2025年度概算要求が出そろい、年末にかけ予算編成が本格化する。深刻な不足に陥っている教員の待遇改善や防衛費増額が焦点だ。さらに9月末の自民党総裁選の直後にも予想される衆院解散・総選挙では、新首相が有権者を引きつけるためにばらまき色の強い補正予算を打ち出す可能性もある。金利が復活し政府の利払い負担が増す中、予算の選別は厳しくなっており、要求官庁と財務省の攻防は激しさを増しそうだ。 教職の魅力を向上し、優れた人材を確保する―。文部科学省は教員の処遇改善に力点を置いた。残業代の代わりに給与に上乗せする「教職調整額」の増額が目玉だ。 26年1月から、月給の4%となっている現行水準を13%へと拡大する。 文科省幹部は「教員の重要性に鑑みれば。、調整額引き上げは必要だ」と訴える。一方、財務省幹部は「部活のような教科指導以外の業務を徹底して見直し、残業を減らすのが先だ」と突っぱねる。 文科省の要求通りに調整額を拡大すると年換算で1080億円程度の国庫負担増になり、財源も問題になる。財務省側は「文科省が別事業の予算を減らすなどして捻 出すべきだ」と主張する。文科省側は「教員は社会に欠かせない存在で、政府全体で財源を考えるべきだ」と反発。早くも火花を散らせている。 防衛省は24年度当初予篁比7・4%増の8兆5389億円を求めた。防衛力強化に向け、23〜27年度の5年間の防衛費を計約43兆円とする政府方針に沿った要求で、 初の8兆円台だ。 だがここでも課題が山積する。23年度予算に計上した防衛費6兆8219億円は1300億円程度が使い残された。財務省中堅幹部は「不用額は極力小さくする努力 が必要」と、25年度の要求内容に目を光らせる。防衛費増額の財源となる増税も開始時期が定まらず、25年度税制改正大綱を取りまとめる年末に向けて重い宿題となる。 金額は盛り込まずに事業内容だけを示す事項要求も相次いだ。国土交通省は、北陸新幹線の延伸区間である敦賀(福井県)−新大阪の新規着工費用の要求金額を示さ なかった。ルートの詳細を与党が年末までに決めるのにあわせて詰める。複数年度にまたがる建設費の総額は5兆円超に上る可能性がある。 事項要求は予算編成終盤まで金額が固まらず、予算規模が膨張しかねないとの懸念もある。鈴木俊一財務相は、必要な政策には十分な予算を確保するとしつつ「財政 規律が緩むということにならないように、予算編成過程でしっかり対応したい」とくぎを刺した。 財政運営上の新たな重荷となるのが日銀の利上げなどに伴う長期金利の上昇だ。国債の元利払い費の大幅な拡大につながるからだ。その分、政策に回せる金額は減る。 24年度補正予算の行方も注目される。別の財務省幹部は補正予算の編成があることを前提に「来年には参院選もある。ばらまきがなくなることはないだろう」と警戒 を強める。 明治大の田中秀明教授(財政学)は「規模が大きくなりがちな補正予算も含め、複数年度の歳出総額に枠を設けた上で、重要政策に優先的に金額を配分するような仕組みが必要だ」と提案する。 ![]() |
京都府教育委員会は、2025年度教員採用試験について、今回から大学3年生と大学院生の一部を対象に1次試験の受験を認めた特別選考の合格者を発表した。小中高および特別支援学校が対象の試験を計143人が受験し、93%にあたる133人が通過した。府教委は、不合格者を含む受験者を対象に、最新の教育時事を学べる講座や学校現場を体験できる機会を提供して、教員志望者の裾野の拡大を目指す。 対象は、1次試験の小論文、教職教養、専門教科、面接の全ての分野。1種類からでも受験可能。合格した分野については、翌年に受験する際に免除される。 1分野でも合格した学生の内訳は、小学校58人中54人、中学校46人中42人、高校35人中33人、特別支援学校は4人全員。4分野全てを受験したのは、全校種で52人おり、このうち20人が合格した。 府教委教職員人事課は「合格率は想定より高く、教員への思いが強い優秀な学生が挑戦してくれた印象だ。4年時の本番も受験してもらい、京都府で教員になってほしい」と期待を込める。 京都市教委も大学3年などを対象とした試験の合格者を発表。1次筆記試験の「一般・教職教養」と「専門」が対象で両方の受験が義務付けられている。193人受験したうち、「一般教職教養」のみは49人、「一般・教職教養」と「専門」は135人が合格した。 ![]() |
パレスチナのガザ地区では、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘の長期化で衛生環境が悪化し、ポリオの感染拡大が懸念されています。ポリオと診断された幼い子どもの母親はNHKの取材に対し、戦闘と避難生活の影響でワクチン接種が受けられなかったと窮状を訴えました。 ガザ地区での停戦と人質の解放をめぐる協議は、イスラエルが停戦後もガザ地区の戦略的要衝に部隊を駐留させ続けると主張しているのに対し、ハマスが完全な撤退を求めて難航していて、29日も仲介国のカタールで実務者レベルの話し合いが続いていると伝えられています。 こうした中、イスラエル軍は連日、ガザ地区で激しい攻撃を続けていて、地元のメディアは、29日も南部のハンユニスや北部のガザ市などで避難している住民のテントなどが爆撃を受け、8人が死亡したと伝えています。 戦闘が長期化する中、ガザ地区では水道などが破壊されて清潔な水の入手が極めて難しくなるなど衛生環境が悪化し、25年ぶりにポリオの感染が確認されています。 生後11か月の息子がポリオと診断されたネビン・アブルジディヤンさんはNHKガザ事務所の取材に対し「衛生的な水や食べ物がなく、戦争と避難生活のせいでワクチン接種も受けられませんでした」と話しました。 息子は入院して解熱剤などの投与を受けましたが、いまも下半身にまひが残っているということです。 アブルジディヤンさんは「まだ幼い息子がほかの子と同じように歩けるようになることを祈っています」と話していました。 こうした中、ガザ地区で活動するWHOの担当者は29日、イスラエルとハマスの双方からガザ地区を3つに分けて順番に戦闘を一時停止することが約束されたとして、来月1日からワクチン接種を始めると発表しました。 接種は、ガザ地区の子ども64万人以上を対象として、まず、ガザ地区の中部で始まり、その後、南部、そして北部という順番で少なくとも3日間ずつ行われる予定だとしています。 WHOの担当者は「地域ごとに人道的な戦闘の一時停止が約束されたことを歓迎する」としたうえで、「子どもや家族が安全に医療施設を利用し、ワクチン接種を受けられるようすべての当事者に対して戦闘を止めるよう呼びかける」と話しています。 ただ、戦闘の一時停止の時間帯は、午前6時から午後2時または3時の間ということで、限られた時間にワクチン接種を安全に進められるかが、課題となっています。(NHK) |
「時間がかかったけど、認められて良かった」。大阪市の会社員野口麻衣子さん(42)は安心した表情を浮かべた。命に関わることが少ない遺伝性の目のがんで、日 本産科婦人科学会の新しい見解の下、昨年末に着床前診断の申請が認められた。自身は生後間もなく右目を摘出。遺伝した次男七誠さん(8)は両目がほとんど見えない。3人目の妊娠を考える中で申請したが、一度却下された。検査を受けるという当事者の選択肢が尊重される社会を願っている。 野口さんは幼い時に「網膜芽細胞腫」と診断され、右目に義眼を入れている。視野は狭いが、日常生活に支障を感じることはない。長男には遺伝しなかったが、七誠 さんは生後3週間で両目に腫瘍があると分かった。視力は今もO・1未満。「自分の病気を子どもに引き継がせてしまった」。子どもの症状の方が重いことに衝撃を受けた。 2018年に着床前診断を申請。日産婦は当時検査対象を成人前に亡くなることの多い病気に限定しており、間もなく承認しないとの結果が通知された。理由は不明。「なぜ認められなかったのか知りたい」と、患者会を通じて質問書を提出した。 こうした動きがきっかけとなり、日産婦は審査方法の見直しを表明。22年4月に検査対象を拡大する運用を始めた。 再度の申請で承認を得た野口さんだが、妊娠について悩んでいる。初申請から6年が経過する間、野口さんの肝臓にがんがあることが判明したのだ。手術をしたが再発のリスクがある。「これから産んでも、自分が生きてきちんと育てられるか分からない」 着床前診断の対象拡大については命の選別につながるとの指摘があるが、病気や障害がある人の生き方を否定しているわけではない。「自分の子どもには健康でいてほしい。自分の人生に自分で責任を持ちたいだけだ。当事者の選択肢が尊重される社会であってほしい」 今回の審査結果や議論の過程に問題がないか、制度の運用が優生思想に根ざしていないかを担保するには第三者が検証する仕組みが必要ではないか。当事者の気持ちに寄り添い、今生きている人の尊厳を守る運用になっているか常に問い直すべきだ。対象拡大によって多様な疾患が申請されることが予想される。社会に向けて公表するのであれば、議論の過程で重点的に話し合った点など可能な範囲で情報提供することが国民の信頼につながるだろう。 網膜芽細胞腫のような生命に関わることが少ない病気でも検査が認められ、良かった。日本産科婦人科学会は、優生思想につながるといった懸念の声があることから、重い遺伝病に関する着床前診断を慎重に運用してきた。2022年1月に示した新見解で検査対象の拡大と同時に、個別の審査体制も整えられた。今後も慎重な判断が期待でき、非常に良い仕組みができたと思っている。 ![]() |
太平洋戦争中に京都飛行場建設に携わった在日コリアンが集住し、今もその子孫が暮らす宇治市ウトロ地区の歴史を伝える「ウトロ平和祈念館」で、世界各国の留学生がインターンシップに取り組み、展示の英訳解説文を完成させた。ウトロを何度も訪れ住民との交流も深めた諸外国の若者に、日本社会の「差別と共生の歴史」はどのように映ったのか。(辻智也) ウトロ地区は、終戦後に行き場を失った多くの在日コリアンが定住。1989年に地権者が明け渡しを求めて提訴、2000年に住民側の敗訴が確定した。しかし、住民の支援者や韓国政府出資の財団が地区東側の土地を購入し、住民のための市営住宅ができた。 祈念館は同地区の歴史を伝えるため、住民らでっくる「ウトロ民間基金財団」が韓国政府などの支援を受け、22年4月に完成させた。地区の歩みを伝える写真や日用品など約100点のほか、地区に残っていた労働者宿舎「飯場」を移設・復元した展示などがある。 インターンシップは、ウトロ支援に関わる冨増四季弁講壬(京都弁護士会)と祈念館が、展示内容を国際社会に広く発信する目的で、留学生を対象に22年9月に募集を開始。2年目となる昨秋〜夏は、立命館大と京都大、神戸大の留学生13人が参加した。 米国やベトナムからも 留学生のルーツは米国や韓国、ベトナムなどさまざま。「論文のテーマにするため、日本社会の少数派の問題を学びたい」という学生もいれば、「日本人と交流したい」と応募してきた学生もいた。 留学生らは、展示品の解説文の英訳を進め、今夏までにすべての展示が英語で読めるようになった。館内のQRコードを読み取り、解説文にスマホをかざせば英訳が表示される仕組み。 同館副館長の金秀煥さんは「ウトロで一生懸命生きてきた人たちの姿や歴史を、普遍的な人権問題として世界に発信できるようになった」と喜ぶ。 留学生たちは、英訳に加えて、インスタグラムでの発信や、地域との交流も始めた。立命館天3年マルケス・カルロスさん(21)は、16歳でメキシコから家族で米国に移佳。米国でメキシコ移民への偏見に直面し、人権問題に興味を持った。「日本社会の少数派の生活実態を、会って知ることが大事と思った」からだ。 人権問題、移民と重なる インターンシップでは、地域との交流にも重きを置き、住民の金みどりさん(76)と仲良くなった。約50年前に大阪からウトロに移住し、貧困や差別の困難を乗りこえ明るく振る舞う金さんの姿に「メキシコのおばあちゃんみたいで、マイノリティーの希望」だと感じた。金さんも「外国の人がめったに来ないウトロに来てくれてほんまにうれしい。ウトロの話だけじゃなくて、明るく色んな話題で盛り上がれる」と喜ぶ。また、カルロスさんは、ウトロの歴史にも触れ「日本の人たちとの連携や、韓国政府の支援を得たことなど、社会とのコンタクトのあり方が素晴らしい。ウトロの歴史を尊敬する」と振り返った。 今秋からも、冨増弁護士と祈念館は、インターンシップに参加する留学生を募集する予定という。 ![]() |
京都府は28日、2024年度学校基本調査(速報値、5月1日現在)の結果を公表した。少子化の影響で、府内の小学生は前年度比2・1%(2442人)減の11万3904人と16年連続で減少、中学生も1・5%(923人)減の6万2681人と11年連続減で、1948年度の調査開始以降の最少を更新した。 小中学生以外の府内の在学者数は、高校がO・9%減の6万4674人で、8年連続の減少となった。一方、不登校などを理由に全日制高へ通いづらい生徒の受け皿となっている通信制高は前年度比15・5%増で、4年連続で増えた。 特別支援学校も2・9%増で3119人。子どもに適した教育を受けさせたいと考える保護者が増えたことや共生社会への理解が進んだことが背景にあるという。幼保連携型認定こども園は1万8542人の4・3%増で、増加に転じた。 学校数では、幼保連携型認定こども園が9園、義務教育学校(小中一貫校)が1校、通信制高が1校、特別支援学校が1校それぞれ増えた一方、幼稚園が4園減った。小学校が5校、中学と高校が1校ずつ減少した。 学級数の縮小も続く。小学校が前年度比50学級減の5180学級、中学校が18学級減の2297学級となり、クラス替えの実施が困難な学校が増える見込み。 市町村別の小学生の人数は、京都市が5万8488人の1・9%減など21市町村が減少、向日市や綾部市、大山崎町、伊根町の4市町は増加した。中学生数は、京都市が3万3200人の1・1%減で18市町が減少、京田辺市や八幡市など6市町が増加した。 ![]() |
幼稚園から高校まで一貫した国際教育を目指す京都市上京区の京都インターナショナルスクールが、同区丸大町通黒門東入ルの元待賢小に第2キャンパスを開校した。26日に記念式典を行い、地域住民と節目を祝った。 同スクールは1957年の創立で、現在は初等教育と中等教育の国際バカロレア認定校。元聚楽小で園児と小中学生が学んできたが、手狭になったことから、中等部にあたる7〜10年生を元待賢小に移し、2025年に2年制の高等部を開設する。高等教育でも国際バカロレア候補校となっており、認可されれば、幼稚園から高校までの教育過程を備えた府内唯一の認定校になるという。 開校記念式典では、マーティン・ロート理事長が「より多くの子どもに国際教育ができることにワクワクしている」とあいさつした。松井孝治市長や原吉待賢住民福祉協議会長も出席しテープカットに臨んだ。 元待賢小2階を改装した「待賢キャンパス」には理科室や音楽室もあり、米国や中国などさまざまな国籍の7〜10年生約20人が学ぶ。25年に11年生、26年には19年生を受け入れる。 ![]() |
子どもの体力向上を目指し、理学療法士(PT)を学校に派遣して適切な運動方法を指導する「認定スクールトレーナー制度」がこのほど創設され、1期生として47都道府県でそれぞれ2〜3人のPT計130人がスクールトレーナーに認定された。制度を立ち上げた団体は「多くの学校で取り大れてほしい」としている。 団体は、PTや整形外科医らでつくる公益財団法人「運動器の健康・日本協会」(東京)。子どもの体力低下が指摘される中、専門家の知見を学校現場で生かすため、制度化に向け2023年度にモデル事業を展開していた。 130人は協会の養成講習を受準するなどし、認定された。今後、各地の教育委員会などの要望に応じて小中高校や放課後児童クラブ(学童保育)へ派遣され、体育の授業に参加して準備運動を指導したり、スポーツでけがをしないような体の動かし方を教えたりするという。 同協会業務執行理事の武藤万照・東大名誉教授(身体教育学)は「身体に関する基礎知識だけでなく運動の楽しさや大切さも伝え、子どもの心身の健康増進に寄与する制度として普及させたい」と話した。 ![]() |
中教審は27日、公立学校の教員確保に向けた総合的な方策を盛山正仁文部科学相に答申した。残業代の代わりに給与に上乗せ支給する「教職調整額」を10%以上に引き上げるなどの処遇改善や、長時間労働解消を目的とした働き方改革が柱。なり手不足が深刻化する教育現場の環境整備を巡る議論は、節目を迎えた。 文科省は今回の議論を踏まえ、現在月給の4%相当の教職調整額を3倍超の13%に増額し、小学校の教科担任を拡充するなどの案をまとめた。関連費用を2025年度予算の概算要求に計上する。ただ財務省との折衝は難航が予想される。 盛山文科相は答申を受け「政策実現に向けて最大限取り組みたい」と述べた。 答申は処遇改善策で、負担の重い学級担任の手当加算や管理職手当の増額、若手教員のサポート役となる新ポストを設け、給与面で優遇することなどを求めた。 働き方改革では、終業から次の始業まで休息時間を明確にする「勤務間インターバル」を、11時間を目安に導入することを推奨。残業時間の目標値を「全教員が月45時間以内」と明記した。将来的に月20時間程度を目指す。 小学校の学級担任の負担軽減に向け、現在は5、6年で進める教科担任制を3、4年へ拡大することも求めた。増加が続く不登校に対応するため、生徒指導担当教員を全中学校に配置する必要性も指摘した。 文科省は概算要求で、学級担任手当の月3千円加算や、中学校で不登校やいじめに対応する教員を1380人配置することなどを盛り込む。 ![]() |
全国高校野球選手権で初優勝した京都国際(京都市東山区)のルーツや韓国語の校歌を巡り、民族差別的な投稿や中傷がインターネット上で相次いでいる問題で、盛山正仁文科相は27日の記者会見で「批判をされている方がいるのはちょっと残念」と述べた。 同高は韓国系民族学校が前身で、学習指導要領に沿った教育を行う学校教育法上の「一条校」となり、2004年に現校名に変更した。盛山氏は「たまたま外国人学校がベースだった学校が優勝した。われわれが何かコメントする立場ではない」とも語り、校歌の位置づけに関し「学校の設置基準において定めがあることではない」と説明した。 ![]() |
「息を消して、心を消して、体も消えちゃえば、どれだけ楽になるんだろうって」。動画の中で、アルバイト女性(19)は苦しかった学生時代を振り返る。「周りはみんな学校へ行っているのに、私、何してるんだろうって」「私はただ、只管に、机に向かって心の内を叫ぶことしか出来なかった」。黒い画面には切実な言葉が流れる。「誰を頼ればいいの?」「価値なんてない」と、ノー卜に書き殴った言葉をペンで消す―。何とか前を向こうと葛藤する自身の体験を基にした作品は「TikTOk(ディックドック)不登校生動画甲子園2024」で佳作を受賞した。 不登校や自殺が増えてしまいがちな夏休み明けを前に、不登校経験のある13〜19歳が当事者にエ‐ルを送る動画コンテスト「TikTOk不登校生動画甲子園2024」の審査結果が25日、発表された。入賞した関西の2女性が、学校に行けなかった経験を経て見つけた希望を語ってくれた。 アルバイト女性(19)は小学2年からいじめに遭い、学校に行ったり行けなかったりを繰り返した後、中学2年の途中から全く通えなくなった。勉強が苦手で授業についていけず、「一人ぽつんと座ったまま固まっていたこともあった」という。今回の応募を振り返り、「明日はいいことがあるかもしれない。人間価値のない人なんていないと、毎日を頑張っている学生さんに伝えたかった」。動画の紹介欄には「今日も、生きていてくれて、ありがとう」とのメッセージをしたためた。 小中学生の不登校は全国で約30万人に上る。昨年の中高生の自殺者数は500人(厚生労働省まとめ)と過去最多だった。夏休み明けに自殺が増加する傾向にあり、文部科学省が注意喚起している。 「夏休み明けのことを考えるとしんどくなる。気持ちはすごく分かります」と話すのは、中学2年のseiさん(13)。昨年に続く2回目の投稿で審査員特別賞を受賞した。審査員を務めた日本文学研究者のロバート・キャンベルさんは「ポジティブなメッセージと映像に力がある」と評価した。 seiさんが不登校になったのは小学5年から6年にかけての1年間。明確な理由があったわけでいが、家に引きこもる日々を送り、「孤独と不安に押しつぷされそうで、つらかった」。そんなseiさんの姿に、父親(48)は「無理やり学校に行かせようとは思わなかったが、どう支えたらいいか分からず不安だった」と話す。 父親がインターネットで支援情報を探す中で不登校生が宿泊体験する「兵庫県立但馬やまびこの郷」(朝来市)を知り、入所した。不登校経験のある学生ボランティアが親身になって相談に乗ってくれる体験を経て、将来は不登校支援に携わるという夢を見つけた。 「不登校経験は無駄じゃない。不登校になってよかった」。そう思えるようになったseiさん。「好きな事をして、たくさん遊んで、君らしく生きてほしい。これは将来必ず、自分の強みとして輝ける時が来る!」。動画に記したメッセージは、自宅を離れて中学校から寮生活を始めた自分へのエールでもある。 TikTokと同甲子園事務局が催したコンテストには、全国から220本が投稿され、32本が入賞。作者の平均年齢は15・2歳だった。作品はTikTokのサイトから視聴できる。 ![]() |
経済産業省と文部科学省は26日、博士号を取得した専門人材の就職を支援する検討会合を初めて開いた。博士人材を生かし切れていない日本企業が採用しやすい環境を整えるのが狙い。実務的な課題を整理した上で、2025年3月までに企業や大学向けの手引を策定する方針だ。 会合では新潟大の川端和重副学長が委員長を務め、企業の人事担当者や大学関係者らが委員として参加。この日は現状や各委員の取り組みについて話し合った。 経産省の調査では20年時点で博士人材を採用していない企業は76・6%に上った。このうち35・6%が博士人材を「採用したくても採用できない」と答え、理由(複数回答)については半数以上が「マッチングがうまくいかなかった」とした。 日本では新卒一括採用が主流。一方、博士人材は指導教員の紹介で就職する例か多く、企業と学生の間にミスマッチが生じやすいという。 国内の博士号取得者は人ロ100万人当たり126人。韓国の344人、英国の342人、米国の286人と比べ少なく、政府は取得者数を40年に3倍に増やす目標を掲げている。 ![]() |
文部科学省は、私立学校を運営する学校法人に対し、教員給与に関わる補助金を増額する方針を固めた。2025年度予算の概算要求に868億円を計上する。前年度比約3%増となり、現在の算定方法になった12年度以降では最大の上げ幅。23日、関係者への取材で分かった。 公立学校教員については、残業代の代わりに給与に上乗せ支給されている「教職調整額」を月給の4%相当から13%へ引き上げる方針を示している。私立学校教員には残業代が支払われているが、人材確保の観点から合わせて処遇改善を図る。対象は私立の幼稚園、小中高校、義務教育学校、中等教育学校の教員。私立の教員給与は学校法人が決定するため、最終的には各法人の判断に委ねられる。 公立の教員の処遇改善を巡っては、文科省が来年の通常国会に、教職調整額を規定する教員給与特別措置法(給特法)の改正案を提出する方針。成立後、自治体が条例を改正し、教職調整額の増額は26年からとなる。 ![]() |
京都府の西脇隆俊知事は23日の定例記者会見で、全国高校野球選手権で優勝した京都国際を巡り、インターネット上に投稿された民族差別の悪質なコメント4件を削除するよう、京都地方法務局とサイト運営者に要請したことを明らかにした。3件はすでに削除されたという。 京都国際は韓国系民族学校が前身。校歌が韓国語であることなどから、全国ペスト4に進出した3年前、差別的な投稿や中傷が相次いだ。今回も同様の事態が発生する恐れがあるとみて、府は19日からネット上の投稿を確認していた。 コメントには民族差別や侮蔑的な内容が含まれ、短文投稿サイトのX(旧ツイッター)などに投稿されたといい、府は23日までに京都地方法務局と、サイト運営者に削除要請を行った。 甲子園球場のアルプススタンドで決勝を観戦した西脇知事は「差別的な投稿や誹膀中傷が散見される。あってはならず、許されない行為だ」と述べ、差別的な投稿は厳に慎むよう呼びかけた。 ![]() |
京都府私立中学高等学校連合会は23日、府内の私立中学と高校の2025年度入試の募集定員や日程などを発表した。全日制高38校の外部募集定員は前年度比15人減の7528人、中学24校は10人減の2738人となった。 高校の募集定員では、平安女学院が30人増やした一方で、京都女子が40人、ノートルダム女学院が5人それぞれ減らした。京都女子は、風致地区の建築制限で新校舎の規模が縮小されるため。 京都女子は普通科のU類型を「藤華コース」に名称変更し、大学進学の教育を強化する。京都光華は普通科4コースを3コースに再編、京都明徳は普通科に新コースを設ける。 中学では、ノートルダム女学院が10人減らす。京都先端科学大付属は、海外留学や探究型授業を特徴とした中高大一貫の「先端グローバルコース」を設ける。 ウェブ出願は、高校では新たに同志社を加えた33校、中学は京都国際を加えた22校が実施する。 大阪府が段階的に始めた高校授業料の完全無償化制度を巡り、京都府私立中学高等学校連合会は23日、府内私立高への大阪府からの本年度入学生が減った学校があったことを明らかにした。個別の学校名には言及しなかったが「数十人減った学校もある」とした。 大阪の完全無償化制度は、公費で賄う年間授業料の上限を63万円とする「キャップ制」とし、保護者負担をゼロにする。近隣府県の私立高に通う生徒も、学校側が参加を表明すれば適用されるが、「居住地で生徒間に不公平が生じる」として、京都府内から参加した私立高は1校にとどまる。 同連合会は京都府庁で開いた記者会見で、大阪の制度の影響について、「数十人減った学校もあれば、数人減ったところもある。逆に増加したところもある」として総数ではほぼ変わらないとしつつ、京阪や阪急、JR沿線沿いの学校に影響が生じており、完全無償化となる2026年度にかけて注視していくとした。 同連合会の佐々井宏平会長は「無償化に反対してるわけではなく、キャップをかけることに反対している」と述べ、あらためて大阪府の制度に反対する姿勢を強調。「京都の私学に行きたかったのに行けなかった大阪の生徒もいると聞く。行政の方針が私学に影響を与えるのはおかしい。大阪府と京都府はしっかりと協議してほしい」と話した。 ![]() |
スポーツ庁と文化庁が2025年度予算の概算要求で、公立中学校の部活動を地域のスポーツ、文化芸術団体に委ねる「地域移行」のために69億円を計上する方向で調整していることが22日、分かった。24年度当初予算は32億円だった。23年度補正予算の15億円を含めた実質47億円から大幅増となる。 地域移行は、国が段階的な取り組みを促す3年間の「改革推進期間」の最終年度を迎える。全国でのモデル事業を拡充すると同時に、受け皿となるクラブや指導者の確保、保護者の負担など、課題の検証を進める。 スポーツ庁は五輪・パラリンピックを目指す選手の強化活動を支える競技力向上事業に105億円を盛り込んだ。24年度予算は102億円。2年後に控える愛知・名古屋アジア大会や28年ロサンゼルス大会に向け、継続的な強化を図る。 文部科学省は、需要が拡大する半導体産業の関連人材を増やすため、各地の大学に育成拠点を整備することを決めた。2025年度予算の概算要求に18億円を計上する。これとは別に、大学院の機能強化や優秀な博士人材養成へ向けた支援経費70億円も盛り込む。関係者への取材で22日、分かった。 半導体は世界的に需要が高まっており、今後10年間に国内の関連産業で、新たに4万人の人材が必要になるとの試算がある。一方で文科省によると、最先端の技術などに詳しく実践的な教育ができる教員は減っており、大学や高専の教育体制の整備が急務となっている。 人材育成拠点は、全国から公募で大学10校を選び、人件費や教材費などを支援する。10校は、地域内の他の大学や高専にカリキュラムを提供したり、教育コース設定について助言したりする。複数の大学で連携し、地元企業でのインターンシップの充実なども図る。 大学院支援は、国際的競争力の向上に向け、減少傾向にある博士号取得者を増やすのが狙い。就職に不安を感じて大学院進学をためらう学生がいるとの指摘もあり、産業界との連携強化や、より実践的な教育内容への変化を促す。 総合大10校と、特色ある教育を提供する4校を公募で選び、人件費などをサポートする。大学院側には今後10年程度で達成すべき目標や、そのための具体的な取り組みを示した「改革ビジョン」の策定を求める。 ![]() |
文部科字省は、公立学校教員給与に残業代の代わりに上乗せ支給している「教職調整額」について、現在の月給4%相当から3倍超となる13%に増額する案をまとめた。業務の負担軽減に向け小学校の教科担任を2160人拡充するなど、教員確保策の全容が判明。こうした費用を、2025年度予算の概算要求に義務教育費国庫負担金として計1兆5807億円計上する。関係者への取材で21日、分かった。財務省との折衝が難航し曲折することも予想される。 文科省は、教員給与特別措置法(給特法)の改正案を、来年の通常国会に提出。成立後、自治体が条例を改正し、教職調整額の増額は26年からとなる。引き上げられれば1972年の施行以来、約50年ぶり。 教職調整額を巡っては、繁忙化する教員の勤務実態に見合っていないとの声が強まっていた。また、管理職に残業時間を抑制する動機が働きにくく長時間労働の温床になっているとして、制度自体の撤廃を求める声もある。 教員の処遇改善策では、学級担任の手当を月額3千円加算し、管理職手当も月額5千〜1万円増やす。26年度からは、若手のサポート役として「主幹教諭」と「教諭」の間に新たなポス卜を創設し、処遇は教諭より月額約6千円高くする予定。 負担軽減策では、現在は小学5、6年で進める教科担任制を3、4年へ拡大。新任教員の授業持ちこま数減も進める。さらに中学校で不登校やいじめに対応する教員を1380人配置するなどして、働き方改革を図る。 中教審特別部会は5月、教員確保の観点から、教職調整額を「10%以上」に増額し、残業は「全教員月45時間以内」を目標とする提言をまとめていた。 公立学校教員に支給される月給4%相当の「教職調整額」について、文部科学省が約半世紀ぷりに引き上げ13%にする案をまとめた。深刻化する教員不足解消への一歩と位置付けるが、残業代が支払われず「定額働かせ放題」とも指摘される現行制度が続くことに対し、教員らからの批判は根強い。 教員給与を巡る議論は、教員不足や志望者が減少傾向にあるとの危機感が発端だ。多くの教育関係者は、多忙な職場とのイメージが定着したことが一因とみる。文科省は、働き方改革を進めた上で、処遇を改善して魅力向上を図ろうと、2022年から有識者会議などで本格的な議論を進めてきた。 中教審の特別部会が今年5月に提言したのは、教職調整額の「10%以上」への引き上げ。終業から次の始業まで休息時間を明確にする「勤務間インターバル」の導入なども含め、多面的な施策を推奨した。 ただ、教職調整額を増やしても残業代がない制度自体は維持される。教員らからは、管理職が残業を減らそうという意識を持ちにくく、教職人気回復への効果は限定的との指摘もある。 ![]() |
京都府教育委員会と京都市教育委員会は21日までに、府内公立高の2025年度入試から、志願者の中学校での欠席日数の報告を取りやめる方針を固めた。不登校傾向のある生徒が入試の合否判定の際に不利な取り扱いを受けないようにするため。 府内公立高入試では現在、中学校が生徒の成績や学校生活をまとめて各高校に連絡する報告書(内申書)に授業日数や欠席日数の記録欄がある。不登校傾向のある生徒が入試で不利になりかねないとの指摘や、欠席によって入試で不利な取り扱いをしないようにとの国の通知を踏まえ、両教委は記録欄を削除する方向で協議を進めている。年間30日以上欠席した長期欠席者対象の特別選抜を除く。 市教委によると、23年度入試では、近畿地方では大阪府と奈良県で出欠日数を中学校に報告させていなかったという。京都府内では欠席日数について、合否を総合的に判断する材料の一部にしていたが、病気や事故を含め学校に行くことが困難な生徒が入試で不利にならないよう配慮する。 府内公立高の25年度入試の募集定員や日程は今月末に公表される。 |
【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザの停戦合意を目指し中東訪間中のブリンケン米国務長官は19日、米国の新提案をイスラエルのネタニヤフ首相が「受け入れた」と明らかにした。ブリンケン氏は停戦を急ぐ必要性を強調し、イスラム組織ハマスにも新提案に同意するよう要求した。週内にエジプトで高官協議を開き合意を目指す。 ネタニヤフ氏を巡っては、米国に前向きな姿勢を示す一方で、交渉団には強硬姿勢を指示していると米ニュースサイト「アクシオス」が報道。政権基盤の危うさなどから停戦を望んでいないとの見方も根強い。合意に向けて、ネタニヤフ氏の意向が鍵を握りそうだ。 またハマスは、米新提案はイスラエル寄りだと非難し、駆け引きを続けている。ブリンケン氏は20日、ハマスに影響力を持つエジプトを訪問し、シシ大統領らと会談した。シシ氏はガザ戦闘が中東全体に拡大することに懸念を表明し「戦闘を終えるときが来た」と強調した。ブリンケン氏は同日カタールも訪問する。 イスラエルへの報復攻撃を宣言したイランの革命防衛隊報道官は20日「行動は急がない」と述べ、当面は停戦交渉を見守る構えを示した。 米国はカタール・ドーハで今月再開した交渉で、イスラエルとハマスの「隔たりを埋める」新提案を示した。地元メディアによると、停戦後にイスラエル軍がガザに残す部隊の規模や配置、ガザ・エジプト境界の管理権などが含まれる。ネタニヤフ氏は部隊の残留を強く求めている。 ハマスは、バイテン米大統領が5月末に示し、恒久的な戦闘停止に言及した停戦案を履行すべきだと主張。ハマス幹部は19日、アラブメディアに「米国は(イスラエルに)十分な圧力をかけていない」と語った。 ![]() |
不登校や発達障害など生徒の多様な特性やニーズに対応する新しいタイプの定時制高校、京都府立清明高(京都市北区)が開校して10年目の節目を迎えた。一般的な府立高とは一線を画し、個々の学びのペースに対応した自由進度学習を採用し、定期テストの廃止や制服の自由化など教育面や生活面でさまざまな施策を打ち出している。同高が目指す教育とは何か。2回にわたって報告する。(生田和史) 教室をのぞくと、仕切りで区切られた一角でタブレット画面の動画を見つめたり、複数で話し合ったりと自由に学習に取り組む生徒の姿があった。教壇に立つ教員が一方的に説明して、子どもたちは黒板を黙々と書き写す―。そんな授業のイメージとはかけ離れた光景が広がっていた。 清明高では、一斉授業が一部で残るものの、生徒が個々人の学力やペースに合わせて学びを進める「自由進度学習」を積極的に取り入れている。教員は教室内を回り、進度に違いがある生徒のサポート役に徹する。 飲み込みが早ければどんどん先へ、じっくり理解したければゆっくり。一つの教室内には多様な学びのかたちが混在する。こうした学びを導入した背景には、中学で不登校を経験した生徒が多いほか、入試で学力試験を課さない選抜もあるために生徒の学力の幅が広いことがある。学習支援部長の福田智幸教諭は「一斉授業では、内容が退屈と思う生徒と、逆についていけない生徒に分かれてしまう。みんなが同じスピードで学ぶことは難しい」と話す。 「化学基礎」の授業でイオン結合にについて学んでいた1年の秋山由翔さん(15)は「(授業内容は)動画で配信されているので、好きな時に閲覧できる。欠席しても、勉強が遅れない。こんな学びのスタイルがあってもいい」と笑顔を見せ、隣に座るクラスメートと教え合っていた。 同高は開校時から「学びアンダンテ」を教育のコンセプトに掲げる。アンダンテは緩やかな曲のテンポを表す音楽用語。さまざまな理由で勉強に苦手意識を持つ生徒も少なくないことから、自分のペースを大切にしながら学びの楽しさを知ってほしい、との思いが込められている。 2022年度に一部教科でスタートした自由進度学習は、本年度には全教科全科目にまで拡大された。 授業以外でも改革が進んでいる。知識の定着につながらないなどの理由で22年度に定期テストを廃止し小テストやリポート、授業態度で学ぶ姿勢を重視する評価手法に転換した。知識を詰め込むのではなく、疑問を引き出すことで学ぶ楽しさにつなげようとしている。 教室の居心地を改善させる取り組みにも力を入れる。一部の教室には、同じ形状の机と椅子ではなく、さまざまな大きさの机や、ゲーミングチェア、ソファを並べる。畳敷きや、ファミリーレストランのようなボックスシートが備わった教室もある。 在校生を対象に昨年度に行った満足度調査(回答者251人)では、「生徒一人一人に応じた授業となっている」、「入学前と比べて、学ぶ事の楽しさを感じるようになった」かどうかを尋ねた質問で、「そう思う」または「だいたいそう思う」との回答が計約8割に上った。 川畑由美子校長は「これまでさまざまなことで傷ついてきた生徒もおり、これ以上生徒の自信を失わせたくない。学びに苦手意識のある生徒に『わかる』『できる』などの体験を通じて、学ぶことは、苦しいことではなく、楽しいことという捉え直しにつなげたい」と話す。 開校から10年目を迎えた清明高(京都市北区)では昨年春、学校生活面でもある大きな変化があった。制服着用が自由化され、私服での登校が認められたほか、染髪や化粧なども自由になった。同高には、不登校や発達障害、」GBTQ(性的少数者)などさまざまな背景のある生徒が通っている。個の尊重の姿勢から改革に踏み切った。 校則変更の動きの中心となったのは、生徒、保護者、教員らがメンバーとなる「清明ワーキンググループ」の活動だ。全国的な校則見直しの機運を受け、制服もしくは私服を自由に選んで登校できる試行期間を設けるなどして議論を進めてきた。 染髪や私服での登校を許可する高校は府内でも増えつつあるが少数派で、ほとんどの府立高は校則で、染髪やパーマなどの頭髪加工や化粧を禁じている。清明高の教員聞で共有する冊子「ティーチャーズバイブル」には、「一昔前であれば、頭髪加工=素行不良でしたが、今では頭髪加工=ファッションであり、自分らしさの表現」として、「笑顔で応援してあげて」と記されている。 生徒一人一人を尊重する姿勢を貫く同高だが、「当初はこんな感じではなかった」。開校当初から在籍する生徒支援部長の山下大輔教諭は振り返る。 開校5、6年ごろまでは、生徒指導は厳格で、服装に違反のある生徒を見かけると指導していたという。新設校で、学校の風紀を乱したくないとの思いがあったのかもしれないと推測する。 大人不信で、つらい思いを抱えてきた生徒も少なくない。周りの支援もあってせっかく登校してきたのに、違反だからといっていきなり指導するのはどうなのか。「ルールを守らないことは悪いのだが、たかだか服装」。教員側にも従来の対応への疑問が膨らみ、意識が変わってきた。 「生徒をリスペクトする」ことを大切な価値観として掲げるようになった2021年度から、学校改革が本格化した。 集団行動が苦手な生徒もいるため、修学旅行を廃止して任意参加のサマーキャンプに変えた。体育祭にあたる「つぼめ杯」では、運動が苦手な生徒も参加しやすいように、借り物競走などの簡単な運動やeスポーツも取り入れた。月に1度、授業から離れ、校外学習などに取り組む「リフレッシュデー」を新設した。 学校運営では「公正」の考え方を大事にしている。公正には「必要に応じて、適切な配慮を受けられる」という意味があり、教室の環境改善や休憩スペースの充実などにも乗り出している。 感覚過敏の生徒にとっては、ささいに思えることでもストレスとなる。仕切りで囲った半個室や一人でこもれる「インスタントハウス」を設けるなど、一人で過ごせる居場所も整えている。 誰もが楽しく安心して学べる学校づくりが進む一方で、中途退学や転学の多さが課題だ。 川畑由美子校長は「途中で辞めることは悪いことだとは思っていない。自由に学べる学校と打ち出しているが、実際には生徒指導が厳しいなどと思い込むミスマッチもあった。個々を尊重する多様な取り組みを進めている中で、ミスマッチは減ったと思う」と語り、「本校で培われた手法やマインドは、他の全日制高校にとっても大切で、必要不可欠なものとなると確信している」と次の10年を見据える。 |
防衛省は8月末にまとめる2025年度予算概算要求に、初めて8兆円台に乗る過去最大の防衛費を計上する方針を固めた。島しよ防衛を強化するため、侵攻してきた敵を排除する攻撃型無人機(ドローン)の取得費を計上し、自衛隊に本格導入する方向で調整している。複数の関係者が16日、明らかにした。 政府は防衛力の抜本的強化に向け、23〜27年度の5年間の防衛費を計約43兆円とする方針。25年度の8兆円台はこれに沿う要求で、22年度当初の約5兆4千億円から23年度に約6兆8千億円、24年度には7兆9千億円超となったのに続く急速な増額となる。 ただ、23年度に多額の使い残しが判明した上、財源の一部を賄う増税は開始時期の決定を先送りしている。増額の妥当性は議論声呼びそうだ。 無人機を巡り、政府は防衛力強化の7本柱の一つ「無人アセット防衛能力」として活用を推進。戦闘による人的被害を低減できるため、現代戦の様相を一変させる「ゲームチェンジヤー」と位置付け、海や陸上用の配備も目指している。 自衛隊は現在、米国製の無人偵察機グローバルホークなどを保有している。攻撃型は目標に突っ込み自爆させるタイプや、妨害電波を発する機体の運用実証を続けてきた。 概算要求では、他国のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)に使う長射程ミサイルの取得費や、弾薬の備蓄など戦闘継続能力の拡充、自衛官の確保に向けた処遇向上なども重点化される見通しだ。 ![]() |
終戦を告げる玉音放送から79年となった15日、遺族らは国内外を巻き込んだ未曽有の戦禍に思いをはせた。戦争体験者の高齢化で「生の声」を聴く機会が失われつつある中で、日本政府は防衛力強化を推し進め、戦後80年の節目を前に、国是である「専守防衛」は大きく揺らぐ。平和のバトンを未来にどうつなぐのか。凄惨な過去と向き合い、自ら学ぼうと模索する若者もいる。 「戦争の悲惨さと平和の大切さを、今こそ、語り継いでいかないといけない」。東京・日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式。遺族代表の安斎満さん(86)が訴えた。 憲法9条に基づき、平和国家を掲げる日本。だが近年、状況は急激に変化している。 海洋進出を強める中国や核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の存在を理由に、政府は2016年以降、自衛隊の空自域だった南西諸島に次々と部隊を新設。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や、23年度からの5年間で防衛費に総額約43兆円の巨費を投じることも決まった。 自衛隊は今年7月で発足70年となった。「厳しさを増す安全保障環境」を旗印に、組織の肥大化が進む。「追い風が吹いている間に、あらゆる事態を想定して準備をしないといけない」。ある自衛隊幹部は現状認識をそう説明する。 総務省の23年10月の人口推計によると、戦前生まれは総人口の1割強。14年度に約5万人いた旧軍人の恩給受給者は、23年度には約1400人となった。従軍体験を持つ人は確実に減り続けている。 19歳で中国・山西省に出征した遠藤明さん(99)=宮城県白石市=は90歳頃から、講演会などで自身の加害経験を語るようになった。 中国兵を殺害し、戦闘に勝った高揚感とは裏腹に、後に多数の遺体を目にしてショックを受けたこと、「肝試し」と称し、木にくくりつけた中国人男性を順番に銃剣で刺すよう命じられたこと―。「恥ずかしく、おぞましい」記憶だ。 加害経験を心の奥底に封印し続ける人もいる。だが遠藤さんは一つの歴史的事実として、後生に「残す」ことの必要性を強く感じるようになったという。 15日の追悼式の式辞で、岸田文雄首相はこれまでと同様、アジア諸国への加害責任に触れなかった。「被害を与えた国として、反省や謝罪をするべきだ」。遠藤さんは言葉に力を込めた。 被爆地であり、旧陸軍が出征拠点を置いた「軍都」でもあった広島市。会社員田中美穂さん(29)は就職を機に福岡県から転居後、現存する陸軍施設の保存運動や反核運動に携わるようになった。「学校では、ほとんど教わらなかった」という日本軍による加害行為も学び始めた。 なぜ戦争は起き、当時の政府や軍、市民はどのように関わったのか。自国の被害だけでなく、加害行為も含めた戦争の全体像から教訓を得なければ「今も世界で起こっている紛争や暴力に、いつの間にか加担してしまうのではないか」との思いを強めている。 田中さんは「戦争は79年前に終わったことではない。現代と地続きの問題だと訴えていきたい」と語った。 ![]() |
【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザの保健当局は15日、昨年10月から始まったイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘でガザ側死者が4万人を超えたと発表した。戦闘開始から10ヵ月。国連人道問題調整室(OCHA)などは人道危機を繰り返し警告している。中東カタールの首都ドーハでは、米国などの仲介で停戦交渉が再開。停戦実現に向けて国際社会が圧力を強めている。 ガザの人口は約223万人(2023年)。これまでに人口の約1・8%が死亡したことになる。民間人が多数を占めるとみられ、ガザ当局によると、子どもの死者は約1万6千人。がれきに埋まったままの遺体や行方不明者が1万人以上で、実際の死者はさらに多い。負傷者は9万人を上回る。 軍はハマスによるイスラエル奇襲直後からガザを空爆、昨年10月下旬以降、ガザ北部から最南端のラフアまで地上作戦を拡大した。死者は同12月に2万人、ことし2月に3万人を超え、今月15日に4万5人となった。軍はハマスの拠点だと主張して各地の学校や病院への攻撃を続け、ガザ全体の約84%で住民退避を要求。人口の9割近い190万人が退避生活を強いられている。 多数の病院が破壊、市民は十分な医療を受けられない。エジプトと接するラフアの検問所が閉鎖され、域外での治療を必要とする1万2千人が足止めされている。 深刻な食料不足に陥っているのは住民の96%以上。栄養失調で治療が必要な子どもは5万人を超えた。 戦闘の発端となったハマスによる昨年10月のイスラエル奇襲攻撃では、イスラエル側で約1200人が死亡した。 ![]() |
東京大が2025年度の入学者から年間約10万円の授業料引き上げを検討していることが明らかになり、国立大授業料を巡る議論が注目を集めている。教育関係者からは「値上げは生徒の進路選択に影響し、進学機会の格差を広げる」と慎重な声が上がる。 東北地方の県立高校2年の女子生徒(17)は「親に負担をかけたくないので、授業料が安い国立大に進学しなければと思うが、国立大が値上げしたらどうすればいいのか」と心配する。 4人きょうだいの3人目。姉は東京、兄は東北の私立大に通い、妹は中学生だ。地方公務員の父(50)と介護福祉士の母(50)が、塾代や姉の留学費用の工面に苦労する姿を見て、家計が苦しいと感じるという。進路指導担当の男性教諭は「値上げで進学できなくなる生徒がいたら、本当に腹立たしいこと」と憤る。 子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」代表理事示河光治さんは「そもそも日本は(大学の)私費負担が大きく、値上げは低所得者層のみならず、中所得者層にも影響は大きい」と話す。 国立大授業料は、文部科学省令に基づき、各大学の判断で標準額(53万5800円)から20%まで増額できる。標準額は05年度から据え置かれ、既に東京工業大や千葉大など首都圏にある7大学が引き上げている。 国が大学に支給する運営費交付金は減額が続き、物価高や円安などが経営を圧迫、全国に86ある国立大の財政は逼迫している。5月に東大の値上げ検討が報じられると、熊本大などの学長も値上げの可能性に言及した。 桜美林大の小林雅之特任教授(高等教育論)は「厳しい経営状況から値上げしたい気持ちは分かる」とする一方、国立大は、住む地域や家計状況などに関係なく、高等教育を受ける機会を提供する使命があると強調する。 小林特任教授によると、1970年代から、国立大が入学金や授業料を値上げしてきた結果、埼玉、千葉、東京、神奈川各都県の高卒者の9割以上は近郊の大学に進む一方、他地域からの進学が困難になっていることを示す調査もある。値上げによって経済的な理由で進学を諦めざるを得ない高校生が増えると、大学はさらに学生の多様性を失うと危惧する。 「大学は多様な人間が出会うカルチャーショックの場。学生が視野を広げるためには多様性は欠かせない」と小林特任教授。値上げの議論は、返済不要の奨学金や、授業料を在学中ではなく卒業後に所得に応じて払う所得連動型奨学金の充実など学生への支援策とセットで考える必要があるとしている。 ![]() |
終戦を告げる玉音放送から79年となった15日、遺族らは国内外を巻き込んだ未曽有の戦禍に思いをはせた。戦争体験者の高齢化で「生の声」を聴く機会が失われつつある中で、日本政府は防衛力強化を推し進め、戦後80年の節目を前に、国是である「専守防衛」は大きく揺らぐ。平和のバトンを未来にどうつなぐのか。凄惨な過去と向き合い、自ら学ぼうと模索する若者もいる。 「戦争の悲惨さと平和の大切さを、今こそ、語り継いでいかないといけない」。東京・日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式。遺族代表の安斎満さん(86)が訴えた。 憲法9条に基づき、平和国家を掲げる日本。だが近年、状況は急激に変化している。 海洋進出を強める中国や核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の存在を理由に、政府は2016年以降、自衛隊の空自域だった南西諸島に次々と部隊を新設。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や、23年度からの5年間で防衛費に総額約43兆円の巨費を投じることも決まった。 自衛隊は今年7月で発足70年となった。「厳しさを増す安全保障環境」を旗印に、組織の肥大化が進む。「追い風が吹いている間に、あらゆる事態を想定して準備をしないといけない」。ある自衛隊幹部は現状認識をそう説明する。 総務省の23年10月の人口推計によると、戦前生まれは総人口の1割強。14年度に約5万人いた旧軍人の恩給受給者は、23年度には約1400人となった。従軍体験を持つ人は確実に減り続けている。 19歳で中国・山西省に出征した遠藤明さん(99)=宮城県白石市=は90歳頃から、講演会などで自身の加害経験を語るようになった。 中国兵を殺害し、戦闘に勝った高揚感とは裏腹に、後に多数の遺体を目にしてショックを受けたこと、「肝試し」と称し、木にくくりつけた中国人男性を順番に銃剣で刺すよう命じられたこと―。「恥ずかしく、おぞましい」記憶だ。 加害経験を心の奥底に封印し続ける人もいる。だが遠藤さんは一つの歴史的事実として、後生に「残す」ことの必要性を強く感じるようになったという。 15日の追悼式の式辞で、岸田文雄首相はこれまでと同様、アジア諸国への加害責任に触れなかった。「被害を与えた国として、反省や謝罪をするべきだ」。遠藤さんは言葉に力を込めた。 被爆地であり、旧陸軍が出征拠点を置いた「軍都」でもあった広島市。会社員田中美穂さん(29)は就職を機に福岡県から転居後、現存する陸軍施設の保存運動や反核運動に携わるようになった。「学校では、ほとんど教わらなかった」という日本軍による加害行為も学び始めた。 なぜ戦争は起き、当時の政府や軍、市民はどのように関わったのか。自国の被害だけでなく、加害行為も含めた戦争の全体像から教訓を得なければ「今も世界で起こっている紛争や暴力に、いつの間にか加担してしまうのではないか」との思いを強めている。 田中さんは「戦争は79年前に終わったことではない。現代と地続きの問題だと訴えていきたい」と語った。 ![]() |
【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザの保健当局は15日、昨年10月から始まったイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘でガザ側死者が4万人を超えたと発表した。戦闘開始から10ヵ月。国連人道問題調整室(OCHA)などは人道危機を繰り返し警告している。中東カタールの首都ドーハでは、米国などの仲介で停戦交渉が再開。停戦実現に向けて国際社会が圧力を強めている。 ガザの人口は約223万人(2023年)。これまでに人口の約1・8%が死亡したことになる。民間人が多数を占めるとみられ、ガザ当局によると、子どもの死者は約1万6千人。がれきに埋まったままの遺体や行方不明者が1万人以上で、実際の死者はさらに多い。負傷者は9万人を上回る。 軍はハマスによるイスラエル奇襲直後からガザを空爆、昨年10月下旬以降、ガザ北部から最南端のラフアまで地上作戦を拡大した。死者は同12月に2万人、ことし2月に3万人を超え、今月15日に4万5人となった。軍はハマスの拠点だと主張して各地の学校や病院への攻撃を続け、ガザ全体の約84%で住民退避を要求。人口の9割近い190万人が退避生活を強いられている。 多数の病院が破壊、市民は十分な医療を受けられない。エジプトと接するラフアの検問所が閉鎖され、域外での治療を必要とする1万2千人が足止めされている。 深刻な食料不足に陥っているのは住民の96%以上。栄養失調で治療が必要な子どもは5万人を超えた。 戦闘の発端となったハマスによる昨年10月のイスラエル奇襲攻撃では、イスラエル側で約1200人が死亡した。 ![]() |
東京大が2025年度の入学者から年間約10万円の授業料引き上げを検討していることが明らかになり、国立大授業料を巡る議論が注目を集めている。教育関係者からは「値上げは生徒の進路選択に影響し、進学機会の格差を広げる」と慎重な声が上がる。 東北地方の県立高校2年の女子生徒(17)は「親に負担をかけたくないので、授業料が安い国立大に進学しなければと思うが、国立大が値上げしたらどうすればいいのか」と心配する。 4人きょうだいの3人目。姉は東京、兄は東北の私立大に通い、妹は中学生だ。地方公務員の父(50)と介護福祉士の母(50)が、塾代や姉の留学費用の工面に苦労する姿を見て、家計が苦しいと感じるという。進路指導担当の男性教諭は「値上げで進学できなくなる生徒がいたら、本当に腹立たしいこと」と憤る。 子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」代表理事示河光治さんは「そもそも日本は(大学の)私費負担が大きく、値上げは低所得者層のみならず、中所得者層にも影響は大きい」と話す。 国立大授業料は、文部科学省令に基づき、各大学の判断で標準額(53万5800円)から20%まで増額できる。標準額は05年度から据え置かれ、既に東京工業大や千葉大など首都圏にある7大学が引き上げている。 国が大学に支給する運営費交付金は減額が続き、物価高や円安などが経営を圧迫、全国に86ある国立大の財政は逼迫している。5月に東大の値上げ検討が報じられると、熊本大などの学長も値上げの可能性に言及した。 桜美林大の小林雅之特任教授(高等教育論)は「厳しい経営状況から値上げしたい気持ちは分かる」とする一方、国立大は、住む地域や家計状況などに関係なく、高等教育を受ける機会を提供する使命があると強調する。 小林特任教授によると、1970年代から、国立大が入学金や授業料を値上げしてきた結果、埼玉、千葉、東京、神奈川各都県の高卒者の9割以上は近郊の大学に進む一方、他地域からの進学が困難になっていることを示す調査もある。値上げによって経済的な理由で進学を諦めざるを得ない高校生が増えると、大学はさらに学生の多様性を失うと危惧する。 「大学は多様な人間が出会うカルチャーショックの場。学生が視野を広げるためには多様性は欠かせない」と小林特任教授。値上げの議論は、返済不要の奨学金や、授業料を在学中ではなく卒業後に所得に応じて払う所得連動型奨学金の充実など学生への支援策とセットで考える必要があるとしている。 ![]() |
人事院は13日、国の政策運用を担う国家公務員一般職(大卒程度)の2024年度採用試験の合格者を発表した。土木や機械といった分野を学び、インフラ整備などに当たる技術系の合格者数は前年度から17・3%減り1482人。現行の試験制度となった12年度以降で初めて採用予定数(1542人)を下回った。人手不足に伴う民間企業の採用活発化や、長時間労働を背景とする国家公務員離れが影響したとみられる。 地域別に採用され事務処理などを扱う行政系を含む一般職全体で見ても、合格者数は7557人で前年度比8・6%減だった。女性は3250人で、割合は過去最高の43・0%に上った。 人事院は、技術系一般職について「人材を確保できない危機的な状況だ」と指摘。25年度から、行政系を含む一般職の試験に専門試験は課さない「教養」区分を新設。負担を軽くして志望者数の回復を目指す。民間の採用活動の早期化を踏まえ、同区分は年齢要件を21歳から1歳引き下げ、大学3年生から受験可能にして人材を囲い込む。 技術系はデジタル政策や研究開発、災害時のインフラ復旧といった仕事もある。一般職は幹部候補として政策を企画立案する総合職に対し「ノンキャリア」と呼ばれる。 今回、技術系一般職の申込者数は3520人で過去最も少なく、倍率は2・4倍。9試験区分のうち「土木」「化学」「デジタル・電気・電子」「機械」「建築」の五つで合格者数が採用予定数を下回った。 海上保安官や労働基準監督官など、7種頚の専門職試験(大卒程度)の合格者数は4949人だった。 ![]() |
長野県は民間フリースクールを公的に認証する全国初の取り組みを本年度から始めた。不登校の児童生徒数が全国で30万人近くと過去最多になる中、多様な学びの場や居場所を確保するためで、運営費補助を含め全面支援する。他県の事業者からその動向に注目が集まるが、認証に要件があり「持ち味の自由な運営ができなくなる」と懸念する声も上がる。 5月下旬、「信州型フリースクール認証制度」を学ぶため、24都道府県で活動する関係者ら約90人がオンラインで勉強会を開いた。創設に関与した長野の運営事業者が講師となり、質の高い学びを実現するためとし「行政と二人三脚で取り組み、補助金に加え、運営面までサポートする画期的な制度だ」と伝えた。 フリースクール「人と学ぶ場ふらっと」を運営するNPO法人「えん」(岐阜市)の加膝隆史理事長(43)が開催を呼びかけた。岐阜には同様の制度はないとし「長野の先行事例は大きな励みになった」と振り返る。 長野の制度は、教員免許を持つスタッフの有無、開所日数などに応じて「居場所支援型」と「学び支援型」に分類し、基準を満たすと認証される。最大で年間200万円の補助金を受けられ、県ホームページでの情報発信やスタッフの研修、他の事業者との交流を支援する。7月下旬に第1弾として県内23施設を認証し、県は今後も申請を受け付けて増やす方針だ。 文部科学省の調査では、2022年度に不登校だった小中学生は全国で約29万9千人、うち長野県は5735人。全国、長野県ともに過去最多だった。保護者の会費負担も課題とされ、県の担当者は「運営事業者の収入源を安定化させて、子どもたちの学びを保障し、自立につなげたい」と狙いを語る。 資金面で支援する動き自体は各地に広まっており、行政が関与を強めることに慎重な事業者もいる。オンライン勉強会に参加した東京都世田谷区のNPO法人「僕んち」は、都が始めた補助事業への申請を検討するが、支援の方向性を記載した計画を作成することなどが条件となるため膨大な事務作業が生じると見込む。タカハシトール代表(68)は「行政の対応に手足を縛られ、子どものために割く時間がなくなれば本末転倒だ」と話した。 ![]() |
大阪府東大阪而立中の男性教諭が適応障害を発症し休職を余儀なくされたのは、学校側が時間外勤務を軽減する措置を取らず過重労働になったのが原因として、府と市に計約330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で大阪地裁(小川嘉基裁判長)は9日、計約220万円の支払いを命じた。 判決などによると、男性は理科の教諭で2019年4月から東大阪市立中で学年主任を担当。週20こまの授業の他、進路指導や修学旅行の準備なども受け持ち、校長に業務の軽減を訴えたが「代わりはいない」と認められなかった。 21年11月に適応障害を発症し、その後休職。発症前の約半年間の時間外労働は月に約85時間〜165時間に上り、文部科学省が定める1ヵ月当たり平均80時間 までという目安を大幅にに超過していた。 小川裁判長は判決理由で男性の業務は「量的に著しく過重だった」と認定。負担軽減の要望があったにもかかわらず、具体的措置を取らなかった校長に注意義務違反があったとした。 男性は判決後に大阪市内で記者会見し「主張がおおむね認められてほっとしている。働き方改革のきっかけになればいい」と話した。 ![]() |
人事院は8日、2024年度の国家公務員給与を引き上げるよう国会と内閣に勧告した。最も人数が多い行政職は月給を平均2・76%(1万1183円)引き上げる。2%を超えるアップは、1992年度の2・87%以来、32年ぶり。賃上げが進む民間との格差を埋める。人材確保のため、月給は若年層の引き上げを重視。初任給も高卒、大卒ともに2万円を超える増加で、過去最大の上昇幅となった。 ボーナス(期末・勤勉手当)は0・10ヵ月増の4・60ヵ月分。月給とボーナス両方のプラス勧告は3年連続となる。勧告は地方公務員の給与改定の参考となるため。各地の自治体でも給与増が進む見通しだ。 初任給の増額唱は、キャリアと呼ばれる各省庁の幹部候補が2万9300円、それ以外の大卒が2万3800円、高卒が2万1400円。志望者が減る中、採用市場での競争力向上を目指す。 官房長官らで構成する関係閣僚会議が勧告を受け入れるかどうかを検討する。受け入れた場合、行政職(平均42・1歳)の平均年収は22万8千円増の691万6千円となる。 人事院は、10年ぶりとなる給与制度の大幅な見直しも勧告した。職員の意欲向上のため、ボーナスは、勤務成績が優秀な職員への配分が手厚くなるようにする。共働き世帯増加を踏まえ、配偶者手当を26年度までに段階的に廃止する一方、子ども手当を1人当たり月額1万円から月額1万3千円に増やす。 通勤手当は新幹線の特急料金などを含めた上限を月額最大7万5千円から、15万円まで引き上げる。 8日の人事院勧告では、民間の賃金水準が高い地域に勤める国家公務員の給与を割り増す「地域手当」の区分を見直した。従来は市区町村ごとに示していたが、都道府県内では原則同じ区分にした。自治体が職員に割り増し支給する目安となっており、近隣との差が大きいと人材確保に支障が出るとの声が出ていた。 見直しでは、月給に対する割増率(支給率)によって20〜4%の5区分に再編。対象となる16都府県を当てはめた。一部の都道府県庁所在地などは、民間の給与水準が高い傾向にあるため、16都府県内にあるかどうかは問わず、個別に各区分へ割り振った。 20%は東京23区で、23区を除く東京都内の自治体や横浜市、大阪市、大阪府吹田市などが16%。大阪市と吹田市以外の大阪府の自治体や、兵庫県西宮市などが12%とした。残る区分は京都府と滋賀県の大津市、草津市、栗東市を含む8%と滋賀の残り自治体を含む4%で、区分に入らない自治体は支給対象外。 これまでは20〜3%の7区分に分けていた。 自治体は独自に手当の上乗せができるが、財政に余裕があるとみなされ、地方交付税の配分が減る。大企業の本社や工場が少ない地域は割り増しをしづらく職員の確保が難しいといった問題があった。 ![]() |
米国のエマニュエル駐日大使は、長崎市が9日の「原爆の日」に開く平和祈念式典を欠席する。米大使館が7日、明らかにした。パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルを招待しなかったことを受けた対応。日本を除く先進7力国(G7)と欧州連合(EU)の駐日大使や代表が連名で、イスラエルを招待しないことに懸念を表明する書簡を長崎市に送っていたことも判明した。書簡は7月19日付。(以下略) パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルに対し、米国のバイテン政権は、民間人の犠牲拡大に懸念を示しつつ武器供与など一貫して支援を重ねてきた。両国の関係は「特別な関係」と呼ばれる。英国も「無条件ではない」とくぎを刺しながらイスラエルの自衛権に理解を示している。 戦闘は昨年10月のハマスのイスラエル奇襲攻撃が発端となった。米英独仏などの首脳は、ハマスを非難するとともに、イスラエルへの「揺るぎない結束した支持」を表明した。 ただ、イスラエル軍のガザ侵攻は長期化し、ガザ保健当局によると、ガザ側の死者は3万9千人以上に達している。 バイテン米大統領は、イスラエル軍が避難民が密集していたガザ最南部ラフア侵攻の構えを見せた際には「越えてはいけない一線だ」と表明したものの、「イスラエルを見捨てない」と擁護の姿勢は崩さなかった。 中東では、ハマスのハニヤ最高指導者が訪問先のイランで暗殺されたばかり。イランやハマスは敵対するイスラエルの仕業と断定し報復を宣言、緊張が高まっている。 G7外相は今月5日、中東の緊張の高まりは広い範囲で紛争を引き起こす恐れがあるとして「深い懸念」を示す声明を発表。「さらなるエスカレーションによって利益を得る国はない」とし、全ての当事者に報復的な暴力を回避するよう求めた。(共同) ![]() |
120大学が加盟する日本私立大学連盟は7日、大学教育への財政支援に関する提言を公表した。新たな財源として教育国債を発行し、学生への支援などに充てるべきだと主張。国立大と私立大の授業料格差を是正するため、値上げを前提に国立大の授業料の柔軟化も求めた。 提言では、人口減少や技術が急速に進展する時代では、学生一人一人の能力を高める大学の役割が重要だと指摘。授業料減免や給付型奨学金を中間層に拡充し、質の高い教育研究を実現するため2兆円規模の教育国債を創設すべきだとした。 国立大の授業料は、私立大より安く、文部科学省令が標準額として年53万5800円と定める。 提言は、授業料の差が「経済格差と教育格差の悪循環を助長している側面がある」と批判。「国立大は授業料の上限規制を撤廃し、収入増によって質の高い教育を実施し、高度専門人材を育成すべきだ」と強調した。 私大連盟の田中愛治会長(早稲田大総長)は、記者会見で「設置形態で大学への公的支援が決まるのは問題。国公私立大が同じ条件で競争できるようにしてもらいたい」と述べた。 ![]() |
ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナ自治区ガザヘの攻撃が続き、核の脅威が高まる中、広島は6日、原爆の日を迎えた。核廃絶を唱える一方で米国と共に核抑止力の強化を進める日本政府。被爆80年を来年に控えながら、矛盾する動きに被爆者は反発を強める。核軍縮が混迷する世界に、唯一の戦争被爆国である日本は役割を果たせていない。 「なぜ被爆者の声を聞かないのか」。平和記念式典後、広島市内で岸田文雄首相と面会した広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長(79)は怒りをにじませた。 被爆者団体の代表らは核兵器禁止条約への参加を改めて要求した。首稲は核軍縮の行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を進めると強調。条約については「核保有国を動かさないと現実は動かない」と従来の見解をなぞった。 条約参加に否定的なのは、米国の「核の傘」に依存しているからだ。首相社面会で団体側に「同じ目標を共有している」と語ったが、日米両政府は7月、米国が核を含む戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」の強化に合意した。 この動きに被爆者は「核廃絶に逆行」と憤る。「期待したのに実績がない」「米国ばかり見ている」。広島選出で核軍縮を「ライフワーク」とする首相に失望も大きい。 今年の式典では、広島市がイスラエルを招待したことも波紋を呼んだ。市は核保有国を含め、国連加盟か、白本政府が国家承認しているかを基準にし、該当しないパレスチナは招待しなかった。一方、ウクライナ侵攻が始まった2022年には原則通りロシア、ベラルーシを招待する方針だったが、外務省から「日本政府の姿勢に誤解を生じさせる」と反対され、最終的に招待しなかった。今回も同じ判断だった。 この対応に「二重基準だ」と市へ批判が相次いだ。「紛争中の国にこそ平和を訴えるのが原則」(佐久間理事長)と、あらゆる国や地域を招くべきだとの意見もあるが、日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳代表委員(92)は「イスラエル支持のメッセージと取られかねない」と反対する。 広島市は国に核禁止条約参加を強く要求する立場なのに、式典招待に関しては国の意向に沿った対応となった。田中さんは「主体的ではない。戦争当事者は招待しないよう基準を変えるべきだ」と話す。 世界の核軍縮は混迷する。今月2日までジュネーブで開かれた、26年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第2回準備委員会では、核兵器使用をちらつかせるロシアや、国際原子力機関(IAEA)への協力を怠りウラン濃縮設備を増強するイランに批判や懸念が向けられ、両国が反発。分断が深まった。 準備委員会では「議長総括」の作成にこぎ着けたが、直近2回の再検討会議は最終文書採択に至らず、NPTは機能不全と言える。その分、被爆者は核禁止条約に期待を寄せる。被爆者団体代表は6日、来年の第3回締約国会議へのオブザーバー参加を首相に求めた。 1歳の時に広島で被爆し、平和記念式典へ妻や孫と一緒に参列した木村一茂さん(80)=東京都青梅市=はこう訴える。「核兵器はあれば使いたくなる。世界に禁止を訴えるのが被爆国の姿ではないのか。孫たちの世代は、戦争のない平和な世の中であってほしい」 広島の被爆者団体の代表者らは6日、広島市のホテルで岸田文雄首相と面会し、来年開かれる核兵器禁止条約の第3回締約国会議にオブザーバー参加するよう要望した。岸田首相は「核のない世界に向けて前進したい」と述べるにとどめた。 広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長(82)は岸田首相に「来年の会議に参加してほしい」と求めた。その上で「原爆を投下した米国と投下された日本が一緒に条約に署名、批准もしてほしい」と訴えた。 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(79)も「核の使用を示唆する国、例えばロシアやイスラエルもあり、いつ使われるかもしれない」と危機感を示し、被爆国として会議への参加を要望した。 岸田首相は「条約の目指す核のない世界に、核保有国をどれだけ近づけることができるか。これが日本の具体的な取り組み」と説明した。 ![]() |
広島は6日、米軍による原爆投下から79年の「原爆の日」を迎え、広島市の平和記念公園で午前8時から「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が営まれた。松井一実市長は平和宣言で、混迷する世界情勢下で核抑止力に依存する為政者に政策転換を促そうと呼びかけた。その上で、世界中の指導者に「断固とした決意で対話すれば、危機的な状況を打破できる」と訴えた。(以下略) 原爆投下から79年の平和記念式典が営まれた広島市は近年、平和行政を巡り物議を醸す事態が相次ぐ。今年の式典はイスラエル招待で主体的な判断がなく、批判を招いた。来年は被爆80年を迎える。被癩者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という思いに寄り添い、市は平和行政の原点に立ち返るべきだ。 市は昨年、平和教材から漫画「はだしのゲン」を削除。市幹部が議会答弁で米国の原爆投下責任を「棚上げ」にすると答えた一幕もあった。松井一実市長が職 員研修で戦前の『教育勅語』を使っていることが判明し、被爆者団体から反対意見が相次いだが、松井氏は今年の研修でも使用を継続した。今回の式典はロシアなどを招待しない一方、イスラエルを招待した「二重基準」と非難されたが、実際は政府の意向に追随しただけに見える。 ” 戦前「軍都」だった広島市は、戦後は平和記念都市建設法に基づき復興した。その歩みは多くの被爆者の努力と願いが根底にある。世界平和と核兵器廃絶実現 のため、市は信念を持って平和行政を推進すべきだ。 |
京都府と京都市は5日、2023年度の児童虐待相談・通告数をまとめた。府内合計は前年度比1・8%増の6116件となり、8年連続で過去最多を更新した。子どもの前で親同士で暴力を振るうなどする「面前DV」が警察から積極的に通告されていることもあり、例年と同様に心理的虐待が多くを占めた。 増加率は22年度の5・4%に比べて鈍化したが、高止まりが続く。京都市は155件増の3443件で過去最多だった。内容別では、面前DVなど「心理的虐待」が3170件(前年度3014件)と大半を占めた。直接、暴力を振るう「身体的虐待」が1216件(1140件)、育児放棄の「ネグレクト」が756件(787件)、「性的虐待」が53件(37件)となった。 虐待を受けた年齢は未就学児が2103件(2168件)で最多。他は小学生が1750件(1619件)、中学生が862件(734件)、高校生含む18歳までが480件(457件)。虐待者は9割以上が実親で実父が2498件(2394件)、実母が2375件(2271件)。 また児童相談所の職員が虐待を行った事案が2件あった。2件とも府家庭支援総合センター(東山区)で、昨年2月に男性指導員が10歳男児を制止する際に上着 のフードをつかんで首が絞まり、同9月には別の男性指導員が8歳男児を制止する際に足を引っ張ぴ、後頭部を打撲させるなどした。それぞれ児童は軽傷だったが「身体的虐待」と認定した。 虐待の内容別などの分析は府と市で発表基準が異なるため、京都新聞社が独自に集計した。府は受理した全2673件を対象にしている一方、市は受理した3443件のうち、虐待認定した2522件のみに限っている。 ![]() |
京都地方最低賃金審議会は5日、京都府内の最低賃金(最賃)を50円、現行に比べ4・96%引き上げて1058円にするよう、京都労働局の角南巌局長に答申した。引き上げ額、率ともに2002年以降で最大。異議申し出などの手続きを経て10月1日に改定となる見通し。 同審議会は、国の中央最賃審議会が7月に全国一律で50円の引き上げを提示したことを踏まえ、労使間で議論を進めてきた。労働者側は、政府が掲げる成長と分配の好循環などを実現するために「引き上げは必要」と主張した一方、使用者側は「中小企業の支払い能力が考慮に入れられていない」と反発した。最終的に公益委員が提示した50円の引き上げ案が賛成多数で決まった。 審議会は、京都市中京区の京都労働局であり、会長の岩永昌晃京都産業大教授が答申書を角南局長に手渡した。 答申では、中小を業を対象とした消費税の減免措置や、賃上げ原資の確保につながる支援策、社会保険料の負担を避けるため働く時間を抑える「年収の壁」に対する抜本的な対策なども政府に要望した。 京都労働局は8月20日まで異議申し出を受け付ける。 京都総評は5日、最賃の引き上げ幅が中央最賃審議会の目安額に届かなかったことを「極めて不十分」とし、異議申し出を行う方針を明らかにした。1500円以上の実現を求めている。 ![]() |
「競い合う気持ちが大事だと子どもたちに分からせたい」。中山成彬文部科学相(当時)が記者会見で語ったのは20年前、2004年のことだった。全国学力テストはこの発言を発端に07年度に始まり現在に至っている。競争が目的なら、全員参加による実施が必要になる。しかし、学習状況を把握し、今後の教育施策に役立 てるためなら抽出調査で事足りる。 中山氏の発言とは裏腹に、文科省は競争目的を明確に否定してきた。代わりに「児童生徒の学習指導の改善に役立てる」という理由を掲げ、個人や学校に成果を還元するには全員参加が必要だと説明してきた。 序列化を抑制するため、都道府県別の平均正答率は小数点以下を四捨五入し、整数値だけ示す配慮もしてきた。だが数値が公表されれば、必然的に比較は起きる。教育委員会や学校は「今年こそ最下位脱出を」といった周囲の強いプレッシャーにさらされ、教育活動にはゆがみも生じている。 このテストは「全国学刀・学習状況調査」との正式名称の通り、国の教育施策の実態を検証するための「行政調査」だ。それなのに調査の価値を損ないかねない事前対策が各地で横行している。 ある県の中学校教員は毎年、新年度の開始とともに管理職に「過去問」をやるように求められ、4月のテスト終了まで授業を対策に充てている。結果は学校や教員の評価に影響すると聞かされ「生徒には解けそうな問題から手を付けるように指導する。テクニックは教えるので成績も多少は上がる」と力なく笑う。 テストは例年4月実施で、児童生徒の手元に結果が届くのは2学期が始まる9月が多い。返却された個票には問題の内容、正誤、正答率、全国的にみた自分の位置などのデータが記されている。 しかし、約4ヵ月後に返されるこの個票を見て、振り返り学習をするのは現実的だろうか。記述式問題にどう解答したかの記載もない。県教委に対策を求められている小学校校長は「子どもは結果を一目見たら終わり。教員も授業が忙しく、正答率を把握するのが精いっぱい」と打ち明ける。個々の児童生徒への実のあるフィードバックは難しい、というのが関係者に共通する見方だ。 一般的に、テストは学習内容の定着を確認するために実施し、すぐに見直しをしなければ意味がないとされている。文科省の担当者もそれを否定しない。ならば、現在の制度設計には無理があると言わざるを得ない。文科省は、27年度にパソコンを使ったオンラインでの出題方式に完全移行を計画しているが、それでも直後に結果を返却するのは難しいという。負の側面を伴う全員参加方式を続ける以上、「抽出調査では実施目的が実現できない」という明確な根拠を示すべきだ。 全国学力テストの問題は、よく練られた良問だと評されている。子どもたちの学習状況を把握する必要性に異論はない。だが、それは年間四十数億円もの予算をかけ、全員参加を継続する理由にはならない。(共同通信編集委員名古谷隆彦) |
ひとぴ親家庭の34%で、子どもが夏休み中に1日2食以下で過ごしていることが、民間団体の調査で分かった。コメをおかゆにしてかさ増ししたり、親が1日1食に減らしたりする例もあった。ひとり親家庭は貧困率が高く、物価高の中、給食がない夏休みは食費など家計の負担が増えることが背景にある。 調査はNPO法人「ひとり親家庭サポート団体全国協議会」が7月下旬にインターネットで実施。全国の約2100世帯が回答した。ほとんどが母子家庭で、7割が小中学生のいる世帯だった。 全体のうち32%が1日2食、2%が1日1食。コメを買えない時が「よくあった」「時々あった」は計41%に上った。勤務先のコンビニから廃棄処分になった商品を持ち帰ったり、ご飯を食べずみそ汁だけでしのいだりする親もいた。光熱費節約のため「エアコンは我慢し、限界になったら水を浴びる」「シャンプーは10日に1回」との声も寄せられた。 |
広島市が6日の原爆の日に開く平和記念式典を巡り、パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルを招待したことが波紋を広げている。市の説明は「全ての国の招待が原則」。ウクライナ侵攻を理由に招待していないロシア、ベラルーシの場合と異なるとし「二重基準」との批判が噴出した。長崎市は9日の平和祈念式典にイスラエルを招待せず、判断が分かれた。 ▽物議 広島市の方針が明らかになった4月中旬以降、市には7月下旬までに約2600件の抗議メールが届いた。二重基準に見える対応を批判する内容が大半だという。 ガザ攻撃が始まった昨秋から毎日、原爆ドーム前で抗議する市民団体「広島パレスチナともしび連帯共同体」のメンバー田浪亜央江広島市立大准教授は「招待 は世界で広がる抗議運動を愚弄している。式典参加を攻撃の正当化に利用される恐れもある」と憤った。 一方、ロシアやベラルーシを含め、あらゆる国や地域を招待すべきだとの意見も。広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長(79)は「紛争中の国にこ そ平和を訴えるのが原則」と訴えた。 ▽困惑 広島、長崎両市は今年、イスラエルとパレスチナの招待を巡り、正反対の対応となった。両市の招待基準はいずれも日本に駐在する全大使としている。ただ広 島市は日本政府の国家承認か国連加盟かのどちらかを満たした国に限定。両方とも満たしていないとして招待しなかったパレスチナ側から「加害者ではなく、被害者を招くべきだ」と反発を受けた。一方、長崎市は「外務省ホームページに『その他代表部』と掲載されている」とパレスチナを招いた。 広島市関係者によると、市は4月以降、内部でイスラエル招待の可否を検討したが、従来通り招待を決めた。ただ批判を受け、招待状に一刻も早い停戦を求めるとの異例の文言を盛り込んだ。関係者は「紛争中の国も含め全ての国に来てもらいたいだけで、攻撃を容認する意図はない」と困惑する。 広島市はウクライナ侵攻が始まった2022年、原則通りロシア、ベラルーシを招待する方針だったが、外務省の反対意見もあり招待を見送った。広島市立大の湯浅正恵教授は「松井一実市長の下で政府に追随する姿勢が顕著になっている。市は主体的に判断していない」と指摘した。 長崎市の鈴木吏朗市長は2日、「原爆の日」の9日に開く平和祈念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。被爆詩人福田須磨子の詩を引用して被爆の惨 状を訴えた上で、「核兵器を使ってはならない」という人道上の規範が大きく揺らぐ現状に危機感を表し、核保有国と「核の傘」の下にいる国に核廃絶に向けかじを切るよう求める。市によると、過去最多の101力国・地域が出席を表明している。 鈴木市長は記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻に触れる一方、6月時点の原案には記していたパレスチナ自治区ガザで戦闘を続けるイスラエルの国名は明示しないと明らかにした。「緊迫度を増す国際情勢への危機感を示す文脈の中で、限定的に国名を列挙するのではなく包括的に記載する」と説明した。 ![]() |
京都市教育委員会は、夏休みの学校閉鎖日に、市立小学校や幼稚園で飼育するウサギを特別に動物病院に預ける試みを始める。休日の餌やりや掃除を担ってきた教職員の負担軽減につなげる狙いで、全国でも珍しい取り組みだという。 教職員の年休取得を促すために市教委が設定した本年度の学校閉鎖日は8月7〜16日で、この間は原則、教職員が不在となる。ただ、学校ではウサギのほか、ハムスターやチャボなども飼っているために、閉鎖日も教員が世話に出てきたり、自宅に連れ帰ったりしている。 学校園での動物飼育は、生き物との触れ合いを通して子どもたちが命の尊さを実感できる利点があるものの、教職員の休日取得の壁となっている側面もあると知った市獣医師会が、市教委に動物の預かりを提案した。本年度は手始めに、市内78の小学校と幼稚園で計120匹飼育されているウサギの預かりを会員の病院で試行することになった。 預かりを希望したのは30校園の37匹で、市内15の動物病院が担当する。費用は1匹当たり1週間1万円ほどで、ペットホテルと比べて割安といい、市獣医師会が市教委から委託された学校飼育勧物の診療活動などの一環で行う。預かり期間や匹数は学校園によって異なるが、最大14日、各校1〜2匹が対象となる。 下京区の洛央小は6〜19日、ウサギ1匹を近くの動物病院に預ける。ウサギは休み時間に子どもたちがなでたり、餌をやりにきたりする人気者といい、鈴木宏紀校長(52)は「普段から休日に出て来ることはあるが、夏休みの閉鎖日は長い。動物病院で預かってもらえたら安心」と喜ぶ。教職員の負担も軽くなるとみる。市教委学校事務支援室は「ウサギの健康面に変化がなかったかなどを検証した上で、来年度以降の実施を検討していく」としている。 ![]() |