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  • 【新連載 3回目】高校のゆくえ
  • 大学進学率69.8%過去最高.24
  • 看護師賃上げ、分配に力点.25
  • 「過労死の撲滅へ 国は積極対策を」.25
  • 小中学生の体力低下鮮明.25
  • 子どもの貧困 教育影響.25
  • 超富裕層1%資産4割占有.27
  • 公立高付属中 3校で前年度より増加.28
  • 就学援助支給率8年連続で減少.28
  • 12月28日 文科省調査 就学援助支給率8年連続で減少

     全国の小中学生のうち、経済状況が厳しい家庭に学用品代や給食費を補助する就学援助制度の支給対象者の割合が、2020年度は19年度より0・1ポイント減の14・42%だったことが、文部科学省の調査で分かった。減少は8年連続。

     文科省は、前年度の家計収入などで支給が決まることが多いため20年度の就学援助率は新型コロナウイルスの影響が大きく出ず、感染拡大前に景気が上向きだったことなどが要因と分析。コロナ禍で家計が急変した世帯は増えたとみられ、全国の教育委員会に相談体制拡充を求めている。

     対象者は1万8863人減の132万4739人で、9年連続で減った。都道府県別の就学援助率は、高知が25・88%で最も高く、次いで沖縄24・13%。低いのは山形7・06%、静岡7・81%などだった。京都は17・13%、滋賀は12・10%。

     就学援助は、生活保護を受給する「要保護」世帯と、自治体が生活保護に近い状態と認定した「準要保護」世帯が対象。都道府県教委を通じて市区町村教委からの報告をまとめた。


    通常は支給率の減少が現在の景気状況を反映しているのだろうが、今回の調査発表にはタイムラグがあることを見ておく必要がある。25日の記事にもある「子どもの貧困」は深刻な状況にあるのだから。


    12月28日 府・市教委 公立高付属中 3校で前年度より増加

     京都府と京都市の両教育委員会は27日、公立高付属中5校の2022年度入試の志願者数を公表した。志願者数はこれまで少子化などの影響で減少傾向だったが、3校で前年度より増えた。

     府立では洛北高付属中(左京区、定員80人)の志願者が前年度比35人増の268人で、倍率は3・35倍となった。園部高付属中(南丹市、同40人)は9人増の57人で、倍率は1・83倍、福知山局付属中(福知山市、同40人)も1人増の73人で、倍率は1・83倍だった。

     一方、南陽高付属中(木津川市、同40人)は9人減の119人で、倍率は2・98倍だった。京都市立の西京高付属中(中京区、同120人)も24人減の417人が志願し倍率は3・48倍だった。

     府教委は「前年度は新型コロナウイルスでできなかった学校説明会などが今年はできたため一部で志願者が増えたのではないか」とみている。

     5校とも入試は来年1月15日、合格発表は同19日にある



    12月27日 国際研究 超富裕層1%資産4割占有

     世界上位1%の超富裕層の資産が今年、世界全体の個人資産の37・8%を占めたことが、経済学者ら100人超による国際研究で分かった。下位50%の資産は全体のわずか2%だった。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ景気への刺激策で株式などの資産価値が急騰、格差が一段と広がった。

     特に最上位の2750人だけで3・5%に当たる13兆ドル(約1490兆円)超を占め、富の集中は鮮明。研究報告書は「不平等は今後も広がり続け、巨大な水準に達する」と懸念し、富裕層や巨大企業への課税強化が不可欠だと訴えた。

     日本も富の分布は「西欧ほどではないが非常に不平等だ」と指摘した。

     報告書はフランスの経済学者トマ・ピケティ氏らが運営する「世界不平等研究所」(本部・パリ)が26日までに発表した。超富裕層の富の増え方を長期間にわたって分析しており、報告書にまとめるのは4年ぷり。

     それによると、世界の成人人口のうち上位1%(約5100万人)の資産占有率は2019年には37・1%で、2年連続で減少していたが、その後の2年で0・7ポイント上昇した。対象を上位10%に広げると21年は75・5%に達し、19年よりもO・4ポイント増えた。一方、下位50%(約25億人)は19年が2・02%、21年も2・03%にとどまった。

     日本は19、21年とも上位1%が24・5%、下位50%は5・8%でコロナ前後の変化はなかった。ただ1980年代から収入格差が広がっているとした。

     世界全体で過去約30年間に増えた資産の38%を上位1%が得ていたことも判明。二酸化炭素(CO2)排出量でも上位1%の人が、全体の排出量の17%を占めていた。

     労働で得た収入に占める男女比を分析したところ、賃金格差や家事負担の不平等を背景に女性の割合は35%にとどまった。日本は28%で、先進7力国(G7)で最低。中国(33%)や韓国(32%)も下回った。

     報告書は各国公表の国民所得や税務統計などを基に、国際比較できる共通指標で分析した。


    「1%vs99%」という表現で富の偏在が語られて久しいが、コロナ禍での政府対策が結局富裕層にだけ恩恵をもたらしたという研究結果だった。HIS子会社やパソナなどの企業スキャンダルを待つまでもなく、庶民の実感として政府の施策が「下位50%」には及んでいないこととのエビデンスでもある。加えて、「女性活躍社会」と見えを切った安倍政権下でも、女性は不平等を強いられていることが分かる。自殺者数の女性割合の増加傾向の裏付けでもあるだろう。


    12月25日 政府初の調査 子どもの貧困 教育影響

     政府は24日、子どもの貧困に関する初の実態調査結果を公表した。貧困世帯の4割近く、ひとり親世帯では3割が食料が買えない経験があった。子どもが大学進学を目指す割合も全体より低い。ひとり親世帯など貧困世帯の子どもが、生活や教育面で影響を受けている実態が浮き彫りになった。新型コロナウイルス禍も追い打ちを掛けている。

     調査報告書は、親から子への「貧困の連鎖」のリスクが裏付けられたとしている。

     調査は今年2〜3月、中学2年生とその保護者5千組を対象に実施。有効回収数は2715組。中間的な年収の半分(約159万円)を下回る世帯を「貧困世帯」と位置付けた。

     現在の生活について尋ねたところ、全体では「苦しい」「大変苦しい」を合わせて25・3%だったのに対し、貧困世帯は57・1%。ひとり親世帯は51・8%に上った。食料について過去1年で「買えなかった経験があった」と回答した貧困世帯は37・7%、ひとり親世帯は30・3%だった。

     教育面では「大学またはそれ以上に進学したい」と回答した子どもは、全体では49・7%だったのに対し、貧困世帯は28・0%、ひとり親世帯は34・4%にどまった。親の収入状況から、進学を諦めているケースもあるとみられる。

     調査報告書は「収入の水準が低い世帯やひとり親世帯ではコロナの影響で、生活がさらに厳しくなっている可能性がある」と指摘した。

     政府は自治体に対し、今回の調査手法を活用し、地域ごとの実情把握や支援強化への取り組みを求める。


    【子育て家庭を支援する認定NPO法人「キッズドア」の渡辺由美子理事長の話】直接的支援議論を

     国による初の実態調査で、困窮が食事や生活、学習、メンタル不調など多くの困難につながっていることが可視化された意義は大きい。多くの人が「日本には食事ができない子どもなんていない」と思っているが、現実に存在していることを知ってもらいたい。ひとり親家庭の子の学習時間が少ないのは自己責任ではなく、家が狭い、親が子の面倒を見られないなど環境の問題が隠れている。政府は居場所づくりなどを進めてきたが、今後は現金給付や児童手当など直接的な支援を増やす議論を進めるべきだ。


    貧困世帯、頼れる人少なく

     子どもの貧困に関する実態調査からは、貧困世帯やひとり親家庭は子育てや金銭面で頼れる人が少ない実情が浮かび上がった。公的な支援制度の存在を知らない、手続きが分からないため利用できずにいる家庭も一定割合あり、適切な情報提供が求められそうだ。

     子育てに関する相談で「頼れる人がいない」は回答した子育て世帯全体の3・9%だった。これに対し、中間的な年収の半分(約159万円)を下回る貧困世帯では「いない」が5・1%、ひとぴ親家庭では7・7%と割合が高くなっていた。いざという時のお金の援助についても「頼れる人がいない」も全体の13・3%に対し、貧困世帯27・7%、ひとり親家庭29・3%と高く、孤立を深めている可能性を示した。

     公的支援制度を利用していない理由を貧困世帯に尋ねたところ、「利用したいが、今まで制度を知らなかった」と「手続きが分からない、利用しにくい」を合わせた回答が、家計が苦しい小中学生の学用品代を補助する「就学援助」で計10・3%、「生活困窮者の自立支援相談窓口」で計9・6%。「母子家庭等就業・自立支援センターは計13・6%に上った。


    貧困家庭で福祉の制度を「知らない」あるいは「利用しづらい」と考えるのはなぜだろう。おそらく「福祉」ということばの裏側にひそむ自己責任論が無言の圧力にあっているのではと思う。現在連載中のコミック『健活(健康で文化的な最低限度の生活)』柏木ハルコは必読書かも。


    12月25日 スポーツ庁 小中学生の体力低下鮮明

     スポーツ庁は24日、小学5年と中学2年全員が対象の2021年度全国体力テストの結果を公表した。新型コロナウイルス感染拡大で20年度は中止となり、実施は2年ぶり。持久走や上体起こしなど実技8種目を点数化した体力合計点は小中の男女とも前回19年度から下がり、体力低下が鮮明となった。男子はいずれも過去最低を記録した。

     スポーツ庁は、コロナ下で学校活動が制限され、児童生徒の運動時間が減少したためと分析。スマートフォンやゲーム機を利用する時間と肥満割合の増加に拍車が掛かったことも要因に挙げた。担当者は「効果的な体育の授業方法を手引にして普及するなど、運動意欲を向上させる取り組みを促したい」としている。

     体力合計点(80点満点)の平均値は、小5が男子52・5点(19年度53・6点)、女子54・7点(同55・6点)。中2は男子41・1点(同41・6点)、女子48・4点(同50・0点)だった。

     種目別では、全身を長時間使う持久走の落ち込みが目立ち、中2の男子(1500メートル)は7・2秒、女子(千メートル)は7・7秒それぞれ遅くなった。上体起こしや反復横跳びも回数が軒並み減り、50メートル走は中2男子以外で記録が下がった。長座体前屈はおおむね向上しており、家庭などで柔軟運動を取り入れやすかったとみられる。運動習慣の調査では、1日1時間に相当する「週420分以上」運動する割合がいずれも減少した。特に男子が顕著で、小5は3・6ポイント減の47・8%、中2は4・5ポイント減の77・6%だった。

     身長と体重から算出し肥満とされた割合は、小5男子13・1%、小5女子8・8%、中2男子10・0%で、いずれも過去最多。中2女子も7・1%に増加した。全国体力テストでは近年、特に女子で体力上昇傾向が続いていたが、19年度に小中の男女とも一転して下落。スポーツ庁はスマホなどの普及で外遊びが減っているとみて、運動機会を増やすよう呼び掛けていた。


    【武藤芳照東大名誉教授(スポーツ医学)の話】家庭や地域でも対策を

     体力合計点が低下したのは、子どもを取り巻く社会環境が極端に変化したことが要因と考えられる。デジタル化の加速に加え、新型コロナウイルス対策で多くの「自粛」が求められた。肥満の増加は、身体機能を維持・発達させるための運動量が足りていない可能性を示しており、対策は喫緊の課題だ。社会全体で重く受け止め、学校だけではなく家庭や地域でも「体を動かすことが楽しい」と思えるような働き掛けを増やす必要がある。


    府内結果も前回下回る

     京都府教育委員会は24日、2021年度全国体力テストの府内公立小中学校(京都市立含む)の結果を公表した。全8種目を点数化した体力合計点は、調査対象の小学5年、中学2年ともに前回(19年度)を下回り、全国平均よりも低かった。府教委は「新型コロナウイルスの影響で運動時間が減少したため」とみている。

     種目別では、50メートル走は中2男子のみ平均7・93秒と前回よりやや速くなったが、小5男子は9・28秒、女子は9・54秒、中2女子は8・77秒と前回よりやや遅くなった。ただ、いずれも全国よりは速かった。

     中2男女の持久走は、前回より遅くなったが、全国は上回った。握力、上体起こし、反復横跳びはいずれも全国を下回った。

     コロナ禍前後での運動時間は、中2女子で「減った」が49・4%、「増えた」が22・7%だった。テレビやスマートフォン、ゲームの映像を視聴する「スクリーンタイム」が平日1日2時間以上の割合は、中2男子で75・9%と前回より4・4ポイント増えるなど、増加傾向がみられた。

     また運動が好きな割合が小5、中2とも前回より低下しており、府教委は「体育の授業を楽しくするなどして運動を好きにし、体力向上にっなげたい」としている。


    今時子どもの体力の問題をオリンッピクと結びつける考えはないと思うのだが、スポーツ庁はこの結果をどう受け止めるのだろうか。デジタル化による経済成長を目指してきた政策には問題はないかったのだろうか。コロナの影響はあるにしても、GIGAスクール構想でのプログラミング教育や小学校の英語教育の必修化によって、「塾通い」を促しては来なかったのだろうか。来年発足が予定されている子ども家庭庁ではこうした問題をどう解決しよとするのか注目せざるを得ないだろう。 。


    12月25日 母親手記 「過労死の撲滅へ 国は積極対策を」

     広告大手電通の新入社員高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働やパワーハラスメントに苦しんだ末、自殺してから25日で6年となり、母幸美さん(58)が手記を公表した。若者や働く女性の自殺が増加しているとして「国は自殺防止、過労死などの撲滅に取り組んでほしい」と訴えた。

     2020年度、精神障害による労災認定は608件で、2年連続で過去最多を更新。幸美さんにも会員制交流サイト(SNS)を通じ「会社でパワハラやサービス残業があってつらい、死にたい」といった相談が寄せられる。「悩んでいる人はどうかSOSを出して。娘のようにぎりぎりまで頑張ちないでほしい」と呼び掛けた。

     トヨタ自動車やパナソニックなどの大企業で過労やパワハラによる自殺が相次ぎ「憤りを感じている」。飲酒運転やあおり運転の罰則が強化されたように「労働基準法違反やパワハラなどに対し法整備の強化を望む」とした。

     新型コロナウイルス禍で「残業代が減り生活が苦しくなっているという声がある」と指摘。残業代がなければ生活が成り立たない賃金制度が長時間労働の原因だとして「国家レベルでの大きな改革がされることを望んでいる」と記した。

     11月、電通グループの社長交代が発表されたことに「トップが変わっても労働環境の改善に取り組み、社員の命と健康を最優先にした経営をすることを強く望む」とした。


    安倍政権下での「働き方改革」が、働く人の労働条件を改善したというよりもむしろ規制を取り払うことでその悪化をもたらしたと総括すべきだろう。過労死・過労自殺はそれと並行して増えてきたと数字は説明している。要因は様々ではあるものの、労使双方に内在している(社会的な通奏低音としてある)労働観の変革を行わなければならないだろう。それには「成長」による「分配」という詭弁のうちに潜む論理を否定する必要があるのでは。


    12月25日 22年度予算案 看護師賃上げ、分配に力点

     暮らしに関連する2022年度予算案は、岸田政権が掲げる中間層の所得拡大に向けて看護師や介護士、保育士の賃上げといった分配政策に力点を置いた。少子化対策や子ども関連の施策も強化する。一方、新型コロナウイルス対応に伴う歳出拡大で財政が厳しいことを受け、雇用保険料の引き上げなどで国民に負担増を求める。

     看護師の賃上げは、コロナ対応を担う医療機関の職員を対象に22年10月から3%程度(月額平均1万2千円)引き上げる。医療機関が人件費の原資として国から受け取る診療報酬は、理学療法士や作業療法士らの賃金引き上げにも活用できる。政府はこうした取り組みを民間企業の賃上げの呼び水にしたい考えだ。

     ただ診療報酬を医師とその他の職員でどう分配するかは医療機関ごとに決めているのが現状で、政府は確実に看護師らに恩恵が行き渡る仕組み作りを検討する。

     保育士や介護士は22年10月から3%程度(月額半均9千円)上げる。児童養護施設や放課後児童クラブの職員の処遇も同様に改善する。いずれも22年2〜9月の賃上げに伴う費用は既に21年度補正予算に計上した。  少子化対策として22年4月から不妊治療の保険適用を体外受精などに拡大する。現在は一部を除き保険が利かず、自己負担となっている。適用されれば原則3割負担で済む。

     子ども関連では、病気を抱える親や幼いきょうだいを世話する18歳未満の「ヤングケアラー」への支援を強化。小学校高学年の理科や英語など専門性の高い教科では「教科担任制」の推進に向け、公立小の教職員の定数を増やす。子ども関連施策の司令塔「こども家庭庁」の23年度設置に向けた準備費用や人材確保のための予算も計上した。

     失業手当などの財源となる雇用保険料の料率は22年10月から引き上げる。コロナ禍で雇用調整助成金の支給が急増したためで、労働者にとっては負担増となる。

     現役世代の医療費負担の上昇を抑制するため22年10月から、一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる。

     デジタル技術で地方の活性化を目指す「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、高齢者を対象にオンラインによる行政手続きなどに関する講習会も開催する。


    【教育関連予算】教員負担軽減に重点

     新型コロナウイルス対策などで多亡な教員の負担軽減や、授業の質向上のための体制強化に重点を置いた。小学校高学年での教科担任制推進で教員定数を950人増とするなど定数改善を行い、公立小中学校の教職員給与に充てる義務教育費国庫負担金は1兆5015億円を計上。消毒作業やプリント準備などを担うスクールサポート・スッタッフ拡充やg句集指導員配置に84億円を盛り込んだ。

     教育現場のデジタル化推進では、デジタル教科書の普及に23億円、授業での機器活用を補助するため自治体に設置する支援センター整備に10億円を確保した。

     文化関係では、アーティストの国際舞台での活躍支援や、子どもが芸術に触れる機会整備に計223億円を盛り込んだ。


    巨額の国債による歳入補填による予算編成が「失われた10年、20年」といわれる高度経済成長が終わりバブルが崩壊してから続いている。国債発行残高は1000兆円を超えるといわれている。こうした予算編成がいつまで続くのだろうか?日本国のデフォルトは起こりえないのであろうか?増税による負債の転換が国民にも及ぶのだろうか?など疑念がわく。その中で目を引くのは、防衛(?)関連予算の5兆4000億円だろう。確かにGDP比からみれば1%強で、高市早苗氏は「欧米並みにするなら2%」ということからすれば少ないともいえるのだろう。けれども問題はその質ではないのか。対中国を念頭に置いた「台湾有事」という考え方が、間違いなくアメリカの世界戦略と轍を一にするものだということだ。南西諸島での軍事作戦戦略がアメリカ軍と自衛隊の共同作業として作成されたこともふくめて、戦争回避を外交戦略とすべき方向を逆方向に向けている。そのための予算という側面をみておかないといけない。


    12月24日 府教委 大学進学率69.8%過去最高

     今年3月に卒業した京都府内の高校生(国立、公立、私立)の大学進学率は前年比2・Oポイント増の69・8%となり、過去最高となったことが23日までに分かった。6年連続で全国の都道府県の中では最も高く、府教育委員会は「生徒の希望に応じた進路指導をした結果だが、進学率よりも学ぶ目的意識を持って進学したかの質を重視していきたい」としている。

     卒業生は2万2049人(前年比492人減)で、このうち大学進学者(短大、高校専攻科含む)は1万5399人(116人増)だった。大学進学率は、私立高が75・9%、公立高が64・7%。専修学校への進学者は3033人(78人減)で13・8%、就職者は16 05人(259人減)で7・3%だった。

     都道府県別の大学進学率は京都府が最も高く、次いで東京都が69・O%、兵庫県が64・3%、大阪府が64・3%、神奈川県が63・1%と続き、全国平均は57・4%だった。

     府教委は「少子化で大学に入りやすくなり、全国的に進学率は高まっている。また京都は地元や近隣の大阪府、兵庫県にも大学が多く、進学がイメージしやすいことも背景にある」と分析している。

     文部科学省が実施する学校基本調査の確報値として府が発表した。


    「大学進学率過去最高」は朗報だろうか?追跡調査は難しいかもしれないが不本意進学や希望する就職が見つからないという代替進学も多くあるのではないだろうか。大学をモラトリアムと位置付ける教育もあるのかもしれない。


    12月22日 文科省 わいせつ教員200人処分

     わいせつ行為やセクハラを理由に2020年度に懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校などの教員は200人で、うち児童生徒らが「性暴力・性犯罪」の被害者だったケースは96人に上ることが21日、文部科学省の人事行政状況調査で分かった。過去2番目の多さだった19年度より処分者は73人減ったものの200人台は8年連続。文科省は「会員制交流サイト(SNS)での私的やりとりの禁止など一層の対策を進めていく」としている。

     文科省は、児童生徒らが被害者の場合は教育委員会に原則懲戒免職にすることを要請してきたが、懲戒免職となったのは96人のうち91人で、5人は停職にとどまった。

     教員の性暴力を把握した際の刑事告発の徹底も求めており、初めて状況を調査。教委の告発は16件で、既に捜査機関が情報を把握していたケースや教委以外の告発が87件だった。犯罪に当たらないとして告発しなかったのは30件、被害者らが望まず告発しなかったのが39件、その他は28件。文科省は「適正な告発がされておらず、周知徹底を図る」とした。

     性暴力などに関する処分は、免職113人、停職45人、減給17人、戒告3人で、訓告などは22人。全体の98%が男性だった。学校種別は幼稚園1人、小学校64人、中学校74人、高校53人、特別支援学校8人となった。

     京都府では訓告など1人、滋賀県は免職と停職がそれぞれ1人、京都市は免職が2人だった。

     具体的な行為は、「体を触る」68人、「性交」40人、「盗撮・のぞき」35人など。行為があった場面は勤務時間外が135人で最も多かったが、放課後と休み時間がそれぞれ18人、授業中も13人いた。

     体罰で処分を受けた教員は157人減の393人。精神疾患で休職した職員は5180人で298人減ったが、4年連続の5千人台だった。


    毎年の「人事行政状況調査」で分かることは、教職がほとんど魅力のない職業になっていくという実感。わいせつ行為は許されることではないのは明らかだが、抑止策をどう作るのかよりも処分で解決しようとしているように見える。また、精神疾患で休職した教員が5000人/年という数字は、現場の過酷な状況を反映しているものだろう。


    12月21日 政府 子ども家庭庁 23年度創設へ

     政府は21日、子どもに関連した施策の司令塔となる「こども家庭庁」の基本方針を閣議決定した。首相の直属機関と位置付け、内閣府の外局とする。他省庁への「勧告権」を持つ閣僚を置く。2023年度のできる限り早期の創設を目指し、来年の通常国会に関連法案を提出する。

     新型コロナウイルス禍では、子どもの自殺や虐待が深刻化し、少子化か加速している。政府はこうした事情を踏まえ、子ども政策を強力に進める。政策が各府省庁にまたがる「縦割り行政」の解消を掲げたが、教育分野は引き続き文部科学省が担うことになった。

     厚生労働省の児童虐待や障害児、内閣府の少子化や子どもの貧困などの対策を担う部署を移す。幼稚園での幼児教育や、小中学校の義務教育に関する権限は文科省に残す。担当閣僚には他省庁に政策の是正を勧告し、報告を求める権限を持たせる。対応が不十分な場合、首相に意見具申することができる。

     移管する職員数を大幅に上回る体制を目指し、自治体職員や現場で支援に取り組むNPO法人などの民間人材を登用する。

     いじめ対策では、文科省が重大事案の情報を教育委員会に報告させ、こども家庭庁と共有し対策を検討する。また保育所と幼稚園で共通の保育や教育が行われることを目指し、保育所保育指針や幼稚園教育要領を両省庁が共同で策定する。


    「子ども家庭庁」がどの程度実行力があるのかどうかはその建付けから不安要素が大きい。また、文科省と他省庁との管轄争いが起こることも予想できる。結局厚労省の子どもにかかわる業務が移管されるということに過ぎないとなれば、屋上屋を重ねることになる。


    12月21日 教科書検定 小説掲載教科書シェア首位

     来春入学の高校1年生から新たな必修科目となる「現代の国語」で、第一学習社(広島市)の教科書が波紋を呼んでいる。実用的文章を学ぶ科目で小説が多数掲載されたにもかかわらず検定に合格し、シェアでトップとなったからだ。「フィクションが入る余地はない」という文部科学省の事前説明に反する教科書に、小説の掲載を見送った他社からは不満が噴出している。

     「村上春樹も吉本ばななも駄目だ」。ある教科書編集者は、検定前の説明会で文科省の担当者が定番作品も認められないと強調したと証言。「小説を入れたら不合格になるという圧力を感じて、諦めた」と打ち明ける。

     2022年度から実施される高校の新学習指導要領では、現行の必修科目「国語総合」(4単位)が、「現代の国語」と小説や古典、漢文を学ぶ「言語文化」(各2単位)に再編される。「現代の国語」の指導要領解説は、実社会で必要な読解力を伸ばすために「読む」活動の題材に論説文やメールを想定し、「文学的文章を除く」と明記した。

     ところが今年3月、芥川龍之介の「羅生門」など小説5作品を載せた第一学習社の教科書が合格した。文科省によると、教科書検定審議会が当初「不適切」との意見を付けたため、小説は「読む」活動ではなく、感想をまとめるなど「書く」活動の一環に変更し、認められた。8月にはその趣旨を明確化する訂正申請をした。

     高校の教員には、「言語文化」では古典や漢文に時間が割かれるため、小説を『現代の国語』に含めてほしいとの声が根強い。第一学習社は現場の要望を踏まえ「チャレンジした」とした。

     業界団体の教科書協会は8月に「指導要領の規制に疑義が生じている」と訴える文書を文科省に提出。検定審は「今後はより一層厳格な審査を行う」との見解を公表した。

     文科省が今月発表した教科書の採択結果では、8社17点のうち、第一学習社の小説を掲載した教科書のシェアが16・9%でトップに。同社は「現場の声に応えるという編集方針が広く支持されたと考えている」とコメントした。

     別の会社の編集者は「第一学習社の教科書で指導要領に沿った学習ができるだろうか」と疑問を投げ掛け「“お客様”の先生に都合の良い教科書が売れ、生徒不在になっている」と嘆いた。


    驚きの検定結果?として、業界では受け止められているようだ。これまで、慰安婦問題を扱う際に「従軍」とついただけで検定を通らなかったということから考えればさもありなんということだろう。大学共通テストの失敗など高校再編を巡る問題はほとんど生煮え状態。この際中教審は、指導要領、検定方針など再考すべき時期に来ているとの認識からの議論をすすめるべきだろう。


    12月15日 政府・自民党 新組織名「こども家庭庁」

     政府、自民党は14日、子どもに関連した施策の司令塔となる新組織について、予定していた「こども庁」から「こども家庭庁」に名称を変更する方針を固めた。子どもだけでなく、親への支援を強調するため「家庭」を加えるべきだとする自民党内保守派らに配慮した形。複数の関係者が明らかにした。

     政府は、15日に開かれる自民党の会議で名称を含む組織に関する基本方針案を提示する。与党の手続きを経て、年内の閣議決定を目指す。来年の通常国会に法案を提出し、2023年度中の創設を想定している。

     自民党は12月、「『こども・若者』輝く未来実現会議」(座長・加藤勝信前官房長官)を2回開催し、基本方針案を議論した。7日の会議では複数の議員から、名称を「こども家庭庁」とするよう求める意見が出たが、結論は出ず、対応は加藤氏に一任された。

     自民党は15日に茂木敏充幹事長がトップを務める、上部組織の「『こども・若言輝く未来創造本部』を開き、修正された方針案を議論する。公明党は、10月の衆院選の公約で「子ども家庭庁」創設を掲げており、名称変更に異論はないとみられる。

     新組織を巡っては、自民党の有志議員が4月に菅義偉首相(当時)に「子ども庁」の創設を提言。その後、自民党内の議論を経て平仮名表記に変更し、政府も仮称として「こども庁」を使用してきた。親から虐待を受けた当事者には、名称に「家庭」を入れることについて抵抗感がある人もいる。


    【インサイド】削除一転「家庭」が復活

     子ども政策の新組織の名称を巡っては「家庭」を入れるかどうかで自民党内で変遷してきた。当初は「子ども家庭庁」を検討していたが、虐待を受けた当事者の意見を踏まえる形で、いったん「家庭」を削除した。最終的な議論で「家族の絆」を重視する保守派の意見が強まり、復活した。

     自民党では2月から、若手議員を中心とした有志が庁創設に向けた勉強会を開催。「子ども家庭庁」の名称を検討していた。だが、親から虐待を受けた女性がヒアリングで「虐待された子どもにとっては家庭は恐ろしい場所だ」とし、名称から外すよう要請。出席した議員が賛同し、4月に菅義偉首相(当時)に有志が創設を申し入れした際には「子ども庁」とした。その後、子どもに読みやすいようにと平仮各の「こども庁」に変更した。


    「家庭」をめぐっては、立憲民主党も「こども家庭省」という名称を使っていた。文科省と厚労省の権益を維持したままでの設置ではどこまで子どもの現状に迫れるのかについての疑念も多い。「家庭」が国の基本単位であるとの認識は時代にそぐわないことからその使用を外すした自民党の若手議員勉強会の議論はどう生かされるのだろうか。


    12月14日 京都地裁 長男殺害 猶予判決

     京都市左京区のマンションで昨年7月に総合支援学校高等部の男子生徒=当時(17)=が母親に殺害された事件で、殺人の罪に問われた無職坂山文野被告(54)の裁判員裁判の判決公判が13日、京都地裁であった。増田啓祐裁判長は「結果は重大だが、動機の形成過程には同情の余地が大きい」として懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)を言い渡した。

     判決によると、坂山被告は重度の知的障害があった長男りゅうさんの卒業後の就職先を探したが、見学施設の受け入れが困難で落胆。自身もうつ病で将来に絶望し、無理心中を決意し、2020年7月16日午後6時半〜17日午前1時15分ごろの間に、自宅マンションの居室で、りゅうさんの首をベルトのようなもので絞めて殺害した。

     坂山被告は起訴内容を認めており、事件当時の刑事責任能力が争点になっていた。

     検察側は、うつ病が犯行に大きく影響したものの、限定的ながら責任能力がある心神耗弱の状態だったとし、「厳しく非難できない 事情もあるが、悩みを抱え込まずに周囲に相談することは可能だった」とした。一方、弁護側は、うつ病は中等症とする医師の鑑定結 果は犯行前の生活状況からの診断で、犯行当日はさらに悪化して責任能力を問えない心神喪失だったと主張していた。

     判決理由で増田裁判長は「うつ病の影響で犯行を思いとどまる能力が著しく低下していた」とした上で、「犯行は妄想などではなく現実の問題に起因し、責任感が強く自分一人で問題を解決しようとする性格傾向も一定の影響を与えた」と指摘。犯行前後の行動からも正常な精神機能が残っていたとして、心神耗弱だったと判断した。

     判決言い渡し後、増田判長は裁判員や裁判官らの言葉として「自らの責任に向き合い、心の中のりゅう君との思い出を大切にこれからの人生を歩み続けてもらいたい」と語り掛けた。


    【インサイダー】公的機関の介入あれば…

     「りゅうには申し訳ないことをした」。知的障害のある息子を殺害したとして殺人の罪に問われた坂山文野被告は、消え入りそうな声で謝罪した。公判では、幾度かSOSを発したにもかかわらず、次第に追い詰められていった状況が明らかになった。

     坂山被告はシングルマザーで、重度知的障害のりゅうさんを一人で育てていた。りゅうさんは排せつや入浴、着替えなどに手助けが必要で、突然危険なこともするので常に見守りが欠かせなかった。友人は「全てを子どもにささげていた」と証言する。

     一方、りゅうさんは暴力を振うことがあり、被告は自分より体が大きくなった息子の育児に困難を感じていた。認知機能が低下した母と息子の折り合いが悪いのも悩みの種だった。

     持病のうつ病と強迫性障害も悪化。身長160センチの被告の体重は一時33キロまで落ち込んだ。さらに昨年7月にりゅうさんの進路先の候補として見学した福祉施設が条件に合わず、将来の見通しが持てないと感じた。

     坂山被告は福祉関係者にも進路の悩みを吐露している。犯行前日には学校での面談で教員に「体力の限界」としょうすいした様子で話した。法廷で精神鑑定医は「我慢強く責任感も強い」と証言したが、助けを求めるサインは出していた。

     生活保護を受け、りゅうさんも総合支援学校に通って障害福祉サービスを利用するなど、公的な支援にはつながっていた。ただ社会に支えられている実感は乏しかったとみられる。友人は「いろんな所に相談しても『お母さん頑張って』と言われて解決せず、徒労感を味わっていたようだ」と語っている。

     犯行当日。判決などによると、坂山被告は「悩みから解放されて楽になりたいと自殺を考えたが、自分の死後りゅうさんを託す先がないと考え、無理心中決意。苦しまないようにと睡眠薬を与え、眠ったりゅうさんの首をベルトでしめた。死亡を確認すると、口元のよだれをタオルで拭いて頬にキスし、身なりを整えてあげた。その後、近隣のマンションから飛び降りようとしているところ管理人に止められた。

     公判を傍聴した佛教大の田中智子整(障害者福祉論)は「生活保護担当や学校などの公的機関や医療は、なぜ生活状況を把握し介入しなかったのか」と疑問を投げ掛ける。  

    ある福祉関係者は「誰か一人でも、もう一歩この家庭に踏み込んで連携していれば、最悪の事態は防げたかもしれないと残念がり、「支援の在り方を見直さなければ、事件は繰り返される」と語った。


    語る言葉を失ってしまうような事件。しかし、あえてここで問題を考えなおしておく必要がある。そのために少なくとも二つの観点を心にとどめおきたい。一つは、脳性麻痺者で「青い芝の会」の指導者であった横塚晃一さんの著書『母よ!殺すな』は、母親による子どもの殺害に寛大な判決を求める「世間」の感情を殺される側として批判した。立岩真也さんが復刻版の解説を書いている。もう一つはフェミニズムの視点から「ケア」について考えるエヴァ・フェダー・キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』。現在のデモクラシーは自立した個人を基礎としているが、「みな誰かお母さんの子どもである」ことから「依存」することは避けられないと主張する。彼女は重度の知的障害を持つ子どもの母親の視点から、ケアの重要さを明るみに出そうとする。


    12月6日 国立大学法人 残業代未払い

     全国の国立大学法人で9億円近い残業代の未払いが生じていたことが共同通信の調査で明らかになった。国から法人に支給される運営費交付金が先細りする中、教員の残業が慢性化した付属校の現場に適正な賃金を回せない現状が浮き彫りに。一方、教員のなり手が減ったことに危機感を覚え、業務のスリム化に取り組んだ例も。勤務が深夜に及びがちな「不夜城」(識者)にも、変化が生まれつつある。

     「勤務開始前は登校の見守り、放課後は会議。空きこまがないので、夜にならないと授業の準備ができない」。国立大付属校の男性教員が勤務状況を明かす。

     残業が70時間ほどに及んだ月もあったが、給与明細書の「超過勤務手当」の欄はいつも空欄。土日も部活動の指導に当たる同僚は残業が月180時間を超えたこともあったが、労働基準法に基づく適正な残業代が支給されたことはないという。

     勤務時間に見合った残業代が支払われてこなかった背景には、大学側の厳しい懐事情もある。

     国の財政状況が厳しさを増す中、学生数や職員数に基づき支給される運営費交付金も漸減。最近は1兆円を辛うじて上回る程度しか支給されていない。大幅な収入増も見込めず、ある大学幹部は「教員を減らすか、学級を減らすか。そもそも付属校は必要かという意見も上がるが、まとまることはない」と明かす。

     国立大学協会は6月にまとめた提言で、交付金が削られていく現状を「研究の苗床が枯れつつある深刻な状況」と表現。「社会の負託に応えるため、増額は必須だ」と強く求めたものの、国は「人件費を含む運営費をどう工面するかは、大学の経営の問題だ」(文部科学省の担当者)との立場を変えていない。

     一方、専門家は、国立大特有の事情が長時間労働の慢性化を招いているとみる。

     教育研究家の妹尾昌俊さんによると、かつて国立大付属校で働くことは教員にとって「エリートコース」だった。先駆的な研究に取り組み、部活動でも結果を残し、教育学部の学生も指導する…。ただ妹尾さんは、こうした「欲張りさ」が過酷な職場を生んだと指摘。「前例踏襲の校務も多い。削減を進めるべきだ」と訴える。

     教員の人気低下に危機感を抱き、業務の効率化に取り組んだ付属校もある。埼玉大教育学部付属小(さいたま市浦和区)は、保護者らを対象に実施している学校生活に関するアンケートを電子化。集計が自動でできるようになり、教員の負担が大幅に減った。茨城大教育学部付属小中(水戸市)は緊急時を除き休日・夜間の電話対応を留守番電話に変更した。  

    大分大教育学部付属小(大分市)は、教員が自作していたテストの多くを2015年度から外注に切替え、会議も減らした。時松哲也校長は「疲れ果てていた先生たちが元気になり、子どもと接する時間も増えた。慣習を見直せば、現場は変えられる」と強した。


    【名古屋大の内田良准教授(教育社会学)の話】公立の給与体系見直せ

     法人化後の国立大学法人で残業代の未払いが横行していたとすれば、大問題だ。教員は残業をしても対価を支払うべき労働とみなされない現状がある。各法人は先進的な教育サービスが違法な労働環境の下で提供されている現実を直視し、教員の業務を精選すべきだ。一方、公立校の教員は国立大付属校と同程度の勤務を強いられながら、残業代が支給されなくても違法とならない「定額働かせ放題」状態となっている。公立校教員の働き方や給与体系も見直すべきではないか。


    【私学教員ユニオン代表の佐藤学さんの話】正当な対価求め声を

     学校現場では「教師は生徒のために尽くすものだ」という美徳意識が根強く、教員が労働者であることが軽視されがちだ。国立大付属校での残業代未払いは大きな問題で、現場の教員は「働いた分の対価を支払え」と労働組合で声を上げ、経営側に改善を促すことが有効だ。部活動の指導など、授業づくりや研究といった教員の本分とは直接関係のない業務が増えたことで、教育の質が劣化する恐れもある。業務の削減に積極的に取り組むことは、学生の「教員離れ」を食い止めることにもつながる。


    2004年の法人化に伴って公立校の教員に適用されてる「給特法」は、国立の付属校からは私学と同様に適用されなくなった。それによって労働条件は労基法に基づくこととなった。つまり労基法36、37条が適用されることになったが、現実には絵に描いた餅にすぎないことが分かった。働き方改革が文科省のおひざ元でも頓挫していることが明らかだということだろう。


    12月6日 厚労省 放課後デイなど再編へ

     障害のある子どもが通う「放課後等デイサービス」など障害児の通所支援について、厚生労働省は事業所を大きく二つのタイプに再編し、塾や習い事のようなケースは公費の支給対象から外す方針を固めた。利用できる日数の判定に自治体間で大きなばらつきがあるため、是正にも乗り出す。

     厚労省の審議会部会が5日までにまとめた中間報告案に、こうした方向性が盛り込まれた。来年の通常国会に児童福祉法改正案を提出する。主に2024年度からの実施を想定しているが、一部でこれまでの事業所に通えなくなり、利用者に影響が出る可能性もある。

     障害児の通所サービスは、未就学児向けの「児童発達支援」と、小中高生向けの放課後デイがあり、全国で計約40万人が利用している。

     保護者のニーズの高まりや、普及を図る国の方針を受け事業所数、利用者数とも近年急激に増えたが、利益優先の事業所や質の低いサービスの例が問題視されている。

     厚労省は認知・運動能力や、コミュニケーションなどの面からバランス良く発達を支援するよう促すため、事業所を「総合支援型」と、理学療法士によるリハビリなど専門性の高い「特定プログラム特化型」に再編。見守りだけの事業所のほか、学習やピアノなどに特化した塾や習い事のような支援は公費で賄う対象から外す方針だ。

     サービスを利用できる日数は、障害の状態などに応じて市区町村が判定しているが、平均で月に5日しか認めない自治体もあれば、20日以上認めているケースもあり、不公平感が出ている。

     厚労省は自治体の判断がばらつかないよう、支援の必要性を判定する指標を新たに定め、市区町村向けのガイドラインもつくる考え。

     現在は放課後デイの対象に認められていない専修学校などの生徒も利用を可能にするほか、親の就労支援の観点から長時間の利用をしやすくする。


    “除外”に事業所困惑の声

     障害児が通う「放課後等ディサービス」などを巡り、厚生労働省が塾や習い事のようなケースを公費の支給対象から外す方針を固めたことに対し、事業所からは「線引きはどうするのか」「必要としている保護者もいる」などと困惑の声が上がっている。

     厚労省の言い分は、こうだ。「一般の塾などは私費での利用が通常で、障害児の場合も本来、公費負担は適さない。障害者差別解消法に基づき、障害児が利用できるよう配慮する義務が2024年6月までに塾などにも課されるため、一般の塾で受け入れが進み、私費で通うのが望ましい」

     ただ大阪府内にある放課後デイ事業所の職員は「障害特性によって支援の仕方は違う。健常児しか受け入れていないところが、子どもの力を最大限引き出す対応ができるのか」と疑問を呈す。運動できるジムの機能を提供する東京都内の放課後デイは「近くに習い事のような事業所しかない地域もある。一律に駄目とするのはどうなのか。利用できなくなれば、保護者と子どもへの負担は大きい」と懸念する。

     「うちは音楽を取り入れながら総合的に発達を支援している。どう線引きするのか」と指摘するのは、都内にある別の放課後デイの施設長。

     厚労省が公費の支給対象を厳格化する考えの背景には、「テレビを見せるだけ」といった、ほとんど発達支援をしない利益優先の事業所の参入を防ぐ狙いもある。「質の向上が必要なのは理解できるが、理念を持って運営しているケースは実態をよく見て判断してほしい」と求めた。


    公的な領域を民間に開放することでのジレンマをここに見ることができる。新自由主義的な政策を進めてきた自・公政治の矛盾が露呈しているともいえる。岸田内閣が「新しい資本主義」を表明しているが、「コモン」(宇沢弘文的には社会共通資本)をどのように見ていくのかが問われるだろう。