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  • 教諭、過重労働で提訴.26
  • 学校、遺族に「受け入れぬ」.27
  • 日教組の組織率、22・6%.28
  • 2月28日 文科省調査 日教組の組織率、22・6%

     昨年10月1日時点の日教組の組織率は前年より0・3ポイント減の22・6%で、過去最低を更新したことが1日、文部科学省の調査で分かった。最高は調査が始まった1958年の86・3%で、77年以降、42年連続の低下。日教組以外を含めた教職員団体全体の加入率も0・8ポイント減の33・3%と過去最低で、43年連続の低下だった。

     調査は大学と高専を除く公立学校勤務の常勤教職員約102万1千人に実施。教職員団体の加入者は約34万人だった。

     このうち日教組は前年比約4800人減の約23万300人だった。


    日教組だけの組織率低下ではないところが、最も深刻。「教員は労働者である」という考え方が極めて弱くなってきていることの表れではあるが、果たしてそことが学校の経営にプラスになっているかというと通説とは逆の現象が起こっているように見える。つまり、「ブラック職場」が当然だという風潮の中で、教員のなり手がないという深刻な状況が生まれている。希望すればだれでも教員になれるということだが、明らかに質の低下をもたらしている。その穴埋めに非正規職員を充てるという泥縄式の人事配置も、決して「子どものため」にはなっていない。中教審や文科省、政府(とりわけ財務省)は本気で処遇改善と定数改善に取り組まなければならない。


    2月27日 長崎高2自殺事件 学校、遺族に「受け入れぬ」

     長崎市の私立高2年だった男子生徒=当時(16)=が2017年4月に自殺し、学校側が設置した第三者委員会が「同級生のいじめが主要因」とする報告書をまとめていたことが26日、分かった。遺族が同日、長崎市内で記者会見し明らかにした。学校側はいじめ認定を不服とし、報告書を受け入れない考えを遺族に伝えてきたという。

     遺族や県によると、男子生徒は17年4月21日、長崎市内の公園で自殺しているのが見つかった。自宅には生徒が書いたとみられる手 記があり、同級生に「さんざんディスられた(侮辱された)」などと記されていた。

     両親の求めに応じ、学校側は同年5月、いじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」に該当する可能性があると県に報告。第三者委が同7月に調査を始めた。

     昨年11月にまとまった報告書は、男子生徒の手記や同級生へのアンケートから、男子生徒のおなかが鳴るのをちやかす行為などがあったとしていじめを認定した。しかし学校側は今年1月、「具体的事実が示されていない」として報告書を受け入れない意向を遺族側に示したという。

     報告書は学校側に対し、いじめを認め、再発防止策をまとめた書面を3月までこ遺族に提出するよう求めているが、学校側から連絡はないという。

     会見した男子生徒の父親(51)は「息子の死が無駄になっていると思う。いたたまれない気持ちと憤りを感じる」と訴えた。


    「いじめ自殺」を見とめると直接の賠償責任を負わなければならないという私立学校の事情があるのかもしれない。いじめと自殺の因果関係を先日の大津地裁は認めたのだが、このケースではそれを明らかにすることはかなり困難なのかもしれない。遺族の無念も理解できないわけではないが、「いじめ→自殺」という流れが一直線であるとは言いきれない面があるだろう。マスコミ報道を含めて静かな環境で議論することを前提に、学校側は「なぜ受け入れられないのか」を示す必要があるだろう。


    2月26日 大阪地裁 教諭、過重労働で提訴

     大阪府立高の男性教諭が長時間労働を強いられ適応障害を発症し休職を余儀なくされたとして、府に約230万円の損害賠償を求めて25日、大阪地裁に提訴した。代理人弁護士によると、公立学校の現役教員が学校側に過重労働の鷺任を問う訴訟は異例という。

     原告は西本武史さん(31)。訴状などによると、2012年に教諭として採用され、16年4月から現在の高校で勤務。17年度に世界史の教科担当とクラス担任に加え、生活指導やラグビー部顧問、海外語学研修の引率など業務が増えた。長時間労働から不安感や焦燥感が募り、同年7月に適応障害を発症し、18年までに2度休職した。

     パソコンの出退勤記録などから、時間外労働は発症2ヵ月前が約156時間、1ヶ月前が約127時間と厚生労働省による精神障害の労災認定基準を上回り、「学校側が教員の生命や健康を保護する安全配慮義務を怠った」と主張している。

     提訴後の会見で、代理人の松丸正弁護王は、教職員給与特別措置法により、授業や職員会議など4項目から外れた部活動などは「自発的な行為」とみなされ、実質的に残業代も支給されないことが問題の背景にあると指摘。「自発的行為も校務で心身を損ねたら管理者責任が生じる」とした。

     西本さんは「個人ではなく社会全体の問題と思い提訴を決意した」と涙をこらえながら話した。


    大阪府の酒井隆行教育長の話  働き方改革進める

     訴状が届いていないのでコメントは差し控えたい。府教育委員会としてはこれまでも長時間勤務縮減に向けた取り組みをしてき ており、今後も教職員の働き方改革を一層進める必要があると考えている。


    中教審での議論が給特法改正あるいは廃止の議論を避けて通っている中での提訴は、議論に一石を投じることになる。かつて馳浩文科大臣が、労基法での安全配慮義務違反を訴えるということが起きたらどうするのかと問われた時に、「匕首をつきつけられた思いだ」と答弁した事が現実となった。また、原告が31歳の若い教員である事も大きな意味があるだろう。労働運動とは縁遠い?地点からの提訴ということなのだろうか。


    2月23日 市民団体 夜間中学を新設して

     市民団体「京都府に夜間中学をつくる会」が22日、京都市下京区の府教育委員会を訪れ、府内での新たな夜間中学の開設を要望した。府教委が行ったアンケートで夜間中学での学習を希望する回答が15件だけだったことについても、「この結果をもって『ニーズが少ない』とはすべきでない」と再調査を求めた。

     夜間中学は十分な中学教育を受けていない人らが学習する施設。近年、国は都道府県に1校の開設を進めている。府内には下京区に 市立洛友中があるが、市外の人は通えないため要望活動を行った。

     会の武村守代表ら4人は、府教委がニースを調べるために昨年行ったアンケートを採り上げ、「2万枚を配りながら回答が15件とは、ニーズが少ないのでなく、掘り起こす努力をしていないのだ」と指摘。

     「不登校の子どもや外国人は増加しており、新たな夜間中学は必要だ」と訴えた。

     府教委の担当者は「有識者でつくる検討会議を3月に開き、方針を議論したい」と応えた。



    2月21日 高校生の就職 内定率91・9%

     今春卒業予定で就職を希望する高校生の昨年12月末時点の就職定率は、前年より0・4ポイント高い91・9%で、9年連続で上昇したことが20日、文部科学省の調査で分かった。バブル期の1990年度(92・1%)に迫る数字で、76年度の統計開始以来、12月末としては2番目に高かった。

     文科省の担当者は「人手不足を背景に企業の採用意欲が高い状況が続いている」と分析。これまで大卒を採用していた企業が高卒の人材を求める動きも出ているという。

     調査は、全国の国公私立高校を卒業予定の約105万9千人のうち、就職を希望する約18万6千人が対象で、都道府県教育委員会などを通じて実施した。約17方1千人が内定を得ていた。

     内定率は男子が0・3ポイント増の92・7%、女子が0・4ポイント増の90・5%。都道府県別では富山97・1%、三重96・8%、秋田96・7%の順で高かった。最も低いのは沖縄の70・2%で、大阪84・8%、東京86・7%と続いた。京都は88・3%、滋賀は92・9%だった。

     東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県では、岩手96・0%(0・3ポイント増)、宮城92・1% (1・3ポイント減)、福島96・3%(0・1ポイント減)だった。


    政府の統計に信憑性がなくなっている中での発表。よもや不正はないだろうが、高卒の就職者は全生徒の約2割。8割は進学などということなのか。この2割の高卒者がどれだけのキャリアアップが可能な社会であるのかということが、若者を使い捨てにしない社会ということであろう。幼児教育無償化よりも、目の前の「夢」を実現できるフォローアップが政治の責任でもあるだろう。


    2月19日 大津地裁 「いじめが危険行為と認定された」

     「いじめ防止対策推進法」が成立するきっかけとなった大津いじめ自殺事件。19日の民事訴訟判決(大津地裁)は、元同級生2人にほぼ請求額どおりの約 3700万円を遺族に賠償するよう命じた。閉廷後、自殺した中学2年の男子生徒=当時(15)=の父親が記者会見し、「これまでのいじめ訴訟を大きく前進させる画期的な判決。いじめで命を断つ子をなくすための闘いで、息子に託された最後のメッセージだった」と、声を詰まらせながら、思いを語った。

     父親は判決について、「7年間という時間は正直、長かった。いじめが自死に追い詰める危険な行為だと認定された。息子の名誉回復をしたいと提訴したが、いじめ訴訟は敗訴が続き、どこまで証拠を集めればいいか分からず、もがく日々だった。しかし全国から支援が寄せられ、世論が動き、警察の強制捜査に、新法につながった。いろんな人たち、子どもたちの思いが乗っかった裁判で、負けられない闘いだった」と話した。

     また「この判決を勝ち取った息子は、亡くなったがよく頑張った。いじめは必ずしも暴力を伴うとは限らず、仲間外れや執拗な屈辱を与える行為も、自死に追いやる危険な行為です。いじめの被害者が司法救済を受けられる仕組みづくりを急いで」と願った。

     同事件で大津家裁は2014年、元同級生2人には暴行を認定して保護観察処分に、残る1人を不処分としている。


    18日 いじめと自殺の関連焦点

     大津市で2011年10月、中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺したのは元同級生によるいじめが原因として、遺族が元同級生3人と保護者に計3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、大津地裁(西岡繁靖裁判長)が19日、判決を言い渡す。最大の争点は、いじめと自殺の因果関係だ。提訴から7年余り。いじめの問題を社会に広く投げかけ、いじめ防止対策推進法が成立する発端となった事件だけに、司法の結論に注目が集まりそうだ。

     裁判で遺族側は、男子生徒が自殺の前日に「ぼく死にます」との電話を元同級生にかけていた経緯などから、いじめを苦に自死したと主張。一方、元同級生側は男子生徒に馬乗りになるなど一部の行為自体は認めたものの、いじめではなく、「遊びだった」などと反論している。いじめの認識自体に隔たりがある。

     昨年9〜12月の尋問でも、元同級生たちはいじめとされる行為について、仲間内での「じゃれ合い」や「罰ゲーム」だったと述べ、男子生徒を身体的、精神的に傷つけた認識はなかったと振り返った。一部の保護者は「いじめとは思っていなかった」と答えた。

     ただ、大津家裁は14年、元同級生のうち2人について男子生徒への暴行などを認めた上、保護観察処分にした。残る1人は不処分だった。15年に成立した遺族と大津市との和解では、地裁が市の第三者調査委員会の報告書に基づき、複数のいじめ行為を事実認定。市側の不適切な対応と男子生徒の自殺の予見性を認める判断を示した。判決では地裁が報告書を改めてどう評価するのか注目される。

     訴訟は12年2月、遺族が市のほか、元同級生3人と保護者に計7700万円の損害賠償を求めて提訴した。当初、市側は争う姿勢を示したが、後に自殺との因果関係や過失責任を認めた。

     男子生徒の自殺から7年4カ月。元同級生たちは成人になった。判決を前に、男子生徒の父親は「成人を迎えるまでに自らの行為を顧みてほしかった」と話し、「いじめは人を死に追いやる恐ろしい行為なんだという因果関係を証明したい。学校現場や教師への警鐘となり、いじめ自殺の未然防止に生かせるはずだ」と訴える。


    20日【解説】 被害救済に道

     「死ぬとまでは思わなかった」「遊びのつもりだった」。今後、いじめの加害者側にこんな言い訳は許されないことを大津地裁の判決は示した。悪質ないじめが危険な結果を生む可能性があるのは「常識」だと認め、被害者側に広く法的救済の道を開いた。

     これまでのいじめ訴訟では、被害者側に高度な立証責任を課してきた。賠償責任を負う法律上の「因果関係」は、加害行為と損害という事実関係に加え、加害者が結果を予見できたことが成立要件とされる。

     教育の専門家である教師や学校と異なり、いじめの知識が乏しい中学生を訴える場合には、予見可能性を証明するハードルは一段と 高く、同種の訴訟で壁になってきた。

     中学生の加害者にも自殺の予見可能性を認めた今回の判決の背景には、いじめへの認識の変化がある。教育現場でのいじめは後を絶たず、自殺に至るケースも少なくない。大津の事件をきっかけに成立したいじめ防止対策推進法が2013年に施行した後も、5年間に43人の小中高生がいじめを苦に自死を選んだ。「いじめは自殺につながる」という認識が広がってきたことを踏まえた。

     市の第三者調査委員会の報告書や中学校のアンケートなど、約500点もの証拠の存在も大きかった。遺書がない中、クラスメートの証言などから加害者やいじめの詳細を時系列に特定できた。いじめ被害者が自殺に至る心理的プロセスを学術論文を引用して科学的に主張し、因果関係を補強した。こうした積み上げが、画期的ともいえる判断につながった。

     判決は遺族側のほぼ請求通りに賠償を命令、いじめ自殺で加害者に高額賠償を求める可能性が拡大した。いじめの抑止にとって強力な「重し」であることを社会全体で受け止めたい。


    いじめと自殺との因果関係は極めて難しい争点。1990年に福島地裁いわき支部は「過失相殺ないしはその類推過用の考え方」によって、原告に7割の被告に3割の過失責任を認めていた。つまり、いじめによって自殺に至ったという経緯を3割程度認めたということだ。それから30年近く経って被告に10割の過失を認めたということになった。ここで確認しておかなければならないのは「いじめ→いじめ苦→いじめ自殺」というようなリニアな関係が常に成り立つということではなく、どのレベルにおいてもそこから「生還」できるルートがある、あるいは用意されなければならないということ。


    2月14日 大阪 対教師暴力学校側提訴へ

     大阪府四條畷市の市立中で教えていた40代男性教諭が、2013年に当時1年生で13歳だった男子生徒から暴力を受けて鼻の骨を折るなどの重傷を負った際、学校側が救急搬送を要請せず、公務災害の申請も長期間拒むなど不適切な対応を繰り返したとして、市や府に約920万円の損害賠償を求めて近く提訴することが13日分かった。

     文部科学省は、生徒に暴力を受けた教諭が学校側と訴訟になる事例は「把握していない」としており、極めて異例とみられる。専門家は「被害に苦しむ教諭らの姿はこれまで顧みられなかった」と指摘。教育現場で波紋を広げそうだ。教諭は「学校に使い捨てにされた」と話している。

     中学校がまとめた生徒指導報告書によると、13年12月、生徒が給食時間中に教室の扉を蹴った。注意した教諭に暴言を吐き、顔を殴 打。生徒と教諭は数分間もみ合いになった。報告書は「対教師暴力」と位置付けた。

     生徒に強い力で握られた両手首を痛めた教諭は、学校業務や日常生活が困難になった。関東の実家で療養し、手術も複数回受けた。学校側は警察に通報せず、救急車も呼ばなかった。教諭は自ら被害届を提出。生徒は児童相談所に通告された。

     教諭は公務災害を申請するよう求めたが、校長は「保険で治療しないか」「目撃者がいないから書類が書けない」として約3カ月後に手続きするまではぐらかし続けた。

     代理人の米倉正実弁護士によると、療養中にパチンコ店にいた教諭を何者かが盜撮し、写真を学校側に持ち込んだ。市教育委員会は処分を前提に服務規律違反の疑いで教諭を繰り返し聴取した。

     米倉弁護士は「学校は安全配慮義務を怠って教諭を守らず、違反行為に当たらない私生活の行動で調査するなど嫌がらせと受け取れ る対応をした」としており、文科省にも通報した。

     市教委は「教諭が不満を持っているのは申し訳ないが、対応に問題はなかった」とコメント。当時の校長は「公務災害は加害生徒側に 納得してもらった上で申請したかった」と話している。


    教育委員会や管理職がどちらを向いているのかがよく分かる事案のような気がする。教職員の出退勤を把握していない事が罰金刑になることもも定かでない現場のだから仕方がないといえばそれまでなのだが、教育委員会や管理職は教職員が安全に働けるようにすること、つまり「安全配慮義務」があることを今回の事案は示している。もちろん精神的疾患での休職などもその扱い方によっては「安全配慮義務違反」とされることがあることも、管理職も職員も知っておく必要がある。なお、療養中にパチンコ店に出入りした事は問題にならないはずだが、これを処分の対象と使用することは更に納得が行かない。


    2月13日 市19年当初予算案 教員働き方改革推進

     京都市の19年度予算のうち、教育委員会分は前年度比0・1%減の1093億7900万円を計上した。教員の働き方改革推進予算に2億3300万円を充てた。

     教員の働き方改革では、業務の一部を担う部活動指導員を約100人、校務支援員を72校園とそれぞれ前年度の2倍配置するため1億9300万円を計上。授業準備の負担軽減と授業改善を図ろうと、資料などを映像で示すデジタル教科書を全高校で段階的に導入するため、初年度は150万円を盛り込んだ。

     いじめ・不登校の対策には4億2700万円を計上。スクール力ウンセラーは小学校での週8時間配置校を43校から100校程度に増やし、スクールソーシャルワーカーは51校区から全中学校区に拡大させる。

     新学習指導要領に関連して、20年度から全ての市立小の1、2年生で英語に慣れ親しむ「英語活動」の時間を独自に設け、19年度は読み聞かせ用に全校配布する大型英語絵本の購入費などに300万円を充てる。

     プログラミング教育の指導計画や消費者教育事例集を作成するほか、ALT (外国語指導助手)も6人増やす。


    ようやく市教委も「働き方改革」として予算編成を行うようになったのは喜ばしいし、その予算が「人」に充てられているのは評価できる。しかし、この予算編成で本当に教職員の働き方改革に棹差す事が出きるのだろうか。というのも、評価が定かでない小学校に(とりわけ十分な母語周到が出来ていない低学年に)英語活動を設ける。あるいは、プログラミング教育や消費者教育を行う必然性があるのかも疑わしい「教師の仕事」を積み上げていることだ。人を増やす事と業務を削減する事は両輪でなければならないのに、業務を削減する事には極めて消極的なように思える。


    2月13日 幼保無償化 待機児童後回し

     幼児教育・保育の無償化を実施するための子ども・子育て支援法改正案が12日、閣議決定された。安倍晋三首相は「70年ぶりの大改革だ」と自賛する。一方、今春の認可保育所の入園可否通知が届き始め、会員制交流サイト(SNS)上では「保育園落ちた」の書き込みが増加。「無償化より待機児童の解消を」と訴える保護者の声は根強く、政権の重要政策に対する保護者の視線は冷ややかだ。

     「小学校、中学校9年間の普通教育無償化以来、70年ぶりの大改革だ。産み、育てやすい国へと大きく転換していく」。12日の衆院予算委員会。安倍首相は「看板政策」である幼保無償化の意義を強調した。

     2017年秋の衆院選の目玉公約として突如、打ち出され「突貫工事」(政府関係者)で整備された無償化だが、課題は山積Lている。希望しても認可保育所などに入れない待機児童は昨年4月時点で全国に約2万人もいる。「まず、認可保育所の整備を」というのが保護者の切なる願いだ。

     認可保育所や認定こども園などは無償化されるが、子どもが認可施設に入れなかった保護者の救済のため、政府は国が定める指導 監督基準を満たさない認可外施設でも5年間、月3万.7千円を上限に補助する。

     国の調査結果では、認可外は認可保育所に比べ死亡事故が多く、安全性に課題を残す。衆院予算委で立憲民主党の阿部知子氏は「5年間そこに国のお金を補助して子どもを危険にさらす方向は間違っている」と指摘。しかし安倍首相は「認可外施設の質の確保、向上を図っていく」と述べるにとどまり、具体策は示さなかった。

     2月上旬は、今年4月の認可保育所の入園可否通知が相次ぐ時期。SNS上には「#保育園落ちた」という「ハッシュタグ」(キーワードで検索できる目印)を付けた投稿があふれている。

     「認可外も全落ち」「公務員フルタイム共働き、両実家遠方県外で落ちた。市でもない田舎なのに」。悲痛な叫びの中には「保育士でも落ちた」の書き込みもあった。

     「#無情化より全入(全員が入園)」に関する投稿も。「なんで政府は、保育園に入れず困ってる人をサポートしないのか。増税するなら土地買って保育園作って」。政府の看板政策に対する保護者の見方は厳しい。

     子どもが保育所に入れず、国に不満をぶつけるインターネットの匿名プログが反響を呼び、国会前での抗議行動に発展した「保育園落ちた 日本死ね」から約3年。首都圏を中心に待機児童問題に取り組む「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表は「SNSへの書き込みを見ると、当時に比べ、建設的な発信が増えた」と指摘する。

     保育士の処遇改善を求める声が多いのが特徴だ。保育所の人手不足は深刻だが、資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」は 数十万人にも上るとされる。保育士の平均年収は約342万円と全産業平均を約150万円も下回っており、低い賃金が離職の背景にある。

     「保育の質を保ちながら受け皿を増やすには、無償化ではなく保育士の処遇改善が最優先」。そんな声がネットに広がる現状を天野 氏は「悪政が市民をより賢くした」と皮肉った。


    この「無償化」は、憲法改正と消費税の引き上げ策に公明党を引きずり込む仕掛けだったのでは思える。現時点ではその適否は分からないが、「悪政が市民をより賢くした」なら幸いかもしれない。「母親が子育てをする」という伝統が日本の社会だとする「美しい日本を取り戻す」安倍政治では、子どもを育てるための哲学に乏しいと思えるが。


    2月9日 政府 全虐待事案緊急安全確認へ

     千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さん(10)が死亡し、障害容疑で両親が逮捕された事件を受け、政府は8日、児童虐待防止に向けた関係閣僚会議を開いた。安倍晋三首相は「子どもの命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くすとの強い決意で虐待の根絶に取り組んでほしい」と指示し、1ヵ月以内に全ての虐待事案の緊急安全確認を行らことを表明した。通告元の情報を提供しない新ルールや、児童相談所の体制強化を加速させることも決めた。

     児童相談所などの不手際が相次ぎ発覚した千葉県野田市の小4女児死亡事件。政府は深刻な虐待事件の連鎖を断とうと、虐待事案の1カ月以内の緊急点検や守秘義務の徹底、児相の体制強化の前倒しを柱とする緊急対策を打ち出した。安倍晋三首相は8日の関係閣僚会議で「やれることは全てやる」と力を込めたが、現場にはハードルの高い「看板ありき」の対策に映り、実効性は未知数だ。

     点検対象は数万件

     児相が在宅で指導している全ての虐待事案について、1カ月以内に安全を確認する―。厚生労働省によると、新たに指導事案になるのは年間3万件ほどで、複数年にわたるものもある。点検対象について、担当者は「現段階では数万件としか言えない」とする。

     きちんと業務をこなしている児相であれば、安全確認に時間はかからないとの見方もあるが、日本社会事業大の有村大士准教授は「1人で200件以上の案件を担当する職員もいる。夜に訪問しないと子どもに会えない家庭も多い。大きな負担になるのではないか」と危惧している。

     文部科学省も1カ月以内に、全国の公立小中学校・教育委員会を対象に、虐待が疑われるケースの点検作業を行うことになった。ただ、柴山昌彦文科相が「具体的なやり方は、この後しっかり詰めたい」と述べたように、詳細な調査項目は「ほとんど決まっていない」(同省幹部)のが実情。虐待防止につながる成果を上げられるのかどうか見通しは立っていない。

     別の幹部は「学校や教委と児相などとの連携の実情を把握し、現場にしっかり取り組む意識付けを促す必要はある」としつつ「普通は具体的な中身を詰めてから対策を打ち出すが、今回は逆のケースだ」と打ち明けた。

     手取り足取り

     野田市教委が、死亡女児の父親(41)の求めに応じ、女児が虐待を訴えた校内アンケートのコピーを渡したことが問題視され「通告元は一切明かさない、資料は一切見せない」との新ルールも決まった。

     厚労省幹部は「こういうルールを作ること自体、恥ずかしいことなのだろうが、手取り足取りやるしかないのだろう」と現状を受け止める。

     子どもの人権問題に詳しい村中貴之弁護士は「政府として取り組む姿勢を見せようとしたのだろうが、威圧的な保護者には弁護士による対応を徹底するなど、もっと実効性のある対策こそが必要ではないか」と話した。

     昨年3月に東京都目黒区で5歳の女児が死亡した虐待事件を受けて打ち出された「児童福祉司」の増員も前倒しされることが決まった。

     ただ、児童福祉司は任用資格。社会福祉士などの資格を持っていたり、大学で心理学を学び、実務経験を積んだりするなど条件を満たすことが必要となる。

     一人前に仕事ができるようになるまで3年はかかると言われる。死亡した野田市の女児を担当していた千葉県柏児相も最近増員された影響で、児童福祉司の平均勤務年数は4年余り。「ベテラン未満」が多い。

     西南学院大の安部計彦教授(児童福祉学)は「増やして終わりでは駄目。経験豊富なスーパーバイザー(指導役)を増やしたり、スキルアップにつながる研修を充実させたりすることが必要だ」と強調している。


    幼い子どもが理由のいかんを問わず胸に迫るものがある。今回の事件で政府が緊急対策を取ることは歓迎するのだが、マスコミなどの報道によっていわゆる社会問題となって「あらゆる手段を尽くす」というのでは遅きに失するというものだろう。かつて大津市の中学生自殺事件をきっかけにとられた政府の対応は、きわめて評判の悪い「いじめ防止対策推進法」と道徳の教科化であった。その後のいじめ認知数は減らず増えている。本紙の見出しには「看板ありき 実効性未知数」とあった。


    2月5日 山口 高2自殺 教職員もいじめ

     高2自殺 教職員もいじめ山口県周南市で2016年、県立高2年の男子生徒が自殺した問題で「県いじめ調査検証委員会」 (委員長・堂野佐俊山口学芸大教授)が同級生からのいじめがあったと認定し、教職員も雑用を押し付けるなどの「いじめに類する行為」をしていたと認めた報告書をまとめたことが5日、分かった。検証委は同日、村岡嗣政知事に報告書を手渡した。午後に概要を公表し説明する。

     13年成立のいじめ防止対策推進法は生徒の行為のみをいじめと定義し、教職員は含まない。だが検証委は部活顧問ら教職員が関与した五つの事例について、男子生徒のストレス要因になったとしていじめに類する行為と判断した。遺族側代理人の石田達也弁護士は「異例の認定で学校の責任は重い」と話した。

     報告書によると、五つの事例は@全校生徒の前で名前を呼んだA雑用を押し付けたB試験中に「ちゃんとやったんか」と話し掛けたC対応に困るようなことを言ったD不必要に名前を連呼した。

     男子生徒がストレスを感じたと判断した理由として、全校生徒の前で名前を呼んだことに関し「ツイッターへの投稿やテストの問題用紙に、名前を呼ばれることは恥ずかしく嫌だったと主張している」と指摘。雑用の押し付けについては「嫌だと友人に伝えており、理不尽さや負担を感じていたと考えられる」とした。

     検証委は報告書で教職員の行為に他の生徒が同調し、次のいじめを生み出す端緒となる可能性があると強調。適切ないじめ対策と部活動運営、教職員による十分な配慮と対応があれば、自殺を防ぎ得た可能性があると結論付けた。

     山口県光市の県立高に在学していた男子生徒は16年7月、周南市の駅で貨物列車にはねられ死亡。県教育委員会は17年11月、他の生徒からのいじめがあったと認めた第三者による調査部会の報告書を公表した。遺族側が再調査を求め、県常設の検証委が同級生や教職員などを聞き取りした。検証委は報告書で他の生徒からのいじめについて、調査部会が認めなかったものも含め18事例を認定した。


    【続報】 教員のいじめも要因

     山口県周南市で2016年、県立高2年の男子生徒が自殺した問題で「県いじめ調査検証委員会(委員長・堂野佐俊山口学芸大教授)が5日、他の生徒からのいじめがあったと認定し、教職員も雑用を押し付けるなどの「いじめに類する行為」をしていたと認めた報告書を村岡嗣政知事に提出した。

     13年成立のいじめ防止対策推進法は生徒の行為のみをいじめと定義し、教職員は含まない。だが検証委は部活顧問ら教職員が関与した五つの事例について、男子生徒のストレス要因になったとしていじめに類する行為と判断した。遺族側代理人の石田達也弁護士は「異例の認定で学校の責任は重い」と話した。

     堂野委員長は県庁で記者会見し、教職員の行為はいじめに相当するとの見解を示した。他の生徒によるいじめなども含め、ストレス要因となり自殺につながったと述べた。遺族は「教員がいじめを自ら行い、息子を傷つけていたことには強い憤りを禁じ得ません」とのコメントを出した。

     報告書によると、五つの事例は@全校生徒の前で名前を呼んだA雑用を押し付けたB試験中に「ちゃんとやったんか」と話し掛けたC対応に困るようなことを言ったD不必要に名前を連呼した。

     全校生徒の前で名前を呼んだことに関し「ツイッターへの投稿やテストの問題用紙に、名前を呼ばれることは恥ずかしく嫌だったと主張している」と指摘。雑用の押し付けについては「理不尽さや負担を感じていたと考えられる」とした。

     検証委は報告書で教職員の行為に他の生徒が同調し、次のいじめを生み出す端緒となる可能性があると強調した。

     山口県光市の県立高に在学していた男子生徒は16年7月、貨物列車にはねられ死亡。県教育委員会は17年11月、他の生徒からのいじめがあったと認めた第三者による調査部会の報告書を公表した。遺族側の要望を受け県常設の検証委が再調査し、他の生徒からのいじ めについては調査部会が認めなかったものも含め18事例を認定した。


    部活掛け持ち「板挟み」

     山口県周南市で男子生徒が自殺した問題で、県の検証委員会は教職員の実質的ないじめを認めた。自殺直前には二つの部活を掛け持ちし、それに起因するいじめを他の生徒から受けていた。報告書は両部の顧問が適切な入退部手続きをせず「板挟み的状態」になったと問題視。自殺から約2年半がたち、教職員の認識の甘さ、不手際の数々が露呈した。

     報告書などによると、男子生徒が他の生徒から受けていたいじめとして、体形や髪形への軽い口調でのからかい、教室からの閉め出し、下校中に同級生にジュースやお菓子をおごる―などがあった。

     男子生徒はテニス部で活動していたが、部員不足の野球部顧問に「助っ人」を頼まれ、2016年7月から本格的に練習に参加。ある教職員には「眠れない」と訴え、複数の生徒には練習で疲れたことや手のまめの痛さを訴えていた。

     同21日にテニス部のLINE(ライン)グループから退会させられ、部員に汚い言葉で部室の荷物を持っていくよう促された。この二つの出来事もいじめと認定された。同数日に貨物列車にはねられ死亡した。

     報告書は「ライン外し」や両部間で板挟み的な状態になったことが影響し、大切にしてきた「居場所」を失ってしまうと感じて孤立感と絶望感が強まり、自殺のきっかけになった可能性があるとした。


    教員が関わった「いじめ自殺」で思い出すのは、「葬式ごっこ事件」(1986 中野富士見中)。寄せ書きに教員も連署していたという事件。大人のささいな「のり」が他の子どもの「いじめ」を承認・追認することになる事例として取り上げられることがある。今回の事件で教員がどのように関与したのかはの詳細は分からないが、「ことば」の持つ力を大人は自覚すべきである。


    2月5日 京都府 自殺者、90年以降で過去最少

     京都府が発表した2017年の府内の自殺者数はピーク時から半減し、統計が残る1990年以降で最少となった。経済状況の好転などに加え、府などによる相談機能の強化といった対策が一定の効果を上げたとみられる。ただ、計算上はほぼ毎日1人が自ら命を絶つ厳しい状況が続いているため、府は今後も対策を強化していく方針。

     2017年の府内自殺者数は342人だった。前年比26人減で、最も多かった00年の696人から51%減少した。人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率は13・2で、徳島県(12・0)、神奈川県(12・2)に続く全国3番目の低さとなった。速報値のため、年代別や動機別などの詳細は未公表。

     府では、09年10月に自殺ストップセンターを開設し、臨床心理士などが相談を受け付け、必要な支援窓口につなぐ事業を開始した。15年3月には府自殺対策条例を制定。14年に18・0だった自殺死亡率を20年に16・3に引き下げる目標を盛り込んだ計画を定め、相談体制や啓発の拡充に取り組んだ。40代以上の自殺者数は減少を続けている。

     一方、若者の自殺対策として、府はインターネット上での検索連動型広告の導入や学校での予防教育などに取り組んでいるが、30代以下の自殺者数は横ばい状態が続いている。西脇隆俊知事は「1人でも少なくなるよう、今後もより一層の対策を進めていきたい」としている。