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  • 連載13回 教室にてつがくを
  • 学校再開「対策丸投げ」.24
  • 「深い学び」へ対話促進.25
  • 教員超勤45時間以内に.27
  • 学校再開後の具対策.28
  • 3月28日 文科省 学校再開後の具対策

     新型コロナウイルス感染防止を目的とした小中高校などの一斉休校を巡り、文部科学省は27日、学校再開後の具体的な対策を示した Q&Aをホームページ上に公開した。授業中も窓を開けておくことが望ましいとし、遅れた授業を補充するために夏休みの短縮なども考えられるとした。

     文科省は24日、4月からの学校再開では@換気の悪い密閉空間A多くの人が密集B近距離での会話や発声―の3条件が重なるのを徹底的に避けるとする指針を、各都道府県教育委員会などに通知。これを受けて教育現場から寄せられた質問と回答などをまとめた。

     「3条件が重なり合いさえしなければよいのか」という質問には「可能な範囲で、一つ一つの条件が発生しないよう配慮するのが望ましい」と回答。手洗いは流水とせつけんの使用を基本とし、外から教室に入る際やトイレの後、給食の前後などにこまめに洗い、手を拭くタオルやハンカチを共用しないよう求めた。

     指針は、家庭での毎朝の検温や健康状態の確認が必要としているが、できなかった子どもについては教室へ入る前に保健室や職員室で検温などを行うとした。そうした子どもが大勢いる場合は、全教職員で連携した対応を求めた。

     教室の換気は休み時間ごとに、対角線上の窓をそれぞれ広く開けるなどし、授業中も開けておくのが望ましいとした。

     マスクは各家庭の手作りなどで準備を要請。飛沫がかからない十分な距離をとれば常に着用が必要というわけではないとし、子ども同士が間隔を空けて登校たり「少人数学級で座席を離したりできる場合を例示した。

     一斉休校で実施できなかった授業の補充は、夏休みなどを短縮した時間や本来は授業がない土曜日で可能とする一方、子どもや教職 員の過度な負担増に配慮を求めた。2019年度に実施できなかった学年末試験を20年度に入った後に行うことに法的な問題はないとした。

     音楽の授業で歌う際には人がいる方向に口が向かないようにし、家庭科の調理実習は衛生管理を従来以上に徹底したり、実施時期を 感染が収まった後にずらしたりすることが考えられるとした。


    「学校再開」と「オバーシュート、都市封鎖」との言葉の間に大きな違和感がある。どちらのメッセージを受け取るのかによってそれぞれの対応に違いが出てくることになる。安倍首相のエビデンス無しの「一斉休校」要請がこうした混乱を生む大きな要素になったのだろう。こうした議論に与野党の壁を超えて対策に当たる必要があるとの議論もあるけれども、市民が状況を判断する材料が不十分なまま情緒的な対応を求める行政の姿勢は改めなければならない。とりわけ、命とオリンピックを天秤にかけた政府と都政の姿勢(対応)は早急に検証しなければならない。


    3月27日 市教委 教員超勤45時間以内に

     京都市教育委員会は26日、学校や幼稚園の働き方改革を進めるための方針を発表した。目標として2020年度から5年間で、各教員の毎月の超過勤務時間を45時間以内にすると設定。負担軽減のために授業や校内活動を支える教員やボランティアの増員のほか、授業以外に求められる文書作成業務の削減などを進める。

     教員の残業の多さは全国的に問題となっており、1月に文部科学省が1ヵ月の超過勤務を45時間以内とする指針を定めた。これを受け、市教委も方針を策定した。数値目標ではほかに、過労死ラインとされる月80時間超の超過勤務をする教員をゼロにするとした。

     具体策として、20年度から退職した教員が無償で学校行事を手伝ったり、大学生が高校の研究活動を補助したりする。教員が産休に入る際は事前に補充講師を配置し、他の教員が多忙になることを防ぐ。このほか、小学校の専科指導教員や部活動指導員、公務支援員なども拡充していく。

     授業以外では、各種調査など教員が作成をしなければならない文書を毎年減らしていくほか、学校のトラブルを早期に解決できるよう弁護士らへの相談窓口を充実させる。給食費を学校でなく市教委が徴収する仕組みも検討する。

     市教委の調べでは昨年4〜12月の幼稚園、小中高校、総合支援学校の月平均超過勤務時間は46時間41分で、80時間超の教員も517人(7・1%)いた。

     同日、市PTA連絡協議会も教員の働き方改革に協力していくとのメッセージを発表した。市教委は「保護者や地域の理解を得ながら進め、教員が心豊かな生活を送れるようにしたい」としている。


    超勤削減の方向性は評価できるが、「45時間」という数値目標はあまりにも低すぎる。おそらく実施が予定されている「変形労働時間制」を見据えてのものだろう。これではこれまでの京都市立学校の働き方は改善されるは思えない。「保護者や地域の理解」も必要だろうが、それ以上に行政の積極的姿勢が重要ではないか。


    3月25日 中学教科書検定 「深い学び」へ対話促進

     文部科学省は24日、来春から中学校で使用する教科書の検定結果を公表した。3年間で学ぶ各教科の平均ページ数の総量は前回から7・6%増の1万1280ページ(A5判換算)となり、文科省内の記録で比較できる2004年度検定以降で最多。子ども自身による「主体的・対話的で深い学び」という理念を掲げた新学習指導要領の全面実施に対応するため、対話などを通した学びを促進する内容が手厚くなったほか、英単語数など学習量の増加にも対応した。

     授業時間数は現指導要領から変わらず、計算上は時間当たりで学ぶページ数が増える。子どもの負担が増し、長時間労働が深刻な教員の働き方改革の足を引っ張る懸念もある。文科省の担当者は「学習内容は全てカバーする必要があるが、軽重を付けるなど工夫して ほしい」としている。

     平均ページ数の総量は、前回14年度検定(道徳は17年度)が1万481ページ。教科前の道徳が含まれていない10年度は8529ページ、04年度は6944ページだった。教科別は道徳を除き、いずれも14年度度で増加。技術の25・6%が最も高く、英語は12・6%、理科は10・4%、社会(歴史)は6・7%増えた。

     主な要因は新指導要領への対応で、申請では単語数が現行の1200語程度から1600〜1800語程度に増えたことを反映。理科では新たな実験を掲載したり、これまで写真のみの内容をコラム形式で扱ったりした。社会の歴史では世界史分野の分章が増えたほか、歴史上の事柄を調べて話し合う学習をサポートする記述が充実。江戸時代の赤穂事件で、あだ討ちをした浪士への処分を考える中で当時の社会を多面的に考察させる例がみられた。

     地理と公民では全教科書に竹島と尖閥諸島が登場し、いずれも「固有の領主」と記述した。英語は、空欄を埋めて英文を完成させる従来型の設問に、実際のコミュニケーションとの関連付けが不十分との検定意見が付き、対話形式で学ぶ内容に変更された。

     今回の検定は申請が115点で、106点が合格、5点が取り下げ。不合格は、新しい歴史教科書をつくる会が執筆する自由社の歴史教 科書など4点で、検定意見が一定割合以上だと年度内再申請を認めず不合格とする新規定が初適用された。


    【インサイド】教員の工夫奪う恐れ

     2021年春から使用される中学校の新しい教科書には、新学習指導要領の柱とされる「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた工夫が随所にちりばめられた。教員が一方的に知識を教え込む従来型の授業からの脱却が進むことを意図するが、授業の手引のような教科書への依存が高まり、かえって教員の工夫の余地をなくしかねないと懸念する声もある。

     「僕はここで一生働かないといけない」「学校に行きたい」―。バレンタインデーの2月14日、山形県鶴岡市の市立鶴岡第一中学校の教室に、アフリカの農園で働く幼い子の声が響くと、3年生の視線はテレビの画面にくぎ付けになった。

     この日は、社会の教科書で扱う国連の持続可能な開発目標(SDGs)を掘り下げ、チョコレートの原料・カカオ豆を巡る児童労働の問題を考える授業。南波純教諭(59)は問題を取り上げた番組を見せ、本物のカカオ豆を配って、生徒の興味をかき立てた。

     教室での授業が終わると、コンピューター室に移動。NPO法人のホームページを見て、発展途上国への支援の方法を学んだ。「寄付する」「売上げが支援に回る商品を買う」「政府に働き掛ける」―-といった行動に、それぞれの生徒が優先順位を付け、グループで解決策を話し合った。

     同校は主体的・対話的で深い学びの研究に力を入れている。南波教諭は「さまざまな社会問題を、人ごとでなく自分に関わることとして本気で考えさせるための仕掛けが重要だ」ど話す。

     ただ、こうした実践は各地の中学校に十分広まっていない。経済協力園発機構(OECD)が18年、日本の中学校教員約3600人にアンケートしたところ、「グループでの問題解決」を授業にある程度取り入れていたのは44・4%。「解決法がない課題の提示」は16・1%にとどまった。

     ある公立中の40代の男性教諭は「深い学びの実現には、じっくりと教材研究する必要がある。雑務や部活指導などに追われ、時間が足りない」と明かす。

     もともと勉強が苦手な傾向がある子どもは、自分なりに意見をまとめるよう求めても難しい現実がある。この教諭は「もっと教えたいが、できないというジレンマがある。教科書の内容が変わるなら、助けになるかもしれない」と期待する。

     こうした状況を踏まえ、各教科書会社は今まで以上に学びの手順を丁寧に書き込む方向にかじを切った。単元ごとに学習の目的や方向性を明確に示し、問いの立て方や話し合いの手法も解説する。

     執筆者の一人は「教員が準備に時間が取れなくても、十分な授業ができるよう工夫した」と説明。文部科学省の担当者も「非常に使いやすい教材になった」と歓迎する。

     一方、上智大の沢田稔教授(教育学)は「若手の教員が教科書をよりどころにすること自体は否定しないが、記載された授業手順に妄信的に従うだけでは効果的な授業は期待できないだろう」とみる。 .


    「主体的・対話的学び」が強調されるのは歓迎すべき事だが、果たして現場にそれだけの余裕があるのだろうか。もちろん働き方はある程度自分で工夫すことも可能だし、不必要な業務は拒否するという姿勢も大切だ。けれども「メタレベルでの学び」を関係者がどの程度理解しているのかも大きな要素になる。「もともと勉強が苦手な子」は、個人に、課題が与えられ、選択肢が与えられ、唯一解(正解)を覚えるという学習に慣らされているといえる。小学校段階からの学びをどう構築するかということがなければ中学校で「いざ、対話」といわれても敷居はたいかいだろう。


    3月24日 新型コロナ・関連 学校再開「対策丸投げ」

     「一貫性がない」「丸投げだ」。小中高校と特別支援学校の4月再開に向け、文部科学省がまとめた指針案。教室の換気など徹底すべき点が列挙されたが、従来の注意点を繰り返す内容に、学校現場からは厳しい意見が相次いだ。

     政府による一斉休校の要請後も授業を続けてきた自治体の公立小に勤める男性教諭は「安倍晋三首相の独断で一斉休校を決めた割に、再開の判断は専門家会議の内容をなぞっているだけ。一貫性がない」と吐き捨てるように述べた。

     男性教諭が勤務する小学校では、児童の席の間隔を空け、授業中も窓を開けてこまめに換気も行った。その上で、放課後には教員ら が教室や階段の手すり、トイレのドアなどの消毒を徹底。児童には翌日分のマスクを配布し、校外での学習は中止した。「皆段通りといかずに大変だった。自分の学校は小規模校だからできた面もある。大規模校で席を空けることなどできるだろうか」と指針案の内容に疑問を投げ掛けた。

     ある教育委員会の幹部も「目新しいものは何もない。結局、自治体や学校現場に対応を丸投げされた印象だ」とため息をつく。「換気の悪い密閉空間」「人が密集」「近い距離で会話」の3条件がそろう場面を徹底的に避けるとする方針にも「どこまでやりきれるか分からない。感染リスクを完全になくすのは難しい」と指摘した。


    政府の判断と専門家会議との考えに齟齬があると受けとめられるような政府の姿勢には不信感がつきまとう。危機的状況なのか否かが非常に分かりにくい。学校再開についても、危機的状況の上での再開なのかといことである。加えてこれまでの「一斉休校」の評価はどうだったのかを明らかにすべきである。そうの上での「対応」が示されなくてはならない。埼玉でのK1イベント開催についても、「要請」といいながら判断を現場に任せた結果だろう。


    3月20日 【読者に応える】 合唱曲歌いたかった

      「なぜ子どもたちが頑張って練習してきた卒業式の合唱曲を歌えないのか」「合唱曲を歌いたかった」。23日にある京都市立小学校の今年の卒業式について、教員や保護者、児童から京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に疑問の声が寄せられた。新型コロナウイルス感染拡大防止で国歌と校歌の斉唱だけとなり、卒業の歌の合唱が取りやめになったからだ。

     「児童は学校最後の日に向け合唱練習をしてきた。飛沫感染のリスクで言えば国歌や校歌の方が大人も歌うので高いのではないか」。 疑問の声を寄せた市内の小学校に勤務する教員は指摘する。別の学校の教員も「子ども第一で考えるべきでは」。

     保護者らからも同じような声があった。息子が卒業を迎える母親は「母親同士でおかしいよね、と話している。子どもたちは合唱曲を歌いたいと先生に伝えたと聞いているし、私たち保護者も学校に要望した。5分の合唱でどれほど感染リスクが高まるのか」と首をかしげる。卒業生からは「せつかく練習してきた言葉や歌ができなかった!」と残念がる声が寄せられた。

     市教委によると、一斉休校が決まってから時間短縮する式典内容について校長会と協議した。式が儀式的な行事であることを重視し、国歌・校歌の斉唱や校長の式辞、卒業証書の授与などに限定する案を決めた。この形を原則として2日、各校に伝えたという。担当者は「さまざまな選択肢がある中で苦渋の速断だった」と話す。

     卒業式は通常、今年のような内容とともに、卒業生による合唱や在校生、PTA会長の言葉などが行われる。先の保護者は「時間短縮の意図は理解できるが、式は子どものためではないか。形式的な部分より子どもや保護者の思いを優先させてほしかった」と話す。


    今から35年ほど前に卒業式での「君が代」斉唱を巡って大きな議論があり、一つの運動として教育回を席巻した。その時には、「儀式の意味」が何度と無く問われた。結局権力的に「卒業証書授与式」として子どもを置き去りにした「儀式」が定着していった。今回のウイルス流行に関わって、「子どものため」という文言がいかに空々しく政治的に語られていることに教育(行政)の体質がほとんど変わっていないことを感じる。


    3月18日 大阪市 小中学校の給食無償化

     大阪市の松井一郎市長は17日、新型コロナウイルスの感染拡大に対する経済対策として、市立小中学校の給食費を4月から無償化す る方針を明らかにした。「子育て世代は仕事もこの先どうなるか分からず、経済的に苦しい。少しでも安心してもらえる状況をつくりたい」と述べた。小中学校とも無償化するのは、人ロの多い政令指定都市や中核市では初めて。

     当面は世帯所得などの条件は設けず、市立校に通う全小中学生約16万5千人を対象とする。費用は年間約77億円を見込んでおり、2 020年度は財政調整基金を取り崩して賄う。21年度以降も続ける方針で、20年度末までに制度の詳細を詰め、財源確保策を検討する。

     松井氏は「子ども1人当たり年間5万〜6万円が浮く。世帯の可処分所得の増加につながる」と給食無償化の意義を強調した。18日の市対策本部会議で正式に決定し、開会中の議会に条例改正案と20年度当初予算の修正案を提出する予定だ。


    給食費の公会計化が実施される際に給食費を無償化するというアイデアはあった。そうした点からすれば大阪市の対応は評価できるのだが、政府と同様新型コロナウイルスの蔓延を政治的に利用するという姿勢が見え隠れする。ただ、この状況は様々な社会的な変化をもたらすのではないかという予感がする。例えば、テレワークや遠隔教育、消費税減税を含めた税と再配分そして非常事態を含めた民主主義など、人口減少社会の在り方を考えることになるのではないだろうか。


    3月17日 文科相 全国学テ延期

     萩生田光一文部科学相は17日の閣議後記者会見で、小学6年と中学3年の全員を対象とした今年の「全国学力・学習状況調査」 (全国学力テスト)について、予定していた4月16日から延期すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした一斉休校で、学校側の準備が間に合わないことなどが理由としている。

     萩生田氏は「授業が行われておらず、通常の学習体制に戻るまでに時間を要する学校がある」と指摘。延期の期間については示さず「今後の取り扱いは(感染拡大の)影響を注視し、十分な時間的余裕を持って公表する」と述べた。

     さらに「中止という判断は避けたい」とする一方、自治体ごとに日にちをずらして実施した場合は出題内容が分かってしまい、正確な習熟度が測れないといった課題を挙げた。問題冊子を各学校に届ける配送業者を改めて確保する必要もあるとし「完全実施ができるかどうかは柔軟に考えたい」と含みを持たせた。

     全国学力テストは文科省が2007年から実施している。東日本大震災が発生した11年に事実上の中止となったほか、16年には熊本地震で熊本県内の全小中学校が参加を見送った例がある。19年4月に実施した際は、小学校1万9474校の104万9614人、中学校9995校の98万3064人が参加した。


    毎年の学テの費用は50億円前後らしい。こうした費用を休校に伴う損失に充てる事はできないのだろうか。また時期wずらす事になれば、これまで主張してきた「定点観測」的な意味も無くなってしまう。結果的には全国の学校のランク付けだけがのこるということになる。また、これを受注している教育産業は「損失」を共有しなくても良いのかという倫理的な問題も感じる。


    3月17日 相模原事件判決 差別思想解明されず

     相模原市の知的障害者施設で起きた45人殺傷事件の公判で16日、植松聖被告(30)に死刑判決が言い渡された。横浜地裁は被害者の大半を匿名のまま審理し、遺族らの傍聴席周辺を遮蔽。プライバシー保護を理由としているが「障害は隠すべきもの」という社会に漂う空気が反映された結果とも言える。2カ月余りの集中審理で、動機とされた差別思想の根源は十分解明されず、家族は「誰のための、何のための裁判だったのか」と、やり切れない思いを抱く。

     「被害者1人を除き、氏名を明らかにしません」。青沼潔裁判長は1月の初公判で宣言した。重傷を負った尾野一矢さん(46)以外の被害者は「甲B」「乙A」などの記号で読み上げられた。地裁は家族の要望を受け、公判開始前に被害者の特定につながる事項を明らかにしない決定をしていた。

     法廷も異様な雰囲気だった。傍聴席84席のうち遺族らに割り当てられた3分の1は、周囲から見えないように高さ約2メートルのついたて で仕切られた。廊下にも遮蔽板を張り、遺族らが隣の横浜地検に移動する際もカーテンを閉めたバスに乗せた。

     こうした裁判所の姿勢に、一部の被害者家族は疑問を持った。死亡した実帆さん=当時(19)=の母親が「甲A」という記号に違和感を抱き名前を出すよう望んだのは、裁判に求めるのが結論だけではなく「娘の存在を、みんなに覚えていてほしい」との思いからだった。別の家族の一人は、検察側から「他の人も匿名なので」と同意を求められたと証言した。

     「どうして僕らは被告の顔を見られないのか」。初公判後、尾野さんの父剛志さん(76)は検察官に抗議した。ついたての中からは入退廷時の被告の様子が見えなかったからだ。外の席に移動したいと申し出たが、認められなかった。

     地裁は「被害者保護」に熱意を傾ける一方、被告の動機の核心に迫る審理を尽くしたとは言い難かった。成育歴や家庭環境にはほと んど触れず、検察、弁護側双方の主張も刑事責任能力の有無に絞られた。検察関係者は「裁判員の負担も考慮しながら、とにかく事前に決めた予定に沿って進めようという意識が一部であった」と明かす。

     ベテラン刑事裁判官も「量刑が争いになる事件なら弁護側は減軽材料として成育歴に触れるが、今回は有罪なら死刑以外あり得なかった。わざわざ触れることで審理を長引かせたくなかったのだろう」と推し量る。

     公判を傍聴したジャーナリスト江川紹子氏は「成育歴などを通じ、被告の異様な価値観かつくられた理由を解明してほしかった」と指摘。「公的な場である法廷で重要な実名を伏せた点も含め、異常な裁判だ。繰り返してはならない」と批判した。


    【解説】認定動機 検察主張丸のみ

     相模原殺傷事件の植松聖被告に横浜地裁は16日、死刑判決を言い渡した。19人という多数を殺害し、計画的で遺族の処罰感情が厳しいなど、最高裁が1983年に示した死刑適用基準に多くの点が当てはまり、刑事費任能力さえ認められれば不可避の結論だった。一方、審理では、差別発言を繰り返した被告の動機の根底は十分に探られず、後味の悪さも残った。

     唯一の争占は責任能力の有無だったが、弁護側が主張した「大麻精神病」は日本で症例報告がなく説得力に欠け、認められる公算は小さかった。むしろ「本当の争点は、被害者家族が解明を期待した、差別意識がどこで芽生え、なぜ犯行につながったかという動機の形成過程だった。

     判決は3段階の過程を挙げた。@園の他の職員が利用者を人として扱っていないと感じ、「障害者は不幸な存在」と考えたA過激な言動で注目を集めるトランプ米大統領をニュースで目にし、"真実"を口にしてもいいのだと思い、自分が先駆者になれると思ったBカードゲームで「伝説の指導者」に関するカードに自分を示唆する記述があると考えた。

     これが事実とすれば、強い差別意識に根ざした犯行というより、あまりに短絡的、幼稚で、我欲をかなえたかっただけとも言える。ただ、認定されたこの動機は、検察側の証拠を丸のみしたにすぎず、審理を経て解明されたとは言えないのではないか。


    相模原殺傷、22回接見した記録(上)

    植松被告は「美しさ」になぜこだわるのか

     「格好良ければすべてが手に入る」。3月4日午前9時過ぎ、横浜拘置支所の2番面会室。右手に自傷行為防止用の手袋を着け、青いフリースジャケット姿の目の前の男は、相変わらず口元だけをゆがめた笑みを浮かべている。こうも言った。「死刑になるような犯罪とは思っていませんけどね」

     男は植松聖被告(30)。相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人を殺傷した罪に問われている。横浜地裁での裁判員裁判は2月19日に結審し、判決は3月16日だ。寒気を感じたのは面会室に入り込んだ冷気のせいだけではない。16日間の審理が終わり、死刑求刑されてもなお、独善的な主張に全く変化がなかったからだ。裁判は自説を宣伝する場になったと納得しているようだ。「おかげさまで」。記者の目をまっすぐ見て、頭を下げた。   障害者を狙い19人を殺害するという前代未聞の事件を起こした被告は、どういう感覚の持ち主なのか。記者は2017年から22回、接見取材をした。被告が語ってきたことを、2回に分けて報告する。(共同通信=渡辺夏目)

     最も印象に残ったのは、容姿へのこだわりと強い劣等感だった。

     初公判の日程が決まった19年4月、あらためて動機や経緯を尋ねた。すると無表情に変わり、機械的な口調に。「重度障害者は不幸を生む」「有意義なことをした」。出てくるのは以前と変わらない回答だった。

     被告は「100人以上と面会した」と説明していた。他の人からも同じことを聞かれているのだろう。同じフレーズを何百回と言葉にしている様子がうかがえた。「事件のことは好きに書いてくれていいです」。投げやりに言い放った。

     質問を続けようとする記者に、じれたように「美容整形の話をしたい」と切り出してきた。そういえば、と思った。時々楽しそうに口にする美容ネタ≠ナあれば、彼の人間性や価値観を探れるかもしれない。会話の続きを促すと笑顔になり、その後の面会でも冗舌になった。

     被告によると、最初に鼻の形を変え、続いて目を二重にする手術や医療脱毛をした。約150万円を借りて受けたという。さらに数百万円かけて小顔手術にしようと思ったが、信用審査に落ちて借金ができずに諦めたらしい。「やりたい整形をすべてやるには3千万円はかかる」と当然のように語った。

     金額に驚くと、あきれた様子でこう言った。「ローンで家を買うより、まずは美しさを手に入れるべきだ」。人間関係が円滑になって金も稼げるようになると力説し、「自分を好きになれる」と強調した。さらに記者の顔を眺め、「目の形はきれいだけど、鼻にボトックス注射を打った方がいい」と助言=B有名クリニックの名を挙げて勧めてきた。ひげの濃い男性記者には脱毛を勧めているという。 事件前、植松聖被告が津久井やまゆり園の家族会誌に寄せた自己紹介文

     被告は園に就職した後、痛切に外見のコンプレックスを感じた経験があった。ハロウィーンの時のことだ。

     パンダの着ぐるみを着て外を歩くと、子供も大人も駆け寄ってきた。「人気者になって楽しかった」と声を上げて笑う。ところが、着ぐるみの頭部を外すとすぐに人だかりは消えた。落胆されたのだと思った。「人は見た目が全てだと分かった。ぼくが羽生結弦だったら違ったのに」

     悩んだ末、容姿の良い友人に勧められたのをきっかけに整形を決意した。その時のことをこう振り返った。

     「整形には抵抗がありました。それまでの自分の否定だと思うんです。勇気がいることだと思った。(勧められた)友人に『自分じゃなくなる』と言ったら『自分じゃなくなってもよくない?』って言われて。それもそうだと思った」

     「美意識」が高いあまり、拘置支所では問題も。食事を受け付けられず、痩せた時期があったのだ。油の質が健康に良くなく、顔がむくむのが嫌だったのだそうだ。

     被告のこの美意識は、事件にどこかでつながるのだろうか。「入所者を醜いと思ったり、嫌悪感が生じたりしたのか」と聞いてみた。被告は少し考えたあと、かぶりを振った。「いや、入所者にもかっこいい人はいたので。他の職員と『もったいない』とよく話していました」と笑った。

     その一方、意思疎通のできない重度障害者を「心失者」と呼び、「心失者は人を不幸にする。美しくない」と主張する。存在自体が美しくないと言わんばかりだった。

     植松被告は事件直後、ツイッターに「世界が平和になりますように。beautiful japan!!!!!!」と投稿している。口元だけが笑顔の自撮り写真と一緒に。彼の考えがとても分かりやすく表れたメッセージだったのだと、接見して分かった。

     19年4月の接見で「死刑は嫌だ」と話していた被告は、4カ月後に一変した。裁判に臨む心境を聞いたら、「一審だけでいい。死刑判決でも構わない」とつまらなさそうに時計に目をやり、美容整形の話に強引に戻した。「でも、もしここを出られたら…」と急に声を弾ませ、「身長を伸ばす手術をしたいんですよ」。「他の人になりたい。人生はあっという間です」


    相模原殺傷、22回接見した記録(下)

    トランプ大統領を見て植松被告が感じたこと 人生の意義求めた末に 

     「歌手とか野球選手になれるなら当然そっちを選ぶ」。植松聖被告(30)は2月5日、横浜地裁の法廷で堂々と言い放った。別の楽しい人生だったら事件は起こさなかったというのだ。意味不明な答えだが、被告にとっては筋が通った説明と言えるかもしれない。記者との面会でも「意義深い人生にしたかった」と繰り返していたからだ。被告は、学生時代に望んだ教師にもなれなかった。(共同通信=渡辺夏目)

     2018年8月、精神鑑定のため立川拘置所(東京)に留置されていた被告は、面会に来た記者に早口でこう漏らしていた。「学生時代から、人生に意義を見いだしたくて悩んでいた」

     小学校教師の父と漫画家の母の下で育った。きょうだいはいない。都内にある私立大に進学すると、小学校の教員を目指した。教育実習も終えて教員免許を取得。だが、教師の道は断念した。「挫折もありました。向いていないと思った」と振り返る。大学卒業後は運送会社に入ったが8カ月で辞め、先に津久井やまゆり園で働いていた友人の勧めで、園に転職した。

     面会中、「自分は遺伝子が良くない」「頭が悪い」と自嘲気味に語っていた被告。金が欲しいのと、世間に評価されたいという気持ちを抱えながら「人生の意義」を求めていた時、米大統領選の候補者だったトランプ氏のニュースを職場のテレビで目にした。

     トランプ氏との「出会い」は、被告を事件に駆り立てる重要な契機となったようだ。「メキシコとの国境に壁を立てる」。これまで聞いたことのない排外的な政策を強く訴える姿に、心を動かされた。

     「トランプさんは偉大だ。排斥すべきものを排斥するのは当然の行為」。裁判で読み上げられた友人の調書によると、感化されるあまり、知人の結婚式ではトランプ氏を見ならって赤いネクタイを締めたこともあった。

     テレビの中のトランプ氏に共感を覚えた時、ふと目の前の利用者に目をやった。以前から気になっていた保護者や職員の疲れきった表情。日本は借金が多くて大変…。こうした思いが頭の中でつながった。

     「この人たちを殺したらいいんじゃないか」

     言葉にすると、力が湧いてくるのを感じた。「やるべき事が見つかって、目の前が輝き出した」。面会時、うれしそうに当時を思い出して語った。

     妙案を思いついた興奮の中で、事件を予告する衆院議長宛ての手紙を書き上げ、議長公邸に持参した。措置入院させられる結果に終わったが、入院中は苦痛どころか、計画を練る楽しい時間になった。「まとも」に振る舞うことで、早く退院できるようにも努めた。「措置入院後はエネルギーにあふれていた。人生の目的を見つけました」

     弁護側によると、被告は周囲に「自分は伝説の指導者である」と豪語していたようだ。米大統領と自分を重ねていたのだろうか。

     「リンカーンは黒人を解放し、自分は重度障害者を生む恐怖から救った」。面会でもそう自賛し、照れ隠しのように座り直した。差別と偏見で固められた考えが、周囲に理解されると本当に思うのか。記者がこう質問すると、迷わずうなずいた。面会に来た福祉関係者や家族に障害者がいる人から反論されても、「この人たちは頭がおかしい」と考え、耳を貸さなかった。

     一方、公判前の接見ではこんなことも語っていた。「事件を起こして良かったと思うのは、いろんな人が話を聞くために会いに来ること。ぼくも勉強させてもらっている。ぼくもついに、ここまで来たんだ」

     考えは、時間がたつごとに補強されていると被告自身も自覚していた。裁判では「みなさまに深くおわびします」と謝罪の言葉は述べたものの、持論は正しいとの態度は貫いた。被告人質問では、大麻やカジノ、環境問題など事件とはほとんど関係のない政策を提言し、傍聴人を驚かせた。まるで独演会だった。

     3月4日の面会。公判の感想を求めると「弁護人も検察官も責めてくるのかと思ったけれど、自分の考えを聞き出すようにしてくれて感動した」。判決後に控訴する意思はないといい、仮に死刑判決だった場合は「(執行されるまで)描いている途中の漫画を完成させたい」と落ち着いた様子で語った。被告にとっては、裁判も自己実現のための舞台になっていたのかもしれない。

     ▽取材後記

     美しくなりたい。称賛されたい。なぜなら金が欲しいから―。被告の欲望は極めてシンプルだ。動機の核心がここにあるのだとしたら、とてもやりきれない。誰もできない「世直し」を成し遂げた自分には当然、金も名誉も付いてくると算段した被告。しかし、法廷での言葉は矛盾だらけで稚拙さが露呈し、金どころか死刑求刑という窮地に立たされた。被告にとっては、障害者の人権も平等に守る法律がおかしいのだそうだ。多くの傍聴人は、自説を理解してくれたと信じていた。命がけで実行して後悔していないのかと聞いてみた。「仕方が無いです」。達観したような口ぶりに、悲劇のヒーローに浸っているのだと思った。(終わり)


    相模原事件で何が明らかになったという問いは答を得られないまま収束した。この事件が明らかにヘイト・クライムであることは間違いがないのだが被告人植松がそこに至る道筋が裁判では明らかにならなかった。それを明らかにするのは残された私たちの問題だろう。仮に事件を正当化するために書かれ(描かれ)たものを出版しようとする意図をもつものがでてくる事態だけは避けなくてはならない。


    3月15日 首相 「卒業式、ぜひ実施を」

     「今更卒業式と言われても遅すぎる」。安倍晋三首相は、14日の記者会見で一斉休校問題に触れ「卒業式は安全面を工夫し、ぜひ実施して」 「子どもにi屋タトで運動の機会を」などと言及したが、教育関係者からは戸惑いやあきれる声上がった。

     ある自治体の教育委員会幹部は「何を今更」 とため息をついた。卒業業式は保護者らを会場に入れず、出席者全員がマスクを着用するなどしてなんとか実施してきた。他の自治体も、合唱をやめるなど工夫を凝らした。「式は既に終わった学校;が多い。今ごろ発言する意図が分からない」と首をかしげる。

     教育評論家で法政大名誉教授の尾木直樹さんは、屋外の運動推奨について「説明が遅すぎる」 とあきれ沫こ。

     尾木さんによると、予防策を取った上で外で遊べば問題がないことは以前から分かっていたが、.一斉休校後、子どもの姿を見た高齢者らから「外遊びをしている」と学校に苦情が寄せられたという。「学校は大慌てで『外に出ないように』と保護者らに連絡してしまう。見守り隊 をつくって子どもたちを励ますなど、地城ぐるみで臨機応変に子どもたちを守って」と求めた。

     教委委幹部が懸念するのは、会見では明言されなかった休校解除のタイミングだ。「自治体の判断に委ねるとでも発言されたら現場は混乱する。国は責任を持って判断してほしい」


    いつもの事だけれども首相の発言に納得できないのは多くに市民に感想だろう。情緒的に語ることの技法はピカイチなのだが。


    3月14日  特措法改正根拠無き緊急宣言は違憲

    【土曜評論】 首都大東京教授 木村草太

     2009年の新型インフルエンザ流行を受けて制定された「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)」の今回の改正は、新型コロナウイルス感染症が適用対象であることを明示するためとされている。

     ただ、改正の必要性は疑わしい。というのも、特措法の適用対象は、新型インフルエンザ「等」とされ、「新感染症」も含まれる。政府は「病原体が特定されていることなど」から、今回の感染症に特措法は適用できないと言う。しかし、条文の定義に、病原体が特定された疾病は「新感染症」に含まれない、とは書かれていない。今回の感染症に適用してこなかったのは不可解だ。

     続いて、今回の感染症に特措法を適用した場合、何ができるのか。

     注目は、緊急事態宣言(特措法32条)だ。首相が政府対策本部長として宣言を出すと、都道府県知事は、市民の外出制限や学校・催事場などの使用制限等の要請(同45条)、土地・家屋・物資などの私有財産の使用(同45条)、物資の売り渡しの要請(同49条)などができる。 もっとも、憲法は自由権、財産権を保障しているから、らを制限するに足る十分な根拠がなければ、緊急事態宣言や外出禁止要請は、違憲無効となる。

     では、いかなる条件を満たせほ、緊急事態宣言等が合憲といえるのか。

     まず、重要なのは、目的を明確にさせることだ。例えば、「市民の不安をなくす」といった曖昧な目的設定を許せば、政府は恣意的に緊急事態を継続できてしまう。宣言は、「国内新規感染者ゼロの二週間継続」など、客観的に測定可能な目的が設定されない限り、違憲と評価すべきだろう。

     次に、目的が明確でも、科学的根拠のない手段は正当化されない。専門家が尊重されない、あるいは決定に関与しないままになされる規制・要請は、違憲と評価すべきだろう。特措法適用による公権力の濫用を防ぐには、これまでの政府対応を検証することも必要だ。

     2月末、安倍晋三首相は、全国一律にイベント中止や休校を要請した。しかし、特指法では、そうした要請は都道府県知事の権限であり、法を適用したとしても、首相による要請は許されない。イベント中止要請等の法的根拠を問い直し、二度と恣意的運用がなされないよう十分に反省し、法律の定める条件や手続きに沿って、現在の体制を整え直すべきだろう。

     さらに、特措法には、緊急事態宣言について国会同意を要求していないこと、もろもろの措置に専門家の関与や議事録の公開・保存の仕組みが整えられていないことなどの不備がある。今後も、制度見直しのための議論や作業を継続する必要がある。

     最後に、新型ウイルス流行に便乗して、憲法に内閣の「緊急独裁権条項」を導入しようとする動きについて一言しておきたい。

     今回の事態は、緊急独裁権が災害時に役に立たないことを示している。首相が専門家への諮問や関係官庁・自治体との調整なしに、半ば独裁的に行った休校要請は、社会に混乱をもたらした。緊急独裁権条項ではなく、休校要請を出す場合の教育機会・保育手段確保のための具体的な方法を示した法律を整備した方が、はるかに有益だろう。

     緊急時に役立つのは、場当たり的な独裁権ではなく、日々の綿密な準備だということを、肝に銘じる必要がある。


    立憲民主党の長妻議員はテレビ討論で、緊急事態宣言下での要請事項に反した場合「罰則規程がない」ことがこの法律が抑制的であると話した。そうなのだろうか?コロナの流行が収束した時点で改めて法の問題点を点検し、「私権の制限」についての議論を行い「再改定」を求める事が旧民主党の議員達の責務ではないだろうか。


    3月12日 さいたま市 朝鮮学校の幼稚園、マスク配布対象外に

     さいたま市が幼稚園や保育所などの職員らにマスクを配布する中で、埼玉朝鮮初中級学校の幼稚部(同市大宮区)が対象外となっている。11日、学校関係者や保護者ら約20人が市役所を訪れ、配布の対象とするよう求めた。

     市は9日から、子どもを預かっている公立・民間施設の職員用にマスク約9万3千枚の配布を開始。幼稚部の朴洋子(パクヤンジャ)園長(61)は翌 10日に報道で配布を知り、市に問い合わせた。朴園長によると、市から「(朝鮮学校が分類される)各種学校は市の管轄ではないため、配布したマスクがどう使われるかを監査できない」という旨の説明を受けたという。

     学校は2日から休校。幼稚部は通常通りだが、心配な場合は休むことを認めており、全園児41人中、37人が通園しているという。通園バスの運転手を含めて、職員は7人。朴園長は「正直びっくり。こういう非常事態でウイルスを広めないために配っているのに、除外ということがまかり通るのかと思う」と話した。

     市は朝日新聞の取材に「備蓄しているマスクに限りがあるので、市が監査できる所管施設を対象にした」と話した。(朝日新聞)


    朝鮮幼稚園「人権上、人道上、看過できない」 

     日本の地方自治体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、マスクを配布する際、朝鮮学幼稚園を除外し、関係者たちが抗議に出た。

     在日本朝鮮人総聯合会(総聯)の機関紙「朝鮮新報」によると、埼玉県さいたま市は、備蓄していたマスク24万枚をさいたま市内の保育所(保育園) や幼稚園、放課後児童クラブ、高齢者施設に勤務する職員向けに配布する計画を立てたものの、「埼玉朝鮮幼稚園のほか民間の塾」を対象から外した。10日、この事実を知った埼玉朝鮮幼稚園の園長が市に問い合わせたところ、市の担当職員が「(朝鮮幼稚園は)さいたま市の指導監督施設に該当しないため、マスクが不適切に使われた場合、指導できない」と説明したと、同紙は報じた。これに対し、朝鮮幼稚園関係者らが11日、市庁舎を訪問して抗議した。朝鮮幼稚園関係者らは「人権上、そして人道上、到底看過できない。許し難い行動だ」と抗議したと、同紙は伝えた。

     日本でもCOVID-19の感染拡大の影響で、マスクの品薄状態が続き、問題になっている。日本政府がマスク2000万枚を一括購入し、高齢者施設や保育園などに配布する計画を発表したほどだ。

     共同通信もさいたま市の職員が朝鮮幼稚園側にマスクを配布すれば「転売されるかもしれない」という趣旨で説明したと報じた。同通信によると、これについて市幹部が11日、朝鮮幼稚園長に「不適切だった」と謝罪したという。同通信はさいたま市幹部がマスク配布対象を再考する考えを示したとも報道した。(東京/チョ・ギウォン特派員)


    「マスクが不適切に使われた場合、指導できない」というのが行政の理屈だとすれば、どこに正義があるのだろうか。明らかにこれはヘイト・クライムではないのか。そしてなによりも人権教育をすすめるはずの教育委員会での出来事である事に戦慄を覚える。「緊急事態宣言」を可能にする(実は今でも可能なのだが)法案が今日成立する運びとなっている。「付帯決議」で私権の制限は担保されていると野党(共産党などを除く)は言うが、このさいたま市と同じ発想の安倍政権にそれを付与するお墨付きを与えるのは正しいのだろうか。かつての立憲民主党の「輝き」は翳りを見せているというが、旧民主党と同じ道を辿るのだろうか?


    3月10日 憲法研究者ら 「緊急宣言 権力集中もたらす」

     政府が新型インフルエンザ等対策特別措置法の適用対象に新型コロナウイルス感染症を追加する方針について、憲法の研究者や弁護士らが9日、東京都内で記者会見し、特措法にある「緊急事態宣言」について、歯止めのない首相への権力の集中や報道の自由の制限をもたらす可能性がある制度の追認につながるとして反対する声明を公表した。

     憲法や言論法の研究で知られる石崎正博・獨協大名誉教授や田島泰彦、元上智大教授と、元日弁運会長の宇都宮健児氏ら10人。

     特措法では、首相が緊急事態宣言を発すると最長3年間、外出自粛や多くの人が集まる施設の使用を制限できる。臨時医療施設のために土地建物の強制使用も可能になる。

     石崎氏らは「緊急事態を宣言する要件が明確でなく、具体的なことは政府が自由にできる政令に委ねている」と指摘。「国会の事後承認すらなく、行政権への権力の集中を引き起こす」と指摘した。

     また、NHKなどに政府が指示を出す仕組みがあることについて「報道の独立が確保されず重要な情報が伝えられない可能性がある」と訴えた。

     宇都宮氏は「特措法は民主党政権時代に成立したが、批判があり、非常事態宣言は出されたことはない。必要なのは情報公開で、特指法改正で情報公開に後ろ向きな安倍晋三政権にお墨付きを与える必要はない」と話した。


    京都の2団体も声明】「恣意的運用の恐れ」

     日本科学者会議京都支部幹事会と京都社会保障推進協議会も9日、反対声明を発表した。

     同京都支部幹事会は「特措法に基づく措置を新型コロナ対策に適用しており、立法事由そのものがなくなっている」と指摘。「外出の自粛、学校など公共施設の使用制限が容易に可能どなり、政府により過剰に恣意的に運用される恐れがある」とし、「法改正の前にPCR検査をきちんとすべきだ」とした。

     京都社会保障推進協議会は「休校による子供たちへの影響や雇用、地域経済など国民生活へのきめ細かな対応や、医療機関へのマスクなどの供給確保に全力をあげるべき」と強調。有事であることを理由に政府の政策批判を封じ込める主張が散見されるとして、危機感を示した。


    立民、国民が「特措法」成立には協力する姿勢。政府の対策に「反対しているだけ」との批判を避けているのだろうが、こうしたときにこそはっきりと反対の姿勢を示すべきだろう。あえて言えば「忍び寄るファシズム」への危機感は、2015年の戦争法強行採決の時よりも遥かに強い。9日の参議院の質疑で公明党の質問に対して、萩生田文科相は「この機会に子どもたちに読書してほしい。日ごろ読めない日本の名作を」というような主旨の答弁をしている。読書の推奨から名作リストの提供へと国会が権力的にすすむ可能性がないわけではない。


    3月8日 国際女性デー 校長ら女性管理職18%

     小中学校や高校など教育現場での管理職に占める女性の割合が47都道府県全体で18%にとどまることが7日、文部科学省の2019年度学校基本調査から明らかになった。校長や教頭、副校長といった学校の女性管理職について政府は「20年に20%以上」とする目標を掲げているが、30道府県が達成していなかった。

     男性管理職を当然とする風潮や、子育てや介護を担うことの多い女桂が負担の重さを理由に目指しにくいことが原因とみられる。8日は女性の権利向上を目指し、国連が定めた「国際女性デー」。専門家は「未来を担う子どもたちが男女平等の意識を持つためにも、学校における女性リーダーの存在は不可欠だ」と指摘する。

     共同通信が学校基本調査を基に、国公私立の小中学校、高校、特別支援学校など初等中等教育機関の管理職に占める女性の割合を47都道府県ごとに算定した。

     教諭など管理職以外も含む全教員数は99万6457人で、女性は50万1635人(50・3%)と半数を占めた。うち管理職7万4656人をみると、女性は18・1%に当たる1万3533人。役職別では、女性の校長は15・4%の5247人、副校長は20・7%の999人、教頭は20・4%の7287人だった。

     政府が15年に定めた第4次男女共同参画基本計画では、初等中等教育機関の管理職の女性割合を「20年に20%以上」と設定。19年5月の調査時点で超えていたのは、17都府県だった。最も高いのは神奈川30・0%で、石川29・7%、広島29・6%と続く。最も低いのは9・0%の宮崎と長崎。京都は22・1%、滋賀21・2%。

     長崎県教育委員会は19年度から小中学校の管理職登用試験合格者に対し、家庭の事情に応じ、実際に管理職となる時期を調整できるなど制度を変更。教頭を志願する女性が増えた。神奈川県教委は各学校にリーダー格の主幹教諭を356人ほど配置し、女性が担う機会が増加。この経験が教頭昇進の要件でもあり、担当者は「女性が管理職を目指しやすくなった」と話す。


    山形大・河野銀子教授 「良い先生」像見直す時期

     教員の男女比はほぼ半々だが、男女平等は進んでいない。学校の女性管理職割合の変化を分析すると、1999年に男女共同参画社会基本法が施行されても顕著な伸びはなかった。女性登用に積極的に取り組むべき時期に、十分な施策をしてこなかったと言わざるを得ない。

     学校現場では長らく、長時間働き、休日も練習のある部活動の顧問を担える教員が「良い先生」とされてきた。産休育休によるブランクがあり、子育てで制約を受けやすい女性がリーダーとなるのは難しく、登用が進まない要因となっている。

     しかし、管理職が男性に偏ることは子どもたちへの影響が大きいということを意識すべきだ。身近な大人の姿を見て、子どもは学ぶ。

     暗黙のうちに、つくられてきた「良い先生」像を教員自身が見直すべき時期にきている。同時に各教育委員会は、育成側の管理職の意識改革の他、研修の受講機会、年齢や経験年数といった管理職試験の要件などに女性が不利となる項目がないかをチェックする必要がある。多様な人材を登用できるよう制度を整えるべきだ。


    女性管理職の登用の数字だけが問題ではないだろう。女性管理職が男性管理職と同じような働き方(指導や管理など)をしているのを往々にして見かける。これでは数だけ増えても意味はないだろう。例えば、「佰食屋」で知られる中村朱美さんのような「これだけ売れたらゆっくり休みたい」という女性の立場からの発想がひつようだろう。今回の新型コロナ事態に直面して「子育てしている母親は毎日どうしているのだろう」ということへの想像力を働かせる必要があるだろう。


    3月6日 新型肺炎 「一斉休校 虐待リスク高まる」

     新型コロナウイルス対策で急きょ始まった一斉休校に、学校や児童福祉の現場から「虐待が疑われる家庭でリスクが高まる」と懸念する声が上がる。閉鎖的な環境で親子が密に接する状況が長引けば、双方のストレスが高まり、周囲の見守りも困難になるためだ。児童相談所も感染拡大を防ぐため頻繁に家庭訪問できず、対応に苦濾している。

     「長期間にわたり日常の見守りができなくなり、虐待のリスクも高まる。安全確認の徹底を各学校にご指導願います」。千葉県教育庁は県内の多くの自治体で臨時休校が始まった2日、市町村の教育委員長宛てに注意喚起文書を配布した。

     県内では昨年1月、野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が冬休みが明けても登校せず、後に虐待死する事件が発生。教育庁は11月に教職員向けの「虐待対応の手引き」を作成し、長期休業中や休み明けは特に目を配るよう指導してきた。人権教育班の小出健司班長は「今回の休校中も、支援が必要な家庭には定期的な電話連絡をしてもらいたい」と話す。

     虐待認知件数が政令指定都市で2番目に多い大阪市。児相の担当者は「子どもと一緒の時間が長くなると保護者の養育負担が重くなり、状況が悪化するケースもある」と語る。

     通常の夏休みや冬休みであれば、注意が必要な家庭への対応は児相や市町村学校などで事前に協議しておくのが一般的だ。だが今回の休校は「急に決まったので打ち合わせができていない。休みに入ってから事案ごとに対応方針を確認している状況だ」と説明する。

     休校中の対応について大阪府の担当者は「家庭訪問の頻度を増やすことも考えられる」と指摘する。一方横浜市の中央児童相談所は現場のケースワーカーに不要不急の家庭訪問を控えるよう通知した。虐待対応・地域連携課の深海淳一郎課長は「感染拡大防止にも配慮が必要で非常に悩ましい」と胸の内を明かす。

     東京通信大の才村純教授(児童福祉論)は「児相の現場は常に人手不足なので、頻繁な訪問は難しいだろう」と理解を示し、子どもたちの命綱として民生委員や近隣住民に期待を寄せる。「子どもの境遇に思いをはせ、気になる子がいたら児相や自治体に連絡してほしい。それが命を救うきっかけになる」と話した。


    壮大な社会実験と考えれば様々な教訓が得られることが毎日続く。しかし、政権維持だけが目的の安倍政権の下ではそのことが教訓になるとは思えない。ましてやわざわざ「特措法」を改正してまで、自分の功績としようとする首相に「フリーハンド(非常事態宣言)」の権利を与えてはならない。「与党も野党もない」ということばを軽軽に信用してはならない。今回の共産党、社民党の議論は正しい。


    3月4日 参議院予算委 学校再開に専門家意見

     安倍晋三首相は3日の参院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う全国一律の休校要請を巡り、学校再開の可否を判断する際、専門家の意見を聞く方針を示した。春休み後も休校が続く可能性に関し「専門家の話も伺わなければならない」と明言した。休校要請を全国一律としたことについては、自らの政治判断だと繰り返し、具体的な科学的根拠を明示しなかった。野党は強く批判した。

     首相は2日の予算委で、休校要請に専門家の意見が反映されていないと追及され「直接、専門家の意見を伺ったものではない。時間 をかけるいとまがない中で私の責任で判断した」と認めていた。3日は共産党の小池晃書記局長が「春休みが終わる頃、今と同程度の感染状況なら、休校を続ける可能性もあるか」と質問。首相は「その時の状況を見て判断しなければならない」と表明した。

     池氏は全国一律とした科学的根拠を再三質問した「『ここはクラスター(感染者の集団)が発生しない』と確実に言えない中で、有効だと鑑み、全国一斉休校にした。政治判断だ」などと繰り返すだけだった。

     感染拡大を受けた緊急対応策の第2弾に関し「2700億円を超える2019年度(予算)の予備費を活用したい。全部使うかどうかも含め、10日に取りまとめる。できるだけフルに活用したい」と語った。

     首相は、全国知事会などとの協議を検討すると言及。日本維新の会の松沢成文氏が、休校要請を巡って必要桂を主張したのに対し 「大変重要な点だ。国と地方が心を一つにして対応することを前向きに検討したい」と応じた。

     中国からの新規入国者数に関し、1月時点で1日当たり2万人超だったが、2月は曰以降は千人を下回る程度に減少したと説明。中国の習近平国家主席の国賓来日を考慮し、初動対応が遅れたとの指摘を「水際対策で何か配濾していることは全くない」と否定した。


    新型インフルエンザ特措法「過剰な人権制限」懸念

     安倍晋三首相が新型コロナウイルス対策として、早期改正を目指す新型インフルエンザ等対策特別措置法の現行規定では、首相が「緊急事態」を宣言すれば住民の外出自粛などの行動制限を要請できる。臨時の医療施設用に土地や建物の強制使用も可能だ。感染拡大阻止のため危機対応を強化する目的がある一方、制定時から「過剰な人権制限の恐れがある」との懸念が出ていた。

     特措法は、新型インフルエンザなどが全国的かつ急速にまん延し国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすと判断した場合、政府対策本 部長を務める首相が緊急事態を宣言。都道府県知事は外出自粛や、学校の休校、興行施設の利用制限などを要請できる。

     知事は医薬品や食品などの物資の売り渡し要請や保管命令もできる。従わなかった場合の罰則規定も設けている。

     首相がこれまで要請したイベント自粛や臨時休校は法的根拠がなかった。新型コロナウイルスにも特措法の規定を適用できるようにすることで、世論の理解を得やすくなるとの考えがある。

     特措法は民主党政権時代の2012年4月に成立。共産党などは「人権制限に疑問の声が上がっている」と反対。日弁連なども「過剰な人権制限の恐れがある」との反対声明を出していた。

     特指法制定時には、新型インフルエンザで最大約64万人が死亡するとの政府行動計画の推計に関して、感染症の専門家からも「あり 得ないしナンセンス」との異議が示された経緯がある。


    「特措法」に大きな権限がある事に対する懸念は大きい。憲法改正に緊急事態条項を盛り込む、一斉休校要請に対しても一切エビデンスを示さない、専門家会議の議事録作成に消極的、そしてこれまでの公文書改ざんなど。様々な局面での首相の政治手法は信頼できない。そうしたなかでの「特措法改正」は極めて危険だといわなければならない。野党は「緊急事態」ということばに踊らされる事なく、新型コロナ感染症の広がりがどの程度のものなのかを冷静に見極め対応すべきだ。誤っても国家総動員体制のお先棒を担ぐ事がってはならない。


    3月4日 府・市教委 中期選抜 全日制0.96倍

     京都府と京都市の両教育委員会は3日、公立高入試中期選抜の志願者数を発表した。全日制53校の志願者数は前年度比568人減の 6343人で、志願著倍率は0・96倍(同比0・06ポイント減)だった。倍率が1・0を下回ったのは、2014生度入試で前期選抜が始まって以来初めて。

     全日制学科別の志願者数倍率は、普通科が5952人で1・0倍、専門学科が374人で0・72倍、総合学科が17人で0・15倍だった。

     最も志願倍率が高かったのは、城南菱創普通科(単位制)の2・14倍で、山城普通科(単位制)1・63倍、鴨沂普通1・63倍、嵯峨野普通科1・58倍が続いた。倍率が1・0を下回った学校は33校(分校・学舎含む)、学科数は48で、いずれも前年度より増えた。志願者数ゼロは4学科だった。

     中期選抜は第2志望など3校まで志望先 くことができ、現時点で募集人員に達していなくても定員割れになるとは限らない。中期選抜の志願倍率は年々低下しており、府教委は「私学や通信制を希望する受験生が増えているのではないか」としている。

     6日に試験、16日に合格発表がある。中期選抜の受験者や家族が新型コロナウイルスに感染したり感染の疑いがあったりする場合は 24日に追加の試験をする。


    志願者ゼロの学科は、桂園芸ビジネス、京都八幡人間科学、北桑田京都フォレスト、綾部園芸。また概ね倍率の低いところは北部の高校で、府教委の学校改革の効果が浸透していない感がある。都会志向が依然として強いと思われるが、何らかの対策が必要なのだろう。


    3月4日 レノボとNTT 「教室で1人1台」向けPC発売

     中国パソコン大手の日本法人「レノボ・ジャパン」とNTTコミュニケーシヨンズは3日、2023年度までにすべての小中学校の児童生徒が1人1台のパソコンを使えるようにする「GIGAスクール構想」に対応した2機種を、学校向けに発売した。

     税込み価格は4万4990円。国は公立小中学校について1台当たり4万5千円を補助することを決めており、自治体側が追加支出をしなくても済むという。

     マイクロソフトもしくはグーグルの基本ソフト(OS)を搭載した2機種から選べる。教員が授業で活用しやすいように、パソコン画面を使って問題を出せるソフトなどを組み込んだ。


    全ての子どもがパソコンを使えるようになる必要性があるのだろうかと今でも疑問に思う。例えば、スマホでの入力方法に馴染んでいる人は多いし、音声入力の精度も飛躍的に向上している。いわば家電感覚の操作が可能だということだ。しかし相変わらずのキーボードを持っているパソコンを子どもたちが将来に亘っても必要とするだろうか。穿った見方をすればアップルが優位な特殊日本の市場をウインドウズやクロムで挽回しようとするものか?などと思ってしまう。


    3月3日 文科省調査 日教組組織率過去最低を更新

     日教組の組織率は、昨年10月1日時点で前年比0.9ポイント減の21.7%と過去最低を更新したことが2日、文部科学省の調査で分かった。調査が始まった1958年の86.3%が最も高く、77年以降は43年連続の低下。日教組以外を含めた教職員団体全体の加入率も1.3ポイント減の32.0%と過去最低で、こちらも44年連続の低下となった。日教組以外を含めた教職員団体全体の加入率も1・3ポイント減の32・0%と過去最低で、こちらも44年連続の低下となった。

     調査は大学と高専を除く公立学校勤務の常勤教職員約102万6千人に実施し、教職員団体の加入者は約32万8千人だった。このうち、日教組は前年比約7600人減の22万2708人。このうち、日教組は前年比約7600人減の22万2708人。全日本教職員組合(全教)は約2千人減の3万4541人で組織率3・4%、全日本教職員連盟(全日教運)は約200人減の1万9518人で組織率1・9%だった。

     新規採用者の教職員団体への加入率は1・9ポイント減の23・8%。団体別では日教組が1・8ポイント減の18・1%、全教は前年から横ばいの1・1%、全日教連0・2ポイント減の1・5%だった。


    「教員の働き方改革」が取り沙汰される中でも組合の組織率は連続下降。これまで一定の教職員倫理を守ってきたのは実は組合であったのだがその影響力が年々薄れているように思う。神戸の「教員いじめ事件」もそうした現象の現れか。また、管理職に法遵守の姿勢が希薄になっているのも同根。


    3月1日 一斉休校 独断専行、腹心が主導

     安倍晋三首相は新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)拡大を受け、側近の異論を押し切り全国一斉の休校要請を決めた。見えない脅威に「究極の先手」(官邸筋)を打った形だが、独断専行の色合いも濃く長期政権となった「安倍1強」下の危うさがのぞく。自治体任せだった25日の基本方針から一転、27日の決断に至った48時間とその後の舞台裏を検証した。

     「私が英断した以上、私の責任で万全の対応を取る決意だ」。首相は29日夕の記者会見で、そう強調した。

     首相が週末に会見を開くのは異例だ。全国各地に感染が広がる事態に、焦燥感を募らせているのは間違いない。政府内では2月中旬 から、地域ごとの臨時休校案が取り沙汰されていたが「雑談の城を出なかった」(政府関係者)という。転機の一つは24日の政府専門家会議。「これから1〜2週間が瀬戸際だ」との警告が発せられ、首相判断の下地になる。ただ、翌25日の対策基本方針は、休校に関し各都道府県の判断に委ねる内容にとどまっていた。

     だが、基本方針公表後の25日午後、官邸で開催された会議で、全国一律の休校案が俎上に載った。複数の関係者は、首相腹心の今井尚哉首相補佐官が主導したと証言する。菅義偉官房長官は「やり過ぎではないか」との認識を示した。

     翌26日の衆院予算委員会で、首相は「常に後手だ」(立憲民主党の枝野幸男代表)と批判の矢面に立たされる。北海道は小中学校の 休校要請を決断。首相は周辺に「政権にとって正念場だ」と語り、一斉休校案の本格検討に踏み出す。

     官邸側は27日朝、文部科学省に一斉休校案を伝え、自民、公明両党の一部に状況が漏れ始める。「大混乱になる」(閣僚経験者)との危機感から反発が拡大した。

     首相側近の萩生田光一文科相は「春休みの前倒し案」には理解を示していたが、全国一律で約1カ月にも及ぶ休校案には抵抗してい た。だが、首相は腹を固めていた。午後に萩生田氏と藤原誠文科事務次官と官邸で会い「政治決断した」と通告。対策本部会合で一斉休 校要請の考えを表明した。

     ただ、翌28日の国会審議で、方針の「生煮え感」(立民幹部)が早くも露呈する。首相は午後の衆院財務金融委員会で「基本的な考え方として示した。各学校、地域で柔軟にご判断いただきたい」と発言した。与党内からも一律の休校要請を疑問視する声があり、自治体側の判断を尊重する対応に軌道修正を図った。しかし、その配慮があだとなり国がしっかりやつてほしい(千葉県の森田健作知事)と批判の連鎖を招いた首相は29日の会見で結果責任から逃げるつもりは毛頭ない」と言い切り、退路を断つ意向をにじませた。


    東京工業大の西田亮介准教授(社会学)の話自己肯定的 具体性欠ける

     安倍晋三首相の記者会見は、自己肯定的で、今こそ危機の分水嶺だと強く印象づけるものだった。これまでの施策を改めて説明し国民の協力を求めたが、具体性に欠けていた。小中高校への休校要請についても、責任ある立場での決定と言いながら理由は示さず、説明責任を十分果たしていないと考える。一方、トイレットペーパーの買いだめなどにつながるデマと不安について、首相の口で明確に打ち消し、冷静な判断を求めたことは一定の評価ができる。国民は既に静かなパニック状態に陥っており、政府が適切な情報を提供することが重要だ。


    「断腸の思い」との首相の言葉だが率直に受け入れることはできない。この間の様々な場面での「ことばの軽さ」は覆せない。そして何故学校なのかという問いには全く答えていないことに不信感は極まる。「桜を見る会」での問題も公費を私的流用する事に痛みを感じないという首相の姿勢をみるにつけ、「休業補償」も政権維持のためのバラマキとの疑念もふつふつと沸き起こる。