h1801
 
  • 連載 外国につながる子どもの教育(9)
  • 電話の応答時刻 自治体でばらつき.29
  • 「お付き合いしていただけ」.30
  • 子の貧困把握に39指標.30
  • 「名誉毀損だが公益性」.30
  • 11月30日 京都地裁 「名誉毀損だが公益性」

     京都朝鮮第一初級学校(京都市南区、閉校)への差別的な発言で社会的評価をおとしめたとして、名誉毀損罪に問われた「在日特権を許さない市民の会(在時会)」元幹部西村斉被告(51)=伏見区=に対して、京都地裁は29日、罰金50万円(求刑懲役1年6月)の判決を言い渡した。柴山智裁判長は「公益を図る目的で名誉毀損に当たる表現行為に及んだ」と判断し、発言の差別性は認めなかった。同校を運営していた京都朝鮮学園側は「表現の自由を隠れみのにした差別的発言を許す不当判決」と批判。一方、被告側からは「差別目的が否定された」と一定評価する声が聞かれた。

     柴山裁判長は、「ここに日本人を位致した朝鮮学校があった」などの被告の発言について、「日本人拉致の事実閨榛を明らかにするという目的で、公益を図る目的があった」と認定。「朝鮮学校図係者かな、と思ったら110番してください」との発言についても、「聴衆の関心や注目を引く目的でやや極端な表現を使った」と、公益目的を否定しなかった。

     ただ、京都の朝鮮学校が日本人を粒致した真実性の証明は認められないなどとして、被告の無罪主張を退けた。

     被告は過去に同校の業務を妨害するなどした事件で実刑の有罪判決を受けているが、「犯行態様が大きく異なる」として過度に重視 せず、「刑事責任は懲役刑を選択すべきほど重いとは言えない」とし、罰金刑を選択した。

     判決後に会見した京都朝鮮学園側は「ヘイトスピーチにお墨付きを与える最悪の判決」と批判。同学園の弁護団の富増四季弁護士は 「公益性の判断は、発言内容だけから評価するのではなく、発言した場所や態様を考えるべきで、被告の行為に表現の目的はない」と指摘した。

     同学園の柴松枝(シソンジ)理事は「あの場所で学んでいた子どもたちの痛み、苦しみ、不安。判決にはそうした思いに一切触れられていない。今日の判決を、民族差別をなくす契機としたかった」と落胆した。

     一方、無罪主張していた被告側は即日控訴。弁護人の徳永信一弁護士は、会見で裁判所の判断を「言葉尻の揚げ足取り」と批判した。ただ、被告の発言内容に公益性を認めた点は「一定評価できる」と歓迎した。

     判決によると、西村被告は2017年4月23日、同校跡地そばの公園で、拡声器を使い「この朝鮮学校は日本人を粒致しております」などと発言。動画をネット配信し、同校を運営していた学校法人京都朝鮮学園の名誉を傷つけた。


    表現の自由に詳しい龍谷大法学部の石埼学教授(憲法学)の話 表現の自由事実認定に疑問

     被告の一連の発言を表現の自由として過度に重視した判決で、事実認定に疑問が残る。「朝鮮学校関係者と思ったら110番してください」との発言は露骨な差別発言で、公共性や公益性を図る目的はないと考える。判決は、刑法の名誉毀損罪の枠組みでの判断にとどまった。差別的発言を刑法で規制する限界が示されたと考えてよいのではないか。へイトスピーチが社会問題化し、対策法などが施行された社会的背景を踏まえると、今後は厳密な構成要件を設けた上で強度の規制を加える立法の検討なども必要だろう。


    表現自由の線引きをどこにするかと言うのは難しい問題ではある。しかし、権力を持っている者(マジョリティーの立場にある者)に対しては、厳しく対処すべきであろう。マイノリティーは「承認を求める権利」を有するが故に、より厚く表現の自由を認めなければならない。


    11月30日 政府 子の貧困把握に39指標

     政府は29日、貧困家庭の子どもへの支援方針をまとめた「子どもの貧困対策大綱」を閣議決定した。5年前に策定した大綱を見直し、貧困の実態をより詳細に把握するため、指標に「ひとり親の正規雇用割合」「公共料金の滞納経験の有無」などを追加、計39項目とした。生まれ育った環境で子どもの現在と将来が左右されないよう、早期の対策や自治体の取り組みを充実させる。

     また、子どもの生活実態や意識に関する全国共通の調査を来年度にも実施する方針を決め、大綱に盛り込んだ。自治体ごとに比較分 析し、地域の実情に応じた取り組みができるよう後押しする。

     貧困対策を巡っては教育無償化などが進むが、子どもの貧困率は依然高い水準。対策の着実な実行が求められる。

     新大綱は子育てや貧困を家庭のみの責任とせず、子ども第一に考えるとした。親の妊娠から、生まれた子どもの社会的自立まで切れ 目なく支援し、声を上げられない家庭にも配慮する。家庭に身近な市区町村の対策計画策定を推進することも掲げた。

     貧困の改善指標として、従来の大綱では「生活保護世帯の子どもの大学進学率」など25項目を設定していた。今回は一部を見直し、電気・ガス・水道料金の滞納経験や、食料・衣服が買えない経験などを追加。こうした点に着目し、困窮している家庭を早期に発見したり、取り組みが効果を上げているか検証したりする際に役立てる。

     教育支援は小中学校から高校にも重点を置き、中退の予防や、中退した場合の学習体制を整備。若年の妊婦らを妊娠期から支援し、相談には会員制交流サイト(SNS)を活用する。


    後藤澄江・日本福祉大教授(福祉社会学)の話 当事者意見反映を

     これまでの指標だけでは貧困の実態をつかみ切れていないとの指摘もあり、「ひとり親の正職員割合」といった指標が増え、より複合的 に現状を把握するようになったところは評価できる。この問題を身近に感じられない人もいるかもしれないが、子どもの貧困率は7人に1人で、外見では分からなくても身の回りにいる。社会の関心を高めるとともに、当事者である子どもや親の意見を反映した施策をさらに進めるべきだ。


    子どもの貧困対策大綱のポイント▲子育てや貧困を家庭のみの責任とせす、子ども第一の支援をする ▲妊娠・出産期からの切れ目ない支援を早期に行う▲声が上げられない子どもや家庭に配慮する▲貧困対策計画の策定など自治体の取り組みを充実させる▲貧困を把握するための従来の指標に、「ひとり親の正規雇用割合」などを追加、計39項目に、となっている。従来から指摘されている生活保護の「水際作戦」などのような理念を欠く行政にどこまで対処できるかは明らかではないが、とのかく政策のベースとなる指標が増やされるのは意義がある。


    11月30日 国立大学 「お付き合いしていただけ」

     国立大の多くが、現在の高校2年生が受験する2020年度入試での英語民間検定試験の活用を取りやめた。経済「格差や地域格差といった問題に加え、受験生の成績を「共通ID」で管理する大学入試センタ一のシステムが稼働しないため、大学独自で成績を収集する負担が重いことも踏まえて判断したとみられる。「文部科学省にお付き合いしていただけ」との本音も聞かれた。

     「うちのように規模が小さい大学では、対応できない」。東日本にある国立大の入試担当者はこう明かした。英検やGTEC、TOEFLなど民間試験は多様に存在。活用するとなれば、形式が異なる成績が大量に届き、評価の比較などの作業を短期間で処理しきれない恐れがある。担当者は「国がやめたのに、難しい作業をしてまで独自に取り入れる理由がない」と言い切った。

     首都圏の国立大関係者は「文科省や国立大学協会が民間試験を『使え』と言うから従っていた。そもそも使う必要性を感じていなかった」。入試への影響を小さくしようと、受験生なら容易にクリアできる成績を出願資格にする予定だった。

     この国立大では、11月に萩生田光一文部科学相が共通テストへの導入見送りを発表した直後に学内で協議。「大学独自でも使わない」とすぐに決まった。入試本番まで1年余りでの変更に、関係者は「受験生に相当不親切なことをしてしまった」とも語った。

     「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測ることができると、民間試験の導入を積極的に進めてきた私大でも方針転換の動きが出ている。

     立教大は文学部を除く学部の一般選抜で大学独自の英語試験を廃止し、民間試験に一本化する予定だった。

     しかし、居住地域や家庭の経済状況によって受験機会に差がつくとの批判が相次ぎ、センターが作る共通テストの英語の成績も合否判定に使うと転じた。ただ、担当者は「4技能を測る重要性は変わらない。今回の措置は過渡期的なものだ」と強調した。


    「独立行政法人」の独立。「建学精神」と私学助成金数。いずれも大学が自由に学問研究や教育を行うことを阻害しているのが文部科学省の「金」であることは間違いない。当初から民間試験については疑問が出されていたがいつのまにかなし崩し的に利用が決められてきた。大学の矜持はどこに。


    11月29日 働き方改革 電話の応答時刻 自治体でばらつき

     京都府内の公立学校で、電話応答に終了時刻を設定する取り組みが広がっている。働き方改革の一環で教職員の長時間労働を是正するのが主な狙いで、府教育委員会は今月から府立高や付属中、特別支援学校では原則午後5時までと設定。府内の小中学校でも同様の 動きがある。ただ終了時刻は自治体でばらつきがある。

     府教委は府立学校での電話応対を終業時刻の午後5時で終了すると決めた。今月上旬、保護者に「学校へのお電話は終業時刻までにお願いします」との文書を出した。担当者は「教職員が早く帰れれば、精神的にも物理的にも余裕ができ、結局は子どもたちのためにもなる」とする。

     小中学校については自治体で対応が異なる。小学校で最も早いのは城陽市の午後5時で「児童の下校時間を考慮した」という。長岡京市は午後6時半、京都市と亀岡市、舞鶴市、与謝野町は午後7時で「児童が帰宅後に保護者と話をし、学校に連絡があり得る時刻」(亀岡市)などの理由でそれぞれ決めていた。

     中学校は城陽市が午後6時、亀岡市、長岡京市、舞鶴市、与謝野町が午後7時、京都市が午後7時半で、部活動が終わって退校する 時間などを者濾して定めていた。

     終了時刻を延ばすとその時間まで教職員が学校に残る必要性も出てくるが、京都市の担当者は「終了時刻の設定はあくまで原則。そ れより早く退校してもよく、残業を許容している訳ではない」と説明する。

     教職員からは「電話が鳴らない分、仕事に集中できる」「早く帰る意識付けになった」などの声が上がっているという。

     府教委は今後、未設定の自治体にも導入を働きかけていく予定で「忙しいと早く帰れないので、業務量を減らす取り組みも進めたい」 としている。


    今国会の衆議院で給特法の改正案が成立した。「長時間勤務の元凶」といわれてきた給特法が廃止ではなく、改正された。それも変形労働制と言う「朝三暮四」的な内容になっている。与野党の妥協案のだろうが「付帯決議」も付されているが、雇用者側(教育委員会・校長)の任意によってのみ長時間労働の是正の成果が表れる形になっている。現場での実態検証は三年後に再調査すると言う。その中で「電話応答時間の設定」は一つの対応かもしれないが、研修センターなどでの研究会などは「野放し」状態で、6時半以降に続々と教員が集まるという。「やりがいの搾取」なのか「自己満足」なのか分からないが、ディーセントワークなどの言葉はそこにはない。


    11月27日 文科省 記述式採点者7700人見込む

     大学入学共通テストで導入される記述式問題を巡り、文部科学省が採点者に7735人必要と見込んでいることが26日、分かった。2020年度予算の概算要求で、この人数を前提に共通テストにかかる費用を積算していた。野党合同ヒアリングで質問を受け、同省が明らかにした。

     採点はべネッセコーポレーシヨンのグループ会社「学力評価研究機構」が担う。国会に参考人招致されたべネッセ幹部は、採点者にアルバイトや学生が含まれることを否定せず、野党は採点の精度や公平性への懸念を示している。

     同省担当者は「7735人は概算要求時点の数。実際の採点者数は大学入試センターと機構が協議して決める」とした。

     共通テストは現行の大学入試センター試験の後継として、20年度から始まり、国語と数学で新たに記述式問題が導入される。50万人以上の受験者が見込まれ、文科省は17、18年度に実施した試行調査を踏まえ、採点に必要な人数を算出。概算要求では、共通テスト全体で事業費約50億円を計上した。


    「英語の民間試験」問題に関わらず「大学入学共通テスト」への関心が高まっている。文科省に考え方には、入試を変えれば高校や義務教育の質が向上するという神話があるとも、何かをやっているというパフォーマンスのためではないか、との指摘もある。確かにこれまでの日本の教育は「詰めこみ型」あるいは「トップダウン型」といったもので、PISAの学力評価でそれが批判されてきた経過がある。それへの対策は必要だけれども、教育環境が整わないなかで学習内容だけを膨らませても効果は少ないだろう。アクティブラーニング、英語教育、プログラミング教育然りである。結果的には民間の教育産業が栄え、当事者の子どもの間には格差が広がるということになってはいない。


    11月23日 大学入学テスト 採点会社との兼務べネッセが解除へ

     萩生田光一文部科学相は22日の衆院文部科学委員会で、大学入学共通テストの記述式問題の採点を請け負った学力評価研究機構について、共にグループ会社を構成するべネッセコーポレーションにも籍を置く幹部や社員は、近く兼務が解除されることを明らかにした。

     べネッセコーポレーションは教育関連事業として、共通テスト対策なども実施。一方で、学力評価研究機構の社員や幹部の一部は、採点マニュアル作成のため共通テスト本番前に記述式問題や解答例を知ることができ、外部に情報が漏れる懸念が指摘されている。

     そこで、採点業務を委託した大学入試センターと両社が協議し、不正防止の観点から兼務解除などを決めた。国民民主党の城井崇氏 への答弁。

     具体的こま、学力評価研究機構の幹部と、共通テスト本番前に問題や解答例に触れる社員は12月1日付でべネッセコーポレーシヨンとの兼務を解除するほか、共通テスト後も一定期間は異動を含めた人事交流を行わないとした。学力評価研究機構のその他の社員も全員、来年2月1日までにべネッセコーポレーションとの兼務を解除する。

     兼務している社員数について、ベネッセ側は「回答を控えさせていただく」とした。

     また、萩生田文科相は22日の参院本会議で、共通テスト記述式問題の関連業務の受注を2017年に高校側への営業活動に利用したとして、ベネッセコーポレーションに21日付で再発防止を求めたことを明らかにした。共産党の吉良佳子氏への答弁。


    なんとなくベネッセと文科省との深い繋がりが臭う。「兼務解除」だけで問題が解決するとは思えない。共通テストが民間業者との繋がり無しでは立ち行かないことが問題ではないか。各大学が独自の選抜基準を持っているのだから敢えて共通テストが必要なのかを問い直してみる必要はないのだろうか。


    11月22日 市教委 「洛友中」入学要件を拡大

     京都市教育委員会は21日、市立洛友中夜間部(下京区)の2020年度入学対象者を市内在住者のみから市内通勤者にも広げると発表した。12月2日から同中などで願書を配布する。

     対象は誕生日が05年4月1日以前で、市内通勤者については住所や就業形態は問わない。募集人数は市内在住者と合わせて20人程 度。義務教育を終えていない市民のほか、不登校などで実質的に十分な教育を受けていない人も応募できる。

     文部科学省は16年に成立した教育機会確保法に基づき、各都道府県に1校以上の夜間中学の設置を求めている。府内は洛友中1校のみで市内在住者しか入学できず、市外在住者の学びの場がないことが問題になっていた。

     願書配布と受け付けの期間は12月2日〜来年2月14日日。京都市と京都府の教育委員会のホームべ,ジに募集案内を掲載する。問い合わせは洛友中075 (821)21960



    11月21日 府国際センター 希少言語オンライン通訳

     多様な出身国の在日外国人を母詣で支援しようと、京都府国際センター(京都市下京区)が今秋から、子どもの在籍する学校の保護者面談や家庭訪問で、「タブレット端末を介したオンライン通訳に乗り出した。従来の通訳者派遣は、希少言語に対応できる人材の不足が課題だった。地方に暮らす外国人が抱える言葉の壁を押し下げる狙いだ。

     新たなオンライン支援では、ビデオ通話アプリが入ったタブレット端末を学校側に無償で貸し出し、年数回の保護者面談や家庭訪問の際、教諭が持参。通訳支援員が遠隔地から、1回1時間程度、画面を介して会話を通訳する。対象は京都市を除く府内の公立小、中学校や府立の高校、特別支援学校など。利用者の母語に応じ、センター側が通訳支援員を選定する。

     10月下旬、地元の中学に通う長男(14)の保護者面談で、ウルドゥー語の通訳を初めて利用した木津川市のパキスタン人ハーン・ラシードさん(41)は「日本語が上手ではないので、安心。この先、息子にどう勉強させたらいいのか、展望が持てた。大きな価値のある時間だった」と話した。

     同センターでは5年前から、アラビア語やネパール語、スリランカで話されているシンハラ語などの通訳が可能な外国人の留学生や主婦を支援員として府内の学校へ派遺。授業や休み時間、個別面談の場面で通訳を担い、クラスメートや教諭と橋渡ししてきた。

     だが、希少言語を通訳できる支援員は少数の上、居住地が京都市内に集中し、派遣できたのは、北は京丹波町、南は八幡市までに限られていた。言語によっては依頼の増加で特定の支援員の負担が重くなるケースがあり、人材不足が顕在化していたという。

     同センターは「通訳への距離を縮めたい。ニーズは大きいはずで、あきらめていた保護者に支援が届くようになれば」とし、各学校や保護著に君用を呼び掛ける。問い合わせは、府国際センター075 (343)9666=多言語対応、(342)5000=日本語。


    外国人の家族に対する支援はICT環境の進歩によってげっきてきに変化している。視覚障害者や聴覚障害者にたいしても同様である。しかし、こうした人たちを包摂していこうとする日本社会の側、とりわけ教育の側のソフト(理念)が追いついているのかは不安でもある。


    11月21日 文科相抗議へ 共通テスト業務 受注を掲げ営業

     大学入学共通テストに導入される記述式問題を巡り、ベネッセコーポレーションが関連業務を受注している事実を示し、高校関係者向けに自社サービスを紹介する会合を開いていたことが20日、分かった。衆院文部科学委員会での城井崇氏(国民民主党あ質問に、萩生田光一文部科学相が事実関係を認めた。

     文科省は「営業を有利にしようという疑念を持たれても仕方がない」とみており、萩生田氏は委員会で「ベネッセに厳重に抗議し、是正を促す」と述べた。2021年1月が本番の共通テストでは、ベネッセの関連会社「学力評価研究機構」が国語と数学の記述式問題の採点を担う。

     べネッセは17年度に実施された共通テストの試行調査で、作問や採点基準の設定を大学入試センターに助言する業務を約100万円で受注。城井氏によると、17年9月に開いた首都圏の高校関係者向けの会合で、配布資料に受注の事実を記載した上、自社の「進研模試」が「入試改革に対応した出題であることや、述力向上のフィードバック充実をうたっていた。


    ベネッセの行為は公共的業務と私的な企業利益との混同のように思われる。教育業界にベネッセが深く関わっているというのは、ある意味知られた事実である。ある大学の教育学部は「ベネッセなしには成り立たない」ということが言われている。当面中止になった英語の民間試験利用についてもベネッセの利益に結びついていた筈。加計学園問題でも萩生田文科相の関与が疑われた。民間企業の利益のために公共性を犠牲にする発想があるなかでの「厳重抗議」の言葉は空々しい。かつてのリクルート事件のようなことがベネッセ事件として繰り返されるような気がしてならない。


    11月21日 政府予算 幼保無償化財源足りず

     10月にスタートした国の幼児教育・保育の無償化制度で、2019年度分の財源が数百億円程度不足する見通しとなったことが20日、分かった。単価の高い保育所利用者が想定よりも多かったことが主因とみられ、政府は不足分を編成中の19年度補正予算案に追加計上する。始まったばかりの看板政策で予算不足になるのは異例で、甘い制度設計が蕗呈した格好だ。

     19年度の税収は当初見込みから大幅に下振れする見通しで、無償化財源の不足分には赤字国債を含む他の歳入を充てる必要がある。 政府の甘い見込みに加え、支出増大を借金で賄う構図も批判を招きそうだ。

     無償化制度は、安倍晋三首相が17年10月の衆院選で「国民の信を問う」と公約の柱に掲げ導入した。10月の消費税増税による増収分 の一部を財源に活用。少子化対策として子育て世代の負担を減らす狙いで10年度は10月からの半年分として3882億円を計上した。年間の利用者は300万人と見込んでいる。

     保育所は幼稚園よりも子ども1人当たりにかかる費用が高い。10月に制度が始まると、当初想定よりも保育所の利用者の割合が高く、国の負担額が膨らんだ。また無償化前は自己負担割合の高かった中高所得者の利用が予想よりも多く、国の負担増につながった。

     制度を所管する内閣府は取材に対し、「理由は精査中」とした。

     年間ベースでの事業費は当初、国と地方を合わせて7800億円規模を想定していたが、これも1千億円程度上振れする可能性がある。編成中の20年度予算案は要求額が100兆円を超え、過去最高を更新した。幼児教育・保育の無償化で1千億円程度の新たな財源が必要となれば、予算膨張は避けられない見通しだ。


    【インサイド】“看板政策”急ぎ甘い設計

     幼児教育・保育の無償化制度の財源が不足する見通しとなった。中高所得者層の利用が想定を上回ったことが一因で、制度導入を消 費税増税開始に合わせようと急ぐあまりほころびが生じた形だ。無償化は安倍政権の看板政策だが、当初から「金持ち優遇策で格差を広げる」との批判が根強かった。不足額は国債など新たな負担で補うことになり、野党の反発は必至だ。

     「想定よりも中高所得者や、保育所の利用者割合が高かったようだ。どうしても制度設計時のデータと現状の利用者では、ずれが生じてしまう」。政府関係者は、今回、予算不足となった理由をこう説明した。その上で「実際に制度が始まって推計通りにいかないことは珍しくない」と突き放す。

     認可保育所などの利用料は低所得世帯には元々減免措置などが導入され、所得がが高いほど高額になる応能負担となっていた。このため無償化後は高所得者ほど恩恵を受けることになる。

     「低所得より高所得世帯に予算が投じられる。格差を広げる金持ち優遇政策だ」。昨年6月の衆院厚生労働委員会。野党議員はこう指摘し、制度見直しを訴えていた。実際、内閣府が昨年12月に公表した所得階層ごとにかかる無情化費用の内訳では、年収640万円超の世帯に50%の予算が振り向けられる試算となった。

     希望しても認可保育所などに入れない待機児童は1万6千人以上(今年4月時点)。保護者や専門家は「無償化よりも待機児童解消の方が先だ」と訴えていた。保育士の処遇改善に限られた財源を使うべきだという指摘は今も根強い。

     無償化は2017年秋の衆院解散時に、安倍晋三首相が「全世代型社会保障」の一環として打ち出した。当初、大部分を20年4月から開始する予定だったが、子育て世帯の負担に配慮し、19年10月の消費税増税に合わせる形で前倒しした。

     甘い制度設計のつけは他にもある。無償化開始に合わせ、国の補助金を当て込み利用料を「便乗値上げ」をする施設が相次ぎ問題化。無償化の運営基準などを定めた内閣府令に95ヵ所の誤りも見つかっている。


    安倍政権の予算については他にも理解に苦しむようなものが多いが、「全世代型」とか「一億総活躍」とかの言葉とは裏腹に、配分すべきところには薄い。まさに格差拡大の政策であり予算である。


    11月19日 市立塔南高 生徒引率中に校長飲酒

     京都市南区の市立塔南高の男性校長(55)が1月にタイで実施した生徒の海外研修旅行を引率した際、計4日間、夜に飲酒していたことが18日までに分かった。市教育委員会は生徒の引率中は夜間でも飲酒しないよう教員に伝えている。校長は現地で飲んだ酒の一部を旅行業者から提供を受けており、市教委は7月に校長を教育長厳重文書訓戒処分にしていた。

     市教委などによると、研修旅行は1年生の一部の科で行っており、今年は1月23〜28日に実施。校長は最初の3日間は、毎年契約している旅行業者から差し入れされた缶ビール12本をホテルの自室で教員1人と消灯後に飲み、4日目は交流先との食事会でビールとカクテル計4杯を飲んだ。食事会の時、生徒はホームステイ先にいたが校長は勤務時間中だった。

     校長は「いけないと分かっていたが、,率教員の労をねぎらい懇親を深めるために飲酒した。(ビールの差し入れは)後に同程度の金額の物品を業者に贈った」と説明する。一緒に飲酒した教員は今回の件とは関係のない理由で退職しており、処分の対象となっていない。

     市の条例では職員が利害関係者から金品を受け取ることは禁止されており、違反した場合は懲戒処分になり得るという指針が設けられている。厳重文書訓戒は懲戒に至らない処分で、市教委人事課は「処分を重くする要素として校長の職責があった。一方で飲酒に関しては最初の3日間は勤務時間外で4日目は儀礼的な場であり、ビールの受け取りについては後に同等の額の物を返していることなどを考慮した」としている。


    【インサイド】「時間外」扱い難しく

     引率教員の勤務時間外の飲酒に対し、京都市教育委員会のように時間外を考慮した処分を行うケースがある一方で、終日子どもを預 かっている観点から時間外も厳しく処分する教育委員会もある。判断が分かれる背景は、教員の働き方に関する問題があると識者は指摘する。

     文部科学省によると、小中高校の修学旅行などに関する通知に教員の飲酒に関する記載はないが「引率教職員がみずからの責務を自覚し、自己の行動を厳に慎むようにすること」と記されている。引率教員の飲酒をどのように扱うかは各教育委員会に委ねているという。

     勤務時間中の飲酒は職務専念義務に違反しているなどの理由から厳しい処分となるケースが一般的だ。香川県教委は7月、修学旅行 の昼食時に中ジョッキ1杯のビールを飲んだ県立高の教員らを懲戒処分とした。

     一方、時間外では教育委員会で判断が分かれる。京都市では昨年と今年、市立中教員による修学旅行での消灯後の飲酒が2件あり、 いずれも懲戒に至らない文書訓戒処分だった。

     勤務時間に関係なく処分の指針を設けているのは横浜市。校外学習中の飲酒を懲戒の対象とし、2015年には深夜に飲酒した教員を減給処分とした。同市教委は「教員は子どもを終日預かっており、勤務時間外でも指導や対応に当たらなければならないため」としている。

     京都府教委も、修学旅行などで指導の予定があるにもかかわらず飲酒した教職員は懲戒処分の一種である戒告とする処分基準を設ける。担当者は「処分は個別に判断するが、教員は安全配慮義務を果たさなければならず、消灯後だから一律に基準を適用しないという 訳ではない」と話す。

     教育現場の法律問題に詳しい神内聡弁護士は「勤務時間内の飲酒は懲戒処分の対象になると考えられる。夜間の引率については急な事態などに対応しなければならず、実態は労働している状態と言えるが、勤務時間として扱う難しさがある」と指摘。残業代を出さずに教員を何時間働かてもよいとする給特法(職員給与特別措置法)の規定から宿泊学習を外し、夜間業務の残業代を支払た上で引率中の飲酒を禁止する明確な規定と処分指針を設けるべきだ」話す。


    子どもを引率している中での飲酒はやはり認められないだろう。今回のケースでは、「3日間2人で缶ビール12本」と「交流先の会食での飲食」となっていることを軽微とするか専念義務違反とするかは議論が分かれるところ。飲酒運転とは同列に扱う事はできない。ところで、給特法改正案が衆議員を通過し、教員の働き方を変形労働制に移行するという。つまり、1年間のうちで勤務時間を10時間や6時間とすることを教育委員会が任意に決められるという制度になる。従来の給特法で定められている「子どもの引率・職員会議・緊急時など」の指定4業務については何らの変更はない。付帯決議もあるようだが、結局は使用者側の恣意的な運用が可能になるということになっている。今回のケースを考えれば、「残業代」を支払う事で「勤務時間内の飲酒は懲戒処分の対象」とすることを明確にすべきだ。単に教員のモラルややりがいに依存する労務管理は間違っている。


    11月19日 教諭いじめ事件 加害同僚聴取

     神戸市立東須磨小で教諭4人が同僚をいじめていた問題で、兵庫県警が18日に加害教諭への任意の事情聴取を始めたことが分かっ た。関係者が明らかにした。県警は加害教論や同僚らの聴取を進めて事実関係を裏付け、暴行や強要容疑での立件の可否を検討するとみられる。

     市教育委員会によると、加害教諭4人は被害者の男性教諭(25)こ激幸カレーを無理やり食べさせたり、暴力や暴言を繰り返したりした。市教委や学校の調査に「嫌がっていると思わなかった」「仲が良いと思っていた」などと弁解していた。

     男性教諭は精神的に不安定になり、9月から欠勤。代理人弁護士が10月11日に県警に被害届を提出した。関係者によると、県警は既 に被害者や、いじめを目撃した同僚らから事情を聴いた。

     昨年9月に家庭科室で撮影された動画には「辛いのは苦手なんです」と訴える被害者の教諭を30代男性教諭が羽交い締めにし、40代 女性教諭がスプーンでカレーを口に運ぶ様子が写っていた。 、

     一方、加害者側の代理人弁護士によると、4人のうち1人は、肘で背中をぐりぐりと小突いたり「あほ」などの暴言を浴びせたりしたことは認めたが、激辛カレーの強要伝は関わっていないと主張。県警も動画の内容を把握しており、4人の関与の度合いを慎重に調べる方針。

     市教委は今年10月1日から加害者4人を有給休暇扱いにして事実上の謹慎とし、同31日に分限休職処分として給与を差し止めた。

     市教委が設置した弁護士3人による調査委員会も事実関係を調べており、年内にも結論をまとめる。


    いわゆる「いじめ」の真相が分かりにくいのは加害者・被害者双方の視点が異なることにある。まさに竜之介の『薮の中』である。つまり事件を慎重に見なければならないということだろう。しかし、神戸市議会が実態が未解明なまま「給与の差止」条例をたった1日の審議で成立させたことは、ポピュリズム政治として批判しなければならない。原則は、裁判で判決が出るまでは推定無罪なのだから。


    11月15日 小林製薬 小学校のトイレ掃除楽しく

     小林製薬はこのほど、トイレ洗浄剤「ブルーレット」発売50周年の企画として小学校のトイレをきれいにする活動を始めたと発表した。児童が楽しく掃除に取り組んでもらえるようゲームを考案。学校のトイレは使いたくないという雰囲気を変え、排せつを我慢して体調を崩す子どもを減らしたいとしている。

     ゲーム名は「トイレモンスターズ」。掃除の時間に15分の音楽を流し、武器とする掃除用具でモンスターに見立てた汚れをどれだけ掃除できるかを競う。掃除の出来栄えをチェック項目に従い採点することで、正しい掃除の仕方を身に付けてもらう。トイレの正しい使い方を伝えるポスターも作った。

     大阪大大学院の松村真宏教授やNPO法人、日本トイレ研究所も協力した。小林製薬は今後、ゲームやポスターを無償提供する。松村教授は大阪市内で開いた発表会で「大阪府内の数校で始め、全国千校での導入を目指す」と話した。

     ブルーレツトは1969年発売のロングセラー商品。小林製薬は発売40周年を機に全国の小学校に洋式トイレを贈る活動を始め、既に120校に寄贈した。


    学校のトイレは敬遠されがち。その理由は清潔感がないことだとされている。だから子どもに清掃させよう、という発想はどうかと思う。環境整備は設置者の責任で行われなければならないはずである。「便教会」という組織が子どもにトイレ掃除をさせる事を「道徳」教育として、教員を中心に現在も活動を続けている。トイレ掃除自体に問題があるのではないけれども、奉仕活動(ボランティア)が必須のものとして、価値として与えられることには違和感がある。


    11月14日 東京五輪・パラ 中学高校にボランティア参加人数を割りふり

     強制ではないということですが、果たしてボランティアといえるのでしょうか。

     来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京都は、ボランティア体験を希望する中学生と高校生を募集していますが、実際は具体的な人数が学校ごとに割りふられ、学校によっては半ば強制的に参加を求められていることがわかりました。専門家は「ボランティアに大事なのは、自発性だ」と批判しています。

     東京オリンピック・パラリンピックの期間中は「大会ボランティア」や、「都市ボランティア」として、合わせて10万人を超えるボランティアが活動します。

     こうした中、東京都は町なかで観光案内などをするボランティア体験として、都内の中学2年生から高校3年生を、およそ6000人募集する計画を立てています。

     これについて都の教育委員会は、あくまで任意の参加と説明していますが、実際は中学校の場合、5人の生徒と引率する教員1人が割りふられていて、学校によっては半ば強制的に参加を求められていたことが関係者への取材でわかりました。


    11万人のボランティアが活動の見込み

     東京オリンピック・パラリンピックでは、合わせて11万人余りのボランティアが活動する見込みです。

     内訳は、競技会場や選手村などで案内や、セキュリティーチェックの手伝いなどをする大会ボランティアが8万人、会場周辺や駅、それに空港などで、観光案内などを行う都市ボランティアが3万人となっています。

     この2つのボランティアはいずれも18歳以上です。今回、都教育委員会が公立中学校と高校に募集を呼びかけている「中高生ボランティア体験」は合わせて6000人ほどを想定し都市ボランティアと、ほぼ同じ役割と位置づけられています。

     活動内容の詳細は未定ですが、学校に配布された資料には、大会期間中に、1日3時間から4時間ほど、羽田空港や銀座などの街なかで観光客に声かけや資料の配付などを行います。

     参加を希望する生徒は、学校を通じて申し込みを行い、交通費のほか、ポロシャツや帽子などが、支給される予定です。


    教員「割ふりは動員では」

     取材に応じた都内の教員が勤める学校は、先月、校長から「区内の校長が集まる場で都教委が指定した人数を必ず出すように通達された」と説明を受けたということです。

     その場で、教員からは「必ず出すというのでは、ボランティアの趣旨に反するのではないか」といった意見が出されたということですが、すでに校長会の決定事項だとして生徒5人をボランティアとして出すことを決めたということです。

     この教員は「興味がある生徒が参加するのはとても貴重な経験なので、活動自体は否定しません。ただし、それが強制的となると趣旨は変わると思います。このやり方だと無償で使える人間を効率的に集めるために学校が使われていると感じ、動員じゃないかという疑念が拭えません」と話していました。


    ツイッターには戸惑いや批判の声が

     SNSのツイッターには、東京オリンピック・パラリンピックの中高生向けのボランティア活動に、戸惑いや批判の声が投稿されています。

     「とりあえず書いて全員出して!って言われたんだけど都立高の闇でしょ」といった声や「記名は断れない雰囲気、我が子は嫌な感じがしたそうです」という声、さらに「『留意事項』に『親の同意を得た上で』とはっきり書いてある。学校はそれを知った上で、その場で書かせて出させていた」といった書き込みが寄せられています。


    専門家「そもそもの順番が違う」

     ボランティアの実態に詳しい東京大学大学院教育学研究科の仁平典宏准教授は「ボランティアで大切なのは自発性や主体性で、ボランティア教育の名の下、それらが保証されずに行うのは奉仕活動だ。各校5人とか、割り当てるというのが、そもそもの順番が違う。上から強制という形でやるとか、創意工夫がない形でやらされると、やらされた受動的な経験となってしまう。子どもたちの自主性をベースとして、側面支援するのが、本来の教育の在り方だ」と話しています。(NHK)


    政府や自治体などのイベントに子どもたちが動員されることはしばしば行われている。自主性を重んじるとは口ばかりで学校を通じてのポスター依頼などもその例だ。教育委員会はそうしたやり方には慣れっこになっているのだろう。しかし、今回の「ボランティアの割り当て」規模からしても国家的行事である事からしても問題は大きい。かつて満蒙開拓団への募集が戸長を中心におこなわれ、学校が半ば強制的に「員数合わせ」に加担した歴史と同じ?


    11月9日 東須磨小 教員いじめ事件 給与差し止め不服

     神戸市立東須磨小で教諭4人が同僚をいじめていた問題で、加害者のうち30代男性教諭1人が、分限休職処分で給与差し止めとなったのを不服として、処分取り消しを求めて市人事委員会に審査請求したことが9日、代理人弁護士への取材で分かった。

     加害教諭については、懲戒処分前に休職させる規定がなかったため市教育委員会会が10月1日から有給休暇扱いにしたが、市民の苦情が殺到。起訴の恐れがある職員を休職できるように市が条例改正し、市教委が同31日に分限休職処分としていた。

     ただ、諮問機関である分限懲戒審査会は処分前に「起訴の蓋然性が高いとはいえない」として「休職は不相当」と判断していた。

     代理大弁護士は「4人の関与には差がある。適正手続きを経た公正な処分なら受け入れるが、後付けの不利益処分は認められない」と話した。


    被処分者側からの対応としては当然の対校手段。そのことを非難する必要はない。最も泥縄式で作った条例に問題がある事は押さえおかなければならない。その上で、例の「いじめ(ハラスメント)」は非難されて然るべきものであることはいうまでもない。


    11月9日 大津市教委 単元担当制試行

     大津市教育委員会は8日、学校現場の教員や市教委事務局職員でつくる「教育リデザイン プロジェクト」の会合を開き、19の事業からなる教育改革をまとめた。全国でも珍しい「単元担当制」の小中学校への導入や、市教委事務局の再編を打ち出した。来年度に2〜5校の実践校を指定する方針。

     単元担当制では、教科をさらに細かい「単元に分け、授業を複数の教員で受け持つ。社会科の歴史の授業を時代ごとに分担するといった例を想定。教員がそれぞれ得意とする単元を受け持ったり、担当単元の教材研究を深めたりすることで、より分かりやすい授業につなげる。

     教委事務局の再編では、現在は学校を管理する要素が強い組織体制を、学校をサポートする形に変える方針を掲げた。学校の自主性を高め、地域の希望に応じた教育を目安。

     プロジェクトは、宮崎県 五ケ瀬町の元教育長で、ユニークな授業改革で知られる日渡円教育長が主導して発足。メンバーは市立小中学校の校長や教頭、幼稚園 長、教委職員ら94人で、6月から会合を重ねていた。事業には、不登校対策である適応指導教室の対象学年の拡大や、いじめ対策の強化も盛り込んだ。

     日渡教育長は「従来の教育施策はおおむね教委が示すもので、現場の声を十分に反映できていなかった」とプロジェクトの意義を強調。改革の実現へ意欲を示した。



    11月18日 いじめ被害教諭 公務災害を申請

     神戸市立東須磨小で教諭4人が同僚をいじめていた問題で、精神的に不安定になって9月から欠勤している被害者の男性教諭(25) が8日、代理人を通じて、公務員の労災に当たる公務災害認定を申請したことが、市教育委員会への取材で分かった。地方公務員災害補償基金神戸市支部が認定するかどうか判断する見通し。

     市教委は、教職員の公務災害は通勤中や体育指導中のけがに関するものが多く、教諭間のトラブルでの申請は異例としている。

     市教委によると、男性教論は激辛カレーを無理やり食べさせられたり、尻をたたかれてみみず腫れになったりする被害を受けた。関係者によると、公務中の被害であるとして、通院費分の補償などを求める。同基金神戸市支部が男性教諭の体調といじめの因果関係を調べることになる。


    刑事事件とは別に学校長の「安全配慮義務」が問われることとなる。被害者側の行動としては当然のことだといえる。翻って、子ども間のいじめについてこのような法的な枠組みはあるのだろうかと考えると現状では、第三者機関の設置ということだけのように思える。それも、「大人」の側が重大事案と認定しなければ動かない。「子ども裁判」(平墳雅弘)という考え方が一つのヒントになるかもしれない。


    11月8日 参議院 障害ある子の教育改善要求

     難病の筋萎縮性側索硬花症(ALS)で言葉を発することが離しいれいわ新選組の舩後靖彦参院議員が7日、文教科学委員会で初の質疑に臨んだ。冒頭、パソコンの意思伝達装置による音声で「新人議員として未熟だが皆さまの力を借りながら精いっぱい取り組む」と抱負を述べた。その後は秘書の代読で質問し、障害のある児童生徒の教育環境改善などを求めた。

     参院によると、電子機器を通じた音声や、代理者の代読により国会で質疑したのは初めて。

     舩後氏は「障害者の現実を知らないために偏見や差別につながっている」と指摘し、障害のある子どもと、ない子どもが同じ場所で学 ぶ「インクルーシブ教育」の推進を主張。萩生田光一文部科学相は「幼少期から行動を共にすることで、より(障害者への)理解を深められる。舩後氏の思いを実現できるよう取り組む」と答弁した。

     2020年度開始の大学入学共通テストへの導入が見送られた英語民間試験にも触れ、障害のある学生にも配濾して見直すよう求めた。子育て世帯の負担軽減のため消費税減税を訴え、政府の姿勢をただす場面もあった。

     車いすに乗った舩後氏は、秘書や介助者に付き添われながら質疑。委員会室に音声発言用のパソコンや、資料閲覧のためのモニターを持ち込んだ。手を動かせないため目で文字盤を追い、再質問用の代読文書を作成する間、委員長が議事進行を止め、質問時間が減らないよう配慮した。


    【表層深層】配慮実施、時間どう確保

     重い障害があるれいわ新選組の木村英子、舩後靖彦両参院議員が国会での初質問を終えた。与野党は介助者の付き添いを認めるなど両氏に配慮を示し、委員会はトラブルなく進んだが、時間確保の在り方といった課題も浮き彫りになった。国会論戦の充実に向けた模 索が続く。

     「初めまして。質問方法について配慮いただき、心よりお礼を申し上げます」。難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)により人工呼吸器を付けて声が出せない舩後氏は7日、歯でセンサーをかんでパソコンを操作。参院の文教科学委員会室に自動音声が響いた。

     その後の質問は秘書が代読した。10月の消費税増税の影響や、障害の有無にかかわらず一緒に学ぶインクルーシプ教育などについ て、萩生田光一文部科学相にただした。

     与野党からは評価の声が相次ぐ。国民民主党の大塚耕平代表代行は記者会見で「非常に良いことだ。多様な皆さんがいる実社会の姿を、国会はできるだけ反映すべきだ」と強調。共産党の志位和夫委員長も会見で「重度障害の方の質問には、その人でなくてはできない 重要な視点がある。大きな意義がある」と語った。

     自民党の参院若手は「国会はバリアフリーの必要性を唱えておきながら、自らの対策が全くできていなかった」と振り返った。

     「(質疑時間が)超過し、委員の皆さまにご迷惑をお掛けした。反省している」。舩後氏は委員会後、記者団に今後の課題を明かした。

     自ら指摘したのは、質疑の持ち時間が25分と決められていたが、再質問の準備にさらに約20分を費やし、合計約45分かかった点だ。 介助者に文字盤の五十音を順に指さしてもらい、目元の筋肉を動かして、話したい言葉を1文字ずつ伝達。これを繰り返し質問文をつくった。この間は、吉川有美委員長(自民)は議事の進行を止め、持ち時間に含めなかった。

     再質問の準備中に議事を止めることは、委員会の理事懇談会などで事前に各会派が了承していた。だが委員会後、与党筆頭理事の赤池誠章氏(自民)は「議員や文科相は、さまざまなスケジュールがある。『どうしたらいいのか』という戸惑いがあった」と明かした。出席した野党議員も「時間が延びてしまった」と述べた。

     障害者の権利に詳しい川島聡・岡山理科大准教授(障害法)は肯定的に捉える。「舩後氏がほかの議員と同等の発言権を確保するためには、必要な『合理的配慮』だった」と指摘する。

     合理的配慮とは、障害者にほかの人と平等な機会を保障できるよう、本人の意向を尊重しながら、費用や人手がかかり過ぎない範囲で環境を整えること。障害者差別解消法で国や自治体に提供が義務付けられている。

     川島氏は「約20分という中断時間は社会通念上、議会の目的や機能自体を損ねるものではない。『時間の無駄だ』などと考えたりするのではなく、活動の妨げとなるバリアーの除去を追求していくべきだ」と語る。


    「障害を持つ子のために特別な教育を」という理由で普通学級から排除されてきた多くの障害児の顔を思い出さずにはいられない。与党・野党の区別なくほんとんどの健常者が「分ける」ことを当然こととしていた。今でも「インクルーシヴ教育」を言いながら、別学を(言葉巧に)強要している学校は多い。れいわの2議員がこの壁を破る端緒となることに期待したい。


    11月2日 高校生の怒り 入試変更止める

     精度向上期画「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」―。大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入を巡り、担当する文部科学相の失言が相次いだ。現役の高校生ら若い世代がインターネットで、こうした発言を拡散。問題点を逐一指摘して制度への注目を集めることで、反対のうねりができ、2020年度の導入見送りへ、大きな役割を果たした。

     「選挙権もないし、黙殺されるのかもと思っていた。声が届いた」。ツイッターや街頭で、試験中止を訴え続けてきた東京都内の高校2年の男子生徒(17)は見送りを聞き、声を弾ませた。制度が始まれば初年度に高3となる年代。民間試験対策の授業が行われるのでは、と不安を覚えた。経済的格差や地域格差など不合理な制度とも知った。居ても立ってもいられず文科省前での抗議に参加し、ネットで反対の声を上げてきた。

     大学入試に民間試験を組み込む複雑な制度。若い世代が親しむネットでも、関心はなかなか広がらなかった。問題が注目を集めたのは8月16日。当時文科相の柴山昌彦氏が制度に関して「サイレントマジヨリテイーは賛成です」とツイートしたのがきっかけだった。

     声を上げなければ賛成だと言うのか―。学生などと名乗る人たちが「明確に反対です」「政治家がこれを言ったらおしまいですよ…」と次々と抗議の書き込みをし、柴山氏のアカウントは“炎上”した。

     10月1日には、柴山氏の後任の萩生田光一文科相が記者会見で「初年度は精度向上期間とロを滑らせた。高校生らが「実験台にしないで」などと一斉にツイ,ト。反響の大きさに萩生田氏は「もちろん実験台になってはならない」「さらに精度を上げていくことを約束した」と、釈明に追われた。

     男子生徒も、こうした発言を見るたび、ツイッターで思いを書き込んだ。文科省前で開かれた抗議集会にも参加。同世代と肩を並べ「入試改悪反対」と訴えた。

     特に強い憤りを覚えたのは24日夜。「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」というBSフジの番組での萩生田氏の発言に対してだった。「経済状況による教育格差を助長することになってるのはわかって言ってるんだよね?」 。鋭く指摘したツイートは、6千以上リツイートされた。萩生田氏の「身の丈」発言はその後、ネットだけでなく、与野党の国会議員、地方首長からも問題視する声が次々と上がった。

     男子生徒は今、国が学校の実際の現場を見ずに決めたことに振り回されたと感じている。「試験を変えたら、授業が変わると安直に考えるのはやめてほしい。これからも声を上げ続ける」と話した。


    見出しは「高校生の怒り」となっている。かつての「戦争法反対」の時にSEAL’sが話題になったことを思い出したが、その時と同じだとはいえないだろう。しかし、与野党を含めて政治に関わる大人は、旧来の発想にとらわれることなく細心の注意を払いながら事に当たるひつゆがあるということだけは確かだろう。


    11月1日 文科相 英語民間試験見送り

     萩生田光一文部科学相は1日の閣議後記者会見で、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入について「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べ、2020年度は見送ると発表した。経済格差や地域格差を広げるなどの批判に対し、十分な対応策が間に合わないと判断したことが主な理由とした。

     今後は民間試験の活用の是非も含め1年をめどに仕組みの抜本的な見直しを議論。その上で24年度をめどに新たな制度の導入を検討するとした。

     大学入学共通テストは20年1月の実施が最後どなる大学入試センター試験の後継で、申請への民間試験の導入は目玉の一つだった。 見直しが行われるまでの間、共通テストの英語は従来のセンター試験と同様、大学入試センターが作成する試験問題のみで実施する。

     民間試験には、経済格差や地域格差を広げるとの懸念から、高校現場や野党に加え、自民党内からも延期論が噴出。萩生田氏がテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張って」とした発言への批判も収まらなかったが、萩生田氏は「判断に影饗していない」と述べた。

     見直しの理由としては、格差の問題を挙げたほか、試験実施を民間団体に委ねたことで文科省が間接的にしか関われず対応が遅れたとし、構造的な問題があったとの考えも示した。

     大学入試センターは受験に必要な「共通ID」の申し込み受け付けを1日午前から開始予定だったが、萩生田氏は「受け付けを停止した。発行はしない」とした。

     民間試験は大学入試センターと協定書を締結した6団体の7種類で、受験生は20年4〜120月に最大2回受験。各大学は成績を出願資格にしたり、大学独自の試験に加点したりする仕組みだった。

     全国高等学校長協会などは、へき地や離島で暮らしていたり、家計が苦しかったりする受験生への救済策が乏しいなどとして、導入延期を求めていた。萩生田氏の「身の丈」発言もあり、批判が拡大した。文科省はこうした事態を受け、低所得世帯への受験料補助などの新たな対応策を検討し、批判の沈静化を図ろうとしていたが、最終的に導入見送りの判断をした。


    【解説】身の丈発言 不安あおる

     大学入学共通テストに導入予定だった英語民間検定試験の見送りが1日、決まった。地域格差や経済格差があって不公平との批判は 以前からあり、国は懸念払拭が求められたにもかかわらず、萩生田光一文部科学相の発言でより不安をあおる形となった。制度開始まで5カ月を切った中での見送りで、対応が後手に回り、受験生を振り回した責任は重い。

     導入予定だった仕組みでは都市部と地方で受験機会に差がある。6団体7種類の民間試験のうち、全都道府県に会場を設けるのは、べネッセコーポレーシヨンのGTECと日本英語検定協会の英検だけ。残る試験の会場は都市部が中心だ。

     費用負担も大きい。受験料が2万円を超える試験も多く、最も安い英検3級でも5千円以上。制度の上限となる2回の試験を受ければ支払いは2倍だ。離島に住む生徒は移動経費や宿泊費もかさむ。文科省は離島の生徒に限り補助する方針を打ち出したが、格差解消に十分とは言えなかった。

     こうしたさなか、萩生田氏が「身の丈に合わせて頑張って」と発言。「説明不足だった」と陳謝し、発言を撤回したが、制度の本質を表す言葉が図らずも出たと言え、強い批判を浴びたのは当然だ。

     国は今後、抜本的な改革に着手する。どのような環境にあっても、受験生が公正で公平な取り扱いが受けられる、綿密な仕組み作りが求められる。


    忘れては行けないことがある。11日午前の衆院予算委員会で立憲民主党の川内博史氏の質問を受けて、萩生田光一文部科学相は「一つ一つ不安を払拭してきたという思いがある。課題は残っているが、来年はこれで行く」と答弁した。自らの「身の丈」発言が中止に影響したことは明らかである。加計学園問題の時の釈明(?)と同じではないか。萩生田文科相には先に辞任した2閣僚とは違って、辞任しないで閣内に残ってきちんと答弁してもらいたい。