h2211
 
  • 草の根抗議、150回到達.16
  • 課長補佐級以下給与カット.19
  • 広がる校内フリースクール.20
  • 校則見直して民主主義学ぶ.25
  • 11月25日 厚労省 校則見直して民主主義学ぶ

     誰のための校則? 何のために学校はあるの?

     生徒が校則への違和感から主体的に課題を見つけ、教員や保護者らとの対話で見直しを図る活動が全国の学校に広がりつつある。意見の違う人々と話し合い、皆で納得できるルールに近づけるプロセスは「身をもって民主主義を学ぶ機会になる」と専門家は指摘する。

     「体格差やLGBTQなど、少数派のためのルールはどう考えれば良いですか」「生徒や先生をもっと巻き込むには?」

     9月、東京都内で開かれたイベント「ルールメイキングーサミット2022」に全国21校の中高生らが参加。各校が校則見直しの成果や悩みを発表した。社会で新たなルール作りに携わるトランスジェンダー活動家の杉山文野さんらも登壇。生徒から質問が集まった。

     主催の認定NPO法人「カタリバ」(東京)は2019年から学校の校則見直しを後押しするプロジェクト「みんなのルールメイキング」を開始。表層的な「“ブラック校則”是正」が目的ではなく、校則を題材に生徒自ら考えて発信し、他者と対話する力の育成を目指す。参加は159校(今年10月時点)に上る。

     各校の現状はさまざま。地域住民への調査も行い、髪形やスカート丈の校則を具体的に改訂した高校や、生徒間で最終目標を「全ての人を幸せに」と決めた段階の高校、中には教員が対話に応じない高校も。教員との意見の食い違いや生徒の無関心で苦戦する様子は、実社会の縮図のようだ。

     発表した千葉県立姉崎高3年の児島早苗さんは「他校や杉山さんの話を聞き、学校で取り組んだルール作りは社会と地続きなんだと実感した」という。見守る教員側も真剣だ。駒場学園高(東京)教諭の星野真宏さんは「どうすれば生徒の良い学びとなるか、日々手探りしている」と話す。

     「みんなの―」のサポーターで熊本大准教授(哲学・教育学)の苫野一徳さんは「自分の意見が尊重される体験ができ、他者を尊重する大切さを学べる」と、対話による合意形成の意義を語る。

     子どもが最も我慢できない感情は「ずるい」だと指摘する。「一方的に従わされる決まり事があると、そこから外れる人に不寛容な負の感情が湧き、攻撃性を生じやすい」活動で重視するのは、こうした「学校は○○であるべきだ」という固定観念を疑い、校則の目的を一から皆で吟味すること。そして自分と異なる価値観も尊重することだ。対立する意見は論点を明確化し、互いの背景を理解するよう勧めている。

     民主主義の根幹である対話の経験が寛容さを生むと説く苫野さん。「社会を市民が育むのと同じで、学校づくりの主役は子ども。本来、学校で対話できる土壌を耕すのは大人が担うべき責任です」



    11月20日 厚労省 広がる広がる校内フリースクール

     集団生活になじめないなどの事情がある子どもたちが安心して過ごせる「校内フリースクール」。不登校の児童生徒の増加が全国的に続く中、生きづらさを抱えた子どもたちの有効な支援策の一つとして注目され、全国の自治体で広がり始めている。先進的な取り組みで知られる愛知県岡崎市の市立中学校を取材した。(生田和史)

     「F組」とプレートが掲げられた教室をのぞくと、担任の男性教諭とオセロをしたり、タブレット端末で音楽を作曲したり、生徒たちは思い思いに過ごしている。丸いテーブルやソファが置かれ、アットホームな雰囲気が漂っている。

     「今、ニューヨークでイケメンを探している」

     何をしているのか尋ねると、3年の女子生徒から明るい声が返ってきた。地図アプリを使い、世界旅行を楽しんでいた。今は笑顔を見せているが、小学校時代から友人関係がうまくいかず、中学2年で不登校になった。3年からはF組が心の支えとなり、今では本来の在籍学級で一日1〜2時間の授業を受けることが可能になった。女子生徒は「気の合う友人もいて、無理なく学校に通えている」と声を弾ませる。

     ◆教室復帰目指さず

     F組はFit(自分に合った)やFree(自由)、Fun(楽しい)、Future(未来)を表しており、「適応するのは子どもではなく、学校」を理念とする。

     今回取材した市立美川中では、常時10人ほどが利用しており、指導経験が豊富な担任と市が独自に雇用する支援員を配置する。支援員は毎日下校時まで勤務しているので、生徒との信頼関係を築けているという。

     普段の学習は、各教科の教員がF組を訪れて指導したり、他の学級の授業をライブ配信したりするなど、それぞれの生徒の学力に応じて進めている。小学高学年から学び直す生徒もいる。各家庭との連携を密にして、保護者の不安払しょくにも努めている。

     安藤眞樹校長は「子どもたちの社会的な自立が目標であって、必ずしも教室復帰は目指していない。通常学級にいるのが、しんどくなった生徒が1、2時間、F組で過ごし、また学級に戻るといった使い方もあり、不登校の未然防止にもつながっている」と話す。

     F組の存在は、教職員の意識改革も促している。体育祭で競争的な種目を減らしたり、文化祭では、不登校の生徒でも作品のみの出展で参加できるようにするなど、誰でも参加しやすい学校行事の在り方が模索されるようになった。

      ◆全市立中へ拡大

     岡崎市がF組を導入したのは2020年度だった。それまでは全中学校内に適応指導教室があったが、在籍教室への復帰を目的としていたため、そこでも居づらいと感じる生徒もいたことが、新たな仕組みづくりのきっかけとなった。

     F組の導入校は初年度が3校、21年度5校、22年度6校の計14校で、来年度には全市立中20校に設置を終える予定。岡崎市教育委員会によると、導入校では不登校率が抑制される効果が出ており、小学校への展開も検討中だという。

     同市教育相談センターの小田英宣所長は「何も特別な取り組みではなく、主な支出は支援員の費用くらいで、やる気があればどこでもできる」と強調する。

     この取り組みには、京都市の支援団体も関心を寄せている。

     同市は、少人数指導や個々の習熟度に合わせた学習機会を提供する中学校「不登校特例校」を2校設けているが、定員は計55人と少 ない。子どもの居場所づくり活動を行っている私設図書館「梟文庫」西尾美里代表(44)は「不登校特例校は、受け皿になりきれていない。フリースクールを各学校に設ける方が、子どもたちも通いやすく現実的な対応ではないか」と設置を求めている。


    福知山「もう一つの教室」

     京都府教育委員会も、校内フリースクールのモデル事業「もう一つの教室」を202O年度に始めている。福知山市立雀部小には、不登校や教室に入りづらい児童のために、専任の教員を配置した教室がある。府教委によると、これまでの別室登校は、保健京や校長室などで管理職や養護教員が子どもに向き合ってきたが、別の業務を抱えていることから、きめ細かな対応は難しかったという。

     雀部小のモデル事業では、30年超のベテラン教員1人が児童の状況に応じた学習や活動などを支える。校内の教室なので、在籍クラスの担任とも連携が取りやすい。昨年度は多い時期で5人ほどが出入りし、現在は1人が過ごす。これまで延べ21人が利用したという。

     葦原宏校長は「小学校で行き渋りがあると、中学生になって長期欠席につながるケースもあり、初期対応が重要だ」とした上で、「もう一つの教室では、児童を受け止め、安心感を持ってもらうことを大切にしてきた。不登校に対して、担任が一人で抱えるのではなく、学校全体で対応できるようになった」と話す。

     小学低学年で不登校になった女児は、もう一つの教室で得意の紙粘土の工作をして過ごし、学校生活に慣れた翌年に在籍教室へと戻った。ただ、岡崎市と同様に、社会的な自立を目指し、必ずしも教室復帰を目標としていない。

     モデル事業は本年度で終了する。府教委は「雀部小は工夫と努力を重ねてきた。この成果を基に、事業を発展させていきたい」として来年度、実施校の拡充も含めて検討していく考えだ。


    5月1日のオンライン東洋経済はより詳細にF組について書かれている。


    11月19日 京都市 課長補佐級以下給与カット

     京都市は18日、25日開会の11月市議会に提出する130議案を発表した。市人事委員会勧告に基づき職員の期末・勤勉手当(ボーナス)を引き上げる条例改正案を提出する一方、厳しい市財政に配慮し、課長補佐級以下職員の給与カットを再開することで財源を確保する。

     民間との均衡を図るため、ボーナスは4・3ヵ月分から4・4ヵ月分に引き上げる。一般会計ベースで7億9500万円の追加経費が必要になるため、昨年7月から今年10月まで実施していた課長補佐級以下職員の給与カット(2・5〜3%)を12月から来年3月まで再び行い、総額4億4600万円を確保する。

     課長級以上は昨年4月から5〜6%の給与カットを継続し、来年3月まで実施することにより、全体で年間16億円の財政効果があるという。市幹部は「勧告には従わなければならないが、財政状況を考えれば給与カットは避けられない。市民の生活を守る財源を確保したい」としている。

     11月市議会には27億7千万円を増額する本年度一般会計補正予算案も提出する。物価高対策の一環で国の交付金などを活用して行う市民や事業者への給付・補助などに25億3500万円を充てる。下京区に移転予定の市立芸術大学と市立銅駝美術工芸高の工事契約を変更する議案では、資材高騰の影響で工事費が3億6千万円増え、総額は265億円になる見込み。民間移管するスポーツ施設「森林文化交流センター」 (左京区)や「京北森林公園」 (右京区)の関連条例の廃止も提案する。

     会期は191月12日まで。各会派による代表質問は12月1日。


    財政の問題全てを市政の問題とはしないけれでも、インバウンド頼みの観光政策を推進してきた市政運営への総括をきちんとすべき。富裕層向けのホテルの建築ラッシュで地価が高騰し新しい世帯が誕生しにくい街になっている。そうした、「失敗」を職員の給与カットで補うことには納得が行かないだろう。多くの職員は市政に何ら関与していないし、おそらく意見を聞かれたこともないはず。1982年6党相乗りで当選した今川正彦市長時代の古都税(寺社への課税)を再検討してもいいのではないか。


    11月16日 火曜アクション 草の根抗議、150回到達

     朝鮮学校が国の高校無償化や幼保無償化から除外されたことに対し、在日コリアンや日本人の支援者が毎週火曜に京都市内で続けている街頭での抗議活動「火曜アクション」が、15日で150回を迎えた。学費の負担が重く、朝鮮学校への進学を諦める生徒もいるといい、「子どもの学ぶ権利は政治や外交とは無関係だ」と訴えている。

     冷え込みが強まった15日夜。京都朝鮮中高級学校(左京区)の生徒や教員、保護者ら計約110人が四条河原町交差点(下京区)とJ R京都駅前(同)に立った。

     「朝鮮学校無償化へのご理解、ご協力をお願いします」。道行く人に現状を伝える冊子を配り、「朝鮮学校や生徒への偏見、差別がなくなってほしい」と何度も声を上げた。

     高校の授業料を無償化する制度は2010年に民主党政権が導入した。当初は朝鮮学校も審査対象となったが、北朝鮮の韓国砲撃で中断。安倍晋三政権下の13年、国は「北朝鮮による日本人拉致問題が進展していない」などを理由に正式に除外した。

     京都の在日コリアンらが火曜アクションを始めたのは17年8月。同年7月に広島地裁で、適用除外とした国の判断を容認する民事訴訟の判決が出されたことをきっかけに「世論を喚起しよう」と考えたという。19年以降は朝鮮学校の幼稚園が幼保無償化の対象外となつたことにも抗議している。

     活動に参加する専門学校生の朴真心(パクチンシム)さん(19)=上京区=は今年3月、京都朝鮮中高級学校を卒業した。「学校は自分のルーツを学び、同じ境遇の友人と出会える場」だったが、高校に当たる高級部の学費は月3万円を超え、家計の重荷となっていた。「貧困で朝鮮学校に通えない子もいると聞く。教育という当然の権利を保障してほしい」と願う。

     日本人の賛同者もおり、草津市の元中学教員の女性(65)は「国の制度として朝鮮学校を差別するのはおかしい」と憤る。在日コリアンヘのヘイトスピーチが問題となる中「当事者はリスクを抱えながら街頭に立っている。日本人も関心を持って」と呼びかける。

     火曜アクションの事務局を務める金賢哲(キムヒョンチョル)さん(29)=左京区=は「声を上げ続けないと、差別を受け入れることになる。今後も草の根で訴え、問題解決に近づきたい」と力を込めた。


    ヒューライツ大阪によると、国連人種差別撤廃委員会は2010年「朝鮮学校を高校無償化の対象から除外する動きについて懸念を表明」し、日本政府の外国人の教育の権利の差別的取り扱いを批判しました。


    11月15日 政府 子育て時短勤務に現金

     政府は、育児休業明けで子育てのため勤務時間を短くして働く人向けに、新たな現金給付制度を創設する方向で検討に入った。給付は雇用保険加入者が対象で、賃金の一定割合の金額を雇用保険から拠出し、上乗せする案で調整する。時短勤務で賃金が減る中、子育てと仕事の両立を支援する狙い。複数の関係者が15日までに明らかにした。。

     時短勤務には、育児のため通常の勤務時間で働くことが難しい人が仕事を続け、徐々に本格的な復帰を目指してもらう目的がある。ただ慣れない両立に不安を抱え、賃金減少も重なるため働く意欲が低下し、離職につながりやすい。政府は、就労の継続や通常勤務復帰によるキャリア形成を後押しする新たな方策が必要と判断した。

     2024年の通常国会に関連法案の提出を目指す。雇用保険財政は逼迫しており、財源確保が難航する可能性がある。政府は、全世代型社会保障構築本部で22年末にもまとめる改革工程表に、少子化対策の一環として現金給付制度の方向件を盛り込む方針。賃金の何割にするかや給付期間など具体的な制度設計は23年から議論する。

     雇用保険には、正規、非正規の雇用形態にかかわらず週20時間以上働く人が加入。時短勤務は原則、3歳未満の子どもがいる人が求めた際、企業は応じる義務がある。新制度では、例えば育休前に1日8時間勤務の人が、時短で6時間となった場合、6時間分の賃金の一定割合を雇用保険から給付し、賃金に上積みする。


    【インサイド】育児負担の女性偏り懸念

     子育て中の時短勤務は、出産・育児に伴う離職やキャリアの断絶を防ぎ、フルタイム勤務への復帰につながる。政府の新たな給付制度は、そうした効果に加え、子育て世帯を経済面で支える役割が期待される。一方で、家事・育児に関する負担の女性への偏りを助長する可能性もある。

     2021年の出生動向基本調査によると、15〜19年に第1子を産んだ働く女性の69.5%が就労を継続。育児休業制度や保育環境が拡充された影響が大きい。

     この中には、正社員から、契約社員やパートなどの非正規雇用に転じて働く人も含まれる。近年は女性に関し、年齢が上がるにつれて正規雇用で働く割合が減るとの指摘がある。政府関係者は新制度の意義を「育休前にしていた仕事の継続を後押しし、フルタイム復帰を目指す動機づけになる」と強調する。

     21年度の雇用均等基本調査で、時短勤務の利用者がいた事業所の中で男性の利用があったのはわずか5.6%だった。女性ばかりが時短勤務を選んでいる流れを変えないと、いびつな現状が温存される恐れがある。

     ある厚生労働省幹部は「妻だけが家事や子育ての負担を背負い、夫はフルタイムで稼ぐという状況を助長するかもしれない」と懸念。仕事と育児を夫婦で分かち合う環境づくりが急務になると強調した。


    子育てのために退職を余儀なくされることを回避するために一定の給付をすることには意義がるかもしれない。しかし、公務員でも部分休業制度はあるもの男性の取得は稀。まして民間企業において目的とする成果を得ることができるのかどうか。かえって「育児は女性の仕事」という考えを助長するのではないかという懸念は当然。むしろ部分休業を取得する割合を男女比1:1にするなどの法規制を行うことの方が効果があるかも?


    11月15日 厚労省 大学生の生活保護認めず

     厚生労働省は14日、社会保障審議会の部会を開き、5年に1度の生活保護や生活困窮者支援制度の見直しに向けた報告書案を示した。保護受給世帯からの大学進学を支援するため、従来よりも貯蓄を柔軟にできるようにする一方で、保護を受けながら大学に通うことは引き続き認めない方針。年内に正式決定する。

     報告書案は、生活保護を受けていない世帯の子どもでも、奨学金やアルバイトにより学費や生活費を自ら用意しているケースがあると指摘。一般世帯とのバランスを考慮し、保護を受けながらの進学を認めていない現行制度の運用見直しには「慎重な検討が必要」と強調した。

     生活保護受給世帯の子どもが大学に通うには、自身を生活保護の支給対象から外す「世帯分離」をして生活費を稼ぐ必要がある。これまでの議論で、新型コロナウイルス禍を踏まえ、アルバイトの機会がなくなるなどして収入が減った学生に一時的に生活保護利用を認めるよう求める声もあったが、報告書案は否定的な考えを示した。進学のための貯蓄は現在、塾費用や大学入学金に充てる目的であれば、保護費を減額されずに高校生のアルバイト収入をためることが可能になっている。報告書案では、進学前に納付する前期授業料なども含める考えを示した。

     このほか生活保護受給世帯の子どもが高校卒業後に就職する場合の一時金支給や、受給者らが利用する無料・低額宿泊所を自治体に無届けで運営する事業者への罰則創設も盛り込んだ。


    「大学生なら自分で授業料などを稼ぐのが当たり前」とする世間的な判断を是認した形。しかし、日本の教育は極端に公費の支出が少なく、利益者負担の傾向が強い。教育制度への言及がない中での大学生の保護受給を認めないのは正しい判断なのだろうか。


    11月13日 元市教員ら 「自主夜間学校」で学び直しを

     居住地や学歴などを問わず、学びたい人が自由に訪問できる「自主夜間学校」の開校準備が、京都市内で進んでいる。公立夜間中学校の制度から漏れ、通学がかなわない人を受け入れる「学びのセーフティーネット」として、元教員ら有志が来年4月の開校を目指している。

     夜間中学は、戦争や家庭の事情で義務教育を十分に受けられなかった人に加え、近年は不登校を経験した人や外国籍の子どもらが通うなど多様な学びの受け皿になっている。国は2017年施行の教育機会確保法で、都道府県と政令市に1校以上の夜間中学設置を促しており、現在は京都市立洛友中(下京区)を含め、15都道府県に40校ある。

     一方、いずれも公立校のため、居住地や最低通学日数の規定があるほか、高卒の人は原則、入学できないなどの条件が設けられている。通いたくても通えない人もいることから、誰もが自由に学び直せる場をつくろうと、洛友中の元教員で「京都部落問題研究資料センター」(北区)の川端宏幸さん(61)が、京都での自主夜間学校設立準備委員会を10月に立ち上げた。

     夜間中の元教員や小中学 校の現役教員、大学生、外国籍児童の学習支援団体メンバーら約40人の賛同人が実行委員会をつくり、ボランティアで指導に当たる。京都府部落解放センター(同区)を会場とし、義務教育未修了者を含めて学力や居住地、年齢などを問わず、学習を希望する人を無料で受け入れる。同様の取り組みは全国でも広がっており、他地域で自主夜間学校を運営する団体を招いて研修会を行うなど、来春の開校までに体制を整える。

     20年の国勢調査で、最終学歴が「小学校卒業」の人や、小中学校に在籍したことがない「未就学」の人は約90万人に上ることが判明。うち京都府は約1万3千人、滋賀県は約1万1千人という。川端さんは「教育の最後のとりでとなる夜間中学を補完するする役割を担いたい。自由に学び直せる場を求める声は相当数あり、誰もが安心して集まれる学校にしたい」と話す。

     入学希望者には、開校前から学習支援を随時始める。指導ボランティアも募っており、問い合わせは準備委事務局075(415)1032


    夜間中学校の設立促進を求める声は大きい。京都府でも以前から南部地域に設立の要望があるが府は検討中という。「自主」とうたわなければ多様な生徒の受け入れができないという現実ははたして適切な夜間中学校(公立)なのだろうか。


    11月13日 【社説】個性に応じた学び提供を

     記憶力や芸術性など突出した才能を持つ一方、学校になじめない子どもが少なくない。

     こうした子どもの支援に文部科学省が来年度から乗り出す。円滑な学校生活を送れるように教員らがそれぞれの特性を見いだし、個性に応じた学びを提供できるかが試される。

     際立った才能を持つ子どもは「ギフテッド(才能児)」と呼ばれる。日本ではあまり認知されていないが、国内にも90万人程度いるとの推計もある。ただ学校教育では一斉授業が主流で、個別支援はほとんど行われていない。

     海外では、上位2%程度の知能指数(IQ)130以上といった基準を設けるなど、同年齢よりも高い知能や創造性、芸術的才能などを発揮する子どもを選び、特別な教育プログラムを用意している国も多い。

     1950年代から支援を進めてきた米国は、連邦法でギフテッドを定義し、飛び級など才能教育を実施してきた。韓国は2000年に英才教育振興法を制定し、教員の推薦で選抜した子どもを英才学校などで指導。フィンランドは同じ教室での教育が中心だが、子どものニーズに合わせた柔軟なクラス編成を行っている。

     対して、日本では見過ごされてきたと言わざるを得ない。

     抜きんでた才能を持つゆえに学校教育の枠に収まりきらず、学年ごとの授業内容が退屈で不登校になったり、周囲に適合できずに「空気を読めない子」としていじめを受けたりする事例も目立つという。

     このため、文科省は昨年6月、才能児に対する学校での指導や支援の在り方を検討する有識者会議を立ち上げた。

     発達障害と見分けるのは専門家でも難しく、才能児をどのように把握するのか。どのような支援が適切か。同会議は先頃、対象となる子どもを理解するための周知・研修の促進や、実証研究を通じた実践事例の蓄積といった提言をまとめた。

     これを受け、文科省は新規事業として来年度予算の概算要求に関連経費1億円を計上した。大学や教育委員会に委託し、教員向け研修ツールの開発や実証研究校の募集などにより支援策づくりを進める方針という。

     長らく学校教育は、横並びの画一的な授業が基本であったため、才能児は十分な支援を受けられなかった。教室に居づらかった子どもに目を向け、各自の興味や学習進度に応じて主体的に学べる環境を整えることは一歩前進に違いない。

     ただ文科省は「過度な競争を招く恐れ」があるとして、支援策をエリート教育とは位置付けていない。米国や韓国などとは大きく方向性が異なる。

     確かに特異な才能ばかりが注目されるのは危うい。多忙を極める学校現場にさらに負担がかかる懸念も拭えない。

     多様性を認め合い、個性を尊重する学びをいかに実現していくか。より一層才能を磨くにはどんな支援が必要なのか。

     ようやく踏み出すことになった才能児支援の実践事例を踏まえつつ、改めて日本社会にふさわしい在り方を模索するべきであろう。


    「ギフテッド」に対する認識は他国と日本とでは大きく違っているのだろう。学校が「職業配分機能」を果たすことを了解している国では比較的理解を得やすいはず。日本ではそれを「英才教育」として個々の世帯の資力に依存しているなかでは、公費を費やして「ギフテッド」対策を行うことは容易ではないだろう。「個別最適な学び」を拡大する方向に向かうかもしれない。いずれにしても、現場教員の負担は大きくなると危惧する。


    11月13日 林業大学校 10周年の記念式典

     府立林業大学校(京丹波町本庄)の創立10周年を記念した式典と講演会を12日、同町本庄の和知ふれあいセンターで開かれた。関係者が地域林業の発展を願い、節目を祝った。

     同校は2012年、西日本で初めて森林の保全と林業の担い手育成を目的に開校した。林業の知識や技術を総合的に習得する2年制の「森林林業科」と社会人向けの短期講座「研修科」を設けており、卒業生の多くが府内の森林組合や林業会社で働いている。

     記念式典には、林業従事者や在校生、府職員ら約150人が出席した。授業の様子や地元住民との関わりを紹介するスライドショーが流され、10年間の歩みを懐かしんだ。柴田繁校長は「学校運営に協力してくれた地域の方々に改めて感謝したい。今後も林業人材の育成に力を注いでいく」とあいさつした。

     在校生による高性能林業機械シミュレーターの実演や、農林中金総合研究所の皆川芳嗣理事長による講演もあった。


    【林業大学校】で検索すると、岩手県立農業大学校群馬県立農林大学校金沢林業大学校長野県林業大学校岐阜県立森林文化アカデミー京都府立林業大学校和歌山県農林大学校林業研修部島根県立農林大学校高知県立林業学校のようなリストが出てくる。山間部の活性化につながる取り組みではあるが、藻谷浩介『里山資本主義』的な産業開発につながるようになるとすればどうしても「エネルギーの地産地消」は避けて通れないだろう。


    11月12日 ユニセフ 子どもの環境「コロナ以降、後退局面」

     ロシアが侵攻したウクライナ、甚大な洪水被害のパキスタン、女子教育の再開が見通せないアフガニスタン―。世界の子どもを支援する国 連児童基金(ユニセフ)トップのラッセル事務局長がこのほど来日し、共同通信に「改善傾向にあった状況は新型コロナウイルス禍以降、後退局面に入ってしまった。絶望的な状況にある」と指摘した。

     「訓練で子どもたちが地下にシェルターを掘り、空襲警報に合わせて公園から散り散りに去って行った」。ラッセル氏は9月にウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問。学校の再開時期に合わせた視察だったが、目の当たりにした光景は「普通ではなかった。子どもにとってひどい経験だ」と肩を落とす。

     3月にはルーマニアのウクライナ国境付近を視察し、疲れ切ったウクライナ人女性や子どもの声を聞き取った。「皆できる限り早く国に戻りたいと口にするが、困難な状況だ」。戦闘が続くため、東部の前線地域には支援物資を届けられない。冬の到来を前に防寒着やテントを送る用意があるが、現状を「誰も解決できない」と嘆いた。

     ラッセル氏はハイテン米政権下で大統領補佐官を務めるなど政府要職を歴任し、2月に着任した。コロナ禍で悪化した子どもの教育環境改善が急務だったが、2月からのウクライナ侵攻や6月以降にパキスタンで甚大な被害をもたらした洪水など災害発生も重なり、世界的に状況は悪化の一途をたどる。

     アフガニスタンではタリバン暫定政権が打ち切った女子中等教育(日本の中学・高校に相当)が大きな課題。パキスタンでは「洪水が学校を流し去り、地域社会が水面下に沈んだが、世界の注目を得られていない」。紛争が続いたエチオピアでは2日に政府と反政府勢力が停戦合意に至ったものの、一部地域で深刻な食料危機に直面している。

     今月20日は国連が定める「世界子どもの日」で、国連は例年キャンペーンを展開する。



    11月11日 政府 子ども庁がいじめ窓口

     政府が、来年4月に発足する「こども家庭庁」で、各地域にいじめに関して相談できる窓口を設置する事業を展開することが10日分かった。学校の外に相談できる場を設け、いじめに悩む子どものSOSを察知する狙い。命に関わるような重大事案が発生した場合に、国が任命する担当者が、原因を究明する第三者委員会に関して助言する。

     身近な存在として相談相手になりそうな教職員との間に信頼関係が築けず、悩みを抱え込む子どもがいることが考えられる。政府はこうした事態に対応するため、こども家庭庁を活用し、既存の相談窓口と両輪で対策を強化する方針。なるべく早期に始める考えだ。

     子どもの自殺は増加傾向にある。学校でのいじめが原因となる事例も少なくない。文部科学省によると、小中高校などが2021年度に認知したいじめは61万5351件で過去最多。

     一方、こども家庭庁設立準備室が実施した調査によると、全国の221自治体のうち、いじめに関する相談窓口を首長直轄の部局に設けているケースは40%止まり。自治体が全面的に取り組んでいるとは言い難い。

     自殺などの重大事案が発生した場合、原因究明を目指し第三者委が設けられる。こども家庭庁は、委員の選出や運営の方法を首長に助言する「いじめ調査アドバイザー」を任命。臨床心理士や弁護士などを民間から積極的に登用することが想定される。委員会で、再発防止策に向けた議論を円滑に前進させる考えだ。


    【インサイド】関係機関、垣根超え対策

     交流サイト(SNS)の普及を背景に、いじめの実態が複雑になったのに、教育現場で教職員が子どもと向き合う時間を取りにくくなっている。こども家庭庁設立準備室は、教育委員会外の首長部局に相談窓口を整備するよう推奨している。

     同準備室が今年4〜5月に都道府県と政令市を含む全国の221自治体を対象に実施した抽出調査によると、首長直轄の部局にいじめに関する相談窓口を設けているケースは40%止まり。対応が道半ばにある実態が明らかになった。いじめ専門の窓口をつくった所や、いじめを含む窓口を設けた所がある。

     いじめに遭っても学校内で言いづらく、悩みを・抱えている子どもがいると考えられる。北海道旭川市では昨年、いじめを受けていた中学2年生の生徒が死亡する事件が発生した。小倉将信こども政策担当相は「学校や教育委員会がさまざまな関係機関と情報共有して支援することで解決につながる事案もある」と指摘。機関の垣根を越えて協力しながらいじめ対策に力を注ぐ考えを示している。


    岸田内閣への信頼感が急速に減じているなかで、建前だけの政策が目立つ。こどものいじめ対策でも中央官庁が主導する形になるが実務を担当するのは各自治体。予算的な裏付けが必要なわけで、それがなければ機関を設けるというアリバイだけに終わってしまう懸念がある。嫌でも、1機が1億から2億円もかかる射程が1000キロを超えるトマホークの導入とを天秤にかけたくなる。


    11月10日 市教委 持久走に衣替え

     京都市教育委員会は9日、小学6年生が市内を走る「大文字駅伝」の休止に伴う新競技大会「京(みやこ)キッズRUN」を来年2月 12日、京都市右京区のたけびしスタジアム京都で開催する方針を明らかにした。学校対抗の駅伝形式はやめ、各校の予選を通過した児童が1000メートルの持久走で、個人記録を競うスタイルに一新する。

     市議会教育福祉委員会で報告した。新大会は、駅伝と同じ小学6年生が対象。全市立、国立、私立、民族学校に参加資格がある。希望する児童は各校で実施する1000メートルの記録会に挑み、男子4分20秒、女子4分40秒の標準記録をクリアすることが必要。その上で、各校が選んだ男女とも最大各4人が本大会に進む。本大会は、地域別に4グループに分けて2時間ごとに行い、スタッフや選手の負担を軽減する。

     全国でも珍しい公道利用の大文字駅伝は、1987年に始まり、京都の冬の風物詩として親しまれた。一方、練習の過熱化による児童の身体への悪影響や運営に携わる教職員の負担などの課題が指摘され、市教委は6月末に休止を発表していた。

     委員会に出席した市議からは「本大会の出場を目指す部活動のような動きができて、結局、練習が過熱するのではないか」「本選に出場する児童の数が限られており、標準記録を超えても出られない子どものフォローも必要」との意見も出された。

     市教委体育健康教育室は「この形でまずやりたい。課題などがあれば柔軟に対応していきたい」とした上で、「子どもの健全育成や切磋琢磨することなど駅伝の果たしてきた役割を引き継ぐ。新大会は校内記録会を設けて参加の裾野を広げており、児童の体力向上につなげていきたい」としている。


    悪評だった「大文字駅伝」が廃止ではなく衣替えすることになった。子どもや教職員、親への負担は軽減されるかもしれない。ただ、新競技大会に出場するための校内記録会を必ず設けるということになれば単なる看板の架け替え過ぎない。学校ごとの考え方が尊重される方向で考えてもらいたい。また、学校間の「同調圧力」に負けない学校運営ができる管理職の力量も見過ごすことはできない。


    11月10日 大学入試センター 共通テ、実用力重視鮮明に

     2025年1月の大学入学共通テストから出題教科・科目が再編されるのを前に、大学入試センターは9日、高校で必修化された「情報I」や公民の「公共」など新科目を含む試作問題を公表した。各教科でグラフや資料を多用。学校での授業や生徒らの会話、現実的な課題の解決策を考え議論する場面など、社会で直面する状況を想定した内容が目立ち、学習知識を実用的に使いこなす力の重視傾向が鮮明になった。

     再編は現在の高校1年から新学習指導要領が実施されたことを受けたもので、現行の6教科30科目から7教科21科目に変わる。センターは国語で大問を追加し、試験時間や配点を変えるといった各教科の変更点も明らかにした。

     問題が試作されたのは、国諸、地理歴史、公民、数学、外国語(英語)、情報の各教科で、変更が少ない理科は対象外。情報科目の「情報I」ではテスト形式の全体イメージが初めて示された。地歴は世界史と日本史を関連付けて学ぶ「歴史総合」や探究科目に刷新され、公民で「公共」が登場した。国語と英語については変更のあった一部のみを公表した。

     センターによると、大学生の協力を得て試作問題を使ったモニター調査を行い、難易度や分量を検証する。担当者は知識を活用した思考力、判断力、表現力を問う工夫を凝らしたとし「(本番は)試作問題がベースになる」と述べた。来年6月、正式な問題作成方針を公表する。

     情報Iでは、代金を支払う際の「上手な払い方」をプログラミングを通じて考える問題や、交流サイト(SNS)を利用する際の注意点、情報デザインの考え方を問うなど、指導要領の内容を満遍なく出題した。

     25年のテストでは、旧科目の「社会と情報」などを学んだ浪人生向けに「旧情報」の問題も作成。新旧の情報科目に一定の平均点の開きがあれば、受験者数にかかわらず得点調整の対象とする。

     公共では、人口減少問題や、動物愛護の観点から近年議論になっている家畜の幸福について題材とするなど、知識を課題解決に役立てることを意識した出題が多かった。試作問題はセンターのホームページに掲載されている。


    国語の問題量増加へ

     大学入試センターは9日、2025年1月からの大学入学共通テストにおける変更点を公表した。国語で近代以降の文章を扱う大間を1問増やすほか、地理歴史、公民や数学などにも選択方法や試験時間に変更がある。

     入試センターによると、国語はリポート作成や討論といった言語活動の力を見るため近代以降の文章の大間を2問から3問に増やし、配点は10点増の計110点にする。実用文も題材として扱う可能性が高いという。古文、漢文の配点は計90点に減らし、国語全体の解答時間を10分延長する。

     地歴、公民の受験科目は、「地理総合、歴史総合、公共」や「地理総合、地理探究」など計6科目に再編。2科目受験の場合は、一部の組み合わせを除き、同じ名称が含まれる科目は選べない。

     「数学I・A」は大問の選択がなくなり、全問解答に。「数学U・B・C」は、試験時間を70分に設定する。理科は現行の地歴公民と同様、一つの時間帯で2科目受験できるよう時間割を調整する方針だ。

     英語はリーディング、リスニングの出題形式を通して「読む」「聞く」「書く」「話す」の技能を統合した言語活動能力を評価する。

     また、地歴、公民と数学、情報については、浪人生向けの経過措置として旧課程の科目に対応した問題も作成。うち地歴、公民に限っては、出願時に新旧どちらを受けるか、申請が必要となる。



    11月9日 中学部活 「うるまモデル」に注目

     公立中学校の運動部活動などの運営を地域団体に移行する「部活動改革」で、沖縄県うるま市の先進的な取り組みが注目を集めている。地元プロスポーツチームと連携した指導者の登用や、財源確保に向けた「企業版ふるさと納税」の活用だ。今後各自治体が直面するであろう課題に対し、5年前から向き合ってきた成果が一つのモデルケースになるかもしれない。

     「常に同じポイントで打とう」「さあ打ったら元の場所に戻って」。うるま市立あげな中の男女卓球部では週2日、プロ卓球チーム「琉球アスティーダ」のアカデミーでコーチを務める長田晟さんが指導に当たる。

     40人以上いる教諭の半分が残業70時間を超えていた同校は、2022年度からバドミントンやサッカーなど計6競技で外部指導員に依頼。島袋勝範校長は「顧問には未経験者もおり、どう教えたらいいか分からない心理的負担もあった。解決の一助になる」と語る。

     橋渡し役となったのが指導者の人材バンク設置など部活動の地域移行を全国で推進する「スポーツデータバンク社」だ。17年からうるま市と連携し、市内2校で始まった事業は現在、離島を除いた9校で導入。バスケットボール部にはBリーグー部の琉球でプレーした元選手も派遣。スポーツ庁の有識者会議で委員を務めた石塚大輔社長は「質の高い適切な指導が受けられるのは子どもにとって大きい」と話す。

     実施校が増えるにあたって重くのしかかったのが指導者への謝金だ。「指導の質」を重視するうるま市では一般的な外部指導員の2倍近い時給3千円を支給。スポーツ庁によると、民間団体へ移行した場合に指導や保険の費用が従来より生徒―人当たり年間約1万7千円高くなるとの試算がある。困窮世帯の生徒が参加できない事態を避けるための方策は急務となっている。

     運営資金の確保のために同社が目を付けたのが「企業版ふるさと納税」だ。自治体の地域活性化事業に寄付した企業の法人税などの税負担を最大9割軽減する。個人版と違って返礼品がなく、寄付額の少なくとも1割は企業の支出になるが、社会貢献をPRできるのがメリット。導入した21年度は約1500万円が集まった。

     学校体育施設を円滑に民間団体へ貸し出すためのシステムの試行も始まり、スポーツ庁の室伏広治長官は今年2月にうるま市の取り組みを視察。既に休日移行の土台は整っており、同市の嘉手苅弘美教育長は「スムーズに取り組める」と自信を見せる。25年度までに100以上の自治体への支援を日指す石塚社長は「各地域で状況が異なるが、うるまモデルが取り組みの後しになることを期待したい」と青写を描いている。



    11月9日 性的少数者14%自殺未遂

     10代のLGBTQ(性的少数者)の48%が過去1年間に自殺を考えていたことが、支援団体の調査で分かった。10代全体の割合と比べると、3・8倍高い。LGBTQの社会的な認知度は高まっているものの、ほとんどの人が保護者や教師に相談できず、思春期に適切な支援を得られていない実態が浮かんだ。

     調査した認定NPO法人「ReBit」(東京)の薬師実芳代表理事は「政府や自治体は若年のLGBTQが抱えるリスクを把握し、自殺や孤独・孤立の対策に、きちんと位置付けてほしい」と求めている。

     調査は9月にインターネットで実施し、12〜34歳の当事者約2600人から有効回答を得た。

     10代のうち、この1年で自殺を考えたのは48・1%で、自殺未遂をした人も14・0%いた。日本財団(東京)が昨年実施した調査での10代全体と比べると、いずれも4倍前後高かった。安心して相談できる相手や場所があると、割合が低くなる傾向が見られた。

     回答者全体の91・6%は「保護者に相談できない」、中学生い大学生の93・6%は「教職員に相談できない」と答えた。

     10代、20代とも30%近くが孤独を感じており、両年代とも政府調査の全体に比べ大幅に高かった。自由記述では「先生たちに理解がなく『思春期の一時的な気の迷い』と言われて、つらかった」「親にカミングアウトしていないので、好きな服を着たいと言えない」などの声が上がった。



    11月9日 府教委 中学部活の地域移行支援

     来年度から本格化する公立中学の休日部活動のスムーズな地域移行を目指し、京都府教育委員会は、府内市町村教委の準備活動を支援するアドバイザーを配置する。府教委によると、初動に不安を抱えている自治体がほとんどで、依頼に応じて地域の実情に合った助言をする。

     アドバイザーは、府地域部活動推進検討委員会の委員長を務める立命館大スポーツ健康科学部の長積仁教授のほか、府教委保健体育課の指導主事2人が務める。配置期間は来年1月末まで。

     国は、地域移行推進のために、市町村に受け皿となる地域スポーツ団体や学校などの関係者が集う協議会設置を想定している。ただ、府教委によると、国のモデル事業に取り組む舞鶴市と京丹波町以外、ほとんどの自治体は取り組みに着手したばかりで、地域事情に応じて、どの団体と組めばいいのかなど組織づくりについて意見を述べる。現地にも出向き、指導者や部活動の場所の選定、公費負担の在り方など情報共有や課題の洗い出しも手伝う。

     長積教授は「アドバイザーが主導して、『こういう風にしませんか』と提案するのではなく、各市町村が問題に向き合っていけるよう導きたい」と話している。

     国は、来年度から3年間かけて、これまで教職員が担っていた部活動を地域のスポーツ団体や民間に委ね、将来的には平日の移行も視野に入れる。地域移行を巡っては、京都市は松原中(中京区)と近衛中(左京区)の2校で国委託の民間事業者による取り組みを続けており、市は近く庁内に検討組織を設ける予定。



    11月9日 【取材ノートから】 給食の残品 活用検討を

     家庭や店舗で余った食品を集めて福祉施設に届ける活動など食品ロス削減の動きが活発化する中、モヤモヤを感じる取材を担当する事になった。京都市立小の校長が児童の欠席や予備分で余った未開封の牛乳とパンを「もったいない」という理由で持ち帰るよう教員に指示したところ、市教育委員会から昨年、処分されたというのだ。

     なぜ校長は処分されたのかを市教委に取材した。給食は衛生管理を徹底する必要があり、京都市のマニュアルでは余った学校給食は全て廃棄することになっているという。また保護者のお金で購入した給食物資を教員が私的に持ち帰るのは不適切という見解だった。

     いずれの理由も正当で納得できる。ただ学校給食には、大量の食品ロスを生じさせているという側面がある。環境省の2015年の調査によると、児童生徒1人当たり年間の給食廃棄物の量は推計で約17・2sに上るという。

     このような実態を受け、食育やメニュー改善を通じて給食の食べ残しを減らす取り組みをする自治体は少なくない。京都市もそのうちの一つだ。授業で食品ロスの問題を取り上げたり、食材の無駄をなくす調理法を給食で実践したりしている。

     一方、今回の校長の処分で問題となった「給食として用意したものの提供されなかった残品」の廃棄を減らそうとする動きは見られない。文部科学省の学校給食衛生管理基準に「残品はその日のうちに全て処分する」と記されていることもあり、京都滋賀の自治体を複数調べた範囲ではいずれも一律に廃棄していた。草津市など廃棄後に牛乳以外を飼料や堆肥にするケースはあった。

     給食に十分な衛生管理が求められるのは当然だ。ただ残品は冷蔵庫で保存するなど適正管理されているはずのものであり、その日の給食 で消費されなかったからと言って、ただちに廃棄しなければならないものなのだろうか。

     文部科学省健康教育・食育課に聞いた。担当者は「給食は防腐剤が入っておらず傷みやすい上に、持ち帰って飲食し体調を壊しても学校は責任が負えない」とのことだった。一方で「給食の管理は衛生面が最優先と考えるが、食品ロスの観点もある。処分の在り方については自治体ごとの工夫があってもよいのでは」とも語った。

     衛生管理基準の目的が健康被害の防止だとすれば、適切な管理と短期間での消費を条件に、残品の牛乳やパンを地域の子ども食堂などに提供するのは、検討の余地があるのではないか。例えそれが難しくても、残品を捨てない方法を模索するのは大切なことだ。

     その際、保護者の意見を聞くべきだと考える。校長の処分の根拠にもなったように、給食物資は保護者のお金で購入されている。給食費の適正な使い道を考える時、残品をどのように扱うか説明したり合意を得たりするのは当然だろう。(大西幹子)



    11月7日 府教委 府立高改革向け議論

     京都府教育委員会は、府立高校改革について議論する外部有識者会議「魅力ある府立高校づくり懇話会」を設置し、初回会合を10日に開く。保護者や府民の関心が高い高校再編の検討などについて意見を求める。府教委は意見を踏まえて、来年度中に方向性を示した「基本計画」を策定する。

     懇談会は、府内の中学・高校のPTA関係者、市町の教育長、中学・高校の校長、大学教員、企業関係者ら12人が委員となり、本年度末までに5回程度会合を重ねて意見をまとめる。

     テーマは、今年3月に策定した「府立高校の在り方ビジョン」で示されている項目のうち、各地域における望ましい学校配置数や学校規模の在り方▽定時制・通信制課程の再編や再配置▽多様な生徒のニーズに対応した柔軟な教育システムによる学校整備―の三つについて議論を深める。

     学校配置数や学校規模を巡っては、少子化による生徒数の減少や学校小規模化が課題となっている。定時制や通信制に関しては、勤労学生の進学先から、不登校や特別な支援が必要な生徒の受け皿になるなど従来とは役割が変化している。柔軟な教育システムによる学校整備の検討では、基礎的な学習におけるつまずきを学び直し、社会で必要な力を養う「エンパワーメントスクール」を想定する。

     今後は、基本計画策定後に、丹後や中丹、口丹、山城など地域別の実施計画を順次まとめる。具体的な校名などは、実施計画で明らかになるという。

     高校再編について、担当者は「生徒数の減少のみに着目した一律的な基準は設けないことが前提。結論ありきではなく、地域の実情に合わせて検討してもらう」としている。


    これまでも高校再編が何度も議論されてきている。だが、あまり効果的な内容が生まれたようには見えない。過疎化地域での高校の在り方や定通教育の方向、学び直しなど現代的な課題が議論されるようだが、進学だけが進路ではないことを分かりやすく議論されることを期待したい。


    11月4日 大阪府警 一次評価教員にも接触

     大阪府藤井寺市立中の教科書選定を巡る贈収賄事件で、贈賄容疑で書類送検された「大日本図書」(東京)の関西支社の男性社員(35) が、加重収賄容疑で書類送検された西留俊春元市立中校長(61)から、各社教科書を一次的に評価する調査委員会の教員の氏名を聞き出し、実際に複数の教員に接触していたことが3日、府警への取材で分かった。

     教科書選定は@現場教員らによる調査委での内容精査A校長や教頭ら9人による選定委員会での最終候補絞り込みB教育長ら5人による市教育委員会での採択―の3段階で行われる。府警は男性社員が自社教科書に初期段階から高評価を付けてもらおうと働きかけた可能性があるとみている。

     事件では、男性社員のほか贈賄容疑で大日本図書の元男性取締役(65)も書類送検された。

     府警によると、元校長は2段階目の評価を担う選定委メンバーの一人で、自校から調査委に選ばれた教職の氏名数人分を元取締役や男性社員に漏らしたという。

     また元校長が選定委員会で、大日本図書の教科書の利点をアピールしていたことも判明。府警によると、元校長が調査委での精査の結果を元取締役らに伝え、元取締役らはそれを踏まえて教科書の優れた点を元校長に説明していたという。

     2020年7月に選定委が市教委に報告した「調査概要」には数学、理科、保健体育の同社3教科書に推薦を意味する「◎」の印が付いており、理科を除く2教科が採択された。



    11月3日 大阪府警 中学教科書選定で贈収賄

     大阪府藤井寺市立中の2021年度教科書選定を巡り、教科書会社に便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして、大阪府警は2日、加重収賄容疑で、市立中校長として選定に関わった西留俊春元校長(61)=同府松原市=を書類送検した。贈賄容疑で「大日本図書」(東京)の元男性取締役(65)=同府富田林市=と、関西支社の男性社員(35)=奈良県大和高田市=を書類送検した。

     元校長の書類送検容疑は21年度の教科書採択前の20年4〜7月、各社の特色を精査する調査委員会メンバーの氏名や、実際の評価内容を記載した資料を漏らした見返りに、元取締役らから現金3万円を受け取り、計約3万3千円相当の飲食やゴルフの接待を受けた疑い。府警は3人の認否を明らかにしていない。

     教科書の選定は原則4年ごとに行う。府警などによると、元校長は、教員らで構成する調査委からの報告を受け最終候補を絞り込む「選定委員会」のメンバー9人のうちの1人。選定委の報告後、市教育委員会の5人が多数決で採択する。

     大日本図書は数学、理科、保健体育の3教科が候補となり、理科を除く2教科が採択された。元校長は20年4月から7月まで選定委員を務めた後、中学校を今年3月に定年退職。元取締役は先月に辞職した。

     大日本図書は小中学校の教科書を中心に出版し、小学校の理科の教科書シェアが業界トップ。同社を巡っては東日本支社長が今年7月に茨城県五霞町の教育長と料亭で会食し、同社側が全額負担していたことが9月に発覚。教育長が10月に辞職する事態となった。

     同社は藤井寺市の事件に関しホームページで「多大なるご迷惑とご心配をおかけしますこと、心よりおわび申し上げます」とのコメントを出した。


    教科書採択に関わる事件は後を絶たない。わずか数万円のお金で判断が左右さるのだろうか?採択(制度)の構造的な問題があるのではないかと思う。いわゆる「広域統一採択制度」では、一社の寡占状況になりやすい点も、収賄事件の温床だとの指摘もある。
    また、紙の教科書ではなくさらに高価なデジタル教科書の本格的な導入になれば売り込みは激烈になるだろう。