日本新聞協会は26日、第5回NIE(教育に新聞を)教育フォーラムをオンラインで開催した。民法改正で4月から成人年齢が18歳に引き下げられることをテーマに、政治参加に向けた主権者教育の重要性や、新聞が果たす役割について専門家らが議論した。 高校教諭の経験がある明治大の藤井剛特任教授は、今後の学校教育に関して「キーワードは『自分事』。政治と生活との関連を実感してもらうための授業が必要だ」と強調。 若者の投票率向上に取り組む学生団体「ivote」副代表で中央大1年の小泉のの花さんは、教師が口を挟まず生徒が自由に討論するドイツの政治教育を紹介し「日本にも導入できれば、主権者教育が前進するのではないか」と話した。 ![]() |
政府は25日、教員免許に10年の有効期限を設ける教員免許更新制を廃止するための関連法案を閣議決定した。更新制の規定を削除する教育職員免許法政正案の施行日は7月1日。今国会で成立すれば、この日以降に期限を迎える教員は更新講習の受講といった手続きが不要になる。 文部科学省は2023年度から更新講習に代わる新たな研修制度を始めるとしており、教育公務員特例法改正案に関連規定を盛り込んだ。教育委員会に対し、各教員の研修受講記録の作成を義務付ける。休職して大学院で学んだ内容も含む。校長には、教員の経験や適性を踏まえ、受講すべき研修について助言するよう求める。 教員免許更新制は、第1 次安倍政権だった07年の法改正により、09年から導入された。期限前の2年間のうちに30時間以上の講習を修了する必要があり、教員の多忙化の一因とされていた。人材確保に影響を与えて教員不足につながっているとの指摘もあり、文科省が廃止を決めた。 ![]() |
政府は25日、子ども政策の司令塔「こども家庭庁」を2023年4月に創設する法案を閣識決定した。新型コロナウイルス禍で虐待や貧困、少子化といった問題が深刻化しており、省庁の縦割りを解消し一元的に対応する狙いがある。今国会での成立を目指す。 首相直属機関で、内閣府の外局として設置。他省庁に政策の是正を求めることができる「勧告権」を持つ担当閣僚を置く。担当閣僚は、省庁の対応が不十分との意見を首相に述べられる。 厚生労働省や内閣府から、子どもや子育てに関わる主な部署を移す。幼稚園、小中学校の教育分野は文部科学省が引き続き担う。「こども家庭審議会」を設け、子ども関連政策を審議。子どもや若者の考えの政策反映を狙い、審議会の場や会員制交流サイト(SNS)を通じ意見を聴く。 いじめ対策では文科省が教育委員会から重大事案の報告を受け、こども家庭庁と共有。両省庁で対策を検討する。保育所の指針と幼稚園教育要領も共同で策定する。新たに、小学校入学前の子育てに関する指針を作る。 性犯罪の加害者が保育や教育の仕事に就けないようにする「無犯罪証明書」制度を検討。支援が要る家庭に市町村や民間団体の側から赴く支援を充実させる。 法案は「子どもが自立した個人として健やかに成長できる社会の実現」をうたい、子どもの意見を尊重し、最善の利益を目指すことを、こども家庭庁の任務に掲げた。 ![]() |
京都府教育委員会は24日の府議会予算特別委員会で、府立大(京都市左京区)の付属高の開設を検討していることを明らかにした。既存の府立高を付属高にする考えといい、同大学が2024年度に目指す学部・学科の再編と歩調を合わせて準備を進める方針。 府教委によると、付属高の開設は、「府立高との連携を強めたい」とする府立大から提案された。開設されれば、府立大の教授が授業で教えるなど、より大学教育を見据えた学びを進められるという。 ただ、付属高化する府立高の選定や今後のスケジュールなどは未定。府立大は文学部、公共政策学部は残し、農学食科学、理工情報学、環境科学の3学部を新設する再編を計画しており、府教委は「生徒募集に関わるため、付属高の仕組みや要件などを整理していきたい」としている。 他府県では、すでに兵庫県立大付属高(上郡町)があるほか、奈良県立大付属高(奈良市)が今春に開校を予定している。 ![]() |
国立大付属校の労務管理に関する文部科学省の初の調査で、国立大が法人化した2004年4月以降、昨年末までの間、京都教育大など24法人で教員の残業代に当たる時間外労働の割増賃金計約15億5578万円が未払いとなり、労働基準監督署から是正勧告や指導を受けていたことが22日、分かった。法人化で変更された賃金の適用法令に対応していなかったためとみられ、各法人がさかのぼって支給した対象者は66の付属校で計2952人に上る。 文科省によると、国立大付属校の教員は04年以前、公立校の教員と同様に「教職員給与特別措置法」の適用対象で、時間外勤務手当の代わりに月額給与の4%に当たる『教職調整額』が支給されていた。未払いがあった法人の多くは、04年以降は労働基準法に基づく割増賃金の支払いが必要になるとの認識が不足し、教職調整額相当の手当のみの支給を続けていた。 調査によると、金額が最多だったのは、466人に未払いがあった広島大の2億8500万円。次いで高知大の2億7046万円(188人に未払い)、三重大の1億5926万円(78人に未払い)が続いた。 勧告などを受けた24法人とは別に、岩手大、秋田大、富山大、金沢大、愛媛大の計5法人も教職調整額に相当する手当のみを支給する仕組みを続けており、未払いの疑いがある。 文科省は22日、これらの法人は自己点検して未払いが判明すれば速やかに支給し、他の法人も適切な労務管理を徹底するよう要請した。国立大付属校を巡っては昨年12月、少なくとも20法人で教員の残業代未払いがあったことが共同通信の調べで判明。これを受け、文科省は付属の小中高校などを設置する55法人を対象に実態調査を進めていた。 ![]() |
京都府教育委員会は22日、府内(京都市を除ぐ)の全ての公立小中高校と特別支援学校を対象に2学期に実施したいじめ調査の結果を公表した。いじめの認知件数は9265件と前年同期より2・2%減少。京田辺市と綾部市で状況が深刻な「重大事態」がそれぞれ1件あった。 認知件数は小学校が8240件と前年同期より2・6%減少、中学校は787件と2・6%増加、高校は162件と3・6%減少、特別支援学校は76件と7・3%減少した。調査した児童生徒全体に対する認知件数の割合は、小学校は14・3%、中学校は2・7%、高校は0・6%、特別支援学校は4・5%だった。 重大事態のうち、京田辺市では中学生が学級内で複数の生徒からからかいを受けたり、悪口を言われたりしていじめを受け、不登校になった。綾部市では、中学生が人間関係からいじめに遭い、不登校になった。いずれも30日以上の不登校になったため、いじめ防止対策推進法の重大事態に当たるとみて調査している。 小学校でのいじめの内容で最も多かったのは、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」で4637件、次いで「軽くぷつかられたり、遊ぷふりをしてたたかれたり、蹴られたりする」が2215件だった。 府教委は「調査で把握し切れていない状況もあると見て、いじめの未然防止や早期発見に努めたい」としている。 調査は府が独自に年2回、1学期と2学期に実施している。認知件数は、「嫌な思いをした」なども幅広くいじめと捉えて集計している。 |
政府は21日、子ども関連施策の司令塔「こども家庭庁」の目玉政策として、性犯罪の加害者が保育や教育の仕事に就けないようにする「無犯罪証明書」制度の導入の検討に入った。教員やベビーシッターらによるわいせつ事件が相次ぎ、保護者から導入を求める声が高まっていた。一方で「加害者の厚生を妨げる」と懸念する声も出ている。 子どもへの性犯罪を防ぐため「無犯罪証明書」制度を検討する政府方針に、保護者や関係団体から歓迎の声が上がっている。一方、刑法の専門家からは「人権やプライバシーの観点から問題があり、加害者の社会復帰を妨げる」との意見も。賛否両論あり、制度設計が難航する可能性がある。 無犯罪証明書の導入を求める機運は、2020年、ベビー・シッター仲介サイトを運営する「キッズライン」(東京)に登録していた男2人が強制わいせつ容疑などで逮捕された事件をきっかけに高まった。被害者家族や子育て支援団体が、署名集めや政府への要請活動に取り組んできた。 認定NPO法人「フローレンス」(東京)の前田晃平代表室長は「わいせつ事件を起こした教員が、ベビーシッターに転職できるのが今の日本の制度だ」と指摘。現行制度では教員は文部科学省、シッターは厚生労働省や内閣府と管轄官庁が異なるため「行政の縦割りで犯罪の実態すらつかめていない。横串を通す制度が必要だ」と訴える。 前田氏は、英国にならい、子どもに1日2時間以上のサービスを提供する職種に就こうとする人は性犯罪歴がないことを条件とする制度が必要だと強調する。「加害者は子どもと関わる仕事から遠ざかることによってヽ性犯罪の再犯を防ぐことができる」と話す。 甲南大の園田寿名誉教授(刑法)は「加害者を社会から見捨ててしまうことにもなりかねない」と疑問を呈し、性犯罪歴の情報漏えいの危険性や、対象になる性犯罪の定義のあいまいさといった課題を指摘する。また、子どもに関わる仕事は塾講師や家庭教師、キャンプのボランティアなど多岐にわたり、対象職種の決定も難しいとする。 政府関係者は「人権が絡む問題。民間の採用を国が制限できるのかなど課題は多い」と指摘。制度の設計には時間がかかるとみている。 英国では、政府系機関が性犯罪歴がないと書類で証明している。この機関はDBS(Disclosure and Barring Service )と呼ばれ、岸田文雄首相は1月の施政方針演説で「こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で性犯罪歴の証明を求める『日本版DBS』を進める」と表明した。2月7日には、野田聖子こども政策担当相に対し、庁発足を待たずに検討を加速させるよう指示した。 英国では書類を提出しなければ子どもに接する職業には就くことができない。こども家庭庁はこうした取り組みを参考に検討を進める。 わいせつ行為やセクハラを理由に2020年度に懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校などの教員は200人に上った。ベビーシッターや保育士による性被害も続出している。これまで文部科学省や厚生労働省など省ごとに免許取り消しなどの対策を取ってきたものの、子どもに関わる職業への転職を防ぐことが難しいと指摘されている。 保護者らからは「性犯罪歴がある人は、子どもと関わる仕事から締め出すべきだ」との声が出ている。一方、有識者からは人権やプライバシーの観点から「刑を終えた加害者の更生を妨げる」と不安視する意見もある。 ![]() |
文部科学省と厚生労働省、内閣府は21日、5〜11歳の子どもが新型コロナウイルスワクチンの対象になったことを受け、接種を行う上での留意点をまとめ都道府県などに周知した。これまで対象だった中高生と同様、学校などでの集団接種は同調圧力が生じる懸念があるため推奨しないと強調。実施する場合は、小学生以下は保護者らの同伴を必須としている。 文科省によると、学校や保育園などでの集団接種は子どもの判断が友人らに左右される恐れがあり、教職員らが接種後の体調不良に対応することも困難だという課題がある。 留意点に関する文書によると、地域の医療体制では個別接種が難しく、自治体が学校などで集団接種を行う場合、@子どもや保護者への丁寧な情報提供A放課後や休日などに実施B副反応に応急対応する体制整備―といった対策の徹底を要請。中高生は保護者の同意文書のみで接種を可能としているが、小学生以下は保護者か親族の付き添いが必要だとしている。 集団接種の実施有無にかかわらず、接種したかどうかが差別やいじめにつながらないような指導が重要だと指摘。接種は強制ではないことや、接種を希望しない判断も尊重されることを教えるよう求めている。 ![]() |
京都市は、日常的にきょうだいや家族の世話をしている18歳未満の子ども「ヤングケアラー」の実態を把握するため、市立校に通う中高生や一人親世帯、支援者らを対象にした初の調査結果をまとめた。「世話をしている家族がいる」と答えた中学生は5・4%(約18人に1人)、高校生が3・5%(約28人に1人)。このうち約6割が家族の世話について相談した経験がないと答え、悩みを抱え込みがちな現状もうかがえる。 調査は昨年7〜10月に実施し、市立中高の全生徒(約3万3千人)のうち中学生2万966人、高校生2684人から回答を得た。また、総合支援学校を除く小中学校など市立全236校や、一人親世帯(回答数2334人)、支援者らにも調査した。 家族の世話をしていると答えた中学生は1142人(5・4%)、高校生は94人(3・5%)。世話をしている家族の内訳は、中学生は「きょうだい」(54・8%)、高校生では「父母」(48・9%)がそれぞれ最も多かった。「祖父母」は、中学生が13・4%、高校生が21・3%。世話の内容は中高生とも「家事」の割合が高く、祖父母に対しては「見守り」や「外出の付き添い」が多かった。 家族の世話の頻度は「ほぼ毎日」が中学生で41%、高校生で36・2%。1日当たりでは「3時間未満」が中高生とも約3割を占め、「7時間以上」はともに約2%だった。影響面では約半数が「特にない」としつつ、「宿題や勉強の時間か取れない」 「睡眠が十分に取れない」「自分の時間が取れない」との回答が一定数あり、中学生で14・9%、高校生で18・1%が「きつさを感じている」と答えた。 世話の状況について誰かに相談した経験がないのは63%で、うち約7割が「誰かに相談するほどの悩みではない」と回答。他にも「相談しても状況が変わると思えない」「家族のことのため話しにくい」などの理由が挙がった。 ヤングケアラーに関する京都市の調査で、家族の世話に追われ、息苦しさを感じている子どもの実態の一部が明らかになった。一方、家庭内の問題で表面化しにくい上、置かれている状況が一様でないなど課題も多く、支援の必要性を見極める上での難しさが浮き彫りになった。 小中学校など市立全236校への調査では、学校側が確認できたとするヤングケアラーと思われる児童・生徒数は計438人。全体のO・5%にとどまり、1校あたり平均1・86人だった。学校が課題と捉える設問では「実態把握が難しい」が大勢を占め、「子どもや家族がヤングケアラーという問題を認識していない」も半数を超えた。 また、要保護児童世帯や障害者世帯などを支援する団体への調査でも「子どもは置かれている状況を客観的に把握できない場合がある」「ヤングケアラー状態の子どもは隠す傾向にある」などの意見が目立ち、改めて周囲に気づかれにくい特性をはらんでいることが分かった。 中高生の回答では、学校や大人に助けてほしいことについて「特にない」が大多数を占め、相談した経験がない理由は「誰かに相談するほどの悩みではない」が圧倒的に多かった。市は「打ち明けにくさに加え、過度な負担になっているという自覚が子どもたちにない可能性もある」と指摘。ヤングケアラーの認知度を高め、「子どもが相談しゃすい環境づくりを進める」としている。 一方、学業や生活に支障をきたすほどの負担を強いられているケースや、自発的に家族の介護や家事に取り組んでいる場合など、ヤングケアラーという言葉でひとくくりにはできない実情もある。一連の結果を考察した社会学などを専門とする3人の有識者は「ヤングケアラーに特化してというより、貧困、虐待など総合的課題に対応できる態勢を構築した方がよい」などの意見を市に寄せている。 「こども相談24時間ホットライン」の短縮ダイヤルは#7333。 ![]() |
京都府と京都市の両教育委員会は18日、新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置延長を受け、現在行っている教育活動や部活動の制限を継続する方針を示した。府教委は新たに、部活動の練習はなるべく個人や少人数で実施するよう府立学校(高校、高校付属中、特別支援学校)に求めた。 府教委は、3月6日まで、部活動は2時間以内などとしている教育活動の制限を継続する。部活動以外での教育活動で学級や学年間の交流はできる限り避けるよう新たに要請した。 京都市教委も現在、市立高で2時間以内、小中学校は原則中止としている部活動の制限などを当面続けると決めた。他人に感染させる可能性がある期間に登校した陽性の児童生徒が1人でもいればこの児童生徒の最終登校日の翌日から5日間(土日含む)学級閉鎖する方針も継続する。 市教委によると、新型コロナによる3学期(1月6日〜2月15日)の学級閉鎖数は小中高校と総合支援学校で1608学級と、全体(幼稚園含む4002学級)の40・2%に上る。市立学校・幼稚園での感染者は253校園、計6323人(児童生徒5794人、教職員529人)。現在、濃厚接触者を特定する疫学調査は、行動履歴資料の提出から2日後には完了しているという。 |
今春卒業予定で就職を希望する高校生の2021年12月末時点の就職内定率は91・4%だったことが18日、文部科学省の調査で分かった。前年度は新型コロナウイルスの影響で日程が1ヵ月遅れ、単純比較できないが、企業の採用選考解禁から同じ3ヵ月半後の21年1月末時点と比べると2・Oポイント減で、2カ月前の調査より減少幅は縮まった。文科省の担当者は「公務員試験の結果などが反映されたため」と分析している。 コロナ禍前の19年12月末時点の内定率(92・0%)に迫る水準。コロナ禍で不振の観光業から、好調な建設・製造業へと進路を変える動きもあるとされることから、文科省は年度末に向けて内定率はさらに上昇するとみる。就職希望者は前年度より1万3617人減少しており、同省の担当者は「不振な志望業界を諦め大学や専門学校に進むケースも増えているのではないか」と話した。 調査は全国の国公私立高を卒業予定の99万8751人のうち、就職を希望する14万7435人を対象に実施。13万4727人が内定を得た。男女別では男子92・5%、女子は89・6%だった。 学科別では工業が96・7%で最も高く、商業94・6%、農業93・7%が続いた。 都道府県別では、最も高いのは富山で98・3%、次いで三重96・5%、岐阜と山口96・4%の順。沖縄71・3%、神奈川83・3%などが低かった。京都は89・1%、滋賀は92・1%だった。 ![]() |
新出生前診断の対象を全妊婦へ拡大し、検査を受けられる施設を増やしていくとの指針を、日本医学会の運営委員会が18日公表した。現在は対象外の35歳未満の妊婦でも情報提供や遺伝カウンセリングを受ければ認定施設で検査を受けることが可能になり、検査へのアクセスの改善や支援の充実に期待がかかる。一方で新指針は非公開の議論でまとめられ、検討過程の不透明さや、検査の対象となる障害への差別助長への懸念も残る。 「出生前に行う検査を希望する場合はチェックを入れてください」。認定施設の一つ、昭和大病院(東京都品川区)では、妊婦に行う検査の情報を提供し、希望確認書で受けたい検査や知りたい胎児の情報を答えてもらっている。全妊婦を対象とする超音波検査の他、原則高齢妊婦を対象とする新出生前診断、全妊婦が受けられるが精度は落ちる「母体血清マーカー検査」なども希望することができる。 同大の関沢明彦教授によると、新出生前診断や母体血清マーカー検査など、妊婦の血液から胎児の遺伝情報を調べる検査の受検率は2013〜18年には2〜4割で推移してきた。35歳以上の7割は新出生前診断を、34歳以下はほとんどが母体血清マーカー検査などを受けた。 胎児に疾患の可能性がある「陽性」の場合は、確定診断のため流産の恐れもある羊水検査や絨毛検査を受ける必要がある。昭和大病院でこれまで確定診断をした約100人のうち2割は新出生前診断を受けた妊婦だった。8割は母体血清マーカー検査などを受けた若い人で、疾患があると確定したのは数人だった。 関沢さんは「結果的に、精度の低い検査を受けた若い人が多く羊水検査を受けた」と指摘。新出生前診断は比較的高額だが「希望する若い妊婦が精度の高い新出生前診断を受けられることになったのは良い方向だ」と評価する。さらに、地方でも認定施設が増えれば妊婦が検査を受けやすくなるとの期待も高まる。 ただ、新たな指針の実施後も、増え続ける無認定の民間クリニックによる検査を減らすことは困難との見方が強い。認定施設ではダウン症候群など三つの染色体異常のみが検査対象だが、無認定施設では追加料金で他の疾患も検査できることが多い。関沢さんは「せっかく検査するなら他の疾患も調べたいとの意識は働く。三つの疾患以外は精度が低いと伝える必要がある」と強調する。 運営委員会の議論はすべて非公開だったことを問題視する声も上がる。簡単な議事要旨が公表されているのみで、議論の詳細な内容は確認できない。北里大の斎藤有紀子准教授(生命倫理)は「なぜ今回の方針に至ったのか、議論の過程が分からないと、後から検証できない」と指摘する。 「今やダウン症の人の平均寿命は60歳で、成人のほぼ8人に1人が収入を得て生活している。なぜダウン症を検査対象にするのかや、差別の問題とどう向き合い、どのような社会を目指すのかを説明する必要がある」と話している。 ![]() |
医学部医学科を置く全81大学が実施した2021年度入学者への入試(21年度入試)で、女子の平均合格率が13・60%となり、男子の13・51%をわずかに上回ったことが16日、文部科学省の調査で分かった。データのある13年度以降、初めて女子が逆転した。東京医科大などで女子や浪人生らを不利に扱う不正入試や不適切な得点操作が18年に発覚したのを踏まえ、差別の是正が進んだとみられる。 不正が続いていたとみられる13〜18年度の6年間の全国平均は男子11・25%、女子9・55%で1・18倍の差があった。19、20年度は改善の傾向がみられたが、全国平均では男子が上回っていた。21年度は男子が女子の0・99倍となった。 文科省医学教育課は「男女でほとんど差のない結果で、女子への差別的な扱いがなくなったことが大きく影響したのではないか。女子の合格率だけが低くなることはないとはっきりした」としている。 調査によると21年度、男子は全国で6万2325人が医学部を受験して8491人が合格し、女子は4万3243人中の5880人が合格格した。 不適切な入試があったと指摘された10校のうち、岩手医科大、日本大、北里大、聖マリアンナ医科大、金沢医科大、福岡大の6校は女子の合格率が男子よりも高かった。 不適切入試が確認されていない大学でも、女子合格率が男子を上回ったのは、13〜18年度の平均では15校だったのに対し、21年度は36校に増えた。 文科省は、医学部の男女別合格率は受験生に必要な情報だとして、全81校の数値をまとめてホームページで公表している。一般入試や推薦入試などの形式は区別していない。 医学部医学科を置く大学81校のうち10校で女子や浪人生を不利に扱うなどの不正や不適切な入試を行っていたことが2018年に発覚し、各校は再発防止策や意識改革の徹底を迫られた。統計上は91年度になって女子の全国平均合格率が男子を上回る形となったが、理不尽な差別を繰り返さないための継続的な取り組みが求められそうだ。 一連の不正が判明したのは、汚職事件に関する東京医科大の内部調査の過程で、女子受験者を対象にした得点操作の存在が浮かんだことが発端だった。文部科学省も調査に乗り出し、他校でも次々と表面化。3浪以上の受験生の得点を低くしたり、過疎地域出身者を有利にしたりするパターンもあった。 「女性は妊娠や出産があるので、業務に集中して将来的に大学を支えるポジションに就く者が男性医師より少ない」。18年に東京医大の第三者委員会がまとめた報告書は、学内にこうした認識が存在したと指摘した。教育の機会均等や入試の公正性という理念に反すると断じた。 東京医大は再発防止策として入試業務を行うパソコン室に監視カメラを設置し、採点作業に外部監査委員が立ち会うことなどを表明。毎年の監査報告書も公表しており、取材に「ガバナンス体制の強化と再発防止に真摯に取り組み、公正・公平な入学試験を実施している」と回答した。 医学部専門予備校「エースアカデミー」の高梨裕介代表は「以前は女子が合格しにくい大学に関する進路指導に気を使ったが、今はその必要がなくなった。不正が指摘されなかった大学でも怪しいと感じることがあったが、改善が見られており、結果的に男女公平になったのではないか」と話した。 ![]() |
6歳未満の子どもがいる父親が家事・育児に十分な時間を確保するためには、1日の仕事時間を9時間半以内にすることが必要―。国立成育医療研究センター(東京)は、父親の生活時間に関する分析結果を公表した。共働き世帯の増加で父親も育児を担うことが求められており、同センターは「父親への意識啓発だけでなく、企業や社会の環境づくりも不可欠だ」としている。 同センターなどの研究班が、総務省の2016年「社会生活基本調査」のデータから@末子が未就学児A夫婦と子どもの世帯―などの条件を満たす父親約3700人を抽出して分析した。 政府は「6歳未満の子どもがいる男性の1日の家事・育児時間を20年に2時間半にする」という目標を掲げていたが、16年のデータでは1時間23分にとどまっている。 研究班は、24時間のうち睡眠や食事などに必要なのは10時間、休息などは2時間と設定。家事・育児に2時間半確保するには、仕事と通勤を9時間半以内にする必要があるとした。 16年のデータでは、父親の仕事と通勤の時間は「12時間以上」が最多の36%で、10時間以上で69%を占めた。「12時間以上」の父親の家事・育児時間は10分だけだった。 同センター研究所政策科学研究部の竹原健二部長は「父親が家事・育児に関わるほど、第2子以降の出生割合が高くなる傾向がある。仕事時間が長い人はほかに減らせる余地はなく、長時間労働をどこまで是正すればよいのか、具体的な目安として考えてほしい」と話している。 ![]() |
合唱や吹奏楽など文化部活動の運営を地域団体に移行する方策について話し合う文化庁の有識者会議の初会合が16日、開かれた。地域での受け皿整備や、指導者の確保などについて具体的に検討する方針が示された。2023年度からの段階的移行を目指し、今年7月にも提言をまとめる。 部活動は教員の長時間労働の一因と指摘されている。文部科学省が20年秋、公立中学の休日の部活動を地域や民間団体に委託する方針を示したことで、改善に向けた議論が本格化。スポーツ庁も別の有識者会議で運動部の地域移行について検討しており、5月に提言をまとめる見通し。 この日の初会合では委員が「文化振興団体に限らず、子どもの居場所づくりに取り組むNPO法人など、地域のあらゆる団体が受け皿となるべきだ」と強調し、指導者や施設、活動資金をどのように確保していくか議論が必要と訴えた。また、子どもたちのニーズについて調査すべきだとの意見や、情報通信端末が進化しているとしてオンラインの活用が有効だとの指摘もあった。 ![]() |
自民党は15日の政調審議会で、教員免許に10年の有効期限を設ける教員免許更新制を廃止するための教育職員免許法改正案など関連する2法案の了承を見送った。「廃止後の教員研修の充実について担保されていない」などとして、党文部科学部会での再検討を求めた。 山本朋広部会長は取材に、更新制廃止など骨格部分は変更の必要がないとして、近く同部会に対応を協議する方針を示した。今国会での法案提出を目指す文科省の担当者は「省として説明を尽くしたい」としている。 現在の改正案では、更新制の規定を削除し、施行日を7月1日に設定。文科省によると、成立すれば、この日以降に期限を迎える教員は更新講習などの手続きが不要になる。今後の研修については、教育公務員特例法を改正して2023年。4月以降、教育委員会が受講を促した上で、各教員の研修履歴を管理するよう義務付けるとしていた。 更新制は第1次安倍政権だった07年の法改正により、09年から導入した。期限前の2年間のうちに30時間以上の講習を受けて修了する必要があぴ教員の多忙化の一因だったことから、文科省が廃止を決めた。 ![]() |
性別や暮らす場所によって、大学への進学に複合的な格差が生じていることが共同通信の試算で明らかになった。立地する大学数や経済事情の違いに加え、性別で役割を分ける昔ながらの価値観が残り、短大などが「現実的な選択」となっている実情も垣間見える。学びたい人が十分に学べる社会の実現に向け、解決すべき課題は多い。 女子進学率が54・5%で全国6位の山梨県。ただ、男子の72・7%とは1・33倍の開きがある。「手元に置きたい」「地元で就職してほしい」。県立高のある女性教員は、進学校で進路指導を担当した際、女子生徒の保護者からこうした声をよく聞いた。県外の難関大を勧め、断られたこともあった。「女子の進学は男子より家庭の環境や価値観に左右されやすい」と感じた。 女性教員によると、学校の評判に直結し、長時間労働が求められる進路担当の教員には男性が多い。「女子は浪人しても伸びない」「男子は理系、女子は文系」という先入観が残るという。女性教員は「自分も無意識に男女に分けた指導をしていた。この10年ぐらいで、学校にも(女性の活躍を妨げる)『ガラスの天井』があると気付いた」と打ち明ける。 大学が少なく、所得水準が都市部より低い地方では、男女とも進学率が低迷する傾向にある。日本学生支援機構の2018年度調査によると、下宿して私立大に通う場合、年間の学買・生活費の合計は平均約249万円。自宅通学より約68万円多くなるとの結果だった。人気の大学は都市部に集中し、地方在住者は大きなハンディを抱える。 こうした背景から、自宅から通えて、大学より短い期間で卒業できる看護、保育、医療系などの短大や専門学校が女子の受け皿になっている。 関東地方の女子短大生は「大学を出て就職し、結婚して子どもを育てるのは大変」と説明。いまだに家事や子育ての負担は女性に偏っており「コストパフォーマンスが良く、手に職が付く。いったん仕事を辞めても再就職しやすい」(首都圏の私大教員)と女子を引き付ける。 近年、女子の大学進学率は全国的に上昇傾向にある。大学の新設や短大の四年制への衣替え、自治体が支援して学買の高い私立大を公立化する動きも続いた。ただ、地方経済は厳しく、進学率がこのまま伸びるかは見通せない。 鹿児島国際大の山田晋名誉教授(ジェンダー論)は短大や専門学校が果たしてきた役割を評価する一方、4年かけて仲間と議論し、幅広い知識を獲得できる大学の魅力は大きいと指摘する。各地の中心的存在である旧帝国大や、理工系の女子学生は依然少ない。21年春の東大合格者に占める女子の割合は2割ほど。山田さんは「大学に進む女子がもっと増えなければ、男性中心の政治や経済はなかなか変わらない」と訴える。 せっかく大学に入っても「学費が払えない」「面白くない」と退学を考える学生に接してきた。「『大学に入れば力が付く』と広まれば、おのずと女子の進学者も増え、学生のためになる。大学教育も問われている」 大学進学には学力だけでなく、家庭の所得、本人や親の意欲などが関係している。家計が苦しい地方の女子は最も不利な立場にある。女子の進学率はさらに上昇するとの試算もあるが、新型コロナウイルス禍や経済事情の変化があり、先行きは見通せない。進学を促すには給付型奨学金の充実を図る必要がある。国の現在の制度は、対象世帯の所得区分が三つしかなく、わずかな差で支給額が変わる。中間層への支援が導入前より乏しくなっており、改善すべきだ。 教育現場では、整列や名簿の順番、「君」「さん」呼びなどで子どもを男女に分けて扱いがちだ。そうして子どもは性別を認識し、自分を縛ってしまう。女子は大人から「四年制大学へ行かなくていい」「わざわざ県外に行かなくても」と聞かされる。ささいなことが一つ一つ積み重なり、将来を狭め、大学進学にも影響を及ぼしているのではないか。学校などで子どもの個性が性別で制限されていないか、注視すべきだろう。 ![]() |
京都市は10日、一般会計9203億6500万円と11特別会計、4公営企業会計を合わせた総額1兆7969億6400万円の2022年度当初予算案を発表した。市の行財政改革計画策定後初の予算案で、新規事業を絞ったが、将来世代に負担を先送りする厳しい財政事情が反映された。 一般会計の予算規模は、新型コロナウイルスの関連事業が膨らみ過去2番目の大きさとなったが、前年度比では8%減となった。市バス・市営地下鉄のフリーパス券「敬老乗車証」の利用者負担の引き上げや職員の人件費削減などで歳出を抑えた。 新規・充実事業は53事業(計33億円)と過去10年で最少。「人と企業に選ばれる都市」を意識し、限られた財源を振り分ける。伏見区向島の農地を産業用地に転用する取り組みや路地の中古住宅の流通を促進させる仕組みづくりを始める。弱視の早期発見に向けた3歳児対象の検査導入、若手芸術家の作品を販売するサイトの創設、市内産木材の流通促進も新たに行う。 一方、継続中のハード整備には財源を割く。市立芸術大の移転整備に123億9600万円、西京区総合庁舎整備に3億3700万円を計上した。 新型コロナ関連は総額1689億6千万円で、ワクチンの3回目接種の推進や検査態勢の確保、中小企業や商店街のデジタル化支援などに充てる。 歳入は一部企業の業績が好調たった影響などで、市税収入を前年度比6・4%増の3029億円と見込む。それでも財源不足は117億円に上り、借金返済用に積み立てている公債償還基金を取り崩すなどして穴埋めする。 借金に当たる市債残高(一般会計)は22年度末で8610億円と前年度末から0・2%減る見込みで、市民1人当たりの金額は約59万円になる。 予算案は17日開会の2月市議会に提案する。 京都市の2022年度一般会計当初予算案のうち市教育委員会分は、1110億4千万円を計上した。複数の高校や小中一貫教育校で開校や移転があるため施設整備費がかさみ、前年度比8・8%増となった。 新規事業では、中・低所得者世帯を対象に、市立高生徒が学習で活用するコンピューター端末の購入費を補助する制度に1300万円を充てた。補助額は収入が472万円未満の世帯で最大2万円、住民税所得割非課税世帯で最大4万円。 たんの吸引など医療的ケアが必要な児童生徒の通学支援にも3200万円を盛り込んだ。医療的ケアはスクールバス内では難しいため保護者が送迎を担っていたが、今後は福祉タクシーなどに訪問看護ステーシヨンから派遣された看護師を同乗させて送迎し、保護者の負担を軽減する。 このほか、市図書館で電子書籍を借りられるサービスの導入に1200万円を計上。新型コロナウィルス感染拡大が続く中、来館することなく利用できることに加え、電子書籍の読み上げ機能で視覚障害者がより手軽に読書を楽しめるようにする。 予算全体の内訳を見ると、建物等施設整備費が前年比で112・6%増の173億7700万円に上った。来年度以降、南区に開建高が開校し、銅駝美術工芸高(中京区)が美術工芸高に校名変更して下京区に移転するほか、西京区や伏見区で新たに中高一貫教育校が設立されることが影響した。 京都市が、2022年度当初予算案を発表した。 危機的な財政難に対応するための行財政改革計画を反映させた初めての予算編成だが、前年度に引き続き新型コロナウイルス関連の経費が膨らみ、一般会計、総額とも過去2番目の規模となった。 市財政は、このままでは国の管理下で自治が制約される「財政再生団体」へ転落しかねない状況だ。 長引くコロナ禍で苦境にある市民の暮らしや中小企業の経営を下支えしながら、いかに財政再建を進めるかが問われている。 一般会計の予算規模は、前年度比で8%減となった。職員人件費の削減や業務の民間委託などに加え、新規・拡充事業を過去10年で最も少ない53事業に絞り込んだ。 市バス・地下鉄のフリーパス券「敬老乗車証」の利用者負担の引き上げをはじめ、補助金や手数料の見直し、イベントの休廃止などで歳出を抑えた。 門川大作市長は「時代の潮流を捉えて施策を再構築した」と強調するが、市民負担の増加やサービスの縮小も含まれる。改革の必要性や意義などを丁寧に説明することが求められる。 歳出の2割を占めるコロナ対策は、ワクチンの3回目接種の推進や検査態勢の確保などに加え、中小企業や商店街のデジタル化や質の高い宿泊サービスの商品開発支援など、コロナ後を見据えた施策も盛り込んだ。 市は、33年度までに税収を現在より400億円以上増やす目標を設定している。そのための成長戦略として、中古住宅の流通促進や若手芸術家の作品販売サイト創設、市内産木材の利活用などに取り組むという。 打撃を受けた観光業や飲食業の再生をはじめ、地域経済の活性化を通して税収の増加につながるよう、外部人材も活用しながら従来にない発想で事業を肉付けしていくことが重要となろう。 リーマンーショツク並みの落ち込みが危惧された市税収入は、想定より企業業績が堅調なことなどもあり、新年度は増収を見込んでいる。経費節減効果と合わせると収支不足は前年度より減るものの、117億円に上る。借金返済に備えた基金を取り崩して穴埋めするといい、財政運営は依然として綱渡りの状態だ。 限られた予算を効率的に使い、将来世代につけを回さないのは当然だが、今回の予算案が市民生活にどう影響するのか、市議会での熟議が欠かせない。 |
京都府と京都市の両教育委員会は7日、府内の公立高で行われる前期選抜入試の志願状況を発表した。全日制の平均志願倍率は2・1倍で5年ぶりに上昇に転じた。倍率が最も高かったのは昨年同様、鴨沂の普通科A方式1型で6・88倍。 前期選抜は全日制と定時制の計58校が実施。全日制は募集人員5148人に対して1万801人、定時制は40人に対して15人が志願した。 全日制の学科別の倍率は、普通科2・68倍、専門学科1・54倍、総合学科0・93倍だった。倍率の上位5校は、鴨沂に続いて桂の普通科A方式が5・83倍、山城の普通科(単位制)A方式1型が5・35倍、洛北の普通科(単位制)A方式1型が5・33倍、北嵯峨の普通科A方式が5・21倍。定員割れ(倍率が1倍未満)は18校23学科だった。 登校時間を選べるなど多様な学び方ができる定時制高の特別入学者選抜では、清明が1・29倍、清新が0・98倍、京都奏和が2・09倍だった。 公立高の志願倍率は2018年から低下が続いていたが、今年は昨年より0・06回上昇した。府教委は「微増の範囲であり、理由については分析しないと分からない」としている。試験は京都堀川音楽を除き16、17日に実施され、24日に合格発表がある。 ![]() |
末松信介文部科学相は7日、2023年度からの5年間で取り組む教育分野の重点施策を定める政府の第4期教育振興基本計画について中教審に諮問した。オンライン活用など新型コロナウイルス感染拡大後の教育や学習の在り方を中心に提示するよう求めた。22年度内に答申の見通し。 諮問では、新型コロナの影響で休校や対面授業の中止が相次ぎ「未曽有の危機を学びにもたらした」と指摘。一方で学校に福祉的機能があることや、現実における体験活動の価値を再認識する契機になったとして「デジタル」と「リアル」の最適な組み合わせを議論する必要があるとした。 また、共生社会の実現に向けた学習環境づくりに加え、子どもの成績や学習内容などを教育データとして蓄積した上でどのように活用するのかを提言するよう求めた。 計画は06年施行の改正教育基本法で政府に策定が義務付けられた。第1期(08〜12年度)は道徳教育強化、第2期(13〜17年度)はコミュニティースクール(地域運営学校)の拡充などを掲げた。第3期は教員の働き方改革や奨学金の充実が柱となっている。 末松氏は7日の中教審総会に出席し「今の子どもたちが活躍する社会を見据え、教育政策を総合的に検討してほしい」と述べた。 ![]() |
自民党は4日、子ども政策の基本法案づくりに向けた会合を開き、子どもの権利擁護を推進する第三者機関「子どもコミッショナー」設立について議論した。法案では国への勧告権を持たせることなどを想定しているが、出席議員の賛否が割れて紛糾し、次回以降も議論することになった。 会合は「『こども・若者』輝く未来実現会議」。座長の加藤勝信前宣房長官らは、基本法案を今国会に提出し、政府の「こども家庭庁」設置法案と併せて成立させたい考え。ただ慎重意見は根強く難航が予想される。コミッショナーは、ノルウェーや英国が先例。行政から独立し、いじめや貧困の対策に活用されている。国内では北海道士別市や兵庫県尼崎市などが同様の機関を設置している。。 会合では、賛成議員が深刻化するいじめや虐待の対策に関し「行政任せでなく、第三者機関によるチェックが必要」と指摘。基本法案には設置の方向だけ盛り込み、詳細は別の法案で制定すべきだとの主張も出た。 ![]() |
文部科学省は4日、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が10代以下に急拡大していることを受け、学校での感染防止強化策をまとめ、全国の都道府県教育委員会などに事務連絡を出した。室内で近距離になる合唱や、リコーダーやハーモニカなど管楽器の演奏、調理実習といった感染リスクの高い教育活動を、基本的に自粛することを要請。部活動の内容も制限し、他校との練習試合や合宿などを控えるよう求めた。 一方、児童生徒の学習機会を保障するため、休校は慎重に判断すべきだとの方針は維持した。休校を決める前に時差・分散登校や、遠隔授業と対面授業を組み合わせた学習形態により、教室の密集度を下げる取り組みが必要になるとしている。 文科省によると、年明け以降、合唱会の練習や、管楽器の演奏を通じてクラスター(感染者集団)が発生した事例が報告されたため、制限強化が必要だと判断した。 ほかにも児童生徒が近距離の対面方式で長時間話すグループワークや、接触を伴う体育の運動、部活動の共有エリアの一斉利用を控えることなどについて注意を呼び掛けている。 こうした活動の制限はこれまで、緊急事態宣言が発令されるなど感染が深刻化した地域でのみ実施するとしていた。 |
厚生労働省は3日、児童養護施設や里親家庭で育つ若者の自立支援に関し、原則18歳(最長22歳)までとなっている年齢上限を撤廃することを決めた。同省の社会保障審議会専門委員会が、児童福祉法改正に向けた報告書を取りまとめた。虐待を受けた子らを親から引き離す一時保護の要否を裁判官が判断する司法審査制度も導入する。開会中の通常国会に同法改正案を提出する方針だ。 虐待対応や家庭支援に高い専門性を持つ新資格(子ども家庭福祉ソーシャルワーカー(仮称)」も創設。2024年度から運用する。社会福祉士や精神保健福祉士などが、民間認定機構の研修や試験を経て取得できる。一部委員が求めていた国家資格化は見送った。 施設などの保護を離れた「ケアリーバー」は親などを頼れず困窮、孤立に陥りやすいとされ、その人ごとに自立の準備が整うまで切れ目のない支援を可能にする。施設などで生活できる年齢制限を撤廃し、施設や自治体が自立可能と判断した時期まで支援を続け、就労や生活支援の制度に関する助言も強化する。 ケアリーバーについては厚労省が昨年、実態調査の結果を公表し、3人に1人が生活費や学費の悩みを抱えていたことが判明。困窮で医療機関を受診できなかった人も目立ち、支援の必要性が浮き彫りになった。 一時保護では、親権者の同意がない場合の司法審査として「一時保護状(仮称)」を導入。児童相談所が保護開始前か、開始日から7日以内に裁判所に請求し、発付の可否を裁判官が決める。子どもの自由を制限する強制措置の実施に際し、司法による透明性、中立性の確保を求める声があった。 他に、一時保護や施設入所といった措置の際に子どもの意向を確認し、勘案することを義務付ける。虐待予防のため要支援家庭に行政サービスの活用を強く促せる権限を市区町村に付与する。 親と暮らせず児童養護施設や里親家庭で育った子どもや若者が、年齢に関係なく支援を受け続けられる見通しとなった。厚生労働省の専門委員会が3日、報告書を取りまとめ、児童福祉法改正に向けた動きが進む。社会に出るまでに自立の準備をする「助走期間」が個々に応じて設定されるようになる一方、保護されずに支援からこぼれ落ちたまま自立を迫られる子もいる。サポート体制の拡充が急務だ。 「いきなり社会に出たので、何をどうしたらよいか分からなかった」。熊本県に住む女性(20)は、高校卒業と同時に小さい頃から過ごした児童養護施設を離れ、1人暮らしを始めた。住所変更や公共料金の手続きなどの説明は施設で受けていたが「実際に全部自分でやるのは、大変だった」と苦労を思い起こす。 病院の給食調理の仕事に就いたものの、職場の人間関係に疲れて4ヵ月ほどで退職。社宅に住めなくなりアパートを探したが、親と連絡を絶っていたため保証人がおらず、賃貸契約ができない。NPO法人のサポートで何とかシェアハウスに入ることができた。「もしあの時、助けてもらえなかったら」と、支援の重要性を実感している。 厚労省が昨年公表した調査結果によると、施設などの保護を離れた「ケアリーバー」のうち22・9%が「収入より支出が多い」と回答した。不安なことがある人に利用したい支援は何かを聞くと「金銭面」が29・0%で最多。次いで「住居や食事」が26・7%だった。 自立支援は現在、原則18歳(最長で22歳)で区切られる。親などの助けも得られずに困窮や孤立に陥るケースがあり「18歳の壁」とも言われる。厚労省は今国会に提出する児童福祉法改正案に、自立支援の年齢制限撤廃を盛り込む。「その人に合わせた助走期間が取れる」と担当者。施設を出た後の継続支援として、就労や生活面の助言をする拠点の整備にも取り組む。 ケアリーバーらのアフターケア相談所「ゆずりは」(東京都国分寺市)には若者だけでなく、30代以上も訪れる。所長の高橋亜美さん(48)は「虐待などのトラウマは、時間がたってから困りごとにつながる場合がある。見守りを続けていくことが大切だ」と指摘した。 虐待を受けても児童相談所などによる保護には至らず、そのまま家庭で暮らす子どももいる。SOSを発せられないケースも含め、支援対象とならないまま大きくなり、親に頼れない中で生活しなければならない若者らへの対応も課題だ。 ケアリーバーらの自立を支えるNPO法人「トナリビト」(熊本市)が設置する、相談窓口を兼ねた「居場所スペース」を訪れる人のうち、半数近くは児相などとのやりとりがなく、公的なサポートを受けた経験がないという。代表理事の山下祈恵さん(35)は「孤立させないよう、しつかりと支援につなげていく必要がある」と強調する。 自立に向けたプロセスを、どう描くか。北海道大大学院の松本伊智朗教授(教育福祉論)は「施設などは、本人の話をよく聞きながら丁寧にに考えていくことが求められる。支援体制は都道府県によってばらつきがあり、どこでも子どもや若者がきちんと守られるようにすべきだ」と話す。 虐待を受けた子どもらを親から引きす一時保護で導入される司法審査制度は、判断の中立性を確保するとともに、裁判所が後ろ盾になることで、強制措置に反対する親に納得してもらいやすくなる効果も期待される。一方、裁判所に提出する申請資料の収集など児童相談所の負担増は避けられず、法律に詳しい人材の拡充など体制強化を急ぐ必要がある。 「私たちではなく裁判所が言っているとなれば、相手を説得する材料の一つになる」。東京都内にある児童相談所の担当者は制度が始まった場合の利点を説明する。現在は、保護に踏み切った後、子どもがいる施設まで親が訪れ「連れて帰る」と言って聞き入れてくれないこともあるという。 厚生労働省の専門委員会が3日に取りまとめた報告書によると、司法審査は児相からの請求を受け、裁判官が提出された資料を基に「一時保護状(仮称)」を出すかどうかを決める。児相は保護開始前のほか、開始日から7日以内の請求もできるが、保護状が認められなかった場合は保護を解除しなければならない。請求資料をそろえるなどの作業が虐待事案への迅速な対応を妨げないよう、今後は実務の詳細の検討が進められる。 一方で懸念されるのが児相の負粕増だ。2020年度の児童虐待対応件数は約20万5千件に上り、増加傾向が続く。厚労省は請求手続きの助けになる弁護士の配置に引き続き取り組む。 ![]() |
新型コロナウイルスによる臨時休校や学級閉鎖の目安期間について、文部科学省は2日、現行の「5〜7日程度」から「5日程度」に短縮するとの指針を全国の都道府県教育委員会などに通知した。潜伏期間が3日程度で従来より短いとされるオミクロン株の特性を踏まえたもので、同省は「学びの保障に留意しつつ機動的に対応を行うことが重要」としている。 指針には、保健所業務の逼迫で疫学調査が十分に実施されなかった場合の学校再開時期なども追加。5日後の再開を目安とし、感染者や濃厚接触者、風邪などの症状が見られる児童生徒以外は登校できるとした。 学級閉鎖から臨時休校に至るプロセスについては変更せず、同一の学級で@複数の児童生徒の感染判明A感染者が1人でも、複数が風邪の症状を見せているB感染者1人に対し、複数の濃厚接触者が存在―などの場合に学級閉鎖するとした運用基準を例示。複数の学級が閉鎖となれば学年閉鎖の段階に進み、学校全体に広がっている可能性があれば臨時休校とする。 |
北海道旭川市でいじめを受けた疑いがある中学2年広瀬爽彩(さあや)さん=当時(14)=が昨年3月に凍死した状態で見つかった問題で、広瀬さんがツイッターに匿名で「私はいじめを受けていました」などと書き残していたことが31日、関係者への取材で分かった。遺族が本人のアカウントからの投稿と確認した。広瀬さん本人が詳細に残していた「いじめ」被害の経緯、当時の心情や苦悩が明らかになるのは初めて。 広瀬さんを巡り、市教育委員会は当初、本人からいじめ被害の申告がないことなどを理由にいじめと判断しなかったが、昨年4月、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定し、第三者委員会が調査中。今回の投稿が明らかになったことで、調査の行方に影響する可能性がある。 遺族側によると、広瀬さんは2020年5月21日、ツイッターに複数回投稿。広瀬さんが21年2月に失踪した際、投稿に気付いた知人から情報提供があったという。 投稿によると中学入学後の19年4月以降、他校も含めた先輩らと関わり始め、仲良くしようと努力したが「いつの間にかコンビニに行くときは全部払う」ようになった。 先輩らに頼まれ、わいせつな行為を見せたことについては、最初は断ったがお願いされたので頑張って見せたと説明。写真や動画も要求され「何が何だかわかりませんでした」と振り返った。 そんな中でも先輩たちと離れられなかったのは「何より1人が怖かった」と語り、気付けば「いじめ」の標的となり「誇りも失うことに」とつづっていた。 同年6月には先輩から「今までのことをばらす」と脅され「死にたい」と漏らすと「死にたくもないのに死ぬとか言うんじやねえよ」と反論され、川に入る自殺未遂を起こした。その後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。 投稿の終盤では「いじめを受けてから1年たちそうなのに何もできません」と思い悩み、自分の「存在価値を見いだせなくなってきました」と書き残した。 北海道旭川市でいじめを受けた疑いがある中学2年広瀬爽彩さんは昨年2月に失踪するまでの約1年半、PTSDの症状に苦しんだ。トラウマとなった記憶がよみがえるフラッシュバックが頻発し、自己否定を繰り返した。専門家は「罹患から何年もたって自殺する人もいる。非常につらく深刻な病」と指摘する。 「私が悪いように思えます」。広瀬さんが2020年5月、先輩らから「いじめを受けていた」と書き残したツイッターの投稿には、その経緯などに加え、自らを責める言葉が並んでいた。 「同世代が怖かった」ため、転校先でも不登校になったと説明。「居場所のない私はよくネットに籠るようになりました。本当に何もしなくなり、何も出来なくなりました」とも。フラッシュバックを起こし、叫んだり倒れたりを繰り返した。 精神科医で筑波大教授の斎藤環氏(思春期・青年期の精神病理学)によると、いじめが原因でPTSDを発症した場合、@自分は価値がない人間という否定的なとらえ方A誰も味方してくれないという孤立感B何もできないという無力感―などを抱くことがある。 頻繁にフラッシュバックが起きるほか、悪夢を見たり、加害者と同じ年代の人を避けたりすることがあると指摘。発症を防ぐには「学校が加害者に謝罪させた上で処分を行い、被害者が『自分は悪くない』と納得できることが必要だ」と強調した。 ![]() |
全国の公立小中高校と特別支援学校で、2021年4月の始業日時点に2558人の教員が計画通り配置されていなかったことが31日、文部科学省が初めて実施した教員不足の全国実態調査で分かった。全体の5・8%の1897校が該当。小中学校では多忙化への敬遠などから教員志望者が減少傾向にあるといい、産育休取得者や病気休職者を補う人材が不足する現状が浮かんだ。
5月1日時点の集計では4・8%に当たる1591校で2065人が不足し、別の調査では、21年度採用の公立小教員試験の倍率が 2・6倍で過去最低を更新したことも判明。文科省は「採用倍率が低下したのと連動し、代替の教員確保が難しくなっている」として、支援策を講じる方針。
教員不足調査は計画的な採用に役立てるため68の都道府県・政令指定都市教育委員会などに実施。配置計画や、始業日と5月時点の実際の配置を集計した。始業日時点の学校種別では、小学校は4・9%に当たる937校で1218人が不足。中学校では7・0%の649校で868人、高校は4・8%の169校で217人、特別支援学校は、13・1%の142校で255人だった。
京都は、小学校が6・6%の13校で16人、中学校が6・2%の6校で12人、高校が10・0%の6校で6人、特別支援学校が14・3%の2校で5人。滋賀は、小学校が1・4%の3校で3人、中学校が5・1%の6校で5人、高校が5・9%の3校で3人、特別支援学校が18・8%の3校で3人。
このうち小学校356校では、462人分の学級担仕が埋まらず校長や教頭、少人数指導のために配置した教員らでカバーしていた。中学校30校、高校5校で、理科や数学、実技教科の担当者が見つかっていなかった。
不足が生じた学校の自治体別割合で最も高いのは、小学校では神奈県の21・4%、中学校は福岡市の40・6%だった。
不足の理由を項目ごとに尋ねると、「産育休収得者数が見込みより増加」に53教委が「当てはまる」を選び、「病休者数が増加」は、49教委、「特別支援学級数が増加」は47教委。文科省などによると、不足分は従来、教員採用試験を目指す教員免許保有者らを講師に臨時採用し補ってきた。だが、団塊世代の大量退職で採用が増える一方、義務教育の学校現場の多忙化などが避けられ、志願者が減ったとみられる。
補充の難しさについて、調査では61教委が「講師登録名簿登載希望者の減少」を要因に挙げた。また、36教委が「臨時的任用教 員のなり手が、教員免許の未更新または手続きの負担感で採用不可」と答えた。
5月時点の臨時的任用教員の配置割合は、小学校4万1991人(11・06%)、中学校2万3820人(10・90%)。
学校教員に欠員が生じても、すぐには埋められない実態があることが文部科学省が初めて実施した教員不足調査で明らかになった。各地で人材が足りなくなる一因に、学校が過酷な職場だとの認識が広まって人気が落ちたことを挙げる意見が少なくない。文科省が進める働き方改革で魅力を取り戻せるのか、取り組みは緒に就いたばかりだ。
関東地方の公立小学校に勤める30代男性教諭は、2年連続で欠員に直面した。2020年度は、新人が精神疾患を理由に5月の大型連休明けから休職。3学期まで代わりが見つからず、副校長が学級担任を兼務した。副校長は本来業務もあり、複数の教員が普段の授業や遠足の準備などを分担。男性教諭は「1・5クラス分働いた」と振り返る。
教員が次々と入れ替わるためか、子供たちに落ち着きがなく、ちょつとした言い合いなどが増えたようだった。21年度も別の教員が2学期から産休を取り、補充が来たのは数力月後。事前に教育委員会が講師の候補者を探したが「既に働いている」などの理由で断られ続けたという。
「人材が枯渇状態にある」。21年4月の始業日時点で、公立小の18%で教員不足だった熊本県教委の担当者はそう言って頭を悩ませる。これまでは、いったん採用試験が不合格になって再チャレンジを目指す「教員の卵」たちを、欠員を埋める講師などになってもらうため名簿に登録していた。近年は、団塊世代の大量退職に伴い採用者数を増やしたことで名簿登録者が減少した。
採用試験の受験者も減少傾向で、特に小学校では20年度実施試験(21年度採用)の競争率が全国平均で2・6倍となり過去最低に。文科省担当者は「採用が好調な民間企業に流れたのではないか」と推測する。
ただ、学校現場では、職業としての人気低下が影響しているとの見方が強い。パソコン端末を活用した授業実践や、小学校での英語教科化、新型コロナウイルス対策の消毒作業など学校には新しい課題がのしかかり、長時間労働が慢性化する。中学での部活 動指導も重い負担の代表格だ。
人気低迷について、文科省の教員不足調査の担当者は「省として見解を述べていない」と明言を避ける。一方、東京都内の私立大で教員養成課程を担当する教授 「多忙化や過重労働を懸念し、明らかに人気が落ちている。免許を取っても教員にならない学 生が増えた」と明かした。
文科省も学校の働き方改革に着手し、外部人材の活用や事務職員の配置、タイムカード導入による労働時間管理などで改善を模索。部活動指導を地域の人たちに任せる仕組みの検討も始まる。
現役教員の声を文科省に伝える「#教師からのバトン」プロジェクト代表で、愛知県一宮市立小教諭の加藤豊裕さん(43)は「教員不足を講師で埋めるという目先の解決策にとらわれていてはいけない。負担軽減や教員の増員に本気で取り組まなければ、な り手不足は解消しない」と話した。
国は強い危機意識を 慶応大の佐久間亜紀教授(教育学)の話
年度初めは新規採用者もおり人材が最も豊富な時期だ。教員不足の実態が示されたのはいいが、今回の結果のみでは現状の過小評価につながる恐れがある。2、3学期の実態を明らかにする調査が早急に求められる。業務内容の増大に人手不足が加わり、教員は疲弊している。このままでは優秀な人材が集まりにくくなり、教育の質の低下につながる恐れがある。国は強い危機意識を持ち、待遇改善など抜本的な対策を進めるべきだ。
都道府県教育委員会などが2020年度に実施した公立小学校の教員採用試験(21年度採用)の競争倍率は、全国平均で前年度より0・1ポイント低い2・6倍となり3年連続で過去最低になったことが31日、文部科学省の調査で分かった。なり手不足が進むことで、教員の質維持が難しくなるとも懸念される。最も低いのほ佐賀県の1・4倍で、2倍を切った自治体は、採用試験を一緒に実施した広島県・広島市を一つと数えて計15あった。京都府は3・6倍、京都市は4倍だった。最高は神戸市の7・3倍。
文科省担当者は’「大量退職に伴う採用者数の増加が倍率低下の大きな理由」と説明。新卒の受験者は増加傾向にあるものの、いったん不合格になって講師などとして働いてきた既卒者が民間企業に回るなどしていることが影響したと分析している。
小学校の総採用者は1万6440人。18年度試験までは大量退職に伴う採用者の増加が続いていたが、19年度に続き2年連続の採用減となった。総受験者は4万3448人で、新卒者は19年度より80人増えた一方、既卒者は1342人減った。
中学校教員の競争率は19年度比0・7ポイント減の4・4倍となり、バブル景気で民間就職が好調だった1990年度試験に次いで過去2番目の低さとなった。京都府は4・5倍、京都市は6・6倍だった。
高校は2019年度よりO・5ポイント上昇して6・6倍だった。