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  • 教員わいせつ処分最多.25
  • 16年時点で問題点指摘.25
  • 小学校教員倍率過去最低に.25
  • 教委13%把握せず.26
  • 12月26日 文科省調査 教委13%把握せず

     全国の教育委員会のうち13・0%に当たる233教委は、所管する全ての学校で教員の勤務時間を把握していないことが25日、文部科学省が実施した学校の働き方改革の取り組みに関する調査で分かった。国は教員の勤務時間を抑制したい考えだが、前提となる労働時間の把握に大きなばらつきがあった。

     調査は7月1日時点で実施。都道府県の47教委、政令指定都市の20教委、市区町村の1721教委に、教員の勤務時間の把握方法こついて複数回答で聞いた。

     結果は、所管するいずれの学校でも教員の勤務時間を把握していないと回答したのは、都道府県の5教委と、市区町村の228教委だった。政令市はなかった。

     勤務時間を把握している学校がある教委のうち、ICカードやタイムカードなどで記録を取っているのは、都道府県が前年度から27・7ポイント増の66・0%、政令市は30・0ポイント75・0%、市区町村は6・9ポイント増の47・4%だった。

     記録を取る方式を採用していた市区町村教委の割合を都道府県別で見ると、茨城県や群馬県、山口県で90%を超えているのに対し、三重県や鳥取県は10%未満と大きな差があった。


    府内88・0% 勤務記録取る

     京都府内では、ICカードやタイムカードなどで記録を取っていたのは京都府や京都市、宇治市など22教委で88・0%となり、全国 平均(48・2%)を大きく上回った。把握していない教委はなかった。


    勤務の把握については京都府は相当以前から問題意識を持ち取り組みを進めてきた。そのことは評価できる。一方、京都市教委は及び腰でようやく取組を始めたところだ。改正給特法が求める「指針」への対応が急務との判断だろう。現場への配慮は二の次のように見える。


    12月25日 文科省調査 小学校教員倍率過去最低に

     都道府県教育委員会などが2018年度に実施した公立小学校の教員採用試験で、競争率の全国平均は2・8倍となり、バブル景気の影響で民間就職が好調だった1991年度と並び、過去最低だったことが25日までに、文部科学省の調査で分かった。都道府県別では新潟県の1・2倍が最も低く、福岡県1・3倍、佐賀県1・6倍と続いた。京都は4・0倍、滋賀は3・3倍だった。2倍を切ったのは、採用試験を一緒に実施した北海道・札幌市と広島県・広島市をそれぞれ一つと数え、計10あった。

     文科省の担当者は「高年齢層の大量退職に伴い、大量採用が続く影響が大きい。民間の需要も高い」と分析。教員の長時間労働などが問題視されていることには「新卒の受験者数はおおむね横ばい。教職人気が低下しているとは、必ずしも言えないのでは」と述べた。

     受験者は公立の小中高校、特別支援学校などを合わせて14万8465人(前年度比1万2202人減)、採用は3万4952人(同1966人増)。倍率は0・7ポイント減の4・2倍で、92年度の水準まで落ち込んだ。中学校の倍率は1・1ポイント減の5・7倍、高校は0・8ポイント減の6・9倍。中学は92〜93年度、高校は93年度と同等の水準だった。

     小学校の受験者は4万7661人(同3536人減)で、採用者は1万7029人(同1094人増)。受験者は倍率が過去最高(12・5倍)だった00年度と同程度。採用者は5倍近くに増えた。近年は受験者のう新卒者が1万7、8千人台で推移する一方、既卒の受験者が減っている。

     小学校の競争率が最も高かったのは兵庫県の6・1倍。文科省が詳しく調べたところ、採用規模の違いはあるが、倍率が安定している自治体は毎年同程度の採用数を維持する一方、低い自治体は増減が激しい傾向が見られた。文科省の担当者は、適切な競争率を維持するには、計画的な採用が欠かせないと指摘し、「働き方改革を徹底して職の魅力を向上させ、受験者の掘り起こしに取り組みたい」とも語った。


    国立養成大卒の教員就職率58・4%

     全国44の国立の教員養成大学・学部を2019年3月に卒業した人の同9月末時点の教員就職率が、前年0・5ポイント減の58・4%だったことがこのほど、文部科学省の調査で分かった。

     卒業生1万1089人のうち、「教員就職者」は前年より19人増の6476人。正規採用は249人増の4514人、臨時任用は230人減の1962人だった。このほか保育士になった人が22人増の180人いた。

     一方、教員・保育士以外への就職は152人増の2840人。大学院などへの進学が1058人、未就職が535人だった。


    人材 民間と奪い合い

     2018年度公立小学校の教員.採用試験が、過去最低の競争率となった。低倍率に悩む自治体の担当者は大量退職が続き、採用者を増やさざるを得ない苦しい胸の内を語る。地元の大学から受験生を募るが、地方も民間就職が好調で、人材の奪い合いとなっている。

     競争率が1・3倍だった福岡県。担当者は「大量退職があと数年は続くと見込んでいる」と明かした。大学を回り、教職の楽しさ を伝える研修会を開いて受験者増を目指すが「倍率向上のめどは見通せない」と話した。

     1・6倍だった佐賀県の担当者は大量退職への対応に加え、特別な支援を必要とする児童生徒の増加が誤算だったとした。普通学級の子どもに比べ、きめ細かく教員を配置する必要がある。採用を増やす必要に迫られたが、「規模の小さい県で教員免許を持つ人自体が少ないとの悩みもある」とした。

     全国最低の1・2倍となった新潟県の担当者は「教育の質低下を招きかねない状況」と危機感をあらわに。学生から学校を取り巻く問題や、長時間労働の実態を不安に思う声も聞くという。筆記試験の実施教科を軽減するなどしていると言い、「受験しやすい環境整備に努める」と強調した。

     一方で、兵庫県などと同様に高い倍率を維持している高知県は、県内だけでなく、関西地方にも試験会場を設けて、受験者を取り込む。 .

     今年の採用者は131人。担当者は「現場の状況からすれば十分というわけではない。ただ、一度に大量操用すれば質の担保ができない恐れもあり、計画的な採用を続けたい」と力を込めた。


    団塊の世代(現70歳前後)が就職した頃も誰でも教員になれる時期だったと聞く。一概に倍率が質を決定するとは思えないが、かつてよりも教員という職業に対する魅力が薄れているのは事実だろう。本紙記事での文科省担当者のコメントが矛盾(民間需要があるが教職の魅力もとのコメント)しているのを見れば教育政策上の問題点もあると思わざるを得ない。


    12月25日 大学入学共通テスト 16年時点で問題点指摘

     英語民間検定試験と国数記述式問題の導入が見送られた大学入学共通テストについて、文部科学省は24日、制度設計などを検討した二つの会議の議事概要などを公開した。2016年時点で既に地域格差や採点ミスの可能性を指摘。今年に入っても制度への疑問の声が 増す中、見切り発車していたことがうかがえる。

     二つの会議は自由な意見交換ができるようにとの理由で当初は非公開で開催。会議後も議事概要などは示さなかったが、検証のため 公開した。

     16年5月に始まった「『大学入学希望学力評価テスト(仮称)』検討・準備グループ」では、委員が民間試験について「地域によって全く条件が違う」と発言し、導入見送りの要因となった地域格差の問題を指摘。記述式問題にも「採点の統一性確保が困難という問題点は解決できるのか」などの意見が出た。

     検討・準備グループは具体的な制度設計に向けて設置され、高校や大学関係者らが委員に就任。途中で名称変更し、19年5月まで計14回開催。うち第10〜14回は公開で行われ、非公開だった第1〜9回の議事概要や配布資料を明らかにした。

     「大学入試英語4技能評価ワーキンググループ」は18年12月、今年9月に計6回実施。高校や大学関係者のほか、民間試験を運営する6団体も委員となり、6回全ての議事録と配布資料が公開された。

     この中では「島しよや山間部の子は検定会場まで出てくるまで大変な思いをしている」「公平、公正性の担保を」といった指摘が相次ぎ、問題点への対応が進んでいなかった実態が見えた。


    検討会での議論が進化せず「見切り発車」したのは何故かという疑問がいやがうえにも湧いてくる。下村元文科大臣を始めとする自民党文教族と民間の教育産業とのなんらかの関係を「想像するな」と言う方が無理かもしれない。


    12月25日 文科省調査 教員わいせつ処分最多

     2018年度に全国の公立小中高校などでわいせつ行為やセクハラを理由に処分を受けた教員は計282人で、過去最多となったことが24日、文部科学省の調査で分かった。これまで最多の16年度を流人上回る大幅増だった。神戸市立東須磨小で教諭4人が同僚をいじめていた問題を受け、文科省が初集計した教職員間のパワハラなどによる処分は32人だった。

     文科省は、わいせつ行為などでの処分が過去最多となったことに「SNS(会員制交流サイト)の普及で教員と子どもが学校外でもつながりやすくなっていることが一因ではないか」と指摘。繰り返し処分を受ける教員が教壇に立てないような教員免許の在り方を検討する。

     また、性被害を告発する「#MeToo」(「私も」の意)運動の広がりによって問題の深刻さが広まり、事案が表に出やすくなった面もあり得るとしている。

     わいせつ行為やセクハラの具体的な行為については、「体に触る」が89人で最も多かった。「盜撮・のぞき」が48人へ「性交」が41人など。所属校の児童生徒や卒業生、そのほか18歳末満の子どもが被害者だったのは全体の64・2%だった。

     懲戒処分の内訳は、免職163人、停職57人、減給18人、戒告7人。訓告などが18人だった。全体の97・9%となる276人が男性で、学校種別では小学校75人、中学校86人、高校101人、特別支援学校19人、中等教育学校1人だった。

     初めて集計したパワハラなど教職員間のトラブルによる処分は、停職などの懲戒処分が9人、訓告などが23人だった。同僚に無料通 信アプリLINE(ライン)で繰り返しメッセージを送りつけたり、送別会でグラスを投げつけてけがをさせたりする事例があった。

     精神疾患で休職した教員は前年度比135人増の5212人。体罰で懲戒や訓告などの処分を受けたのは7人減の578人だった。


    神奈川大の入江直子名誉教授(教育学)の話 権力使っていることを自覚

     多くの教員がわいせつ行為などで処分を受ける背景には、学習評価や部活の指導などを通じて子どもに絶対的な権力を行使しながら、それを自覚していないことがある。普段からその力を感じている子どもは、嫌なことをされてもなかなか言い出せないが、教員は拒否されなければ大丈夫だと思い込みがちだ。ハラスメントは力関係が不均衡な場所で起き、学校では今回明らかになった以外にも多くの性的被害が生じているだろう。研修などを通じ、教員が自身の権力を意識することが、被害を減らす一歩になる。


    体罰とわいせつ行為とは精神的な構造としては同じだといえる。同様に教育自体が対象者(児童・生徒)への一方的な思い込みを誘うことでもあるということの自覚は必要。もう一つ注目しておかなければならないのは「精神疾患での休職者」が増えていること。過剰な要求に応えようとする学校はすでにオーバーヒート状態。文科省を始めとする教育行政も「パワハラ行為」といえるかもしれない。


    12月24日 全国テスト 小中とも一転低下

     スポーツ庁が23日に発表した全国体力テストの結果で、小中学生の体力低下が判明した。東京五輪・パラリンピックが来年に迫る中、スポーツ関係者に衝撃が広がった。教員の働き方改革もあり、学校だけで子どもの体力アップを図るのは難しい。スポーツ庁は地域を挙げた取り組みの重要性を強調する。

     「検討会議を設置し、子どもの体力向上策を取りまとめる」。文部科学省で記者会見した鈴木大地スポーツ庁長官は、険しい表情で語った。

     子どもを含めた体力調査の歴史は古く、前回の東京五輪が開催された1964年、年齢別に対象を抽出して走力などを測る調査を開始。80年代をピークに子どもの体力低下が続いたことから、2008年度からは小学5年と中学2年の全員を対象とした全国体力テストも始まった。

     ここ数年は女子を中心に上昇傾向が続いてきた中、思わぬ事態に直面。鈴木長官は「これまでの取り組みを総点検する」と述べ、無念さをあらわにした。

     子どもの体力向上に注目が集まるが、体力養成を中心的に担つてきた学校現場が大きく変化するなど、子どもを取り巻く環境は目まぐるしく「動いている。

     近年、一年中ほとんど休みを取らないような熱心すぎる部活動に対し、健康への悪影響や教員の長時間労働を助長するとの批判が殺到。スポーツ庁は昨年3月、週2日以上の休養日を設け、平日の活動時間は2時間程度に抑えるといったガイドラインを公表した。

     今回の調査結果では、17年度に中学生の男女とも週平均16時間を超えていた部活動は、それぞれ13時間32分と13時間40分まで減少。部活の風景は大きく様変わりした。

     一方、小中学生ともスマートフォンやテレビなどを見る時間が増え、1日1時間程度の運動をする割合が低下したことも明らかになった。内閣府が今年3月に公表した調査では、自分専用のスマホを持つ小学生は3割超で、中学生になると8割近くを占める。スポーツ庁関係者は「スマホでゲームする時間が以前より増えるだけというなら、望ましい方向性ではない」と表情を曇らせる。

     「仕事が多すぎる。『今度は生徒の体力向上を』などと指示されたら、パンクしてしまう」。東京都内の公立中に勤務する30代の体育教員は、こう訴える。

     16年度教員勤務実態調査では、中学校の6割、小学校の3割が、おおむね月80時間超の時間外労働が目安の「過労死ライン」を上回る状態となっていた。学校現場で一律に体力向上に注力する余裕はない。

     教員の負担を軽減するため、スポーツ庁などは地域の経験者らを「部活動指導員」に活用する対策も推進。子どもから成人までが複数の種目に取り組む「総合型地域スポーツクラプ」の活動も後押しする。

     スポーツ庁などは学校や地域の実情に合わせ、子どもが体を動かす機会を確保したい考えだ。幹部は言う。「学校体育だけで問題を解決するには限界がある。子どもの体力アップを社会全体の課題と捉えてほしい」


    肥満の子どもが増加

     スポーツ庁が23日に発表し,2019年度全国体力テスト結果では、肥満の子どもが増えていることも分かった。対象は小5と中2で、小5男子では10人に1人程度となるなど、小中の男女とも前年度の割合を上回った。

     テストでは子どもの身長と体重も聞いた。これを一定の基準に当てはめ、肥満とされた小5は男子11・1%、女子8・1%だった。前年度比でそれぞれ0・5ポイント、0・3ポイント増加。中2の男子は8・6%、女子は6・6%が肥満とされ、それぞれ0・7ポイントと0・4ポイント増えていた。

     肥満の子は運動時間が短い傾向が見られた。小5男子で1週間の運動時間がゼロまたは1時間未満だった割合は、普通の体 格の子どもは3・3%と3・7%。これに対し、肥満の子どもはそれぞれ5・8%と6・3%いた。小5女子は普通の体格の場合、ゼロが4・5%、1時間未満が7・9%いた。肥満とされた子は、それぞれ6・8%と11・2%いた。

     肥満とされた子どもは体力テストの合計点も低かった。


    調査に協力した名古屋学院大の中野貴博教授(発育発達学)の話 ここまで下落想定せず

     ここまで大きく体力が下落するとは想定しておらず、驚いた。運動は体力を向上させるだけでなく、人との付き合い方を学び、コミュニケーション能力を伸ばす効果があるとの研究もある。小中学生時代の運動時間の減少は、将来に大きな影響を及ぼしか ねない。体力の水準を戻すことは十分可能で、対策が急がれる。


    子どもの体力は特定の原因があって左右されるものではないだろう。その時代の「文化」の傾向が影響しているのは間違いない。スポーツが学校の外へ飛び出すのは歓迎すべき事だが、「金メダルが幾つ」というスポーツ行政の下では、依然として「勝利至上主義」に染まった地域の指導者の発想は変わらない。


    12月24日 文科相 高等教育就学支援 来年導入

     萩生田光一文部科学相は23日の閣議後会見で、高等教育就学支援制度導入に伴い、現在受けている授業料減免措置の対象外となったり、減免額が削減されたりする見込みの国立大学生について「経過措置としてこれまでと同様の支援が可能となる予算を計上している」と述べ、2020年度の新制度関連予算の中で手当てしていると説明した。

     来年度に導入する同制度は住民税非課税世帯とそれに準じる世帯の学生を対象に国や自治体が授業料や入学金を減免するほか、返済不要の給付型奨学金を支給する。国公私立大を通じた統一的な基準での支援どなり、文科省は国立大では対象外または支援が減少する学生が1万9千人生じると試算。萩生田氏は「意欲のある学生が経済的理由により進学を断念することがないような新制度を着実に実施する」と語り、当該学生は不利益を被らないとした。

     同制度を巡っては、世帯収入や年齢などの条件が加わることで現行より負担が増えるとして今月中旬に滋賀医科大の学生たちが会見を開くなど、一部で不安が広がっていた。



    12月23日  エディオン 「プロ教室」買収へ

     来年度から小学校でプログラミング教育が必修となるなか、家電量販店大手のエディオンは、プログラミング教室を運営する大阪の会社を買収し、事業拡大をはかる方針を固めました。

     関係者によりますとエディオンは大阪・堺市に本社があるプログラミング教室を運営する「夢見る」の株式を買い取って子会社にする方針です。

     買収額は10数億円とみられています。

     「夢見る」は、全国およそ100の教室で子ども向けのロボットプログラミング教室「ロボ団」を展開しています。 プログラミング教育をめぐっては来年度から全国の小学校で必修化されることから注目が集まり、学習塾「栄光ゼミナール」を運営する会社や阪神電鉄が子会社を通じて参入するなど競争が激しくなっています。

     エディオンも去年からプログラミング教室の運営に乗り出しましたが、ノウハウが不足していることから事業展開が遅れていて、現在までに開校した教室は2か所にとどまっています。

     エディオンは実績がある企業の買収によって事業拡大をはかる狙いがあるものとみられています。(NHK)


    以前から懸念していた「プログラミング教室熱」はますます高まっているという印象。こうした教育を必修化する必要がどこにあるのだろうか。小学校の教員がプログラミングに精通しているとはとても思えないし、子どもにもプログラミングの知識が必要だとは思えない。学校教育への負荷だけが大きくなり、その隙間を民間の教育業者が埋めるという構図。これが公教育の姿なのだろうか。


    12月21日 20年度当初予算 禁じ手連発 体裁死守

     政府の2020年度予算案は、100兆円を超す巨額歳出の帳尻を合わせるため「禁じ手」を重ねて財源を捻出、借金増額を回避し、辛うじて体裁を保った。ただ安倍政権下で次々と打ち出される目玉政策には、熟慮を欠いた場当たり的なものも指摘され、現場に新たなひずみを生みかねない懸念をはらんでいる。

     「経済再生と財政健全化の両立を目指す予算だ」。麻生太郎財務相は20日の記者会見で、第2次安倍政権が発足して以来8度目の編成となった当初予算案の出来栄えを誇らしげに語った。

     政権が強調するのは、借金に当たる新規国債発行額を今回も前年度比マイナスに収めた点だ。防衛や教育無償化など「安倍カラー」の政策経費がいくら膨張しても、それを賄うための新たな借金を減らしている限り「放漫財政ではなく財政再建も進めている」(官邸筋)との名目が立つ。

     今回の予算案は、消費税増税に伴う臨時の景気対策費を除いた一般会計総額が初めて100兆円を突破。編成作業の初期段階から、借金減額の流れが、ついに途絶えるかと注目された。それでも首相を訪ねた財務省幹部は「わずかでも減額したい」と旗印の死守を誓い、財源確保に奔走した。

     編成作業は文字通りの財源かき集めとなった。

     アベノミクスの下で拡大を続けてきた税収は、景気減速に伴い19年度に急ブレーキがかかった。20年度も不安が尽きないが、財務省は消費税増税による増収に加え、アナリストから高過ぎると指摘される政府見通しの2・1%の名目経済成長を前提に、過去最高の63兆5千億円に達すると積算した。

     「霞が関埋蔵金」との異名もある外国為替資金特別会計からは従来ルールを超える2兆6千億円を繰り入れ、18年度決算の純剰余金も特例措置で全てつぎ込む。純剰余金を借金返済に回さず、全額を使い切るのは東日本大震災以来のことだ。

     その結果、19年度当初比でわずか1千億円だが借金減額を果たした。

     巨額予算を背景に、政権が手を替え品を替え目玉政策を打ち出すため、施策が生煮えで現場を困惑させている問題も指摘される。今回の経済対策に盛り込んだ小中学校のパソコン1人1台整備も、その一例だ。18年から一部の学年で米アップルのタブレット端末を1人1台導入した川崎市の私立洗足学園小学校。教師と児童の端末をインターネットでつなぎ、板書代わりやクラス全体の学習状況を一元的に把握するのに役立て、児童の進度に合わせた指導を実現している。

     ただ赤尾綾子教頭が、「私たちは環境的に恵まれている」と語るように、情報通信技術(ICT)の活用は自治体や学校間で大きな開きがあるのが実情だ。公立の小中高でのパソコン配備は、佐賀県が1台を1・8人で使うのに対し、愛知県は7・5人。今回の予算措置でも費用を半額負担する自治体が二の足を踏めばパソコンの導入が進まず.「かえって格差拡大を助長する」(政府関係者)ことにもなりかねない。丁寧なフォローが不可欠だ。

     裕福な家のように端末や通信環境が整っておらず、最新技術になじみの薄い家庭の子どももいる。東京で無料塾を運営する認定NPO法人八王子つばめ塾の小宮位之理事長は「家庭の学習環境に成績評価が左右されないよう配慮すべきだ」と、くぎを刺した。


    教育・文化 見守り指導員4千人に

     5月に川崎市でスクールバス待ちの児童らが殺傷された事件を受け、安全対策を強化。登下校時の見守り指導役となる警察OBらの「スクールガードリーダー」の確保と装備充実に3億円を計上し、倍以上の4千人に増やす。

     教職員給与に充てる義務教育費国庫負担金は19年度当初比21億円増の1兆5221億円で、20年度から小学校高学年で教科化される英語の指導教員を千人増員する。補習などに当たる外部人材の充実には62億円を確保。増加する外国人の子どもへの日本語教育支援などに8億円を盛り込んだ。

     文化関係では、世界遺産のバリ・ノートルダム寺院や首里城(那覇市)の火災を踏まえた文化財建造物の防火対策に39億円を充てる。


    子育て 幼保無償化1千億円上振れ

     10月に始まった幼児教育・保育の無償化に、地方負担分も合わせて8858億円を投じる。年間にかかる費用は7760億円程度と見込んでいたが、1千億円超上振れした。利用者が想定よりも増えたことや、保育料の比較的高い中高所得世帯が多く、必要経費が膨らんだ。

     待機児童解消に向け、5万5千人分の保育所整備や保育士の賃金引き上げに、地方分を含め722億円を充てた。

     後を絶たない児童虐待の防止対策として1314億円を計上。対応に追われる一時保護所の職員層や、家庭的な環境での養育を増やすため里親制度の充実を図る。多胎児がいる家庭へのサポーター派遣といった支援事業費も新たに計上。ひとり親家庭の子どもへの学習支援費など133億円も盛り込んだ。



    12月20日 維新の会 司書配置増決議案に反対

     学校図書館で子どもの読書や学習を支える学校司書の配置増を求める国会決議案に与野党で唯一、日本維新の会が「近い将来、司書の仕事は人工知能(AI)で代替可能になる」と反対し、臨時国会(9日閉会)への提出が見送られていたことが19日分かった。

     2015年施行の改正学校図書館法で「努力義務」とされた学校司書の配置は、各自治体の温度差などから全体の半数程度にとどまっ ている。このため出版業界団体や日本新聞協会でつくる「文字・活字文化推進機構」が配置増に向け、超党派の議員連盟に働き掛け、衆 参両院で全会派が了承した形での決議案提出を目指していた。

     維新の浅田均政調会長は共同通信の取材に「人件費増に直結する『司書の配置促進』は『改革』の名に値しない」と文書で回答。単に司書を増員するのではなく「国語力向上に資する合理的な学校図書館の機能強化」が必要だとし「生徒が望む書物を取り出すという業務は、必ずしも『人』が担うべきものではない」と主張した。

     決議が実現せず教育関権者らの間に落胆が広がっている。学校司書の役割は、教員と連携し、本選びのほか書籍やインターネットを活用した「調べ学習」を支援するなど幅広い。埼玉県の高校で働く学校司書の女性は「子どもの読書や学習に寄り添い、社会で自立するのに必要な読む力を育む学校司書の存在は、AIが代われるものではない」と訴えた。


    小学校での司書配置はほとんど進んでいない。国語担当の担任が兼務しているところが多い。充実は不可避であろう。また、AIで代替できるという発想は教育はAIの枠内で十分だといっているのに等しい。人間の「ことば」にたいする深い洞察が維新にあれば幸いなのだが。


    12月19日 文科省調査 私立の学習費、公立の3.38倍

     幼稚園から高校までの15年間、全て私立に通った場合、学習費の総額は1830万円で、全て公立に通った場合の541万円に比べ、3・38倍になることがこのほど、文部科学省の2018年度学習費調査で分かった。前回16年度調査では3・28倍で、少し差が開いた。

     各学年の平均額を足して試算した。小中が公立、幼稚園と高校が私立の場合は788万円、幼稚園だけが私立は635万円だった。1年間に支出した子ども1人当たりの学習費について、公私立の差は幼稚園で30万4千円、小学校127万7千円、中学校91万8千円、高校51万3千円。小学校では5倍の差がついた。

     前回調査から公立の学習費は全ての段階でおおむね横ばい。一方、私立は幼稚園で4万6千円、小学校で7万円、中学校で8万円上昇した。文科省は私立学校で授業料の値上げが続いていることなどが影響したとみている。一方、就学支援金制度が導入された私立高校の学習費は、前回から7万円減だった。幼保教育無償化制度は今年10月から始まったため、今回の調査結果には影饗しない。

     学習費のうち、塾代などの学校外活動費を学年別で見ると、公立で最も高いのは中学3年次の40万8千円。私立では小学6年次の86万1千円。学校がある市区町村の人口規模が大きいほど増える傾向もあり、人口が5万人未満の公立中では20万5千円だったのに対し、政令市と東京23区では36万6千円だった。


    文科大臣の「身の丈」発言は大きな波紋を広げたが実は教育関係者のいわば常識だったのかもしれない。これだけの額を教育に(私的)投資して果たして将来的にペイできるのだろうか。小熊英二『日本社会のしくみ』では、大学院就学者が少ない日本は世界的に見て低学力の部類に入るという。教育制度に改革だけではどうにもならないところに来ているのかもしれない。


    12月18日 大学共通テスト 重ねた建前 受験生軽視

     大学入学共通テストの国語と数学への記述式問題導入見送りが17日、決まった。11月の英語民間検定詞験に続く方針転換だが、採点ミスの恐れや自己採点の難しさといった課題は文部科学省内で早くから認識されていた。水面下では受験生の合否が覆るような量悪の事態も想定しながら、対外的には万全を期すと強調。建前を重ねることに神経を注ぎ、不信感の広がりを止められなかった。

     「目指すべき理想と、評価をするシステムの間にさまざまな齟齬が生じ、それが埋められなかった」。萩生田光一文科相は17日の記者会見で、記述式の導入を見送った理由を説明した。

     中教審(文科相の諮問機関)は2014年12月、大学入試改革の一環で記述式問題の導入を提言。この前年、政府の教育再生実行会議がマークシート式の大学入試センター試験を念頭に「知識偏重の1点刻みからの脱却」を掲げたことを踏まえた方針で、政治主導で始まった改革にお墨付きを与えた。

     こうした理想を文科省が具体化する過程で、テストの実施を従来の1月より早める案や、大学側で採点する案が出たものの、現場の混乱や負担瞳を懸念し不採用に。文科省幹部は「実現していれば、出願前に受験生へ答案を返し採点ミスを修正できたかもしれない。大学による採点であれば納得感もあっただろうが、後の祭りだ」と悔やむ。

     最終的に採用されたのは、民間業者に採点を委託する方法だった。多様な解答が予想される記述式問題で、50万人超の答案を採点する時間はわずか20日間。文科省は早くからトラブル発生を前提に対策を練っていた。

     国公立大には、2次試験の受験者数を絞る「二段階選抜」に記述式の成績を使わない案を非公式に打診。受験生が自己採点と実際の成績のずれに気付かないまま出願し、2次試験に進めなくなる事態を避けるためだ。

     採点ミスの発覚に備え、大学に合否判定のやり直しを求めたり、国が受験生に補償したりすることまで視野に入れていた。文科省関係者は「最悪、10人程度の合否判定が覆る可能性があると想定していた」と明かす。

     本音を隠し続けた文科省。萩生田氏が「採点ミスゼロで実施できるかというと非常に難しい判断だ」と認めたのは、記述式の導入見送りが既定路線化していた今月6日だった。

     共通テストの目玉とされた英語民間検定試験と記述式問題が、いずれも見通しの甘さから見送られた背景には、現行のセンター試験に英語のリスニングを導入した時の「成功体験」がある。

     初回の06年は400人以上にプレーヤーの不具合などが発生。批判が噴出したが、徐々に定着した。共通テストも「回数を重ねれば批判は消えていく」とみていた文科省職員は少なくない。

     暗記型から思考型へという改革の方向性は間違っていないとの過信が方針転換の遅れにつながつたことも否めない。別の幹部は「少々問題があっても導入の意義の方が大きく、これほど不信感が広がるとは思っていなかった」と肩を落とす。

     東北大の倉元直樹教授(テスト学)は「入試は合否がはっきり分かれる分、手続きの公正性が重視される。改革を掲げながら現場の声を無視も、受験生を顧みなかったことで限度を超えた。何のために改革するのか議論し直すべきだ」と話した。


    ベネッセG 「公正」と「利潤」疑念

     大学入学共通テストの関連事業を巡っては、秋の国会審議を通じ、ベネッセコーポレーシヨンとグループ会社が多数受注してきたことが明らかになった。一方で、ベネッセは「進研ゼミ」などで、共通テスト対策をうたっている。公平公正な試験実施と利潤追求が両立しない「利益相反」ではないか―。参考人招致されたべネッセ幹部は強く否定したが、追及はやまなかった。

     16日、東京都新宿区。野党議員4人は、記述式問題の採点を担うべネッセグループの学力評価研究機構が、自社サイトで「本社所在地」と掲げる住所を訪れた。ビルの案内にべネッセや別の関連会社の表示はあるが、機構は見当たらない。4人がべネッセを訪ねて機構の場所を聞いたところ「ビル内にあるが、セキュリティー上教えられない」と伝えられたという。参加議員は「実態が全く分からない」と憤った。

     機構は共通テストの実施が正式に決まる直前、2017年5月に設立され、その体制はほとんど公表されていない。野党側はべネッセと機構が実質的に一体だとみて、機構の従業員数を明らかにするよう要求したが、今も公表されていない。大学入試センターの担当者は「知っているが、答えられない」と繰り返した。


    識者の議論

    「記述」必要は変わらない―文部科学省高大接続システム改革会議メンバーとして大学入学共通テストの検討に関わった大谷大の荒瀬克己教授の話

     全ての生徒に基礎的な学力を付けるのが学校教育の基本。読解と記述は表裏一体のものだが、得た情報から自分の考えを記述する力は、なかなか身についていないのが実情だ。高校教育は入試の影響を受けやすい。共通テストに記述式が入ることで、そうした力を身につける機運が一層高まることは期待された。高校教育、大学教育、入試の三位一体改革のうち、共通テストにおける記述式は見送られたが必要な力であることは変わらない。教育現場の取り組みに期待したい。

    共通試験になじまない―藤田英典共栄大教授(教育社会学)の話

     共通試験に求められる要件は、合格者の最下位と不合格者の最上f立を公、平公公正に選別する機能があることだ。今回導入が見送 られた記述式の仕組みでは、採点者がどんなにトレーニングをしても採点のばらつきが起き、共通試験になじまない。 導入自体がそもそも無理な話で、記述する力を測るのは、各大学の個別入試に任せるべきだ。むしろ、センター試験のマークシート式のような間題でも思考力や判断力を問うことは可能だ。その内容を充実させていく方向で議論を進める方が良いのではないか。

    矛盾だらけの制度設計―高校の国語教員を30年以上務めた上田女子短大の小池由美子専任講師の話

     矛盾だらけの制度設計で受験生や教育現場を振り回し、延期が発表されても大きな弊害が残った。現在の高校三年生は小学校の時から「大学入試が変わる」とプレッシャーをかけられてきた。本番1年前に突然ちやぶ台を返され、これから何を信じられるうだろうか。夏休み前からプレテストを利用して対策を講じてきた高校もある。学習指導要領が変わったわけでもないのに教員は指導の変更を強いられ、現場は時間と労力を浪費した。制度員設計の見直しは、当事者らの声をしっかり反映させてほしい。


    論理的思考を計るために「記述式」回答は有効であることは異論がないだろう。しかし、それが大学入試の改革でないと前に進まないという日本の教育制度こそが中教審の議論でなければならないはず。しかし、まずは入試改革ありきを前提にした議論ではなかったか。「PISAショック」の影響がある事は否めない。加えて、安倍政権と教育との関わりは、疑念にまみれている。森友学園、加計学園、そしてベネッセG。全てに共通しているのは公的な問題が民間で扱われている事、情報が隠蔽若しくは改ざんされている事である。この問題も深く掘れば…。


    12月18日 小栗栖中校区住民ら 「4校統合、小中一貫に」要望

     京都市伏見区醍醐地域の小栗栖小、小栗栖宮山小、石田小と小栗栖中を統合し、新たに小中一貫教育校を開校するよう地元の住民 らが17日、市教育委員会に要望した。市教委は「2025年の開校に向け準備を進める」と応じた。

     要望書では、施設一体型小中一貫教育校を小栗栖小敷地に建設する▽建設の前に小栗栖小と石田小を1次統合して、小栗栖小の児童が石田小で学べるようにする▽小栗栖小に隣接する小栗栖中の敷地でも多様な教育活動ができるよう環境整備をする―などと求めた。

     4小中学校区では児童生徒が減少し、地元の自治団体や各校のPTAなどが2年ほど前から学校の在り方について協議。今年8月に小中一貫教育校創設検討協議会を立ち上げ、一貫校の新設を要望することを決めた。この日は協議会などの住民代表らが中京区の市教委を訪れ、在田正秀教育長に要望書を手渡した。

     醍醐地域は住宅開発などによる人口増加に伴い、1970年代から80年代にかけ小中学校の開校が相次いだ。小栗栖小の児童数はピ ーク時に1800人を超えていたが、少子化で現在は123人。小栗栖宮山小は224人、石田小は119人となった。


    住民が統合の要望を出しそれを市教委が受けるといういわゆる「京都方式」が定着してきた感がある。一体型小中一貫校はすでに4校目となるのだが、必ずしもこれが「正解」だとはいえない。義務教育9年間を3つのステージに分けるという内部的なシステムを含めて検証の時期に来ているのではないか。


    12月10日 幼保無償化便乗?

     10月から始まった幼児教育・保育の無償化に伴い、京都市内でもさまざまな影響が出ている。保護者が勤務時間の延長を申告して保育時間を延ばす事例が頻発しているほか、保護者が支払う給食費を値上げする施設も出ている。無償化が必ずしも子どもの健全育成につながっていないとして、専門家は「子どもの保育と教育を最優先に考える制度であるべきだ」と警鐘を鳴らす。

     9月、市内の認定こども園の園長は、ある保護者が園に提出した書類を見て驚いた。10月1日から勤務時間が延びるという内容で、保育時間を現在の8時間から10時間に延長するよう希望していた。

     その保護者の勤め先は仲の良い友人が経営しており、園長は夫婦2人で平日の夕方に談笑したり、高級車を乗り回したりする光景を目撃していた。「本当にちゃんと勤務しているのか」。疑念は消えないが直接聞けずに頭を悩ましている。

     保育関係者によると、無償化に合わせて勤務時間の延長を申告する例は、市内の複数の園で発生しているという。

     保育時間は8時間(短時間)と11時間(標準時間)がある。京都市では8時間以降は30分刻みで保育料を加算していたが、10月からはすべて無料になった。8時間保育の利用割合は他の政令指定都市と比べて高く、市幼保総合支援室は「保育時間の延長希望が増えれば保育士の負担が増す。本当に必要な場合に子どもを預けてほしい」と呼び掛ける。

     市内には保育園と認定こども園が計283施設(4月1日現在)ある。市によると、今のところは無償化の影響で市内で保育の申し込みが急増する動きはないという。ただ、無償化が勤務時間と保育時間の延長を招く傾向が強まれば、保育士の負担増だけでなく、「働き方改革」の流れにも逆行する。

     認定こども園協会京都府支部長で市日本保育協会での相談役も務める山手重信さんは「無償化は子育て世代の負担軽減が本来の目的だったはずで、本末転倒だ。無償化が働き方を含めたライフスタイルを見直すきっかけになればいいのだが…」と漏らす。

                  ◇

     無償化は給食費にも影響を与えている。無償化対象の3歳児以上はこれまで、ごはんやパンなどの主食費を保護者の実費とし、おかずに当たる副食費は保育料に含めていた。10月からは保育料は無償化されたが、主食費と副食費はともに保護者の実費となった。金額は各園が決めている。

     伏見区の会社員女性(35)が長女を通わせている保育園は、2千円だった主食費を10月から3千円に引き上げた。保育料が無料のため、女性の負担は大きく減ったが、主食費の値上げには疑問が残っている。

     国は給食費の目安として主食費を3千円、副食費を4500円に設定しているが、市は実際にかかった費用に基づいて計算するよう各園に通達している。京都新聞社が各園の重要事項説明書を調べたところ、少なくとも18施設が主食費を値上げしていた。

     ある保育園の園長は「うちは食材にこだわっており、元々持ち出しがあったのを是正した」と話す。別の施設は「消賞税増税に合わせた」とするが、食料品は軽減税率が適用されている。

     市幼保総合支援室は主食費の値上げについて「一つ一つ把握していないが、主食の内容が変わらないのに値上げすることは、あってはならない」としている。


    汐見稔幸・東京大名誉教授 教育・保育の質向上こそ目的

     「教育政策の延長線上で、幼児教育・保育の無償化をできなかったことが最大の問題だ」。日本保育学会員の汐見稔幸・東京大名誉教授は、このほど京都市内であった認定こども園協会京都府支部の研修会の中でそう指摘した。

     汐見氏は、欧州連合(EU)圏では保育士の給与が小学校教諭と同等で、保育土1人が担当する子どもの数(3歳児以上)が15人以下と日本より少なく抑えられている事例を紹介し、「EU加盟国は幼児教育・保育を最優先の課題と考えて環境を整えた上で、無償化を行った」と強調。親の負担軽減策として実施した日本との違いに触れた。

     無償化の意義を「幼児教育・保育の在り方を変える手段の一つにすぎない」と指摘した上で、「問題解決能力の高い子どもを育てるという視点に立ち、幼児教育・保育の質を向上させないといけない。そこにもっとお金や人材を投入すべきだ。そうしないと日本の未来はない」と危機感を示した。


    理念のないままの「バラマキ」政策の結果生まれたのが幼保無償化だといえる。かつて学校5日制が発足したときも「日本人は働き過ぎ」という外国からの批判をかわすことが目的だったように、今回は消費税引き上げの口実に使われた。来年度予算に盛り込まれている無駄(防衛費5兆3千億、ポイント還元2千5百億、マイナンバーポイント2千5百億など)がなんとも多いことに懸念を抱く人は多いだろう。ちなみに幼保無償化の経費は3千9百億が計上されているが、これでどれだけの保育士の待遇改善ができるのだろうか。


    12月8日 朝鮮学校幼稚園保護者ら「現状を知って関心を」

     10月から始まった幼児教育・保育の無償化で、朝鮮学校の幼稚園は対象外になっている。保護者らは無償化の適用を国や自治体に求めるとともに、一般の人にも「幼稚園の現状を知ってほしい」と関心を呼び掛けている。京都市内に2カ所あるうち、京都朝鮮初級学校付属幼稚班(伏見区)に足を運び、園児たちの1日に触れた。

     「アンニヨンハセヨ(おはようございます)」。朝のあいさつの時間。年少から年長まで16人が元気いつばいに歌い、体を動かす。12月に入ったことや外の天気の様子など、先生と園児のやりとりはほぼ朝鮮語だ。

     園児の多くが在日4世や5世。家庭でも日本語で育ち、入園時はあいさつ程度の朝鮮語しか分からない子が多いという。それでも「まず耳から覚え、話し出すのも早い。個人差はあるが、年中児はほとんど日常会話に困らない」と主任の任敬玉(インキョノク)さん(43)。「ウリ(私 たち)を大切にしようと伝えている。言葉だけでなく、朝鮮の踊りや歌、遊びの中で自然と土台づくりができる」と幼少からの教育の意義を語る。

     この日、園児たちは校内の体育館で体操や運動をし、組に分かれてクリスマスのリース作りなどに取り組んだ。昼食や昼寝の後、午後3時20分に送りのバスが出発。中には1時間以上掛けて家に帰る子もいる。

     園に通う費用はバス代を含めると年間30万円以上。教育ニーズや価値観の多様化などもあって、園児の数は減少傾向にあるという。同校の李東河(リドンハ)校長は「経済的な負担を感じている保護者は少なくないと思う。幼保無償化から除外され、入園者がさらに減る可能性がある」と危機感を抱く。上の学年へとつながる教育への影響に加え、寄付に支えられている運営の厳しさも増す恐れがあるという。

                ◇

     幼保無償化からの除外を受け、保護者や学校、日本の支援団体などは実情を広く知ってもらおうと、積極的にアピールを続けている。学校公開や緊急集会の開催、国へ提出するメッセージの募集に加え、3日夜には京都タワー前など市内3ヵ所で計約150人が高校無償化の適用と合わせて訴えた。

     マイクを握った鄭英姫(チョニョンヒ)さん(42)=北区=は、4人の子の母親で三女が年長組に通う。「差別を再認識させられ、つらい思いだが、声を上げないと除外を認めることになる」と強調し、言葉を続ける。「民族教育は尊厳やアイデンティティー、言葉を回復していく過程。自分という根っこがあるからこそ他者を理解し、尊敬し、共生できる。少数者の在日外国人が生きやすい社会は、日本の人にとっても暮らしやすいはずです」


    教育の保障は「国民」だけに対しての義務ではなく、その国で生活する全ての人に保障されるものである事は、子どもの権利条約をはじめとする国際的な取り決めの基本だ。ましてや「消費税を財源としての幼保無償化」なら日本で生活する人全てが対象となる権利を有する。「美しい国」がブラックジョークになりつつある現政権の罪は大きい。


    12月6日 大学入学共通テスト 入試改革の目玉 風前

     2020年度開始の大学入学共通テストを巡って政府は5日、先月の英語民間検定試験に続き、国語と数学への記述式問題の導入についても見送りに向けた最終調整に入った。50万人分に上る答案を公平に見ることはできないと、教育関係者や高校生からの風当たりは強まっていた。高い理念を掲げてきた文部科学省は打開策を示せぬまま、瀬戸際まで追い詰められた。

     「問題の解決に向けて努力しているが、受験生の不安を解消できるか、どこかできちんと判断しなければならない」。5日の参院文教科学委員会。萩生田光一文科相は、記述式の導入に反対する野党議員の質問に神妙な面持ちで答弁した。

     英語民間試験の導入見送りが決まった先月1日以降、野党は記述式に次の焦点を合わせた。「50万人分の採点をミスなく終わらせることができるのか」「自己採点が正確にできなければ受験生は出願先も選べない」―。高い公平性が求められる入試の採点を、民間企業に委ねることの是非も国会審議の場で追及した。

     防戦一方の文科省。ある幹部は「採点ミスをゼロにするのはほとんど不可能。野党の指摘は当たっている」と明かす。

     実は官邸側も記述式問題導入については後ろ向きだった。懸念を抱えたまま導入に踏み切って受験生らの混乱を招けば、新たな政権 のリスクにつながりかねないためだ。官邸主導で行った英語民間試験の見送りが「世論から一定の評価を受けた」 (政府高官)との感触を得たことも大きい。

     関係者によると、政権幹部は文科省幹部に対し「受験生が納得できる仕組みが作れないなら見送りも検討するように」と指示していたという。官邸筋は「冬休みに入る前に受験生を安心させてやるべきだ」と指摘する。

     官邸と連動するように、与党の動きも加速。公明党の斉藤鉄夫幹事長は5日午後に萩生田氏との面会を急きよ入れ、記述式の導入延期を求めた。公明党幹部は「関連予算が入った2020年度予算が閣議決定される前に流れをつくるべきだ」と述べた。自民党も提言をまとめ、6日に萩生田氏に提出する方向で、外堀は埋まりつつある。

     「自らの力で考えをまとめたり、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力を評価することができる」。文科省は記述式導入の意義を繰り返し強調し、マークシート式の大学入試センター試験からの変革を示を象徴として位置付けてきた。

     一方、同省や大学入試センターも採点の難しさは早くから認識。国語では解答の条件をいくつも設定して正答の幅を限定し、短い文章を記す出題を検討していた数学も、試行調査の低正答率などを受けて方針を変更し、主に数式で答えさせることにした。政府の教育再生実行会議が13年に「知識偏重の1点刻みの試験からの脱却」を掲げた理念は薄らぎ、出題は変容していったが、「やらないよりはやった方がいい」(同省幹部)と突き進んできた。

     既に学校で記述式対策に取り組んでいる東京都の高校2年の男子生徒(16)は、導入見送り検討の報道を受け、こうつぶやいた。「英語の民間検定試験も記述式もやらないなら、今のセンター試験と何ら変わらない」


    【表層深層】自己採点に不安 漏えいリスクも

    大学入学共通テストの国語と数学に導入予定の記述式問題を巡っては、50万人以上もの答案をミスなく採点できるかや、適切に自己 採点ができるかなど、不安を訴える声が尽きない。べネッセコーポレーシヨンのグループ会社「学力評価研究機構」 (東京)が採点を担うが、国会質疑では、ベネッセで商品企画開発を担当する幹部が機構の幹部を兼ねていたことも判明。問題漏えいや営業利用を心配する向きもあった。

    共通テスト実施に向け、昨年11月に実施された試行調査では、補正が必要な採点ミスが国語で0・3%、数学は0・01%発生。国語のミスは50万人に換算すれば1500人に相当する。

    受験生は自己採点に基づき、出願先を決める。正確な自己採点が欠かせないが、試行調査では自己採点と実際の成績とのずれが国語で最大33・4%、数学で同17・7%に達した。

    国語記述式の問題は五つの段階別評価で示される。大学は独自に点数換算して、マークシート式問題の得点や独自試験の成績に加 点して活用すると表明している。わずかな採点のずれが、大きなずれにつながる可能性も。べネツセ側は現役の大学生や大学院生が採点者に含まれることを否定せず、野党側は「採点の質が保たれるのか疑わしい」と追及を強めた。

    べネッセは機構幹部との兼業が判明後、すぐに解除すると表明したが、批判はやまない。共通テスト実施後、速やかに採点業務を進めるため、機構の社員や幹部の一部は、共通テスト本番前に記述式問題や解答例を知ることができるとされる。野党などは、外部に情報が漏れる危険があるとも指摘している。


    教育を安倍政権の目玉としてきたのだがここに来てまさしく風前の灯である。それにしても「何故、こうした改革が必要だったのか」との疑問は残る。野党にはその点を追及できるだけの力量を備えて欲しい。同時に、話題がなくなったときだけに教育問題を扱うといことがないようにして欲しい。ちなみに、改正給特法はどれだけの審議をしたのかは怪しい。


    12月6日 植柳小跡地 住民「選定やり直しを」

     京都市下京区の植柳小跡地でのホテル開発で、事業者の安田不動産(東京)が、近くの公園地下に災害時避難所を造る当初計画に代えて提案した修正案を巡り一部の地域住民から「選定をやり直すべきだ」との声が上がっている。当初計画は市の選定委員会が複数社の提案から最高得点で評価した案だったからだ。市は「地域と協議して修正した」と説明する。

     同校の跡地活用については、市は複数の事業者の提案を点数化して比べる「公募型プロポーザル方式」に基づき、有識者ら6人でつくる選定委員会が3社の提案を非公開で審議した。

     校舎体育館を近くの公園地下に移設して災害時避難所としても使う安田不動産の当初計画は、選定委では「車施策への貢献度」「事業者の事務遂行体制・業務実績」「活用計画の実現性・安定性」の3項目で他2社を上回るなどトータルで最も高得点だった。地下体育館の建設を含む公園の再整備について、市は「地域住民の憩いの場となるだけでなく、地域活動の拠点にもなるよう、公園の機能充実が図られている」などと評価していた。

     だが、市がこの計画を今年2月に公表すると、地元住民の一部が「地下の避難所では災害時に周りの状況が分からない」と反発。市と同社は10月、ホテル真横に避難所を兼ねた屋内運動場を建設する修正案を住民側との協議の場で提示した。

     ホテルの規模は当初計画と同じく地上4階、地2階の予定だが、学校地に屋内運動場を建設る分、敷地を十分に活用できず、客室数は減る見通しだ。

     住民グループ「植柳校跡地問題を考える会」は「選定委すら通っていない修案を進めるのは反則だ。公開の場で選定をやり直すべきだ」と訴える。市資産活用推進室は、修正案について「地域と協議し、修正を重ねて具体化を図るという学校跡地活用の制度に基いている」とする。


    学校は社会共通資本(宇沢弘文)であるということはまず確認しておく必要がある。観光公害といわれる清水や嵐山をはじめとする「賑わい」は限度を超えている。また、ホテルの乱立も「過剰供給ではないか」との声もあがる。本紙1面には「小学校跡地活用 議事録黒塗り」の見出しが踊っている。住民の意見よりも財政(金儲け)に走る現市政の問題は大きい。とりわけ統廃合と学校跡地利用の関係は深いものがある。統廃合は教育委員会、跡地利用は市長部局と縦割的な仕事になっているが、前者は住民の合意を得るための「京都方式」がとられ、後者は「企業の秘密が含まれて…今後…率直な意見交換が損なわれる」との理由で住民の排除が行われる。なにやら政府の姿勢と類似してはいないか。


    12月5日 給特法成立 見かけの残業時間減へ見切り発車

     公立学校の教員の勤務時間を年単位で調整する変形労働時間制の導入を盛り込んだ改正教職員給与特別措置法(給特法)が四日、成立した。教員からは「さらなる長時間労働につながるのではないか」と怒りや不安の声があがる。

     「なぜ現場の声を聞いてくれないのか」。東京都内の中学校に勤務する五十嵐夕介さん(36)は憤る。法成立が職員室に伝わると「子育てできなくなる」と嘆く同僚もいたという。

     「毎日残業してさらに定時が延びたら、もっと働け、働けと言われるよう」。そのつらさを趣味のマラソンに例えて「一年間、同じペースで進みたいのに、途中でダッシュしろと言われるようなもの。疲れてゴールまでたどり着けない」と語った。

     首都圏の小学校教諭の四十代女性は「考え方がおかしい。夏休みはふだんできないことをやったり、良い授業をするために勉強する時間で暇ではない」と話す。授業はなくても各種書類づくり、秋の運動会や遠足の準備といった仕事がある。床のワックスがけ、カーテン洗い、エアコンのフィルター清掃も「予算がなくて教員がやらなきゃいけない」。

     ふだんから人手が全く足りない。小学校は全科目を担任が教えるため授業とその準備で時間がつぶれる。最近は産休に入った教員に代わる臨時採用教員が見つからず、みんなで穴埋めする状態も増えている。「疲れてしまってしっかり準備できず授業に臨む日もある。いじめ問題があっても一人一人に向き合う時間がなく、きめ細かに見られないのが本当につらい。子どもたちに行き届いた教育をするために、まず定数の改善をしてほしい」と訴えた。

     中学教員だった夫が過労死し、法案審議では参考人として国会に出席した工藤祥子さんは「重大な働き方の変更があっけなく決まってしまい、残念です。過労で倒れる人が増えることが一番心配。せめて残業時間の上限を超えないなど付帯決議でついた条件を守り、タイムカードを押した後も働かせることが現場で起きないよう文部科学省に望みたい」と指摘した。 <>


    【解説】  「現場無視」教員怒り

     どのような効果があるか不明確で、導入する根拠も希薄なまま、公立学校の教員に一年単位の変形労働時間制の導入を可能にする給特法が成立した。

     繁忙期に長く働き、その分を児童生徒が夏休み中の八月などにまとめて休む変形労働時間制は、「夏休みは閑散期」という前提がないと成り立たない。しかし、文部科学省は年間を通した教員の勤務時間を把握していない。内田良名古屋大准教授の調査では、八月も各地で残業をしている。

     それでも文科省が導入を急ぐ理由は、見かけ上の残業時間を減らすためだ。同法によって現状では教員に残業代は出ないが、もし払えば年間約九千億円の財源が必要になると試算した。

     残業時間を減らせば将来的に残業代を出せる制度改革につながるとの考え方も省内にはあるが、実態が見えなくなり議論がしぼむ危険がある。先に教員の定数改善による人手不足解消や業務削減を進めて減らすのが本来のやり方だ。

     この制度を導入するか決めるのは地方自治体だ。学校現場とよく話し合う必要がある。「働き方改革」をうたう新制度により過労で倒れる人を増やしてはならない。 (東京新聞)



    12月4日 PISA 日本 読解力15位に低下

     経済協力開発機構(OECD)は3日、加盟国を含む79ヵ国・地域の15歳を対象に2018年実施の学習達度調査(PISA)の結果を公表した。日本の高校1年生の読解力は15位で、8位だった15年の前回調査から低下。点数も12点下がり、上位層と差が広がった。低下は2回連続。

     数学的応用力は5位から6位、科学的応用力も2位から5位に後退したが、文部科学省はトップ水準を維持していると分析。3分野の全てでトップは「北京・上海・江蘇・浙江」で参加した中国だった。

     調査は15年に続きパソコンで実施。読解力では新たにブログなどインターネット上の多様な文章形式で出題され、文章の信ぴょう性を評価する能力も初めて測った。

     文科省は読解力の低下について、根拠を示して考えを述べる力に課題があると指摘。情報の真偽を見極める力などを測る新たな出題 の正答率が特に低いことも影響Cているとしたほか、「OECD加盟国内で比べて授業中のデジタル機器の利用が特に少なく、本や雑誌と異なる形式の文章に慣れていない」とした。

     調査は00年から3年ごとに行われ、今回が7回目。OECD加盟の37力国と非加盟の42カ国・地域の約60万人が参加し、数学的応用力、科学的応用力、読解力の3分野のうち、今回は読解力に重点が置かれた。日本は18年6〜8月、無作為抽出で国公私立183校の約6100人が参加した。

     日本の読解力の得点は504点で、OECD平均は487点。前回は516点で平均は493点。平均点低下や測定のぶれを考慮しても、水準は下がったと判断された。06年の15位から09年の8位、12年の4位と上昇したが、15年は再び8位、今回は15位と下がった。参加国・地域は増え続けており、長期的傾向の分析では米国などと同じく変化がない「平たん」タイプとされた。特徴的な出題では商品の販売元とオンライン雑誌が、商品についてネット上で発信した文章を比較するものが新たに登場。文章の質や信ぴょう性を評価し、根拠を示して説明する問題の正答率が特に低く、情報を見極めて自分の考えを表現する力の不足が浮かんだ。

     数学的応用力は前回より5点低い527点で6位、科学的応用力は9点低い529点で5位。従来と同様、OECD平均と比べて低得点層が少なく高得点層が多かった。長期的傾向でもトップ水準を維持と評価された。


    読解力の向上 何が必要?

     経済協力開発機構(OECD)が3日に公表した2018年学習到達度調査(PISA)の結果で、日本の子どもの読解力は3年前の前回より点数、順位ともに下落した。文部科学省には「単純な学力低下ではない」との見方もあるが、文章を正確に理解し、答えを導き出す力が不足しているとの指摘は以前からあった。全ての教科に不可欠な能力を伸ばすためには何が必要なのか。

     「数学の本質は計算ではなく、問題文を読解することにあります」。今年11月、中学生らを対象に東京都内で開かれた数学の模擬授業。人工知能(AI)や読解力の研究で知られる国立情報学研究所の新井紀子教授が訴え掛けた。

     授業ま偶数と奇数の定義を使い、既に正しいとされていることを証明し、再確認する内容。数学の知識があっても、問われている意味が分からなければ本当の学力とは言えない―。新井教授は読解力の重要性を「全科目をより良く学ぶために不可欠な汎用的スキル」と説明する。

     「非科学的な指導が多かったのではないか」と、日本の国語教育を分析する新井教授。教える側が「日本語だから普通に読めば分かる」との認識のまま授業が進み、文節や句読点の使い方など文章の構造を論理的に教えていないと指摘。そのため、文章を感覚で捉える癖がつき、理解できなくなっているとみる。

     03年と06年の調査で、日本がトップレベルからOECDの平均レベルまで成績を下げた「PISAショック」以降、文科省は脱ゆとり教育を加速させた。全国学力テストを復活させるなどの施策を次々と打ち出した当時と比べ、今回は「早急に対策をする状況にない」(幹部)と余裕の構えだ。

     背景にあるのは、来年度以降、小学校を皮切りに順次実施される新学習指導要領の存在。小学校の各教科で言語能力の育成を掲げ、国語では「語彙を豊かにする」と明記。高校でも実用的な文章を読み、論理的に書く力を養う科目「論理国語」を新設する。

     文科省幹部は「これまでの対策に加え、新指導要領の内容を確実に進めることが重要だ。PISAの結果に右往左往する必要はない」と言い切る。

     冷静な反応の一因には、PISAの在り方を疑問視する声の存在もある。言語学者のノーム・チョムスキー氏ら世界的に著名な学者らが14年、偏った尺度で教育を測定していると批判するる文書をインターネット上に公開し、賛同が広がった。

     順位の上昇に躍起となっている参加国・地域もあるとされる。

     それでも新指導要領の検討過程では、小学校入学段階で既に語彙量の差が開いていると指摘された。各種調査の結果だけでなく、学 校の現場でも「文章を読めない子どもが増えている」との実感は広がっている。

     新井教授は言う。「教科書が本当に読めているのか見てつまずきを確認したり、文法の誤りを修正したりする論理的な指導が大切だ」


    アンドレアス・シコライヒャ-OECD教育・スキル局長の話 デジタルの読み書き焦点

     読むという行為の性質は大きく変わっており、今回の調査ではデジタル世界における読解力に焦点を当てた。紙の書物は専門家が内容を精査し、書いてあることは正しいと信じられていた。しかし、インターネット上の情報は真偽が分かりにくく、答えも一様ではない。複数の出所の情報を比較し、事実か意見かの区別をつけることも求められる。こうした意味での読解力を付けるには、デジタル機器をただ使うのではなく、どう使えばいいのかを教えることが大切だ。フエイクニコースが広がる世界で読解力はより重要な能力になっている。


    【解説】国は一層の対策を

     経済協力開発機構(OECD))の2018年学習到達度調査(PISA)で、日本の読解力は前回に続いて低下した。文部科学省はパソコンでの出題に不慣れだったことが一因と推測。子ども1人にパソコン1台の学習環境を整える政府方針を推し進めることで挽回できるとの見方もあるが、短絡的だ。

     日本は授業でデジタル機器を使う時間がOECD加盟国で最低レベル。生徒が慣れない出題形式に戸惑ったこと自体は十分に考えられる。OECDは今回から読解力調査を大きく変えた。情報の質や信ぴょう性を判断する力も読解力だとして、ネットニュースや電子メールなどの多様な文章を題材にした。狙いは、インターネット上にフエイクニコースがあふれる現状を踏まえ、真偽を見抜いて確,登情報を自ら見いだし、比較し表現する力を育てることにある。とはいえそれは文章を批判的に読むという、以前から重要視されてきた力と地続きでもある。

     こうした力が欠けた子どもは、転じて間違った情報をネットに発信する側にもなり得る。指導には教員の深い理解も欠かせず、文科省は一層の対策を進めるべきだ。


    新井紀子氏は『AIvs教科書が読めない子どもたち』の著者、説得力は大きい。PISAの順位について一喜一憂する必要はないのだけれども、文科省は「脱ゆとり」路線のためにPISAの順位を利用した。今回は順位にはこだわらずとの姿勢だが、パソコン導入についてはPISAを利用しているように思える。教育にとって「ことば」は、とりわけ日本の教育については日本が、大切なのだが、そのことを理解(受け入れる)する教育文化が育っていないという事実を切実に考えるべきだ。そうした観点から大学入試に記述式問題を採用すれば高校以下の学校教育が転換できると考えた(?)のも一理あるのかもしれないが、浅知恵でしかなかった事はこの間の事情で明らか。


    12月3日 向日が丘支援学校 1人暮らし体験室整備

     京都府教育委員会は向日が丘支援学校(長岡京市)の改築基本構想の中間案をまとめた。寄宿舎を廃止する一方で、1人暮らしや集 団生活が体験できる「生活実習室」を整備する。情報通信技術(ICT)を積極的に活用するほか、体育館を地域の障害者スポーツの拠点になるよう整備する。

     同校は1967年度に開校し、小中学部と高等部で計157人(5月現在)が通学する。建物は平屋(一部2階建て)の校舎と屋内体育館、寄宿舎で計8453平方メートルあり、老朽化が進むため全体の建て替えを計画している。

     寄宿舎は通学が困難な子どものためにあり、現在19人が利用するが、中間案では再整備を盛り込まなかった。特別支援教育課の担当者は「乙訓地域2市1町が通学エリアで、どこに住んでいてもスクールバスや公共交通機関で通える。現在の利用者も全て通学でき、ほとんどが1年で寄宿舎を出ている。通学支援の役割は終わった」と説明する。

     建て替え後は寄宿舎で自立指導をしてきた経験を生かし、集団で宿泊ができる特別教室「生活実習室」を設ける。高等部の生徒が就職後に自分で生活できるよう、1人暮らしが体験できる設備も整える。

     授業では学習上の困難さを改善するためにタブレット端末などの活用を進める。体育館は東京パラリンピックによる障害者スポーツの普及を見据え、地域に開放して障害者や健常者も利用できるようにする。建て替えに合わせて長岡京市が同校敷地内で児童、高齢者福祉施設の建設を予定しており、施設との連携も進める。

     来年1月に基本構想を正式決定後、具体的な設計に移る。


    保護者ら 寄宿舎存続の署名提出

     寄宿舎については存続を求める運動が起きている。保護者らによる活動「向日が丘の改築を考えるつどい」は存続を求めて10月までに1万7千筆の署名を集め、3回に分けて府教委に提出した。

     代表世話人の江畑早苗さん(45)=京都府大山崎町=は、脳性まひがあり車いすで生活する全盲の長男(16)が高等部に通っている。中学部の時に1年間、寄宿舎を利用した。江畑さんは「離れて住んだことで互いに親離れ、子離れができた。息子も自分のことは自分でやりたいという意 思や、周囲を思いやる気持ちが出てきた。遠方の人の通学保障だけでなく、子どもの成長を促す教育的な意義もあった」と振り返る。

     計画に盛り込まれた生活実習室では短期でしか宿泊体験ができなくなる危惧があるといい「保護者が入院した時などに寄宿舎がなければ地元の障害者施設の短期入所を利用しなければならなくなるが、空きも少ない。寄宿舎はぜひ残してほしい」と訴える。


    かつて与謝の海養護学校と並んで障害児教育の拠点校とされてきたが、障害者のニーズが多様化し「障害に合わせた教育」路線はすでに破綻している。そうした中で重度の障害者の入所を前提とした役割の見直しが必要となってきてたのは事実だろう。同じようなことが定時制高校の廃止や再編にも現れているのだが、いずれの場合も「少ない」ながらもかつてもニーズを必要とする人たちがいるのも事実だろう。そうしたニーズを拾い上げる教育行政が必要であり、効率のみでは理解は得られない。


    12月2日 非正規 続く収入格差

     来年4月から地方公務員制度が変わり、自治体の判断で非正規職員にも期末手当(ボーナス)を支給することが可能になる。しかし正規職員に比べ月給が低い状況は変わらず、収入格差は続く。任期は原則1年のため、雇用の不安も大きい。

     「やりがいだけを糧に働いてきたが、収入が低過ぎる。将来を考えると不安だ」。千葉県内の自治体で非正規の図書館司書として働く男性(40)は嘆いた。10年以上、週4日パートタイムで勤務。昇給はなく年収は200万円以下という。来年度からはボーナスが出る一方、月給がカットされるため、年収が増えるかどうかは見通せない。「正規は数年で異動する。現場をより詳しく知っているのは非正規なのに評価が低い」と悔しさを口にした。

     非正規職員は2016年の総務省調査で64万人を超え、自治体運営に欠かせない存在。同省はボーナスの支給で「年収が数万円から数十万円アップする」と見込む。

     これに対し、自治労総合労働局の森本正宏局長は、司書の男性のように手当を支給する代わりに月給を減らし、人件費を抑える自治 体が多いと指摘。「同一労働同一賃金の原則はどこにいったのか」と憤った。

     非正規職員が最も懸念するのは不安定な雇用だ。来年度以降も、1年単位の有期雇用は変わらない。公務員は労働契約法が適用さ.れず、更新を重ねて5年間働いても民間企業のように無期雇用には転換されない。自治体の都合で雇用を打ち切る雇い止め」に遭う可能性ほ残ったままだ。

     「貯蓄も少なく、老後に不安がある中、1年ごとにクビ切りにおびえることになる」と話すのは、東京都内の区立保育園で15年間働く伊藤信子さん(67)。20年以上、千葉県内の公立図書館で働く女性(56)も「とにかく雇用への不安が大きい」と打ち明けた。

     公務員制度に詳しい地方自治総合研究所の上林陽治研究員は、ボーナス支給だけでは処遇は大きく変わらないとして「経験豊富な非 正規職員などを、正規として積極的に登用できる仕組みが必要だ」と訴える。だが総務省は「情実人事を防ぐためにも、公務員試験の合 格者が正規職員となるべきだ」との考えを崩さず、実現は困難なのが実情だ。


    非正規職員にボーナスが支給される事は一定の改善だといえる。学校職員の中には長期休業中は雇用されない職員もいるが、こうした職員の待遇は通年雇用の職員よりも悪い。学校にとっても新たな業務が追加されるたびに人材の不足が目立ちその穴埋めに非正規職員が充てられる。学校側はそれで何とかやりくりしているのだけれども、当の職員は「将来設計」に大きな不安を持つというのは変わりない。教員採用の倍率が低下し教員になりやすくなっているがそれと非正規の確保とは関係がないことも知っておく必要がある。まずは定数改善が必要である。