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  • 私立大授業料87万7千円.27
  • 企業の年休取得率49.4%.28
  • わいせつ教員処分最多.28
  • 大阪の朝鮮学校「廃校」へ.29
  • 公務員定年65歳に.30
  • 連載 脱子どもの貧困
  • 12月30日 政府 公務員定年65歳に

     政府は、原則60歳と定める国家、地方公務員の定年を3年ごとに1歳ずつ延長し、2033年度に65歳とする方向で検討に入った。人件費の膨張を抑制するため、60歳以上の職員の給与を減額するほか、中高年層を中心に60歳までの給与の上昇カーブを抑える考えだ。19年の通常国会に国家公務員法改正案など関連法案を提出し、21年度からの着手を目指す。複数の政府関係者が29日、明らかにした。

     外郭団体を含め、数百万人の公務員の給与体系や年齢構成などに影響が及ぶ大改革となる。少子高齢化が加速する中、高齢者の就業を促進し、労働力を確保するのが狙いだ。公務員の年金受給年齢の引き上げと定年を合わせ、公務員が退職後「無収入期間」が生じるのを避ける。60歳定年が多い民間企業に見直しを迫る意味合いもある。

     内閣官房や総務省などの担当者による検討会が来年早期に原案を策定し、人事院に給与体系や勤務条件の詳細な制度設計を要請。それを基に政府内で最終調整し、関連法案を作成する運びだ。

     公務員の総定員が定められている中、65歳までの延長を短期間で行うと、新規採用数を極端に絞らざるを得ない年度が出る。組織の 年齢構成が大きくゆがむ恐れがあり、3年に1歳ずつ延ばすのが現実的と判断した。

     一方、政府内には改革に伴って事務次官(定年62歳)ら管理職の年齢が上がれは、人事の滞留を招き、組織の活力を低下させるとの 懸念が根強い。

     それを防ぐため、60歳以上の一定の年齢に達すれば、役職から外す「役職定年制」を導入。ポストから外れても定年まで官庁に残り、政策立案などに従事できるようにする。同制度を巡り@どの役職を対象とするかAその役職から外れるのは同歳にするか―など詰めの検討を進める。

     定年退職者向けの現在の再任用制度は、定年延長に合わせて段階的に廃止する。


    年金支給開始の引き上げに伴ってすでに議論になっていたことが実施される見通しになった。賛否両論がある。60歳を過ぎてもまだまだ働けるし意欲もある。年金制度の破綻を働く者に押しつけるものだ。などの意見がある。今後詳細を詰めなければならないのだろうが、定年延長によって必ず「無収入期間」がなくなるとは楽観できない。たとえば、小学校教員では「60歳過ぎて水着を着てプール指導などできない」と言う人は少なくない。それが改善されなければ結果的に「早期退職」を選ばざるを得ず「無収入」を強いられる。同じように現業職も体への負担が大きいと感じる人も出てくる。現行の「職」の在りかたを前提にしていたのでは事務職との間での働き方の不均衡が生まれる。ある小学校教員は「再任用で学級担任をし以前と同じような職務をしたが、初めての給与明細を見て愕然とした」という。やりがい搾取の上、低賃金処遇では就労意欲もなくなる。


    12月29日 大阪の朝鮮学校「廃校」へ

     在日コリアンの多い大阪府の朝鮮学校で生徒数最多の東大阪朝鮮中級学校(大阪市生野区)が来年3月末で移転し、土地と建物が売却されて事実上廃校になる見通しとなったことが28日、学校への取材で分かった。高校無償化制度の対象外となった影響や府の補助金不支給による財政難が要因。日朝間の緊張に伴う政治情勢がコリアタウンに長年根付く民族教育にまで影を落としている。

     朝鮮学校は近年、生徒の減少や統廃合が全国的に進む。文部科学省によると、2008年以降の10年で学校数は内校から66校となり、生徒数は約8800人から約3千人減の約5800人に。全国の朝鮮学校で有数の規模を持ち、「中学校」として単独の運営を唯一維持していた中級学校の廃校はこうした動きを象徴する意味を持ちそうだ。

     日本の義務教育課程に当たる初、中級学校は政治思想より母国語やアイデンティティーの養成を目的に通わせる保護者が多く、識者は高校無償化制度の除外や補助金の不支給を「差別的扱いだ」と批判する。

     運営法人の大阪朝鮮学園によると、来春以降は学校の名称を残して大阪朝鮮高級学校(同府東大阪市)の空き教室に仮移転する。関係者は将来的な統合が有力との見方を示す。

     東大阪中級学校は全国最大規模の在日コリアンが集まる地域に立地し、支えてきた地元の失望も大きい。中1の息子が通う父親(50)は「通学距離が移転先まで延びるとへイトスピーチなどの危険に遭いやすい」と話す。既に公立校へ移った生徒もいる。

     関係者は「学校の売却代金を負債の返済に充てても学園の運営は厳しく、存続の危機だ」と嘆く。創立56年の伝統校で、以前は「マンモス校」と呼ばれたが、現在の生徒数は約270人。奈良環や兵庫県からも生徒が通う。


    田中宏一橋大名誉教授(日本アジア関係史)の話 政治の影響深刻

     朝鮮学校の高校無償化除外も自治体の補助金カットも教育への「政治介入」で、その影響で在日コリアンが最も多い大阪で中核的な朝鮮学校が維持できなくなることはより深刻だ。子どもが外国人学校に就学すれば、その生徒数に見合う分だけ公費負担が軽減される。そこに私学助成の根拠があり、中華学校などの各外国人学校も対象になっている。この観点を無視して、「国民感憎が許さない」として拉致問題などを口実に朝鮮学校を差別することは絶対に許されない。


    北朝鮮の核・ミサイル開発は間違いなく北東アジアの安全保障にたいする懸念ではある。しかし、「抑止力」という力での制圧のみを手段とするトランプ政権、それに追従する安倍政権の怖さは安全保障に対する脅威である。また、民族的なアイデンティティの保障は市民の権利であることは、前文科省前川喜平氏も近著で無償化除外の不当性とともに訴えている。


    12月28日 文科省調査 わいせつ教員処分最多

     2016年度にわいせつ行為やセクハラが原因で処分された公立小中学校、高校などの教員は前年度より2人増の226人(京都8人、滋賀1人)で、過去最多を更新したことが27日文部科学省の調査で分かった。このうち懲戒免職は11人増の129人となった。体罰による処分者は減少傾向が続いた。

     文科省は「会員制交流サイト(SNS)をきっかけに教員が生徒と不適切な関係になるケースも増えている」と語ったが、増加要因は正確に分析できていないとした。

     わいせつ問題を起こした教員を巡っては、懲戒免職などの処分歴を伏せて別の場所で再雇用される事例があることが問題視されている。文科省は、こうした問題を抱える教員が、それを隠して指導を行うことがないよう、免職事例などに関する情報を教育委員会間で共有できるシステムの改修を進める方針だ。

     調査によると、児童生徒へのわいせつ行為や他の教職員へのセクハラで懲戒処分となったのは免職の129人、停職50人、減給15人、戒告3人。懲戒ではない訓告も29人いた。

     学校種別では中学校が79人で最も多く、小学校68人、高校67人、特別支援学校12人と続いた。わいせつ行為などの相手は自校の児童生徒が109人、自校の教職員が38人など。文科省は児童生徒へのわいせつ行為があった場合、懲戒免職などの対応を取るよう求めている。兵庫、高知、沖縄の3県とさいたま、静岡、岡山の3政令指定都市を除く教委は、免職などの厳しい処分にするとの処分基準を設け公表している。


    京滋でも相次ぐ

     京都府教育委員会でも公立学校の教員によるわいせつ事案での懲戒処分が相次いでいる。昨年度は教え子の女子生徒へのわいせつ行為や裸の画像を送らせるといった事案があった。本年度も教え子の女児にわいせつ行為をしたとして、府南部の公立小学校の男性講師が京都府警に強制わいせつの疑いで逮捕された。

     滋賀県では本年度、わいせつ行為で3人の教員が懲戒免職処分になった。0〜2件で推移した過去4年より増えていることから、県教育委員会は21日、県立学校や市町教委にわいせつ・セクハラ行為根絶のための職場研修を実施するよう通知を出した。

     また、児童や生徒との関係を問うチェックシートを教職員に配った。無記名方式だが、県教委の担当者は「不適切な行為について認識してもらい、自覚を促すのが狙い」とする。


    ICS21では個々の事件については原則取り上げない方針でHPを作成している。しかし、わいせつ事案はかなり目に付くのは事実。原因を特定するのは困難だろうが、職場の労働環境が劣悪化していることとの相関関係はないのだろうか。被処分者が200人を超えた2013年以降増加傾向にあることはやはり注目する必要があるだろう。学校の管理(マネージメントの方向)がサービスの多寡にのみ向かっているということはないのだろうか。教職員の個々の働き方や生活の質(QOL)への関心が薄いことも反省材料とすべきなのではと思う。


    12月28日 厚労省 企業の年休取得率49.4%

     厚生労働省が27日に発表した就労条件総合調査によると、2016年の1年間の年次有給休暇取得率は49・4%で、前年より0・7ポイント増加した。終業から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の導入は1・4%にとどまり、普及が進んでいなかった。

     年休取得率は企業規模が大きいほど高く、従業員千人以上の大企業では55・3%と与えられた日数の半分以上を取得していたが、30〜99人の中小企業は43・8%だった。政府は年休取得率の目標を「20年までに70%」としているが、達成は困難な状況だ。


    一般的に年休の消化率は低いのだがに、中小企業では更に低いという事実に改めて注目する必要があるだろう。政府の「働き方改革」がイメージ戦略でしかないことの現われか?また、非正規労働者の取得率は更に低いのだろう。少なくとも公務員については、雇用期間によって付与される年休がある事ことを周知させることも、契約時には確認する労働慣行が作られなければならない。「勤務間インターバル制度」の導入がすすまないことも注目しておく必要がある。


    12月27日 文科省調査 私立大授業料87万7千円

     2016年度に入学した私立大学生が支払った授業料の平均額は87万7735円で、前年度から1・1%増えたことが26日、文部科学省の調査で分かった。5年連続の増加。

     全国の576校を対象に調査を実施。入学金は1・0%減の25万3461円、施設整備費は0・6%増の18万5620円で、実験実習料なども含めて入学初年度に支払う合計額は144万3967円となり、前年度より0・4%増えた。

     学部別で、授業料が最も高かったのは歯学部で316万7038円。次いで医学部が273万6813円、薬学部が143万7492円だった。最も安かったのは、神・仏教学部の71万6067円。



    12月26日 中教審 勤務時間上限も提示

     長時間労働が深刻な教員の働き方改革に向け、文部科学省が今後取り組む「緊急対策」の全容が25日、判明した。教員が担う多岐にわたる業務の適正化を進めるため、省内に教職員の業務量を一元管理する組織を新設するほか、勤務時間の上限を数値で定めたガイドラインを国として検討し、提示すると明記。学校現場にめりはりの付いた働き方を浸透させるため啓発にも積極的に取り組むとした。

     教員の働き方改革を巡っては中教審が「中間まとめ」として放課後の見回りなどの一部業務を学校以外に担わせるべきだとする提言を 今月、示しており、緊急対策はこれを踏まえた。林芳正文科相が26日に公表する。

     緊急対策によると、新組織は、学校の業務が無制限に増えないようチェックし、新たな業務が生じるような制度改正の際には、当該部署と現場の間での調整機能を持たせることなどを想定した。

     勤務時間の上限を示したガイドラインは今後、文科省が検討を進めるが、政府の働き方改革実行計画が残業の目安として「月45時間、年360時間を限度」と定めており、これを踏襲した内容になるとみられる。

     緊急対策は、改革の実現には校長ら管理職のマネジメント能力が不可欠として研修の実施を要請。教員一人一人の業務改善に向けた取り組みが人事評価にも反映されるような仕組みも提案し、学校現場の意識改革を促した。一方で、保護者や地域社会からの理解も得 られるよう、教員の働き方改革の趣旨を平易にまとめた資料を学校に配るなど、普及活動にも力を入れるとした。

     各学校での勤務時間管理徹底を目指してタイムカードなどを使った集計システムの導入を強く打ち出した。緊急時の連絡方法を確保した上で、勤務時間外の問い合わせには留守番電話やメールで対応できるようにし、夏休みなど長期休業期間には一定の学校閉庁日を設けることも求めた。


    現場の意識改革必要

     教員の働き方改革に向け文部科学省がまとめた緊急対策には、タイムカードによる労働時間管理の徹底や、教員の業務の適正化が 盛り込まれた。教育委員会や学校現場からは対策の重要性を指摘する声がある一方で、長時間勤務をいとわない学校現場の意識改革や、教員の人員増を求める意見が上がる。

     「負担の軽減はかなり進んだ」。10年前から区内の公立学校でタイムカードによる教員の勤務管理を導入している東京都品川区教委 の担当者は語る。10月には学校に定時退庁日も導入し、保護者に理解を求める通知も出した。

     区教委の担当者は「制度の整備は他の自治体に比べても進んできたが、教員が『もつと仕事をしたい』と思うこともある。退庁日などの実施で教員の意識を変える必要がある」と話した。

     京都府教委も11月から府立学校でタイムカードを導入した。府教委の幹部は「いじめや貧困の問題、学力など教育課題が注目されるたびに業務が増え続けている。労働時間を把握し、勤務環境改善につなげたい」と話す。

     教員の業務適正化については、中教審が今月、登下校の見守りなどの業務を保護者や地域に担わせるべきだとする中間まとめを出し た。この幹部は「地域の理解が得られるかどうかが問題だ。教員が業務を担うことで信頼を得てきた経緯もあり、一挙に導入するのは難しい」と明かす。


    教員の「業務改善に向けた取り組みが人事評価にも反映」とされているが、効率よく働くことを奨励するということか。だが、非効率な働き方しかできない教員はマイナス評価となるのだろうか。確かに、業務を効率よくこなしていく事は自らの労働管理としても必要なことだろうが、教育を「効率」の面だけから見ることは危険でもある。加えて「やりがいの搾取」と呼ばれる働き方をいまだに奨励する職場も多数あり、管理職のマネージメントの能力を高める必要がある。そのもっとも手短な方法は、教員組合の組織率を高める事にあるという逆説は傾聴に値する。


    12月25日 日本財団 貧富で学力差

     経済的に苦しく、生活保護などを受ける世帯の子どもは、そうでない世帯の子と比べて国語や算数の学力の平均偏差値が低くなる傾向があり、特に小学4年生頃から学力の格差が広がることが24日までに、大阪府箕面市の調査を基にした日本財団の分析で分かった。

     日本財団は箕面市の協力を得て、同市が2014年度から3年間、市内の小中学生を対象に実施した学力や生活状況の調査データを分析。国語でみると、生活保護世帯の小学2年生の平均偏差値は49・6で、保護を受けない世帯の子(50・1)との差は0・5ポイントだった。

     だがその差は小学3年生では1・9ポイントになり、4年生では5・5ポイントに拡大。5年生以降も4ポイント以上の差があり、中学2年生での差は 5・8ポイントだった。算数と数学でも同じ傾向が見られたとしている。勉強やスポーツで打ち込んでいることや朝食を取る習慣の有無なども、世帯によって格差がみられた。



    12月23日 文科省調査 小中学生の視力過去最悪

     裸眼の視力が「1・0未満」の小中学生の割合が過去最悪となったことが22日、文部科学省の2017年度学校保健統計調査(速報値)で分かった。小学校は3年連続、中学校は4年連続で視力が低下。文科省は「スマートフォンなどの普及で画面を近くで見る機会が増えた影響 もあると考えられる」としている。一方、虫歯の割合は中高生で過去最低となり、肥満傾向児の割合も長期的な減少傾向を示した。

     文科省によると、視力1・0未満の子どもは、幼稚園で4人に1人の24・48%、小学校で3人に1人の32・46%になり、中学校と高校ではそれぞれ56・33%、62・30%を占めた。いずれも統計を始めた1979年度から増加傾向が続き、30年前(87年度)の親世代の割合と比べても小学校で約13ポイント、中学校で約18ポイント上昇した。また、中高で視力0・3未満の子どもは3割前後に上った。

     一方で、虫歯の割合は幼稚園や小中高校の全てで16年度より下がり、中学校(37・32%)と高校(47・30%)では、過去最低となった。学校での保健指導を通して健康意識が高まったことなどが背景にあるという。

     身長別標準体重から算出した肥満度が20%以上の肥満傾向児の出現率を学年別にみると、男子は高1の11・57%、女子は小6の8・72%が最も高かった。年齢層によりばらつきはあるものの、総じてここ10年間、減少傾向にある。

     耳の疾患を抱える子どもは小学校が6・24%、中学校4・48%、高校2・59%となり、いずれも過去最悪となった。ただ、調査では疾患の詳しい内容が分からず、要因を分析できないという。

     東日本大震災以降、運動不足や生活環境の変化で肥満傾向児が増えた福島県は、15年度と16年度の調査でいったん増加傾向が止まっていたが、17年度は再び増えた。


    「速報値」で詳細は分からないらしいが、虫歯の罹患率については考察が必要なきがする。京都市では危険性が指摘されている「フッ素洗口」が長年にわたって実施されているが、この調査による全国平均と比べてどれだけの(有意な)差があるのかどうか検討する必要があるだろう。仮に有意差がなければ「フッ素洗口」の効果がなかったという証ではないのだろうか。「意味がある」と説明してきた行政側に説明責任があるはず。


    12月23日 文科省調査 私立で教育、学費1770万円

     1人の子どもが幼稚園から高校卒業まで15年間を全て私立に通った場合、保護者が学校や塾などに支払う学習費総額は1770万円で、全て公立の場合(540万円)の3・28倍になることが22日、文部科学省の2016年度学習費調査で分かった。前回14年度調査では3・38倍で、わずかに差が縮まった。

     各学年の平均額を足して試算したもので、小中が公立、幼稚園と高校が私立の場合は792万円、小学校以外が私立だと1047万円だった。

     公私立の間で学習費総額の差が一番大きいのは小学校で、公立の平均額32万2千円に対し、私立は152万8千円。中学では公立が47万9千円で、私立は132万7千円となった。

     高校では、公立が45万1千円、私立が104万円でいずれも14年度より上昇。特に公立は授業料などの「学校教育費」が3万3千円増えた。文科省によると、14年度の新入生から高校無償化制度が就学支援金制度に変わり、所得制限が新たに導入され、授業料を支払う家庭が増えたためとしている。

     一方で、就学支援金制度が浸透して多くの家庭で高校の授業料負担が軽減されたことなどにより、学習塾費などの「学校外活動費」とが増加。特に私立高が顕著で、1年生が14年度より3万4千円、2年生も3万2千円増え、進学を控えた3年生どの支出差が縮まった。

     学校外活動費は、学校がある市区町村の人口規模が大きいほど増える傾向も示された。人口が「5万人未満」の公立小では13万6千円、公立中で20万1千円だが、「15万人以上」は公立小21万6千円、公立中33万1千円、「政令市と東京23区」では公立小31万円、公立中37万7千円となった。


    貧困の連鎖を断ち切るために「教育の無償化」が必要だと与党は選挙公約に掲げた。たしかにこれまでの同和教育が切り開いてきた地平はそれを物語っている。しかし、「無償化」された分の費用は結局「学校外活動費」への吸収されていく。これでは貧困の連鎖は繰り返されるのではと危惧する。また、都市と地方の「学校外活動費」はその質的な格差を物語ってはいないのだろうか。これも検証が必要だろう。


    12月21日 城陽高 デートDV根絶、高校生CMに特別賞

     恋人間の暴力「デートDV」根絶に向けて京都府城陽市寺田の城陽高放送部が製作したラジオCMが、NPO法人・全国女性会館協議会が主催する男女共同参画の事業企画コンテストで特別賞に輝いた。部員14人が20日、市男女共同参画支援センター「ぱれっとJOYO」での報告会に参加し、受賞の喜びや今後の活用について語った。

     市の依頼を昨年に受け、部員が製作に取り組んだ。デートDVを受けた経験者の話を聞き、CMプランナーから学ぶなど計10回の講座を受けた。高圧的に振る舞う女性と従う男性の「会話編」や、女性をモノとして扱う男性の一人語りの「愛情の勘違い編」など12種類の台本を作り、各回20秒の作品に仕上げた。

     コンテストは全国から13作品の応募があり、城陽高の作品は、高校生が学びながら分かりやすく伝えたことが評価された。

     報告会で部員たちは「(デートDVについて)見方が変わった。忘れないよう学び直したい」「半年間の取り組みが賞という形になり良かった」と話した。CMを聞けるQRコード付きの啓発ポスターをコンビニや公共施設のトイレに張るといった活用のアイデアも話した。CMは城陽市のホームページで聞ける。



    12月20日 18予算 部活指導など7500人

     文部科学省は19日、長時間勤務が深刻な教員の負担軽減策として、全国の公立学校の業務を支える外部人材を来年度、積極的に導入することを決めた。部活動や校内事務作業補助などで7500人を活用する必要経費として20億円規模を予算案に計上する。部活動は特に負担感が強いとされ、文科省は今春、外部人材が教員に代わり顧問などを務める部活動指導員制度を始めたばかり。重点的な手当てで働き方改革を加速させる考えだ。

     4月公表の文科省の教員勤務実態調査では、中学校教諭の6割、小学校教諭の3割が、おおむね月80時間超の時間外労働が目安の「過労死ライン」を上回った。



    12月19日 防衛資金、大学に食指

     防衛省の外局「防衛装備庁」が軍事応用も可能な基礎研究に助成する「安全保障技術研究推進制度」が年数億円から110億円規模に増額されたが、京滋の主要大学のうち、2大学で研究者から応募相談が学内であったことが、このほど分かった。京滋に理系学部を置く主要12大学のうち、軍学共同研究を行わないと明確にしたのは5大学にとどまっている。平和利用と公開を掲げてきた戦後日本の科学を揺るがしている。

     「ふるさとを軍事研究の場にさせない」。10月中旬、大津市の滋賀弁護士会館で滋賀県の学者や市民でつくる「軍学共同反対滋賀連絡会」が開いた講演会。滋賀県内6大学が防衛省の公募研究資金にどう対応しているか報告された。調査によると、「公募について大学に相談があったか」との設問に、滋賀県立大と長浜バイオ大で各1件あった。

     滋賀連絡会は署名を募り、県内の各大学に制度反対を呼びかけた。立命館大と滋賀医科大は応募要項を学内公開していたが、撤回して削除した。滋賀県立大は今年1月、「人類の平和を脅かす研究を行わない」との基本理念を公表、軍学共同に反対だと明確化した。立命館大と龍谷大は「教職員組合と軍事研究を行わないと確認」と回答した。

     だが、戸惑う声もある。

     「デュアルユースの問題があり、軍事研究の線引きは難しい。最終的には個人の良識」(滋賀大、滋賀医科大)との回答もあった。

     滋賀連絡会の設問に合わせ、京都新聞社は京都に理系学部を置く主な大学にもアンケートした。

     京都大、京都府立大、京都産業大、同志社大、府立医科大、京都工芸繊維大も、公募に「相談なし」と回答。公募要項を学内公開した大学はなかった。軍事研究について同大は受け入れない方針を定め、京大は「倫理基準や行動規範」の定めがないと回答。府立大は「特化した定めはないが、一般的な倫理規定は定めている」とした。

     防衛装備庁は軍事と民生の両用に利用できる「デュアルユース」をうたう。本年度の応募は104件と昨年度(44件)から2倍超に。支給額も15年度の3億円から16年度は6億円、本年度は一気に、110億円と膨張が続く。

     17年度に採択された代表機関はパナソニックや日立製作所、三菱重工業、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など企業や公的研究機関が中心で、大学の採択は0件だった。だが、共同研究を担う分担研究機関として名前未公表の大学が5件も記載されている。京大出身の池内了・名古屋大名誉教授(宇宙物理学)は「批判の矢面にさらされる大学への『迂回(うかい)支給』とみてとれる。防衛省の資金が表に出ずに流れ、いつしか『軍産学複合体』となっていく」と懸念する。

     ■秘密にされた科学

     秘密にされる科学。科学がもたらす大量殺人兵器。

     七十数年前、京滋の大学が軍部に協力した過去がある。研究成果は公表されず、軍事機密とされた。

     このほど明らかになった、ノーベル賞受賞者湯川秀樹博士の終戦の年の日記。8月25日付に「教授会」と記されている。京都帝国大が軍事協力の記録を闇に葬ることにした日。メディアでこれまで報じられていない同日付の自筆メモには「(秘) 関係書類一切焼却」と。



    12月19日 18年度予算案 小学校英語専科教員を千人増

     政府は18日、2020年度から全面実施される小学校の次期学習指導要領で英語が教科化されるのに先立ち、18年度の公立小の教職員定数で、英語を専門的に教える「専科教員」の千人増を決めた。学校現場の課題に応じて政策的に配分する加配定数を改善させることで、林芳正文部科学相と麻生太郎財務相が合意した。

     次期指導要領では小学校で英語が教科化され教員の負担増が懸念される。特に18年度からは英語の教科化に向けた先行実施期間に入り、小3〜小6で「聞く・話す」中心の外国語活動を実施するため、文科省は、質の高い授業ができる専科教員を配置して円滑な導入につなげたい考えだ。

     また、授業負担軽減による教員の働き方改革も想定。文科省は20年度までの3年間で計4千人の専科教員配置を目指す。

     ほかに、中学校の生徒指導体制の強化や、貧困による学力格差解消といった課題に対応する210人など、計595人の増員も決まった。

     教職員定数は主に学級数や児童生徒の数で算定するが、少子化による定数の自然減などで18年度は4456人減る見通しで、全体では実質的に2861人の定数減となる。このため18年度予算案で、公立小中学校の教員の給与に充てる義務教育費国庫負担金は17年度比で20億円減の1兆5228億円となった。

     林文科相は記者会見で「学校の指導運営体制の効果的な強化、充実が図られると考えている」と語った。


    防衛費を拡充

     政府は18日、2018年度予算案の一般会計総額を過去最大の97兆7100億円程度とする方針を固めた。北朝鮮情勢に対応して防衛予算を拡充する。自治体に配る地方交付税交付金は特例交付金を含め15兆5100億円程度とし、17年度から500億円程度減額する。税収は59兆800億円程度と27年ぶりの高水準を想定し、借金である新規国債発行額は33兆6900億円程度に減ると見込んだ。

     この日は、積み残しとなっていた課題を巡り麻生太郎財務相と関係閣僚が最終的な折衝を行い、予算案の全容をほぼ固めた。22日に閣議決定する。

     一般会計総額は6年連続で過去最大を更新。97兆4547億円だった17年度からは2600億円程度増やす。政策経費のうち地方交付税を除いた一般歳出は5400億円程度増え58兆9千億円程度となる。防衛費に加え、社会保障費が高齢化に伴って増えることが押し上げ要因となった。

     借金返済に充てる国債費は23兆3千億円程度。金利低下に伴って利払いが抑えられ、2300億円程度減る見通しだ。

     閣僚間の折衝では、新型護衛艦2隻の調達費として1055億円を認めたほか、自動車事故の被害者救済に充てるため自動車損害賠償責任保険(自賠責)の特別会計に23億円を繰り入れることなどが決まった。

     子育て支援では、所得が比較的低い一部の世帯を対象に幼稚園の保育料負担を軽減することで合意。保育所の運営費には国の予算とは別に、企業が負担する「事業主拠出金」を段階的に増やして活用することも確認した。


    小学校は2015年でおよそ2万校。これをベースに「英語を専門的に教える専科教員1000人」や「3年間で計4千人の専科教員」を割ってみると、前者では20校に一人と後者では5校に一人とうことになる。これを自治体の教育方針で配分するとなると、どうしても「問題(課題)の少ない学校」が取り残されてしまうことになる。全ての学校に加配あるいは定数改善が行き届くことでなければならない。「2861人の定数減で義務教育費国庫負担金は20億円減」となるらしいが、「新型護衛艦2隻の調達費として1055億円」の数字との比較は意味がないことだろうか。


    12月16日 児童養護施設退所者 非正規5割 高校中退25%件

     京都市内の児童養護施設の退所者を対象に市が初めて行った実態調査で、就業者のうち雇用形態が非正規の割合が50%を超えていることが15日、分かった。4人に1人が高校を中退するなど進学でつまずいていることも判明した。経済的な基盤の弱さが日常生活の不安につながっている。

     調査は、公的支援が弱いとされる施設退所者の働き方や暮らしぶりを把握するため、過去10年に15歳以上で退所した327人を対象に行い、93人が答えた。

     就業者の雇用形態は、正規が35・4%にとどまつた一方、非正規が50・8%に上った。府内の就業者全体の非正規割合は約4割とみられるため、収入が不安定な形態で働いている退所者の割合が全体平均よりも高いことが分かった。

     月収は、15万円以下が55・4%を占めた。同様の調査をしている大阪市の43・5%、東京都の52・5%に比べて収入が低い退所者の割合が高かった。

     困り事は、「経済面」を挙げる退所者が退所直後3年間(56%)、現在(41・8%)とも最多だった。続いて「仕事」(退所直後36・3%、現在33%)、「親との関係」(34・1%、27・5%)となった。

     進学に関しては、92・3%が高校に進学したが、25・3%が中退した。中退率は大阪市の退所者の3・4%、全国の同年代平均の1・4%に比べて突出して高かった。主な理由は「人間関係」や「目的を見いだせない」などで、市の担当者は「虐待を受けた経験や自己肯定感の欠如が原因となって、人間関係につまずきを覚える人が多いのではないか」と分析する。

     大学・専門学校を卒業したか、中退したと答えた退所者は14・3%だった一方、無回答も39・6%に上った。

     調査を監修した佛教大の伊部恭子教授(社会福祉学)は「京都市内の退所者は高校中退率が高いという特異な課題があることが分かった。学歴に相関して収入が高くなるという先行研究がある。学歴が全てではないが、大学や専門学校などへの進学率の低さも含め、改善を促したい」と話している。


    進学、就労…負の連鎖

     京都市がまとめた児童養護施設退所者の実態調査結果からは、経済基盤の弱さが進学や就労に悪い影響を与える負の連鎖が見えてくる。退所後の家探しや家事負担をはじめ、親との関係改善といった難しい課題を抱えているケースも多い。施設は退所後の有効な支援の在り方を模索するが、道半ばだ。

     4月から市内の食品企業で働く女性(23)は「大学院に行きたかったけど、お金がなくて諦めました」と後悔の念をにじませる。

     高校3年まで6年間過ごした児童養護施設を出て、京都府内の大学に通った。施設には、親の不在や虐待の被害などの問題を抱えて入る子どもが多いため、退所後も家族の支援は期待しにくい。この女性は奨学金を受けていたが生活費が足りず、アルバイトを掛け持ちする日々を送った。だが3年生の時に体を壊し、バイトを減らさざるを得なくなったため、指導を受けていた教授から勧められた大学院進学を断念した。

     市の調査では、進学したかったができなかったという退所者は14・3%に上り、全員が経済面を理由に挙げた。経済的な基盤が弱いため進学できず、その結果、比較的収入が高い正規社員にもなれない現実が浮かび上がる。

     このため、退所者を資金面から支える動きが広がりつつある。京都市北区の児童養護施設「京都聖嬰会」は、企業や個人の協力を得て退所者のサポートにつなげている。退所者4人がそれぞれ企業から月7万円の生活費を受けているほか、就職準備などの臨時支出に寄付金を利用している。

     退所して大学などに進むには、学費と生活費がそれぞれ年約100万円必要になるという。杉野義人施設長(54)は「返済義務のない奨学金は狭き門で、数百万を借金して進学するのは厳しい」と指摘する。社会的な支援制度が不十分な中では、企業や個人の善意に頼らざ るを得ないのが実情だ。

     生活面のケアも模索する。20歳末満は賃貸契約に保護者らの同意が必要だが、家族の支援を受けられない退所者のために施設長が連帯保証人となつて社会に送り出すケースも多い。 .

     退所者の支援を巡っては、施設職員から「組織的・体系的なアフターケアができてない」という悩みも漏れる。政府は2015年度に児童養護施設の職員定数を増やしたが、宿直があり、勤務時間も不規則な職場だけに人手不足は深刻だ。杉野さんは「退所者の育ちをよく知り、入所中から信頼を積み上げている職員が要る」と訴える。

     行政の取り組みが、当事者に十分届いていない実態もある。市は11月中旬、南区の南青少年活動センターで退所者同士の交流会を初めて催し、9人が参加した。市は7カ所の青少年活動センターを退所者の相談・支援の拠点にする構えだが、認知度の向上が課題として横たわる。

     市の調査に関わった佛教大の長瀬正子講師(社会福祉学)は「退所者が当たり前のように社会生活を送れるようにするために入所中を含む中長期的な支援が必要。当事者もアクセスしやすい仕組みを作ってほしい」と話している。具体策として、退所後の支援を手掛ける専門職の設置をはじめ、青少年活動センターや児童相談所、福祉事務所などの連携を提案している。


    憲法改正と抱き合わせで総選挙目当ての公約であった「教育の無償化」。はたして大きな網をかけるような政策で「1億総活躍」が可能なのだろうか。経済学者のA・センがいうところの「潜在能力の開発」は個々の市民のニーズを状況に応じて支援することが社会正義であると考えている。また、社会的なセフティーネットの構築も、再チャレンジの機会の確保という観点からも必要だろう。安倍政権の教育政策にそうした視点が全く見えない。


    12月15日 府教委 就学援助率3年連続減も高止まり

     全国の公立小中学校に通う子どものうち、経済状況が厳しい家庭に給食費や学用品代を補助する就学援助制度の支給対象者の割合が2015年度は15・23%で、前年度から0・16ポイント減ったことが15日、文部科学省の調査で分かった。3年連続の減少だが、依然として7人に1人が支給対象となる計算で、高止まりの傾向が続いている。

     対象者数は146万6134人で、前年度から2万9351人減。4年連続の減少となった。調査は都道府県教育委員会を通じて市区町村教委に対して実施しており、対象人数が減った要因として、少子化のほか「経済状況の変化」を挙げた教委が多かったという。



    12月15日 前川前次官 「日本の教育戦前回帰」

     加計学園(岡山市)獣医学部新設問題で「総理の意向」などと記された文書の存在を証言した前文部科学事務次官前川喜平氏が13日夜、京都市内で講演した。

     第1次安倍政権による教育基本法改正を経て、日本の教育は戦前回帰の排外的な方向に進んでいるとの憂慮を示し、多文化共生の道を歩むべきだと強調した。

     前川氏は、教育基本法改正に対し「世界平和と人類の福祉を実現するという憲法の理想と一体となった目的が前文に記されていたのに、改正後は曖昧になり、国と郷土を愛する態度が強調された」と主張。「教育行政をやる中で『南京事件』はなかったと教科書に書け」といった政治の要求に四苦八苦した。これは歴史学が明らかにする問題なのに、政治が教育を決めていいという考え方が法律に盛り込まれた」と批判した。

     「改憲を声高に言う人には教育勅語の復活を求める人が多いが、個人の尊厳という憲法の原理と相いれない。戦前回帰に社会をもっていくか、未平志向で考えるかの分岐点にいる」と訴え、道徳の教科化に関しては「ぜひ学校で国を愛する心は必要かり?」と批判的な取り上げ方をしてもらいたい」と呼び掛けた。

     審議官時代に高校無償化の制度設計に携わった経験から、民主党政権でも拉致問題に絡めて朝鮮高校への適用に反対する声があったとし「北朝鮮が同をしているかということと、在日の人の学ぶ権利との間に何の関係があるのか」と語気を強め、多文化共生型社会を目指すよう訴えた。

     加計学園問題については「京都産業大が強力なライバルだったにもかかわらず、後付けの条件で恣意(しい)的に排除された。初めから加計ありきだったことは明らか」と批判した。

     講演会は京都の市民団体でつくる実行委員会が催し、前川氏は主に教育問題をテーマに語った。


    予定されていた会場に収まりきらない参加者で関心の高さを伺う事ができた。話の内容はいわば当然の事であったが、文科省の官僚トップという立場からの発言はある程度割り引いて聞かなければならなった。むしろ官僚が考える日本の教育の将来として聞いた方がよく理解できる内容だったように思える。


    12月13日 中教審 教員業務の一部委託提言

     長時間勤務が問題化している教員の働き方改革を議論する中教審の特別部会は12日、教員が担ってきた業務を仕分け、一部を外部委託するなどの対策を示した中間まとめ案を大筋で了承した。特に負担が大きい部活動は、活動時間や休養日の明確な基準の設定を学校 側に求めた上で「必ずしも教員が担う必要はない」と提言、将来は地域単位の取り組みへの移行も進めるべきだと明記した。

     中間まとめ案は年内に林芳正文部科学相に提出され、文科省がまとめる緊急対策にも反映される。中間まとめ案では、改革目的を「教員の業務の範囲を明確にし、子どもと接する時間を確保して真に必要な指導ができる状況をつくり出すこと」と強調。業務を学校以外や外部人材に任せられるものなどに区分し、教員が授業に集中できる環境の整備を目指すとした。

     具体的には、登下校や放謀後・夜間の見回り、給食費徴収は自治体や地域住民、保護者などが担うべき業務として挙げた。給食や進路指導、支援が必要な子ども・家庭への対応は「教員の業務」としつつ、専門スタッフや事務職員の協力で負担軽減が可能とした。

     調査・統計への回答や校内清掃などは「学校の業務だが、必ずしも教員が担う必要はない」とされた。部活動の運営は「学校に法令上の義務はない」と明記したが、教員が顧問を担わざるを得ないのが現状であることを踏まえ、部活動指導員の積極的な参画が有効な手だてになるとした。休日に集中する対外試合などの見直しも促した。


    学校業務の見直しについては一般論としては賛成だが、代替措置として保護者や地域住民の「担うべき業務」としている点は問題点として指摘しなければならない。いわゆるコミュニティースクールと呼ばれている学校評議会などの果たしている役割が学校への「援助」となるのか「介入」となるのかは、学校のマネージメントの質によって大きく異なってくる。また、保護者の「援助」が必須のものとなれば、「参加できない」ことが地域からの排除につながる危険性もある。そうした個々の家庭の条件をどう調整するのかも、「働き方」同様大きな課題だとも言える。


    12月11日 京都・与謝野 3小を統合へ 地域の保育園も

     京都府与謝野町は、2020年度に桑飼小(同町明石)と与謝小(同町滝)を、加悦小(同町加悦)に統合する方針を決めた。同年4月に新小学校としてスタートする予定。将来的な児童数の減少や男女比率を考慮した。再編で生じる桑飼小跡地には、旧加悦町地域の3保育園を集めた認定こども園を整備する方向で調整している。町は、保護者や地域に方針説明を行っている。

     町教育委員会によると、町の「学校等の適正規模適正配置に関する基本方針」に基づき、8月に策定した同地域の小学校の再編計画で統合方針を決定した。町教委の予測では、与謝小の21年4月の新入生は4人(男子3人、女子1人)の見込みで、桑飼小では19年4月の入学予定児童が男子2人に対し、女子が9人となるなど児童数と男女バランスが極端化。「人数や男女比など一定の集団での教育環境を早期に整えたい」(学校教育課)として判断した。

     町教委は議会や地元の区長会に説明を行った。10月下旬からは各校のPTA役員や保護者などへの説明にあたっている。

     小学校再編と並行し、加悦、桑飼、与謝の3保育園も順次統合する。19年に園舎規模などから加悦に与謝を一時的に統合させた後、桑飼を合流させる形で「加悦地域こども園(仮称)」の21年度の開園を目指す。こども園は閉校する桑飼小の敷地を活用するといい、保護者らに整備計画についての説明を進めている。



    12月10日 府教委 京都の教員、フリースクールに学ぶ

     不登校の児童や生徒が通うフリースクールに対して、教育委員会や学校関係者の関心が高まっている。京都府教委の教育長をはじめ乙訓地域の小中学校の現役教員が11月、亀岡市内のフリースクールを相次いで視察した。自発的な取り組みとする一方で、2月に施行された教育機会確保法に不登校であっても生徒や児童が学ぶ権利を明記されたことが大きい。「水」と「油」の関係とも言われた学校とフリースクールとの関係に、「雪解け」が起きているようだ。

    ■「スクールカースト」

     11月下旬、亀岡市や京都市の不登校生徒15人が通うフリースクール「学びの森」(南つつじケ丘)に、府教委の橋本幸三教育長が訪れ、「今日はみんなの意見を聞かせてくれるかなぁ。学校のどこが嫌だったんだろう?」と笑顔で切り出した。

     14歳から17歳までの生徒5人が答え、「女子の中で『カースト』のような関係があった」「先生の過剰な期待が重かった」などと、苦しかった過去を打ち明け、橋本教育長は真剣な眼差しで聞いた。さらに引きこもりやうつ状態にあった不登校期間を経て、「個性や自由が認められる、このフリースクールと出会い、進学や就職といった将来を前向きに考える力を取り戻した」などと語っていた。

     プロである教育関係者がフリースクールを公務として視察する背景には教育機会確保法がある。国は、不登校などで義務教育を受けられない子どもに対しても国や自治体が支援すると明記し、学校以外の学びの場の重要性を初めて認めた。

     学校現場の教員によると、これまで担任するクラスから不登校の児童や生徒が出ると、何となく「恥」と捉える風潮があり、フリースクールに対して「何をしているのか分からない」「不登校を助長するのでは」として敬遠してきた。

     一方で、少子化にもかかわらず不登校の児童や生徒は増加傾向にある。府内でも2016年度で2625人だという。目標を取り戻せる可能性があるフリースクールは学校にとっても無視できない存在になりつつある。

     生徒との意見交換会を通して、橋本教育長も「学校になじみにくい子は絶対にいる。学校だけが学ぶ場所ではないとは立場上、言いにくかったが、法律が施行されて、それも言えるようになった」と本音を漏らした。

     11月上旬に訪れた乙訓地域の養護教諭も「悩む子に接する機会が多いが、手だてがないのが実情だった。一つの選択肢として、近くにフリースクールがあれば紹介できるのに」と率直に話した。

    ■苦しい資金繰り

     とはいえ、フリースクールは実質的に「私塾」のため、資金繰りは苦しい。無償の義務教育とは違い、学費は児童・生徒側の負担となる上、フリースクールの運営はぎりぎりの状態だ。法には、行政の経済的支援の重要性もうたわれ、府教委は本年度、助成金を付けたがわずか年間50万円で、亀岡市教委は一切行っていない。一方、不登校対策に力を入れる鳥取県は、上限300万円を補助する独自制度を設ける。

     1年前から通う男子生徒(16)=京都市右京区=は「母子家庭で家計は苦しい。ここがあり勉強できてありがたいが、申し訳なさもある。何とかならないか」と訴える。

     学びの森では、スタッフの大半が教員免許を持ち、研修にも力を入れる。北村真也代表(55)は「教育の質を担保するには、どうしてもコストがかかる。学校が合わない子どもは今後もゼロになることはない。行政には、よりよい連携や支援のあり方を模索してほしい」と強調した。

     フリースクールは、施設によって教育方針も内容も異なる。多様性や質の担保をどう見極め、どんな支援をしていくか。子どもたちに学びの選択肢を増やすための新たな扉が開きつつある。