h2403
 
  • 性の多様性、身近な課題に.23
  • 教科書デジタル化拡充.23
  • 合理的配慮 企業に義務化.25
  • 不登校要因認識 学校と子にずれ.26
  • 教員試験実施時期 さらに前倒し検討.27
  • 去年の自殺者 児童・生徒 過去最多水準.29
  • 3月29日 厚労省 去年の自殺者 児童・生徒 過去最多水準

     去年1年間に自殺した人は全国で2万1837人と前の年に比べ44人減りましたが、児童・生徒の自殺者数は513人と過去最多の水準となりました。

     厚生労働省が発表した確定値によりますと、去年1年間に自殺した人は全国で2万1837人となり、おととしに比べて44人減少しました。

     性別でみると、男性は1万4862人と前年から116人増え、女性は6975人と前年より160人減りました。

     自殺の原因・動機別では、病気などの「健康問題」が原因と見られるケースが1万2403件と前の年に比べて371件減少した一方、生活苦や事業不振などの「経済・生活問題」は484件増えて5181件と増加が顕著になっています。

     年代別では、50代が101人増えて4194人と最も多く、次いで40代が3625人、70代が2901人などとなりました。

     また、児童・生徒は小学生が13人、中学生が153人、高校生が347人であわせて513人でした。

     児童・生徒の自殺者数は統計がある昭和55年以降過去最多となったおととしの514人から1人減りましたが、依然として高い水準が続いています。

     厚生労働省は「児童生徒の自殺は過去最多だったおととしと同じ水準で、危機的な状況が続いているので、関係省庁と連携して対策を強化していきたい」としています。

     不安や悩みを抱える人の相談窓口は厚生労働省のホームページなどで紹介しています。(NHK)


    厚労省統計「自殺者数の推移」では、2003年の3万4427人をピークにして減少している。一定の抑止効果が働いているのだろうか。しかし、児童・生徒の自殺者が「危機的な状況」であることに心が痛む。将来に希望が持てないことが原因なのだろうか。ほとんどの若者が高校までの学校生活(進学率ほぼ96%)を送っているのだが、学校教育が若者を自殺に追いやっていることがあるとすれば「教育の無償化」以上の問題かもしれない。


    3月27日 文科省 教員試験実施時期 さらに前倒し検討

     文部科学省は26日、2024年度は6月16日を標準日としている公立小中高校の教員採用試験について、25年度以降は実施時期を前倒しすることを検討すると明らかにした。早期化する民間企業の採用に対抗して人材を確保するのが狙い。

     従来は大学4年時の7〜8月に1次試験を行い、9〜10月に合格発表する自治体が多いが、文科省は昨年5月、24年度は1ヵ月程度早め6月とする方針を示して各教育委員会に協力を要請。それ以前の日程も推奨している。



    3月26日 文科省 不登校要因認識 学校と子にずれ

     2022年度に不登校を経験した小中高生や担任らに要因を尋ねたところ、「いじめ被害」「教職員への反発」の項目に該当すると回答した割合が、学校側は子ども側より20ポイント以上低く、認識に大きな差があることが25日、文部科学省の委託調査で分かった。学校が子どもの状況を十分に把握できていない実態が浮かび、重大ないじめを見逃している可能性もある。

     調査した子どもの発達科学研究所(本部・大阪市)は「孤立している児童生徒へ早期の支援が必要だ」としている。

     文科省が学校のみを対象に毎年度実施している「問題行動・不登校調査」では、「無気力・不安」が要因の過半数を占めるなど、実態との隔たりが指摘されていた。文科省は今回の結果を受け、問題行動・不登校調査の手法を見直す方針。

     委託調査は昨年7〜8月、山梨県など4教育委員会の協力を得て教員1424人と児童生徒239人に、複数回答で不登校のきっかけを質問。「いじめ被害」は子ども側26・2%、学校側は4・2%だった。

     「教職員への反抗・反発」「教職員とのトラブル、叱責」は、子ども側がそれぞれ32・4ポイント、14・7ポイント高かった。調査報告書は「教員の態度や指導方法が要因の可能性がある」と指摘した。

     「体調面の不調」は子どもの7割が挙げたのに対し、学校側は2割にとどまった。報告書は、1人1台配備の学習端末を活用し、心身の変調の早期把握が重要だとした。


    【インサイド】本音 学校に話しづらい

     文部科学省の委託調査で、不登校の要因を巡り、子どもと学校側の受け止めに大きな隔たりがある現状が明らかになった。不登校の小中学生が30万人に迫る中、いかに学校が子どもの本音を引き出し、適切な支援につなげるか。国や自治体のサポートに加え、学校現場の意識変革も必要となる。

     「友達と一緒にいることが何だか苦しくなって…」。関東地方の中学2年の生徒(14)は、2学期から不登校になった理由を、そう説明した。―学期初めに、友人からオンラインゲームで冷たくあしらわれたことなどから感じ始めた心のもやもやは、夏休み中に膨れ上がった。

     調査では、不登校の要因を「友人関係のトラブル」とした子ども側が24・8%だったのに対し、学校側は8ポイント以上低かった。「いじめ被害」ではさらに差が広がり、子どもの内心が学校には見えにくい実態が表面化した。

     この生徒は当初、なぜ学校に行けなくなったのか心の整理が追いつかず、苦しさを1人で抱え込んだ。フリースクールに通い始め、安心できる環境で時間を過ごす中で、要因を客観視できるようになったという。

     文科省の問題行動・不登校調査(2022年度)で、小中学校の不登校は29万9048人となり過去最多を更新した。同調査は要因を学校側だけに尋ねており、「無気力・不安」が51・8%と半数を占めた。「いじめ」はO・2%、「教職員との関係を巡る問題」は1・2%にとどまった。

     文科省は不登校支援として、空き教室を活用した「校内教育支援センターやオンライン授業などの環境整備を進めるものの、ある幹部は「『無気力・不安』に至る要因を把握しないと、子どもの気持ちに添った対策につながらない」と語る。

     「教職員への反抗・反発」など、学校に起因する項目ほど学校側の値が小さくなったのも、今回の委託調査の特徴だ。

     東海地方の公立小の養護教諭は、その背景に、担任との1対1の関係では子どもが「学校が嫌だ」といった本音を話しづらいなどの「構造的な問題がある」と話す。

     この養護教諭が「保健室登校」の児童と話をすると、担任との関係やクラスの居づらさなどを打ち明けられることがあるという。何に困っているか言語化できない子には時間をかけて向き合い、言葉を引き出す必要があると説明する。

     養護教諭は、担任が1人で対応するのではなく、学校内で情報を共有し、教職員が「自分の見方や接し方が全てではない」と認識できる仕組みの構築が重要だ指摘。「自分のことを本気で考えてくれる大人がいるという経験が、子どもが前に進む原動力になる」とし、委託調査の結果が学校現場の変化のきっかけになることを期待した。


    【鳴門教育大坂根教授の話】認識の甘さ隔たり生む

     教員がいじめではないと判断したことでも、子どもがいじめだと感じていることは少なくない。今回の調査結果からは、そういった教員の認識の甘さ が子どもとの隔たりを生んでいる可能性が見えてくる。確かな数値でこうした乖離を示した意義は大きく、教員が不登校に関して考え直す良いきっかけになるだろう。各学校が調査結果を分析し、不登校にならないための支援や指導の体制確立に活用してほしい。


    教員と子どもの認識の差は、実は大人と子どもの問題でもあるだろう。「いじめは大人には見えにくい」と言われて久しい。それに加えて学校という場在り方が、意識のずれ(教員が子どもの本音に迫れない)を大きくしている。試行的に実施されている複数担任制への移行なども学校の「常識」を変えていく構造的な変化になりうる。


    3月25日 障害者差別解消法 合理的配慮 企業に義務化

     障害者の希望に合わせて困りごとに対応する「合理的配慮」が4月1日から企業など民間事業者に義務付けられる。改正障害者差別解消法が施行される。これまで国や自治体に義務付けていた配慮を民間へ拡大し、障害者が参加しやすい社会の実現を促す。車いす利用者の移動をサポートしたり、聴覚障害者と筆談でやりとりしたりすることが想定される。希望に応じきれない場合にどう解決するかが課題となる。

     事業者側は過重な負担にならない範囲で対応し、「特別扱いはできない」と一律に拒むことは認められず「建設的対話」で合意点を探ることが求められる。例えば、スーパーを訪れた視覚障害者から売り場の案内を求められた場合、混んでいて人手が足りず案内できないと拒むのではなく、話し合った上で、希望の商品を聞き取って渡したり、案内できる時間帯を伝えたりといった代替策が必要となる。

     国が策定した対応指針では、障害の特性に応じて@高い所にある商品や資料を取って渡すA段差を携帯スロープで解消するB手話や点字、イラスト、写真を用いてやりとりする―などを挙げた。

     義務違反の具体例も提示。試験会場で筆記が困難な人からデジタル機器を使いたいと求められたのに、前例がないとの理由で全く対応しない場合は違反になるとした。

     合理的配慮の範囲は「本来の業務に付随するものに限られる」と指摘。電車やバスなど公共交通の事業者が、業務と無関係に公道での移動介助や、食料品の購入などを依頼された場合は断っても違反にならないとした。

     ただ、違反かどうかの線引きは曖昧で「過重な負担」の範囲も企業規模など個別の状況に応じて異なるため、企業が戸惑う要因となっている。

     話し合いで解決できない事例も増える見通しだ。こうした場合、自治体や関係省庁が事実確認をして調整に入る。内閣府は障害者や事業者が相談できる「つなぐ窓口」を開設し、自治体や関係省庁に取り次ぐ。


    障害者に関わる問題で「合理的配慮」という考え方が導入されて久しい。公共交通などでの設備やサービスなどは相当に改善されてはきている。学校ではその「合理的配慮」の趣旨が十分生かされているとは言い難い。つまり、障害児を分離することが「合理的」でありそのための「配慮」をするという意味に理解されているのではないかと思わざるを得ないことである。インクルーシブ教育(社会)を実現するための「配慮」は何かが問われなければ差別解消にはならない。障害の「社会モデル」+「人権モデル」としてとらえたうえでの「合理的配慮」が必要。


    3月23日 教科書検定 教科書デジタル化拡充

     文部科学省は22日、2025年度から中学校で使用される教科書の検定結果を公表した。合格した10教科100点のうち97点が2次元コード(QRコード)を掲載。1年英語では21年度から使われている現行版より平均で1・7倍増の83・3ヵ所になるなど、デジタル教材への対応が拡充された。現行の学習指導要領に対応した2回目の検定で、前回同様に知識を活用した話し合いや探究など、生徒の主体的な学習が重視された。

     1人1台の学習端末配備を受けた動きで、学校現場が学びの充実にどう生かすかが課題となる。

     QRコードを読み取ると、英語の音声や理科の星の観察動画など、教科書では表現しにくい多様な教材が利用できる。現行版と比べ、東京書籍はデジタル教材を8倍以上増やし8776、教育出版は2倍近い1800とした。紙のページ数を減らすため、従来は教科書に載せていた教材の一部をデジタル化した会社もあった。

     文科省によると、デジタル教材は教科書ではなく、内容は検定の対象外。ただ教科書の内容と密接な関連がないケースなどは見直しを求めた。

     デジタル化を巡っては、教材とは別に、紙の教科書と同じ内容を端末で読めるようにしたデジタル教科書が、24年度から英語で本格導入される。

     ウクライナ侵攻に関する記述は、社会の歴史的分野と公民的分野の全点が載せた。人工知能(AI)関連の記載が目立ったほか、ジェンダーや家族の在り方を巡る内容も、おおむね増えた。

     社会は北方領土、竹島、尖閣諸島を「固有の領土」とする日本政府の見解を反映させた。

     平均ぺージ数は現行版から0・2%増え、記録のある04年度以降で最多。

     今回の検定は中学の103点が申請され、1点が不合格となった。社会の歴史的分野の2点は、検定結果の公表前に情報が外部に漏れたとして、合否が保留された。


    【深層表層】端末活用 教員の腕次第

     来春から中学生が使う教科書では、2次元コード(QRコード)の接続先のデジタル教材が大幅に充実した。 1人1台のデジタル端末配備が完了し、タブレットを使った学びが日常化したことに対応した。教科書会社が工夫を凝らし、動画や音声で習熟度に合わせた指導も可能だ。子どもの学びの幅は広がりそうだが、教員の教える力量が問われることにもなる。

     2月下旬、茨城県守谷市立けやき台中の2年生の英語授業。千田照子教諭(47)が冒頭「デジタル教科書で本文を読む練習をしましょう」と呼びかけると、生徒は自分のタブレットにつないだイヤホンを、慣れた様子で装着した。ある男子は本文の読み上げ音声の再生スピードを遅くして何度も聞き、隣の女子は新出単語の発音を聞きながら声に出す。教室は生徒の音読の声でにぎわった。

     デジタル教科書は2019年度に授業で正式に使えるようになった。22年度からは英語で実証事業が始まり、希望する全小中学校で使用されている。中身は紙の教科書と同一だが、英語は本文の読み上げ機能が標準装備されるなど、デジタルの特性を生かしている。

     向井田康平さん(14)は「分からないところを納得いくまで何度も確認できる」とデジタルのメリットを強調。千田教諭は「学習への苦手意識が薄れ、理解を諦める生徒が減った」と評価する。

      内容は各社裁量

     QRコードが大幅に増え、その先の動画などが充実した背景には、全小中学生へのデジタル喘未配備が完了し、現場からデジタル教材充実の要望が高まったことがある。ただ、これらはあくまで教材で、教科書とは別物との扱いだ。

     文部科学省は、教科書会社から提出されたサンプルや接続先のウェブサイト画面をチェックするにとどまり、教材の中身を事細かに審査しない。@紙の教科書の内容と密接な関連があるA児童生徒に不適切な情報でない―ど4項目を満たせば良く、文科省は「各社の創意工夫の部分で、最低限しか見ない」とする。

     裏を返せば、デジタル教材は自由に作ることができ、どこまで力を入れ、どんな内容にするかは各社の裁量だ。接続先のデジタル教材は教科書代に含まれ、各社にとって負担だが、質と量が採択を左右しかねないとの危機感から、対応せざるを得なかった面もある。ある教科書会社の担当者は「資金力のない会社には限界がある」と嘆いた。

     それでも1人1台端末で一気に加速したデジタル化の流れに乗り、各社は習熟度に合わせた使い方をできるようにしたり、理科の実験手順を説明する動画などを新たに作成したりした。

      紙との使い分け

     デジタル教材は無限に増やせるが、ある英語編集者は「今後は量よりも、子どもにとって本当に必要なものは何なのかを見極めることが必要」と指摘。国詰の編集者は「デジタルで読むより紙で読んだ方が定着しやすいとの研究結果もある」とし、紙とデジタルの「いいとこ取り」を訴える。

     教科書や教材が変わっても「最後は教員の腕」(数学編集者)。公立中で英語を教える30代の男性教諭は「今ではデジタル教材を使うのが当たり前。それなしに授業はできない」と歓迎しつつ「全てを使うのではなく、目の前の生徒に適したものを吟味して使いたい」と意気込んだ。



    3月23日 検定結果 性の多様性、身近な課題に

     性の多様性や新しい家族の在り方に関し、来春から中学生が使う教科書での記述が大幅に増える。道徳や保健体育では全社が性の多様性を題材にして、身近な課題として考えるための工夫が見えた。ただ指導内容を定めた学習指導要領は従来型の価値観を踏襲し、表現に制約もある。性的少数者の子どもを支援する専門家は「社会に合わせた変化が必要」と指摘する。

     男性2人の暮らしを描いた漫画「きのう何食べた?」や、同性カップルの育児を紹介する絵本「ふたりママの家で」−。技術・家庭で各出版社は、家族構成の例を並べる際にアニメ「ちびまる子ちゃん」のような父母や祖父母のいる家庭とは別の形を示した作品を、こぞって取り上げた。

     文部科学省によると、性の多様性に関して記述した教科書は現行版の16点から27点に増加。同性婚など「新しい家族の在り方」の扱いも6点から13点へ倍増している。

     多くの教科で目立つ変化が、スラックスを着用した女子生徒の挿絵だ。各地に性差のない制服が広がっていることを反映している。編集者は「学校にはいろいろな子どもがいる。傷つくことがないようにした」と話す。

     保健体育の1冊は、それぞれの人に性自認や性的指向があり、全ての人に当てはまる概念を表す「SOGIE(ソジー)」の説明を載せた。性的少数者に関する記述だけでは不十分との判断からで、担当者は「性的少数者だけを扱うと、自分の事ではないと受け取るかもしれない。誰もが関係ある大切なことだと示した」と意義を語る。

     課題も浮かぶ。例えば保健体育の指導要領には「異性への関心」「異性の尊重」といった指導項目がある。ある出版社は「異性」に限定するのを避けるため「思春期になると異性など他の人への関心が、高まる」といった表現を使って検定に合格した。

     道徳の指導要領には「父母、祖父母を敬愛し、家族の一員として充実した家庭生活を築くこと」との項目がある。編集担当者は「定められた内容がある中で、新しい家族像を示すのが一番難しい」と打ち明ける。

     元小学校教員でLGBTQ+(性的少数者)の若者支援に取り組む団体「Proud Futures」共同代表の小野アンリさんは「教科書に載ることで『LGBTQ+は学ぶべきもの』と認識される。当事者の子が安心できたり、偏見解消のきっかけにもなったりする。学校間で温度差を生まないため、国は指導要領を変えて、社会の意識変化に対応する必要がある」と強調した。


    アーティストやアニメ アスリートも登場

     新たな中学教科書には、米大リーグで活躍する大谷翔平選手をはじめとするトップアスリートのほか、中学生になじみの深いアーティストらが数多く取り上げられた。

     大谷選手は、国語や社会、道徳など5教科で登場。ある技術・家庭の教科書は、大谷選手が高校時代に「目標達成シート」を作り、自分の行動を自分で評価していたと紹介した。

     地理では、多国籍化が進む大リーグで活躍する日本人選手として掲載。道徳は、前代未聞の投打「二刀流」の道を選び記録を打ち立てていく過程を記した。「人生が夢をつくるのではなく、夢が人生をつくる」との本人の言葉を載せた英語の教科書もあった。

     元車いすテニスの国枝慎吾さんは、道徳など3教科。東京五輪の柔道で兄妹そろって金メダルに輝いた阿部一二三選手と詩選手は、道徳や社会に掲載された。

     国詰では「歌の言葉」とのテーマで、2人組音楽ユニット「YOASOBI」の「群青」や、人気バンド「緑黄色社会」の「始まりの歌」といったヒット曲の歌詞を扱った。美術は新海誠監督のアニメ映画「天気の子」の絵コンテや、制作時の様子を撮影した写真を盛り込んだ。

     技術・家庭は、個性的な衣装に身を包んだタレントのフワちゃんの写真を載せ、衣服の働きや自分らしさについて考えさせる内容となっている。保健体育は「自己形成」の単元で、将棋の藤井聡太さんを幼少期の写具付きで取り上げ、小学生時代に負けた際、将棋盤を抱えて号泣したというエピソードを紹介した。


    AIやSNS、各教教科で紹介

     さまざまな教科で人工知能(AI)やソーシャルメディアが取り上げられ、その仕組みや活用分野の広がりを紹介するだけでなく、負の側面も考えさせた。

     技術のある教科書は、生成AIは膨大な文章を学習することで人間のように質問に答えたり、文章を要約したりすると説明。ただ、なぜそうした回答を出すのかはブラックボックスで、正しいかどうかは検証が必要と指摘した。

     教育現場での生成AI活用が模索される中、生徒が生成AIを使って読書感想文を書き、クラスの代表に選ばれてしまったことを題材にした道徳教科書が登場。「私たちはAIとどのように付き合っていけばよいでしょうか」と問いかけた。

     メディアリテラシーの重要性も多くの教科書で取り上げられた。公民では、フェイクニュースやAIによる精巧な偽画像「ディープフェイク」を紹介し、交流サイト(SNS)などでむやみに拡散しないことを求めた。それだけでなく、自分と同じ考えの情報ばかりに接する状況を指す「エコーチェンバー」、好みの情報以外が届かなくなる「フィルターバブル」についても説明した。

     3年の国語では、ソーシャルメディアでうそやデマが大量に拡散されるのは「見たいものだけを見て、信じたいものだけを信じる」といった人間の思考や認知の癖が関係しているとの文章を掲載し、情報の信頼性をどう判断するかを考えさせた。


    新型コロナ、学びの題材に

     新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行した中、検定に合格した中学教科書では、生徒の関心を引きやすい身近な題材として取り上げ、深い学びにつなげようとするものがあった。

     公民のある教科書では、「公共の福祉」の中で、空港での検疫強化を紹介。新型コロナ対策として、日本に入国後に自宅やホテルなどで一定期間の待機が求められたとし、「どのような理由で入国者の人権を制限したのだろうか」と問いかけた。

     新型コロナ感染者への差別や偏見が、ハンセン病に向けられたものと似通っていることを指摘したのは1年の道徳。国立ハンセン病療養所で暮らすハンセン病回復者が「病気より、大衆の目のほうが怖かった」と振り返り、コロナ禍でも「社会の空気」で同様の事態が起きたと警鐘を鳴らしている。

     3年道徳でも、新型コロナ流行時に「他県ナンバーですが…県内在住です」とのステッカーを貼った車があったと紹介。その理由や、差別や偏見のない社会の実現に向けて何ができるかを考えさせた。担当した編集者は「コロナを題材に道徳的な価値について考えてほしい」と話す。

     新型コロナが教科書作りに与えた影響も聞かれた。数学の編集者は「感染防止の観点から、イラスト上でも生徒同士がなるべく向き合わないようにした」と明かし、地理の編集者は「最近の写真はマスク姿のものばかりで、選ぶのが大変だった」と話した。


    論点ピックアップ

     防災

     各教科の特徴に合わせ工夫

     防災教育の重要性が高まる中、それぞれの地域における防災対策に目を向けさせたり、避難所運営の在り方を問いかけたりと、各教科の特徴に合わせて防災について考えを深めさせる工夫が随所に見られた。

     3年の理科では、自分が住む地域で過去に起こった自然災害の調べ学習を設定。災害の伝承碑や活断層調査を題材にしたリポートを例示し、過去の経験が現在の災害対策にどのように生かされているのか分析を促した。

     公民では、東日本大震災時に岩手県内の高校に設置された避難所に着目し、運営を生徒や教職員が担ったことを紹介した。自分の学校が避難所になった場合、どんなルールで運営されるのが望ましいのかを考えさせた。

     緊急地震速報の仕組みを提示し、実際のデータを基に計算させたのは1年の数学。道徳では震災の際に生徒らが無事だった岩手県内の実例を紹介し、非難訓練の意味を問いかけた。

     ウクライナ侵攻

     歴史・公民、全点で掲載

     ロシアによるウクライナ侵攻について、合格した新たな中学教科書では、社会の歴史的分野と公民的分野で全点が掲載した。国際社会の平和を考えるきっかけにし、避難民へのボランティアを取り上げたものもあった。

     歴史教科書では、国連でロシアの即時撤退を求める決議が採択され、多くの国が経済制裁を実施したことを紹介し、多数のウクライナ避難民への支援が課題と言及。公民は侵攻が小麦の価格高騰につながったことを指摘したり、持続可能な開発目標(SDGs)との関連で盛り込んだりし、地理は4点中3点が取り上げた。

     3年国語の教科書に掲載されたのは、ウクライナの大学に留学経験があるライターの文章。留学の思い出や日本に避難してきた友人の支援活動に触れ、平和について考える内容になっている。

     ある教科書会社は、道徳で国境なき医師団や広島の被曝の記憶を語り継ぐ語り部などを取り上げた。

     領土

     政府見解、記述が定着

     領土に関する指導を求める学習指導要領に従い、合格した社会の教科書全てが竹島(島根県)や尖閣諸島(沖縄県)、北方領土の説明を載せた。内容は現行版を踏襲し、特に地理や公民の分野で政府見解を反映して「固有の領土」と記述する文面が定着した。検定意見も細かなミスの指摘にとどまった。

     多くの教科書が見開きの特集ページを設け、地図や写真で編入の経緯や周辺国との対立などを詳しく解説。最近の国際情勢を踏まえ、ロシアのウクライナ侵攻に伴って北方領土の返還を巡る交渉が中断されたことに触れた公民教科書もあった。検定意見が付いたのは、写真の撮影年や地図の間違いといっ た細かい点のみだった。「政府見解に基づく説明が不足している」などの観点からの指摘はなかった。

     ある編集者は「領土を巡り、文部科学省側が求めるものは大体イメージできており、現行版と同様の内容を盛り込んだ」と話した。

     NIE

     さまざまな教科で読み比ぺ

     教育現場で新聞を活用するNIE(教育に新聞を)の広がりを受け、記事を読み比べさせるなど、さまざまな教科で新聞が学びの題材となった。

     3年国語のある教科書では「奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島」の世界自然遺産登録から1年後の状況を報じた二つの特集記事を掲載。観光客増加による経済効果や生態系保護の重要性などについて、文章構成によって読み手の印象が異なることを学ぶ内容となっている。1年の道徳は、街中のごみ箱を巡る新聞の投書を題材にした。海外に比べ少ないとして増設を求める読者の意見に対し、「きれいな景観を維持するために観光名所などには設置を」「環 境を守るためにごみは持ち帰るべきだ」といった賛否の声を紹介し、生徒に考えさせた。



    3月22日 京大 理・工学部に女性枠

     京都大は21日、2026年度入試から理学部と工学部に「女性枠」を設けると発表した。両学部の特色入試に女性のみが出願できる計39人の定員枠を新設する。両学部ではジェンダーバランスの悪さが際立っているが、「女性が潜在能力を発揮できる環境が科学の発展に欠かせない」としている。

     京大では、理学部が昨年5月時点で女性比率が全学部中で最低の7・9%で、工学部も10・1%と全体の22・4%を大きく下回っている。理工系で女性の受験生をどう増やすかが長年の課題だった。

     女性枠39人の内訳は理学部が15人、工学部は24人。一般入試とは別に実施する特色入試の定員枠を拡大して導入する。理学部は独自の学力試験や口頭試問、小論文で合否判定する総合型選抜のうち、「物理学・数学」型に10人、宇宙・地球惑星科学」型に5人を充てる。工学部は学校推薦型選抜の「地球工学科」など5学科で導入する。

     湊長博総長は会見で、「ジェンダーバランスを欠く状況は持続的な科学の発展にマイナスだ。多彩な能力を評価する特色入試で、高い潜在能力を持つ女性を幅広く受け入れたい」と述べた。

     「理系女子」の獲得に向けた女性枠の開設は、東京工業大が24年度入試で58人の女性枠を設け、翌年度には全体の募集定員の14%に相当する計143人に拡大する方針。名古屋大は23年度から実施している。他の国公立大でも導入の動きが広がっている。



    3月22日 滋賀県石部高 「重大事態」後もいじめ

     滋賀県立石部高(湖南市)の野球部で本年度、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に認定されたいじめがあり、認定後も部内のいじめが継続していたことが21日、分かった。被害生徒側は「学校や県教育委員会の対応に大きな問題があった」と批判しており、学校が設置した調査委員会も対応の瑕疵を認めている。

     同調査委による報告書によると、野球が初心者だった被害生徒は昨年8月の対外試合でミスを他の部員から責められた。それまでにも部員からのいやがらせや暴力があったこともあり、同9月5日に朝から行方不明となり「いなくなりたい」と自殺をほのめかすLINE(ライン)が部活顧問に送られてきた。生徒は同日夕、自宅マンションの6階で見つかった。

     学校側は対策委を同日に開き、12日に重大事態に認定。弁護士やスクールカウンセラー、県教委職員らによる調査委を立ち上げた。だが、その後も複数の部員が授業で被害生徒を仲間外れにしたり、部員間で示し合わせて級友のLINEグループから勝手に被害生徒を外したりしたという。

     被害生徒は今月、退部届を提出した。

     報告書は「深刻な状況の認識に欠け、組織対応や被害生徒への支援、加害生徒への指導に問題があった」などと学校の対応の問題点を挙げている。

     被害生徒の保護者は「再三にわたり被害を訴え、加害生徒への指導強化を学校や県教委に申し入れていたが、いじめが続いた。とにかく、子どもが安全に学校生活を送れるようにしてほしい」と訴えている。

     京都新聞社の取材に対し、同高の遠藤彰校長は「個人情報にかかわることであり答えられない」、県教委いじめ対策支援室は「被害生徒側から取材を受ける許可を得ていないため、今の段階では答えられない」としている。


    【解説】学校主体の調査に弊害

     石部高野球部で起きたいじめの調査報告書は「学校の組織対応に問題があった」としたが、校長や部活顧問ら教員の具体的な対応が盛り込まれなかった。再発防止の観点から不十分と言え、第三者委員会による検証が必要だ。

     今回の事案での最大の問題は、学校側がいじめを把握し対策委を設置しているにもかかわらず、さらなるいじめを許したことだ。被害生徒への支援と加害生徒への指導の面で、学校や県教育委員会に課題があったことは明らかだ。

     重大事態発生時に、調査委を学校主体で設置するのは「事後の生徒支援を考えており滋賀県では標準的」(県教委)という。だが、いじめ問題では生徒の指導・支援を行う学校自体も当事者となる。教員の具体的対応の問題点が記載されない報告書は学校が主体となって調査する弊害を示したと言える。

     県にはいじめ再調査委員会があるが、調査の長期化は被害生徒側の負担が極めて大きい。県教委は、外部委員でつくる県立学校いじめ問題調査員会への調査一本化を検討する必要がある。(立川真悟)


    学校側の調査が不十分だったとの指摘は多分その通りなのだろうが、いじめの原因が部活に関わってのことだとするならそこへの言及も含めて「報告書」は記述されていなければならいだろう。おそらく、部内での顧問や監督なの発言などが批判の対象となることを避けたのではないだろうか。


    3月22日 京都府 温室ガス吸収量販売

     京都府は新年度、府有林の温室効果ガスの吸収効果を数値化し、企業に販売する取り組みを始める。府は売却益を新たな森林整備に充て、購入する企業は事業で排出した温室効果ガスを相殺することで社会的責任を果たす、という好循環をつくり、2050年までにガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の達成につなげる。府は年間約8千万円の収入を目標にしている。

     府の総面積のうち森林面積は34万へクタールと約4分の3を占める。うち府有林は7千ヘクタールで府内の所有者では最大となっている。府は22年に 府内産木材の利用促進に向けた条例を施行し、間伐や植林などの森林整備に年間約2億円(国補助を含む)をかけている。

     事業は、13年度に始まった国の制度「J−クレジット」を活用する。府の森林管理で得た温室効果ガス吸収量を数値化し、現金で販売できるようにする。近年はカーボンニュートラルの達成目標を公表する企業も多いため、吸収量を購入し、事業で排出した温室効果ガスの相殺などに使ってもらう。売却額は相場や企業との個別交渉で決める。

     府は2月29日、ノウハウを持つ三井物産(東京)と協定を結んだ。同社には府有林から生まれた吸収量を半分譲る代わりに国への申請や企業への販売などの実務を引き受けてもらう。さらに府の持ち分となった吸収量が売れ残れば、同社が買い取るという。

     9月に国に申請し、来年9月以降に販売する予定。制度は民間の林業事業者らも活用できるといい、府林業振興課は「興味はあっても手続き面から足踏みしている場合が多いため、府が率先して取り組んでノウハウを広め、活発な森林整備につなげたい」としている。


    二酸化炭素の排出を金銭化することで削減の効果を狙うことは一定の温暖化対策には有効かもしれない。しかし、このことによって実質的な二酸化炭素の排出が減るわけではない。数値だけが先行して何らかの「対策」を取っているようにみえる「グリーンウォシュ」でもある。また、そのことが原発容認のための「科学的根拠」にされる可能性も含まれる。


    3月20日 政府 日本版DBS法案提出

     政府は19日、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」創設法案を閣議決定し、国会に提出した。学校や保育所などに確認を義務付け、性犯罪歴がある人は刑終了から最長20年、採用されないなど就業を制限。性犯罪歴がなくても、雇用主側が子どもの訴えなどから「性加害の恐れがある」と判断すれば、配置転換など安全確保措置を行う。乱用の懸念もあり、判断基準や調査方法のガイドラインを今後策定する。

     法案の略称は「こども性暴力防止法案」で今国会成立を目指す。制度開始は準備斯間を経て2026年ごろになる見通し。3年後に法律を見直す。相次ぐ子どもの性被害を根絶できるかどうかが問われる。職業選択の自由とのバランスも求められる。

     学習塾や放課後児童クラブ、スポーツクラブなどは任意の「認定制」とする。国の認定を受けた事業者は広告表示が可能となり、性犯罪歴確認や安全措置の義務を負う。認定を受けていない事業者や、フリーランスのベビーシッターなど雇用関係を持たない個人事業主は義務化の対象外。

     照会できるのは裁判所で有罪判決が確定した「前科」に限られ、期間は拘禁刑(懲役刑と禁錮刑を25年に一本化)が刑終了から20年、罰金刑以下は10年。痴漢や盗撮などの条例違反も含む。

     こども家庭庁が情報照会システムを構築。就労希望者について雇用主側が確認を申請し、性犯罪歴があった場合は、同庁が本人に事前に知らせる。内定を辞退すれば雇用主側に「犯罪事実確認書」を交付しない。

     既に働いている人に性犯罪歴が確認されれば、雇用主側は@子どもと接する業務から配置転換A子どもと2人きりにならないようにする―などの安全措置を取る。難しい場合、最終手段として解雇も許容されうる。


    【性暴力にあらがう】判決出ても戻らぬ日常

     昨年8月に知人の男から性暴力を受けた、滋賀県内の高校に通う女子生徒(18)が今月、卒業式を迎えた。加害者の男は大津地裁で有罪判決を受けたが、被害者にとってそれで終わりではない。事件前は当たり前のように存在していた日常が何もかも失われた。改めて取材に応じた彼女は記者を前に、出口の見えない苦しみを吐露した。

     「泣いたらすみません」。卒業式を控えた2月下旬、女子生徒は記者の取材にこう切り出した。「自分が大丈夫と思っていても、コップに張った水みたいに何かの弾みで気持ちがあふれてしまう」

     京都新聞社は昨年10月15日、女子生徒の性被害を報じた。昨年8月、補習授業を終えた女子生徒は、母親の迎えを待つため学校近くの一軒家に向かった。この家は普段から生徒たちが迎えを待ったり休息目的で訪れ、家主の男は庭で採れた作物を生徒に与えていた。彼女も何度か訪れたことがあり、庭で待っていると男にエアコンの効いた部屋に誘われた。突然背後から抱きつかれ、体を触られた。

     事件の後、女子生徒は急に泣いてしまうことがあるという。一方、今では「本当に自分の身に起きたことだったのだろうか、と不思議な気持ちにもなる」(昨年10月15日の紙面より)

     彼女が勇気を振り絞って取材に応じたのは、「報道されることで学校や生徒に危機意識を持ってほしい」という強い願いからだった。報道後、学校は被害情報を共有し、親の迎えは教室で待てるようにするなど対策を講じたという。

     ところが、友人に彼女の思いはうまく届かなかった。2人の友人がインスタグラムに投稿し、「これおじちゃんみたい」とコメントを付け、一軒家の男が加害者であることを仲間内で話題にした。

     2人に悪気はなかったのだろう。でも、性暴力被害者にとって絶対に軽々しく扱ってほしくない情報だった。すぐに友人間では「被害者捜し」が話題になり、投稿が拡散することで別の生徒が被害者だと勘違いされる恐れがあった。

     教師に相談し、教師が2人に注意したことで、すれ違いが始まる。1人からは「友だちなら言ってくれたって良かった」とLINE(ライン)が送られてきた。「性被害のことはそんな簡単に言えることじゃない」。亀裂は、やりとりを重ねるほど広がった。

     この友人はいつも一緒に過ごした仲で、高校時代のアルバムは一緒に撮った写真ばかりだった。2人とはLINEやインスタグラムのつながりを絶った。関係は並行線をたどり、再び交わることなかった。

     事件を境に受験勉強にも集中できなくなった。学校へ行くことはできても、教室には入れなかった。結局、第1志望の大学には合格できなかった。

     彼女の高校生活は性暴力によって台無しにされた。「車に飛びめば楽になれるかも」。そんな考えが頭をよぎった時もあったが、支えてくれる大人を思い出して踏んばった。仲の良かった女性教師は親身になって相談に乗ってくれた。母親は「遅刻してもいいから学校に行きな」と背中を押してくれた。女性刑事も話しやすい人だった。

     「しんどい時はとりあえず泣いて、信用できる大人に聞いてもえば良いんだと分かりました」。旅立ちの季節。青春期に奪われたものは余りに大きかったが、前を向いて大学生活へ踏み出そうと決意している。(浜田大地)


    子どもの性被害は何としても防がなければならない。女性だけが被害にあうとは限らないことは、ジャニー喜多川氏の性加害問題を見ても明らかだ。ただ、こうした事件に対する論評や報道が「男性の視点」から書かれることが多いような気がするが、被害の側の立場から問題をどうとらえて対策を立てるかということが重要なのは言うまでもないだろう。
    また、これらに関わる裁判がどこまで丁寧に審理されているのか疑問視されるケースもある。「痴漢冤罪について弁護士の解説」には目を通しておきたい。


    3月20日 家庭科男性教員 府内で2人

     高校の家庭科が男女共修になり、今年で30年。だが今も「家庭科は女子の教科」との見方が世間に根付いてはいないだろうか。丹後地方で勤務していた10年ほど前、家庭科教員の男性と知り合った。職業を教えてもらった時、自分の無意識の偏見から思わず驚いてしまった。現在も家庭科教員に占める男性の割合は際立って低く、依然として顕著なジェンダー不均衡が存在する。(三鼓慎太郎)

     京都府総合教育センター北部研修所(綾部市)で研究主事として勤務する片山直樹さん(41)=与謝野町。滋賀県立大で家庭科と栄養教諭の免許を取り、昨年に閉校した宮津高伊根分校(伊根町)などで教壇に立った。「家庭科の教員だというと年配の先生からびっくりされることがある」という一方、「男性だからといって授業のやりにくさはなく、子どもたちはこちらが思うほど違和感なく受け入れてくれる」。

     以前は女子のみの必修で料理や裁縫といったイメージが強かった家庭科だが、実際は全ての教科の生活に関わる部分を体系的、総合的に学ぶ教科で、昨年度からは金融教育が必修化された。共働き世帯が増加するなど人々のライフスタイルが様変わりする中、片山さんは「受験科目ではないため中心になりにくいが、学ぶことで世の中の見方や捉え方を知ってもらう機会になれば」と期待する。

         ◇

     性別にかかわらず子どもたちが社会で生きていく力を身に付けるための教科という家庭科の役割を考えるとジェンダーバランスの均衡が望ましいが、現実には男性教員の数は圧倒的に少ない。京都府、滋賀県の各教育委員会によると、京都府立高の家庭科教諭58人のうち男性は2人。滋賀県立高は66人全員が女性だった。高校家庭科が男女共修となったのは1994年。30年を経て社会規範が変化する一方、学校現場では旧来の性別職域分離が残されたままになっている。

     そもそも、男性が家庭科の免許を取得できる大学は限られている。京滋では、国公立で男女共学の京都教育大や滋賀大教育学部、滋賀県立大のみ。ほかは京都女子大(食物栄養学科、生活造形学科)や京都ノートルダム女子大(生活環境学科)、京都華頂大(生活情報学科)など女子大ばかりだ。家政学を学べるのは女子大に偏っており、男性には限られた選択肢しかない現状が浮かび上がる。

        ◇

     南丹高(亀岡市)の森津伸明教諭一(30)は数少ない男性の家庭科教員だ。1年生の各クラスで週2コマ、授業を受け持つ。同じく教員の妻と共働きで、2歳の娘を育てている。過去には1年間の育児休業を取得したこともあり、泣きやまない時にずっと抱っこをして寝かせたエピソードを授業中に紹介するなど、子育ての楽しさと大変さを等身大で生徒たちに伝えている。

     調理実習やお菓子作りが好きで、昔から教師になることが夢だったという森津さん。「自分の生活を自分の手で豊かにすることができる」と家庭科に興味を持ち、京都教育大の家庭領域専攻で学んだ。20人ほどいた同級生の中で、男性は自分のみという女性ばかりの世界。自身は気にならなかったが、集団になじめず距離を置く後輩も見た。他専攻の友人から「すごいな。俺は無理やわ」と冷やかされた場面もあった。

     家庭科教員になりたくてもその思いを阻害するような社会の風潮が存在する。平等に見える学校教育の場が実はジェンダーを再生産し、意図しないままにそれを学び取るという「隠れたカリキュラム」の問題も指摘されている。それでも森津さんは「皆がなりたいものになろうとすればいいというシンプルな話。実力と違う部分で断念するのはもったいない」と強調する。

     「ジェンダーギャップに対抗したいとの思いがあり、自分が存在するだけでも影響があるのではないか。生き生きと働いている姿を子どもたちに見せたい」と前を向く。


    「なとせん」の異名で知られたかつての小学校教員名取弘文さんは、家庭科専科になった記録まとめている。また『教室に広場を』の著者・村瀬学も家庭科学習の意義を強調している。学校におけるジェンダーの問題は「男女別名簿」をどう考えるかが議論された時代からさほど変わっていないのだろうか。改めてフェミニズムの視点から考えてみたい。岡野八代・『ケアの倫理』は参考になるだろう。


    3月19日 綾部市 指針50倍超の有機フッ素化合物

     綾部市の河川で国の暫定指針値の50倍を超える有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題で、流域の住民に不安が広がり、排出防止など早急な対策を求める声が上がっている。PFASは発がん性があるとされ、農作物に含まれる恐れもある。専門家は農作物や土壌の検査を行い、汚染実態を把握する必要性を指摘している。

     PFASはフライパンや防水スプレーなどの日用品のほか、泡消火剤や半導体製造にも使用された。有害性が指摘され、代表物質のPFOSやPFOAの製造・輸入が禁止されている。

     京都府は昨年8月、綾部市を流れる犀川で1リットル当たり合計で150〜240ナノグラムの両物質を検出し、暫定指針値の50ダ侈を超えた。排出元とみられる事業場がある支流の天野川では2800ナノグラムと56倍に上った。

     府は事業場側に、ろ過材の活性炭を交換するよう要請。翌月の検査で事業場からの放流水は4万9千ナノグラムから3万6千なおグラムに下がったが、高い数値だった。管轄する府中丹東保健所(舞鶴市)は「交換で十分な効果は見られず、汚染は続いている。排出には法的規制がなく、事業者にお願いベースの指導しかできない」とする。事業場の地元男性は「不安が広がっており、排出を止める対策を早く講じてほしい」と訴える。

     犀川流域でも同様の声がある。綾部市今田町の永井祐子さん(69)は昨年11月、PFAS汚染に詳しい京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)に依頼し、同町の犀川と農業用井戸水を調べた。犀川からは1リットル当たり60ナノグラムを、井戸水では最大24ナノグラムを検出した。

     永井さんは有機農法で栽培した野菜を直売施設に出荷してきたが、取りやめた。排出防止に加えて「行政が農業用井戸や土壌、農作物で住民の健康調査もやるべきだ」と求める。同町の農業大槻康夫さん(70)は昨秋、収穫した米を自費で検査。検出限界値以下だったが野菜も含めた行政による農作物の調査を訴える。

     綾部市は「土壌や農作物の評価に必要な国の指針がなく、実施予定はない」と説明する。一方で原田准教授は「住民がPFASを摂取しないのが一番の目標。農作物検査で住民が摂取していないことを示すのも重要だ。汚染の広がりを知るためにも土壌検査が必要」と話す。


    【インサイド】全国で検出 水道水でも汚染

     全国の河川や地下水では国の暫定指針値(1リットル当たり50ナノグラム)を超える有機フッ素化合物(PFAS)の検出が相次ぎ、水道水でも汚染が起きている。健康状態を調べようと、血中のPFAS濃度を調べている市民団体もある。

     環境省による2021年度の調査では1133地点中、13都府県の河川や地下水の81地点で暫定指針値を超過した。岡山県吉備中央町では昨年10月、水道水で1リットル当たり1400ナノグラムを1年前に検出したことが判明。福知山市の芦渕浄水場でも同月、75ナノグラムを検出した。

     沖縄県では米軍嘉手納基地(嘉手納町)周辺にある浄水場の水源でPFAS汚染が分かり、県は取水制限や高機能活性炭への交換を実施した。大阪府摂津市では空調大手「ダイキン」の工場周辺の地下水から高濃度のPFASが検出され、同社は地下水のくみ上げや浄化処理を行っている。

     血中のPFAS濃度を調べる動きもある。東京都多摩地域の市民団体は昨年、立川市など30市町村に住む789人を調査。米国の学術機関が示す指針値を超えたのは365人に上った。大阪府でも市民団体が摂津市などの住民の血液検査を行い、結果を分析中という。         


    環境省PFASの健康影響研究へ

     発がん性が指摘される有機フツ素化合物(PFAS)を巡り、環境省は18日、北海道大と兵庫医科大、国立医薬品食品衛生研究所に委託して健康影響について研究を始めると発表した。PFASは免疫機能などへの悪影響も懸念されているが不明な点が多く、知見の拡充を目指す。

     研究は3年間の予定で、6月ごろ開始。北海道大は胎児期から10代後半までの約700人分の血液に含まれる約30種類のPFASの濃度などから発育や脂質代謝への影響を研究。兵庫医科大はマウス実験でワクチンの効果を低下させる免疫抑制があるかどうかを調べ、国立医薬品食品衛生研究所は分子レベルで毒性のメカニズム解明を目指す。


    化学物質による水質汚染は、「チッソ」の派出汚染水による水俣病を想起させる。行政による水質検査が行われず被害が拡大した。「ノーモア・ミナマタ第2次訴訟」弁護団は現在でも活動を続けざるを得ないとしている。また、米軍基地での汚染については早くから指摘されているが、対策は日米地位協定によりほとんど手つかずのままだ。早期の行政的対応が望まれる。


    3月17日 【教育】北総合 元格至小に分校

     京都市立北総合支援学校の中央分校が4月、下京区の元格致小に開校する。総合支援学校の児童生徒の増加に伴い新設され、中京区と下京区在住の児童生徒が通う。子どもや保護者は新たな学校生活に期待を寄せる一方、これまでと異なる環境にスムーズに慣れることができるか少なからずの不安も抱いている。(河北健太郎)

     2月中旬、真新しい教室や体育館を、春から分校に通う北総合支援学校(上京区)と東総合支援学校(山科区)の中学生約20人が見学した。京都南ライオンズクラブから寄贈されたトランポリンやVRゴーグル、花壇などの贈呈式もあり、字どもたちは早速、トランポリンで跳びはねて笑顔を見せた。生徒の代表は「4月からトランポリンで遊ぶのが楽しみです」と感謝した。

     分校は、元格致小敷地(下京区油小路通仏光寺下ル)に設置され、祇園祭の太子山保存会の会所が目の前にある市街地に位置する。校舎は2017年から3年間、下京雅小の校舎として使われた2、3階建ての3棟と体育館を改修した。バリアフリー化した上で、大型エレベーター3基や多機能トイレを新設し、体温調整が難しい児童生徒のためにエアコンをトイレにも完備。校舎前には通学用マイクロバス乗降場を整備した。敷地面積は約5千平方メートルで総事業費は約10億円。

     居住地で通う学校が決まるタイプの京都市の総合支援学校としては5校目で、20年ぶりの開校となる。背景には総合支援学校に通う子どもの増加がある。23年度の児童生徒数は全体で879人と10年前から約2割増え、市教委は28年度には1081人になると見込む。呉竹総合支援学校(伏見区)や西総合支援学校(西京区)で増築工事を進めるが、北総合は増築場所が確保できないため、市教委が20年に格致自治連合会と協定を結び、分校の開校が決まった。

     分校には中京区と下京区在住の身体や知的に障害がある小中高生が通う。中京区から北総合に、下京区から東総合に通っていた子どもが転校し、24年度は児童生徒数約80人を見込む。医療的ケアが必要な子どものおり、常勤看護師も配置する。

     子どもたちにとってはさまざまな変化がある。通学ではこれまでの大型バスではなく、マイクロバス4台が各コースを回る。東総合に通っていた子どもたちの移動時間は短縮される見込みで通学の負担は減りそうだ。だが、公共交通機関などで自主通学する生徒にとっては通学路が大幅に変わることになり、1月下旬の保護者説明会では、分校周辺は車や人通りが多いことに対して安全面で不安の声も出た。

     普段の学習内容も変わる。山の麓に位置する東総合では、自然豊かな環境を生かした農園作業や山歩きなどの学習が好評だったが、まちなかに位置する分校では染めや織り、刺しゅうによる布作品の制作や、野菜の水耕栽培、校内図書室での活動などを想定する。そのため1月末の保護者説明会では、こうした学習内容の変更に関する質問が相次いだ。

     東総合に子どもが通う母親(45)は「環境の変化が大きなストレスになる子どもも多いが、これまでと変わらず楽しく学校に通い、無事に帰宅することを一番望んでいる。安心して過ごせる環境づくりを最優先にしてほしい」と話す。市教委は「北総合、東総合から個別の指導計画の引き継ぎをしっかり行い、教職員が一人一人の児童生徒に寄り添い、保護者とも学校の様子を共有したい。児童生徒が安心して新しい学校での生活を送れるよう、学校の取り組みを全力でサポートしたい」としている。


    2022年9月国連の障害者権利委員会は、総括所見で日本政府に対し「特別支援教育の廃止」「『特別支援学級の生徒が半分以上の時間を普通学級で過ごすべきではない』とする文科省通知の撤回」など、6項目をほかのテーマより強い、喫緊の課題として勧告した。世界的なトレンドとしては明らかにインクルーシブ教育なのだが、日本の障害児教育の方向は反対だ。今春開校される「分校」も外見上は「手厚い」施設を多数整備しているが、ソフト面としての教育は権利員会が批判している「分離教育」に他ならない。市教委はインクルーシブ教育を進める方向でのガイダンスを子どもや保護者向けにしたことはあるのだろうか。この問題を考える材料として「インクルーシブって何だろう」(東洋経済オンライン)には目を通しておきたい。
    3月15日 市教委 教員採用予定者3割増

     京都市教育委員会は、2024年度実施の教員採用試験の採用予定者数を前年度から3割増やす。教員の産育休や病気休業に伴う臨時教員の確保が困難になっていることが背景にあり、市教委は「常勤教諭の数を増やし、持続可能な学校体制の構築を進めたい」としている。

     24年度の採用予定者数は305人で、内訳は小学校教諭が60人増の150人、中学校教諭は10人増の70人。市教委は22年度以降は、児童数の減少や教員の定年退職年齢の引き上げを見据えて採用数を絞り込んでいた。高校や総合支援学校の教諭、養護教諭、栄養教諭は前年度と同じとした。

     市教委は15日午前9時に、ホームページで24年度実施の教員採用試験の概要を公表する。教員のインタビュー動画や働き方改革の事例などをまとめて紹介するページも新設し、同日正午から公開する。


    「教員のインタビュー」の印象だが、やはりCMという感じがする。もちろん多くの受験者を獲得するためなのだから建前的なインタビューになってしまうのは仕方がないとしても、その裏を読むことのできる人ひとの中に実は優秀な人材があるのではと思う。そうした人を引き付けるような動画になっているのだろうか。自分目と耳で確認してみてはいかがだろうか。 【子どもアドボカシー】。


    3月15日 UAゼンセン パート賃上げ6.45%

     小売りりや外食、繊維などでつくる、連合傘下で最大の産業別労働組合「UAゼンセン」は14日、今春闘の平均賃上げ率がパートタイムで6・45%、正社員で5・91%といずれも過去最高になったと発表した。全国に店舗があるイオンのグループ各社が競合他社に先駆けて大幅なパートの賃上げを打ち出したことで、人材確保に危機感を持った地方のスーパーやドラッグストアなどがパートの賃上げに応じたという。

     東京都内で記者会見したUAゼンセンの松浦昭彦会長は「正社員とパートの格差を是正するような賃上げだ」と評価。「今年は首都圏と地方の格差も昨年よりも小さくなっている」とした。

     平均賃上げ率は正社員が月給ペース、パートが時給ベース。パートの賃上げ率が正社員を上回るのは2017年春闘から8年連続で、就業形態による格差の解消が進んでいるという。松浦氏は、地方の中小企業の賃上げには適切な価格転嫁が必要だとも指摘しな

     UAゼンセンは14日午前10時時点の妥結状況を集計した。正社員は127組合、パートは104組合が妥結。契約社員も含めて計約80万人の賃上げが決まった。例年よりも妥結が早く、満額回答の企業が多かったことも特徴という。

     個別企業のパートの賃上げ率では、イオングループでドラッグストアのウエルシア薬局の7・95%、総合スーパーのイオンリテールの7・02%、家電量販店のピックカメラの7・03%が目立った。正社員の賃上げ率は、ピックカメラが11・83%、イオンリテールが6・39%だった。家具や日用品を販売するニトリは6・00%。


    【インサイド】時給18ヵ月連続前年超え

     パートタイムやアルバイトの時給は過去最高水準で推移している。民間調査では全国の2月の平均時給は1233円で、18ヵ月連続で前年同月を上回った。パート従業員が多い小売りや外食業界では、消費者の節約志向の強まりなど経営環境に逆風が吹いているものの、待遇改善による人材確保を優先していることが浮き彫りとなった。

     求人情報サイトを運営するマイナビ(東京)よると、平均時給は2023年7月に1200円を超え、9月から今年1月まで5ヵ月連続で過去最高を更新した。上昇ペースに目立った地域差はなく、職種では小売りや外食の求人が堅調だ。

     経営が苦しい中で賃上げを決めた企業もある。作業服大手ワークマンは昨年11月に社員とパートの賃金を平均5・1%引き上げると発表。円安で減益が続く中ではあるが「賃上げで従業員の生活を守る」としており、人材のつなぎ留めに必死だ。

     今春闘で上昇傾向に弾みがつくことになるが賃上げの流れが定着するかどうかは不透明だ。

     14日のUAゼンセンの記者会見で担当者は、交渉過程で「(仕入れ価格の上昇など)コスト増の中で人件費の増加分をどう確保するのか悩む経営側の発言が続いた」と明かした。賃上げが消費の拡大につながるかどうかが鍵を握りそうだ。


    非正規労働者の賃金引き上げの実態はどうだろうか。NPO法人POSSE代表の今野晴貴はYahooニュースで「「賃上げ」でも非正規を差別?スシローなどで「一斉ストライキ」へ」との記事を掲載して、3月13日に回転寿司チェーンのスシロー、スーパーマーケットのベイシア、学習塾の市進、英会話学校のGabaでストライキ行動が行われたことなどを報告している。官製春闘と揶揄される状態が続くが労働組合の基本は労使交渉であることを改めて知らされる。


    3月14日 市立小学校 卒アル作文 見直す動き

     京都市立小で、卒業アルバムにとじられている作文を取りやめ、各児童の思い出を別の形で残す学校が出てきている。文章のチェックにかかる多大な労力を省き、教員の働き方改革を進めようとする動きが背景にある。一方、作文を「6年間の集大成」と位置づけ、継続している学校もあり、対応は分かれている。

     「あきらめたらそこで試合終了」「失敗は成功の基」「人生は冒険」

     七条第三小(中京区)の昨年度の卒業アルバムには、前年度まで作文が掲載されていた後半部分に、6年約80人がそれぞれ選んだ「座右の銘」が記されている。人気スポーツ漫画のせりふやスポーツ選手の言葉などが多く、選んだ理由も添えられている。

     卒業アルバムの作文の取りやめは、教員と児童の負担軽減を図るため、当時の校長が決断した。代替の企画を6年生担当の教員と相談し、国語の授業で考えた「自分の大切な言葉」を「座右の銘」として載せることにした。

     児童は座右の銘とそれを選んだ理由を、各自のタブレット端末から担任に送信。手書きではないため、修正の手間が減ったという。手書きの文字も一部で残そうと、「友」「心」など6年間の学校生活を表す漢字一文字と自分の名前は、毛筆で記してもらった。中野真吾校長(47)は「作文や手書きの清書が苦手な子どももいる。6年生の気持ちや考えが、作文よりも分かりやすくまとまっていると思う」と話す。

     卒業作文にこだわる学校もある。御所東小(上京区)は卒業アルバムの後半40ページを文集に充て、毎年12月初旬から作文の作成にかかる。国語の授業を活用しており、学校生活の思い出をみんなで語り合った後、各自が下書きの作成にとりかかる。担任は誤字脱字や文章構成のチェックをする。冬休み期間には校長ら管理職が目を通した後、児童が450字程度の原稿用紙に手書きで清書し、1月末に業者に引き渡す。

     高橋明希校長(53)は「子どもたちの6年間の集大成が作文だ。思い出を作文という形で残し、一区切りつけることで中学生に羽ばたける」と意義を語る。働き方改革の一環で、卒業作文を取りやめる動きについては、「時代にそぐわないから廃止するというのは一つの考え方だが、大人の都合で取り組みをやめるのは違うと思う」と疑問を投げかける。

     文部科学省の「全国の学校における働き方改革事例集」でも、卒業文集を廃止した事例が紹介されているが、市教委は「各学校が子どもたちの目線でさまざまな取り組みを進めており、それらを尊重したい」としている。


    「卒業アルバム」は学校の定番とされている。それを継続するか廃止するか、あるいは改編していくかは当然各学校の考え方で、市教委の「それらを尊重したい」との言は上から目線を感じてしまう。ただ、小学校などでのアルバム作成が必ずしも必要なものではなく、「子どもの気持ち」を表現しているものでもないとの認識の上で検討すべきだろう。現在では記録のメディアも多様にあるのだから。


    3月12日 東日本大震災13年 鎮魂のともしび、各地で

     東日本大震災から13年を迎えた東北地方の被災地では11日夜、犠牲者の追悼や防災推進を目的に灯籠をともしたり、花火を打ち上げたりする行事が行われた。

     仙台市中心部の市民広場では「毎日を大切に」などと書かれた紙コップ約2000個にろうそくを入れて点灯。同市若林区の養護教諭渡辺真理さん(41)は「大震災を忘れないためにも続けてほしい」と願った。

     児童と教員計84人が津波の犠牲となった宮城県石巻市の震災遺構「大川小学校」では、当時在籍した児童数と同じ108本の「竹あかり」が周囲を照らした。

     小学5年生だった千聖さん=当時(11)=の父紫桃隆洋さん(59)は「13年たったが亡くした子への思いは変わらない。竹あかりを通して災害や命といったいろいろな思いを届けたい」と話した。

     住民の避難が続く福島県双葉町の伝承館では「日常が戻りますように」などと書かれた約1000本のろうそくがともされ、約70発の花火が打ち上げられた。東京都品川区の大学生、福田和奏さん(24)は「自然災害は日本のどこにいても起こり得る。その後を想定して考えていきたい」と述べた。

     同県富岡町の小学校跡でも、発光ダイオード(LED)の灯籠などの光が会場を包んだ。主催した社団法人の事務局長、香中峰秋さん(62)は「力を感じてくれたらうれしい」と笑顔を見せた。

     岩手県釜石市の旅館「宝来館」近くの海上からは、大震災や能登半島地震の犠牲者を慰霊する花火が夜空を彩った。家族と一緒に花火を見上げた同市の介護士、佐々木岬さん(31)は、「子どもたちには(津波の時には)とにかく逃げることを教えている」と語った。 (時事通信)


    東日本大震災から13年、地震国日本であることを忘れてはいけない。とりわけ原発事故が甚大な被害を及ぼすことが明らかになっているにもかかわらず、政治のレベルでは忘れられつつあるという状況だ。珠洲市に原発建設の話があったが反対運動で設置されなかった、志賀町の原発が大惨事にならなかったのも偶然でしかない。


    3月12日 府教委 大学3年受験導入

     京都府教育委員会は2024年度に実施する教員採用試験から受験資格を大学3年生に拡大させる。1次試験の受験を認め、合格すれば、翌年の4年時に1次試験を免除する。大学3年生の受験は、京都市や滋賀県、大阪府などの各教委が新年度からの導入を決めており、教員志願者の争奪戦が激化しそうだ。

     対象の校種・教科は、小学校、中学校(国語、社会、数学、理科、英語、技術)、高校(国語、地理歴史・公民、数学、理科、英語、情報)、特別支援学校。受験が可能となるのは、1次試験の「小論文」「教職教養」「専門」「面接」の全て。4種類から受験可能で、4種類全てを選択できる。合格すれば、翌年度の採用試験で免除となる。

     3年生の受験生は約300人を想定。試験の合否にかかわらず、3年生の受験者に限定して、1〜2週間程度の学校現場での体験や、教員に必要な知識などを学べる講座「教職へのとびら」に参加できる。

     府教委教職員人事課は「受験者を増やすことだけだけが狙いではなく、受験機会を増やし、講座も提供することで教員志望者を応援したい」とする。近畿では既に実施している和歌山県をはじめ、他の全府県、政令市などが来年度実施の教員試験から大学3年生に受験の門戸を開く。

     京都府の志願者数は23年度は1748人で、10年度の3214人から半咸している。


    講師力養成講座上京で開講式

     教員志望の学生に、教壇に立つ上で実践的な内容を提供する京都府教育委員会主催の「教師力養成講座」の開講式がこのほど、京都市上京区の府教委であ った。約110人が出席し、夢に向けた第一歩を踏み出した。

     同講座は、2008年度に始まった。座学と学校現場での演習の2本柱で、教員に必要な力を身に付けてもらうのが狙い。修了すると、教員採用試験の1 次試験の一部が免除される。これまで1090人が修了し、このうち790人が京都府の採用試験に合格している。

     開講式は2月にあり、同講座の2年前の修了生で、木津川市立高の原小に勤務する上田泰壱教諭が「教師を目指すみなさんへ」と題して講演。講座を通じ て身に付いた力を説明し、赴任した学校で子どもの成長を目にする喜びを語った。最後に「学校現場での演習では、疑問は遠慮せずにたくさん聞いて」と呼びかけた。

     小学校の音楽科の教員を目指す奈良学園大3年の菅野綺華さん(21)=宇治市には「現場教員のリアルな声が聞きたい」と話した。小学校教員を志望する 佛教大3年の火宮拓海さん(21)=同には「京都府の教育に特化した内容を学べるのが楽しみ」、中学校の社会科の教員を夢みる関西学院大3年の湯川ももさん(21)=長岡京市には「(同じ教員志望の学生や演習先の教員など)多くの人とのつながりを築きたい」とそれぞれ期待を寄せていた。

     講座は京都市の会場で5月まで月3回程度、学級経営や児童生徒理解、教育課題などについて学ぶ。保護者との関わりに不安を抱く学生が多く、PTA関 係者を講師に招いた保護者対応の講座も新たに用意している。


    教員の採用倍率は以低迷している。教育関係者は「質の高い教員」を求めると常に口にするが、青田買いでそれが達成できるのだろうか。むしろ、多様な経験を積んでいる人物の方が教員として適しているとの考え方もある。同時に、教員の労働環境に対する講座を開設することで教委の「本気度」みえて、受験生らには魅力となるだろう。


    3月11日 総務省 非正規継続雇用81%が制限

     自治体や一部事務組合の81・4%は、非正規職員(会計年度任用職員)の継続雇用を制限する「公募基準」を設けていることが10日、総務省の集計で分かった。特定の人が長期間同じ仕事に就くのを防ぎ、新しい人にも採用の機会を与える狙い。一方で、希望者が働き続けられない雇い止めを誘発する原因にもなっており、当事者からは撤廃を求める声が出ている。

     総務省によると、会計年度任用職員の任期は1年以内。自治体の裁量で公募(試験)を経ずに再度雇用できるが、全体の81・4%は昨年4月時点で公募基準を設けている部門や職種があった。この場合、上限期間まで働いた後は、試験を受け、合格しなければ継続雇用とならない。

     基準は部門や職種で異なる。代表的な「一般行政部門の事務職員」では、全体の35・4%が「任期終了ごとに試験、または試験なしでの継続の上限が1〜2年」としており、最も多かった。23・7%で次いだのは「2回目の任期終了までは試験なしで継続、または試験なしでの継続の上限が3〜4年」だった。

     公募で実施される試験の多くは面接形式となっている。幅広い住民に自治体で働く機会を与えるという公募の性格上、労組関係者は「競合すれば、どうしても新しい人が選ばれやすい」と指摘している。

     さらには、繰り返し試験に合格して働き続けても、雇い止めのリスクはなくならない。公務員には、5年間働ぐと無届雇用に転換する労働契約法のルールが適用されないためだ。

     年度末の毎年3月には、各地で会計年度任用職員の雇い止めが発生している。今年も東京都のスクールカウンセラー250人が継続雇用されず、一部が団体交渉を続けているほか、記者会見で公募基準撤廃を訴えた。


    【インサイド】行政の担い手 立場不安定

     自治体の非正規職員を取り巻く環境は厳しい。雇用は不安定で、突然の雇い止めが後を絶たない。待遇の低さやハラスメントの問題も深刻だ。今や職員の5人に1人が非正規。行政運営に欠かせない存在と言え、改善が急がれる。

     「非正規でも誇りを持って働いてきたのに…」。2月上旬にオンラインで開かれた記者会見。東京都立学校のスクールカウンセラーとして約20年間働き、2023年度末で雇い止めとなった女性は声を震わせた。

     都教委育員会は、会計年度任用職員の契約更新は4回までと定める。5回目からは試験を受けなければならず、女性も新規の採用希望者に交じって面接を受けた。勤務成績は良好で上司も継続雇用を望んでいたが、1月下旬に届いた通知は不採用。わずか10〜20分の面接で24年度は年収の3分の2を失う。

     支援団体によると、都のスクールカウンセラーの定員約1500人のうち250人が契約を更新されないといい、教育現場への悪影響も予想される。別の女性は3月上旬の記者会見で、ストレスで耳が聞こえにくくなったと明かし「私たちは駄目なら取り換えればいい機械の部品じゃない。一人一人に生活がある」と更新上限の撤廃を訴えた。

     21年公表の自治労調査によると、非正規職員の90%近くは年収300万円未満で平均額は224万8千円。人件費を抑えるため、1日の勤務時間をフルタイムより15分だけ減らし、パートタイムにする自治体も珍しくない。

     自治体が年度途中で職員給与の引き上げを決めた場合、年度初めの4月にさかのぼって増額する。しかし別の労働組合である自治労連によると、自治体の30%超は非正規に限って翌年度に先送りしていた。総務省が「不適切」とする手法だ。関係者は「財政が厳しく、制度の穴を突いてでも賃金を抑えたい自治体がある」と話す。

     立場の弱い非正規の多くは女性で、ハラスメント被害も集中しやすい。当事者団体の調査では、68・9%がハラスメントや差別を受けたと回答。別の調査では70%強が仕事を失う不安やストレスを抱えていた。

     非正規職員数は、23年4月時点で74万2725人と過去最多を更新した。全職員に占める割合は05年の13・0%から20・9%に増加。財政難で正規は減っており、置き換えが進んだ形だ。

     総務省も対策に乗り出し、今年4月からは、ボーナスに当たる期末手当と勤勉手当の両方を支給できるよう法律を改めた。昨年末には過去の経験を加味して待遇を定めることや、ボーナスを出す代わりに月給を減らすといった対応をしないよう全自治体に求めた。

     同省幹部は一時的な業務増への対応や短時間勤務の二ーズを満たすため、非正規職員は必要だと指摘す。その上で「仕事や働き方に見合う待遇が前提で、ハラスメントはどんな職でも許されない。『脱法的』な扱いには厳しく対応する」とくぎを刺した。


    【東京新聞3月5日】東京都教委が250人大量「雇い止め」

     東京都の非正規公務員として働くスクールカウンセラーが3月末で「雇い止め」に遭うとして労働組合に相談が相次いでいる問題で、2024年度も継続して働くことを希望し公募試験を受けた都スクールカウンセラーのうち、2割を超える250人が採用されないことがわかった。採用者からも「明日はわが身」などと採用基準を詳しく明らかにするよう都教委に求める声が上がっている。(畑間香織)

    ◆どうして不採用? 納得できない選考過程

     SCや心理職らでつくる労組「東京公務公共一般労働組合心理職一般支部(通称・心理職ユニオン)」(豊島区)は、1月下旬に合否が出てから相談を受けている。相談者数は5日までに73人に達した。

     相談では「学校の評価が高く面接でも滞りなく受け答えをしたのに不合格になった」との声が多く寄せられた。そのため労組は基準の開示や、勤務実績を考慮せずに面接のみとした選考理由の説明を求め、2月末までに団体交渉を都教育委員会に3回申し入れた。

     都教委や労組への取材によると、契約更新の上限に達して試験を受けた都スクールカウンセラーは1096人。不採用や、補欠に当たる「補充任用」として4月から採用されない人は22.8%の250人に上る。新規での応募は783人のうち441人が合格し、更新上限に達しないため公募試験を受けずに契約を更新したのは420人だった。労組によると都教委は採用基準の資料開示要請などに応じていない。

     雇い止めに遭った都SC4人と採用者1人は5日、都議会を訪れて採用基準の開示や更新上限の撤廃、雇い止めの撤回を求める要請書と、オンラインで集めた4856筆の署名を都教育庁の石毛朋充勤労課長らに手渡した。石毛氏は取材に「引き続き団体交渉の申し入れは法令に基づいて対応したい」と述べた。

    ◆「部品を取り換えるような行為を行政が率先」

     5日に都内で会見した都スクールカウンセラーは「部品を外して新しいのと換えるような理不尽な雇い止めを行政が率先している」と批判。東京公務公共一般労働組合の原田仁希氏は「これだけ一気に非正規公務員の雇い止めが起きたのはおそらく全国初ではないか」と述べた。


    非正規職員が正職員の勤務条件を守るためのバッファ(長期休暇などの代替要員)として使われているのは以前からだ。地方自治法では、短期雇用については臨時的に必要と認められる場合に任用できるとされているので、正規職員と同じ仕事をさせることはできない仕組みなっているはずだが。「物価と賃金の好循環」をスローガンとする政府の労働対策は、正規職員(正社員)のみに目が行っているのだろうか。


    3月9日 【部活】吹奏楽部 地域移行へ模索

     公立中学校のクラブ活動の地域移行が模索される中、吹奏楽部を対象にした京都府内では初の実証事業が精華町で行われている。受け皿となっているのは、昨秋に発足した民間の吹奏楽団「けいはんなユースウインドオーケストラ」。専門家から指導を受けられるとあって中学生には好評だが、活動資金の確保が大きな課題だという。(河北健太郎)

     「決めどころの音をもっと強く」「高校生に勉強させてもらいながら吹こう」。2月下旬、京都廣学館高(精華町)の合奏室や教室で、中学生たちが高校生に混じりながら練習に励んだ。目標は10日にけいはんなプラザ(同町)で開く設立記念コンサート。代表を務める打楽器奏者の中村麻衣子さん(40)は「演奏のレベルは上がっている。部活では他人から評価を受けたり、他校と比べられたりすることが多いが、純粋に演奏の楽しさを体感してほしい」と期待する。

     同高で外部指導者を務める中村さんが、演奏家や指導者に協力を呼びかけてけいはんなユースウインドオーケーストラを立ち上げ、部活の地域移行を模索する精華町が、文化庁の実証事業を委託した。精華町のほか、木津川市や京田辺市からも楽器演奏を経験したことがある小中高生約120人が参加している。中学生はうち約40人で、昨年10月から月2、3回の休日に練習を始めた。プロの演奏者や中学、高校の外部指導者ら32人が交代で教える。

     生徒たちは原則楽器を持参し、打楽器は同高の楽器を使うことができる。精華西中2年の大野亜実さん(14)は「ここでは違う楽器にも挑戦できる。部活の練習時間が少なくなってきているので、専門的な指導を受けられてうれしい」と笑顔で話す。

     運営上の悩みは、活動資金の確保という。精華町を通じて文化庁の事業委託費約100万円を受けるほか、生徒からは練習1回ごとに会費500円を集めるが、これらだけでは不足している。練習場所や楽器は京都廣学館高の協力を受け、コンサートはホールや楽器店の協力を得たが、指導者の謝金や楽譜の印刷代、コンサートのホール賃料、楽器のレンタル、搬送に多くの費用がかかる。中村さんは「部活の地域移行が模索段階で先が見通せない中では、行政からの支援がないと運営は厳しい」と訴える。

     精華町は2026年度に中学の休日部活の地域移行を目指し、来年度予算案に、生徒の会費負担を軽減するため45万円を盛り込んでいる。同町教育委員会の有城義浩さん(53)は「文化庁の実証事業は来年度も確保できる見通し。町としても、自走できるように支援を続けたい」と話す。


    かつて映画『ブラス!』というのを観たことがあった。英国の炭鉱夫たちで作るブラスバンドにまつわる実話を映画化したものだ。楽器がこれほどまでに大衆化していることに驚いた記憶がある。地域移行がこうした文化を作ることになればと思うが、資金の援助が必要。ここでも家庭の文化資本の格差が表面化する可能性も高い。


    3月8日 福岡部活動問題レジスタンスが情報開示請求

     部活動問題に特化した教職員組合が、福岡市立中学校で行われている部活動の実態を調査し、その結果を公表しました。複数の学校で「平日の活動は2時間程度」と定められたガイドラインに違反している可能性があると指摘しています。

    ◆最終下校が午後7時半の学校 5校

     教職員組合の「福岡部活動問題レジスタンス」は、夜間中学校を除く福岡市立の中学校全69校に対し、各学校が定める部活動規則を情報開示請求し、部活動の開始時刻と最終下校時刻などを調べました。

     それによると、最終下校時刻を午後7時半に設定していた学校は5校あったということです。

    ◆ガイドラインは「平日は長くて2時間程度」

     「福岡市立中学校における部活動指導のガイドライン」では、「原則として1日の活動時間は長くとも平日では2時間程度、学校の休業日は3時間程度とし、できるだけ短時間に合理的かつ効率的・効果的な活動を行うこと」とされています。

     「福岡部活動問題レジスタンス」は、「学校によって部活動の開始時刻にばらつきがあるため、仮に午後4時を部活動の開始時刻として活動時間を算出したところ、半数以上の中学校で、平日に2時間を超える部活動が行われているという実態が浮き彫りになった」としています。

    ◆組合は「安全上の問題 教職員の長時間労働」を指摘

     代表の北畑裕也さんは、「ガイドラインを大幅に超えて下校時刻が設定されているのは、とても残念な状況。生徒にとっては、帰る時間も遅くなるので、防犯上も安全上も問題がある。また、部活動の顧問をしている教師は、指導した後に翌日の授業の準備などを余儀なくされ、残業することになる。残業代もつかない中、苦しんでいる教師もいる」と話し、改善に向け、福岡市教育委員会に働きかけを行っていくとしています。

    ◆市教委は「適切に行われている」との認識

     一方、福岡市教育委員会は、「各学校、決められた時間内で適切に指導していると考えている」との認識を示しています。

     教職員組合の「福岡部活動問題レジスタンス」は、教員の長時間労働の一因となっている部活動問題に特化した教職員組合で、2022年9月に結成されました。(RKB毎日放送)


    「神奈川県の部活動問題を考える会」や「愛知部活動問題レジスタンス」(IRIS)など部活動に特化した教員組合は、全国部活動問題エンパワメント(PEACH)によると29団体が加盟しているとある。PEACHという略称のCHの部分がClub Harassmentであるところが面白いし、多くの教員の共感を呼んでいるのではないだろうか。


    3月8日 公立高校入試 論理思考・表現力問う

     京都府内の公立高の2024年度入試中期選抜が7日、全日制・定時制計61校で行われ、受験生6088人が春を目指して、試験に挑んだ。府と京都市の両教育委員会によると難易度は例年並みの平均正答率6割程度を想定。基礎・基本の定着に重点を置きつつ、理論的な思考力や判断力、表現力を問う問題を出題した。

     京都市北区の市立紫野高では、普通科の定員140人に対して、218人が受験した。緊張感がただよう中、国語、社会、数学、理科、英語(リスニング含む)の試験に臨んだ。

     洛西高(西京区)では、社会の試験時間に放送機器が故障し「試験終了5分前」を告げる館内放送が流せないトラブルがあった。この影響で受験者153人は2分強余分に試験を受けたという。以後も放送機器は復旧せず、試験時間を10分間繰り下げ、英語のリスニングは教室ごとに別の機器で録音を流す対応をとった。府教委は「現時点で合否判定に影響はないと考えるが検証したい」としている。

     中期選抜の定員は、2月実施の前期選抜の合格者を除いた6563人。普通科は全体の7割、職業学科や総合学科は3割を中期選抜で募集する。受験者は全日制で41人が欠席して5987人(0・98倍)、定時制は2人欠席して101人 (0・22倍)だった。試験は全校共通試験で各教科ともに解答時間は40分、各40点の計200点満点。中学3年間の成績を基にした報告書(195点)と合わせて合否判定する。合格発表は18日。


    「能力」のある子どもはすでに前期試験や私立学校受験で進路が決まってしまっている。そんな中での中期選抜の競争率が1を下回っている。つまりは希望すれば受験した子どもはすべて進学できるだけの枠はあるということだ。しかし、障害を持つ子どもがそれを望むのはムリなのが現状。インクルーシブ教育を求めている「障害児を普通学校へ全国連絡会」はホームページで「『知的障害者』の高校進学について」を掲載し「私たちは、希望している誰もが高校へ行けることを望んでいる」と主張している。


    3月7日 【国際女性デー】 障害児の母親 就労に壁

     子育て世代の共働きは珍しくなくなっているのに、障害のある子を育てる家庭では今も、母親が就労を諦めるケースが大半だ。背景には、通常の子育てよりも手間や時間がかかる一方で根強く残る性別役割分業意識や、一人一人の子どものニーズに合わせた支援制度の不足がある。

     「もし私が夫と同じくらい働いていて同じくらいの給料があったとしても、子どものことで時間を調整するのは私だと、夫も私も思っているんじやないか。現に今、仕事を減らしているのは私」。大津市の大藪優希さん(40)はフリーの音楽療法士として働きつつ、4月に小学1年生になる長男の悠真さん(5)の子育てに奮闘する。

     悠真さんは多動などの発達特性を持ち、保育園では支援を受けてきた。優希さんは、忙しい日々の中でも仕事が刺激になり、思い詰めずに過ごせている。

     ただ、悠真さんが小学校に上がった後は、送迎付きの放課後デイサービスを利用したとしても、午後6時には家にいる必要がある。平日の優希さんは音楽療法に加えて障害のある子どもたちの放課後学習支援の仕事も行っている。子どもたちの下校後が仕事開始になるため、移動や準備の時間も含めると今後は仕事を減らさざるを得ない。平日の家事と育児を受け持つ優希さんは「悠真が環境に慣れるまでいつでも動ける体勢でいたいから、時間を気にせずもっと働きたいとの思いをセーブしている」と話す。

     夫は会社員で帰宅時間は遅い。平日の昼間にある発達相談や健診に付き添うのは優希さん1人のことがほとんどだ。相談結果を夫に伝言する形では正確性が担保できず、2人の間で悠真さんの特性への理解度に差ができるのでは?と不安を抱えている。

     夫の事情も理解している。平日に有給を取るのは同僚に気を遣う。休むと仕事がたまってしまう。「気持ちはわかるけど、自分の子どもやしな?」。優希さんは複雑な心境を吐露する。

     悠真さんを公園に連れて行く際、夫には状況に応じた対応を前もって伝える必要がある。悠真さんには「公園内なら好きな所に行っておいで」とは言えない。走り出したら追いかけ、門を出る時は必ず手をつながなければならない。自分が伝えなくても悠真さんの特性を踏まえて自主的に対応をしてほしい。「『分からないから全部お任せするよ』という姿勢に『いやいや』と思ってしまう。平等でいたいのに」

     自らも障害のある子を育てる昭和女子大現代ビジネス研究所の美浦幸子研究員が2021年に行った調査で、都立特別支援学校に通う子の母親の就労率は255件の回答結果から、パート勤務が約30%、フルタイムが約25%の計約55%だったという。一方、厚生労働省の国民生活基礎調査(21年)によると、18歳未満の子どもがいる家庭で母親が就業している割合は75・9%。特別支援学校の親より約20%も高い。

     美浦研究員は「子どもの居場所づくりと通学時の送迎が課題」と指摘。「通学に必要な送迎や、(放課後デイサービスなどへの)通所の態勢を整え、校内 待機や付き添い期間の短縮、解消を促進する必要がある」と制度面での支援の促進を投げかける。

     優希さんは「障害のある子どもがいても自由に働ける制度を確立してほしい。働くからこそ、充実して育児も頑張れる」と期待する。(山本千尋)


    3月8日は国際女性デー。「苦難を乗り越え、権利を勝ち取ってきた女性たちをたたえ、女性差別の解消を目指すため、国連が1975年に定めた記念日」との説明がある。C・ギリガンの『もう一つの声で』(女性の道徳発達を低く見積もってきた、主流派心理学の男性中心主義を剔抉、「目の前の苦しみを和らげよ、誰ひとり取り残されてはならない」と命じる“ケアの倫理”の声を聴き取る)を読んでみてはいかがでしょう。


    3月6日 【けいざいDig】 京で熱帯びる教育投資

     進学塾などの教育サービス業界で、高額な専門プログラムが人気を集めている。京都では年間学費が最大1千万円を超えるという医学部受験専門の予備校や、海外の名門大学と提携した進学準備校などが登場し、全国から生徒が集まっている。難関受験や語学習得への教育投資は熱を帯び、少子化が進む中でも市場規模は拡大傾向にある。(森静香)

     生徒1人につき13人の講師と個室を用意し、整体師による施術や栄養価が高い食事も提供する―。こんな手厚いサポートで受験生を指導するのは、京都市中心部に教室を構える「京都医塾」(中京区)。医学部受験の「京都留学」と銘打った浪人生向けのコースには、全国から約80人が集まる。講師は京大卒の正社員が中心で、生徒の学力や弱点を分析し、個別指導や集団授業を組み合わせて提供している。

     同塾で学んだ帝京大医学部1年の河北朋樹さん(21)は、出身の大阪府を離れて入塾し、京都で2年間、朝8時から夜10時まで勉強詰めの日々を送ったという。偏差値は37から65まで上昇し、狭き門を突破。河北さんは「心が折れそうな時も自分を信じ、親もサポートしてくれた。今も医学部で浪人時代より勉強している」と話す。

     同塾によれば医師志願者の増加で受験競争は年々激化し、医学部専門塾は全国で増えつつあるという。清家二郎塾長は「京都は京都大出身者を中心に、教育に尽くしたいというアカデミックな講師が多い理想郷だ。チェーン展開はせず、全国から京都に医学部受験生を受け入れたい」と戦略を語る。

     塾代は最高で年1200万円に上るものの、開業医や経営者に限らず幅広い家庭の生徒が通う。同塾は「少子化できょうだいの数が減っているうえ、祖父母からの教育費贈与もあり、―人の子に多くの教育費をかける傾向が強まっている」とみる。

     経済産業省の調査でも、全国の学習塾の売上高は2023年に5541億円に達し、過去20年間で約1・5倍になった。手厚い内容の授業が登場するなど、選択肢の多様化も市場拡大の背景にあるとみられる。

       ◇   ◇

     一方、海外志向の高まりも近年の大きなトレントだ。

     京都に居ながら国際的な水準の教育を受け、海外の名門大へ進学したい―。こんな生徒たちが通うのは、京進がオーストラリアのニューサウスウェールズ大(UNSW)と提携し、23年に開校した海外大学進学準備校「UNSW京都キャンパス」。オーストラリアの大学への進学に必要な基礎課程を9ヵ月で修了できる国内初のプログラムで、初年度は高卒生を中心に8人が学んだ。学費は約320万円だが、滞在費が必要な現地で同じ課程を受けるのに比べれば、安く済むという。

     生徒は「海外で起業したい」「AI(人工知能)を学びたい」といった夢を持って全国から集まり、世界の大学ランキングで東京大を上回るシドニー大やUNSWへの進学が決まったという。

     同準備校によると、原則3年制のオーストラリアの大学でも卒業までに2千万円程度の費用が必要だが、海外進学の人気は年々高まっているという。

     京進の今井拓郎グローバル教育事業部長は「関東圈では海外進学の支援を前面に打ち出す有名高校も増えていて、関西も同じ流れがくるだろう。国際社会で活躍する人を京都から育てていきたい」と意気込む。


    教育費の公的支出がOECD加盟国中36位(37か国中)だった(2019年時点)ことはよく知られている。同時にPISAの結果はOECD平均を大きく上回って(読解力3位、数学的リテラシー5位、科学的リテラシー2位)いる(2022年時点)ことも、教育の成果とされている。PISAの測ろうとするコンピテンシー概念に問題はあるとしても、日本の教育の問題点は世帯の経済的・文化的資本に支えられているということと学力の二極化であるといわれている。公的な手立ての少ない「隙間」は、イギリスの企業「ピアソン」を見るまでもなく教育産業の絶好の市場と化す。


    3月6日 亀岡市教育長 「働き方改革と部活歯車おかしくなる」

     国が推し進める中学校の部活動の地域移行について、亀岡市の神先宏彰教育長が5日の市議会3月議会一般質問で「(教員の)働き方改革と部活動が一緒になった時から、歯車がおかしくなってきた」と苦言を呈した。地方に受け皿がないことに加えて、地域移行の実現でも放課後に生徒と関わる必要性など課題を挙げ「働き方改革にはならない」と述べた。

     部活動は教員の長時間労働につながるとして、国は2023年度から段階的に地域のスポーツクラブなどに委ねる方針を示している。

     神先教育長は「地域移行に反対しているわけではない」と前置きしつつ、亀岡市以北の京都府内では外部指導者の不足や高齢化で「中学生を抱えることはできない」と強調。コーチを学校に招くことについても「安全面から教職員がそばにいることは避けられない」とした。

     部活動は文化部もあり「部活動をなくしても、その子らを(学校で)抱えていかないといけない」と説明。生徒が外部で問題行動を起こした際には、放課後でも対応する必要があることを指摘した。


    部活の地域移行についての小規模自治体の本音だろう。これまで学校が無償で引き受けてきた業務の見直しなのだから移行が問題ではなく、それを保障できる財源措置を政府がとることが問われている。また、都市への集中を促してきた人口対策も改めなければならないはず。


    3月5日 京都府 府内の労組員17万3799人

     京都府がまとめた2023年の労働組合基礎調査で、6月末時点の組合員数は17万3799人と前年同期比1835人(1・0%)減少した。一方、パートタイム労働者の組合員数は4年ぶりに増加し、府は新型コロナウイルス禍からの回復で、企業の採用活動が活発化した影響とみている。

     組合数は1133団体で前年比1・4%減り、26年連続で減少した。労働者に占める組合員数(推定組織率)は15・3%で0・4ポイント低下した。組織率は最近、増加傾向にあったが、全体として「組合離れ」に歯止めはかかっていない。

     近年、労組が積極的に加入を勧めているパートタイム労働者の組合員数は1万9855人と、874人(4・6%)増え、増加に転じた。新型コロナ禍を経て経済活動が活発化する中、企業が非正規雇用者の採用を積極化していることも背景にあるという。

     主要労働団体別の組合員数は、連合京都が9万3552人で546人増え、「非正規労働者へ積極的に加入を働きかけた効果」としている。一方、京都総評は4万3206人で1149入減少し、「定年退職者の増加と、コロナ禍で勧誘活動が停滞した影響」という。


    府労働委員会労働紛争3年連続減

     京都府労働委員会は、2023年に労働者と雇用者の間に入り、トラブル解決をサポートした労働紛争の件数は10件で、3年連続で減少したと発表した。新型コロナウイルス禍で増加したトラブルがコロナ前の水準に戻ったことに加え、幅広い業種で人手不足が進む中、労働者に有利な状況が一因となっている可能性があるという。

     うち8件は労働者個人と雇用者間のトラブルで、全て労働者側からの申し立てだった。「解雇を撤回してほしい」など人事に関するものが5件、「パワハラを受けたが、会社が適切に対応しない」など人間関係に関するものが3件、「退職金が思っていた金額と違う」という申請も1件あった(複数の項目にまた かっている案件がある)。残る2件は労働組合が申請した集団労使紛争だった。

     前年から継続してサポートに当たった2件を含む12件中9件が解決に至ったが、2件は折り合いが合わず、打ち切りとなった。1件は24年に持ち越した。

     申請件数はコロナ禍に伴う休業や解雇などを巡って20年は24件にまで増えたが、21年が22件、22年は15件と徐々に減少していた。一方、府労委に寄せられた相談件数は159件で4年連続で160件前後の高止まりとなっている。

     府労委事務局の担当者は「相談は多く、紛争あっせんの申請が減った確たる理由は不明だが、人手不足の傾向が強まり、仕事が確保しやすい状況の中、トラブルが起きにくくなっている可能性はある」とみている。


    「推定組織率が15・3%」というのはかなり厳しい数字。労働組合離れの傾向は一向に改善されていない。連合京都が非正規を対象にした活動で増加、京都総評が高齢化で減少というのも今日的な課題を示しているのかもしれない。


    3月5日 スポーツ庁 7割自治体 協議会設置へ

     公立中学校の運動部活動を地域スポーツクラブなどに委ねる「地域移行」に関するスポーツ庁の調査で、回答した7割の自治体が推進に向けた協議会を2023年度中に設置する見通しとなったことが4日分かった。協議会は行政や地域クラブ、保護者など幅広い関係者を巻き込んで議論する役割を担う。国は指針で設置を勧めており、部活動改革が着実に前進していると評価している。

     調査は昨年6〜7月、都道府県、市区町村などを対象に実施し、8割を超える1447の回答を得た。そのうち40%が既に協議会を設置し、31%が23年度中に設置予定とした。

     国は23年度からの3年間を「改革推進期間」と位置付け、段階的な取り組みを促している。指導者確保、保護者の費用負担増加などの課題を抱えているが、スポーツ庁は「だいぶ風向きが変わった」としている。

     国の指針では、地域の実情に応じた取り組み内容、移行スケジュールを示す推進計画の策定も推奨し、既に策定していると答えたのは17%。23年度中に定めるとした32%を含めても約5割だった。協議会も推進計画もつくらず未定の自治体は4分の1程度ある。多くの理解を得るためには明確なプランの提示が重要となり、スポーツ庁の担当者は「羅針盤となる方向性を示す必要があり、割合をもっと高めたい」と話した。


    スポーツクラブなどの地域移行は積極的に進めていく必要があるのだが、小規模自治体ではその資源に乏しいことが大きな問題となっている。具体的な解決策は見つけにくいだろうが、「スポーツを楽しむ」ということを主眼にすれば一定の前進はできるはず。ただ、いわゆる「スポーツ留学」をどうするのかも難問ではある。


    3月3日 舞鶴市教委 タブレットでいじめ相談

     舞鶴市教育委員会は小中学生に配布されている学習用タブレット端末を活用し、児童生徒からいじめの相談を受け付ける取り組みを今月から始めた。京都 府内で初の試みといい、質問に選択肢で回答できる方式を採用。相談のハードルを下げ、いじめの早期対応につなげたいとする。

     市教委は2013年度に経験豊富な指導主事が対応するいじめ相談室を設置し、電話やメールでの相談を受け付けてきた。22年度の相談件数は247件だ が、学校や保護者からの相談が大半で、児童生徒からはなかった。

     いじめに悩む本人が相談しやすい環境を整えようと、専門家の助言を得てタブレット端末に相談フォームを導入。「どんなことを相談したいですか」とい った質問が表示され、「友達のこと」や「勉強のこと」「先生のこと」といった選択肢から回答し、詳しい相談を記すこともできる。

     面談については、担任や養護教諭など相手や声をかける場所が指定でき、「自分から話しかけるまで見守ってほしい」との選択肢もある。

     相談フォームからは24時間送信することができ、いじめ相談室の担当者が平日午前9時から午後5時までの間に確認し、臨床心理士などと対応に当たる。 ケースによっては学校の教職員や教育委員会の相談員が子どもたちと面談して悩みや不安に寄り添う。

     市教委学校教育課は「文章を打ち込む必要がない仕組みにして、子どもの立場に立った質問も入れた。いじめは事前の認知がないまま重大事案に発展する ケースが多い。潜在化しているいじめをキャッチしたい」とする。


    いじめは当事者がまず誰かに実情をはなすことが大切で、その機会を確保するという意味ではタブレットの利用も有効。当然のことだが、端末から寄せられる情報の処理方法と秘密の厳守が担保されていることが条件となる。また、相談相手に指定された人が十分にいじめなどについての見識を有しているかどうかも効果を発揮するためには必要。


    3月2日 府内公立高校 中期選抜 1倍割れ

     京都府と京都市の両教育委員会は1日、2024年度の府内公立高入試の中期選抜の志願者数を発表した。全日制53校の志願者数は、前年度比92人増の6027人で志願倍率は0・02ポイント増の0・99倍となったが、2年連続で1倍を下回った。

     全日制の学科別の志願者数と倍率は、普通科が5681人で1・03倍(前年度1・02倍)、専門学科が325人で0・66倍(同0・64倍)、総合学科は21人 で0・21倍(同O・06倍)。定時制8校は、普通科97人、専門学科5人、総合学科1人の計103人が志望し、0・23倍(同)だった。

     最も志願倍率が高かったのは、京都すばる起業創造科が1・67倍で、前年度開校した開建ルミノベーション科が1・59倍、鴨沂通科が1・58倍、紫野普通科 1・56倍、城南菱創普通科1・53倍と続いた。

     一方、倍率が1・0倍を下回ったのは、34校48学科(前年度36校46学科)だった。志願者数は第1志望を示しており、中期選抜は3校まで志望校の選択が可能なことから、現時点で募集定員を満たさなくても、定員割れにならない場合がある。

     試験は7日で、合格発表は18日。


    【インサイド】多様な選択形骸化

     中期選抜の志願割合が2年連続で1倍を割り込んだ。前期選抜で不合格となった受験生が併願先の私学や、人気が増す広域通信制に流れたためとみられる。進路を早めに決めたいという受験生や保護者の意向が強まっていることも背景にある。府教委もこうした傾向を把握し、新たな入試制度に向けて検討を開始している。

     昨年11月に府教育委員会が中学3年を対象に実施した進路希望調査では、全日制公立高志望者1万1628人のうち、前期選抜の受験意向を示したのは1万251人と88・2%で過去最高だった。一方、府独自の高校授業料補助制度を背景に私立高進学のハードルが下がる状況にあり、前期が不合格ならば、ほぼ同時期に入試がある私学に進むケースが多くなっている。

     前期選抜は募集定員が少なく、平均志願倍率が2倍、高い学校で5〜6倍の狭き門で、激しい受験競争を生み出しているとの指摘もある。京都市立中で進路指導を担当する男性教員は「前期選抜は受かればラッキー、との考えで多くの生徒が受験する。ただ、倍率が高く不合格になる可能性を承知していても、落ちるとショックは大きい。続く中期選抜は、安心材料ではなく、逆に『後がない』と重圧がかかる存在になってしまっている。学校に来られなくなったり、受験勉強が手につかなくなったりする子もいる」と内情を話す。

     近隣他府県では公立高の入試を一本化したり、受験期間を縮小したりする動きが出ている。

     大阪府は2月の前期、3月の後期に分かれていた入試を、2016年度から3月の一回に集約した。奈良県も26年度入試から一般と特色の2種類の選抜を統合する方針だ。滋賀県も26年度入試から、各校の方針や特色に基づく「学校独自型選抜」と「一般型選抜」を2月の同時期に集約する。両選抜の受験も可能にする。担当者は「不合格でつらい思いをする生徒に配慮した設計を心がけた」と話す。

     京都府教委は府立高の未来像を示す「魅力ある府立高校づくり推進基本計画」で、新たな入試制度の検討ついて言及している。ある府教委幹部は「受験生は早く進路を決めたいと思っている。今のように2回に分かれているのはどうか。個人的には一期間で済むようにしたい」と語った。


    府内の高校選抜は「複雑でわかりにくい」との批判が以前からある。より多くの受験機会を設けるという方向での改革だったのが実情に合わなくなってきたのだろう。ただ、1回での選抜にすれば今以上に学校間の格差が広がり、私学との競合も熾烈になる。受験生の負担は大きくならざるを得ない。傾向は相変わらず南高北低、普通高職業低の状態が続いている。高学歴が高収入を生むという考え方で果たしてこれからの社会が成り立つのだろうか。一旦社会人になったのちに改めて大学などでの学び直しのできる機会と制度を考えていく時代になっている。


    3月2日 【就活解禁】“学生優位”早くも過熱

     2025年春の新卒採用に向けた企業の広報活動が1日、解禁された。就活戦線の早期化に伴い、大学などが主催する説明会はすでにスタートし、インターンシップ(就業体験)も広がっている。デフレ脱却による経済の正常化をにらみ、企業は採用意欲を強めており、25年春採用でも学生優位の「売り于市場」 が一段と強まりそうだ。

     2月に竜谷大で4年ぶりに催された学内企業説明会には、4日間で企業260社と学生延べ2400人が参加した。理系学部のある瀬田キャンパス(大津市)は上旬に、深草キャンパス(京都市伏見灰一)は下旬にそれぞれ実施した。龍谷大キャリアセンターは「理系は文系よりもさらに売り手市場。早期化している状況も踏まえて例年よりも早めた」と話す。

     他大学でも対応の早期化が目立つ。リクルート(東京)の「就職白書2024」によると、24年春卒の就職活動開始時期は卒業前年次の2月までが8割超、3、4月に3割近ぐが内定を得ていた。立命館大キャリアセンターは「企業が早めに動いており、学生も選考で外に出ている」として、3月上旬の学内イベントをほぼ取りやめた。3月下旬〜4月上旬に学内説明会を催し、始動がやや遅い学生を支援するという。

     企業にとっては採用難が続く。就職白書の24年卒のデータでみると、採用予定数を充足できた企業は4割に満たず、調査を開始した12年卒以来の最低水準となった。未充足企業に限ると、採用予定数に対する内定者数の割合は7割を下回った。リクルート就職みらい研究所の栗田貴祥所長は「選考応募者が予定より少なかったとする企業が増えており、募集段階で苦戦する様子がうかがえる」と指摘する。

     日東精工は、応募者数は維持しているものの、本社が綾部市のため「地方からの人口流出や労働人口の減少で採用数の確保は難しい」とし、従業員のワークライフバランスに向けた取り組みなどをPRする。

     企業は25年卒の採用活動から、5日間以上のインターンシップに参加した学生の情報を活用できるようになるため、「採用直結型インターン」が増えるとみられる。多くの大学で、インターンシップに参加した学生が例年よりも増えたといい、就職活動全体が早期化する一因になった。

     同志社大キャリアセンターによると、1月下旬の後期試験と企業の面接が重なったことを理由に追試を求める学生も増えたという。同センターの岩田喬所長は「早期化はやむを得ないが、インターンシップを長期の休み期間中に限定することや、授業と重なる場合は代替措置を用意することなど、最低限の教育環境を守る努力をしてほしい」と企業に要望する。


    人材不足の解消は企業にとって死活問題でもあるのだろうが、こうした形での「内定」では大学で学ぶ意義が薄れてしまうだろう。「失われた30年」といわれた時代の問題点は「日本型雇用慣行」だともいわれる。その一つが新卒一括採用だ。企業も従来型の採用にこだわらず通年の採用、つまりジョブ型を追求すべきではないだろうか。


    3月1日 市教委 教員試験1次免除を拡大

     京都市教育委員会が2024年度に実施する教員採用試験から、市立校で一定期間働いた元教諭の1次試験を免除することを決めた。前年度不合格者の成績上位者についても1次試験免除の要件を緩和する。市教委は「教員不足に対応するため、多くの人に試験を受けてもらえるよう制度を見直した」としており、採用試験の説明会などでも新たな試みを進める。

     1次試験を免除する元教諭は、市立の学校や幼稚園で直近10年以内に通算3年以上勤務していた人で、復職をしやすくする狙い。

     これまでの1次試験の免除要件は、前年度の2次試験の成績上位者のうち、2年連続で京都市の常勤講師を務めていることだったが、他都市の国公立・私立の教諭も新たに対象者に加えた。1次筆記試験については、大学3年での受験も可能にした。

     試験日程についても、民間企業の採用活動の早期化に対抗するため、例年より一部を約1週間前倒しする。

     市教委は昨年12月、市総合教育センター(下京区)で開いた教員採用試験の説明会で、現職教員が参加者の質問に答える座談会を前年に続いて開いた。参加した大学2年の白石誠真さん(20)=徳島県鳴門市=は「自分のライフプランを大事にしたいと思い、働き方改革が気になっている。現場の先生の話は参になった」と話した。


    少子化の中、教員も「売り手市場」。どの自治体の勤務条件が適しているのかを比較されることになる。入り口だけの改善ではなく、実際の勤務をどう改善していくのかが課題となる。これまでのように教育委員会の方針を押し付けるようなことはできにくい。新卒者は3年で転職という空気もある中、教委は非常勤も含めて定着率を公表すべきだろう。


    3月1日 多職種講師 企業が“派遣”

     教員の長時間労働と負担増が問題になる中、学校側がキャリア教育授業の外部講師として、さまざまな職種の人材が登録されている企業のサービスを利用するケースが出ている。教員の負担を減らせる上、副業で「先生を務めてみたい」という社会人の希望も満たすメリットがあるようだ。

     文部科学省の調査(2022年度)によると、教員の1日当たり在校時間は小学校で10時間45分、中学で11時間1分、高校で10時間6分。前回調査(16年度)と比べ小・中学校で約30分短くなったものの、依然として長時間働く教員が多いことが分かった。

     私立の千葉明徳高校(千葉市)で昨年11月に行われたオンライン授業には、1年生約300人が参加。講師は、コンサルティングなどを行う企業経営者の神原沙耶さんで、会社の理念や自分の価値観の見つけ方について語った。

     終了後、男子生徒(15)は「起業の話を聞いたのは初めて。経営者に話を聞ける機会はないのでためになった」と話した。神原さんは「自分の経験を伝えることができた。授業をやることで初心を振り返る機会にもなる」と満足げだ。

     このサービス「複業先生」を提供するのは、「LX DESIGN」(東京都千代田区)。20年からサービスを開始し、これまで約300校で授業を行った。講師はプロスポーツ選手やデザイナー、伝統工芸職人など多様な職種の約1500人が登録。一般から書類とオンライン面接で選考している。キャリア教育にとどまらず英語の授業に翻訳者が呼ばれ、外国語を学ぶ意義を教えたこともあるという。費用は講師によって異なり、1回の授業で数千〜数万円。

     千葉明徳高校の中沢祐樹教諭は同サービス利用について、「講師を探す手間も、依頼する際の事務の負担もすごく軽くなった」と評価する。金谷智「LXDESIGN」社長は「社会人の中には『教育に貢献したい』『仕事の経験を次世代に伝えたい』という人がいる。こうした思いを教員の業務負担を減らす流れにつなげていきたい」と話している。


    民間企業の教育業界参入はすでに常識となっているのだが、学校側の教育方針がどの程度反映されるのだろうかとの疑問がでる。個々の教員がすべての領域をカバーし方針を立てることは困難なのだが、そこでの検討が教育にとって意味があるように思う。