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ロシア 強まる対応措置論(10/10)

首都着弾も劣勢挽回困難(10/12)

ロ軍攻撃で電力施設損壊(10/13)

ザポロジェ原発が外部電源一時喪失(10/13)

プーチン氏 苦境認める(10/17)

イラン 兵器供与で勢力拡大(10/18)

ベラルーシ参戦警戒(10/19)

ロシア 併合4州に戒厳令(10/20)

核演習 ロシアが実施(10/27)

「解放者」へ敵意にじむ(10/29)

プーチン氏、核先制使用を否定(10/29)

ロシア、穀物輸出履行停止(10/31)

【インサイド】合意の見返りなしに不満(10/31)

ロシア攻撃、生活に照準(11/2)

「汚い爆弾」検証(11/2)

ロ、へルソン州西岸撤退へ(11/10)

南部州都へルソン州奪還(11/12)

占領7ヵ月「軍待っていた」(11/15)

ロシアのミサイル ポーランド領内着弾2人死亡(11/16)

ポーランドにミサイル着弾(11/16)

戦火拡大リスクあらわ(11/17)

外交活発化で停戦模索も(11/24)

インフラ損傷 全土緊急停電(11/25)

世界の兵器販売1.9%増(12/6)

(ウクライナ)ソ連製無人機を使用か(12/9)

奪還の街に響く砲声(12/13)

クリミアのロ兵舎攻撃(12/13)

キーウ再侵攻を警戒(12/18)

米ウクライナ首脳会談 出口戦略 なお見えず(12/23)

侵攻10ヵ月 ウクライナ反攻強化(12/24)

北朝鮮、ロシアに武器売却(12/24)

「命 差し出せぬ」召集おびえ(12/26)

敵兵でも遺体は家族に(12/28)

ウクライナで高まる民族意識(1/4)

領土割譲85%「認めない」(1/4)

プーチン氏36時間停戦命令(1/6)


ロシア 強まる対応措置論(2022/10/10 京都新聞)

 ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の実効支配の象徴であるクリミア橋が8日爆発、一部が崩落した。プーチン大統領が建設を推進し、ウクライナ侵攻では重要な補給路となっていた。原因は不明だが、ウクライナ側の破壊工作の可能性があり、ロシア議会では「強硬な対抗措置」を求める声が強まる。核兵器使用を示唆し、ウクライナや米欧を威嚇してきたプーチン氏を刺激したのは間違いない。

 「ウクライナ軍の勝利だ」。首都キーウ(キエフ)市庁舎前の目抜き通りでは8日、記念撮影をする人が後を絶たなかった。通りにはクリミア橋が炎上する絵が掲げられており、音楽大学の学生数人が国歌を歌った。

 橋は2018年に完成し、クリミア半島にロシア本土から物資や人を輸送する生命線。ウクライナ南部ヘルソン州などに駐留するロシア軍にとり不可欠な補給路で、通行不能にすることはウクライナ側の悲願だった。

 一方、ロシアにとっても、クリミアでの主権維持は「譲れない一線」だ。14年のクリミア併合は、ソ連崩壊で突然「外国人」にされたロシア系住民を見捨てないとの姿勢を誇示した重要な成果。今年2月に始まった侵攻の原点でもあり、メドベージェフ前大統領は7月、クリミアを攻撃すれば「終末の日を迎える」と強く警告していた。

 爆発原因が特定されていないにもかかわらず、ロシアではウクライナへの反撃を呼びかける議員らの発言が相次ぐ。

 プーチン氏の友人でもある左派系「公正ロシア・正義のために」のミロノフ党首は「弱さを見せれば政権への信頼は失墜する」。与党「統一ロシア」のモロゾフ下院議員も「なりふり構わぬ宣戦布告だ」と訴えた。プーチン氏に強硬策を促す国内の圧力は日増しに高まっている。

 ロシア軍事に詳しい小泉悠・東大講師は「仮に私がウクライナ軍司令官ならクリミア橋を落としたい。ただ、落とせばロシアが何をしてくるか分からない」と指摘。プーチン氏は核使用による威嚇を繰り返す。ウクライナは射程300キロの戦術地対地ミサイルATACMSの供与を求めているが、緊張を高めたくない米国は応じていない。

 爆発はプーチン氏の誕生日の翌日に起きた。また、橋の建設は幼なじみが経営する企業が請け負った。体面もつぷされた形で、英国防省は「プーチン氏をかなり刺激することになりそうだ」と分析した。(キーウ共同)


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首都着弾も劣勢挽回困難(2022/10/12 京都新聞)

 ロシア軍が10、11両日、ウクライナ各地に計80発を超えるミサイルを撃ち込んだ。大統領府に近い首都中心部に着弾し、重要インフラも破壊した全土一斉攻撃。プーチン政権は戦果を誇示したが、米欧では戦争の行方を左右するほどの影響はないとの見方が広がる。ロシアが劣勢を挽回するのは困難が伴い、追い込まれたプーチン大統領が「核のボタン」に手を伸ばす恐れは消えない。

 首都キーウ(キエフ)中心部にある市民の憩いの場、タラス・シェフチェンコ公園。ブランコや雲梯がある遊具場には、ミサイル攻撃で直径7〜8メートルの穴が開き、中に金属片が散らばっていた。近くの車はフロントガラスが粉々になっていた。

 一帯は、政治経済の中枢機関が集まる地区。公園は大統領府から南西にわずか約1キロに位置し、交通量も多い。いずれもロシアが主張するような軍やエネルギー関連の施設ではなかった。

 ゼレンスキー大統領は10日夜のビデオ演説で、攻撃で損傷した大通りに立ち。「テロリスト」には屈しないと改めて宣言した。東部・南部の占領地を奪還する方針は堅持する。

 プーチン氏は10日、クリミア橋の爆発をウクライナの仕業と断定し、ゼレンスキー政権について「忌まわしい国際テロ組織に屑を並べた」と訴えた。これまで「ネオナチ」と呼んできたウクライナ側をテロ組織になぞらえ、攻撃強化を正当化した。

 背景には地上戦での苦戦に加え、国内で高まる作戦遂行への批判がある。ロシア軍は9月に東部ハリコフ州を奪還されるなど失策が続き、プーチン氏の盟友ショイグ国防相の更迭を求める声すら上がる。国内の批判を抑え込むため、一斉攻撃のような目立つ形で反撃する必要に迫られていた。

 ウクライナのエネルギー関連施設を破壊して戦争遂行能力を低下させ、電力需要が増える冬場を前に市民生活に打撃を与えて、戦況を打開する狙いもあった。2014年に併合したクリミア半島の奪還を目指すゼレンスキー政権に対する強い警告も込められた。

 ロシアが期待するような展開になるのか。米欧の専門家の間では「(10日の攻撃に)軍事的に大きな価値はない。ロシアは貴重な戦力をかなび費消した」(英王立国際問題研究所の研究員)として、戦局への影響は限定的との意見が支配的だ。

 主な被害は電力インフラや住宅で、前線のウクライナ部隊や補給ルートに大きな損害はないとみられるからだ。米欧は民間施設攻撃に猛反発し、対ウクライナ兵器供与を加速させると表明。一斉攻撃が「逆効果」をもたらした形だ。

 ロシアは長期化する侵攻で精密誘導ミサイルを多用しており、ミサイル不足は深刻とされる。誘導装置に必要な電子部品が米欧制裁で調達しにくくなり、ミサイル製造は停滞している。

 米シンクタンク「戦争研究所」は、ロシアが10日の一斉攻撃で「精密兵器を無駄遣いした」と指摘した。

 「プーチンは自暴自棄になっている」。トラス英首相は10日、こう主張した。今後もウクライナの攻勢が続いた場合、プーチン氏が核使用の選択肢に傾く可能性は否定できない。(キーウ共同)


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ロ軍攻撃で電力施設損壊(2022/10/13 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナ東部ドネツク州アブデーフカで12日、市場にロシア軍の砲撃があり、少なくとも7人が死亡した。同州のキリレンコ知事は、市場には多数の人がおり「軍事的な必要性は何もない」とロシアを非難し、改めて同州から避難するよう通信アプリで市民らに呼びかけた。

 ロシア軍がウクライナ全土に実行した10〜11日の大規模な一斉攻撃で、各地で電力施設が損壊し、停電が相次いだ。西部リビウでは変電所が破壊され、住民の3割が電気供給を一時受けられなくなった。首都キーウ(キエフ)では電力不足の懸念から計画停電が実施された。

 セレンスキー大統領は11日の演説で、電力や水道などインフラの復旧が進んでいると強調、同日午前のミザイル攻撃で28発中、20発を迎撃したと明らかにした。15機以上のドローンの攻撃を受けたが大半を撃墜したと述べた。

 セレンスキー氏はドローンの大半がイラン製だと指摘。英国防省は12日発表の戦況分析で、10日の攻撃にはイラン製ドローン「シャヘド136」の改良型などが投入されたと述べた。低速で低空を飛行するため、対空兵器で容易に狙うことができ、搭載する弾頭も小さいという。

 米シンクタンク、戦争研究所は11日、ウクライナの軍事作戦を統括するロシア軍司令官にシリア内戦で指揮を執ったスロビキン上級大将が就任したが、シリアとは異なり上空での優勢を確保できていないウクライナでは人口密集地への大規模爆撃は不可能とする分析を公表した。

 戦争研究所はまた、ウクライナ軍が東部ハリコフ州を南北に流れるオスキル川の東部と、南部ヘルソン州で反攻を続けていると分析。ウクライナ軍当局者は12日、ヘルソン州で5集落を新たに奪還したと発表した。


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ザポロジェ原発が外部電源一時喪失(2022/10/13 京都新聞)

【キーウ共同】国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は12日、ロシアが占拠するウクライナ南部のザポロジエ原発が外部電源を失い、非常用ディーゼル発電機が電気を供給しているとツイッターで明らかにした。外部電源はその後、復旧したという。グロツシ氏は、ザポロジエ原発の状況は不安定だと訴えた。

 欧州最大のザポロジエ原発は、周辺での攻撃による大事故の発生が懸念されている。グロッシ氏は12日、ツイッターで、ザポロジエ原発で施設外の電源が繰り返し喪失していることは「非常に憂慮すべき展開」だと指摘。安全管理区域が緊急に必要だということが明確になったと訴えた。


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プーチン氏 苦境認める(2022/10/17 京都新聞)

 ウクライナ侵攻で強気を貫いてきたロシアのプーチン大統領が苦境に立たされている。制圧したウクライナ東部・南部4州で住民投票を強行し併合を宣言したが、兵員不足を補う部分動員をきっかけにロシア国内で軍批判が噴出。軍事作戦の長期化には旧ソ連圏の同盟国からも苦言が出始めた。反撃を強めるウクライナ側との交渉の糸口はなく、「落としどころ」が見えない状況が続く。

 「今の状況が愉快ではないことは確かだ」。14日、カザフスタンのアスタナで記者会見したプーチン氏は「(軍事作戦を)後悔していないか」との質問に「していない」と即答した後でこう述べ、作戦が思い通りに進んでいないことを認めた。

 2月の侵攻開始以来、プーチン氏は「作戦は計画通りに進んでいる」と繰り返してきた。同氏を長年取材するロシア紙コメルサントのコレスニコフ記者は「これまでのような強硬姿勢が見られなかった」と指摘した。

 ロシアの一部メディアは、親ロ派が13日に住民退避を勧告したウクライナ南部ヘルソン州の戦況については質問しないよう大統領府が要求していたと報じた。

 プーチン氏が初めて弱気を見せた背景には、戦況の悪化に加え、動員が国民の強い反発を招いていることがある。会見でも「軍務経験のない人が前線で死亡したのはなぜか」「動員は30万人という国防省の数字は本当なのか」などの質問が相次ぎ、「あと2週間で動員は終わる」「手続きの不備について調査を指示する」と釈明に追われた。9月に東部ハリコフ州を奪還され予備役動員に踏み切った国防省への風当たりは強い。軍出身のカルタポロフ下院国防委員長は「うそをつくのをやめることだ」と述べ、「戦果」だけを発表する古巣を痛烈に批判。正確な情報開示を求めた。

 ショイグ国防相の更迭を求める声も上がり、後任にはプーチン氏後継の大統領候補と目される治安機関出身のジュミン・トゥーラ州知事の名前も取り沙汰される。

 侵攻との関連は不明だが、15日にはウクライナ国境に接するロシア西部ベルゴロド州の軍演習場で銃撃事件が発生。演習場では侵攻に加わる志願兵が訓練中だった。

 今月14日にアスタナで開かれたロシアと旧ソ連・中央アジア5力国との首脳会議ではホスト国のトカエフ・カザフ大統領が、国境問題は「平和的手段でのみ解決されるべきだ」と述べ、ウクライナ侵攻と4州の一方的併合を暗に批判した。

 トルコのエルドアン大統領ら欧米とは一線を画す友好国の首脳も長引く交戦の終結を訴える。

 だが14日の会見でプーチン氏は「交渉の用意は常にあるがウクライナ側か拒否している」と強調。ウクライナを支援するハイテン米大統領との首脳会談も「必要性を感じない。まだ協議の枠組みすらない」と断言、停戦に向けた歩み寄りの姿勢は示さなかった。(共同)


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【インサイド】イラン 兵器供与で勢力拡大(2022/10/18 京都新聞)

 中東イランが、ウクライナに侵攻したロシアへの兵器供与を加速させたとの見方が強まっている。イラン製の自爆型ドローン(無人機)が多用され、17日の首都キーウ(キエフ)中心部への攻撃でも使われた疑いがある。ロシアのミサイル不足が指摘される中、イランは弾道ミサイル供与でも合意したと報じられ、米欧は警戒を強めている。

 ウクライナ軍によると、ロシア軍が投入したのはイラン製ドローン「シャヘド136」で、上空から標的に突っ込んで爆発する長さ4メートルほどの攻撃用兵器。太平洋戦争末期に旧日本軍が戦闘機で自爆攻撃した神風特攻隊にちなみ、「カミカゼ・ドローン」と呼ばれる。

 英国防省や米メディアによると、飛行距離は最大約2400キロ。数十キロの爆発物しか搭載できず攻撃能力は限定的だが、多数で飛行すれば数機が撃墜を免れ、防空システムをくぐり抜ける可能性が高まる。価格は1機2万ドル(約300万円)程度とされ、攻撃側にはミサイルなどと比べて安価なのも利点だ。

 イランは7月、首都テヘラン南方の飛行場で、ロシア側に無人機の性能などを説明。8月ごろにロシアへの輸送が始まり、イランの技術顧問がロシア支配地域でドローンの操作方法を指導したという。ロシアは機体を塗り直し、「ゲラニ2」と名付けているという。

 ウクライナ側によると、今月10〜11日のロシアによる全土一斉攻撃では多数のドローンが使われた。ロシアはイランに2400機を追加発注したという。

 多用の背景には、ロシアのミサイル不足がある。ウクライナの国防相は、ロシアは保有する精密誘導ミサイルの3分の2を使い果たしたと指摘。ミサイル製造に必要な半導体は米欧の制裁で供給不足に陥っている。

 米紙ワシントンーポストによると、イランは9月ごろ、ロシアに弾道ミサイル「ファテフ11O」(射程約300キロ)「ソルファ ガール」(同約700キロ)を供与することも秘密裏に決めた。

 イランは弾道ミサイルやドローンの開発製造に注力し、イラクやイエメンなどの親イラン勢力に提供して自らの勢力圏拡大に利用。近年はアフリカや南米ベネズエラにも売却し、今年5月には国外初の生産工場をタジキスタンに開いた。対ロ供与については「ウクライナでの戦争で使われるいかなる武器も提供していない」(アブドラヒアン外相)と否定するが、戦場ではイラン製の残骸が確認されている。

 侵攻で米欧との関係が極度に悪化したロシアは、同じく米欧と対立するイランに接近。プーチン大統領は7月、2月の侵攻以降、初の旧ソ連以外への外遊先としてイランを選び、安全保障分野で連携強化を確認した。

 警戒を強める米主導の北大西洋条約機構(NATO)は13日まで開いた国防相会合で、ドローン迎撃の兵器をウクライナに送ることを決めた。(キーウ、テヘラン共同)


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ベラルーシ参戦警戒(2022/10/19 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアが侵攻するウクライナで、ロシアの同盟国で隣国のベラルーシが参戦するとの警戒が高まっている。ベラルーシのルカシェンコ大統領は欧米の脅威を強調し、ロシアとの合同部隊編成を宣言。15日には「ロシアの作戦に巻き込まれるつもりはない」と主張し、参戦を否定してみせたが、部隊編成には東部や南部で前進するウクライナ軍の攻勢をそぐ狙いもありそうだ。

 ルカシェンコ氏がロシアとの合同部隊編成を表明したのは10日。同氏は「ウクライナではベラルーシ領への攻撃が計画されている。(欧米が)ウクライナにベラルーシとの戦争勃発を促している」と述べ、攻撃に備える必要性を訴えた。

 15日にはロシア軍部隊の第1陣が到着。ベラルーシ国防省幹部は16日、合同部隊は9千人規模になると明らかにした。

 ロシアとベラルーシは1999年に連合国家創設条約を締結。近年の欧米との対立激化を受け、昨年11月には軍事面などの統合強化で合意した。ベラルーシでは今年2月にロシアの核兵器配備を可能にする憲法改正も承認されたが、ルカシェンコ氏は国内の反発を懸念し、部隊を参戦させてこなかった経緯がある。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、先進7カ国(G7)首脳のオンライン会合で「ウクライナが攻撃を準備しているかのよう に挑発し、ロシアがベラルーシを直接戦争に引き込もうとしている」と強い警戒感を示した。

 米シンクタンク、戦争研究所は14日「ベラルーシ軍がウクライナ北部に侵攻しても、ロシア軍には支援する戦力がない」と指摘。新たに侵攻するには合同部隊は小規模で「(前線から)注意をそらす目的」との見方も上がる。

 ベラルーシの反政権派チハノフスカヤ氏は、ベラルーシの政権内部でも侵攻の支持は得られていないとし、自国部隊を投入すればルカシェンコ氏にとって「政治的自殺だ」と指摘している。

 ロシアの首都モスクワのソビヤニン市長は17日、ウクライナでの軍事作戦の兵員不足を補う部分動員について、同市での事務作業を終えたと明らかにした。


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ロシア 併合4州に戒厳令(2022/10/20 京都新聞)

 ロシアのプーチン大統領は19日にオンラインで安全保障会議を招集し、併合を宣言したウクライナ東部・南部4州に20日から戒厳令を導入すると表明、関連の大統領令に署名したと明らかにした。国営テレビが報じた。タス通信によると、1991年のソ連崩壊後、ロシアが支配を主張する地域で戒厳令が導入されるのは初めて。ウクライナ軍の反攻を前に、これ以上の敗走を食い止めるための政権の強い危機感の表れとみられる。

 プーチン氏はウクライナのゼレンスキー政権が「あらゆる交渉の提案を拒否してロシア領への攻撃を続け一般市民を殺害している」と非難。国土防衛のため政府と自治体の調整を行う国家評議会を率いるようソビヤニン・モスクワ市長に命じた。

 ウクライナのポドリヤク大統領府長官顧問は19日、戒厳令布告について「ウクライナは何も変わらない。自国領土の解放を続けていく」とツイッターに投稿した。

 4州のうちヘルソン州の親ロ派「行政府」トップ、サリド氏は19日、ウクライナ軍の攻繋激化を受け州都ヘルソンにある全ての行政機能をドニエプル川対岸の東岸地域に移転させると表明した。実効支配の中心となる行政機関の事実上の撤退。ウクライナ軍は州都に迫る勢いを見せており、戦況次第で州都を含む州の約4分の1に当たる地域を奪還する可能性も出てきた。

 ウクライナでの作戦を統括するロシア軍のスロビキン司令官は18日、同州の戦況が「容易ならない」と認めた。ロシアが一方的に併合した4州の一角が奪回されればプーチン政権の威信は大きく傷つく。

 サリド氏は今後7日間、ヘルソン州内への一般市民の入域を制限する方針も表明。「ヘルソンを放棄する考えはない」と強調した。

 タスによると、サリド氏は、ウクライナ側の攻撃で「カホフカ水力発電所の水門が破壊された場合、下流域のヘルソンなどで浸水の恐れがあると指摘。西岸地域から約1週間で5万〜6万人の住民を退避させると述べた。ヘルソンなどからはフェリーを使った東岸への住民退避が始まった。

 ヘルソン州は2014年にロシアが併合したクリミア半島とつながる要所。ドニエプル川東岸にはクリミアを通じてロシア本土からの補給が可能だが、川にかかる大橋をウクラノチ側が大破壊したため西岸への補給は困難になっている。

【解説】戦闘泥沼化は不可避

 ロシアのプーチン大統領が19日、併合を主張するウクライナ東部・南部4州への戒厳令発動を決めた。米欧の支援を受けるウクライナ軍の反転攻勢に危機感を募らせる中、核兵器使用も示唆しつつ、ウクライナの進軍を封じて支配を固める方針を鮮明にした。プーチン政権はこれらの地域を戦時体制下に置くことになる。戦闘の長期化、泥沼化は避けられない。

 戒厳令の導入で、4州では住民の拘束や強制的移住、私有財産の没収などが容易になる。現地の親ウクライナ住民の抵抗を抑え、強圧的な支配を敷くとみられる。

 プーチン氏は戒厳令を出す理由として「ロシアの領土の一体性に対し軍事力が行使されている」ことを挙げた。これまで4州について、国家の存立が脅かされた場合、軍事ドクトリンに基づき核兵器を使用する権利があると主張しており、その要件を満たしたと判断する可能性もあ る。

 2014年のクリミア半島併合で愛国心をあおり、国民の支持を集めてきたプーチン氏にとって、ウクライナで支配地域をこれ以上奪われれば政権が揺らぎかねない。特に恐れているのは、政権を強力に支えてきた強硬派の突き上げだ。プーチン政権は国内的には強い姿勢を示さざるを得ない。(共同)


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核演習 ロシアが実施(2022/10/27 京都新聞)

 ウクライナ侵攻で核使用の可能性をちらつかせるロシアが26日、プーチン大統領が戦略核戦力部隊の演習を視察したと発表した。米国主導 の北大西洋条約機構(NATO)も欧州で核兵器抑止のための年次演習を行っており、双方の核演習が同時に進行。ロシアが核使用を準備して いる兆候は確認されていないが、米欧は不測の事態につながらないか注視する。

 「今日、長時間話し合った」。バイテン米大統領は25日、ロシアが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」や核使用の準備をしている可能性について、政権内で協議したと記者団に明かした。

 米欧が演習の動向を注意深く監視するのは、ロシアの狙いが純粋に訓練なのか、あるいは使用への準備を含めた別の目的があるのか、正確に把握する必要があるからだ。

 米国の核専門家によると、ロシアが限定的であっても核使用を決断した場合、全ての核運用部隊の警戒レベルが引き上げられ、平時と異なる多くの動きが現れる。米国がどう反応するか、ロシアも読み切れないためだ。

 NATOは今月中旬、ロシアの核使用時の対応を協議。会合後の記者会見で、ストルテンベルグ事務総長はロシア軍の動きに関して「演習の準備と、核攻撃に向けた準備を明確に区別できるのか」と問われた。ストルテンベルグ氏は「われわれには十分な機密情報がある。数十年間、ロシア核部隊を監視してきた」と自信を示した。ただロイター通信によると、西側当局者の間ではロシアが演習の狙いをわざとあいまいにして、西側をかく乱しようとしているとの見方が出る。

 ロシアは25日までに核戦力運用部隊の年次演習の実施を米国に通知した。バイテン政権は通知自体は「適正な手続き」(プライス国務省報道官)と評価しつつ、侵攻での劣勢を挽回するために核に頼るシナリオは否定できないとみる。

 米側の危機感をうかがわせるのは、ロシアとの対話の頻度だ。「誤算による事態の深刻化を防ぎたい」。国防総省報道官は25日、ロシアとの意思疎通のチャンネルを維持する姿勢を強調した。

 オースティン国防長官は21日、ロシアのショイグ国防相と電話会談。5月を最後に対話が途絶えており、米側か働きかけて実現した。2日後の23日、今度はロシア側の申し入れで再び電話会談に臨んだ。制服組トップ間でも米軍のミリー統合参謀本部議長とロシア軍のゲラシモフ参謀総長が24日に電話会談した。

 異例の頻度の会談について、米側は詳細は公表していない。ただ、国家安全保障会議(NSC)のガービー戦略広報調整官は「核使用の結末は重大なものになると明確に伝えている」と述べ、ロシアをけん制した。(ワシントン共同)


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「解放者」へ敵意にじむ(2022/10/29 京都新聞)

【リマン共同=大西利尚】町に残ったのは大半が親ロシア派の住民。「解放者」のはずのウクライナ兵に向けるまなざしには敵意がにじんでいた―。ウクライナが約1カ月前、ロシアから奪還した東部ドネツク州リマンに共同通信記者が28日までに入った。兵器が残骸と化した「ロシアの墓場」にはいまだ死臭が漂う。ロシアが9月末にウクライナ東部・南部4州の併合を宣言後、一角のドネツク州に日本メディアが入ったのは初めて。

 前線からは約20キロ。遠方から低い砲撃音が間断なく聞こえる。鉄道の車両基地があり、今年2月のロシア侵攻まで約2万2千人が暮らしていた。戦略上の要衝で、ロシアは5月に制圧を発表。その後、ウクライナ軍は反撃を強め、10月1日に全面掌握を宣言した。

 「まず『ロシアの墓場』に案内します」。同行のウクライナ軍広報担当者と共に着いた先は、ロシアが武器保管に使っていた町外れの飼料工場だった。

 未収容の遺体があるのだろう。いきなり死臭が鼻孔を突いた。戦車、装甲車、戦闘爆撃機がどれも焼け焦げ、無残な姿をさらす。ロシア兵は隣の民家でも寝泊まりしていた。塹壕が掘られ、雨でふやけた段ボール箱にはロシア映画のDVDがぎっしり入っていた。

 町中心部の学校は、日本と国連児童基金(ユニセフ)の支援で2015年ごろ建てられた。校舎は全壊し、日の丸が描かれたプレートには「(ロシアの)やつらが壊しやがった」とマジックで殴り書きされていた。

 青と黄色のウクライナ国旗が翻る隣の行政庁舎には、支援物資を求める住民が集まっていた。話を聞こうとしたが、返ってくるのはロシア語で「ニェツト(英語のノー)」だけ。一様に表情が硬い。初老の男性は「人生とはひどいもんだ」とだけ言って立ち去った。

 母語がロシア語の人が大半の東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州)では、ロシアに親近感を持つ住民も多い。リマンでは戦闘が 始まると、若者を中心にウクライナ政府を支持する市民は西部に避難した。今も住むのは約5千人で、親ロ派の高齢者が多いとされる。ウクライナ兵を歓迎するムードはなく、冷たい視線を投げかける。

 町のあちこちに弾痕が残る。ショツピングモールや鉄道施設の天井は抜け落ちた。親ロ派住民からすれば、ウクライナ軍が反撃しなければここまで被害は甚大でなかったと思うのかもしれない。

 唯一話が聞けたのは、ウクライナ兵に握手を求めた鉄道職員イーゴリ・キルカチさん(58)だった。「ショツピングモールは軍事施設ではない。ロシアによる戦争犯罪が公正に裁かれれば、他の住民も目が覚める」


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プーチン氏、核先制使用を否定(2022/10/29 京都新聞)

 ロシアのプ士チン大統領は27日、「われわれが自分から核兵器を使うと言ったことは一度もない」と述べ、ロシアは核兵器を先制使用しないとの立場を示した。侵攻したウクライナで核兵器を使う意味は「政治的にも、軍事的にもな」と明言した。モスクワで開かれた内外有識者らの討論フォーラム「ワルダイ会議」で述べた。

 プーチン氏はこれまで、領土の一体性や主権が脅かされればあらゆる対抗手段を使うと繰り返し、ロシアが核兵器を使う恐れが指摘されてきた。プーチン氏の発言には、中国やインドなど欧米と一線を画す友好国の間でも拡大する核戦争への懸念を沈静化し、対ロ批判を抑える狙いがあるとみられる。

 ハイテン米大統領は27日、米テレビのインタビューで「もし意図がないなら、なぜ核のことを話し続け、戦略核を使用する能力について口にしているのか」と述べ、警戒を続ける考えを表明。プーチン氏の姿勢を「とても危険だ」と指摘した。

 質疑応答でプーチン氏は、ウクライナでの核兵器使用を否定する一方、「核兵器が存在する限り使用の危険性は常にある」と述べ、使用の可能性に含みを持たせた。また戦略核兵器の管理を巡る米国との交渉には前向きな姿勢を強調するなど、核兵器を巡り硬軟両様の姿勢を示した。プーチン氏は、ロシアが「欧米の指導者が核兵器の使用に言及したことに対抗して、核使用を暗示しただけだ」と弁明した。


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ロシア、穀物輸出履行停止(2022/10/31 京都新聞)

 ロシア国防省は29日、ウクライナ産穀物の黒海からの輸出を再開させたウクライナ、トルコ、国連との4者合意の履行を停止すると発表した。ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島に向けてウクライナ軍が同日行った無人機などの攻撃で、穀物輸出に使う航路の安全が脅かされたと主張。輸出の停滞により食料価格高騰が深刻化する懸念がある。

 ロシア国防省はこの攻撃に関して英軍の関与が明らかになったと非難。30日には、攻撃に使われた水中ドローンの一つはウクライナか欧米が穀物搬出にチャー 夕ーした船から発射された可能性があると発表した。

 ロシアの侵攻による黒海封鎖で、世界有数の穀物生産国であるウクライナからの輸出が滞り、食料危機への懸念が高まったため、7月に4者が輸出再開で合意。8月に再開していた。合意の履行停止により、ウクライナを支援する欧米とロシアの対立は一層の激化が必至だ。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は29日のビデオ演説で、ロシアへの圧力を国際社会に要請。9月以降、176隻が航路で滞留し、いまだに200万トン以上の穀物が海上にとどまっていると指摘した。バイテン米大統領も「飢餓を増大させるとは、本当に言語道断だ」と非難した。

 穀物輸出を監視する「合同調整センター」(トルコ・イスタンブール)調整官の国連高官によると、29日には貨物船9隻がウクライナの港を出入りし、10隻以上待機。30日の出入港に関して当事者間の同意が得られていないと明らかにした。

 ロシア外務省は29日、同日から無期限に穀物輸出に関わる民間船の安全な航行は保証しないと発表。パドルシェフ農相は、合意履行停止に代わりロシア産穀物最大50万トンを貧困国に無償提供する用意があると表明した。

 現在の4者合意は11月19日が期限。プーチン大統領は、4者合意に基づき輸出された穀物の大半が欧州などの先進国に運ばれていると述べ、貧困国の食料不足解消になっていないと不満を示していた。


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【インサイド】合意の見返りなしに不満(2022/10/31 京都新聞)

 ロシアがウクライナ産穀物の黒海を通じた輸出の合意履行を停止した背景には、侵攻したウクライナでの戦況悪化に対するいら立ちとともに、合意の見返り として国連に求めていたロシア産穀物、肥料の輸出が履行されていないことへの強い不満がある。トルコを交えた4者合意が期限切れとなる11月19日を前に、離 脱を図つたとみられる。

 ロシア産穀物の輸出は欧米の対ロ制裁の影響で支障が出ている。国連などはロシアに4者合意の期限延長を求めてきたが、ロシアのネベンジヤ国連大使はロシアの輸出に対する障害がいまだに取り除かれていないと不満を述べていた。

 ロシアは今年、記録的な豊作となっており、既に1億5千万トンの穀物を収穫し、うち5千万トンを輸出に回せるという。パトルシェーフ農相は29日「ロシアはウクライナの輸出分を完全に補うことが可能だ」と強調した。

 ロシアが実効支配するクリミア半島へのウクライナ軍の攻撃を口実に、交戦するウクライナを利するだけで得るものがない現在の4者合意を解消。中東やアフリカなど食料危機に直面する友好国へは直接、無償の食料援助をする方が得策と判断したようだ。(共同)


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ロシア攻撃、生活に照準(2022/11/2 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアがウクライナのインフラ施設を集中攻撃し、冬場の電力供給や市民生活が脅かされている。10月31日のミサイルや無人機(ドローン)による全土攻撃では、エネルギー施設など10州の18力所が被害を受け、7州で停電が発生。首都キーウ(キエフ)では一時8割が断水した。ロシアは同日、一層の報復を示唆し、米国は防空システム強化に向けた支援を急ぐ。

 ウクライナ外務省の二コレンコ報道官はい11月1日、ツイッターで、エネルギー施設への攻撃を批判、ロシアを20力国・地域(G20)の枠組みから追放すべきだと訴えた。

 キーウのクリチコ市長は「35万世帯への電力供給施設」が被害を受けたと報告。クレバ外相は11月31日、全土のエネルギー施設復旧のため、フランスやドイツなど12力国の政府と企業が支援を決めたと発表した。

 31日に迎撃されたミサイルの残骸が落ちた隣国モルドバの外務省は「ウクライナのエネルギー・インフラへの攻撃は欧州に甚大な経済的、社会的損害を与える」とロシアを非難。首都キシナウのロシア大使館の職員1人の国外退去を発表した。

 ロシア国防省は30日、クリミア半島のロシア黒海艦隊基地が水中ドローンの攻撃を受けたと発表。プーチン大統領は31日の全土攻撃がクリミア攻撃に対する報復の意味合いがあったと認め、「われわれがやれるのはこれだけではない」として、攻撃を強化する可能性を示唆した。

 一方、ウクライナ軍は31日に撃ち込まれた50発のミサイルのうち44発を迎撃したと表明。各国に対しては、高度な防空システムの供与を繰り返し要求しており、米国防総省高官は31日、高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」8基のうち、2基が近く配備されると明らかにした。


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「汚い爆弾」検証(2022/11/2 京都新聞)

【キーウ共同】国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は10月31日の声明で、放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」の製造に関与しているとロシアが主張するウクライナの施設2ヵ所で、検証活動を開始したことを明らかにした。週内にも初期の検証結果を発表するとしている。

 未申告の核活動や汚い爆弾の製造に関係する物質があるかどうかなどを調べる。


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ロ、へルソン州西岸撤退へ(2022/11/10 京都新聞)

 ロシアのショイグ国防相は9日、ロシアが併合を宣言したウクライナ南部ヘルソン州のドニエプル川西岸地域からロシア軍部隊を撤退させるよう命じた。西岸には州都ヘルソンも含まれる。国営テレビが伝えた。同州ではウクライナ軍が反撃を強め、同州のロシア側「行政府」は西岸の住民を集団退避させていた。

 ロシアは9月末のプーチン大統領の併合宣言からわずか1ヵ月余りでヘルソン州の約4分の1に当たる支配領域を失うことになる。ロシア国内で保守派を中心に政権の不手際に対する批判が高まることは必至。プーチン氏には大きな痛手だ。

 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、「敵は善意の意思表示をしない」と警戒感を表明。ポドリヤク大統領府長官顧問も「ロシア軍が戦わずにヘルソンを撤退する兆候は見られない」とし、ロシア軍の一部がとどまっているとの見方を示した。

 ウクライナでの軍事作戦を統括するロシアのスロビキン司令官は、西岸ではウクライナ軍が民間インフラへの砲撃を続けている上、川の上流のカホフカ水力発電所ダムをウクライナ側が破壊すれば下流に洪水が起き、西岸にいるロシア軍部隊は孤立すると説明。「難しい決定だが、重要なのは軍人らの命を守ることだ」と述べ、部隊を東岸地域に撤退させてドニエプル川を新たな防衛ラインとすることが作戦上最も適切だと報告した。

 ショイグ氏は「提案に同意する。兵士の命は最優先だ」と述べ、安全な部隊移動を実現するよう命じた。

 スロビキン氏は、西岸のへルソン市周辺からは既に11万5千人を超す住民が退避を終えたと指摘。東岸で早急に防衛拠点を固める方針を示した。(共同)


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南部州都へルソン州奪還(2022/11/12 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナのセレンスキー大統領は11日、ロシアが一方的に併合を宣言した南部ヘルソン州の州都ヘルソンをウクライナ軍が「取り戻している」と述べ、奪還しっあるとの認識を示した。「歴史的な日だ」と評し、既に特殊部隊が市内に入り、主力部隊も近づいていると強調した。交流サイト(SNS)には、ヘルソンの住民がウクライナ国旗を掲げて広場を歩く様子や涙を浮かべて兵士と抱き合う映像が投稿 された。

 ヘルソンはロシアが2月の侵攻以降、唯一掌握した州都。プーチン大統領による9月末の併合宣言からわずか1ヵ月余りで重要戦果を失うこととなり、政権にとって大きな痛手となる。ロシア軍は退却に際しインフラ設備を破壊したとされ、ヘルソンに面したドニエプル川の対岸から反撃の準備をしているとの見方もあり、ウクライナ側は完全掌握に向け慎重に作戦を進める構えだ。ゼレンスキー氏は通信アプリで「私たち のヘルソン」と題し、ウクライナ軍を歓迎する人々の映像を公開した。

 ロシア国防省は11日、ヘルソンのあるドニエプル川西岸から撤退を完了したと発表。3万人以上の兵員が東岸に移動したと主張した。

 ヘルソン州議員は11日のオンライン記者会見でロシア軍の一部が残っており、市民を装って潜伏している可能性があると指摘。ウクライナ軍南部作戦司令部のフメニュク報道官は、ロシア軍が対岸からヘルソンに対する攻撃を準備しているとして、警戒感を示した。

 11日にはヘルソンと東岸を結ぶ主要道だったアントノフ大橋が崩壊したと伝えられた。ロシア軍は送電塔などを破壊したとされ、インフラを使用不能にしてから退却する「焦土作戦」により、ウクライナ軍の進軍を遅らせる狙いがあるとみられる。現地では電気やガス、水道の供給が止まり、携帯電話の電波もつながっていないという。


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占領7ヵ月「軍待っていた」(2022/11/15 京都新聞)

【スニフリフカ共同】ウクライナ軍が奪還した同国南部ミコライウ州の要衝スニフリフカに13日、共同通信の現地助手が入った。同じく奪還したヘルソン州の州都ヘルソンの北東約40キロに位置。3月19日にロシア軍に制圧され、11月9日の撤退まで7ヵ月余り占拠された。交戦で建物は破壊され、電気や水道も途絶えたが、生き延びた住民は「ウクライナ軍を待ち望んでいた」と歓喜した。

 全壊した家は少ないが、家々に人けはなく、内部を荒らされた家が目立つ。住民は安堵の表情を浮かべウクライナ兵を歓迎したが、ロシア兵の潜伏を警戒してか国旗を掲げる家は少ない。日没後は漆黒の闇に包まれた。

 年金生活者の男性アナトリーさん(67)は「砲撃のたびに地下室に隠れたが、いつの間にか慣れた」と振り返った。ロシア兵は住人不在の家を荒らし回ったといい「幸いわが家は侵入されなかったが親類宅は破壊された」と憤った。ロシアが配った救援物資の缶詰は生臭く、犬や猫に与えた。

 「ロシアは自国通貨ルーブル流通を宣伝したが、ウクライナ通貨フリブナを皆が使い続けた」。ATMは利用できなかったが、携帯アプリで銀行送金すると、手数料10%で現金化し持参する業者がおり、それに頼った。妻タマラさん(67)は「雑木林で枝を集め、まきストーブで暖を取り調理した」と語る。「町の全ての商店は略奪された。これがロシアのやり方だ」と切り捨てた。

 一方、ヘルソンに住む大工の男性ルスランさん(45)が13日、共同通信のオンライン取材に応じ、自らがウクライナ軍兵士と握手する光景を「想像できなかった」と語った。住民はウクライナ軍による奪還を歓迎していると証言。占領で忘れかけていた自由を手にし、町は活気を取り戻しつつある。

 再生不良性貧血で闘病中の娘かおり、他の家族と共に市内に残っていた。「永遠にロシアにのみ込まれたままかもしれないと思い、窒息しそうな気分だった」

 戦況がウクライナ優勢に転じ、ロシア軍の協力者や親ロシア派の市民は町を去った。「(奪還の)1週間前はゴーストタウンだった」。ウクライナ軍部隊が市に入り「新鮮な空気が吹き込まれたようだ」と喜んだ。


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ロシアのミサイル ポーランド領内着弾2人死亡(2022/11/16 NHK)

 ウクライナ隣国のポーランドの外務省は日本時間の16日午前8時ごろ、声明を発表し「ロシア製のミサイルがポーランド領内に落下し、2人が死亡した」と明らかにしました。

 それによりますとミサイルは現地時間の15日午後3時40分ごろ、日本時間の15日午後23時40分ごろ、ウクライナとの国境に近い「プシェボドフ」という村に落下したということです。

 ポーランドのラウ外相は駐在するロシアの大使を外務省に召喚し、詳しい説明を求めたということです。 ポーランドはアメリカが主導するNATOの加盟国で、ロシアによるミサイルで死者が確認されれば、ことし2月の軍事侵攻以降、NATOの加盟国内で初めて犠牲者が出たことになります。

 また、アメリカのAP通信は15日、アメリカ政府当局者の話として、ロシアによるミサイルがウクライナ西部と隣接するポーランド領内に着弾し、2人が死亡したと伝えました。これについて、アメリカ国防総省のライダー報道官は記者会見で「現時点では確認できる情報はない」と述べ、情報の確認を急ぐとしています。

 NATOのストルテンベルグ事務総長はツイッターに「NATOは状況を注視しており加盟国は緊密に連絡をとりあっている。事実がすべて確認されることが重要だ」と投稿しました。

 また、アメリカ・ホワイトハウスは、G20サミット=主要20か国の首脳会議に出席するためインドネシアに滞在しているバイデン大統領がポーランドのドゥダ大統領と電話で会談したことを明らかにしました。

 さらに、ウクライナのゼレンスキー大統領は新たな動画を公開し「ロシアのミサイルがポーランドを襲った。ロシアのテロがさらに広がるのは時間の問題だ」と非難しました。

 一方、ロシア国防省は声明を発表し「状況をエスカレートさせるための意図的な挑発行為だ。ロシアはウクライナとポーランドの国境付近の目標に対して、攻撃を行っていない」として事実関係を否定しています。


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ポーランドにミサイル着弾(2022/11/16 京都新聞)

 【ベルリン、キーウ共同】ポーランド政府は15日、ロシア製のミサイルが同日午後、ウクライナに隣接するポーランド東部のプシェボドフに着弾、2人が死亡したと発表した。ロシアのウクライナ侵攻後、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に着弾し、犠牲者が出たのは初めて。ロシアとNATO間の緊張が高まる恐れもあるが、ハイテン米大統領は16日、着弾したミサイルは「軌道を考慮すると、ロシアから発射された可能性は低い」と述べた。

 ロシア国防省は「ウクライナ・ポーランド国境でいかなる攻撃も行っていない」と否定する声明を発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領は、NATOの集団安全保障に対する攻撃だと非難。「重要なエスカレーションで、行動が必要だ」と訴えた。一方、英BBC放送はウクライナ側による迎撃ミサイルの可能性を指摘した。

 ミサイル着弾を受け、先進7力国(G7)とNATOは16日午前、20力国・地域首脳会議(G20サミット)開催中のインドネシア・バリ島で緊急首脳会合を開き、ミサイル着弾に関するポーランドの調査を支援することで一致した。

 北大西洋条約5条は、加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃と見なし、武力行使を含む必要な措置を取ると規定している。

 ミサイルは現地時間15日午後3時40分(日本時間同11時40分)ごろ、ウクライナ国境まで約7キロのプシェボドフに着弾。ポーランドメディアなどによると、モラウィエツキ首相は国家安全保障と防衛に関する緊急会議を招集し、領空の監視に重点を置き、軍の臨戦態 勢を強化する決定をした。

 アジア歴訪中のバイテン氏はポーランドのドゥダ大統領と電話会談し、NATO加盟国への防衛義務を果たすと強調した。ウクライ ナのティモシェンコ大統領府副長官によると、15日にロシアからウクライナ全土にミサイル攻撃があった。


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戦火拡大リスクあらわ(2022/11/17 京都新聞)

 ウクライナ国境に近い北大西洋条約機構(NATO)加盟国ポーランドに15日、ミサイルが着弾し2人が死亡した。仮にロシアによる攻撃であれば、NATOとの交戦に突入する恐れがあり情勢は緊迫。ウクライナの迎撃ミサイルとの見方が強まり、着弾から約11時間で危機はひとまず沈静化した。不測の事態に勘違いや読み違えが重なり、戦火が広がりかねない危うさがあらわになった。

 日本時間15日午後11時40分(現地時間同3時40分)ごろ、ウクライナ国境から約7キロの村プシェボドフの農場にミサイルが落下、煙が上がった。地面に巨大な穴があき、横転した大型車両は黒焦げに。2月に始まったウクライナ侵攻に関連し、NATO加盟国で犠牲 者が出たのは初めてだ。

 16日午前3時41分(日本時間、以下同じ)、AP通信は米情報当局者の話として「ロシアのミサイルがポーランドに落ちて2人が死 亡した」と速報。前後してポーランド外務省が「ミサイルはロシア製だった」と発表し、各国に緊張が走った。

 NATOには、加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃と見なし、武力行使を含む措置を取るとの規定がある。もしロシアがポーランドを攻撃したと判断されれば、規定に則してNATOが集団的自衛権を発動、武力衝突になる恐れがある。第3次大戦や核戦争の最悪シナリオも否定できない。

 ロシア国防省は午前4時52分「ウクライナ・ポーランド国境でいかなる攻撃もしていない。(報道は)事態のエスカレートを狙った 挑発だ」と反論。しかし、あまたの情報戦を仕掛けてきたロシアへの信頼度は低い。

 ロシアは15日、ウクライナ全土に約90発のミサイルを撃ち込んでいた。米紙によると、プシェボドフの着弾と同じ時間帯、南方約70 キロのウクライナ西部リビウでもミサイルによる爆発が起きていたとみられる。

 暗測が飛び交う中、ロシアの攻撃を前提としたような発言が相次ぐ。ウクライナのゼレンスキー大統領は「ウクライナ、ポーランド、全欧州はテロリストのロシアから完全に防衛されなければならない」「行動が必要だ」と訴えた。「ロシアは罰せられなければならな い」(ラトビア国防相)。対ロ強硬派の東欧諸国からも非難が上がった。

 ポーランド首相は16日午前9時32分の声明で、軍の臨戦態勢を強化すると表明。緊張は加速度的に高まっていった。

 背景には、NATOを主導する米国が「NATOの領土を隅々まで全力で防衛する」と繰り返し約束してきた経緯がある。ロシアと の戦争は避けたいのが米欧の本音だが、加盟国への攻撃を放置すればNATOの存立基盤が揺らぐ。

 主要国首脳は20力国・地域(G20)の舞台インドネシアに滞在。ポーランド着弾の報を受け、先進7力国(G7)とNATOは緊急 会合を開いた。バイテン米ヽ大統領は午前11時ごろ「軌道を考えると、ロシアから発射された可能性は低い」と述べ、事態は沈静化。NATOは午後9時前、ロシアのミサイルを迎撃するためウクライナ軍が発射したとの見方を示した。

 「はっきりしたのは、核武装したロシアとNATOがたった一度の判断ミスで戦争に突入する恐れがあるということだ」。英紙フィ ナンシャルータイムズは論評で「欧州がいかに戦争に近づいているかを想起させた」とし、紛争がエスカレートする「重大な脅威」があると警鐘を鳴らした。(ワルシャワ、ワシントン、ブリュッセル共同)


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外交活発化で停戦模索も(2022/11/24 京都新聞)

 ロシアのウクライナ侵攻は、プーチン大統領が併合を宣言した東部・南部4州で一進一退の攻防が続く一方、停戦交渉再開を視野に入れた外交の動きが米ロから出始めた。地上戦で劣勢にあるロシアは交渉の用意があると繰り返し主張。自国領の占領を許した状態での交渉入りを拒否するウクライナを支援する米欧の今後のの対応が鍵を握る。ロシアの侵攻から、24日で丸9ヵ月となる。

 ロシア紙「独立新聞」は、黒海からウクライナ産穀物を輸出するトルコ、国連などとの4者合意延長に応じた17日のロシアの決定は、穀物輸出に使う重要港オデッサの攻略断念を意味すると指摘した。ヘルソン州のドニエプル川西岸地域からの軍撤退と合わせ、ロシアは南部でこれ以上支配地拡大を目指さないとの見方を示した。

 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は16日の記者会見で「ロシア軍をウクライナから軍事的に追い出すのは極めて困難だ。だが相手が弱っている時、政治的に撤退させることには可能性がある」と述べた。独立新聞は、ヘルソン州や東部ドネツク州での戦闘激化は「交渉開始前の陣取り合戦」とのロシア軍事専門家の見方を伝えた。

 ロシアはウクライナのゼレンスキー政権を軍事、経済両面で支える後ろ盾となっている米国との話し合いを模索。米口は今月29日からエジプトのカイロで戦略核兵器の相互査察再開を目指す協議に入る。4ヵ月間延長された穀物合意も、交戦する双方の接触の枠組みとして期待されてい る。

 今月にはサリバン米大統領補佐官が過去数カ月間にプーチン氏最側近のパドルシェフ安全保障会議書記らと極秘接触したと伝えられた。

 元駐ロ大使のバーンズ米中央情報局(CIA)長官はロシアのナルイシキン対外情報局(SVR)長官やゼレンスキー氏と相次ぎ会談。ロシアの攻撃によりエネルギー施設が破壊され厳冬期を乗り切るのに不安を抱えるウクライナとの間で、落としどころを探っているとの見方が出ている。(共同)


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インフラ損傷 全土緊急停電(2022/11/25 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナで23日、ロシア軍による首都キーウ(キエフ)など各地へのミサイル攻撃があり、モナスティルスキー内相は同日、 少なくとも10人が死亡したと発表した。電力会社ウクルエネルゴは広い範囲で電力インフラが損傷したとして、全土での緊急停電を実施した。24 日で侵攻9ヵ月。キーウでは同日朝の時点で7割の市民が電気を使用できず、生活に深刻な影響が出ている。

 原子力企業エネルゴアトムは、国内4原発の緊急保護システムが作動し、外部電源と切断したと発表した。4原発の放射線量に異常はない。

 23日の攻撃は、ウクライナと送電網がつながる隣国モルドバにも波及し、多くの地域で停電が起きた。同国のサンドウ大統領は23日「ロシアはモルドバを暗闇と寒さに閉じ込めた」と非難した。

 ウクルエネルゴは通信アプリに「ロシアの攻撃により電力の周波数が変化したため、モルドバが電力を受け取っている欧州の送電網との接続が切れた」と投稿。ウクライナからは10月11日以降、送電していないという。国内の緊急停電について、事故を防ぎ電力を復旧させるためと説明した。

 米政府はインフラ攻撃について「ウクライナの男女や子どもをさらに苦しめ、死に至らしめる目的に向かって突き進んでいる」と声明で非難し、原発事故のリスクも高めていると訴えた。

 ウクライナ空軍は23日、巡航ミサイル約70発のうち、51発を迎撃したと発表。無人機5機も撃ち落としたとしている。

 エネルゴアトムによると、西部のフメリニツキーとリブネ、南部の南ウクライナの3原発は送電網の状態が安定すれば外部への電力供給を再開する。ロシア軍に占拠され9月に稼働を停止した南部のザポロジエ原発では、原子炉冷却に必要な外部からの電力供給がなくなり非常用ティーゼル発電機が作動した。


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世界の兵器販売1.9%増(2022/12/6 京都新聞)

【ロンドン共同】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が5日発表した報告書によると、世界の軍需企業上位100社による2021年の兵器などの販売額は前年比1・9%増の計5920億ドル(約80兆円)で、7年連続の増加となった。最大の米国が減少したが、中国が急拡大するアジア・オセアニアなど他地域が押し上げた。

 一方、兵器生産に用いる原材料の主要輸出国であるロシアがウクライナへの侵攻で欧米の経済制裁を受けたことで、米国を含む各国の軍需企業の調達が難航。侵攻で増加する兵器需要への対応に「数年を要する可面性がある」とした。

 ロシアは兵器の製造に必要なアルミニウムや銅、鉄、チタンなどの主要な輸出国。世界の軍需企業は新型コロナウイルス流行の影響で、既にサプライチェーン(供給網)の混乱に直面してきたが、2月のウクライナ侵攻を受けたロシア産品の輸入禁止を含む制裁強化に伴い、SIPRIは原材料調達の問題が今後「悪化する」とみる。

 SIPRIによると、米国は10月までに約8500発の携帯型対戦車ミサイル「ジャペリン」をウクライナに供与。これは4年分の生産量に相当し、製造する米ロッキード・マーチンなどは現在約2100発の年間生産量を約4千発に増やす方針だが、増産態勢の整備に約2年かかる見通し。

 21年の兵器などの販売は、最大の米国がインフレの影響もあって前年だ0・9%減少したが、兵器の近代化を進める中国の急拡大を背景に5・8%増加したアジア・オセアニアなど、他地域が増えた。


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(ウクライナ)ソ連製無人機を使用か(2022/12/9 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアの空軍基地2ヵ所で死者が出た5日の無人機攻撃に関し、ロシア紙コムソモリスカヤ・プラウダの従軍特派員コツ氏ら複数の軍事専門家は7日までに、ソ連時代に開発された偵察用無人機「ツポレフ141」が攻撃に使われたとの見方を示した。爆発物を積載し飛来したとみられるという。ロシア国防省は、ウクライナからのソ連製無人機による攻撃と発表している。

 ブリンケン米国務長官は6日、ロシア空軍基地への無人機攻撃に関し「米国はウクライナにロシア国内への攻撃を促してもいないし、その能力も供与していない」と強調。攻撃の主体など詳しい情報は把握できていないと語った。国務省での記者会見で述べた。

 ブリンケン氏は「重要なのは、ウクライナの人々がロシアによる侵攻と隣り合わせで日々を生きている現状を理解することだ」と指摘。自衛のための武器供与は今後も続ける姿勢を示した。

 オースティン米国防長官は同じ会見で「ウクライナが自らの能力を高めるのは妨げない」と述べ、ウクライナ独自の攻撃兵器開発は容認する姿勢を示した。

 ロシアメディアによると、ツポレフ141は1970年代に偵察用として開発され、ソ連時代に約150機が生産された。航続距離は千キロで、ソ連崩壊後は大半がウクライナ領内に残されたとされる。

 ロシア国防省は5日、モスクワ南東リヤザニ州と南部サラトフ州の空軍基地にウクライナ側の無人機攻撃があったと発表。ウクライナ側は公式に認めていないが、ウクライナ政府高官は米紙ニューヨークータイムズに対し、無人機はウクライナ領内から飛び立ち、基地を攻撃したとの認識を示している。


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奪還の街に響く砲声(2022/12/13 京都新聞)

 1ヵ月前、解放の歓喜に沸いた街は薄暗く、雷鳴のような砲撃音が鳴り響いていた。ウクライナ軍が奪還した南部ヘルソン州の州都ヘルソンには、撤退したロシア軍が、大河ドニエプルの対岸から1日数十発の砲弾を撃ち込む。身を守るため街を去る人が増え、人口は激減。停電が続き、避難もままならない高齢者は訪れた記者に「このままでは死んでしまう」と、すがるように訴えた。

 市内に入ると、占領時に設置されたロシア国籍取得を促す看板がはがされ、放置されているのが目についた。営業している店舗はまばら。支援物資を求める市民が集まる以外は人けがない。記者に同行したウクライナ人は「お祝いは終わった」とつぷやいた。

 「私たちは自由を手にし、今度は生活を立て直すために闘っています」。市民が避難所として利用する中心部の広場のテントで医師のリュドミラさん(54)が薬を配っていた。占領生活でストレスが高まり、持病を悪化させた人が多く、精神安定剤や血圧、心臓の薬の需要が高いという。

 ヘルソンはロシア軍が今回の侵攻で唯一制圧した州都だが、30万人いた人口は侵攻後、8万人にまで減少したとされる。住民によると、ロシア側は撤退直前に「アパートを提供する」などと勧誘し、ロシアが支配する東岸への移住を促した。撤退後は市内への攻撃が激しくなり、街を去る決断をする人が増えた。

 ただ、移動が困難な高齢者は残るしかない。「私たちを助けて!」。高齢女性が鬼気迫る様子で記者に詰め寄った。自宅の周辺ではこの1ヵ月、電気、水道が満足に使えない。復旧しても、すぐに攻撃がある。首都キーウ(キエフ)より南にあり、比較的暖かいヘルソンでも夜には気温は氷点下となり、暖房が使えないのは苦しい。

 支援物資をもらう列に並んでいた年金生活者の夕チアナ・ガブリーリブナさん(65)は元軍人の息子(27)が4ヵ月前にロシア側に連れ去られ、音信が途絶えたまま。「私のような人がそこら中にいる」と、やり切れない表情を浮かべた。

 ただ、復興の兆しもうかがえる。シャッターを閉めた商店が並ぶ中、中心部のスーパーだけは品ぞろえ豊富。通りでは子どもがはしやいでいた。地元当局も活動を再開した。警察は、地雷撤去や失踪者の捜索、ロシアとの協力者のあぶり出しを進める。(ヘルソン共同)


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クリミアのロ兵舎攻撃(2022/12/13 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島南東部に位置する集落ソビエツキーのロシア軍動員兵の兵舎で、10日に火災があり、地元メディアによると2人が死亡した。ウクライナ側の立場を取るクリミア・タタール人のパルチザン部隊を名乗るグループが自身の攻撃と認め「ロシア軍を内部から破壊し続ける」との声明を出した。

 ロシアが併合した南部ザポロジエ州メリトポリのロシア軍拠点にもウクライナ軍による攻撃があり、ロシア側「行政府」幹部は10日、米国供与の高機動ロケット砲システム「ハイマース」による攻撃で2人が死亡したと発表した。ウクライナ側は、ロシアの占領地を狙った攻撃を激化させているもようだ。

 メリトポリの攻撃について、ウクライナ側の市長はロシア側に200〜300人の犠牲が出たと主張した。

 東部ルガンスク州のガイダイ知事も11日、ウクライナ軍が同州カディエフカにあるロシアの民間軍事会社「ワグネル」が拠点としていたホテルを破壊したと語った。

 ゼレンスキー大統領は11日のビデオ声明で、イランがロシアに供与した無人機(ドローン)による9日夜の攻撃で電力インフラが破壊された南部オデッサ市などで部分的に電力供給が復旧したが、オデッサ州内では依然として国内最大規模の停電が続いていると明らかにした。


キーウ再侵攻を警戒(2022/12/18 京都新聞)

【キーウ共同】部分動員令で兵力増強したロシア軍が、招集した兵士の訓練が完了する年明けにウクライナの首都キーウ(キエフ)に再侵攻を狙う可能性があるとの指摘がウクライナ高官から相次いだ。今年2月の侵攻開始時に比べロシア軍の戦力は大幅に低下しており、首都が制圧される可能性は低いと分析されているが、ウクライナ軍は警戒を強めている。

 ウクライナのレズニコフ国防相は、英紙が15日に報じたインタビューで、部分動貝された30万人のうち15万人の訓練が終わる来年2月にも前線投入されるとの見方を示した。ザルジーニ総司令官も来年1月末から3月にロシアが大規模攻撃を行い、首都制圧を狙う可能性があると警戒した。

 米シンクタンク、戦争研究所は15日、ロシアにとって極めて有利な条件での停戦交渉をウクライナに強いるという、プーチン大統領の戦争目標は変わっていないと分析。キーウ制圧を狙って新たな攻撃を仕掛ける恐れがあるとした。

 一方で、同研究所はロシア軍の戦力が侵攻当初の2月にキーウ制圧を試みた時期と比較して著しく低下し、現在戦力を集中させている東部ドネツク州バフム卜でも、ウクライナ軍の防衛に阻まれ1日に100〜200メートルも前進できていないと指摘。キーウ再侵攻で制圧できる可能性は「極めて低い」と予測した。

 首都攻略の鍵となる同盟国ベラルーシを経由した首都北方からの攻撃についても、ベラルーシ軍が単独で参戦する見通しはなく、差し迫った脅威にはならないとの見方を示した。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは16日、プーチン氏が侵攻開始時に、ウクライナのゼレンスキー大統領の殺害をロシア南部チェチェン共和国のカディロフ首長に命じていたと報じた。首長の部隊は当初から軍事作戦に参加している。複数のウクライナ治安筋の情報としているが真偽は不明。


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米ウクライナ首脳会談 出口戦略 なお見えず(2022/12/23 京都新聞)

 ロシアに侵攻されたウクライナのゼレンスキー大統領の電撃的な訪米は、バイテン政権が秘密裏に主導した。米議会で出始めたウクライナ支援への慎重論に両首脳とも危機感を強めており、超党派の協力をつなぎ留めたい思惑が一致。ただ高性能兵器の供与では擦れ違いも露呈。戦争の出口戦略は示されず、終わりの見えない消耗戦は年を越えて続くことになる。

 「米国民は正義の力で完全な勝利をつかむ。ウクライナ国民も絶対に勝利する」。ゼレンスキー氏が議会で第32代大統領のルーズベルトによる真珠湾攻撃後の演説を引用すると喝采を浴びた。

 演説中、計18回もスタンディングオベーションが起こり議場は白熱。激戦地の兵士がサインした青と黄色のウクライナの国旗をぺロシ下院議長とハリス副大統領に手渡すと最高潮を迎えた。

 ゼレンスキー氏にとって訪米の最大の狙いは、武器供与を含む軍事支援を最大限引き出すことだ。米国の軍事支援の総額は2月24日の侵攻開始後、他国を引き離して世界最高額の約212億ドル(約2兆7950億円)に到達。ウクライナがロシア軍を押し返す力の源泉になってきた。

 熱弁するゼレンスキー氏には、冷ややかな視線も注がれていた。11月の中間選挙を受け年明けから下院多数派を奪還する共和党の一部議員は支援増強に慎重で、出迎えの際も拍手を送らなかった。

 次期下院議長候補のマッカーシー院内総務は「私の立場は変わらない。白紙の小切手は支持しない」と断言した。

 議会では、450億ドル規模のウクライナ支援を含む予算審議が進む。支援の必要性をアピールし、与野党が結束する機運を高める起爆剤はないか―。米政権幹部がひねり出したのが、ゼレンスキー氏の極秘訪米だった。

 バイテン氏は今月11日にゼレンスキー氏と電話会談した際に訪米を打診し、14日に正式に招待。ゼレンスキー氏は16日に応諾し、18日に訪米が決まった。ポーランド国境まで列車で移動し、同国から米軍機で、F15戦闘機に護送されて米国に降り立つ厳戒ぷりだった。

 蜜月を演出した両首脳だったが、ウクライナが熱望する高性能兵器を巡っては温度差もある。

 ウクライナ高官は9日「クリスマスに欲しい物リスト」として、戦術地対地ミサイルATACMS、地対空ミサイルシステム「パトリオット」など五つの兵器を列挙。だが、米欧が応じたのは、防空強化が目的のパトリオットだけ。射程の長い武器はロシアへの直接攻撃に使われる恐れがあ り、要請に従うと戦争激化が予想されるからだ。

 戦火を広げることなく、ウクライナが納得する形で停戦できないのか。米政府高官によると、バイテン氏がゼレンスキー氏との対面での直接会談にこだわったのはどう戦争を終わらせるか腹を割って話す狙いもあった。

 会談での具体的なやりとりは明らかになっていないが、共同会見でゼレンスキー氏は「ウクライナの主権や領土の一体性」は譲歩しないとして、全領土奪還まで戦闘を続ける姿勢を堅持した。

 「プーチン(大統領)が撤退すれば、戦争は終わる。だが、それは起きそうにない」。バイテン氏は侵攻長期化は不可避だと認めるしかなかった。(ワシントン、キーウ共同)


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侵攻10ヵ月 ウクライナ反攻強化(2022/12/24 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアのウクライナ侵攻は24日で10ヵ月。ウクライナはこれまで、戦車・装甲車約2千両を含む武器支援を約50力国から得て、9〜11月に東部や南部の占領地を広く奪還した。21日には米国から18億5千万ドル(約2450億円)規模の新規軍事支援を取り付け、反転攻勢を一層進める構えだ。

 ロシア軍は東部の制圧地拡大を図る一方、インフラ攻撃を強めて厳冬期の市民生活を困難にする作戦を続行。プーチン大統領は21日、国防省での演説で、軍には必要な資金など「全てを与えている」とし「相応の結果を出す」よう求めた。冬の戦いは激化しそうだ。

 ロシア軍は2月の侵攻開始以降、東部や南部の広い範囲を制圧。だがウクライナ軍の今秋の反転攻勢は激しく、英国防省は今月、ロシアが侵攻開始後に制圧した地域の54%をウクライナが奪還したとの分析を示した。

 ロシア側が戦力を重点配備する東部ドネツク州では要衝バフムトを中心に一進一退の激戦。ウクライナ軍は南部のロシア軍拠点への攻撃のほか、ロシアが維持するヘルソン州のドニエプル川東岸へ向かう動きもある。

 ロシア側は無人機(ドローン)やミサイルを使用し、首都キーウ(キエフ)を含むウクライナ各地のインフラ施設への攻撃を10月から続けている。電力会社ウクルエネルゴは23日、電力不足はやや改善しているが、使用制限が全土に設けられ「状況は厳しい」と明らかにした。

 ゼレンスキー大統領は防空システム強化の必要性を強調。米政権は、現存する地対空ミサイルで最も優れた防空システムの一つとされる「パトリオット」の供与に踏み切った。侵攻開始後の米国の軍事支援は計200億ドル超に上る。21日、バイテン米大統領は訪米したゼレンスキー氏との共同記者会見で「戦車や装甲車約2千両、大砲800門超、砲弾200万超」などを50以上の国が提供していると明かした。

 ロシアのプーチン大統領は今月上旬、ウクライナでの軍事作戦が「長期にわたる可能性がある」と発言。ウクライナでは、ロシア軍が部分動員で集めた兵士の訓練を終え、来年初めにもキーウ再侵攻を狙う可能性があるとの観測が出ている。


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北朝鮮、ロシアに武器売却(2022/12/24 京都新聞)

【ニューヨーク、ワシントン共同】バイテン米政権は22日、北朝鮮がロシア民間軍事会社「ワグネル」に武器を売却したことを確認したと発表した。ウクライナ侵攻以降、北朝鮮によるロシア側への武器供与を米国が確認、公表したのは初。歩兵用のロケット砲やミサイルを11月にロシアヘ運び込んだと指摘した。

 ワグネルはウクライナ侵攻に部隊を派遣している。米政権は、北朝鮮の武器輸出を禁じた国連安全保障理事会決議に違反したとして安保理で協議する方針。ワグネル創設者のプリゴジン氏は「北朝鮮は長い間、武器をロシアに提供していない。そのような試みもなかった」と否定した。

 トーマスグリーンフィールド米国連大使は声明で、北朝鮮がワグネルから得た資金で核・ミサイル開発を加速させ、朝鮮半島の不安定化にもつながると強調した。今回の武器売却はウクライナの戦況に影響を与える規模ではないが、北朝鮮がさらなる売却を計画している可能性があるとして懸念を表明した。

 ロシアは弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を擁護してきた。声明は「北朝鮮の不法で威嚇的な振る舞いに加担し、共犯者となった」とロシアを非難した。

 米国家安全保障会議(NSC)のガービー戦略広報調整官は22日、米欧などの制裁によりワグネルの武器調達が困難になり、世界中で入手先を探していると指摘。北朝鮮に頼らざるを得なくなったとめ見方を示した。

 ウクライナ軍の抵抗で劣勢に追い込まれたロシア軍は、ワグネルヘの依存度を高めているという。ワグネルは推計5万人をウクライナに投入し、うち4万人は勧誘されるなどした受刑考とみられる。


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「命 差し出せぬ」召集おびえ(2022/12/26 京都新聞)

 ウクライナ侵攻を10ヵ月以上続けるロシアの国内では、プーチン政権の強硬姿勢を前に反戦の声は鳴りをひそめる。だが、戦死者の増加は市民に漏れ伝わっている上、米欧や日本の制裁で景気は低迷し「何のための戦争か」との疑念が広がる。ウクライナにルーツを持つ住民も多い極東の人々は軍に追加動員される可能性におびえ、ある男性は「命は差し出せない」と本音を明かした。

 極東の中心都市ウラジオストクの公立学校(日本の小中高相当の一貫校)では愛国心を高めようと、毎週明けの朝礼で生徒らを集めて国歌を流し、教員が戦果を報告するようになった。政権に不都合な情報は伝えられないが、市民は戦死者が増えていると知っている。郊外の墓地で戦死兵の墓が増えているからだ。9月の部分動員発表後、多数の男性が出国した。経済的理由などから国内で身を隠す人も少なくない。極東の別の町で生活する男性(29)は機械技術者の職を辞め、住民登録していない祖父母宅に身を寄せた。「限られた人たちの利益のための戦争に、命を差し出せない。終戦までとどまるつもりだ」と明かした。

 召集令状は本人か雇用主への手渡しが原則。交通警察や軍の検問を恐れ、外出も控える人も。

 独立系メディアは装備が不十分なまま動員兵がウクライナ東部に送られ、前線で多数死亡した事例を報道。当局は否定しているが、情報統制への不信感も高まっている。

 ウラジオストク市内は空き店舗が目立つ。3人の子どもがいる男性会社員(45)は「私は愛国者だが、必要な戦争なのか。経済は悪化し、国の威信も衰えた。早く終わらせなければ、景気はさらに悪化する」と嘆いた。帝政期以来の移住や流刑で、極東にはウクライナ系の名字を持つ大が多い。兵役経験のある男性(36)は「平和に共存してきたスラブ人同士が戦う理由はない」と戸惑う。「だが招集されれば国に従う」と複雑な心境を吐露した。

 自動車販売業の男性(46)は「(侵攻は)目的が理解不能。富豪は守られ、市民が割を食う戦争だ」と批判。ウクライナ人の妻がいながら報酬のため軍に志願した知人もいるとしつつ「私は決して戦わない。国は税金を取り立て、見返りもなく、命までよこせというのか」と憤った。(共同)


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敵兵でも遺体は家族に(2022/12/28 京都新聞)

 激戦が続くウクライナ東部で、同国軍が奪還した地域に放置されたロシア兵の遺体収容を続ける非政府組織(NGO)がある。これまでに260人超、12月だけでも20人以上を収容。主な目的は、ウクライナ兵の遺体との交換だが、「家族は心配して帰りを待っているはずだ。返してあげないといけない」。敵の遺体や遺品を丁寧に扱うメンバーの活動に同行した。

 「衣服の切れ端まで全て集めろ」。9月に奪還した東部ドネツク州ソスノベ。激しい戦闘で壊滅し、静まりかえった街に男性の声が響いた。雪が舞う12月の寒空の下、迷彩服に身を包んだNGOのメンバーたちが足元に横たわる人骨を手に取り、入念に調べていた。

 「ブラック・チューリップ」と呼ばれる遺体収容活動は、原形をとどめていない民家や爆弾の破片が飛んだ跡が残る教会、焼け焦げた戦車の周囲で行う。あたりに人けはなく、前線の方角からは爆発音が絶えず響く。

 「左の5番と6番の歯が欠損」「年齢は25〜30歳と推定」。壊された鉄道施設近くで見つかった頭蓋骨を手に、リーダーのオレクシー・ユーコフさん(37)が報告した。

 頭蓋骨の周りには骨盤や脚などの骨のほか、所持品のたばこやスプーンもあった。身元を示すものは見つからず、DNA鑑定に回すことに。ユーコフさんは「親や子どもは最愛の人が戦場に行くのを止めることはできない。遺体は返さないといけない」と活動の意義を語った。

 数十メートル先では別の兵士の遺体が見つかった。身につけていた防弾チョッキはぼろぼろになり、鉄製のヘルメットはへこんで穴が開いていた。東部の親ロシア派「ルガンスク人民共和国」の部隊所属の男性であることを示す身分証や家族写真が衣服の中に入っていた。

 遺体と遺品を白い袋に入れ終えたメンバーのアルトウール・セミコさん(25)は、横たわる袋にしばらく目を落としていた。「殺すために送り込まれた人が殺されていく。ただただ残念だ」

 服のポケットからは妻からとみられる手紙も出てきた。「会いたいです。帰りを祈りながら待っています。きっと全て大丈夫だから」(ソスノベ共同=原龍太郎)


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ウクライナで高まる民族意識(2023/1/4 京都新聞)

 舞台芸術が生活に密着している旧ソ連のウクライナ。戦時体制は国全体を覆い、「敵国」の排斥はバレエにも及ぶ。大国ロシアの影で自国文化が抑圧されてきたとの思いは強い。侵攻を好機と捉え、ウクライナのバレエを世界に発信している。

 「チャイコフスキーは素晴らしい作曲家だ。しかし私たちにとってはソ連共産党を想起させる」。西部リビウの国立歌劇場総合芸術監督ワシル・ボフクンさん(65)が語った。

 この劇場は昨年2月の侵攻開始後、ロシア帝国の作曲家チャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」など、ロシアに関係する作品の上演を中止した。代わりに力を入れるのは「ウクライナ民族の父」とされる国民的詩人タラス・シェフチェンコらの作品を基にする演目だ。

 「両国の文化は数百年間ぶつかり続けてきた」。ボフクンさんは力説する。対立の歴史は、ウクライナ語の出版を一時禁止するなど文化的抑圧が進んだロシア帝国時代にさかのぼるとみる。プーチン大統領は初代皇帝ピョートルー世(1672〜1725年)を自分と重ねて偉業をたたえた。「プー チンは同じことをやろうとしている。われわれを恐れているのだ」

 昨年10月下旬、劇場に併設した稽古場では指導する講師の声が響いていた。「高く! 高く!」。リハーサルに臨むダンサーたちの表情は真剣そのもの。跳躍やつま先立ちを軽やかに繰り返す。

 ダンサーのロクソリアナ・イスクラさん(27)は海外公演でチャイコフスキーの演目を求められるたびに歯がゆさを感じる。「戦争中はロシア作品は控えるべきだ。多くの人が亡くなったことを忘れないために」とイスクラさん。ビクトリア・ズワリチさん(29)は「ウクライナにはもっと良い作品 がある」。ロシアのダンサーの動画を見本に練習するのはやめた。

 この日の演目は古代インドが舞台の物語「ラーバヤデール」。空襲警報が鳴れば地下シェルターに避難するため、観客は座席の3分の1に絞っている。開演前の国歌斉唱では涙ぐむ人の姿も。

 劇場は侵攻が始まった昨年2月24日に一時閉鎖され、4月1日に再開した。家族を失ったり、自ら戦地に赴いたりしたスタッフもいる。

 「困難な時期を乗り越えさせてくれる」。前線に近い東部ドネツク州から避難してきた70代のリュドミラ・スメルノワさんは家族で観劇し、感激した様子。一方で、ロシア作品の上演再開もひそかに願う。「芸術はプーチンや政治より崇高なはずだ」。「兄弟国」の文化排斥に複雑な思いをのぞかせた。(共同)


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領土割譲85%「認めない」(2023/1/4 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナのキーウ国際社会学研究所は2日、昨年12月に実施した世論調査で、ロシアによる侵攻を早期に終わらせるために領土の一部をロシアに譲渡することを「認めない」と答えた人が85%に上ったと明らかにした。

 昨年5月以降に複数回実施した調査の結果では、譲渡に反対した人は80%台で推移している。研究所は、10月以降に相次いでいるロシア軍によるインフラ攻撃は、ウクライナ人を妥協させる効果を持たないと指摘した。

 地域別では、激しい戦闘が続く東部で80%、南部で82%がそれぞれ譲渡に反対。首都キーウ(キエフ)などが含まれる中部では87%だった。調査は昨年12月4〜27日、ロシアの支配地域を除くウクライナ全土で、2005人に電話で行った。


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プーチン氏36時間停戦命令(2023/1/6 京都新聞)

 ロシアのプーチン大統領は5日、ロシア正教のクリスマスイブに当たる6日正午(日本時間同日午後6時)から8日午前O時までの36時間、侵攻しているウクライナで停戦するよう命じた。ウクライナにも同調を呼びかけたが、ゼレンスキー大統領はロシア軍が態勢を立て直し新たな攻撃に備える狙いだと反発し、応じない構え。実現すれば昨年2月の侵攻開始以来初めての公式な休戦となるが、実現性は不透明だ。

 プーチン氏は「全ての前線での戦闘停止」を命令し、ショイグ国防相が前線の部隊に戦闘行為休止を命じた。これに先立ち、ロシア正教会の最高位キリル総主教がロシア、ウクライナ双方にクリスマスの7日に合わせた休戦を呼びかけていた。

 ゼレンスキー氏は5日のビデオ声明で「ロシアはクリスマスを隠れみのにし、(激戦地の東部)ドンバスでの攻撃を一時停止させ、装備や兵員を前進させようとしている」と批判。「ロシア兵が撤退するか、われわれが撃退した時に戦争が終わる」と強調した。

 キリル総主教はプーチン氏に近く、ウクライナでの軍事作戦を支持する立場を表明しており、「正教の信徒がクリスマスの礼拝に行けるよう」戦闘停止を求めていた。プーチン氏も「総主教の提案を考慮」し「戦闘地域に大勢の正教信者が暮らしている」と述べた。

 ロシアの正教会では例年、クリスマスイブの1月6日深夜から信者を集めて礼拝が行われる。ロシアとウクライナには正教の信者が多く、正教会の社会的影響力が強い。(共同)