h2210
 
  • 定期テストを廃止.25
  • 金融教育「時間不足」44%.27
  • 小中不登校 急増24万人.28
  • 多忙な学校 見逃すSOS.28
  • 小中学校で注目集めるDC教育.28
  • いじめ最多、審議要請へ.29
  • 「情報1」の教員不足.31
  • 10月31日 文科省 「情報1」の教員不足

     2025年から大学入学共通テストの出題科目に加わる「情報1」の専門教員の不足が課題となる中、文部科学省は都道府県などに改善計画の提出を求めるなど、指導体制を充実させる方針を固めました。

     プログラミングなどを学ぶ「情報1」は2025年から大学入学共通テストの出題科目に加わりますが、NHKがことし1月に行った調査では、この免許を持たず、臨時免許や特例で教えている高校教員が全国で1119人に上るなど、専門教員の不足が課題となっていました。

     こうした状況を改善するため文部科学省は、免許を持たずに教える高校がある40あまりの都道府県や政令指定都市に対し、10月中に改善計画を提出するよう求めていることがわかりました。

     文部科学省は具体的な対策として、免許を持つ教員が複数の高校を兼務することや、免許を持ちながら別の教科を担当している教員の配置を見直すことなども都道府県などに示しています。

     また長期的な取り組みとして、退職者数や採用者数の見込みの推計を出したり、授業のサポート体制を整えるため地元の大学や産業界などと協議する場を設置したりすることも挙げています。

     一方、文部科学省は情報の免許を持たずに教えている教員の数などについて実態調査を行っていて、それらの結果や今後の改善策について、近く公表する方針です。(NHK)


    大学入試センターの 出題サンプルは、一般的な情報リテラシーとプログラミングの基礎的な内容を問うものとがあるようだ。情報リテラシーは「情報1」として学ぶよりも「公共」での内容のように見えるし、プログラミングについてはそれぞれの言語の文法による違いがあることからあえてこうした形の出題が必要かどうかは疑問だ。このような曖昧さの中で教員の養成が十分果たせないのは必然のようにも思える。国の教育の方向が「即戦力」にあることが原因。


    10月29日 文科相 いじめ最多、審議要請へ

     永岡桂子文部科学相は28日の閣議後記者会見で、2021年度に全国の小中高校などが認知したいじめ件数が過去最多となったことを受け、有 識者らで構成する「いじめ防止対策協議会」に審議を要請すると明らかにした。身体的被害や長期欠席が生じる重大事態への対応や第三者調査の在り方などを話し合う。年内に初会合が開かれる見通し。

     また、不登校の小中学生も急増したことから、有識者会議で要因の分析を進めるとともに、不登校特例校の設置促進や情報通信技術(ICT)を活用した学習活動を充実させる考えを示した。



    10月28日 小中学校で注目集めるDC教育

     小中学生にパソコンやタブレットといったデジタル端末を1人1台配備する『GIGAスクール構想』に伴い、インターネットという公共 空間で子どもが責任を持って行動する方法を学ぶ「デジタルーシティズンシップ(DC)教育」が注目を集めている。

     以前はネットの危険性を強調し、利用を制限する傾向にあった。しかし情報通信技術(ICT)が生活に浸透。教育関係者の間には「従来の教育では子どもを巡るデジタル環境の変化に対応できない」との実感があり、普及が進む。

     「もし自分が当事者なら、どう反応したか考えてみましょう」。DC教育を導入する島根県雲南市の海潮中学校で6月、ヘイトスピーチを題材にメディアリテラシーを学ぶ授業が行われた。

     生徒たちはヘイトスピーチの定義や規制について説明を受けた後、架空の人物カズオの物語を基に話し合った。カズオは交流サイト(SNS)の差別的な投稿に「同感」と反応したことで大学の合格が取り消しになる。

     もし自分か差別される側なら。一対一でメッセージを受けていたら―。異なる立場や状況を想像し、互いの意見を共有する生徒たち。講師を務める今度珠美さんは「メディアリテラシーは情報を疑うだけでは不十分で、思い込みや感情と距離を取り、正確な知識を持って分析する必要がある」と説明。さらにDC教育では、問題のある投稿を見た場合に状況を変えるため何ができるかを議論することも重要だと話す。

     デジタル空間の市民教育であるDC教育は1990年代以降に欧米で発展。当初はネットに潜む危険の回避が中心だったが「怖がらせる方法で教えてもトラブルは減らない」との声を受け、子どもがデジタル世界の仕組みを理解した上で法的・倫理的に振る舞う能力を育む内容へと変化した。米国では幼稚園から高校まで成長段階に合わせ、プライバシーの守り方やネットいじめへの対応などを系統的に学ぶ実践プログラムが普及する。

     大阪府吹田市立教育センターの草場敦子所長は「共感と尊重を重視する点が人権教育にも通じている」とDC教育に着目、全国でもいち早く取り入れた。小中学校で年間の指導計画を作成。保護者と学びを共有するワークシートを配布し、教員向けの相談会も実施している。草場所長は「これからを生きる子どもたちは世の中の仕組みを学ぶのと同じように、ネットの裏側や真偽を見極める必要がある」と語る。

     メディアリテラシーに詳しい法政大の坂本旬教授は、子どもが自分で考えて身を守る力を養うのがDC教育の特徴と指摘。「1人1台端末を導入するならば、家庭だけに責任を押しつけず、善き使い手を育む教育が学校現場には求められている」と話している。



    10月28日 不登校急増24万人多忙な学校 見逃すSOS

     不登校の小中学生が加速屎的に増加している。2021年度の文部科学省調査で24万人を超え、約10年前と比べてほぼ倍増した。「新型コロナウイルスの影響」「学校以外の選択肢ができた」「何となく行きたくない」―。さまざまな要因が考えられる一方、多忙な学校現場が子どものSOSを受け止め切れていないとの重い指摘も。有効な方策はないのか。

     今年に入り、千葉県の公立小に通う5年女児は登校するたびに泣き出すようになり、学校に通えなくなった。いじめやトラブルは確認できず、保護者にも心当たりはない。「理由が分からないけど不安」。女児は30代男性教員へそう伝えた。

     この教員が子どもたちからよく聞かされるのは「マスクだと友達と話しにくい」「鬼ごっこをしては駄目と言われる」といった声。「コロナ禍の不自由が漠然とした不安につながっている」と推測する。以前は朝に保護者が校門まで送って何とか登校していた児童も感染拡大後は完全に休むようになった。

     多くの教員が「忙しすぎて子どもに向き合えない」と口にする。18年実施の経済協力開発機構(OECD)調査では、日本の中学教員の仕事時間は週56時間で、参加国・地域平均の38時間を大きく上回って世界最長。小学校教員も同様だ。こうした状況に新型コロナが拍車をかけた。

     教員らによると「担任クラスで6人の感染者が出た際、オンライン授業や連絡事項の伝達に追われた」など負担増の具体例は数知れない。久しぶりに保健室登校してきた子がいても声をかける時間がないこともある。

     ある小学校教員は「子どもと接点を持ち、話を聞き続ける以外に不登校への特効薬はない。だが、その余裕が失われている」と言い切る。教員増員など文科省の直接的な支援策が足りていないというのは学校現場の共通認識になっている。

     また「『ちょっと体調が悪くて休む』と話す生徒に関して、感染拡大後は理由を探りづらくなった」との証言がある。コロナ陽性の可能性を考えると、登校を促せないとの意識が学校に浸透。こうした欠席を見過ごすことが、長い不登校のきっかけになるとの見方だ。

     10月26日午後、学校以外の子どもの居場所となっている「フリースペースえん」 (川崎市)で小学生らが打楽器や弦楽器を軽快に奏でていた。「ここで音楽が大好きになった」と楽しそうに話す小5男児(11)は、友達に悪口を言われたのがショックで約2年前から不登校。少しずつ学校に通えるようになったが、まだ気が重い。

     17年施行の教育機会確保法は、不登校の児童生徒には休養が必要で、国や自治体による支援対象と明記。文科省によると、フリースクールなどの民間施設で指導を受けるなどした児童生徒は21年度に約9千人で、ここ5年ほどで3倍になった。

     「管理職が『学校に通うことが全てではない』と話し、無理に登校させる指導は影を潜めた」。新潟県の公立中の30代男性教員は、学校や教育委員会の考え方が変化したと感じている。

     ただ「選択肢が増えるのは望ましいが、生徒に教室へ戻ってきてほしい自分にとってはやりづらい」と複雑な思いを抱く。都市部と違い受け皿が不十分な地方なので、子どもの支援が行き届かないことも恐れてい


    学校の多忙が学校機能の不全をもたらしているという指摘は以前からある。早急に30人学級や専科教員配置などが求められるであろう。教育予算がおよそ5兆円。防衛予算も同額。以前は「防衛費を削って教育に」と言われたが議論にはならななかった。岸田内閣は防衛費を倍増すという安倍政権の意向を引き継ぐらしい。改めて「防衛費の増額分を削って30人学級を」といってもいいだろう。


    10月28日 文科省 小中不登校 急増24万人

     全国の国公私立小中学校で2021年度に30日以上欠席した不登校の児童生徒は24万4940人となり、20年度より24・9%(4万8813人)増えて過去最多だったことが27日、文部科学省の問題行動・不登校調査で分かった。初めて20万人を超え、増加割合も最も大きい。小中高校などが認知したいじめは19・0%増の61万5351件で最多。小中高生の自殺は47人減って368人となった。

     文科省は、不登校急増の背景に新型ココナウイルスの影響がうかづえると分析。「運動会や遠足といった学校活動が制限され登校意欲が下がったとの見方や、休校による生活リズムの乱れが戻らない事例の報告もあった」と説明した。フリースクールなど学校以外の学びの場が選ばれやすくなったとの指摘もある。

     小学生の不登校は8万1498人で全小学生の1・3%、中学生は16万3442人で5・0%を占めた。約10年前と比べて小学生で4倍近く、中学生で2倍近く。中学の「40人学級」なら1クラス2人が不登校の計算になる。義務教育ではない高校は約5万人で、コロナ拡大前の水準だった。

     学校が判断した小中学生の不登校理由は「無気力、不安」が最多の49・7%。「生活リズムの乱れ」が11・7%、「いじめを除く友人関係」が9・7%と続いた。

     新型コロナ感染の不安や感染回避を理由に30日以上休んだ小中高生は7万1704人で、不登校の人数には含まれない。

     20年度に大きく減少したいじめは、感染拡大前の19年度並みに戻った。学校種別で、小学校50万562件、中学9万7937件、高校1万4157件、特別支援学校2695件。うち、スマートフォンなどによるネットいじめが過去最多の計2万1900件に上った。

     文科省は、一斉休校があった20年度は児童生徒の接触機会が減り、21年度はほぼ例年並みの登校日数だったことがいじめの増減に影響したとみている。いじめで身体的被害や長期欠席などが生じた「重大事態」も20年度比191件増の705件。

     児童生徒千人当たりの認知件数は47・7件。都道府県別で最多の山形(126・・4件)と最少の愛媛(12・8件)の間には約10倍の差があった。


    府内小中高 コロナ拡大前の傾向に

     文部科学省が27日に公表した2021年度の問題行動・不登校調査結果で、京都府内のいじめ認知件数は国公私立の小中高校と特別支援学校で前年度比771件(4・1%)増の1万9529件だった。新型コロナウイルス感染拡大による一斉休校で減少した前年度から一転して増加しており、学校生活が再開し「人同士の関わりが増えた影響がある」としている。

     いじめ認知件数の内訳は小学校が504件(3・2%)増の1万6290件、中学校が242件(9・9%)増の2683件、高校が4件(1・1%)増の373件、特別支援学校は21件(13・0%)増の183件と全ての校種で増加した。

     心身に大きな被害を受けたり、不登校になったりする「重大事態」。は12校で13件発生し、前年度から5件増えた。

     いじめの千人あたりの認知件数は74・7人と全国で7番目に多く、府教委は「初期段階を含めて積極的に把握に務めている結果で、早期発見し、適正な指導や支援で解消につなげたい」としている。

     暴力行為の発生件数は、小中高校のふ合計が前年度比230件(13・1%)増の1981件だった。内訳は小学校が205件増の1074件、中学校が1件減の770件、高校は26件増の137件。対教師や生徒間、器物損壊が増えているといい、件数が多い小学生は同じ児童が繰り返し問題を起こす例が目立つほか、ささいな事でも感情をコントロールできない傾向もみられるとしている。


    府内小中高 不登校 最多4465人

     京都府内の国公私立の小中学校で2021年度の不登校の児童牛徒数は、前年度より655人(17・2%)増えて、4465人と、10年連続で増加し、過去最多を更新したことが27日、文部科学省が公表した2021年度の問題行動・不登校調査結果で分かった。府教育委員会は「学校や本人、家庭など多様な要因に加えて、コロナ禍のストレスにより悪循環が加速したのではないか」としている。

     小学校が1518人と前年度から318人(26・5%)増え、中学校は2947人と337人(12・9%)の増加。千人当たりの人数も、小学校は前年度の9・6人から12・3人に、中学校は39人から44・1人とそれぞれ増えた。府内の高校の不登校牛徒数は911人で197人(27・6%)の増加だった。

     このほか、コロナの感染回避のため30日以上の長期・欠席をした小中学校の児童生徒数は府内では833人おり、前一年度から603人と大幅に増加。長期欠席者の内訳は、小学校が520人、中学校が313人だった。府教委は「コロナ感染回避による長期欠席は、理由もさまざまで不登校と切り分けられない。学力保障や集団生活の視点から社会的自立のためにプラスではなく、深刻な問題ととらえており、不登校と同様に対応していきたい」とした。

     高校の中途退学者数は731人と前年度から136人(22・9%)増えた。 


    ネットいじめ 全国過去最多2万件超

     2021年度の文部科学省調査で、小中高校などでスマートフォンや交流サイト(SNS)を通じた「ネットいじめ」として認知された件数は過去最多の2万1900件となった。閉ざされた空間で被害が深刻化する恐れもあり、どのように防ぐのかが喫緊の課題だ。

     「LINE(ライン)のグループチャットで悪口を言われた」「後で投稿が消えるインスタグラムの機能を使って中傷された」―。インターネツトのいじめに詳しい荒生祐樹弁護士には、子どもや保護者からこんな相談が寄せられる。勝手に写真を使われる巧妙な成り済ましも、学校の友達の関与が疑われるケースがあるという。

     荒生弁護士は「ネットだと相手の悲しむ顔が見えないから『仲間外れ』も簡単にできてしまう。SNSなどの知識が足りない教員も多く、学校現場だけでは対処しきれない」と指摘する。近年は各自治体の対策も進む。東京都は09年度、ネットに関連した子ども向け相談窓口を開設。「他人を中傷するうその書き込みをしてしまった」などとする加害者側からの相談も多い。

     ネット空間で友達がいじめられている状況を通報できるアプリ「ネットみえ〜る」を20年度に導入したのが三重県教育委員会。仲間内で悪口を書き込んでいるような画面を撮影して、このアプリに送ってもらう。21年度にいじめが疑われる通報が9件あり、個人が特定できた内容は学校などに情報提供した。

     静岡県の公立中学の男性教諭は「教育委員会から『ラインのトラブルはすぐに報告しろ』と指示されている」と話し、学校現場の大きな課題になっていると強調。実際に女子生徒同士の「ラインで悪口を言われた」や「こんなメッセージは送ってほしくなかった」というトラブルに遭遇し、いじめと認定した。

     荒生弁護士は「今の子どもたちは、きちんとした知識を教わる前からネット環境に接している。書き込みの影響力や他人を傷つける可能性について、全員が同じレベルで学べる教材や、外部の専門家と連携した授業が必要だ」と提案した。


    いじめ、不登校ともに増加の傾向は変わっていない。コロナ感染拡大が子どもたちにもたらした影響決して小さいものではなかった。経済の回復という目標に隠れて見落とされがちな課題でもる。コロナの影響が少なくなって数値が上昇しているのは何を意味するのだろうか。とりわけ中学校での数値が気になる。いわゆる「中一ギャップ」とよばれた小学校と中学校のギャップを教育問題とする傾向があり、小中連携や義務教育学校の設置などと「改革」が進んだがその成果はあったのだろうか。この調査からは見えてこないが、旧来の学校の在り方への異議申し立てと考えるのは早計だろうか?


    10月27日 金融教育「時間不足」44%

     「金融経済教育を推進する研究会」(事務局・日本証券業協会)が全国の中学校教員に実施した調査で、金融教育の授業時間について「足りない」との回答が計44・1%だったことが26日、分かった。2014年の前回調査の54・2%に比べ改善したが、依然高い水準たった。教員に十分な知識や指導法がないとの回答も目立ち、政府が進める「資産所得倍項プラン」の課題となりそうだ。

     時間を確保できない理由は「現行の教育計画にその余裕がないため」が82・1%で最も多かった。「教える側に専門的な知識が不足しているため」が32・6%で続いた。

     教科書の記述に関し、現在の経済事情・諸課題と比較して「足りない」との回答は計29・9%だった。14年調査より5・4ポイント改善した。研究会はビデオ教材やインターネットサイトなどの活用も有効としている。

     政府機関や金融機関など学校外と連携した授業や取り組みは「行ったことがない」が80・8%に達し、研究会は専門家の積極活用を呼びかけた。

     調査は中学3年の生徒にも実施した。預貯金や株式などへの投資が、社会や経済の発展にどうつながっているかについて、計52・3%の生徒が「説明できない」と回答した。研究会座長を務める慶応大の吉野直行名誉教授は「個別の言葉の説明と同時に、全体像を視覚で見ていくと理解が深まる」と指摘し、補助教材の拡充を求めた。

     調査は2〜3月に郵送やインターネットで実施した。教員は全国の2536人から、中学3年の生徒は全国の5737人から回答を得た。


    報告書では「「金融リテラシー」をさまざまなライフステージにおいて身に付けることが重要です」と金融教育の意義を示している。しかし、お金についてのリテラシーは自己の財産を増やす事だけではないだろうし、資本主義経済の仕組みの中でお金がどう動いているのかを学ぶことであるだろう。それにしても調査結果に驚くことはない。授業時間が足りないのは当然のことで、学ぶべきこととされることがあまりにも多すぎる。おそらく現場からは「研究会の委員は現場を視に来い」との声が出るだろうと想像できる。
    「金融経済教育を推進する研究会」ホームページに[確認テスト]なるものがあるが、こんな珍問が出されている「【問題】「3つの経済主体」のうち、常にお金に余裕があって、資金の供給者としての役割を担っている主体はどれ?A家計B企業C政府」さてあなたはどれを選ぶ。解答はここ


    10月25日 府立清明高 定期テストを廃止

     昼間定時制の京都府立清明高(京都市北区)が本年度から、年5回あった定期テストをなくした。一夜漬けも可能なテストだけでは知識の定着や測定が困難なことを理由としており、代わりに普段の授業で実施する小テストやリポート提出、学ぶ姿勢などを評価基準とした。新学習指導要領の施行も背景にあり、生徒の評価の在り方に一石を投じている。

     定期テスト廃止は、2020年4月に着任した越野泰徳校長(59)が発案、主導した。「一発勝負の定期テストに向けた勉強だけでは知識の定着につながらない」「テストの点数が高い生徒が必ずしも知識や思考力が優れているとは言えない」と、前任の南陽高に勤務していた5年ほど前から定期テストに疑問を感じていた。教職員の同意を取り付け、昨年度、1年かけて評価方法の研究を重ねてきた。

     定期テストに変わる評価は、単元ごとの小テスト、リポートやプリント類の提出物、普段の学習の課題や気付き、成果などを記す「振り返りシート」を柱にする。3年の女子生徒(18)は「これまではテスト用に勉強していた。覚える量が多く負担だったが、今は気持ちが軽い」と話す。

     定期テストが始まると、プレッシャーからなのか欠席者が増える状況も決断を後押しした。越野校長は「急に欠席する生徒は減った。勉強は嫌なことというイメージをぬぐい去りたい」としている。ただ、2年の男子生徒(16)が「定期テストがないとどろ評価されるのだろうと戸惑いもある」と打ち明けるように、生徒の不安解消が課題だ。

     全国的には、東京都世田谷区の区立桜丘中が2019年度に定期テストを廃止した。学力低下が不安視されたが、逆に生徒の学力は底上げされ、廃止の動きも生まれている。21年度に定期テストをなくした茨城県立波崎柳川高(神栖市)は「生徒の授業への意欲が高まった」とする。

     本年度施行の新学習指導要領は、多面的な評価の必要性を掲げており、ペーパーテストでは図りにくい「主体的に学習に取り組む態度」といった評価基準を強調していることも定期テスト廃止の背景にある。

     府教委は「定期テストを廃止した他の府立高は把握していない」とした上で「大学入試も控える中で、学んだ成果を試す機会を一律になくすことには難しさもある」と慎重な見方を示す。一方、「多様な評価が求められる中、定期テストをなくす学校がこれからも出てくるのではな いか」(京都市内の公立高校長)といった肯定的な意見も出ている。


    佛大教育学部の田中耕治客員教授(教育方法学)の話評価の在り方 問題を提起

     学力評価について詳しい中間や期末といった定期テストは評価の形式の一つだが、高校での教育が多様化する中、評価の在り方として適切なのかという問題提起だ。定期テストの結果に基づいて、子どものつまずきを把握して、きちんと学習支援するのが本来の在り方だが、そこがうまく機能していないという現状もある。これまで各中学高校が行ってきた試験がどの程度、子どもたちの学習支援につながっていたのか考え る契機になればいいのではないか。


    千代田区立麹町中校長・工藤勇一の『学校の「当たり前」をやめた。』、一方「プロ教師の会」名誉会長・諏訪哲二の『学校の「当たり前」をやめてはいけない!』。教育改革についてはいつも二項対立的な議論になる。定期試験をやめることで何かが変わるとは思えないが、続けることににも意味があるとは思えない。京都府内での初めての実施が清明高ということも賛否の議論につながるのだろうか。


    10月20日 府人事委員会 冬のボーナス上げ勧告

     京都府人事委員会ば19日、府職員の月給と期末・勤勉手当(ボーナス)を引き上げるよう、西脇隆俊知事と菅谷寛志府議会議長に勧告した。民間給与水準との差を解消するためで、勧告通りになれば、平均年間給与額は5万6千円増の608万4千円(41・4歳)となり、引き上げには15億3千万円が必要になる。引き上げ聖ほ2019年以来、3年ぶり。 ‘

     同委員会の調査で、府内195の民間事業所(50人以上規模)と府職員の月給を今年4月時点で比較した結果、民間の月額給与の平均が37万165円で、府職員平均(36万9043円)を1122円上回った。要因として、民間事業所の4割が初任給を増額したほか、ベースアップを行ったところも昨年の2割未満から3割超に増えたことが考えられるという。同委員会は「民間の給与水準が新型コロナウイルス禍前に戻り つつある」と推測し、「初任給に差が生じると、新卒者の人材流出につながりかねない」と判断した。

     勧告では、30代半ばまでの若手職員の月給を平均1120円引き上げて36万9329円(行政職、平均年齢41・4歳)とするよう提案。ボーナスも民間平均の4・41ヵ月分との差を縮めるため、0・10ヵ月分増の4・40ヵ月分とするよう求めた。また、新型コロナ禍で民間に広まったテレワーク時の手当ての検討や、長時間労働の改善に向け、業務量に応じた職員を確保するよう提起した。

     この日、坂田均委員長が西脇知事に勧告書を手渡した。西脇知事は「社会情勢や府の行政環境を踏まえ適切に対処したい。コロナ禍で働き方も変わった部分があり、世の中の流れに沿った形にしていく必要がある」と述べた。



    10月19日 市教委 給食持ち帰り指示 校長処分

     京都市立小の校長が児童の欠席などで余った給食の牛乳とパンを教員に持ち帰るよう指示し、市教育委員会から昨年11月に教育長厳重文書訓戒の処分を受けた。残飯の一律的な廃棄には「もったいない」との見方がある一方、処分の背景には、徹底した衛生管理の必要性など給食特有の事情も複雑に絡み合っている。

     市教委の調査で確認できた範囲では、校長は昨年4〜6月に教員に対し、児童の欠席や予備分で余った牛乳とパンを持って帰るよう指示。校長を除く教員9人が持ち帰った。総量は不明だが、最大で15回程度持ち帰った教員がいたという。京都市では牛乳はほぼ毎日、パンは週に1回給食で提供される。

     文部科学省の学校給食衛生管理基準によると「残品は全てその日のうちに処分し、翌日に繰り越して使用ないこと」と記されている。京都市のマニュアルでも、余った牛乳やパンは未開封でも全て処分することになっており、牛乳は流して捨て、パンを含む残飯は廃棄後、リサイクル施設で飼料化される。これらの決まりに反したとして校長は処分された。

     持ち帰りを禁止し、食べずに廃棄する理由として、市教委は2点を挙げる。

     まずは衛生面の観点からだ。食品は学校給食の時間帯に提供することを前提に用意されていることに加え、調理室から一度出ると衛生管理が難しくなるという。誰かが持ち帰って飲食し体調が悪くなっても学校は責任を負えない。

     給食物資の適正使用の問題もある。保護者の給食費から購入したものを教職員が飲食するのは不適切だとする。ただ、捨てたり飼料化したりといった余剰分の扱いは市教委が決めており、保護者には伝えていないという。

     2015年に環境省が全国の教委に実施したアンケートによると、児童生徒一人当たりの給食で出る廃棄物量の推計は年間約17・2キロで、うち食べ残しが7・1キロ、調理くずは5・6キロ、その他が4・5キロだった。

     京都市は食べ残しや手つかず食品を減らすよう飲食店や市民に呼びかけ、市立学校でもそのように教育しているが、学校給食のうち、どれくらいの量が廃棄されているか、市教委は把握できていない。給食を含めた食品ロスの削減は全国的な課題だ。


    給食を実施する際、残飯などの食品ロスの問題は現場では悩みの種。「掃除の時間になっても食べることを強要された」という経験を持つ人も多いだろう。食育の理念と現実が違っていることはまま見られる。昨年の「五輪の食品ロス問題」を思い出すが、建前だけが強調される行政の在り方は依然としてあることを認識しておかないと…。


    10月19日 福祉保育労組 「働き続けられぬ」4割超

     京都市が財政難で民間保育園の保育士給与を底上げするための補助制度を見直したことについて、全国福祉保育労働組合京都地方本部が18日、保育士らに向けて実施したアンケート結果を公表した。4割はボーナスがカットされ、2割は昇給がストップしたと答えたほか、「このままでは働き続けられない」との回答が4割超に上り、待遇悪化の現状が明らかになった。

     制度は「プール制」と呼ばれ、市保育園連盟を通じ保育士らの人件費名目で36億円(2021年度予算)を補助してきた。財政難を受け、市は別の補助制度と一本化する制度に変更し、22年度予算で13億円を削減した。市の昨年度試算では対象の265園中、215園で補助額が減額になり、最大で約4200万円減るケースもあるとされた。

     同本部は9月、市内の保育士や事務員、給食調理員らに対し、インターネットでアンケートを実施。各園にも用紙を配布して協力を呼びかけ、勤務経験1年未満〜20年以上の304人から回答を得た。

     その結果、4月からの待遇について複数回答可で聞いたところ、41・3%(124人)が一時金(ボーナス)が削減された」と選択し、昇給については「ストップ」が18%(54人)。「アップ」は7・7%(23人)にとどまった。「現状維持」は30・3%(91人)だった。

     給与について「今の金額で満足している」はわずか2・7%(8人)で、「専門性に見合った保障をしてほしい」が75・3%(226人)、「このままでは働き続けられない」が43・7%(131人)だった。

     自由記述では「ボーナスは下がり、仕事と責任だけが増え、保育以外への転職もちらつく」「(園は)ほうき一本買うのもためらうくらいお金の使い道にピリピリしている」などの意見が寄せられた。

     同本部は「切実な声が寄せられた。京都市はまず現場に足を運んで実情を見てもらいたい。労働条件が守られなければ保育も守れない」としている。


    【インサイド】見合わぬ処遇 園も苦悩

     京都市の民間保育園への補助金削減を受け、市内で働く保育士が18日、市役所で会見した。実際に待遇が悪化した保育士からは「良い保育を目指して懸命に働いているのになぜ給料が減るのか」と訴えた。

     「本当にがっくりした」。田中ともゑさん(51)は落胆ぷりを隠さなかった。勤務する北区の保育所では本年度の昇給がストップし、夏のボーナスは2・15ヵ月分から1・8ヵ月分に減ったという。「新型コロナウイルスへの対応も含め、業務量は増えている。仕事をすればするほどなぜこんな処遇なのか、悲しくなる」と語った。

     南区の園で働く西村康世さん(40)は本年度の給与は維持されたが「園から『今後どうなるか分からない』と言われている」と不安を募らせ、虫京区の園に勤める稲葉美紀さん(50)も「職場の不安も強く、辞めるかどうか休憩室でささやかれる場面もある」と打ち明けた。

     市は見直しに当たり、補助金の透明化を強調していた。これまでは事実上、保育士の人件費以外にも使うことができた制度を、給与の上乗せにしか使えないよう変更。市が「適正」と定めた人件費基準に対し、国給付で不足する分を支給する方法に変え、余った補助金は返還を求 める方針も打ち出した。市は9割の園で職員の給与水準を維持でき、’残り1割も「積立金を取り崩せば可能」と分析し、大きな影響はないとの見方を示していた。

     苦しんでいるのは保育士だけではない。園側も給与の維持に苦悩している。

     ボーナス削減や昇給停止に踏み切った北区の保育園長は「心苦しいが、そもそも人口減による定員割れで運営は厳しい。積立金も余裕がなく、このままでは成り立たない」と頭を抱える。中京区の園は内部留保などを崩して待遇を維持したが、運営法人の理事長は「制度変更はあまりにも性急。周辺の園では人件費削減の影響で、複数の若手保育士が離職している」と危機感を募らせる。

     制度の変更を巡っては今年の2月市議会でも園への影響緩和を求める付帯決議が可決されていた。市は9月に各園へ制度変更に伴う影響調査を実施し、現在、結果を分析中という。

     市幼保総合支援室は「あくまで待遇は園側が決めることで、カットされているなら市として要因を分析する必要がある。制度自体に問題があれば速やかに見直す」としている。


    京都市の財政が危機に瀕しているといわれている。コロナによってインバウンドの減少が大きく響いているとの見方もある。財政の立て直しで目立つのは利益者負担が大きくなっていることと教員給与も含めて人件費の削減だ。しかし、不適切な使い方との指摘のある事業も多い。例えば、ほとんど利用されない自転車専用レーンの道路標示はどのくらいの費用対効果があるのだろうか。


    10月18日 府総合教育会 理系女子養成で意見交換

     西脇隆俊京都府知事と府教育委員が教育課題について協議する「府総合教育会議」の本年度初回会合が17日、京都市下京区の京都産業大むすびわざ館であった。理工系分野での女性活躍をテーマに、男子に比べ数が少ない理系女子の養成などについて意見を交わした。

     協議に先立って、府教委から、本年度の府立高(全日制)で理系選択者は全体の約3割、理系選択者のうち女子生徒は3割にそれぞれとどまることや、府内の小学6年は「理科好き」と50%回答したのに対し、中学3年では28%と大きく減少した調査結果が報告された。

     協議では、西脇知事が男女を問わず、理工系を選択する生徒が少ない要因について教育委員の見解を求めた。

     委員からは「高校では文系理系を早くから分けすぎる。いったん文系を選ぶと理系の授業が少なく、後から理系に変えられない。長く行われてきた弊害だ」、「子どもを対象にしたロボット教室には男の子ばかりが参加している。保護者のアンコンシャス・バイアス(無意識の偏ったものの見方)があるのでは」などの意見が出された。



    10月17日 企業外労組7割が運営難

     非正規や外国人労働者が加入する企業外労働組合80団体を対象に共同通信が実施したアンケートで、回答した63団体の約7割が労働相談や団体交渉に当たる組合幹部の人材、資金不足から運営難に陥っていることが16日、分かった。新型コロナウイルス感染拡大などによる雇用不安で弱い立場にある労働者への支援強化が求められる中、相談先が細っている実態が浮き彫りになった。北海道などの4団体は解散や他団体への合流を検討中と明かした。

     33都道府県の80団体は、企業外組合の全国最大組織「コミュニティーユニオン全国ネットワーク」(事務局・東京)に加盟。同様の 傾向は他の全国組織や非加盟の団体にも及んでいる可能性がある。人材難の背景には、組合活動への関心低下などもあるとみられる。報酬や交通費を受け取れず、手弁当で活動している幹部がいることも分かった。

     アンケートは8〜9月に実施し、連絡が取れた71団体のうち「きょうとユニオン」など63団体が回答。45団体が「後任確保の見通しが立っていない」とし、「見通しが立っている」とした18団体の一部も若い人材の確保を課題に挙げた。

     各団体の現状を複数回答で尋ねたところ、54団体が「相談に対応できる幹部が高齢化している」と回答。幹部の年代は60代が123人、70代が104人。80代も4人いた。「運営資金が足りない」は32団体、「相談に対応できる幹部が足りない」は28団体。14団体は「新型コロナなどの影響で相談が増えている」と答えた。

     企業外組合は「合同労組」「ユニオン」とも呼ばれ、相談対応が主要な活動。執行委員などの幹部のほか「相談員」と呼ばれる組合員も対応する。9団体はホームページに掲載された電話番号につながらず、一部については関係者が「活動実態がない」と証言した。


    【インサイド】「最後の砦」悪循環

     組合費を納める経済的余裕がないため加入者が定着せず、運営資金が欠乏して人材難に―。非正規労働者らの「最後のとりで」である企業外労働組合を対象に共同通信が実施した全国アンケートは、多くの団体がこうした悪循環に陥っている現状を浮かび上がらせた。人々の働き方が多様化する中、地域別ではなく職種ごとに組合を組織すべきだとの意見や、行政による財政支援を求める声が専門家から上がった。

     「組織の解散が頭をよぎることもある」。静岡市葵区の「静岡ふれあいユニオン」で労働者の相談に応じる小沢満夫執行委員長(73)が正直な胸の内を明かす。

     地元静岡で食品加工会社に就職し、33歳でユニオンに加入。昨年7月に退職した後も週に4日ほど電話の前に座り、雇い止めやパワハラなどの相談に応じている。別の相談機関がさじを投げたトラブルにも向き合う。

     会社まで出向いて団体交渉に臨むこともあるが、報酬は一度も受け取らず、それどころか身銭を切ることも少なくない。若い相談員もいるが経験が乏しいため、小沢さんが体調を崩せば組合は存続の危機に陥る。

     苦い経験もした。新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年4月、工場の操業停止に伴い会社から一方的に出勤停止を命じられたブラジル人約30人が大挙して相談に訪れた。団体交渉で休業手当の支払いを会社に約束させたが、その後組合に残った加入者はわずか3人。多くが音信不通となり、組合費も徴収できなかった。

     企業外組合は「誰でも1人から加入できる」のが売りだが、一方で労働者が定着しにくいという欠点もある。

     千葉県船橋市の「なのはなユニオン」では新型コロナの影響で相談が増えたが、加入者の多くが定着しなかったため財政状況はかえって悪化した。組合費を上げればさらに組合離れが進み、相談に対応する組合幹部や相談員の交通費さえ支給できなくなる恐れがあるという。

     企業外組合が生き残るには何が必要か。労働法が専門の毛塚勝利元中央大教授は「行政は地域のユニオン(企業外組合)を不当な雇い止めなどの監視役として位置付け、法整備した上で、財政面でサポートしてもよいのではないか」と提言する。


    企業組合が主流の日本の労働組合は、こうした課題に対応できないことが多い。職業別組合的な活動を指向する必要があるだろう。また、労働基準局のスタッフを増員するなど政府の助成・支援策が必要。ただ、かつての活動していた人が高齢となりいわゆる中間団体(地域の町内会を含めて)の縮小傾向がある中では、従来の運動形式の変更が議論されなければならないだろう。


    10月17日 厚労省 障害者“地域で生活”進まず

     集団で暮らし制約が多い入所施設に入っている全国の障害者のうち、自宅や、アパートのようなグループホームなど地域社会での生活に移った人は2020年度末までの4年間で4・9%の約6300人にとどまることが16日、厚生労働省のまとめで分かった。政府目標の9%を大幅に下回った。地域移行が比較的容易な軽度者は既に施設を出て、重度や高齢の人が残っているのが背景。知的障害者を中心に依然12万人超が入所している。

     国連の障害者権利委員会は9月、政府に改善を勧告。重度者を支援できる専門的な人材の育成や社会の理解が求められる。

     国は障害があっても、地域で暮らして社会参加ができるように、入所者の地域移行を進めている。06年度からは法律に基づき国が期間を設けて目標値を定め、各自治体が具体的な障害者福祉の計画を立てている。

     達成状況を見ると、施設入所者のうち、地域での生活に移った人は当初、軽度者が多かったため、比較的高い割合で推移した。11年度末までの6年半で21・8%(目標は10%)。14年度末までの9年半の累計では26・9%になった(目標は30%)。その後は、専門的なサポートが必要となる重度者らが残る形となり移行は進まず、20年度末までの4年間では4・9%に落ち込んだ。

     一方、施設への入所者数はわずかながらも減少傾向にある。20年度末までの4年間では2・3%(約2900人)減り、目標の2%を達成した。

     別の統計で入所者の内訳を見ると、1から6まである「障害支援区分」のうち、最重度の区分6が増加。障害の種別では、知的障害が約7割を占めている。

     厚労省は地域移行後の主な受け皿として、アパートや民家などで少人数が共同生活を送るグループホームの整備を進めている。事業者に支払う報酬改定で手厚い人員配置や医療的ケアヘの対応などを後押ししてきたが、重度の人は受け入れを断られるケースが依然、多い。


    【インサイド】重度・高齢多く 退所者頭打ち

     入所施設にいる障害者が地域社会で普通に暮らせるようにする国の政策が壁にぷつかっている。現在、施設に残るのは重度や高齢の人が多 く、地域生活に移る人数は頭打ち。数十年の長期にわたり入所する人が少なくない中、数年ほどで地域移行を目指す「通過型」の施設も出て。きている。

     川崎市のJR武蔵小杉駅近くの丘陵地に立つ入所施設「桜の風」。20〜60代の知的障害者約40人が暮らす。「地域生活支援型」をうたい、入所時から施設を出た後の生活を想定した支援をするのが特徴だ。2013年の開所から今年3月末までに、計40人が小規模なグループホームら に移った。6割は最重度の人たちだ。

     移行に向けた支援は地道な工夫の積み重ねだ。昨年から入所している女性(32)は、予定が変わると落ち着かなくなることから、スケジユールを示した絵カードを用意。順にボードに掲示し、終了後に外していくことで次の予定を視覚的に分かりやすくする。

     国は03年度以降、障害者の地域移行を進めてきたが、近年は思うような成果が上がっていない。09〜12年度は年間5千人ほどが移っていたが、13年度以降は千〜2千人台にとどまる。

     特に知的障害者では、施設に入所している人が12・1%を占め、身体障害者の1・7%を大幅に上回る。通過型の入所施設はごく一部にとどまり、厚生労働省は「重度者を受け入れるグループホームや、地域生活を支える仕組みも十分整っていない」と課題を分析する。


    2016年に相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人が殺害された事件はなぜ起こったのか。植松死刑囚は「障害者は不幸しか作らない」などと考え「意思疎通できない障害者は殺そうと思った」と語ったという。簡単なことではないが障害者とともに生きるインクルーシブな社会を見ていればそうはならなかったのではと思う。国連の障害者権利委員会の勧告を積極的に政府が受け入れるべきだと思う。


    10月15日 摂食障害の小中高生急増

     食事に関する行動に障害が出る摂食障害の一つ、神経性やせ症の小、中、高校生の新規患者が2020、21年に急増し、新型コロナウイルス禍前の19年と比べ21年は1・58〜2・10倍となったことが日本摂食障害学会の調査で14日、分かった。28医療機関のデータを分析、20代も同様だった。

     調査チームは「若年者ほどコロナ禍の影響で発症したとみられる割合が高い」と指摘。背景には生活が大きく変わったことによるストレスなどがあるとされ、教育現場などでの一層の支援が求められそうだ。

     神経性やせ症は体重増加への恐怖から食事量を減らし、極端にやせて低血圧や無月経などの症状が出る。うつを伴うこともあり、放置すれば衰弱死や自殺に至る恐れもある。過食なども含む摂食障害の国内の患者は24万人以上と推計される。

     調査は5〜7月、学会の会員医師が在籍する施設を対象に実施、28施設から有効回答を得た。

     それによると、19、20、21年の初診患者数の合計は小学生21人、26人、44人(21年は19年の2・10倍)▽中学生76人、135人、147人(同1・93倍)▽高校生85人、103人、134人(同1・58倍)だった。

     20代は81人、92人、132人(同1・63倍)。30代、40代は顕著な増加がみられなかった。

     神経性やせ症の原因は複合的で、ダイエットも発症の契機の一つとされる。「自粛生活で太った気がして発症前にダイエットをした」など、コロナ禍の影響があったとみられるケースの割合をみると、20年、21年の順で小学生42・3%、25・0%▽中学生37・8%、32・7%▽高校生32・0%、32・1%。20代は15・2%と24・2%で、学齢期の子どもの方が割合の高い傾向がみられた。

     調査を担当した独協医科大埼玉医療センターの井上建医師(小児科)は「コロナ禍べの不安に加え、人との交流が減りストレス発散の機会も限られてしまったことが、子どもたちの生活により大きな影響を与えた。やせていることを礼賛する文化的な背景も関係しているのだろう」と話した。

     調査結果は、オンライン開催の同学会学術集会で15日に発表する。


    【精神科医西園マーハ文さん】周りの大人が見守って

     新型コロナウイルス禍に伴う休校や部活自粛は子どもたちに大きなインパクトを与えた。友達としゃべったり、遊んだりといった自然な関わりが失われてしまった。

     部活の制限などによる「コロナ太り」を気にして体重が増えるのを嫌だと感じたり、クラスの中で自分のポジションを見失った不安から食事が取れなくなったり。親も自粛生活でいらいらすることが多く、子どもとぷつかったりする。子どもたちが抱えるストレスはさまざまで、それらが摂食障害の増加につながったと考えられる。

     学校が再開してからは、養護教諭が子どもの異変に気付くことも多い。「何か困っていることはないの?」とじっくり聞いてあげれば「疲れやすく、集中力がない」「体重のことが頭から離れない」と悩みが出てくるだろう。担任や部活の顧問、保護者らと情報を共有することが求められる。

     家庭でも「子どもがやせてきている」といった心配があれぱ、早めにかかりつけ医に相談してほしい。子どもの周りにいる大人がみんなで見守り、必要に応じて受診につなげることが大事だ。


    最近はあまり耳にしなくなった「新しい生活様式」だが、コロナの影響は広く大きいと感じる。学校教育がコロナ以前に戻りつつあるのだろうが、実はコロナが突き付けた学校教育への問いはほとんどが未整理のままということだろう。


    10月14日 府教委 不登校専門ダイアル設置

     京都府教育委員会は、不登校に特化した電話相談窓口「きょうと不登校相談ダイヤル」を府総合教育センター(京都市伏見区)に設けた。不登校は年々増加する一方、既存の窓口はさまざまな悩み相談に対応しており、不登校に関する相談件数は少なかった。全国的にも珍しい専門ダイヤルの設置により、より多くの悩みを吸い上げ、適切な支援につなげることを目指す。

     新設の窓口では、当事者の小中高生やその保護者を対象に、臨床心理士の資格を持つカウンセラー1人が相談に乗る。電話相談から、同教育センターへの来所相談や府内各地で行う巡回相談に導く狙い。

     これまで不登校の相談は、元教員らが対応する電話窓口「ふれあい・すこやかテレフォン」で対応してきた。ただ、相談の対象はいじめや進路、性の悩みなども含めて多岐にわたっており、今年4〜7月の全体の相談件数1007件に対して、不登校に関する相談は約6%の59件にとどまっている。

     府教委学校教育課は「特に親世代のニーズは高いはず。悩みを抱えず、気軽に相談してほしい」としている。相談受け付けは、本年度は隔週金曜日とするが、利用状況を踏まえて、来年度以降は拡充することも検討する。無料。


    声援行き届かず孤立も

     府教委が専門の相談ダイヤルを開設した背景には、不登校の児童・生徒が増えているにもかかわらず、当事者や保護者の救いを求める声を十分に拾い上げ、支援につなげられていないというもどかしさがある。

     2020年度の府内の国 公市立に通う小中生の不登校は3810人と9年連続で増加している一方、文部科学省が同年度に小学6年と中学2年を対象に実施した実態把握調査では、小学生の35・9%、中学生の41・7%が「(学校に行きづらい事を)誰にも相談しなかった」と回答していた。支援が行き届かず、孤立した状況がうかがえる。

     府教委の澤浦侑喜学校教育課長は「特に保護者は『誰に相談したらいいのか』と迷うことが多く、専門家とつながるような仕組みがほしいとの要望が高かった」と話す。

     先行して開設している宮城県教委の不登校専用の電話ダイヤルには、相談件数が年間600件以上あるという。同県総合教育センターの担当者は「名称に『不登校』とうたっているので、相談を求めている人に認識してもらいやすい。保護者からの電話がほとんどで、センターへの来所につながるケースもある」とする一方、「相談者の多くは匿名でその場限りの対応になりやすく、アドバイスした内容がどう生かされたか後追 いできない歯がゆさもある」と課題を語る。


    きょうと不登校相談ダイアル 075−585−7588。


    10月12日 アンケート調査 「大人の行動不十分」

     気候変動と経済的不平等に対する日本政府や国会議員の行動が「不十分」と認識している子どもの割合が66%に上ることが、セーブ・ザーチルドレン・ジヤパン(東京)が日本に住む15〜17歳に実施したアンケートで分かった。自由記述では「子どもが政治に関わる機会を設けて」などの意見が寄せられた。

     調査は7月25〜27日、インターネットで実施し全国の1085人から有効回答を得た。

     組織や大人をカテゴリーに分け、それぞれの気候変動や経済的不平等への取り組みについて尋ねたところ、「行動は不十分でもっと行動をとるべき」との指摘が最も多かったのは、「日本政府・国会議員」で66%。「市長など自治体や各地域のリーダー」52%、「親や先生、一般の大人たち」49%、「民間企業」48%となった。

     大人たちの取るべき行動に関する意見では「使い捨ての時代はもうやめた方が良い」「気候危機と経済的不平等をもっと知る必要がある」などの記述も見られた。

     また、子どもたちの75%が「気候変動と経済的不平等の両方、もしくはどちらかが自分の周りや日本国内に影響を与えている」と回答。悪影響を及ぼしていると感じることは複数回答で、雨の量や気温、台風の数などの「気象や天候」、海や川の水位などの「環境」、「子どもたちの精抑的な健康」が多かった。

     課題に対し行動しているかを聞くと、「いいえ、でも始めてみたい」と答えた子どもは全体の38%。「はい」は15%で、具体的内容では「持続可能な開発目標(SDGS)について学ぶ、実践する」「ごみを減らす、分別する」「節電、節水」「リサイクル」などが挙げられた。

     同団体の堀江由美子さんは「気候変動も経済的不平等も、子どもたちに大きな脅威となっている。こうした声に耳を傾け、大人は行動を起こす必要がある」と指摘した。


    子どもを取り巻く環境が日ごとに厳しくなっていくことを子ども自身が一番敏感に感じているということだろう。「使い捨ての時代はもうやめた方が良い」との意見は今の経済政策が子どもの未来に希望を与えていないということの表現だと思える。子どもの最も身近な大人はやはり親や教師だろう。その人たちが何を発信するかがみられているということ。


    10月12日 大津・中2いじめ自殺 11年父「防止対策推進法」改正訴え

     2011年に大津市立中2年の男子生徒=当時(13)=が同級生からの、いじめを苦に自殺してから11年となる11日、父親(57)が同市内で会見した。この事件を機に生まれた「いじめ防止対策推進法」が来年6月で制定10年を迎えることに触れ、実効性に乏しいとして法改正を訴えた。

     「息子が命がけで作った法律が、子どもを守れていない。変わらぬ現状を目の当たりにして悔しくて残念でならない。それが命日に私と息子が思うこと」

     父親は冒頭、ため息をついた。北海道旭川市や大阪府泉南市で発覚した事案を例に挙げ、今もなお、いじめを苦に自殺する子どもが相次いでおり、学校や教育委員会の対応に問題があると指摘した。野洲市立小学校で「担任によるいじめ」が認定された問題は、市長や滋賀県教委に報告していなかった市教委の対応を疑問視した。

     その上で、いじめ防止対策推進法について「(教委や学校側が)容易に隠蔽でき、よほどのことがないと個人の責任は問われない。子どもの立場から作られた法律ではなく、教育関係者を守るための法律だった」と強調。第三者委員会が立ち上がらない、資料が提出されないといった課題の改善に向けて法律を変えるよう改めて訴えた。

     子どもと触れ合う時間をつくれないことでいじめの訴えを見逃してしまう恐れがあるとの観点から、教師の労働環境改善の必要性に言及し、「11年前から言っていたのに、いまだに解消されない」と嘆いた。

     今いじめをしている子どもに対する思いも吐露し、「人を傷つけるために生まれたわけじゃない。いじめは人を死に追いやる行為。今すぐやめて」と呼びかけた。

     父親の代理人を務め、旭川市のいじめ事案にも関わる滋賀弁護士会の石田達也弁護士は、いじめの認知に対する旭川市の姿勢を問題視し、自治体間格差を埋めるためにも法改正が必要だと提起した。


    生徒800人「命思う集い」

     男子生徒が通っていた大津市の中学校では11日朝、「命を思う集い」が開かれた。全校生徒約800人が各教室で、各学年の代表が人権学習などを通して考えた命の尊さについて発表する映像を視聴し、校長が「大きくなったら、自分のためだけでなく自分以外の誰かのためにも命を使ってほしい」と校内放送で呼びかけた。


    「いじめ防止対策推進法」ができたからいじめはなくなる、とは誰も思っていない。しかし、いじめを法的に規定した意義は今でも大きい。ただ、いじめが起きる構造をどう理解しているのかは法律では規定できない。学校教育という構造がいじめを生むことに目を向けた議論が必要だが、被害者の父親が言うように教師の労働環境の改善はほとんど進んでいない。


    10月8日 文科省 学校の相談体制 充実要請

     文部科学省は7日までに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関連した悩みを抱える児童生徒を支援するため、小中高校がスタールカウンセラーらと協力した相談体制を充実させるよう求める通知を都道府県教育委員会などに出した。6日付。

     文科省によると、献金など親の信仰について児童生徒が悩んだり、信者であるためいじめや差別を受けたりするケースを想定。通知では、宗教を巡る問題であることを理由に教員が消極的な対応を取るのではなく、悩みにいち早く気付きカウンセラーらの支援につなげるべきだとしている。


    一般的に各家庭のプライバシーにかかわる問題を教員が見抜くのはかなり難しい。現有勢力でどこまで「相談体制を充実」できるか。文科省は人的な裏付けしながら通知を出すべきだろう。


    10月8日 生活保護、大学生にも認めて

     大学進学は「ぜいたく」ですか―。生活保護世帯で大学進学する場合、子は生活保護の対象から外れ、自力で資金を得なければならない。こうした運用の変更を生活保護世帯で育った国立大生の「儚」さん(21)=仮名=が訴えている。厚生労働省で5年に1度の生活保護費の見直しに向け た議論が進む中、インターネットなどを通じて署名を集め、同省に提出する予定だ。

     儚さんは生活保護を受けるシングルマザーの元で育った。両親は4歳の時に離婚。母を殴る父の姿が記憶に残っている。母は心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患にかかり、働けない状態が続いた。

     幼少期から家族の世話を担う「ヤングケアラー」だった。自分で買ったスーパーの半額弁当が「母の昧」。母に名前を呼ばれた記憶はなく、気に入らないことがあれば殴られ、「産まなければ良かった」とののしられた。保護された児童養護施設でも職員から暴力を受けたといい、誰かを頼ることを諦めた。

     「この生活から抜け出すには進学しかない」。授業料が免除される特待生で私立高校に入学。参考書は交通費を節約して捻出し、古本屋で買った。努力が実り2020年に国立大に合格した。

     大学生や専門学校生は働ける人とみなされ、生活保護世帯の子が進学するには、自身を支給対象から外す「世帯分離」をしなければならない。引き続き家族と一緒に住みながら通うことはできるが、自身の生活費や学費は奨学金を受けるかアルバイトなどで稼がなければならない。

     儚さんは夏休みには早朝から介護施設で働き、夕方から塾の講師、その後深夜までキャバクラで働いた。母は借りた奨学金を使い込んだ上、儚さんが世帯から抜けて減った生活保護費分を要求。月数万円を渡した。儚さんは過労で摂食障害とうつ病を発症し、昨年春、休学を余儀なくされた。

     「この世のバグ(不具合)なんよな。『生活保護世帯の子供は大学進学せずに働く』が前提なのは恐ろしい」。21年5月、ツイッターに投稿すると大きな反響があった。「生活保護世帯の子は貧困から抜け出すための努力も認められないのか。次の世代には同じ苦労をしてほしくない」。署名活動を進めるのは、自分たちのような存在を知ってもらいたいからだ。

     国の調査によると、大学や専門学校などへの進学率は全世帯平均で8割を超える一方、生活保護世帯では依然4割程度にとどまる。儚さんと共に活動する太田伸二弁護士は「大学や専門学校への進学はもはや『ぜいたく』ではない。普通にさえ手が届かない世の中でいいのか。選択肢を多く提供できる社会でありたい」と訴えている。


    5日の所信表明演説で岸田首相はリスキリング(学び直し)に5年間で1兆円の予算を付けることを決定した。「リスキリング(学び直し)」は重要なことで、必要が生じた時にいつでも学べる制度であるべきだ。しかし、子どもの貧困という状況で「学び」が保障されずに放置されているの現状。こうしたバクグラウンドに目を向けずイノベーションのための「リスキリング(学び直し)」に1兆円は無駄使いではないか。


    10月7日 公立中学でも広がる「探求学習」

     子どもたちが物事の背景を探り、主体的に学ぶ「探究」が、教育界でキーワードになっている。高校の授業は「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に名前が変わった。中学でも探究は重視され、さいたま市の市立中学では、生徒が地元企業と共にまちづくりを考える学習プログラム「さいたまエンジン」が始まった。

     7月、さいたま市浦和区の浦和中で、レンズメーカー「タムロン」(同市見沼区)などによる最初の学校訪問があった。生徒は社員とお互いに自己紹介。会社や仕事の内容について聞き、さいたま市の魅力や課題を話し合った。「お客さんの意見をどう商品に生かしている?」「会社が70年間続いている理由は?」。生徒たちは率直な疑問をぶつけていた。

     プログラムは中学生が「地域イノベーターとなり、地域の良いところや可能性、そして地元企業の特色や強みといったリソース(資源)を発見して掛け合わせ、まちを良くする企画を考えるというもの。初回の2022年度は市立中3校の1〜2年生と、タムロンなど市内の5社が参加。26年度までに市立中全59校の参加を目指す。

     市教育委員会はさいたまエンジンの目的を「どのような立場でも社会で活躍するために必要な力」の育成とうたう。担当する指導1課の高見沢悠・指導主事は導入の狙いについて「デジタル化の進展や人工知能(AI)の発達で、今ある職業がなくなるかもしれない。将来の変化に対応していく力を育むためには、新しい取り組みが必要と考えた」と説明した。

     さいたまエンジンは、探究学習の教材を扱う 「教育と探求社」(東京)が作成した「エンジン」を基にしている。同社エリア企画部の羽生真理子さんによると、エンジンは静岡県の公立中約20校で既に導入実績がある。「探究学習はもともと私立中で取り組みが早かった。今は自治体が大きく打ち出して、公立中でもやっていこうという動きが広がっている」

     羽生さんは、大学入試で記述式問題が増えたり、総合型選抜(旧AO入試)で自己PRが求められたりするなど、探究学習の成果が進学で役立つ機会は多くなっていると指摘。「子どものときから学びや気づきを言葉にする習慣があれば、すらすら書けたり、面接で言えたりする」。探究的な学びの若年化や拡大はさらに進むはずと語った。

     受け身ではなく、自ら学ぶ姿勢は、教育の場でますます重視されていきそうだ。さいたま市の細田真由美教育長は、さいたまエンジン開始に当たっての記者会見で「子どもたちが世の中の出来事を自分事と捉え、主体的に関わる態度を育てたい」と力を込めた。


    デジタル教育推進派の人たちは「人工知能(AI)の発達で、今ある職業がなくなるかもしれない」と声をそろえて危機を煽る。果たしてそうなのかと疑う必要はないのだろうか。また、そうした事態に遭遇する子どもたちはどれくらいになるのだろうか。冷静な判断が必要。教育学者の佐藤学は「教育のビッグビジネスは「博愛主義」を標語としながら事業拡大をしていく」(岩波ブックレット)と公教育が民間企業の草刈り場になっていることを強く批判している。


    10月6日 政府 教育現場の分離中止せず

     政府は5日、2023年度から5年間の障害者政策の方針となる「障害者基本計画」の素案を、内閣府の有識者委員会に示した。障害のある子どもがほかの子どもと分かれて、特別支援学校などで教育を受ける仕組みの中止には踏み込まなかった。国連の障害者権利委員会は9月、日本に対し中止を求めていた。

     計画は23年3月までの閣議決定を目指す。素案では、新型コロナウイルス禍を踏まえた障害者支援の必要性や、東京パラリンピツクで高まったバリアフリー機運の継承なども盛り込んだ。

     教育を巡っては、現在の計画に続き「障害の有無で分け隔てられることなく、可能な限り共に教育を受けることのできる仕組みの整備を進める」と明記。新たな対策として、全ての新規採用教員が10年目までに特別支援学校などでの指導を複数年経験するとした。

     通常の学校とは別に特別支援学校や学級を設ける方針は維持する。文部科学省は特別支援学校にはニーズがあるとの立場。一部の委員は5日の会合で素案について「(国連の求めに)十分応えられるか非常に疑問だ」と述べた。

     新型コロナの感染拡大に関しては、地域の交流・見守りの場や相談支援を受ける機会がなくなっていると指摘。障害者や家族に対する支援が必要とした。

     国連の障害者権利委員会は8月、障害者権利条約に基づき日本政府への審査を実施。9月に日本への初めての勧告を発表し、分離教育の中止を求めていた。


    「分離教育」に対する国連の勧告はこれまでもなどもあった。にもかかわらず「特別支援学校にはニーズがある」とする文科省の姿勢は理解できない。確かに、特別支援学校・学級のニーズが高く各地で新たな設置が求められているのだが、なぜそうなのかを議論する必要がある。また、特別支援教育を教員に経験させることを求めているが、「分離教育」を前提としたトレーニングで蓄積されるのは「特別支援教育の必要性」だけではないのか。「分離教育」への批判的な眼を養ってこそ特別支援教育の意義があるし、「バリアフリー機運の継承」につながる。


    10月3日 資本主義実現会議 経済対策は学び直し重視

     岸田文雄首相は4日、官邸で開いた新しい資本主義実現会議で、2023年春闘について「物価上昇をカバーする賃上げを目標にして、個々の企業の実情に応じて労使で議論してほしい」と述べ、企業に積極的な賃上げを求めた。会議では今月末に策定する総合経済対策に盛り込む重点事項を取りまとめた。成長分野への転職を可能にする学び直しの支援や副業がしやすい環境整備など、人への投資を拡大する。

     岸田政権は看板政策「新しい資本主義」の実行計画を6月に閣議決定した。総合経済対策で具体化させる。スタートアップ(新興企業)育成も加速し、日本経済の成長につなげたい考えだ。

     首相は22年春闘では3%を超える賃上げを求めた。4日の会議では具体的な水準は示さなかったが、円安を背景に業績が好調に推移している企業も多く、賃上げを経済の好循環につなげたい考えだ。

     総合経済対策では、日本に根付く年功制の給与体系から仕事内容や責任に応じて賃金を支払う「職務給」への移行を促すため、官民で来年6月までに新指針を設ける。

     下請け企業との間で、原材料やエネルギーのコスト上昇分を取引価格に反映しない大企業などに関しては、企業名を公表し取引の適正化を進める。非正規雇用の待遇改善を目指す「同一労働同一賃金」に向けては、労働基準監督署が順守の徹底を図る。

     副業を認めたり、副業の人材を受け入れたりする企業も支援する。デジタル人材などの育成に向けた学び直しには5年間で1兆円を投じる。

     新興企業向けには、今後5年間で千人規模の若手起業家を米国のシリコンバレーなどに派遣する計画。国立大で1大学につき1社の新規上場を目指す。新型コロナウイルス禍で経営が苦しい企業の事業再構築を促進するため、来年の通常国会に私的整理に関する法案提出を検討する。

     個人の資産所得倍増へ、少額投資非課税制度(NISA)の恒久化と抜本的拡充に向け、年末に結論を出す。


    岸田首相が打ち出した「新しい資本主義」の具体化の中身なのだが、これまで議論されてきたことを総花的に盛り込んだ感がある。例えば、「同一労働同一賃金」だがいわゆるジョブ型に適したものだが、メンバーシップ型に近い環境では賃金引き下げの要因にもなる。ジョブ型からメンバーシップ型への移行を本格的に指向するのかどうかも併せて議論しなくてはならない。同時に、企業労働組合の集合体としての「連合」もこれにどう対応するのかを示す必要が生まれてくる。


    10月3日 【PTAのゆくえ】PTA会費 在り方模索

     京都府内の公立高のPTAで、会費や会計の在り方を見直す動きが出ている。7月には京都市立京都堀川音楽高(中京区)で前事務長がPT A会費約2600万円を私的流用していた問題が発覚し「PTAと金」を巡る課題が浮き彫りになった。PTAがどのように会費を管理し、何に支出するのが適切か。学校や保護者は時代に合った形を模索している。

     京都市北区の紫野高は、2018年度にPTAからエアコン12台の寄付を受けた。経費は約950万円。「教育活動に特別の事情が生じた時、生徒に還元される」としてPTAが会員から年2千円集めている特別積立金から支払われた。

     PTAでは他に一般会費を年2500円、入会費を4千円徴収している。砂田浩彰校長は「学校としては寄付はありがたい。ただ繰越金が増えると管理も大変なので入会費や特別積立金の在ぴ方を検討しては、と今の役員に提案した」と明かす。

     京都堀川音楽高の私的流用問題では、PTAが1台2千万円もする高級ピアノを学校に寄付するため、会員1人につき年1万円を集め、特別会計に積み立てていた。事務長が流用した金の大半は、この特別会計から引き出されていた。

     「いつか学校に寄付をするため」と特別会計を設け、1年任期の役員が前例踏襲で引き継ぎ、一部の学校職員が通帳を管理する。残高が巨額 となり、管理や購入品の選定が不透明になる―。そんなPTAの構造的な課題が浮かび上がる。

     日吉ヶ丘高(東山区)PTAは昨年度、特別会計の廃止を決めた。以前は周年行事などに対応するため年1500円を集めていたが、会員の負担軽減を目的に廃止した。千賀修会長は「特別会計は何にでも使える。不透明な支出につながらないよう必要であれば一般会計で対応することにした」と語る。

     会計管理の在り方も課題だ。日吉ヶ丘高PTAでは京都堀川音楽高の問題を受け、学校長、副校長、事務長の3人で支出を確認するよう厳格 化した。別の市立高PTAは昨年度から通帳を学校職員でなく保護者で管理するようにしたが「自宅に保管するのは怖い」との声も出ているという。

     PTAが学校のためにどこまで金を出すかの線引きも難しい。「子どものためなら」と支出や寄付を容認する保護者は多い。一方で、本来公費で整備すべきものや必要以上のものにまでPTAが支出するため会員の負担の重さや不正につながるとの意見もある。ある市立高校長は「PTA会費は市の予算ですぐに対応できない時に使え、頼ってしまっている」と明かす。

     紫野高PTAは本年度から学校のトイレ清掃や製氷機の点検に支出するのをやめた。見直しを進めた20、21年度の会長の飯田広さんは「学校にお任せで実態がよく分かっていなかったが、一部は公費で賄うべきだと考えた」と話す。

     同志社大の真山達志教授(行政学)は「寄付は自由意志で、趣旨に賛同する人でするものだが、学校から当てにされ、寄付を強制される構図が生まれている。備品の整備は本来、学校の設置主体の責任で行うべきだ。PTAをいったんリセットしたり、寄付のガイドラインを設けたりするなど抜本的な見直しが必要」と指摘した。


    学校とPTAの関係は複雑。これまでの取材【PTAのゆくえ】は参照すべき点を多く指摘している。今回の取材対象が京都市立高ということは府立校には問題がなかったのか、あるいは今回は見送られたのかどうかはわからない。いずれにしても京都市の「番組小学校」の伝統がこうした寄付をある程度習慣化してしまった傾向はあるだろう。


    10月1日 文科相 「不適切言動、許されぬ」

     野洲市の市立小学校で男性教諭が教え子に不適切な言動を繰り返していたいじめ問題を受け、永岡桂子文部科学相は30日の記者会見で「教職員による不適切な指導が、不登校や自殺のきっかけになる場合もある。体罰や不適切な言動は、いかなる児童生徒に対しても許されない」と述べた。

     教諭は被害児童の保護者に対し、医学的根拠がないまま「ADHD(注意欠陥多動性障害)なので早急に発達検査を受けるべき」などとも発言していた。

     永岡氏は、生徒指導に関する文科省の通知を引き合いに、児童生徒の特性や発達段階に応じた指導の必要性を改めて強調。管理職を含む教員が障害への理解を深めるための支援事業に引き続き取り組む考えを示し、「児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われるよう努めたい」と述べた。。


    文科相のことばはその通りだが、そのことばを実行できるような環境整備をおこなっているかどうかは疑問。9月10日にユネスコによって「障害児分離教育中止を」との日本にたいするの勧告がなされたがそれをどう受け止めたのかは明らかでない。もちろん、この教員の行動を是認するものではないことは断っておく必要がある。