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  • 性差 無意識の偏見.26
  • 女性・若者…相次ぐSOS.28
  • 12月28日 女性・若者…相次ぐSOS

     新型コロナウイルス感染拡大による生活困窮者の増加が止まらない。緊急事態宣言が出された4月以降に暮らしが一変した人は多く、自治体窓口や民間の支援団体には女性や若い人など幅広い層からの「SOS」が相次ぐ。年が明ければ、住まいや仕事を失った路上生活者が増えるのではないかとの懸念も出ている。

     「コロナの前は月収が30万〜40万円あったが、今は5万円。国の持続化給付金や緊急貸し付けを活用したが、もう尽きた」。12月中旬、弁護士らが実施した電話相談で、男性が訴えた。この日は「解雇されて生活が苦しく、病院の受診を控えている」「家賃を滞納している。どうすれば良いのか」など約520件の相談が寄せられた。

     支援団体でつくる「新型コロナ災害緊急アクション」は、困窮者の生活保護申請に同行したり、生活費を渡したりしてきた。「住まいを失った」などとメールで助けを求めてきた人の8割が20〜40代・非正規雇用で働く女性からの相談も目立つ。メンバーで作家の雨宮処凛さんは「これまで貧困とは無縁だった層にも影響が広がっている」と指摘する。

     年末年始には食事の無料提供や相談会を予定しているが、困り事について話したり、支援を受けたりすることへの抵抗感が強い人も多い。雨宮さんは「見学でも良いし、友達の話というていでも良い。生き延びるための情報を集めてほしい」と呼び掛けている。


    人命か経済かなんて的外れな議論?をしているあいだに経済を支える人命が失われていく危険性がでている。菅首相、安倍前首相をはじめとする自民党議員の不祥事は国民・市民の苦悩に全く寄り添っていない。もう、政権担当能力がないといえるのではないか。


    12月26日 連合調査 性差 無意識の偏見

     「親が単身赴任中」と聞いたら、どんな光景が思い浮かぶだろうか。最近の調査では「父親を想像する(母親を想像しない)」人が7割近くに上り、日常生活や職場でこうしたジェンダー(社会・文化的性差)などに関する無意識の思い込みや偏見(アンコンシャスーバイアス)を認識したことのある人は95%を超えることが分かった。

     日本労働組合総連合会(連合、東京都千代田区)は2020年6〜11月、連合の職員や組合員、一般市民ら5万871人を対象にインターネットでアンコンシャスーバイアスに関する意識調査を実施した。

     質問は計20項目。自分に思い当たるもの(複数選択可)を選んでもらったところ、一つ以上選んだ人は95・5%いた。最も多かったのが、先の「親が単身赴任中というと、父親を想像する」で、66・3%だった。

     これに、「介護しながら働くのは難しいと思う」58・4%、「体力的にハードな仕事を女性に頼むのはかわいそうだと思う」51・5%、「『普通は○○だ』『それって常識だ』と思うことがある」46・2%、「DV(ドメスティツクーバイオレンス)と聞くと、男性が暴力を働いていると想像する(女性を想像しない)」45・7%などが続いた。

     特に、男女で大きな意識差があったのがLGBT(性的少数者)関連で、「LGBTの人は一部の職業に偏っていて、普通の職場にはいないと思う」は男性4・8%に対し女性2・O%。「LGBTであると聞くと、戸惑いを感じてしまう」は男性20・3%、女性9・6%だった。

     調査を監修したアンコンシャスバイアス研究所(同港区)の守屋智敬代表理事は「95・5%に当たる人が設問を一つでも認知したということは、アンコンシャスーバイアスは誰にでもあることを示している」と指摘する。

     その上で「バイアスがあることが悪いわけではないが、『何で母親なのに単身赴任なの。子どもがかわいそう』といった一言に傷ついている人がいるかもしれない。押し付けや決め付けの言動となって表れたときに問題となるため、注意が必要」と話す。

     一方で、配偶者からのDV相談の被害者は約8割が女性(2018年警察庁調べ)だ。調査結果の発表会見では、「『DVは男性が暴力を働くと想像する』を選んだことが、アンコンシャスーバイアスに当たるとみるのには違和感がある」との指摘も出た。連合の山根木晴久・総合運動推進局総合局長は「さまざまな意見も踏まえながら、今後の取り組みに生かしていきたい」としている。


    思い当たる節がそれぞれの人にないだろうか。これまでの自分の経験の上に知らず知らずのうちに出来上がってしまっている各種のバイアスによって、色眼鏡で見るということになってしまいがちだ。今回の調査の意味は大きいのだが労働組合の運動としてどこまで浸透するのかは未知数。


    12月24日 厚労省 テレワーク管理 見直しへ

     厚生労働省の有識者検討会は23日、テレワークでの働き方や労務管理に関する報告書をまとめた。現在の指針は、深夜・休日労働について原則禁止と例示しているのに、一切禁止と誤解されているとして、表現の見直しを提言。休みと仕事時間を厳格に区別する運用を緩め、企業は始業と終業の時間だけを把握すればよいとするなど時間管理の簡略化も求めた。

     厚労省は報告書を基に検討を進め、年度内に労務管理指針を改定する。

     報告書は、テレワークを細かく管理すると、時間や場所を問わない利点が失われかねないと指摘。出社しても喫煙などで休息を取る人が多いことから、テレワーク中も宅配便の受け取りや子どもの世話での短い「中抜け」を認めるのが適当だとした。テレワークが長時間労働になる可能性があるとの見方も示した。

     申告と実際の労働時間が異なっても、企業が知らなかった場合は労働基準法上の責任を問われないことを明確化する。

     このほか、雇用形態を理由に非正規労働者などがテレワークを選ぶことを拒むのは不適切だと明記。長時間労働防止の観点から、業務時間外の連絡を拒否できるフランスの「つながらない権利」を参考に、仕事上のメールや電話をしてよい時間帯についてのルール作りも有効だとした。

     テレワークを巡っては新型コロナウイルス感染防止を狙い、導入が急増。指針が実態に合わないとして、政府の成長戦略会議などで見直しを求める声が強まっていた。


    テレワークでの働き方についてのルールが定まっているとは言い難く有識者会議も議論は錯綜しているように見える。勤務時間の管理や無定量の労働につながる可能性を排除するために方策が明確化される必要性がある。「つながらない権利」という考え方は注目に値する。これまで、時間外において保護者からの電話を教員が受けることが当たり前とされてきたことを、電話に出ないことが「権利」とする考え方は重要。また、個人の携帯電話の番号を保護者に知らせないことも「権利」として社会が共有することも大切だろう。


    12月24日 文科省調査 わいせつ教員273人処分

     2019年度にわいせつ行為やセクハラを理由に懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校などの教員は273人で、過去2番目の多さだったことが22日、文部科学省の人事行政状況調査で分かった。勤務校の児童生徒や卒業生ら18歳未満の子どもが被害者だったケースは126人だった。

     最多の18年度から9人減ったものの高止まりした。文科省は「対策が成果を上げておらず極めて深刻だ」とし、SNS(会員制交流サイト)での児童生徒との私的なやりとりを禁じるなど全国の教育委員会に被害防止策の徹底を求める。

     文科省はわいせつ行為かした教員を原則懲戒免職することを各教委に要請。懲戒免職で失効した教員免許が再取得可能となるまでの期間を3年から5年に延長することを検討し、教委が免職処分歴を閲覧できる期間を40年に延ばすなど対策を強化している。

     懲戒処分の内訳は免職153人、停職50人、減給16人、戒告9人。訓告などは45人だった。全体の97・4%が男性で、年代別では20代が若干多いが大きな差はない。学校種別は小学校80人、中学校81人、高校92人、特別支援学校19人、義務教育学校1人だった。

     わいせつやセクハラの具体的な行為は、「体を触る」の84人が最も多く、「性交」49人、「盗撮・のぞき」33人など。行為があった場面は勤務時間外が186人を占めたが、授業中(20人)や休み時間(16人)もあった。

     体罰を理由に処分を受けた教員は、前年度から28人減の550人。パワハラなど職員間のトラブルによる処分は免職2人を含む計27人で初めて集計した18度から5人減った。精神疾患で休職した職員は5478人で過去最多となった。


    学校でのセクハラ問題に詳しい神奈川大の入江直子名誉教授の話第三者交え検証を

    教員のわいせつ行為やセクハラが大きく減らないのは、発生時の調査が不十分な点に要因がある。現在は校長や教育委員会が調査主体になるのが通例で、身内に甘くなりがちだ。再発防止につながる課題があぷり出せずに終わり、厳正な処分がされない恐れもある。弁護士ら第三者を交えて徹底的に検証し、その教訓を教員研修などに反映して防止策を改善する必要がある。文部科学省が被害者の声を受けて対策に本腰を入れ始めたことは評価しており、取り組みの継続を求めたい。


    毎年の調査だが今回は「わいせつ」が新聞的にはトピックだったが、精神疾患での休職が過去最多の5478人だったことは影が薄かったのだろうか。働き方改革が叫ばれる中でなおかつ精神疾患の罹患が多いことは、現場での対策が十分ではないことを表している。かつ、「長時間」働くことが教員の生きがいのように思われている空気がないのかどうかも点検すべきだろう。


    12月23日 亀岡市 「性的マイノリティー」用語一掃へ

     亀岡市は『性的マイノリティ(少数者)」という言葉に差別的な語感があるとして、行政として今後、使用しない方針を決めた。市議会の指摘などを受け22日、次期総合計画基本計画案にあった文言を「多種多様な人たち」と改める修正案を市議会に提案した。3月1日施行予定の市パートナーシップ宣誓制度の要綱などからも「性的マイノリティ」の用語を一掃する。

     同性愛者のレズビアンやゲイなどのLGBTQに対し、国や各市町村が性的マイノリテイーと呼ぶことは一般的となっている。しかし、同計画案や宣誓制度の議論の過程で、市議会などから「性的という言葉が日本では性犯罪などを連想させる」と、表現を改めるよう指摘が出ていた。

     修正案では、同計画案に記載していた案の中で「性的マイノリティの人権と個性が尊重され」とあったのを「多種多様な人たちの人権と個性が尊重され」などと修正。この日の同計画検討特別委員会で可決された。


    言葉だけを変えれば状況は変わるわけではないのだが、言葉に込められた感覚(印象)は間違いなく変わってくるのだろう。「障害者」についても適切な言葉が必要。


    12月22日 文科省 デジタル教科書制限撤廃

     小中学校でデジタル教科書を使う際、教科ごとに「授業時間数の2分の1未満」としている要件について、政府が撤廃する方針を固めたことが21日、関係者への取材で分かった。22日に開かれるデジタル教科書に関する文部科学省の有識者会議で意見集約する。萩生田光一文科相も規制緩和に前向きな意向を示していた。

     普及すると端末を見る時間が増え、視力低下の恐れがあるとの見方もある。文科省は学習効果や教員の負担、児童牛徒の健康への影響などについて検証を急ぐ。

     文科省の有識者会議では、大半の専門家が「規制には明確な根拠がない」「デジタル教科書に慣れてもらう段階。ブレーキはない方がいい」など規制撤廃に賛同する意見を述べていた。

     教育のデジタル化を巡っては、全小中学生1人1台のパソコン配備が2020年度中にほぼ完了する見通し。政府の経済財政諮問会議は18日、25年度までに全小中学校でデジタル教科書を普及させる目標を新たに策定しており、文科省は使い勝手を検証するため21年度当初予算案に購入費用として22億円を計上した。

     19年度から学校現場で正式にデジタル教科書を使えるようになったが、紙の教科書と違って有償との事情もあり普及は進んでいない。文科省によると、今春時点でデジタル教科書を使う公立小中学校は1割に満たない。


    21年度予算35人学級へ定数改善

     教育分野で、文部科学省と財務省が激しく対立した公立小中学校の少人数学級化は、2021年度から5年かけて小学校全学年を「35人学級」にすることで決着した。教職員給与に充てる義務教育費国庫負担金は、初年度に小学2年の上限人数を引き下げるのに必要な教職員744人分の定数改善の経費を含め、1兆5164億円となった。

     小1以外は40人だった公立小の学級上限が一律に引き下げられるのは約40年ぶり。新型コロナウイルス感染拡大で「3密」を回避するためにも少人数化を進める。今後はは25年度までの5年間で計1万3574人の定数改善を見込む。ただ、少子化の影響もあって財政支出はほとんど増えない見通し。

     小学校高学年の理科や算数など、つまずきやすい教科を専門に教える教員も2千(増員。授業の空き時間をつくり、働き方改革につなげる。21年度の教職員定数は全体で3141人改善する。


    文教予算と防衛予算がほぼ同等の5兆円。地上配備型のイージスアショアの廃止が決まったのに海上でのイージス艦導入や沖縄辺野古基地建設が1兆円を超える可能性もありやなしや。翻ってアベノマスクに400億円。一体この国予算はどこを向いて編成されているのか?


    12月19日 高校での情報端末 私費か公費か

     高校でパソコンやタブレデト端末などの情報端末を1人1台導入する動きが強まっている。京都府内の一部の公立高が2021年度から新入生に自費で購入してもらう計画を進めるほか、国でも端末の整備が議論されている。授業や自宅での学習効果の向上や新型コロナウイルス感染拡大による欠席時の学習保障につなげる狙いだが、保護者からは家庭の負担が増えないよう求める声が出ている。

     府内では来年度から、塔南高(京都市南区)がキーボード付きタブレット端末「サーフェス」(8万円程度)を、日吉ケ丘高(東山区)がオートパソコン「クロームブック」(4万〜5万円程度)を新入生に自費で購入してもらう計画。洛北高(左京区)も端末の導入を検討している。

     各校は授業で端末を使って動画を見せたり意見を教室の画面で示したりすれば学びの質が高まり、自宅でも宿題の配信などで学習効果が上がると考えている。新型コロナで休校や学級閉鎖となった際でも、自宅にいる生徒に向けてオンライン授業を行える。

     塔南高の尾崎嘉彦教頭は「小中学校は端末がI人1台あるのに高校でなくては時代に対応できない。端末を使えば調査や分析、発表などに活用できる。教員からの一方的な授業でなく、生徒との双方向の学びを実現したい」と語る。

     ただ府内公立高での1人1台の導入はまだ各校が独自に取り組んでいる状況だ。府や京都市の両教育委員会とも必要性は認めているが全校での一律的な導入には慎重で、府教委は「1人1台の方向性で進めたいが、家計負担への配慮が必要。自費での購入はコロナ禍で収入減の世帯があることを考慮しなければならない。教員の研修やサポート体制をどうするかなど課題も多い。国費で整備すべきだとの議論もあり、国の動きを見定めながら検討したい」と説明。市教委も「各校で導入に向けて検討を進めてもらっている」とする。

     滋賀県教委も意義は認めながらも「(学校指定品など個人所有の端末を活用する)『BYOD(Bring Your Own Device)』の方向性を含めて検討中」としている。

     衆院文部科学委員会では、公費による高校での1人1台の環境整備を求める声が出るなど議論が起きている。萩生田光一文部科学相は今月15日の記者会見で「高校でも端末を利用した授業は必要。ただ高校は業態、種別によって使うパソコンのニーズが変わる。同じスペックのものを整備するだけでは解決せず、学校種ごとに用意をしていきたい」とし、順次整備していく考えを示した。  ゛

     全国では都道府県によって私費か公費かで対応が分かれている。和歌山県や秋田県などが独自の財源を使って20年度中に1人1台の環境整備をする計画を進めている。広島県教委は自費購入を20年度から一部の高校で実施している。

     ただ保護者からは家計への負担増を心配する声が聞かれる。京都市北区の中学3年と1年の母親は「授業で必要なら仕方ないが、高校では他に出費がかさむので正直、全額自費はつらい。少しでも補助があるとありがたい」と話す。同区の中学3年女子ら高校生から小学生まで3人の子どもがいる母親は「破損や故障時の修理代が心配」。同区の中学1年男子の母親は「自宅の通信環境を整備する費用も必要。用意できなくて高校進学を諦める子どもが出ないようにしてほしい」と注文を付ける。

     ある府立高2年男子の母親は「便利な分、書く力や考える力、失敗に気付く力がそがれる。夕ブレッドを導入する高校の保護者は『宿題もコピペ(文章の切り貼り)で送れるので本人の力がつかない』と嘆いていた」と懐疑的だ。「教室や廊下にパソコンを置き、いつでも調べ学習ができるようにすればいい。他人との関わりや考え方の違い、その違いの面白さに気付き、発展させるのが教室での授業。先生にはAI(人工知能)ではできない『人が教える学び』をしてほしい」

     すでに新入生にタブレット端末「iPad(アイパッド)」(6万500円)を購入してもらっている昼間定時制の清明高(北区)。ドリル学習やノートの撮影・提出、楽器の演奏動画の確認などに利用しており、北岸宏明副校長は「黒板に書く代わりに生徒の端末で示すなどすれば授業が効率化できる。生み出した時間を生徒が考えることに使うなど、どのように活用するかが大事だ」と強調する。


    「デジタル庁」や「GIGAスクール構想」などで、1人1台のデバイスの流れが加速している。義務教育でない高校の事情も後れを取ることはできないのだろう。障害を持つ子供たちにとってICT環境は大きなメリットをもたらしていることはいうまでもないのだが、果たして端末を導入すれことで必ず成果が出るものではないだろう。教室そのものがいわば明治時代に作られたスタンダードのままでそこに端末を持ち込んだだけで劇的な変化が起こるはずがない。35人学級が俎上に上がっているのだが、「GIGAスクール構想」に対応した定数改善が同時に必要であるだろう。


    12月18日 コロナ休校・再開 子どもへの影響

     新型コロナウイルスの感染拡大で、今年3月から5月いっぱいまで長期にわたった全国一律の学校休校。未曽有の事態が子どもたちの心身に与えた影響について、休校期間中と登校再開後に調査が行われた。専門家は「子どもが学校に求めるものと、大人の認識にはズレがある可能性がある。子どもの声に寄り添うことが大事だ」と指摘する。

     調査は、日体大の野井真吾教授(教育生理学)が議長を務めるNGO「子どものからだと心・連絡会後」と同大が共同で東京、神奈川、埼玉、静岡の4都県の公立小中学校計31校の協力を得て実施。休校期間中の5月は2423組、再開後の6〜7月には1341組の親子からそれぞれ回答を得た。

     その結果、5月と6〜7月に精神症状を訴えた子どもの割合は、「いらいらする」が38・9%から34・8%に、「集中できない」も49・6%から37・8%に低下するなど、依然水準は高いものの、多くの項目で再開後に改善傾向が見られた。

     半面、「頭が痛い」が9・2%から12・3%、「体が疲れる」も20・1%から30・0%に上昇するなど身体症状の悪化傾向も出ている。再開後は、1日7時間授業などに子どもたちは適応を迫られた。野井教授は「休校中のほぼ在宅の生活から激変し、心以上に体の方が変化に追いつかなかったのだろう」と語る。

     休校中の心配事は、保護者は「運動不足」(82・7%)、「勉強を教えてもらえない」(73・7%)などの順。一方、子どもの困り事は「(思うように)外に出られない」(61・0%)、「友達に会えない」(56・5%)、「運動不足」(56・1%)などの順で、「勉強を教えてもらえない」は5番目の39・0%にとどまった。

     野井教授は「子どもにとって学校は、勉強より外に出て友達に会うことの意味が大きい。外出制限はとてつもない試練だった上に、再開後いきなり授業を詰め込まれ、今も悩みを引きずる子はいるだろう」と話す。

     12月に同大で開かれた連絡会議の研究会では、小中学校の養護教諭から発表があり、心身の不調を訴える子の対応や感染予防など多忙を極めている状況をうかがわせた。

     「子どもは群れて育つ」が持論の野井教授だが、コロナで身体的「密」は困難な状況にある。「だからこそ精神的『密』を担保する必要がある」と強調。「成績を付けない(養護の)先生がいるから子どもたちは悩みを話せる。子どもの声を聞くためにも、少人数学級と養護教諭の複数配置が必要だ」と訴えている。


    それぞれの教育委員会は、授業時数の確保に躍起となったが、子どもには相当な負担となっていたことがこの調査でわかる。学習指導要領の柔軟な運用を認める方針を文科省は打ち出すべきだったのではないかと思う。今後再びこうした事態が起こらないとも限らない(全国一斉ではないにしても)とは限らない。後手後手の対応にならないように行政は早急に公式の「一斉休校」の評価をだすべきではないか。


    12月17日 政府方針 公立小全年35人学級

     公立小中学校の少人数学級化を巡り、政府は16日、小学校の1学級当たりの上限人数を引き下げ、全学年で35人とする方針を固めた。2021年度から5年かけ、学年ごとに段階的に実施する。麻生太郎財務相と萩生田光一文部科学相が17日に来年度予算案について折衝し、正式決定する。一律の引き下げは約40年ぶりで、文科省は来年の通常国会に上限人数を定めた義務教育標準法の改正案を提出する。

     現在の上限は小―のみ35人で、小2〜中3は40人。来年度に小2を35人とし、その後学年ごとに順次引き下げ、25年度に小1〜小6の35人学級化を実現する。

     新型コロナウイルスの感染防止策として教室での3密(密閉、密集、密接)を避けたり、子どもにきめ細かく対応したりするため、教育現場からは少人数学級を求める声が上がっていた。

     文科省は来年度予算の概算要求で、少人数学級化は金額を示さない「事項要求」とし、30人学級を目指していたが、財務省と小学校のみの35人学級で折り合った。中学校については今後の検討課題とする。

     公立小中の教職員定数は、学級数や児童生徒数で機械的に決まる「基礎定数」と、現場の課題に応じて政策的に配置する「加配定数」がある。上限が引き下げられれば、基礎定数が増えることになり、教員の安定的配置が可能となる。

     上限人数は1980年度に45人から40人になり、民主党政権下の2011年度からは小1のみ35人に引き下げられたが、財政難のため他の学年は据え置かれていた。文科省は12年度以降、加配定数を使って小2を35人学級としていた。


    なにはともあれ定数改善が図られることは歓迎すべきこと。しかし、すでに少子化の傾向が続く中で実質的には35人学級は実現しているところは多いだろう。道徳の教科化、英語学習の必修化、プログラミング教育の実施おまけにアクティブラーニングとやらの主体的に考える学習などすし詰め状態の中で、35人学級はつまみ食い的な政策に見える。一気に30人学級を実施し、教員定数を増やすことで学校の負担を減らす方向を示すべきだろう。


    12月13日 生保4社 核投資自制

     生命保険最大手の日本生命保険など生保主要4社が、核兵器製造・関連企業への投融資を自制していることが12日、分かった。各社が共同通信に明らかにした。人権や環境など社会問題への対応責任を重視する規範「ESG投資」を徹底、非人道兵器の廃絶を後押しする狙いがある。欧米や日本の大手銀行にも自制が広がっており、来年1月の核兵器禁止条約の発効で流れが加速、業界の標準となる可能性もある。

     他の3社は、第一生命保険、明治安田生命保険、富国生命保険。4社の2019年度の運用資産残高は計約151兆円に上る。核兵器関連企業は、核爆弾の保守管理や運搬用の弾道ミサイル製造に携わる企業まで多岐にわたる。日生以外の3社は、こうした関連先も対象になるとしている。

     第一生命は今年4月に兵器製造企業などを投資の除外対象とする「基本方針」を公表。明記はしていないが、核兵器関連企業も「ESGの観点から懸念のある銘柄」に含まれると回答した。禁止条約が発効しているクラスター(集束)弾、対人地雷や化学兵器関連へは既に投融資を禁じている。

     明治安田は、投資先が核兵器など非人道的兵器関連と判明した場合は、17年12月に定めた非公開の社内規定を適用し「投融資先から排除」するとした。富国生命も核を非人道兵器と解釈。関連企業について「社会性に問題がある」として、19年2月の指針策定当初から投融資の対象から除外したという。

     日生は、核兵器製造企業の「株や社債などへは投融資しない」と答えた。関連企業の取り扱いは明らかにしなかった。

     4社とも核兵器に関する投資自制の指針は非公表で、対象の企業名も明らかにしていないが、国籍は問わないとみられる。

     核禁止条約は核兵器を非人道的と断じ、保有や製造、開発への「援助」も禁じている。現状で指針を定めていない大手、住友生命保険は「条約発効後は、核関連企業への投資が評判の悪化につながることも考えられる。今後自制を検討する」とした。

     【「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の川崎哲国際運営委員の話】日本の主要な生命保険4社が核兵器製造・関連企業を投融資の対象から外したことは、世界的にもインパクトが大きい。核兵器禁止条約をてこに企業や社会全体の行動変容を起こし、核廃絶を実現する運動が成果を出している表れだ。各社とも何を恐れてか公表していなかったが、核兵器に関与しないという方針を、被爆国である日本の国民は広く支持するだろう。ESG投資は宣伝してこそ意義がある。批判を心配せず、むしろ投融資の自制を公言するべきだ。


    【インサイド】「死の商人」兵糧攻め

     核兵器製造の関連企業への投融資を自制し、資金を遮断しようとする生命保険会社や銀行が増えている。米国やロシアなど核大国の対立激化で軍縮の道筋が見えない中、民間では「核なき世界」に向けた動きが水面下で加速。金融機関がクラスター(集束)弾開発の関連融資を自粛し増産を防いだ前例もあり、反核団体は「死の商人」への兵糧攻めに期待を寄せる。

     安全保障を核抑止力に頼る姿勢を崩さない保有国を尻目に金融機関が自制に転じた背景には、環境保護や社会問題解決への取り組みを重視する「ESG投資」の普及がある。

     環境・社会・企業統治の英語の頭文字を取った投資手法は2006年に国連のアナン事務総長(当時)の提唱から発展。欧米金融機関が先行し、イメージ向上を意識する日本企業にも近年急速に広がる。ESG投資を行う企業は信頼度が増し「株価も高い傾向」(生保関係者)にあるという。

     国際非政府組織(NGO)のPAX(本部オランダ)によると、核関連企業への投資をやめた海外金融機関は100近い。来月の核兵器禁止条約発効後は、製造の「援助」も禁止対象になるため「国際潮流が止まることはない」(軍縮専門家)とみられている。

     破滅的破壊をもたらす核兵器の開発製造には、市民生活にもなじみが深い航空機や機械のメーカーも加わっている。PAXが昨年公表した調査によると欧米やインドの28社が核兵器製造や貯蔵関連の分野で、核を保有する米英印、フランスの4ヵ国と1160億ドル(約12兆円)超の契約を結んだ。

     中には米国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射態勢を75年まで維持するための長期契約も。航空機製造で有名な米ボーインクは、ミサイル関連機器の開発を1550万ドルで、ICBMの誘導に関わるプログラムの保守を1740万ドルで米空軍側 と契約した。ただ、該当企業の多くは非軍事産業で認知度が高く、需要も大きい。「全面的に投資を制限すれば社会に必要な事業の資金も止まる」(銀行関係者)と懸念する声もあり、投資自粛の判断は容易ではない。

     「核兵器廃絶国際キャンベーン」(ICAN)など反核団体が核兵器製造の資金の流れに注目するのは、対人地雷やクラスター弾製造に関する投資の自制で生産が抑制され、軍縮・不拡散に結び付いた「成功体験」があるからだ。

     次の“標的”が核兵器だ。オランダの公務員年金基金は18年1月、対人地雷などの非人道兵器に加え、核兵器製造に絡む企業に投資しない方針を発表。国内では三菱UFJフィナンシャルーグループも今年7月、同様の指針を適用し、大手銀、地銀も追随する。

     核兵器による利潤追求は反社会的とする批判や、投資責任への関心が高まる中、米国の「核の傘」に依存する日本政府は禁止条約に「署名する考えはない」(菅義偉首相)と背を向けたままだ。


    温暖化防止のためにRE100という取り組みがあるが、これも再生可能エネルギーを100%使用する企業同士が取引するという取り組みで大きな意義がある。同じように生保4社の取り組みも評価されるものだ。さらに労働金庫の小口投資商品や生活協同組合などが展開する保険事業も大手の金融機関に再委託されていることを考えれば、消費者目線でもっと積極的に働きかけることができるはず。それにしても、武器の輸出や原発、火力発電の輸出を経済成長として目論んでいる現政権のグローバル感覚のなさは、コロナ対策も併せて目を覆うばかりではないか。


    12月12日 府・外国人向け「教育プラン」1年日本語学習充実へ途上

     外国人住民の日本語学習を支援する京都府の計画「地域における日本語教育推進プラン」ができて1年になる。新たな日本語教室や学習支援者の養成といった動きがある一方、多文化共生社会に向けて地域での周知など課題もある。

     「秋から冬になります」「寒くなりました」.2日夜、文化パルク城陽(城陽市)で行われた初級者対象の日本語教室。学習者6人が「〜になります」「〜になりました」の例文を声に出して反復練習した。

     ベトナム出身で宇治市内の鉄工所で働くグエンーヴァン・タイさん(29)=同市=は「日本匹ぷできずに困っていた.ここで勉強して会社の人ともだんだん話せるようになった」と充実の表情だ。

     外国人住民が増える中、2019年6月に国や自治体などの責務を明記した日本語教育推進法が施行。府も同年12月、今後5年間の実施計画となるプランを作り、学習機会の確保や学習環境の充実などを盛り込んだ。

     府が本年度設けた日本語教室も取り組みの一つ。幅広い国や地域の25人が45回の授業を無料で受けている。

     府内には地域の日本`教室が26あるが、教える側である学習支援者の大半が住民ボランティアで、指導の技術にもばらつきがある。特に日本語初級者への対応が負担だという。

     こうした状況を踏まえ、府の教室では日本語学校の専門教師が初級者対象に集中的に教え、地域の教室に引き継ぐ形を目指す。学習支援者の参考になるよう、授業の見学も受け入れている。ある見学者は「(教師が)絵を多く描いたり例文をたくさん出したりして分かりやすかった」。別の見学者は「地域の教室は学習者と1対1が基本なので参考になりにくい」と指摘した。

     プランでは日本語教室の空白地域や学習待機者の解消も掲げる。府国際センター(京都市下京区)は府と連携し、教室がまだない宮津市を含め、本年度は例年より多い6市町で学習支援者の養成講座を実施。技能実習生ら働く外国人も学びやすいよう、府国際課は「企業や教室、行政など関係者が集まり意見交換する場を教室ごとに設けていく」とする。

     一方、プランで記す多文化共生を進めるには、広く地域の理解が欠かせない。府の調査では、地域の日本語教室の活動を「知っている」日本人は1割に満たなかった。

     教室は学習だけでなく、交流や相談の場でもある。特にコロナ禍においては感染対策に苦慮しながら、マスクや各種申請など必要な生活情報を伝える役割を担ってきた。

     同センターの近藤徳明事業課長は「外国人が感じる『心の壁』は、非常時ではさらに高くなりがち。外国人住民が増える中、コミユニケーションの土台となる日本語教育の推進が欠かせず、一人でも多くの人に興味を持ってもらいたい」と話す。


    府内の外国人住民

     府内の外国人住民は6万4070人(2019年末)で、過去5年で約24%増加した。市町村別では京都市内が約76%と集中している。人口に占める割合では府内全体で2.4%、市町村別では久御山町が4.2%で最多。地域の日本語教室は府内に26ある一方、10市町村に開設されておらず、当該自治体に住む外国人は1596人に上る。


    「移民政策はとらない」という日本政府だが、技能実習生などの外国人労働者を受け入れることは積極的であるという二律背反的な姿勢がみえる。基礎的な日本語学習は在日している外国人にとっては必須。また、不当な労働条件下で働かせている問題もある。ボランティアに頼る政策ではなく国は主体的に日本語学習の機会を設けるべきだろう。


    12月11日 厚労省 11月自殺1798人

     新型コロナウイルス禍の影響が懸念される自殺者数について、厚生労働省は10日、11月は1798人(速報値、前年同月11・3%増)だったと発表した。年間の自殺者数は過去10年減少を続けているが、今年は前年同月比で7月以降5ヵ月連続の増加となった。

     警察庁統計に基づく厚労省の発表によると、11月の男女別は、男性1169人(同7・6%増)、女性629人(同18・7%増)。女性の自殺者の増加が顕著な傾向が続く。同省は「重く受け止めている」としており、コロナ禍の影響が出ている可能性があるとみて原因分析を進める。

     増加に転じた7月以降では、7月1851人(同3・2%増)、8月1910人(同19・2%増)、9月1849人(同11・3%増)、10月2158人(同40・2%増)だった。女性に関しては6月から増加し、10月の82・8%増、8月の44・2%増など深刻な状況だ。

     今年1〜11月の累計は、1万9101人(速報値、昨年同時期比2・3%増)に。今年の年間自殺者数は昨年の2万169人を超える可能性が高まっている。


    自殺問題に詳しい中央大人文科学研究所の高橋聡美客員研究員の話心の負担深刻化

     女性の自殺者増加は、雇用が打ち切られやすかったり、育児や家事のストレスを抱えていたりと、元々あった心理的負担が新型コロナウイルス禍で深刻化したことが一因と考えられる。厚生労働省は自殺者の背景や原因を一刻も早く分析し、どういった人にどのような支援が必要かを見極めた対策を講じるべきだ。行政の相談体制も十分と言えず、これまでの対策を見直した体制の整備も検討すべきだ。


    「家庭の大黒柱」とされてきた男性の自殺者は依然として高い。一方女性の比率が増加しているのは、安価な労働力として女性を労働市場に投入するという政府の方針の矛盾がコロナ禍によって露になったとみることもできる。同時にステイホームによる抑鬱状態も影響があるのかもしれない。


    12月9日 TIMSS 理数学力世界トップ水準維持

     国際教育到達度評価学会(IEA)は8日、世界の小4と中2に当たる学年を対象とした2019年国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果を公表した。日本の平均得点は小4理科が7点下がったものの、小中全てで5位以内に入り、トップレベルを維持。学習意欲を尋ねた質問では「算数・数学、理科は楽しい」と答えた小中学生が増え、「理数嫌い」に改養傾向が見られた。

     文部科学省は「学校や教育委員会による積極的な取り組みの成果」と評価。小4理科の低下の要因は今後詳細に分析する。学習意欲は中学生になると下がるため、対策を進めるとした。

     TIMSSは4年ごとに実施。1995年調査の国際平均を500点に設定し、結果を比較できるよう統計処理している。今回参加した国・地域は小4が58、中2が39.小中全教科で成績上位のほとんどをアジア勢が占め、いずれもシンガポールがトップだった。

     日本の成績は、中2数学が前回より8点増の594点で過去最高となり、順位も5位から4位に上げた。小4算数は593点の5位で、いずれも前回と同じ。理科は、小4が7点減の562点、順位も一つ落とし4位だったが、11年の前々回より得点は上回っている。中2は1点減の570点で3位(前回2位)だった。

     5段階に分けた得点分分布では、625点以上の最上位層が算数・数学で前回より増加した一方、理科は小中とも減少。小4理科は475点未満の下位層が増えた。

     質問紙調査で「勉強は楽しい」と答えた小中学生は、理科が小4で92%、中2で70%。算数は77%、数学は56%。いずれも増えているが、国際平均を超えたのは小4理科だけで、その他は7〜14ポイント下回った。

     今回調査からコンピューターを利用した調査形式が採用されたが、日本は情報通信技術(ICT)環境が整っていないことなどを理由に従来通りの紙形式で昨年2〜3月に実施した。小4は147校の約4200人、中2は142校の約4400人が受けた。


    多忙な学校現場 さらに負担

     8日公表の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の子どもの学力が上位を維持し、「理数離れ」の改善傾向も示された。学校で実体験を重視して興味を引く授業が増えたことが効果を上げたとされ、文部科学省はさらなる向上へ「主体的学び」を掲げる。ただ、多忙な学校現場にはさらなる負担となり、理想実現には課題も横たわる。

     「先生、棒を長くすると動きが変わる!」。11月下旬、桐蔭学園小(横浜市青葉区)の5年の理科授業。重りが付いた棒を使った振り子の実験器具を操作していた児童は、自分の発見にうれしそうな声を響かせた。

     振り子の詳しい原理や器具の組み立て方は事前に教えない。子ども自身が試行錯誤しながら発見することが喜びになるからだ。竹村郁男教諭(42)は「子どもの『なぜ』を授業の出発点にすることで、成長しても科学に関心を持ってくれる」と語った。

     青森県八戸市立種差小では、総合学習に算数の「データの活用」を組み合わせた。6年生が学校行事で海岸を清掃し、集めたごみ252個の内訳を数えると、最多は発泡スチロール片の126個。児童はぴったり50%と割合を算出した。

     さらに近隣の小学校の収集結果とも比較。他校ではガラスや陶器片が多いと気付き、結果が違う理由についても意見を交わした。担任の阿保祐一教諭(48)は「教科書に載っていない、自ら集めたデータを使うことで、もっと調べたいという気持ちが高まるようだ」と手心えを口にした。

     日本の子どもの「理数離れ」は、1990年代から指摘が目立つようになった。文科省は学習指導要領改定の際などに観察・実験の重視を打ち出したり、授業で教員を手助けする「理科支援員」の配置を促進したりして改善を図ってきた。

     こうした対策が功を奏したのか、TIMSSにおける小中学生の学習意欲は近年、着実に上昇。2020年度に小学校で全面実施した新指導要領には全教科で「主体的・対話的で深い学び」の観点を取り入れた。これまでの集大成ともいえ、竹村教諭らの授業実践は新指導要領に沿うものだ。

     だが、今年は新型コロナウイルスの影響で、子どもたちが机を向かい合わせて議論する授業が減少。理科授業の改善に携わってきた東京都内の公立小校長は「友達同士で丁寧に対話して意見をつくり上げていく授業を行うのが難しい」と嘆く。

     児童生徒を主体にするには、引っ込み思案で意見表明が苦手な子を巻き込む必要があるといった課題もある。世界的に突出した長時間勤務となっている日本の教員には、準備の余裕がないとの声も各地で噴出している。

     埼玉県の公立小に勤務する50代女性教諭は、各学校の児童生徒に合わせた工夫が減り、指導教材に例示された授業のまねが横行すると予想。「『これで主体性を引き出せる』という方法がマニュアル化するのではないか」と懸念している。


    文科省の評価とは異なり学力の2極分化が広がっているとも解釈できる。また、学年が上がるにつれて興味や関心が低くなっていくのは、従来型の学力観から十分に脱却できていないことの証ではないか。
    日本の教育に対するオルタナティブとして読むことができる2冊を紹介しておく。古い本だが、学年制にとらわれないアメリカの学校を紹介した『世界一素敵な学校』と音楽教育から教えることを実践的に批判的した『仕組まれた学習の罠』はともに考えさせられるものだ。


    12月9日 「地域みらい留学」 都市部から地方公立高へ

     「地域みらい留学」を始める公立高校が、各地に広がっている。都市部など全国から生徒を募集する取り組みで、豊かな自然や少人数で学べる環境などが、都会と異なる魅力になっている。生徒の減少を解消し、統廃合で地元高校がなくならないよう自治体が支援する地域も。地方留学生の受け入れに積極的な広島県立大崎海星高校(同県大崎上島町)を訪ねた。

     同校は「教育の島」を掲げる瀬戸内海の大崎上島にある。本州と結ぶ橋がなく、主な交通手段はフェリーで、島外から通学する生徒も。3学年計91人のうち県外生は約2割の18人で、町営の寮で暮らす。教職員や生徒が指摘する最大の特色は「先生と生徒、地域の距離の近さ」。少人数で一人一人の学びと成長に寄り添う手厚い体制がある。

     「登下校中に地域の人と普通に言葉を交わすのが、新鮮だった。町営塾でも寮でも、何でも話せる存在の人がいてくれる」と話すのは、東京都出身の北岡倫巳さん(17)。人前で話すのが苦手だったが、島での交流を通じて意見交換が好きになり、生徒会に立候補するまでになった、と笑う。

     全国に拡大

     地域みらい留学を推進する「地域・教育魅力化プラットフォーム」(松江市)によると、取り組みは島根県内での成功例をきっかけに普及。2018年度は13道県の55校だったが、20年度は25道県の68校に拡大した。

     大崎海星高校の生徒は放課後、無料の町営塾で自習したり、個別指導を受けたりすることができる。受験を控えた9月下旬は、3年生がスタッフと1対1で志望理由書の推敲や面接対策に励む姿も。寮では、3人のハウスマスターが慣れない集団生活での悩みを聞く。

     塾のスタッフとハウスマスターは、地域おこし協力隊として町が採用。毎週、校長ら教職員と町役場の担当者も交えたミーティングで情報交換し、多感な時期に親元を離れた寮生を見守る。

     「島親」が見守り

     島民の支援も。県外生には全員、ボランティアの「島親」がいて、サポート体制の一端を担う。東京から来た1期生の卒業を見送り、今春から2人目の島親となった佐村蘭子さん(68)は「孫が増えたようで、本当にかわいくて。(教育に力を入れることは)島の活性化に絶対につながる」と断言する。

     授業でも、島を教材として伝統文化や地域課題に向き合うキャリア教育「大崎上島学」に力を入れる。課外活動で地元の仕事の取材をしたり、行事に参加したり、つながりを深めてきた。

     地域みらい留学について、大久保信行校長(55)は「県外生と地元生が刺激し合い、レベルアップしている」と評価。「島の方々が時には先生になり、保護者、祖父母になる。その出会いを大事に、何かを学びとってほしい」と期待している。


    地域みらい留学

     公立高校が全国から生徒を募集することを通じ、中学生の進路の選択肢を多様化させ、地方の活性化につなげようとする取り組み。公立高校 に併設された寮が多い島根県が積極的に県外から生徒を受け入れており、実施している25道県のうち最多の15校が参加している。

     「地域・教育魅力化プラットフォーム」(松江市)によると、廃校の危機に直面していた島根県立隠岐島前高校(同県海士町)で県外生の受け入れと学校改革が成功。 2008年から10年間で生徒数が倍増し、地元中学からの進学率も急伸したという。

     18年度から離島や中山間地域を抱える地域で「地域みらい留学」を始める高校が相次ぎ、北海道から沖縄まで各地に普及。 20年度から内閣府と同プラットフォームが共同で、高校2年の1年間だけ他校に通うプログラム「地域みらい留学365」をスタフ、卜させている。


    少子社会の大きな問題点として都市への一極集中がある。こうした問題への解決策として「地域みらい留学」は有効な手立てだといえる。ただ、教育の問題として学校の統廃合だけが問題としていては展望はないだろう。50年のカーボンニュートラル実現は、地方の再興と並行して行わなければならない。地方でのエネルギーの地消地産を柱に職の創設が可能となる政策が必要となるだろう。


    12月8日 仙台市教委 いじめ調査22人分書き換え

     仙台市は7日、同市が11月に実施した「いじめ実態把握調査」で、いじめの件数を少なく見せるため、担任する児童33人のうち22人の回答を書き換えたとして、市立七北田小の男性講師(48)を懲戒免職とした。講師は市教育委員会の調査に「自身の評価が高まると思った」と説明している。

     市教委によると、講師は、いじめられたことが「ある」との回答を「ない」に書き換えたり、「同じクラスの人にいじめられた」との回答を消去したりしていた。「学校がいじめ防止にしっかり取り組んでいると思うか」との質問では、「あまり思わない」との回答を「思う」に書き換えた。

     児童の保護者が保管していた調査用紙と回答が異なることが分かり、講師の不正が発覚した。市教委は、私文書偽造の疑いもあるとして刑事告発も検討している。


    とんでもない事件との印象はぬぐえない。しかし、いくつかの疑問は残る。一つには、懲戒免職となった講師が48歳であるということ。この歳まで講師を続けていたのなら学校という組織を十分に知り尽くしているはず。また、「自分の評価を高める」ために文章の改竄をしなければならなかったのはなぜか。など、単に懲戒処分をして済ますには問題がこじれてはいないか。


    12月2日 市教委 北総合支援学校分校新設へ

     京都市立総合支援学校の児童生徒が増加していることを受け、市教育委員会は1日、北総合支援学校(上京区)の分校を下京区の旧格致小校舎を活用して新設する方針を明らかにした。早ければ2024年度の開校予定で、中京、下京区に住む70〜90人を受け入れるという。

     医療技術の進歩などにより、総合支援学校に通う児童生徒数はこの10年で14%、133人増加。北総合では今後数年のうちに教室の不足が見込まれるため、分校の設置を決めた。

     現在、山科区の東総合支援学校に通う下京区の児童生徒も受け入れる。通学時間を大幅に短縮し、負担の軽減につなげる。

     同日の市議会代表質問で在田正秀教育長が答弁。在田教育長は取材に対し「バリアフリー化をはじめとした施設改修計画の策定を進めている。財政状況が厳しいが、できる限り早期の開校を目指したい」と話した。

     他の総合支援学校も教室の不足が課題になっている。施設の老朽化も進む呉竹総合支援学校(伏見区)はすでに増改築中で、25年度に工事の完了を予定している。西総合支援学校(西京区)も増築を検討しているという。


    総合支援学校の新築や増設が盛んになってきている。1979年の「養護学校義務化」とは違って子どもや親のニーズがあってのことだろうが、同時にインクルーシブ教育への世界的関心も大きくなっている。総合支援学校教育とインクルーシブ教育をどう調和させていくのかを行政的にも議論してほしいところである。


    12月1日 同大教授ら 朝鮮大学生に支援給付金を

     新型コロナウイルスの影響で困窮する学生向けに政府が5月に創設した「学生支援緊急給付金」の対象に朝鮮大学校(東京都)が含まれていないことを受け、公平な支給を求める大学教職員の声明を取りまとめた同志社大の板垣竜太教授が30日、国会内で文科省担当者に要請書を手渡した。

     この制度は学びの継続のため、アルバイト収入の激減や実家の家計急変があった学生に最大でで20万円を給付する。国公私立大や短期大、専門学校のほか日本語教育機関や外国大学の日本校も対象としているが、各種学校の朝鮮大学校に関しては認められていない。

     声明では、大学校の卒業生は国公私立大の大学院から入学資格が認められるなど高等教育機関として社会的に認知されており、「公平性を欠いた政府の恣意的な線引き」などと批判。呼び掛け人に京都大の山極寿一教授や駒込武教授らが名を連ね、賛同人は27日時点で709人に達した。

     衆院議員会館であった立憲民主党の会合にオンラインで参加した朝鮮大学校の女子学生は「連帯が必要とされる新型コロナの中で差別を受け、悲しかった。日本社会のどんな問題につながっているか、共に向き合って考えて」と訴えた。朝鮮近現代史に詳しい板垣教授は「政府与党は冷戦期の治安管理的な思考や現在の外交的思考で考えるのでなく、人道的な見地、歴史的な実態と実績に即した見地から対象に含めてほしい」と呼び掛けた。


    板垣さんの呼びかけの通りで、一連の朝鮮学校関係教育機関を排除する日本政府の姿勢は、外交的にもマイナスであると思える。