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  • 高校間「留学」仕組み検討.23
  • 地域運営学校1万校超える.24
  • 子どもDB構築へ.24
  • 凶器の持ち込み 生徒は想定外.26
  • 11月26日 【インサイダー】凶器の持ち込み 生徒は想定外

     愛知県弥富市立中の3年男子刺殺事件で、逮捕された同学年の少年は包丁を校内に持ち込んだとみられる。学校の不審者侵入対策は2001年の大阪教育大付属池田小事件を機に強化されたが、生徒が凶器を持ち込むのは想定外で、関係者は「対策は困難だ」。深刻な事態を防ぐには生徒間トラブルの把握や早期対応も課題に。識者は、新型コロナウイルス下特有の心理状況も踏まえ「丁寧なコミュニケーションを」と呼び掛ける。

     池田小事件後の09年、学校保健安全法が施行され、各学校には危機対応マニュアルの策定や教員の防犯訓練実施が義務付けられた。国の調査では、19年3月時点で全国の小中高校などのうち、刺股を配備した学校は88%、防犯カメラ設置は58%に上る。設備充実に加え、保護者らボランティアが学校内外を巡回している例も64%と多い。

     これらの対策は外部からの不審者侵入防止が目的で、校内での児童生徒同士の事件は想定していない。しかし、04年は長崎県佐世保市で小6女児殺害事件が起き、19年に愛媛県西条市で中2の男子生徒が刃物で刺されるなど、校内の事件が相次いでいる。

     そうした中でも、文部科学省の担当者は、手荷物検査や金属探知機の設置といったハード面の対策は「現実的ではない」と説明。「児童生徒が事件を起こすリスクを強調すると疑心暗鬼を招き、教育活動が成り立たない」と話す。

     一方、事件防止には深刻な事態につながるいじめやトラブルの早期発見も鍵となる。だが、会員制交流サイト(SNS)の普及で生徒間のやりとりが見えにくくなっていることに加え、コロナ感染拡大の影響で対面機会が減り、生徒の心の内面を把握することは容易ではない状況もある。

     愛知の事件で逮捕された少年は、被害生徒から嫌なことをされたとの趣旨の供述をしているというが、学校側は記者会見で「いじめなどのトラブルは把握していない」。弥富市教育委員会の10月の全校アンケートでも、2人に関する記載はなかったという。

     文科省は20年度の問題行動・不登校調査結果で「人と人との距離が広がる中、不安や悩みを相談できない子どもがいる可能性がある」と指摘。国立成育医療研究センターの調査では、教師らへの話し掛けやすさや相談しやすさが減った、とした子どもは51%となっている。

     文科省によると、現場からは「教員が多忙で、きめ細かな指導をする余裕がない」と嘆く声も。同省はSOSを受け止めて早期対応できるよう、公立小中学校へのスクールカウンセラーの配置拡充費用など104億円を来年度予算の概算要求に盛り込んでいる。

     教育評論家の尾木直樹さんは、コロナ感染状況が落ち着き「急速に日常化か起きている。環境変化や交流の増加でトラブルが増えやすくなっている」と強調。「子どもの様子を慎重かつ丁寧に見守る必要がある。パンデミック(世界的大流行)の中で起きた事件であることを、教員やスクールカウンセラーは意識してほしい」と訴えた。


    こうした事件が起こるたびに何とも言えない無力感に襲われる。どうして「一歩手前で引き返すことができなかったのか」と思うからである。大人はさらなら対策を議論するが果たしてどれほどの効果をもたらしたのだろうか?子どもが自分の思いを「話せる人」をどう確保できるかということが大切な気がする。それはなにも専門家である必要はないのだが。最近の教育論が将来必要な力を強調するなかで、より多くの教育資源を蓄えようとする教育的雰囲気に問題を求めるのは筋違いであるとは感じるもののやはり一考が必要だろう。


    11月24日 政府 子どもDB構築へ

     政府が子どもの貧困、虐待を防ぐため、家庭の経済状況や子どもの学力といった幅広い情報を一元化するデータベース(DB)を構築する方針を固めたことが23日、分かった。困難を抱える子どもを早期に見つけ出し、支援につなげる狙い。月内にも関係副大臣会合を設置する。自治体の部署間での情報共有が壁となっており、データベースで扱う個人情報に関する指針も作成する。早ければ2023年度の全国展開を目指す。

     岸田政権が推進するデジタル改革の一環。デジタル庁を中心に関係省庁の副大臣らで議論を進める。

     新型コロナウイルス禍の影響により、親の減収で子どもの食事量が減るなど貧困状態に陥ったり、虐待が深刻化したりしていると指摘されている。子どもや保護者が行政に助けを求めることに抵抗を感じることや、自治体で福祉や教育といった部門ごとにデータが分散して保管され、支援が行き届かないケースがある。

     政府は当初、貧困対策のDBを検討していたが、虐待にも範囲を広げることにした。大阪府箕面市など一部の自治体で独自に運用しているDBを参考に、実証実験を行い、課題を整理する。自治体や学校が持つデータを突き合わせ、支援が必要な子どもを特定。ソーシャルワーカーや学校のカウンセラーにつなげたり、行政の支援制度や、民間団体による子ども食堂や学習支援を案内したりする。

     集約するデータは、自治体が把握している生活保護や、比較的低所得のひとり親が対象の児童扶養手当のほか、就学援助の受給状況、学校で行う学力・体力調査も検討する。

     岸田文雄首相は16日に開かれたデジタル臨時行政調査会の初会合で「保護を尊する子どもたちを見守るため、生活に関わるさまざな情報を集約するデジタル基盤を整備する」と表明していた。


    【インサイド】支援者「命守るため不可欠」

     政府が子どもの貧困・虐待対策の基盤となるデータベース(DB)の構築に乗り出すことになった。日本は元々、先進国の中で子どもの貧困率が高めだ。家庭で悩みを抱え込むことにより自殺や虐待につながる恐れもあり、支援者はDBについて「行政が積極的に関与し、子どもの命を守るために不可欠だ」と早急な構築を求めている。

     「お米がなくなる不安から、子どもに3食与えられず、朝食を昼兼用や食パンー枚にしている」「母子家庭で生活がぎりぎり。ガスや水道を止められた時期もあった」

     貧困家庭を支援する公益財団法人「あすのば」(東京)が今年7〜8月、援助対象の家庭に状況を尋ねると、窮状を訴える声が約600件寄せられた。

     中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合(子どもの貧困率)が、日本は2018年時点で13・5%。欧州諸国に比べると高水準とされる。経済的に不安定な家庭は新型コロナウイルス禍で一層、打撃を受けた。

     国や自治体の支援制度の多くは申請が必要だが、生活に追われる貧困家庭は制度そのものを知らないケースも。支援を受けることを「恥ずかしい」と考え、助けを求められない保護者もおり、実態が捉えづらいという問題がある。あすのばの小河光治代表理事は「申請を待たない『プッシュ型』の支援が必要だ」と強調。母親の妊娠中から、子どもが成人するまで「個別に把握するカルテのような仕組みが求められている」と述べ、国の取り組みに注目している。


    このデータベース化の狙いを「困難を抱える子どもを早期に見つけ出し、支援につなげる」と政府は言ってる。しかし、これはデータベース化しなければ解決しない問題なのだろうか。貧困対策への支援策が複雑でありそれによるスティグマを産む構造をまず解決しなければならない。また、いじめ問題においても当事者の意見が反映されていないことに行政への不信感が募るということはしばしばである。データベース化によってそれが独り歩きする危険視も感じる。同時に「入力されること」を当事者のどう説明するのだろうか?デジタル行政の推進のための「人身御供」に子どもが、それの貧困とされる子どもが使われるとは考えすぎか。むしろ、課税と給付を推進するということを前提にマイナバーを推進させることを明確に打ち出すべきだろう。


    11月24日 文科省 地域運営学校1万校超える

     地域住民や保護者が学校運営に参加できる「コミュニティースクール」(地域運営学校)に指定された公立小中高校などは、5月1日時点で1万1856校となり、2020年度の9788校から約2千校増えたことが23日までの文部科学省の調査で分かった。京都は425校、滋賀は216校が導入している。初めて1万校を超え、全国の公立学校に占める製ほ33%に上昇した。

     04年に地方教育行政法が改正され、地域で支える学規っくりを目的として制度が創設された。17年に設置が教育委員会の努力義務となってから大幅に増え、文科省は全公立校の指定を目指している。  学校種別では、幼稚園276校、小学校7051校、中学校3339校、義務教育学校95校、高校805校、中等教育学校4校、特別支援学校286校。17年度と比べると、特に高校と特別支援学校で増加率が大きくなっている。

     文科省は、地域の人や団体が参加し、学校と連携する場とされる「地域学校協働本部」の整備状況も調査。公立の小中高など1万9471校に整備され、うちコミュニティースクールでもある学校は8528校あった。

     文科省によると、福井県だけコミュニティースクールの指定がないが、独自に地域との連携を図る取り組みをしている。


    「コミュニティースクール」の考え方が教育委員会によってさまざま。積極的に地域活性化のために使うというところもあるし、学校運営の補助(職員定数の穴埋め)として地域住民を動員しているところもある。また、京都市のように合理的に学校統廃合をすすめるために積極的活用しているところもある。ちなみに京都市内の廃校になったいわゆる「番組小学校」は軒並み高級ホテルに建て替えられている。地域の要としての「学校」は有名無実となっている。


    11月23日 府教委 高校間「留学」仕組み検討

     京都府教育委員会は22日、2022年度から10年間の府立高の方向性を示した「府立高校の在り方ビジョン(仮称)」の中間案の素案を示した。府立高間での「留学」など新たな学びの充実策を盛り込んだほか、学校再編や高校入試の見直しも検討を進める方針を記した。

     素案では、先行きが見通しにくい時代に対応するため、課題解決型の学びや強化横断的な学びを充実させるとした。タブレット端末など情報通信技術(ICT)を活用し、生徒に合った「個別最適な学び」や、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型教育も構築していく。

     学校数が多い府立高のスケールメリットを生かし、高校間で短期留学できる仕組みを検討するほか、他校の講座をオンラインで受けられるようにするなど学校間連携も強化する。不登校が増加する中、卒業に必要な単位数を見直すなど多様なニーズに合った柔軟な教育システムも整備する。

     府立高の再編に関しては、生徒数の減少のみに着目した一律的・機械的な基準は設けず、地域の実情を考慮しながら検討するとした。例えば、交通の利便性が高く、選択できる高校が多い地域については「一定規模の教育環境の確保や学科の選択肢をバランスよく配置する」といった視点から再編を検討する。

     また高校入試(入学者選抜)についても、過密な日程や学科によって異なる方法、新学習指導要領との関係など課題を検証し、見直しを進める。

     素案は同日の府立高校の学ぴ方ビジョン(仮称)検討会議で示した。府教委は今後、府民から意見を聞くなどしてビジョンを本年度中に策定し、来年度から高校再編や入試の見直しなどに具体的に着手する予定。


    高校の制度が十分機能していないことはすでに関係者の間では「常識化」しているという。かつて高度経済成長の時代にあっては「高校進学」が出世の梯子であり普通科への進学熱が高まった。その結果、職業配分機能としての高校は機能しなくなり、偏差値による序列化が固定していった。ICTや「個別最適な学び」という先を見据えたことばで高校を語るのことに異存ないが、「過去」をどう見るかの議論と併せての議論を望みたい。


    11月16日 中教審 教員免許更新 22年度末廃止

     教員研修の在り方を議論する中教審の特別部会は15日、教員免許に10年の期限を設けている教員免許更新制を廃止するとの審議まとめを了承した。デジタル化の進展など社会環境が大きく変わる中、10年に1度の更新講習を義務付ける現行制度では不十分だとして「発展的に解消する」と提言し、新たな研修制度の創設を求めた。文部科学省は教育職員免許状の改正案を来年の通常国会に提出し、2022年度末での廃止を目指す。

     中教審会長で特別部会長を務める渡辺光一郎氏は同日、末松信介文科相に審議まとめを提出し、「主体性や誇りを持って研修に打ち込める制度を実現してほしい」と要望。末松氏は「教師の新たな学びの在ぴ方を検討したい」と応じた。

     教員免許更新制は、第1次安倍政権だった07年6月の改正教育職員免許法成立により、09年から導入された。審議まとめは、免許の効力とひも付けた更新講習は「形式的で学習効果を低下させる」と批判。多忙化する教員に負担が生じている上、人材確保に影響を与えて教員不足の要因になっていると指摘した。

     その上で、人工知能(AI)の発達などを踏まえて「教員が常に最新の知識技能を学び続ける必要性は高まっている」と強調。廃止後の方策として、@教育委員会や校長らが教員の学びの状況を把握して研修の受講履歴を管理A教員と対話しながら適切な研修を奨励―といった仕組みを作るよう求めた。研修を受けない教員は「職務命令違反による懲戒処分の対象となり得る」とした。

     文科省は23年度にも受講履歴の管理など新しい仕組みを導入する方針。22年4月からは、廃止までの期間に更新講習を受けなければならない教員の負担軽減策として、必修科目の区分を撤廃し、選択科目も含めて自由に選べるようにする。


    【インサイド】「不断の学び」にも懸念の声

     学校現場の多忙化が深刻となる中で、教員免許に有効期限を設けて更新講習を義務付ける教員免許更新制が廃止される。ただ、文部科学省は全ての教員に「不断の学び」を求め、2023年度にも新たな研修制度を開始する方針だ。受講が不十分なら処分も想定され、働き方改革や指導力向上につながるのか懸念の声が上がる。

     中教審の特別部会は審議まとめで更新制を「『新たな教師の学びの姿』を実現する上で阻害要因となる」と断じた。10年ごとの期限前の2年間に計30時間の更新講習を受ける必要があり、09年の導入当初から「教育委員会の研修と重複する」「理論ばかりで役に立たない」と批判されてきた。

     近年は授業でのデジタル端未活用や、「主体的、対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領に基づく実践が求められ、文科省は継続的な研修が不可欠との立場。自民党文教族の「指導力不足教員の排除が必要」との意見も消えず、同省幹部は「単純な更新制廃止にはならない」と明言してきた。

     新制度の柱となるのは、授業や生徒指導などに関する研修の受講履歴を教育委員会が一元管理する仕組みの導入だ。講座をテーマやレベルごとに分類し、教員が目標に沿った内容を選択しやすくする。

     一方、更新制廃止を決断した萩生田光一文科相(当時)は8月に「講習を受けていない先生がいれば、免許停止もあり得る」と語り、処分対象になることを明確にする姿勢を見せた。東京都立高の30代男性教諭は「一定の義務付けは必要だと思う。ただ、研修好きな先生が必ずしも授業がうまい訳ではなく、研修だけで判断されるのはおかしい」と話す。

     白梅学園大の増田修治教授(臨床教育学)は「研修は自主的なもので、評価や処分につなげるべきではない。過密なカリキュラムや業務量の増大で余裕がなく、若手が育ちにくい。授業準備の時間確保が最優先だ」と指摘した。


    第2次安倍内閣で「不適格教員」への対策として免許更新制が導入された。その結果はどうだったのか。中教審は検証すべきだ。前しか見ていない中教審の議論は、教員の過剰労働の中で果たして「研修へのインセンティブ」が確保できるのかどうかは議論された形跡がない。「コロナ一斉休校」の総括が全くされない安倍政権の教育政策は、在庫費用までもかさむ「アベノマスク」と同じく不良債権化している。表紙が変わっただけの新政権に課せられた課題は大きい。


    11月6日 京都府警 学校配備端末 悪用防げ

     国の政策として小中学校に配備されるデジタル端末がサイバー犯罪やいじめに悪用されるのを防ぐため、京都府警は5日、京都市上京区の府警本部で、府と京都市の教育委員会、IT事業者を対象にした対策協議会を開いた。府内でも生徒の成り済まし被害があったと明らかにし、セキュリティー面の課題を共有した。

     文部科学省は「GIGAスクール構想」として、全国の児童、生徒に1人1台のタブレット端末やパソコンを配る計画を進めている。一方、昨年11月には東京都町田市の小学校でタブレット端末に悪口を送信されるいじめがあり、6年の女児が自殺した。

     この日の協議会では、府警サイバー犯罪対策課の幹部が端末が悪用された二つの事例を紹介した。府内の高校で生徒が同級生に成り済まして教員にみだらなメッセージを送信していたことがあり、教員が出席番号をもとにしたパスワードをクラス全員に伝えてしまったことが原因だとした。

     他府県の高校では教員が端末にフリーソフトをダウンロードした際、不正プログラムに感染。サイバー犯罪者が正体を隠して不正アクセスする「踏み台」に端末が悪用されたという。

     同課の担当者は「教員のセキュリティー意識や安全管理態勢に問題がある。教育現場にサイバー犯罪が付け入る隙を与えないようにしてほしい」と呼び掛け、参加した教委職員ら約30人と対策について議論した。


    配布されている【デジタル端末】でなにをするのか、が十分検討されていない中での導入にそもそも問題はなかったのか。児童・生徒や家庭にIDやパスワードの管理をまかせることのリスクはかなりたかい。文科省があげる「主体的・対話的な深い学び」には【デジタル端末】は有効なツールではあるが、その使用が目的になり「〜深い学び」が手段になるという逆転が起こらざるを得ない現場の事情を、教員や児童・生徒の意識の問題だけで済ますことはできないだろう。


    11月5日 文科省と財務省 小学校の教員定数増巡り、予算で火花

     2022年度の予算編成を巡って、文部科学省と財務省が今年も応酬を繰り広げている。小学校で教科担任制を拡大したい文科省は、教員定数を2000人増やすために約44億円を要求しているが、財務省は中学校の教員の有効活用といった工夫の必要性を指摘。これに対し、末松信介文科相が「地理的条件で困難な場合もある」と反論するなど、議論が熱を帯びている。

     文科省が目指しているのは、小学5、6年生の理科、算数、外国語(英語)、体育の4教科での教科担任制の拡大だ。専門性を持った教員による教育の質の向上に加え、教員が受け持つ授業コマ数を減らすことで、負担軽減を図る狙いもある。25年度まで4年間かけて教員定数を8800人増やす計画を立て、第1段階として22年度は2000人の増員を要求した。

     これに対し、予算のチェック機能を担う財務省は1日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の作業部会で「小規模校においては、中学校の教員を活用する『小中連携』により導入できる可能性がある」などと指摘した。小学校に新しい教員を増やさなくても、実現できる部分があるのではないかというわけだ。

     その根拠として、1学年が1学級だけの小規模な中学校では、教員1人が1週間に11・6コマしか授業を受け持っていないとする調査結果を提示。更に、オンライン授業を有効活用すべきだとの見解も示した。

     文科省側もこの動きに反応した。末松文科相は5日の閣議後記者会見で、財務省が提案する小中連携などの工夫について「地理的に離れているなどの条件で、困難な場合もあることは認識してほしい」と訴え、「地域や学校の実情に応じた取り組みが可能となるように、必要な教職員定数を確保したい」と語った。

     文科省は教員の多忙さを解消するため、支援スタッフの大幅な拡充も求めている。ただ、財務省はこうした外部人材の活用についても、指標を設けて効果を検証し、効果的な配置を目指すべきだと主張している。

     霞が関の官庁街で隣り合う両省は毎年のように、学校への人員拡充の必要性を巡って応酬を繰り広げてきた。21年度の予算編成では、公立小中学校の学級編成を40人から30人へ引き下げるよう求めた文科省に対し、費用対効果を疑問視する財務省は慎重な姿勢を示し、小学校に限って35人とすることで最終的に折り合った。【毎日新聞】



    11月3日 こども庁 教育分野移管せず

     政府は2日、子ども関連政策の司令塔となる「こども庁」を創設する法案を来年の通常国会に提出する方針を固めた。文部科学省が所管する分野のうち、幼稚園の幼児教育や小中学校の義務教育については移管せず除外する方向で検討している。少子化対策などを担う厚生労働省や内閣府の部署は移管する。子ども政策の大きな柱である教育分野が文科省に残ることで、政府が掲げてきた府省庁の「縦割り打破」からは後退する可能性が出てきた。

     こども庁は、虐待など複雑化する課題に総合的に対処するため、複数の府省庁にまたがる政策を一元化する新組織。岸田文雄首相は衆院選後の今月1日の記者会見で「創設に取り組む」と表明していた。法案提出に向け、内閣官房の検討チームが組織の構成や担当分野といった基本方針を、有識者会議が基本理念を、それぞれ年末までにまとめる。

     関係者によると、こども庁は内閣府の外局とし専任閣僚を置く方向。厚労省は保育や児童虐待防止を担う「子ども家庭局」と障害見政策の部署、内閣府は少子化や子どもの貧困対策を担当する「子ども・子育て本部」を移す点ではおおむね一致した。文科省の政策の移管は一部にとどまる見通し。

     首相は「子ども目線に立つて縦割りを排した行政の在り方を検討する」としており、政府内では当初、小中学校や幼稚園をこども庁に移管する案も検討されていた。文科省は、幼稚園から小学校への学習の接続を重視し、幼児教育と義務教育を引き続き担うことを求めた。いじめ対策も文科省が担当する。

     11〜12月に政府案が固まり、与党内の手続きを経て年末までに決定される。ただ、自民と公明両党の間でも考えに差があるとみられ、議論が紛糾し、政府案が見直される可能性もある。


    【解説】省庁綱引きで“骨抜き”恐れ

     政府が創設を目指す「こども庁」は、子ども関連の施策を一元化し、人員や予算を集約することで取り組みを強化するのが本来の目的だ。とりわけ義務教育は重要な分野だが、文部科学省に配慮し、移管されなければ、新たな器を作っても“骨抜き”となる恐れがある。省庁間の綱引きではなく、子どもの利益を最優先に考え、実効性のある組織を検討するべきだ。

     子どもを巡る状況は新型コロナウイルス禍で深刻化している。一斉休校による心身の不調や学習の遅れ、親の減収による貧困、自殺や虐待の増加など問題は噴出。小中高校と特別支援学校が2020年度に認知したいじめは約51万件に上った。

     一方、出産や育児への不安による「妊娠控え」で、今年の赤ちゃんの出生数は80万人前後に落ち込む恐れがある。安心して子どもを産み育てられる環境がなければ、少子化は進み、社会そのものの持続も難しくなる。こども庁は、従来の縦割り行政では解決できない問題に柔軟に対応する必要がある。


    菅内閣の低支持率下での窮余策として打ち出された「子ども庁」だった。すでに民主党時代には「子ども家庭省」の構想があったもののコピーのような気がする。厚労省は保育や児童虐待防止を、文科省はいじめ対策を担当するということ一つをとっても付焼刃的な法案提出になる可能性が強い。持続的な社会をどう構想するかという発想のもと菅・安倍政権と一線を画するという岸田政権に期待したいのだが…。


    11月2日 「バスケの塾」 地域クラブ活動 本格化

     京都府内のバスケットボールクラブチームが全国大会の切符を懸け競い合う初の「府ジュニアバスケットボール選手権大会」が、3日に向日市民体育館(同市森本町)で開幕する。教員の部活指導の負担軽減が全国的に議論される中、地域のスポーツクラブの動きが本格化している。

     同大会は、府ジュニアバスケットボール連盟が主催し、日本バスケットボール協会(JBA)に登録している府内のクラブの男子12チーム、女子10チームが参加する。15歳までの中学生が出場でき、優勝チームは、JBA登録チームが競う全国大会に府代表として出場する。初日は予選リーグがあり、決勝トーナメントは14日に福知山市三段池公園体育館(同市猪崎)で開かれる。

     京都市内などの男子50人、女子25人が所属している「京都フェニックス」は設立して3年半になる。市内の中学校や地域体育館で、週2、3回、夕方から夜にかけ練習している。部活動と掛け持ちしている生徒がほとんどで、「バスケの塾」として技術向上を目指したり、バスケ部がない学校に通う生徒らの受け皿となっている。

     コーチはバスケ経験がある保護者や元教員など6人で、教員を目指している大学生も指導にあたる。競技を通し、地域のさまざまな大人と関わりながら学べるのが特徴だ。

     監督で大会の運営に携わる植田寛さん(44)=同市北区には、初の府大会に「子どもたちの活躍の場や、バスケに向き合える機会を広げていきたい」と意気込んでいる。


    元教員の女性経験ない競技の顧問「限界」

     「授業準備や宿題のチェックに加え、放課後と土日の部活。教師という仕事は本当に好きだったけど、もう限界だった」。京都市内に住む30代女性は、10年間勤めていた兵庫県内の学校を今年の春に退職した。

     経験のない競技の顧問を任され、1ヵ月の残業時間は多い時で150時間を超えた。「教えられないことが何より苦しかった。心の負担と残業の疲労が蓄積され、生徒に向き合えなくなっていた」と振り返る。

     教員の部活指導などの負担の重さがさまざまに指摘される中、国は段階的に中学の休日の部活動を地域に移行することを打ち出した。府教育委員会は本年度から、府内2市町で一部の運動部の地域移行の試行を開始し、課題解決へ動き出した。府教委保健体育課は「指導者の確保、学校と地域や企業との連携、経費など課題は多い」とし、子どもたちの活動の場の受け皿をどう確保していくかを模索している。