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5月31日 宇都宮地裁 那須雪崩 引率教諭ら実刑

 栃木県那須町のスキー場周辺で2017年、登山講習中の県立大田原高の生徒ら8人が死亡した雪崩事故で、宇都宮地裁は30日、業務上過失致死傷罪に問われた教諭ら3人の過失が重なり「雪崩が自然現象という特質を踏まえても、相当に重い不注意による人災だった」としていずれも禁鏝2年(求刑禁鏝4年)の判決を言い渡した。


【インサイド】「厳しい」教育現場委縮も

 栃木県那須町で2017年、高校山岳部員ら8人が死亡した雪崩事故で、宇都宮地裁は30日、教諭ら3人に実刑判決を言い渡した。事故は学校教育の一環である部活動中に起き、教諭の危機管理の在り方や責任が問われた。引率教員への異例の実刑判決に教育現場からは「厳しい」と戸惑う声も上がり、顧問の担い手減少など教育現場への影響も懸念される。識者は「判決を教訓に徹底した安全対策が求められる」と指摘する。

 「学校教育活動時の集団行動における想定として相当に緊張感を欠いていた」。地裁判決は「雪崩を予測できなかった」などとして無罪を主張していた被告3人を厳しく批判した。訓練の責任者や部活動の顧問として3人が危険予測や情報共有、回避指示などをしなかった過失を認定。自然災害が原因ではあるが「相当に重い不注意による人災」と言い切った。

 学校部活動を巡り、生徒が死亡したり、けがを負ったりする事故は各地で後を絶たない。日本スポーツ振興センター(JSC)によると、05〜22年度に全国の中学高校で、運動系部活動に関連して生徒が亡くなり見舞金が支払われた事例は235件、障害が残るけがは2641件だった。

 スポーツ事故に詳しい阿部新治郎弁護士は「部活動事故で教員の刑事責任を問うことは例外的だ」と指摘する。有罪になるのは「故意ではないかと疑われるほど悪質さが際立つ場合だ」という。

 中央大の谷井悟司准教授(刑事過失論)は、今回の実刑判決について、3人が部活動の引率者として責任ある立場だったことから「教育の一環で、生徒らの安全確保が強く求められていたことが有罪認定や量刑判断で考慮された」と分析する。

 栃木県教育委員会は雪崩事故後、県立学校で全ての登山活動の安全性をチェックするほか、23年度から山岳ガイド資格者を各高校に配置し、登山に帯同させるなどの安全対策を進めた。ただ、部員減少や経験豊富な教員の不足で休廃部が相次ぎ、17年度に県内の高校に22校あった登山部は、23年度は5校まで減った。

 日本女子大の坂田仰教授(教育法制)は、多数の死傷者が出た雪崩事故で教諭の刑事責任が問われ「事故を恐れて萎縮し熱心な指導に消極的になるのは避けられない」と指摘する。ある公立高校の校長も「安全配慮にはとても気を使うが、自然相手の危機管理は難しい。われわれは教育のプロだが、危機管理のプロではない」と打ち明ける。

 刑事罰が科されることへの懸念から、顧問の希望者が減少する担い手不足も懸念される。


2012年京都市の小学校で起きたプールでの事故。当時小学1年生だった浅田羽菜さんが死亡した。その後市教委は 第三者委員会を立ち上げ京都市立養徳小学校プール事故調査報告書を得た。一方で、民事訴訟も行われ、京都地裁は2014年3月11日、「巨大ビート版を16枚も並べ監視が困難な状況を作り出したことや掃除等により十分な監視をしていなかった」とし、国家賠償請求を認め約3000万円の賠償を命じた。遺族の心情からすればどのような判決が求められるかははかりがたいものがあるが、今回の宇都宮地裁の「実刑」判決は今後も議論になる可能性があるように思える。


5月31日 国会 非常時、政府が自治体指示

 大規模な災害や感染症の流行など、想定外の事態に国が自治体に対応を指示できるようにする地方自治法改正案は30日の衆院本会議で可決、通過した。自民、公明、日本維新の会、国民民主各党などの賛成多数。非常時に国主導による迅速な対応を可能にする狙い。指示が適切だったかどうか検証するため国会への事後報告を義務付ける修正を加えた。自治体との事前協議の仕組みは盛り込まなかった。立憲民主党、共産党、れいわ新選組は「時の内閣の恣意的な判断で指示できる」などと改正案に反対した。


【インサイド】地方との対等揺るがす

 地方自治法改正案が衆院を通過した。非常時なら国が指示権を行使し、自治体の仕事に介入できるようにする内容。岸田政権はコロナ禍のような事態や大災害に備え、見直しを急ぐ。しかし「対等・協力」を原則とする国と地方の関係を揺るがしかねず、自治体からは懸念の声が続出。国の判断が混乱を招いた事例もあり、識者は「弊害が大きい」と警鐘を鳴らす。

 「指示さえできれば(コロナ禍の問題を)解決できたというのは、責任を自治体に押し付け、厚顔無恥も甚だしい」。30日の衆院本会議。採決に先立ち、立憲民主党の吉川元氏が反対討論した。

 地方からも声が上がる。衆参両院の事務局によると、改正案への意見書は今月27日までに3県と14市町村の議会から受理。北海道津別町議会は「(自治体の責任で行う)自治事務に対する国の不当な介入を誘発する恐れがある」と反対する意見書を3月に採択した。

 金沢市議会は「改正案の内容は漠然としたもので(指示の)適用範囲が広範にわたる」と懸念。東京都三鷹市議会は「地方自治の確立とは相いれない」。大阪府泉大津市議会も「自治体への国の関与は『必要最小限』と定めた地方自治法と齟齬が生じる」と訴えた。

 地方自治は憲法で保障され、自治体の裁量と責任で地域を運営し「国は自治体の自主、自立性に配慮しなければならない」(地方自治法)。1990年代以降の地方分権改革では、国の仕事を自治体に下請けさせる「機関委任事務」を廃止、国と自治体の関係は「上下・主従」から「対等・協力」へと改められた。

 ただ2020年2月に発生した大型クルーズ船のコロナ集団感染では、自治体の役割だった患者の受け入れ調整が難航。こうしたコロナ禍の反省を根拠に、首相の諮問機関は昨年12月、自治体への指示権拡大を求める答申を決定。政府は2ヵ月余りで地方自治法改正案を閣議決定した。

 政府関係者は、想定外の事態に備えるためには指示権の拡大が必要と説明。一方で「強い権限で戦後の地方自治、地方分権の流れを大きく変えることになる」と漏らす。

 もっとも国の介入で円滑に対応が進むとは限らない。

 16年4月の熊本地震では、最初に最大震度7を記録した後、多くの人が駐車場など屋外へ避難。政府は屋内移動を求めたが、自治体は余震多発を理由に応じず、直後に再び最大震度7の地震が発生。同県益城町では、総合体育館の天井パネルや照明がほとんど落下し「避難スペースとして開放しなかったことが人的被害を未然に防いだ」(町の報告書)。

 コロナ禍でも、唐突な一斉休校など、国の要請が混乱を招いたケースがある。PCR検査を巡っては国が「37・5度以上の発熱が4日以上」を目安の一つとして通知し、これに当たらず検査を受けないで急に重症化する例も目立った。

 礒崎初仁中央大教授(地方自治論)は「国は組織が縦割りで現場から遠く、危機管理に向かない構造。自治体は首長に権限と情報が集まり現場と近いため役割を果たせる」と指摘。「指示権を行使して地域を黙らせるようなことはすべきではない」として、重大な局面ほど国と自治体との合意形成の努力が必要だとしている。


「憲法のなし崩し」が安倍政権で進行していたが、依然として岸田首相はその路線を継承している。今回の改正案は改憲論争のテーマでもある「緊急事態条項」を実質的に法文化したようなもの。教育に関しては、「一斉休校要請」(2020.3)がほとんど議論もされないまま実施され未だに政府からの総括もない。子どもの居場所、家庭でのケア、エッセンシャルワークなど多くの課題が明らかになったにも関わらずである。


5月28日 「虐殺だ」国際社会が一斉非難

【エルサレム共同】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ最南部ラフアを空爆し多数が死亡したことに対し、国際社会は27日、「虐殺だ」「地上の地獄だ」と一斉に非難した。

 フランスのマクロン大統領はX(旧ツイッター)で「激怒している。国際法の尊重と即時停戦を求める」と訴えた。ロイター通信によると、イスラエルを擁護することが多いドイツのベーアボック外相は「国際人道法は全ての人に適用される。イスラエルの戦闘行為にもだ」と強調。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は、ラフア攻撃の即時停止を命じた国際司法裁判所(ICJ)の仮処分は「尊重されなければならない」と指摘した。国運パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)はXで「ガザは地上の地獄になった。安全な場所はない。誰も安全ではない」と嘆いた。

 イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止や人質解放を巡る間接交渉を仲介するエジプトは「避難民に対する意図的な爆撃だ」と批判。同じく仲介役のカタールは「調停を難しくし、恒久停戦の合意を妨げる」と懸念を示した。中東の地域大国サウジアラビアは、イスラエル軍が「無防備な市民を標的に虐殺し続けている」と糾弾した。


響く悲鳴「地獄のようだった」

【カイロ共同】避難民が暮らしていた簡素なテントは燃え上がり、悲鳴が響き渡った―。多数の死者を出したイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ最南部ラファヘの26日夜の空爆。交流サイト(SNS)に投稿された映像は、空爆による炎が暗闇を照らす中、市民が死傷者を運び出す惨事を映し出していた。電話取材に応じたガザ住民の一人は「地獄のようだった」と振り返った。

 住民らによると、空爆があったのは午後8〜9時ころ。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の倉庫が近くにあり、一帯には多くの避難民がテントを張り、密集して暮らしていた。SNSの映像では、人々が子どもを抱えて逃げたり、サイレンが鳴ぴ響く中、救助活動に当たったりする姿が映っている。

 ガザ当局の救急隊の報道官は、テント内で火災に巻き込まれた人もいたと指摘。「民間人に対する虐殺だ」と憤った。

 現場近くに暮らすアブムスタフアさん(27)によると、空爆の瞬間には大きな爆発音が聞こえ、周囲の建物が震えたという。現場の様子は言葉にできないほど凄惨だったと明かし「普通の市民ばかりが犠牲になっている」と嘆いた。


土曜日のデモで「ガザで起こっていることはジェノサイドです。戦争ではありません」との呼びかけが心に響く。これまで何もしてこなかったことに対する慚愧の念にたえない。しかし、できることはある。日本から私たちができるパレスチナ連帯行動もその一つだ。またBDS運動(イスラエルに対するボイコット、資本の引揚げ、制裁を行うよう求める国際キャンペーン)も。
チョットした意識でもできる不買運動も効果があるという。ドミノピザ、マクドナルド、パパジョーンズ、バーガーキング、WIX、アクサ生命、プーマ、カールフール、HP(ヒューレットパッカード)、ソーダストリームなども対象になっている。


5月25日 来春卒 早くも内定率7割

 2024年春卒業の大学生の就職率が過去最高を記録する中、25年春卒業予定の大学生に対する採用活動も既に本格化している。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートによると、内定率は今月15日時点で78・1%。企業が積極的に動くことは学生に有利といえそうだが、人材確保を急ぐあまり「学生の希望と仕事内容の不一致が起きかねな い」と識者は警鐘を鳴らす。

 政府のルールでは、面接などの選考活動は6月1日解禁。だが、リクルートの調査によると、内定を受けた学生の59・4%が5月時点で既に複数社から内定を得ていた。獲得競争が激しく、ルールが形骸化している現状をうかがわせる。

 厚生労働省の担当者は「人手不足が深刻で、学生優位の売り手市場は今後も続く」と予測。ただこうした状況について、リクルートの就職みらい研究所の栗田貴祥所長は「企業と学生の相互理解が不十分なまま、内定が出ているケースもあるのでは」と危惧する。

 栗田所長は、仕事の内容や将来のビジョンを精査せずに入社すると、早期離職につながる恐れがあるとして「学生も企業も獲得競争の勢いに流されず、慎重な判断が求められ る」と指摘した。


労働力不足でいわゆる売り手市場となっている就職戦線だが、企業と学生とのミスマッチも報道されている。新卒一括採用は日本型雇用の一翼を担うものだが、「就職浪人」への 危機意識は学生には強い。中途採用や既卒者採用の仕組みを作るべきだろう。加えて、3年時で受験可能とするなどの教員採用条件の緩和などによるミスマッチも当然起こるだろう。


5月24日 アイヌ新法 アイヌ差別 罰なく、何度も

 アイヌ民族を先住民族と明記したアイヌ施策推進法(アイヌ新法)の施行から、24日で5年となった。北海道白老町で大規模施設の民族共生象徴空間(ウポポイ)が開業して文化の発信が進む一方、差別への罰則規定はなく、国会議員による差別発言が繰り返される。伝統的なサケ漁は認められず、アイヌ語も消滅の危機に。先住民族の権利保護は手付かずのままだ。

 「アイヌの男性も公の場に出ているのに『アイヌの女性』という弱い立場を狙って攻撃してきたと思う。許せない」。アイヌ女性団体「メノコモシモシ」の多原良子代表は、自民党の杉田水脈衆院議員による差別的投稿に怒りを隠さない。

 杉田氏は2016年、ブログ記事などで「アイヌ民族のコスプレおばさんまで登場」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」と、民族衣装を着て国連会合に出た多原氏らを侮辱。法務当局が人権侵犯と認定した後も中傷を続ける。

 推進法は差別を禁じているが、罰則はない。施行5年後に状況を踏まえて必要な措置を取ることになっており、多原さんらは3月、罰則規定の新設など10項目の請願を国会議員約40人に提出。人類学研究名目で墓地などから持ち出された遺骨の返還と再埋葬も求めた。

 文化の発信、継承拠点として20年にオープンしたウポポイには昨年度、約33万人が訪れた。政府目標の100万人に届かないとはいえ、アイヌ文化を織り交ぜた漫画「ゴールデンカムイ」の人気も相まって注目は高まる。

 ただ同法に基づく地域の文化振興や啓発には濃淡がある。市町村の事業に国が交付金を出す仕組みができたものの、北海道179市町村のうち事業が認定されたのは37市町だけ。「アイヌ民族の人たちが高齢だったり少なかったりする地域」(道関係者)で遅れており、アイヌ協会関係者は「まだまだ足りない」と話す。

 アイヌは北海道を中心に自然や動植物、道具などの「カムイ(神)」に感謝し、狩猟、漁猟をしてきた。先住民族の権利は07年に日本も賛成した「国連先住民族権利宣言」で 認められている。

 だが、河川でのサケ漁やアイヌ語使用などは明治政府の同化政策で制限されたまま、権利の保護を巡る議論は皆無だ。国連人種差別撤廃委員会は18年、日本政府にアイヌの権利保護を勧告したが、推進法にもこうした権利は明記されていない。

 北海道浦幌町の民族団体「ラポロアイヌネイション」が川でのサケ捕獲は「先住権」だと訴えた裁判は、札幌地裁が4月の判決で請求を退けた。

 多原さんは「先住民族と明記しただけではどういう権利を持つのかはっきりしない。根本はそこにある」と強調した。


本来差別はすべきではないということは倫理問題でもある。しかし、ヘイトでもって自分の地位を確保しようとすることがあるなら、それに対しての罰則は必要だろう。杉田議員の差別発言は、安倍政権の代理的なものでもあったはず。


5月24日 【表層深層】 「性加害目的」判断難しく

 衆院を全会一致で通過した「日本版DBS」創設法案では、雇用主側に確認を義務付ける性犯罪歴の対象に、下着の窃盗やストーカー規制法違反などが含まれていない。政府は「性加害の目的」があると判断するのが難しいことを理由に挙げ、市民団体や野党から批判の声が上がる。職種も限定され、フリーランスの家庭教師といった個人亨業主は対象外となる。後を絶たない子どもの性被害を防げるのか―。実効性に疑問が残る。

 「(下着窃盗などが)対象となっていないのは不適切ではないか」。14日の衆院特別委員会で立憲民主党の早稲田夕季氏は法案の「不備」をただした。

 加藤鮎子こども政策担当相は下着窃盗は財産に対する罪、ストーカー規制法違反は恋愛感情を満たす目的で付きまとうことを内容とする罪で「人に対する性暴力とは言えない」と答弁し、対象に含まれないと強調した。

 これに対し交流サイト(SNS)では「理解できない」と批判の声が相次いだ。対象に含むよう求めるオンライン署名は3万人分を超えた。署名を募り、政府に提出した市民団体の代表福田和子さん(28)は「下着窃盗などが性暴力に当たらないと言うのは2次加害。許されない」と訴えた。

 日本版DBSは確認対象を「特定性犯罪」と指定。内容は「人の性的自由を侵害する性犯罪や、性暴力の罪」とし、不同意性交罪や不同意わいせつ罪などの刑法犯に加え、痴漢や盗撮といった条例違反、児童買春・ポルノ禁止法違反も含む。

 一方、下着を盗む窃盗罪や、衣服に体液をかける器物損壊罪などは対象外だ。これらの行為に性加害の目的があったかどうかは犯罪成立の要件になっておらず、公道を裸で歩くなどの公然わいせつ罪も、被害者が特定しにくいことなどから対象とならない。

 国会で加藤氏は、裁判所が動機や目的まで認定するとは限らないとして「(性加害の目的で行われたものを)切り分けるのは難しい」と述べた。

 性暴力問題に詳しい上谷さくら弁護士は法案を「子どもの性被害を減らすための全く新しい取り組みだ」と評価する。ただ、罪名だけで性犯罪かどうかを判断するのは難しいと指摘。例えば住居侵入罪でも、実際は盗撮目的だったという場合もあり得るとして「罪名にかかわらず、性犯罪の要素があるものをどう見極めるかが重要だ」としている。

 対象の職種も網羅されているとは言いがたい。

 日本版DBSは、仕事の性質が@子どもと密接な人間関係を持つ「継続性」A指導など優越的立場の「支配性」B他者の目に触れにくい「閉鎖性」―の3要件を満たす場合を対象とする。

 学校の教員・教諭、保育所の保育士、スクールカウンセラーのほか、部活動のボランティアも3要件を満たせば対象に含まれる。一方、登下校の見守り活動のボランティアは「児童らとの接触を前提とする業務とは限らない」として対象外。テーマパークのイベントスタッフも、子どもが1度だけ遊びに行くことが想定されるとして除外された。

 22日の衆院特別委では、確認対象の範囲拡大の検討を求める付帯決議が採択された。犯罪では下着窃盗やストーカー規制法違反を、職種ではフリーランスの家庭教師やベビー シッターといった個人事業主を含めるよう求めている。線引きの妥当性は参院でも最大の焦点となる見通しだ。


子どもの性被害は避けなければならないのは当然だとしても、「線引き」の問題は常に残る。対象とされた人の抗弁の機会が保障されるかも検討課題ではある。


5月22日 財政審 教員給与一律増に反論

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会は21日建議(意見書)を発表した。中教審特別部会が公立学校教員の残業代の代わりとなる「教職調整額」を一律10%以上に引き上げるよう求めたの応対し、建議では各教員の負担に応じためりはりある給与体系にするべきだと反論。財政赤字の膨張が懸念されるとして一律増に慎重な立場を示した。

 政府は2024年度内に教員給与の改善を盛り込んだ改正法案を国会に提出する方針だが、制度の詳細を巡り、年末の予算編成でも焦点となる。

 建議では「勤務実態を踏まえれば、一定の処遇改善を検討する必要がある」として、教員給与の改善の重要性は認めた。ただ一律の引き上げは、過度な残業による長時間勤務を固定化する恐れがあると指摘。業務改善につながらないとの見方も一部にあるため、建議では、。負担が大きい主任教員の手当引き上げなどを提案。実態に応じた給与体系が必要だとした。

 中教審は13日、残業代の代わりに上乗せする月4%相当の現行の教職調整額を、10%以上に上げることを提言した。24年度予算の公費ペースでは約1440億円充てているが、10%にした場合は約2160億円に増える。ほかに専門教科を指導する教員らの拡充を求めており、公費負担が一層膨らむ可能性がある。

 このほか建議では、財政健全化目標についても提言した。政府は、25年度に国と地方の「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」を黒字化させる目標を掲げてきたが。同収支の歳出からは利払い費が除かれる。

 日銀の政策転換で金利は上昇基調にあり、今後利払い費が拡大する可能性が高い。そのため建議では、利払い費も含め歳出を税収などで賄えているかどうかを示す「財政収支」の指標を用い、赤字縮小を進めるべきだと訴えた。


なんともあきれ返ってしまう建議だ。これまで野放図にしてきた財政(とりわけ武器のアメリカからの爆買い)を教員給与にかこつけて縮小とは開いた口が塞がらない。それはさておき、「各教員の負担に応じためりはりある給与体系」とは現在の給与体系をさらに細分化せよといっているだろうか。「めりはりある給与」とは、現在のところ適正な残業代を支うことではないのだろうか。中教審にしてもこの財政審にしても、各省への注文ではなく露払い的な役割しか果たしていない。無駄と言えば無駄なお金と時間だろう。


5月22日 文科省 NHK報道に抗議

 文部科学省は21日までに、中教審特別部会がまとめた教員確保策を巡り、公立学校教員の給与体系を「“定額働かせ放題”ともいわれる枠組み」と報道したNHKに対し、矢野和彦初等中等教育局長名で「中教審の議論の内容に触れない一面的な報道」だと抗議する文書を出し、ホームページに掲載した。17日付。

 NHKは、取材に「『一面的だ』という指摘はあたらない。これまでも法律の仕組みや背景を丁寧にお伝えしている」とコメントした。

 給与体系見直しを求めてきた名古屋大の内田良教授(教育社会学)は「NHKは『ともいわれる』と慎重に表現しているのに、局長名で抗議してくるのは、だいぶ踏み込んだ印象で驚いている」と指摘。

 「教員のなり手不足の解消に向けて文科省も対策を講じてきており、教職へのネガティブなイメージをこれ以上持たれたくないという問題意識が背景にあったのではないか」と語った。

 教員に残業代の代わりに月給の4%相当を上乗せする給与体系を巡っては、一部の教員や学者らが、管理職に勤務時間を減らす動機が働かないとして、「定額働かせ放題」という言葉を使って教員の置かれた現状を伝えてきた経緯がある。

 NHKは、特別部会の提言を報じた13日のニュースで「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない教員の給与の枠組みはこのように呼ばれています」などと報じた。


文科省の抗議は正当なのか、と疑問を抱かざるを得ない。「定額働かせ放題」といわれるのは給特法を温存することが前提となっていた中教審の姿勢への批判でもあるのだから。そもそも中教審への諮問が給特法の4%を引き上げるためのお墨付きをもらうためであったので、根本的な働き方改革に踏み込む姿勢はなかった。つまり文科省の抗議は点に唾するものでしかない。


5月22日 市教委 民間調理場の活用も検討

 全員制中学校給食の導入を計画している京都市教育委員会は、約2万6千食を給食センターで一括調理する方式を一部変更し、民間事業者の調理場も活用する方向で検討していることが分かった。2028年度中の導入予定時期は変わらない見通し。

 市教委は、市立中の全員制給食は、塔南高跡地の第1グラウンド(南区)に共同調理場を設けて63校に配送する「センター方式」で実施するとしてきた。一方、市北部の学校への配送に時間がかかる問題や、国内最大規模となる学校給食調理場の安定運営への懸念が指摘されていた。

 複数個所で調理することにより、給食センターから遠い中学校への配送時間の短縮が期待できるという。

 市教委は今後、市立中で現在実施する選択制給食で弁当を調理する民間調理業者2社を含め、中学校給食への参入を希望する事業者を募る予定。総務課は「給食センター方式を主軸としながら、一部民間調理場の活用も含めたリスク分散を検討している」としている。民間委託する場合の事業者数は未定という。


中学校給食の必要性は広く認識されてきているが、その調理方法などには十分な関心が払われていないように思う。センター方式での調理はすでに門川前市長もとで決定されていた方針だった。その後の検討がどのようになされたのかは明らかではない。詳細な説明が必要だろう。


5月20日 文科省 子どもの意見 聴取義務化

 子どもの権利を包括的に定めた国連の「子どもの権利条約」を日本が批准して30年が経過した。他国より取り組みが遅く、条約の趣旨を反映し政策の基盤となる「こども大綱」を昨年決定。意見を表明する権利、後を絶たない虐待や貧困対策を柱に据えた。自治体でも推進してもらうため、自冶体版の大綱となる計画に向けたガイドラインを月内に作る方針だ。

 条約は子どもを権利の主体とし@差別禁止A子どもの最善の利益B生存と発達の権利C子どもの意見尊重−を原則に掲げた。1989年に国連で採択。196の国と地域が条約を締結している。

 日本は94年4月に批准。158番目だった。その後、児童買春・ポルノ禁止法、児童虐待防止法が成立。ただ条約を踏まえ、子どもの権利保障などを掲げる基本法の必要性が指摘されたが、法整備は進まなかった。NPO法人子どもの権利条約総合研究所(東京)の平野裕二運営委員は「政府は子どもの権利を守る施策を進めなくても問題は解決できると考え、危機感が足りなかった」と指摘する。

 その間、子どもを取り巻く状況は悪化。2022年度に児童相談所が対応した虐待は約22万件、不登校の小中学生は約30万人に上り、ともに過去最多となった。国連の子どもの権利委員会が改善を求める中、22年にこども基本法が成立。23年には司令塔となるこども家庭庁が発足し、23年末にこども大綱を策定した。

 こども大綱は、「こどもまんなか社会」を目指すと明記し、全ての子どもが暮らしやすい社会の実現を図る。政府は、自治体版の大綱となる「こども計画」の策定を都道府県や市区町村に促す。加藤鮎子こども政策担当相は4月末の記者会見で「ガイドラインを作り自治体に働きかけていく」と述べた。


日本人初の国連権利委員【大谷弁護士】「子どもの意見、政策反映を」

 子どもの権利条約は、尊厳を持って子どもに接しなければならないという価値観を示したことに一番の意義がある。国は子どもの権利を守る義務がある。2022年成立のこども基本法は、権莉条約の意義を取り込んだ内容で大きな前進だ。社会が大きく変わっていくための仕組みができた。

 増加する虐待やいじめ、貧困問題など課題は依然として多い。国連では、子どもの目線で解決策を導き出していくことが必要と指摘されている。子どもの声を政策に反映させる「意見表明権」で、権利条約やこども基本法に明示されている。

 例えば、虐待防止を考えるときに、大人だけで議論するのではなく、子どもが意見や自身の経験に基づくアイデアを伝え、大人がきちんと考えを聞く枠組みが重要だ。もちろん、全てが子どもの意見通りになるわけではないが、どういう結果になったのかをフィードバックする必要がある。意見がどう扱われたかを明らかにすることは、子どもが社会と関わる際に良い影響を与えるはずだ。

 こども家庭庁には、地域格差の解消を期待したい。意見表明権の観点で先駆的に取り組んでいる自治体もあれば、まだまだ仕組みが整備されていない自治体もある。うまくいっている事例の紹介や自治体交流を促すなどして、子どもが生まれた地域で差が生じないようにしてほしい。


学校教育に関わってひとつ問題を考えおこう。子どもの意見表明の権利が教育においてどれだけ尊重されているかという検討はされなくてはならない。指導者の質問に手をあげて答えることが意見表明ではないのは明らかだろう。子どもが暮らす社会的なイシューついてどう考えるかを表明することも大切な権利行使だ。例えば、イスラエルのガザ侵攻に対してどう考えるのか、あるいは共同親権についてはなどである。そこで問題になるのはいつも「政治的中立」という横やりだ。政治から子どもを隔絶しておこうとする教育的配慮を考えなければいけない。


5月20日 PFAS規制 政治主導で推進目指せ

【核心評論】全国各地の河川や地下水で高濃度汚染が明らかとなっている有機フツ素化合物PFASに関し、米政府が4月、水道水濃度の大幅な規制強化を決めた。PFASは1万種以上あるとされる人工の化学物質だが、発がん性などの毒性が強く指摘されるPFOA、PFOS2種について1リットル当たり計70ナノグラム(ナノは10億分の1)としてきた勧告値を、順守の義務もある各4ナノグラムの規制値に改めた。PFHXSなど他のPFASにも規制の網をかけた。

 日本は2種で計50ナノグラムを暫定目標値としているが、健康不安も高まっている。「予防原則」に立って早急に厳しい水質基準値を定めるべきだ。

 PFASは米企業デュポンが1938年開発。原爆の製造にも利用された。撥水、撥油の性質があるため戦後、フライパンのフツ素樹脂加工や半導体製造、泡消火剤などに広く用いられてきた。

 毒性判明後、国際条約で製造禁止などとなったが、今も汚染が続く。自然環境では分解されにくく、過去に廃棄・放出された物が地下などに残留していることが主因だ。

 土壌に残留する泡消火剤が数百年間、地下水のPFAS汚染を続けるとの研究もある。地下水はくみ上げや河川経由で水道水に用いられている。

 米政府は今回、免疫力低下や低出生体重などに関するヒトの疫学デー夕を基に規制値を検討。検査の性能上、米国内の全水道事業者で検出可能な下限値の4ナノグラムを下回るよう義務化し、目標値はゼロと決定した。

 PFAS問題に詳しい小泉昭夫京大名誉教授は「腎臓がんリスクの増加や胎児の成長低下などは疫学的な証拠がある」と指摘。日本でも海外の疫学データを基に順守義務もある厳しい水質基準にするべきだと主張する。

 だがPFASの食品健康影響評価をしている内閣府食品安全委員会は2月の評価書案で「証拠は限定的だ」などとして疫学データを退け、暫定目標値決定時と同じ動物実験を判断の根拠とした。

 これを受け水道水を所管する環境省も50ナノグラムの現状維持で決着させるとの観測が出ている。及び腰の背景には、PFASを利用する半導体や電気自動車(EV)など先端産業への配慮があるとの見方もある。

 ある水道関係者は「米国並みに規制したら各地でパニックが起こる。経費など多くの面で対応が困難だ」と指摘する。現在は地域任せの水質管理や浄化などに、国が財政支援をすることも検討する必要があろう。

 環境省が3月発表した2022年度の河川・地下水調査では、38都道府県1258の調査地点のうち16都府県の111地点で50ナノグラムを超え、もはや特定の地域の問題ではない。汚染地域・範囲の把握や原因特定、除染、健康調査など府省横断の対応も求められる。

 伊藤信太郎環境相は「国民の命と健康を守るために、できる限りのことをしたい」としているが、動きは鈍い。政治主導、国主導での対策推進を強く求めたい。(共同通信記者・阿部茂)


23年12月8日の京都新聞は「京都府福知山市は12月8日、三和町芦渕浄水場で行った水道の水質検査で、発がん性などが指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が国の暫定目標値を一時的に超過したと発表した。周辺の民家や事業所975戸に給水しているが、健康被害は確認されていないという。福知山市水道課によると、10月16日の定期検査で国の暫定目標値(1リットル当たり50ナノグラム)の1・5倍となる75ナノグラムを検出した。10月31日に実施した臨時検査では目標値を下回ったという。原因は分かっておらず、同課は年内に周辺住民への説明会を開くとともに、検査回数を増やすなどして監視体制を強化する方針。」との記事を掲載している。水俣を嚆矢として水に関わる問題は過去から継続的に発生している。過去には環境ホルモンの問題も指摘されたが、解決されているとの話は聞かない。「水は命」であることを国・自治体は重視すべきである。


5月19日 京滋の公立小 1学年1学級 3割超

 京都府と滋賀県の公立小学校560校のうち、1学年1クラス(単級)が全ての学年にわたる学校が3割超にあたる180校に上ることが各市町村教育委員会への取材で分かった。クラス替えができないと人間関係の固定化や学級活動のマンネリ化を招くとされ、急速な少子化が教育現場に影を落としている。

 京都府では26市町村の小学校計342校のうち、104校が全ての学年で単級(2学年以上で構成する複式学級を含む)で、単級と1学年2クラス以上の複数学級が混在する学校も24校あった。滋賀県では19市町計218校のうち76校が全て単級で、単級・複数学級の混在は27校だった。

 小学校に比べて学校規模が大きい中学校でも単級が拡大している。京都府では154校のうち全学年単級が23校、単級・複数学級の混在が1校で、滋賀県では93校のうち単級が6校、単級・複数学級の混在は2校だった。

 義務教育学校(小中一貫校)では京都府が10校中5校が単級で、滋賀県では2校中2校が単級だった。

 単級の学校がある自治体は、京都府では京都市や福知山市、亀岡市など24市町村、滋賀県では大津市、高島市、長浜市など18市町。単級がない自治体は、向日市、大山崎町、栗東市のみだった。

 国の学校基本調査によると、京都府内の公立小の学級数は2010年度は5520学級だったが23年度には5054学級に減少。学校の小規模化が単級の増加の背景にあるとみられる。

 小学校150校のうち23校が単級のみの京都市は、地域主導による学校統合を進める。1992年度以降、88の小中学校が25校に統合された。市教委学校統合推進室の担当者は「クラス替えができないことが学校統合に向けて話が進む理由の一つになっている」と話す。


【教育】「クラス替え」工夫して実現

 同級生だけではクラス替えができない小規模の小学校。横だけでは無理なら縦も生かしてー。学年の垣根を越えて活発な人間関係を構築してもらおうと独自の施策を展開する京都市と高島市の小学校を取材した。(生田和史)


向島藤ノ木小

 高層の住宅団地が林立する伏見区の向島ニュータウンの一角にある全校児童109人の向島藤の木小。児童数は1992年度に最多の861人に達したが、その後は地域の人口減や高齢化で、2017年度には1学年1クラス(単級)の寂しい状況となった。

   教科学習は学年別

 昨年度にある変化が起きた。学年を「1・2」、「3・4」、「5・6」の3グループにして、それをさらに二つに分けることで「クラス替え」を実現した。計6グループをそれぞれユニットと呼ぶ。ホームルームの役割を担っており、朝の会や終わりの会、給食などを同じ教室で過ごす。国語や算数、理科、社会といった教科学習は学年ごとに授業を受ける。3・4年のみ道徳の授業はともに学ぶ。

 クラス替えを復活させたのは22年度に着任した廣橋善樹校長。単級校の課題を「集団の中で役割が決まってしまう」と、長年の勤務歴から感じており、その打開策を模索していた。複数の教員で担任業務を分担する「チーム担任制」を応用し、児童同士だけでなく教員とも多様な関わりが生まれるよう工夫した。

 5年生でクラス替えをはじめて経験した6年の中川陽葵さん(12)は「これまではずっと同じメンバー同士の関係だった。が、(クラス替えによって)他学年と関わる機会が増え、いろんな意見に触れられるようになった。さまざまなことに挑戦できるようになり、楽しい」と喜ぶ。

 廣橋校長は「(子ども同士、子どもと教員間で)相性はどうしてもある。このやり方だとクラス替えができ、多くの教員とも関われる。いろんな人と付き合い、折り合いを付ける力を養ってほしい」と願う。


朽木東小

 高島市の山あいののどかな地域にある朽木東小の昼休み。子どもたちは学年の区別なく校庭で遊んでいた。全校児童は36人と少ないが、隣接する朽木中学校の生徒や地域住民らとの交流を通じて多彩な人間関係を育んでいる。

 朽木東小は、国の基準を当てはめれば「1・2」、「3・4」、「5・6」の2学年ごとの3クラスの複式学級を編成することになるが、加配教員を配置することで、「1」、「2・3」、 「4・5」、「6」の二つ単級と二つの複式学級の計4学級に緩和することが実現した。

 同小は、近くにある朽木こども園から入学者の多くを迎える。同園では3、4、5歳児が縦割りのホームルームで過ごす。年上が年下の世話をする人間関係をそのまま小学校に持ち込むため、他学年との交流にたけているという。国語や算数など主要な科目については、―学年ごとに授業に臨めるよう市費で非常勤講師を充てており、学習面でも配慮している。

   生徒が「先生役」に

 「ビルドアップタイム(BUT)」と銘打った小中連携の取り組みにも力を入れる。年間3回程度、隣接する朽木中の生徒が「先生役」となり、児童たちに主に算数の勉強を教える。家庭科などの授業や約20キロのサイクリングイベントなどには地域住民が参加し、子どもの成長を温かく見守る。

 岡本等校長は「少子化で単級や複式学級になるのは仕方がない。ただ、工夫すれば、豊かな人間関係を築くことはできる」と自信をのぞかせる。


「単級ではクラス替えができない」とのキャンペーンは30年以上も前から京都市教委が行ってきた。その目的は学校統廃合における経費削減であったことは明らか。中心部の小学校は統合が進み東山区では小中一貫校が2校になるまでになった。総合学習で2学年を一緒にし2分割するという実践も行われたが、それが統廃合を回避するものとしては認められなかった。「子どものため」という美辞麗句が教育をゆがめてしまうことがあることは心しておかないといけない。


5月18日 市教委 水泳授業 民間に委託

 京都市教育委員会は17日、本年度から市立4小中学校でスイミングスクールに委託した水泳授業の様子を報道機関に公開した。学校プールの老朽化や熱中症リスクの高まりを受けた施策で、本年度は試行と位置付けて成果と課題を検証し、来年度以降の実施校を検討する。

 この日公開した正親小(上京区)の水泳授業は、3、4年生約50人が徒歩で近くのスイミングスクールに出かけて受けた。泳力別に4グループに分かれ、上手な浮かび方やクロールの腕の回し方などをインストラクターから教わった。担任教諭はプールサイドから進行や子どもの体調を見守った。授業を終えた4年山本拓馬さん(9)は「腕を大きく回したらたくさん進むことが分かった。うまくなったと思う」と話した。

 市教委によると、学校プールを改修しながら維持するには1校当たり30年で計1億円以上の費用がかかる。プールの水温が高くなり過ぎて授業ができない日もあることから、本年度は同小のほか、祥豊小(南区)、新林小(西京区)、中京中(中京区)の4校でスイミングスクールに水泳授業を委託した。インストラクターの指導で泳力向上も期待できるという。祥豊、新林両小はスクール所有のバスで児童を送迎する。本年度予算に委託費1330万円を計上している。

 市教委は今後、アンケートなどで試行結果を検証し、学校近くに受け入れ可能な民間施設がある学校で委託を検討する方針。

 府内では福知山市と京田辺市が本年度から全小学校の水泳授業を民間委託しているほか、綾部、宮津、城陽、八幡、京丹後、木津川の各市でも外部委託を導入している。


小学校での水泳指導は教員にとって大きな負担であることは間違いない。教員不足の中で高齢者の非常勤・常勤講師が担任を受け持つこともあることから進めていきたい施策である。一方で、こうした形の民間委託が教育の形を変えてしまう可能性もあるだろう。民間側にとっては学校は望んでも得られない「草刈り場」でもあるのだから。


5月18日 民法改正 共同親権 誰のため

 改正民法が17日に成立し、長年続いた離婚後の単独親権が見直されることになった。共同親権を巡っては、離婚後も父母の双方が子育てに関わることができる一方、虐待被害などの継続や再発への懸念も残る。価値観の多様化に合わせて民法の改正は続くが、男女間の格差は解消されず、専門家は「時代の要請に応え、現実に根ざした議論が必要だ」と訴える。

 「父が母と離婚してくれて自由になれた」。関東地方の20代女性は、感情の起伏が激しい母から日常的に虐待を受け、風呂に沈められたこともあった。小学生の時に両親が離婚し、父が親権者になると、おびえ続ける生活から解放された。

 「好きなテレビを見てお昼寝もできた。ささいなことができる日常がうれしかった」。中学で不登校になった時も、父は転校させてくれた。「共同親権だったら転校できなかったと思う」と振り返る。

 改正法の規定では、共同親権とされるのは父母の合意か、家裁に判断された時だ。法制審議会の議論では、子が表明する意見の扱いを巡り賛否が割れ「子に親を選ばせるのは酷」との考えから見送られた。子どもの意思を顧みない仕組みとなり、女性は懸念を深める。

 別居親の権利

 改正議論が推し進められた背景には「諸外国は大多数が共同親権だ」との論調がある。これに対し、広島大法科大学院の小川富之客員教授(家族法)は「欧米では別居親の権利を高める改正をした結果、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)が軽視された」と分析する。実際、面会交流中に子が殺害される事案が米国やオーストラリアなどで続発。オーストラリアでは昨年、子の安全を最優先に図れるよう、同居親の判断を重視するよう法改正した。小川氏は「共同親権導入は諸外国の過ちを繰り返すことになる」と危惧する。

 改正法の審議でも、こうした懸念に対する政府側の見解を尋ねる場面がたびたびあったが、「子の利益」の強調や、家裁の態勢強化を繰り返すばかりだった。

 民法の家族法分野では近年、時代の変化に即した改正が続いてきた。非嫡出子の相続差別規定の削除や女性の再婚禁止期間の撤廃、配偶者盾住権の新設など、いずれも前時代的で不合理な制度を現代に合わせた形で見直すものだ。

 男女間の格差

 これに対し、共同親権を進める合理的理由は見いだせないとの見方もある。お茶の水女子大の戒能民江名誉教授(ジェンダー法)は「単独親権だけの現行制度でも、父母の関係が良好なら共同での養育は可能だ」と語る。その上で「離婚後も女性や子どもに介入を続けたいという父権主義的な発想で推し進められた改正だ」と批判する。

 一方、世論調査で約7割が賛成する選択的夫婦別姓は、1996年に法制審が答申するも、保守派議員の反対で法案提出に至らず、今も棚上げされたままだ。戒能氏は、日本のジェンダーギャップ指数の低迷や、いまだに根強い男女間の賃金格差などを挙げ、こう強調した。「弱者の声に耳を傾けず、真にジェンダー平等を実現しないまま共同親権の理想論だけを語るのは不適切だ。現実に根ざした議論をするべきだ」


共同親権関しては様々な意見があるが、懸念の方が賛意よりも多いと感じる。とりわけ裁判所が守らなければならない人は誰か、その人の利益は何かを適切に判断できるのだろうかということだ。かつてコミックで『家裁の人』というのが人気を集めたことがあった。その主人公のような判断を裁判所が行えるかどうかだろう。それにしても拙速に法案成立を求めた与党の目的は何だったのかという疑問がわく。戒能名誉教授の「父権主義的な発想」という指摘はこれまでの自民党の家族論を考えればよく理解できる。


5月17日 神戸地裁 市教委職員死亡 市に賠償命令

 神戸市立東須磨小で激辛カレーを強要するなどした教諭いじめ問題の発覚後、市教育委員会の職員として対応に当たっていた30代の男性が2020年に自殺したのは、市が長時間労働や精神的負担に対し適切に対応しなかったためだとして、妻らが市に約1億3800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁(島岡大雄裁判長)は16日、約1億2千万円の賠償を命じた。

 判決によると、市教委事務局の係長だった男性は、東須磨小で教諭4人が同僚をいじめていた問題が19年秋に表面化してから、苦情の電話が外部から殺到し、教育委員との間の窓口も務め繁忙となった。時間外労働は19年9〜11月に月60〜90時間に上り、20年1月末ごろに精神疾患を発症。同年2月に自殺した。

 判決は、上司に「睡眠薬を飲んでいる」と申告していたのに、産業医の診察を受けさせるなどの措置を取らなかったと指摘。自殺を予見できなかったとする市側の主張を退けた。


賠償額からみれば裁判所はほぼ原告の主張を認めたといえる。しかし、自死という事態を避けられなかった行政の道義的責任はのこるだろう。学校の働き方改革を進めるはずの教委がこれでは、希望が見えない。


5月17日 共同親権 DV懸念の具体策 先送り

 離婚後の共同親権を可能にする民法改正案が16日、参院法務委員会を通過した。親権の在り方を77年ぶりに見直す法案の審議では、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者らの懸念が再三示されながら、政府が打ち出したのは家庭裁判所の態勢強化など、具体性に欠ける内容ばかり。改正案は17日に成立が見込まれるが、推進派議員も疑問視しており、不安を抱えたままの船出となる。

 「家族は夫婦関係、親子関係の横糸と縦糸で紡ぎ出される。横糸が切れても、縦糸が残る道を探っている」。14日の参院法務委員会小泉龍司法相は家族関係を糸にたとえ、離婚後も親子関係を継続させることが共同親権の狙いだと強調した。

 離婚後は父母どちらかの単独親権と定められたのは戦後間もない1947年。親が離婚した未成年の子は2022年の1年間で約16万人に上り、50年当時と比べ2倍に増えた。

 子どもを取り巻く環境は多様化し、21年の国の世論調査では、離婚後も父母が養育に関わることについて肯定的な考えの人が約9割を占めた。政府は、共同養育が「理想像」であることは国民に浸透したとみる。

 ただDVや虐待の被害者からすれば、加害者側との接点が生まれる可能性のある共同親権への懸念は根強い。参院法務委では、新制度で重要な役割を果たす家裁に関する質疑が繰り広げられた。

 共同親権とするかどうかは父母の合意か家裁の判断で決まる。DVや虐待の恐れがあれば単独親権とされるが、家裁が適切に判断できるかどうかは未知数だ。

 この点について最高裁の担当者は「当事者の安全安心を最優先に考慮する」と答弁。施行後は申し立ての増加が予想され、マンパワー不足を指摘する声もあるが「施行に向けて必要な人的、物的態勢の整備に努めたい」と述べるのみだった。

 司法統計によると、全国の家裁が22年に受理した家事事件の申し立ては約114万件で、12年から30万件近く増えた。子どもの重要事項決定で意見が割れた場合の調整機能も期待され、パンク状態に陥らないか危惧する声もある。推進する立場の自民党議員ですら「裁判所にげたを預け過ぎでは」と苦言を呈した。

 不安の広がりから離婚当事者らによる反対派集会は各地で行われ、審議の中止を求めるオンライン署名の数は16日時点で約24万人となった。

 政府は当初「審議が難航する与野党の『対決法案』になるかもしれない」(法務省幹部)と警戒を強めていた。だが、抵抗していた立憲民主も、付則の一部修正などを見届けると賛成に回った。

 立憲民主のある議員は反対派の集会で「欠陥法案だ」とこき下ろしつつも苦し紛れに語った。「賛成しないと譲歩を引き出せなかったようだ」。



5月17日 共同親権 離婚後 子との面会は?

 離婚後の共同親権を導入する民法改正案を巡り、親子の面会交流の在り方が議論となっている。「面会交流や養育費などについて子の利益を最も優先して定める」と明記した2011年の民法改正後、家庭裁判所による調停などで面会交流の「原則実施」が主流となったが、面会交流中に子どもや元妻が殺害されるなどの痛ましい事件も起こった。「子の不利益」となる行為を限定している運用に疑問が出ており、研究者からは事態の深刻化を懸念する指摘もある。(今口規子、稲庭篤)


【立命大・村本さん】原則論はリスク大

 国内外の親子面会交流に詳しく、子どもの立場から携わってきた立命館大人間科学研究科教授の村本邦子さん(臨床心理学)によると、面会交流は虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の恐れがあれば制限するとしながらも、実際に家庭裁判所で面会交流の申し立てが却下された事例は限られ、母子に接近禁止命令が出るほど暴力があっても認められているものがあった。「裁判所はDVや虐待を理解しきれておらず、(現状の体制のままでは)見抜けないのではないか」と指摘する。

 夫から暴力や暴言を受けていたとして母子が面会交流の申し立てを拒否した事例でも、「子が父と会いたくないというのは母の影響が強い」として面会交流が命じられる場合が少なからずあった。申し立ての却下は、子のDV目撃によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断など「直接的被害が客観的に証明」された場合に限られている。加害者は自身の行為を否定・矯小化するケースが多く、被害者と子が不利益が被ることになるという。

 DVや虐待があって「やむなく避難して別居」した同居親や子が面会交流を拒否しているようなケースにおいて、別居親の干渉が続くようなことになれば「離婚後もさまざまな場面で紛争や葛藤が続き、子への悪影響に加え、同居親の回復を遅らせ子のケア能力を低下させる」といい、「別居親との交流が良いという一般的な原則を基に親子に働きかけるのはリスクが大きい」と懸念する。

 村本さんは「親権を親の責任ではなく子に対する権利と捉えて主張する親に、子の利益が損なわれかねない」とし、「法律は理想ではなく、現実にどう利用されるかを考えて作るべきだ」と強調。「原則実施」で不利益が生じた同居の親子の事例を踏まえ、運用の抜本的な見直しを訴える。


【広島大・小川さん】最優先は子の安全

 欧米では近年、面会交流での別居親による加害などを防ぎ、子どもの健全な育成を重視するため、父母による共同監護の原則を見直している。米国で国際結婚し、離婚後に京都府内で子と暮らす女性は「離婚後も双方の親が子に関わるのは大切だが、子の安全を条件にしてほしい」と訴える。

 元夫はDVで接近禁止命令を受けていたが、米国の裁判所は夏休みと冬休みに泊まりがけの面会交流を命じたため、毎回渡米していた。ある年のクリスマス、交流期間が終わっても元夫は子を返さず、音信不通になった。警察に届け出て弁護士と共に関係先を回り、学校に子を通わせていないという虐待の疑いで裁判所に元夫と子を呼び出してもらった。解決まで6週間を要した。

 元夫と子の面会交流までには監視付きの試行面会や専門家による別居親の精神状態の確認、セラピーの義務化など多くのサポートがあった。それでも事件は起きた。子は成人した今もPTSDに苦しむ。

 米国には弁護士費用を考えて泣き寝入りする同居親が多くいた。女性は「子のための話し合いができない父母に共同親権を強いると子が犠牲になる」と訴える。

 欧米では、離婚後の父母による共同養育を強化する立法化をした結果、父母間の葛藤をさらに高め子の健全な生育を損なったため、別居親の権利を抑制する方向に法改正が進んでいる。各国の家族法に詳しい広島大法科大学院客員教授の小川富之さんは「米国では暴力事件や虐待の経歴がある別居親でも子との交流が認められており、面会交流で一方の親に殺された子が年平均60人以上いる」と指摘する。2018年には米下院が裁判所に対し、子の安全を最優先して審理するように求める勧告を決議した。オーストラリアは2度法改正し、11年に子の安全を優先させ、今年5月からは同居親が単独で決定できる範囲を大幅に広げたという。

 日本でも民法改正案が成立した場合、同様の事態になることを懸念し、「父母の対立がある場合に共同親権を強制するのは再考する必要がある。欧米で起こった問題や議論を反映させるとともに日本の実情を適切に把握し、追跡調査を義務付けるなど見直しのための制度設計を図るべきだ」と話す。



5月16日 文科省 沖縄、日本復帰から52年

 沖縄県は15日、1972年の日本復帰から52年を迎えた。県民は「基地のない平和の島」の実現を求めたが、国土面積の約O・6%しかない県内に、今も在日米軍専用施設の約7割が集中する。政府は台湾有事などを念頭に防衛力を強化し、自衛隊施設の面積は復帰時の約4・7倍に拡大。県民は各地で抗議活動を行い、負担軽減を訴えた。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、政府は昨年12月、玉城デニー知事が拒んだ辺野古沖での軟弱地盤改良工事の設計変更承認を代執行し、今年1月に工事に着手。完成は2030年代半ば以降にずれ込む見通しだ。

 工事現場に隣接する米軍キャンプ・シュワブ(名護市など)のゲート前では15日朝、約30人が座り込みをし「52年前から基地に虐げられている状況は変わらない」と声を上げた。

 23年3月に陸上自衛隊の駐屯地が開設された石垣島では「平和行進」が行われ、約50人が「基地のない平和な沖縄をつくるぞ」などとシュプレヒコールを上げた。行進後の集会では、沖縄平和運動センターの木本邦広共同代表が「沖縄を二度と戦場にしないよう声を上げ続けたい」と訴えた。

 政府は中国の海洋進出などを踏まえ、九州・沖縄の防衛力を強化する自術隊の「南西シフト」を強化。16年以降、与那国、宮古、石垣の各島に相次ぎ駐屯地を開設した。

 1972年5月時点で166・1ヘクタールだった県内の自衛隊施設面積は、2022年3月末で783・1ヘクタールまで拡大。那覇駐屯地を拠点とする陸自第15旅団を師団に格上げする計画もある。

 沖縄は復帰後、観光業を中心に経済発展を遂げた。23年度の観光客数は約853万人で、前年度から約176万人増加。一方、1人当たりの県民所得は約226万円(21年度)と、全国平均の約7割にとどまる。


【88歳のシンガー】「戦争してはいけない」歌に込め

 太平洋戦争後、米国統治下の沖縄で米軍基地クラブのジャズシンガーとして活動し、今なお現役の斎藤悌子さん(88)=沖縄県石垣市=は、海を越えて戦地に向かう米兵の若者の悲しげな姿が脳裏に焼き付いて離れない。「とにかく戦争をしてはいけない」。平和への願いを込め歌い続けてきた。沖縄の日本復帰から52年が過ぎたが、その思いは強まるばかりだ。

 米軍施政権下の沖縄は1950〜70年代、朝鮮戦争やベトナム戦争の出撃地となり、多くの米兵が戦地へと向かった。米軍基地内の下士官クラブで歌っていると、息子を戦地に見送る悲しみを表現したというアイルランドの名曲「ダニイボーイ」のリクエストが毎日のように入った。

 ある日、いつものようにリクエストを受けると、若者が歌に合わせて女性と踊りながら、目にいっぱいの涙を浮かべていた。「彼はもうすぐベトナムに行く」。近くにいた人が教えてくれた。「出撃した若者のうち何人が戻ってきたのかは分からない。母親の気持ちになるとたまらない」

 斎藤さんは、35年に沖縄県・宮古島で生まれ、太平洋戦争時は母と兄の3人で台湾に疎開。ジャズシンガーになると「リクエストが来たら何でも歌えるように」と、中古レコードを買って繰り返し聴いては歌を覚えた。英語の発音は米軍広報紙「星条旗新聞」の米国人記者に教わった。

 結婚を機に、バンドマンだった夫の故郷、千葉県に引っ越したが、夫の希望で91年ごろ沖縄県・石垣島に移住した。静かな島での暮らしに喜びを見いだしてきたが、昨年3月、島に陸上自衛隊の駐屯地が新設された。同5月、米軍普天間飛行場(宜野湾市)のゲート前で行われた抗議行動に参加、現場で賛美歌を歌った。「戦争をなくすために歌で平和 を届ける。私にはそれしかできないから」。斎藤さんはかみしめるように話した。


地方自治を蔑ろにしてきた政府の沖縄対策の現状を玉城知事は「国が殿さま、自治体は家来」に戻っちゃう。(東京新聞 2024年5月4日)と表現している。「日本国憲法のもとに復帰を果たしたい」との沖縄の想いはことごとく踏みにじられてきた。「台湾有事に対応」が名目なのだが、有事にさせない外交努力が行われているとはとても思えない。同列には扱えないとしてもウクライナ、ガザの悲劇は戦争を好んでいるのは誰か、犠牲になるのは誰か、を問わずにはいられない。


5月15日 日教組 中教審提言批判 「給特法廃止を」

 中教審特別部会が、公立校教員に残業代を支払わないと定めた教員給与特別措置法(給特法)を維持する提言を取りまとめたことを受け、日教組は14日、東京都内で記者会見し「長時間労働の現状を是正するには給特法の廃止が不可欠で、提言は不十分だ」と訴えた。

 給特法は月給4%相当の「教職調整額」を一律支給する代わりに、時間外や休日の勤務手当は支給しないと規定。「定額働かせ放題」とも批判される。提言は、調整額の10%以上への引き上げを求めた。

 日教組は、業務量を減らす具体策や授業時間数の削減が提言に明示されていない点を問題視。山木正博書記長は「持続可能な学校現場の実現には、大胆な業務量削減が必要だ」と強調した。

 全日本教職員組合(全教)も同日、都内で記者会見し、提言の内容では長時間労働や教員不足の問題は解消しないと指摘。宮下直樹中央執行委員長は「教職を志望する若手は増えず、時間外手当を支給できるように制度を変えていくべきだ」と述べた。


大手の教員組合がこぞって「給特法廃止」を明言したことは評価すべきだ。また、各地で起こっている小さな批判運動も無視できない。自民党は来年の国会で中教審答申ベースの「改正」を目指すが、それまでにどのような世論形成ができるかがカギになる。


5月15日 大阪万博 判断情報なく学校側混乱

 2025年大阪・関西万博に子どもを無料招待する大阪府の事業を巡り、学校現場に混乱が広がっている。府内の小中高校生は個人ではなく学校行事での来場が前提。行事の計画に必要な受け入れ態勢が不明瞭なまま、5月末までに参加意向の回答を求められているためだ。見学できるパビリオンや会場の下見期間に関する情報がない上、安全面の懸念も広がる。

 事業は府在住の小中高生と4、5歳計約100万人が対象。「未来社会を体験し、将来を考える一助にしてもらう」(吉村洋文知事)のが狙いで、25年度にかけて20億円規模の支出を見込む。京都府、兵庫県も学校行事への支援を決めている。

 大阪府教育委員会は3月に各学校向けの説明会を開き、希望する来場日時や会場までの交通手段を回答するよう要請。団体の食事場所となる休憩所は予約制の方向で、要否も伝えるよう求めた。

 一方、見学するパビリオンは「事前指定できない」と説明。遠足のような行事に不可欠な、教員が下見できる時期も示されなかった。パビリオンの内容をはじめ、万博の全体像が見えない状況は「保護者にモデルコースが提示できない」(府教委)事態も生んでいる。

 加えて日常的に介助が必要な「医療的ケア児」らに対応できる医療拠点がどこに整備されるかも判然としない。特別支援学校のある教員は「展示内容はおろか、会場設備も曖昧で判断材料が圧倒的に足りない」と嘆く。

 3月には会場内で爆発事故が起きた。原因は埋め立て地の人工島・夢洲の地中にある廃棄物から生じたメタンガスで、会期中も発生する。「子どもを連れて行ける場所なのか」と心配する保護者の声を踏まえ、教職員でつくる労働組合は安全が確認できるまで意向調査を延期するよう府と府教委に申し入れた。

 府教委担当者は「懸念の声は真摯に受け止める。日本国際博覧会協会と連携して、早急に方針を明確化したい」と話した。


京都府と京都市教委は10日に「万博の学びの意義で意見交換」を行った。そこでは賛否悲喜こもごもという印象だが、関西ということだけで前のめりな判断は避けてほしい。


5月14日 【続報】 教員確保 二兎追う道険し

 中教審特別部会は教員確保策として、残業時間の大幅削減と処遇改善を並行して進める方針を示した。既に働き方改革に工夫を重ねる学校現場からは、努力には限界があるとして、人員増など抜本的な業務軽減策を期待する声が上がる。「二兎」を追う対策には大幅な予算増も必至で、実現への道は険しい。

 「どんな学級づくりがしたいか、担任を受け持つ心の準備ができた」。2023年春に新卒採用された山形県村山市立楯岡小の鹿野真依教諭(23)は初年度を振り返る。

 県教委が23年度に始めた取り組みにより、1年目は負荷が重い担任を持たずに3、4年の理科と3年の副担任を担当。先輩の学級運営を間近で学べたほか、授業の持ちこま数が限られたことで「授業準備や事務作業に余裕を持って取り組めた」と話す。今春からは4年の担任を務める。

 山形県に限らず、勤務時間がかさむことなどで退職・休職してしまう若手教員は増えており、全国的な課題だ。文部科学省の22年度調査では採用後1年未満で退職した公立学校教諭は635人となり、データが残る中では過去最多。うち精神疾患が229人に上った。教員全体の長時間労働も恒常化。文科省によると22年度、残業時間の上限指針の月45時間を超える教諭は小学校で64・5%、中学校で77・0%に上った。

 特別部会は今回、全教員の残業時間を月45時間以内にすることを目標とし、将来的に20時間程度に縮減すべきだと指摘。校長ら管理職のマネジメント能力向上や、若手へのサポート充実などを求めた。ある文科省幹部は「目標達成には管理職の力量が重要だ」と述べ、働き方改革の加速を強調する。

 だが現場の頑張りには限度があるのが実情だ。横浜市立獅子ケ谷小は45分が標準の授業時間を40分に短縮し、児童の下校を30分早めた。教員が授業以外の業務に使える時間を確保するため、会議の見直しなども進めた。

 その結果、23年4〜12月の平均残業時間は約30時間で前年より6時間減少したものの、大塩啓介校長は「これ以上は厳しい」と語る。

 「教員が創造性を発揮するには時間の確保が大事」とし、国主導での余裕を持たせた人員配置や授業時間数削減が必要とする。新卒教員の負担軽減に取り組む楯岡小の井上敏春校長も「業務は多く、教員を増やさなければ解決しない」と訴える。

 13日の特別部会でも、委員の一人から「(提言は)教員定数の改善に踏み込み不足だ」との意見が出た。

 特別部会は人材確保に向けた処遇改善策として、残業代の代わりに支給する「教職調整額」の月給4%相当から10%以上への引き上げも求めた。調整額を10%にした場合、公費負担は約2100億円増える見込み。小学3、4年への教科担任制拡充による人員増など提言に盛り込まれた他の業務軽減策を合わせれば費用はさらに膨らみ、財源の壁が立ちはだかる。

 25年度予算案を巡る財務省との折衝は、難航が予想される。文科省幹部は「(処遇改善と長時間労働解消の)二兎を追うことになり、厳しい調整になる」と語った。


【解説】残業縮減の行程提示を

 中教審特別部会は現行の給与制度を維持した上で、教員の長時間労働是正を目指すべきだと提言した。若手支援や働き方改革など内容は多岐にわたるが、国には業務量に見合った人員配置を進めるなど、現場の努力任せで終わらない対応が求められる。

 特別部会で焦点になったのは、処遇改善と残業時間削減をどのような手段で実現するかだった。

 一部の教育関係者からは、残業代の代わりに月給に「教職調整額」を上乗せする現行制度が長時間労働の要因だとして、廃止を求める声があった。だが特別部会は「自発性・創造性」という教職の特殊性を理由に、制度転換を否定。その上で、管理職のマネジメント能力向上による働き方改革の加速や教科担任制の拡充など、残業時間削減に向けた総合的な対応を求めた。

 現場の自助努力には限界があり、教員定数の改善や業務の見直しを求める声は切実だ。教職調整額の引き上げが、「その分働かせていい」との風潮につながらないかとの懸念も根強い。提言は、将来的に残業時間を20時間程度に縮減すべきだとした。日々子どもたちと向き合い奮闘する教員の思いに応えるためにも、文部科学省には実現に向けた具体的な行程の提示と政策の効果検証が求められる。


教員有志会見残業代支給 議論継続すべき

 中教審特別部会が、公立校教員に残業代を支払わないと定めた教員給与特別措置法(給特法)を維持する提言を取りまとめたことを受け、給特法の見直しなどを求める教員の有 志らが13日、東京都内で記者会見し「長時間勤務の問題は解決せず、残業代を支払う制度へ議論を続けていくべきだ」と主張した。

 給特法は公立校教員に月給4%相当の「教職調整額」を一律支給する代わりに、時間外や休日の勤務手当は支給しないと規定。提言は、調整額の10%以上への引き上げを求めた。 現行制度が残されたことに、岐阜県立高の西村祐二教諭(45)は「残業は自発的なボランティアという位置付けは変わらず、ベテラン層は失望し、教職を目指す若手も増えない」と訴えた。

 愛知工業大の中嶋哲彦教授も「長時間勤務をなくすための仕組みを作ろうとしていない」と批判した。


給特法の廃止を議論しなかったことは中教審の存在意義が改めて問われることとなる。加えて、中教審が議論しなかったもう一つの論点は「積み過ぎた方舟」(上野千鶴子は『家族・積み過ぎた方舟』とした)となった教育をどうするかということだった。文教政策がゆとり教育批判から学力重視へと方向転換したのは、2001年の遠山敦子文科大臣が緊急アピール「学びのすすめ」だった。それからおよそ20年の間どれだけのものを積み込んできたのかを点検すべきだろう。今の長時間労働の根本原因は、社会が解決しなければならない問題でも全て教育に押し付けてきた結果でもある。


5月14日 【現論】 ガザ襲う飢餓、地に落ちた尊厳

―藤原辰史 京大人文研准教授―

 国連食糧農業機関(FAO)の理事会議長だったブラジルのジョーズエ・デ・カストロは、第二次世界大戦後すぐに、ドイツが「人種的差別とともに、栄養的差別をおこない」、「高度の破壊力をもつひとつの強力な武器」として「組織的飢餓計画」を遂行したと述べ、占領地の民族やユダヤ人への食料分配を劇的に下げ、意図的に餓死させたと批判した(「飢えの政治学」)。

 いま私が研究している、強制収容所の暴力の陰に隠れたナチスの巨大犯罪である。

 的外れの議論

 そして現在、イスラエルによって空爆と攻撃を受け約三万五千人が亡くなったガザ地区では、住民の半数とも言われる人々を飢餓が襲い、子どもも餓死している。

 これもイスラエルによる意図的な飢餓であると複数の国際機関が批判している。封鎖による飢餓政策は、良心の呵責をあまり抱かずに大量に人を殺すことができる極めて悪質な行為だからだ。

 四月一八日、イスラエルの新聞「ハアレツ」にユヴァル・ノア・ハラリの記事が掲載され、日本でもクーリエ・ジャポンで公開された。ガザ地区での非人道的な「復讐」ゆえに国際社会から孤立したイスラエル政府をまるで北朝鮮だといい、方針転換をしないネタニヤフ政権を非難した。

 世界中のメディアではイスラエルの暴虐が毎日のようにテレビで流れているのに、それに目を向けようとしないイスラエル国民への批判もそこには含まれている。最初はドイツも米国も膨大な軍事支援をした。だが、今後たとえイランとの全面戦争になっても、信頼が失墜したイスラエルにどの国が援助をするだろうか、と。

 私が恐れているのは、今回のこの記事に対し「さすがハラリだ、自国への批判も鋭い」という日本の読者の浅はかな反応である。「サピエンス全史」などで一躍世界のご意見番的存在となったハラリは、イスラエル人歴史家だ。歴史の観点から今回の問題もきちんととらえることが期待される。実際、本人も歴史を参照にしている。だが、それは明らかに的外れだ。というのも、参照した歴史が敗戦寸前の日本だからである。

 撤退する勇気を持たないで「敗北寸前」であるイスラエルと、ずるずると戦争を続けて原爆を落とされた日本を比較しているのである。イスラエル人向けの記事だとしても、あまりにも浅すぎる。

 隠された犯罪

 あなたが論ずるべきはそこではない、と思う。なぜハラリは、イスラエルが建国以来、パレスチナ大たちの土地を暴力で奪い、オリーブやオレンジの木をなぎ倒し、彼らが住んでいた家に入植してきた事実を論じないのか。なぜ、ハラリは、イスラエルが食料自給率九割の農業大国になった理由がヨルダン川西岸自治区の水源を奪い、パレスチナ人農民たちに農業をあきらめさせてきたからだ、と言わないのか。

 なぜ、イスラエルは、二〇〇七年からガザ地区を封鎖し、食料も水も電気も制限し、川と海を汚染してきたのか。なぜ、イスラエルはモンサント社などの除草剤をパレスチナ人の農地に散布して汚染しても裁かれないのか。なぜ、イスラエルは、漁をするパレスチナ人漁師を銃撃し、殺害してきたのか。

 問わねばならないのは、イスラエルの信頼が失墜したという「いま」ではない。ずっと国際社会で、イスラエルがパレスチナ人の生を危機に追いやってきた行為が非難されてきたのに、日米やドイツなどがイスラエルを支持し、こうした犯罪を覆い隠してきたことこそ問わねばならない。

 イスラエル批判者をユダヤ大憎悪の伝統と結びつける国民をハラリが批判しているのは正しい。だが、歴史家ならこう付け加えるべきだった。イスラエルもナチスと同様に飢餓を通じた虐殺をしている。ナチスの最大の被害者はロシア人だったとはいえ、ユダヤ人も餓死した。ならば、いまのイスラエルこそ、ユダヤ人の受難の歴史を冒涜している、と。

 いま真っ先に論じるべき問題は、イスラエルの存続の危機などではない。人間の尊厳が地に落ちたことである。



5月13日 中教審部会 教員給与増 提言案

 中教審の特別部会は13日の会合で、教員確保に向けた処遇改善と働き方改革の提言案を示した。公立校教員に残業代の代わりに上乗せする月給4%相当の「教職調整額」を10%以上に引き上げることや、11時間を目安とする「勤務間インターバル」の導入などが柱。同日の議論で提言がまとまれば、文部科学省が給与増に関し、来年の通常国会に教員給与特別措置法(給特法)改正案を提出する手続きを進める。

 残業代を支払う制度への抜本的改革は見送られる。長時間労働が深刻な学校現場からは、制度温存では残業削減が進まないとの懸念も根強い。

 提言案では、終業から次の始業まで休息時間を明確にする勤務間インターバルは、生活や睡眠の時間確保に有効だと指摘した。残業は「全教員が月45時間以内」を目標とし、将来的に月20時間程度を目指すとした。

 受け持つ授業が多い小学校学級担任の負担軽減を目的に、現在は5、6年で進める教科担任制を3、4年へ拡大。精神疾患による休職率が高い若手のため、新卒教員は学級担任ではなく教科担任に回る体制も提案した。

 校長らの管理能力を高めて部下の業務削減に。つなげ、教育委員会ごとに在校時間を公表する他、特に勤務が長くなりがちな教頭を補佐する支援員の配置拡充を強調した。

 給与向上策は、学級担任の手当加算や管理職手当の増額も盛り込んだ。

 調整額が引き上げられれば1972年の給特法施行以来、約50年ぶり。現行の2・5倍の10%にした場合、公費負担は約2100億円増える。


勤務間インターバルや教科担任制などの提言は働き方改革に幾分かの効果はあるだろう。しかし、給特法が長時間勤務の源泉とみなされている議論には触れなかったことは理解できない。また教職調整額を4%から10%に引き上げる根拠が全く不明。邪推すれば4%制定当時残業時間月8時間が根拠だったことから考えればその2・5倍の月20時間の残業は当然という結論なのだろう。「将来的に月20時間程度」という考え方がそれを如実に示している。労働組合はこの案を許容してはいけない。かつて社会党、日教組の妥協が現在の長時間労働を許した形になっているのだから。


5月10日 府総合教育会議 万博の学びの意義で意見交換

 西脇隆俊京都府知事と府教育委員が教育課題を議論する府総合教育会議が9日、府庁で開かれた。府内の小中高校生が校外学習の一環で2025年の大阪・関西万博に行く場合に入場料を支援する施策を巡り、万博での体験を子どもたちの教育にどう生かすか意見交換した。

 万博で多様な国の文化や価値観に触れて国際理解を深め、未来社会について考える機会にすることを目的に、府は、小中高校生最大約25万人の入場料金を補助する予算3億3400万円を確保している。

 小畑英明委員は「人口減少や低成長、貧困や格差が渦巻く時代に開かれる今回の万博には、社会問題の解決策を考える大きな役割がある。課題解決型の学びを目指す教育と万博の役割は軌を一にするのではないか。探求の舞台として万博を活用しては」と提案した。

 一方、パビリオンを見て回るだけでは子どもたちの体験が希薄になりかねないとの懸念も相次いだ。藤本明弘委員は「学校での事前学習で狙いを明確にするべきだ。大人がテーマを与えるのではなく、生徒の自主性を大事にしてほしい」と注文を付けた。

 西脇知事は「楽しかった、というだけではもったいないと思っている。京都の子どもに何か役に立つ、何か残るものとして活用していきたい」と述べた。


かつての高度経済成長の再来を期待しての大阪万博。しかし、強大なイベントで経済をけん引していくという発想がすでに時代遅れとなているのは東京オリンピックで経験済みではないのか。まず「参加ありき」の議論からは建設的な教育は生まれないだろう。教育の政治的な利用でしかない。


5月10日 京銀金融教育チーム 親子向け催しや学校授業

 京都銀行は9日、金融経済教育を広げるため、営業本部内に金融教育チームを新設した。地元の小学生から大学生までを対象にした教育プログラムなどを無償提供する。

 チームは金融教育の認定講師資格を持つ行員ら8人で構成する。親子向けイベントや資産運用フェアを開くほか、学校への出前授業などを実施する。

 プログラムは、お金の使い方などの基礎から将来を見据えた資産形成まで幅広く扱う。成人年齢の引き下げや高校での金融教育拡充などを背景に教育機関からの問い合わせが増えているという。2024年度は延べ1万人への提供を目指す。


お金にまつわる問題はその人の人生に大きくかかわる問題ではある。しかし、それを「金融経済教育」として扱う必要があるのかは疑問。とりわけ民間の金融機関がそれを担うことには一層の疑問がわく。現場の負担にもなる?いやむしろその時間の教材研究をしなくてもよく時間中にほかの仕事も可能になると歓迎する向きもなきにしもあらずか。


5月8日 ハマス休戦案受諾 市民苦境、続く政治駆け引き

 イスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、仲介国エジプトやカタールによる3段階の休戦案の受け入れを表明した。ただイスラエルが提示していた内容と異なり、ハマスに有利な「恒久停戦」に踏み込んだ別案だ。合意を求める国際圧力が強まり、ガザ市民の苦境が深まる中でも、非難の矛先が相手に向くよう仕向け合う政治的な駆け引きが続いている。

 「ボールは今、イスラエル側にある」。ハマスのハニヤ最高指導者は6日、休戦案の受け入れ表明後、こう強調した。

 戦闘休止や人質解放を巡る間接交渉は、膠着状態が続いた。潮目が変わったのはイスラエル側が4月に休戦案を提示してからだ。後ろ盾の米国と協議し、戦闘終結を意味するとみられる「持続可能な平穏の回復」との文言を入れ、ハマスに「大きな譲歩をした」(イスラエル政府高官)飢えに苦しむガザ市民からも受け入れを求める声が上がった。

 追い詰められたハマスは、自らの主張が反映された修正案の受け入れを発表。曖昧な表現のイスラエル案に対し「軍事・敵対行為の恒久的な停止」「イスラエル軍のガザ完全撤収」との表記を盛り込んだ。

 「われわれの承諾した提案とは違う」。地元メディアによると、ハマス案を目にしたイスラエル当局者らは一様に憤りをあらわにし、国際社会の非難をイスラエルに転嫁する「策略」との見方が広かった。イスラエル・オープン大のサリム・ブレーク講師(政治学)は「『自分たちは休戦に前向きで、合意できないのはイスラエルのせいだ』と示すのがハマスの狙いだ」とみる。

 戦闘開始から7日で7ヵ月たった。「マス壊滅」「人質解放」を訴えながら目標を達成できないネタニヤフ首相に、イスラエル国内では退陣圧力が強まる。シンクタンク「イスラエル民主主義研究所」の4月の世論調査では、62%がハマス奇襲の責任を取り辞任すべきだと回答。戦闘が終結すれば、退陣は不可避とみられている。

 連立を組む対パレスチナ強硬派の極右勢力は、ハマスに譲歩した休戦案に合意すれば連立を離脱すると脅している。ネタニヤ氏にとって「合意」は政権崩壊につながりかねない危険な賭けで、戦闘状熊の継統が個人的利害と密接に結び付いているのが現実だ。

 ブレーク氏はパマスがイスラエル案を拒否し続ければ、国際社会の批判はハマスに集中す。ネタニヤフ氏にはそれが一番良かった」と指摘する。

 「全員殺害するまで戦いは終わらないのか」。3人の子どもと共にガザ北部から南部ハンユニスに避難する男性マドゥフーンさん(33)は電話取材に憤った。

 6日夜、ハマスの休戦案受け入れが報じられるとれると、ガザ各地の通り江市民が祝砲を響かせた。しかし、イスラエル軍が最南部ラファ東部への攻撃を開始すると雰囲気は一変。ネタニヤフ氏はラファを「ハマスの最後のとりで」と見なし地上侵攻する構えを崩していない。

 戦闘によるガザ地区の死者はは3万4千人を超えた。マドゥフーンさんは吐き捨てるように言った。「われわれはハマスとイスラエの政治ゲームの犠牲者だ」(エルサレム、テヘラン共同)


国連事務総長「休戦合意を」

【ニューヨーク共同】国連のグテレス事務総長は6日、パレスチナ自治区ガザで戦闘を続けるイスラエルとイスラム組織ハマスの双方に対し、戦闘休止に合意するよう求めた。戦闘休止案を受け入れたとするハマスの発表を「逃してはならない機会だ」と強調。合意実現へさらに歩み寄るよう双方に訴えた。

 グテレス氏はニューヨークの国連本部で、イタリアのマッタレッラ大統領と会談した際に述べた。イスラエル軍がガザ最南部ラフアに地上侵攻すれば「壊滅的な人道被害」が発生するとして、強く反対した。


一度始まった戦争はその終わりを見つけることがとても難しい、ということを如実に示している。双方に見せかけの「正義」があるからだ。沖縄の自衛隊基地の「整備・拡充」は、戦争を「始める」というサインでしかない。戦争をしないことを選択する指導者がどこの国においても必要だ。岡野八代『ケアの倫理』(岩波新書)が安全保障についても論究している、一読する価値がありそう。


5月6日 共同親権問題 親子関係 期待と懸念

 離婚後の共同親権を導入する民法改正案の審議が参院で始まった。「親としての責任を自覚し、子の利益を優先的に考えることができる」との期待があるが、DV(ドメスティックバイオレンス)や虐待が排除されずに継続するなどと懸念の声も大きい。暴力やハラスメントにさらされた女性と子どもを支援するウィメンズカウンセリング京都(京都市中京区)代表の竹之下雅代さんと、離婚後の親子面会交流の支援に取り組む立命館大名誉教授の二宮周平さんに、法案の課題を聞いた。(稲庭篤)


【竹之下雅代さん】DVや虐待対策が先

 カウンセラーでもある竹之下さんは「話し合いができる父母の共同親権に反対はしない。しかし、家庭内の暴力をなくすための取り組みなど、共同親権導入の前にやることがあるのでは」と性急な進め方に疑問を投げかける。

 2001年のDV防止法施行以降、なぐる、蹴るなどの明らかな支配の手段は減っているが、精神的なダメージを与える言動の繰り返しを受け、相手に翻弄され傷ついた女性の相談は増えており、妻への支配は複雑になっている。そこで育つ子どもの心の傷は成人になってからも深刻だという。

 日本でDVが減らない理由に、人を傷つけ支配することに鈍感で男性優位の社会があるとする。離婚や親権、面会交流の協議において「社会的な地位」などに信用が置かれ、DVに傷つき精神的に不安定になった女性の主張を否定しがちな風潮は根強い。そのような社会のままで、外からは見えにくいDVや虐待の排除ができるのか疑問視する。

 共同親権を強いられ、別居親の干渉が続けばどうなるか。「へとへとになりながら離婚してようやく安心できると思えたのに、また危険な戦場になったと感じるのではないか」と同居親と子どもへの影響を懸念する。

 虐待の問題を母親だけのせいにする言説もあふれている。子育てカウンセリングの経験を踏まえて、「母親を責め指導する父親と、しんどさを分かち合いながら協働する父親では、子育ての質が変わってくる。影に隠れている父親の影響を理解することがまず必要」という。

 「親子面会交流の調停で、『お父さんに会いたくない』との子どもの声を聴いて意見書を書くこともあるが、配慮されないこともあった」といい、子どもの意見が尊重されないことへの危惧も示す。

 男女格差を示す「ジェンダー・ギャップ指数」が過去最低になっても関心は薄い。「DVで女性は苦しんでいる。子どもも大人不信のまま育っていく。そのような社会を変えることから始めなければいけないのではないか」と訴える。


【二宮周平さん】子どもの利益へ前進

 家族法を専門とする二宮さんは「離婚後の共同親権は、離婚後も父母が子の養育について話し合い、重要なことを共同で決定する仕組み。子は、離婚しても父母は自分のために協力している、自分を大切にしてくれていると実感でき、自尊感情、自己肯定感につながる」と話し、今回の民法改正案を「子どもの利益のための前進になる」と評価する。

 日本の現状について厚生労働省の調査報告(2021年11月)を挙げ、離婚母子世帯の約7割が父と子の面会交流を現在も実施しておらず、養育費を受給していないことを指摘。その理由について「離婚の協議では、一方のみに決定権を与える単独親権を得ることが目標となり、面会交流や養育費など離婚後の子の養育に関する話し合いにまで至 らない」とし、「離婚後共同親権は子の養育に関する話し合いと協力関係を支える役割を果たす」と期待する。

 その上で、離婚前に父母双方が子の利益を考えるための情報提供をする「親ガイダンス」など、制度が実効性を持つための「具体的な方策が欠けている」とする。「韓国で は家庭裁判所で夫婦がガイダンスを受け、子の養育に関する協議書を作成して初めて協議離婚が可能になる。今回は『協議離婚のハードルが上がる』としてガイダンスなどの義務化を避けたと思われるが、再検討すべきだ」とする。

 さらに▽離婚後の共同親権はDVや虐待の事案には適用されないので、家庭裁判所がDVや虐待の事実を見極める体制を整備すること▽別居中や離婚後の共同親権でも単独で親権を行使できる場合として「急迫の事情」や「日常の教育や監護」の内容を具体的に詰めること▽家庭裁判所の人員配置や予算措置、自治体の取り組みとの連携―などを 挙げて「やらなければいけないことは多い。絵に描いた餅にしてはいけない」という。

 「今回の法案では子どもの『意見表明権』には触れられていない」とも指摘。「まずは前に進むことが重要」として「離婚後の親子の問題を社会全体が支援して、子どもが安心して暮らせるようにしなければいけない」と話す。



5月5日 総務省 子どもの数 43年連続減

 「こどもの日」を前に総務省は4日、外国人を含む15歳未満の子どもの数(4月1日時点)が1401万人で、43年続けて減少したと発表した。前年より33万人少なく、総人口に占める割合はO・2ポイント低下して11・3%。人数、割合ともに比較可能な1950年以降最低を更新した。出生数の落ち込みによる少子化の進行がさらに鮮明になった。

 人口推計を基に算出した。男女別では、男子が718万人、女子が683万人。3歳ごとの年齢層別では年齢が下がるほど減り、12〜14歳が317万人に対し、0〜2歳は235万人だった。、

 4月時点の都道府県別データは算出していないが、昨年10月1日時点の集計でみると、全都道府県で前年より子どもが減少した。100万人を超えたのは東京、神奈川の2都県のみ。大阪は都道府県別の人口推計が始まった70年以降、初めて100万人を下回った。

 子どもの割合が最も高いのは沖縄の16・1%。滋賀13・0%、佐賀12・9%と続いた。最も低いのは秋田の9・1%。次いで青森10・0%、北海道10・1%の順だった。京都は10・8%。

 国連のデータによると、推計時点は異なるものの、人口が4千万人以上の37力国のうち、日本の子どもの割合は韓国(11・2%)に次いで2番目に低かった。

 子どもの数は、1954年の2989万人をピークに減少。第2次ベビーブーム(71〜74年)で増えたが、82年から減り続けている。割合も75年からは、50年続で低下している。


少子化傾向は改善する傾向にはない。街を歩けば「白髪と禿」ばかりというのが率直な感想だろう。様々な生活基盤の確保・維持の困難やいわゆるエッセンシャルワークをになう人の減少も同じ傾向にちがいない。GDPの増大が幸せを招くという市場経済至上主義からの脱却こそが政治の役割だろう。


5月5日 共同通信調査 教員採用試験 6割前倒し

 教員のなり手不足が深刻化する中、都道府県・政令指定都市など68教育委員会のうち約6割に当たる40教委が、2024年度に実施する公立学校の教員採用試験日程を23年度より前倒ししたことが4日、共同通信の調査で分かった。人材確保のため、早期化する民間採用に対抗する動きが広がっている形だ。40教委には京都府、京都市、滋賀県が含まれている。

 教育実習期間と重なるといった、学生ら受験者の負担などに配慮し見送った教委も一定数あり、前倒しには課題もある。教職の魅力を高める施策がより重要だとする声もあった。

 文部科学省によると、従来は大学4年の7〜8月に試験を行い、9〜10月に合格発表するのが一般的だった。一方、民間企業の多くは6月までに内々定を出している。

 公立学校の教員採用試験競争率は22年度に過去最低の3・4倍となるなど低下傾向が続く。文科省は、民間に比べて遅い試験日程が一因とみて、1次試験の標準日を24年度は6月16日に設定。25年度はさらに1ヵ月程度早めて来年5月11日とすることを、各教委に今年4月に要請した。

 調査結果によると、前倒しした40教委のうち、24年度に試験を標準日の6月16日やそれ以前に実施するのは京都府、京都市、滋賀県など33。静岡、茨城など4県市は、―力月以上繰り上げて5月に行う。東北6県と仙台市は7月13日で足並みをそろえた。

 前倒ししない28教委のうち、23年度も6月に実施していた北海道と札幌市、鳥取県は、標準日かそれ以前に実施。残る25教委は6月16月中に行う。

 日程を早めた理由では「民間企業の就職活動時期の早期化が図られる中、受験回数を確保する必要がある」(福岡市)などの声が多かった。

 前倒ししなかった教委からは「早期化の有効性を示すエビデンスが確立されていない」(千葉県)との意見のほか、「試験と教育実習期間が重なる受験生の負担が懸念された」(香川県)などの回答があった。

 調査は4月に実施。人事権がある全68教委(大阪府豊能地区教職員人事協議会を含む)から回答を得た。


八尾九大名誉教授地域一体で取り組みを

 教職の人気低迷は、現場で働く教員への信頼感の低下にもつながる重大な問題で、多様な角度から対策を練る必要がある。その一つである教員採用試験の前倒しは、教職と民間企業の、どちらにするか迷っている学生への大きなアプローチとなり得る。教員が不足する教育委員会は前向きに取り組むべきだ。教育実習の時期との重なるなど課題もある が、地元の大学との連携を密にすれば乗ぴ越えられる。関係機関が普段から問題意識を共有し、地域一体で取り組むことが重要だ。


【表層深層】学生、教育実習重なり負担

 教員採用試験日程に関する共同通信調査では、前倒しを巡り教育委員会こ人材確保策としての期待がかある一方、カリキュラム調整など影響も大きく、学生ら受験者の負担への懸念も根強い。識者は、教員不足解消には抜本的な職場改革が不可欠だと指摘。働きかけを強める文部科学省には早期化の効果検証が求められる。

 「民間企業と同時期に1次試験をすることで、早く就職先を決めたい新卒者に教職も選択肢となる」。最も早い5月11日に試験を行う静岡県教委の担当者は、前倒しの狙いを説明する。昨年2月ごろから地元の大学など関係機関との協議を始め、教育実習時期の変更など協力を依頼。前年度より2ヵ月近く早めることができたという。

 こうした動きは、教員のなり手不足に危機感を抱く文科省の求めに応じたものだ。2024年度の教員試験を、文科省が設定した標準日の6月16日かそれ以前に実施するのは、人事権がある全68教委(大阪府豊能地区教職員人事協議会を含む)のうち36となった。

 一方で、慎重意見は少なくない。東京都や広島県、岡山市など複数の自治体は、前倒しの懸念材料として例年5〜6月に行われる教育実習と時期が重なることを挙げた。文科省は、実習を一度に実施するのではなく通年で決まった曜日に行うなど柔軟な対応を求めるが、ある自治体の担当者は「実習生を受け入れる学校の都合もある。無理なしわ寄せが及ぶことは避けたい」と打ち明ける。

 「早期化で受験者が増えるかはっきりしていない」(横浜市など)との指摘も一定数ある。今年の試験前倒しを受けた受験者の動向はまだ見えない中、文科省は早くも来年の試験をさらに1ヵ月程度早め5月11日とすることを要請。効果検証を求める声は前倒しした教委からも上がり、6月に繰り上げた自治体の担当者は「現場の負担を考えると、これ以上の早期化は不可能」と断言する。

 「働き続けることができる職場環境づくり」(山形県)「魅力ある職となるような施策の推進」(福井県)―。人材確保に向け、各教委からは試験日程以外の対策も重要だとの声が上がる。

 教員確保策を巡っては、中教審特別部会が4月、教員給与に残業代の代わりに上乗せされる月給4%相当の「教職調整額」を10%以上に引き上げる処遇改善案を提示。文科省は残業時間の削減など、働き方改革にも本腰を入れる。だが長時間労働の常態化による「ブラック職場」のイメージ払拭は道半ばだ。

 東京学芸大の岩田康之教授(教育学)は、志願者を増やすには教員か他の進路かで迷う「浮動層」の学生を引きつける必要があると説明。学生は学校現場の状況をよく見ているとして「個々の柔軟な発想を大事にする学校運営への転換や、教員を増やして1人当たりの仕事量を減らすといった施策が求められる」と話した。


この策で、(教職を希望しない学生をふくめて)教員志望者が増えるとは思えない。一方で、教員を志望する学生は任地を選ばなければ府数回の受験が可能になり、教育委員会の提示する労働環境の比較が可能になり「辞退者」もまた増える可能性もあるだろう。教育委員会間の駆け引きも「働き方改革」にはいいのかもしれない。しかし、いずれにしても小手先の改革では問題の解決はおぼつかない。


5月3日 澤地久枝 子や孫のため 守らねば

 ノンフィクション作家の澤地久枝さんは、安全保障を巡る政府の姿勢や、改憲に向けた動きに強い危機感を抱く。自身の経験と、平和憲法への思いをつづった。

 戦争を続けていた日本が無条件降伏した日、私は14歳だった。「大日本帝国八万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」の第1条に始まる帝国憲法は知らなかった。

 1年余りの難民生活の後、当時の満州(中国東北部)から引き揚げてきた日本は、新憲法が発表され、論議が盛んであった。私は日々の暮らしにもまれ、復学し、教師が、 天皇が象徴であることを繰ぴ返して言うのにも、反応できずにいた。

 翌1947年5月3日、日本国憲法は施行される。それから77年となる。

 今、恋をしている人々は、徴兵制によって、満20歳の男性が、徴兵検査の関門を通らなければならなかった時代を知らない。そこには無残という以上の人生の断絶・死があ った。多くの悲劇が男性を、そして残される女たちを襲っている。

 私はずっと心を閉じた歳月を送った。食べて生きてゆくこと、小説を読むことがわが人生であった日々がある。私を変えた出会いは、夜間の学生だった日、映画「日本戦没 学生の手記きけ、わだつみの声」を見たことである。戦争を愧死(死ぬほど恥ずかしく思うこと)する教授も学生も戦場で死に、―冊の本が風にめくられていた。

 これが戦争について考えた最初の経験。泣いて映画館の階段を踏み外しそうだった夜のことを忘れない。そこから私の勉強は始まった。現在に続く一筋の道を思う。

 「憲法は知らない」と人は言うかもしれない。それはわが身の若き日を思えば、無理からぬことかと思う。しかし今、憲法は変えられようとしている。自分のためだけでは なく、わが子わが孫のため、憲法はいかにあるべきか、考えねばならない「危機」にあると思う。無論、若い人も例外ではない。

 先日、深夜のテレビに花のような笑顔の大写しがあり、それが岸田文雄首相であると知り、まじまじと見入った。そんな笑顔は、主権者である日本国民の前では見せたこと がない。訪米中のアメリカ議会での英語の演説だった。

 低支持率が続く首相として、政見には「憲法改正」がある。次期戦闘機の第三国輸出解禁など、内閣の閣議決定が国の前途を決め、憲法は顧みられない。選挙の結果次第では憲法は手を付けず、解釈改憲もあり得る。

 アメリカと「生死」を共にするような運命共同体になることに、反対である。平和憲法下にある日本だが、アメリカは、フィリピン、韓国などと対中国の連携を広げつつあ る。危うい日本国憲法を守らねばならない。


「憲法9条を守れ」のスローガンだけでは戦争を止めることはできない。では、抑止力を強化することか。という不毛な議論しかないことが悲しい。政治への不信が強まるばかりだ。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのパレスチナ攻撃、そして台湾有事戦争(?)など世界的なイシューは後を絶たない。2007年に「希望は、戦争」という言葉が世間を騒がせた。その時の事情と何かが変わったのだろうか。政治への不信が強まるばかりだ。正義がどちらにあるかということではなく、戦争の実態を見ることから「戦わない」ことを決意することを選びたい。


5月2日 ガザ攻撃 反戦デモ 世界に拡散

【エルサレム共同】イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ攻撃に反対する抗議デモが米大学を皮切りとし、フランスやオーストラリアなど世界各地に拡散している。各国政府が戦闘を止められない中、「反ユダヤ主義」とのそしりを恐れず怒りの声を上げる中心は学生。「ガザでの大量虐殺が止まるまで抗議を続ける」と訴えている。

 「正義はどこにもない」。現地からの報道によると、パリ・ソルボンヌ大で4月25日、大勢の学生らが声を上げた。武装した警察官が出動し、パレスチナの旗を掲げて座り込みをする学生らと押し合いになった。

 26日にはフランスの有名高等教育機関、パリ政治学院で学生が建物の一部を占拠した。女子学生は「抗議を諦めない」と語った。

 デモは17日に米ニューヨークのコロンビア大で始まり、逮捕者が続出。「彼らの行動が他の学生の怒りを引き起こした」(シドニー大の学生)

 オーストラリア・メルボルン大の学生は25日、大学敷地にテントを設営。カナダ東部モントリオールのマギル大では「停戦」と書いた横断幕が掲げられ、学生らはイスラエルの学術機関との提携停止を大学側に求めた。

 ローマ・サピエンツア大では学生が抗議のハンガーストライキを実施。チュニジアの学生は、こうした学生運動に連帯を示そうと、手をたたく動画を交流サイト(SNS)に相次ぎ投稿した。


イスラエルのガザ攻撃は「戦争ではなくジェノサイドだ」といわれる。ハマスのイスラエル攻撃が引き金になったとかのごとくの報道が多い。しかし、岡真理さんの言葉を借りれば「パレスチナ人には権利がある。難民が故郷に還る権利」がある。
毎週土曜日3時から京都市役所前で抗議の集会とデモが行われている。


5月2日 政府 脱炭素 エネ計画修正へ

 政府がエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論を5月に始める方向で調整していることが1日、分かった。2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする政府目標に向けて35年度以降の電源構成が焦点となる見通しで、24年度中をめどに改定する。脱炭素化を目指す世界的潮流を巡り、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力のほか、原発の扱いも重要な課題となる。

 先月開催された先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で、35年までにCO2の排出削減対策がなされていない石炭火力を廃止することで合意した。声明では35年以降の稼働を認める余地も残しているが、足元で発電量の約3割を占める石炭火力の割合をどう設定するか注目される。

 エネルギー基本計画は3年ごとに内容を検討し、必要なら改定するよう定めている。政府は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、25年2月までに35年ごろの温室効果ガス排出削減の目標を決める必要があり、並行して基本計画も協議する。

 議論では、脱炭素化につながる再生可能エネルギーや原子力の拡大を目指す構えだ。企業が投資の見通しを立てやすくするため、40年度の目標も検討するほか、人工知能(AI)の普及で増加が見込まれる電力需要への対応も論点となる。

 現行の基本計画は30年度の電源構成の目標を示している。総発電量に占める火力の割合を41%に抑える一方、再エネを36〜38%に拡大。原発は20〜22%、水素・アンモニアを1%としている。脱炭素に貢献する再エネと原発の22年度実績はそれぞれ21・7%、5・5%にとどまる。


【インサイド】現行目標さえ達成困難

 政府が2024年度中をめどに策定する次期エネルギー基本計画では50年の脱炭素社会実現に向け、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない再生可能エネルギーや原子力の拡大が論点となる。現行計画でさえ目標が野心的で達成は難しい状況に陥っており、上積みのハードルは高い。

 21年に策定した現行計画では、再エネや原子力といった「脱炭素電源」を30年度に約6割まで高める目標を打ち出したが、22年度実績は半分以下の約27%と開きが大きい。

 政府は窓ガラスなど多様な場所に設置できる「ペロプスガイド太陽電池」や、風車を海に浮かべる浮体式洋上風力発電を再エネ拡大の切り札に据える。ただペロプスガイドや浮体式は量産技術が確立していない。現行計画の策定に関与した有識者は、次期計画について「非常に難しい方程式を解く作業になるだろう」と見通した。


おおまかにみれば石炭火力の割合を原発に付け替えただけとしか言いようがない。政府の本気度がここでも問われることになる。脱原発をベースにした電源構成が求められるはず。


5月1日 京都市 「市民対話会議」を設置

 市民参加型の行政の在り方を模索する京都市の「『新しい公共』推進プロジェクトチーム」(PT)の初会合が30日、中京区の市消防局庁舎で開かれた。具体的な仕組みを検討するため、市職員12人でつくるワーキンググループ(WG)や市長が市民らと対話する「市民対話会議」を設置することを確認した。

 「新しい公共」は、行政だけでなく市民や企業など多様な主体が社会課題の解決を担うという考え方を指す。2月の市長選で初当選した松井孝治市長が公約に掲げ、4月に新設した企画監ら38人でつくるPTを発足した。

 WGは5月に庁内から若手を中心に公募し、半年間かけて「新しい公共」を促進する仕組みづくりを検討。10月中に検討結果をPTに報告する。「市民対話 会議」は、市が各行政区やテーマごとに地域活動に取り組む個人・団体などを選定し、市長と対話する。月数回程度の開催を計画している。

 松井市長は冒頭のあいさつで「人々が自分たちのまちという当事者意識をどう持ってもらうかが大事。(民間の)知恵や力をいただき、市政を前に進めたい」と話した。


「新しい公共」とい言葉は2010年当時鳩山(民主党)政権下で耳にした。具体的には「新しい公共』宣言」として文章化されている。ここでは民主党政権のエッセンスがあったように思われる。それと同じ言葉を使って新市長は京都市政を運営していこうとしているのかどうか、まだ定かでない。「新しい公共」はある意味諸刃の刃であり使いようによっては市民の善意にただ乗りするという結果になりかねない。家の前を掃除して「世界一美しいまちを目指」すようなキャンペーンに終わることになりはしないかとの危惧を抱いてしまう。