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  • 1年で1・6倍に.28
  • 公立高講師が答案改ざん.27
  • 学校事務共同化を推進.29
  • 6月29日 府教委 学校事務共同化を推進

     複数の小学校や中学校で協力して事務をこなす組織「共同学校事務室」の設置に向けた動きが京都府内の各地で進んでいる。府数育委員会が設置に向けた課題を探るため本年度、府内5カ所を実践研究地域に指定。備品の購入や書類の作成、お金の徴収などを共同で行えるようにしようと試行錯誤している。

     学校事務員は各校に1、2人いる。その職務は、2017年の学校教育法改正で「事務に従事する」から「事務をつかさどる」に見直 され、より積極的な学校運営への参画が求められるようになった。

     そこで事務処理を効率化する一方、地域連携など多様化する業務にも対応できるよう、同事務室が同年の地方教育行政法改正で制度化された。

     府教委は本年度から2年間、同事務室の設置に向けて「京都式チーム学校推進校」として5地域を指定。対象の小中学校では、事務員が別の学校の業務や個人情報の取り扱いもできるよう兼務の発令を府教委から受け、協力してできることを探っている。

     例えば、京丹後市の網野中と地元4小学校は、保護者に配る書類を統一化。経費削減に向け、体力測定器具など使い回しができる備品の共同調達も進めている。木津川市の木津南中と地元2小学校は、チョークなどの消耗品を共同購入したほか、給食費など徴収金の取り扱いが共同でできないか検討しているという。

     綾部市の何北中と地元2小学校は今回の研究地域に指定はされていないが、17年度から書類のチェックなど事務の共同化を展 開。郷土料理の講習などで講師を務める地域人材の管理を3校の事務員で行い、地域と連絡を取り合う教員の負担が軽減したという。

     今後、準備ができた地域から共同学校事務室を開設していく予定で、府教委は「1校で買えない教材備品でも複数校で買える場合もある。地域連携の業務も請け負えば、教員の負担も減る。府内全域に広げたい」(教職員企画課)としている。


    「学校事務の共同化」はメリット・デメリットの双方から議論されてきたが、IT化が急速に進むなか避けれない事態だろう。勿論これによる「人員削減」が行われるわけではないにしても新規採用者は大幅に減っていく可能性はある。労働側はこれに対するスタンスをどう採るのかが問われているのだが、「合理化反対」だけではもはや有効な方向ではなくなっているのではないか。


    6月27日 府教委 公立高講師が答案改ざん

     京都府教育委員会は27日、府立乙訓高(長岡京市)の50代女性非常勤講師が5月下旬に行われた英語の中間テストで生徒の答案を書き換え、点数を上げていたと発表した。改ざんされたとみられる生徒は延べ25人に上る。講師は「赤点ぎりぎりの生徒の成績を上げてやりたかった」などと説明し、同日付で退職した。

     府教委によると、講師は担当する3年生の英語の3講座、延べ87人が受けた中間テストで、誤答を正答に改ざん。選択問題の解答の数字に鉛筆で線を書き加えたり、消しゴムで一部を消したりし、「1」を「4」に、「2」を「3」に、「3」を「2」に直すなどした。1問1点で、講師は「3〜5点分を書き換えた」と説明したという。

     今月7日に保護者から連絡を受けて学校が答案を回収し、8人分で改ざんの跡を確認。答案を廃棄したものの『違和感を抱いた』と話した生徒数や講師の説明から、延べ25人が改ざんされたと判断した。3講座とも赤点はなかった。

     講師は昨年4月に採用。採点は決まりに反して自宅で行っていた。書き換えは今回だけだったとし、「補習で頑張った子の点も上げた。指導が点数につながらず、プライドもあり行った。取り返しのつかないことをし、本当に申し訳ない」と謝罪したという。

     今後、7月の期末テスト後に、講師の担当外の生徒も含めて再テストを行う予定。京都市上京区の府庁で記者会見した同高の越智雅之校長は「評価の信頼性を損なう行為で大変申し訳ない。講師にプレッシャーをかけたことはないが、本人に焦りがあったのかもしれない。再発防止に努める」と述べた。


    あえて行為の可否は問わないでう。校長の話では「プレッシャーをかけたことはない」とのことだが、現在の「学校」がこうした傾向にないとは言えないだろう。「教員は教えてなんぼ!」の世界にいることは今も昔も変わらないのだが、何かが変わっているとは言えないのだろうか。


    6月26日 子ども食堂 1年で1・6倍に

     子どもに無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」が全国で3700カ所を超え、昨年比で1・6倍に増えたとの調査結果を支援団体が26 日、公表した。どれだけ普及しているかを表す指標として、小学校数に対する食堂数の割合(充足率)も算出。都道府県平均は17・3%で、小学校6校に食堂が1カ所ある計算となった。最も高い沖縄(60・5%)と最も低い秋田(5・5%)では大きな開きがあり、地域差も明らかになった。

     子ども食堂は地域のボランティアらが運営。低所得や親の帰宅が遅い家庭の子ども向けに2012年ごろ始まり、全国に広がったとされる。住民の交流拠点としての役割を果たすことも多い。

     調査はNPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(東京)と全国のこども食堂地域ネットワークが実施。都道府県ごとに今年5月までの状況を集計した。

     食堂数は3718カ所を確認。秋田を除く46都道府県で、昨年の調査から計1400カ所以上増えた。最も多かったのは東京の488カ所で、大阪336カ所、神奈川253カ所が続いた。京都は110カ所、滋賀は117カ所。最も少なかったのは秋田の11力所。全国の年間利用者数は推計で延べ約160万人。

     全ての子どもが利用しやすくするには、小学校区単位で食堂があることが望ましいとして、小学校数に対する充足率も算出。高い順に沖縄60・5%、滋賀52・5%、東京36・6%だった。京都は28・6%。低かったのは秋田5・5%、青森5・6%、長崎7・0%の順だった。

     むすびえの湯浅誠理事長は「子ども食堂には貧困家庭の子どもだけが食事する場所との誤解があるが、交流拠点としても機能している。地域の女性を中心に関心は高く、取り組みやすい雰囲気が出てきたことで、増えたと思う」としている。


    「充足率」という表現はどうかと思うのだが、放課後の子どもの生活に「夕食」を含めるという考え方は必要。一人親家庭の子どもの貧困率が世界でワースト1というのは、日本の子ども貧困対策がポイントを外しているのではないかとの指摘は多い。それを民間が補うという形になっているのが今の「子ども食堂」の現実。


    6月22日 滋賀県教委 県立校に人権配慮要請

     栗東高(栗東市小野)が水泳授業の見学を申告する女子生徒に生理について聞いていた問題で、滋賀県教育委員会は21日、再発防止に向け、高校など県立の全69校に、指導の際に人権に十分配慮するよう求める緊急連絡を行った。 県教委は同日、水泳の授業をする県立 学校を対象に見学申告方法についての調査を始めた。

     緊急連絡は、各校の校長にメールで送信。水泳授業の見学申告をはじめ、生徒の健康管理に関わる指導をする際、「プライバシーや 人権に十分配慮した指導を徹底するよう」求めた。さらに「教育活動全般でプライバシーや人権に欠ける指導がないか、点検し、適切に指導する」ことも求めた。

     申告方法の調査は、水泳の授業がある高校、特別支援学校の高等部、中学校に電話で聞き取る。申告の際、生徒に生理を確認しているか、口頭か書面かなどで、来週末をめどに結果をまとめ、対応を検討する。

     栗東高では4〜5年前から、体育料教員が水泳授業を見学する女子生徒に、体調把握を理由に生理の何日目かを報告させていた。複 数の教員がいる前や、男子生徒が近くにいる状況でも行われたといい、県教委は保護者から抗議を受け、同高に改善を指導した。


    「人権配慮」という視点から見ることは当然ではあるのだが、学校教育が何にプライオリティーを付けているのか黙示されているような問題でもある。つまり、「教える」ことが最も大切な事であるとの了解が「教育」において成立してしまっているということであろう。部活などに関わっての「体罰」と通ずるところがないだろうか。


    6月20日 OECD調査 教員仕事時間また世界最長

     経済協力開発機構(OECD)は19日、昨年実施した第3回国際教員指導環境調査の集計結果を公表、日本の中学校教員の仕事時間は1週間当たり56・0時間で、13年の前回調査を2・1時間上回り、2回連続で世界最長となった。参加48力国・地域の平均は週38・3時間で、.日本は部活動の指導や事務業務の長さが目立った。日本が今回新たに調査に加わった小学校教員の仕事時間も、15カ国・地域で最長の週54・4時間だった。

     文部科学省は今年1月、公立校教員の残業の上限を原則「月45時間、年360時間」とする指針を策定。部活動のあり方の見直しを含めた総合的な働き方改革を推進しているが、世界的に突出した勤務実態が改めて浮き彫りになったことで、一層の対策を求める声が高まりそうだ。

     日本での調査は昨年2〜3月、中学教員3568人と小学教員3321人、小中の校長各約200人にアンケートを実施。教員の仕事時間は小中とも世界最長で、唯一の50時間台だった。

     このうち、中学教員の部活動を含む課外活動の指導は7・5時間(平均1・9時間)、書類作成のような事務業務は5・6時間(同2・7時間)で、ともに世界最長。一方、教員の力を高めるための「職能開発活動」は最短の0・6時間(同2・0時間)で、文科省は多忙が要因とみている。

     小学教員では、授業の計画や準備、事務業務などが他と比べて長かった。課外活動の指導は、部活動がある中学校よりも約7時間短 い0・6時間だった。

     調査結果からは、新学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた課題も浮かんだ。中学教員のうち「批判的に考える必要がある課題を与える」といった指導を「いつも」もしくは「しばしば」していると答えたのは12・6%(平均61・0%)で最低、「明らかな解決法が存在しない課題を提示する」も16・1%(同37・5%)にとどまった。


    部活・事務削減進まず

     日本の教員の仕事時間が世界的にみて圧倒的に長いことが、19日公表の経済協力開発機構(OECD)の調査で改めて裏付けられた。教員の働き方改革の機運が急速に高まり、部活動の負担軽減など少しずつ成果が出始めているが、残業時間の上限を月45時間以内とする文部科学省の指針順守にはほど遠い。仕事を減らす具体策もないまま残業の削減を求められ、苦悩する教員もいる。

     「闇残業が横行している」。埼玉県の公立中に勤務する男性教員(57)は打ち明ける。

     ベテラン教員として、管理職を助け、若手教員にも目配りするなど業務が多い。出勤は午前6時すぎ。終業は早くても午後7時、忙しいと午後9時ごろ。それでも残った仕事は土日の部活動指導の前後にこなしてきた。

     中教蕃の特別部会は1月、教員の長時間労働を是正する総合策を柴山昌彦文科相に答申。教員が担ってきた業務を整理し、地域住 民らと分担することなどを求めた。男性の地元の教育委員会は残業時間が「過労死ライン」の月80時間を超えないことを当面の目標に設定。勤務校にも働き方改革の波が訪れ、半年ほど前に勤務時間を記録するシステムが導入された。

     4月、男性の残業は月80時間を超えた。しかし、管理職は「早めに帰りましょう」と注意を促すだけで、学校全体で具体的な業務見直しを始める気配がない。男性ほそれ以降、勤務時間を少なく記録している。多くの同僚も同じといい「見かけ上の時間は減ったかもしれないが、これでは意味がない」と嘆く。

     OECD調査では、日本の部活動時間の長さも浮き彫りになった。ただ、調査と前後して昨年、スポーツ庁が運動部、文化庁が文化部についてそれぞれ、週2日以上の休養日を設けるなどの指針を策定。一部の現場では変化が出てきている。

     東京都の公立中の男性教員(35)は男女のバスケットボール部の顧問を1人で務め、土日も休めない日々が続いていた。しかし、スポーツ庁の指針を受けて昨年度、土日のどちらかの部活を休みにし、本年度からは朝練も廃止した。顧問は2人制になり、「負担感が全然違う」と喜ぶ。

     以前は帰宅しても妻と会話する余力さえなく、離婚に至った。今は、教員向けの勉強会や地域のボランティアに参加できるように。教員OBが学校に配属され、パソコン入力や印刷を代行するなど、業務改善も少しずつ進んでいるという。

     それでも月の残業は80〜100時間。保護者対応や新味の乏しい研修にも時間を取られ、生徒の提出物をじっくり見る余裕もない。男性は「本当の意味で『生徒のため』とは何かを考え、業務を見直すべきだ」と訴えた。


    残業への取組はOECD調査の前後ではかなり違った者である可能性は高い。しかし、表れた数時が「闇残業」の上でのものかもしれない。現場教職員の意識がどう変わっていくかにもよるし、管理職が真剣に取り組むかにもよるだろう。
    府教委はあいつぐ教員の不祥事に危機感を持ち、市・府共に教員採用の競争倍率が昨年よりも低下していることを危惧している。「教職」という職業が魅力的むしろブラックなものとして受けとめられている現状があるのではないか。その中で「やる気」だけに支えられている学校経営(教育)のあり方の見直しは急務であるはず。


    6月18日 文科省 外国籍の子就学実体調査

     文部科学省は17日、外国人就労拡大に向け政府が決めた「総合的対応策」のうち、同省が取り組む施策の概要を公表した。外国籍の子どもが日本国内の学校にどの程度通っているか実態調査し、7月以降に結果をまとめて就学支援につなげるほか、日本語教育の充実のため教師の資格創設を検討することなどが柱。就学義務がない外国籍の子どもは不就学のケースも多いとみられ、教育機会の確保が課題 となっている。文科省は5月から自治体を通じて就学状況を調査しており、取り組みが遅れている地域を支援する方針。具体的には、インターネットを活用した多言語での就学案内や、幼稚園・保育園への入園ガイド作成などを検討する。

     日本語教育の充実では、同省認定の「日本語指導アドバイザー」を希望する自治体に研修講師として派遣。日本語教師の資格制度は、取得要件などの検討を有識者が進めており、来年3月までに結論を出す見通しだ。

     このほか、外国籍の子どもが公立高校に進学する機会を確保するため、入試での辞書持ち込み容認や入学特別枠の設定といった配慮を自治体に求める。


    特に幼い子どもの「母語」をどう保障するかや、民族的なコミュニティー形成の保障、教育機関と親とのコミュニケ―ションなどの課題が山積している。外国人に対する「支援」が同化政策に向かわないようにすることが、多様化を容認する社会だと思う。そうした観点からも、北朝鮮系の学校に対する差別的な処遇は早急に改善されるべきであろう。


    6月15日 府・市委 教員採用志願の倍率低下

     京都府と京都市の両教育委員会は14日、2020年度教員採用試験の志願状況を発表した。全体の倍率は府教委が5・8倍(前年度は6・5倍)、市教委が5・4倍(同6・4倍)で、いずれも民間企業の人手不足などの影響で前年度より低下した。

     府教委は小中高校や特別支援学校などで計350人程度(前年度比10人増)の採用予定に対して、2044人(同166人減)が志願した。今回から出願を可能にした50歳以上の志願者は、講師や他府県の現職教員、民間企業勤務者など62人だった。

     市教委では、小中高校、総合支援学校など計335人程度(同35人増)の採用枠に1798人(同114人減)が志願した。

     両教委とも倍率が5倍台となったのは12年度以来。いずれも7月に第1次試験を行う。



    6月15日 市教委 始業時間異なる就学4コース

     京都市教育委員会は13日、伏見工業高(京都市伏見区)と西京高(中京区)の両高定時制を統合して2021年4月に伏見区で開校する新定時制高の概要を明らかにした。京都府内では唯一の昼間・夜間併設型で、自分のぺースで学べるよう始業時間が異なる四つの就学コースを用意。特に不登校経験者や特別な支援が必要な生徒のサポート体制を充実させる。

     新定時制高は、伏見工業高の敷地内に設置される。新校舎の大部分は新築だが、一部は既存校舎を改修して活用する。通学区域は府内全域。普通科のみを設置し、1学年80人程度を受け入れる。クラスは20人程度の小規模とする。

     就学コースは、朝に起きられないなど個々の生活リズムに合わせて、始業時間を午前10時50分、同11時45分、午後1時15分、同5時 20分の4種類から選ぶことができる。1日の授業時間が長いコースは3年、短いコースは4年で卒業する。

     発達障害など支援の必要な生徒には、個別に指導する「通級指導」を実施する。基礎学力に課題がある生徒には、入学して数カ月間は中学の学習内容を集中して学び直す授業を行う。不登校の生徒でも授業に参加できるよう、タブレット端末やロボットを使った遠隔教育も検討している。

     21日から7月22日まで校名を募集する。6月21日以降にインターネットで「新定時制 校名案」と検索し、意見募集フォームから応募できる。問い合わせは新定時制高校開設準備室075(222)38110 。


    学びの多様性を保障するという点では評価できる。恐らく問題は「出口」をどうするかというところではないだろうか。就職可能性の高い生徒への指導が強化されるような仕組みにならなことを希望する。


    6月14日 府教委 相次ぐ教員不祥事、根絶へ処分厳格化

     京都府教育委員会は13日、2018年度に教職員による不祥事が相次いだことを受け、懲戒処分の基準を厳格化する方針を明らかにした。7月をめどに、セクハラや、学校など職場のパソコンの不正使用に関する処分基準を重くする。

     府教委は不適切な行為の内容に応じて免職、停職、減給、戒告と懲戒処分の基準を定めている。新基準では、児童生徒以外にセクハラを繰り返し行い、重大な被害を与えた場合の最も重い処分を免職(現行は停職)に引き上げる。

     パソコンやタブレット端末など職場の情報機器の不正使用に関しては現在、減給までとしているが、事案に応じて免職まで行うようにする。ホームページの改ざんなどで重大な被害を生じさせた場合に免職にしたり、わいせつ画像の閲覧や不正アクセスなどで公務の運営に支障を生じさせた時には停職にしたりする。

     府教委は18年度、盗撮や着服、窃盗、暴行、体罰などで教職員10人を懲戒処分にした。教職員人事課は「社会情勢に合った内容に変更し、研修も続けて不祥事を根絶したい」としている。


    女子高生にスマホで裸画像送らせた疑い逮捕

     京都府教育委員会は13日、女子高生にスマートフォンで裸の画像を送らせたとして5月に児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕された公立中の男性教諭(34)について、同日付で懲戒免職処分にしたと発表した。

     府教委は「児童生徒の健全な育成に携わる教育公務員としてあってはならない行為。信頼を回復できるよう全力で取り組む」としている。


    「先生のクセに!」という批判は受け入れ難いのだが、「教員の質」の低下が起こっているのではないかという疑念は残る。「おとな」を相対化できるような年頃になれば教員を批判的にみる事もできるのだが、それ以前の子どもにとってはやはり目の前の大人(ロールモデルとして)の役割は期待されるだろう。一方で、教員自身が他者との関係をつむぐという関係に馴染んでいないということも一因ではないかと思える。


    6月8日 市教委 AIで授業改善

     人工知能(AI)を授業改善に生かす実証研究が、京都市内の小中2校で昨年度から取り組まれている。グループ学習をする際にAIが子どもたちの発言を分析し、教員による児童生徒の理解度の把握や学習支援に役立てている。一方で費用や精度など先進技術ならではの課題もあるようだ。 (大西幹子)

     北区の加茂川中で2月、地震をテーマにした理科の授業で実証研究が行われた。1年生4人ほどがグループになり、地震波と揺れの関係について話し合い出すと、机に置いたマイクが音声を拾い、教員が持つタブレット端末に次々と発言内容が表示されていった。

     また、生徒が今回の学習内容のキーワードを発したり、グループの発話数が少なかったりすると、教員の腕に付けたスマ,トフォンが振動。議論が活発に行われているかや、テーマに沿って議論を進んでいるかを把握する手助けをした。

     教員は「支援の必要な生徒が分かり、授業準備や目標設定の見直しができる」とメリットを実感したという。

     市教委が実証研究を行う背景には、来年度以降に小中で導入される新学習指導要領がある。「主体的・対話的で深い学び」を目指して、少人数グループで考えを出し合うスタイルの授業が増えているからだ。教員が複数グループの発言内容を同時に把握できないことや、積極的に発言できない子どもが取り残されがちという課題があるため、実証研究を始めた。

     発言内容の可視化には、NECが開発した音声の認識・分析システムを活用。京都大学術情報メディアセンターと連携し、データに基づいた授業改善を図ろうとしている。

     だが課題もある。市教委は「学校規模や地域性に合った学習支援をするために他校にも広げたい」とするが、多額の予算や準備が必要で見通しが立ちにくい。また、AIが発言内容を誤って認識したり、教員が確認するのに時間が掛かったりすることもあり、データの種類や量を絞る必要があるという。

     市教委は現時点では、AIによる発言分析を児童生徒の成績評価に結びつけることはしない考えだが「システムが広がれば評価の材料とする可能性もある。ただ、学習内容を理解しているが積極的に発言できない児童生徒をどう評価するかといった問題もあるため、担当者は「慎重に検討したい」としている。


    ラーニングアナリティクス 一人一人に合った指導も

     京都市教育委員会の人工知能(AI)を活用した授業改善は、学習に関するデータを教育に役立てる研究分野「ラーニングアナリテイクス(LA)」に基づ、いている。LAは一人一人に合った指導や学習への道しるべとなる可能性があるが、日本では制度や環境が整っておらず、活用が進んでいない。

     LAは、教材や成績、教員の授業計画などの情報を教員や学習者から収集・分析し、フィードバックして効果的な教育に生かす手法。データの収集には、AIやタブレット端末などIT技術を用いる。

     LAに詳しい京都大学術情報メディアセンターの緒方広明教授によると、積極的に取り入れている国もあり、米国では単位を落としそうな学生を予測して警告をすることで成績が向上した事例があるという。英国では政府が50以上の大学にLA基盤を整備して教育改善に役立てている。

     一方、日本では2016年に九州大がLAセンターを設立し、約2万人の学生を対象象に研究している。国もLAには注目しているが、個人情報保護の問題に加え、制度や基盤となるシステムの構築など、活用には課題が多いという。

     緒方教授は本年度から、京都市教委と連携し、中京区の西京高と同局付属中で、生徒1人に1台のタブレットを持たせて学習支援に活用する研究を行う。デジタル教科書の閲鷺歴やテストの結果といったさまざまなデータを分析することで、学習上のつまずきを明らかにする計画という。

     緒方教授は「この仕組みを使って、子どもたち一人一人を細かくフォローできるようになれば」と期待を込める。


    「数十年先では現在の職業の半数は無くなっている」との話しをとりわけICT関係者から聞く機会が多くなった。AI技術の進歩によって人間の労働が機械に置き換わって行くことは予想できる。教育もそうした流れに抗うことは出来ないのだろうか。ここで紹介されているAIによる授業分析は、いわば「対話」を分析しそれを学力改善に利用しようとするもののようだ。しかし、「対話」であるならやはり(効率が悪くても)アナログな方法が有効なような気がする。つまり、「対話」をデジタル的に捉えようとするなら結局は数値やパターンが参照されるというシステムになってしまうだろう。それで果たして「主体的・対話的」な成果を生む事が出来るのだろうか。生徒たちはAIの好む「対話」を求める事にはならないのだろうか?


    6月1日 府内労働意識調査 「私生活より仕事」3割

     京都勤労者学園(京都市中京区)は、府内の企業や官公庁の労働者への働き方についての意識調査を行い結果をこのほど公表した。今回のテーマは生活の充実。私生活に比べ仕事を優先しているとした人が約3割で、ワークライフバランスを保つのに必要なこととして休日の増加や給与の改善を挙げた人が多かった。

     府内の労働組合の組合員5千人を対象に行い、2197人から回答があった。内訳は、正社員が89・1%、女性は15・4%。

     仕事と私生活のバランスについて、28・8%が仕事優先と回答。私生活優先は15・7%で、双方ともに優先が最多の43・2%だった。働く目的(複薮回答可)については生活の維持が89・6%、楽しく豊かな生活のためが47・8%で、生きがいややりがいは13%だった。

     今の働き方についての満足度は「満足」と「やや足」と の合計が33・1%だったのに対し、「不満」「やや不満」の合計は26・1%となった。ワークライフバランスを保つために必要なことは、休日の増加が34%で最多だった。次いで給与の改善が33・8%、業務分担見直しや効率化、人員増と続いた。

     勤務時間以外の時間の費やし方では、家事が最も多く46・1%、デート、食事、飲み会など他者と過ごすが32・2%、育児21・1%と続いた。一方、今後時間を費やしたいことは、スキルアップ学習(22・4%)、他者と過ごす(20%)、小遣い稼ぎ程度の副業(14・6%)となり、実態と希望の格差が浮き彫りとなった。

     同学園は調査結果について「ワークライフバランスの実現で重要なのは、在宅勤務のような就労形態より、給与や休日のような労働条件の改善ではないか」と分析している。


    調査が男性正社員に偏っていることはまず割り引いて考えなければならないのだが、三割以上の人が休日増であることは興味深い。仮に非正規労働者を含めた調査であれば、おそらく給与増が大きく増えることだろう。貧困だから働かざるを得ない、給与にゆとりがあれば余暇が必要ということになるのか。あまり活発な議論にはなっていなのだが、「ベーシックインカム」をそれ相当の「有給休暇」として考えるというのはどうだろうか。加えて政労使共に、働く事が「良い事」というイデオロギーを相対化する時期に来ているのかもしれない。


    6月1日 大学共通テスト 根強い懸念 分かれる判断

     大学入学共通テストに導入される英語の民間検定試験の活用を巡り、全国の国立大の判断が分かれた。導入は、実生活で使える英語力を目指す入試改革の目玉だが、現場の根強い懸急や検定試験どの距離感が表れた形だ。入試に結果が反映される検定試験のスタートは来年4月に迫る。私立を含めると活用未定の大学は多く、対策に追われる高校側からは戸惑いの声が漏れる。

     共通テストの対象となる検定試験は、大学入試センターが認定した7団体8種類だが、検定縄や実施回数だけでなく、もともとの趣旨や目的も異なる。活用を見送った京都工芸繊維大の担当者は「複数の検定スコアを本当に公正に比較できるのか。初回の入試への活用は見送らざるを得ない」と説明する。

     文部科学省のある幹部は「少なくとも国立大は活用してもらうよう促してきた。3校も漏れたのは残念」とつぶやいた。

     何らかの形で活用すると決めた 7 9校も内情はさまざまだ。東大は検定試験で一定の成績を取ることを出願の条件としたが、検討段階 では学内から「英語以外で優秀な受験生が排除される」などと異論が噴出。

     結局、受験生をよく知る高校教員が英語力の証明書を出せば、検定試験の成績なしでも出願資格を認めるとの「抜け道」も用意した。京大や名古屋大もほぼ同じ方針を示している。国が高校卒業時点での目安と位置付ける英検準2級程度ではなく、1段階低い英検3級程度以上を出願基準とした国立大も一定数あった。

     ある大学の関係者は「本当はもっと高いレベルを求めたかったが、さまざまな検定試験を比べられるだろうか。スコアのわずかな差に泣く受験生が出ないよう最低限の活用にとどめた」と話す。

     判断が分かれた背景には、大学によって求める学生像が異なり、「入試で何を重視するかは大学が主体的に決める」 (ある国立大の学長)という大原則がある。活用見送りを決めた3校も、入学後の独自カリキュラムで学生の英語力を伸ばせるとの自信を持つ。

     ただ受験生にとっては、出願先によって対策を変える必要が出てくる。当初、入試の詳細が明らかになるとみられていたのは昨年夏ごろ。大幅に遅れ、私立大の中にはまだ方針を明らかにしていないところも多い。本番が迫る中、ある教育委員会の高校英語指導担当者は「生徒は容易に志望俊を変えられない。不安を覚える教員は多いし、生徒もぎりぎりになって混乱しないだろうか」と心配する。


    小学校での英語必修化を含めてこの国の英語教育は果たして実効性があるのだろうかとの疑問を抱かざるを得ない。結局、(英語の)教育産業だけが元気なような気がするが、教育は新自由主義的な対象ではないだろうに。