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  • 「教育環境日本一」へ新プラン.23
  • 教員は権力者の自覚を.25
  • 「自主休校」で学び格差.25
  • 大津いじめ自殺賠償確定.26
  • 中傷より思いやる社会に.27
  • 部活競技別に感染防止策.27
  • 教職員16.5%「ハラスメント被害」.27
  • 小5・6教科担任制導入.27
  • 1月27日 中教審 小5・6教科担任制導入

     中教審(渡辺光一郎会長)は26日、小中高校の教育の在り方に関する答申を取りまとめた。小学5、6年で専門の教員が教える教科担任制を2022年度をめどに本格導入すると明記し、対象教科に理科と算数、英語を例示。高校生の約7割が在籍する普通科を再編し、持続可能な開発目標(SDGS)といった現代社会や地域の課題に取り組む新学科を設置することを盛り込んだ。

     文部科学省によると、義務教育を中心とした包括的な答申は05年以来。新型コロナウイルス禍や小学校の35人学級化を踏まえ、情報通信技術(ICT)を活用し、対面とオンラインを使いこなす「教育のハイブリッド化」も掲げた。

     教員が得意分野を担当する教科担任制で授業の質が高まることが期待される。また、教員1人が全ての授業を受け持つ学級担任制に比べて負担が減り、働き方改革につながるとされる。

     萩生田光一文科相の代理で答申を受け取った田野瀬太道副大臣は「令和の日本型教育実現のため、内容を丁寧に発信していく」と述べた。文科省は今後、教科担任制に必要な教員確保などに向け、具体的な検討を急ぐ。

     答申は、教科担任制の中学校とのスムーズな接続を見通し、小5、6から始めるとした。教科は、実験や観察に取り組む理科、つまずく児童の多い算数、20年度から教科となった英語を挙げた。

     課題となる教員の数や専門性の確保では、小中両方で教えられるよう教員免許の取得要件を弾力化し、養成課程を共通にすることを提案した。

     高校改革では従来の普通科の枠組みの中に、SDGSなど現代的な課題に対応して教科の枠を超えた学びに取り組む学科と、地域社会の課題に取り組む学科を設けることを提示した。

     また、児童生徒数が増えている特別支援学校に備えるべき施設の設置基準を策定し、教室不足解消に取り組むよう要請。外国にルーツがある子どもたちの日本語指導の充実や、問題ある教育体制が発覚した通信制高校への指導強化も記した。


    【表層深層】教科担任制「分かりやすい」

     中教審が導入を答申した小学5、6年の教科担任制に先行して取り組む地域では、その効果を実感している。専門の教員による授業は「分かりやすい」と好評で、児童の学ぶ意欲の向上につながる。学習内容が高度になり、環境変化に悩む「中1ギャップ」解消への期待も。文部科学省は授業準備の効率化などを通じ、名忙な教員の働き方改革につなげたい考えだ。

     「児童や保護者にとって、いろんな先生に相談できるのが良いようだ」。2012年から小5、6で独自の教科担任制を導入する兵庫県教育委員会の担当者は話した。文系教科が得意な学級担任と理系教科が得意な学級担任が、授業を交換するなどして実施している。

     教員は同じ授業を複数回するため効率的に準備できるメリットがある。学級担任だけではない複数の目で児童を見て、小さな変化に気付くこどもあるという。

     横浜市立小は4分の1ほどが教科担任制の推進校。5、6年の学級担任は国語や社会など一部教科を受け持ち、その他は学年主任や別の学級担任らと分担する。「担当教科が減り、教材研究が充実して指導力が上がった」。教員アンケートからは授業の質の向上がうかがえる。「日中に空きコマができ、児童の提出物を見たり、次の準備をしたりできる」(市教委)のも利点だ。別の自治体では、中学校と連携し、専門知識のある中学教員が小学校で教えている。

     世界の小4と中2を対象に算数・数学と理科の学力を測る19年国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の平均得点は小中全てで上位をキープしたものの、学習意欲は課題が残った。

     質問紙調査で「勉強は楽しい」と答えた小中学生は、理科が小4で92%、中2で70%。算数は77%、数学は56%。国際平均を超えたのは小4理科だけで、中学生になると下がる傾向も変わらなかった。

     答申が教科担任制の対象に理科と算数を含めたのは、難易度が上がる中学校の前段階で手厚く指導し、将来にわたって学習意欲の向上を図ろうとの意図が見える。

     現在の教科担任制は実技や実験がある教科が中心だ。文科省の18年度調査では、6年生で導入している公立小は、音楽で55・6%、理科で47・8%だった一方、算数は7・2%。英語が教科化される前の外国語活動も19・3%にとどまった。専門性を持つ教員の不足が背景にあるとみられる。

     答申は人材確保を課題に挙げたが、学校現場の多忙も背景に全国的に教員の採用倍率は低下し、特効薬は見つからないのが現状だ。

     小学校が「主体的・対話的で深い学び」を掲げた新学習指導要領への対応に追われる中、答申には教科担任制以外にもさまざまな内容が盛り込まれた。

     中教審副会長の天笠茂・千葉大特任教授(学校経学)は「答申の中心には新導要領の考え方があり、目新しいことを求めているのではない。地域の力を借るなどして、今の取り組を続けてほしい」と語った。


    中教審高校新学科に「学際」「地域」

     26日の中教審答申では、高校改革案が示された。新学習指導要領の段階実施が始まる2022年度をめどに、普通科の枠組みの中に、持続可能な開発目標(SDGS)など現代的な課題に対応して教科の枠を超えた学際的な学びをする学科と、地域社会の課題に取り組む学科を新設。全ての高校に教育活動の指針となる「スクールーポリシー」の策定を求めた。

     高校には、普通科、商業や工業といった専門学科、双方を合わせた総合学科がある。生徒の約7割が在籍する普通科は、一部で偏差値に基づいた進学で学習意欲の低い生徒がいることや、進路が多様なのに大学を目指す画一的な指導が目立つといった問題があり「生徒や地域のニーズに合っていない」との指摘が出ていた。

     文部科学省によると、1948年の新制高校発足で普通科ができて以来、再編は初となる。

     「学際」学科は大学や国際機関との連携体制の構築、「地域」学科は自治体や地元企業との協力体制や高校と地域をつなぐコーディネーター配置などが要件。この2学科の他に、各教育委員会は特色ある学びに重点的に取り組む学科の設置も可能となる。

     各高校は、社会的役割や目指すべき学校像を明確にした上で、入学から卒業までの教育の指針となるスクールーポリシーを策定。@どのような力を身に付ければ卒業を認めるかAどう教育課程を編成し、学習内容を評価するかBどのような生徒を入学させるか―の3点を明示する。


    小学校での「教科担任制」は現場が最も期待するものである。現在理科と音楽においてはおよそ50%が実施されているが、さらなる前進が望まれている。ただ、35人学級にしても加配を引きはがして員数を合わせようとする行政にどれだけ期待できるのか。
    一方の高校改革では「スクールーポリシー」が言われているがこれまでの「特色ある学校」が求められてきたことと特段の違いはあるのだろうか。確かに多くの「普通科」が競うように進学校になっていた中で、おどろくべき学校間格差があらわになり、生徒の学習意欲が阻害されているといとの危機意識があるのは事実だろう。おそらく社会と学校の接続がうまくいっていない(高卒で働くことへの不安)ことをどう改善するかという労働政策との連携が必要だろう。


    1月27日 滋賀県教委 教職員16.5%「ハラスメント被害」

     滋賀県教育委員会と県内の各市町教委が県内の公立学校の全教職員に行ったハラスメント被害の実態調査で、回答者の16・5%がパラハラやセクハラなどのハラスメント被害に遭ったと回答していたことが26日分かった。被害の中には懲戒処分に該当する可能性がある事案もあるとして、県教委は現在、複数の事案にづいて事実確認を進めているという。

     調査は、強制わいせつの疑いで昨年5月に草津市の公立小の元校長が逮捕された事案などを受け、臨時的任用職員や会計年度任用職員を含む県立高や特別支援学校、市町立の小中学校などの教職員1万3973人を対象に11〜12月に初めて実施。57・9%の8087人が回答した。

     ハラスメント被害を訴えたのは1337人。種類別(複数回答可)では全1757件の被害のうち、最も多かったのがパワハラで68%の1195件、続いてセクハラが14・7%の258件、妊娠や出産、育児、介護を巡るハラスメントが9%の159件で、8・3%の145件がその他のハラスメントに遭ったと回答した。具体的には「同僚や生徒の前で必要以上に大きな声で叱責された」「管理職に妊娠報告をした際に嫌な顔をされた」などの記述があった。

     一方で「相談窓口に相談した」「相談する予定」と回答したのは、パワハラが129件、セクハラが21件、妊娠などを巡るハラスメン卜が15件にとどまっていることも分かった。県教委教職員課は「引き続きハラスメント防止の研修を行うとともに、利用件数が少ない相談窓口をより活用されるものにしたい」としている。


    滋賀県にとどまらずどこの府県においてもハラスメントやメンタルヘルスへの相談窓口は設けられているが、利用者は少ない。被害を受けている人が無意識のうち内面化してしまってる働き方、同時に加害の側も「こうあるべきだ」という意識を内面化してしまてることを洗い出す必要がある。同時に、教職員に相談機関があることを不断に周知こと。する被害者が容易に相談できる機会を作ること。が、必要。


    1月27日 府教委 部活競技別に感染防止策

     バレーボールでは自分のタオルで床の汗を拭かない―。京都府教育委員会は26日までに部活動で新型コロナウイルスの感染防止のために控えるべき行動をまとめ、府立中高校に連絡した。今月に入って部活動が契機とみられるクラスター(感染者集団)が発生したためで「無意識にすることもあるだろうが気を付けてほしい」としている。

     府教委は14日に緊急事宣言が府に再発令された際、部活動については、原則校内のみで自校の生徒だけや2時間以内などと定めた。しかし今月に京都市内で行われた複数高校による交流試合で感染が広がったとみられるため、詳細な留意事項を取りまとめた。

     各競技共通で感染リスクが高いとしたのは、接近したジョギング▽ハイタッチや抱擁、握手、肩・円陣を組むこと▽気合を入れるための声出し▽大声での応援。あいさつ、返事▽共用備品に接触後、手で顔を触ること▽洗面所利用の集中―などとした。

     種目別では、バレーボールは「アタッカーと相手ブロッカーが接近している際、インパクト時に発声する」「唾液で手を湿らせる」、ラグビーは「真正面で向き合う時間が長い」、バスケットボールは「シューズの裏のほこりを手で拭う」、卓球は「隣同士の卓球台が接近している」などを挙げた。ビブスや雑巾、ヘッドギアなどの使い回しも注意が必要とした。参考として府内の私立学校にも通知された。

     京都市教委も26日、部活動に関する追加の留意事項として「なるべく個人での活動とし、複数人で実施する場合は十分な距離を空ける」「可能な限り屋外で実施する。屋内の必要がある場合は呼気が激しくなる運動を避ける」と市立小中高校に通知した。


    コロナ蔓延の中でスポーツも従来「常識」から抜け出す必要があるだろう。一つ一つの項目に基準を作るのは無駄ではないにしても、たぶんきりがないだろう。元バレーボール選手の益子直美さんが取り組んでいる「アンガーマネージメント」のような哲学が必要なのではないだろうか。


    1月27日 取材ノートから 中傷より思いやる社会に

     学校で児童生徒が新型コロナウイルスに感染して休校した場合、校名を公表するか、非公表とするか。学校の殷置者である自治体の教育委員会や学校法人によって判断が分かれている。公表する場合は「地域住民の安心のため」、非公表は「子どもの人権に配慮するため」などとそれぞれ理由がある。取材をして感じたのは、どちらが正しいという問題ではなく、一人一人がまず不安を解消できるだけの予防策を取り、感染者に中傷ではなく思いやりの心を持つことが大切だということだ。

     「差別や中傷がやはり心配。それがなければ公表してもよいとは思うが」。そんな言葉を今年に入って校名非公表を方針にする複数の学校設置者から聞いた。昨年の夏や秋に公表判断が分かれている実情を紙面で紹介したが、状況は変わっていなかった。

     京都や滋賀では、京都府や京都市は公表、滋賀県や大津市、多くの私立学校は非公表などとしている。感染症法は予防や治療に必要な情報は積極的に公表すべきとする一方で、個人情報保護への留意を求めており、どちらの方針も趣旨に沿っている。文部科学省は「情報公開への姿勢は自治体ごとに異なる」として公表基準は定めず設置者の判断に委ねている。

     非公表とするさいたま市の担当者は「該当する学校の保護者や濃厚接触者など必要な人には情報が伝わっている」と理由を説明する。感染拡大を防ぐためにすべきことは接触者の特定や消毒だ。学校は出入りする人が限られており、接触者を追えているのであれば、無理に公表する必要はない、という考え方は理解できた。

     「それでは住民の不安が解消されない」という意見もあるだろう。ただ京都先端科学大科蛍火の渡邊能行教授(公衆衛生学)は「感染は飛沫や接触、エーロゾル(浮遊する微粒子)を通じて起こる。市中に感染者がいることを考慮すれば、常に3密(密閉、密集、密接)の回避やマスクの着用、手洗いを励行することが重要」と語る。不安な気持ちは情報がないことへの怒りにつながりがちだが、正しい理解と恐れを持って、予防の最善を尽くすしかないと説く。

     では全て非公表にすればいいか、というとそうではない。渡遵教授は地域に注意を喚起したり、教訓をみんなで共有したりする効果が期待できる場合は公表もあり得るとし「正しい理解が進み、正しく恐れる状況になれば気にせずオープンにできる。そんな寛容な社会をつくることが重要」と指摘する。

     コロナヘの恐れ方は人によって違う。ただ不安や恐れが差別や中傷、批判に発展すれば、情報の非公表につながる。その悪循環に陥らないよう、不確かな情報に惑わされず、感染者に対して温かい社会をつくっていくことが求められる。(三村智哉)



    1月26日 最高裁 大津いじめ自殺賠償確定

     大津市で2011年に市立中2年の男子生徒=当時(13)=が自殺したのは元同級生らによるいじめが原因だとし、遺族が元同級生らに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は25日までに、二審大阪高裁判決を不服とした遺族の上告を退ける決定をした。21日付。元同級生2人に対して計約400万円の支払いを命じた二審判決が確定した。

     元同級生側の賠償額は一審大津地裁判決より大幅な減額となったものの、「いじめと自殺の因果関係があった」と、一、二審の認定を維持した。遺族側の代理人弁護士によると、いじめによる自殺を一般的に生じうる「通常損害」と認めた判決が最高裁で確定するのは初めて。

     二審判決は一審判決を踏まえ、元同級生らの一連の加害行為を「いじめ」と断じた上で、自殺に及ぶことは社会でも認知され一般的にあり得るとし、元同級生らの損害賠償義務を認定。一方、「男子生徒は自ら自殺を選択した上、家庭環境が整っていれば回避できた可能性も十分に考えられる」などとして、賠償額を一審判決の計約3750万円から減額した。

     一、二審判決によると、男子生徒は11年9月以降、同級生らに殴打されたり八チの死骸を口にのせられたりするなどのいじめ行為を受け、同10月11日、自宅マンションから飛び降り死亡した。

     遺族は12年2月、元同級生らと市に計約7700万円の損害賠償を求めて提訴。過失責任を認めた市とは15年に和解金1300万円を支払うなどの内容で和解し、分離された元同級生らとの訴訟が続いていた。


    事件発生からおよそ10年を経ての結論。いじめと自殺との因果関係を認めた判決が確定したことになる。ただ、被害者本人の過失相殺での賠償額確定に釈然としないものがある。もちろん家庭での一定のケアがあれば自殺を防ぐことができたかも知れないのだが、それを過失相殺の根拠ではないだろう。この事件で「いじめ」の複雑さがより一層深まったともいえるのではないか。それは、大人からいじめは極めて見えにくいということと、学校という空間がいじめとどうかかわっているのかということはいまだに明らかになっていないのだから。


    1月25日 「自主休校」で学び格差

     11都府県への緊急事態宣言再発令で、政府は子どもたちの学びを止めないために学校の一斉休校を求めなかった。ただ基礎疾患や障害ある子どもたちは、新型コロナウイルス感染への不安から自主的に登校を控えざるを得ない。「通いたくても通えない」。切実な訴えに支援団体や一部の教育委員会はオンライン授業でケアするが、各地の態勢整備にばらつきがあるのが現状だ。

     「子どもが、ぜんそくを抱え、学校での感染を怖かっている」。今月7日、NPO法人「カタリバ」(東京)が、学校を休んでいる子どもへの学習支援をホームページで呼び掛けると、すぐに保護者から相談が数件寄せられた。

     昨春の一斉休校を機に、困窮世帯の子どもにパソコンを貸し出し、大学生や社会人らかオンラインで学習の個別サポートに取り組んできたカタリバ。既に支援している約360人のうち数人が感染不安で登校していない。家族に持病があったり、発達障害で手洗いの徹底が難しかったりといった事情がある。

     感染拡大で登校をためらう子どもは今後も増えると予想され、希望者の追加募集に向けて準備を進める。カタリバの中島典子さん(29)は「一人一人に複雑な事情があり、十分なオンライン学習のサポートを受けられなければ、教育格差につながる」と訴えた。

     文部科学省は、学校内で感染が広がった事例は少なく、リスクは高くないとする。一方で、感染不安で休んでも内申書などに影響しない出席停止扱いとし、各教委にはオンライン授業を含めた学習機会の確保に取り組むことを求めている。

     宣言対象地域で積極的に対応するのは福岡市だ。昨年11月、市立小中学校の児童生徒に1人1台のパソコン配備を完了。希望者に持ち帰りを認め、授業をライブ配信して自宅で学べるようにした。現在70人ほどが活用し「学校とつながりを感じて安心できる」と、反響があるという。

     ただ端束整備が終わらず、オンライン授業の本格実施に乗り出せない地域も多いとみられる。宇都宮市は今年3月に1人1台となる見通しで、現時点では学習プリントを渡すのが中心。市教委の担当者は「オンライン授業の方が意欲を引き出せる。指導態勢を早急に充実させ、効果的な学びを届けたい」と話した。


    オンライン学習のメリットは十分生かされなければならないがそのマイナス面もしっかり見ておく必要がある。ICTが障害を持つ人たちの重要なコミュニケーションツールであることは間違いがないのだが、一方で教育内容への(強権的な)介入も可能であることにも注意を向けなければならない。


    1月25日 スクールセクハラ 教員は権力者の自覚を

     教員のわいせつ行為やセクハラが止まらない。2019年度に懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校の教員は273人で、過去2番目に多かった。それでも処分を受けるのは「氷山の一角」とされる。どうすればなくせるのか。

     学校で起きる性被害は「スクールセクハラ」と呼ばれる。問題の本質は、教員と子どもに圧倒的な力の差があることだ。教員が強い力を悪用しながら、「恋愛関係」だと言い張ることも珍しくない。教員には、強い権力があるという自覚を研修などで促す必要がある。

     私が取材した加害者の元小学校教員は「自分に権力があるとは思わなかった」と話した。自覚を促す研修があれば被害を防げるかもしれない。「私は無関係」と渋々、参加する教員もいる。「あなたはやらなくても、同僚を止められるか」と問う必要がある。周囲が異変に気づくことはよくあるが、止められないと被害は拡大する。勇気を出して声を上げてほしい。

     一方で、逃げ得を許さない対策も急務だ。公立校で性被害が発覚すると、通常は校長が教員に聞き取りをする。だが、大半の校長は調査の経験などないから、不十分な聴取に終わることも多い。保身から隠蔽することもある。本来は独立した立場の第三者による調査が理想だが、せめて教育委員会が直接、調べるようにできないか。

     教委が指示して校内で調査する場合も、校長任せにせず、チームで動く方がいい。まずは被害を訴えた児童生徒から、本人が信頼する人が丁寧に話を聞き、情報を共有した後、加害者とされる教員に当たるべきだ。

     実は、教員が事実を認めるかどうかが極めて大きな分かれ目になる。わいせつ行為を認めれば、原則、懲戒免職だが、認めなければ、ほぼ処分されない現実がある。

     だから、校長が教員から最初に聞き取る時が勝負だ。いつでも対応できるように校長に聴取の技術を授けたい。例えば、この問題に詳しい弁護士に研修の講師を頼んではどうか。さらに、いざというとき、校長が弁護士に相談できる態勢があれば役立つ。教員の言い分の不自然な点を的確に指摘してもらえれば、聴取を重ねる際に参考になる。教員が事実を認めない場合も、弁護士が判断に加われば、教委は適切に被害を認定できるのではないか。

     最近、卒業から10年後や20年後に被害を訴える例が増えた。子どもの頃は言えなかったり、被害と思わなかったりするからだ。ただ、時間がたつと解決は難しい。特に私立校は内部情報が表に出にくく、より難しい。だから初期対応が大事だ。

     懲戒免職になっても、教員免許失効から3年で再取得できるのも問題だ。文科省は無期限を含めた期間延長の法改正を検討したが、個人の権利制限を問題視する内閣法制局の見解を受けて見送った。海外の対応策も参考にして知恵を絞るべきだ。(共同通信編集委員 池谷孝司)


    池谷編集委員の議論にはすぐさま首肯することは難しい面のあるが、教員が子どもたちに対して「権力者」であることは事実だ。セクハラだけにかかわらずパワハラ(特に部活における)などもそうした権力関係の非対称のなかで生まれることは肝に銘ずべきところだろう。


    1月23日 府教委 「教育環境日本一」へ新プラン

     京都府教育委員会は22日、2021年度から10年間の教育施策の方向性を示す「府教育振興プラン」の最終案を示した。児童生徒に1人1台整備されるコンピューター端末などICT(情報通信技術)の積極的な活用を打ち出したほか、学んだ内容を小中高校でデータとして蓄積していくスタディ・ログ(学習履歴)の導入、府立高の新たなビジョン策定なども盛り込んだ。

     基本理念として、目指す人間像を「変化を前向きに捉えて主体的に行動し、より良い社会と幸福な人生を創り出せる人」と設定。「主体的に学び考える」「多様な人とつながる」「新たな価値を生み出す」の三つの力を育むとした。

     重点施策は「教育環境日本一プロジェクト」と名付けたテーマを掲げた。 ICTを活用した学びとつながりの保障として、新型コロナウイルスなどで休校中のオンライン授業や不登校の子どもへの遠隔サポートにも取り組む。

     データを活用した新しい学習支援も推進する。医療用カルテのように学習内容を記録するスタディ・ログを活用し、一人一人に応じた指導を行う。 CBT (コンピューターを用いた学力テスト)も導入して理解度などの分析に生かす。

     このほかこれからの府立高の在り方も議論する。国が高校の普通科の再編を計画していることを踏まえ、地域や時代に合った公立高のビジョンを策定する。部活動は教員の負担軽減のためにも地域のスポーツクラブとの連携を深め、活動の移行も図る。

     プラン、は11年度から10年間の現行計画が20年度で終了するため新たに策定する。最終案は同日、京都市下京区で開かれた識者らによる検討会議で提示され、20年度中に正式決定する。橋本幸三教育長は「コロナ禍で得られた知見や国の教育改革も踏まえることができた。府立高のビジョン策定は早い時期に着手したい」と語った。


    「目指す人間像」を議論することは教育にかかわる人たちにとって必要な議論ではある。しかしそれはもっともベーシックなものでなければならない。時代の即戦力としての人間像ではすぐに賞味期限が切れてしまう。その観点から、「主体的に学び考える」「多様な人とつながる」「新たな価値を生み出す」というテーマを検討してみることは今後必要ではないか。ひとつだけ指摘しておけば「スタディ・ログ」が主体的に学ぶことにつながるのかということ。小学校からどのような学びをしてきたのかが管理されるスステムづくりの下では、M・フーコを引くまでもなく子どもが自らの学び内容(学習指導要領)を内面化してしまうおそれがある。それではとても主体的とは言えないのでないか。


    1月22日 厚労省 自殺者11年ぶり増 女性顕著

     2020年の自殺者が2万919人に上ったことが22日、警察庁の自殺統計(速報値)で分かった。新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年は、10年連続で減少していた19年の確定値から750人増加(対前年比3・7%増)。男女別では、男性は11年連続で減少となった一方、女性は増加に転じ、過去5年で最多に。女性の自殺者増が顕著な上に、小中高生は同様の統計のある1980年以降で最多となった。

     データを分析した厚生労働省自殺対策推進室は「厳しい状況だ。コロナ禍がさまざまに影響している可能性がある。政府として経済や生活の支援に加え、相談窓口を拡充し、悩みに応じて支援機関につなげられるようにしたい」としている。

     自殺者数の速報値では、男性が1万3943人(135人減)、女性が6976人(885人増)だった。人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)の速報値は、16・6人(0・8人増)で、男性が22・7人(増減なし)、女性が10・8人(1・5人増)となった。

     現時点では、年齢や職業、原因別の詳細なデータは11月分までの公表にとどまる。小中高生の自殺者は440人で、内訳は小学生13人、中学生120人、高校生307人。1ヵ月を残し、これまでで最も多かった86年の401人を超えていた。高校生は単独でも過去最多だった。前年同時期との比較では、女子高校生が50人増と著しく増えた。

     年間の速報値の都道府県別では、29都府県で前年比増となった。増加数は神奈川(169人)、大阪(148人)、東京(130人)、愛知(111人)、埼玉(71人)の順で多かった。京都は32人増、滋賀は6人減だった。

     月別で前年比を見ると上半期は少なく、特に緊急事能宣言下の4月は310人減、5月は268人減。だが7月から前年比で増加に転じ、2199人(660人増)と年間でも最も多かった10月は、著名人の自殺の影響が指摘されている。

     警察庁の自殺統計の確定値は3月に公表される見込み。例年速報値よりも増える傾向にある。


    平野孝典・桃山学院大准教授(社会学)の話元々不安定な上に負担

     女性は男性に比べて非正規雇用が多かったり、家事や育児の比重が重かったりして新型コロナウイルス禍の生活変化の影響を受けやすい。元々の不安定な状況に雇用不安や家庭内の負担が加わり、自殺につなかった可能性がある。小中高生の自殺増加の背景には、休校明け後の学校生活にストレスを感じたことなどが考えられる。国は自殺者数の多い中高年男性だけではなく、女性や子どもの自殺防止策にも一層力を入れる必要がある。


    かつて自殺者数3万人以上で交通事故死よりも多かったことが問題となり「自殺対策基本法」が2006年に作られた。その時点からみれば数字的には減少しているのかもしれないが、コロナの前と比べると明らかに増加している。原因は様々だろうが、コロナによる生活環境の変化が大きいとみられている点は重要である。麻生財務大臣が定額給付金支給に否定的な見解を示したことにたいして批判の声が上がっているのは、それを必要とする人たちの姿が見えていないということなのだろう。また、中高生の自殺も増加しているのは「学習の遅れ」を取り戻すことに汲々としてる教育界への異議申立てでもあるのだろうか。


    1月21日 市教委 学びのICTに意見活発

     京都市長や市教育委員らが地域の教育の在り方を考える「市総合教育会議」が21日、中京区の市役所で開かれた。児童生徒に1人1台のコンピューター端末を配備する「GIGAスクール構想」が2021年度から本格導入されるのを前に、出席者はICT(情報通信技術)を活用した学びについて意見を交わした。

     会議では、授業の支援体制の充実を求める声が上がった。笹岡隆甫委員は端末導入後、しばらくは教員や児童生徒が操作などに手間取りがちになることを踏まえ「現場でサポートする先生の配置が必要では」と提案。野口範子委員も教員の研修の強化や専門知識のある人材による支援が重要だと述べた。

     奥野史子委員は新型コロナウイルスの感染拡大でICT活用が急速に進み、スキルの世代間ギャップが広がった可能性を指摘。「デジタルが苦手な高齢者が取り残されないよう、生涯教育でフォローしてほしい」と求めた。門川大作市長は最後に「学校事務でもICTを活用し、教職員の働き方改革につなげていきたい」と述べた。


    ICTの活用で教職員の働き方改革が前進したという実態を明らかにすることも「会議」の責務ではないのか。ICT化すればよいというものではないだろうから。とりわけ、教材として提供されるものが紙ベースの教科書と違ってデジタル化されたものは変更しにくいし、教材研究にかかわる時間が確保される保障はない。昨年KBSテレビで放送された「ステイホーム」のための番組は明らかに一方通行の「押し付け」教育になっていた。デジタル化はそうした危険性を常にもっていることを議論しなければならない。蛇足ながら、国のデジタル化はそうした基本理念を欠如したままつぎはぎの施策となっている。コロナワクチン接種を期にマイナバーを普及させようとする意図がありありだ。政府に対する信頼があってこそ市民は同意することができるのだが、火事場泥棒的なデジタル化は害が大きい。


    1月16日 緊急事態宣言下 部活再び我慢の時

     京都府などに緊急事態宣言が再発令されたことを受け、一部の競技で大会が中止になるなど高校スポーツに影響が出ている。宣言対象地域外の滋賀県も部活動に規制を設けており、京滋の高校生アスリートは再び、我慢の日が続きそうだ。

     開催中の京都府新人大会は、サッカーやバドミントンで中止が決まった。バスケットボールは16、17日の試合を見合わせ、その後の日程は未定という。バレーボールはいったん日程を中断し、宣言解除後に再開の可否を検討する。

     3月の全国選抜の予選を兼ねて22〜24日に予定されていた空手の近畿大会(神戸市)や、23、24日のレスリングの全国選抜大会近畿ブロック予選(和歌山県)も取りやめとなった。ラグビーの近畿高校大会府予選は、31日の決勝まで無観客で実施する予定。近畿大会がなくなれば、府予選も中止となる。

     京滋の各教育委員会は14日付で部活動の対応方針を学校に通知。京都は自校生徒のみで原則校内に限るとし全国、近畿大会やそれにつながる府内大会のみ参加を認めた。

     滋賀は宣言対象地域での練習試合や合同練習を不可とし、大会出場は全国、近畿大会の県予選や高体連主催の公式試合に限定した。


    中学高校の部活動の問題点はいろいろあるのだけれども、まずはプロやオリンピックを頂点としたピラミッド型の「〇〇大会」というシステムを解体するところから始めるべきではないか。おそらく少なくともコロナの流行は今年の秋までは収まらないだろうから、その間に競技システムを「勝つことから楽しむこと」へと舵を切るような議論がほしいものだ。


    1月16日 市教委 21年度の京都市立小中学校は―教育長に聞く

     児童生徒に1人1台のコンピューター端末を配布する「GIGAスクール構想」や35人学級の導入、新型コロナウイルスの感染が広がる中での授業など2020年度は、今後の教育の在り方に大きな変化をもたらした1年となった。約8万8千人の児童生徒が学ぶ京都市立小中学校は21年度、どのように変わるのか。在田正秀教育長に聞いた。  (大西幹子)

    ―京都市の「GIGAスクール構想」について教えてほしい。

     「子どもたちに端末を配り、ソフトを活用して一人一人に応じた学習を提供したり、教員の授業改善に役立てたりする。例えば『授業支援ソフト』は、グループでの議論などを通じて主体的に学ぶ『アクテ・イブーラーニング』が効果的に行えるよう補助するものだ。児童生徒が端末に書き込んだ意見はグループメンバーや教員とリアルタイムで共有され、他者の考えについてより理解を深めやすくなる。児童生徒が自身の進度に合わせて問題を解ける『デジタルドリル』や、教員のテスト採点を効率化する『採点補助ソフト』の導入も検討している。現在は準備段階として、52のモデル校でソフト活用の効果を検証している。大容量のネットワーク環境の整備やオンライン授業に対応した大型ディスプレイの設置も進めている」

    ―文部科学省が21年度から、現在は小学1年生のみの適用となっている35人学級を、他学年にも1年ずつ広げていくと表明した。京都市にはどのような影響があるのか。

     「京都市ではすでに2年でも35人学級、進路指導が重要な中学3年で30人学級を実施しており、現場の学級編成が変わるのは全校の小学3年が35人学級になる22年度からだ。以前から少人数学級を市民と共に国に訴えてきたので、実現して喜んでいる。ただ文科省は35人学級の実施で増える教員について、21年度は加配教員の定数を児童生徒数や学級数で決まる教員の基礎定数に振り替えることで対応する見込みのため、実際の現場の教員は増えない。今後は加配の教員の数が維持され、全体としての教員数も増えるよう期待している。22年度の国の予算を注視したい」

    ―京都にも緊急事態宣言が再発令され、コロナ禍での教育活動は続く。現在は7時間授業を実施しているが、21年度のカリキュラムはどうなるのか。

     「昨春の一斉休校で生じた学習の遅れは20年度中に取り戻せる予定なので、21年度からは元の6時間授業になる。校内で感染者が出た場合など一時的に休校する可能性はあり、長期休みの前後に年間7日程度の登校予備日を設けておく。ただ新型コロナの収束が見通せない中、以前と同じ活動を実施するのは難しい。接触や発声を伴う実技の授業や部活動は感染リスクが高いため留意しながら実施することになる。小学4年の『みさきの家』での宿泊学習は休止し、5年の『花背山の家』は宿泊期間を短縮する。修学旅行、運動会、文化祭などのその他の行事は20年度と同様、規模を縮小し感染症対策を取りながら実施する」

    ―京都市の公教育の課題と展望は。

     「全国的な問題だが、学習が遅れがち、家庭環境が整っていないなど課題を抱えた子どもがたくさんいる。そういった子どもたちへのきめ細かい対応は十分でない。一方、20年度はコロナ禍でGIGAスクール構想が一気に進み一人一人に応じた指導の可能性を大きく広げた。不登校の子がオンラインでの授業に参加したり、従来の里被による一斉授業で集中が続かなかった子がタブレット活用で興味を持って学習に向き合えたりするようになることが期待できる。これまでの教育の在り方を見直し、児童生徒が自ら学び成長する姿を支える学校となるよう尽力したい」


    市民に向けた語りは大切なものであるのは分かる。しかし教育を考えるときに現場をさせている教職員に向けてもそれなりのメッセージが必要。職員の疲弊をどう軽減していくのかという課題を市民とも共有しなければならない。せっかくの新聞紙面を利用できるのだからそうしたきめの細かさがトップには必要だろう。


    1月15日 ナイキCM 差別描くCM、非難も拡散

     スポーツ用品大手ナイキジャパンが昨年11月、>日本社会の差別を描くCMを公開したところ「捏造」などと同社を非難する声が拡散した。差別の標的になる当事者は、こうした反応に絶望や恐怖を感じている。同時に、考える契機になることを望む声も出ている。

     CMの主人公は、サッカーに打ち込む3人の女性。在日コリアンや親が黒人であることを理由にいじめられ、テニスの大坂なおみ選手のサイトで「彼女はアメリカ人?日本人?」という心ない書き込みを目にする日常の中、サッカーで自信をつけ「誰もがありのままに生きられる世界」をつくると決意する筋書きだ。

     公開6日でユーチューブの再生回数は1千万回を突破。インターネットでは評価とともに、差別の存在を否定したり、ナイキが中国でウイグル族の強制労働に関わっている疑惑を挙げ「こんなCM作る資格ない」と主張したりする攻撃が出た。

     こうした反応に、社会学が専門の大阪市立大研究員、ケイン樹里安さん(31)は「差別を否認してきた人は動揺し、ナイキに怒りをぶつけている」とみる。

     大坂選手の姉、まり選手は米紙ニューヨークータイムズに、日本の一部の人たちは差別が「目の前で起きなければ信じない」と語った。

     日本では最近でも、化粧品会社ディーエイチシ(DHC)が自社サイトに在日コリアンを差別する吉田嘉明会長名の文章を掲載。政府は新型コロナウイルス対策の支援事業で朝鮮大学校の学生を対象から排除し、留学生には成績要件を課した。

     東京都の在日コリアンの女性会社員(35)は「ネットの反応を見て絶望が入り交じった」と話す。恐怖を感じるというこの女性は中学生の時、朝鮮人差別の文言とともに家族を脅迫する手紙が家のポストに入れられた経験を持つ。今も通名で飲食店の予約をすることがあるという。

     日本国籍でないことが理由でミスーユニバース地方予選に出られなかった静岡県の在日コリアンの女子大学生(19)は「CMが、私たちみたいな人を知ってもらう、きっかけになってほしい」と話した。


    人権問題や環境問題にしても企業のイメージつくりとして積極的に取り組もうとする姿勢は評価したい。それと並行して政治もレベルアップしなければならないのだが足取りは遅い。働き方改革でもサイボウズが意見広告を出している、一度見てほしい。


    1月15日 自民党 週休3日普及提言へ

     自民党の1億総活躍推進本部(猪口邦子本部長)は14日、希望すれば週休3日の働き方を選択できる制度普及に向けた議論を開始した。新型コロナウイルス感染拡大による経済の落ち込みを防ぐため、多様なニーズに対応した勤務形態の整備を後押しする。有識者らからヒアリングを重ね、政府への提言を取りまとめる方針だ。

     14日の役員会では、猪口氏が「選択的週休3日制」の推進策に関する試案を提示した。本人の意思で選択し、期間も自ら決定できる方式を 想定。子育てや介護、病気療養、大学院進学、ボランティア活動などでの利用を例示した。

     試案は、コロナ禍で打撃を受けた日本経済の水準維持には、個人の能力を最大限活用する必要性があると強調。多様な働き方を用意することで「幸福感や所得の向上が可能となる」とした。。休日を活用して地方で兼業する可能性も広がり、地方活性化にもつながると指摘した。

     経団連は昨年、コロナ感染防止のため週休3日制を含む多様な勤務形態の検討を呼び掛け、一部企業で導入や検討が進んでいる。


    労働時間を短縮することは好ましいことではあるが、余剰の時間を別の労働に振り向けるというのは結局長時間労働を強いる(選択とは言うものの)ことになる。積極的にワークシェアリングをすすめるという方向での議論がなされる必要がある。自民党の「働き方改革」とは労働市場を新自由主義的に再編していこうとする方向でしかないようにみえる。


    1月14日 文科省 教員のICT研修オンライン拡充へ

     文部科学省は13日までに、公立小中高校の教員が情報通信技術(ICT)を活用した授業方法を学ぶ研修を受講しやすくするため、勤務校にいたまま受けられるオンライン方式を4月から拡充すると決めた。研修動画の作成を手助けする専門家を各地の教育委員会に派遣するほか、文科省も独自の教材を提供する。2021年度当初予算案に約4億円を計上した。

     新型コロナウイルスの感染拡大が続き、再び休校する事態になってもオンライン授業で子どもの学習機会を保障する対策が急務。「GIGAスクール構想」で、全国の小中学生に1人1台のパソコン配備が3月末までにほぼ完了する見通しとなり、教員のさらなる指導力向上に取り組む。

     文科省によると、IT企業の技術者やICTに詳しい大学教授ら約100人に協力を求めてリスト化し、教委の要請に応じて派遣。動画視聴がオンライン研修の中心になるため、効果的な内容になるよう監修してもらう。謝礼は文科省が負担する。

     また、文科省も研修教材をホームベージに公開する。ICTを授業で積極活用している先行事例や、端末トラブルへの対処方法などを紹介。教員が研修会場に集まる必要を減らし、仕事の合間に閲覧できるようにする。

     公立小中高校の教員のうち、19年度にICT研修を受けた割合は全国平均で50・1%。都道府県別では最多の大分県が92・3%だった一方、最少の岩手県は23・6%で、地域差が大きいことが課題となっている。京都府は46・1%、滋賀県は52・0%。

     文科省は、新型コロナの影響で休校しても、児童生徒が自宅で受けたオンライン授業を正式授業と認定する特例措置を設けている。4月からは、他の感染症や災害時にも適用を拡大する方針だ。


    研修が「勤務校にいたまま受けられる」のがメリットだそうだが、研修センターなどに行く時間が息抜きになっているとするなら、勤務校で行われる研修はよけいに息が詰まるものになる可能性はないか。少なくとも出張の交通機関利用時間を「休憩」として使えるようにするぐらいの配慮があっていい。「オンライン授業などできません!」と言ってみるのもいいかもしれない。採用されたときには想定されていなかったことなのっだから、雇用契約違反にあたると主張してもおかしくないはず。


    1月13日 政府 地方国立大学22年度定員増へ

     政府は、最短で2022年度から地方国立大の定員増に踏み出す。進学や就職を機に地方の若者が都市部へ流出するのを食い止め、東京一極集中是正につなげる狙い。ただ少子化による学生減少で地方大の経営環境は厳しさを増しており、国立大に学生を奪われる形の私立大からは不満の声が上がる。政策への評価は二分したままだ。

     「若者の地方定着を図るため、魅力ある学びの場をつくり、地域の産業振興と人材育成を推進する」。政府は昨年12月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改定で定員増を盛り込んだ。少子化を理由に認めていなかったが、方針転換した。

     対象は東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)以外の国立大。地元産業界や他大学との連携など、文部科学省が定める要件を満たす大学を特例として認める予定だ。

     転換の背景には、止まらない一極集中への危機感がある。企業の地方移転や個人の移住促進に取り組んできたが、19年の東京圈への人口流入を示す「転入超過」は14万6千人(外国人含まず)にまで拡大。このうち15〜24歳が70%超を占め「若者に的を絞った対策が不可欠」(政府関係者)と判断した。

     文科省内には18歳人口の減少に加え、公私立大の経営への影響も大きいことから「安易に定員増を認めるべきではない」(幹部)との慎重意見もあった。しかし萩生田光一文科相は、閣議決定に先立つ政府の会議で「地域に必要な大学はどのようなものかしっかり議論した上で、果たすべき役割があるなら認める」と発言。地方創生の観点から賛同した。

     国立大側はこの決定を歓迎している。地方では大学進学者の受け皿が都市部に比べて少なく、人材流出が悩みだ。大学が2校の島根県では、入学定員計約1600人に対し、大学に進学する若者は約2800人。流出を食い止められていない。

     島根大の秋重幸邦理事は「県内産業が必要とする人材が十分に育成できていない」と語り、定員増に期待を寄せる。国立大学協会も評価の姿勢を示した上で「費用は国がしっかり予算措置してほしい」と注文を付けた。

     一方、私立大の受け止めは厳しい。学生数減少を背景に約3割が定員割れするなど、とりわけ地方の中小私立大は経営環境が悪化。地域によっては国立大の定員増が死活問題となりかねない。

     約400校が加盟する日本私立大学協会は、地方の私立大を卒業した若者は地元で就職する割合が高いと指摘。「地域人材の定着で中心的な役割を担う私立大をむしろ積極的に支援すべきだ。拙速な定員増は高等教育全体の在り方に混乱を来す」と反発する。

     政府が大学運営に横やりを入れることへの不信感も根強い。折しも、東京一極集中是正を目的に18年度から10年間、東京23区の大学の定員増を規制する法律が施行されたばかりだ。

     関東地方の大学が比較的多く参加する日本私立大学連盟は、東京への人口集中が加速する状況を踏まえ「23区規制による集中是正効果は、ほぼないと言ってよく、規制は見直すべきだ。政策効果の検証とエビデンス(証拠)に基づいて議論してほしい」と訴えた。



    1月13日 市・緊急事態宣言 保育所は通常運営

     京都市は12日、新型コロナウイルス対策本部会議を開き、京都府内に緊急事態宣目が再発令された場合の対応を確認した。保育所や放課後児童クラブは通常通り開所し、劇場や運動施設など市所管施設は府の依頼に応じ、営業時間の短縮やイベントの人数制限を実施する。

     保育所や放課後児童クラブなど児童福祉施設は、昨春の宣言発令時に保護者に利用自粛を求めたが、今回は通常通りの運営を続ける。ただ、利用者や職員が感染し臨時休所になった施設が6月以降で78力所(うち直近2ヵ月は38力所)に及ぶことから、各家庭にチラシを配布して感染予防策の徹底を呼び掛ける。

     ロームシアタ京都や京都コンサートホール(左京区)、ハンナリーズアリーナ(右京区)といった市所管施設は、営業時間を午後8時に短縮。開催イベントは収容率50%、人数上限5千人とした上で実施する。市立図書館や市京セラ美術館は、以前から営業時間が短いため宣言発令に伴う大きな変更はないという。

     門川大作市長は会議で「みなさんには大変な負担をかけるが、ともに命と健康、暮らしを守るため、歯を食いしばって乗ぴ越えていきたい」と呼び掛けた。 


    市教委一斉休校せず

     京都市教育委員会は12日、新型コロナウイルス感染拡大を受け京都府に緊急事態宣言が発令された場合でも、市立学校・幼稚園は一斉休校しない考えを市の対策本部会議で明らかにした。感染対策を徹底した上で教育活動を続ける。

     市教委によると、教育活動の継続に当たり、音楽の合唱や家庭科の調理実習、体育での密集する運動など感染リスクの高い活動は中止する。部活動の場は原則校内にとどめ、息を激しく吐き出すことを伴う運動などは制限する。

     一斉休校をしない理由について、児童生徒の感染の9割以上が家庭で起きており、学校では学級閉鎖やオンライン授業などで一定の感染拡大防止と教育活動が両立できているとした。文部科学省は緊急事聾宣言が出た場合でも一斉休校の要請をしないことを表明している。

     市教委は「一斉休校は社会活動全体をストップさせなければならないような状況に限り検討する」としている。



    1月9日 府教委 府立校一斉休校行わず

     京都府教育委員会の橋本幸三教育長は8日、国が新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言を府に発令した場合の府立学校の対応について、大きな状況の変化がない限り昨春のような一斉休校は行わない考えを示した。

     文部科学省もすでに緊急事態宣言が出ても小中高校と大学に一斉休校は要請せず、16日から始まる大学入学共通テストも予定通り実施すると決めている。

     府内の公立学校(京都市立を除く)での児童生徒と教職員の新型コロナ感染は、昨年12月が46人、今月は7日までで21人に上る。橋本教育長は「ほとんどは家庭内感染。授業で広がった例はほとんどない」と述べた。また府立実同の入試も日程通りに実施するとした。



    1月9日 京都市 成人式予定通り実施

     京都市は8日、「成人の日」の11日に予定する成人式について、実施する方針を明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言が再発令された東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県に住む新成人49人には、参加を自粛するよう要請した。

     同市の今年の新成人は約1万5千人。式典は左京区の「みやこめっせ」と「ロームシアタ京都」の2会場で、感染予防策を講じて計4回開催し、計約7300人が参加を予定する。

     今年の成人式を巡っては、さいたま市など宣言が再発令された首都圏の自治体が相次いで中止を決定。また京都、大阪、兵庫の3府県が9日に政府に宣言発令を求めるため、急きよ大阪市と神戸市も延期を表明した。

     京都市は、宣言地域の横浜市、相模原市などが式典を実施することも踏まえ、開催を決めた。ある市幹部は「宣言地域でもイベントや施設利用の自粛要請はない。既に7千人から参加申し込みがあり、延期した場合の開催時期や人の集まりなども考えた上でやりきる判断をした」と説明する。

     門川大作市長は取材に対して「一生に一度の成人の日を市民ぐるみでお祝いする。感染防止対策を徹底し、(参加者には)一人一人の命を守る行動をお願いしたい」と述べた。


    政治家の発するメッセージにほとんど重みがなくなっている現状で、「一生に一度の成人の日を市民ぐるみでお祝いする」という市長。1都3県に住む新成人には出席を自粛。ここに矛盾はないのか。


    1月9日 未来の学びを作る好機

     新型コロナウイルスを経験した後の学校や教育はどうあるべきか。京都大教育学研究科の石井英真准教授(教育方法学)はさらなる授業の進め方の加速化を危ぶむとともに「集団の中で子どもたち一人一人の良さが尊重され、生きやすい学校を目指していくべきだ」と提言する。(三村智哉)

     ―新型コロナは学校現場にどう影響したのか。

     「コロナは各国の強みや弱みを映し出した。学校も同じだ。一斉休校によって、学校で顔を合わせて生活する意味が再確認された。また保護者が子どもを預けられなくなり経済的なマイナスも大きかった。逆に、なくてもいい慣例などにも気付いた。学校で当たり前だったことが問い直された。これからは一人一人が生きやすい社会にしていく。それを学校で追求するのが未来の学びだと思う。今後は日本の学校の強みと弱みを考慮して、どう学校の活動を組み替えていくかが問われる」

     ―組み替えを行う際のポイントをどう考えるか。

     「日本の学校で蓄積されてきた良さまでなくさないようにすることだ。最近はオンライン学習が注目され、小中学校で1人1台配備されるコンピューター端末を使ってその子のレベルに合わせた問題を解くなど『個別最適な学び』を目指す学校が増えている。個人の能力を高め、先に進める子は進む発想だが、それではクラスの中で分断を生む。日本の学校は学級の協働性を大切にしてきた。もっとみんなの中で個性を生かし、光らせることを目指した方がよい」

     ―具体的には。

     「英語学習を例に挙げれば、得意な子を別のクラスで教えるのは個別化の発想。それではその子の個性を生かすことにならない。海外の姉妹校に自校を紹介する授業で、英語が苦手な子は手作りの手紙を書き、得意な子は校歌を英訳するなどそれぞれに合わせて参加すれば、子どもの持ち味が認められ、クラス全体のレベルも高まる」

     ―小中学校で配備されるコンピューター端末はどう生かせばよいか。

     「遠隔学習ができる機能が学校に増設されたと考えればよい。オンラインで子ども同士がつながりを持てば、自分たちで相談して学ぶことができる。また、これまで救えなかった子を救うこともできる。学校に行かなくても学ぶことができれば不登校の概念が変わる」

     ―昨年6月の学校の再開時、分散登校となったタイミングで通学できた不登校の子が多数いた。これはもう少し学校がスローになった方が良いということではないだろうか。

     「コロナが出したメッセージは『スロー』だが、実際に起こったのはさらなる加速主義だ。それは端末を使った個別最適な学びに端的に表れている。しかし日本は『塾歴社会』と呼ばれるほど、この10年ほどで塾に通う割合が高まった。塾や学校が各教科を前倒しで教科を教え、最後は受験対策に時間を費やしている。ただその結果大学に入った子が良い成果を出すとは限らない、と多くの大学関係者から聞く。これ以上学びを加速させても質は上がらない」

     ―コンピユーター端末が配備されると、前日に自宅で予習して授業は復習や応用学習をする『反転学習』が進む、とも言われているが。

     「予習ができても授業で何をするかが問われる。予習をして、さらに授業では間口の大きい問いを設定し、みんなで学びを深めることができれば効果はあるが、授業と自習の裏表を変えただけでは意味がない」

     ―コロナ禍では、学校で感染者が多数発生して地域とあつれきを生んだり、修学旅行など行事の実施を巡って保護者と学校が対立したりする事例が見られた。

     「学校で先生がなぜ生きづらいかというと、保護者が消費者感覚で教育を見ているためだ。学校から教育サービスを受けているとの意識が強まっている。休校中、オンライン授業をしたかどうかで学校を査定するなどしている。ただ、それは不幸だ。そのエネルギーがあれば学校と対話し、できることを考えた方がよい。学校はこれまで丸抱えしすぎていた。保護者や地域が学校に参加し、みんなで助ける意識が大切だ。学校ももっと困り事を外に出し、助けを求めた方がいい。今はみんなで学校のことを考えようという流れをつくる好機だ」


    桂川中見直しプラス面 今後標準に

     感染者が多数発生した学校もこれからの教育について模索を続けている。

     京都市西京区の桂川中では昨年9月に新型コロナウイルスの感染が広がり生徒や教員ら計24人の陽性が確認された。「感染拡大の不安の中、教員たちはどうすれば平常に戻せるか一生懸命考えた」と徳地守校長は振り返る。

     学校は、休校や学級・学年閉鎖を経てようやく再開した。その後、学習の遅れを取り戻すため1日7こまの日を増やし、土曜の授業も取り入れた。

     昼食時には生徒に手洗いの後、手指消毒までさせるなど校内での感染予防を徹底する。徳地校長は「学校で最も大事なことは生徒の命を守ること。今後、これだけ対策をしていたから感染者が出てもこの程度で収まったと言えるようにしたい」と強調する。

     その上で「学校は学力をつける場でもあり、人と人がつながり成長する大切な場だと感じた。子どもたちの優しさも再認識した。コロナで起きたことは全てマイナスではない。授業や行事を見直し、良かった点はこれからの標準にしていけないか考えている」と語る。


    教育をスローに

     昨年6月、新型コロナウイルスの影響で一斉休校していた小中学校が再開し、分散登校となったタイミングで不登校の児童生徒が通学できた。そんな話を昨秋以降、教育委員会や不登校のサポート団体など複数の人から聞いた。

     大人数の教室には足が向かないが、少人数なら行くことができる。午前中だけで授業が終わるのであれば学校に行ってみたい。子どもたちは、そんな気持ちになったのだろう。

     話を聞いて思ったのは教育をもう少しスローにした方が良いというメッセージだったのでは、ということだ。

     不登校の要因はさまざまだが、一つには学校での学びにしんどさを感じていることがある。「勉強の量や時間が多すぎて「進み方が速い」「みんなで一緒に学ぷごとが苦しく、付いていけない」。そんな不安が分散登校で解消されたのだとすれば、学校はもう少し勉強に余裕を持たせたり、一人一人の学びに配慮したりすべきだという示唆が込められていたのだと思う。

     最近、ある教育委員会の幹部からこんな意見を聞いた。「もう受験のための勉強ばかりするのはよくない。授業を午前中で終わらせ、午後は自分が好きなことを学ぶような学校があってもいいんじやないか」。教育現場でも受験対策一辺倒から脱却し、やりたいことを見つける、それを支える教育に変わるべきだという問題意識は着実に広がりつつある。

     学校は現在、小中学生に1人1台配備されるコンピューター端末の活用や新学習指導要領への対応に追われている。しかしコロナ禍で示されたメッセージと向き合わなければ、子どもたちの生きづらさは残り続ける。(三村智哉)



    1月6日 ブレイディみかこ 違和感を忘れたくない

     新型コロナウイルスが格差と分断にあえぐ各国を揺さぶった。生活者として英国社会を見つめてきた在英ライターのブレイディみかこさんは、年の初めに何を思うのか。

     イギリスが国民投票でEU離脱を選んだのが2016年。アメリカではトランプ大統領が当選しました。メディアは何でそんなこと起きるんだ?って驚きましたよね。でもトラックの運ちゃんをしている連れ合いや彼の友だちと話すと変化が分かる。その前年には裕福な人が集まるカフェにペンキが投げられ、貧しい人がデモをした。「右対左」じゃなく「上対下」でいがみ合う時代になったのだと実感しました。

     EU離脱だけでも大ごとなのに、それを凌駕するのが新型コロナ。この3年ほどの出来事をまとめた新著「ブロークン・ブリテンに聞け」(講談社)を読み返すと、こんなに激動の時代はないんじゃないかって思う。

     EU離脱には労働者階級が多く投票し、後先を考えないって、ばかにされた。でも、コロナでは労働者階級に頼らざるを得ない。ロックダウン(都市封鎖)でも保育士とか教員とか医療関係者、ごみ収集などのキーワーカー(基幹労働者)は普通に仕事をしました。

     キーワーカーに日が当たるのはいいけど、彼らに拍手し、窓に国旗をはためかせる行為は不気味でした。助け合いの英国精神で頑張ろう、みたいなナショナリズム。キーワーカーには移民も多く、彼らがコロナ禍で亡くなったことも忘れてはいけない。美談で終わらせられないんです。

     19年刊行の「ぽくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で、息子が通う中学の多様性を重んじるリベラルな教育を紹介しました。でも同性愛を授業で扱った別の学校では、イスラム教徒の親が抗議の声を上げたんです。左派は移民を包摂しろと言い、移民は「その方法は嫌だ」と言う。違う人たちが一緒に生きようとすると、困ったことが起きる。多様性には分断がつきもの。もめるのも当たり前。物事には常に両面があるんです。

     昨年、急逝した人類学者デイビッド・グレーバーは「ケアをし過ぎる」ことが労働者階級の「呪い」だと言いました。労働者は歴史的にみれぱ、工場で働くより金持ちの「ケア」をする使用人がほとんど。顔色をうかがい、こうしたら相手が喜ぷだろうということをする。他者をケアする伝統が骨身に染みている。緊縮財政で生活が痛めつけられても「お上も大変だろう」と考えてしまう。  彼の指摘は保育士でもある労働者階級の私にはぐさっときてつらかった。労働者が重んじるエンパシー(共感)も良い面と悪い面があります。

     キーワーカーが職場に向かう姿は戦場に赴く兵士のように美しいけど、彼らを国旗と拍手で送り出すのは全体主義につながる。コロナ禍では、不条理で滑稽なことに従わざるを得ない場面が増えました。私はその違和感を忘れたくありません。


    ブレイディみかこさんの著作。『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)。『ワイルドサイドをほっつき歩け』(筑摩書房)。


    1月6日 府教委 大学進学率、5年連続全国1位

     昨年3月に卒業した京都府内の高校生(国立、公立、私立)の大学進学率は67・8%(前年度比1・9ポイント増)と過去最高となり、5年連続で全国1位だったことが5日までに分かった。府教育委員会は「大学の多さが影響している」とみている。

     卒業者数は前年度比699人減の2万2541人で、短大などを含めた大学進学者数は同25人減の1万5283人だった。就職者は1864人で、就職率は8・3%だった。

     大学進学率の全国平均は55・8%で、2位は東京都、3位は兵庫県、4位は大阪府、5位は広島県だった。京都府の大学進学率について府教委は「京都や大阪など近隣に大学が多く実家から通いやすい環境にあることや生徒の頑張り、高校の指導が要因にあるのではないか」と分析する。

     文部科学省が実施する学校基本調査の確報値として府が発表した。例年は毎年夏に速報値が出されていたが、2020年度は新型コロナウイルスの影響を受けて確報値のみとなった。


    大学進学率が上がるのは教育への関心が高いとみるのか、あるいは将来不安のためのモラトリアムなのか定かではない。いずれにしても大学は養成したい人材がどんなものなのかをもっと明確にすべきだろう。「〇〇資格」や「英語でグローバルに」になどのキャッチコピーだけではなく。


    1月5日 加古川中2いじめ自殺 SOS教員何度も黙殺

     兵庫県加古川市立中2年の女子生徒が2016年にいじめを苦に自殺した問題で、生徒のSOSやいじめの兆候を学校の教員が何度も黙殺し、対応を怠っていた実態が明らかになった。共同通信が4日までに入手した、非公開部分を含む第三者委員会の報告書全文に記載されていた。

     学校の対応を巡っては、生徒の部活動で顧問らがいじめの存在を示すメモをシュレッダーにかけ、第三者委に破棄したことを明かさなかった問題も判明。遺族は損害賠償を求め市を提訴している。

     17年12月作成の報告書の非公開部分によると、いじめの始まりは小学5年。女子生徒が嫌がるあだ名が付けられ、無視が始まった。15年に入学した中学でもあだ名は浸透。クラスのムードメーカーが無視や悪口を率先し、他の生徒も逆らえなかった。3学期にはあからさまに無視され、「ミジンコ以下」と書かれた紙を渡された。

     部活動でも陰口や仲間外れが並行。生徒は回11月、母親に「部活をやめたい」と訴えた。いじめを把握したはずの顧問らは部員同士のトラブルとして片付けた。

     16年4月、2年生になりクラスが替わっても、いじめは続いた。生徒は孤立を深め、夏休み明けの9月、命を絶った。担任に提出するノートに1年の3学期ごろから「しんどい」「だるい」との記述を繰り返したが、1、2年時の担任はいずれも「部活や勉強についてだと思った」といじめとの認識を否定した。

     16年6月のアンケートで生徒は「陰口を言われている」「無視される」などの質問に「あてはまる」と回答した。「のびのびと生きている」「生活が楽しい」には「あてはまらない」と答え、判定結果は「要支援領域」だった。最も注意を要するとの警告を担任は保護者に明かさず、三者面談では提出物の遅れを指摘しただけだった。

     報告書は「いじめは明白だったにもかかわらず、見過ごされた」と認定。市教育委員会は「関係者への配慮」を理由にいじめの内容や経過を非公開とし、「学校が対応すれば自殺は防げた」など指摘の一部を公開するにとどまっていた。


    「隠蔽体質」といわれてもしようがないような事態。このケースで「多忙」を理由にすることはできないが、どうして学校は事実を公開して反省すべき点を明らかにできないのだろう。


    1月5日 文科相 共通テスト実施

     文部科学省は4日、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が出ても、小中高校と大学の一斉休校は要請せず、16日から始まる大学入学共通テストは予定通り実施することを決めた。本格化する入試シーズンを前に、影響を最小限に抑える考えだ。萩生田光一文科相が5日午前に記者会見し、正式表明する。

     萩生田文科相はこれまで一斉休校に否定的な考えを示し、共通テストは「厳格な予防策を講じた上で実施する」と明言していた。入試では受験生にマスク着用を義務付けるなどして感染対策に万全を期すとしており、西村康稔経済再生担当相も4日の記者会見で同様の考えを示した。

     共通テストには53万人以上が出願。16、17日の第1日程の他に、一斉休校による学習遅れがある現役生向けに30、31日の第2日程が設けられた。第2日程を欠席することになっても、2月13、14日の特例追試験を受けることができる。

     文科省は、試験室では座席間の距離を確保し、―科目終了ごとに10分程度の換気をするなどの対策を規定。濃厚接触者と認定されても無症状などの条件を満たせば別室受験が可能とした。体調不良による追試験は従来の大学入試センター試験より幅広く認める。

     2月1日からは私立大の入試が本格化し、同25日に国公立大2次試験の前期日程が始まる。今後の感染状況によっては試験日を延期したり、会場を安全な地域に変更したりすることを検討している大学もあり、直前に再確認が必要だ。


    昨年の「一斉休校」の総括ができていない中での文科相の発言に重みがあるようには思えない。1年間の経験は政権に何を残したのかはなはだ疑問に感じる。


    1月5日 厚労省 コロナ禍解雇7万9千人超

     厚生労働省は4日、新型コロナウイルス感染拡大に関連した2020年の解雇や雇い止めは、累計で7万9608人に上ったと明らかにした。見込みも含む。経営に深刻な打撃を受けた製造業や飲食業が中心となっている。このうちアルバイトやパートなど非正規労働者が少なくとも3万8千人を占めた。全体の約半数に当たり、非正規雇用が受ける影響の大きさが鮮明となった。

     全体を見ると、最も多かったのは5月の1万2949人で、9月までは1ヵ月当たり1万人前後で推移。10月以降は増加ベースがやや鈍化した。業種別では、当初は4月発令の緊急事態宣言に伴う外出自粛要請の直撃を受けた宿泊業のほか、バスやタクシーなど旅客運送業が中心だったが、夏以降は製造業や飲食業での増加が目立った。

     都道府県別では、東京都や大阪府など大都市部が多いが、観光業が主要産業の沖縄県など少なくとも24都道府県で千人を超えた。

     非正規労働者は5月下旬から集計を開始。6月末にかけて1ヵ月で1万人ほど急増。秋になり増加ペースは落ち着いたものの、新たな仕事が見つからない人も多い。こうした状況を受け支援団体が中心となって生活相談会や炊き出しが実施された。

     冬場に入ってからの感染再拡大で、経済活動が停滞。今後、さらなる雇用情勢の悪化も予想される。


    コロナ禍で多くの人たちが大変な思いを余儀なくさせられているのだが、適切な支援が届いていない。「GoToキャンペーン」はそれなりの対策なのだろうが、一番しんどい部分には何が届けられているのだろうか。再度の「10万円個人給付」が必要ではないのか?