h2103
 
  • 「情報」出題.25
  • 交歓会見直しを.28
  • データ一元化で子の貧困把握.29
  • なぜ急ぐ、デジタル法案採決.30
  • 新科目「公共」議論を重視.31
  • 3月31日 高校教科書検定 新科目「公共」議論を重視

     高校の新学習指導要領の目玉で、政治や社会への関わり方を学ぶ新科目「公共」の教科書は、リアルな社会問題を提示して議論を促す工夫が目を引いた。一方、受験対策を意識した「知識詰め込み型」から脱却しきれていない部分も。理念と現実がせめぎ合う新しい教科書は、生徒たちにどんな学びを提供するのか。

     「なぜ差別入試を行ってきたのだろうか」。教育図書は2018年に発覚した医学部不正入試問題を4ページにわたり特集した。女性を不利にする得点操作という高校生の関心が高いニュース。家事や育児を女性の役割とする固定観念が根強く、医療現場の過酷さも相まって女性が敬遠されがちだったと丁寧にに背景を説明した。

     最後は「大学入試で女性が優遇されるとしたらどうか。男性、女性の立場か以議論してみよう」と問い掛け、逆の視点からも考えさせた。教育図書の担当者は「ジェンダーの問題を掘り下げられるようこだわった。実際の授業が楽しみ」と胸を張る。

     各社とも選挙権年齢の引き下げや、成人年齢が18歳になることを意識し、政治参加を促す模擬選挙や契約トラブルの回避策などに言及。ワクチン接種の優先順位や同性婚といった今日的テーマも積極的に採用」た。

     「公共」の創設は、12年衆院選の自民党政策集に盛り込まれたのがきっかけだ。当初は社会規範を教える「高校版道徳」の面が強調されたが、18歳選挙権が実現する流れに沿い、中教審の議論で「社会の課題を多角的に考察、議論し解決につなげる力を養う」との目標を掲げることで落ち着いた。「保守色の強さを懸念した文部科学省が穏当なものになるよう動いた」(教育関係者)と見る向きもある。

     「多角的考察」の目標は教科書に反映されたのか。核兵器禁止条約について「日本の不参加をどう考えるか」と問う内容が合格。文科省が政府見解の正確な記述を求めるのが通例の領土問題でも、相手国の主張を調べるといった幅広い考察や議論を勧める記述に意見は付かなかった。

     編集関係者の一人は「国同士で論争し解決できていないようなテーマこそ多角的に取り上げる意義がある」と強調。「(文科省から)修正を求められると思っていたので拍子抜けした」とも語った。

     生徒の主体的な学びを引き出す意欲的な試みが見られる一方、現行教科書のように用語を羅列する形式を踏襲した記載も目立つ。「学校現場の要望を反映させた。従来とかけ離れた教科書にすると採択に影響が出る」。教科書会社関係者は口をそろえる。

     現場が気にするのは大学入試の動向だ。大学入試センター試験の後継として今年から思考力・判断力・表現力を重視する大学入学共通テストが導入されたが、細かい知識を問う従来型の出題が消えたわけではなく、私立大の一般入試を見渡すと概して出題傾向に大きな違いは生じてはない。

     新指導要領下での入試問題の変化も見通せない中、議論や探究を重視する授業をためらう教員もおり、「暗記中心の学習にも対応してほしい」との要望は根強いという。

     執筆者の大学教授はこう振り返った。「理想の教科書は生徒が考え、議論するための“資料集”だ。しかし、それだけでは現場は回らない。理念と現実がせめぎ合った結果だ」


    主権者教育に詳しい藤井剛 ・明治大特任教授の話自ら考え行動 育成課題

     「公共」の教科書は、政治を身近なものにするための工夫が充実し、選挙の仕組みや投票方法の特集を組んで丁寧に解説している。高校への苦情を解決するために生徒が地域住民と協議会を設置したり、行政に政策提案したりといった実例も豊富に取り上げており、使いこなせれば、「選挙は面倒くさい」「声を上げても社会は何も変わらない」という若者の先入観の解消が期待できる。一方、現行の「現代社会」のように用語を羅列した部分も目につき、討論や探究活動を促す内容は十分ではない。社会的な課題に対して「自ら考えて行動する市民を育てる」という、広い意味での主権者教育には課題を残したと言えるだろう。


    学校での教育実践に取り組む塩瀬隆之・京大准教授の話「教科書で教える」契機に

     従来よりも資料や写真が増え、情報が詰まっているものが多い。高校でも「教科書を教える」から「教科書で教える」という実践が、本格的に始まるきっかけになると感じる。新学習指導要領が掲げた「主体的、対話的で深い学び」の実現に向け、題材の選び方や生徒に投げかける問いにエ夫を凝らした教科書があった一方で、無理な会話で設定を複雑にしすぎたものや、事前に用意された答えが見え隠れする一問一答的な発問にとどまるものも目立つ。生徒が自ら問いを見つけるのが、本来の「主体的、対話的で深い学び」の出発点。教員も教科書から一緒に問いを探すなど、授業の変革に向けた取り組みをしてほしい。


    注目されてきた「公共」の検定は概ね評判はいいようだ。「主体的、対話的で深い学び」はグローバル化(PISA調査)の影響も大きいだろうが、大学入試との関係で現場がどう対応するかまた学生がどう受け止めるかが問題。ただ、労働について働く側の権利が守られる社会かどうかの問いかけは少ないようだ。


    3月30日【プリズム】 なぜ急ぐ、デジタル法案採決

     政府・与党がデジタル改革関連法を近く衆院内閣委員会で採決する。

     関連法はデジタル庁創設や個人情報保護法の改正など63本もの法案からなる。今月9日に審議入りしたばかりだ。

     この間、議論は深まるどころか、疑問点が次々と浮かび上がっている。

     現在三つある個人情報保護制度を国基準に統一することは、地方に関連する重要論点だが政府は説明を尽くそうとしない。

     個人情報保護のルール化は国より自治体が先行し厳密に実施してきた。機微に触れる情報を扱うから当然だ。多くの自治体は個人情報を扱う端末の外部接続を禁じている。

     関連法ではこれらを国のレベルに統一するが、自治体独自の取り組みは可能か。平井卓也デジタル改革担当相は「想定していない」とするが、菅義偉首相は京都新聞社の質問に「地域の特性に応じ必要な場合には独自の措置も可能」と答えた。どちらが正しいのだろう。

     参考人質疑では山田健太専修大教授かデジタル化の前提として「情報公開の徹底」を揚げた。日弁連の三宅弘副会長は、警察が本人同意なしに個人情報を収集できる日本の現状を、ドイツの裁判官が「野蛮」と評したことに言及した。

     政府はこうした指摘を受けても、個人情報がどう扱われているかを本人に公開することには消極的だ。

     情報公開に後ろ向きな政府に個人情報が集中する。やはり、不気味な 感じが拭えない。(日比野敏陽)


    記者と同じように「デジタル社会」への危惧を抱く人は多いだろう。自身の情報がどのように処理されているのかを知ることではじめて信頼が生まれる。GoogleやAmazonが閲覧履歴をビッグデータたーとして蓄積していることへの不安をかんじるが、それ国家権力の手によるとなれば一層の不安を感じzるを得ない。解散前に「成果」とするような姑息な国会運営は避けてもらいたい。


    3月29日 政府 データ一元化で子の貧困把握

     政府は、データペース(DB)を活用した子どもの貧困対策を自治体に求める方針を固めた。自治体が保有する生活保護の受給状況や、学校にある学力、体力、給食費滞納といった、さまざまな情報を一元化し、問題を抱えながら声を上げられない子どもたちを見つけ出す仕組みの導入を促す。客観的なデータにより外からは気付きにくい家庭の問題や変化を早期に発見し、支援を届ける狙い。

     新型コロナウイルス感染症による雇用悪化で生活が苦しい世帯が増え、子どもへの影響も懸念されている。手助けなく孤立する子どもの増加や家庭での虐待にもつながりかねず、対策は急務だ。

     一方、各自治体で教育委員会や、市区町村の福祉、子育て担当部門などにデータが分散して保管され、支援が必要な子どもが見落とされているとの指摘が出ていた。

     状況打開のため、自治体が縦割り行政を解消して情報を一元管理し、学校、民間団体などと連携してワンストップで子どもの支援や見守りに取り組んでもらう。

     DBで支援が必要と判断された子どもには、SOSが出されていない段階から学校での見守りを強化。自治体から利用可能な支援制度や、NPOが実施する子ども食堂や学習支援の場を各家庭に案内する。サポートが途切れぬよう、進級や進学、引つ越しの際の情報引き継ぎにも役立てる。

     まずは今月から、各自治体で子どもの貧困に関してどのような情報を現在保有しているか、調査を開始。その上で、どのような情報が子どもへの支援の必要性判断に有効かなどを専門家の意見を交えながら検討する。2021年度中にDB化すべき項目などを自治体に示し、応用してもらう。

     既に独自のDBを導入している自治体もあり、参考にする。


    先行の箕面市で実績

     子どもの貧困対策を巡っては、教育や福祉の現場で、縦割り行政の弊害で支援が必要な子どもの存在が見落とされるとの指摘が出ていた。既に子どもに関する情報をデータベース(DB)化して活用する大阪府箕面市では、実際に支援の網から漏れていた116人を発見する実績も。ただ部署をまたいで情報を共有するには個人情報保護策も必要で、全国普及の課題となりそうだ。箕面市では2016年度にDBを整備。子ども施策担当部門の教育委員会との統合や、個人情報保護条例の改正により情報集約が可能となっている。生活保護の受給状況や、虐待相談の有無、学力、健康状態といった情報を一元管理。個人情報保護のため、情報にアクセスできるのは専門部署だけとした。

     DBでは、18年後半時点で市内の小中学生約2千人が見守りや支援が必要だと判定。そのうち重点支援が必要な子どもは462人で、学校で既に支援対象としていたのは346人。残りの116人を客観的なデータから見つけることができた。担当者は「支援が必要なのに見逃されていた子どもの数は減ってきた。貧困の連鎖解消を進めたい」と話す。

     他にもDBから、学用品代などの補助が受けられる制度の受給要件を満たしているのに受け取っていない家庭を見つけ、制度案内につなげたケースもあった。

     全国的なDB導入に当たっては、教育委員会と、市町村の福祉部門など、異なる部署間でのデータ共有が課題となる。内閣府の担当者は「どのような方法であれば自治体が使いやすい仕組みにできるか、有識者の意見を聞きながら検討したい」としている。


    「データの一元化」で様々な側面がみえてくることや給付に対しての迅速性が向上する利点がある。しかし、個人情報の管理がどこまで厳格に守られるかも大きな課題。デジタル化を前提とする「スマート・シティー」構想が公的なデータを民間が使用できるという作りになっていることの危うさはないのか、疑念がぬぐえない。


    3月28日 市PTA連絡協議会 交歓会見直しを

     京都市小学校PTA連絡協議会は26日までに、各支部で開催しているコーラスやバレーボールなどの交歓会について、2021年度は在り方を見直すよう各支部に提案した。大会の運営や参加が保護者の負担になっているとの指摘があるため、新型コロナウイルスの感染拡大を機に検討を促すことにした。

     交歓会の多くは大会運営の当番を各PTAの輪番制にしているほか、出場のため強制的に参加者を募ることもあり、負担の重さが課題になっていた。20年度はコロナ禍で多くの開催が見送られたほか、21年度は市による経費の予覚措置が財政難でカットされることを受け、今月中旬に協議会として各支部への提案を決めた。

     今後、交歓会を実施すると判断する場合は支部活動としてでなく、希望する有志で運営するなど強制感や負担感がない方法への変更も提示していく。すでに左京南支部が21年度はコーラス交歓会の中止を決めるなど見直しの動きが出ているという。

     同協議会の大森勢津会長は「保護者がしんどさを感じれば、PTA離れにもつながる。協議会から提案することで各支部が考えることにつながってほしい」と話している。


    PTAの自律的な活動を市はどのように支援してきたが問われることになる。学校評議会や地域の自治連合会などの末端組織としての役割しか持たされていないなかで、参加する人たちの達成感は少ない。教育委員会は地域住民の役割をどう考えるのかを改めて議論する必要があるだろう。


    3月25日 大学共通テスト 「情報」出題

     2022年度からの高校の新学習指導要領でプログラミングを学ぶ「情報I」が必修となるのに合わせ、25年の大学入学共通テストから「情報」が出題される。関係者の取り組みが実を結んだ形だが、情報の導入から20年近くになる今も、公立高担当教員の5人に1人ほどが正規の専門免許を持たない。学習内容の高度化に対応し、良い授業をできるか。高校の情報教育は正念場を迎える。

     「教員も生徒も姿勢が変わる」。長年、情報の教科書作りに携わる編集者は共通テストでの出題を喜んだ。過去には別教科の時間に充てられた未履修が発覚するなど、「どうしても軽んじられてきた」と語る。

     大手予備校、河合塾教育研究開発部の小松原潤子さんによると、今春入学者の大学の一般入試で「情報」を出題したのは、高知大や慶応大など11校。東京農工大や愛知教育大、明治大なども採用した時期があったが撤退した。デジタル社会の進展でその重要性は一段と増す。小松原さんは「これからデータ活用が一層重視される。経済学部など文系でも広がるかもしれない」と期待する。

     現行指導要領でも「情報」は必修だが、プログラミングをしない科目が選択可能。来春の新1年生からはプログラミングやデータ分析をしっかり学ぶ「情報I」を必ず履修することになるが、全国の高校で対応できるかは心もとない状況だ。

     昨年5月時点で文部科学省が都道府県と政令指定都市の教育委員会に聞いたところ、情報を教える高校教員計5072人のうち、情報の免許(10年の特別免許を含む)を持つのは3862人。残りは原則3年の臨時免許保持者(256人)と、免許を持たない教員が特例で教える「免許外教科担任」(954人)で、大学などで専門知識や指導法を十分に学んでいない可能性がある。地域による格差も大きく、東京都や埼玉、神奈川両県などでは担当教員全員が情報の免許を持つ一方、長野、栃木、新潟の各県では100人以上が免許外・臨時免許で教えていた。

     情報の必修単位は1年間に週2コマ程度を学ぶ2単位。今も情報の教員採用に消極的な自治体があり文科省の担当者は「国語や数学などと違い、小規模校では専門教員を配置しづらいのかもしれない」と説明する。愛知県立小牧高で情報を教える井手広康教諭(35)は共通テストへの採用に「やっと情報が世間から認められたことは評価したいが、現場では時期尚早との声もある」と話す。免許を持っていても力量にはばらつきがあり「情報Iを教えられる自信がない。担当を外れたい」と漏らした仲間もいる。

     03年度に情報が初めて必修化された際、数学や理科、家庭、商業などの教員に、15日間の講習受講を条件に情報の免許が与えられた。周囲には免許があってもプログラミングなどに苦手意識を持つ教員、他教科との兼任、非常勤も多い。現状のままでは「新指導要領に即して教え、入試対策までできる教員がどれほどいるのか」と危ぶみっつ「共通テスト採用を情報教育全体が変わるきっかけにしなければいけない」と強調した。


    プログラミング教育が小学校でも必修となったことを受けての措置だが、ならんかのアルゴリズムを学習することとプログラミング的思考ということとの距離は相当あるように見える。共通試験でどちらを重視するのかをはっきりさせないと現場は混乱。結果的には、大学受援のためのプログラミング教室が繁盛するということになりかねない。すでに大小の教育産業が新たな商品を投入して顧客の争奪戦を展開している。経済の格差、都市と農村の格差はますます広がる可能性もあるが、「身の丈に応じた」資金を投入するのが家庭の役割かと感じてしまう。


    3月20日 京都市 教育長は稲田氏

     京都市の門川大作市長は19日までにい新しい教育長に稲田新五教育政策監(58)を起用する方針を固めた。26日の市議会本会議に人事案を提案する。同意を経て、門川市長が任命する見通 し。 2期6年務めた在田正秀教育長の任期満了に伴う人事。任期は4月1日から3年間。

     稲田氏は京都大法学部卒。1987年に京都市教育委員会事務局に採用され、総務部長、教育次長などを経て2020年から現職。


    長年事務方からの教育長が続いている。市の教育政策が現場から遠いのはそのためとの声も聞こえる。


    3月20日 市教委 看護師を教諭に

     たんの吸引など医療的ケアを必要とする幼児や児童生徒の増加に伴い、全国の教育委員会が特別支援学校への看護師の配置を進めている。京都市では、重症心身障害児の臨床経験が豊富な看護師を教諭として採用する取り組みも始め、4月から2人が市立総合支援学校2校で勤務する。児章生徒を教育と医療が一体となって支える狙いで全国的に珍しく、職種の垣根を越えた連携を目指している。  (大西幹刃

     京都市西京区の市立西総合支援学校。給食の時間に教室を訪れると、小学部1年の女子児童が胃にチューブで栄養を送り込む医療的ケアの胃ろうを、看護師から受けていた。時間や量は児童生徒によって異なり、看護師は手順を確認しながら丁寧にケアに当たる。同時に教諭がペースト状にした少量の給食をスプーンで口に運び、食べる練習もしていた。

     食後などは体調が急変することもあるため、看護師が適切なタイミングで聴診器を当て様子を確認する。同校にはたんの吸引や糖尿病のインスリン注射が必要な児童生徒かおり、5人の看護師が配置されている。

     医療的ケアの一部は研修を受けた教員が行うこともあるが、冨家直樹校長は「人工呼吸器の使用など教員では扱えないケアもあり、どの子にも教育保障するためには看護師の存在が欠かせない」と話す。

     医療技術の進歩や医療機器の扱いやすさの改善で、医療的ケアと共に生活する「医療的ケア児」は全国的に増えている。近年は障害が重複し1人で複数のケアを受けているケースも多い。京都市立総合支援学校では、たん吸引や経管栄養などそれぞれのケアを必要とする児童生徒数を合計した延べ人数がこの10年で2・5倍となった。

     京都府教育委員会が作成した「医療的ケアガイド」によると、1990年ごろから医療的ケア児の通学が増え始めた。学校で医療的ケアにどう対応すべきかが全国的な問題になり、京都市では2000年に当時の呉竹養護学校で看護師1人の配置を始めた。現在は地域ごとに設けられた総合支援学校4校に計25人が勤務する。

     近年は小中学校にも医療的ケア児が通うようになっている。京都市内には現在8人おり、保護者の教育ニーズの多様化に伴い今後も増える見込みという。

     一方、看護師の配置には課題もある。医療的ケア児の学校生活は、看護師による医療的な関わりと教員による指導が重なる部分がある。両者の役割分担が不明確になりやすく、立場の違いからスムーズな連携が取りづらいという。また看護師が学校で医療的な判断をする際に、相談できる人がいないといった悩みの声もある。

     看護師を教諭として採用する京都市の取り組みは、教員免許のない外部人材を教育現場に起用する「特別免許状」の制度を利用。今回採用した2人は、たんの吸引をしてほしい時はまはたきで伝えるよう指導するなど、主に医療的ケアを通じたコミュニケーション能力の育成に当たる。市立総合支援学校で勤める看護師の相談に乗るなど学校における看護分野の指導 的な役割も果たし、異職種がチームとなって児童生徒をサポートする態勢づくりを担う。

     市教委総合育成支援課は「今後は地域制の総合支援学校4校全てで、看護師の教諭の配置を目指したい。総合支援学校を拠点に、それぞれの地域内にある小中学校の医療的ケア児にも十分な支援を届ける体制を整えたい」としている。


    いわゆる「合理的配慮」で徐々に範囲が広がっていることは朗報である。しかし、インクルーシブ教育の広がりとはギャップがあるように感じる。普通学校に通っている障害を持つ子どもに「合理的配慮」が行えるような環境が望まれる。 数字がはある。


    3月19日 児童労働ネットワーク 児童労働を考える 国連会議

     2021年に国連が世界的な問題として国際協力を呼び掛ける児童労働撤廃を考える会議が17日夜、東京都内で開かれた。貧困国を中心にコロナ禍の影響が懸念される中、課題解決に向けた取り組みや連携の強化を利害関係者が確認した。

     児童労働は義務教育を妨げる15歳未満の労働、人身売買といった危険で有害な18歳未満の労働などを指す。国際労働機関(ILO)によると、こうした子どもは世界で1億5200万人に上り、5〜17歳の10人に1人が厳しい環境下で働く。国連は持続可能な開発目標(SDGS)で25年までの児童労働撤廃を掲げ、一年を通じて国際社会の関心を高めるために設定する国際年の21年テーマの一つに位置づけている。

     ILOや国連児童基金(ユニセフ)の関係者らはコロナに伴う学校の休校期間は貧困国ほど長く、児童労働のリスクが高まっており、世界の推計人口も増加に転じる恐れがあると指摘。政府開発援助(ODA)の拠出拡大を訴えた。

     認定NPO法人テラールネッサンス(京都市下京区)は、アフリカのウガンダで反政府軍に連れ去られた18歳未満の子ども兵、とりわけ少女兵の性暴力被害を報告。元子ども兵の社会復帰と経済的自立を促す就労支援事業の成果を踏まえ、児童労働撤廃に向けた具体的な行動を呼び掛けた。

     会議は、この問題に関わる団体でつくる児童労働ネットワークが主催し、外務省や厚生労働省の担当者、与野党国会議員らが出席した。



    3月19日 就学援助制度 コロナ禍で高まる意義

     家計が苦しい小中学生の保護者に、自治体が学用品代などを補助する就学援助制度。新型コロナウイルス禍で家計が急変した世帯も多い中、少しでも利用しやすいよう、周知に工夫を凝らす自治体が増えつつある。

     「就学援助制度ってなに?」。分かりやすい見出しと、柔らかなタッチのイラスト。北海道釧路町が作った1枚のチラシが好評だ。昨年夏、制度を周知するため小中学生のいる全世帯に配った。「コロナ禍で突然、経済的に厳しくなった保護者など、幅広い人に手に取ってほしかった」と担当者。情報の量を絞りデザイン性を高めたという。

     全国で就学援助の対象となっているのは、小中学生のほぼ7人に1人(2018年度)。ただ利用の条件を満たしているのに、制度を知らず申請しない保護者も多い。周りの目を気にして利用をためらう人もいて、情報の届け方が課題だ。

     非政府組織「セーブーザーチルドレンージャパン」は18年から、制度への要望や認知度などを主に子育て世帯にアンケート。周知の方法や姿勢には自治体間で差があり、分かりやすさを求める声も目立つたという。田代光恵プログラムー マネージャーは「文字ばかりの説明文書だけでなく、内容の工夫や媒体の多様化など改善の余地は大きい」と指摘する。

     制度の意義が高まる中、釧路町のような取り組みは広がりつつある。札幌市は1月から、かわいいキャラクターが制度を紹介する動画をサイトにアップ。平易な文章で利用を呼び掛けるのは堺市で「主に外国籍の人向けに5年前から易しい 日本語で案内しているが、最近は幅広い層への周知に役立っている」という。

     こうした変化を学校現場は、どう受け止めているのか。各地の学校事務関係者でつくる「全国学校事務職員制度研究会」の植松直人常任委員は、こう話す。「必要とする人に何とかつなげようとする新たな動き。コロナ禍の中で制度活用の機運が高まっている」。各地の事務職員の間では、手づくりチラシの配布など試行錯誤も重ねている。

     その潮流を加速させたのは、 沖縄県が17年から放送していたテレビCMだという。軽快なBGMなど親しみやすい内容で制度をPR。コンビニのレジ画面でも似た内容を流した。沖縄大の山野良一教授(児童福祉学)は「CMのインパク 卜は大きかった。制度のイメージを変えつつある」と指摘。同県の15年と18年の調査では、困窮しながら制度を知らずに利用しない人は減る傾向で、利用率は上がっている。

     周知の機運について山野教授は「就学援助を特別視せず、必要なら活用できる一般的なサービスとして、捉え始めているのではないか」と話す。



    3月17日 全国地方紙読者調査 脱原発82%

     京都新聞社などの地方紙が連携し、東京電力福島第1原発事故から10年を受けて実施した全国アンケートは、原発がある13道県からの回答が約3割を占めた。原発のない34都府県と比較すると、原発推進への賛意が多いなど一部で差がみられたが、全体的に大きな違いはなかった。

     事故からの10年間での原発に対する考え方の変化を聞いたところ「今も変わらず賛成している」割合が原発立地道県で10・2%と、非立地都府県の7・5%を上回った。ただ同じ質問でほかの項目の差は見られなかった。

     京都府と滋賀県で見ると「今も変わらず賛成している」が京都府は8・5%、滋賀県は10・0%にとどまった。「今も変わらず反対している」が京都府は41・8%、滋賀県は37・1%でそれぞれ最も割合が高く、「賛成だったが、一定程度縮小しても良いと考えている」が京都府は15・1%、滋賀県は19・4%で続いた。

     「再生可能エネルギーのみならず、原子力を含めてあらゆる選択肢を追求する」との菅義偉首相のエネルギー政策の方針についても質問。「妥当」は立地道県が16・4%、非立地都府県では13・8%とやや開きがあった。

     このアンケートでは、福島原発事故直後と比べ、日本のエネルギー政策に「関心を持っている」「やや持っている」と答えた人が計95・5%。問題に高い関心を持つ層が応じた傾向がある。京都府、愛知県、新潟県、福岡県、静岡県卜の順で回答が多かった。


    LINEを使ったアンケート調査であることから、脱原発派の人たちが応答した可能性があることからそのまま数字を見ることはできない。しかし脱原発を望む人が80%を超えるということは一定の意思表示としてみることはできる。カーボンニュートラルが原発維持の積極的「言い訳(エクスキューズ)」になっている菅政権のごまかしは見透かされているともいえる。


    3月16日 警察庁 小中高生の自殺過去最多

     2020年の小中高生の自殺者数が統計のある1980年以降最多の499人に上ったことが16日、警察庁のまとめ(確定値)で分かった。前年比100人増。年代別では10、20代の増加が顕著で前年比522人増となった。全体の自殺者数は2万1081人。前年から912人増えた。前年を上回るのは09年以来となる。女性の自殺者増も目立ち、前年比935人増の7026人だった。

     厚生労働省自殺対策推進室は「新型コロナウイルス禍で学校が長期休校したことや、外出自粛により家族で過ごす時間が増えた影響で、学業や進路、家族の不和などに悩む人が増加したとみられる」と指摘した。

     小中高生の自殺者の内訳は、小学生14人(前年比6人増)、中学生146人(同34人増)、高校生339人(同60人増)だった。女子高校生が前年と比べて60人増と大幅に増えた。未成年の自殺者数は、777人(同118人増)に上った。原因・動機では、うつ病などの精神疾患や進路の悩み、学業不振が多かった。

     全体の自殺者数のうち、男性は1万4055人(同23人減)。男性は11年連続で減ったが、女性は増加に転じた。女性が自殺を選んだ理由は、健康問題(4519人)、家庭問題(1292人)、経済・生活困窮(425人)の順に多かった。

     月別では7〜12月に前年比で増加に転じ、最多は10月の2230人(前年比691人増)。著名人の自殺が影響した可能性も指摘されている。

     都道府県別では、東京2231人(同124人増)、大阪1409人(同178人増)、神奈川1269人(同193人増)の順に多かった。

     東日本大震災に関連した自殺者は5人で、前年より11人減。地域別では福島が3人、岩手と宮城がそれぞれ1人だった。


    子どもと自殺の問題に詳しい北海道大の伝田健三名誉教授(児童青年精神医学)の話小さなSOS受け止めて

     小中高生の自殺者増加には、新型コロナウイルス禍の社会不安が複合的に影響したと考えられる。教育分野のIT化の遅れで学習機会が失われた他、自粛期間中に友達と遊べず、家族間の緊張感が高まった大もいただろう。有名人の自殺も相次いだ。孤立化でうつ状態になり、自殺を引き起こしやすい状況にあったと言える。

     大人は小さなSOSでも受け止められるように心掛け、「人に助けを求めることは恥ずかしいことではなく、勇気がいるが素晴らしいこと」と伝え続ける必要がある。大学生活でも「友達ができない」などネガティブな情報が報じられ、希望を持てないま中高生が多い。想定される学生生活やサポートの体制をしっかり示すことも重要になる。



    3月16日 日本財団 困窮児支援拠点拡充へ

     日本財団(東京)は15日、困難を抱える子どもが放課後に集う支援拠点を、現在の37力所から2025年度までに500ヵ所に増やすと発表した。コロナ禍で生活困窮世帯とその子どもを取り巻く環境が深刻さを増す中、運営費の助成などに総額500億円を投じて地域ごとの開設を促す。

     家庭でも学校でもない「子ども第三の居場所」事業と名付け、2016年から整備している。現在は20道府県で37力所に上り、京都府と滋賀県では20年度に南丹市に初めて開設された。対象は主に小学校低学年で基本は無料。週に3〜6日、専門スタッフや地域の大人が午後9時まで学習支援や食事提供に当たり、生活習慣の改善に取り組みながら自立できる力を養う。無料や低額で食事を振る舞う「子ども食堂」は開催頻度が少ないといった課題があり、より総合的な支援につなげる。

     日本財団などによると、コロナ禍の長期化でストレスを抱えた子どもが自傷行為に及んだり、保護者も精神的に不安定になり孤立を深めたりしている。親の経済力が子の学力に影響する教育格差や生活習慣の乱れ、子の孤独感は以前よりも悪化しているという。

     新設拠点は支援内容などに応じて3モデルあり、事業を担うNPO法人や社会福祉法人に対し、運営費(最長3年)や整備費を出す。助成期間終了後は自治体移管による事業継続を想定している。4月1日から助成先の公募を始める。詳細は財団のホームページで。笹川陽平会長は「地域の特性を生かしつつ子どもたちに豊かな環境を与え、力強い成長に協力したい」と話した。



    3月13日 文科省 教員免許更新見直しへ調査

     学校現場への負担が大きいと指摘されている教員免許更新制を抜本的に見直すため、文部科学省が制度の問題点を教員に尋ねる初の実態調査に乗り出すことが 12日、文科省への取材で分かった。萩生田光一文科相は同日、免許更新制を含めた教員の養成・研修の改革を中教審に諮問。夏までに文科省が調査結果を取りま とめ、議論のたたき台とする。  免許更新制は「指導力不足の教員がいる」との批判の高まりを背景に政治主導で議論が進み、「教員の資質向上」を目的として2009年4月に導入された。更新講習は10年ごとに義務付けられ、国内外の教育施策や、いじめや不登校への対応、英語教育などについて主に大学で30時間以上の講義を受ける。受講料や交通費は教員の自己負抵て。夏休み期間に講座が開かれることが多い。他の研修と内容が重複するとの指摘もある。  実態調査の質問項目は、希望通りの講習を受講できているかや、内容が費用や時間に見合っているかなどを想定。定年後に再任用される教員も多いことから、 更新制によって再任用を断念する可能性があるかも尋ねる。  制度見直しの方向性について、文科省内では、教育委員会が実施する10年経験者研修などと統合して受講回数や頻度を軽減する案がある。  ただ、情報通信技術(ICT)を取り入れた授業方法を学ぶ必要性が増している他、教員のわいせつ行為が社会問題化していることもあり「単純な講習廃止や緩和ではなく、新たな資質向上策とセットで制度改革を検討せざるを得ない」との見方が多い。


    多忙な現場 当初から不満

     自民党文教族議員らの「指導力不足教員の排除」の掛け声が発端となり、2009年から始まった教員免許更新制は当初から学校現場の不満が強かった。近年は情報通信技術(ICT)の活用や小学校での英語教育など新たな指導項目が増え、教員の多忙化に拍車が掛かる。働き方改革を迫られ、文部科学省がようやく本格的な見直しに着手する。  「膨大な仕事を抱えているのに、講習で強制的に時間を取られた」。富山県立高の50代男性教員は、免許更新制はデメリットばかりだと語気を強める。数年前に大学で更新講習を受けたが「講師の専門分野の話を聞くだけ。現場で直面する課題を踏まえた内容になっていなかった」と説明する。  男性教員は「『不適格教員』が消えたわけではない。むしろ仕事熱心な教員ほど苦しんだ』と話し、これまで制度が検証されてこなかっつたことにも疑問を感じている。  「業務時間を削減しても、更新講習に費やすなら働き方改革の意欲がそがれる」「講習が役に立っていないという声が相当ある」。昨年10月、文科省の有識者会議が実施したヒアリングでも、複数の教育委員会担当者が異口同音に問題点を指摘した。  こうした状況の改善に向けて初の本格調査に乗り出す文科省。ある幹部は教育現場から批判があることを認める一方で「指導力不足の教員が減ったことも事実だ」と成果を強調した。


    「不適格教員」ということばが広がるのは2000年ころからだ。教育改革国民会議が発足し新自由主義的な教育論議が活発になったのとおほぼシンクロしている。そのご教育基本法が改正され「愛国主義的」な方向へと教育が歩み始める。この間の特徴は従来文部行政は文部省がイニシアティブをとって実行していくということから、官邸主導で物事が進み始めたということである。昨年の「一斉休校」は明らかに官邸主導の「愚策」であったのだが、「不適格教員」を排除するための「教員免許更新」も官邸主導の「愚策」であったいえる。教員の働き方がなにかちぐはぐになって来たのは、日本の社会構造に大きな変化が生じてきたからなのであり、それを「不適格教員」を責めることで回避しようとしてきたことはやはり「愚策」であった。ちなみに、教員の過労死・過労自殺が増加し始めるのもこの時期だった。


    3月9日 府・市教委 思考・判断 総合力問う

     京都府内の公立高の2021年度入試中期選抜が8日、全日制と定時制の計61校(学舎・分校含む)で実施された。府と京都市の両教育委員会によると、新型コロナウイルスの影響で出題範囲は1〜2割縮小されたが、問題の難易度や数は例年並みだった。

     京都市右京区の嵯峨野高では普通科で84人の募集人員に対し176人が受験した。各教室とも換気や消毒が徹底され、受験生は志望校合格を目指し、5教科(国語、社会、数学、理科、英語)に挑んだ。

     全日制の受験者数は6297人で倍率はO・96倍、定時制は74人で0・17倍だった。試験は各教科とも40点満点で解答時間は40分。中学3年間の成績である報告書(195点満点)と合わせて合否判定される。合格発表は17日にある。

     両教委が発表した出題方針によると、基礎や基本の内容に重点を置き、総合的に考え、判断、解決する力などをみたという。


    5教科の特色や傾向

     各教科の特色、傾向は次の通り。

     【国語】古文は鎌倉時代の説話集「古今著聞集」で、古典を理解する基礎力をみた。現代文は河野哲也立教大教授の著書「人は語り続けるとき、考えていない」を用いて内容を理解する力を確かめた。

     【社会】多面的に考察する力をみるため、四つの大問全てを地理、歴史、公民の各分野の融合問題とした。複数の資料を基に適切に判断する力を測った。

     【数学】数量や図形などに関する基礎的な知識や技能を確認した。ヒストグラムに関する問題では、目的に応じて資料を的確に読み取れるかを問うた。

     【理科】自然の原理や法則を理解し、知識を身に付けているかをみた。物理的領域では物体にかかる二つの力を合成した結果を解釈する力があるか問うた。

     【英語】全体を通してコミュニケーション能力の基礎となる知識、技能の習得を確認した。リスニングでは会話を適切に聞き取り、応答する力があるかどうかをみた。



    3月6日 【教育】 「登校選択制」導入して

     新型コロナウイルス感染対策で、自宅でのオンライン授業を自由に選べる「登校選択制」の早期導入を求める声が、感染を不安視する保護者から上がっている。文部科学省は感染への不安で学校を休んでも欠席扱いにしない対応を認めている。しかし保護者が希望しても学校から登校を説得されたり、周囲から「過剰な自粛」と見なされたりして休みづらい状況があるといい「自宅で学ぶ選択を尊重してほしい」と訴える。(大西幹子)

     小学生の娘がいる京都府南部の40代女性は「3歳の長男は持病があり、風邪の悪化で入院したことがある。コロナは後遺症心配だし、娘も自宅学習を希望している」と話す。

     だが「登校が当然」の空気の中、感染の不安を周囲に理解してもらうのは難しい。学校や近所の保護者に休みたい考えを打ち明けたこともあるが、「ママ友には『まだ自粛するの』と驚かれ、担任には『感染対策してます』と説得された。それ以来、家庭以外でこの話題は出さない」という。

     高齢の父母と暮らす京都市伏見区の40代女性は、文部科学省や市教育委員会に登校選択制を要望したが実現しなかった。中学生の長女は内申に響くことなどを恐れて休みたがらないといい、女性は「多様な選択肢を保障する制度が必要」と指摘する。

     文科省は2月に改訂した学校運営ガイドラインで「感染が広がっている地域で、同居家族に高齢者や基礎疾患のある人がいるなどの事情」を要件に、感染不安を理由に学校を休んでも校長の判断で欠席ではなく出席停止として扱えると各教委に通知。学習はオンライン指導や登校日の設定などで柔軟に対応するよう求めている。

     ただ先の保護者のように、周囲の理解不足や進学への影響の心配で休みづらいといった声があるほか、今後は要件に該当しない場合は休むと欠席扱いとなる可能性がある。

     これに対し、自宅での学習を望む保護者が会員制交流サイト(SNS)でつながり「全国で登校選択制導入を訴える会」を立ち上げた。1月に全国の671の自治体や教育委員会に早期導入を求める要望書を提出。3分の1程度から回答があり、多くが対応に後ろ向きで対面授業の重要性を述べる内容だったという。

     埼玉県在住の和記美奈子代表は「対面が大切なのは十分承知しており、本当は登校させたい。家庭の事情や感染への不安の程度は人それぞれで、自宅で授業を受ける選択も保障してほしい。オンライン授業への参加で出席扱いとなる登校選択制を整えておけば、災害時など登校できないほかの状況でも利用できる」と訴える。


    実施の寝屋川市不登校生徒にも拡充

     大阪府寝屋川市は昨年の一斉臨時休校明けから、登校かオンライン授業による自宅学習かを選べる「選択登校制」を導入している。全国でも珍しい取り組みで、他の自治体の議会で取り上げられるなど注目されている。

     市教育委員会によると、文科省から昨年、感染不安を理由に学校を休むことを家庭が希望した場合は柔軟に対応するよう通知があったことを受け、6月15日から選択登校制を実施。家庭のコンピューター端末を活用するなど保護者に協力を求めながら始め、2学期からは不登校の児童生徒にも授業の配信を拡充した。

     教育指導課は「感染者が出た学校や地域で一定期間、利用が増える傾向がある。制度導入から継続して自宅学習している家庭もあると聞く」と説明する。

     他の自治体の閣係者などからは「授業のオンライン配信だけで大丈夫か」などの問い合わせがあったという。同課は「配信だけしているわけではない。学校に戻れるようになればスムーズに登校できるよう、提出課題のやりとりを含め家庭との連携を密に取っている」としている。


    東日本大震災からまもなく10年になるが、今でも原発事故にかかわる差別や偏見があるといわれている。コロナ禍の中でも同じようなことがある。個々人が安全への懸念を持つ以上「登校」を強制することはできないし、そのことへの対応をどうするかというのは自治体の責任に属することだろう。また、従来からの不登校対策として有効であることも明らかになっているということもある。


    3月5日 前川喜平さんに聞く 子どもの生存脅かした「人災」

     新型コロナウイルス感染拡大による全国一斉休校から1年。学校現場は再開後も混乱、年度末の今も”後遺症”に苦しむ。当初から「全く不要だった」と指摘していた元文部科学事務次官の前川喜平さんは「人災」と厳しい目を向ける。

     「学校は学習権と生存権が保障された、子どもの人権に深く関わる場所だ。安倍晋三首相(当時)や官邸はそのことを全く見落としていた」

     休校期間中は学習面での格差が拡大したという。裕福な家庭の子どもが家庭教師や学習塾のオンライン授業などで勉強の機会が得られた一方、その間、誰からも勉強を見てもらえない子どもがいた。その上、外でも遊べず、友人とも会えなかった子どもたちがゲームやスマートフオンに費やす時間は増えたのではないかと懸念する。

     さらに、休校により子どもたちの生存権が脅かされたと指摘する。「学校は極めて安全な場所なんです。給食や保健室があり、先生たちが複数の目で常に見ていてくれる」

     給食がなくなり成長に必要な栄養が十分取れない子どもや、学校からの通告がなくなり虐待が見逃されるケースも増えた。学校にも家庭にも居場所がない子どもが家出してさまざまな被害に遭うことも。関連性は明確ではないが、子どもの自殺も増えている。「学校が開いていれば防げたこともある。まさに人災だ」

     学校再開後、半年以上たった今も影響は続く。休校による授業の遅れに加え、2020年度は小学校の新学習指導要領の実施初年度で授業時間が増えた。土曜日や夏休みにも授業が詰め込まれ、子どもはストレスを抱える。過剰な感染防止対策により、教員も疲弊している。

     一方、オンライン授業などで学校のICT(情報通信技術)化が進み、図らずも分散登校で”通信制義務教育”ができたことは「けがの功名」と前向きに捉える。「学びの選択肢が増えた。学校再開でこれらをやめるのはもったいない」

     「休校の要請には法的にも科学的にも根拠がなかった」と前川さんは強調する。首相に休校を要請する法律上の権限はなく、行動範囲が狭い小中学生が感染を拡大させる可能性は低い。学校での感染防止が目的であれば、休校ではなく、教職員へのPCR検査を定期的に行う社会的検査や、少人数学級を導入すべきだったという。

     最も問題視するのは、休校決定の権限があった各教育委員会の姿勢だ。文科省の調査では休校要請から6日後の昨年3月4日時点で公立学校の約99%が休校した。前川さんの目には、教育委員会の多くが首相の要請に唯々諾々と従ったように映る。「偉い人に従っていればいいという事大主義が日本中にまん延している。これは、ある意味新型コロナよりも怖いことです」


    宣言で長期化「くだらない形式論」

     一斉休校はなぜこれほど長引いたのか―。元文部科学事務次官の前川喜平さんは「休校後に緊急事態宣言が出て、再開するわけにいかなくなった。非常にくだらない形式論だ」と嘆く。

     文科省は昨年2月25日、児童生徒や教員らが感染した場合は休校や学級閉鎖などを市町村単位で検討するように求めるガイドラインを各都道府県教委に出していた。

     しかし、同27日に安倍晋三首相(当時)が3月2日から春休みまでの一斉休校の要請を表明すると、状況は一転。文科省は28日、首相の要請を伝える通知を出し、結果的に多くの学校が従った。

     その後も感染は拡大し、4月7日に7都府県で緊急事態宣言が発令、すでに休校していた学校は再開できなくなった。同16日には宣言が全国に拡大し、新学期に再開した学校も再び休校に。宣言自体の延長に伴い、休校も延びていった。

     緊急事態旦言は5月25日に全面解除となったが、6月に入っても4割以上の学校で全面再開できない状況が続いた。東京都の都立学校が全面再開したのは6月29日だった。


    昨年の「一斉休校」の総括が政府からはいまだに出されていないのではないか。コロナの流行に関して「正しい道筋」を見つけるのは非常に難しい。しかし、なぜそうするのかその結果どうだったのかを明確に示すことが政府の責任であろう。学校の休校が吉であったのか凶であったのかの判断はやはり難しいのではない。「これを機会に」と便乗的な政策もある。とりわけGIGAスクール構想は学校現場に混乱をもたらしているようだ。小学校1年生にタブレットを使った授業を実施することがイメージできるのだろうか。


    3月5日 厚労省 テレワーク指針

     厚生労働省は4日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークを取り入れる企業を対象にした新たな指針案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会に示した。非正規労働者だけテレワークを認めないなど雇用形態の差を理由とした区別を禁止。長時間労働対策として、休日や時間外に働ける範囲を事前に労使で取り決めるよう推奨した。

     月内にも全国の労働局に通知する。テレワークの普及を受け、同省が指針の改定を進めていた。

     指針案はテレワークを「『新しい生活様式』に対応した働き方」と明記。原則として労働者の合意が必要で、新入社員や転職したばかりの従業員は業務に不慣れなため、配慮が必要と定めた。

     出勤とテレワークの間で仕事量や人事評価に差をつけることを禁止。業務に使うパソコンなどの物品や通信費は、従業員の負担が過度にならないよう、就業規則で扱いを規定するよう求めた。

     テレワークは柔軟に働くことができる利点を持つが、長時間労働を招きやすい側面もある。パソコンの起動時間や従業員の自己申告といった簡易な労働時間把握を企業に認めたが、職場からの連絡ルールや社内システムにつながる時間を決めておくなどの対策を促した。

     テレワークに関しても、企業は労災防止対策を取る必要がある。上司が部下に対し、画面越しに部屋を見せるよう求める事態も起きており、八ラスメント対策の徹底も盛り込んだ。


    テレワークはある意味密室となりうる可能性もあり、ハラスメントや長時間労働の温床になる可能性もあることから「指針」の発表は一つの物差しとなる。働く側が意識的に用いることを求めないと画餅になるやもしれない。


    3月4日 府教委 学校運営協 全府立校へ

     京都府教育委員会は3日、地域住民らが教育活動の方針決定に参画する学校運営協議会(コミュニティースクール)を2021年度中に原則、全ての府立学校に設置する方針を明らかにした。現在、府立高校では北稜高(京都市左京区)の1校にしか設置されておらず、府教委は「学校の課題を地域と共有していきたい」としている。

     協議会は地方教育行政法に基づく組織で、住民や保護者らが学校運営の基本方針を承認したり、教職員の任用に関して教委に意見を述べたりできる。全国の公立高での導入率は18・9%となっている。

     府内(京都市を除く)では小学校、中学校とも設置率が29%程度(昨年7月現在)だが、府立高は通学エリアが広く地域との関係が薄いため普及していなかった。しかし17年の同法改正で設置が教委の努力義務となったため全府立校への導入を決めた。

     今後、学校ごとにメンバーの人選などを進める。20年度に開校した宮津天橋高、丹後緑風高は3学年がそろう22年度に設置する。各協議会では運営方針の承認のほか、職場体験や探究学習など地域と連携した教育活動の充実にもつなげる。すでにある北稜高では、新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも学習を止めない工夫などが話し合われたという。

     府教委高校教育課は「協議会があれば地元企業との連携などがスムーズになる。地域との関係を深め、生徒が広く社会を知る契機にもしたい」としている。


    「協議会」がどれほど学校運営にかかわっているのか京都市の実態からみても疑問符が付く。国が教育内容を決定している中でどこまで「協議会」が出せる意見は制限されざるを得ない。少なくとも学校の下請けに「協議会」をしない方向で設置してほしい。


    3月4日 府・市教委 中期選抜 全日制0.97倍

     京都府と京都市の両教育委員会は3日、公立高入試中期選抜の志願者数を発表した。全日制53校の志願者数は前年度比29入減の6314人で、志願者倍率は0・97倍(前年度比0・01ポイント増)だった。倍率は2年連続で1・O倍を下回った。

     全日制の学科別の志願者数と倍率は、普通科が5966人で1・02倍(同0・02ポイント増)、専門学科が341人で0・61倍(同0・11ポイント減)、総合学科が7人で0・06倍(同O・09ポイント減)だった。定時制は普通科、専門学科、総合学科で計76人が志望し、倍率は前年度と同じ0・18倍だった。

     最も志願倍率が高かったのは、嵯峨野普通科の2・10倍で、城南菱創普通科(単位制)1・85倍、鴨沂普通科1・77倍、南陽普通科1・60倍、綾部(東)農芸化学1・56倍と続いた。倍率が1・00を下回った学校数は33校(分校・学舎を含む)48学科で、前年度と同じだった。

     中期選抜は第2志望など3校まで志望先を書くことができ、現時点で募集人員に達していなくても定員割れになるとは限らない。府教委は「新型コロナウイルスの影響は大きくは見られなかった。受験生は私立を含めて行きたい学校を主体的に選択しているのではないか」としている。

     試験は8日、合格発表は17日にある。



    3月3日 市教委 京都奏和高生の学習支援へ

     京都市教育委員会は2日、龍谷大(伏見区)と包括的な連携協定を締結した。最初の取り組みとして、4月に開校する昼夜間定時制の京都奏和高(同)で学生たちが不登校を経験した生徒らの学習の支援をする。

     学生の力を教育活動に生かす狙い。協定書では、児童生徒や学生に対する多様な学習機会の提供や教員研修での連携などが盛り込まれた。

     京都奏和高での取り組みでは高大連携協定も結ばれた。さまざまな困り事を抱える生徒が多く在籍する見込みのため、学生が授業に入って質問に対応したり、部活動で助言したりする。生徒が休みがちになった場合には、大学の施設内で高校の遠隔授業を受ける仕組みも検討している。

     この日は二つの協定の締結式が京都奏和高であり龍大の入澤崇学長は「学生が困難を乗り越えた経験を生徒に話すなどすれば教育の可能性が広がる」と語った。市教委の在田正秀教育長も「学生は高校生と年齢が近いため相談相手になりやすい。互いに相乗効果が出るようにしたい」と期待した。


    不登校の生徒や発達障害のある生徒を対象とする市立高校。府立の清明高校が北区にあることで一定の住み分けをしている。これらの高校がこれまで進学を断念してきた生徒に希望を与えることになることは評価したい。ただ、それ故に普通の高校で学びたいと考えている「困難を持つ」生徒のニーズが過少評価されることがあってはならないだろう。つまり、どこまでそうした生徒に寄り添えるのかということと教育方針との違いを埋められるのかということでもある。