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  • 連載 教室にてつがくを(連載5回)
  • 働き方改革や業務支援員増 追いつかず.26
  • 逃走決意後無差別襲撃.28
  • 目標同じも手法隔たり.29
  • パソコン方式に.31
  • 1月31日 学力テスト パソコン方式に

     小学6年と中学3年の全員を対象に文部科学省が毎年実施している「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)について、2023年度をめどに従来の紙に記載する方式から、出題も解答もパソコンで行う方式へ全面移行する方針を固めたことが30日、文科省関係者への取材で分かった。出題の多様化や経費縮減、各地で異なる試験日の設定が可能になるといった利点が見込まれる。

     政府は23年度までに小中学校で全ての児童生徒が1人で1台の学習用パソコンを使える環境を整えるとしており、これらを活用する。文科省は、パソコンの整備が進まない場合は学力テストに参加できなくなる可能性もあるとして、各自治体に積極的な導入を求める。

     さまざまな問題を用意し、パソコンのネットワークを通じて一人一人の学力に応じた出題をして正確な測定につなげたり、各自治体の教育委員会の判断で試験日を柔軟にしたりするといった新たな取り組みも検討する。記述による解答以外は採点も容易になる。結果をより早く学校現場に戻し、授業の改善などにつなげる効果も期待される。

     詳細は今後、教育の情報化を進める省内の「GIGAスクール実現推進本部」などで詰める。全面移行前の22年度には試行調査を想定している。

     学力テストを巡っては近年、自治体や学校間の競争の過熱化が問題視されている。高知県土佐町議会は昨年12月、「子どもたちはテスト漬けの状態。教員も分析と対策に追われている」とし、対象学年全員ではなく一部が受ける抽出方式に改めるべきだとする意見書を採択した。テスト方式の切り替えに合わせ、新たな対応策が打ち出されるかどうかも注目される。

     現行の学力テストは学力や学習状況を把握し、改善に役立てることを目的に07年度に開始。調査1回で約50億円かかり、経費に見合 う成果が見られないとの指摘もある。パソコン上で行う場合、問題冊子の輸送費などが不要となり、大幅な縮減が可能となる見通しだ。

     政府は、パソコン「1人1台」の23年度までの達成に向け、公立小中では1台につき4万5千円を補助するなどとし、19年度補正予算に関連経費2318億円を計上している。


    【解説】過熱競争見直す機会に

     文部科学省が全国学力テストをパソコン上での実施に切り替える方針を固めた。紙の制約がなくなることで、出題の多様化など新たな可能性が開けると省内の期待は高い。一方、得点を巡る自治体や学校間の競争は過熱化しており、テスト方式の切り替えを過度な競争に歯止めをかける機会にすべきだ。

     「学力日本一を維持することが、教育現場に無言のプレッシャーを与え、教員と生徒のストレスの要因となっている」。福井県議会では 2017年12月、県の教育行政の在り方を見直すよう求める意見書を採択した。

     福井県は学テの成績で全国トップクラスを誇る。しかし、同年3月に同県池田町で中2男子が自殺し、町の調査委員会は教員の厳しい指導が原因と判断。これを受けた意見書には、学テの結果の偏重に警鐘を鳴らす言葉が並んだ。

     福井県に限らず学校現場では点数を上げるため、テスト前に過去間を何度も練習させるような取り組みが広がっているとされる。本来の授業時間を圧迫しているケースもあるという。

     文科省も過度な競争に警鐘を鳴らしながらも、都道府県別の平均点を公表し、事実上あおっている実態がある。実施方式の大きな変 更に当たっては、学力テストがもたらすひずみを直視し、改善策を合わせて示していくことが求められている。


    「パソコン方式」に変更したところで学テのもつ問題は何ら解決されるものではないだろう。「GIGAスクール」構想実現を各自治体に脅迫的に迫るような形での「パソコン方式」導入に思える。大学入試改革もそうだったが「改革のための改革」を、本当に必要があるのかという問いを不問して、行っているように見える。補正予算で2318億円の予算を計上しそれが可決されたのだけれども、「1人1台」を実現するためには計上された予算以上の費用が追加的に必要となるとの議論もある。先の見えないアベノミクスのために、無理やり需要を喚起するとした問題だろう。教育への投資になにが有効なのかを議論すべきだ。


    1月29日 連合・経団連トップ会談 目標同じも手法隔たり

     連合、経団連のトップが会談し、2020年春闘が28日、事実上スタ,トした。連合は7年連続でベースアップ(ベア)を要求、経団連もベアは選択肢になり得ると応じ、賃上げの勢いを維持したいとの認識は共通する。だが、その在り方を巡っては同床異夢。連合は格差是正を訴え、経団連は日本型雇用の見直しを提起したが、それぞれ思惑に隔たりもあり、今後本格化する交渉は予断を許さない。

     「立場の違いはあってもある意味で認識を共有している」。経団連の中西宏明会長は会談後、報道陣に友好ムードを強調した。連合の神津里季生会長も同様の考えを示した。中西氏によると、会談では過去20年、国内で賃金水準が低迷してきたことに双方が同意する場面もあったという。

     ただ、基本給を引き上げるベア2%と定期昇給分で計4%の賃上げを統一要求する連合に対し、経団連は21日に発表した「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」で、賃上げ配分について年齢や勤続年数より、業績・成果分を手厚くすることを「適切な手法」と主張。企業ごとに業績のばらつきが大きいとして、春闘のような業種横並びによる集団的賃金交渉を「実態に合わなくなっている」とした。連合は反発する。

     中西氏は会談で、年功序列や終身雇用を柱とする日本型雇用の見直しも提起した。会談後にあった労使フォーラムでも、コマツの大橋徹二会長が「自社型雇用の仕組みを各社が考える必要がある」と指摘、ITなどのデジタル化で変革が進む業界では、日本型雇用が実情に合わなくなるとの考えを示した。

     連合は中小企業や非正規労働者の場合、日本型雇用が確立していないと反論。神津氏は「見直しということだけが独り歩きすると、日本がしぼんできたという私の懸念を助長しかねない」とけん制した。

     一方、連合は今春閥で中小、非正規の労働者の賃金を引き上げる格差是正を要求の柱とする。その手法として、毎年政府が改定する最低賃金とは別に、企業ごとに「企業内最低賃金」に関する協定を労使で結ぶことを重視。最低額を初めて時給1100円以上と設定した。

     だが、経労委報告は「影響は締結した企業にとどまらない可能性があることに留意が必要と、他企業の人件費も増やしかねないとの懸念を示した。交渉は厳しさが予想される。


    全国一律の最低賃金引き上げは緊急課題なのだが、連合が提起する「企業内最低賃金」はその一里塚としては意味がある。大手の労働組合が「自分たち」の企業に働く非正規労働者へ目を向けることになれば良い。


    1月28日 相模原事件公判 逃走決意後無差別襲撃

     相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月に入所者ら45人を殺傷した罪に問われた元職員植松聖被告(30)は27日、横浜地裁(青沼潔裁判長)の裁判員裁判第9回公判で、相手を選ばずに刺した人もいたと明らかにした。これまでは「意思疎通できない人を刺した」と説明していたが、「(確認する)時間が足りなかつた」などと述べた。

     検察側の被告人質問で答えた。無差別に襲ったのは、逃走を決意した後。通報を恐れた一方、それまでに刺した人数が少ないと思ったため、意思疎通可能かどうかを確かめずに刺したという。

     さらに、被告が知っていた利用者で、便を手で触る人に抵抗された際は「汚れるから(刺すのをやめた)」。検察官に「人の役に立ちたくて実行したのに、汚いからやめたのか」と問われると「殺す対象だが、全ては殺せない」と開き直った。

     女性職員が夜勤に就く居住棟を最初に狙った理由を尋ねられると、「鍵を奪いやすいと思った」と説明した。殺傷行為を続けながら連れ回した女性職員に「(入所者にも)心があるんだよ」と諭された際は「犬と猫もそうだろ」と反論したという。 ,

     園で働く中で驚いたことを聞かれると、他の職員の態度を挙げた。入所者への命令口調や、流動食を無理に口に流し込むのを目にしたとし「人として扱っていないと思った」。2、3年すると被告自身も人間でないと思うようになり、「動物と同じ。しつけるのに鼻先を小突いた」と話した。

     弁護側の被告人質問では「裁判で言いたいこと」を尋ねられ、「匿名裁判は重度障害者の問題を浮き彫りにしている」と主張。「大麻の使用によって思い浮かんだ一番良いアイデアは何か」といる質問には「重度障害者を殺害した方が良いということ」と答えた。


    やまゆり園での職員の働き方が被告人に一定の「障害者観」を醸成した可能性があるように思える。


    1月26日 【市長選特集】 働き方改革や業務支援員増 追いつかず

     午後7時、教員が職員室の電話のボタンを押すと、自動音声の対応に切り替わった。「本日の対応は終了しました」。京都市右京区の西院小。職員室にはまだ約20人の教職員が残り、翌日の授業の準備などにあたっていた。

     先進国でも突出する日本の教員の長時間労働が問題となっている。京都市もここ数年で学校現場の働き方改革を進めてきたが、文部科学省が目標に掲げる「残業は月45時間以内」の達成はまだ遠い。市教育委員会は出勤・退勤時間を記録するシステムを2019年度から導入。昨年1月からは、市内の小学校で夜間の電話応対が長時間勤務の一因として原則午後7時で終えることを決めた。

     さらに西院小では独自に時間割や行事、部活の見直しを進めているが、國重初美校長は「午後9時ごろまで多く残っていた数年前に比べると早く帰るようになったが、残業を月45時間以内にするのはまだ厳しい。もっと教員の意識改革を進めたい」としつつ、「専科教員の配置などがもっとあれば…」とも話す。

     教職員が多忙な理由はさまざまだ。授業の準備、児童への指導、保護者への対応…。さらに4月からは新学習指導要領の導入で外国語が小学校高学年で教科化されるなどし、3年生以上で授業時数が年35こま増加する。プログラミング教育実施の準備にも追われる。

     そこに市数委独自の施策も多忙化に拍車をかける。市教委は年間授業日数を06年度から従来より7日増やして「205日以上」にしており、全国平均よりも2日ほど多い。

     市教委は「行事や学級閉鎖などを見込んで余裕を持たせている」とするが、教員からは「行事の精選をもっと進めるべき」との声が漏れる。小学1年からの英語活動や小学4年からの長期宿泊学習など、市教委が力を注ぐ取り組みも一方では教員に重くのし掛かる。

     負担を軽減するために市教委は、教員の業務を支える「校務支援員」や「スクールサポーター」「総合育成支援員」などを増員してきたが、支援が必要な子どもの増加などに追い付いていないのが現状だ。

     19年度の市一般会計予算に占める教委所管分は、13・7%にあたる約1093億円。近年は観光振興予算が増える中、教育費は伸びていない。市教委の幹部からは「観光PRにお金を使うなら教育に回してほしい」とのぼやきも聞かれる。

     20年度の教職員採用では、志願者数が10年度採用と比べ約15%減の1798人だった。「ブラック職場」との批判が高まる学校現場へ、就職をためらう学生も増えつつある。教員の負担軽減と教育の質の保障をどう両立するか。ある現職の市立学校教員は「教育費は未来への投資。手厚「くすべきだ」と指摘し、市長選の各候補者の主張を注視している。


    市教委(事務局)が現場の実情をどう捉えているのか疑問はある。少なくとも教員の勤務時間を正確に把握するという姿勢が希薄なように思える。また、業務についての軽重の検討も十分出来ているとは言い難い。市民サービスとしての教育に力を入れるという方向なのだろうが、教員が疲弊していけばそのサービスの質も低下することは議論の余地がないはず。


    1月22日 経団連 脱「終身・年功」鮮明に

     経団連が新卒一括採用、終身雇用、年功序列賃金に代表される日本型雇用慣行の見直しに本腰を入れ始めた。人工知能(AI)時代に適した人材の確保などが狙いだが、労働組合側には戸惑いもあり議論は難航必至だ。

     「世界と競争していくとき、とんがった人材も入って会社が変わっていかなければ、生き残れないんじゃないか」。経団連の大橋徹二副会長(コマツ会長)は21日の記者会見で、経営側の危機感を強調した。2020年春闘への対応指針として同日公表した経営労働政策特別委員会(経労委)報告は、慣行打破への決意を鮮明にした。

     背景にあるのは、AIをはじめ経済のデジタル化や国際化といった急速な環境変化に対し、新卒を職場や社内研修で育てる従来のやり方では間に合わなくなっているという現実だ。必要な技術を持つ即戦力を国内外から採用するには、日本型とは異なる雇用や賃金体系への改革が不可欠との認識が各産業に広がる。

     電機業界では、グーグルなど「GAFA」と呼ばれる米IT企業などとの人材獲得競争が激しさを増している。NECや富士通は優秀な技術者を獲得するため、若手でも1千万円を超える報酬を得られる制度を導入する方針だ。

     トヨタ自動車グループでつくる全トヨタ労働組合運合会の鶴岡光行会長は、終身雇用を維持するのは「当然」としつつも「それに甘えてはいけない」と自戒する。

     ものづくりの現場ではロボットなど先端技術の導入が相次ぎ、従業員が担う仕事は変わりつつある。全トヨタ労連は、新たな業務への挑戦などを通じ、労組側や従業員が自ら雇用を守る取り組みが重要だと訴える。

     ただ、日本型雇用が戦後続いた経済発展を支え、多くのサラリーマンやその家族、さらに社会全体の安定に寄与してきたこともまた事実だ。

     電気メーカーの労組でつくる電機連合の幹部は「会社は全員が4番バッターではない。目立たないところで組織を支えている人たちにも安定した賃上げで報いる必要がある」と強調する。今春闘でも、ベースアップ(ベア)による全体の賃金水準の底上げを従来通り目指す方針だ。

     慣行見直しの議論が一足飛びに解雇規制の緩和に及ぶことには世論の反発が大きい。経団連の大橋副会長も「今のところは考えていない」と語るが、経団連が目指す終身雇用の見直しや人材の流動化は、企業がリストラしやすい環境の整備につながる側面がある。

     三菱UFJリサーチ&コンサルテイングの小林真一郎主席研究員は「長年意識に染み込んだ慣行を変えるのは容易ではない。人件費の総額を増やしつつ配分の仕方を変えるなど、労使双方にメリットのある形で変えなければ受け入れられないだろう」と指摘した。


    「日本型雇用慣行の見直し」は高度経済成長が終焉した時から財界の希望でもあった。政治的には新自由主義がそれに対応していたといえる。しかし実のところ「日本型雇用慣行」が浸透していたのは大企業と公務員の世界であったとの指摘は多くある。そこから零れ落ちる人たちに生活は非正規・非婚・貧困など、吉川 徹「日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち」 (光文社新書)にも詳しい。加えて言うなら高収入と引換に長時間労働規制を排除する「高度プロフェッショナル制度」の拡大や正規雇用の更なる削減(解雇の自由)がセットとされる可能性が強いという懸念がある。「日本型雇用慣行」に守られている労働者だけの問題ではなく、日本の雇用と労働の問題、ひいては高度経済成長の成功体験のみに依存する現政権の問題でもある事を見ておかなければならない。


    1月19日 センター試験 徹底した公平性

     55万人以上の受験生が志願した大学入試センター試験が18日、2日間の日程で始まった。1990年から続いた制度は今回が最後。後継の大学入学共通テストの目玉だった英語民間検定試験や国語・数学記述式問題の導入が、格差拡大や採点ミスの懸念などから強い批判を浴びて見送られたこともあり、センター試験が問題の質や公平性の確保を徹底してきたとして改めて評価されている。

     全国規模の大学入試は、センター試験の前身で国公立大が対象の共通1次試験にさかのぼる。マークシート式に「鉛筆を転がしても正解できる」との批判は今もあるが、センター試験では約2年前から問題作成に入るなど質の確保に注力。東北大の倉元直樹教授(テスト学)は「練られた出題で、多様な学力を測るエ夫がある」と話す。

     「受験生の人生を左右する責任感を持ち、ミスなく公平な試験を行うことが当たり前だという前提があった」。大学入試センターの荒井克弘名誉教授は副所長も務めた組織の風土を表現する。

     象徴的な例は2006年に始まった英語のリスニング。共通1次時代から検討が始まったが、教室にラジカセなどを置く方法では座席で聞こえ方が遼う。ICプレーヤーが安価になり、全員に配布できるようになってようやく実現させた。

     それでも初回は、音が聞き取れないと機器の不具合を訴える受験生が続出。荒井氏は「パーフェクトだと自信を持って臨んでも予想外のことは起きる」とし、受験生が50万人を超える試験の運用の難しさを指摘する。

     「センター試験は採点ミスがゼロだから、誰も心配していない」。昨年12月上旬、共通テストを巡る国会のヒアリング。野党議員が記述式導入の問題点を際立たせるために口にしたのは、センター試験への信頼だった。

     記述式は思考力や表現力を問うのが狙いだが、答案は多様になる。民間業者が集めた学生アルバイトらが、50万人超の答案を公平にミスなく短期間で採点できるのかという懸念は消せなかった。

     英語民間試験も、最高で1回2万5千円を超える受験料に伴う経済格差や、離島やへき地の受験生にとって最寄りの試藤会場が限られる地域格差に批判が集中した。

     導入見送り前の萩生田光一文部科学相は「初年度は制度向上期間」「自分の身の丈に合わせて頭張って」などと発言。新テストの目玉の維持を優先し、公平性確保はできる範囲で構わないという文科省の「本音」がにじんでいた。学校現場などは反発を強め、最後は挫折に追い込まれた。

     「共通テストは複数の文章や図表から情報を読み取らせるなど、出題が大きく変わる。入試改革の本丸はこちら」。入試センター関係者は語るが、マーク式の工夫だけなら新テストと銘打つ意味は乏しい。文科省は国数への記述式導入は事実上諦めたものの、英語は24年度に新形式の試験の実施を目指すとしている。



    1月18日 相模原事件(続報) 「俺がやる」殺傷ほのめかす

     相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(29)の裁判員裁判第5回公判が17日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれ、証人尋問が行われた。事件当時に交際していた女性は、被告から「俺がやる」と事件をほのめかされたと証言した。

     園の近くに住む男性は、事件が起きた16年7月26日未明、被告が男性宅前に車を止めた際、「普通に会話した」と言い、薬物の影響など不審な点はなかったと答えた。

     女性は、被告や傍聴席から見えないように遮蔽された状態で証言。被告は14年の段階では「散歩している入所者を見て『あの人はか わいい』と楽しそうに話していた」が、翌年には「あいつら人間じゃない」と否定するようになった。

     女性は変化の理由を「重度障害者とコミュニケーションをとるのが難しく、給料も安く、何のために仕事をしているのか見えなくなってしまったのだと思う」と述べた。

     事件をほのめかされた女性が「刑務所に入ることになる」と指摘すると、被告は「世間が賛同して出てこられる。俺は先駆者になる」と反論したという。当時、米大統領選の候補に挙げられていたトランプ氏に興味を持っていたといい、女性は「過激な発言で称賛を浴びる世間の反応をみて、自分もその中に入りたい思いがあったのではないか」と振り返った。

     弁護側は被告の大麻使用を止めなかった理由を質問。女性は「言っても聞き入れないし、言うと無理やり勧められるかもしれない」と説明した。


    早計な理解は慎まなければならないが、施設で働いていた1年間の間に、障害を持つ人たちに対する考え方に変化があったのではないだろうか。また、「かわいい」との判断基準をその期間の間に修正される事はなかったのだろう。自分を基準に「他者」を評価するという傲慢さは誰でもが持っているのだが、それを相対化する機会が被告人にはなかったのだろうか。


    1月18日 厚労・文科調査 大学生内定率 微減も高水準

     厚生労働、文部科学両省は17日、今春卒業予定の大学生の就職内定率が昨年12月1日時点で87・1%だったと発表した。この時期では、過去最高だった前年発表の87・9%から0・8ポイント下がったものの、調査を始めた1997年春卒以降、2番目の高水準となった。

     男女別では男性85・8%、女性88・6%。文系が86・9%、理系が88・1%だった。地域別では北海道・東北地区が89・0%と最も高く、関東88・7%、近畿88・3%と続いた。最も低かったのは中国・四国の81・4%。前年同時期に比べ、北海道・東北と九州は上昇、それ以外は低下した。

     大学生の内定率は全国の国公私立大から62校を抽出し、対象の学生に聞き取りをし調べている。

     一方、厚労省が17日までにまとめた高校生の内定率は昨年11月末時点で88・0%(前年同期比0・6ポイント減)だった。学校やハローワークからの職業紹介を希望た生徒が対象。同時期としては2010年3月卒がリーマン・ショックの影響を受けて68・1%となって以降、上昇傾向にあったが、今回は大学生と同様に微減だった。


    多くの学生に内定が出るのは将来に対する希望がもてる環境の一つだ。しかし、現実には非正規社員や職員として働かざるを得ない人たちはほとんど減少していない。どうのような労働環境で働く事ができるかも大きな問題だし、トラブルを抱えたときの相談先が充実する事と大学、高校での「普通職業教育」(少なくとも労働者を守る法制度を教えること)が必要。


    1月17日 府内私立中 志願者倍率3.8倍

     京都府私立中学高等学校連合会では16日、2020年度の府内私立中入試について志願状況の中間まとめを発表した。全24校の平均志願者倍率は3・8倍と前年度から0・1ポイント上がり、志願者の増加傾向が今年も続いた。

     24校の内訳は南部23校、北部1校で、総募集人員は前年度と同じ2429人。総志願者数は120人増の9167人だった。志願者倍率はこの10年では最高で、20年度は1994年度(3・8倍)並みとなった。

     倍率が最も高かったのは東山の後期ユリーカコースの33・4倍(前年度31・2倍)で、定員12人に401人が志願した。次いで東山の前期Aユリーカコース21・0倍、同志社女子の一般後期17・2倍、同志社国際12・0倍と続いた。

     同連合会の北村聡会長は志願者の増加について「各校が特色を鮮明に打ち出していることに加え、府の修学支援事業で私立高の授業料が減免されるため中学から私立を志願する人も多い」と話した。入試は18日から始まる。



    1月11日 相模原事件(関連) 不適切拘束の疑い複数

     神奈川県立障害者施設「津久井やまゆり園」の後継2施設の運営主体見直しを巡り、同園の支援実態を検証する委員会は10日、県庁で初会合を開いた。昨年12月時点の利用者について過去5年分の支援記録を調べる中で、不適切な身体拘束が疑われるケースが複数あったと指摘した。

     検証委は非公開で行われた。終了後に会見した委員らによると、会合では入所者を施錠した部屋に長時間閉じ込める事案を2件確認。「身体拘束の要件と照らし合わせ、必要性が疑われる」とし、今後詳しく調査する。行動を制限する手袋をはめたり、車いすをベルトで固定したりする手続きもみられ、各利用者の症状などに応じた適切な支援だったか慎重に調べる。

     会見で、委員長に就いた国学院大教授で弁護士の佐藤彰一氏は「利用者が人間らしい生活を送れているか、福祉の観点から検証する」と強調。元毎日新聞論説委員の野澤和弘氏は「被告のゆがんだ障害者観は、福祉現場で働く中で形成されたのではないか」との見方を示し、「根本から検証していきたい」と述べた。

     黒岩祐治知事は報道陣に「検証によって県のこれまでの対応も問われる。課題を全部洗い出してもらう」と語った。

     検証委の指摘を受け、同園の入倉かおる園長は神奈川新聞社の取材に、「職員も拘束要件を意識するよう心掛けている。委員会から指摘があれば、当時の状況を改めて振り返る」と語った。(神奈川新聞)


    植松被告人の犯罪を弁護する余地はない。しかし、彼がどうして「生産性のない人間」を殺害してもよいと考えたかを明らかにする必要はある。検証委員会の報告を待ちたいし、裁判においてそうした背景にまで迫れることは相当難しいかもしれないが、せめて被告人の口からわずかでも謝罪を込めて語って欲しい。


    1月11日 埼玉の男性教員 働き過ぎ教員℃タ態知って

     公立学校の長時間労働をなくしたい―。教員の働き方改革がも注目される中、埼玉県の小学校教員田中まさおさん(仮名・60)が「定額働かせ放題」と批判される教員の給与や労働の在り方を疑問視し、残業代を同県に求める訴訟をさいたま地裁に起こしている。田中さんは京都市内で取材に応じ「自分たちの世代で現状に歯止めをかけたい」と訴えた。

     ―訴訟の状況はどのようになっているのか。

     「2017年9月から18年7月の間の残業代約240万円を支払うよう県に求めて18年9月に提訴し、昨年12月に6回目の口頭弁論があった。県教委は教員の時間外勤務を原則禁じている給特法(教職員給与特別措置法)を前提に『校長は時間外勤務を命じたことはなく、超過勤務は教員が自主的・自発的に行っている』として残業の存在を否定している」

     ―提訴した理串を聞きたい。

     「訴訟を通じて教員の働き方の実態に社会の目を向けてもらいたいと考えた。教員による長時間労働や賃金に関する訴訟はこれまでも京都市などであったが、訴えられた教育行政側は今回の県と同様に主張し裁判所もその主張を認めてきた。そのため長時間働いても残業代が支払われない状況が今も続いている」

     ―問題はどこに。

     「実際の教員の仕事は職員会議や校長の指示で生み出されていることが多く、自発的とは言えない。勤務時間内に終わらない仕事があるのは超過勤務を命じられているのと同じだ。教員がいくら働いても残業代を払わなくてもよいという枠組みの下で業務が肥大化してきた歴史もある」

     ―定年直前の提訴だが。

     「公立学校でうつなど精神疾患による休職者は全国で5千人前後と高止まりし、私の周りにも過労で心身を病んだ同僚や仕事で出産を諦めた教員がいた。これほど厳しい状況なのに教員の声に耳を傾けてこなかった司法判断には納得できないし、自分の世代で長時間労働を終わりにしなければという使命感で定年を機に提訴することにした」

     ―提訴後の変化と現在の思いは。

     「弁護士と2人で闘い始めたが、働き方改革への関心が高まる中、多くのメディアで取り上げられ、法学者や教育学者らも支援してくれるようになった。賛同の輪が広がることを通じて、教員が自分の仕事や暮らしに夢を持ち、豊かな教育ができるような社会になることを望んでいる」


    京都の教員は 休憩取れず 11時間以上勤務

     教員の一日とはどのようなものか。京都府内の教員3人に業務の時間と内容を聞くと、休憩が取れないまま11時間以上働いている実 態が浮かび上がった。過労死ラインとされる月80時間以上の残業を続ける教員もいた。

     京都市の20代小学校教員は11時間半程度の労働が常態化していた。所定勤務時間は午前8時35分5午後5時5分だが、実際の勤務 は午前7時半〜午後7時。仕事を間断なくこなし、自身の休憩時間が何時から何時に設定されているのか知らないという。有給休暇は消化できていない。

     行事の多い高学年を担任する府南部の30代男性教員の労働時間は12時間以上。「朝は登校指導、授業後は行事や研究発表の準備に加え保護者対応と任事がいつも山積みで、給料は割に合わない。児童の成長だけがモチベーション」と話す。午前6時半に家を出て、帰宅は午後8時半以降。家族を犠牲にしていることに罪悪感を抱いている。

     府南部の40代中学校教員は平均11時間働いている。以前はトラブルの多い学校で生徒指導を担当し、部活動での朝練習指導、休日出勤もいとわなかった。だが疲れが取れず睡眠障害になったため、現在は負担が大きい仕事は引き受けないようにしている。

     文部科学省の2016年全国調査によると、教員の1日当たりの平均学内勤務時間は06年調査よりも増加し、小学校教諭で11時間15分、中学校教諭で11時間32分。教頭や副校長は小中いずれも12時間を超える。小学校教員の33%、中学校教員の57%が、月80時間以上の時間外勤務をしているという。


    一時給特法の問題点が国会でも盛んに取り上げられた。馳浩文科大臣(当時)は野党の勤務実感管理が行われていない違法性について質問された「匕首をつきつけられた」との感想を漏らし、教員の勤務の実態の違法性を認識していることを表明した。しかし、改正給特法によって問題点は隠蔽され「1年間の変形労時間制」を導入することで収束がはかられている現状だ。かつて、給特法成立以前にも超勤手当支払の訴訟が全国的に起こり連続的に国側が敗訴してきた。当時は教員組合が先頭に立って訴訟を牽引していた経過があった。しかしそれ以降、愛知県などでの訴訟はほとんどが個人が担うという形になっている。地下水が染み出すようにこうした訴訟が継続されれば給特法そのものの廃止に繋がって行くかもしれないのだが先行きは不透明だ。まずは、行政(とりわけ市町の教育委員会)がこの実態をどう改善するかということに積極的な姿勢を示すことが必要だろう。


    1月11日 新春経済講演会 永森氏 人材育成力説

     京都銀行などが主催する新春経済講演会が10日、京都市左京区のみやこめつせで開かれ、日本電産会長で京都先端科学大学(旧京都学園大)を運営する学校法人理事長の永守重信氏が人材育成をテーマに講演した。永守氏は日本の大学教育の在り方を批判し、潜在能力やモチベーションを伸ばす教育の重要性を力説した。

     永守氏は2018年3月に学校法人理事長に就任し、大学経営に乗り出した。講演では「会社を創業してからいまだに解決しない問 題が人材だ」と指摘。偏差値による大学の序列化を批判し、大学教育に対して「英語がしゃべれない、専門も身に付いていない」など と問題点を列挙した。

     グローバル企業のトップとして「最大のライバルは中国。日本に比べ5倍速で、このままでは勝てない」と警告し、中国(企業の経営や事業のスピードを説明した。その上で「全ては人材教育だ。とてもエネルギーがいるが、命を懸けて働いてくれる社員を育てる」 と決意を語った。

     氷守氏は「京都駅前にビジネススクールを作りたい」と、経営者の養成校を開設する構想も披露。「最初は何でも夢から始まる。若者に夢も理想もないから、世の中が閉そく感にさいなまれている」と強調した。

     講演会には企業経営者ら約4千人が参加した。学習院大国際社会科学部の伊藤元重教授も登壇し、経済の先行きを「何となく居心地はいいが沈滞していた状況から、変化の時代に戻る」と予測。「変化をチャンスとしてとらえることが重要だ。人材や経営の持続性、技術といった問題にアンテナを張っておいてほしい」と語った。


    経済界からの教育批判は常にある。その論拠には一理ある。しかし「命を懸けて働いてくれる社員」を望むのは時代錯誤である事も指摘しなければならないだろう。ホワイトカラー・エグゼンプションに見られるような働き方は到底受け入れられない。ディセント・ワークを前提とした上での大学教育・研究を展望することでなければ、新しい時代の教育論とはいえないだろう。


    1月9日 相模原事件 殺傷事件審理の焦点、識者に聞く

     相模原市の知的障害者研施設殺傷事件で殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(29)の裁判員裁判初公判に際し、脳性まひの当事者で医師の熊谷晋一郎・東大准教授と、被告との接見を重ねてきたフリーライターの渡辺一史氏に審理のポイントを聞いた。


    少しでも本心語って

     事件直後、車いすで通勤中に行き交う群衆に恐怖心を抱く自分がいた。幼い頃にリハビリで感じた無力感や怒りも思い出した。介助者と障害者の間には圧倒的な力関係がある。言い換えれば、暴力に転じうる潜在的なリスクがある。私たちは健常者との間で情み上げてきた信頼関係の上で生活しているが、事件は潜在的な恐怖心をよみがえらせた。

     障害者差別解消法施行直後に起きた事件。半世紀の障害者運動の達成という点で重要な時期だったが、積み上げてきたものは何だったのだろうと、立ちすくむような感覚だった。

     あれから3年が過ぎ、人々の認識の中で事件が薄らいでいるのは事実だが、一方で事件と「地続き」の暴力は日々、再生産されている。元農林水産事務次官の長男刺殺事件では、長男に発達障害があったことで情状酌量を求める声が出た。障害という単語が加わるだけで親に同情する点に危機意識がある。

     司法には出来事の意味を解明する機能もある。被告がなぜ事件を起こしたのか、起こさざるを得なかったのか。「植松をして殺させた」という周りの環境はなかったか。社会がどのように事件を受け止めるべきか明らかにすることも期待される。そのために裁判では、「数センチ」でもいか.ら本心を語ってほしい。

     くまがや・しんいちらう 1977年、山口県生まれ。医師。新生児の後遺症で脳性まひに。「当事者研」が専門。


    不寛容見直す契機に

     多くのメディアが植松聖被告と面会し周辺取材を積み重ねてきた。私もその一人だが、人間像に迫る上で依然として解明できていないのが、本人が□を閉ざし語ろうとしない成育歴、とりわけ両親との関係についてだ。 ,

     裁判の争点は、犯行に至った経緯と刑事責任能力の有無になるだろうが、審理の過程で、これまでに実施された精神鑑定の内容の一 端が示される可能性が高い。周辺取材では明らかにできなかった家族関係や幼少期の体験など、人物像を理解する上で重要な鍵が明かされるのではないかと期待している。

     もう一つ考えなくてはならないのは、人の価値を「生産性」という物差しで測り、「命の選別」さえ仕方ないとする風潮が強まる今の日本社会についてだ。植松被告は今なお「意思疎通できない障害者は安楽死させるべきだ」との主張を変えていないが、この思想は世の中にまん延する風潮を取り込み、凝縮して形作られたのではないか。裁判を通し、この不寛容な社会全体を見つめ直す契機になればいいと思う。

     わたなべ・かすふみ 1968年名古屋市生まれ、札幌市在住。著書に、難病の筋ジストロフィーを患いながら自立生活を送る男性と介助ボランティアの交流を描いたノンフイクシヨンコ「こんな夜更けにバナナかよ」などがある。


    障害を持つ人たちと共に生きることを多少なりとも考えてきたものとして、大きな衝撃だった。事件当時、「内なる優生思想の克服」ということばが盛んに飛び交ったことを思い出す。しかし、「内なる」ものの克服が差別を解消するのかという疑問は未だに解けない問題としてのことっている。勿論差別はない方がいいに決まっている。しかし、言葉を獲得した人間にとって差別はついて回る影のような存在だとしたら、それをどう乗り越えるかは大きな課題でもある。