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  • 1学期欠席の生徒100人.28
  • 記述式「反対」8割超.28
  • AIいじめ予測 導入拡大.30
  • 冬のボーナス引き下げ勧告.31
  • 元新道小跡地 宿泊施設に.31
  • 10月31日 市教委 元新道小跡地 宿泊施設に

     京都市は30日、元新道小(東山区)の跡地活用に向けた公募型プロポーザルについて。契約候補事業者にNTT都市開発(東京)を選定したと発表した。道路を挟んで向かい合う宮川町歌舞練場と併せて一体的に再整備し、宿泊施設や新たな歌舞練場、地域の交流施設などとして活用する計画。地域との事前協議を経て、来年度をめどに貸付契約を締結する。  市によると応募は同社1社のみで、元新道小と歌舞練場の建て替えを提案。具体的には、元新道小は宿泊施設(地上4階・地下2階、89室)とし、学校の歴史を伝える地域交流スペースや消防分団の詰所などを設ける。  歌舞練場の敷地には、新しい歌舞練場(地上2階・地下2階)のほか、地域施設棟(地上3階・地下2階)を整備。1階を児童館、2階を避難所にもなる多目的ホール、3階を備蓄倉庫とし、地下に自治会活動スペースを設置する。  歌舞練場の敷地内には、宮川筋と新道通を東西につなぐ歩行者用小路を通して回遊性を高める。宿泊施設の開業後は、レストランを伎芸披露の場として活用するなど連携した運営を行う予定。歌舞練場は現在、市の高さ規制を超える「既存不適格建物」となっているが、建て替えにあたっては大屋根のデザインを踏襲するため、特例制度などの活用を検討するという。  宮川町歌舞練場は、1916(大正5)年に建てられた入り母屋造りの木造建築。京都五花街の一つ、宮川町の芸舞妓が伎芸を学び、発表する場で、春の舞踊公演「京おどり」の会場として知られる。一方で雨漏りやゆがみなど建物の老朽化や耐震性が課題となっていた。今回の選定について、宮川町お茶屋組合の駒井文恵組合長は「大変ありがたい。地域の発展のために協力し、一日も早く事業が実現するよう努めていきたい」とコメントした。  市は今後、事前協議で地元の同意を得た上で、同社と来年度をめどに元新道小について60年間の貸付契約を結ぶ予定。市には、年額1億円程度の貸付料収入が見込まれている。市資産活用推進室は「地元の声を反映したより良い施設となるよう協議を進めていきたい」としている。


    清水小学校の跡地利用にかかわって、事業主はNTT都市開発で、経営はUDホスピタリティマネジメント、運営はプリンスホテル。ここでも同じような仕組みが働いているようだ。コロナによってインバウンドの将来性が不透明な中新たにホテル建設が必要なのかどうか。白川小もホテル建設が始まっている。「竈金(かまどきん)の精神」として持ち上げた京都の番組小学校は軒並みホテルへと建て替えられている。はたして地域の小学校の役割は終わっているのか。


    10月31日 府人事委員会 冬のボーナス引き下げ勧告

     京都府人事委員会は30日、府職員の期末・勤勉手当(ボーナス)を引き下げるよう西脇隆俊知事と田中英夫議長に勧告した。民間との均衡を図るのが目的で、ボーナスの引き下げ勧告は2010年以来。月給の勧告は新型コロナウイルスの影響で民間への調査が遅れたため、今後行う。

     府内にある従業員50人以上の227民間事業所への調査に基づき勧告した。民間の年間支給月数が4・45月分で、府職員は4・50月分だったため、0・05月分引き下げるよう求めた。

     勧告通りに府の給与条例が改正されると、府職員(平均年齢42・2歳)の平均年間給与は1万9千円減の623万3千円で、人件費は約5億2千万円減少する。

     府人事委の田原博明委員長から勧告を受けた西脇知事は「現在の社会経済情勢に加え、府を取り巻く厳しい行財政環境を踏まえ、適切に対処したい」とコメントした。


    今回の勧告は一時金のみで、月例給は先送り。人事院と対応は同じだ。調査にコロナの影響はあるものの国の勧告が出た時点ですでに調査は終わっているはず。これでは地方の独自性などはないに等しい。


    10月30日 AIいじめ予測 導入拡大

     いじめ被害を減らすため大津市などが開発した「いじめ予測分析システム」を、さいたま市など7自治体が導入を検討していることが29日分かった。人工知能(AI)が過去データを分析し、いじめが深刻化するリスクを瞬時に判断する仕組み。他に約20自治体が関心を示しており、専門家は人手不足が続く全国の教育現場への導入を呼び掛けている。

     大津市は2011年、中学2年の男子生徒がいじめを苦に自ら命を絶った事件の反省から、日立システムズ(東京)とシステムを開発し、試験運用している。北海道帯広市、さいたま市、千葉県松戸市、三重県四日市市、兵庫県宝塚市、鳥取市、宮崎県延岡市も導入を検討している。

     システムは大津市内で認知された過去約5千件のいじめ報告書のデータをAIが分析。いじめが起きた時間や場所、相手、報告者など約50に上る項目を入力すると、自動的にいじめが深刻化するリスクをパーセンートで表示する。70%以上の場合は早期に手厚い対応が必要となる。

     以前は大津市内の学校からメールで集めた月に数百件のいじめ報告書を、教育委員会の職員が一つ一つ確認していたため対応が遅れるケースがあった。システムは瞬時にリスクを発見し、経験が浅い先生にも適切な対応を促すことができる。

     教育行政に詳しい兵庫教育大の日渡円教授は「いじめの傾向は共通点がある。教諭1人の経験だけに頼らず、データに基づいて客観的に兆候を見逃さないためにも有益だ」と話している。


    客観的分析 命救えるか

     いじめの認知件数は2019年度も過去最多を更新した。自ら命を絶つ子どもも少なくない。いじめを早期に発見して手厚く指導することが重要だが、教師の経験に左右される部分が大きい。人工知能(AI)による客観的データのリスク分析が子どもの命を救うきっかけになるか注目される。

     大津市教育委員会は、AIによる予測分析システムを試験的に導入している。9月に報告された小学1年の女の子がいじめにあった事例は「友達に無視された」と一見よくある形態だったが、AIは「深刻度75%」と瞬時に評価した。

     市教委は深刻化のリスクが高いとして「この女の子は丁寧に対応した方がいい」と判断した。

     深刻度が高いケースには@先生の目が届かない場所や時間に発生A会員制交流サイト (SNS)でのいじめB加害者が男女混在―などがある。市教委の浜崎次郎主任指導主事は「通常問題ないと見過ごしてしまう事案でも客観的に判断し気付くことができる」と話す。

     インターネット上でもAIを使ったいじめを減らす取り組みが進んでいる。いじめ対策を手掛ける「アディッシユ」(東京)は、いじめに関する投稿を発見して学校に連絡している。利用者が誹膀中傷に当たる恐れがある投稿をしようとすると、AIが検知して利用者のスマートフォンに投稿の見直しを促す表示を出している。

     文部科学省によると、全国の国公私立の小中高校と特別支援学校が19年度に認知したいじめは、前年度より6万8563件増の61万2496件となった。


    AIの進展には目覚ましいものがあるし、日常的には目に見えない分野での研究も実に膨大な数に上るようだ。ディープラーニングと呼ばれる方法がここでも使われているのだろうが、人間の行動様式をAIが認識しその結果を人間が受け取るという構造になっているといえる。深刻ないじめに対して「経験が浅い先生にも適切な対応を促す」ことが可能だとするなら、現場教員にとっての負担は少なくなる。しかし、その結果にどう向き合うのかはやはり人間の経験に頼らざるを得ないだろうし、学校という組織がどのように機能しているのかも大きな要素となる。ここをしっかりと把握してかないとAIの誤りを人間がなぞることになってしまう。


    10月28日 大学共通テスト 記述式「反対」8割超

     文部科学省は27日、国公私立大の学部ごとに入試改革について尋ねたアンケートの結果を公表した。「大学入学共通テストに記述式問題を出題すべきか」との質問に肯定的な回答をしたのは15%にとどまり、否定的な回答が84%に上った。英語民間検定試験を活用することにも慎重意見が目立った。大学入試改革に関連した大規模な文科省調査は初めて。

     文科省は入試改革の柱として共通テストに「記述式」と「英語民間検定試験」の導入を計画したが、批判が広がり昨年、中止となった。引き続き検討を進めており、今回の調査で大学側にも抵抗感があることが明らかになり、改革の議論に影響を与えそうだ。

     調査は今年7〜9月に実施。全国の大学の91%に当たる699校の約2200学部が回答した。

     共通テストに記述式を出題すべきかについて「とてもそう思う」と「そう思う」が計15%。「あまりそう思わない」と「そう思わない」は計84%だった。特に国立大では6%しか肯定的な回答がなかった。

     一方、各大学個別の一般入試で記述式を充実させることには59%が肯定的で、否定的な答えは40%。国公立大はいずれも80%近くが肯定的だったが、私立大では52%にとどまり、私立大が記述式に慎重な姿勢がうかがえた。

     英語の「読む・聞く・書く・話す」の4技能のうち「書く・話す」の二つを問うのに民間試験を活用することについても肯定的回答は32%となり、否定的回答の67%を大きく下回った。ただ、大学ごとの一般試験で民間試験を活用すべきだとの答えは45%に上り、「入学後に大学が独自に2技能を評価すべきか」との質問には77%が肯定的に答えた。


    知識の多寡を重視した従来の教育への批判が根底にあるとといえるが、それを「共通テスト」として国が統括することには異論があるということだろう。また、各大学において育てたい学生像が異なっているという結果でもあるのだろうか。民間教育業者に利益が回る構造になっている「共通テスト」への大学側の違和感もあるだろう。


    10月28日 府教委 1学期欠席の生徒100人

     京都都府内の公立中学校(京都市を除ぐ)で1学期を全て欠席した生徒数が100人と前年度より36人(56・3%)増加したことが府教育委員会の調べで27日までに分かった。小学校の児童も42人と13人(44・8%)多く、府教委は「不登校の原因はさまざまだが新型コロナウイルスの影響もあるとみて、2学期以降を注視したい」としている。

     4月1日〜7月31日の状況を調べた。1学期は新型コロナの影響で4、5月は休校となり、6月から順次再開した。1学期を全て欠席した児童生徒が増えた要因としては、休校期間中に生活習慣が乱れたり授業日数が例年より少なかったりしたことなどが考えられるという。

     ただ全期間に満たない「10日以上の不登校」の中学生は843人と前年同期より10人(I・2%)減り、小学生も368人と8人(2・1%)少なかった。コロナ禍で児童生徒同士の接触機会の減少などが影響した可能性があるという。


    コロナによって不登校やいじめが増えたのか減ったのかは即断することは難しい。しかし、コロナによって子どもたちの学習や生活に一定の変化(不利益)が生じてきているのは間違いないだろう。学習進度を重視する教育が子どもにい負担を強いている現状は多く指摘されている。


    10月27日 府内求人 前年度比26・3%減

     新型コロナウイルスの感染拡大が高校3年生の就職活動に影を落としている。4、5月の一斉休校の影響で始動が遅れた上、求人数が前年より減少。今年は採用試験が例年より1ヵ月遅れの今月16日に解禁されたが、生徒たちは戸惑いながらも希望の企業への就職を目指して取り組んでいる。

     「今年は採用人数を減らすと人事担当の人が言っていました」。京都市内の府立高3年の男子生徒(18)が不安げな表情で語った。交通関連会社の採用試験を受けたが、求人数を絞ると聞かされ結果が心配だという。

     今年は新型コロナの影響で求人数が減っている。京都労働局によると、府内企業の高卒求人数は8月末現在4290人で、前年度の5824人から26・3%減った。宿泊や飲食、製造、小売り、卸売りなどの業種で減少が目立っているという。一方、就職希望の府内の高校生は7月末で1728人(前年比6・8%減)となっている。

     京都すばる高で進路指導を担当する松尾俊明教諭は「7月下旬までは求人会社数は例年並みだったが、1社当たりの求人数が減った。特に大手ホテルでは前年は京都で働ける6社から求人があったが、今年はI社に減った」と説明。8月に入ると求人会社数も急減したといい「生徒が1社目が不採用だった時、2社目以降の選択肢が狭まるかもしれない」と懸念する。

     4、5月の一斉休校の影響もある。例年であればこの時期に生徒たちが自らの将来像や適正を分析し、志望する会社を精査するが、洛水高の磯部勝紀副校長は「休校によって『何がやりたいか』『何に向いているか』などを考える時間が十分に取れず、バタバタと会社を選んだ生徒もいた」とし「学校としても全員就職できるよう丁寧に指導したい」と話す。

     授業の遅れを取り戻すため夏休みも短縮されたため、製造業を目指す宇治市内の府立高の男子生徒(18)は「面接の対策をする時間か不足した。結果はどうなるか分からないが全力で取り組みたい」と語る。


    リーマンショック後の「就職氷河期」と呼ばれる時期の学生の多くが非正規労働を余儀なくされているという現状がある。それと同じことが再来する可能性がないとも限らない。「働けない・働かない」ことへの政治的な対応が必要とされるかもしれない。考え方として宮本太郎『共生保障(支え合い)の戦略』(岩波新書)が参考になるかもしれない。


    10月26日 25年大学共通テスト 7教科21科目に

     大学入試センターは25日までに、2025年1月からの大学入学共通テストで、新教科「情報」を追加するとともに、数学、地理歴史、公民など各教科の科目を再編し現在の6教科30科目を7教科21科目に削減する素案をまとめた。高校の新学習指導要領で学び始める現在の中学2年らが受験するが、情報を巡っては現場から作間や指導面などに課題も指摘され、センターは大学や高校の意見を踏まえ本年度末にも最終案をまとめる。

     18歳人口の減少で、受験料で運営する共通テストに効率的運営が求められている。センターは出題科目を絞り作問経費などを減らしたい考え。パソコンを使って答える方式(CBT)の将来的導入の検討も続ける。

     新指導要領では、高度情報化社会に対応するため、プログラミングやデータ活用を学ぶ「情報I」が必修となる。政府も18年の「未来投資戦略」で、共通テストでの出題を求めていた。

     共通テストは大学入試センター試験の後継で来年1月に初実施し数十万人の受験を見込む。センターは「情報」について、端末や通信環境トラブルなどの懸念から他教科と同様マークシート方式とする方針。だが「プログラミングなどの力を十分測れるのか」(高校関係者)との疑問や、高校で専門教員が不足しているといった指摘がある。


    「情報」という教科の能力を測ることが可能かどうかをまず問わないといけない。AIでも特化型と汎用型とでは全く発想が異なる。それに対応する能力とは何かは極めてむずかしく、これまでの知識の枠組みを超えているところがあるだろう。あえてそれを点数化(マークシート利用)するとなると、プログラミング言語を理解しているかどうかという小手先の設問にならざらるを得ない。


    10月26日 核兵器禁止条約発効 政府、署名に応じず

     日本政府は、核兵器禁止条約の批准国・地域が50に達し来年1月発効が決まっても、署名に応じない姿勢を維持する。安全保障上の脅威への対処を米国の「核の傘」に依存しているためだ。一方で広島と長崎の惨禍を経験した唯一の戦争被爆国として、核廃絶という大きな目標は掲げ続ける。核兵器保有国と非保有国の「橋渡し役」を担うと強調し、日本の役割に理解を求めていく。  政府が懸念するのは核戦力増強を続ける中国と北朝鮮の動向だ。中国は200発超とみられる核弾頭を保有。迎撃困難な新型ミサイルも開発する。北朝鮮は核兵器の小型化・弾頭化を実用化したとみられ、日本を射程に収める弾道ミサイルも数百発保有している。  こうした状況下で平和と安定を確保する安保戦略の基軸が日米同盟。核兵器禁止条約に反対する米国を差し置き、賛同するわけにはいかないというのが政府の立場だ。  条約には発効後でも批准国に加わることができるが、政府は「わが国のアプローチとは異なる。署名しない考えに変わりはない」(加 藤勝信官房長官)とかたくなな姿勢を取る。菅義偉首相は9月の国連総会一般討論のビデオ演説で、条約に一切触れなかった。岸信夫防衛相は25日、記者団に「核保有国が乗れない条約になっており、有効性に疑問を感じざるを得ない」と指摘した。  現実的な取り組みとして政府が主張するのは、核拡散防止条約(NPT)など現行の枠組みを生かした核兵器の段階的削減だ。加藤氏は「核廃絶というゴールは共有している。地道に核軍縮の前進を追求する」と訴えた。


    野党「歓迎すべき」

     核兵器の保有や使用を全面禁止する核兵器禁止条約が発効する見通しとなったことに関し、25日のNHK番組で、野党から「歓迎すべきだ」(馬場伸幸日本維新の会幹事長)との声が相次いだ。

     立憲民主党の福山哲郎幹事長は「アジアの安全保障や北朝鮮の状況を考えると、核の傘との両立をどうするのか。非常に難しい」と課題を挙げた。共産党の小池晃書記局長は「核兵器廃絶の大きな流れが一歩進んだ。日本の立ち位置が問われる」と強調した。

     馬場氏は「唯一の戦争被爆国として役割を果たしてほしい」と要請。国民民主党の岸本周平幹事長代理は条約参加を求めた。  公明党の石井啓一幹事長は、同党が締約国会議へのオブザーバー参加検討を政府に要望していることを踏まえ「積極的に関与してほしい」と訴えた。  


    保有国と分裂避け議論を

     核軍縮・不拡散が専門の秋山信将一橋大教授の話 

     核拡散防止条約(NPT)を土台とした核軍縮の停滞を背景に、核廃絶を望む国々が、その道義性を強化しようと形にしたのが核兵器禁止条約だ。核の違法化という政治的キャンペーンを強化する上で有力な足掛かりとなる。ただ核保有国が同条約に反対する中、非保有国が核軍縮のための軸足をNPTから完全に移してしまうと双方の分裂が修復不可能になってしまう。今は米中口の対立や小型核の実戦配備、ミサイル防衛などで核の安定性が揺らぎ、核兵器の削減どころか質的な軍拡の潮流にある。核の使用リスク削減に取り組みつつ、核軍縮の進展に向けた環境や枠組みについて、来年のNP工再検討会議など、あらゆる機会で議論を深める必要がある。(共同)


    反対のシグナル発信

     米ミドルベリー国際大学院モントー校ジェームズーマーティン不拡散研究センターのシャン・ドプレ氏の話  重要

     核兵器禁止条約は核軍縮を実現する条約ではない。言うなれば枠組み合意だ。最終的な核廃絶に向け広範な枠組みを設けたもので、核兵器保有国に核廃絶を義務付ける強制力はない。保有国が参加しない禁止条約に価値はないと言うのはたやすいが、それは違う。重要なのは呆有国や国際社会に向け、多数の国々が核兵器に強く反対しており、核兵器禁止る言質を求めているというシグナルを送ることであり、そうした国は条約発効後も増えるだろう。批准国や署名国が、米国などの保有国と関係を持つ日本やドイツなどに働き掛けることも重要だ。ただ、どのように全ての核兵器を廃絶し、それを検証するのかが難しい。保有国に核廃絶を説得したいなら、経費や環境への影響、透明性、安全性など、技術的にどう廃絶するかを考える必要がある。(ニューヨーク共同)



    10月23日 文科省調査 府内、2万2429件に減

     京都府内の国公私立の小中高校と特別支援学校で、2019年度のいじめ認知件数は2万2429件と前年度より2412件(9・7%)減ったことが文部科学省が22日に公表した問題行動・不登校調査結果で分かった。ただ、いじめ防止対策推進法が規定する重大事態は公立分のみで、前年度より8件増えて11件あった。

     いじめ認知件数の内訳は小学校が2530件減の1万8355件、中学校が151件増の3322件、高校が93件減の531件、特別支援学校は60件増の221件だった。うち京都市は小学校が53件増の1506件、中学校は158件増の1301件、高校は7件減の25件などだった。

     重大事態は心身に大きな被害を受けたり、不登校になったりした案件。京都市立学校で7件、同市を除く公立の小学校で2件、中学校で1件、府立特別支援学校で1件あった。同級生から嫌がらせを受けて不登校になったなどだった。

     いじめの認知件数は府教委は「嫌な思いをした」といった軽微な事案も認知件数としている一方、京都市教委は軽微な場合は継続的な指導が必要などと判断した場合に集計に含めている。府教委は「認知件数の減少に安心せず、引き続き丁寧な対応をしていく」としている。

     暴力行為の発生件数は小中高の合計で2193件と40件の減少。内訳は小学校が1045件(65件増)、中学校が963件(81件減)、高校が185件(24件減)だった。内容は生徒間暴力が計1409件(41件減)と最も多かった。小学校の暴力行為は特定の児童による繰り返しや、低年齢化が進んでいるという。

     高校の中途退学資数は824人と前年度から204人減った。


    白梅学園大の増田修治教授(臨床教育学)の話子のストレス聞き取って

     今の子どもたちは言葉で自分の気持ちを伝えるトレーニングが不足し、ストレスが問題行動につながりやすい。小学校低学年の暴力行為が多く、高学年の水準に近づいていることがそれを表している。新学習指導要領では学習内容が増えており、授業の進度も速い。小さな子どもたちにかかるプレッシャーは想像以上に高まっている。子どもに寄り添い、ストレスを感じている点は何か、現場の教員は丁寧に聞き取ってあげてほしい。


    教育評論家の武田さち子さんの話小学校に解決する仕組みを

     教職員は忙しく、いじめ対策に注力できていない。教育委員会の認識も依然として甘く、重大事態が起きても公表せず、検証結果も明ら かにしない。対策が進まないまま問題が深刻化している。子どもたちが小学校段階で「いじめは解決できる」と学ぺば、中学、高校では自分たちで解決できるようになる。まずは小学校に予算と時間と人といった資源を十分に投じ、きちんと解決する仕組み作りが急務だ。自殺も後を絶たず、子どもの命と勉強のどちらが大事なのかが問われている。



    10月23日 文科省調査 不登校 府内8年連続増

     京都府内の国公私立の小中学校で、2019年度の不登校の児童生徒数は、計3400人と前年度より400人(13・3%)増え、8年連続で増加した。府教育委員会は「要因は友人関係や学彙、家庭問題など多様で複雑になっており、喫緊の課題」としている。

     小学校が970人と前年度から248人(34・3%)増え、中学校は2430人と152人(6・7%)増えた。府内の多くを占める京都市は小学校が。427人と169人(65・5%)増え、中学校は1110人と125人(12・7%)増えていた。

     調査は病気や経済的な理由を除き30日以上の欠席者を不登校として集計しており、出席日数がゼロの児奮生徒は小学校で31人、中学校で80人いた。高校の不校の生徒数は771人で139人(15・3%)の減だった。

     全国の小中学校の不登校児童生徒数も前年度比10・2%増の18万1272人と増加傾向を示している。

     府教委は「(学校以外の学びの場を認めた)教育機会確保法の趣旨が浸透した面もある。各市町に設置される教育支援センターなどで教育の保障もしていく」としている。

     全国では、不登校の小中学生が、前年度から1万6744人増えて18万1272人と過去最多になった。7年連続の増加。オンライン学習で出席扱いとしたケースは拡大した。

     不登校の小学生は5万3350人、中学生は12万7922人。小中学生全体に占める割合は1・9%だった。学年が上がるにつれて増え、中3は4万8271人と小6の約3倍となった。年90日以上の長期欠席は55・6%に上った。

     不登校の要因を学校が一つだけ選ぶ形で調べたところ、最も多いのは本人の不安や無気力(39・9%)でいじめを除く友人関係(15・1%)、親子の関わり方(10・2%)が続いた。いじめを挙げたのはO・3%だった。

     フリースクールやオンライン学習は、学校の判断で一部出席扱いにできる。オンライン学習で認められたのは、前年度の2倍となる608人。民間団体や適応指導教室での指導は2万5866人だった。


    いじめ件数と不登校件数とに反対の現象があるように見える。というのは、いじめは小学校での件数が全体の8割ほどあるが、不登校は3割程度となっている。いじめは2014年から小学校で急速に件数が伸びているが中高では横ばいとなっている。小学校での認知の方法が異なってきていることにも関係があるのだろうか。


    10月22日 鳥取県教委 部活遠征に「車」教員83人処分

     鳥取県教育委員会は21日、県立高の教員が部活動の遠征の際に県教委の内部規定に違反して生徒をマイカーやレンタカー、マイクロバスに乗せるなどした事例が191校で計275件あり、教員83人を訓告や口頭厳重注意の処分にしたと発表した。うち223件は、県教委が公務とみなしていない練習試合などでの違反。「公務外」のケースでは車の使用を一律に禁じていたが、今回の事態を受けて条件付きで認める方針を打ち出した。  校長の許可や県教委の承認を得る必要がありマイカー以外は安全運転研修の受講を義務付ける。大会など公務でもこれまではマイカーに限って許可を得れば使用可能としていたが、レンタカーやマイクロバスなども同様に認める。容認の理由はいずれも「生徒の安全を最大限確保し、現状の交通事情、保護者の負担を考慮した」としている。  公務外223件の状況別の内訳は「教員が許可を得ずにマイカーに生徒を乗せる」が71件と最多で、51件の「教員がレンタカーやマイクロバスなどを運転」が続いた。他は「教員が依頼して保護者会やOB会のマイカーに生徒を乗せる」(43件)、『教員が所有するバスや自動車学校のバスを運転』(30件)、「教員が依頼して保護者や知人がレンタカーやマイクロバスなどを運転」(28件)だった。


    「何が違う」線引き不満

     鳥取県教育委員会が「教員の自主的な取り組み」という前提で「公務外」としてきた部活動の練習試合。その引率で生徒を車に乗せたのは内部規定違反だとして教員が大量に処分された。生徒の負担軽減を理由に柔軟な対応を求めていた現場の反発もあり、車使用を条件付きで認める方針にかじを切ったが、公務外との扱いは変わらず、是非を巡る綱引きは続く。  「2014年に貸し切りバスの運賃が変わり保護者の経済的負担が増えた」「練習試合では(バスや列車、タクシーなど)公共交通機関の利用が困難な会場が多い」。県教委の21日の記者会見。担当者は、公務外でもマイカーやレンタカー、マイクロバスなどの使用を条件付きで認める方針に転じた理由を説明した。  04年に策定された内規では、校長の許可を得れば公務でマイカーの利用が可能だ。「服務規律の保持」「交通事故の防止」をうたっており、公式大会は職務命令を伴う公務とする一方、練習試合は公務外とする運用が「20年以上続いている」(県教委関係者)という。公務外だと出張旅費や交通費は支給されないが、それでも「生徒の負担を軽くしたい」と車使用が常態化し、県教委も「これまで事実上黙認していた」としている。  練習試合など公務外での車使用で教員が交通事故を起こした場合、これまでは教員の責任となる可能性が高かったが、今後は条件を満たした状況であれば事故を起こしても県の負担とする内容を内規に盛り込む。現場としては一歩前進となったが、今後も扱いは公務外のままで、不満は残る。  地方では公共交通の運行数が少なく、生徒は練習の前後に長時間の「待ち時間」を余儀なくされる。乗り継いだり、タクシーを呼んだりすれば交通費もかさむ。ある教員は「自分で車を出せば往復のガソリン代ぐらいで済み、保護者の経済的負担も減る」としつつ、生徒が目標に向け努力する姿勢を学べるなど「練習試合と公務扱いの大会は何が違うのか」と線引きには納得がいかない。  部活動に詳しい名古屋大の内田良准教授(教育社会学)によると、地方では少子化や過疎化が進み、学校数も減少している。練習試合は「貴重な機会」となり、県外や都市部に遠征する傾向があると分析。「地方の部活動ほど教員のボランティア活動に支えられている側面が強い」と指摘し、今回の見直しを受け「現場の負担が増え過ぎないよう県教委はブレーキをかける不断の努力が必要だ」としている。


    公務と公務外を区別する理由が判然としないままでは現場の不満は募るばかり。とりわけ公務外として労災認定が難しくなるとすれば問題は大きい。部活が社会問題になるにもかかわらず、教育との本質的な関係が現場で議論になっていないのも一因。また「子どもの成長」という隠れ蓑に教委も教員も親も依存していることを改めて考える必要がある。


    10月21日 文科省通知 学校と家庭連絡デジタルで

     ランドセルの底から数週間前の学校便りがくしやくしやになって見つかった―。文部科学省は20日、子どもを介するためトラブルが起こりやすい学校と保護者の間の連絡について、メール配信システムの活用などデジタル化するよう求める通知を、都道府県教育委員会などに出した。保護者が押印する書類が多いこともデジタル化の障壁になってきたとして、脱はんこの取り組みを促した。

     萩生田光一文科相は同日の閣議後記者会見で「可能なところから順次取り組みを進めてほしい」と述べた。

     学校現場では、懇談会への出席や進路希望調査など、さまざまな書類を保護者とやりとりしている。子どもが勝手に提出しないよう、保護者が見たことを証明するために押印を求めることが多かった。文科省はデジタル化すれば、業務の効率化による教員の働き方改革や、保護者の負担軽減にもつながるとみている。

     行政手続きの押印廃止を進める政府方針を踏まえた今回の通知では、メール配信システムや専用のソフトウエアを活用するなど効率的な情報伝達手段の検討を要請、具体的な方法も例示した。

     インターネットでアンケートフォームを作成し、保護者にURLを記載したメールを送ったり、紙にQRコードを印刷したりして伝えることや、スマートフォンで児童生徒の遅刻や欠席を連絡できるシステムなどを紹介した。

     一方、音読の宿題をしたことを確認するなど、はんこを使う方が手軽な場合はデジタル化しなくてもいいことを明示。アレルギーの確認などは保護者からサインを得ることも考えられるとした。デジタル対応が難しい家庭のために、紙による連絡を併用するといった配慮も求めた。

     萩生田氏は、子どもの方がシステムに詳しいこともあり、「(保護者に)成り済まして遅刻・欠席連絡することがあってはならない。トラブルが起こらないよう、慎重に移行していきたい」と語った。


    文科相がいうような理由で学校のデジタル化が必要だといえるのだろうか。これまでもサインで済ませてきた場面h多くある。今更「押印の弊害」でもあるまい。無理矢理「デジタル庁」構想に沿うような通知である。日本のデジタル化が遅れているという批判は、例えば一律の給付に対して時間がかかりすぎることや電子申請がアクセス過多でダウンしてしまうというような通信環境の話。もちろん「ハンコ文化」がすでに必要がないことは明らかで、「サイン」で」十分である。ちなみに、ハンコでもサインでもデジタルでも子どもの「成りすまし」があることは学校関係者はだれでも知っている。


    10月21日 厚労省 少子化コロナが追い打ち

     新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中,妊娠を避けようとする人が増え,少子化が一層深刻化する見通しだ。母胎に与える影響に未解明な点があり、平常時のような出産や育児が望めないことや、雇用情勢悪化による家計不安も背景にある。産婦人科医や専門家は、不安を取り除<ための公的支援や経済対策の必要性を訴える。

     不妊治療をしている神奈川県の女性(35)は4月、かかりつけ医から治療過程の一部を延期すると言われた。不妊治療の専門医でつくる日本生殖医学会が同月、感染拡大を受け、治療延期を患者に勧めるよう会員に要請していた。女性が延期していた治療を受けたのは8月になってからだった。

     大阪を中心に不妊治療などを行うクリニックを運営する医療法人「オーク会」の船曳美也子医師は、「3〜6月は受診者が急減した」と振り返る。感染リスクを避けるため通院を控えたり、不妊治療を延期したりする人が多かった。妊娠しても里帰り出産や、立ち会い出産など、これまで“普通”だった出産方法が望めないことに不安を募らせる人も少なくない。

     経済の影響も大きい。中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は「世帯収入が減り、子どもを持つのを控える夫婦もいる」と話す。「日本では、結婚している夫婦のほとんどが計画出産。コロナが収束して経済が回復しなければ、出生数は相当なまでに減るだろう」

     東京都の産婦人科「広尾レディース」でもコロナ前に比べて妊婦の受診が減った。宗田聡院長は「そもそも日本の少子化対策は財政支援が乏しく、うまく機能していなかった。コロナは追い打ちを掛けただけ」と指摘する。

     妊産婦や、これから妊娠を希望する人たちの不安を、どう取り除くか。日本産科婦人科学会は、妊娠中または2020年に出産した女性が、新型コロナに関してどこに相談しているか、どのような心のつらさを感じているかなどを調査することを決めた。当事者の声を集め、対策につなげる狙いだ。

     自治体も危機感を募らせる。山形県では4月以降、妊娠届だけでなく、妊娠の前段階の婚姻届も減少が目立ち始め、9月の補正予算に結婚や妊娠に関する臨時事業費約3億円を計上した。

     和歌山県は21年度当初予算案に、妊娠に関するオンラインでの相談体制を新たに構築する事業費を盛り込む方針だ。県の担当者は「令和婚で今年は出生数が増えると期待したが、コロナで、それどころではなくなってしまった。不安感をどう解消するか、本当に難しい」とこぼした。


    みずほ情報総研の藤森克彦主席研究員の話子育て全般取り組み強化を

     近年の合計特殊出生率は2015年をピークに減少してきたが、コロナ禍で、さらにその傾向が強まったと考えられる。雇用情勢悪化への緊急的な対応とともに、これまでも課題となってきた待機児童解消や、仕事と子育ての両立、教育費への経済的支援など、子育て全般に 関わる長期的な取り組みを強化することが必要だ。人々が安心して子どもを産み育てられる環境をつくることが、政府や社会に求められている。


    少子化問題を単に妊娠を可能にする不妊治療として考えることはできない。もちろん子どもを希望する人への支援は必要だろう。しかし、日本の経済構造が少子化傾向を進めてきたことは確かである。「子育ては田舎で、仕事は都会で」では歯止めは利かない。


    10月17日 塾通い支援の奨学金創設

     生活保護世帯の中学生の学習を支援しようと、京都市内の弁護士らが財団を立ち上げ、学習塾代を支給する返還不要の奨学金制度を創設し た。中学生―人につき月2万円を支給し、進学の希望があっても経済的事情から学習塾に通えない子どもの学びを後押しする。

     創設したのは、弁護士や大 学教授らでつくる「中野豊こども夢財団」。市内の医師・故中野豊氏の遺族から今春「生活に困る子どもの支援に使ってほしい」と5千万円の寄付の相談を受け、9月上旬に設立した。理事長はつくし法律事務所(中京区)の竹下義樹代表が務める。

     対象は府内の生活保護受給世帯の中学生。学習塾代として月2万円を中学在学中(最大3年間)給付する。毎年10人に給付予定で、初年度は来年3月1日〜5月31日に申請を受け付ける。給付は自己PRや将来の夢を書いた申請書による1次選考と、面接の2次選考を経て決定する。奨学金は収入認定されず、保護費に影響はないという。

     同財団によると、府内で生活保護を受ける中学生は約1200人。学習塾に通えない子どもは多く、教育機会の差が貧困の連鎖につながっている。全国では独自に学習塾代を支援する自治体もあり、竹下理事長は「生活保護世帯の子どもこそ学習支援をしなければならない。財団でも賛同者を集め、事業を大きく育てていきたい」と話す。

     また10月25日午後1時半から、財団設立の記念講演会を市職員会館かもがわ(中京区)で開催する。予約不要で無料。生活保護世帯の中学生が貧困に立ち向かう姿を描いた小説「むこう岸」の作者・安田夏菜さんが登壇する。

     問い合わせは、つくし法律事務所内の財団事務局075(241)2244



    10月16日 最高裁 非正規の手当・休暇認める

     日本郵便(東京)の契約社員らが正社員と同様に各種手当や休暇を与えるよう求めた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は15日、扶養手当や有給の病気休暇などに関して「不合理な格差で違法だ」として、契約社員にも認める判断をした。個別企業についての判決だが、同じような趣旨の手当を設ける職場への影響は大きく、非正規労働者の待遇改善につながる可能性がある。

     最高裁は13日に別の訴訟の判決で、退職金と賞与の請求を退けた。一連の判断で賃金や手当、休暇といった幅広い項目に言及したことになる。今年4月から大企業を対象に「同一労働同一賃金」制度が始まっており、企業側には実情に応じて適切な対応が求められ 日本郵便では郵便事業に携わる社員約39万人のうち、契約社員が半数近くを占める。同社は「速やかに労使交渉を進め、必要な制度改正に取り組みたい」とのコメントを出した。

     第1小法廷が認めたのは、扶養手当、病気休暇、年末年始勤務手当、夏期・冬期休暇、祝日給の五つ。

     扶養手当について「生活保障や福利厚生を図り、継続的な雇用を確保する目的」があると指摘。こうした趣旨は契約更新を繰り返して長年働いている原告らにも当てはまり「支給対象にしないのは不合理だ」と述べた。

     有給の病気休暇も、継続的な勤務が見込まれる場合は、同じように認めるべきだと判断した。

     残り三つも、正社員だけとする合理的な理由はないとした。

     今回の訴訟は、契約社員ら計12人が2014年、東京、大阪、佐賀の3地裁に提訴。旧労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法8条)が禁じる「不合理な格差だ」と主張した。

     高裁段階でそれぞれの項目に対する結論が分かれており、最高裁は東京、大阪訴訟の損害額を計算し直すため、各高裁に差し戻した。佐賀訴訟は日本郵便の上告を棄却。夏期・冬期休暇がないのは違法だとして約6万円の賠償を命じた二審福岡高裁判決が確定した。

     12人は東京、千葉、愛知、大阪、兵庫、広島、佐賀の郵便局で集配業務などに従事。うち2人は既に退職した。


    13日、15日の最高裁判断支給趣旨で明暗

     正社員と非正規労働者の待遇格差は、どこまで許されるのか。最高裁が13、15日に出した計5件の判決からは「支給する趣旨」を重視したことが読み取れる。長期間雇用されていることもポイントになった。  15日の日本郵便の訴訟では「年末年始勤務手当」「祝日給」について、契約社員にも正社員と同様に支払うべきだと判定した。趣旨が 「繁忙期に働いた対価」であり、区別するのは不合理だからだ。  「夏期・冬期休暇」には「労働から離れ、心身の回復を図る目的」があり、「病気休暇」も「療養に専念させ、継続的な雇用を確保」する目的がある。長期雇用されていれば契約社員に付与しないのはおかしいとした。  「扶養手当」については「正社員のみとする企業の判断も尊重しうる」と指摘した一方で、契約社員にも扶養家族がいて、継続勤務が見込まれるなら支給対象になると判定。責任の重さや人事異動の可能性など一定の職務の違いはあっても不合理とし、是正すべきだと結論付けた。  これに対し、13日の判決は「賞与」や「退職金」を認めなかったのは、手当ほど趣旨が明確ではなく「複合的な性質」があるため。大阪医科大の元アルバイトの訴訟では「賞与には労務対価の後払いや功労報償のほか、正職員確保などの趣旨がある」とした。東京メトロの子会社の退職金も複合的な性質があると指摘。正社員が働く「動機づけ」という意味合いに着目し、使用者側に一定の裁量を認めた。


    「日本型雇用は非正規への差別を前提としており変えていくべきだ。日本型雇用を踏まえた今の法律の枠組みでは、これ以上の是正は難しい」との龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)の指摘は司法の限界を示している。同一労働同一賃金という考え方をとれば、13日の判断と15日の判断との整合性は取れないだろう。しかし、メンバーシップ型の労働慣行を前提とすればそれぞれの判断の整合性はあることになる。(法的な不備はあるもの)ジョブ型としての非正規労働では正規職員との待遇格差は不合理となる。


    10月16日 府・市教委 学校への周知せず

     文部科学省が全国の教育委員会や国立大などに内閣と自民党による故中曽根康弘元首相の合同葬(17)に合わせて弔意を表すよう求めた通知に関して、京都府と滋賀県、京都市の3教育委員会は15日までに、府県立学校や市立学校には周知しないことを決めた。一方、京滋の国立大の多くは対応が決まっていない。

     教育基本法は、学校での特定政党の支持や政治的活動を禁じている。府教委は「特定政党と内閣の合同葬儀であり、総合的に判断して慎重に対応すると決めた」と説明。市教委は「通知では『参考までにお知らせします』とだけ書かれ、各学校への周知は求められていないので慎重に判断した」としている。県教委も「通知には県立学校について触れられていない」。として、県立学校には通知を伝えていないという。

     ただ、両府県教委とも市町教委には参考として文科省からの通知を送付した。

     京都大と京都教育大、京都工芸繊維大、滋賀医科大はいずれも「対応については検討中」としている。

     滋賀大は、文科省の通知に沿って17日に弔旗を掲げる予定という。同大学総務課は「戦没者や東日本大震災の被災者など、弔意表明の通知は他にもあり、その一つとして受け止めている」としている。

     総務省も都道府県知事や市町村長に同様の通知を出している。

     京都府と滋賀県、京都市は17日に庁舎の国旗を半旗にするなどして弔意を示す。府は勤務する職員に黙とうを呼び掛けるが、個人の判断に任せる。府総務調整課によると、故橋本龍太郎氏など複数の首相経験者の合同葬儀で同様の対応をした事例があるという。

     大津市は庁内LANの掲示板を使い、総務部長名で17日に開庁している施設に協力を求めた。



    10月15日 文科省 国立大に弔意表明要求

     17日に実施される内閣と自民党による故中曽根康弘元首相の合同葬に合わせ、文部科学省が全国の国立大などに、弔旗の掲揚や黙とうをして弔意を表明するよう求める通知を出したことが14日、分かった。13日付。識者からは政府の対応に疑問の声が上が`つている。

     政府は2日、合同葬当日に各府省が弔旗を掲揚するとともに、午後2時10分に黙とうすることを閣議了解。同様の方法で哀悼の意を表するよう関係機関に協力を要望することも決めた。加藤勝信官房長官は2日付で、萩生田光一文科相に周知を求める文書を出した。

     文科省はこれに基づき、国立大や所管する独立行政法人、日本私立学校振興・共催事業団、公立学校共済組合などのトップに対し、加藤長官名の文書を添付して「この趣旨に沿ってよろしくお取り計らいください」と記した通知を出した。

     都道府県教育委員会には「参考までにお知らせします」として加藤長官名の文書を送付。市区町村教委への周知を求めた。

     総務省も7日付で都道府県知事や市区町村長に「政府の措置と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力をお願いいたします」との文書を発出している。

     日本大の広田照幸教授(教育学)は「今の時代にそぐわない。通知に強制力はなく、各国立大学法人が判断すべきだ。政治家の葬儀で政府がここまでやる必要があるのか、議論することが求められる」と指摘した。

     合同葬の費用は国と自民党が折半する方針で、総額は2億円近くに上る。政府は2020年度予算の予備費から約9600万円を計上し「高額すぎる」などの批判が上がった。加藤長官は「新型コロナウイルス対策に万全を期す観点から積み上げた。必要最小限だ」と説明している。


    中曽根元首相の評価は様々である。いわゆる新自由主義のはしりとしての「臨調」、また日本列島を「不沈空母」とした防衛論、国家主義的な教育政策を検討した「教育臨調」など日本の針路を大きく方向づけた首相でもある。当然ながらこうしたあり方に賛否の両論があり得る。どちらを取るのかは国民一人一人の考え方だ。それなら当然弔意の在り方もそれぞれであるはず。「弔意表明要求」などあり得ない。


    10月15日 東京地裁 朝鮮学校就学補助は合理的

     東京都足立区が区内の朝鮮学校に通う児童・生徒の保護者に補助金を交付したことは違法だとして、外国人排斥を唱えるNPOが近藤弥生区長に支出金の返還を求めた訴訟で、東京地裁(鎌野真敬裁判長)は14日までに、補助金は「外国人の教育機会を保障する目的で、合理的だ」と判断し、請求を棄却した。  外国人の子が言語や文化的背景を理由に外国人学校に就学した場合は、行政が保護者の経済的負担を軽減し、義務教育相当の教育を受ける機会を保障する必要があるとの足立区の主張を全面的に認めた。  朝鮮学校や生徒らへの教育補助について政府は、2010年開始の高校無償化制度から排除し、今年は新型コロナウイルス感染対策の各種支援事業から朝鮮学校の全課程の生徒らを除外した。  在日外国人の人権問題に詳しい田中宏・一橋大名誉教授は「判決と区の主張は、外国人が独自の教育を受けたいと願うことには合理的な理由があるとする当然の判断で、政府が民族教育を行う学校を政策的に差別する異常さが改めて浮き彫りになった」と話している。  足立区は要綱に基づき外国人学校に在籍する児童・生徒1人当たり月額6千円を補助している。  NPO側は、日本の公立、私立校の児童らには支給されない不当な支出だとして、支出停止などを求め監査請求したが却下され、提訴していた。  9日の判決は、足立区の補助金額が東京都23区内で最も低いことを指摘しながら訴えを退けた。  NPOは「外国人犯罪追放運動」。ナチスの象徴で ある「かぎ十字」の旗を掲げて行進して批判を浴び、これが16年にヘイトスピーチ解消法が制定される背景の一つになったとされる。


    当然の判決といえる。アメリカの大統領選挙を見るにつけ、国を分断することがいかに危険極まりないことかとの印象を持つ。外国人労働者(技能実習生や留学生のアルバイトなど)に頼らなければならない日本社会は、多様化(ダイバーシティ)を目指さなかればならない社会となっていることを見なければならない。これまでの政府のやりかたに合理性はない。


    10月15日 市教委 学習遅れ 回復支援員募る

     新型コロナウイルスの感染対策や休校による学習の遅れの回復が学校で課題となる中、京都市教育委員会は授業中の担任の補助や補習などに当たる「まなび支援員」を募集している。教員免許は不要で、市教委は「子どもと関わる仕事をしてみたい人はぜひ応募してぽしい」と呼び掛けている。。  コロナの感染が相次ぐ市内の学校では、感染対策と学習保障の両立で教職員の業務が増えている。市教委は教員免許を持った非常勤講師の採用を進めてきたが年度途中で十分な人数が集まらず、免許不要の支援員の採用に踏み切った。教員の補助的な役割を担う。  募集は幼稚園、総合支援学校を含む全ての校種。面接を経て合格すれば順次、指定の学校・園で勤務してもらう。期間は原則、来年3月まで。  非常勤講師も引き続き募集している。募集人員は支援員と合わせて約200人。講師、支援員とも市教委ホームページの専用フォームから応募する。募集終了期間は未定。


    おそらくどこの教育委員会でも事情は同じではないだろうか。教員志望者が激減していて、人材確保に困難をきたしているという。コロナ禍での事情ということもあるのだろうが、おそらくそれだけではないのではないか。いわゆる「ブラック職場」として学校が認識されていることも影響していると思える。学力保障は必要なことだけれども、例えばプログラミング教育を取り上げてみても子どもたちにとって必須なものなのかどうかは疑問である。「プログラムを作ることではなくプログラミング的思考が大切」との主張があるがどうしても現場では目に見える成果を求めてプログラムを作ることになっているようだ。必要なことは、「(哲学的)対話」を通して協働することではないだろうか。だとすれば、教育内容の贅肉を落とすことが必要だろう。そうすれば少しは「ブラック職場」から脱皮できる可能性はあると思えるのだが。


    10月14日 非正規格差訴訟 最高裁 不合理認めず

     賞与や退職金の支払いを求めた非正規労働者を敗訴とした13日の最高裁判決は、雇用環境次第では正社はとの「不合理な格差」と判断されることはあり得るとする一方、経営者側の裁量を幅広く認めた。格差解消に向けた道筋は示されず、2千万人余りに上る非正規の不安定な立場は残されたまま。新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止めが相次ぐ中、非正規雇用を規制する法整備を求める声も上かっている。

     「政府が進める働き方改革に、どうして裁判所がブレーキをかけるのか理解できない」。賞与の支払いか求めていた大阪医科大の元アルバイト職員の女性は、判決後に記者会見し憤った。

     正社員と非正規との不合理な格差是正を目指す政府の「同一労働同一賃金」制度は、今年4月から大企業で導入された。厚生労働省は2018年に指針を策定。賞与について、会社の業績などへの貢献が正社員と同じ場合は同額を支払うべきだといった具体例を示した。一方、退職金は考え方自体を提示しておらず「企業任せ」になっているのが実情だ。

     最高裁は今回、非正規に対する企業の対応を“拘束”する一定の基準を示すのでは―。こうした観測もあっただけに、判決は厚労省でも驚きを持って受け止められた。

     「減額ならともかく、一切支払いを認めなかったのは予想外だ」と中堅幹部。コロナ禍で窮状が浮き彫りになった非正規にとって厳しい判断に「世論の反発を呼びかねず、指針で同一労働同一賃金をさらに強く打ち出せという声が出てくるかもしれない」と警戒する。

     経営サイドの反応は複雑だ。店舗運営にアルバイトやパートタイマーが欠かせないコンビニ業界では、時給を上げたり福利厚生を充実させたりして人材の定着を図ってきた。大手コンビニの担当者は、賞与や退職金の支給は「想定していない」としながらも「非正規の人材に長く働いてもらうための待遇改善は重要な課題になっている」と打ち明ける。

     非正規労働者は1990年代後半から増加傾向が続き、今や雇用労働者の4割弱を占める。同一労働同一賃金の推進を掲げた安倍晋三前首相は「非正規という言葉を一掃する」と強気の言葉を口にしたが、抜本的な対策は取られなかった。

     今年に入ってコロナ禍による経済状況の悪化による雇い止めや解雇が止まらず、逆に8月時点の非正規労働者は前年同月比で120万人も減少。「雇用の調整弁」であることが露呈した。

     東京都内の食品工場でパートとして働く坂田仁さん(49)は「契約を維持するので精いっぱい。待遇改善を訴えている場合ではない」と漏らす。今月に半年ごとの契約を更新できたが、次はどうなるのか。売り上げの回復が見通せない中、不安は拭えない。

     こうした状況の中、労働組合や弁護士らの間では、司法判断を待たずに安心して働き続けられる環境をつくるための法整備が必要だと訴える声が強まっている。

     日本労働弁護団は16年、非正規雇用はイベントの仕事や季節労働といった臨時的、一時的な仕事に限るよう労働契約法を改正すべきだとの提言を公表。コロナ禍で規制の必要性がさらに高まっていると訴える。幹事長の水野英樹弁護士は「不安定な働き方をなくして社会全体を底上げするには、抜本的な制度改革が必要だ」と話した。


    非正規労働者が雇用の安全弁としていつ解雇されるかわからないという不安はすでに常態化している。こうした事情を最高裁判決は法理ではなく事実の追認をしたに過ぎない。企業の内部留保だけが際立った安倍政権は、トリクルダウンという幻想を振りまいただけの結果に終わった。ちなみに賞与や手当といった給与制度は本給と切り離すことで、賃上げ圧力を回避する性質を持っていることを想起しておく必要がある。


    10月13日 NPO法人「こども未来」 健常児と同じ空間 支えあう

     医療的ケア児や重度心身障害児を受け入れる小規模保育事業所「こどもみらい園」が今春、京都市上京区で開設された。障害児の父親らが立ち上げたNPO法人が運営し、障害などの有無に関わらず一緒に同じ空間で時間を過ごす「インクルーシブ保育」に取り組んでいる。

     きっかけは、市内の障害のある子らが通う施設の父親でつくる「おやじの会」だった。子育ての悩みを共有したり、子どもらの居場所が少ない社会の問題点を話し合ったりする中で、メンバーの1人が「保育所をつくりたい」と考えたという。  昨年8月にNPO法人「こども未来」(右京区)を発足させて準備を進め、今年4月にオープンさせた。おやじの会のメンバーは会員になるなどして運営を支えている。

     園では医療的ケア児のために看護師を配置して医務室を設け、小児科医や歯科医とも連携している。ケアに必要な医療機器が電源のトラブルで使用できない事態を防ぐため、多数のブレーカーを設置した。また、施設の広さでは本来なら最大19人まで受け入れられるが、定員を12人程度にして子どもらが動きやすいようにスペースを確保している。

     現在は計9人の子どもが通い、医療的ケア児と重度心身障害児が1人ずついる。子どもたちは一緒に屋内での遊びや散歩などをして過ごしている。

     重い障害のある息子(10)の父親でもある辻真一園長(53)は「2、3歳の健常児が障害のある友だちの手助けをしようとしたり、優しく接したりする姿を見ると、人は本能として支え合うという意識があると感じる」と話す。

     今後は重度心身障害者らを対象とした放課後等デイサービスや訪問看護ステーションの事業を検討している。辻園長は「誰もが助け合い、共に生きることができる社会を目指す。親が気軽に相談できる場もつくりたい」と夢を描いている。  18日午前10時から見学会と説明会を開催する。問い合わせは同園075(755)2029。


    教育関係者から「就学前だから可能なのでは?」という声が聞終えてきそうな気がするが、学校教育でこそインクルーシブという考え方が必要。支援学校の希望者が増え、新しく開校するというニュースが目につく。またNPO法人でしかできないのなら、行政の不作為とでもいうべきなのだろう。


    10月9日 コロナ民間臨時調査会 コロナ施策「場当たり的」

     「アベノマスクは失敗だった」「一斉休校は疫学的に意味がない」―。政府の新型コロナウイルス対策を検証した民間臨時調査会の報告書は、対応に追われた政府や専門家会議の関係者らの生々しい本音を紹介。政権内部や専門家会議との連携が不十分な中、場当たり的に政策が決定されていった過程が浮き彫りになった。

     ―世帯当たり2枚配布された「アペノマスク」。使い捨てマスクが不足する中、厚生労働省や経済産業省と事前調整なしに首相周辺で決められた。配布に時間がかかったこともあり、国民からはマスクより緊急経済対策や現金給付を求め批判が続出。官邸スタッフは「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」と証言した。

     国民―人当たり10万円の特別定額給付金の支給でも、マイナンバーと金融機関口座のひも付けがなく時間がかかった。患者データの全国集計でもデジタル化が遅れ、日本の「デジタル敗戦」が露呈した。加藤勝信前厚労相は「デジタルトランスフォーメーションの遅れが最大の課題だった」と振り返った。

     3月からの一斉休校では政権内の連携不足が混乱を招く事態に。2月24日の専門家会議記者会見での「コロナウイルスに対する闘いが瀬戸際に来ている」との発言を重く受け止めた首相は全国の一斉休校を決断した。教育現場に与える影響の大きさにもかかわらず、事前に文部科学省や専門家会議への相談はなかった。専門家会議関係者は「子どもは感染源にほとんどなっていない。疫学的にはほとんど意味がなかった」と批判した。

     3月中旬以降、欧州で感染した人の流入が国内の感染拡大の一因になったとされる。専門家会議は3月17日、水際対策の強化を求めたが、政府は当時の一斉休校に対する反発や批判の大きさに消耗、欧州旅行の中止措置は葬り去られた。「あの時、欧州旅行中止措置を取っておくべきだった。一番悔やまれる」(官邸スタッフ)。

     専門家会議は密閉、密集、密接の「3密」の発信など感染拡大防止で大きな役割を果たすようになると、経済の維持を重視する政府からは「ありがた迷惑」(内閣官房幹部)な存在とみられるように。調査会は「専門家会議とより丁寧な対話を行い、その役割を国民にもっと明確に周知、理解させるべきだった」と指摘、決定プロセスと結果を検証できるような議事録を残すことも課題とした。

     日本は想定外の流行に備えが不十分でその場しのぎの対応に追われたが、結果的に人口当たりの死亡率を低く抑えた。官邸スタッフは「泥縄だったけど、結果オーライだった」と実態を総括した。


    小児科学会コロナ流行 大人が拡大

     国内で新型コロナウイルスの流行を広げているのは子どもではなく主に大人であることが日本小児科学会の調査で分かってきた。子どもも大人と同じように感染するが、インフルエンザと違って子どもが大人にうつすケースはそれほど多くないようだ。

     一方で秋から冬に新型コロナの流行が拡大すると休校に踏み切る学校が増えそうだ。同学会の理事を務める長崎大の森内浩幸教授は「休校が長引くと学びの機会が奪われ、子どもたちの心と体の健康に悪影響を及ぼす。実施には慎重な検討が必要だ」と指摘する。

     同学会が9月末までに集めた20歳未満の症例データによると、感染経路が判明した約370人のうち7割以上が家庭内での感染だった。父親からうつったケースが判明者全体の半数近く。両親や祖父母など大人からの感染が子ども間の感染を大きく上回った。重症化する割合ほ大人に比べて低い。

     学校内でのクラスター(感染者集団)も発生しているが、大人数の会食や集まりで起きる大人のクラスターに比べると規模も広がりも小さい。森内さんは「新型コロナは大人が家庭に持ち込んで子どもに感染させる。学校や保育施設から家庭に持ち込まれて社会に広がるインフルエンザとは対照的だ」と話す。

     理由は何だろうか。ウイルスが細胞に感染する仕組みの違いも考えられるが、森内さんは「新型コロナは誰も免疫を持たないため社会的に活発な大人の方が感染の機会が多い」とみている。

     「新型コロナを恐れるあまり、通常の予防接種を子どもに受けさせるのを控える親も出ている」と森内さん。休校が続くと家庭内での虐待が増える懸念もある。「休校が必要な場合はマイナス面とのバランスを考慮し、一定の地域で期間を区切って実施すべきだ」と訴える。


    民間の調査会がコロナ対策を総括。本来は政府が率先して総括する必要があるにもかかわらず議事録作成も怠っている。「結果オーライ」とはなんとも情けない。日本学術会議の会員任命拒否についても十分な説明がなされていない。「国民に丁寧に説明したい」という紋切型の発言だけが継承されているのも、これまた情けない。


    10月7日 人事院勧告 国家公務員ボーナス減額

     人事院は7日、2020年度の国家公務員一般職のボーナスに当たる期末・勤勉手当の年間支給月数について、前年度より0・05ヵ月分少ない4・45ヵ月分に引き下げるよう国会と内閣に勧告した。新やコロナウイルス感染拡大に伴う景気減速などを背景に、民間企業のボーナス水準が公務員を下回ったため。ボーナス引き下げは10年以来10年ぶり。勧告は、地方公務員の水準改定の参考になる。

     人事院が6〜7月に郵送や電話で実施したボーナス調査によると、民間の支給月数は4・46ヵ月。新型コロナ感染が本格化する前に夏のボーナス水準が決まった企業も多いとみられ、影響は限定的だった。勧告もこれに伴い、19年度の支給月数4・50ヵ月からの小幅引き下げにとどまった。

     政府は給与関係閣僚会議で協議し、対応を決める。今月26日召集予定の臨時国会で必要な法改正が済めば、12月支援の冬のボーナスから適用される。

     国家公務員の月給改定に関しては、民間実態調査が新型コロナの影響で遅れたことを受け、人事院が月内にも追加で勧告する。例年はボーナスと月給同時で、勧告時期がずれるのは初。都道府県などの人事委員会が地方公務員の給与に関して行う勧告も、ボーナスを先行する例が出そうだ。


    人事院の勧告が民間準拠という原則がある以上はマイナス勧告も仕方がないのかもしれないが、改めて公務員の労働3権の制限の代償措置であることを思いだす必要がる。また、コロナ禍の中で公務員がどのような状況の下仕事をしていたのかも、人事院は言及すべきだろう。少なくとも人事委員会の勧告ではそうありたい。


    10月3日 【土曜評論】 学問と思想への弾圧に

     京都大准教授 藤原辰史

     日本学術会議の新会員に推薦された6人の任命を拒否した経緯を、菅義偉首相は説明しない。新会員候補が優れた研究または業績がある科学者に当てはまらない理由も提示しない。もし誰もが納得できる説明がなければ、この介入は学問と思想への弾圧事件として後世に記憶されることになろう。

     研究者は今後、ただ首相が任命しないという理由だけで重要な任務から排除される。すでに個々の国立大学でもトップダウンの人事が強化されつつあるから、学問全体が萎縮を強いられていくだろう。

     首相に任命権があるから任命拒否できる、というのが加藤勝信宣房長官の答弁だ。だが、学術会議の会員選出の選挙制度に代えて、推薦と首相の任命という制度を導入する際に、参院の文教委員会で政府の答弁者が1983年5月12日に「実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません」と明確に答えている。参院文教委の付帯決議にも「内閣総理大臣が会員の任命をする際には、学術会議の推薦に基づ くという法の趣旨を踏まえて行 うこと」と記している。

     菅首相による任命拒否はこれらの全否定である。「公権的解釈」として特別な法的意味を持つ政府の答弁だけでなく、政府が尊重せねばならない委員会の付帯決議も無視しているからで ある。

     安倍政権が、大学の研究教育予算を増やさぬ一方、防衛省の「安全保障技術研究推進制度」の予算を2016年度の6億円から17年度の110億円に急増させて軍事研究に誘導を図った。これに対し、学術会議が「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表して「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と表明したことが根っこにあるとの指摘がある。

     だが、声明は「政治圧力」や「学問の自由の侵犯」などではない。公開議事録を読めば分かる通り、さまざまな異論の膨大な調整に時間をかけた結果生まれたものだ。

     そして無視できないのは、今回の暴挙が、若手研究者の自由の侵犯にほかならない、ということである。既存の学説や学風に抱いた若手研究者の違和感こそが、学問の生命であり、発展の起爆剤であり、未来の学問の推進力となる。現実に対する批判精神を持たない人文・社会科学は、ただ現状追随するだけの情報整理に終わってしまう。その程度であれば、人工知能(AI)で十分に対応できるだろう。

     批判とは、現実とのたゆまぬ緊張関係の中に生ずる創造的行為である。政府に批判的な人文・社会科学などを切り捨てる意思を示すことは、ただでさえ研究者のポストが削られ学問の未来が不透明な中、人文・社会科学に携わる若手の意欲を深刻にくじくのだ。

     戦前・戦中の日本は、国を批判する研究者の専門書を検閲し、文章を削除させ、大量に投獄することで弾圧した。その結果、政府が批判者を失い、自己を見失って暴走し、学問は停滞した。このような犠牲を払ってようやく学び得たはずの学問の独立性が、目の前で破り捨てられる時代に、私たちは今直面している。


    思い出すのは内閣法制局長官のすげ替えで、憲法解釈を変更したことだが、つい先ごろの話である。菅政権は間違いなく「安部政権を継承」する内閣である。「たたきあげの人」などというイメージ先行ではなく、きちんと見ておかないと。ちなみに「排除」された方の著書の一部は、松宮孝明『はじめての法律学』(有斐閣)、小沢隆一『変えてはいけない憲法9条』 (学習の友ブックレット)、岡田正則『辺野古訴訟と法治主義』(日本評論社)、宇野重規『民主主義とは何か』 (講談社現代新書)、加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』 (新潮文庫) 。


    10月3日 府教委 府内いじめ3割減

     京都府教育委員会は2日、府内(京都市立を除く)の小中高校、特別支援学校を対象にしたいじめ調査の2020年度一学期分の結果を発表した。新型コロナウイルスの影響で、いじめの認知件数は8890件と前年同期(1万2690件)より29・9%減少。心身に重大な被害を受けた「重大事態」はなかった。

     20年度は感染予防のため4、5月が休校となり6月に学校が再開された。調査は1学期の終盤に行った。

     認知件数の内訳は小学校が7912件と前年同期(1万1086件)比28・6%減、中学校は742件と前年同期(1170件)比36・6%減、高校168件と前年同期(301件)比44・2%減、特別支援学校68件と前年同期(133件)比48・9%減だった。府教委は「児童生徒同士で接触する機会が少なかったことが影響したのではないか」とみている。

     いじめの内容ではパソコンやスマートフォンでの中傷などが中学校71件、高校31件といずれも前年度より7件増加した。小学校も前年度より44件減少したが163件あった。中学校では「休校期間中にLINE(ライン)のグループから外され嫌な思いをした」という報告もあったという。

     府教委は「嫌な思いをした」なども幅広くいじめと捉えて集計している。例年はいじめが解消したかも調べているが、20年度は休校期間を考慮して行わなかった。府教委は「認知件数は減少したが、スマホでのいじめなど水面下で見えない事案があるかもしれず、2学期以降も注視したい」としている。


    数字がはある。


    10月1日 厚労省調査 児童虐待死、母もDV被害

     厚生労働省の専門委員会は30日、2007年1月〜18年3月に発生・発覚した心中以外の児童虐待死亡事例に関し、死亡した児童の実母へのドメスティックバイオレンス(DV)の有無に焦点を当てた詳細な分析結果を初めて公表した。検証可能な死亡事例270人のうち、実母がDVを受けていたのは51人(18・9%)。この家庭の地域社会との接触状況を調べると「乏しい」「ほとんどない」人が38人(74・5%)に上り、虐待とDVの関連性や孤立しやすさが浮き彫りとなった。

     これに対し、DV経験がなかったのは219人(81・1%)で、地域社会との接触状況が「乏しい」「ほとんどない」人は112人(51・1%)だった。家庭の親族との接触状況では、DVありが「乏しい」「ほとんどない」人が45・1%、DVなしは29・7%となった。専門委は検証結果報告で「DV加害者により孤立させられやすく、虐待が深刻化している可能性がある」と指摘した。

     また厚労省は同日、今年1〜6月の全国の児童相談所における虐待対応件数(速報値)が9万8814件だったと発表。例年通り過去最多を更新するペースだが、新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言下だった4月、5月は前年同月と比べて微増・微減にとどまった。同省の担当者は「外出自粛や休校で子どもが家庭で過ごす時間が増えた。外部の目が届かず、虐待が潜在化した恐れもある」と分析している。

     同省によると、年度分で最新の虐待対応件数は18年度で、15万9838件(確定値)となり前年度比で2割ほど増えた。今年1〜6月と前年の同時期を比べると、増加幅は1割ほどだった。月ごとでみると、今年1月は1万4799件(前年同月比21%増)、2月は1万5004件(同11%増)、3月は2万3601件(同18%増)。緊急事態宣言下の4月は1万4475件(同4%増)、5月は1万3462件(同4%減)。解除後の6月は1万7473件(同8%増)だった。


    DVや子供の貧困があまり見えてこない理由の一つに、政府の統計資料があまり公表されないという理由がることはこれまでも指摘されてきた。そこをうまく作品化したのが柏木ハルコ・作『健康で文化的な最低限度の生活』(ビッグコミックス)だと思う。ぜひ一読してほしい。とりわけ教職員との問題意識の共通点も多い。試し読みも可能なようだ。


    10月1日 文科省調査 普通教室 冷房100%

     京都府内の公立で小中学校の普通教室の空調(冷房)設備設置率が9月時点で100%(前年度は96・5%)になったことが30日に文部科学省が公表した学校施設に関する状況調査結果で分かった。一方、特別教室は72・3%、体育館などは3・7%だった。

     空調設置率は幼稚園の保育室も100%(前年度97%)となった。高校、特別支援学校の普通教室は既に100%を達成していた。

     トイレの洋便器率は小中学校が54・6%と4年前の前回調査(39・3%)から15・3回増加した。幼稚園が80・4%、特別支援学校が73・9%。設置者別で最高は相楽東部広域連合(笠置町、和束町、南山城村)の75・9%で、最低は与謝野町宮津市中学校組合の31%。京都市は61・9%だった。

     またドライシステム(乾式)の給食調理場の普及状況も初めて調査した。同システムは床を乾いた状態にして細菌の繁殖を防ぐ設計で、同省が推奨している。府内の導入は調理場287施設のうち22・6%の65施設で、全国平均の31・9%を下回った。ただ水をまいて清掃する従来の湿式調理場のうち、214施設は床をぬらさない「ドライ運用」をしていた。