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  • 教育長ら授業照会.24
  • 道徳教科書に「いじめ」.28
  • 城陽市教育長「強く反省」.28
  • 学習障害タブレット支援.29
  • 高校指導要領を告示.30
  • 人事異動 事務局98人.31
  • 多様に学び夢へ巣立つ.31
  • 3月31日 府立清明高 多様に学び夢へ巣立つ

     昼間2部制という新しいタイプの定時制学校として3年前に開校した京都府立清明高(京都市北区)で今春、初めての卒業生44人が巣立った。中学校の不登校経験から皆勤賞を取ったり、ダンサーとして夢を追いながら学業に励んだり、さまざまな生徒がいた。卒業を迎えての思いを聞いた。

     不登校経験や自分のベースで学びたい生徒のニーズに応えようと、2015年4月に開校した。卒業は通常4年だが、必要な単位を取得すれば3年でできる。

     午前と午後の2コースがある。時間割を各個人が組む方式を取り入れ、生活様式に合わせた学習が可能だ。外部機関による学習や就労、自立への支援体制も充実している。全員がタブレット端末を所有し、最先端のICT (情報通信技術)教育を行っている。

     「学校に行こうとドアに手を伸ばすと、気づいたらうずくまって泣いていた。理由は今でも分からない」。吉田捷真さん(18)は中学時代、ほとんど学校に通えなかつた。

     同高の存在を知った時、「ここなら学校に行けなかった自分とは違う自分になれると感じた」という。「サポートが手厚かったし、同級生と接して内面的な成長もあった」と振り返り、1日も休まなかった。3月1日に行われた同高初の卒業式で表彰された。「うれしかったし、親が喜んでくれた」と話す。

     在学中からブロダンサーとして活動する藤村崇五さん(18)は「清明だから両立できた」と話す。イベント出演やダンスインストラクターとしての仕事を抱えながら、多忙な3年間を過ごした。「年ごとに時間割を調整し、仕事や練習を入れられる。やりたいことを応援してくれた」と感謝する。

     目標だった府立大に合格した男性(19)は中学を卒業していったんは府内の進学校に進んだが、起立性調節障害に悩まされて朝に起きられなくなり、1年の夏休み明けごろに退学した。

     大学入学資格検定からの大学受験を考えたが、教育方針に引かれて翌年清明高へ入学した「友達」と遊び、部活動に打ち込めた。高校生活が送れて良かった」と笑顔を見せた。

     進学したい人や基礎から学び直したい人、それぞれに合わせて履修できる仕組みの評価は高い。新設校に魅力を感じて入学した阪上絹香さん(18)は食品開発などの仕事に就きたいと考え、関係する専門科目の授業に力を入れた「将来のことを考えて授業を選べた」。4月からは栄養学などを学ぶ専門学校に入って夢を追うという。

     一方で、従来の定時制や養護的な教育をイメージする生徒、保護者らが少なくなくミスマッチが目立った。120人いた1期生のうち、40人ほどが途中で転校や退学している。同局は「説明会などで十分に伝えきれなかった」と反省する。これまでにない学校だけに、入学希望者への的確な情報提供は課題となる。

     開校前の準備室から携わり、本年度で定年退職する山岡弘高校長は、意欲がある若者に学習の機会は保障されるべきだと考える。そのために、清明は多様な学びを支える場であり続けてほしい。卒業生が学校での経験を生きていく上での糧として頑張ってくれるのを願ってている」と語る。


    清明高のアウトラインが十分に理解されていないと学校側は説明するが、「ミスマッチ」が目立ち3分の1が在籍しなくなったことは単なる「説明不足」では済まされないだろう。こうした種類の学校を必要としている子どもは確かにいるのだが、従来の定時制や単位制が十分機能していない、あるいは普通高校がそうした子どもを排除している(高校での支援学級の設置)などの問題があるのも事実ではないか。


    3月31日 府教委 人事異動 事務局98人

     京都府教育委員会は30日、31日付の退職者と4月1日付で発令する事務局の人事異動を発表した。府知事選を控えて異動規模は昨年の半数程度に当たる98人とした。

     部長級では定年退職する沖田悟傳山城教育局長の後任に阿部篤士特別支援教育課長を起用する。小中学校と高校の連携を強化するため指導部理事に登用する立久井聡学校教育課長が高校教育課長の事務を担う。(略)


    京都市教委 事務局128人異動

     京都市教育委員会は30日、31日付の退職者と4月1日付で発令する事務局の人事異動を発表した。規模は128人となり、子ども若者はぐくみ局創設に伴う市長部局への異動が多かった前年度よりも34人減った。

     教職員の長時間勤務が問題となる中、働き方改革を進めるポストを総務部内に新設。担当部長に川井勝博学校事務支援室長を起用す る。京都市石京区京北地域で2年後の開校を目指す小中一貫校の準備のため、教育企画推進室を開設。老朽化が進む学校施設を計画的に改修して長持ちさせる事業で連携しやすいよう、教育環境整備室を組織再編した。就学前の園児が小学校生活にスムースに移行しやすいように支援するプロジェクトチームをつくり、調査研究を進める。

     局長級では、総合教育センター所長に佐藤卓也指導部長を起用する。



    3月30日 文科省 高校指導要領を告示

     林芳正文部科学相は30日付で、必修科目として主権者教育を扱う「公共」や近現代の日本史と世界史を融合させた「歴史総合」の創設など、大幅に科目を再編した高校学習指導要領を告示した。全教科で「主体的・対話的で深い学び」も掲げ、授業改善を促した。改定案公表後の意見公募では、歴史用語削減を求める声や領土の教え方に懸念もあったが、全体として目立った修正はしなかった。

     2022年度の新入生から順次実施する。大学入試改革を踏まえ、英語で「読む・聞く・話す・書く」の4技能育成を重視するなど、55科目中27科目が新たに設けられたり、内容を見直したりした。

     総則では、予測が難しいこれからの社会で求められる人材の育成に向け、社会と学校との連携を目指し、思考や判断、表現の力を伸 はすことを大きなテーマとした。文科省は、授業の指針となる教員向けの指導要領解説を夏にも公表する。

     2月14日から今月15日までの意見公募には、計2397件が寄せられた。歴史科目で暗記に偏った学習を見直すため「用語削減の方向性を示すべきだ」との意見があったが、文科省は「具体的な歴史事象に触れ、興味を持って学ぶことが重要として修正しなかった。

     地理歴史で竹島(島根県)と尖閣諸島(沖縄県)を「固有の領土」と明記したことに「日本政府の主張を一方的に教えるのは不適切」と の意見も上がったが、文科省は「わが国が正当に主張する立場を理解することは主権国家の公教育では当然」との見解を示した。


    「領土問題」は「公共」、「主体的・対話的で深い学び」を学習する恰好の材料である筈だが、「一方的に教えるのは」当然言わんばかりの「見解」」は果たして「主権者教育」に耐えるのだろうか。


    3月29日 府・市教委 学習障害タブレット支援

     学習障害(LD)など読み書きに困難のある児童生徒の学習を、情報通信技術(ICT)を便って支援しようとする取り組みが、京都府内の小中学校の通級指導教室で始まっている。音声読み上げや文字拡大ができるタブレット端末の機能やアプリを使い、子どもが課題とする能力を補って意欲の向上につなげる狙いがある。一方、本人に合った教材の開発や機器の準備など予算面での課題も残る。

     タブレット端末に表示されたマークを押すと、「観光客数の推移…」とグラフに書かれた文言が読み上げられた。京都市北区の市立小学校。読み書きに困難がある5年男児(11)は端末を片手に、クラスメートと一緒に授業を受ける。「授業が分かりやすく、楽しくなった」と笑顔を見せた。

     男児は4年時の冬から、板書をノートに書き写せなかったり文章を途中で読めなくなったりするなどLDが疑われる症状がみられ始め、特性に応じた個別授業である通級指導を受ける。読んで理解することに課題がある一方、話を聞き取ることはできたため、男児の通級指導を担当する女性教諭(54)や市教育委員会が授業で使う資料を読み上げる教材を作り、学習に役立ててもらっている。教諭は「『勉強が分かる』と笑ってくれた」といい、男児も「国語は好き。漢字をもっと覚えたい」と前向きだ。

     LDは読み書きや聞く、話す、計算、推論など特定の能力に困難を示す発達障害の一種だ。一方、知的発達の遅れは基本的にないため、文字を拡大したり音声で読み上げたりするタブレットの機能やアプリを使えば、学習の理解につなげられるとの期待が待たれている。

     2016年4月の障害者差別解消法施行で、公立学校で障害のある児童生徒に「合理的配慮」を提供することが義務づけられ、市教委では通級指導を受ける子どものための学習アプリを開発したり学校に機器の使い方を助言したりする専門主事を配置し、ICT活用を進める。

     府内の他の市町村でも府総合教育センターや小中学校の教職員らが研究チームを立ち上げ、16年度は6校、17年度は14校の通級指導教室で実施している。

     一方、通級指導のためのICT機器の購入には特別な予算措置がなく、通常の学校予算などから捻出せざるを得ない。子ども一人一人の障害特性に応じた教材づくりも、学校や各教委が独自に対応しているのが現状だ。通級指導を受ける小中学生は昨年5月現在、府内で4千人 以上おり、ICT機器の活用では今後、さらなるニーズの拡大もあり得る。立命館大の富永直也講師(教育方法学)は「ICTでやるべき部分と従来通り紙などで教える部分を見極めながら、子どもにオーダーメードの教材を届けられる恒常的な仕組みをつくらないといけない」と指摘する。


    障害を持つ子どもと新しいメディアとの関係は日進月歩の感がある。視覚障害者に対する音声読み上げ、聴覚障害者に対する人口内耳など数え上げればきりがないほどである。もちろんそれらが万能ではなく長所欠点を有していることは認識しておかなければならない。その上で、障害を持つ子どもの教育に対する「合理的配慮」とは何なのかを問う姿勢が必要。障害を持つ子どもを普通学級から排除した上での「スペシャルニーズ」を満たすという方向へ進むためのメディアの開発であってはならない。


    3月28日 府教委 城陽市教育長「強く反省」

     京都府城陽市の井関守教育長ら幹部職員が、西城陽高(同市枇杷庄)の主権者教育の内容を問題視し、府教育委員会や同高に問い合わせをしたことについて、井関教育長は27日の市議会予算特別委員会で「自身の行動の結果として西城陽高と府教委に多大なご迷惑をかける結果となり強く反省している」と陳謝した。

     主権者教育は2月14日、同高と市議会の意見交換会として実施。市民の間で賛否の分かれる文化パルク城陽の売却問題について、生徒から質問が出たことを受け、井関教育長が府教委に事実確認を求めたほか、売却を担当した長谷川雅俊政策戦略監付次長は質問が出た経緯などを同高に問い合わせた。

     特別委員会で、本城隆志委員は「問題があるなら、議長や(意見交換会の窓口となった市議会議会活性化推進会議委員長の)私にきけばよかった」と指摘。文部科学省が前川喜平前事務次官の授業内容の報告を名古屋市教委に求めた問題にも触れ、「学校に任せるべきところに横やりを入れている」と教育への介入を批判した。

     井関教育長は、26日に同高を訪れて謝罪し、稲川孝幸校長から「議会の協力が得られたら来年度もやりたい。テーマや運営はより慎重に検討したい」と告げられたという。特別委員会で、長谷川次長から発言はなかった。

     続く議会活性化推進会議で委員らは、教育長らによる問い合わせの問題と、今後の意見交換会の開催は切り離して議論すべきだと確認した。

     また、この問題を巡り、同市のNPO法人行政監視機構(半田忠雄理事長)は27日までに、経過と事実を明らかにするよう市議会に「特別調査委員会」の設置を求めた。



    3月28日 中学教科書検定 道徳教科書に「いじめ」

     文部科学省は27日、2019年度から使う中学校の道徳と主に高校3年向けの一部教科の教科書検定結果を公表した。道徳は8社が申請した全30冊が合格し、全てがいじめに関する内容を扱った。会員制交流サイト(SNS)やスマートフォンと、いじめとの関連に触れ文科省が掲げる「考え、議論する道徳」を意識した内容を随所に掲載した。中学では来春の道徳教科化に伴い、初の検定となった。

     検定に合格した道徳教科書は、読み物を中心に構成されており、登場人物の心情や自分の考えなどを尋ね、生徒同士の話し合いを促した。いじめでは、友人同士のすれ違いから無視や嫌がらせになる事例や当事者の心の葛藤などが紹介された。

     20年東京五輪・パラリンピックを控え、夢へと努力する選手の歩みや、大会ボランティアなどを取り上げた。東日本大震災や熊本地震を扱い、命の大切さや相互扶助に言及する内容も目立った。

     道徳教科書では学習指導要領が定める「思いやり」「伝統文化」など22の内容項目を網羅する必要がある。16年度の小学校道徳の検定では、内容項目が十分盛り込まれていないとして申請段階で修正を求める意見が43件あつたが、今回は7件に減った。小学校の検定結果を踏まえ各社が対応したとみられる。誤記などを含めると今回の検定意見は計184件だった。

     道徳は個人の価値観にも関わり、他教科のように数値評価はせず、教員が生徒の長所や成長などを記述する特別な教科となる。一部教科書では振り返りのため、生徒が学習内容の理解などを段蔭別評価する欄を設けた。

     教科書のページ数は、作業用のワークシートを含め、16年度検定に合格した小学校の8660(66冊)から5164(30冊)になった。中学校の道徳授業は週1こま(50分)相当となっている。

     高校教科書は英語や芸術などが検定対象で60冊全てが合格した。20年度からの大学入学共通テストでは英語で民間検定試験が活用されるなど「読む・聞く・話す・書く」の4技能が重視される。英語教科書では、こうした実用的な英語力の育成に関わる記述もあった。


    脱「正解主義」が課題

     中学校用の道徳教科書は、1年前の小学校用に比べると見解の分かれるテーマを数多く取り上げ、文部科学省が掲げる「考え、議論する道徳」へと一歩近ういた。ただ、日本を称賛する外国の見方を一方的に紹介するなど、安易な現状肯定につながりそうな教材も目につく。「正解」の定まつた道徳から脱却するには、授業を展開する教員の工夫も求められそうだ。

     文科省は2014年、道徳の副読本として学校現場で長く使われてきた「心のノート」を全面改訂し、新たな教材「私たちの道徳」を作った。いじめ問題や、06年に教育基本法に盛り込まれた「伝統・文化、愛国心の尊重」などを扱う教材に衣替えするためだ。

     「私たちの道徳」では、過去の政治家や科学者らの伝記、哲学者や作家らの格言など、いわゆる偉人伝の読み物が大部分を占めた。「学習指導要領が示す教えるべき価値を最も単純化しており、扱いやすい」へ教科書作成に携わった大学関係者)のが人気の理由だ。

     1年前に検定を通過した小学校の道徳教科書は「私たちの道徳」の教材をそのまま採用するものも多く、中学版も偉人伝を中心とした構成になるのではないか、とみる関係者は少なくなかった。

     ところが予想に反して、偉人や伝統文化の担い手の物語は敬遠された。

     道徳教科書の編集者は「脱偉人伝」の傾向について「国が新たに示した道徳の指導方法の影響が大きい」と指摘する。文科省の専門家会議は伍年、問題解決につながるような学習や、体験的な学習などを提案した。この編集者は「編集者らが創作した物語なら、条件に合わせて内容を変えられるが、事実関係を改変できない偉人伝はニースに合う題材が見つけにくく、敬遠されたのではないか」と解説する。

     代わりに数多く登場したのは、世界が称賛する日本の姿だ。東日本大震災の際、給水車の前に整然と並ぶ被災者の写真や、電車とホームの間に落ちた女性客を乗客らが協力して助ける様子などが複数の教科書で取り上げられた。いずれも「全世界が衝撃を受けている」などと日本人の精神性をたたえる海外メディアの報道を掲載し、「自分ならどうするか」と問いかける。教科書会社の担当者は「日本人の美徳や素晴らしさをわが事として見つめ直すため」「グローバル社会の中で、日本人の独自性を際立たせたかった」と意図を説明する。

     だが、日本を礼賛する番組を研究している立命館大の富永京子准教授は「外国からの称賛は自画自賛に比べ、客観的な事実として受け止められがちだ」と指摘し、生徒が日本の現状を安易に肯定する恐れもあるとみる。長崎大の山岸賢一郎唯教授(教育哲学)は「教材は子ども自身が『国を愛する愛するとは何か』といった点まで考え、議論する内容であるべきだ」と話した。



    3月24日 城陽市 教育長ら授業照会

     城陽市の京都府立西城陽高が主権者教育の一環として2月に行った同市議会との意見交換会で、市民の間で賛否の分かれる大規模文化複合施設「文化パルク城陽」売却問題が取り上げられたことを同市の井関守教育長が問題視し、府教育委員会に対して同高への事実 確認を求めていたことが23日分かった。施設売却を担当する市の長谷川雅俊政策戦略監付次長も高校に直接、授業内容を問い合わせていた。

     意見交換会は2月14日、2年生の授業で行い、市議会の議会活性化推進会議に属する各会派の6人が参加した。その中で、市が複合 施設を売却して財源を捻出し、賃借する「セール・アンド・リースバック」を導入したメリットについて生徒から質問があり、各市議が考えを述べた。

     内容を知った長谷川次長が同月20日、売却問題を質問で取り上げた経緯を学校側に尋ねた。井関教育長も同日、「府教委の主権者教育としてどうなのか。確認してほしい」と府教委高校教育課に西城陽高への事実確認を求めた。その後、同課の指導主事が高校側に内容を問い合わせ た。

     2月下旬に議会側は、同高から「行政から学校が責任を問われるようなことになるなら、今後は意見交換会を継続できない」と告げられたという。

     23日の市議会予算特別委員会で市議が「教育長の立場で、政治的中立の観点からも軽率だ」と批判。府教委への働き掛けについて井関教育長は「一市民として、一職員として、いろんな立場から府教委に問い合わせをした。今後は軽率な行動を控えたい」と釈明した。

     同高の小野敏彦副校長は京都新聞の取材に「議員の話を聞くことができ、良い学習機会となった」としながらも、今後の開催は「学校側としてしたいと思っていても、同じようにできるのか不安がある」とした。


    前川氏の授業調査問題と同じようにどうしてこうも教育に関わる人間の知的水準が低いのか驚いてしまう。18歳選挙権引き下げ時から「主権者教育」の充実が唱えれているが実際は「投票率を上げる」ことがそうした教育だと勘違いしている向きが多い。文化パルクの問題も市民の資産がどのように処分されるかは主権者としての高校生にとって最も身近な問題であるはず。それを自らの市政への批判を恐れるあまりの現場への「圧力」。見識なさは問われなければならない。同時にこの教育長を認めた議会側の責任もあるだろう。それにしても総務省がすでに発表している「ホイテルスバッハ・コンセンサス」を一つの基準として「主権者教育」を考えるという方向性を教育委員会は「指導」すべきである。


    3月23日 自民党 改憲原案へ各党と議論

     自民党は、憲法改正を目指す4項目の条文案について衆参両院の憲法審査会に「たたき台」として提示し、各党と議論した上で改憲原案の策定を進める方針だ。与野党の幅広い合意形成を狙い、自民党単独での原案提出は見送る。森友学園問題で与野党の対立は先鋭化しており、憲法審の日程や議題設定で主導権を握れるかどうかが今後の焦点となる。

     改憲原案は衆院で100人以上、参院で50人以上の議員の賛成があれば提出できる。自民党だけでも提出は可能だが、改憲を発議するには衆参両院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成が必要。その後の国民投票もにらみ、連立を組む公明党に加え、日本維新の会など野党の一部の賛同も取り付けたい考えだ。

     他党との改憲原案策定には、憲法審で改憲の目的や必要性などを説明することが不可欠となる。憲法審で議論するテーマは与野党協議で決まるため「平和主義」や「教育」など自民党の改憲4項目に沿った議題で合意できるかが最初の関門となる。

     議論が進展して改憲原案策定で他党と折り合った場合、協議は憲法審ではなく各党間で行う可能性もある。自民党は、たたき台に必ずしもこだわらず、柔軟に対応する構えだ。

     改憲原案の各党協議がまとまれば、それぞれ党内手続きに入る。自民党では憲法改正推進本部と総務会での了承が想定され、党議拘束もかける見通しだ。この後、賛同する党で改憲原案を憲法審へ正式に提出する運びとなる。


    22日【政流考】教育の「改憲」誰のためか

     自民党の憲法改正推進本部がまとめた「教育無償化」を巡る26条の改正案は、まか不思議だが、極めて重要な条文だ。

     まず、まか不思議な理由。「無償化」の看板で議論を始めたはずなのに、条文には「義務教育の無償」しか明記されていない。今の憲法と何も変わらない内容なのだ。

     「各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保」するよう「教育環境の整備に努めなけれはならない」という一文を加えているが、努力月標にすぎない。

     安倍晋三首相が昨年5月、9条とともに教育無償化を改憲の検討テーマに打ち出した。狙いは、大学までの高等教育無償花を改憲案として掲げる日本維新の会の協力を得るためとみられている。

     だが自民党内では慎重論が相次いだ。巨額の経費が必要。大学へ行かない人との間で不公平になる―などなど。結局、義務教育以外の無償化は見送られたという経緯だ。

     一方で、この改憲案には重要な一文がある。後段に盛り込まれた「(教育は)国の未来を切り拓へひらく上で極めて重要な役割を担う」という文言だ。

     教育は国の役に立つ人材を育成するためのものなのか―。

     今の憲法は一人一人の個人を尊重するという考えを根本に据えている。その理念に基づき、現行の26条は「すべて国民は…能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と規定、教育基本法は「人格の完成」を教育の目的に掲げる。

     根底にあるのは「国のために」と多くの犠牲者を出した戦争の反省だろう。1947年の憲法施行の際、全国の家庭に配布された冊子「新しい憲法 明るい生活」は「『国家のために』とか『国民全体のために』とかいう名目によって、私たちは…権利をふみにじられた」と記述している。

     「国の未来を切り拓く」という文言は、第1次安倍政権下での教育基本法の改正で、「国と郷土を愛する」という表現で愛国心が盛り込まれた際に前文に加えられたものだ。今回の改憲案が成立すれば、教育基本法の記述が憲法に「格上げ」されることになる。教育行政の重要な転換点になるのではないか。自民党の改憲論議の真の狙いは「無償化」ではなく、この一文を盛り 込むことだったのかとも思う。

     教育には社会の中での個人の役割を教える側面もあるだろう。国家の垣根が低くなったグローバル時代の教育の在り方も考える必要があろう。教育は誰のためか。真剣に議論すべき改憲案だ。(共同通信編集委員 川上高志)


    自民党の改憲4項目は、@9条への自衛隊明記A緊急事態条項B参院選「合区」解消C教育充実、というメニューで出来上がっている。このどれ一つとっても憲法をいじらなくてはならない項目だとはとても思えない。教育に関わって言えば、「友達に国境はな〜い」というキャッチフレーズに異議を申し立てた赤池議員が自民党の文教部会の会長だという驚きもさることながら、こうした人たちが「改憲」を主張していることの無節操さに震撼してしまう。安倍首相とそのチルドレン取り巻き政権での改憲は改めて「NO!」といわないといけない。


    3月21日 府教委 「教育権独立」政治介入か

     文部科学省が前川喜平前事務次官による授業内容の報告を名古屋市教育委員会に要請したのは、自民党の文教族議員2人からの照会が端緒だった。同省は「要請は主体的な判断」と強弁するが、教育基本法が定める「教育権の独立」が政治の介入で侵されたとの指摘もあり、教育行政への信頼が大きく揺らいでいる。

     文科省は当初、前川氏が名古屋市立中の授業に呼ばれたことを把握したのは、地元の中日新聞の記事を見たのがきっかけだったと説明。ところが、19日の野党合同ヒアリングで「外部からの問い合わせを受けて把握し、記事を取り寄せた」と説明を変えた。

     さらに林芳正文科相は20日、最初の問い合わせは自民党の赤池誠章参院議員からで、記事を文科省に提供したのが同党の池田佳隆衆院議員だったと明らかにした。ある文科省識員は「いつか公になることなのになぜ隠していたのか」と首をかしげる。

     20日夕の野党合同ヒアリング。野党議員が繰り返し2人の影響の有無を尋ねたが、文科省の担当者は「要請は主体的な判断」「圧迫は受けていない」と繰り返した。

     赤池氏は自民党文科部会の部会長、池田氏は部会長代理を務める。赤池氏は自身の照会が「圧力には当たらない」と強調するが、ある文科省幹部は「部会長は法案や予算に関し事前に意見を求める必要があるなど、役所にとって重要な存在。何か言われたら無視はできない」と打ち明ける。

     名古屋市内の学校でかつてPTA会長を務めた池田氏は、文科省の質問を事前に見て二つの意見を付けた。当初から質問内容は細かかった上、変更後には動員の有無を尋ねる質問が加わった。林氏も「圧力を与えかねない」と認めたほどで、池田氏の意向が強く働いた書きぶりだった可能性がある。

     文科省の別の幹部は「池田氏は前川氏の行動に強く憤っていたようだ」と証言。組織的天下り問題で引責辞任した前川氏は、安倍政権批判を繰り広げた。「前川氏の授業だっただけによほど強硬に対応を求められたのではないか」と話した。

     地方教育行政法は、文科相が学習指導などに指導助言ができると規定。文科省はこの条文から、今回の要請を「問題ない」と主張する。ただ、教育基本法は、教育が「不当な支配に服することなく」と定めており、個別の学習内容に国は口を出さないというのが「常識」(文科省職員)のはずだった。


    赤池氏 国、郷土愛が理念

     自民党の赤池誠章参院議員(比例)は、政治家としての理念を「郷土や国を愛する心を持った日本人を一人でも多く育てること」としている。

     甲府市出身の56歳。松下政経塾を経て、山梨1区から出馬した2005年の衆院選で南関東ブロックで復活し初当選。その後、参院にくら替えして現在1期目。党副幹事長や文部科学政務官、参院文教科学委員長を歴任した。

     現代は政治が混迷し、経済が停滞しているとし「問題の根底には、歴史観と国家意識の欠如、自主独立の精神の喪失があるのではないか」と主張。参院憲法審査会では、憲法はGHQに押し付けられたものであるとし、「現行のまま放置することは恥であり、後世から叱責(しっ せき)を受けかねない」と発言した。


    池田氏 安倍チルドレン

     前川喜平前文部科学事務次官が名古屋市立中の授業で講演した経緯について、文科省に照会していたことが判明した自民党の池田佳隆衆院議員(51)。2012年の衆院選で、愛知3区から初当選、以後2回は比例復活。自民党では文科部会に所属する「安倍チルドレン」 の一人だ。

     ホームページ(HP)で06年に安倍晋像三首相(当時官房長官)との面会を紹介。「日本の経済、雇用、 賃金が回復するのを目の当たりにした」とアベノミクスを称賛している。15年6月、報道機関に圧力をかけて言論論を封じようとする議論が噴出し、問題となった自民党若手議員の勉強会に出席していた。HPによると、父親が起業したした化学薬品メーカーを引き継ぎ、名古屋青年会議所理事長、日本青年会議所(JC)会頭などを務めた。


    いよいよ安倍政権の構造的な欠陥が随所に噴出してきたという気配が濃厚になってきた。教育に対する右派的な批判はこれまでもあったが、今回の(安倍首相が言う「美しい日本」に現れている)問題点は決して右派的なものではなく、単に時代錯誤的な(日教組VS文部省)イデオロギーをなぞっただけのものに過ぎない。「道徳教育を強化すれば日本は良くなる」というほど単純な社会構造でなくなっている事の認識すら持ち合わせていない赤池、池田両氏の教育論に驚く。


    3月21日 大阪高裁 朝鮮学園の補助金 不支給支持

     大阪府内の朝鮮学校を運営する学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市)が、大阪府と市による補助金の不支給決定の取り消しと支給義務づけを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は20日、請求を棄却した一審大阪地裁判決を支持、学園側の控訴を棄却した。学園側は上告する方針。

     高裁判決などによると、橋下徹氏が府知事時代の2010年に、北朝鮮指導者の肖像画の撤去など4要件を提示。府と市は翌11年度、要件に満たないとして不支給を決めた。松田亭裁判長は判決理由で、要件の規定を行政による裁量の範囲内と判断、「要件に満たず支給しなかったにすぎず、学園の教育自体を制限するものではない」とした。


    不当判決というよりは、見識の浅い判決といべきだろうか。外国人学校に対する補助金の制度は、外国人の子ども達の教育を保障するためのものであって、それを政治的な視点でもって左右する事ではないはず。これは国際人権条約を持ち出すまでもなく常識に属するものである。


    3月20日 働き方改革 府内校続々挑戦

     学校現場での長時間労働が課題となる中、独自の働き方改革に取り組む学校が出てきている。一定の時間に退勤する日を設けたり、保護者らに夜間の電話を控えるように依頼したりして負担軽減につなげている。ただ教育委員会や現場からは「通常の業務量が膨大なため、現場の力だけでは解消にはほど遠い」との声も漏れる。

     「後輩とご飯を食べに行きます」「帰って走ります」。3月上旬。日がまだ昇る午後5時すぎから、次々と教員が職員室を出て行った。校長と教頭を除く最後の一人が帰宅したのはちょうど5時半だった。

     向日市の向陽小では昨年6月から、月瞳日は午後5時半に必ず退勤する「ハッピーマンデー」を設定した。緊急時の対応として校長と教頭は6時まで待機し、帰宅する。以降の電話は市教委が受け、必要に応じて学校側に連絡する。

     「最初は迷惑そうな顔をされたり、もっと仕事がしたいと言われたりした」と山本岳校長は苦笑する。「先生たちは見通しを持って仕事をするようになり、定着した」と話す。

     教員の働き方が問われている。京都府教委が昨年10月に実施した京都市を除く公立学校の勤務実態調査では、「過労死ライン」とされる月80時間超に相当する残業をする教諭の割合が小学校で52・4%(全国平均33・5%)、中学校で72%(同57・6%)だった。小中ともに授業準備に割いている時間が高かった。

     同小では会議の効率化や休日行事の見直しも同時に進める。だが昨年9月から独自に導入したタイムカードで府教委の調査と同じ10月分をまとめたところ、府内平均よりは低いものの4割超が80時間を超えた。

     山本校長は「趣味や自己研鑽の時間を持ち、人間性を広げることで豊かな教育につながる。業務量の問題はあるが、しっかりと進めたい」と力を込める。

     保護者や地域の協力を得て、業務改善を図る学校もある。同市の第4向陽小では、昨年8月末から午後7時以降の緊急時を除く電話を控えるよう保護者らに呼び掛けた。遅い時間の電話対応が、教員の負担になっていたからだ。学校だよりで理解を求めたところ、それまでは午後8時すぎまで鳴っていた電話はぴたりと止まった。鐘ケ江達郎校長は「作業効率が良くなった」と負担減を実感している。

     府教委は少人数教育を実施し、国の基準より多い教員を配置してきた。それでも、ただでさえ膨大な業務量に加え生徒児童への丁寧な個別指導が求められるようになっている。教科化される小学校の英語などの準備で、さらなる負担増大が予想される。

     府教委は新年度から始める3年間の実行計画を策定し、教員以外の専門スタッフの配置充実や学校運営の見直し、意識改革などを盛り込んだ。時間外勤務の20%縮減など数値目標を設定している。

     実行計画は保護者や地域との協力も方針として定めており、学校側の努力だけにとどまらない取り組みが欠かせない。いかに計画に実効性を持たせられるかを含め、抜本的な働き方改革が迫られている。


    これまで府教委は府立高校についてだけの調査を行っていたが、近年義務制学校への取り組みを重視するという方向に転換してきていた。昨年の実態調査はその現われで数字だけの検討から実際の業務改善に向けた取り組みの段階に入っている事は高く評価できる。一方の京都市教委は、その数字すら明確になっていない。現場と一体となった働き方改革というイメージがイマイチ湧いてこないのは何故だろう。


    3月20日 舞鶴市 いじめ対策委、各校に

     舞鶴市の市立中学校で昨年6月、校舎から2年の女子生徒が飛び降り重傷を負った問題で、調査委員会(委員長・松浦善満龍谷大教 授)の会合が19日に市役所で開かれた。全市立小中学校で学校いじめ防止対策委員会の月1回以上の開催や飛び降り問題の調査報告書 の活用を盛り込んだ市教育委員会などの再発防止策を了承した。

     防止策では、市教委は各校に対策委開催後の文書での報告を義務付け、未設置だった第三者機関「市いじめから子どもを守る会議」を常設する。調査報告書は教職員に配布し研修で使う。飛び降りがあった中学校は女子生徒の学校復帰のためプロジェクトチー ムを立ち上げ、いじめアンケートの取り扱いを見直す。

     会合後の記者会見で松浦委員長は「再発防止について市教委と学校は積極的に取り組んでいる」と評価。佐藤裕之教育長は「学校と連携を密にしていきたい」と述べた。調査委員会の第三者専門部会は5日に調査報告書を発表し、いじめが飛び降りの原因の一つに当たると認定した。



    3月19日 【続報】 自民議員が文科省照会

     文部科学省の前川喜平前事務次官が名古屋市立中の授業で講演した内容を、同省が名古屋市教育委員会に報告するよう求めていた問題で、この報告要請の前に、地元の自民党衆院議員が文科省に、前川氏が授業に招かれた経緯などを複数回問い合わせていたことが18日、政府関係者への取材で分かった。

     文科省は16日に開かれた野党6党の合同ヒアリングで、外部から照会があったことは認めたが、誰からだったかは「控えたい」とした上で「あくまで文科省初等中等教育局の判断で調査を決めた」と強調した。ただ、与党議員からの照会が市教委への報告要請の前だったことから、同省の判断に影響した可能性もある。

     この議員は自民党の文部科学部会に所属し、文教政策と関わりがある。

     前川氏は昨年1月に文科省の組織的天下り問題で引責辞任した後、学校法人加計学園の獣医学部新設を巡る問題で「行政がゆがめられた」と公に発言するなど、安倍政権に対する批判を繰り広げている。

     前川氏が講演した中学校の授業は2月16日にあり、翌17日に地元紙が内容を報じた。文科省は、この記事をきっかけに前川氏が講師 として招かれていたことを把握したと説明。今月1日、学校が前川氏を招いた理由や授業内容を細かく尋ねる15項目の質問をメールで名古屋市教委に送った。

     初中局は当初、調査に関して文科省の政務三役には相談せず、12日になって林芳正文科相に報告。林氏はその際「メールの表現ぶり にやや誤解を招きかねない部分もあった」として、初中局長を口頭で注意した。


    財務省の文書改ざん問題で揺れる政権だが、この問題も同質の問題を感じざるを得ない。18歳選挙権引き下げに際して「政治的な中立」を理由に「逸脱」を市民に監視するように求めた自民党のHPがあったことを思い出す。教育を恣意的に扱おうとする姿勢は極めて危険な考え方だろう。支持率が30%台に低落した安倍政権を擁護する一部のマスコミなどは、「劇場型」として証人喚問を批判しているが、こうした問題も含めての「安倍NO」であることは間違いない。


    3月16日 文科省 前川氏授業の報告要請

     文部科学省の前川喜平前事務次官が名古屋市立中に講師として招かれた際の授業内容や録音について、同省が市教育委員会に報告を要請していたことが15日、分かった。文科省は「問題ない」としているが、国が個別の授業に絡み、講師の言動に関わる内容を細かく調べるのは異例で、批判の声も上がりそうだ。

     文科省や市教委によると、2月に前川氏がこの中学の校長に招かれ、総合学習の時間の講師として全校生徒や地元住民らに授業をした。内容は生き方やキャリア教育、夜間学校についてだったという。

     報道でこの授業を知った文科省は今月、市教委に対しメールで、前川氏が文科省の組織的天下り問題で引責辞任したことや、「出会い系バー」に出入りしていたと報じられたことに触れた上で、授業の内容や目的、講師を依頼した経緯、学校の見解など10項目以上を質問。授業内容の録音データもあれは提出するよう要請した。

     市教委は、録音データは出さず、学校がまとめた回答を文書で報告した。これに対し文科省は、前川氏が天下り問題に主体的に関わって処分を受けたことを事前に確認していなかったのでは、との指摘を送ったという。

     教育関係の法律では、学校教育に対して指導や助言をするのは主に教委で、国の役割は学習指導要領など、全国共通の教育基準を作ることや、教育条件の整備と想定している。文科省の担当者は今回、個別の授業内容を調査したことに対し「事実関係を確認しただけで、内容に口を出したわけではない。問題はなかった」としている。

     前川氏は昨年1月に発覚した天下り問題で、文科事務次官を引責辞任した。同5月に加計学園を巡って「総理の意向」などと記された記録文書の存在が明らかになると、記者会見で「公正、公平であるべき行政の在り方がゆがめられた」と発言し、国会にも参考人招致された。


    藤田英典共栄大教授(教育社会学)の話過剰干渉、萎縮招く

      授業内容が保護者から問題視され、さらに教育委員会のレベルでは対処できない場合ならまだしも、今回のケースは明らかに過剰な干渉だ。授業内容が知りたいのなら、前川喜平氏本人に聞けばいい。文部科学省が現場に問い合わせれば萎縮を招く。現場の裁量権を抑圧しようとする意図すら感じる。天下りの問題はあったかもしれないが、元文科省職員として経験豊富な人物を呼んだことに目くじらを立てる必要があるとは思えない。


    前川氏のマスコミでの発言や講演開に対するあからさまな干渉というほかはない。アクティブラーンニングなど子ども自らが考える学習を求める新しい学習指導要領は、なによりも現場の意向と意欲を大切にしなければならないはず。それを「圧力」をかけることで潰すことは引けなければならないはず。また、新教育基本法でさえ「政治の不当な介入」を禁止している。ここでも官邸への「忖度」が横行しているのか。


    3月15日 京都市 小学校跡地に住友商事がホテル

     2011年に閉校した元白川小(京都市東山区)の跡地活用事業で、市は15日、事業契約の候補者に決まった住友商事(東京都)と基本協定を結んだ。同社は、伝統工芸品を内装に使う「ミュージアム・ホテル」をコンセプトにしたホテルを新築する計画を提案中で、21年度の開業を目指す。

     中京区の市役所で協定締結式を行った。門川大作市長は「伝統を生かしながら新たな文化をつくる拠点にする」、同社の南部智一専務執行役員は「京都市のますますの発展に尽くしたい」と述べた。

     同社の計画によると、地上5階地下1階、延べ約1万2800平方メートルの建物を建設する。「宿泊施設棟」に客室数約200室のホテルのほか、伝統工芸品を展示販売するギャラリーショップが入る。「自治活動棟」は体育館や地元自治会の活動スペースに充てる。

     今後、市と同社、地元住民が協議を進めて合意形成を図り、正式契約を目指す。


    学校の統廃合により跡地利用が話題になっている。弥栄中学校の跡地が漢字ミュージアム(日本漢字能力検定協会)や貞教小学校が京都美術工芸大学東山キャンパス(二本松学院)などがある。白川小学校(有済・粟田が統合)は清水小学校のホテル利用に次ぐ2例目となるが、開睛館に統合された時点で地元住民は「ホテルだけはダメ」と京都市の動向を警戒していた。観光を重視する政策の下で住民の福祉環境が悪くなっていく東山区の象徴的な事業に見える。


    3月14日 スポーツ庁 部活 平日は2時間

     スポーツ庁の有識者会議は13日の会合で、国公私立中学校での適切な運動部活動の運用に向けた指針案を了承した。学期中は1日の活動時間を平日2時間、休日3時間程度までとし、週2日以上の休養日を設ける。長時間化による生徒の負傷リスクを避けるのが狙いで、高校の部活動にも原則適用。3月中に同庁が指針を公表し、全国の自治体や学校などに通知する。

     部活動の休養日を巡っては、1997年に当時の文部省が「中学は週2日以上」などと目安を示したが、国が活動時間の上限を示すのは初。学校の高い目標設定などで過熱しがちな部活動に歯止めを設けることで、多忙な教員の働き方改革につながることも見込まれる。ただ、競技志向の強い生徒や期待する保護者もおり、一律の適用には慎重論も根強い。

     指針に法的拘束力はないが、今後、教育委員会や学校にはこの内容を参考にした具体的な活動方針作りが求められ、スポーツ庁が取り組み状況を定期的にフォローアップすることになる。

     指針は「学期中、少なくとも平日1日、週末1日を休養日とする」と基準を提示。週末が大会で休めない場合は他の日に休養日を振り替える。

     外部指導員の活用や科学的トレーニングの積極的な導入のほか、少子化の進行を踏まえ、学校単位の運営から一定の地域単位の活動へと移行することも視野に入れるべきだと明記。複数校の生徒が合同で参加し、地域のスポーツクラフで活動する形態など、学校と地域が融合したスポーツ環境の充実を進めるとした。


    かつての学校5日制で土曜日が休みになったが、子どもの「ゆとり」には使われずに塾や部活の時間となった。同じことが起こる可能性もある。つまり学校での部活が終わった後に地域のスポーツクラブに通うということ。おそらくそうした考え方の根っこにあるのは「オリンピクアスリート」に対する視線だろう。スポーツを楽しむこととの意義をまずは教育委員会・学校が子どもや親に説く必要がある。


    3月9日 京都府 保育士にキャリアパス

     京都府は、保育士の就労を支援するため、磯位証明書「キャリアバス」を導入した。中堅保育士を対象に三つの職位を新設し、それぞれの役割や責任、必要な研修など8項目を定めた。キャリアアップのための基準を明確化し、労働意欲を高めるとともに、保育土木足の解消にもつなげる。

     府によると、都道府県単位で保育士の本格的なキャリアパスを導入する取り組みは例がないという。民間園から導入を促し、公立園や認定こども園にも順次働き掛ける。

     保育士の職位は、各園が自主的に決めている。通常は園長、主任保育士、一般保育士の3階級に分けている図が多いが、園ごとに基 準が異なることから他の園で働く場合に従来のキャリアが十分に生かせず、人材の流動性向上を妨げる一因になっていた。

     新たに導入するキャリアパスでは、主任保育士と一般保育士の間に副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーをそれぞれ設 け、5階級とする。

     求められる業務として、一般保育士はクラス担当や保護者の相談・援助など9項目を挙げ、職務分野別りーダーにはさらに一般保育士の指導や上司への報告を加えるなど仕事の内容を明確化した。

     必要な技術・知識も示し、園長と主任保育士に大規模自然災害時の対応や人事考課、副主任保育士と専門リーダーには苦情の解決 や地域との関わりなどを求めた。

     職位ごとに上乗せする手当を明記し、国が本年度から実施している処遇改善の加算分を活用して給与に反映させる,

     府は16年11月に京都市や府保育協会、市保育園連盟などとワーキング組織を立ち上げ、協議を続けていた。


    保育士の処遇改善は必要なことで、これまでも非正規職員の処遇改善のために厚労働が「キャリアパス」の導入を進めていた。思い出すのはかつて教員の位階制導入として「5段階給与制」が議論された事がある。結果的には「主幹教諭」の導入などによって決着するのだが、「教育において位階制は必要がない」との議論はうやむやのうちに終わったとの印象が強い。非正規教員の処遇改善を図るならこうした「キャリアパス」制度が有効かもしれない。同時に「5段階給与制」での議論を再考しなければならないかもしれない。


    3月7日 政府 教育に拉致映像活用

     政府が若い世代に北朝鮮による日本人拉致問題への理解を深めてもらうため、拉致被害をテーマとした映像作品を活用した授業を小 中高校で積極的に実施するよう求める通知を都道府県知事や教育長らに7日、出したことが分かった。拉致問題を題材にした政府主催の作文コンクールへの応募などを促した。政府筋が明らかにした。加藤勝信拉致問題担当相と林芳正文部科学相の連名。拉致問題で複数の閣僚が通知を出すのは異例だ。

     拉致問題への関心が低いとされる若年層に拉致の実相を伝えるとともに、問題を風化させないとの意思を北朝鮮に示す狙いがある。通知は「一人でも多くの児童や生徒に拉致問題に関心を持ってほしい」と強調した。

     具体的こま、横田めぐみさん=失踪当時(13)=の拉致事件を取り上げたアニメ「めぐみ」を活用するよう要請。今秋に実施する教員が対象の研修への参加を呼び掛けた。研修は粒致被害者との懇談などを通じて拉致問題の深刻さを教員に知つてもらい、授業に反映するよう促すのが狙いだ。


    北朝鮮による拉致は許し難い行為である事は言をまたない。しかし、それへの解決は極めて政治的な問題であることも事実である。日朝関係をどう構築するかまた在日韓国朝鮮人に関わる懸案をどう解決するかということとは次元の違う問題である。朝鮮学校への私学助成や高校無償化などの差別的な行政を放置したまま、政治課題である拉致問題を教育に持ちこむ事は改正された教育基本法の下でも教育への政治的介入の疑いが濃い。


    3月6日 公立高入試中期 全日制1.06倍 制度変更後最低

     京都府教育委員会と京都市教委は5日、7日に実施する公立高入試の中期選抜の志願者数を発表した。分校を含む全日制54校の志願者は前年度比3・0%減の7299人となり、志願倍率の1・06倍は入試制度を変更した2014年度以降で最も低くなった。

     全日制学科別の志願者数と倍率は、普通科が6710人で1・08倍、専門学科が530人で0・94倍、総合学科は59人で0・52倍だった。

     志願者が募集人員を下回ったのは38学科で、前年度より8学科増えた。

     志願者の減少について府教委高校教育課は、今回から前期選抜で山城通学圏の募集割合が一部を除く普通科で引き上げられたことをはじめ、少子化や私立学校志向の増加が影響したとみている。

     最も倍率が高かったのは、京都工学院のプロジェクト工学科ものづくり分野と同科まちづくり分野がいずれも2・27倍だった。城南菱創普通科の1・81倍や綾部東分校農芸化学科の1・78倍が続いた。

     中期選抜は第2志望など最大で3校まで書けるため、現時点で募集人員に達していなくても定員割れになるとは限らない。

     定時制11校の志願者数は前年度比47人増の224人で、志願倍率は0・08ポイント増の0・41倍だった。



    3月5日 名古屋市 小学校の部活動全廃へ

     名古屋市は5日の市議会本会議で、市立小学校の「部活動」を2021年度に全面廃止すると明らかにした。ボランティアで指導に当たる教員の負担軽減が狙い。

     市によると、部活動は40年以上前に市独自の取り組みとして始まった。現在は市内の全261小学校で行われ、全体のほぼ半数に当たる約2800人の教員が放課後に野球やサッカーなどを指導している。教員の自主活動との位置付けだが、昨年の市の調査では、多くの教員が1カ月当たり約30時間を充てていた。

     主に4〜6年の児童が対象で約7割が参加しており、市は部活動以外の形式で、教員が関わらずに活動を継続できないか検討する。


    中学校での部活が注目されているが、小学校の部活もかなり問題がある。名古屋市の決断は評価できる。京都でも事情は同じで、運動部だけではないく音楽系の部活もかなり大きな教員の負担となっている。地域活動として展開することや指導員の配置など早急な改善策が求められる。


    3月4日 自民提言案 中学部活、学校から地域に

     自民党のスポーツ立国調査会(会長・馳浩元文部科学相)は、運動部活動の抜本改革に関する緊急提言案をまとめた。少子化の影響で学校単位での部員確保が難しくなっているとして、学校主体の部活について、全国の中学校などを拠点に住民主体の地域スポーツクラブを創設して移行させていくのが柱。今月上旬にも林芳正文料相に提出する方針だ。

     2020年の東京五輪・パラリンピック後もにらみ、運動を継続するため、部活と地域スポーツの一体化を進めることが必要だと判断した。

     学校教育の一環として「厳しい」とのイメージもある部活を、スポーツの楽しさを追求する活動にしたいとの考えもある。

     提言案では、部員確保難のほか@教員の多忙化による部活顧問のなり手不足A競技経験のない場合、専門的指導が困難B強制的な練習参加でスポーツ嫌いとなる例―を指摘。

     具体的な改革案として、一部既存の民間クラブの改組も含め、各地の中学校などに、住民らが運営する地域クラフを設け、学校の部活との統廃合を図る。クラブの運営基盤強化へ法人格の取得を進める。指導者の質の担保に向けて国家資格創設を検討し、部活動に熱心な教員に地域スポーツの指導者との兼業を認めることなどを挙げた。

     全国中学校体育大会の参加資格を見直し、多くの大会で複数校による合同チームや地域スポーツクラフが参加できるようにすべきだとの内容も盛り込んだ。


    この自民党案は馳元文科相の持論を成案化したもので評価できるものだ。また、「部活動に熱心な教員」のやるきを確保する目配りを見せているが、勤務校での指導員ではなく住居地での指導員とするなど勤務との非連続性を求める措置も必要だといえる。


    3月2日 文科省調査 日教組の組織率22・9%

     昨年10月1日現在の日教組の組織率は前年より0・7ポイント減の22・9%で、過去最低を更新したことが2日、文部科学省の調査で分かった。1977年以降、41年連続の低下。日教組以外を含めた教職員団体全体の加入率も1・1ポイント下がり34・1%となった。加入率が高い世代の定年による大量退職で、全体の加入率が下がったとみられる。

     調査は大学と高専を除く公立学校の常勤教職員約102万5千人を対象に実施。教職員団体に加入しているのは約34万9千人で、このうち最も加入者が多い日教組は前年から約7千人減の約23万5千人だった。


    「団塊の世代」の退職が続く中で労働組合の組織率もどの組合においても下降傾向にある。かつて日教組VS文部省といわれた時代にあっては「組織率が下がる」ことは教育行政にとっては喜ばしい事であった。しかし、現在では実のところこのことが「悩みの種」となっている。働く側がなにをどう考えているのかが労働組合での「訓練」を受けていない管理職には理解できないからだ。つまり学校現場のパワハラ・セクハラなどの不祥事や労働時間管理の杜撰さなど社会的にみても非難される行為が横行する原因の一つにもなっているということなのだ。もしかするとこれから管理職を目指す人は組合加入すべきだという流れが生まれるかもしれない。


    3月2日 府教委 残業月80時間超 中学7割

     京都府教育委員会は、京都市を除く公立学校教員の勤務実態調査を初めて実施し、結果をまとめた。「過労死ライン」とされる月80時間超に相当する残業をする教諭の割合を、同じ調査方法の全国平均と比較すると、小学校で52・4%(全国平均33・5%)、中学校で72%(同57・6%)といずれも大きく上回っていることが分かった。

     調査は昨年10月に、教員の約1割に当たる1100人を無作為に抽出して行った。勤務実態についてのアンケートと月〜日曜日の連続した7日間の業務記録から分析した。1週間当たりの学内総勤務時間が60時間を超えた場合、月80時間超の残業になるとして換算した。

     最も多かった週当たりの学内総勤務時間は小学校では55〜60時間未満の25・9%、中学では65〜70時間未満が21・8%だつた。残業の1カ月平均では、小学校約86時間(全国約70時間)、中学校約105時間(同約93時間)となり、深刻な職場環境が浮き彫りとなった。

     特徴として土日の勤務時間が長かった。小学校は全国より1時間23分長い2時間30分で、中学校は57分長い4時間19分。自宅に持ち帰っての業務は全国と比べて約50分短いが、登校して働いている実態が判明した。小学校では授業の準備、中学校では部活動・クラブ活動が要因となっている。

     小中学校以外で「過労死ライン」を超えた教諭は高校で38%、特別支援学校では31%だった。

     改善に向けて1日には働き方改革の実行計画を策定した。府教委教職員企画課は「時間に余裕ができて教職員の人間性がより豊かになれば、子どもへの教育にも良い影響がある。教委としては環境整備を進めるので、先生たちは意識を変えててほしい」としている。


    府教委目標 残業20%減・20時退勤100%

     教職員の負担軽減策を検討する京都府教育委員会の「教職員の働き方改革推進本部」が1日、京都市上京区の府庁で会議を開き、新年度から取り組む実行計画を策定した。府立学校や京都市を除く各教委に通知し、問題となっている長時間勤務の是正を目指す。

     実行計画は「学校運営・指導体制の充実・強化」「専門スタッフの配置促進」「『勤務時間』を意識した働き方の推進」など8項目の方針で構成する。これを実現するために、部活動指針の策定や教委が主体となった業務改善、出退勤時間の記録をはじめとした方策を盛り込んでいる。

     2017年度を基準に20年度までの3年間で達成すべき数値目標も定めている。「教員の時間外勤務を.20%縮減」「残業したとしても原則午後8時までの退勤を100%達成」などを掲げている。実行計画は3年をめどに見直す。

     昨年の調査で、京都市を除く府内の公立小中学校の教員は、全国平均より長時間勤務している実態が明らかになった。本部長の小橋秀年教育次長は「計画を作って終わりではなく、結果を出すことが大切。進捗状況をチェックし、各教委と課題を共有しながら進めていきたい」と話している。


    超勤削減に向けた具体的目標を上げての検討という方向は評価できる。「空白の1日」解消とあいまって教職員の働き方が問題となっている状況はまさに「千載一遇」のチャンスというべきだろう。実に50年近く教員の勤務条件を縛ってきた「給特法」の廃止こそが本丸であることも労使双方が改めて認識すべき事柄であろう。 


    3月1日 府教委 「雇用しない1日」解消へ

     京都府教育庁は、学校の講師などの臨時職員について、年度末に1日だけ雇用しない日を設けることで、法律で禁止された連続した更新にならない形にして任用を繰り返してきましたが、臨時職員にボーナスが減るなど不利益が生じているため、来年度から雇用しない日を設けず連続して任用することを決めました。

     地方公務員法では、臨時の職員を任用する際は6か月を超えない期間としていて、更新の際も6か月を超えない期間で一度だけと定めています。

     このため、府の教育庁は学校の講師などについて、3月31日に1日だけ雇用しない日を設けることで法律で禁止された連続した更新にならない形にして、長年、臨時職員の任用を繰り返していました。

     臨時職員は府内におよそ1800人いますが、1日雇用されない日があることで夏のボーナスが15%程度減るなどの不利益が生じていました。

     こうした中、国が平成26年に連続した任用であっても雇用しない日を設ける必要がないという判断を示し、府の教育庁は、来年度からは雇用しない日を設けず臨時職員を連続して任用することを決めました。

     これによって夏のボーナスは満額支給され、退職金も増える見通しだということです。

     府教育庁教職員人事課の村山和久課長は、「処遇を改善し、教育に専念できる条件を整えたいとの思いから空白期間を解消することにした」と話しています。(NHK京都)


    いわゆる「空白の1日」の解消は、総務省の通達を実現する事を要望してきた非正規雇用の常勤講師にとって悲願とでも言うべきものだった。これまで労働組合はこの問題を解決するために大きな努力してきたことは評価すべきだろう。2日付京都新聞によると京都市教委は新年度から対応するという。ちなみにアップ額は、3月31日分として平均1万4千円、ボーナス分では平均9万3千円となる。