障害のある子どもとない子どもが地域でともに学ぶ「インクルーシプ教育」をどう進めるべきか。滋賀県教育委員会が本腰を入れて探っている。糸賀一雄が障害者福祉の礎を築いた地から全国のモデルをつくりたい。 3月に策定した「滋賀のめざす特別支援教育ビジョン」の柱に据えた。特別支援学校の子どもが地域の学校に、また地域の学校に通う障害児が特別支援学校に、それぞれ副籍を持つ。そんな制度づくりへ長浜市と研究を進めている。 障害のある子どもが地域の学校で学ぶための合理的配慮も突き詰める。重度の子が地域の子と関わって学び育つよう、地域の学校に併設する特別支援学校の分教室増加も目指す。 インクルーシプ教育を求める障害者権利条約が国連で採択されて今年で10年になる。障害の有無で学ぶ場を分ける分離教育を続けてきた日本は転換を迫られた。 文部科学省は2013年、障害児の就学先を決める仕組みを変え、本人や保護者の意向を最大限尊重するようにした。14年には同条約を批准した。 しかし、特別支援学校に適う子どもは全国で急増 している。昨年度の在籍者数は10年前の1・4倍近くに上る。 発達障害のある子どもが対象に加わったほか、障害を早期に発見できるようになったのが一因だ。特別支藤受校での専門的教育に対 する信頼の高まりを反映しているとも取れる。学校が増え通学しやすくなったせいもあろう。 とはいえ、結果として分離教育が進んだことに懸念を抱かざるを得ない。地域の学校から障害児が減り、障害児が地元に人間関係を 築く機会も限られてしまう。 障害児や保護者が地域の学校を自信を持って選べない状況はないか。地域の学校の競争原理が強まり、障害児が居づらくなっていな いか。検証が必要だ。 障害の有無にとどまらず、国籍や文化など社会が多様化する中でそれを正面から受け止められない社会は危うい。だが、異なる人を排除する動きが目立つのが今の日本だ。相模原殺傷事件では優生思想が顔を出し、特定の民族を対象としたへイトスピーチも横行する。 さまざまな人が支え合って社会をつくる。それぞれの人に価値があり喜びがある。交わりを通じてその実感を育む教育は、共生社会 の基礎だ。課題は多いが、真のインクルーシブ教育の実現へ一歩ずつでも改革を進めたい。 ![]() |
中教審の教育課程部会は26日、次期学習指導要領の全体像となる審議まとめ案を大筋で了承した。児童生徒が主体的・能動的に学ぶアクティブ・ラーニングを全教科で導入するのに伴い、指導要領の基本的な考え方を説明する「総則」に、「どのように学ぶか」などの視点を加えて、構成を大幅に変える。 現行の総則は、「思考力を育む」など教育課程の一般方針のほか、年間授業時間の確保要請、指導計画を作る際に「学校の創意工夫を生かす」といった留意事項などを記載し、これまでほとんど構成が変わっていない。 次期指導要領では総則の構成を変え、「どのように学ぶか」という視点でアクティブ・ラーニングの考え方を説明するほか、「何が身に付いたか」(学習評価)や「どのように支援するか」(児童生徒への配慮)などの視点で項目を整理する。文部科学省は「学校に関わる人に分かりやすく、手引書的なものを目指したい」としている。 高校の主要教科は科目を再編。地理歴史の必修科目で、直面する課題に関わる日本と世界の近現代史を考察する「歴史総合」と、地理的な課題を扱う「地理総合」を新設する。発展的な内容を扱う選択科目として「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」も設ける。小学校では「聞く・話す」中心の外国語活動の開始時期を5年生から3年生に前倒しする。5、6年生で英語を教科として、「読む・書く」にも慣れ親しませる。 中教審は2014年11月に諮問を受け、次期指導要領の内容を審議。教育課程部会の下に設けた特別部会が今月2日、まとめ案を示した。 |
文部科学省がまとめた、中期的な学校指導体制構想の全容が25日、判明した。2017年度からの10年間で公立小中学校の教職員定 数を政策的に振り分ける加配分を中心に2万9760人増やし、発達障害やいじめ、貧困など子どもが抱える多様な課題への対応を充実させる。構想1年目の17年度は、3060人の増員を予算の概算要求で求める方針。 「『次世代の学校』指導体制実現構想」との名称で、教職員定数増のほか、授業や部活動など教員が担う役割を明確にして、負担軽減 を目指す。ただ加配分以外の児童生徒数や学級数などで決まる「基礎定数」については少子化により、今後10年間で4万5400人の自然減と なる見通し。構想通りに増員が実現しても、全体の教職員定数は差し引きで約1万5千人の減少で、国や自治体の負担は約1千億円減る。文科省は「国民に追加的な財政負担を求めないよう、最大限努める」とした。 構想によると、2万9760人のうち、障害のある子どもが必要に応じて別室指導を受ける「通級指導」の担当教員に8900人、日本語指導が必要な外国人の子どもの担当教員に1900人を充てる。いじめや不登校への対応強化で1850人、貧困による学力格差解消にも千人を確保。 教員の質向上のため指導教諭200人の配置も盛り込んだ。次期学習指導要領で全面導入予定の「アクティブ・ラーニング」の視点による授業改善に6900人、小学校での外国語や理科、体育などの専門的指導には1260人を充てる。 多様な人材に学校運営に関わつてもらう「チーム学校」体制の整備にも取り組み、その一環として事務職員や養護教諭ら6450人を配置する。 構想の多くは加配定数での枠組みだが、文科省は通級指導や外国人の子どもの担当教員については、安定した配置ができる基礎定数に変えたい考えで、来年の通常国会で関連法の改正を目指す。 ![]() |
京都府、京都市両教育委員会は25日、公立高の2017年度入試の募集定員と日程を発表した。中学校卒業見込み生徒数の減少に伴い丹後地域の府立高を中心に定員を縮小し、全日制の総定員数は前年度比221人(1・6%)減の1万2879人となる。鳥羽(京都市南区)には国際的に活躍できる人材を育てる専門学科「グローバル科」を新設する。 全日制の定員削減のうち6割が丹後地域。峰山(京丹後市)の普通科で40人、網野(同)と加悦谷(与謝野町)の普通科で各30人、宮津(宮津市)普通科で20人をそれぞれ減らす。京都市内は北嵯峨(右京区)と塔南(南区)の普通科で40人縮小する。中丹地域は西舞鶴(舞鶴市)普通科で40人減らす一方、福知山(福知山市)普通科を40人増やす。 峰山の産業工学科デザイン系統(定員10人)は廃止し、機械系統に統合する。 鳥羽グローバル科は定員80人で通学範囲は府内全域。前期選抜で100%募集する。地元企業の海外事業所や海外の大学・高校と連携した研修を行うほか、第2外国語として中国語と韓国語、フランス語の中から一つ選んで学習する。 定時制は710人、通信制は280人でいずれも前年度と同規模を募集する。 また、17年度入試から新たに、成人特別入学者選抜を除く全選抜方式で、合格発表時に合格通知書を交付する。 京都府内の2017年度公立高入試の募集要項は次の通り。 【前期選抜】願書受け付けは各中学での一括受け付けが2月2日、志望先の高校が同月3、6日(音楽科は1月25、26日)。試験は2月16、17日の2日間(音楽科は2月4、5日)。合格発表は22日。 【中期選抜】全日制、定時制とも2月28、3月2日に各中学や第1志望先の高校で願書受け付け。試験は3月7日。合格発表は16日。 【後期選抜】一定の欠員が出た場合に実施を判断する。全日制、定時制とも願書受け付けは志望先の高校のみで3月17、21日。試験は23日。合格発表は27日。 【清明特別入学者選抜】A、B方式を選ぶ。A方式は定員48人。B方式は定員72人。願書受け付けは各中学での一括受付が2月2日、高校が同月3、6日。試験は16、17日。合格発表は22日。 【海外勤務者帰国子女特別入学者選抜】鳥羽普通科(スポーツ総合専攻除く)、西舞鶴普通科、嵯峨野京都こすもす科で各5人以内。願書受け付けは2月3、6日。試験は16日。合格発表は22日。 【中国帰国孤児子女特別入学者選抜】鳥羽普通科(スポーツ総合専攻除く)と同定時制普通科、西舞鶴普通科、東舞鶴浮島分校定時制普通科で各5人以内。願書受け付けは2月3、6日。試験は16日。合格発表は22日。 【成人特別入学者選抜】来年4月1日現在で20歳以上。いずれも定時制普通科で、鳥羽で9人以内、朱雀で9人以内、桃山で6人以内。桃山商業科で3人以内。願書受け付けは2月3、6日。面接、作文は16日。合格発表は22日。 【長期欠席者特別入学者選抜】中学在学時、年間30日以上の欠席者が対象。いずれも普通科で、朱雀と城陽、西京定時制が各10人程度、乙訓、西舞鶴が各5人程度。願書受け付けは2月3、6日。試験は16日。合格発表は22日。 【通信制】願書受け付けは3月24、27、28日。試験はせず、必要に応じて面接を実施し、報告書などで選抜する。合格は本人に通知。 |
公立学校の校区を越えて進学先を選べる学校選択制に関連し、制度を導入している大阪市の23区が、各区内の市立中学校の進学実績を公表することが24日、各区への取材で分かった。公表には中学校の序列化を助長するとの懸念も根強いが、児童や保護者が中学を選ぶ際の判断材料にしてもらおうとの狙い。 元中教審副会長の梶田叡一奈良学園大学長によると、公立中の進学実績公表は全国的に珍しいという。 進学実績は、毎年8〜9月に翌年度に中学に入学する児童の家庭に配布する各区単位の「学校案内」に掲載。今回、市内の全24区のうち、統廃合を優先させるため学校選択制を採用していない浪速区を除く23区が進学先の学校名の公表を決めた。今春だけでなく過去の実績や、進学先の人数を掲載する区もある。 市教委はこれまで個人情報保護を理由に実績公表に慎重だったが、学習塾が独自集計しており、各家庭への公平な情報提供の観点などから、公開に向けた議論が進められていた。 ![]() |
7月上旬に洛水高(京都市伏見区)であった体育の授業。1年生の男子生徒が剣道に取り組む体育館の一角で、小林飛翔さん(15)は床に並んだコーンの間を電動車いすで走り抜ける練習に励んでいた。見守る中村徹講師が「手前で速度を出した方がいい」と助言した。 小林さんは筋ジストロフィー患者で重い身体障害がある。同高は入学が決まった直後から保護者や通学していた中学校と話し合い、対応策を検討した。 体育は他の生徒と同じ内容はできず、車いすを操作する特別メニューで評価する。小林さんを介助する講師2人を配置。階段の上り下りのため昇降機を導入し、トイレも車いす仕様に改修した。小林さんは「先生たちのおかげで高校生活を楽しめている」と笑顔を見せる。 同高が小林さんのために整えた環境は障害者差別解消法が規定する「合理的な配慮」に当たる。障害のある子どもも平等に教育を受けられるようにするため、学校が過度の負担にならない範囲で必要な変更や調整を行うことを指す。ただ、障害の特性や程度はそれぞれ異なることから各校は対応を模索している。 醍醐西小(伏見区)では発達障害の可能性がある児童のために教材や教え方に工夫を加えた。文字の読み書きが苦手な場合は教科書の文章にルビを振ったテキストを用意したり、教科書を音読するソフトを保護者に紹介している。筆算の手順を分かりやすく示す計算用紙も作った。授業についていけない児童には予習を実施し、理解度を高めている。通級指導担当の畑中崇伸教諭は「一人一人の児童に合った支援をすることで学習意欲を引き出せる」と取り組みの意義を語る。 発達障害への対応は市全体でも進む。市教育委員会は今年4月.小学校教員に対し、すべての児童にとって分かりやすい授業をするための点検表を配布した。中学、高校にも学習障害のある生徒を支援するためのガイドを提供した。 障害のある児童・生徒に対する支援への意識が高まる一方、学校現場は保護者らの要望にどこまで応えるべきかという悩みも抱える。府南部の小学校に勤務する女性教諭は「法律ができて何でもしてもらえると考える保護者もいる。学校によって予算や人員の規模は異なり、対応には限度がある」と打ち明ける。 特別支援教育になじみが薄かった高校は小中学校以上に不安材料を抱える。京都市教委総合育成支援課は「高校は障害者支援のノウハウが少なく、対応にはまだ課題が多い」と話す。府北部の府立高の男性教諭は「発達障害は成績評価が難しい。生徒の頑張りを反映してあげたいのだが」と苦慮する。 特別支援教育に詳しい大谷大の安田誠人教授は「保護者の要望を門前払いすると信頼関係を損なう。一方で安請け合いもいけない。まずは受け止める姿勢が大事だ。互いにアイデアを出し合いながら支援体制を作り上げれば理解を得やすい」と説く。高校に対しても「要望が持ち込まれる前に池府県の事例を調べてニーズを先読みすることが必要。中学校との連携も密にすべきだ」と助言する。 ![]() |
教員の多忙化の原因の一つである小中学校の運動部活動について、京都府内で定期的に休養日を設けているのは、24市町・広域連合教育委員会のうち4教委にとどまることが、文部科学省の調査で、このほど分かった。府教委は「休養日の重要性を浸透させる」としている。 休養日は京都、向日、綾部の3市教委と与謝野町教委が設定する。京都市教委は3月末に中学校の部活で週1回の「ノー部活デー」 を設けるよう、名学校に通達、小学校は実施を週3回までと決めた。体育健康教育室は「教員の負担軽減に加え、子どもの体に支障が出るのを防ぐため」と説明する。 向日市教委も2013年度から週1回、部活を行わない日を設けている。教員からは「職員会議や授業準備ができる」と好評という。綾部市教委は、生徒会や委員会活動の時間を確保するため、約15年前から週のうち平日に1日休んでいる。与謝野町教委は00年ごろに導入した。 一方、20教委は休養日を設けていない。宇治市教委は「生徒や保護者の意欲や期待があり、一律にやめるまでに至っていないが、現状がいいとは思っていない」、宮津市教委も「総合的に考えて制度化していないが、教員の疲労感は把握しており、非常に悩ましい」としている。 教員の負担軽減策の一環として全国で導入が進む部活の外部指導者への委託は、八幡市や京丹後市など10教委が進める。城陽市など4教委は合わせて顧問の複数配置を行う。 府教委は、13年に部活動の指導法に関する指針を出し、休養日の設定や外部指導者との連携の重要性をうたっている。保健体育課は「より理解が進むよう指針の改定を検討したい」としている。 調査は文科省が全国の市区町村教委を対象に、教員の多忙化解消に向けた業務改善の取り組み状況を把握するため今年5月に行った。全国で休養日の基準を設定している政令市は55%、市区町村は28・7%だった。 |
人事院は8日、国家公務員の扶養手当を見直し、月額1万3千円の配偶者手当を2018年度に半減するよう国会と内閣に勧告した。本省課長級は20年度に廃止する。子どもに対する手当を増額し、扶養手当の総額は維持する。16年度に一般職の月給、ボーナスを引き上げ、いずれも3年連続のプラスとすることも盛り込んだ。扶養手当の見直しは、女性の就労を後押ししつつ、子育て支援を充実させる狙い。地方公務員の給与制度に波及する可能性もある。 16年度は一般職の月給を平均708円(0・17%)引き上げ、ボーナス(期末、勤勉手当)は0・1カ月分増やす。 1. 人事院は、8月8日、政府と国会に対して、2016年度の国家公務員の月例給を708円(0.17%)引き上げ、一時金の支給月数を0.10ヶ月増とする勧告を行った。この勧告は、2016春季生活闘争における民間企業などの賃上げ・一時金の回答状況を踏まえたものであり、月例給および一時金のいずれも3 年連続の改善となったことは評価できる。 2. 今後、地方公務員の給与にかかる人事委員会勧告が予定される。人事院勧告によって、月例給、一時金ともに3年連続の引き上げとなったことを踏まえ、各人事委員会においては、少なくとも同様の引き上げ勧告が行われるとともに、地方自治体に対しては、質の高い公共サービスの実現と地方自治の原則の観点から、労使交渉が尊重されることを期待する。 3. 今秋の臨時国会では、多数の重要法案の審議が見込まれているが、公務員賃金が中小企業・地場産業に与える影響は大きく、「格差是正」や「経済の好循環実現」のためにも、政府・国会に対し、勧告どおりの実施を強く求める。連合は、民主的な公務員制度の確立に向け、引き続き、関係する組織と連携しながら取り組みを進め、労働基本権の回復と自律的労使関係制度の確立をはじめとする公務員制度改革の実現をめざしていく。 ![]() |
今春卒業した京都府の高校生の大学進学率(現役)が、4年ぶりに全国1位に返り咲いたことが、文部科学省が4日に発表した学校基本調査(速報値)で分かった。前年度より0・1ポイント上昇して66・5%となり、東京都と同率で並んだ。 進学率は2013年に64・8%に下がり、それまで13年連続1位だったが東京都に抜かれていた。 全国的にも大学進学率は13年以降増加傾向にある。府教育委員会高校教育課は「少予化にもかかわらず、大学が定員を減らしてい ないためではないか。府内では高大連携に力を入れており、生徒が主体的に進路選択した結果」と分析した。 府内の小学校の在籍数は13万42人、中学校は6万9417人でともに過去最少だった。 |
今春の大学(学部)卒業生55万9673人のうち、非正規を含めて就職したのは5月1日時点で41万8166人だったことが4日、文部科学省の学校基本調査(速報値)で分かった。卒業生に占める割合は前年度より2・1ポイント増の74・7%で、6年連続上昇した。 文科省の担当者は「企業の積極的な採用などが要因とみられる」と話している。文科省と厚生労働省が5月に公表した就職率は就職希 望者に占める割合で、97・3%と統計開始以来最高だった。 |
四年制私立大のうち今春定員割れしたのは44・5%で、前年度より1・3ポイント増えたことが4日、日本私立学校振興・共済事業団の調 査で分かった。事業団は「ここ10年ほどは18歳人ロが増減を繰り返しているが、今年は減少傾向にあり、それが影響した」としている。 全国586校中577校が回答。定員割れは7校増の257校で、定員以上の入学者がいたのは9校減の320校だった。定員全体に占める入学者の割合を示す入学定員充足率は104・4%で0・6ポイント減少した。 充足率を入学定員規模別でみると、800人未満の大学で100%を切った一方、800人以上では100%を超え、中でも「1500人以上3千人未満」は110・9%、「3千人以上」は109・2%だった。 地域別では、東京の109・0%が最高。大阪106・5%、京都105・4%、愛知104・9%と続いた。低かったのは四国88・5%、東北(宮城県を除 く)88・6%など。 |
3日発足の第3次安倍再改造丙閣では、閣僚19人のうち、安倍晋三首相が会長を務める保守系の超党派議員連盟「創生日本」メンバーが13人を占め、2012年の第2次安倍内閣発足以降、最多となった。人気の高い若手や女性を多く登用したり、予想外の人物を起用したりして国民の目を引こうとする姿勢は影を潜め、思想、信条が近い同志の結集を最優先にする意図が色濃くにじむ。 創生日本は、自民党の故・中川昭一元財務相が07年につくった「真・保守政策研究会」 が前身。日本の歴史や伝統、公の秩序を重視することを活動目的としている。創生日本のホームページなどによると、8人の初入閣組のうち4人が創生日本に所属。世耕弘成経済産業相が副会長を務め、松野博一文部科学相、今村雅弘復興相、松本純国家公安委員長が名を連ねる。 会長代理は06年以来の入閣となった山本有二農相が担い、3人の女性閣僚も要職を務める。留任組の菅義偉官房長官や塩崎恭久厚生労働相、前内閣から引き続き首相を支える萩生田光一官房副長官、衛藤晟一、河井克行、柴山昌彦の3首相補佐官もメンバーだ。 これまでも安倍首相が率いた内閣には創生日本所属の閣僚が約10人いたが、その傾向がさらに強まったといえる。 メーカーで広告制作に携わっていたが、政治を志して松下政経塾へ。自民党千葉県連の公募で合格し、2000年に2回目の挑戦で衆院議員に初当選した。安倍晋三首相と定期的に会食する。 教育問題がライフワークで、文部科学副大臣時代はスポーツ担当。女性の社会参加促進や、世界トップレベルの教育立国実現に尽力してきた温厚で敵をつくらない性格だけに「押しが弱い」との評もある。53歳。千葉県出身。(細田派) ![]() |
自民党がホームページ(HP)で実施した「学校教育における政治的中立性についての実態調査」について、木原稔・党文部科学部会長は1日、投稿された情報のうち明らかに法令違反と思われるものなど一部を警察当局に提供する考えを示した。いじめや体罰など政治的中立と関係のない通報があったといい、こうした情報も対象という。 部会後、報道陣の取材に答えた。木原氏によると調査実施後、部会内のプロジェクトチーム(PT)で非公開で議論。投稿の内容は公表せず、今後の議論に向けた参考とする方針を確認した。木原氏は「SOSを発していたり、明らかな法令違反だったりして、無視できないものがある。例えばいじめや体罰で、しかるべきところに報告する」と話した。 これまで公職選挙法違反と判断されるものは文部科学省に情報提供するとしていたが、「公選法違反は警察が扱う問題」と、捜査当 局への提供を示唆した。 PTは学校での政治的中立性を確保するための最終提言を出す予定。木原氏は「(調査結果の)中身はボリュームがあり、全部処理 し切れていない」とし、時期は明言しなかった。 (朝日新聞) ![]() |
中教審の特別部会は1日、次期学習指導要領の全体像となる審議まとめ案を示した。小学5年から英語を教科化し、「聞く・話す」中心の外国語活動の開始を3年に前倒しする。前回は小幅改定だった高校は、主要教科の科目を大幅に再編。地理歴史に、日本と世界の近現代史を中心に学ぶ「歴史総合」と、世界の文化や防災対策など扱う「地理総合」を新設、必修とする。 「何を学ぶか」が中心だった指導要領の性格を大きく変え、「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」の視点を追加し「学びの地図」を目指すとした。 次期学習指導要領の目玉の一つが英語だ。審議まとめ案では、他教科にはない小学校の年間指導計画イメージや、学校段階ごとに身に付けるべき「読む・聞く・書く・話す」力の指標イメージを示すなど、英語力育成に本腰を据える。小学校で純増する授業時間数の確保や教員研修など、山積する課題を解決できるかが成否を分けそうだ。 小学校での英語教育導入には賛否があったが、現行指導要領で「聞く・話す」中心の外国語活動が始まった。中学校の教員には「意 欲の高い生徒が増えた」など好意的な受け止めが多く、文部科学省も「一定の成果があった」と評価する。 次期指導要領では、小学校の高学年で教科化に踏み切り、外国語活動は高学年から中学年に前倒しする。中学校の授業は原則英語で行う。 「読む・聞く・書く・話す」の4技能のうち、「話す」を「やりとり」と「発表」に分けた5領域で、国は指標を掲げ、それに基づいて各学校は「〜することができる」という形の「CAN―DOリスト」を作成する。 ある教育委員会の担当者は「英語力は間違いなく上がる」と期待するが、英語指導に不安を持つ小学校の教員は多く、英検準1級以 上相当の資格を持つ中学校の教員も3割にとどまる。授業時間数の確保も「他教科の授業や活動もあり、余裕がない」との声が漏れる。 文科省は研修の実施や教材の整備を進めており、同省幹部は「こうした施策が全ての教員に行き届くかが鍵だ」と話す。 IT分野で活躍する人材の育成が求められる中、次期学習指導要領では、小中高校にプログラミング教育を導入する。ただ、技術的な内容は中学校から。小学校では一部にとどめ、自分の意図を実現させるための筋道を論理的に考える思考力を主に学ぶ。 プログラミングに関する子どもや教員向けの体験イベントや講座は各地で盛況だ。会場では講師にやり方を相談するだけでなく、子ども同士で教え合う姿も見られ、参加した男性教員は「課題解決力の育成につながるのでは」と教育効果を期待していた。 小学校でプログラミングを専門に扱う教科は新設しない。理科の授業で、電化製品にプログラミングが活用されていることに触れる など、各教科の内容に関連付けていく。 プログラミングを積極的に取り入れている東京都小金井市立前原小の松田孝校長は「授業時間数に余裕がないことを踏まえれば、教 科を新設せず、思考を育てるというのは落としどころだ。ただ、環境整備も必要になる」と指摘する。 中学校は、技術・家庭の技術分野でプログラミングに関する内容登倍増。高校は新たに「情報1」を必修にし、全ての生徒がプログ ラミングを学んで、コンピューターを活用する力を身に付けられるようにする。 「何を学ぶか」から「どのように学ぶか」へ。次期学習指導要領では全教科でアクティブ・ラーニングが取り入れられる。学習内容を定める指導要領が授業方法に言及するのは異例だが、文部科学省は「教え方を指導要領で具体的に規定することはない」と明言する。教室の風景が変わる可能性も秘めるが、授業のイメージすら描けす、戸惑う教員も少なくない。 6月、全教科でアクティブ・ラーニングに取り組む千葉大付属小の公開授業には、県外からも多くの教員が集まった。 「牛肉は国産が40%だが、えさも国産を使っている牛肉は11%」「自給率95%の卵も、えさまで含めると13%」。5年生の社会科で、食料生産について学ぶ授業。教員は、国産の概念を揺るがすデータを示した。 自給率が低下している原因や食の安全性などを事前に学んでおり、児童は「国産推進」と「外国産の輸入を増やす」の二つの立場を明確にしている。机の配置は国産派と外国陸派に二分されているが、児童一人一人が安定的な食料生産の在り方を考え発言する。 指導要領ではこの単元に「さまざまな食料生産が国民の食生活を支えていること、食料の中には外国から輸入しているものがあること」とだけ言及しているが、授業はそこにとどまらない。 最後に教諭は、児童が大人になる10年後の姿を考えさせることで「自分事」として捉えるように仕掛けた。「自給率を上げて、外国とも協力する」など、授業の狙いである国産と外国産の二項対立を超えた意見も出た。 教員が子どもの意見を引き出しながら進む授業は小学校ではよくあるが、主に大学受験を意識した授業に力点を置いてきた高校の教員は「何をすればいいか分からない」との不安が大きい。学校現場では「話し合いやグループワークをすればいい」という安直な声もささやかれる。 だが、話し合いそのものが目的ではなく、自分の考えや思考のプロセスを他者に説明することで、知識を深く定着させるのが狙いの一つだ。 大木圭副校長は「アクティブ・ラーニングは子どもに学ぶ必然性や必要性を持たせる手だて。育みたい力をあいまいにしたまま取り入れると、表面的な活動に終わってしまう」と指摘。教材選びなど、事前準備の必要性を強調している。 中教審の特別部会が1日提示した次期学習指導要領の審議まとめ案では、小学5年以上の英語の教科化や中学校でのオール英語による授業の導入が打ち出された。京都府、京都市両教育委員会は現場の指導力を引き上げようと対策に躍起だが、授業時間の確保など課題が山積している。 小学校の英語教育はこれまで「外国語活動で成績評価の対象外だったが、教科化でより専門的な指導が求められる。このため府教委は2015年度、市教委は14年度にそれぞれ、小学校教員の採用試験に英語枠を新設。指導力に秀でた人材の確保を始めた。 中学校では英語授業の指導をすべて英語で行うことが原則となるため、教員の英会話能力の向上が必須だ。府教委は本年度から、京都市を除く府内の公立中の英語教員に英語能力試験TOEICで英検準1級に相当する730点以上の得点目標を課した。市教委も15年度、中高で英語を母語とする外国出身教員を採用し始めた。 さらに両教委は研修内容の充実などで指導力底上げを図る構え。府教委学校教育課は「教師の技量によって学力格差が生まれないようにする」と強調する。 だが、実際に指導を担う教員の間には不安の声が尽きない。1日、府内の公立小教員を対象に南丹市で開かれた研修会。参加者からは「英語に自信がなくALT(外国語指導助手)に頼ってしまう」「校内でも意識に温度差がある」といった本音が聞かれた。 小学校では英語を教える時間が倍増するため、現状ですら過密な時間割をどうやりくりするかが悩みの種だ。英語教科化のモデル校として次期指導要領の内容を試験的に導入した南丹市の小学校では、特例として総合的な学習の時間を減らした分を英語の授業に充てたが、実際の導入時には他教科の時間数を減らすことは許されない。 市教委は18年度に全小学校で次期指導要領の先行実施を目指すが「今でも時間割がきついのに大変という声は強い。どう組み入れるか検討中だ」(学校指導課)という。場合によっては各校が基礎学力定着で力を入れている朝の読書活動や計算の時間を削ったり、土曜や夏休みの一部を充てたりする可能性もある。 学習内容が高度化する一方で、授業についていけない児童や生徒を大量に生み出すとの懸念もある。京都教職員組合は「英語教育の強化は落ちこぼれを作りかねず、学力差がさらに開くおそれがある」と指摘する。 ![]() |