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  • 高校普通科各校に特色.29
  • 避難所の地下化に住民反発.29
  • 4月7日 京都市 避難所の地下化に住民反発

     京都市下京区の元植柳小跡地で進むホテル建設計画で、市と事業者側が、災害時の避難所に指定されている同校体育館を近くの児童公園地下に移設し、避難所に再指定する案を提示していることが分かった。住民の一部が「まるで防空壕(ごう)だ。災害時に周りの状況が分からない」と反発する。

     9年前に閉校した同校の跡地活用のため、地元代表として植柳自治連合会副会長や大学教授ら6人による選定委員会が、3事業者が提案した計画案を審議。昨年6月〜今年2月の計5回の会合をへて、タイの高級ホテルの誘致を示した安田不動産(東京)を契約候補事業者に選んだ。

     同社の提案によると、跡地を60年間借り、客室数約160のホテルを建設。校舎とともに併設の体育館を解体して公園の地下に再整備。10メートルほど掘り、エレベーターや階段を整備して住民の交流やスポーツの場にする。避難所に指定し、地震発生時などには住民の滞在場所として活用する。ただ、水害時には浸水の恐れがあるためホテルを避難所として住民に開放するという。

     市が2月下旬にこの案を公表すると、一部の住民が猛反対。10人強でつくる「植柳校跡地問題を考える会」の大屋峻代表は「災害時に住民を地下に押し込めるなんて非常識だ」と憤る。水害時などで避難所となる予定のホテルについては「宿泊客が多ければ避難に支障が出る」と問題視。「高齢化する地元にとって、利便性の高い商業施設などの方が良かった」と話す。

     市は安田不動産と近く基本協定を結んだ後、自治連を加えた3者の事前協議会を設け、避難マニュアル作りなどを進める方針。市資産活用推進室は「選定委員会には地元代表の委員も加わって議論した。もし3者の事前協議で合意できなければ、優先交渉権は別の提案事業者に移る」とする。

     京都大防災研究所の牧紀男教授(防災学)によると、地下体育館とホテルを避難所に同時指定した場合、全国的に極めて珍しいケースになるという。「地下避難所は、エレベーターが止まった地震時でも高齢者が避難できるのか懸念される」と指摘。ホテルを水害時などの避難所に指定する案に関しては「住民の受け入れ方などホテル側と住民の念入りな協議が不可欠だ」と語る。

    ■誘致手法、透明性欠く

     元植柳小跡地(京都市下京区)を活用したホテル建設計画案を巡り一部の住民が不信感を募らせた背景には、事業者名やその提案内容、選定に関わる委員会の審議を一律非公開にした市の対応がある。有識者からは「透明性の確保」を求める声が上がる。学校跡地に次々とホテルを誘致する京都市の観光推進の施策が住民の総意を積み上げているのか、という問題を提起している。

     財政難の市にとって、運動場などまとまった敷地のある学校跡は、安定的な貸付料収入を見込めるいわば「虎の子」だ。外国人観光客の急増に伴うホテル開発ラッシュで市内の用地取得が年々難しくなる中、開発業者にしても魅力的に映る。複数業者の提案を比べる「公募型プロポーザル」と呼ばれる今回の手法は、清水小(東山区)、白川小(同)、立誠小(中京区)跡地のホテル計画でも取り入れられた。

     地元の代表者も加えた委員会が事業者からの提案を審査するが、市は「企業秘密を守る。もし落選しても他の学校跡地の活用でまた提案するかもしれない」との理由から選定過程の議論を非公開にし、委員には守秘義務を課す。

     どこの事業者がどのような施設を建てるのか―。地元代表の委員以外の地域住民には、契約の候補事業者が決まって計画案が公表されるまで具体的に分からない仕組みだ。同志社大の新川達郎教授(公共政策論)は、市の非公開の対応について、「審議の節目ごとに、地域住民に一定の情報開示をするのが当然だ」と話す。

     市内の多くの小学校は明治時代に町衆の寄付で設立された元番組小で、住民の愛着は強い。ましてや避難所の再指定は住民の安全に直結する。市のいう「地元の代表者」は、「地域の総意」を担っているわけではない。市には跡地活用策を公募する段階から、幅広い住民の多様な意見を、議論に反映させる姿勢が求められている。


    学校統廃合を巡っては「京都方式」ということばが一定定着している。それは番組小学校の伝統を生かした地元との話し合いの中で合意形成を行うというものだった。確かに形式上は地域住民の代表(?)によって統合が求められるという形をとるのだが実際は行政主導のトップダウンを隠蔽する方式だとも言える。そして「跡地利用」については十分な再利用計画を示さないまま塩漬けにして、ほとぼりの冷めたころに処分するということになっている。本来番組小学校の伝統というなら地域コミニティーとしての役割を重視するべきであろう。加えて京都市の観光行政はこのままでいいのかと来年の市長選で問うべきであろう。


    4月29日 教育再生会議 高校普通科各校に特色

     高校生の7割が在籍する普通科の在り方を議論している政府の教育再生実行会議が、各校ごとに重視する教育を明確にし、特色を類 型化するよう提言することが28日、関係者への取材で分かった。普通科の区分は維持しつつ、各校が示す特色により「国際化対応」「地域に貢献する人材育成」などの枠組みに分けることを想定。画一的とされる普通科の学びの改革を促す。5月中旬にまとめる第11次報告に盛り込み、安倍晋三首相に提出する。

     高校段階での学びは、生徒の進学や職業選択に大きく影響する。ただ、グローバル化や、人工知能(AI)などの技術革新が進み、社会環境が大きく変わろうとする中、普通料では、大学受験を念頭に置いた指導や授業編成が大半で、生徒の多様な能力や関心に十分に応えられていないとの指摘がある。このため、文部科学相の諮問機関である中教審の今後の議論でも大きなテーマとして扱うことになっている。

     関係者によると、実行会議では、画一的な指導の原因として、各校が具体的な教育目標を掲げていないことに着目。提言で全国の高校に「どういう力を持った生徒に入学してほしいか」「特に力点を置く学習内容」「履修単位の認定方針」を明確にするよう求める。

     それらを踏まえた上で普通料を@国際的こ活躍A科学技術の分野をけん引B地域課題を解決―といった各校の人材育成のイメージに応じて分類し、学びの変化を促す。具体的な分類や履修単位の設計については、中教審の議論に委ねる。

     また、今後、文系・理系の枠組みを超えた思考力が一層求められるとして、授業編成で文理分断型にならないことが重要と強調。大学入試でも文系・理系の科目をバランス良く問う方式に留意するよう言及する。

     提言では、高校教科書の見直しにも触れる。特に情報や工業などの技術革新が目覚ましい分野は、通常の4年ごとの改訂を待たず、弾力的に空身を変えられる仕組みの検討を要請する。


    「文系・理系の枠組みを超えた思考力が一層求められる」のは間違いのないことだろうが、「特色のある普通科」と整合性があるのだろうか。再生会議の方向が即戦力を要請する(未来を見つめた学力ではない)学力を生徒につけることを目指しているように見える。アクティブラーンニングを進化させることを目指している中教審が再生会議の議論に引きずられた答申を出すことがあってはならないと思う。


    4月7日 滋賀県野洲市教委 放射線副読本回収

     文部科学省が全国の小中学校と高校に昨年配布した「放射線副読本」の最新版について、野洲市教育委員会が、福島第1原発事故の被災者の心情に配慮せず、安全性を強調していることを問題視し、回収を進めていることが分かった。改訂前に比べ、原発事故の記述よりも日常生活で受ける放射線量などの説明を優先した内容に、福島県からの避難者が憤りを表しているほか、専門家も「放射線被ばくのリスクは大したことがないと思わせる印象操作だ」と批判している。

     副読本は小学生用と中高生用があり、前回改訂から約4年たったことから昨年10月に改訂された。放射線について科学的な知識を身に付け、理解を深める目的で全国の小学校に約700万部、中学・高校に約750万部が配られた。

     第1章では放射線の人体への影響や、自然環境や医療機器から受ける放射線量などを解説。第2章は福島原発事故の被害や復興の現状、避難者へのいじめ事案などを取り上げている。改訂前は第1章で原発事故を説明し、第2章で日常的な放射線による影響などを記していたが、「正しい知識を身に付けることが先」(同省)と章立てを替えた。

     野洲市では3月8日、市議会の質問で副読本は、自然界のものと事故による放射線を同一視し、安全だという結論に導こうとしている」などと指摘を受け、市教委が内容を精査した上で同日中に回収を決めた。同11日付で保護者に「内容や取り扱いについて改めて協議した結果、記述された内容に課題があると判断しました」との文書を送り、回収への協力を求めた。

     市教委は取材に対し、被災者の声が書かれていない▽廃炉作業など今後の課題を記述せず、安全性ばかり強調した内容になっている▽内容が高度なところがある―を理由に挙げる。

     既に市内の小学校に2113部、中学校に314部を配布したが、各校の対応は▽全生徒児童に配布▽高学年児童にのみ配布▽活用方法を検討中で配布せず―に分かれていたという。

     市教委は現在も回収中で、西村健教育長は「原発事故で今も4万人以上の避難者がいるにもかかわらず、副読本にはその人々の思いが抜け落ちている。一度回収してから、資料を補うなどの活用方法を検討したい」と話している。一方、文科省教育課程課は「副読本が全てではない。足りないことがあれば別の資料で補うなど各現場で工夫して使ってほしい」とする。・


    「被難者ばかにしている」

     全国の学校に配布された放射線副読本に対し、2011年5月に福島県南相馬市から大津市に避難した青田勝彦さん(77)は「安全桂ばかり強調し、避難者をほかにしている。原発を推進する国の姿勢を子どもに植え付ける行為」と憤る。

     立命館大の安斎育郎名誉教授(放射線防護学)は「福島県で帰還困難区域とされた地域の放射能汚染の実態や廃炉作業に取り組む労働者の被ばく、多発する『原発関連死』といった視点から放射線のリスクを捉えられていない」と指摘。「原発再稼動や輸出戦略を進める上でのハードルを下げるため国民の不安を抑え込み、放射線被ばくのリスクは大したことがない、と思わせる印象操作だ」と厳しく批判する。

     畑明郎元大阪市立大教授(環境政策論)は「たまり続ける汚染水の問題に触れないなど問題だらけ。子どもたちに誤った情報を与えるものは全て回収し再改訂すべきだ」と話す。


    府・市教委学校に判断任せる

     放射線副読本について、滋賀県教委や京都府教委、京都市教委は「文科省が配布しているものなので問題ない」とし、使用は学校の判断に任せているという。被災地の福島県では、県教委が独自に放射線教育の指導資料を作成し、授業で活用されているという。

     放射線副読本については、京都では2012年に京都教職員組合などでつくる「子どもと教育・文化を守る京都府民会議」が、学校で使用しないよう求める要望書を府教育委員会に提出した。同組合は現在も「原発の安全性が疑問視されていることが記されておらず、福島の現状も反映していない」とし、「一律に使わせることがあってはならない」としている。


    「学校の判断」とはあたかも自主的に考えるということのようだが、その材料を教育委員会が提供した上での事かどうかによって随分違う。このケースでは暗に「問題なし」といっているのと同じではないか。外国人を対象とした特定技能者に廃炉作業をさせるなど大きな問題を抱えているのが原発の現状である。また「アンダーコントロール」と胸を張った安倍首相の言葉とは裏腹な現状であるのも事実だ。そして各教員の判断でこの副読本を使用するのかしないのかという問題が起こったときに行政はどう対応するのだろうか。


    4月19日 文科省調査 教員試験 小学校で2倍切る自治体も

     都道府県教育委員会などが2017年度に実施した小中高校、特別支援学校など公立学校の教員採用試験で、競争率の全国平均が前年度より0・3ポイント減の4・9倍だったことが19日、文部科学省の調査で分かった。学校種別で見ると小学校が全体で3・2倍(0・3ポイント減)と低迷し、新潟県と福岡県で2倍を切った。

     受験者総数は3・3%減の16万667人、採用者数は3・2%増の3万2985人だった。採用者数は16年度実施の試験で17年ぶりに減少したが、今回再び増加に。

     ほかの学校種別の競争率は、中学校が6・8倍(0・6ポイント減)、高校が7・7倍(0・6ポイント増)。(web版)


    採用試験の倍率が3倍を切ると「危険水域」といわれている。教員を志望する人が激減しているということとその質に問題が出てくるということだ。倍率が高いからといって質の良い教員が採用できるとは限らないのだが、選考対象が限られてしまうことになる。即効的な改善策はないのだろうが、「働き方改革」が言葉だけで実効性が乏しい(特に中教審の議論はヒドイ)ことが原因の一つとして上げられる。
    ちなみに日経新聞では、「自治体別で最も高いのは沖縄県の9.1倍で、鹿児島県8.5倍、熊本市7.5倍と続いた。最も低いのは茨城県の3.2倍で、新潟市が3.3倍だった。小学校の自治体別では、低い順に新潟県1.8倍、福岡県1.9倍、長崎県2.0倍だった。」と加えられている。


    4月19日 全国学テ 中3英語 発信力重視

     小学6年と中学3年の全員を対象とした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が18日、一斉に行われ、計約212万1千人が参加した。中3で初導入の英語では自分の考えを書いたり話したりする発信力を重視。学習指導要領改定を踏まえ、基礎知識と活用力を一体的に問う新形式に変更された国語と算数・数学は、活用力を意識し日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心となった。

     参加は小学校1万9496校の約107万6千人、中学校1万22校の約104万5千人。国公立は全校、私立の参加率は50・1%。 東日本大震災の影響で事実上実施できなかった2011年度を除き12回目の調査となり、結果は7月に公表される。

     英語は 「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問い、このうち「話す」は、パソコンの画面の映像を見て英語で説明させる形式。生徒の声の録音データを基に採点を行う。テレビ局から将来の夢を聞かれたという設定で、内容を1分間考えた後に30秒で答える出題などがあった。

     国語と算数・数学はこれまで、基礎知識を問う「A問題」と活用力を測る「B問題」に分かれていたが、今回から統合し、活用力を意識した設問をそろえた。2教科の試験時間が小学校で120分から90分に、中学校で180分から100分に短縮されたこともあり、小問数は中学校国語で昨年の37問から10問に減るなどいずれも減少した。

     日常生活と結び付いた場面設定が多く、小学校国語では、畳職人へのインタビューのやりとりから自分の考えをまとめさせた。一方、過去のテストで課題とされた分野からの出題は国語と算数・数学の2教科の全54問中24間(44%)に上った。

     青森県教育委員会によると、英語の「話す」調査がパソコンの不具合のため、県内の少なくとも六つの中学校で実施できなかった。

     高松市内の中学でも録音できない事例があり、文科省は全国の実施状況をまとめて19日に公表する。


     18日に実施された文部科学省の全国学力テストでは、毎年行う国語と算数・数学で従来のA問題とB問題を一体化した新形式が出された。中学3年では初めて英語を実施し、「聞く・読む・書く・話す」の4技能を見た。主な出題の狙いは次の通り。


    全国学力テスト出題の狙い

    【中学校 英語】 4技能まんべんなく

     「聞く・読む・書く・話す」の4技能をパートに分けて、まんべんなく見る構成だった。自分の考えを書いたり、話したりする出題もあった。

     「聞く」は校内放送を使うなどして実施。日本と英国について調べた生徒の発表を聞かせ、発表に沿って3枚の絵をどの順番で見せたかを答えさせた。別の出題では「クラブ活動を楽しみにしている」という来日予定の留学生のメッセージを聞いて、アドバイスを英語で書かせた。

     「読む」では英文の内容に合致した絵や、平均気温を示した折線グラフから読み取れる内容を選ぶほか、食糧問題を説明する英文を読んで、自身の考えを簡潔に書かせる設問があった。

     「書く」では、学校を表す絵文字「ピクトグラム」のニつの案を比べ、どちらが良いか選び、双方に触れながら、考えや理由を25語以上の英文で記述させた。接続詞や時制など基本文法の理解度を見る問いも出た。

     「話す」はパソコンを使って実施した。登場人物の誕生日や通学手段に関する質問に、英語で答えさせた。海外テレビ局のインタビューに答えるとの設定の出題では、1分間で内容を考え、30秒で話すよう求めた。

     《採点の基準・態勢に疑問》立教大の鳥飼玖美子名誉教授(英語教育学)の話

     新学習指導要領が求める思考力、判断力、表現力を意識した自由記述や自由解答が多い。目指す意図は分かるが、生徒の答えのバリエーションは多岐にわたるだろう。「読む」の領域では、世界の食糧問題に関する英文を読ませ、考えを英語で書かせているが、採点者によって正答のパターンに差が出そうだ。内容に見合った採点基準や採点態勢が整っているか疑問だ。英語のテストでは、物事の考え方といった要はなるべく入れるべきではない。


    【中学校 国語】 情報読解や記述力もとめる

     学校生活を想定した題材を用いて、文章や資料から必要な情報を読み取らせ、考えを記述させる問題が目立った。

     設問1では、日本の文化を紹介した架空の新聞記事を問題文に採用。掲載された三つの短歌と選評を読み、短歌の中の言葉を使って情景や心情、自分が感じたことを記述させた。また、投稿欄に封書を送る設定で、封筒に正しく、見やすく宛先を書くことができるかも見た。

     設問2は、文化祭の運営方法に関して3人の生徒が話し合っている場面。議題や議論の方向性を見定め、まだ触れられていない論点について自分ならどのような考えを述べるかを書かせた。課題解決への具体案も求めている。

     設問3は、「地域と私たちとのつながり」というテーマで、意見文を下書きする内容だった。より分かりやすい文章にするため、論の展開にふさわしい言葉を書き加えたり、説得力を持たせるためグラフを基に根拠を補ったりさせた。

     設問4は、インターネットを「ネット」と言うなど、語の一部を省いた表現について、話や文章の中での適切な用い方が理解できているかどうかを問うた。


    【中学校 数学】 筋道立てた思考力を重視

     数学的事象を題材に、問題解決策を仮説として示し、それが正しいことを順を追って証明させるなどして、筋道立てて思考する力を試す出題が目立った。表やグラフを用い、日常生活の場面と数学を関連付けた問題も多かった。

     設問9は連続する三つの奇数の合計が、三つのうち真ん中の数の3倍になるとの予想を提示。それを証明する説明文を適切に理解できているかどうかを見た上で、連続する奇数が四つや五つになればどうなるか、展開していく内容だった。

     設問7も、図形の性質に関する予想を提示する出題形式。予想が当てはまらないケースがあることも取り上げた。

     設問6は、本体価格や年間の電気代が異なる複数の冷蔵庫を示し、使用年数によって総支出がどう変わるかを考えさせた。設問8では、全校生徒が1カ月間に読んだ本の冊数を調べたアンケート結果を表などで示し、読み取った情報を数学的に処理するのに必要な力を確認した。

     設問1〜5は、数式や確率などについて、主に基礎知識の定着状況を測った。反比例などの理解を試すなど、過去の学力テストで正答率が低く、課題が指摘された分野も出された。


    【小学校 国語】 自分の考え表現する力問う

     友人への報告や地域の人へのインタビューなど、日常生活で調べたことや自分の考えを他人に伝える場面を想定した設問が並んだ。漢字の書き取りなど基礎的な知識を問いつつ、三つの設問全てで、形式の異なる文章や図表など複数の資料を使って必要な情報を得たり、目的に合わせて自分の考えを表現したりする力を見た。

     設問1は、日常で気になったこととして、公衆電話の減少を調べ、友人に報告する文章から出題。地域の人に公衆電話が必要な理由を聞いた結果をまとめた表と、設置場所を示した地図が、文章の中でそれぞれどのような目的で使われているかを選択肢で尋ねた。調査結果から公衆電話が必要な理由を文章の言葉を使って40字以上70字以内で記述させた。

     設問3は、町の畳職人へのインタビューを題材にした。職人を紹介した町の広報誌、聞きたいことをまとめたメモ、インタビューの様子の3種類の文章を提示。自分の理解が正しいかどうかを確認するのに適切な質問や、質問を工夫した意図として適切なものを選択肢から選ばせた。インタビューの中で登場したことわざの使い方として正しいものを選ばせる出題もあった。


    【小学校 算数】 日常の課題解決させる狙い

     計算やグラフの読み取りを通じて、日常生活の課題を解決させる狙いがうかがえる出題が多かった。正答を導く過程を、数式だけでなく、言葉で記述させる問題もあった。

     設問1では、図形の構成や面情の求め方の理解度を見た。二つの合同な台形で作られた図形の面積の求め方について、一つの数式を例示。その上で別の数式を挙げ、考え方を言葉で説明させた。

     設問2は、ある市の水の使用量が題材。使用量と人口の推移を示した二つのグラフから、1人当たりの使用量がどう変化しているかを読み取らせた。洗顔や歯磨きで、1日に使う水の暈を計算させた。

     設問3は、与えられた数式にどんな工夫をすれば、計算しやすくなるかを考えさせ、法則性を読み取らせた。

     設問4は、混雑する遊園地の場面から出題。観覧車のゴンドラ1台が来るのにかかる秒数と待っている人数から、何砂後に乗れるかを求める式を書かせた。レジに並んだ行列が進むスピードから、レジに着く時間を考えさせる問いでは、途中で店員が減ってスピードが遅くなる条件を加え、複数の情報から必要な数字を取り出し、解決する力を見た。



    4月18日 「学びの基礎診断」 府教委、各校判断に

     京都府教育委員会は、2019年度から文部科学省が全国の高校で導入を進める民間テスト「高校生のための学びの基礎診断」について全府立高での一律的な実施はせず、各校の判断に委ねる方針を決めた。生徒の費用負担が増えることや、独自の学力テストを行っていることが理由という。大阪府教委も同様の対応を取る一方、京都市教委は全日制の市立高で一斉導入するなど自治体によって対応が分かれている。

     京都府教委は、1990年度から自前の学力テストを高1、2年時に年2回、公費で国数英の3教科で実施し、学力の診断と向上につなげている。府立高の多くはすでに民間テストを希望制などで実施しているが、1人当たり3千〜4千円程度はするとみられる学びの基礎診断を全生徒に義務づければ経済的に苦しい家庭への影響が大きいため一斉導入は見送った。

     高校教育課は「府の学力テストと趣旨は同じで、府のテストにはない英語の『話す』まで評価できるので取り組みには賛同する」としながらも、「国の補助もない中での一斉導入は難しい。テストは生徒全員が受けてこそ意義があるだけに、国が何らかの支援をしてほしい」と訴える。

     一方、大阪府教委も「私費負担のテストを一律に導入することはできない」などとして各校の判断に任せる。京都市教委はすでに全ての全日制市立高で民間の学力テストを私費負担で行っているため、今後も学びの基礎診断として継続する。滋賀県教委も認定されたテストを活用して基礎学力の定着を目指すよう全公立高校に通知した。

     文科省は今後活用を促していく方針だが、ある府立高校長は「今は20年度の大学入試に活用される英語の民間検定試験の方が関心がある。学びの基礎診断といっても現在受けている民間テストとほぼ変わらず、まだ様子見の段階」と語った。


    「高校生のための学びの基礎診断」

      教育現場に業務改善の手法PDCA(計画・実行・評価・改善)を取り入れ、基礎学力の習得と学習意欲を喚起するのが目的。参加は希望制で、費用は原則受検者が負担する。教科は国語、数学、英語で、新学習指導要領に沿った思考力判断力などを問う問題とする。英語は原則、「読む、聞く、話す、書く」の4技能を評価する。高校教育・大学教育・大学入試を一体的に変える「高大接続改革」の一環で導入され、当初は大学入試に結びつける案もあった。


    高校版全国学力テストというべきもの。英語の民間テストの成績を大学入試に利用することもふくめて、今や学校は教育産業にとって大きな市場となっている。まさに学力を消費するという「高校生=消費者」という構図が作られている。また、小学校から高校までいわば「テスト漬け」の状態となっている。学ぶ側から見れば「テストに出るか、出ないか」が学習意欲に関わってしまうことを考えれば、自ら課題を見つけて解決する能力を求めることと大きく矛盾するように見える。


    4月18日 中教審 小中高教育の総合策諮問

     柴山昌彦文部科学相は17日、小学校から高校段階に至る今後の教育の在り方に関する総合的な検討を中教審(渡辺光一郎会長)に諮問した。各教科を専門教員が受け持つ教科担任制の小学校高学年への導入推進や、それに伴う免許制度見直し、高校の普通料を専門性の高い学科に再編することなどが柱。「主体的・対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領に対応する指導の充実を図り、教員働き方改革にもつなげる狙い。

     文科省によると、初等中等教育を巡る包括的な検討は義務教育費の国庫負担などが議論された2003年の諮問以来。教科担任制の推進に向けた教員配置の進め方や、外国人児童生徒の就学機会確保策の検討も求め、答申は20年末を見込む。

     文科省によると、小学校では現在、学級担任が全教科を教えるのが基本。教科担任制も小6の場合、音楽や理科で18年度に取り入れるとした学校が5割前後に上るなど高学年中心に一部教科で広がりを見せるが、算数や国語では1割を切る。

     文科省は、教科担任制の利点として、20年度から始まる高学年での英語教科化、プログラミングの必修化などに伴う専門的指導力の発揮や学級担任の負担軽減を想定。一方教科横断的な授業がしにくいことも考えられ、中教審に先行事例の効果検証とともに、高学年でどの程度まで推進できるかを議論してもらう。1〜4年は従来通り、学級担任制を基本とする。

     また、教科担任制を進めた場合、教員数や専門性の確保が課題となるため、効率的な配置だけでなく、現在は分かれている小中の教員免許の一体化なども検討する。

     高校迄巡っては、中学の時よりも学習意欲が下がるとの調査結果があり、生徒数で全体の7割を占める普通料の役割が明確でないのが一因との指摘が出ている。政府の教育再生実行会議での論点も踏まえ、「理数教育員重視型」「地域人材育成型」「グローバル型」といった特色を明確化した皆通科再編策を議論する。

     ほかに、外国人児童生徒が増え、日本語指導を必要としている現状を見据えた支援策や、特定分野で極めて高い能力を持つ子どもの 才能券伸ばす方策なども話し合う。


    「教科担任制」については、12日コメントを参照。「高校での学習意欲の低下」を普通科の在りかたを一因としているが、すでに現実化している高校再編の流れを追従するだけのことになるだろう。「主体的・対話的で深い学び」の教育と普通科との整合性が議論されなければ、結局は産業社会に有用な労働力を早期に育成するだけにほかならない。戦後の新制中学校での「職業教育」が高度経済成長を挟んで二転三転してきたことを反省材料とする議論が中教審では必要ではないだろうか。
    一方で、外国人の子ども達の日本語指導の充実は母語の保障と一体化した政策提言を必要とするはず。


    4月17日 文科省調査 中高とも目標達成4割

     文部科学省は16日、全国の公立中学・高校に通う生徒の英語能力を見た2018年度の英語教育実施状況調査の結果を公表した。中3で「英検3級程度以上」の力がある生徒は前年度より1・9ポイント増の42・6%、高3で「英検準2級程度以上」は0・9ポイント増の40・2%だった。いずれも上昇傾向にあるものの、前年度までと同様に政府が計画上の目標とする50%には届かなかった。

     今回の調査では、高校3年で「英検準2級程度以上」の目標に到達した生徒の割合が都道府県により31・1〜56・0%となり最大で約1・8倍の差があった。20年度からの大学入学共通テストで導入される民間検定試験に関しても、今回の目標と同等の英語力を求める大学が多く、高校の指導改善が急務となりそうだ。

     「生徒が積極的に英語で考えや意見を述べる時間をつくるよう学校にお願いしてきた。積み重ねが成果につながったと思う」。今回の調査で、英検準2級程度以上の生徒の割合が前年度より11・6ポイント増の53・3%となり、全国で最も伸びが顕著だった秋田県教育委員会の担当者は語る。

     秋田県教委では18年から高校生向けのディベート大会も開始し、生徒が英語を使う意欲の向上を図っている。公立高の全生徒が英検 を受けられる事業も始め、より客観的に自分の英語力や課題を把握できたことも伸びにつながったとみる。

     共通テストの英語では、受験生は基本的に、大学入試センターが作成するペーパーテストに加え、「読む、聞く、書く、話す」の4技能をみる検定試験も受けスコアを取得することになる。実際の入試で英検準2級程度のスコアを出願資格とすると決めた大学も多い。

     こうしたレベルに達した生徒が32・2%と低かった福島県教委の担当者は「必ずしも県内の高校生に実力がないとは考えていないが、これまで英語4技能をバランスよく育てるという意識が十分にはなかったことは考えられる」と話す。

     福島県では昨年度から大学進学を希望する高1生を対象に民間の検定試験を受ける事業を開始。結果を分析して、教員の指導改善や生徒の学習に役立ててもらう仕組みだ。結果を踏まえた教員向けの研修会なども行っており、担当者は「授業が変われば、共通テストに対応できるよう4技能が身に付くと期待している」と強調する。

     一方で、文科省の調査は、英検準2級程度の力があるかどうかについて教員の判断で認定するケースも多く、自治体間で評価基準の ばらつきがあるとみられる。

     ある県教委の幹部は「生徒が検定試験を受けた経験が豊富でない地域では、厳しく評価しているケースが多いと思う。数字に振り回されるよりも、目の前の生徒を冷静に見て指導していくことが大切だ」と指摘した。


    毎回こうした学力テストの結果を文科省が公表するたびに感じる違和感がある。どうしてもどこの県が1番で、最下位はどかと知らず知らずのうちに詮索してしまうことだ。おそらく関係の教員は更に「詮索」の誘惑に駆られる事だろう。文科省は1.8倍の格差をどう埋める事が出来るのかを現場に即して提示する事をまず行わなければならないはず。


    4月12日 文科相 小5、6年教科担任推進

     柴山昌彦文部科学相は12日の閣議後記者会見で、小学5、6年の授業を学級担任でなく専門の教員が教える教科担任制を推進してい く考えを明らかにした。2020年度から高学年で英語が教科化され、プログラミングが必修化されることもあり、指導の質確保とともに、教員の負担軽減を狙う。17日の中教審総会で諮問し、20年末に答申を受けた後に関係法令の整備を図る。

     柴山氏は「子どもの興味関心が多様化する高学年を中心に中教審で検討してもらうことを考えている」と述べた。関係者によると、小学校は現状、外国語活動などを専門に教える「専科教員などを除き、学級担任がほぼ全ての教科科目を教えるケースが多い。今後は、1〜4年はこれまで通り学級担任による指導で基礎知識などの理解を深め、5、6年は教科担任制を推進し、知識活用型を中心とする学びを実施していく考えだ。

     教科担任制の中学校の方が、小学校よりも受け持つ授業数が少ない現状もあり、働き方改革につながるとみている。必要な教員数や専門性の確保が課題となり、文科省は実現に向け、中学校教員が小学校で教えやすいよう、小中の教員交流を進めていく方向で教員の免許制度改正を検討する。


    教科担任制は確かに授業時数の削減にはつながるが、例えば2学級編成の学校では僅か4人でどんな教科を担任する事が出来るのであろうか。当然、中学校との連携が必要となる。すなわち、小中一貫校(施設一体か併設にかかわらず)が基本構想とせざるを得ないだろう。だとすれば全国的な学校統廃合課題となる。大きな軋轢を地域住民との間に生む可能性が高い。「教員の負担軽減」というなら、むしろ「専科教員」を配置する方が持ち時間数の公平さからいっても現場に歓迎されるのではないか。仮に、全国的に制度として小中一貫校(義務教育学校)を定着させる目論みがあるのなら、短に「中一ギャップの解消」という問題に矮小化せず、戦後教育の根幹であった「6・3制」の総括がなければならない。


    4月12日 教員働き方改革 いじめ対応残業超過容認

     教員働き方改革で残業時間の上限を「原則月45時間」と定めた国の指針を巡り、文部科学省が、いじめや学級崩壊への対応を理由とする場合は「特別の事情」とみなし、超過を容認することが11日分かった。同省は通常業務での指針の厳しい運用を求めているが、重要な教育課題との折り合いを懸念する意見もあり、特例を示した。

     指針は、民間企業対象の働き方改革関連法をベースに1月に策定。原則月45時間の残業上限を、「臨時的な特別の事情」があった場 合に限り、月100時間を超えない範囲まで延長できるとしている。ただ、どんな内容が該当するかが明示されていなかった。

     文科省が各教育委員会に出した事務連絡によると、指針にある「臨時的な特別の事情」について@いじめや学級崩壊などの重大事案 が発生し、児童生徒に深刻な影響が生じている、また生じる恐れのある場合A学校事故が生じて対応を要する場合―を例示。個々の判断は教委や学校で行うとした。

     一方、運動会の準備といった通常業務での超過は容認しない。働き方改革関連法では、原則月45時間を上限とする残業の中に休日労働は含まないが、教員向けの指針では残業時間としてカウントすることも改めて周知した。

     文科省の2016年度教員勤務実態調査によると、残業時間が月45時間以上の公立小学校教諭の割合は81・8%、公立中学校教諭は 89・0%に上る。


    文科省は本気で働き方改革を実行しようとしているのか中教審の議論以来雲行きは怪しくなってきた。かつて給特法が出来たときには「4項目以外は原則超勤は行わない」といってきたが、結果的には「子どものため」というやりがいの搾取によって無定量労働の「ブラックな職場」を作ってしまった。いままた「いじめ・学級崩壊」という特例を作ることで、そうした事態の予防措置としての超過勤務も容認されるようになってしまう。例えば「あなたの学級は崩壊の危機です。きっちりと教材研究を取り組む必要があるでしょう」と言われれば、「時間ですから帰ります」とはとても言えないだろう。
    また、一般企業では100時間までの超勤には「手当」が打たれるのだが、教員の場合はの「手当」はスズメの涙ほどで「超勤の抑止効果」はないことも考慮する必要がある。


    4月10日 20年度教採 府60歳未満に門戸

     京都府、京都市の両教育委員会は9日、2020年度教員採用試験の要項や日程を発表した。府教委はベテラン層を厚くするため、受験年齢制限を現行の50歳未満から60歳未満に引き上げる。採用規模は府教委が前年度より10人多い350人程度、市教委は35人増の335人程度を予定する。

     府教委は、小学校が前年度並みの130人、中学は15人増の90人、高校は10人減の70人、特別支援学校が前年度並みの45人ほどの採用を予定する。高校は前年度募集がなかった情報、水産、福祉を含めた15教科、中学は全教科で募集する。

     年齢制限の引き上げは、今後50代の教員が手薄になる見通しのためで、民間企業の経験者や他府県の教員、子育てが終わった元教員らの応募を見込む。また、新たに2次試験の不台格者のうち希望者は、育児休業を取得する教員などの代替で一定期間任用する「任期付職員の試験を免除することにした。

     市教委は小学校が前年度比10人増の160人、中学は10人増の80人、高校は5人増の15人、総合支援学校が10人増の50人程度の採用を予定する。高校は1986年度以来の募集となる書道を含めた8教科、中学は全教科で選考を実施する。受験資格は45歳末満で、過去の教員歴や民間企業経 験によって特例も設ける。新たに精神障害者保健福祉手帳の交付を受ける人も障害者特別選考の対象とする。

     出願受け付けは府教委が25日〜5月24白、市教委が19日〜5月20日まで。1次試験(筆記)は両教委とも7月6日。



    4月10日 府内夜間中学 再度、丁寧に検討すべき

     義務教育の学び直しができる「夜間中学」の新設について京都府教育委員会が3月「府内ですぐに必要とのニーズを把握できなかった」と結論づけた。ただ、全国では近年、夜間中学が不登校経験者や外国人らの受け皿として見直され、新設や拡充を打ち出す自治体が相次いでいる。府教委も再度、丁寧に必要性を再検討すべきではないか。

     「皆さんから励まされ、夜間定時制高校に受かりました」。2月下旬京都市下京区の夜間中学「洛友中」に通っていた女性(72)から弾んだ声の電話を受けた。女性は熊本県の山間部、五家荘の出身。幼少期は生活が厳しく小中学校に通えなかった。洛友中で学び直す姿を1月に本紙で取り上げた。取材を通じ、どんな年齢や国籍であっても、最低限の教育を学び直せば生活をより豊かにすることができ、その権利は誰もが持っているのだと感じた。

     2017年に義務教育を十分受けられなかった人の教育機会を保障する教育機会確保法が施行されて以降文部科学省は各都道府県に1校以上の夜間中学の設置を促している。今月には千葉県松戸市と埼玉県川口市で新設され、すでに2校ある神奈川県でも相模原市が新設を前向きに検討する。夜間中学を設ける大阪府の7市は、府外在住者を断ってきたが本年度から相談に応じるよう申し合わせた。

     京都府教委も昨年、アンケート用紙2万枚を公共施設に置いてニーズを調べたが、新設を求める回答は15件のみ。この結果を参考に府教委は「すぐに必要とは確認できなかった」と結論づけた。しかし、他自治体の調査では100件以上の回答があった例もある。市民団体「京都府に夜間中学をつ くる会」は「用紙を置いただけでは、届けるべき人に届かない。本気度が感じられない」と批判する。

     夜間中学の充実に取り組む元文科事務次官前川喜平氏は3月に京田辺市で行った講演で「多くの人は学び直しをあきらめ、その気持ちを心の底にしまっている。その気持ちを引き出す調べ方をしなければならない」と指摘した。

     約40年間にわたり民間の夜間中学蓬運営し、今年1月に下京区で「読み書き教室」を始めた武村守さん(66)=伏見区=は、生徒募集のため、習いたい人がいそうな地域や団地を1人で回ってチラシ2万枚を配り歩いた。その結果、現在8人が教室に通っている。こうした活動こそ学びたい気持ちの掘り起こしというのではないだろうか。

     府内に夜間中学は洛友中があるが、市外在住者は入学できない。前山氏は「京都の規模であればさらに新設してもおかしくない」と語る。今後、不登校生や外国人の増加が見込まれるだけに、府教委は再度丁寧なニーズ調査を行ったり、洛友中に市外在住者が通えるよう協議したりしてもよいのではないだろうか。(【取材ノートから】三村智哉)



    4月9日 小学校英語 専門教員不足“見切り発車”

     2020年度から新学習指導要領に基づき小学校で英語の授業が本格的に導入されるのを前に、京都市など多くの自治体が新要領と同じ授業時間数を前倒しで確保している。教員の研修も進んでいるが、一方で小学校での英語教育の課題を指摘する有識者もいる。

     ■逆に英語嫌いの子ども増える?

     立教大の鳥飼玖美子名誉教授(英語教育学)は「英語を専門に教える教員が十分に配置されておらず、見切り発車。このままでは変な英語がすり込まれたり、英語嫌いの子どもが増えたりするのでは」と危惧する。

     「今後、AI(人工知能)が発達し、簡単な英会話なら自動通訳機が代替できるようになる。そこで人間は相手の意図を読み解く力や考える力など、AIができない力を育てるべき。その土台があれば中学から本格的に英語を勉強しても面白くなるし、英語で意見を主張できるようになる」と強調する。

     その上で「小学校英語が注目されているが、子どもの教育にとって英語が全てではない。算数や体育など得意なことはそれぞれ違う。英語だけにこだわって子どもをゆがめてしまうのはよくない。子どもは発達に応じて遊ぶことも大切。保護者も小学校での英語教育に多くを期待せず、子どもが自分の持ち味を生かし、自信を持つようにじっくりと育ててほしい」と呼び掛ける。

     また、立命館大の大山万容非常勤講師(外国語教育)は英語以外の言語にも着目する大切さを指摘する。「英語ばかり教えれば国際化の中で、英語が最も偉く、それ以外の言語は価値が低いという誤った認識が子どもたちにされる恐れがある」と懸念する。

     その上で「例えば、欧州では英語だけでなく、複数の言語を比較しながら言語の仕組みについて理解を深める活動をしている。日本でも英語の授業などに活用すれば、世界の多様性への興味も湧き、違う言葉を話す人とコミュニケーションする力が養われる」と提言する。

     ■「英語は楽しいという雰囲気づくり」

     「What’s this?(これは何?)」「It’s a cat(ネコです)」。3月上旬、朱雀第二小(京都市中京区)であった3年生の外国語活動の授業を訪ねると会話の大半は英語で行われていた。冨貴(ふうき)浩子教諭(33)がさまざまな形の絵を見せて何に見えるか尋ねると、児童たちが元気よく返答した。

     英語の言い方が分からないと冨貴教諭は別の言葉での言い換えを促し、それでも分からないと児童たちは「Japanese OK?」と断って日本語で答えたり、「Hint please」と助言を求めたりした。ほかに、ヘビの絵に「ロング」とヒントを出すなどして児童同士で当て合うゲームも行った。

     女子児童(9)は「単語が分からなくてもみんなでどう言えばいいか考えて言うのが楽しい」と話した。冨貴教諭は「英語は楽しいという雰囲気づくりや多くの英語を聞かせることを心がけている。自分の意思を伝えるというコミュニケーションの基礎を築きたい」と狙いを語った。

     新要領では、5、6年生は外国語科が年70コマ、3、4年生は外国語活動が年35コマ導入される。京都市は18年度に6〜7割の学校がすでに同じ時間数を実施。19年度は全校が実施する予定だ。市教委は「学ぶ階段を緩やかにする」として、独自に20年度から1年生でも10コマ、2年生でも15コマの外国語活動をする予定で、18年度は7割の学校で実施された。

     ただ、京都府内では自治体によって授業コマ数が異なる。地域によって英語力に差がつく懸念もあるため、府教育委員会は昨夏、各自治体に対して新要領に近い時間数の前倒し実施をできるだけ行うよう呼び掛けた。

     教員の能力向上も課題だ。府内の小学校教諭からは「人によって力量に差がある」「DVDを活用しても型にはまった授業になる」などの不安の声が聞かれる。このため、各自治体とも数年前から研修に取り組んでおり、京都市教委も「教員のレベルも上がってきた。今後はもっと教員が英語を即興的に話せるようにし、児童のコミュニケーションを図ろうとする力を育みたい」としている。



    4月3日 塩野義製薬 ゲームで発達障害治療

     塩野義製薬は、発達障害をスマートフオンやタブレット端末のゲームなどを通じて治療する「デジタル薬」と呼ばれる治療アプリの販売に参入する。発達障害の一種である注意欠陥多動性障害(ADHD)向けなどを想定しており、アプリでは障害物を回避するなどの操作を通じて脳を活性化することで症状を改善する。医療機器として承認を得て、数年内に日本と台湾で販売する方針だ。

     治療アプリは米国のベンチャー企業が開発したもので、塩野義はすでに日本などでの販売権を取得した。患者の治療をサポートするアプリでは、大日本住友製薬がパーキンソン病の投薬管理ができるアプリを無料で提供したり、田辺三菱製薬が糖尿病患者に栄養・運動指導を行うアプリを開発したりしているが、塩野義のように国の承認を得て販亮を目指すのは珍しい。

     ADHDは大脳皮質の機能障害に原因があると考えられており、アプリでは、患者ごとに難易度を調整したゲームで脳に適度な刺激を与えることで、注意力の向上などが期待できるという。患者はスマホやタブレット端末の画面を指先でタップ操作しながら障害物を回避するとともに、特定の対象物が表示されれば素早くそれに触れるなどの課題をこなす。

     対人関係の構築が苦手な目閉スベクトラム症向けのアプリも販売する。塩野義は「医薬品だけでなくデジタル技術による治療法を提供することで、治療の選択肢を増やしたい」としている。


    「デジタル薬」という言葉をはじめて耳にした。と同時に驚きを禁じえなかった。ADHDなどの発達障害を含めて「障害」をその個人の問題として捉える「医療モデル」はすでに過去のものになったと思っていたのに、改めて「社会モデル」ではなく「医療モデル」としての考え方の根深さかに驚いたのである。確かにデジタル技術が障害を持つ人たちの「支援」のために有用なものを多く生み出してきたのは事実であるし、そのことによって障害を持たない人とのインターフェースとしての役割を身近に見ることが出来る。しかし、そのことは「治療」とは根本的に発想の異なるものではないだろうか。かつて自閉症治療薬として当事者達の親の耳目を集めた事があったが結局有力なものではなかった。今回も「大脳皮質の機能障害に原因」としているが果たしてそれが正鵠かどうかはわからない。「社会モデル」が言うように人間関係の中で改善できるものとして障害を考えるべきではないかと思う。