはずの日本の「障害児」教育の問題点を示していると見るべきだろう。


    8月3日 文科省 公立高で地域人材育成

     文部科学省は1日、各地の公立高校を核に、地域を支えていく人材を育成するモデル事業を2019年度から始める方針を決めた。地元自治体や企業などと緊密に連携した推進体制づくりを促し、地域振興に関する実践的な授業を展開。進学や就職時の地元離れを食い止め、東京一極集中の是正につなげる。同省は「高校発の地方創生」と位置付けたい考えで、必要経費を来年度予算案の概算要求に盛り込む。

     地方の高校は都道府県立が多数を占め、市町村立の小中学校より地元との結びつきが薄いとされてきた。ただ、高校での過ごし方はその後の進路選択にも大きく影響することなどから、この段階での地域学習を充実させることで安定的な人材育成を目指す。

     将来の本格展開には、地域活性化に取り組む他省庁との協力強化とともに、各地でも財政や人員面で国の支援に頼らず自発的な取り組みを維持できるかが問われそうだ。

     文科省によると、通常の教科に加えて特別な授業を実施。自治体、企業やNPO法人、大学などが協力し、「商店街の活性化」「観光資源の活用」「高齢化で増大する介護ニーズへの対応」などの課題を取り上げる。生徒たちに現実社会のさまざまな課題を示しながら、自ら考え行動し、解決していく力を身に付けさせる。

     学校のカリキュラム上は、総合学習の時間や、学校単位で設定できる独自教科として取り組むことを想定している。

     モデル事業の対象校は人口減に悩む地域を中心に全国から公募し、10〜20校を選定。都市部の高校も除外せず、地元に密着していれば私立高を対象に含むことも検討する。数年間のモデル事業期間中は、授業経費、地域課題に精通したコーディネーターの人件費を国が負担する。


    「地方の活性化」は焦眉の課題であるが遅々として進展していないように見える。「成長」を第1の国家目標にあげることでますます地方と都市との格差は広がりつつある。やはり必要なことは「持続可能な発展」という思想だろう。とくにエネルギーの地産地消は、人材・資源・文化の地方での開発を促す。もう一度『里山資本主義』(角川書店)を紐解いてみるの必要化かも。


    8月3日 府教委 私大 定員割れ36%

     四年制の私立大のうち、今春定員割れしたのは36・1%で、前年度より3・3ポイント減ったことが日本私立学校振興・共済事業団の2018隼度調査で2日、分かった。文部科学省は都市部の学生偏在解消に向け、定員超過した私大への補助金不交付基準を厳格化。同事業団は、大規模校が超過を避けたことで、入学者の一部が地方などの小規模校に回ったとみる一方、学生確保に苦しむ小規模校も依然多いとしている。

     募集停止中などを除く全国582校の5月1日時点のデータを集計。定員割れは19校減の210校で、定員以上の入学者がいたのは20校増の372校だった。定員全体に占める入学者の割合を示す入学定員充足率は102・6%で、前年度より2・0ポイント減った。

     規模別では、定員3千人以上の大学の充足率は5・4ポイント減少したのに対し、100人以上200人未満で2・1ポイント増加するなど、定 員数が比較的小さい大学の充足率が改善。ただ、400人未満の大学は、いずれも定員を充足していなかった。地域別の充足率では、近畿(京都、大阪、兵庫を除く)の110・7%が最も高く、埼玉105・3%が続いた。京都は97・7%だった。一方、低いのは四国88・6%などで、地域偏在の状況は続いている。

     私立短大は301校を対象に集計。定員割れは3・3ポイント増の70・4%。全体の充足率は88・1%だった。



    8月1日 全国学テ 実験重視、理科離れ防げず

     3年ぶりに理科が加わった今年の全国学力テストの結果からは、子どもたちの理科は対する興味や関心が高まっていない傾向が浮かび上がった。人工知能(AI)の普及が予想される将来を見据え、科学技術的こ精通した人材の育成を急ぐ政府。実験や観察の重視は子どもの理科離れを食い止める一環だが、現場の教員は実験の失敗も許されないほど、恒常的な時間不足に悩まされているのが実情だ。

     7月末、東京都荒川区にある学習塾「早稲田アカデミー」の理科実験教室。実験器具がそろった一室で、小学5年の男女8人が水の電気分解に挑んでいた。

     薄めた希硫酸に電気を流し、水素と酸素を発生させる。狙い通り試験管に泡が発生すると「何か出てきた」と大喜び。その気体に線香の火を近づけると強く燃えるのを目の前で確かめ、酸素の性質も学んだ。

     実験教室が始まったのは8年前。既に理科への関心の低さが問題視されており、関係者は「本格的なサイエンス体験を提供する塾として、ブランド力を高める狙いがあった」と明かす。一度に教える子どもは最大18人に絞り、指導にはサポート役も含め4人が当たる少人数制を取る。講師の高野政哲さん(50)は「見守る大人が多い分、薬品を扱う実験も必ず全員に体験してもらうようにしている」と学校との違いをアピール。参加した子どもは「学校よりも自分でいろんなことを体験できた」と満足そうだった。

     2011年以降に実施された現行の学習指導要領は、実験や自然体験の時間を重視し、理科の授業は前の指導要領と比べて小学校で16%、中学で33%増えた。数字だけ見れば、子どもたちが実験に取り組む時間は十分あるはずだが、子どもの関心を高めるという成果には結びついていない。

     実験の経験が豊富な都内公立小のべテラン男性教諭は「昔は授業の前に予備実験をやる時間も十分あり、本番の授業に余裕を持って臨めていた。しかし、学校週5日制が始まったころから事情が変わった」と話す。土曜日が休みになった分、平日にしわ寄せが来るようになったためだ。さらに現行の指導要領で理科以外も授業のこま数が増え、多忙に拍車が掛かった。

     神奈川県の30代の男性教諭は「実験で失敗したり、自分の予想と違った結果が出たりして『そういうことだったのか』と子どもが納得し、もっと知りたいという好奇心を呼び起こすのが理科の授業の本質だ」と強調する。しかし、学校現場では実験で失敗しても時間が足りないため「本当はこういう結果になります」と教科書の内容を説明して授業を終えるケースもあるという。「上司や先輩に『教科書通りに進めればいいから』と助言され、それに従ってしまう教員も多い。そんな指導では子どもたちに面白さは伝わらない」。この教諭はため息をついた。

     教育課程の歴史に詳しい東京学芸大の大森直樹准教授(教育学)は、授業が増えたことで子どもたちも疲れ、面白さを見いだす余裕がなくなっていると指摘。「教育課程の構造をスリムにして、もっと学校現場に決定権を持たせるようにすべきだ。そうすれば創意工夫が生まれ、子どもが興味を待てるような授業もできるだろう」と話した。


    千葉大の寺井正憲教授(国語教育学)の話情報関連付ける指導必要

     小中学校いずれも、複数の情報を関連付けて理解する力があるかをみる問題が目立った。 次期学習指導要領が学びの課題に挙げた力であり、次期指導要領の完全実施を控え、今後重視してほしいとのメッセ一ジだろう。

     こうした問題は正答率が低く、単独の文章を読むだけの従来の授業では身に付力、ない。複数の資料を示し、必要な情報を読み取って組み声言わせる指導Eが求められる。ただ、資料を与えるだけでは子どもたちもやり方が分からない。方法を例示できるよう、教員自身も 教材研究を重ねる必要がある。


    筑波大の清水美憲教授(数学教育学)の話基盤概念の弱点解消せず

     小中学校ともに計算問題はできているが、具体的な場面で式の意味を問われると、正答率が下がる傾向が目立っている。例えは円の面積計算はできたとしても、円周率の定義を問われるような問題には課題がある。算数、数学の基盤になる概念に関わる弱点が解消されていない。知識・技能中心の指導で、本質に迫れていない可能性がある。基礎と応用を分断するのではなく、場面が示す文脈の中で知識を活用していくといった指導の見直しが必要【だろう。


    各地域の正答率の違いにそれほどの意義がないのだろうということは毎回思うことである。加えて「弱点」とされることは昔から弱点でありこの間克服されたようには思えない。おそらく日本の教育システムの根本問題がからんできる課題ではない。にもかかわらず、文科省は接木的に様々な課題を学校現場に押しつけている。そしてそのことで問題が解決するかの如く説明している。いずれにしても教員増を実現しなければ片がつかない。一部のエリートを育てるため(実際はその役にはたっていないのだが)の公教育ではないはず。


    8月1日 全国学テ 底上げ、地域差縮む

     文部科学省は31日、小学6年と中学3年の全員を対象に、4月に実施した2018年度全国学力テストの結果を公表した。3年ぶりに行った理科では、実験結果の分析や得られた知見について説明するなどの活用力に課題があった。国語、算数・数学も知識活用型問題が苦手な点は改善しなかった。全体的に正答率の低い地域と全国平均の差は小さく、学力の底上げ傾向が続いた。

     同時に学校や子どもへのアンケートも実施。実生活と関連づけた理科授業を行うなど学校側が工夫を進めたにもかかわらず、児童生徒の興味関心はあまり高まりを見せていないことも分かった。

     今回の理科は実験や観察過程を重視した出題で、結果の整理や分析はできていたが、それを踏まえ自分の考えを記述したり、条件を変えて実験を計画したりする段階に進むと正答率が低かった。

     国語、算数・数学は主に知識を問うA問題と、活用型のB問題に分けて実施。小中ともに活用型の正答率の方が12・0〜19・0ポイント低く、苦手傾向は例年通りだった。知識問題は60〜70%台で安定し、定着傾向を見せた。

     文科省は全国平均正答数を100と換算し、都道府県下位層との差をみた。理科は底上げが進み、下位3県の平均が小学校で3年前の98・7から99・0に、中学校は97・5から98・5となった。国語や算数・数学も下位層と全国平均にあまり差がなかった。正答率の傾向もこれに連動する。

     都道府県別の平均正答率(公立校)の上位は小中ともに秋田や石川、福井などが占める固定化が続いた。政令指定都市は所在道府県の他の地域より正答率が高いところが多かった。


    京都 全科目平均越え

     京都府では国語と算数・数学の正答率が、小学6年は11年連続、中学3年は4年連続で全国平均を上回った。3年ごとに行う理科は、小学6年は全国平均を上回り、中学3年は全国平均と同水準だった。

     滋賀県は、3年ぶりに実施された理科を含め、平均正答率が小、中学とも全科目で全国平均を下回った。


    小学国語資料読み取る力に課題

     平均正答率はA問題が54・9%、B問題が54・8%だった。慣用句の理解や、自分が伝えたいことを筋道立てて説明することは大半の児童ができている一方、目的に応じて複数の資料から必要な内容を取り上げて文章にまとめる力が不十分だった。

     図書館への行き方を説明した会話の内容として正しいものを選ぶA問題の小問では、正答率が90・9%に上った。「心を打たれる」という慣用句の意味を正しく選んだ児童も90・5%を占めた。

     一方、B問題では、するめを材料にした料理「かみかみあえ」を紹介した資料を読み、お薦めする文章を50字以上80字以内でまとめさせる記述式問題の正答率が13・5%にとどまった。よくかむことで虫歯予防になる、といった要素を資料から正しく取り上げ、書く力に課題が見られた。

     言葉の乱れをテーマに学級で話し合う場面を題材に、条件に沿って自分の考えを80字以上100字以内で書く問題はの正答率も33・9%と低調。話し手の意図を踏まえ考えをまとめることができていない答えが多かった。


    小学算数事象の説明が苦手

     平均正答率はA問題63・7%、B問題51・7%。単位量をそろえて比較する問題はできていた。一方、小数の除法の意味や、日常生活の事象について数量を関連付けて説明する問題を苦手としていた。

     A問題では、12を0・8で割る式を示し、この式で答えが求められる内容を複数選ぶ設問で、正しい二つを選んだのは40・1%。12メートルのリボンを分割する選択肢は選べているが、0・8リットルで12平方メートル塗ることができるペンキが1リットル当たりでは同平方メートル塗れるかという単位量を聞く選択肢が選べていなかった。

     B問題では、棒グラフと関連する2枚のメモの内容を解釈し、表現する出題があった。それぞれ異なる観点で書かれたメモが、棒グラフのどこに着目しているか説明を求めたが、正答率は20・9%にとどまった。無解答も17・9%だった。

     黒板に折り紙で作った輪飾りを付ける際、折り紙が100枚あれば足りる理由を、式や言葉で書かせる問題も正答率43・5%で、根拠を示しながら記述する力に課題が見えた。


    小学理科実験器具の扱い理解進む

     平均正答率は60・4%。知識を問う8問の正答率は78・1%だったものの、活用に関する13問は56・3%にとどまった。以前に比べて実験器具の適切な扱い方の理解が進んだ一方、実験結果を基に分析した内容を記述する力が不足していた。

     砂が混じった海水を、ガラス棒やろ紙などの器具を使って正しくろ過する方法を選ぶ設問では、71・2%が正しく答えた。過去の同種の問いと比べて正答率が上がった。

     ろ過した海水と水道水を、それぞれコン口で加熱して蒸発させたり、同じ体積の水の重さを比べたりして区別させる設問も、89・4%が正解を選び、複数の実験結果を分析できていた。

     川を流れる水による地面の削られ方について、実験結果を基に正しい選択肢を選び、理由を記す設問の正答率は20・2%と低かった。因果関係をきちんと分析、記述できていない答えが目立った。地面の削られ方に関し、他人の予想が正しいと仮定した場合にどんな実験結果が出るかを選ぶ設問の正答率も55・5%にとどまった。


    中学国語小説の内容理解は進む

     平均正答率はA問題が76・4%、B問題が61・7%だった。小説の場面展開や描写を読み内容を理解する力は多くの生徒が習得している一方、文章やグラフなどから情報を整理して内容を正しく捉え、目的により順序や構成を考えて適切な文を書く力が不十分だった。

     A問題では、父親とおもちゃ屋を訪れた少年が「幻灯」という機械を通して少女の幻を見て心を奪われる小説の一場面を取り上げた。父親と少年の言動の意味を正しく説明した文を選ぶ問題の正答率は83・2%。描写内容を多くの生徒が理解できていた。

     慣用句の「心を打たれる」の意味を尋ねる問題は、小6国語Aと同じ出題だが、この慣用句を使った一文を書かせる問題は正答率が22・8%と 低く、心を打たれたのは難なのかについて、主語が明確でないものが目立った。

     B問題では「天地無用」の意味を3割近い人が誤解していたとの文化庁の調査結果をグラフなどで示し誤解してしまう理由を記述させる問いで 正答率は13・9%だった。


    中学数学比例定数の理解改善

     平均正答率はA問題66・6%、B問題47・6%だった。比例定数の意味の理解については改善傾向だったが、数学的に解釈し、説明する問題は例年と同様に課題が見られた。

     A問題では、円柱の見取り図から投影図を尋ねる小問の正答率が84・0%で、空間図形の読み取りはできていた。比例の式の意味について正しい説明を選ぶ問題の正答率は66・4%で、2009年度調査の類題より11・5ポイント改善した。

     一方、歩いた道のりと残りの道のりの関係について正しい記述を選ぶ1次関数の意味の理解には課題が見られた。

     B問題では、アンケート結果から校内放送で流す音楽を決めるとの設定で出題。アンケートを基にくじ引きで決める場合、条件によってある曲が選ほれやすくなる理由について確率を使って説明させたところ、正答率は37・2%だった。

     上りと下りの列車の通過時間を表すグラフから、ある地点を列車が通過する時間の差を説明する小間は正答率が13・9%。いずれも数学的に表現する力が課題となった。


    中学理科水溶液濃度に苦手意識

     平均正答率は66・5%。知識に関する11問の正答率は68・2%、活用力を問う16問は65・3%で大差はなかった。過去の調査と同じく水溶液の濃度の理解が進んでおらず、実験の目的に応じて変化させる条件と固定する条件を整理して指摘する力にも不安が残った。

     アサリの砂出しを題材にした出題では、82・2%が軟体動物を正しく選べた一方、3cの食塩を同cの水に溶かすと濃度3%の食塩水ができるか選ぶ設問の正答率は47・3%にとどまった。過去の同様の問題でも正答率は5割前後で、理解が不十分なままだった。

     ガスバーナーの空気の量を変えて炎の色と金網に付くすすの量を比べる実験で、炎を当てる時間など変えずに固定すべき条件を挙げる問題の正答率は44・5%。実験目的に応じて条件を制御する力が不足していることがうかがえた。

     台風の周りの風向きを表した図と進路予想図を基に観測地点の風向きを予想する設問の正答率も37・8%と低く、複数の情報を基にした考察に課題が残った。