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  • 学習遅れ、2週間後受験可.20
  • 教員志願倍率が低下.20
  • 「ぎりぎりの判断」.20
  • 放課後ディ不適正運営.25
  • 夏休み短縮 期間に差.25
  • 日程選択 校長判断.30
  • 6月30日 大学共通テスト 日程選択 校長判断

     新型コロナウイルスの影響を踏まえ、大学入学共通テストに設けられた現役生が主な対象の「第2日程」について、運営する大学入試センターが、生徒が第2日程を選択する際は、休校に伴う学習遅れがあるとする校長の判断を求める方針を固めたことが29日、関係者への取材で分かった。

     「第1日程」との選択時期を、今秋の出願時とすることも判明した。休校の期間は各地で異なるが、居住地域は問わない。センターは、こうした点をまとめた共通テスト実施要項などを30日午後に公表する。

     共通テストは大学入試センター試験の後継で、今回が初回。来年1月16、17日を第1日程とし、2週間後の同30、31日に第2日程を設定した。。第2日程を選ぶと対策の時間が長くなり、第1日程の出題傾向も把握できる利点がある一方、その後に行われる各大学の個別試験の準備が遅れるため、受験生には悩ましい選択になりそうだ。

     第2日程を選ぶ受験生があまりにも多いと試験場が足りなくなる恐れもあり、文部科学省は都道府県教育委員会を通じて全国の受験生にアンケートを行い、現時点の意向を把握する。

     関係者によると、浪人生は高校での学びを終えているため、学習遅れの理由では第2日程を受験できない。

     共通テストでは当初、病気などで本試験を受けられなかった受験生が対象の「追試験」を、―週間後の来年1月23、24日に東京と大阪の2会場で実施する予定だった。

     文科省は、これを学習遅れの現役生も受けられる第2日程とし、2週間後へ変更。会場も47都道府県で行うことを決めた。第1日程と得点調整はしない。

     病気などで第1日程を欠席した場合は、現役生、浪人生とも第2日程ヘスライド。第2日程も欠席した受験生向けに、来年2月13、14日に「特例追試験」を設ける。

     新型コロナ感染拡大防止を目的とした安倍晋三首相の一斉休校要請を受け、高校を含めた全国の大半の学校は3月から長期休校に入った。感染者が拡大した首都圏などでは約3ヵ月に達し、6月の再開後も分散登校や短時間授業が続いてきた。


    重要な課題を現場判断で行うというのはどうか。「第2日程」を希望する受験生がおそらく想定外に増える可能性はあるだろう。希望を聞く校長はできるかぎり受験生の意向に沿いたいと思うはずだが、「削減」の要求が出された場合はどう対処するのだろう。ここでも不平等だと感じる生徒も出てくるのではないだろうか。


    6月25日 府内自治体 夏休み短縮 期間に差

     新型コロナウイルスの影響で4月から5月にかけ休校が続いたことを受け、京都府内の全ての市町・広域連合の教育委員会が小中学校の夏休みの短縮を24日までに決めた。ただ自治体によって変更後の夏休み期間は14〜28日間とばらつきがあり、学習の遅れの取り戻し方の違いや地域事情などによって差が生じている。

     最も夏休みが短いのは、乙訓地域の向日、長岡京2市の14日間だった。いずれも7月21日〜8月25日の計画だったが、8月5〜18日と22日間短縮した。休校は長岡京市の小学校で4月9日〜5月31日に行っており、同市は「学習を回復させるための7時間授業や土曜授業は考えていない。教室の冷房も完備し総合的に判断した」と説明する。向日市も「授業日数の確保や子どもたちの体調などを考慮して決めた」とする。

     一方、最も長いのは伊根町で、小学校は7月30日〜8月26日の28日間、中学校は7月31日〜8月26日の27日間。町内で感染者が発生していないため休校期間が4月22日〜5月17日と、府南部の自治体より短く設定したことから夏休みの短縮日数も少なく済んだ。さらに近年は多くの自治体が8月下旬にする2学期始業式を9月1日に予定していたため、短縮しても8月26日まで夏休みにすることができたという。

     各自治体とも学習の遅れを取り戻すために知恵を絞っており、亀岡市は夏休み期間か8月1〜17日の17日間で、同月の第1週は学校によって登校日を設定可能にする予定。学習の遅れや心のケアもあるので補習をしても構わないことにした」という。

     このほか京都市は夏休みは8月1〜23日の23日間とした。当初の計画は小学校が7月22日〜8月25日、中学校が7月20日〜8月24日だった。市は本年度、授業時間を小中とも5分短縮して7時間授業を導入することで学習を進める方針で「夏休みは探究的な体験活動に取り組むなど教育的意義もあるので、7時間授業や行事の見直しなどをすることで最小限の短縮にとどめた」としている。



  • 放課後ディ不適正運営.25
  • 6月25日 市議会 放課後ディ不適正運営

     不適正な運営があったとして行政処分を受けた京都市の放課後等デイサービスを巡り、市議会教育福祉委員会で24日、市の指導体制に疑問を呈する質問が相次いだ。市内の放課後等デイサービスでは不正が続いており、議員から改善を求める声も強まっている。

     処分を受けたのは、有限会社つぼみ(南区)が下京区で運営する「夢来」。2015年5月から4年間、通っている障害児ごとの個別支援計画に不備があったにもかかわらず、2千万円以上の給付金を不正に受給していたとされる。

     市は通報で不正の情報を得て、今月22日に夢来の新規利用者の受け入れを9ヵ月間停止する行政処分を行った。市内で行政処分を受けたのは、放課後等デイサービスが制度化された12年以降で5ヵ所目になる。

     委員会では、複数の議員が今回の処分を取り上げ、市の指導体制を尋ねた。市は14年3月定期的な実地指導で個別支援計画の不備を把握したものの、改善報告書を提出させただけにとどまっていたという。今回は通報がきっかけだっただけに、議員からは「定期的に実地指導をしていれば早く気づけた」との指摘が相次いだ。

     国は、放課後等ディサービス について、新規事業所は開設から1年程度、その他はおおむね3年に1度の実地指導を自治体に求めている。市によると、市内157事業所のうち、開設後に指導しないまま2年以上が経過した事業所は4月時点で約30力所、前回指導から3年以上が経過した事業所は5ヵ所程度あるという。

     放課後等ディサービスは全国的に急増しており、サービスの質が課題となっている。市は昨年度、事業所の総量規制を始め、監査担当の人員も増やしたが、追いついていないのが実情だ。委員会で市の担当者は「組織的に指導に力を入れ、メリハリを付けて対応していきたい」と述べた。


    コロナ禍のなかで公務員不足による不備が目立っているが、放課後ディケアーもそうなのか。問題点は二つあるのだろう。一つは民間に委ねているという点。もう一つは行政の指導体制の不備だろう。必ずしも公的な施設でなければならないというものではないが、公共的社会的資本の削減が効果的なのかどうかと問わないといけない。また、3分の1が非正規といわれる公務員のありようも改めて問題とされなくてはいけない。


    6月20日 橋本府教育長 「ぎりぎりの判断」
     新型コロナウイルスの影響で、3月から春休みを挟んで約3ヵ月にわたった臨時休校が終わり、6月から多くの学校が再開した。この間、各自治体の教育関係者は感染状況に合わせて休校、再開と難しい判断を迫られた。休校は子どもたちの学習だけでなく、社会的にも大きな影響を及ぼした。どういう思いで決断したのか京都府教育委員会の橋本幸三教育長に聞いた。 (聞き手・三村智哉)

    −2月27日に安倍晋三首相が一斉休校を要請した際、どう対応したのか。

     「驚いた。ただ全国一律なら仕方ないと感じた。高校入試など大切な時期なので影響を最小限にしようと政府の要請日より1日遅らせた3月3日より府立学校を休校とした。知事には休校の方向性だけ確認を取り、具体的な日程はこちらで決めた。早く発表し市町の参考にしてもらおうと、京都市や各市町への連絡は発表直前になった。その後、休校中の子どもの居場所の確保が話題となり、学校は学習だけでなく大きな社会的意義があるのだと改めて認識した」

    −教育を受ける権利は憲法で規定される重い権利だ。それでも休校を決断した理由は。

     「3月の時点では誰も(この感染拡大を)経験したことがなく、何か正しいか分からず、安倍首相の要請に従わざるを得なかった。今振り返れば少し早すぎたという感じもするが、海外では一斉休校にした国もあり、全くあり得ないとは言えなかった。ただ安心して学べる学校にすることは大切だが、安易に休校し学びが犠牲になるのは望ましくない。教育を受ける権利保障は教育行政にとって重要な使命なので、学校は可能な限り開けて教育を受けちれるようにしたいという思いは強い。

    −4月には3日の金曜に学校の再開を発表し、週明けの7日には一転して休校を発表した」

     「2日に西脇隆俊知事と門川大作市長が共同記者会見し、『京都府は感染拡大警戒地域には当たらない』と言われたため、迷ったが京都市教委と調整し再開を発表した。その後、感染経路不明の新規感染者が増え、再開方針にも膨大な数の抗議の電話が寄せられ、朝令暮改だが休校すると決めた。この時期は精神的にしんどかった。ただ府内は地域差があり、北部は市内と状況も違うので閉める必要はないと考えた。学校はなるべく開けたいという強い思いがあった。全国では緊急事態宣言が都道府県単位で出るので、地域を分けて対応したところはあまりなかった」

    −この時の判断を振り返ると。

     「当時、教員や生徒に感染者は1人もおらず、警戒地域にも当たらないので文部科学省のガイドラインでは休校しなくてもよかったが、保護者の大きな不安の前では『ガイドラインではこうだ』と理屈を言っても難しいと痛感した。状況は刻々と変わるが、ガイドラインではきめ細かに対応できなかった。保護者や生徒の声を聞き、短い期間でも判断を変えることが大事だろうと思う。知事もぎりぎりの判断だと言っていた。朝令暮改になっても仕方ないとは知事と共有していた。結果的にそうするしかなかったと思う」

    −感染拡大の第2波に向け今後の対応方針を聞きたい。

     「感染した場所や経路、感染者の数など個々の事情に応じて休校の可否や範囲を考える。文科省のマニュアルにも書かれている。1人でも学校で感染者が出たら即時休校、とは考えていない。とはいえ感染者が1人出ただけでも不安が広がる可能性もある。子どもを学校に行かせられないと言われれば無視できない。最終的には個別の判断になる」

    −保護者の理解をどう得ていくつもりか。

     「そこは今後も多いに悩むと思う。理解は得たい。4月の時は学校を開けた場合の不安しかなかったが、休校が長期化すると学びの不安の方が強くなった。すぐには休校しないと決めた場合、理屈をどこまで理解してもらえるかだが、説明しても 難しいとなればそれを押してまで実行するのは難しいかもしれない」

    −休校による学習の遅れが懸念され、来年の府立高校入試の範囲がどうなるかも心配されている。

     「長期休校期間中の学習は家庭が中心となった。特に小学校では丁寧に学習に関われた家庭とそうでない家庭とで差が生じると思う。家庭学習の状況をしっかり点検し、きめ細かな補習などフォローしなければならない。第2波が来ればオンライン学習の活用がこれまで以上に迫られる。府立高入試は出題範囲も含めてどういう配慮ができるか検討中であり、できるだけ早く公表したい」

    −国会では9月入学の議論が起きていた。

     「9月入学を考えることは反対でないが、先の見通しが立たない今の時期に大きな改革に精力を注ぐと目の前の子どもたちへの対応の妨げになる。今は検討すべきではないと思う。落ち着いた時期にしっかぴ考えた方がよい」



    6月20日 府・市教委 教員志願倍率が低下

     京都府と京都市の両教育委員会はこのほど、2021年度教員採用試験の志願状況を発表した。全職種の平均志願倍率は、府教委が5・1倍(前年度5・8倍)、市教委が5・3倍(同5・4倍)といずれも前年度より低下した。



    6月20日 大学共通テスト 学習遅れ、2週間後受験可

     文部科学省は19日、本年度実施の入試について基本的な事項を示す「大学入学者選抜実施要項」をまとめ、全国の国公私立大などに通知した。新型コロナウイルスによる休校長期化を踏まえ、大学入学共通テストの試験日に予定通りの「第1日程」に加え、2週間後の「第2日程」を設けた。現役高校生は学習遅れを理由に、第2日程を選択できる。今後、どのような条件なら第2日程を選べるのか、詳細を詰める。浪人生ら既卒者は第2日程に出願できない。  共通テストの第1日程は来年1月16、17日。第2日程は全都道府県に会場を置き、2週間後の同30、31日に実施する。受験準備が間に合わない高校生は、出願時にどちらかの日程を選ぶ。体調不良などやむを得ない事情で第1日程を受験できなかった時は、第2日程を受験。第2日程を受験できなかった人のため、追試験を2月13、14日に行う。第2日程出願の要件は、大 学入試センターが取りまとめる。  今年9月1日に始まる予定だった総合型選抜(AO入試から改称)の出願は2週間延期され、同15日以降となった。11月1日開始の学校推薦型選抜(推薦入試から改称)の出願と、来年2月1日以降の一般選抜は当初の予定通り実施する。  文科省は大学側に、個別試験でも複数の試験日程を設けることや、出題範囲を限定するよう要請。試験会場で「3密」を避けるためのガイドラインも作った。試験室には収容定員の半分程度しか入れないことや、受験生に昼食持参を求めることといった対策を示した。  萩生田光一文科相は19日の記者会見で、第2日程を選ぶ条件について「今、詳細を考えているが、基本的には(第2日程も)選ぶことを可能にしたい」と表明。大学側に「例年と異なる特別な対応が必要」と訴えた。


    「3か月=2週間」という奇妙な数式が当てはまるのか?理解に苦しむが、これで教育の平等が図れる文科省は考えているのか。


    6月18日 文科省の協議会 大学共通試験予定通り

     新型コロナウイルスによる休校長期化を踏まえた大学入試日程が17日、高校、大学関係者らを集めた文部科学省の協議会で了承された。受験シーズンの感染状況が見通せず誰もが納得できるような「満点答案」の作成が不可能な情勢下で、大学側は日程変更の困難さを強調。高校側は、学習遅れの回復には繰り下げが必要と一枚岩で訴えるはずだったが、足並みの乱れが表 面化した。

     16日午後6時、文科省の会議室に、全国高等学校長協会(全高長)の萩原聡会長(都立西高校長)ら4人が硬い表情で入った。「安心して公平公正な大学入試に臨めるよう、実施時期を一体的に1ヵ月程度後ろにずらすことを求める」とする要望書を持参。しかし、数分後に入室した文科省の西田憲史大学振興課長は、全高長側が要望書を受け取るよう30分以上も求めたのを「文科省の総意」として拒み続けた。

     全高長は全国の大部分の国公私立高5千校以上が会員。文科省の各種会議に高校を代表する形で参加しており、要望書が受理すらされないのは極めて異例だ。

     伏線は13日、全高長が開いたオンライン会議にあった。文科省の要請を受けて全高長が実施し11日に公表された全会員校対象のアンケートでは、大学入学共通テストと一般選抜の日程繰り下げを求める回答が3割にとどまった。しかし会議では、特に状況が厳しいところの救済を第一に考えるべきだといった意見が相次ぎ、アンケート上の「少数派」に寄り添う要望書をまとめた。

     一方、文科省は全高長の方針に反発。結果公表前は日程変更に前向きな姿勢を示していた萩生田光一文科相も記者会見で「ころころ変わられても困るという思いもある」と述べた。背景にはアンケートを実施した以上、多数派の意見を基にすべきだという考えがある。

     ただ、全高長が「少数派に寄り添う」として要望書の受け取りを求める以上、断る理由が必要になる。そこで文科省が持ち出したのが、私立中高からなる日本私立中学高等学校連合会(中高連)が日程繰り下げに同意していない点だった。

     中高連は会員校の多くが全高長にも所属し、今回のアンケートに協力した。吉田晋会長は「国公私立高の7割が予定通りを求めているのに無視するのか。繰り下げた結果、感染拡大の時期と重なるリスクもある」と語気を強める。

     「受け取っていただけなかった」。16日午後7時すぎ、中ぶらりんとなった要望書を手に、東京都内で記者会見した全高長の萩原会長は文科省への失望感を隠さなかった。同席した首都圏の校長は、今も短縮授業が続いているとして日程繰り下げを繰り返し訴えた。

     文科省幹部は「今後の感染状況が見通せない以上、現時点での変更は最小限とすべきだ。予備日の設定や、感染拡大を想定して大学側の準備を進めるのが現実的ではないか」と強調した。


    受験生安心や懸念の声

     文部科学省の協議会で大学入試日程が固まった17日、受験を控える高校生らからは、休校の長期化によって生じた学習遅れの影響に不安や懸念を抱くと同時に、「やるべきことは変わらない」「努力を継続するだけ」と前向きに受け止める声が聞かれた。

     「ずっと準備を続けてきたので、当初の日程で決まってよかった」。国公立大歯学部を目指す福岡市の男子予備校生(19)は、日程が維持される大学入学共通テストや一般選抜を受験する。愛知県立明和高校3年の北村優衣さん(18)も「最初から来年1月に共通テストを受ける気でいた。変更がないことにそれほど焦りはない」と話した。

     岩手県立大槌高3年の藤社彩乃さん(18)は「影響はあまりないが、休校が多かったよその都道府県では学習に遅れもあると思う」とし、日程がなかなか決まらなかったことに「逆算して、どんな勉強や対策をとればいいか想像できず苦労した」。島根県立松江東高3年の野津昂太郎さん(18)も「これからも変更があるかもしれないし、不安」とした。

     「勉強が間に合わない。日程は遅らせてほしい」と漏らしたのは東京都立高3年の平賀陽菜さん(18)。「私立はオンライン学習などで勉強できたところが多いと聞き、既に差がついていると思う。これで落ちたら、不満が消えないと思う」

     札幌市の高校3年鈴木俊太朗さん(18)も「現役生は損をして、浪人生に有利になった。差が埋められるかどうか」と懸念。名古屋市の予備校に通う水野智貴さん(18)は「普通なら4月には試験の日程を把握して計画を立て、勉強できるはずだった。去年と試験が少しでも変わると、合格の基準点も変わりそうだ」と述べた。


    受験する側からは日程が定まらないと当然不安の声は上がるだろう。履修した課目によって遅れの度合いも違ってくるから単に日程を延期しただけでは「解決」にはならないのだろうが、少なくとも「公教育」である以上文科省は一定の配慮を受験生に示すべきだろう。また、そもそもこの「共通テスト」が必要かどうかが問われなければならない。知識の多寡を測ることの改善を目指したはずにもかかわらず、「身の丈」発言によって頓挫してしまった「改革」の問題点を含めて見直すべきだろう。


    6月16日 さいたま市教委 児童ら10万人が一斉拍手

     さいたま市の市立校の児童・生徒約10万人が15日、新型コロナウイルスに対応する医療従事者に感謝の意を示すため、教室などで一斉に拍手した。通常授業の再開に合わせて市教育委員会が計画し、各校に事前に通知していた。インターネット上で「全体主義的だ」「行政パフォーマンスのための動員」などと批判されていた。

     活動は15日午前、さいたま市立の小、中、高校と特別支援学校の全168校で、ビデオ会議システムを通じて実施。清水勇人市長や細田真由美教育長があいさつした後、生徒らが約30秒間、一斉に拍手した。

     終了後、細田教育長は取材に応じ、感染拡大で変化した社会の現状について学ぶ教育の一環だと説明。「気持ちを行動に移すことが大切だと伝える上で意義がある。ネット上で批判するのは自由だが、意に介さない」と述べた。


    「子どもを動員する」のは学校教育の常套手段であるが、それを良しとするものではない。自粛を強いられ学ぶ権利を制限されその上ある種の価値観(イデオロギー)を強制されることは許されないはず。しかし、それを良いこととして教育現場で実施することは認められないだろう。安全・安心や感謝など一見脱イデオロギー的に見える行為の中に潜む怖さは「自粛警察」と同じだと思える。


    6月16日 文科省 総合型選抜出願開始繰り下げ

     新型コロナウイルス感染症による休校が長期化した中での大学入試日程を巡り、文部科学省が、AO入試から改称した総合型選抜の出願開始日について、予定していた9月1日から2週間〜1ヵ月繰り下げる方向で調整に入ったことが15日、関係者への取材で分かった。

     11月1日出願開始の学校推薦型選抜(推薦入試から改称)と、来年1月16、17日実施の大学入学共通テスト、来年2月1日に試験開始の一般選抜は日程を変更しない方向で調整。全体の延期論もあった入試日程の大枠が固まってきた形だ。

     いずれも、全国高等学校長協会(全高長)が国公私立高5276校を対象に実施したアンケートの結果を踏まえた。今月17日に高校や大学関係者らを集めた協議会を開いて正式決定する方針。今後、感染が再び拡大した場合、共通テストの予備日を設けることなども検討する。

     全高長のアンケートでは、総合型選抜について「2週間程度繰り下げ」を求める回答が24・2%、「1ヵ月程度」26・4%、「それ以上」が2・8%で、計53・4%と半数を超えた。一方、学校推薦型選抜は計48・4%、共通テストは計30・9%、一般選抜は計30・6%にとどまった。

     総合型選抜の繰り下げ幅は「2週間」と「1力月」で意見が分かれていることから、17日の協議会でどちらが望ましいか判断する。その他の入試は日程を維持する一方、一般選抜で出題範囲を限定するといった配慮を各大学などに求めることで、休校に伴う学習遅れに対応したい考え。



    6月14日 全国高等学校長協会 大学入試日程 延期要望

     全国の国公私立高校の校長でつくる全国高等学校長協会(全高長)は13日、各地の校長によるオンライン会議を開き、新型コロナウイルス感染症による学校再開時期が地域によって異なり、学習格差が生じているとして、大学入学共通テストを含む大学入試全体の日程を1ヵ月程度繰り下げるよう、文部科学省や大学に要望することを決めた。15日以降、文科省などに申し入れる。

     コロナ禍を巡り、全高長がこうした要望をするのは初めて。文科省が11日に開いた大学入試に関する協議会では、国公私立高の7割が共通テストを来年1月、予定通り実施するように希望したとする全高長のアンケート結果が示された。

     しかし、全高長内部では、都市部の高校から授業が大幅に遅れているとの報告が寄せられ、13日の会議でも「都市部の事情が早く分かっていれば、共通テスト延期を希望したという高校もある」(栃木県)、「公平性の観点から7割より3割の希望を重視した方がよい」(愛知県)などと、学習格差に配慮すべきだとの意見が相次いだ。

     全高長は議論を踏まえ、総合型選抜(9月開始、AO入試から改称)や学校推薦型選抜(11月開始、推薦入試から改称)の他、国公私立大の一般選抜を含む入試全体の延期が必要と判断。企業による高校生採用選考の開始時期が9月から1ヵ月延びたことを受け、入試日程も1ヵ月程度の繰り下げを求める。


    「延期はしない」と12日に報道があったばかりだが、すぐに校長会から異論が出る。「もう変更はしないでほしい」との高校生の訴えも届いていない。文科省は十分検討をしたうえでの決定をしたのか疑念は深まるばかり。「一斉休校」に至る議論の議事録も作成されていないと報道があったが、ほとんどの議論が検証不可能な状態にある。これでは、行政が単なる「思い付き」で進められているとしか思いようがない。少なくとも「出題範囲」を限定するなど、3か月にわたる空白を穴埋めすることに汲々とする方向ではない方向での議論をすべきだろう。


    6月14日 スーパーシティ法成立 AI都市構造見切り発車

     17日の会期末が迫った今国会では新型コロナウイルスの感染防止策や経済対策が焦点になる陰で、さまざまな法律が盛立した。人工知能(AI)やビッグデータを活用した先端都市「スーパーシティ」の構想実現に向けた改正国家戦略特区法もその一つ。野党や識者はプライバシー侵害を懸念するが、政府のコロナ対応に隠れ、国民の理解や議論は深まっていない。

     構想は、車の自動運転やドローン配送、キャッシュレス決済、オンライン診療など複数の先端サービスを組み合わせ「便利で快適」な未来の暮らしの実現を目指すもの。特区に選ばれた自治体は内閣府や民間業者と連携し、まちづくりの計画を作成。複数分野にまたがる規制の一括緩和を首相に要求できる。

     内閣府が例に挙げるA市の構想はこうだ。運転免許を返納した高齢者は病院に行く際、配車アプリでタクシーを予約すると同時に通院も予約。タクシー料金は地域のボランティア活動で付与されるポイントで支払う。一連のサービスは、配車と通院、決済など複数のシステムやデータを連携させる「データ連携基盤」で可能になる。

     この基盤を整備するのは、自治体の委託を受けた民間事業者が想定される。各サービス事業者が必要とするデータを国や自治体に求められる。A市の場合、配車事業者が事業計画を立てる目的で、高齢者の居住地域や健康状態のデータを国などに求めるケースが考えられるという。

     「単に通院するためなら、健康状態を出す必要はない。今まで国や自治体の情報を民間企業は簡単に取れなかった。でも流れていってしまう。それでいいのか」。5月15日の参院地方創生・消費者問題特別委員会。社民党の福島瑞穂氏は、個人情報が保護されるのか強く懸念した。

     規制緩和に詳しい内田聖子アジア太平洋資料センター共同代表は「ある人がタクシーに乗り、病院に行き、いくら払ったという情報が基盤によって蓄積、連携されてしまう。情報が知らぬ間に企業のマーケティングに利用されたり、最悪の場合、悪用されたりする恐れもある」と指摘。「自分でコントロールできなくなり、私の情報は私のものという『データ主権』の面で問題」と訴える。

     同法改正案は4月2日に衆院で審議入りし、5月27日に参院で成立した。内田氏は「深い議論が必要だが、国会審議は表面的で足りていない。不要不急の法案だった」と批判した。


    コロナの流行はこれからの社会の在り方を大きく変える可能性があると思えるのだが、政府・与党の方向は元の経済成長を夢想しているように見える。同じ片仮名の構想でも「スマートシティー」と呼ばれる電力の地産地消にかじを切ろうとする方向が必要だろう。余談だが2016年の平田オリザ「下り坂をそろそろと下る」 (講談社現代新書)で3・11以降の状況を踏まえてながら日本の行く末を「下り坂」と書いている。改めて読み直してみるといいかもしれない。


    6月13日 市教委 1学期通知表出さず

     京都市立小中学校で1学期の通知表が児童生徒に渡されないことが12日分かった。新型コロナウイルス感染防止に伴う臨時休校の影響で、主に実技を伴う教科で総合的に評価するだけの授業数が確保できないため市教育委員会が決めた。

     全国の自治体や学校現場でも、1学期の評定(通知表)をどうするかは課題になっている。

     市教委によると、通知表に記される5段階や3段階の評定は「知識・技能」や「関心・意欲」など複数ある観点別の評価を総合して付けられる。教科によっては1学期の授業数が少ないため観点別評価が出そろわない見通しで、通知表で評定を示すのを一律で取りやめる。学年末には評定を出すので問題はないという。

     1学期末に担任が行う保護者との個人懇談で、用意ができる範囲内での観点別評価を基に学習状況や学校生活の様子を伝える。市立高では従来通り通知表などを出す。

     各校は12日までに文書で保護者に伝えた。市教委は「評定は出さないが評価はしており、進学などに影響はない。評価については懇談で丁寧に説明し、夏休み以降の学習に役立ててもらう」としている。


    1学期の通知表を出さないのは適切な措置だと思う。一方で、個人懇談会では可能な限り学習の評価を示すという。当面この二ヶ月で必要なことは、現場の疲労(子どもも教職員も)をどれだけ軽減するかではないだろうか。教育の結果として「評価」することは必要なことだが、学習環境の安全確保などで忙殺される日常に加えてこれまでのような「評価」をすることに意味があるのかを問う必要もある。現場の管理職はまず現場から発想すべきで、ヒラメなってはいけない。


    6月13日 府・市教委 部活の対外活動段階的に緩和へ

     京都府と京都市の両教育委員会は12日、府立学校や市立高校の部活動の対外活動について、19日から段階的に緩和すると発表した。現在は新型コロナウイルスの感染予防のため禁止しているが、8月までかけて徐々に外部との練習試合や合同練習、合宿などを解禁する。

     19日〜7月9日は、参加者が100人以下であれば府内全域での対外活動を認める。ただしなるべく近隣の通学圏との交流から始め、他府県の学校との交流や宿泊を伴う活動は禁止のままとする。練習時間は現在2時間程度に抑えているが、平日は3時間、休日は4時間程度と通常に戻す。

     7月10〜31日は、参加者の制限は設けず、近畿地方内の活動や学校との交流を行えるようにする。8月1日以降は近畿地方外の活動や宿泊活動を可能にし、ほぼ通常通りに戻す。

     両教委とも、府や市のイベント開催制限の緩和スケジュールなどを参考に決めた。



    6月12日 文科省 大学共通試験1月実施へ

     新型コロナウイルス感染症による休校が続き、延期論も取り沙汰された大学入学共通テストについて、文部科学省は予定通り実施する方向にかじを切った。高校団体などから予定通りの実施を求める意見が多かったことを踏まえた対応だが、休校が長引いた首都圏などの高校は「準備が間に合わない」と依然延期を主張する。学習遅れに配慮しつつ、どう公平な試験を実施するかー。関係者の間で議論が続く。

     「クラスが半分ずつ登校できるようになったばかり。2ヵ月は遅らせてほしい」。5月末まで学校を閉じた東京都立高の校長は訴える。コロナ禍による進路変更や家庭の事情の変化を心配しているが、対面での進路面談ができず、指導が進まない。「準備が整わず、進学を諦める子どもが出てくるのではないか」と危ぶむ。

     本年度、大学入試センター試験の後継として、共通テストが始まる。当初は英語民間検定試験も活用するはずだったが、試験会場が少なく、受ける機会が乏しい地方の高校に配慮し、見送りが決まった。この校長は「休校期間は地域によって違い、民間試験と構図は同じだ。住む場所で不利益を受けてはならない」と力を込める。

     現在まで感染者ゼロの岩手県。4月以降、休校したのは実質2日という県立高の校長は「3年生は入試改革やコロナに振り回されて気の毒だ。首都圏の深刻な事情は理解するが、予定通り受験させたい気持ちもある」と話す。

     一枚岩ではない高校側に対し、大学側は私大を中心に、共通テスト延期に後ろ向きの立場を示している。都市部の大規模大は例年、万単位の志願者を集め、1年以上前から試験会場を準備する。本格的な入試シーズン開始となる共通テストの実施日や、併願先の大学の動向を見極めながら入試日程を決めており、延期の影響は甚大だ。

     今年1月の最後のセンター試験では、私立大533校が成績を活用。共通テストの成績も、多くの私大が使う。センターから受験生の成績送付が遅れ、入学式までに合格者が決められない恐れも。受験料は私大収入の柱の一つで、経営にダメージを与えかねない。

     8日に開かれた私大団体の会合で、東京女子大の茂里一紘学長は「共通テストが半月でもずれると、いろいろな玉突きが生じる」と強調。早稲田大の田中愛治総長はそもそも成績の提供時期が遅いとして「日本の大学の8割は私立。国立を中心に日程を考えてもらっては困る」と苦言を呈した。

     感染症が再流行する可能性も残り、文科省幹部は「時期をずらせば何とかなるとは言えない」とくぎを刺す。また、共通テストは都道府県内の大学などが試験場となることから、都道府県を越える移動が厳しく制限される事態にも対応しやすいと見る向きもある。国立大学協会の永田恭介会長は「受験に県をまたぐ必要がなく、個別試験よりやりやすい」と語る。

     一方、オンライン教育の実施状況により「地域間だけでなく公私立、学校間で学習格差が生じている」と指摘するのは、大学受験に詳しい教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務。「予定通りに共通テストを行うとしても、あらゆる事態を想定し、出題範囲を限定するなどの準備もしておくべきだろう」と話した。


    教育を語るときには、表向きは「子どものため」というが、「一斉休校」や「9月入学論」も然りで結局は関係者の利害が優先していると思える。そもそも「共通テスト」そのものが必要なのかどうかどうかをこの時期に問い直すべきではないのか?たとえすぐには実施できないとしてもだ。


    6月11日 府教委 学習遅れ対策 教員100人増へ

     京都府は10日までに発表した2020年度一般会計補正予算案に、教育関連の新型コロナウイルス対策として17億2700万円を計上した。全額国庫補助で、休校のために学習が遅れる小学6年、中学3年への教員加配などを盛り込んだ。

     教員加配は4億6千万円。小中学校の最終学年は学習の遅れを翌年度に持ち越せないため、京都市を除く府内の小中学校で教員を計100人程度増やして少人数クラスなどを実現し、密集を避けながらきめ細かな指導をする。

     また教員の感染対策や授業の準備に関する負担が増えているため2億9600万円かけて教員を補助するスタッフを全小中高校に配置する。児童生徒の相談や学習支援に当たる「心の居場所サポーター」なども1億8600万円で全学校に置く。

     このほか府立図書館(京都市左京区)では2千万円で感染防止のためについたてを置いたり、図書20万冊に透明ブックカバーを装着したりする。


    市教委学校の再開受け 非常勤講師増員へ

     京都市教育委員会は10日、補習などで指導する非常勤講師と教員の業務をサポートする校務支援員を7月から増員する予定だと明らかにした。新型コロナウイルス感染防止による臨時休校からの学校再開を受けた取り組み。

     非常勤講師は全258市立学校・幼稚園にそれぞれ2、3人程度配置し、休校中の授業の補充などに当たる。校務支援員は現在110校・幼稚園のみに配置されているのを全校・園に拡大。資料の印刷といった従来業務に加え、備品の消毒や「3密」回避の対応などをする。

     市教委が10日の市議会教育福祉委員会の一般質問で答えた。衆院を通過した2020年度第2次補正予算案を見込んだ施策だが、増員にどの程度の予算が必要かは明らかにしていない。


    学校スタッフの増員は必要で歓迎すべきこと。ただ、人材の確保が非常に難しいのはこれまでも、「なり手が見つからない」というのが現状。退職者にも声をかけて人材の確保に努めるべきだが、これまでの学校運営では、率直に求めに応じてくれるかどうかは心もとない。一方で、若い人たちには教員志望を見透かした「サービス残業」を求めないことも必要。学校現場では、これまでの学校運営に「新しい労働様式?」を定着させなくてはならないだろう。


    6月5日 文科省 家庭学習へ教科書仕分け

     新型コロナウイルス感染症拡大による休校長期化で生じた小中学校での学習の遅れを取り戻すため、文部科学省が、教科書の内容を授業で取り扱う部分と、家庭学習など授業以外で学ぶ部分に仕分けたことが4日、関係者への取材で分かった。学校行事や、夏休みなど長期休暇の確保と年度内での履修の両立を促す狙い。学習モデル案をまとめ全国の教育委員会などに示す。

     休校期間は地域でばらつきがあり、状況に応じてモデル案を活用してもらう。関係者によると、文科省が教科書会社と連携し、教科書を精査したところ、記載の1〜2割程度は授業以外でも学べることを確認。学習内容は減らさないようにして、授業で扱う部分とそれ以外の部分に分けた。

     モデル案では、子どもたち同士で話し合ったり、一緒に作業したりして学ぶ内容は授業が担い、学習の定着を図るための演習などは家庭学習でもよいとする。また、感染を防ぐため、身体接触が避けられない内容は、後回しでよいことも例示する。

     学習指導要領は、1学年で学ぶべき内容と標準的な授業時間数を規定。各地で授業時間確保のため、夏休み短縮や土曜授業を導入する動きがある。一方、休みが少なくなることで、子どもたちが疲労し、スポーツや文化系活動などに親しむ機会が減少するといった懸念も根強い。


    家庭学習で学べる内容が1〜2割程度あるというのは、どういうこと?学習指導要領の改訂で毎回学習内容が増えてきているのだが極端に言えば「やらなくていいもの」1〜2割程度あるといことだ。その上で、家庭の環境によって家庭学習に差がつくというのは教育社会学での常識。それにはどうこたえるのだろうか?


    6月5日 少ない子どもの重症化

     北九州市の小学校で新型コロナウイルスの集団感染が見つかった。学校での発生は珍しい。子どもの感染や重症化は大人に比べて少なく、今後同様のケースが各地で相次ぐとは考えにくいが、メカニズムは分からない点も多い。全国的に学校再開が進む中、子どもの患者発生動向は注意して見ていく必要がある。

     厚生労働省が5月27日に発表した資料によると、ウイルス検査で陽性となった1万6525人のうち、20歳未満は約4%に当たる668人だった。死亡例の報告はない。

     海外のデータも同様で、軽症の人が多いことも分かっている。米疾病対策センター(CDC)の報告によると、18歳未満は2%に満たない。入院や集中治療が必要な患者の割合も低かった。

     ただ、数は少ないが欧米や中国で感染した子どもが死亡したとの報告はあり、油断はできない。日本小児科学会は、新生児は重症化のリスクを想定する必要があると呼び掛けている。

     子どもに重症者が少ないのは、ウイルスが細胞に侵入するのを助けるタンパク質が少ないためとの説もあるが異論もあり、大きな謎の一つだ。感染者数が少ない理由も不明で、感染のしやすさは大人と変わらないが、重症化しづらく、感染が表面化していないだけかもしれないとする米チームの研究報告もある。

     同学会の予防授種・感染症対策委員会の岡田賢司委員長は「理由は分からず、知りたいところ。われわれも注目していて、国内の症例をまとめている」と明かす。

     学会よると、子どもは発熱やせきなど新型コロナの典型的な症状だけでなく、皮膚にしもやけのような変化が起きたりすることもある。最近は、欧米で血管に炎症が起きる川崎病に似た症状が出たとの報告も相次ぎ、新たな課題として浮上している。新型コロナでは、子どもに薬を使用した経験は少なく、使える薬も限られているため、治療法の開発も待たれる。

     国内、国外ともに子どもの感染は家庭内で親などからうつる例が中心で、学校での集団感染は起きにくいと考えられる。だが今後、学校や幼稚園などの再開で傾向が変わる可能性は否定できない。

     文部科学省は、教育の場でのリスクを下げるため、学校向けのマニュアルを公開し、子ども同士の間隔を設けるなどの対策を要請している。



    6月4日 全国の公立学校 55%が通常授業

     新型コロナウイルス感染拡大による休校を巡り、文部科学省は3日、全国の小中高、特別支援学校について1日現在の状況をまとめ、公立校の99%が再開していると発表した。55%は子ども全員が毎日登校し、通常通りの時間割をこなしている。休校しているのは1%だった。

     1日の正午現在で、幼稚園や高等課程を持つ専修学校を含め、国公私立の98%が学校を再開していた。このうち小中高校段階の公立校では、全面再開し、通常通り授業する小学校は54%、中学校は56%、高校は57%。全員登校しているが、短縮授業としているのは、それぞれ19%、18%、12%。学年や学級など別に、週1回〜複数回の分散登校をしているのは小中でともに26%、高校は31%だった。

     短縮授業と分散登校をしている公立校に全面再開の見通しを聞いたところ、41%が6月15〜19日とした。26%が8〜12日、9%が22〜26日、7%が2〜5日と回答。8%は29日以降、9%が未定・検討中とした。

     都道府県立学校の状況を見ると、福井、山梨、大阪、兵庫、岡山の5府県は大半の学校が短縮授業とし、茨城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、滋賀、奈良、和歌山の10都県は分散登校を実施。残る32道府県では大半が全面再開していた。


    休校明け、子に不安

     新型コロナウイルス感染症に伴う一斉休校が終わり、各地で学校が再開された。元々、長期休み明けは、急な生活の変化に子どもが不安になりやすい時期。今回は感染の懸念や、休校による学習の遅れを取り戻そうと意気込む大人からのプレッシャーも加わり、さらにストレスを抱える可能性もある。専門家は「学校がつらいと思う子どもの心に寄り添って」と呼び掛ける。

     「夏休みの倍以上ある『超』長期休暇明け。休校中はコロナの感染に恐怖を感じたり、宿題に追われたりと、きちんと休めていない子どももいる」と指摘するのは、不登校経験者を取材するNPO法人「全国不登校新聞社」の石井志昂編集長。

     学校再開後、不眠や食欲不振のほか、登校しようとして玄関で動けなくなるといった様子を見せた場合には「子どもからのSOSの兆候として注意が必要。保護者は学習が遅れると焦るかもしれないが、まずは休ませてほしい」と求める。

     石井さんがさらに気をもむのは、せきをしている子をいじめたり、「ソーシャルディスタンス」と称して仲間はずれにしたりするなどの「コロナいじめ」だ。「平時とは異なる状況で子どもにストレスがかかる中、コロナを理由にいじめが行われる状況がある」と話す。

     文部科学省も各地の教育委員会などに通知を出し、学級担任や養護教諭のほか、スクールカウンセラーらが連携し、子どもをケアするよう求めた。また、マスクを着用していなかったり、せきや登校時に発熱があったりする子どもへの偏見や差別が生じないよう注意を促している。

     国立成育医療研究センター(東京)は4〜5月、7〜14歳の子どもを対象にインターネット上で調査を実施。中間まとめによると、「起床や就寝時間に変化があった」と答えたのは小学1〜3年生58%、4〜6年生59%、中学生68%、高校生69%。学校再開後に遅刻や居眠りなど、学校生活に適応するのが難しい子どもが一定数存在する可能性があるという。

     「すぐにイライラする」は、小1〜3年生の35%、4〜6年生の33%、中学生の29%、高校生の26%。「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」は、小1〜3年生の46%、4〜6年生の38%が選択するなど、ストレスを担えている現状も浮かんだ。

     小児科医で同センター社会医。学研究部の半谷まゆみ研究員は「教員や保護者ら身近な大人が子ども一人一人とじっくり向き合ってほしい。本人から訴えがなくても、何か不安を抱えていないか目配りすることが必要だ」と話している。


    それぞれの立場から子どもの不安について指摘されていることはおそらくその通りなのだろう。教育委員会も子どものケアについての詳細な指示を現場に出している。それは実行されなければならない課題ではあるが、はたして現場にそれだけの余力があるのだろうか。学習遅れの挽回や感染症対策も求められる中で、文書で通知するだけで解決するものではないだろう。元文科省事務次官の前川氏は「4年生で全府県名を漢字で書くことはまずやめるべきだ」というようなことをいっている。然りである。ほとんど役に立っていない英語学習やプログラミング教育なども削減することになにも問題はないはず。教育行政はそうした点についての検討も早急に進めるべきだろう。


    6月3日 首相 来年9月入学 断念伝達

     安倍晋三首相は2日、9月入学制の来年からの導入を事実上見送る意向を自民党議員に伝えた。党ワーキングチーム(WT)から「直近の導入は困難だ」とする提言を官邸で受け取り「法改正を伴う形では難しい」と応じた。新型コロナウイルスの感染拡大による学習の遅れを取り戻すため、2020年度の学年末を2週間〜1ヵ月程度延長する提案には理解を示した。

     首相は「入試や就職を前に不安を感じている学生や親もいる。不安を解消するのもわれわれの大きな責任だ」と強調。将来的な秋入学制については検討を続ける。WT座長の柴山昌彦前文部科学相によると、首相は新型コロナが再流行した場合でも「できるだけ教育現場に負担がない対応が望ましい」と述べた。一斉休校にしない選択肢があるとの認識を示したとみられる。

     提言は9月入学制の意義を認めた上で、中長期的な課題として導入の是非を議論するよう政府に要請した。「首相の下の会議体で、各省庁一体となって徐討するべきだ」と記載した。大学入学共通テストを含む大学入試の時期を繰り下げる必要性にも触れた。

     9月入学制を巡っては、公明党も1日に来年の導入を見送るよう求める提言を提出した。


    ほとんど統治能力を失っている現政権。今度は「持続化給付金」などの不正受注が明るみに出た。庶民が疲弊している中で、一部のお友達企業が利益を得る構造はこの内閣の本質ような気がする。そもそも「9月入学」論は、「一斉休校」が引き金になっている。それをどう評価するかの検討がなされず、場当たり的な対応で大きなエネルギーを使ってしまう。加えて、第2波以降に備えて「一斉休校にしない選択肢」の根拠も明らかではない。改めて思うのは、子どもたちの3か月は何のためだったのだろうか!ということではないか。


    6月2日 府・市教委 全公立小中高再開

     新型コロナウイルスの影響で休校していた京都府内の全公立小中高校が1日までに再開した。ただ感染予防のため「大声は上げない」「接触する運動は避ける」など以前と全く違う授業形式が求められ教員たちには戸惑いが広がる。保護者は長引く休校で子どもたちの家庭学習の状況によって学習内容に差がついていることを心配し、丁寧なフォローを求める。

     「机や椅子、手すりなど子どもが触りそうな所は全て教員が毎日消毒する。大変だが子どもの命と健康を守るためには必要だ」。京都市中京区の朱雀第二小の矢野智子校長は語る。

     同小は再開初日の1日、「3密」を避けるため校舎内のドアや窓を開けるなどの対策を取った。だが児童に密集しないことを徹底させるのは難しい。矢野校長は「学年が低いほど集まって話してしまう。会話は本来よいことだが、今は我慢する必要があることや取るべき具体的な行動を伝え、繰り返し実践することで習慣化していきたい」今後をを見据える。

     学校は再開したが、感染予防のために学校の風景は一変した。文部科学省のガイドラインによると、一斉に大きな声で話す活動や近距離での合唱、密集する運動などは特に感染リスクが高いと指摘されており、各学校は現場でどう実践するか模索する。市丙のある府立高の体育教諭は「バスケットボールやサッカーなどは接触プレーがあるので難しい。普段は体育や部活動で 『声を出せ』と言ってきたのに『声を出すな』と言わないといけない。今後どうなるか想像もつかない」と苦悩する。

     各学校はカリキュラムや行事の見直し、夏休みの短縮などで学習の遅れを取り戻そうとしている。文科省は休校中の家庭学習で十分な学習の定着が見られれば、学校再開後にあらためて対面で指導しなくてもよいとする。

     しかし休校中の家庭学習の状況は個人差がある。小学6年の子どもがいるシングルマザー(42)=右京区=は「毎日仕事があり、あまり自宅で教えることはできなかった。授業が先に進むことで付いていけず勉強嫌いにならないよう、教員も分からない子どもたちの声に耳を傾けてほしい」と求める。  また市教育委員会は年間を通して授業は5分短縮し、小学校は40分、中学校は45分授業とすることで「7時間授業」を可能にして学習を進める予定。だが市教職員組合は「小学生は『6時間授業』でも疲れている。『7時間授業』になると負担が増え、付いていけない子どもが出てくるのではないか」と懸念する。

     市内のある小学校長は「授業を急ぎたくなるが、まずは落ち着いて児童と教諭の人間関係づくりからスタートさせたい。宿題ができてなくても『頑張ったね』と声を掛け、家庭学習もできていない前提で再開後の授業を進めたい」と話した。


    京都市の小中校 夏休みは3週間
      

     京都市教育委員会は1日までに、同日再開させた市立学校・幼稚園の今後の教育活動スケジュールを決めた。小中学校の夏休みを約3週間に短縮するなどして、休校による授業の遅れを1年で取り戻す。

     市教委によると、夏休みは小中学校とも8月1〜23日とし、本来は夏休みだった7月の期間(小学校22〜31日、中学校20〜31日)は午前中だけ授業を行う。高校と総合支援学校は期間は未定だが短縮の方針。幼稚園は2日間短く7月23日〜8月31日とする。

     冬休みは小学校が3学期の開始を1日早めて来年1月6日からにする。中学、幼稚園は変更せず、高校、総合支援学校は未定。

     このほか始業前の「朝学習」に当てていた毎朝の10分間を授業に活用し、1週間で1こま分を捻出する。花背山の家(左京区)などでの宿泊学習や校外学習は中止し、修学旅行は延期する。


    京都市PTA連絡協議会が実施したアンケートでは、中高の保護者8割が学習進度の遅れに不安を感じているという。物理的に「休校による授業の遅れを1年で取り戻す」ためには過密なスケジュールが必要になるだろう。しかし、学習内容を精選することでもうすこし「楽くな」計画を立てることができる。教室の消毒などを教員の仕事としていることを考えれば、一層の過剰労働が懸念される。教委としては、子どもと教員の負担を軽減するためにこそ、学習内容の精選を含めた今年度の戦略を描くことが求められるだろう。


    6月1日 プロ責法改正 外国人差別 ネットに殺到

     ヘイトスピーチ解消法の施行から6月3日で4年。新型コロナウイルス感染症による混乱の中、インターネット上で芸能人の死去を中国人のせいにしたり、朝鮮学校へのマスク配布報道に「出て行け」というコメントが付いたりと、外国人差別が目立っている。同法の実効性には以前から疑問が投げ掛けられており、とりわけネット対策が急務となっている。

     3月30日、タレント志村けんさんの死去が報じられると、ツイッターでは「殺したのは中国人」など、感染が最初に確認された中国への憎悪や暴力をあおるヘイトスピーチが広がった。一部は削除された。

     3月11日に「マスク配布、朝鮮学校を除外さいたま市、再考を表明」という二ユースが広まった時も、記事を紹介したツイッターやヤフーニュースに差別コメントが殺到。「出て行け。目障り」「文句があるなら日本に住むな」など、在日コリアンヘの危害や排除を扇動する危険な言葉が並んだ。

     埼玉朝鮮初中級学校幼稚部の朴洋子園長は「何か問題が起こるたびにヘイトスピーチを受ける構図は、法律ができた後も変わらない。法の精神が社会に浸透していない」と声を落とす。

     解消法はヘイトを「許さない」とするものの強制力はない。差別的な書き込みをされた被害者が接続業者(プロバイダー)に削除を一求めても、判断は業者任せで、放置されるケースも多い。

     会員制交流サイト(SNS)に投稿した人の責任を問おうと刑事告訴や損害賠償請求するには、相手を特定するためにSNS側に記録開示を要請し、接続業者にも発信者情報の開示を求める必要がある。しかし、応じてもらえず訴訟になることが大半。勝訴して初めて投稿者を訴えることができるため、被害者の金銭的、精神的、時間的負担は大きく、泣き寝入りする原因となっている。

     この構図はヘイトだけでなく、個人に対するネット上での誹膀中傷も同じ。5月23日に死去した女子プロレスラー木村花さん(22)も、出演していたリアリティー番組での言動が原因で、SNSで中傷を受けていた。

     こうした状況を踏まえ総務省は4月に設置した「発信者情報開示の在り方に関する研究会」で議論を始めている。「プロバイダー責任制限法(プロ責法)」を改正し、請求手続きの簡素化や開示情報を拡大する方向に進みそうだ。

     ただ、ヘイト問題に詳しい師岡康子弁護士は「プロ責法改正では足りない」と指摘する。ヘイトの被害者にとっては、何よりも早急な削除が必要なためだ。

     師岡弁護士は、削除を専門家による第三者機関が判断する「ネット上の人権侵害情報対策法モデル案」を研究者らとまとめた。差別的言動や名誉毀損を禁じプロバイダーには48時間以内の削除を義務付ける内容。被害者が裁判を経ずに救済される仕組みだ。

     国会でも議論が始まった。解消法の発議に加わった公明党の矢倉克夫参院議員は「コロナ禍で悪質な差別が広がっている。教育、啓発だけでなく、プロ責法の改正や新法制定を含むネット対策が必要だ」と話した。


    早急な対応が必要なことは十分理解できる。だからこそ、権力から独立した「第三者機関が判断する」こと、異議申し立ての権利が保障されていること必要もあるだろう。