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  • 連載9回 教室にてつがくを
  • 小学校いじめ認知初の1万件未満に.28
  • 事件公表拒否.28
  • 自殺の予見可能性再認定.28
  • 方針一転異例の「号令」.28
  • 感染防止へ実効性不透明.29
  • 教諭いじめ 2人懲戒免.29
  • 2月29日 神戸市教委 教諭いじめ 2人懲戒免

     神戸市立東須磨小で教諭4人が同僚をいじめていた問題で、市教育委員会は28日、加害者のうち蔀(しとみ)俊教諭(34)と柴田祐介教諭(34)を免職とし、女性教諭(45)を停職3カ月、男性教諭(37)を減給10分の1(3力月)とする懲戒処分を発表した。

     パワハラのあった芝本力前校長(55)が停職3カ月、市教委への報告が不十分だった仁王実貴校長(55)が減給10分の1(3カ月)となるなど計8人が処分された。

     弁護士による調査委員会が21日にまとめた報告書は計125項目の嫌がらせを認定。蔀教論ま被害者の男性教諭(25)に「くず」「死ね」と暴言を浴びせ、無理やり激辛カレーを食べさせるなど89項目、柴田教諭は児童の前で殴るなど34項目がそれぞれ認定され、最も重い処分となった。

     停職の女性教諭はカレー強要のほか「ポチ」と呼ぶなど13項目、減給の男性教諭は足を踏むなど7項目だった。この2人を市教委事務局に異動させて当面は子どもの指導から外し、市教委がハラスメント研修を実施して授業こ復帰させるべきか判断する。

     芝本前校長は被害者に「俺を敵に回していいんか」と発言し、報告書で「前校長の姿勢自体が(いじめの)原因の一端」と指摘された。

     記者会見した市教委は社会に与えた影響や管理職の責任を考慮して処分の重さを決めたと説明。長田淳教育長は「教育行政の信頼回復に全力を挙げる」と述べた。自身は報酬の20%を3力月自主返縛する。

     加害者4人は昨年10月1日から有給休暇扱いになった後、同31日に分限休職処分となり給与が差し止められた。

     また、昨年末に市教委事務局が調査委へ重要な資料を提出し損ねて報告書の完成が遅れたとして、教職員課長(50)を戒告とするな ど6人を処分した。


    兵庫教育大の川上泰彦准教授(教育行政学)の話監督責任踏み込む

     加害者の教諭4人の処分については弁護士による調査委員会の報告書に基づく内容で妥当といえる。校長や市教育委員会の管理監督責任にも踏み込んでおり評価できる。ただ、懲戒処分を決める前に、有給休暇扱いだったことが市民の批判を招いたとして、条例を改正 してまで加害者の給与を差し止めて分限休職にしたのは拙速だったと感じる。神戸市は、市民感情に左右されるのではなく、懲戒処分を見据えて条例改正が適切かどうかを判断すべきだった。



    2月29日 新型肺炎一斉休校 感染防止へ実効性不透明

     新型肺炎の拡大を受けた政府による全国一斉の休校要請に、学校や保護者の間で1困惑が広がっている。「子どもをどこに預けるのか」「学習への影響は」。社会の受け入れ態勢が整わないままの性急な判断に、首長らも疑問の声を上げる。自治体の足並みはそろわず、感染防止の実効性が伴うかどうかは不透明だ。

     「政府の態勢ができていない段階で自治体に対応を迫っているが、本来はパッケージで出す話だ」。川崎市の福田紀彦市長は28日、記者団に政府対応を批判した。金沢市の山野之義市長も臨時記者会見で「周知や議論の期間があまりにもない」と不満を述べた。

     萩生田光一文部科学相は28日の会見で「全て答えを用意してからスタートした方が、混乱を避けることができるのではという思いもあった」と述べ、休校要請が事実上の見切り発車だったと認めた。ある文科省職員は「対象の子どもは1千万人を超え、保護者らも含めると影響人数は計り知れない。どこまで考えて決めたのか」と首相の判断を疑問視する。

     教育現場には、授業が途中で打ち切られることを懸念する声が強い。前橋市立桃井小の北爪喜久雄校長は「3掌期の学習内容がまだ終わっておらず、児童の学力を担保できない可能性がある」と心配する。

     教育研究家の妹尾昌俊さんは「両親が共働きだったり、ひとり親だったりして、子どもを十分フォローできない家庭もある」と指摘。「経済的事情で塾や習い事に通えない子どももいる。学習不足や家にこもることによるストレスといった不利益が生じないようにする必要がある」と話す。

     親の負担も深刻だ。母子家庭で、小学2年の息子を持つ大阪市東住吉区の女性(37)は「親を頼れず、他に預け先もない。休校になれば、仕事を休むしかない」とため息をつく。パートの勤め先は「休んでもいい」と配慮してくれるが、休業中の給与が補償される見込みはない。

     保護者の休暇取得などで、政府から協力を求められた企業にも戸惑いが広がる。在宅勤務が不可能港ドライバーを多く抱える大手運送会社の社員は「現場には男女を問わず子育て中の社員がいる。彼らが休めば、しわ寄せが他の人に及ぶ可能性がある。ただでさえ人手不足なのに」と漏らす。

     突然の政府方針は、共働きやひとり親家庭の小学生を預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)など、子どもを受け入れる側にも混乱をもたらしている。

     「政府の決定ほ性急すぎる。約1カ月もの間、人手が確保できるだろうか」と不安を□にするのは、石川県学童保育連絡協議会(金沢市)の河内久美事務局長。「消毒液もマスクも足りない。後方支援が望めない状況で開所しろと言われても無理がある」と語気を強めた。.

     子育て支援に取り組むNPO法人「フローレンス」(東京)の代表理事駒崎弘樹さんは「死亡者が多い高齢者の感染対策を優先させるべきで、科学的な根拠のない一斉休校は撤回すべきだ」と訴える。

     駒崎さんによると、ひとり親の約8割は働いている。そのうち半分以上は非正規雇用だといい「親が働けなくなると大幅に所得が下がり、生活が立ちゆかなくなる」と指摘。貧困世帯がさらに困窮しかねないとし「脆弱な環境にある家庭のことは政治家の頭にないのだろうか」と疵判した。


    元文科官僚・寺脇研氏1週間程度の周知必要だった

     政府による急な全国一斉休校の要請は学校の実態を無視しており、現場に大きな混乱を招いている。2〜3月は卒業式のほか、成績処理や入試など学校の1年を締めくくる重要な時期だ。安倍晋三首相は週明けからの休校を求めながら、方針を表明したのは木曜日の夕方ごろ。残る登校日は金曜日のみとなる可能性があり、徹夜で対応した教員もいると聞いている。せめて1週間程度の周知期間が必要ではなかったか。

     そもそも、新型コロナウイルス感染の広がりは各地で異なり、休校は地域ごとに規模や時期を判断すれば良いはずだ。文部科学省は各教育委員会などが休校しない判断をすることは排除しないとしているが、一斉休校の要請は事実上の命令と同じだ。反した行動によるリスクを考えれば、従わざるを得ないだろう。

     学校には、子どもの健康を守る「安全装置」としての役割もある。学校には養護教諭や校医がおり、手洗いうがいの指導をする。子ども同士が体を接触させる機会は、満員の通勤電車と比べればはるかに低い。学童保育や習い事などに通う子どももおり、休校自体にどれだけの感染防止効果があるのかは未知数だ。仕事を休めない家庭への影響などもどれだけ事前に検討されたのだろうかりこれほどの大きな要請にもかかわらず、首相官邸による見切り発車で行われた感が否めない。



    2月28日 新型肺炎 方針一転異例の「号令」

     安倍晋三首相が、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)拡大を受けて全国の小中高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請した。急速な拡大の瀬戸際とした専門家の見解に危機感を募らせた異例の判断。「対応が後手後手」(野党幹部)との政府批判を払拭したいとの首相の強い意向も透ける。イベント自粛要請に続く全国への「号令」には、国民に混乱を招きかねないとの懸念もある。

     「こうした措置に伴って生じるさまざまな課題に対しては、政府として責任を持って対応する」。27日夕、官邸で開いた新型コロナウイルス感染症対策本部会合で、首相は全国一斉の臨時休校を要請すると表明した後にそう言葉を付け加えた。「政府の責任」をあえて強調したのは、政府が主導して感染を抑え込む姿勢を示すためだ。首相は26日の感染症対策本部会合でスポーツやイベントについて中止や延期を要請したばかりだ。

     イベント開催や休校に対する政府の対応はここ数日で一転じた。25日に政府が発表した感染症対策の基本方針では、イベントについ て「全国一律の自粛要請を行うものではない」、休校についても「適切な実施について都道府県から(市町村など)設置者に要請する」との表現にとどまっていた。政府関係者は「経済や国民生活への影響を懸念した」と説明する。

     ところが、国内の感染者は増え続け、政府専門家会議は24日に「これから1〜2週間が急速な拡大か終息かの瀬戸際だ」と警鐘を嶋らした。首相は25日、周辺に「もっと明確なメッセージを出すべきだ。自ら発信するつもりだ」と伝えた。

     一斉休校について、官邸サイドから打診を受けた文部科学省幹部は「実施は困難」との考えを伝えていた。だが政権幹部によると、27日に首相が一斉休校要請を判断。同日午前から文部科学省の藤原誠事務次官ら幹部が官邸に何度も出入りし、調整に当たった。文科省内では一斉休校のニュースが流れると担当職員が総立ちになり「信じられない」との声が漏れた。

     急転直下の首相の判断には、政府の新型肺炎対応に対する批判の高まりがある。野党は「非常に手ごわいウイルスを相手に対応が後手後手に回っているのは明らかだ」 (志位和夫共産党委員長)とこぞって批判する。中国からの入国制限など水際対策を講じたものの、国内での感染を許したためだ。

     クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を巡っては乗客乗員の集団感染を招いたとの内外の批判も大きい。報道各社の世論調査では軒並み内閣支持率が下落した。首相周辺は「長期政権の安定性を示すためにも、首相には挽回したいとの思いは強い」と指摘する。

     だが一斉休校に対しても疑問の声が上がる。立憲民主党幹部は「子どもを預けられない人はどうするのか。対策を取っているとの姿勢を示すだけの対応だ」と疑問視した。

     自民党の閣僚経験者からも「こんな決定をしたら日本中が大混乱する。首相に翻意を促すべきだ」との声が上がる。首相の表明後、共働き世帯の保護者らからの苦情や相談が地元自治体に殺到していると聞いたといい「今回の『決断』が今後の政権運営に響かなければいいが」と顔を曇らせた」。


    識者のコメント

    感染地域に限らず驚き 長崎大熱軍医学研究所・森田公一所長(ウイルス学)の話

     新型肺炎は、高齢者の方が重症化するリスクが高いことが知られているが、子供も感染する。子供から、高齢者や地域に感染を広げる恐れがある。学校は感染拡大の場になりやすく、インフルエンザでも学級閉鎖をすることがある。社会への影響が大きいので、首相が感染の広がっている地域だけでなく、全国に要請したことには鷲いたが、休校は感染拡大防止に一定の効果があ る。

    自宅学習や待機の徹底を自治医大の田村大輔准教授(小児感染症学)の話

     学校は元々インフルエンザも含めて感染症が拡大しやすい環境にある。感染者が出ていない地域での休校措置は効果が不透明な部分もあるが、感染者の発生や急増を抑えられるかもしれない。ただ学校だけ休みになっても、子ども同士が遊びに行ったりすれば意味がない。自宅学習や待機を徹底するなど、むやみに外出をしないよう指導しなければ、拡大防止の効案が薄れてしまう。一斉休校で家庭への負担や学習の遅れといった問題も生じるため、フォローも必要になるだろう。

    前向きになれる説明を武藤芳照東大名誉教授(身体教育学)の話

     政府による全ての小中高校や特別支援学校への臨時休校の要請は聞いたことがなく、学校教育の歴史の中で大きな前例となるだろう。感染拡大防止には正解が見えず、休校はやむを得ない部分もある。だが、突然の表明は学校現場を混乱させるだけでなく、新型コロナウイルスの影饗による社会の閉塞感を加速させることも懸念される。抑制ばかりを求めるのではなく、その先の展望も示し、人々が前向きになれるよう丁寧な説明に努めることが今求められる政治の役割ではないのか。


    府・市教委方針

     新型コロナウイルスの感染拡大を受けて安倍晋三首相が突如表明した休校要請に対して、京都府と滋賀県、京都市の各教育委員会は27日夜、対応の検討を急いだ。

     京都府教委は幹部らを集め緊急会議を開いた。3月6日に予定している高校入試の中期選抜については府内の感染状況に大きな変化がない限り実施予定。府立中3校の卒業式は時間を短縮する方針という。橋本幸三教育長は「突然の表明には正直驚いている。政府の要請を踏まえた対応をする方向で、生徒や学校運営に対する影響を考慮しつつ最善の方法を考えたい」とコメントした。

     京都市教委は校長会役員と協議を行い、3月2日は通常通り登校日とすることを決めた。3日以降の対応については早急に検討するという。在田正秀教育長は「一人一人の子どもの居場所、安心・安全の確保、各家庭の状況など各学校で課題を確認して対応するには一定の時間が必要としている。

     滋賀県教委も緊急会議を開き、3月の卒業式や高校入試を予定通り行う方針を確認した。県立高校などの卒業式は、来賓や在校生の出席者数を減らしたり、式典時間を短縮したりするよう各校に求める。休校期間に必要な対応や、児童・生徒、保護者らへの注意事項などを検討しており、福永忠克教育長は「国の要請は重く受け止める。子どもたちの安全を一番に考え、判断していく」と述べた。


    新型コロナウイルスについてはよく分からない事が多いことは事実だろうが、敢えて言うなら「政治的な利用」ではないかと疑わざるを得ない。全国一律にする理由が定かでないことがもっとも大きな理由。加えて、在宅する子どもたちや家族がどうするのかの展望が全く示されていない。学童保育や保育所などは通常通りだそうだが、「濃厚接触」を防ぐことが目的なら終始身体的な接触が起こりうるそうした場は最も回避すべき場所だと考えれるが。また、子どもの見守りと称して繁華街へのパトロールを学校の業務とするようなところが出てくるならそれは本末転倒だろう。この間の安倍首相の「珍答弁」から「信頼」という言葉は生まれてこない。


    2月28日 大阪高裁 自殺の予見可能性再認定

     大津市で2011年に市立中2年の男子生徒=当時(13)=が自殺したのは元同級生によるいじめが原因として、遺族が元同級生らに計約 3800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判快が27日、大阪高裁で開かれた。佐村浩之裁判長は、元同級生2人に計約3750万円の支 払いを命じた一審判決を変更し、計約400万円に減額した。いじめと自殺の因果関係や予見可能性を認めた一審の判断は引き継ぎつつ、家庭で男子生徒を精神的に支えられなかった面もあると指摘した。

     判決は、事件がきっかけで制定されたいじめ防止対策推進法を引用し、元同級生らによる一連の加害行為について「同法にいう『いじ め』に該当することは明らか」とし、自殺との因果関係も認定。いじめと自殺の関係は当時から報道などで広く認知されていたとし、予見可能性もあったとした。

     男子生徒の家庭環境が自殺の原因で一連の加害行為は無関係、とする元同級生側の主張については「容易に認められない」と退けた一方で、「男子生徒は自ら自殺を選択した上、家庭環境が整っていれば回避できた可能性も十分に考えられる」として過失相殺を適用。 賠償額は、遺族側損害の4割を減らすなどにより減額した。

     昨年2月の一審大津地判快は「暴行などがエスカレートし、孤立感、無価感の形成に結び付いた」として、自殺といじめの因果関係を認めた上で、悪質ないじめが自殺に結び付くことは一般的に予見可能であるとする異例の判断を下した。元同級生3人のうち2人に対し、ほぼ請求通りの計約3750万円の支払いを命じ、元同級生2人は控訴した。控訴審は昨年8月に始まり、10月に第2回口頭弁論が開かれ、結審していた。


    いじめ問題の裁判に詳しい獨協大の市川須美子教授(教育法)の話過失相殺での取り上げ疑問

     いじめによる自殺の予見可能性が一般的にあると、高裁で認められたことは意義が大きい。ただ、家庭環境が自殺の原因ではないとしながら、過失相殺で取り上げることには疑問を感じる。問題がない家庭であっても、いじめを受けた子どもを支えきれず、自殺した例はあ るが、いじめの影饗が大きいことは間違いない。今回も家庭に特別に大きな問題があるとは思えず、重く判断しすぎているのではないか。今後、同種の裁判でも課題になってくるだろう。


    【インサイド】家庭のあら探し 誘発危惧

     いじめによる自殺の因果関係と予見可能性を認め、「画期的」とされた一審判決を引き継ぎつつ、家庭環境の不備を指摘して賠償額を減額した大阪高裁判決。遺族や代理人弁護士は、いじめ防止の観点から判決を評価する一方、今後、いじめ自殺が疑われる事案が発生したとき、学校や教育委員会は家庭のあら探しをすることになりかねない」と危惧を表した。

     高裁判決は、一審大津地裁判決同様に、ズボンをおろす▽筆箱をインクまみれにする▽連日強度の暴行を加えるfなどのいじめ行為を認めた。さらに「いじめ行為と自殺に相当因果関係がある」とし、いじめ行為を受けたら自殺に及ぶことは「一般的にあり得る」と予見可能性を明言した。

     しかし、高裁判決は「原因を家庭に求められない」とした一審判決と異なる判断をした。男子生徒の家庭環境や父親の体罰を理由に「精神的に支えられず、親として期待される役割を適切に果たさなかった」などとして、元同級生らの過失を相殺。過失割合を事実上「いじめ6割、家庭環境など4割」とし、賠償額を減額した。

     判決後の会見で、石田達也弁護士は「厳しくいじめを批判し、実質的な勝訴判決」との立場を崩さなかったが、子どもをきめ細かにフォローできない家庭もあるとし、「社会の実態を反映していない」と指摘した。

     男子生徒の自殺を機に成立した、いじめ防止対策推進法の施行から約6年半。施行後もいじめを苦にした児童生徒の自殺が全国で相次ぐ。自殺の予見可能性を維持した点では、判決の「いじめ防止」への意義は矢われない。父親は「金額よりも、因果関係や予見可能性を認めた点を重く見たい」としつつ、「100パーセント完璧な家庭なんてあるのか。(判決が)前例にらないか心配だ」と厳しい表情を見せた。


    いじめを裁判で決着させる事の難しさを示した裁判だろう。確かに「自殺の予見可能性」は大人の目からみればそうだろうが、当時13歳であった子どもたちにそれを求める事ができるのだろうか。判決の「迷い」もそこにあるように思える。ただ、いじめが自殺に直結するという「言説」が流布する事にないようにと思う。自殺に向かう道から生還している子どものたくさんいるのだから。そこに教育の役割があるのではないか。


    2月28日 横浜市教委 事件公表拒否

     横浜市立北綱島特別支援学校で昨年11月、全身不随の男子生徒(18)に暴行してけがをさせたとして、今月5日に傷害容疑で教諭の男が逮捕される事件があり、生徒の保護者が市教育委員会に繰り返し公表を求めたが「警察の捜査中で関係者の聞き取りができない。市教委独自の調査で処分を出すまでは応じられない」などと、拒否されていたことが26日、保護者や関係者への取材で分かった。

     保護者は「息子のつらい経験を世間に知ってほしかった」と不信感を募らせている。教育現場に不祥事を隠そうとする風潮があると指摘する識者もおり、「捜査中」を前面に出した安易な非公表の是非が問われる。

     関係者によると、教諭は昨年11月19日、トイレでふいに生徒の手が当たったことに激高。生徒の肩を殴ったり、脇腹を蹴ったりするなどの暴行を加えたという。生徒は生まれつき脳性まひで全身不随。車いすを利用し、意思に反して手が動いてしまうことがあった。教諭は暴行時「一人じゃ何もできないくせに調子に乗るな」と口にしていた。

     保護者は逮捕当日、息子の名前が世間に知られることを不安視し、県警に非公表を望む意思を伝えたが傷害罪が罰金刑で済む可能性があることを知り納得できないと考えを変え、後日県警に相談。その際「市と警察の広報は関係がない。市教委は独自に公表できる」と説明を受けたため、校長に要望したが聞き入れられなかった。

     市教委は取材に「被害者などに配慮した」と説明している。

     横浜区検は26日、罪名を暴行罪に切り替えて教諭の福田慎容疑者(34)を略式起訴し、横浜簡裁は罰金30万円の略式命令を出した。横浜市教委は同日夜になって福田教諭が刑事処分を受けたことを発表。暴行だけでなく、生徒の頭を車いすにぶつけさせ、けがをさせたことを認め「厳正に対処する」とした。


    名古屋大の内田良准教授(教育社会学)の話厳罰回避へ隠蔽か

      一般的に教諭の飲酒やわいせつ事案についての処分は厳しい一方、体罰や暴力に限っては「子どものため」などといった言い訳:が]立つため、処分か非常に緩い。公表すればニュースになり、厳しい対応を取らざるを得ないため隠蔽するのだろう。あまりにも学校に利するような治外法権が通用しているのは問題だ。 学校外の法律やルールにのっとることが暴力を減らすことにつながる。今回のような事は当然公表すべきであり、できるだけ厳しい処分を下すべきだ。


    学校がある種の治外法権であるという謂いは過去からもあった。最近では神戸の「激辛カレーいじめ事件」もそうだ。しかし、この事件は障害を持つ人に対する感覚の希薄さ、人権感覚の乏しさなどから「相模原やまゆり園殺傷事件」と共通するところがある。インクルージブ社会の形成への道のりで克服していかなければならない課題ではあるが、なんともいいようのない事件だ。


    2月28日 府教委 小学校いじめ認知初の1万件未満に

     京都府教育委員会は26日、府内の学校(京都市立を除く)で2019年度2学期に実施したいじめ調査の結果を公表した。小学校での認知件数は13年度の調査開始以降初めて1万件を下回り、前年同期比8・8%減の9735件だった。心身に大きな被害を受けた「重大事態」はなかった。

     アンケート方式で1、2学期の年2回、全小中高校、特別支援学校で調査。今回は計12万2371人が回答した。

     小学校で認知されたいじめのうち解消したのは323件にとどまった。中学校の認知件数は前年同期比3件増の938件で、うち解消は70件、いじめが続く「要指導」は104件。高校は260件、特別支援学校は85件が認知された。

     小中学校のいじめの内容で最多は「からかいや悪口など嫌なことを言われる」の計6184件で「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをしてたたかれたり、蹴られたりする」「仲間はずれ、集団による無視をされる」が続いた。高校では「嫌なことを言われる」に次いで「パソコンやスマートフンなどで誹議中傷や嫌なことをされる」が多かった。

     前回19年度1学期で「重大事態」だった小中学校、特別支援学校でのいじめ3件は未解消事案の「見守り」に分類された。

     調査結果について府教委は「重大事態がなかったから良いという訳ではない。引き続き認知したら学校全体で速やかに対応していきたい」としている。



    2月25日 災害補償基金審査会 教諭の過労自殺認定

     和歌山県立高校の男性教諭九堀寛さん=当時(32)=が2009年に自殺したのは、恒常的な持ち帰り残業や部活動による長時間勤務でうつ病を発症したのが原因だとして、地方公務員災害補償基金和歌山県支部審査会が昨年9月に民間の労災に当たる公務災害と認定していたことが分かった。審査会は、仕事との因果関係を否定した同基金和歌山県支部長の公務外決定を取り消す異例の逆転裁決をした。

     審査会は、持ち帰り残業のほか、部活を巡る生徒の保護者からの苦情や教育困難校での生徒指導の難しさなどから強い心理的負荷があったと認めた。学校現場が抱える多くの問題を実態に即して判断したと言え、深刻化する教員の過重労働に改めて警鐘を鳴らした形だ。審査会の裁決などによると、九堀さんは09年10月、日高川町の自宅敷地内で命を絶った。05年に採用され、08年から県立有田中央高に勤務。理科を教える傍ら、硬式野球部の運営に関わり、08年秋からは部長と監督、会計を一人でこなした。夜遅くまで練習し、練習試合などのため休日も部活に参加した。県高等学校野球連盟の役員も務め、うつ病を発症した09年3月までの6カ月間の休日は計3日だった。

     帰宅後は連日、授業の資料づくりやテスト作成のほか、野球部や進路指導の文書を作るなどした。時間外勤務は、1カ月で最大約100時間、平均67時間と認定した上で、持ち帰り残業分を上乗せし、基準を超える「80時間以上の時間外勤務等を行っていた」と認定。

     九堀さんの遺族は11年に公務災害認定を申請。17年2月に退けられ、審査会に不服を申し立てていた。


    部活運営クレーム 疲弊

     九堀寛さんの過労自殺を巡り、地方公務員災害補償基金和歌山県支部審査会は、自殺の原因として長時間労働を認定した。同時に、部活運営を巡る生徒の保護者からのクレーム対応で管理職ら周囲の支援がなく強いプレッシャーを受けていたことも認めた。

     教育困難校だったことも精神的な負担を増加させたとしており、代理人の由良登信弁護士は「学校が抱える問題が一度に重なった象徴的なケースだ」と指摘。遺族はクレーム対応を含めた教員の働き方改革を進めてほしいと訴えた。

     ミカン農家で育った九堀さんは地元の高校から東京の農業大学に進学。学業の傍ら高校野球の指導者を目指し、大学野球に打ち込んだ。卒業後地元に戻ったが、就職氷河期のため教員採用の道は狭く講師を経て2005年に教諭に採用された。

     裁決書や関係者の証言などによると、この数年間、部員の不祥事や暴力事件で学校や野球部は荒れ混乱。九堀さんに立て直しが委ねられたが、練習態度の悪い生徒の参加を拒んだことをきっかけに保護者からのクレームにさらされた。

     審査舎は、九堀さんの携帯電話に保護者から繰り返し電話があったと指摘し「執拗な抗議は相当の負担を感じさせた」「学校として十分なサポート体制が取られていたとは言えない」と認定。同僚は「『先生できやんようにしたるぞ』などそんな電話がたくさんかかってくると九堀さんが言っていた」などと証言した。トラブルは半年間続き、九堀さんは09年3月にうつ病を発症し、秋に命を絶った。


    教員の働き方改革が問題にされる以前、今から10年前のことではあるが学校という組織の在り方がほとんど変わっていないことを改めて考えさせられる。労働者が安全に働く事ができる職場環境を作ることが管理者(校長、教委)の責務である事を改めて認識して欲しい。そして改正給特法(小手先の改正に過ぎないのだけれども)に示された「指針」を教委が制定する事になっているのだけれども、少なくとも教職員の立場に立ったものとして検討されなければならないだろう。


    2月22日 須磨小教諭いじめ問題 管理強化も実効疑問

     神戸市立東須磨小の教諭いじめ問題で、21日に公表された報告書は「市教育委員会の制度・体制にも原因がある」と組織的な課題に 言及。市教委は打開策として、学校巡回を増やして目を光らせ、教職員の規範意識の醸成も目指す方針だ。だが、識者からは「管理強化が再発防止につながるのか」と疑問の声も上がる。

     報告書は、実効的なハラスメント研修の欠如や通報窓口の周知不足といった市教委の不備を認定。「人材育成や組織マネジメントなど、根本的な再発防止策を検討してもらいたい」と結んだ。

     神戸市教委が組織の問題点を批判されたのは初めてではない。2016年に市立中3年の女子生徒が自殺した後、同級生がいじめについて証言したメモを市教委幹部と校長が隠蔽していたことが判明。検証の過程で有識者から「縦割り意識が強い」「限られた関係者や学校内で問題解決を図ろうとする傾向がある」と苦言を呈された。

     管理職が教諭いじめを把握しても放置して市教委に報告せず、被害が深刻化した東須磨小でも構図は似ている。

     激幸カレーを強要する動画が繰り返し報道されると、市民からは苦橲が殺到。久元喜造市長は「教育委員会は根本的な欠陥を抱えて いる」と公言して怒りを隠さず、市教委は組織改革と教諭いじめの再発防止を結び付ける方向へかじを切った。

     今春から@市教委OBら8人が学校を巡回して課題を把握し、教諭らの相談に乗る「地区統括官」の配置A法令順守の指導や法律的助言を担う弁護士「学校法務専門官」の増員Bいじめなどの重大事案が発覚した際に学校へ派遣して子どもの心をケアする「学校支援専門官」の新設―を柱とする新体制がスタートする。

     学校現場への関与を強めるかのような改革で、市教委幹部は「市教委と学校現場の関係を密にする。有効な手だてだと思っている」と自信を見せる。

     だが、藤川大祐千葉大教授(教育方学)は、いじめにつながる過度な「いじり」の文化が根強いと指摘。「現状のまま管理を強化しても解決につながらない」と冷ややかで、幹部を一新し、他自治体と教諭の人事交流を実施するなどして外部の文化を取り入れなければ、学校も変わらないとみている。

     その上で「大きな研究授業など同僚が協力する目標を設定することで、教諭の孤立化を防ぎ協調的な職場にすることができる」と話した。


    神戸教諭いじめ調査報告書要旨

     神戸市立小の教諭いじめ問題で、調査委員会の報告書の要旨は次の通り。

     【ハラスメントとして認定した事実】

     加害教諭4人の行為として123項目を、前校長の行為として2項目を認定した。加害教諭4人は被害教諭より年長者で指導的立場にあり、全て「優越的な関係を背景とした言動」と認定した。

     【意見総論】

     犯罪を構成しうる行為を含む異様なハラスメントが継続的に繰り返されており、被害教諭が筆舌に尽くし難い苦しみを被った。原因は加害教諭らの個人的資質によるところが大きい一方、歴代の管理職の対応にも従たる原因があった。

     【加害教諭】

     A教諭(30代男性)は外形的には被害教諭に害意や悪意を有していたと推測できるが、事実認定にまで至らなかった。両者の関係は、加害者側が加害の事実に気付かず、被害者側が苦痛を隠しながら関係性を続ける子どもの「いじめ」の構造と同一である。

     B教諭(30代男性)は優しくまじめとの評価を受ける一方、横柄な態度を指摘する声があった。主体的でなくても、A教諭の度を越した言動を容認、追従していた点で悪質である。さらに、女性から度を越した性的言動の被害申告もあった。

     C教諭(30代男性)は被害教諭から一定程度信頼されていたが、A教諭らに便乗してハラスメントを続けた。現校長に注意を受げた後、被害教諭に「土下座でも何でもやったるわ」と逆恨みするような言動があった。 D教諭(40代女桂)は被害教諭を「ポチ」などと呼び、プライベートな事柄を無神経に周囲に漏らした。他の加害教諭に指示を出していたとは認められず、被害教諭との独自の関係性において無意識に傷つける言動を繰り返してきた。

     【管理職の責任】

     前校長は高圧的で「パワハラが過ぎる」との声があり「プチヒトラー」「絶対的地位」と評する人もいた。被害教諭がつらい思いをしていることはおろか、職員室の雰囲気が悪いことすら全く気付いていなかった。言動が威圧的で相談しにくい環境だった。

     現校長は加害教諭をコントロールできていないと受け止められ、次第に職員室の風紀が緩み、ハラスメントを助長した。

     【制度・体制】

     加害教諭らは「いじめ防止対策推進法」に基づき学校がなすべきことを正確に理解していなかった。子どものいじめの予防、指導に大きな役割を果たすべきで、いじめに関する知識の欠如や認識の甘さがあった。

     神戸市独自の教職員の人事異動ルールとして(校長間の協議で異動が実質的に決まる)「神戸方式」があるが、この制度が原因であるとまで認定できなかった。恣意(しい)的な人事権の行使や管理職と加害教諭らの癒着の事実も見いだせない。

     本校にはいびつな人員構成、一体感の欠如などの課題があった。若い教諭が多く、業務過多で、ハラスメントに気付かないか、気付いても他人に構う余裕がない状況だった。実効的なハラスメント研修の欠如や外部相談窓口の不備が重なり、未然に防止できなかった。

     【再発防止】

     今回大きく報道されたのは、ハラスメントが通常の人権感覚では考えられないようなものが含まれていたことによる。教諭ら個人の資質の向上が強く求められる。


    とても信じられないような事件であるのだが、教育に潜む何らかの意識(広い意味でのイデオロギーなのかもしれない)がキチンと意識化されていない学校文化が根本的な原因ではないだろうか。「説明責任」が問われるようになってから業績評価主義的な管理をしている学校は多い。その中にもある種のハラスメント的対応がないかどうかも点検すべきだろう。


    2月20日 教育機会確保法施行3年 公立夜間中学設置進まず

     外国籍の子どもや不登校で義務教育を終えた人の受け皿として期待される、公立夜間中学の設置が進まない。自治体に設置を促す教育機会確保法が完全施行されてから、2月で3年。施行後の新規開校は埼玉県川口市と千葉県松戸市のみだ。総数は京都市の洛友中な ど東京・大阪圏を中心に9都府県33校にとどまる。背景には、現場の多忙があるようだ。

     「いじめなどへの対応で、教育委員会に余裕がない」。岡山市立中の英語教師で、地元に公立夜間中学をつくろうと運動する城之内庸仁さん(43)はため息をつく。

     東日本大震災の支援活動を通じ、有志による福島市の夜間中学を知り、自身も3年前に岡山市で同様の取り組みを始めた。役所や企業を定年退職した人々がボランティアで先生を務める。地域で働く外国人ら約200人が学び、島根県からも70代の日本人女性が通う。寄付を軸にした善意頼みの自主運営は厳しい。

     岡山市教委は設置に慎重だ。担当者は「継続して通える人は数人程度と判断している。業務は多岐にわたり、一つ学校をつくるのは簡単ではない」と話す。

     開校への検討を始めた香川県も、事情は同じ。「学習指導要領の改定に、主体性を促すアクティブラーニングの取り組み…。国の施策への対応で各市町はいっぱいいっぱいだ」 (県教委幹部)

     文部科学省の調査によれば、小中学校に通っていない可能性のある外国籍の子どもが、昨年5月時点で2万人近くいたとみられる。日本人の不登校の小中学生は増え続け、2018年度に16万4千人超となった。

     今年1月末時点で公立夜間中学の具体的な設置構想があるのは、4月の開校を控える茨城県常総市をはじめ、札幌市や静岡県、福岡県大牟田市など8県市。他に約30自治体が、開校へ向けた検討を始めたという。

     人口に占める外国人比率が上がり続けていることを踏まえ、昨年4月に設置した川口市教委の担当者は「市長のリーダーシップがなければ実現しなかった」と振り返る。

     「各教委の忙しさは認識しているが、困難を抱えた人が多様性のある夜間中学で学ぶことが、社会性を育む上で大切」と、文科省の田中義恭・教育制度改革室長(45)は意義を説く。同省は今後、設置する自治体への補助金を増やして後押しする方針だ。


    府でも南部に夜間中学校を設置する要望がある事は承知しているが、「ニーズがない」とのアンケート調査の結果を唯一の拠り所として設置を見合わせている。教育におけるダイバーシティーの発想はこれから更に必要とされるだろう。


    2月20日 文科省調査 高校生就職内定率92.0%

     今春卒業予定で就職を希望する高校生の昨年12月末時点の就職内定率は、前年同期比0・1ポイント増の92・0%で、10年連続で上昇したことが19日、文部科学省の調査で分かった。バブル期の1990年度(92・1%)に迫り、調査が始まった76年度以降の12月末では2番目に高かった。

     昨年10月末時点の内定率は同期比で10年ぶりに減少していたが、持ち直した形。文科省の担当者は「高校生がより希望に合った就職先を目指すなどして出足が遅れるケースもあったようだが、結果的には人手不足が続く現状が反映されたのではないか」としている。

     調査は毎年度、10月末、12月末、3月末時点の状況について、都道府県教育委員会などを通じて実施。今回は、今春の高校卒業予定 者約104万5千人のうち、就職を希望する約18万2千人が対象で、約16万7千人が内定を得ていた。男女別の内定率は男子92・8% (前年同期比0・1ポイント増)、女子90・7%(0・2ポイント増)だった。

     都道府県別で内定率が最も高いのは富山で96・6%、続いて福井の96・8%。東日本大震災で甚大な被害に遭った3県では、福島が福井に次いで高い96・7%。岩手は94・4%、宮城は92・8%だった。一方、最も低いのは沖縄の75・6%で、東京の85・3%、神奈川の86・1%が続いた。 京都は90・7%、滋賀は92.2%。


    大学生と共に高校生の就職内定率が上向きである事はよろこばしいことだが、沖縄の数字は懸念が残る。若者の働き口が少なければ必然的に都市へと人口は流出していくだろう。「地方創生」の政策がどこまで本気で取り組まれているのかの疑問が残る数字である。


    2月18日 大阪市教委 教諭の下位評価取り消し

     大阪市立東淀工業高(淀川区)の教諭が、管理職に資料を改ざんされ不当な下位評価を受けたと主張し、市教育委員会がずさんな対応があったと認めた問題で、市教委の多田勝哉教育次長は17日、市議会教育こども委員会で「総合的に判断して評価の正当性を担保するのが難しい」として、教諭の評価を取り消すことを表明し、謝罪した。

     教諭は同日夜に記者会見し「いいかげんな下位評価で教師としてのプライドを傷つけられ、長くつらい闘いだった。教委に自浄作用はないと思っていたが、ようやく光が見えてきた」と話した。

     教諭は昨年4月、授業力の査定につながる生徒対象の授業アンケートの集計デT夕を管理職が改ざんしたとして公益通報。市公正職 務審査委員会は「誤った集計結果を示したが、改ざんは確認できなかった」と判断。教諭が不服を訴えた市教委の苦情審査会も「評価確定に至る手続きに不備はない」と退けた。

     市教委は同12月の教育こども委員会で「教諭に不信感を与え、遺憾な点があった」として、当時の校長と教頭を口頭注意処分にしたと明らかにしたが、評価は適切だったとしていた。


    明星大の樋口修資教授(教育行政学)の話 改ざん疑い残る

     人事評価制度の危うさを露呈した象徴的事案だ。適正評価に必要な、人材育成という目的性、公正・公平性、客観性、透明性、納得性の5原則を著しく欠く。間違ったデータで下位評価が行われたのだから撤回、是正するのは当然だ。改ざんの疑いは残っており、このまま「不適切」で済まさず、徹底的に検証すべきだろう。


    人事評価制度が果たして教育現場に「生産性向上」をもたらすのだろうか。教員の勤務時間が世界的に頭抜けて長い、また子どもの学力も一定程度高いことも知られている。しかし、前者と後者を「生産性」という視点から比較すれば極めて効率が悪いとの議論もある。「生産性」という観点から人事評価制度が導入された経緯があるのだが、学校現場がそうした文化を持っていないのだから適正な評価が行われるはずはないだろう。


    2月18日 大学入試センター 共通テスト作成者が問題集

     大学入試センター試験の後継として、来年1月に始まる大学入学共通テストを巡り、大学入試センターで国語の問題作成に携わる複 数の委員が民間出版社から共通テスト対策の問題集を出していたことが17日、関係者への取材で分かった。

     センターの担当者は同日、文部科学省で取材に応じ「一般論として、問題漏えいなどを疑われかねないことから現役の入試問題作成者は入試対策本を執筆すべきでない」と指摘した。

     その上で、問題集の執筆者が共通テストの問題作成に携わったかどうかは、試験問題が類推される恐れがあり明かさないとした。複数の問題作成委員が1月に一斉辞任したが、その理由も公表できないと述べた。

     問題集の内容については、第1回テストの内容を類推できる情報はなかったと説明。昨年12月に見送られた記述式のほか、マーク式を含めても、受験生が問題集を利用しても特段有利になる情報はないともした。

     文科省はセンターに対し、問題漏えいなどを疑われないよう適切な対応を求める方針。センターからは、問題作成に関わる内容だとして詳細な説明が受けられなかったとしている。

     問題集は昨年8月、東京都内の出版社から発売。大学や高校の教員らが執筆した。関係者によると、うち複数はセンターで共通テストの国語の問題作成に携わった。共通テストに導入予定だった記述式問題に関して、10の問題例と解説を掲載。定価は2200円で全国の書店やインターネットで入手できる。


    「センター試験」への不信感が募るばかり。「身の丈#ュ言」が教育の格差を容認したものであることは明らかなのだが、教育が「商売」であることをこの問題は示している。「教育を金で買う時代」を政治はどう改めようとしているのか見えない。


    2月18日 府内公立高校 前期難易度は例年並み

     京都府内の2020年度公立高校入試の前期選抜が17日始まった。府と京都市の両教育委員会は51校(学舎・分校含む)で実施された共通問題3教科(国語、数学、英語)の出題方針を発表。出題の狙いは例年同様、基礎の定着に加え論理的思考や判断力、表現力を問い、難易度も例年並みだった。

     京都市北区の府立山城高の試験会場では、新型コロナウイルスによる肺炎(COVDI19)やインフル工ンザが心配されるためかマスク姿が目立った。最初の教科の国語では、受験生は試験開始の合図とともに緊張した面持ちで問題に取り組んだ。両教委によると、この日は試験に関連するトラブルはなかった。18日は15校で独自問題や実技、面接の試験が実施され、25日に合格発表がある。

     また共通問題の各教科の解答時間は50(英語はリスニング10分を含む)で50点満点。


    3教科の特色と傾向

     出題方針と教科ごとの特色、傾向は次の通り。

     【国語】現代文は松田雄馬氏の「人工知能はなぜ椅子に座れないのか」などから出題。文章の構成や論理の展開を踏まえた読解力をみた。古文は鎌倉中期の説話集を取り上げ、古典を読むための基本が身に付いているかを確かめた。

     【数学】基礎の定着を確認するとともに「資料を比較したり、具体的な事象から法則を読み取ったりする問題を設け、数学的な考えや判断、表現ができるかを問うた。複数の領域を関連付けた出題もあった。

     【英語】身近な暮らしに関わる問題を設け、コミュニケーションの基礎の力をみた。長文問題では文法の知識と、必要な情報を整理して読み取る力を問うた。リスニングでは、会話の要点を適切に聞き取って応答できるかを試した。



    2月13日 京都市 一般会計7839億円

     京都市は13日、一般会計7839億6千万円と11特別会計、4公営企業会計を合わせた総額1兆6844億8500万円の2020年度当初予算案を発表した。一般会計は、来月にリニューアルオープンする市京セラ美術館(左京区)の整備完了などで投資的経費が減り、前年度比1・3%減と4年ぶりのマイナス編成となった。

     一般会計の歳出は、子育て環境の整備、防災、経済活性化、文化・芸術振興、持続可能寮財政の確立の五つを柱に据えた。

     子育て関連では、民間保育所の整備助成に10億2400万円を計上し、待機児童ゼロの継続を目指す。児童相談所の人員増に2400万円を充て、児童虐待への対応を強化する。

     防災では、橋りようの耐震補強や河川の護岸改修などに44億5500万円を充当。経済関連では、経営者の個人保証を不要とする新たな融資制度を10億900万円かけて創設し、円滑な事業承継を促す。市内で不足するオフィスの需給状況を調査する費用1千万円も盛り込んだ。

     文化関連では、市立芸術大(西京区)が移転する京都駅前での新キャンパス建設工事費24億7300万円、時代劇を対象とした京都映画賞(仮称)の創設1600万円などを計上した。

     歳入は、個人市民税や固定資産税が堅調に伸びる見通しだが、税制改正に伴い法人市民税が大幅減となり、厳しい財政運営が続く。 借金に当たる市債残高は、本年度末の見込みから69億円増えて8756億円になる見通しで、市民1人当たりの借金は約59万円となる。

     予算案は20日からの2月市議会に提案する。


    市教委は1075億5000万円

     京都市の2020年度当算案のうち教育委員会は1075億5千万円で、前年度当初比1・7%減となった。教員の働き方改革に向けて学校業務をサポートする職員の配置を拡大するなどし人件費が6億300万円増えた一方、学校・事務局等運営費は13億円200万円減った。

     主な事業では、働き方改革の取り組みに5億900万円を盛り込んだ。校務支援員や小学校専科教員の配置を広げるほか、若手教員を支える「研修支援サポーター」を新たに3人配置する。通級指導を受ける子どもが急増する中、経騒豊富な通級指導教員らが小中学校の新任担当者に助言する支援チームを1600万円かけて設ける。

     市立学校の7割が築30年以上であるのを受け、学校設備の長寿命化工事に21億7700万円を充てた。20年度に必修化となる小学校のプログラミング教育で使う小型コンピュータTなどの整備に2100万円を計上した。



    2月11日 京都市 出生率2年連続減

     京都市は10日、2018年の合計特殊出生率が1・25と、2年連続で減少したと発表した。出生数は9989人と初めて1万人を下回った。ホテルの建設競争などで市中心部の地価が高騰し、住まいや働く場所が不足するなど子育て環境の変化も一因とみられる。

     合計特殊出生率は女性1人が生涯に産む子どもの数を表す。京都市では09年から横ばいか上昇が続いていたが、17年は1・27と8年ぶりに下落に転じ、18年も続けて下がった。年代別では、15〜19歳と20〜24歳は各0・01ポイント上がったが、25〜29歳は横ばいで、30〜34歳は0・2ポイント、35〜39歳は0・01ポイントそれぞれ低下した。

     行政区別では、西京区が1・46と最も高く、前年まで16年連続1位だった南区が1・43と続いた。上京区(1・01)と右京区(1・32)が前年より上がり、北区(1・19)が横ばいだったほかは、軒並み下がった。東山区は0・81で唯一、1を割り込んだ。市中心部ほど数値が低い傾向が出た。 .

     算出対象となる15〜49歳の女性人口は29万2568人で、前年と比べて4318人減った。京都市では近年、25〜44歳の子育て世代が市外に流出する傾向が続く。市は「合計特殊出生率の減少には複合的な要因がある。あらゆる施策を使って解決したい」としている。


    【表層深層】将来世代 施索強化を

     京都市は京都府とともに「子育て環境日本一」を掲げ、子育て支援透重視するとしているが、合計特殊出生率の低下は、まだ顕著な成果に結びついていない現状を示す。市があらゆる政策分野で掲げる持続可能な社会をつくるためにも、施策の軸足をより「将来世代」に向けることが求められる。

     市は2019年まで保育所の待機児童6年連続ゼロ(国基準、4月1日時点)を達成し、府と連携して子どもの通院医療費を月額上限3千円 から1500円に引き下げるなど、限られた財源の中で少子化対策の手は打ってきた。

     一方、市中心部の地価高騰などで住居やオフィスが不足している現象に対しては、宿泊施設の進出規制や景観政策の見直しなどで対応するとしており、成果が見えるのはまだまだ先だ。

     府の合計特殊出生率は1・29で都道府県ワースト3位。府人口の6割を占める京都市が果たすべき責任は重い。女性の就業支援や遊び場の確保、気軽に子育て相談できる機会づくりなど、あらゆる角度から子育てを応援する施策を打ち出し、そこにもっと予算を割くべきだ。


    出生率は様々な要因によって変化ことを前提としなければならないが、「町づくり」の視点からも一定の考察ができる。そこから見れば京都市は生活しずらい町だともいえる。御池(市役所)との感覚とは違い住民の実感に近いかもしれない。ところで赤川学『子どもが減って何が悪いか!』(ちくま新書)は挑発的な題名だが、内容は社会学の観点から政府の子育て政策が的を得ていないことを批判していて興味深い。また、少子化を前提とした社会制度の構築を求める点でも面白い。


    2月10日 神戸市教委 係長自殺か

     9日午前6時15分ごろ、兵庫県芦屋市陽光町の「東灘芦屋夫橋」から神戸市教育委員会総務課の男性係長(39)が飛び降り、死亡した。自殺とみられる。昨年10月に発覚した神戸市立東須磨小の教諭いじめ問題で市教委内の会議の調整に関わっていた。

     芦屋署によると、午前4時10分ごろ、男性係長の妻から「家に置き手紙があり姿がない」と110番があった。手紙には自殺をほのめかす内容があった。捜索していた署員らが橋の上で男性係長を発見。声を掛けると突然走りだし、橋の歩道脇にある壁を越えて約25メートル下の地面に落下した。病院に運ばれたが、死亡が確認された。同署は「対応に問題はなかった」としており、経緯を詳しく調べている。

     市教委によると、男性係長は昨年4月から総務課勤務となり、教育委員が集まる会議の日程調整や議案の作成を担当。教諭いじめ問 題発覚後は業務量が増えていた。7日までは通常通り勤務していた。市教委は同僚らに聞き取りをするなどして業務との関連を調査する。


    教員の働き方改革が叫ばれる中、推進者であるはずの市教委の職員が「自殺」するという事態は、言葉を失ってしまう。


    2月9日 政府 非正規賃上げ助成低迷

     非正規社員の基本給を引き上げた企業に政府が人数に応じて助成金を支給する事業を巡り、2019年度の適用が数人にとどまり、7千人の想定を大幅に下回っていることが8日、分かった。政府は利用が低迷しているにもかかわらず、20年度予算案では事業費を前年度より2億円多い7億円とした。企業に賃上げを促す安倍政権の看板政策で、検証が不十分なまま、なし崩し的に増額されている。

     政府は正規と非正規の不合理な所得格差をなくす「同一労働同一賃金」の取り組みを進めているが、企業の動きは鈍い。連合も20年 春闘で非正規社員の賃金、待遇の改善に力を入れるが、助成金による後押し効果は限定的となりそうだ。

     問題の事業は、社員の能力開発や賃上げを狙った「キャリアアップ助成金」のうち、有期契約である非正規社員の社会保健加入と基本給増額を促す「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」だ。助成額は社会保険に加入させた上で、基本給の増額割合に応じて段階的に増える。例えば、中小企業の場合、1人当たり3%の引き上げで2万9千円、最高の14%以上の引き上げでは13万2千円となる。支給は1回に限られる。

     これまでの適用実績は、制度の始まった17年度が0人で、18年度は2事業所の2人のみ(計5万7千円)。19年度も数人と極めて低調なため、政府は利用拡大に向け、4月から基本給増額の要件を緩和する方向で見直しを検討している。

     厚生労働省の担当者は「助成金の存在自体を知らない事業者も多いと思うので、広報活動に力を入れて適用拡大を目指す」とコメント。20年度に1人当たりの支給単価を増やした上で想定する5千人の利用についても達成可能だとの楽観的な見立てを示している。

     政府関係者からは「財務省から厳しい査定を受ける一般会計と異なり、今回のように労働保険特別会計で行う事業の場合、制度の創 設や補助金増額の見通しが甘くなりやすい」との声が出ている。


    【インサイド】ベア後、簡単に下げられず

     非正規社員の基本給を引き上げた企業への助成金事業の利用が進まないのは、東京五輪・パラリンピック後を含めた景気の先行き懸念が根強いことが背景にある。一度ベースアップ(ベア)を実施すると簡単には下げられないため、大企業に比べて経営体力が十分ではない中小企業は、将来にわたる重い固定費負担を避けようとしている。

     助成金事業について、全国中小企業団体中央会の及川勝事務局長は「会員の多くの経営者は本当は使いたがっている」と指摘。ただ「米中貿易摩擦や中東情勢、消費税増税など将来に対する好材料がほとんど見当たらず、ベアこ消極的になっている」と解説する。

     求人情報サイト運営会社ディップの広報担当者は「最低賃金の引き上げなどもあり負担感は増すばかり。助成金があっても積極的になれないのでは」と話す。インターネットで旅行商品を手掛ける会社の経営者は「優秀な正社員の給料は上げないといけないが、非正規のベアは経営への圧迫感が大きく、現実的ではない」と本音を語る。

     ただ、非正規にベアを実施することは求人の面で優位に働く可能性も。IT機器補修のペンチャー役員は助成金のニーズはあるとして「利用されないのはPR不足ではないか」と指摘した。



    2月8日 文科省 省内に専任弁護士

     文部科学省は8日までに、学校現場で弁護士が法的な助言をする「スクールロイヤー,」の活用を進めるため、日弁連から派遣された弁護士1人をアドバイザーとして省内に配置することを決めた。いじめや不登校など子どもを巡る状況は深刻化しており、早い段階で教職員が弁護壬から助言を得ることの重要性が指摘されている。学校問題に詳しい弁護士を省内に置き、各地の教育委員会にスクールロイヤーの導入方法などをアドバイスしてもらう。

     日弁連から派遣されたのは第三東京弁護士会の鬼沢秀昌弁護士(32)。いじめや学校事故に関する事件に取り組んだ経験を豊富に持 つ。中3の女子生徒がいじめを受けて亡くなった後、教委がいじめ防止対策推進法に基づく調査委の設置を怠った茨城県取手市で、再発防止策を協議する第三者委に参加。スクールロイヤーに関する著書もある。省内に専用机を持ち、週1日程度出勤し、文科省職員や各地の教委から相談を受けるという。

     文科省は2020年度、学校現場でスクールロイヤーに相談できる体制の整備を進める。具体的こは、都道府県や政令市の教委が弁護士らに相談する際、一定の費用を地方交付税で支援。「子どもの最善の利益」を重視し、地域の実情に応じて各地の弁護士会から弁護士を派遺してもらうため、日弁連とも連携する。

     文科省が昨年3月、全国の数委を対象にした調査では、10年ほど前に比べて法的な相談が必要な機会が増えたと答えた教委が、都道 府県・政令市で7割、市区町村で5割に上った。アドバイザーの鬼沢弁護士は「子どもの利益のために弁護士がどう関わったらよいか、文科省や教委の担当者に伝えていきたい」と話した。



    2月8日 京都市 外国ルーツ 指導必要な児童生徒増加

     外国にルーツがあって日本語が十分でないため、小中学校で日本語の授業を受ける児童生徒が増えている。学校教育法施行規則の改正で日本語の能力に応じた特別指導ができるようになって6年。多様な国籍の児童生徒が暮らす京都市では独自に学習環;境を整えて支えているが、さらなる増加に対応できるよう教員をどう確保するかなど課題もある。

     伏見区の春日丘中を昨年12月に訪れると、フィリピンから来日した1年生の女子生徒がマンツーマンで日本語の授業を受けていた。教材は翌日に控えた校外学習の注意事項などが書かれたプリント。漢字には振り仮名が付けられている。「敷物って知っていますか」。日本語指導教員の中山美紀子さんが持ち物やスケジュールを一つ一つ確認し、生徒の理解を促した。

     中山さんは日本語教員歴14年。指導計画の作成や学習の評価もする。授業では習得させたい文型を学校生活に関連付けて教えるよに意識している。「日本語の勉強が実生活で役に立ったという実感が、次の学習への意欲につながる」と狙いを話す。

     学校教育法施行規則の改正で、2014年から日本語指導が必要な児童生徒のために「特別の教育課程」を編成、実施できるようになった。文部科学省によると、指導が必要な対象者は外国人労働者の増加などに伴い年々増え、18年調査では5万759人に上る。京都市でも特別の教育課程で指導を受ける児童生徒は16年5月に86人だったのが、20年1月には約180人と2倍になった。それぞれ週1〜4こま、クラスから離れて日本語の授業に出ている。

     ポルトガル語などを母語にする外国人労働者が偏在する愛知県や滋賀県と異なり、京都市の場合は留学や国際結婚、仕事と居住した理由はさまざまで、国籍も3分の1が中国、6分の1がフィリピン、そのほかはインドネシアやネパールなど多様だ。

     居住地域に偏りが少ないため、市教育委員会は修学院小(左京区)などエリアが異なる五つの小中学校に拠点を設置。そこから日本語教員が各校に巡回指導したり、保護者らをサポートする母語支援員を派遣したりするシステムを取ゅている。春日丘中のように外国にルーツがある生徒が比較的多い4中学校区こは担当の日本語教員を1人配置し、校区内の小中学校で指導している。

     独自の教育や支援が進む一方で課題もある。指導が必要な児童生徒の増加が今後も見込まれる中、日本語教員をさらに確保するのは難しく、現時点では教員が受け持つ授業のこま数を増やすなどして対応している。教員不足は全国的にあり、特別の教育課程による指導を実施していない学校の多くが「担当教員がいないため」と文科省の調査で答えている。

     また児童生徒の日本語指導終了後のフォローも重要になる。日本語数員と、学級や教科の担任が丁寧に情報共有してクラスでの学習につなげていく必要があるが、京都市教委によると、十分にできていないケースもあるといい「両者が連携できるようサポートしていきたい」としている。


    昨年10月から連載されていた若林秀樹さんの外国につながる子どもの教育 を参照すれば、「担当教員がいないため」だけが指導上の困難点でない事が見えてくる。特別な環境にいる子どもの教育を保障するためにはいわゆる「合理的な配慮」という考え方が障害を持つ子どもたちのためだけではないという認識が必要だ。勿論、教員の職務負担を軽減してこその話しなのだが。


    2月7日 警察庁 児童虐待通告9.7万人

     警察庁は6日、2019年の犯罪情勢(暫定値)を公表した。全国の警察が昨年1年間に虐待の疑いがあるとして児童相談所(児相)に通告した18歳未満の子どもは9万7842人(前年比1万7590人増)、全国の警察が摘発した児童虐待事件は1957件(同577件増)で、いずれも過去最多に上った。刑法犯全体の認知件数は74万8623件(同6万8715件減)で、前年に続き過去最少を更新した。

     児童虐待は家族など限られた関係の中で起こる傾向があるため、警察庁は問題が潜在化しやすいと分析。警察の対応だけでなく、児 相や学校など関係機関との連携強化が課題となっている。

     児相通告の内訳は、暴言などで心を傷つける「心理的虐待」が7万441人と最多で約7割を占めた。次いで暴行などの「身体的虐待」1万8219人、育児放棄(ネグレクト)などの「怠慢・拒否」8920人、「性的虐待」262人だった。通告児童数は過去5年間で約2・6倍に増加している。

     摘発した虐待事件の内訳は身体的虐待1629件、性的虐待243件、心理的虐待50件、怠慢・拒否35件だった。

     特殊詐欺の認知件数は1万6836件で前年から約千件減ったが、依然高水準が続く。被害者宅を訪れキャッシュカードをだまし取るほか、事前に電話で資産状況を聞き出す「アポ電」など新たな手口も発生している。

     サイバー犯罪では、インターネットバンキングに関する不正送金事件の被害額が急増し、前年比約15億7100万円増の約20億3200万円。

     刑法犯の認知件数は窃盗事件が大きく減少しており、防犯カメラなどの効果とみられる。全体の摘発は29万4254件で前年より1万5155件減少した。



    2月6日 府 府、一般会計9018億円

     京都府は6日、一般会計9018億5300万円と、10特別会計、5企業会計を合わせた総額1兆5205億1600万円の2020年度当初予算案を発表した。子育て環境の整備や起案支援、災害対策を重視した。一般会計は19年度当初に比べ1・4%伸びた。

     子育て関連は、企業やまちづくり、教育など幅広い分野で事業を展開するため、総額252億円を割く。若者が仕事と育児の両立を体験するインターンシップ制度を拡充し、企業と若者双方の意識向上を促す。保育園の園外活動を見守る支援者の配置費や不妊治療の通院交通費の助成も始める。

     産業関連は、ものづくりや最先端医療・映像技術など多分野の起業支援に3億1千万円を計上した。また、府保健環境研究所(京都市 伏見区)に医薬品や医療機器の開発から実用化までを支援する「薬事支援センター」を開設する。

     災害対策は、発生前に対応を決めておく「避難行動タイムライン」に基づいた訓練を全市町村で実施。要支援者の避難に必要な市町村の備品購入を補助する。9億円をかけ、土砂が堆積して氾濫危険性が高い河川の掘削を進める。

     引きこもりや就職氷河期世代を対象とした自立・雇用支援の拡充、「食」をテーマとした周遊観光の振興にも取り組む。


    府教委1281億円 人件費は13億円減

     京都府の2020年度当初予算案のうち教育委員会分は1281億6400万円で、前年度比1・1%減となった。教職員の大量退職が落ち着き、退職手当を含む人件費が13億円減少した。

     主な事業は、小学校での外国語の教科化などを受け、小中高一貫した課題解決型の英語教育カリキュラム構築に100万円を計上。校内通信ネットワークの整備など教育分野で情報技術を活用する「スマートスクール」推進に1億5700万円(19年度2月補正予算案を合わせ7億4400万円)を充てる。いじめ防止・不登校対策として、弁護士ら専門家チームの設置と別室登校の児童支援のための調査研究に計180万円 を盛り込んだ。



    2月6日 相模原事件10回公判 遺族にも障害者の存在否定

     相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら45人を殺傷した罪に問われた元職員植松聖被告(30)は5日、横浜地裁の裁判員裁判第10回公判で被害者家族2人の質問を受けた。姉=当時(60)=を殺善された男性が「なぜ殺さなければならなかったのか」と尋ねると、被告は「社会の役に立つと思ったから」と答えるなど、遺族を前にしても障害者の存在価値を否定する発言に終始した。

     遺族らの被告人質問は被害者参加制度に基づいて実施。遺族と直接対面した現在の心境を「心苦しい」とのべるなど、謝罪の言葉をのべて恐縮する姿勢も見せた。一方で動機を問われると「重度障害者を育てるのは間違い。金と時間を奪っている」と、これまでと同様に事件を正当化した。男性は姉の最期の様子を「記憶にないか」と何度も尋ねたが、被告は「死にざまは細かく見ていない」と返した。

     続いて、重傷を負った尾野一矢さん(46)の父剛志さん⌒花)も質問。「家族は悩みながら、小さな喜びを感じて生活している。あなたはそれを奪った」と訴えると、被告は「長年育てた母親を思うといたたまれない」と淡々と話した。

     裁判員も質問した。「事件から約3年半が過ぎ、当初考えていた社会になったか」と聞かれた被告は「重度障害者との共生社会に傾いてしまった」と話し、思惑が外れたことを明らかにした。「共生は)『やっぱり無理』となってほしい」とも述べた。

     青沼潔裁判長からは、障害者への態度を尋ねられた。園に勤務し始めた当初、入所者を「かわいい」と思っていた時期があったとし、「こちらの要求を理解して笑ってくれた」と振り返った。裁判長に「意思疎通が取れたではないか」と指摘されると、「人としての意思疎通ではない」と強く否定した。


    質問の男性 「パフォーマンスだ」

     相模原障害者施設殺傷事件で重傷を負った入所者の尾野一矢さん(46)の父剛志さん(76)は5日、植松聖被告(30)に相対し、謝罪を引き出した。だが「パフオーマンスだとしか思えない」。聞きたかった被告と両親の関係は、弁護面から事前に制止されたという。剛志さんは質問を終えた安堵感と同時に複雑そうな表情を浮かべた。

     「今、幸せですか」。剛志さんの問いに対し、植松被告は「幸せではありません。いや、どうだろう…」と首元に手を触れた。はぐらかされたと感じた。

     この日、被告は被害者や家族、迷惑をかけた人へ謝罪した。剛志さんは「少しは人間の心があるのか」と思った。だが、動機などは従来の主張を繰り返すだけで、「それで全て片付けようとしている」と怒りが沸いた。生い立ちから探るために用意した被告と両親の関係に関する質問は、弁護側から「事件と関係がない」と止められたという。初公判で指をかんだ意味に関する質問も事前に制止されたといい、剛志さんは「残念です」と話した。


    こうした事件は常に「社会的感情」がどう慰撫されるかに関心が行く。報道の在り方も慈善に私たちが理解しやすいような「物語」として構成されていく嫌いがあるが、果たしてそれで全容解明に至るのだろうか。