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  • 高校普通科「脱画一化」提言.18
  • 高校で人材育成.24
  • 5月24日 地方創生 高校で人材育成

     地方創生の第2期となる2020524年度の施策を検討してきた政府の有識者会議は23日、報告書を公表した。人口減少をはじめとする地域の課題解決には中長期にわたる対策が必要として、高校を舞台に次代を担う人材を育成するよう提言。地方衰退の主因とみる東京一極集中の是正策拡充を訴え、都市部に住みながら地方と交流を深める「関係人口」の拡大に取り組むことも促した。

     政府は報告書を踏まえ、20年度以降の施策の方向性を示す「まち・ひと・しごと創生基本方針」を6月に閣議決定する。年末には、具体策を明記した「総合戦略」をまとめる方針だ。

     政府は15〜19年度の第1期で「東京一極集中を是正」「地方の雇用を確保」といった基本目標を掲げた。第2期での大幅な方針転換は 地方の混乱を引き起こす恐れがあり、報告書は目標を維持するよう求めた。

     その上で、第2期では人材の育成・確保に重点を層くよう要請。高校生を対象に、地域の産業や文化への理解を深める教育をすれば、進学や就職で首都圏に転出しても将来的なUターンが期待できると強調した。

     東京一極集中の是正を巡っては、都市と地方の交流促進により、移住者が増加すると指摘した。関係人ロは、兼業や副業、ボランテ ィアといった形態で、東京圏に暮らしつつ地方企業の経営改善に貢献するといった例があり、拡大すれば効果が見込めるとした。

     20年に東京圏と地方の転出入を均衡させるとした政府の数値目標に関しては、達成時期を先送りした上で維持することも盛り込んだ。具体的な期限は、政府が年末までに設定する。


    東京圏流入は若者中心

     地方創生を議論する政府の有識者会議は23日公表の報告書で、最重要課題である東京一極集中の是正に向け、一段の取り組みを求めた。東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)へ流入しているのは若者が中心。政府は雇用環境などが背景と分析し、対応策の検討を急い でいる。

     総務省の2018年人ロ移動報告によると、東京圏への転入超過は前年より1万4千人余り多い約14万人。9割を15〜29歳が占めた。近年は女性が男性を上回っているのが特徴だ。

     大きな要因は就職とみられる。15年の政府調査では、地方から転入し、東京圏で働く若者に理由を尋ねると、6割超が「給与水準」と回答。「自分の関心に近い仕事ができる」「企業の将来性」なども多かった。

     地方創生担当の内閣官房幹部は「学生が安定を求めて大企業に応募したり、キャリア志向の女性が求める仕事が地方になかったりし て東京採用が多くなる」と解説する。

     「多様な大学がある」「東京圏への憧れ」なども若者を引き寄せる要因とみる。報告書は、さらなる分析を進めて「多角的に対策を検討するべきだ」と注文。20年度以降の具体策を決定する年末までに、打開の糸口を見いだせるかどうかが焦点となる。


    学校の存在と地域のの在りかたの関係についてはかなり深いものがある。廃校を回避した小学校を中心として活性化を目指そうという取組もすくなくない。それにかかわっての高校の再編はとりわけ大きな問題となる。京都府にか関しては北部の活性化と高校の存続の問題は以前から注目されている。ここでの人材育成は重要な課題ではあるが、地方に魅力的な職場があるかどうかに関わるであろう。プログラミング教育がもてはやされるが、一次産業との兼業が出来る職の創出やそれに見合う賃金の保障などが必要だろう。改めて『里山資本主義』に目を通してみたい。


    5月18日 教育再生実行会議 高校普通科「脱画一化」提言

     教育再生実行会議が高校普通料改革を打ち出した背景には、時代の変化が著しい中、従来の画一的な教育内容では、生徒たちの社会を生き抜く力を十分育成できないとの危機感がある。

     普通科と言っても、大学進学者が大半の高校や、就職や専門学校を目指す生徒が多い高校などが多様な形で存在し、在籍者の学力、希望する進路は多岐にわたる。一方、カリキュラム自体は、進学志向の強弱にかかわらず、大きく変わることはない。偏差値や進学実績に依拠した高校の評価も根強く、実績が振るわないとされる高校では、生徒の学習意欲の低下も指摘されてきた。

     2022年度の新入生から順次実施される高校の新学習指導要領では、新しい時代に対応した学びが数多く導入され、「普通料」の枠組みで多様さをひとくくりにし続けることに限界があるのは明らかだ。一人一人の個性や能力に応じた教育に道を開こうとする改革の方向性よ、間違ってはいないだろう。

     ただ類型化が進めば、中学卒業段階での高校選択の重みが一段ど増すことになる。目標が定まっていない子どももいることを踏まえ れば、特色を出すことで、思わぬミスマッチを生じさせる懸念もある。進学重視校の「エリート化」が加速する可能性もあり、制度の具体化に向けては、さまzまなまな観点に留意した議論が求められる。


    先端分野育成へ認定制度

     政府の教育再生実行会議の第11次提言は、人工知能(AI)や情報通信技術など発展が著しい分野に対応した人材育成の重要性を強 調。こうした分野を教える大学などの教育プログラムのうち、産業界が求める水準のスキルの習得を認定する制度創設を提言した。

     身に付けた技能が評価される仕組みを整えることで、学生の学ぶ意欲を高め、先端技術に通じた人材育成につなげる狙いがある。

      制度化に向け、国は産業界と協力し、現場でどのような知識やスキルが求められているかを詳しく検討する。

     提言は、AIなどの基本的な知識は文系・理系問わず全ての学生が身に付けるべきだと指摘。標準的なカリキュラムを示し、全国の大学での実施を推進する。

     また、遠隔教育の推進に向けてパソコンやタブレットなどを効果的に活用。離島や過疎地で暮らしたり、本登校や病気療養中だったりする子どもたちでも、質の高い教育を受けられるような取り組みを進める。


    教育再生実行会議の第11次提言の要旨

    【高校普通科改革】

     全ての高校で、教育理念を明確化し、生徒受け入れに関する方針、教育課程編成・実施に関する方針、修了認定に関する方針を定める。生徒の約7割が在籍する普通科について、国は、各校が選択可能な学習の方向性に基づいた類型の枠組みを示す。

     類型の例としては@予測不可能な社会を生き抜くためキャリアをデザインするる力の育成Aグローバルに活躍するリーダーの素養の育成Bサイエンスやテクノロジーの分野において飛躍知を発見する素養の育成C地域課題の解決を通じた探求的な学びなどが考えられる。

    【大学入試】

     文系・理系のどちらかに偏ることなく、バランスよく資質・能力を身に付けることが重要。大学入試も(学部・学科の特性を踏まえつつ、文系・理系に偏った試験からの脱却を目指す。

     大学入学共通テストにおける「情報T」の取り扱いについて、出題科目への追加やコンピューターを利用した方式での実施も含め検討。

    【新しい学びの対応】

     社会で求められる力や教育における技術利用の変化に対応できるよう、国は学習指導要領など教育課程の不断の見直しを進める。それに対応した教科書の弾力的見直しについて検討する。

     これからの学びにとって、情報通信技術(ICT)は「マストアイテム」。教員の養成・採用・研修の全体を通じて、ICT活用指導力の向上を図る。学校のICT整備に地域差があり、有効な手だてを講じる。

     大学で人工知能(AI)やデータサイエンスの基本的な素養を身に付けるよう、全大学生が教育を受講できる環境づくりを目指す。産業界と協力し、大学などの教育プログラムを認定する制度を創設する。

    【遠隔教育】

     遠隔警官、学校規模や地理的要因にとらわれず、教育の質を高める手段。希望する全小中高校、特別支援学校などが活用できる体制を目指す。


    「脱画一化」を「専門化」と解釈すべきなのか理解に苦しむ。同時に文系・理系に偏る事の無い教育を求めているのだが、「脱」との整合性がとれるのかどうかも疑問である。加えて、企業にとっての即戦力(同時に汎用性のある)に期待することが大きいない様にないる。多くの学生や生徒が自らのキャリアをデザインするという一種の自己責任論を背負わされる事になるように思うが、背負いきれなかった人は?


    5月17日 大阪市に公益通報 査定データ改ざんか

     大阪市で昨年度から始まった教員の新人事評価制度を巡り、授業力査定につながる生徒対象の授業アンケートのデータを管理職が勝手に書き換え、低い評価を付けられたとして、市立東淀工業高(同市淀川区)の40代の男性教諭が今年4月、市に公益通報したことが16日分かった。「評価に正当性はなく無効」と市教育委員会にも苦情を申し立てた。市教委は「調査する」としている。

     専門家は「制度の信頼性が揺らぎかねない」と指摘しており、教育現場で波紋を広げそうだ。

     市教委は新制度で評価の厳正化を求め、従来制度でほとんどなかった下位評価を一定程度出すのが望ましいとの立場。

     教諭は、「アンケートを集計し管理する教頭らが教諭への低い評価を正当と印象付けるため、データを改ざんした疑いがあると主張。教頭は取材に結果を操作したことは「全くない」と否定した。

     同校や関係者によると、アンケートは昨年の1学期に実施され、2学期に結果が開示された。教諭は9項目中8項目の点数が学校平均を上回った。だが今年3月に教頭や当時の校長に面談で伝えられた評価は5段階で下から2番目だった。

     疑問を抱いた教諭が求めた同月の再面談で、教頭は評価の根拠の一つとなったアンケート結果を改めて示したが、各項目の学校平均が上方修正されており、8項目で学校平均を下回っていた。

     教頭は4月の取材に、2学期に示された最初の結果は「評価対象ではない講師らのデータが入っていた」とし「(今年3月の)再面談で示した分が正しい」と説明した。

     教頭は取材の数日後、教諭を含む教員らに改めて結果を記した個人票を交付。取材への回答と同様に不要なデータが入っていたと教員らにも説明したが、今度は各項目の学校平均が2学期に開示されたものと近い数値に変わっており、教諭に関しては再び8項目が学校平均を上回った。教諭は不信感を深めたという。


    鹿児島大の高谷哲也准教授(教師学)の話 在り方問うべき

     意図的な書き換えが事実ならとんでもない話だ。個人の責任を問うことは大事だが、こうした事態を発生させてしまう評価制度の在り方も問 われるべきだ。教員を公正に評価することは難しく、妥当な評価方法か議論がある中で起きた。下位評価を付ける際の慎重さ、管理職と教員の丁寧なコミュニケーションの積み重ねが必要だった。「一定程度に下位評値を」とする運用が教育現場の現実とずれており、双方に大きな困難をもたらしている。


    「維新の大阪」といわれるくらいに日本維新の会(大阪維新の会)の影響力の下での事件と理解すべきだと思う。かつて日の丸君が代に対して「ゼロトレランス」的な対応を採った管理職が「自殺」に至った事件を思い起こす。「下位評価」の縛りを受けた管理職の苦肉の策であったように見える。少なくとも現場の「良心」を信じたい。


    5月17日 プログラミング必修化 段ボールロボ動くかな?

     電子部品メーカーの村田製作所(京都府長岡京市)による体験型プログラミング教育の出前授業「動け!!せんせいロボット」が16日、同市長法寺の長法寺小であった。5年生65人がタブレットの端末を使ってロボット役の人の動きを指示したり、動作の不具合を修正するなどしてプログラミングの仕組みや操作を学んだ。

     2020年度から実施される学習指導要領では、小学校でプログラミング教育が必修化される。これを受け同社はプログラミングの基礎を学んだり体験できる出前授業を企画。地元の長法寺小で初回の授業を行った。

     この日の午前中の授業では、1クラスの児童31人が2〜3人一組になって、段ボール箱をかぶったロボット役の人に腕の上げ下げや犬の物まねをさせるなどさまざまな動きを指示するプログラミングに取り組んだ。なかには児童の思い通りに動かない場面もあり、児童たちは試行錯誤しながら動きを修正した。

     参加した女子児童(10)は「ロボットが思い通りに動かせない理由を考えるのが面白かった」と振り返った。男子児童(10)は「間違った動きをするロボットを直したいけどなかなか直せなかった。でも楽しかった」と話していた。このほか、ロボットによるチアリーディングのダンスもあり、一糸乱れぬロボットたちの演技に児童たちから大きな歓声が上がった。


    プログラミング教育の方法としては様々なものがあるが、これは擬似デジタルとモデルだと思われる。これで子どもの興味をそそる事が出来るのかはなんとも言えない。そもそも「プログラミング教育」を必修化しなければならない理由がわからない。端末を使用する「消費者」を育てるなら「リテラシー」の方が喫緊の課題だろうし、ソフトを作る「エンジニア」を育てるならあまりにもその他大勢への負担が多すぎる。英語教育を同様に、その必要性を児童・生徒が感じるまで待っても決して遅くは無い筈だ。


    5月17日 厚労&文科 大学生の就職率、97・6%

     今春に大学を卒業し、就職を希望した人の就職率は4月1日時点で97・6%で、過去最高だった昨年と比べると0・4ポイント減少したが、統計を始めた1997年春卒以降、2番目となる高水準を維持した。厚生労働省と文部科学省が17日、発表した。

     一方、就職を希望する全ての高校生を対象とした文科省の調査によると、3月末現在の就職率は昨年より0・1ポイント増の98・2%。9年連続の増加で、過去最高だったバブル期の1990年度(98・3%)にほぼ並んだ。人手不足を背景に、高校生についても企業の採用意欲が高い状況が続いている。


    かつて「就職氷河期」といわれた時代からは想像がつかないのだが、「戦後日本型循環モデル」(本田由紀)が崩壊しているとの指摘が当たっているとすれば、この「新規学卒一括採用」された人たちの労働環境は不安だといえる。少なくとも、彼らが自己擁護(セルフアドボカシ―)できるだけの労働教育(一般職業教育)が行われてきているのかが、後期中等教育以降の教育機関に問われる。この数字だけであたかも教育の質が高くなったような錯覚はしてはいけない。


    5月14日 私立校6割超 勤務時間管理せず

     私立学校教員の働き方改革を巡り、公益社団法人「私学経営研究会」(大阪市)が昨年日月5今年1月、アンケートを実施した結果、回答した181校のうち6割超の115校が「勤務時間管理をしていない」と答えたことが14日、分かった。うち13校は「(時間管理を)する予定はない」としている。

     働き方改革関連法により、罰則付き残業時間の上限規制が大手企業や団体で今年4月に始まった。私立校も企業と同様で、運営する法人が常時使用する労働者が100人超であれば対象だが、労働時間の管理すらせず、残業の状況を把握できていない学校が多い。対応の遅れが鮮明になった。

     アンケートは同研究会のセミナーに参加した学校に実施。181校のうち大学は53校、高校56校、中学校16校などで、幼稚園や専門学校も含む。

     勤務時間管理をしていない115校のうち、「2019年4月から行うことを検討または予定」としたのは37校。65校は「検討課題」とし、13校は「する予定はない」とした。

     時間管理をしていると答えたのは66校。うち.「タイムカードなど客観的な記録が39校、「自己申告で記入」が27校。

     「働き方改革」への着手の有無については、半数近い88校が「必要性を感じるが着手していない」と回答。3校は「着手の予定はない」とした。

     時間外手当(残業代)について尋ねると、実際の残業時間にかかわらず一定時間分を支払う「固定残業代」を支給しているのが83校で最多。50校は「支給しておらず、今後も支給予定はない」。


    「ブラック職場」浮き彫り

     私立学校では、教員に残業代を適切に支払っていないケースが多いと以前から指摘されていた。今回のアンケート結果からは、その前提となる勤務時間の管理すらしていない学校が多いことが判明。「ブラック職場」ぶりが浮き彫りになった。現場で働く教員は改善を求めている。

     「生徒のために働くことは苦ではない。ただ、勤務に見合った対価は支払ってほしい」。東京都内の私立高で教員として働いていた男性は話す。この高校では、出退勤時間の記録を取っておらず、教員は出勤時にはんこを押すだけだった。

     運動部の顧問も務め、普段の退勤は午後8時ごろ。1カ月の残業は50時間近くになることもあったが、残業代は支払われなかったという。「私立ではこうした学校が多く、教員もそれが当たり前という感覚になっていた」と振り返る。

     内田良・名古屋大准教授(教育社会学)は私立校の労務管理について「いろいろな面で公立校の運用方法を準用する側面が強い」と指摘する。


    私学では非常勤・常勤の非正規教員多く、雇用の継続が行われないのでは無いかという不安が大きい。いわゆる「雇い止め」を恐れるということだが、やはり必要なことは「組合を作る」ことであり、正当な労使関係を締結することであろう。既存の全国的な教員組織に加入することだけが方法ではなく、一般的なナショナルセンター的な労働組合への加入という方法もある。労基法の36条37条の適用除外を受ける国公立学校の組合よりも小回りは効くかもしれない。


    5月14日 府教委 幼児教育「質」向上へ

     京都府教育委員会は、本年度から幼児教育の質を向上させる事業に初めて本格的に取り組む。元園長ら3人をアドバイザーに任命し 府内の公立幼稚園に助言するほか、専門部署も新設した。2018年度から幼稚園に適用された新学習指導要領への対応や、新入生が学校生活になじめない「小1プロブレム」などの課題解消を目指す。

     府教委は府立高や公立小中(京都市を除く)への指導が中心で、幼稚園に対しては研修会を行う程度だった。しかし、就学前教育がその後の学習意欲などに影響するとの研究成果があり、近年は幼児教育の重要性も指摘されるため、事業の拡充を検討してきた。

     アドバイザーに、京都教育大付属幼稚園(京都市伏見区)の河嶋喜矩子元副園長、学校法人実乃里学園・自然幼稚園(右京区)の木 藤尚子元園長、元八幡市立八幡第二幼稚園長の狩野理恵子京都文教短大講師の3人を任命した。それぞれが公立幼稚園や、要請があれ ば公立認定子ども園を回って教育や保育、運営上の課題などを聞き、経験を生かして助言する。

     新学習指導要領は「思考力の芽生え」や「豊かな感性と表現」など幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を明確にするよる各園に求めており、どう対処すべきかなども指導する。

     また、府教委の学校教育課には本年度から「幼児教育推進担当」を新設し、2人を配置。これまでは小中学校教育の担当部署が兼任 していたが、専門部署を独立させて態勢を強化した。

     府教委は、「今秋から幼児教育が無償化し、予算に見合った教育の質が求められる。幼稚園と小学校の接続もよくして、子どもたちがスムーズに小学校生活に移行できるようにしたい」(学校教育課)としている。


    就学前の子どもを巡る問題は、保育か教育かという議論があったようにどちらに重点をおくべきかという論争に決着はついていない。府教委という立場から「幼児教育推進担当」を目指すことに違和感はないのだが、「小1プロブレム」を解消するために幼小連携が必要との立場なら方向違いだと言わなくてはならない。「小1プロブレム」や「中1ギャップ」という学制の区切りが問題だというだけでは教育問題の解決にはならない。ましてや政府の無償化に対応するためだけなら的外れな新設部署になる恐れはあるだろう。


    5月12日 府内高校 「通級指導」導入1年

     軽度の発達障害などがある児童・生徒が、通常のクラスで授業を受けながら一部で特別な指導を受ける「通級指導」。以前から小中学校にはあったが、2018年度から高校に導入され、京都府内でも定時制の2高校で始まった。学びに向かう姿勢が前向きになるなど成果も確認されたが、保護者らにまだ通級指導が浸透していないなど課題も残っている。

     「早く寝ないといけないとは分かっているけど、時計を見るのを忘れてしまう」「時計のアラームをつけておいたら?」今年2月、京都市伏見区の伏見工業高(定時制)で行われた通級指導を訪ねると、教員が1年生の男子生徒に生活リズムを整えるための指導を行っていた。

     同高は昨年度、生徒1人に通級指導を週1回、通常授業が始まる前に行ってきた。最初に「自分がなりたい姿」を生徒と話し合って目標を設定。身だしなみを整えたり教員の名前を覚えたりするなど生徒が取り組みたいことを面談やゲーム形式で行い、通知表の評価もつけた。

     指導した岡村友加里教諭は、「こうしてもらえれば力を発揮できる」と周囲に自ら支援を求めるセルフアドポカシー(自己権利擁護)の力をつけることを心がけたといい、「授業や行事、外出活動などに前向きに取り組むようになった」と振り返る。

     京都市教育委員会は本年度からは西京高(中京区)の定時制でも通級指導を実施する。一方で、昨年度に市立の全9高校に聞き取り したところ、大半の学校で何らかの支援が必要な生徒がいることが分かったことから、担当者は「通級指導に限らず、学校のさまざまな場面で支援ができるよう、全教員のスキルを上げていきたい」とする。

     府教委は昨年度から昼間定時制の清明高(北区)で通級指導を始めた。12人が2〜3人のグループに分かれ、コミュニケーションの取り方や想定にない場面への対処法などの指導を受けた。同高は「困った時にどうすればいいか聞くなど、他人を頼る力はついてきた」と手応えを語る。

     府教委は20年4月に京丹後市で開校する昼間定時制の清新高でも通級指導を導入する。その後は、全日制も含めて通学圏ごとに1校 で通級指導を行えるかなどを検討するという。担当者は「教員配置上、すぐに通級指導を増やすのは難しい。まずは清明高で得たノウハウを他校に生かしていきたい」とする。

     近年、通級指導を受ける小中学生は増えている。一方で高校は義務教育の小中学校どは違い入試を経て入学するため、通常の授業を受けられると判断されがちなこともあって導入が遅れてきた。ただ、大学も障害がある学生の受講や就活を支援するようになり、高校で 支援が途切れないよう通級指導が始まった。

     ただ、市教委などによると、まだ通級指導を補習と勘違いする保護者も多いという。また、「今後、対話を重視する新学習指導要領が 導入され、授業で議論が増えると、人の気持ちが分かりづらいなどの障害がある生徒は困る場面が増えるかもしれない」との見方もある。

     高校教育や大学入試のあり方が大きく変わる時期だけに、通級指導や障害がある生徒への配慮についてより理解を広めることが求められる。


    京都教育大の佐藤党敏教授(特別支援教育)の話各人に合う指導柔軟に考えて

     通級指導によって、心理面や対人関係が安定すると、通常の授業も学びやすくなる利点がある。

     近年は生徒に障害があっても工夫して授業を受けられるようにする「合理的配慮」が学校に求められている。大事なことは、配慮の仕方を本人と一緒に考えること、自分に合った配慮を生徒自身が理解すること、生徒が自ら周囲に配慮を求められるようにすることである。自分自身を理解し自ら周囲に配慮を求められるようになれば、社会に出ても生きやすくなる。配慮を受けることを「甘やかされている」として拒絶する保護者もいるため、丁寧に理解を得る必要がある。

     ただ、誰でも得意、不得意があり、どこからが障害だと明確に区切れるものでもない。それだけに、配慮や自己理解は障害の枠組みだけで考えない方がよい。通級指導も支援の一つだが、子どもに合った支援のあり方を柔軟に考えることが大切だ。


    「通級指導」の拡大については一定歓迎できるのだけれども、障害児童・生徒の概念が一部の発達障害をもつ子どもに限定されてはいないかという危惧を持つ。また「合理的配慮」が配慮をする側の基準に「合理性」があるかどうかという曲解があるのではないかとの心配もある。定員オーバーで支援学校の新設が続くという話しも聞こえる。インクルーシヴな社会を国際社会が求めているにもかかわらず、日本の障害者対策は「いかに役に立つか」が優先されているようの思えてならない。