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  • ハンドコーラス生き生き.25
  • 市職員給与見送りを求める.25
  • 全日制公立高過去最低.28
  • 11月6日 府内中3進路希望調査 全日制公立高過去最低

     京都府と京都市の両教育委員会は27日、2021年度入学の高校入試に向けて府内の国公私立中の3年生に行った進路希望調査の結果を公表した。全日制公立高を志望する生徒の割合は55・0%で前年より0・1ポイント下がり、13年の調査開始以来最低となった。私立高志望は33・2%と0・8ポイント下がり16年以来4年ぶりに低下した。

     卒業予定者は2万2088人(前年比171人減)で、通信制を含めた進学希望率は98・9%。全日制公立高の志願者は1万2139人で、うち85・5%に当たる1万376人が来年2月の前期選抜の受験を志望した。私立高志願者は7333人だった。  前期選抜の倍率上位は山城高の普通科A方式1(募集人数48人)が7・31倍、鴨折高の普通科A方式1(48人)が7・29倍、桂高の普通科A方式

    (42人)が7・26倍、洛北高の普通科A方式1(24人)が5・75倍、亀岡高の普通科A方式1(20人)が5・00倍と続いた。来年度に新設する昼間・夜間定時制の京都奏和高(80人)は3・28倍となった。志望者数が募集定員を下回ったのは37校56学科だった。

     志望校や進路が未定の生徒は591人と前年度より50人増え、両教委は新型コロナウイルスの影響もあるとみている。通信制高校への進学希望者も451人と70人増えた。

     府教委は近年増加傾向だった私立高志願者が減少した理由について「まだよく分からず分析したい」とし「今年はコロナで学校説明会が減ったが、高校で取り組みたいことをよく考えて志望校を決めてほしい」としている。



    11月25日 市人事委員会 市職員給与見送りを求める

     京都市人事委員会は24日、市職員の月給の改定を見送るよう門川大作市長と山本恵一議長に報告した。市職員の月給が民間給与とほぼ変わらないため。据え置きを求めるのは2年ぶりとなる。

     市人事委が従業員50人以上の市内民間事業所588社のうち、151社を無作為抽出して今年4月分の給与を調査。民間の平均月給39万3696万円に対し市職員給与が42円上回っていたが、差が極めて小さく給料表の改定は必要ないと判断した。

     また市人事委は新型コロナウイルス対策に当たる職員の長時間労働を問題視し、「是正に向けて組織を挙げて取り組むことを強く求める」との文言を報告に盛り込んだ。


    近年は人事委員会の勧告よりも“報告”のほうに意味があることが多くなっている。今回の意見も長時間労働是正に言及していることは評価できるが、先日の教員のコロナ特別手当との整合性を人事と教育の両委員会はどう説明するのだろうか?


    11月25日 難聴児童ら ハンドコーラス生き生き

     聴覚に障害のある人たちが手の動きで歌詞の世界を表現する「手歌」と、視覚に障害のある人たちによる合唱で、音楽を奏でる「ホワイトハンドコーラス」の活動が、今夏から京都市内で始まった。難聴の小学生たちが生き生きと練習に励んでいる。 29日午後3時から、オンラインコンサートを行う。

     同コーラスは、障害の有無にかかわらず、ともに音楽を楽しむ合唱隊として、南米ベネズエラで始まった。歌詞を読み解き、手話にとらわれない独自の表現法で振り付ける「手歌」が特長。日本では2017年に取り入れられ、現在は東京を拠点に愛好者が「ホワイトハンドコーラスNIPPON」を設立、約40人が参加する。

     二条城北小難聴学級に通う2年西村潤さん(7)と母の洋子さん(49)=北区=が、2年前、北区の大徳寺塔頭龍光院で行われたコンサートを見て感動し、いつか京都でも、と望んできた。

     これまで東京でしか練習活動がなかったが、今春からのコロナ禍でオンラインに切り替えられ、かえって京都からも気軽に参加できるようになった。これを契機に今年8月、「京都支部」の設立が実現したという。

     現在は、潤さんと同じクラスの兎騰海(うとうかい)さん(8)=上京区=の2人による手歌の「サイン隊」と、聴覚に障害がない中学生ら計4人による合唱の「声隊」が、毎週日曜、龍光院で練習を続けている。

     手歌は、子どもたちを中心に考案するという。コンサートで披露する人気バンド・RADWIMPS(ラッドウインプス)の曲「ココロノナカ」では、手話にはない単語「ハッピーエンド」という表現を考える際、コロナで思うように会えない恋人どうしにまつわる歌詞の内容から、「あなたと一緒に何かを行うこと」、と解釈。「あくせく生きる」は、両親に意味を聞きイメージを得た。

     兎さんは、「みんなで考えて手歌を作り上げていくのが楽しい」と話す。潤さんも、「耳の聞こえる人にも聞こえない人にも楽しんでもらえるよう、顔の表情も豊かにしている」と張り切る。本番では、白い手袋を付けて舞台に立つ。

     洋子さんは「難聴では音楽を楽しめないと思い込んでいた偏見を変えてくれたコーラス。多くの人に見てほしい」と話している。

     コンサートは東京支部との合唱がメインで、7曲程度披露する。サイト「Peatix」で「ホワイトハンド」と検索し、チケットを無料入手する。


    障害を一定超えて共演するというのは人々の多様性を認め進める社会への取り組みとして意味がある。これまでにもお誕生日ありがとう運動など中心にしてきた障害者と『第九』を歌う取り組みなどがある。


    11月21日 市立朱雀中 弱視生徒、盲学校から普通学校へ

     京都市中京区の市立朱雀中に2018年4月、盲学校の小学部を卒業した男子生徒が入学した。生徒は当初、普通学校に移ることに不安を抱いていたが、3年生となった現在では仲間や教員らの支えを受けて充実した学校生活を送っている。学校側も入学を機に障害がある人と共に生きる社会について考える人権教育に力を入れ、生徒たちの他人を思いやる心が育まれているという。

     生徒は堀遥歩さん(15)。11月上旬に学校を訪れると、理科の授業でグループ学習を行っていた。堀さんはタブレット端末で教材の文字や図式を撮影しては拡大して確認。難問に悪戦苦闘していると近くの女子生徒が「ここはこうして気体が発生するんだよ」と教えてあげていた。

     堀さんは生まれた時から弱視で、左目は見えず、右目の視力は0・06。京都府立盲学校(北区)の小学部で学んでいたが、小学3、4年生の頃から「もっといろんなことがしてみたい」と居住地域の学校に入りたいとの気持ちが強くなった。6年生の時には朱雀中への入学準備のため、地域の小学校の授業に参加したり、同中までI人で登校する練習をしたりした。それでも「(普通の)幼稚園に通っていた時にいじめられた経験から怖く、不安だった」こともあり最後まで悩んだという。

     同中も教員が事前にアイマスクで弱視の見え方を体験するなどして受け入れ体制を整えた。入学後は学年集会を開いて生徒たちに協力を求め、堀さん自身も「手助けをお願いした時は助けてほしい」などと呼び掛けた。授業ではサポートの教員が1人付き添い、タブレット端末で黒板の板書を撮影することも認めた。定期試験は通常の1・3倍の時間で実施するなどして対応した。

     クラスの仲間たちの協力も大きかった。「プリントが配られているよ」「ここに階段があるよ」などと注意を促し、バレーボールでは特別ルールを設けるなど全員で楽しめる工夫を考えた。現在では学校生活の支障はほぼなく10月には長崎県への修学旅行にも参加した。3年間担任をする岩本信吾教諭(36)は「当初は同級生もどこまで手助けすればいいか戸惑っていたが、次第に何に困るかが分かってきた」と振り返る。友人の3年前田修志さん(15)は「堀君は場を和ませてくれる。自分も高齢者など困っている人にできることがないかと考えるようになった」と語る。

     学校は視覚障害者を招いた講演会を催すなど人権学習に力を入れ、中川潔校長(58)は「勝手に手を差し伸べるのでなく『どうしてほしい』と聞くなど、生徒たちが多様性を理解し行動で示せるようになった。優しく温かい集団になっており、今後も根付かせたい」と語る。これまでの取り組みが評価され、`優れた教育実践を表彰する20年度の「博報賞」に選ばれた。

     堀さんは「入学するとみんな優しく助けてくれた。友達とはテレビや漫画、ゲームの話ができ、相談にも乗ってくれる。今後、普通の高校や大学に行き就職したい。今まで助けられてきたので誰かの役に立ち、人を助ける仕事に就きたい」と将来を見据える。


    障害のある子どもとそうでない子どもが共に学ぶ教育を“インクルーシヴ教育”ということが案外知られていない。必ずしも“インクルーシヴ教育”である必要はないが、その理念はもっと深く理解されてよいだろう。これまでの京都市では何人かの全盲の子どもが普通学校(小・中・高)を終了した経験をもている。この堀さんの経験が「美談」に終わらないような学校や教育委員会の取り組みが継続して行われることを望みたい。


    11月21日 文科省 特別支援学校、送迎バス増便

     障害のある子どもが通う全国の特別支援学校のスクールバスを増便するため、文部科学省が補助金を拡充する方針を固めたことが19日、関係者への取材で分かった。混雑による新型コロナウイルス感染のリスクが指摘されており、解消を図る。2021年度予算の概算要求に盛り込んでいた必要経費のうち、40億円程度を20年度第3次補正予算案に先取りで計上し、早急に支援したい考えだ。

     特別支援学校は19年時点で全国に1146校あり、約14万4于人が在籍。多くの学校はスクールバスで送迎しているが、ほぼ満員で3密(密閉、密集、密接)が懸念されている。じっとしているのが難しい子どもが転落する危険があることから窓を開けての換気が困難だったり、重症化しやすい基礎疾患がある子どもが乗車したりするなどの事情がある。

     文科省は増便により、1回の乗車率を50%ほどに抑えることを目指す。バス台数の追加賀用やピストン輸送に伴う運転手の人件費などについて、公立と私立は半額、国立は全額を補助する。医療行為が必要な「医療的ケア児」のために、福祉タクシーを使う際の経費も対象とする。

     今春以降、1次と2次の補正予算で計20億円計上したが、補助申請が上回る状況だった。補助金を使って増便したものの、感染拡大の長期化で資金不足になり、年明けからは継続できないと訴える学校もあった。

     特別支援学校に通う子どもは09年度の約11万7千人から約2割増加し、教室不足など教育環境の悪化も問題となっている。文科省は来年にも、必要最低限の基準となる「設置基準」を初めて策定する方針。



    11月19日 厚労省 児童虐待最多19万3780件

     全国の児童相談所が2019年度に児童虐待として対応した全体の件数が19万3780件(速報値、前年度比21・2%増)に上ったことが18日、厚生労働省のまとめで分かった。1990年度の統計開始以来29年連続で最多を更新した。前年度からの増加数も3万3942件で過去最多だった。同省は「警察との連携強化が進んでいる」としている。

     都道府県別では、京都が4282件(同17%増)滋賀が1856件(同13%増)だった。

     厚労省によると、身体、ネグレクト(育児放棄)、性的、心理的の虐待4類型のうち、最多は心理的虐待で10万9118件。全体の56・3%だった。情報の経路は、警察の通告による対応が年々増え、19年度は9万6473件。全体の49・8%で10年前の15倍近くになった。心理的虐待に分類される、子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」の警察からの通告増加が目立つ。

     類型別で件数と全体での割合を見ると、最多の心理的虐待に続くのは、身体的虐待で4万9240件(25・4%)、次いでネグレクト3万3345件(17・2%)、性的虐待2077件(1・1%)。経路別で警察の次に多いのは、近隣知人の12万5285件(13・0%)。続いて家族親戚1万5799件(8・2%)、学校1万3856件(7・2%)となった。


    【インサイド】防止策「実父」対応急務

     児童虐待の対応件数が29年連続で過去最多となった。厚生労働省の統計では、加害者として「実父」が占める割合が年々上昇。 19年度は、子どもの前で家族に暴力を振るう心理的虐待「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」の増加が全体の数を押し上げた。家庭内の問題に、行政はどう対処すればいいのか。専門家は、父親が抱える問題へのケアを含めた家族全体への支援の必要性を訴える。

     「自分も暴力を振るわれると思い怖かった」。10月、茨城県ひたちなか市で生後1ヵ月の小沼舞香ちゃんをドアにたたき付け、腹を殴るなどして死なせたとして、殺人容疑で父親(28)=鑑定留置中=が逮捕された事件で、県警の聴取に母親(24)はそう説明したという。

     県警によると、暴行は7月15日から23日ごろまで繰り返されていた疑いがある。父親は「泣き声でストレスがたまった」と供述。夫婦間のDVはなかったとみられるが、母親はやめるよう伝えても制止しきれなかったといい、理由に夫への恐怖心をあげた。

     ひたちなか市では、2018年にもO歳児に父親が暴行し死亡させた疑いのある事件が発生。再発防止のため、より丁寧な支援を心掛けていた中で悲劇が繰り返された。

     子どもがいる家庭への支援は、母親の出産前後から自治体の母子保健担当が担い、家庭に不安や問題があるとすれば同じ役所内の児童虐待などの担当部署や、児童相談所などに引き継いでいく。

     舞香ちゃんのケースでは、母親が母子手帳交付時のアンケートで妊娠中や出産後の協力者が夫のみと記入していた.ことなどから、母子保健担当者が小まめに連絡して相談に乗り、虐待担当部署とも連携。舞香ちゃんが生まれ、退院した後も3回にわたり家庭訪問していた。  しかし、担当者が父親に面会したのは1回のみ。母親からの相談も「夜泣きで夫も寝不足」という内容にとどまり、児相につなぐ判断には至らなかった。面会を繰り返しながら、家庭の実情を把握できなかった担当者は「お母さんと信頼関係を築けていなかったのかも」と声を落とす。

     厚労省の18年度の統計によると、児童虐待で実父が加害者だったケースは、41・0%。14年度と比べると、6・5ポイント増えている。18年に東京都目黒区で船戸結愛ちゃん=当時(5)、19年に千葉県野田市で栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が死亡した事件でも、父親から母親への物理的、心理的な暴力があったことが公判で明らかになった。

     行政の担当者が繰り返し家庭訪問しても、夫婦間のDVや父親の問題に関しては、母親が言わない限り気付けない構造的問題がある。

     大阪市立大大学院の横山美江教授(公衆衛生看護学)は 「母親と同様に父親も育児の影響により、鬱になり得るし、ストレスも感じる」と指摘。

     「支援の対象を母親に限定せず、父親の育児相談に乗る機会を設け、乳幼児健診への参加を促すなど、家族全体に継続的な支援をすることで、虐待の防止につながるのではないか」と訴えている。



    11月15日 政府 遠隔授業でつばぜりあい

     教育のデジタル化を巡り、萩生田光一文部科学相と河野太郎行政改革担当相らがつばぜり合いを繰り広げている。小中高校にパソコンを使った遠隔授業を導入し学習の自由度を広げたい河野氏に対し、対面での学びを重視する萩生田氏は慎重姿勢を崩さない。規制緩和を呼び水に教育の在り方は変わるのか。

     「できる子はオンラインでどんどん先に進み、手が空いた先生が(支援の)必要な子に時間を費やすべきだ」。河野氏は10月、インターネットに投稿した動画で持論を展開した。教員の直接指導を必須とせず、遠隔授業でも正式に授業を受けたとみなすとの提案だ。実現すれば学校の姿は大きく変容する。

     現在の遠隔授業は、配信を受ける児童生徒のそばに教員が立ち会うことになっている。過疎地の学校などで専門性の高い授業を受けるケースが前提となっている規制だ。自宅での受講は想定しておらず、特例的に認められるのは不登校や病気療養中の子どもだけ。大幅な規制緩和を要求する河野氏は教員の負担軽減にもつながるとし、多忙化に悩む教育現場の支持を得たい考えだ。‘

     さらに河野氏は「小学生が高校の内容を学んでも良い」と、遠隔授業だけで飛び級も容認する可能性に言及。平井卓也デジタル改革担当相も「子どもの潜在能力を解放する一面は間違いなくある」「先に進みたい子を引きずり下ろしてはいけない」と賛同し、学習意欲の高い児童生徒のためにも遠隔授業を推進すべきだとの考えを示している。

     これに対し、教育行政を管轄する萩生田氏は「映像を見せるだけでは学校の役割を果たせない」とくぎを刺す。教員が子どもに寄り添って声を掛け、質問に答えることが「授業の深み」をつくると主張。特に小中学生は、教室で机を並べて 一緒に学校生活を送ることが互いの成長を促すと強調する。

     一方で「抵抗勢力ではない」と慎重な物言いをする。発達段階に応じて指導方法を工夫することや、遠隔と対面を組み合わせる「ハイブリッド型」が有効だとして、高校の規制は緩和する意向だ。文科省は10月、教員でなくても助手らの同席で遠隔授業を可能とし、認定できる単位数の上限を引き上げる方針も示した。

     ただ、この規制緩和は菅義偉政権誕生前から検討されていた既定路線。文科省内では「改革を打ち出すことで矛を収めてもらいたいというのが萩生田氏の本音ではないか」と推し量る声もある。萩生田氏は今後も河野、平井両氏との3者会談で協議するとしている。

     これまで積み重ねてきた学びの在り方が一変すると、文科官僚の抵抗感は強い。ある幹部は「遠隔授業についていけず、置き去りになる子を出さないように注意を払うことが教育のあるべき姿ではないか」と話す。

     鳴門教育大の石坂広樹准教授(教育政策)は「遠隔授業には離れた場所にいる多様な人と交流できる利点があり、対面授業は子どもの社会性をはぐくむ。ハイブリッド化が望ましい」と訴えた。


    この議論は公教育とはどうあるべきかが問われる問題だろう。ただ、これからの子どもをどう育てていくのかという視点が依然として「知識集積型」であるようにおもう。文科省はアクティブラーニングと遠隔授業との整合性を明らかにして、「規制緩和」と対峙すべきではないか。


    11月14日 政府 高所得世帯の児童手当減額

     政府が、共働きで高所得の世帯に対する児童手当を減額する方向で検討に入ったことが13日分かった。複数の政府回係者が明らかにした。高所得の場合は通常より少ない月額5千円の特例給付を受け取るが、年収を判定する基準を「世帯主」から「夫婦の合計」に変更し、所得制限の対象世帯を広げる方針。高所得と判定されて手当が減る共働き堪作が増加する見通しだ。子ども60万人分の支給に影響が出る。

     より高所得の世帯に対しては、特例給付の縮小や廃止を検討する。一方、少子化対策として第3子以降の手当増額を視野に入れる。一連の見直しで約500億円の財源を捻出。待機児童解消に向け、2021年度から4年間で14万人分の保育施設を整備する新計画の費用に充てる。政府は来年の通常国会で関連法案の提出を目指す。

     ただ与党内から「子育て世代を苦しめる見直しだ」などと異論も出ている。保育の新計画の財源について、政府は児童手当見直しに加え、企業に新たに約1100億円の拠出金を求める方針。与党や経済界との調整は曲折が予想される。

     児童手当は中学生までが対象で3歳未満や第3子以降は1万5千円、ほかは1万円。会社員の夫と専業主婦、子ども2人の家庭では、夫の年収が960万円以上だと所得制限の対象となり、特例給付として子ども1人5千円に減額される。

     共働き世帯が増加する中、政府は、所得制限の判定対象を夫婦の合計収入とし、家計の実態を反映させることを検討している。夫婦が共働きで、年収かいずれも500万円の場合、現行では子ども1人当たり1万か1万5千円だが、見直し後は5千円に減る。

     さらに夫婦の合計収入が一定額以上の場合、5千円の特例給付の縮小や廃止も検討する。一定額は1500万円などとする案がある。


    【インサイド】年12万〜36万円下げ可能性

     政府が検討している児童手当見直しが実施された際に、共働き家庭の家計に与える影響を試算した。待機児童解消の財源を生むための制度変更が、夫婦と子ども2人の家庭では、年間受取額が12万〜36万円引き下げとなる可能性がある。

     現行の児童手当の所得制限額は、扶養家族が多いほど高くなる。専業主婦を含む4人家族では、夫の扶養家族は3人で、所得制限は年収960万円以上。共働きの4人家族だと扶養家族は子ども2人で、所得制限は年収約920万円以上となる。

     例えば、いずれも年収500万円の共働き夫婦と小学生の子ども2人のケースでは、現在は世帯主の年収が所得制限額920万円を下回るため、子ども1人当たり月1万円、2人分で年24万円が支給されている。

     制度見直しにより、夫婦合計の収入で判定されると、年収は1千万円となり所得制限の対象だ。特例給付は1人月5千円で2人分は年12万円となるため、見直し前から12万円減り半額になる。

     2人の子どもが3歳未満なら、見直し前は1人当たり月1万5千円。見直し後は、2人分で年24万円減ることになる。

     さらに夫婦合計の年収が1500万円以上など一定額を上回った場合、特例給付を縮小か廃止する案も検討中だ。夫婦合計の年収が一定額を上回り、特例給付が廃止されれば、受け取りはゼロ。共働きで3歳未満の子ども2人の家庭では、1年36万円マイナスもあり得る。このほか、第3子以降については手当増額も検討されており、所得制限にかからない多子世帯では手当が上積みされる可能性がある。


    【解説】子育て予算内部で付け替え

     政府が、共働きで高所得の世帯に対する児童手当を減らすのは、浮いた額を待機児童対策の費用に充てるためだ。子育て予算内部で付け替えた形と言える。若い世代を支援し、将来も安心できる社会保障制度をつくるには、外部から予算を振り向ける議論が欠かせない。

     夫婦の合計収入が比較的多ければ、児童手当の給付を抑え、限られた予算を有効活用する方針は一定程度理解できる。共働き世帯の数は増加している。家計の体力を世帯主の年収だけで測る現行制度の見直しも、自然の流れだ。

     手当減額の影響は主に共働き世帯が受ける。代わりに整備される保育施設を利用するのも、多くは共働き世帯だろう。子育て世代内で公的支援の方法が変わっただけだ。

     政府は待機児童対策費として、新たに企業に1100億円の負担を求める考え。ただ企業は新型コロナウイルス禍で苦境にあり、経済界が耐えられるような環境整備も必要となる。政府が一丸となり、子育て世代のための予算拡充に努めるべきだ。


    「約500億円の財源を捻出」とあるが、たった500億円のために子育てを犠牲にするという気がしてならない。税負担において一定の所得を目安とすることは当然なのだが、金融資産も含めた所得課税の率は手を付けずにあたかも受益者負担とでもいいうように「待機児童対策」への付け替えは間違っている。子育ては受益負担ではなく社会的な共通課題。「自助・共助・公助そして絆」の実態がこれなのか!?


    11月13日 京都市 第出生率3年連続低下

     京都市は12日、2019年の合計特殊出生率が前年より0・03ポイント低下し、1・22だったと発表した。低下は3年連続。出生数は前年 比494人減の9495人となり、2年連続で1万人を下回った。合計特殊出生率の低下は全国的な傾向で、京都でも歯止めがかからない現状が浮かぶ。

     合計特殊出生率は女性1人が生涯に産む子どもの数を表す。市の合計特殊出生率は05年に1・11と底を打った後、09年から横ばいか上昇が続いていたが、17年に下落に転じた。

     年代別では、30〜34歳、35〜39歳は横ばいで、40〜44歳は0・01回上がったが、15〜19歳、20〜24歳は0・01ポイント、25〜29歳は0・02ポイント低下した。16年まで全体を押し上げていた30代後半の上昇が止まったことが全体の低下につながった。

     11行政区別では、南区がI・49と最も高く、西京区の1・39、伏見区の1・38と続いた。低い順では東山区の0・80、下京区の0・90、上京区の0・94となり市中心部で出生率が低い傾向が顕著となった。

     6月に厚生労働省が発表した都道府県ごとの数字は京都府は1・25で、東京都、宮城県、北海道に次いで4番目に低かった。

     市総合政策室は「合計特殊出生率の低下は複合的な要因で起きており、何をすれば上がるというものではない。子どもを産み育てやすい環境の整備を総合的に進めていくしかない」としている。


    ホテル増 住宅難響く

     京都市の2019年の合計特殊出生率は1・22となり、3年連続で低下した。18年に1・0を割り込んだのは東山区だけだったが、19年は上京、下京区も加わって3区に拡大。中京区も1・02と低く、市中心部の少子化かより深刻になっている。

     市では、18年に市内の外国人宿泊客数が過去最多の450万人に達するなど訪日観光客が近年急増し、中心部ではホテルの建設ラッシュが続いた。

     この影響で分譲マンションなどの住宅着工数は減少。下京区の不動産関係者は「ホテル建設は地価を底上げし、住宅供給を停滞させている。購入できるのは高所得の共働き家庭など一部の人たちに限定されている」と話す。政府や市が進めた観光客増加に伴う負の側面が、少子化の進行として顕在化した格好だ。

     市は保育所の待機児童が7年連続ゼロなど子育て支援策の成果をアピールするが、市内の婚姻件戮は年々減少している。非正規雇用者の割合も4割以上で、少子化の要因とされる若い世代の経済的な不安定さにつながっている。

     厚生労働省が7月に発表した全国の市区町村別出生率では、ワースト10に下京、東山、上京の3区が入るほど京都市の状況は厳しい。赤ちゃんが「生まれてから」だけでなく、「生まれる前から」も見通したレンジの長い骨太の政策がなければ、出生率の大幅な上昇は容易ではない。


    東京一極集中が問題になるが、京都市の数字から見えるのは都市の在り方としての問題が東京と同じではないのかということ。インバウンドを重視した様々な政策は結局経済だけを求めたことになってしまっている。小学校跡地を利用した富裕層向けのホテル建設などがいまも続く京都は、住民にとっては風光明媚どころではない。


    11月12日 市教委 教員に「コロナ労働」手当

     京都市教育委員会は11日、市立学校・幼稚園で新型コロナウイルス感染者が出て保護者対応などで長時間勤務が生じた教員に、手当を支給する方針を明らかにした。市内では児童生徒や教員の感染が相次いでおり、校長会が要望していた。

     市教委によると、手当の対象となる業務は保護者への連絡や疫学調査への協力など。管理職を含む教員が所定の勤務時間に加え4時間程度以上業務に当たった場合、1日当たり3750円が支給される。休日出勤など8時間程度以上の場合は同7500円。

     来週中にも方針について全校・園に通知する予定。その後、対象者には6月以降の業務にさかのぼって支給する。

     教員は教職員給与特別措置法(給特法)に基づき本給の4%に相当する教職員調整額が一律で支給されているため、時間外手当はない。そのため今回のコロナ禍の対応業務は「特に疲労度や困難度の加わる勤務、その他特異な勤務」に支給される「特異性手当」として、制度の創設後初めて適用することを決めた。


    手当が打たれるのは教育委員会の姿勢としては評価できる。しかし、手当はその勤務が特異であることから付されるもので超過勤務とは本来関係がない。仮に4時間3750円とすれば1時間単価は約940円。京都の最低賃金が909円。両者を比較してみると明らかにコロナ対策の労働が軽いもの?であるかということがわかる。労働をお金に換算することを教員は好まないかもしれないが、それで表現されている労働の質を問う姿勢も必要ではないか。


    11月6日 日野町教委 土日祝出勤データ削除

     滋賀県日野町の教育委員会が町立小中学校の管理職に対し、教員が土日祝日に部活動などで出勤した場合、勤務記録から出勤データを削除して町教委に提出するよう指示していたことが5日までに分かった。昨年末改正の教職員給与特別措置法は、勤務日以外に部活指導や学習準備で出勤した場合も時間外勤務に含めると定めており、町教委が残業時間の上限(月45時間)を超えないようにしたとみられる。今宿綾子教育長は「教職員の健康を考えて勤務時間を減らすのが本意だった。このような指示が行われ申し訳ない」と陳謝した。

     町教委によると、担当者が6月に各校の校長ら管理職宛ての文書で「週休日に学校に出てきて仕事をしたことは、時間外労働としてカウントしない」とし、町教委に報告する際に教員全員のデータを教頭がチェックし「一人ひとりの土日祝祭日のデータを削除」するよう指示した。

     今宿教育長は「学校で正確な出退勤記録も保管しているため、教員の記録は改めて県教委に提出する」としている。県教委教職員課の大野貴弘参事は「不適切な行為で残念。今後は他の市町にもないか注意喚起も含めて対応を考えたい」と話した。


    信じられない出来事だ。「働き方改革」という意識がが行き渡っていないことの表れだろうが、教員の仕事に対する意識が根本的に誤っていることの表れでもある。この意識は根強いものがあり、「子どものため」がすべてを覆い隠してしまう教育現場の雰囲気もあるのではないか。


    11月6日 教員疲れ 子のリスクに

     新型コロナウイルスの影響で、教員の業務負担が増している。消毒作業や学習遅れの挽回、3密(密閉、密集、密接)対策など負荷は高まるばかり。子どもと対話する時間が失われる懸念もあり、専門家は「教員の疲労は、子どもの健康や成長へのリスクになり得る」と警鐘を鳴らす。

     「出口の見えないトンネルの中にいるみたい」と話すのは、東京都内の小学校に勤める30代の男性教員。学校再開後は1時間前倒しで出勤、午前7時台には児童のために待機する毎日を送る。

     日に何度もマスクの着用や手洗いを指導。保護者への事務連絡も倍増し、終業は連日午後9時以降だ。感染リスクを減らすため、運動会の計画も練り直しに。準備に3ヵ月を費やすが、コロナ対策の残業と成果に対価は支払われない。「教師は子どものためなら頑張れてしまう。いわゆる“やりがい搾取”です」

     消毒作業は「正直慣れた」と苦笑い。強いストレスとなるのは「我慢を強いられる生活が、教え子に及ぼす影響への不安」という。休校後、コミュニケーションが苦手になった子、会話自体を諦める子が増えた。マスクで表情も読み取りづらい。「子どもの変化には常に敏感でいたいのに。疲れがひどく、自分の感覚がまひしそうで怖い」

     以前から長時間労働が常態化してきた教職。文部科学省は5月、教職員増員のための補正予算を組んだ。だが現場に負担解消の実感はない。

     教育関係者でつくるNPO法人「共育の杜」が7月に実施したインターネット上の調査では、小中高の教職員ら約1200人のうち約6割が、平日の学校での勤務時間がコロナ禍で上乗せされたと答えた。

     同法人理事長の藤川伸治さんは「教員が『助けて』と声に出し、保護者や地域社会とつながる必要がある」と指摘する。

     いじめの増加、学力の格差拡大を懸念する回答者は8割超。一方で、疲労度が高い教職員ほど子どもの話を聞けなくなるというデータも示された。「先生に相談できないと、いじめも起きやすい。これは子どもに直結する深刻なリスクであり、社会全体の窮状として共有すべきだ」と訴える。

     元中学教員の藤川さんは「教員は責任感が強い人が多く、一人で悩みを抱え込みやすい」と語る。今は教員が他者とつながり、柔軟な働き方を探ることが重要と考える。

     同法人は教員の孤立を防ぎ、悩みを打ち明ける場として、フェイスブックのオンライングループ「心の職員室」を2月に開設。参加者は1250人を超えた。投稿や藤川さんが受けた報告には、生徒の「ありがとう」や、保護者からの「手伝いましょうか?」の一言だけで、多忙な教員の心が救われた例もあった。

     「教員は『先生と一緒に考えて』と子どもに助けを求めてもいい。その姿を見せることは、いい教育になると思います」


    理事長の藤川伸治さんは長年労働組合運動にもかかわってきた人で、現場の実情にも詳しい。かなり詳細な実態が見えてくるホームページの記者会見の動画も一見の価値がありそう。