h2409
9月27日 思い込みに縛られない

 「男の子は泣いちや駄目」「女の子はピンク」など、無意識の思い込みや偏見は「アンコンシャスバイアス」と呼ばれる。社団法人「アンコンシャスバイアス研究所」(東京都港区)は8月、小学生がこうしたことに気づくためのイベントを都内で開催した。

 当日は小学生約300人が参加。「性別」「おいしさ」など六つのテーマに分かれた部屋で授業を受けた。

 「性別」の部屋では、化粧品メーカーの社員が「私の会社にピンクが好きな社員がいますが、男女どちらを思い浮かべますか」と質問。「かわいいから女の人」という意見が多かったが、実際は男性社員だと分かり、子どもたちは驚きの表情を浮かべた。

 日本の女性社長が1割程度しかいないことや、昔のランドセルは女子用が花や鳥、男子は野球少年の絵柄などが多かったことも教わり、「やりたいことにチャレンジしたり、好きな物を選べなかったりするのは変」という声が挙がった。

 「おいしさ」では、味に関するパズルで、チーズケーキを再現するには何と何を掛け合わせたらいいかを考えた。さまざまな食材が描かれたパズルを見ながらマシュマロやきな粉などを使う案が出るが、正解は豆腐とヨーグルト。参加者の1人は「豆腐でケーキ?」と目を丸くしていた。

 その他、アンコンシャスバイアスをテーマにしたかるた遊びをしながら思い込みについて意見交換したり、パリ五輪パラリンピック・ゴールボール女子の日本代表、安室早姫選手らが挑戦する楽しさを伝えたりした。

 小学6年生の女子児童は「はっとすることがいっぱいで面白かった。決めつけちやいけないんだなと思った」と振り返り、付き添った母親も「大人の方がもっと偏った考えをしがち。学びが多かった」と述べた。

 思い込みや偏見は、無意識に相手を傷つけたり、自分自身の可能性を狭めたりしてしまう。東京都が3月に公表した意識調査では、高校生約1万人のうち7割弱が「性別で向いている仕事と向いていない仕事かおる」と回答した。

 「子どもたちが思い込みに縛られ、自分たちで選択肢を狭めることがないよう、皆で意識を変えていかなければならない」と団体の守屋智敬代表理事は話している。


「アンコンシャスバイアス」は人権教育を進めるとされる学校でも大きな課題である。現在、京都新聞で旭川女子中学生自殺を扱った「私を知ってほしかった」が連載されている。小学校段階で自閉症スペクトラムと診断された広瀬さんは、中学校でも適切な環境に恵まれなかった。その中に、いわゆる「定型発達」を当たり前とするアンコンシャスバイアスが働いていたと思われる。広瀬さんの周りにいた教師や生徒はそのことに気づいていなかった。


9月27日 市教委 中学校給食28年度2学期から

 京都市教育委員会は26日、全員制の市立中学校給食を2028年度の2学期が始まる8月下旬から実施する計画を市議会委員会で明らかにした。

 市教委は、塔南高第1グラウンド跡地(南区)に給食センターを建設する方針で、設計や建設、運営業務を包括的に発注するPFI方式での事業者公募を予定している。学識者の委員会で公募事業者を審査した上で選定し、26年度から建設工事を始める見通し。

 調理は主に給食センターで行うが、センターから遠い左京区などの学校にも40分未満で配送するため民間調理場を活用する。今年7〜8月に実施した調査で2社が参入意向を示したといいう。

 市教委は市議会文教はぐくみ委員会で、給食センターで最大2万2千食、民間調理場で約5500食を調理すると説明した。地域の生産者や地元業者と連携し地産地消の献立を意識し、10品目の食物アレルギーに対応する専用エリアをセンターと調理場の双方に設ける方針も示していた。


「給食センター」での調理については前門川市政の方針をそのまま踏襲した形で、松井新市長の色は出ていない。少なくとも「自校調理」を実施た場合のメリット・デメリットを市民に分かりやすく説明すべきではないだろうか。「地産地消」を表明するならば大規模調理では相当難しいだろうから、「意識し」との表現を取り入れたのでは。


9月23日 府内 在住外国人7万5千人

 京都府内で暮らす外国人が2023年までの10年間で1・4倍の約7万5千人に増加した。技能実習生や留学生などの受け入れが進んでいるためで、ベトナムやネパ ールなどアジア圈からの来訪が目立つ。政府は27年度にも技能実習に代わる新たな受け入れ制度「育成就労」を始める方針で、府は外国人労働者のさらなる増加を見込み、日本語の学習支援や働きやすい職場づくりなどを後押しする。

 府国際課や府国際センター(京都市南区)によると、府内の外国人住民は2014年に5万1554人だったが、18年に6万人を超えた。新型コロナウイルス禍に伴 う留学生の減少などで20年、21年は減少したが、22年には再び増加に転じ、`23年には7万4664人となった。

 国籍別では、全国的に中国が最多となっているが、府内は「韓国・朝鮮」が29・8%(2万2269人)で長年最多を占めてきた。ただ、近年は8割を占める特別氷住者の在日韓国・朝鮮人が高齢化で亡くなったり、日本国籍を取得したりしたことで10年間で2割減った。次いで多いのは中国の1万9984人(構成比26・8%)で、留学生を中心に近年増加している。このペースで増えれば数年で「韓国・朝鮮」を抜く可能性がある。

 3番目に多いのはベトナム。10年前は千人に満たなかったが、10倍近い9350人(同12・5%)に増えた。事業所が多い府南部を中心に技能実習や、一定の技能が あり最長5年働ける「特定技能1号」での来日者が増えている。約千人が暮らす八幡市ではベトナム料理店や食材店が新たに出店している。4番目はネパールの3867人(同5・2%)で、10年前の約13倍に増加した。日本語学校に留学し、就労を目指す人が多いという。

 市町村別では、京都市が5万5434人と7割を占め、宇治市3443人、八幡市2555人と続く。出入国在留管理庁の統計では、外国人が千人以上暮らす全国444の市区町村のうち、17年からの5年間で外国人の増加率が高い自治体は熊本県菊池市に続き八幡市が2番目、木津川市が4番目に高い。人口に占める外国人の割合は府内では久御山町が6・7%と最も高い。

 住民の増加に伴い、働く人も増えている。厚生労働省の集計によると、23年10月時点で府内で働く外国人は2万8506人。産業別では製造業が29・4%と最多で、 宿泊業・飲食サービス業14・7%と続く。家族帯同で来日する外国人も増えており、文部科学省によると、日本語指導が必要な府内の外国籍の子どもは338人(23年5月時点)で、2年で74人増えた。

 19年6月、日本語教育推進法が施行され、日本語教育の推進が自治体の責務となったことを受け、府も同年12月、5ヵ年計画の「地域における日本語教育推進プラン」を策定した。本年度改定し、府内で31力所ある日本語教室の拡充や外国人従業員がいる企業との連携などを進める方針だ。


【インサイド】日本語習得 空白地解消急ぐ

 京都府内で暮らす外国人が増える中、受け入れ環境の整備が課題となっている。日本語教室は5年間で5教室増えたが、学習を手助けするボランティアが不足し、受け入れを断らざるを得ないケースも発生している。外国籍児童への日本語教育を行っているのは3市にとどまり、府は学習支援の充実を急ぐ考えだ。

 府内の日本語教室は2019年に計26教室(15市町)あったが、府が開設を支援したこともあり、計31教室(17市町)に増えた。井手町と宇治田原町でも開設に向けた準備が進む。府は今後、教室が1カ所もない向日市や与謝野町など7市町村の「空白地」解消に向けて開設を後押しする。オンラインを活用し、遠方でも教室に参加できる態勢づくりも目指す。

 文化庁の調査で府内のボランティアは497人(22年11月時点)。府などによると、従来は時間にゆとりのできた定年退職者が支えてきたが、最近は定年延長が進んだ影響もあり不足気味で、外国人が急増する八幡市など府南部では受け入れを断るケースもあるという。市町村などがボランティア養成講座を20年度からの4年間で99回開催し、400人が受講したが、日程が合わなかったり、いざボランティアを依頼すると身構えてしまったりする人が多く、実際に参加するのは、「半分もいない」(府国際センター)という。

 そこで教室関係者が期待を寄せるのが、企業との連携だ。外国人従業員が日本語を習得すれば、企業にもメリットがあるためだ。府は本年度、「日本語教育推進プラン」を改定し、外国人従業員への学習支援に取り組んだ従業員への手当支給などを企業に働きかける意向だ。

 ただ、技能実習生を受け入れている企業は受け入れまでに多くの費用を負担しており、「企業が単体で学習支援を行うのは経営的に難しい」(同センター)という。ベトナム人技能実習生を受け入れているある建築会社の社長は「そもそも数年で帰国するため、学習意欲がない。円安で母国への仕送りが目減りし、日本は就労先として選ばれなくなりつつある」と難しさを指摘する。

 外国籍児童に日本語教育を行っているのは、京都市、宇治市、八幡市。八幡市では本年度、小学校1校で専任教諭が20人を指導していたが、希望者の増加を受け、2学期から中学校で1カ所増殷した。他の市町村では教諭が日本語でゆっくり話したり、通訳機を使ったりと「できることをするしかない状態」(府教委担当者)という。

 府国際センターの近藤徳明事業課長は「コミュニケーションができると、日本人との衝突を避けることができ、地域づくりにもつながる。日本語教育は外国人のためだけにやっているのではない、ということを理解してほしいと話す。


日本語教育推進法は理念的な法律であり外国人に限定したものではないことから、不十分だとの指摘もある。特に日本語学習に対しては自治体任せということもあり、財政面からも普及していない現実があるようだ。「技能実習」という名目で労働力確保を確保しようとすることがこうした日本語教育の不十分さを招いているといえる。労働人口減少の傾向は解消されることはないことから「公正な移民社会」にふさわしい法制度を定めるよう求める声も大きくなっている。


9月23日 【社説】 若者の気候訴訟

 地球温暖化の被害を強く受ける世代の危機感を、重く受け止めねばなるまい。

 全国の15〜19歳の若者16人が先月、火力発電を手がける関西電力など10社を相手取り、二酸化炭素(CO2)排出削減を求めて名古屋地裁に提訴した。

 若者たちは、被告の大手電力会社やその発電会社はCO2の国内最大級の排出事業者で、産業革命前からの世界の気温上昇を1・5度未満に抑えるというパリ協定などの国際合意を順守する義務を負っているとして、大幅削減を求めている。

 子どもの頃から熱中症のリスクにさらされるなど、日常生活の制約を受けてきた。今後さらに過酷な影響を受けるだろう―。こう訴えている。

 気候変動を巡る訴訟は従来、火力発電所建設や運転の差し止めなどを周辺住民が求めて争われてきたが、全国規模の集団訴訟は初めてである。

 これまでは、過去の公害訴訟と違って原告側に明白な健康被害などが認められないなどの理由から、事実上の「門前払い」で退けられてきた。

 今回の訴訟はCO2排出がもたらす気候危機とその悪影響を、「人権問題」として位置付けて争うのが特徴だ。

 被告10社の排出対策は、パリ協定をはじめとする国際合意や国際ビジネス原則に対して不十分で、「民法上の不法行為」であると主張している。

 「1・5度未満」を達成するには、より厳しく2019年だで35年に65%削減するよう専門家パネルが求めている。

 重要なのは、これまでに排出された大量のCO2の累積が、気温上昇や災害を起こし、将来世代のエネルギー選択や生活様式、健康に不可逆的な影響を与えるという視点だろう。

 同様の訴訟ではすでにオランダで、19年に最高裁が「気候変動による悪影響は人権侵害」と認定し、21年には同国パーク地裁が石油大手シェルに対し「企業の義務は軽減されない」として、排出削減を命じた。

 今年4月にはスイスの住民が欧州人権裁判所に、スイス政府の気候変動対策の不十分さを訴えた裁判で、人権侵害が認められた。ドイツや韓国でも企業責任を認める判決が出ている。

 日本は30年に13年比でCO2などを47%削減するとしているが、達成できるか不透明な状況だ。再生可能エネルギーへの転換も遅れる。

 国の施策を言い訳に、企業は不作為を許される、という時代ではない。

 誰もが安定した気候の下で健康的に暮らす権利がある。若者たちの訴えは、先進国の大量排出のしわ寄せを受ける発展途上国の訴えと通じる。

 直接の利害を狭く捉えず、裁判所をはじめ社会全体で将来世代の訴えに耳を傾けて判断する必要がある。


「気候変動は、将来世代の人権侵害だ」「暑すぎることで、外で遊ぶことや運動会が制限されてきた」という原告の訴えは重く受け止めんければならない。とりわけ「外で遊ぶ」ができないという主張は子どもの人権を考える時のメルクマールとなる。 20日の「無償で太陽光発電装設置」で紹介した山本義隆氏の近著では、遠い過去に電力の地産地消があったことを「戦前の山村にあった電力改革のモデル」(『評論』2020年1月号)を引用して紹介している。電力の独占は当たり前のことではなく極めて政策的に行われてきたという指摘だ。


9月22日 気象庁 京都市 猛暑日・熱帯夜50日超

 今夏は、京都市や大津市の猛暑日と熱帯夜の日数が観測史上最多となるなど、京都府と滋賀県は過去にない猛暑となった。

 気象庁によると、20日午後6時現在、京都市の猛暑日は54日、熱帯夜は61日。猛暑日と熱帯夜がともに50日を超えたのは、全国の観測点で史上初だった。大津市は猛暑日44日、熱帯夜39日。近畿2府4県の府県庁所在地は、すべて猛暑日と熱帯夜の記録を更新した。

 高気圧の勢力が非常に強いという今夏の特徴に加え、長期的な地球温暖化が影響したとみられ、専門家は「気温上昇は終末期に近い状況。温室効果ガス排出を劇的に減らさなければ、さらに深刻な状況になる」と警鐘を鳴らす。   


【フォローアップ】温暖化進行「将来世代にツケ」

 今夏の京滋は、過去にない猛暑となった。猛暑日と熱帯夜の記録を更新したのは、京都市や大津市といった都市部だけではない。京滋17観測点のうち、猛暑日は京田 辺市や福知山市、長浜市など11地点、熱帯夜は舞鶴市や宮津市、彦根市など11地点で史上1位となった。

 気象庁は、今夏の猛暑について、ジェット気流が蛇行して上空高くまで高気圧に覆われ、暖気をもたらす太平洋高気圧の勢力も強かったと説明。また、高い海水温や長期的な地球温暖化も影響したと指摘する。

 温暖化の進行は、データで顕著に表れている。100年前(1924〜33年)、京都市の年平均猛暑日数は6・6日、彦根市は2・2日だった。熱帯夜の増加はさらに顕著だ。同期間の年平均は、京都市2日、彦根市1・3日で、今夏は約30倍になっている。

 熱中症搬送者も多い。消防庁によると、今年の熱中症搬送者数(4月29日〜9月15日)は、京都府で2268人、滋賀県で943人。17日は京都府に熱中症警戒アラートが発表され、9月になっても「運動は原則中止」とされる暑さが常態化している。

 地球温暖化は、現在どういう局面にあるのか。気候変動問題に詳しいNPO法人「気象ネットワーク」(京都市中京区)の浅岡美恵さんは「終末期に近い状況」と強い言葉で説明する。

 産業革命(1850〜1900年平均)に比べて地球の気温は約1・1度上昇した。パリ協定のもと、2021年のグラスゴー気候合意で、世界各国は今世紀末の 気温上昇を1・5度に抑える目標を掲げた。

 しかし、各国の二酸化炭素(CO2)排出削減は、目標に比べ大幅に遅れている。化石燃料を用いた発電から、再生可能エネルギーへの転換は進まない。「各国が猛烈 なスピードで対策しないと間に合わない。地球の気温が2度上昇すると、気候や生態系が破滅的な世界になる」と警鐘を鳴らす。

 1・5度の上昇でも、1次産業への影響は大きく、農産物や魚介類の収量が大幅に落ちる可能性がある。土木建設業など屋外業務は夏の日中は困難となり、経済活動 へのダメージが深刻化する。京都市で40度を超える日が珍しくなくなる可能性が高い。

 豪雨や台風、高潮など大規模災害のリスクも増す。2020年生まれの人は、1950年生まれに比べ、4〜7倍の災害遭遇リスクを抱えるといい、浅岡さんは「完 全に将来世代にツケを残す形」とする。

 私たちにできることは何か。「『冷房を使うと温暖化に悪影響』というジレンマはあるが、生命の危険がある猛暑下で冷房は必要になる。ただ、再エネの割合が高い 電力会社と契約し、太陽光発電を自宅の屋根に設置するなど、各家庭にできることはある。こまめな省エネも重要」などとアドバイスを送る。


今夏の異常な暑さは健康な人でも体に不調をきたすようなものだった。再エネの促進は政府の喫緊の課題であるはずだが、政治の腰は重い。ちなみにGoogle検索で戦争と地球温暖化の関連を検索してみるとウクライナとロシアの戦争では「避難民移動, 軍事による CO2 排出は,各々約 139 万 7,000 t,885 万 5,000 t との推定に対して,砲撃や爆撃による森 林・農地などの火災による CO2 排出が約 2376 万 4,000 t と桁が大きい。」とあった。これはオランダの年間排出量に匹敵する。加えて、イスラエルのパレスチナに対するジェノサイドを加えれば更に数字は大きくなる。そして、破壊したものを復興するという名目で行われる事業もさらに温室効果ガスを否出することになる。何のために戦っているのか!


9月21日 邦人男児刺殺 中国側「偶発的な事件」

【深?共同】中国広東省深?で日本人学校に登校中の男子児童(10)が刺殺された事件で、地元紙、深?特区報(電子版)は20日、警察が「偶発的な事件」と判断したと報じた。日本人を故意に狙った犯行ではないとの印象を広め、日中関係のさらなる悪化を避けたい思惑があるとみられる。

 犯行直後に拘束された容疑者の男は単独犯で、容疑を認めたという。在中国日本大使館によると、中国の孫衛東外務次官は19日「今回の事案は前科のある者による個別の事案」だと日本側に説明した。

 日本人学校の周辺では20日、監視カメラが増設された。中国当局には、日本側が要請した警備強化への対応をアピールする狙いがありそうだ。ただ日本側では容 疑者が日本人児童を狙ったとの見方が強まっている。制服で登校する地元児童と違って私服の日本人児童は容易に見分けが付くためだ。政府関係者は、男児の家族と容疑者は面識がないとみており、個人的な恨みが動機の可能性も低そうだ。

 事件が起きた18日は満州事変の発端となった柳条湖事件から93年で、反日感情が高まっていた。

 日本人学校には20日までに千を超える花束が贈られた。インターネット上では事件に関する反日的な書き込みも少なくないが、花束のほとんどは中国人からで、哀悼の意を示す人が後を絶たない。


【続報22日】現場で無抵抗拘束

 中国広東省深?で日本人学校に登校中の男子児童(10)が刺殺された事件で、容疑者の男が犯行現場にとどまり、無抵抗な状態で身柄を拘束されたことが、21日までに目撃者の証言などで分かった。

 事件が起きた18日は満州事変の発端となった柳条洲事件から93年に当たり、反日感情が高まっていたことなどから日本人を狙った犯行との見方が出ている。目撃者によると男は無言で、反日スローガンなどを叫ぶことはなかった。歩道に倒れていた男児から数メートルの場所で「ぼうぜんとした様子で立ち尽くしていた」という。



9月20日 【インサイド】 日本人学校“愛国”の標的に

 中国広東省深川で男に襲われた日本人学校の男子児童が命を落とした。日本人学校は以前から中国の交流サイト(SNS)で愛国主義者の攻撃対象となっていたが、日米欧と対立を深める習近平指導部は事実上黙認。中国政府が繰り返す「外国人の安全を守る」約束は果たされず、邦人社会は不信感を募らせている。        

 「中国人として恥ずかしい」。男児の死亡が伝えられた19日。通っていた深?の日本人学校前に花を手向ける地元住民が続々と訪れた。白い花を手にした50代男性は犯罪行為を非難し、哀悼の意を示した。並べられた花束には「天国に暴力がありませんように」などのメッセージが添えられていた。

 首都北京の日本人学校周辺では朝から警備体制が強化され、十数人の警察官らが目を光らせていた。。子どもが通学バスに乗車するのを見届けた母親は「いつ襲われるか分からず、短時間でも目が離せない」と嘆く。

 「国家の安全」を重視する習指導部は近年、スパイ行為を摘発するための通報を奨励する運動を展開。これに伴い、中国のSNSでは日本人学校を“スパイの拠点”などと主張する根拠のない投稿が相次いでいた。

 「日本人学校を排除せよ」「日本鬼子(日本人の蔑称)の学校」といった攻撃的な書き込みがあふれる。国内の政権批判の言論は厳しく取り締まる当局も、日本を標的とするこれらの投稿は放置。景気低迷が長引く中、不満のはけ口として外国批判を黙認している可能性がある。

 昨年8月の東京電力福島第1原発処理水の海洋放出開始後には山東省青島の日本人学校が投石の被害を受け、江蘇省の蘇州校には複数の卵が投げ込まれた。今年6月には蘇州校のスクールバスを待っていた母子を男が襲撃。攻撃はSNSにとどまらず、現実の世界でもエスカレートしていた。

 幼い子どもが標的となった惨事に、邦人社会の動揺は収まらない。

 「極めて深刻」「極めて遺憾」−。中国に進出する日系企業でつくる中国日本商会は男児死亡を受けたコメントで「極めて」を繰り返し、日中両政府に邦人の安全確保を求めた。金杉憲治駐中国大使は慌ただしく深?に入り、北京の日本大使館は日系企業幹部を集め緊急会合を開いた。

 日本政府や企業関係者らは巨大市場での事業継続と邦人の安全確保の両立という難題に直面。中国駐在を希望する日本人は減少傾向にあり、製造業企業の幹部は今回の事件で「赴任希望者はますます減る」と影響を懸念する。

 北京で働く日系自動車部品メーカー社員は「来春に家族を呼び寄せるつもりだったが、こんな社会状況では考え直さざるを得ない」と吐露した。


痛ましい事件としか言いようがない。こうした事件が再発しないように望みたい。一方で、中国ヘイトが日本で広がることへの懸念がある。確かに犯人は「中国人」だろうけれども、それは国家を代表したものではないことも事実。様々な形で「国」を背負う人は大勢いるが、その犠牲になっている事実も見逃してはいけない。日本での中国ヘイトが反中国的行動として結晶することがないように、一層の外交努力が問われる。このことがもっとも重要な「国防」であろう。


9月20日 【エコトレンド】 無償で太陽光発電設置

 発電設備の事業者らが無償で太陽光発電システムなどの設置・維持管理を担う電力販売契約(PPA)サービスが広がっている。利用者は初期投資が不要で再生可 能エネルギーを導入できる利点があり、企業向けだけでなく、家庭向けにも普及を図っている。

 オムロンの子会社オムロンソーシアルソリューションズ(東京)は今月、一戸建て住宅 向けにPPAサービスを始めた。太陽光パネルや自社製の蓄電池などを組み合わせた発電システムを設置し、15年後に無償で譲渡する。システムはその後も所有者が使用できる。

 利用者は毎月、定額のサービス料を負担し、雨天などに伴う発電不足分の費用を電力会社に追加で支払う。システムの稼働状況は遠隔で監視され、修理費などは不要という。同社は利用者からサービス料を受け取るとともに、自家消費分を除いた再エネを売電し、投資分を回収する。

 同社によると、「災害対応の観点から太陽光発電に対する関心は高い」が、設置費などの初期費用がかさむことから導入をためらう人が多いという。システムを無償で設置する事業モデルの引き合いは強いとみて、今後3年で契約を1万戸に増やす目標を掲げる。

 京セラも、自社の太陽光パネルと蓄電システムを使った一戸建て住宅向けのPPAサービスを昨秋スタートしており、2万戸の契約を目指している。

 調査会社の富士経済 (東京)は、PPAサービスの市場が40年度に現在の7倍を超える4100億円まで成長すると予測する。

 全国では新築の一戸建て住宅に太陽光発電システムの設置を義務づける動きも広がる。まとまった用地などを持つ企業ではすでに導入が進んでいるため、今後は家庭向けのPPAサービスが太陽光発電ビジネスの主戦場となりそうだ。


PPAサービス」を検索すると多くの企業や個人事業者のサイトが見つかる。原発再稼働、新設などの議論からは程遠いと思われるが、こうした方向に竿さすような政策を実行できる政府を望みたい。しかし、自民、立民の党首選挙で「原発ゼロ」をあげる候補者はいない。確かに廃炉に向けた技術を蓄積するために「すぐ」にはゼロにはならないだろうが、政策ビジョンとして「原発ゼロ」をあげる政党の出現を求めたい。
元東大全共闘議長の山本義隆氏の近著『核燃料サイクルという迷宮――核ナショナリズムがもたらしたもの』は、改めて核と人類が共存できないものであることを教えている。氏は、核技術は誕生から現在まですべて軍事であり「未完」の技術だとしている。福島第一原発の自己も起こるべくして起こったものとの批判を展開している。


9月19日 府教育長 京都公立高入試2月下旬

 京都府内の公立高入試の制度改革について、前川明範府教育長は18日、2027年度入学から前期選抜と中期選抜を一本化して2月中下旬に実施する方針を正式表明した。府議会代表質問で答弁した。今後、実施方法などの詳細を検討し、本年度内に公表する。

 現在の公立高入試は、2月中旬に前期選抜、3月上旬に中期選抜、同月下旬に後期選抜がある。前期選抜では、学力試験のほか、面接や小論文、実技などを課して多元的な尺度で評価するのが特徴で、志望できるのは1校のみ。中期は、5教科の学力試験が中心で、志望先を最大3校選択できる。定員割れが生じた一部の学校が後期選抜を行う。

 前川教育長は、公立高入試改革の検討状況を問う自民党の兎本和久議員の質問に対する答弁で、新制度については「(前期選抜の)多元的な評価尺度による選抜や、(中期選抜の)セーフティーネットとしての複数校志願制度による選抜制度を継承しつつ、前期・中期を一本化する」と述べた。


【インサイド】生徒・教員の負担軽減 卒業までの過ごし方課題

 京都府内の公立高入試は現在の中学1年生の受験時から、前期選抜と中期選抜が一本化される。教育現場の関係者からは、生徒や教員の負担軽減につながるとして好意的な意見が多く聞かれる一方、選抜時期が早まることで中学校卒業までの過ごし方が課題になるとの指摘もあった。

 「今の入試は複雑。前期で合格する生徒は少なく、ほとんどの生徒が中期も受けるが、試験内容や教科数が違うので指導が難しかった。前期で不合格になつた子が中期を受けずに私学に流れてしまう側面もあった」。進路指導担当の経験がある京都市立中の40代教頭は現在の入試制度の問題点を挙げた上で、今回の一本化を歓迎する。

 受験生を受け入れる高校側からも肯定的な声が上がる。京都市内の公立高校長は「試験期間は高校生が登校できず、教育活動が制限される。採点業務や会場設営の作業にも労力が要る。中学生の人生がかかっている試験を安全安心に実施するために神経をすり減らしている」と打ち明け、前期と中期の集約にはメリットがあるとの立場だ。

 一本化後の入試は2月中下旬に実施され、現在の中期選抜より半月程度早まる。丹波地域の中学教頭は「早く受験が終わると卒業式まで空白期間が生じる。生徒たちが気を抜かずに授業に臨めるかが心配だ。現在の入試制度はチャンスが多く良かった」と話した。

 公立高の入試一本化は全国的な傾向でもある。府教委は昨年12月に策定した「魅力ある府立高校づくり推進基本計画」に入試制度の見直しを盛り込み、中学や高校の代表者、京都市教委と協議を重ねてきた。滋賀県は2026年度入学から、2月上旬に実施してきた推薦や特色などの入試と3月上旬の一般入試を集約し、2月の同時期に実施する新入試制度をすでに決めている。

 入試日程の集約により、複数の種類があった学科試験にも変更があるのかどうかが注目される。高い進学実績がある京都市立の堀川高や西京高、府立の嵯峨野高などの専門学科は、学校独自の試験で生徒の実力を測ってきたからだ。

 進学塾「京進」の入試担当者は「京都と滋賀の公立高普通科は同じ学校を2回受験できる仕組みで、1回目に多くの不合格者を出した。一本化で解消されるが、学習の高みの目指し方が課題になるのではないか」と指摘。府教委は前・中期選抜の一本化後も、複数の試験で合否判定をする意向を示しているが、「専門学科と普通科の試験を共通にして、独自試験をやめてしまうとすればもったいない。専門学科の独自試験は中学生の学びの刺激になっている」と語った。



9月18日 府・市教委 公立高入試前・中期一本化へ

 京都府、京都市の両教育委員会は、府内の公立高入試について2027年度入学から、現在の前期選抜と中期選抜を一本化した選抜を2月に実施する方針を固めたことが17日、分かった。現在の中学1年生からが対象となる。受験期間の短縮により、中学生の負担軽減を図る。

 現在、府内公立高入試では、学力検査や面接、作文などを課す前期選抜が2月中旬、学力検査が中心の中期選抜が3月上旬にそれぞれ実施されている。このほか、定員割れとなった一部の学校では3月下旬の後期選抜がある。

 これら最大3回の受験機会の設定による入試期間の長期化で、生徒だけでなく、中学側も進路指導、高校側も会場設定などの業務が負担となっている。また、現在の入試日程では、受験の早期終了を目指して前期に受験者が集中。普通科の前期枠の定員は全体の3割程度と少ないため、大量の不合格者を生み出すことや、合格者が既に合格発表を終えている私立高に流れることも課題だった。

 新選抜では、特定の高校に志願者が集まる可能性もあることから、志望校を最大3校選択できる現在の中期選抜のような方式を導入するとみられる。後期選抜は残す方針。

 京都府の公立高入試は、受験生が自由に志望校を選択できる「単独選抜」へ2014年度に全面移行した。現行制度は10年余りで幕を閉じることになる。公立高の主な入試日程の一本化は全国的に広がっている。


京都の公立高校入試は迷走の連続と評してもいいくらい、不明解な改革が続く。現行の制度は、国公立大への進学を最優先した形のもので、多くの高校生に「負担」を強いてきたのも事実。ただ、新しい制度がそれの是正を名目としているのだが、少子化の中での「青田買い」の意味合いを強く持っているように見えるのは気がかり。


9月18日 市教委 不祥事多発で校園長会

 京都市立学校教員の不祥事が相次いでいることを受け、京都市教育委員会は17日、市総合教育センター(下京区)で緊急の校園長会を開き、稲田新五教育長が「信頼していた教員の不法行為は子どもたちの大人への信頼感を地に落とす」として根絶を呼びかけた。

 16日に市立小中教諭(27)が傷害容疑で逮捕されたことを受けて実施し、幼稚園長や小中高校長、事務局幹部ら約330人が出席した。6月には市立小の元教諭=懲戒免職=が不同意わいせつと不同意性交未遂の疑いで逮捕され、8月には市立中の教諭が酒気帯び運転で物損事故を起こした。

 稲田教育長は、いずれも飲酒を伴う事件事故だったことを挙げ「酒はストレス緩和などの効果があるが、理性を低下させる危険なものでもある。情けないことだが、特に若い人には酒の飲み方を教えて」などと訓示。「子どもから信頼され、模範となる行動に努めるよう指示を徹底してほしい」と強調した。


教員の不祥事はこれまでにもあった。特段そのことでの教員の件数が多いとも思えないが、緊急の校園長会開催は発表された事案が氷山に一角だという認識があるのか?採用試験の競争倍率の低下が質の低下を招くとの指摘があるが、教職への執着も同時に低下しているのかもしれない。


9月16日 文科省 オリンピアンを先生に

 文部科学省が、オリンピアンやパラリンピアンらを教員として採用するための新たな促進策を始めることが15日までに関係者への取材で分かった。「特別免許」を与えて公立学校に配置する場合は、その分の教員定数を増やすほか、教職に関心があるアスリートのリストを作成する。来年度からの採用を想定しており、13日に都道府県教育委員会などに通知する。

 特別免許は、多様な教員の受け入れを目的に、高い専門知識を持つ社会人に教科を限定した免許を与える制度。アスリートが保健体育や部活動を担当することなどを想定しているが、これまで五輪経験者らの採用は広がっていなかった。

 学校に配置する場合、元々の定数内でやりくりする必要があることなどが要因とみられ、教育現場から改善を求める声が上がっていた。

 促進策では、五輪やパラ、聴覚障害者の国際スポーツ大会「デブリンピック」の出場経験があり、教科指導や生徒指導など教職の基礎的な知識を学ぶオンライン研修を受講した人を配置する学校には、定数を増やす。


多様な人材を学校に配置することは重要なことには違いない。定数改善への秘策なのかどうかは分からないが、なぜスポーツ経験者でないといけないのか理解できない。受け入れた学校は「重荷」と感じるかもしれない。


9月14日 旭川中2自殺 いじめ防止法の理解欠如

 北海道旭川市の中学2年広瀬爽彩さん=当時(14)=がいじめを受け自殺した問題で、市は13日、いじめと自殺の因果関係を認めた再調査委員会の報告書を公表した。「被害者が心身の苦痛を感じる行為」をいじめとする「いじめ防止対策推進法」の定義の理解が学校関係者に欠けていたと分析し、心身の苦痛を正しく評価するよう求めた。

 また同法は各学校に「いじめ防止対策組織」の設置を義務付けているが、現場では多忙を理由に明らかに形骸化していると指摘。全国各地の教育委員会に対策組織の状況を調査し、適切に運用するよう提言した。

 報告書によると、広瀬さんは2019年の中学入学後からクラスメートの悪口や先輩からの性的要求など、7件のいじめを受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。広瀬さんの交流サイト(SNS)への投稿の詳細な分析などから、恐怖心や自尊感情の低下などが継続し「いじめがなければ自殺は起こらなかった」と結論付けた。

 広瀬さんには自閉スペクトラム症(ASD)などの特性があり、それに起因する言動のためクラスで孤立し、先輩との関係に居場所を求めたと分析。学校は、他の生徒とのトラブルを把握していたが、加害生徒側の問題行動との認識にとどまり、広瀬さんが心身の苦痛を感じていたことを正しく評価しなかったとした。

 広瀬さんの学校では、対策組織の定期的な開催が確認できず、実効性がなかったと断じた。

 今津寛介市長は、再調査結果を報告した市議会で「娘が抱えていた特性が身近にあり、いじめはどこの地域でも起こり得ることだと感じていただき、同じことが繰り返されないよう役立ててほしい」とする母親のコメントを読み上げた。

 公表された報告書は約370ページで、いじめ行為も具体的に記述された。詳細な発表となった理由について、母親は、臆測や誹膀中傷が一船市民にも及んだためと説明。「今回の公表範囲は私たちの事案に限った事であると認識していただきたい」とコメントしている。


再調査委報告要旨

 広瀬爽彩さんがいじめを受け自殺した問題を巡り、北海道旭川市が13日公表した再調査委員会報告書の要旨は次の通り。

  【再調査の経緯】

 2021年3月、広瀬さんの遺体が市内の公園で発見された。6月以降、市いじめ防止等対策誉員会が調査し、22年9月、市教育委員会に報告書を提出。遺族側が「調査が不十分」と訴え、10月に再調査実施が決定された。

  【事実関係】

 広瀬さんは17年、自閉スペクトラム症(ASD)と診断された。

 19年4月、中学に入学。当初、クラス役員に立候補するなど意欲を持っていたが、クラスの生徒に陰口を言われたり、避けられたりするようになった。

 6月、入学直後に知り合い、オンライングームで一緒に遊ぶようになった先輩らに性的な動画を送るよう求められたり、自慰行為をさせられたりした。同22日市内の公園で先輩らにからかわれた後に「死にたい」と言って川に入水。捜しに来た中学教諭に救助され、入院した。

 8月に退院後、2学期から別の市立中に転校。特別支援学級に所属し、次第に欠席することが増えた。12月、病院受診時に「学校に行くのが怖くて不登校になっている」と訴えた。

 20年に入ると家にこもりがちになり、21年2月13日、家を出てから消息不明となり、3月23日、市内の公園から遺体で発見された。

  【いじめの認定】

 広瀬さんは「1人でいること」への恐怖感から「先輩たち」との関係を構築し、維持せざるを得なくなっていった。

 @自分たちと広瀬さんの違いを略語・隠語で言ったり、行動をまねして笑いを取ったりしたAジュースなどをおごらせたB公園で自慰行為をさせた―など、生徒らによる七つの行為をいじめと認定。

  【学校や市教委などの対応】

 いじめ防止対策推進法は、相手に対して心身の苦痛を与える行為をいじめと定義している。学校の調査は、この点の対応がされていなかった。

  【自殺の原因】

 広瀬さんは性的被害を伴ういじめによって心的外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患(りかん)し、自殺に至るまで症状は軽減しなかった。恐怖心や自尊感情の低下などが長期にわたって続いており、いじめが存在しなければ自殺は起こらなかった。       。

  【再発防止の提言】

 心身の苦痛を正しく評価することが学校現場に求められる。早期発見や対処に重要な役割が期待される「学校いじめ防止対策組織」が形骸化している例がみられ、教育委員会は運用状況を調査する必要がある。反省を生かし、積極的にいじめ防止対策に努めてこそ、具体的で実効性のある施策が現実のものとなる。


【池坊短大桶谷学長】つぶさな背景調査を評価

 今回の報告書は、被害を受けた子どもがなぜ苦痛を感じたのか、背景や環境をしっかりと調べることが必要だと示した。障害を背景にクラスになじめなかった広瀬さんに疎外感を抱かせた点をいじめに認定したことも評価したい。クラス外に居場所を求めていたという広瀬さんが追い詰められていった状況が明らかになった。広瀬さんの人間関係やクラスで置かれていた状況などをつぶさに調査した画期的な報告書であり、全国の同種事案でのモデルにしてほしい。


被疑者は小学校5年で「知的な遅れは見られないが、生活面では場に合わない発言をしたり、家庭で反抗的な行動をとったりするすることがある。また、最近は、自分と周りとの違いにも気づき始めていることから、さらに年齢が進むにしたがって課題が大きくなっていく可能性が考えられる。交流学習での学習を進めながら、校内の情緒学級にて、実際の友だちや教師とのやりとりを学んだり、社会性を身につけるための指導を受けたりすることが望ましい」との教育相談の所見を受け、特別支援学級に入級したとある。なんとも差別的あるいは無理解の所見と言わねばならない。被害者の自殺の遠因はこの所見にあるのかもしれない。(13日コメント再掲)


9月14日 自然エネルギー財団 再生エネ80% 35年度に可能

 日本は2035年度に電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を最大80%に増やせるとの分析結果を、シンクタンク「自然エネルギー財団」が13日までにまとめた。発電した電気をためる蓄電池の大量導入や送電網の整備によって、原発や石炭火力発電を全廃しても、製造業の生産規模の維持や、データセンターなどの産業誘致に必要な電力を賄えるとする。

 22年度の再生エネの割合は約22%。政府は次期エネルギー基本計画で、電力の需要増を想定し原発活用を明記する方針だ。一方、日本で事業展開する国内外の企業には、全電力を再生エネで賄おうとする動きもある。財団は「政府が再生エネ拡大を明確に打ち出せば、安心して操業計画を立てられる」とした。

 分析は沖縄を除ぐ全国を対象に、原発や石炭火力を使わずに35年度に再生エネ80%を実現できるかどうかをシミュレーションした。新たな産業が拡大するがエネルギー利用の効率化も進むとして、電力需要はほぼ横ばいと想定した。

 実現には、再生エネの設備容量を22年度の約1億5千万キロワットから約5億キロワットに強化する必要がある。蓄電池は180万キロワットから7200万キロワットに大幅に増やす。夏は太陽光の余った電力を蓄電池にためて夕方以降に使うなど工夫。地域間で電力を融通する連系線は北海道と東京間を中心に強化し、「計算上は安定的に電力供給できる」と結論付けた。残り20%は温室効果ガスの排出が比較的少ない天然ガス火力で賄う。


環境相再エネ偏重に当たらず

 伊藤信太郎環境相は13日の記者会見で、現行のエネルギー基本計画について、再生可能エネルギー偏重に当たらないとの認識を示した。自民党総裁選に立候補した小林鷹之前経済安全保障担当相が12日の演説会で、現行計画が「再エネに偏り過ぎている」と発言したことを問われて述べた。

 伊藤氏は、2030年度に電源構成の36〜38%を再エネにするとした現行計画を「現時点のベストミックスでエネルギーの構成を考えている」と指摘。「再エネを最大化していくことが時代の要請で、日本の取るべき道だ」とも述べた。小林氏は12日の演説会で、原発の再稼働や新増設に取り組む考えを示して「火力発電を含めバランスの取れた電源構成をつくる」と話した。


看板の書き換えだけの「自民党総裁選挙」。候補者の誰ひとりとして「脱原発」を表明する人はいない。「失われた30年」を更に延長するような議論ばかり。まさにパラダイムの変換が求められる時代なのだが。


9月14日 私学振興・共済事業団 定員割れ4年制私大59%に拡大

 今春入学者が定員割れした四年制の私立大は59・2%に当たる354校で、前年度より5・9ポイント(34校)増えたことが13日、日本私立学校振興・共済事業団の 2024年度調査で分かった。少子化が主な要因で、記録が残る1989年度以降で最高。文部科学省は経営が厳しい大学の再編策の検討を進めており、今後撤退が加速する可能性がある。

 私大の定員全体に占める入学者の割合を示す定員充足率は、前年度より1・40ポイント下がり98・19%で過去最低。全体の定員が1239人増えた一方、18歳人口は 3万3965人減となり、総入学者は5869人減った。事業団は18歳人口の減少幅が大きくなったことや、大規模大への学生集中などが定員割れ拡大につながったと分析している。

 規模別では、定員3千人以上の大学の充足率は前年度から0.05ポイント上昇して103・71%になるなど、千人以上の区分で充足率が100%を超えた。一方、千 人未満の区分は70〜90%台にとどまり、規模が小さくなるほど充足率が下がる傾向がみられた。

 地域別では、東京や大阪・京都とその周辺、愛知を合わせた三大都市圈の充足率が1・50ポイント減の99・87%だった。100%を下回るのはデータのある12年度以 降で初。その他の地域は1・06ポイント減の92・48%で、地方での減少が目立った。

 私立短大は、272校のうち定員割れは91・5%の249校。定員充足率は70・08%だった。

 急速な少子化を踏まえた大学の在り方を議論する中教審特別部会は、8月に示した中間まとめで、定員割れや不採算の状態が続く大学への縮小や撤退の指導を強化するとした。年度内の答申に向け、議論が進んでいる。

 調査は募集停止中などを除く四年制私大598校の5月1日時点でのデータを集計した。



9月13日 旭川市 「被害者の苦痛」理解を

 北海道旭川市で2021年、いじめを受けた中学2年広瀬爽彩さん=当時(14)=が自殺した問題で、市は13日、いじめと自殺の因果関係を認めた再調査委員会の報告書を公表した。再発防止策として、行為の性質や加害者の認識ではなく「被害者が心身の苦痛を感じる行為」といういじめの定義を正しく理解し、対応に当たることが重要だと強調した。

 今津筧介市長は、再調査結果を報告した市議会で「娘が抱えていた特性が身近にあり、いじめはどこの地域でも起こり得ることだと感じていただき、今後同じことが繰り返されないよう、同じ悩みを抱える方にも役立ててほしい」とする母親のコメントを読み上げた。

 報告書によると、広瀬さんには自閉スペクトラム症(ASD)などの特性があった。19年の中学入学後から性的ないじめを含め、クラス内外で計7件のいじめを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。恐怖心や自尊感情の低下などが亡くなる直前まで継続しており「いじめが存在しなければ自殺は起こらなかった」と結論付けた。

 市が設置した再調査委は6月、調査結果の概要を説明し、今月1日に市長に報告書を提出。市は公表版の作成を進めていた。公表版は約370ぎで、市のホームページで公開している。


被疑者は小学校5年で「知的な遅れは見られないが、生活面では場に合わない発言をしたり、家庭で反抗的な行動をとったりするすることがある。また、最近は、自分と周りとの違いにも気づき始めていることから、さらに年齢が進むにしたがって課題が大きくなっていく可能性が考えられる。交流学習での学習を進めながら、校内の情緒学級にて、実際の友だちや教師とのやりとりを学んだり、社会性を身につけるための指導を受けたりすることが望ましい」との教育相談の所見を受け、特別支援学級に入級したとある。なんとも差別的あるいは無理解の所見と言わねばならない。被害者の自殺の遠因はこの所見にあるのかもしれない。


9月12日 大阪公立高 入試前倒し検討

 大阪府が進める高校授業料の完全無償化制度を巡り、「公立離れ」が生じているとして公立高校側が私立高校への対抗策に乗り出している。府教育委員会は一般入試日程の前倒しを検討。私学団体は「一方的だ」と反発し、同様に繰り上げる構えを見せる。近隣府県は一連の動きを警戒。生徒の「争奪戦」過熱への懸念も出ている。

 府は2024年度から、所得制限のない授業料の無償化を導入した。今春の入試で私立のみに応募した生徒の比率を表す「専願率」は31・64%。過去20年で初めて3割を超えた。一方で公立の志願者数は、現行の入試制度となった16年度以降で最少。私学入気の高まりを反映した。

 公立の半数近くが定員割れした事態を踏まえ、府教委の諮問機関は8月、入試制度の改革案をまとめた。例年3月上旬の一般入試を数週間程度早め、別の時期に実施していた特別入試と一本化する内容。諮問機関は期待される効果を「高校進学までの準備期間確保」と説明するものの、志願者確保の本音が透ける。

 改革案は早ければ26年度入試からの適用を目指す。これについて、大阪私立中学校高等学校連合会の草島葉子会長は「一方的な改革は混乱が生じる」と強く批判。志願者減の要因は少子化で、条件は同じだとして、2月10日の入試をさらに早める姿勢を示している。

 一連の動きに近畿の学校関係者は神経をとがらせる。京都、大阪、兵庫3府県の私立は慣例として試験日程をそろえてきたが「大阪が単独行動を取れば、ハレーションは避けられない」(兵庫の私学団体関係者)。奈良県教委の担当者も「私立日程まで変わるなら話は別だ」と警戒感を示す。

 生徒を送り出す側も不安を隠さない。大阪市立我孫子甲の村田光直校長は、入試前倒しで入学までの期間が延びると、学習意欲の低下だけでなく、素行の悪化にもつながりうると指摘。「生徒の取り合いではなく、教育内容や魅力向上のための改革を進めてほしい」と訴えた。


大阪府が進めてた「高校無償化」だが、その弊害を是正することはなく「入試日程」で辻褄を合わせようとするのは納得できないだろう。関西・大阪万博をはじめ大阪維新の会の進める政策の多くが破綻し始めていることは、故無きことではない。それとは別に、私学と公立の住み分けがこれまでなんとなく保たれてきたが、少子化の時代になって「子どもの争奪戦」化しているのは公教育体制(私学も含んでのこと)の歪みが生じていると考えるのが正しく、双方に基本的な議論が求められている。


9月12日 学校体育館に空調 加速

 京都府と滋賀県内の市町村で公立小中学校の体育館に冷暖房設備を整備する動きが進んでいる。京都新聞社の取材によると、設置済みは小中学校、義務教育学校計8 19校のうち、わずか20校にとどまるが、2025年度末までに少なくとも126校に増える見込みだ。近年の猛暑の影響に加え、災害時の避難所となる体育館の機能強化を図りたい行政サイドの意向が背景にある。

 文部科学省の22年度の調査では、全国の小中学校での空調設備の設置率は、普通教室が95・7%、特別教室が61・4%に対し、体育館は11・9%と遅れている。

 京都府と滋賀県の計43市町・広域連合の担当者に聞き取った結果、6割にあたる27市町が、既に設置を進めているか、設置の方向で検討中、と回答した。このうち 最も先行しているのは八幡市で19年度から小中で順次設置を進めており、残り2小学校の工事も本年度中に完了する。草津市も8月末までに5校で取り付けを完了し、年度末には全20校の設置を終える予定。

 設置を進める方向で検討している精華町は「全ての小中学校を対象に考えており、本年度に基本計画をつくる」、愛荘町は「小中学校で26年度から複数年かけて設置 していきたい」などとした。

 可否を含めて検討中としたのは、福知山市や相楽東部広域連合(笠置町、和束町、南山城村)、栗東市など5市町・広域連合だった。府・県立高、特別支援学校を所管する京都府や滋賀県も同様の回答だった。゛

 一方で、検討していない、計画はないと答えたのは、10市町あった。「職員室や特別教室のエアコンの老朽化がひどい」(彦根市)「トイレ洋式化が先」(宮津市)「学校の補修や改修に取り組む」(与謝野町)など、優先順位が高くないという理由が目立った。

 1校当たり7千万〜8千万円かかるとされる設置費は各自治体の大きな負担となるが、うち7割が地方交付税として国から返ってくる「緊急防災・減災事業債」の活 用が可能なことも設置を後押ししている。


9月に入っての猛暑は教育環境としては適切なものではない。また、非難環境としてもだろう。体育館の空調設備設置は急がれる課題ではあるが、大規模な自治体では多額の設置費用が必要になりおいそれとはいかない。改めて、自治体の適正規模が問われる。Google検索では「その適正規模は人口15万人から20万人、もっと細かく言うと、人口17万人ぐ らいが一番行財政効率がよいのだよというふうな結果が出ているようです」と表示された。


9月11日 東大 授業料10万7千円値上げ

 東大は10日、2025年度の学部入学者から年間授業料を2割に当たる約10万7千円引き上げ、64万2960円とする方針を明らかにした。合わせて授業料減免の支援策も拡充する。値上げ社05年度以来20年ぶり。一部の学生や教員らは反対していた。国の交付金減少で厳しい財政状況の国立大は多い。首都圏の一部大学は既に実施しており、同様の動きが地方大にも波及するかが焦点。

 藤井輝夫学長は記者会見で「財源の強化など学びの環境の整備を進めてきたが、グローバルな競争が非常に激しさを増している。教育学習環境の改善は待ったなしだ」と理由を説明。28年度末時点で13億5千万円の増収を見込んでおり、施設の改修やバリアフリーの強化に充てるとした。

 東大によると、在学生は対象外。大学院は修士課程で29年度入学者から約10万7千円上げる一方、博士課程は据え置く。学内手続きを経て、9月中には正式決定する予定。

 経済的支援策は、授業料全額免除の対象を現在の「世帯収入400万円以下の学部生」から「同600万円以下の学部と修士課程の学生」に拡大。「同600万円超〜900万円以下の学生」についても、状況に応じて一部免除する。

 国立大授業料は文部科学省令で「標準額」が定められており、05年度に1万5千円上がって53万5800円となって以降変わっていない。大学の判断で2割まで増額でき、その後千葉大や一橋大など首都圏の7校が引き上げたものの、東大を含め多くの大学は標準額のままだ。

 04年の国立大法人化で、国が運営費交付金を配分する仕組みが導入された。


京滋国公立8大学「検討せず」

 京都新聞社が京都と滋賀の国公立全10大学に6〜7月に実施したアンケートでは、京都大など8大学が「学生の負担増を避けたい」などを理由に授業料値上げの検討はしていないとの回答だった。滋賀大と滋賀医科大は回答しなかった。滋賀大はその後、学部の値上げは検討せず、「個別指導の側面が強い」として大学院で値上げを検討する方針を決めた。


【インサイド】法人化20年、苦しい懐

 東大が授業料の約10万7千円値上げ方針を公表した。背景には、法人化から20年が経過し、交付金減額が続くことによる経営の逼迫がある。学生らは「受益者負担」の強化に反発、同様に懐事情の苦しい他大学は影響を注視する。研究力低下など国立大を巡る課題は山積しており、国は将来像に関する議論を加速させる。

 「(学生との)対話や、教員とも個別にさまざまな相談や議論をして、しっかり時間をかけてきた」。10日夜、記者会見した東大の藤井輝夫学長はこう訴え、値上げに理解を求めた。

 国立大が人件費などに充てる運営費交付金は、国の財政難などを理由に縮小傾向が続く。2024年度は総額1兆784億円で、法人化した04年度に比べ13%減。東大は900億円以上あった交付金が最近では800億円台前半となっている。文部科学省は、寄付金や企業との共同研究などを通じた資金確保を促してきたものの、大幅な収益増につながるモデル構築には至っていない。国立大学協会は6月、財務状況を「もう限界です」と訴える異例の声明を出した。

 学生からは反対の声が上がる。東大が6月に開いた学長とのオンライン対話では、検討プロセスが不透明だなどとして懸念表明が続出した。

 東大は10日の発表で、経済的支援を充実させる方針を示したものの、教育学部3年の男子学生(22)は「支援からこぼれ落ちる人が出るのではないか。授業料増は進学の機会を奪う」と批判した。

 他の国立大が追随するかは判断が分かれそうだ。ある大学幹部は「授業料を上げても非難されにくい状況になる。波に乗じたい」と、東大の動きを歓迎。ただ都市部と地方では、世帯収入などの違いで引き上げのインパクトも異なる。地方大の学長は「学生の流出につながりかねない。自分の大学でできるかは話が別だ」と語る。

 法人化は競争原理の導入が狙いだった。教育や研究で大学の裁量が広かった一方、財政面は不安定になり、研究力の低下を指摘する声もある。急速な少子化も進む中、文科省は7月、国立大の課題や今後を議論する検討会を立ち上げた。関係者によると、経営基盤や研究力の強化に向け、組織のガバナンスのほか交付金分配の在り方や授業料増などもテーマになる見通しだ。


大学の法人化によって競争原理が働いた学部はどれだけあるのだろうか。技術開発にかかわるいわゆる「即戦力」とる学部などには益があったかもしれないが、人文系はほとんど効果がなかっただろう。リベラルアーツとしての大学は、人と技術のかかわりあいをどのように制御するかという大きな問題を考える基盤となる。教育が政府の施策の走狗となってはならない。「経済成長」にたよらない「定常型経済」の社会へと舵を切る必要がある。


9月10日 文科省 通級指導 最多を更新

 障害がある国公私立の小中高校生で、通常学級に在籍しながら必要に応じて別室で授業などを受ける「通級指導」を利用したのは2022年度に19万8343人となり、過去最多を更新したことが、文部科学省の調査で分かった。これまで最多だった21年度より約1万4千人増えた。

 通級指導は少人数指導が多く、コミュニケーションが苦手な子にきめ細かな授業が可能とされる。文科省は「通級指導への保護者や教職員の理解が深まり、利用者増につながった。各地で専門知識を持つ教員が増えたことも影響した」と分析。発達障害への理解が進んだことも背景にあるとみている。京都は6837人、滋賀2615人だった。

 障害別の内訳は、言語障害4万8628人、注意欠陥多動性障害(ADHD)4万3050人、自閉症4万2081人、学習障害(LD)3万7047人など。

 通っている学校の教室を使う「自校通級」は13万6139人で、他校の教員が訪問してくる「巡回通級」は1万4879人。子どもが特別支援学校など他校に移動する必要がある「他校通級」は4万7325人だった。


「最多を更新」をどのように受け止めればいいのだろうか。文科省の言うように通級への理解が深まったとは思えない。逆に、普通学級がどれだけ住みにくい場所のなっているのかを示している数字のように思える。こうした数字からみえてくるインクルーシブ教育とはなんなのだろうか。多様性の尊重と言われる教育とはなんなのだろうか。疑問は尽きない。


9月10日 府教委 いじめ1万164件 コロナ前に戻る?

 京都府教育委員会は9日、京都市立を除く府内の公立全小中高校、特別支援学校を対象とした2024年度―学期分のいじめ調査の結果を公表した。認知件数は、前年同期比で95件増の10164件だった。中学校以外の校種で増加しており、府教委は「新型コロナウイルス禍の教育活動の制限で減った子ども同士の関わりが増え、件数がコロナ前の状況に戻りつつある」と分析している。

 認知件数の内訳は、小中学校が166件増の8971件、高校は42件増の210件、特別支援学校は30件増の84件だった。中学校は143件減の899件。欠席が30日以上続く「重大事態」は、府立高で1件あった。いじめ行為が続いている「要指導」は小学校で1252件、中学校で113件、高校で47件、特別支援学校で14件あった。

 いじめの内容は、全校種で「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が最多で、小中、特別支援学校では「軽くぷつかられたり、遊ぷふりをしてたたかれたり、蹴られたりする」、高校では「仲間はずれ、集団による無視をされる」が続いた。

 調査は府教委が2013年度から独自に毎年1学期と2学期の年2回実施し、軽微な事案も含めて集計している。



9月7日 近江八幡市教委 「体育座り」に健康リスク

 近江八幡市の安田全男教育長は6日、市内の学校で実施してきた「体育座り」について、長時間続けると健康リスクがあるとして、今後は各校に「強要しないよう周知する」と市議会で表明した。

 安田教育長は市議の個人質問に答え、長時間の体育座りは「両手で膝を抱え込むことで、内臓圧迫の危険性や、腰痛リスクが高まる可能性が研究で示唆されている」 とし、身体の負担につながりやすいと指摘。「リスクを周知し、座らせる際は強要することがないようにする」とした。

 市教委学校教育課によると、体育座りはかつて文部省の「集団行動指導の手引き」に座り方の例として図示されていた。しかし近年は、その危険性が報道などで指摘 されて見直しが進んでいるという。今後は市内全16小中学校に周知する。代わりに椅子を用意するか、多様な座り方を促すかなどは未定だが、同課は「子どもの身体の都合は優先すべきだ」としている。

 滋賀県、京都府の両教育委員会によると、両府県で自治体がリスク周知などをした例は確認されていないという。 


「体育座り」のリスクについて、名古屋大の内田教授は「体育座りだけでなく、学校ではさまざまなルール(校則)を設けて子供の頭のてっぺんからつまさきまで、その身なりや行動を細かく規制するかたちで、全体の統率をはかってきました。それは、当のルールに定められた以外の身なりや行動を、「だらしない」「行儀が悪い」「華美だ」といった判定とともに成り立つものです。体育座りを崩したりすると、まさに「だらしない」として意味づけされ、叱られ、矯正されていきます。このプロセスをくり返しながら、全体の統制が確立されていきます。体育座りを解除すれば、子供たちが乱れるという不安があるかもしれませんが、それは体育座りという正統なモデルがあるためであり、その概念をとっぱらってしまえば、たんにそれぞれの多様な(座り方の)子供がいるだけになります」(2022/5/24 Yahooニュース)と語っている。


9月7日 府 農芸高・北桑田高 府立大系属校に

 京都府の西脇隆俊知事は6日の定例記者会見で、2026年4月から農芸高(南丹市園部町南大谷)と北桑田高(京都市右京区京北下弓削町)を府立大の系属校とすると発表した。両高校から府立大への進学を優先的に認める制度で、府によると、農林業に特化した公立大と公立高の系属校は全国で初めて。府内農林業者の育成と関連産業の振興を図る狙いがある。

 系属校とは、特定の大学との連携関係を持つ中等教育を行う学校で、連携する大学への優先入学が認められる。設置主体は京都府立大が京都府公立大学法人、農芸高と北桑田高が府であることは変わらず、両高校は今後も府立高として運営する。

 農芸校は府内唯一の単独の農業専門高で、北桑田高は林業を生産から加工まで一貫して学ぶ京都フォレスト科を設けている。それぞれ、府立大の農学食科学部(農学生命科学科)と環境科学部(森林科学科)と連携する。

 府立大への系属校枠(推薦枠)は、学力試験を実施した上で連携学科ごとに合格者を決める。それぞれ入学定員の約1割(4〜5人)を想定しており、現在の高校1年から対象となる。選抜方法は本年度中に公表する。

 府によると、両高校は近年定員割れが続いており、府立大も卒業生の府内就職率が約2割と、地元で就業する卒業生の少なさが課題となっている。西脇知事は「高校の先に府立大学への進学があれば、高校にとっても魅力向上につながる。大学まで行って、より研究機能を高めてもらえれば、幅広く活躍する人材になっていただける」と話した。


府北部の教育振興は喫緊の課題。福知山公立大との連携も含めて府大の系属校の2校の期待と役割は大きいだろう。


9月6日 府・市教委 探求学習テーマに発表会

 京都府と京都市の両教育委員会は、問いを立てて課題解決に取り組む「探究学習」をテーマにした初の合同発表会を12月に開く。府立高と市立高の生徒がともに参加する教育関連の催しはほとんど例がないという。今後は毎年開催し、他校の研究の内容や手法に触れながら学びを深め、視野を広げる契機にする。

 府立・市立高が合同で実施する探究学習の発表会は、西脇隆俊知事と松井孝治市長が7月のトップミーティングで明らかにしていた。府は12日に開会予定の府議会9月定例会に提案する一般会計補正予算案に関連経費として300万円を盛り込む方針。市側も同額の予算案を市議会に提案する見込み。

 合同発表会に向け府教委と市教委は、分校・学舎を含む全日制高56校をはじめ、定時制・通信制を含めた全公立校に参加を呼びかける。参加校はチームや個人で出場し、同一校から複数の参加も認める。

 今年は12月21日に左京区の国立京都国際会館を会場に開催し、100チーム・個人の参加を想定する。研究成果をまとめた掲示物を貼り出し、内容を説明したり質問に答えたりするポスターセッションを行う。府内の大学の研究者を招き、研究内容の講評を受けられるようにする。AI研究の第一人者、松尾豊東京大教授の基調講演や、高校生を交えたパネル討論も予定。高校生による実行委員会を立ち上げて、生徒主体の運営を目指すとしている。

 府教委高校教育課は合同発表会について「研究内容が類似した高校同士の交流を支援し、さらに学びが深まるような仕掛けも考えていきたい」と話している。   


府市が合同でなにかをするということは、高校の定数くらいでほとんどない。そうした意味で合同発表会は大きな改善だといえるだろう。市教委の「蜷川府政」への反発の歴史がようやく幕を閉じるといえるかもしれない。ただ、合同発表会の内容がAIなどの理系技術だけではなく人権、戦争などの人文系社会問題を積極的に扱うような指導を期待する。


9月6日 朝鮮学校 朝鮮学校認知度 向上へ力

 京都市内の街頭で朝鮮学校の無償化を訴える「火曜アクション」を続けてきた関係者らが、従来の活動に加えて学校見学会や映画上映会を企画するなど、活動の幅を 広げている。無償化への共感を広げる以前に、朝鮮学校の生活や教育内容が市民に十分に知られていない現実があるといい、まずは認知度を高めることが活動の継続や発展に欠かせないとの判断が背景にある。

 高校無償化は2010年に始まった。学校教育法の「各種学校」に分類されている外国人学校も対象となったが、朝鮮学校は拉致問題などを理由に制度から除外され た。火曜アクションはそうした状況を広く伝えようと17年8月に始まった。在日コリアンの青年や大学生、京都朝鮮中高級学校の在校生、日本人の支援者が毎週火曜日の夜に四条河原町交差点(下京区)で声を上げ、リーフレットの配布や募金活動を行ってきた。19年からは幼保無償化も訴えている。

 活動は昨年12月に200回を迎えた。趣旨に共感し街頭での活動に参加する日本人学生や市民の姿も見られるようになり、事務局を務める金賢哲さん(30)は「支援 の輪が広がった」と手応えを語る。一方、街頭に立ち続ける中で「そもそも朝鮮学校の存在が知られておらず、リーフレットを受け取って終わり、という人が多い。何の 問題について行動しているのか、あまり理解されていない」と実感したという。状況の改善が見られない中、「マンネリ化していた部分も正直あり、姿を見なくなった人もいる」と打ち明ける。

 そんな中、まず朝鮮学校の存在を知ってもらう活動に力点を置くことに。今年から街頭宣伝の頻度を月1回に減らす代わりに、市内各地に立つようになった。6月に 京都大に近い百万遍交差点(左京区)に立った時には、関心を持って耳を傾ける学生も多かったという。8月には下京区で在日コリアンのドキュメンタリー映画「私はチョソンサラム(朝鮮人)です」の上映会を開き、参加者同士で意見を交わす場面もあった。

 9月下旬に京都朝鮮第二初級学校(右京区)の見学も予定しており、金さんは「差別解消に向けて世論を変えていくことが重要。さまざまな形で朝鮮学校に触れて、置かれている現状やたどってきた経緯について知ってもらい、次の行動につなげたい」と話す。


京都国際高の甲子園優勝は、在日韓国・朝鮮人への大きなエールとなったと同時に日本に潜む外国人へのヘイトが依然として存在していることを明らかにした。一方で、朝鮮人の子弟を教育する朝鮮学校は、希薄な根拠の中で安倍政権下で無償化の枠からも外された。「朝鮮学校について高校無償化制度の速やかな適用を求める理事長声明」を改めて読んでみと、外国人の教育をする権利は国際法上でも当然の権利としてあることがわかる。


9月6日 【インサイド】 「相次ぐ事件は、進まぬ基地負担軽減の代償」/font>

 成人女性に性的暴行したとして、沖縄県警が米海兵隊の男を書類送検した。6月の発生直後、別の二つの性的暴行事件が明らかになっており、県内では「またか」と怒りが渦巻く。県警が事件を伝達するようになったものの、県庁内では「もっと早く欲しかった」との声も。米側の対策も再発防止には程遠い。根本的な対策は基地負担軽減しかないが、県幹部は「日本政府の取り組みは不十分だ」と批判を強める。

 「激しい怒りを覚える。度重なる蛮行を絶対に許すことはできない」。沖縄県警が不同意性交致傷容疑で米兵の男を書類送検したことを受け、県三役の一人は取材に憤りをあらわにした。

 玉城デニー知事は今週末から訪米を計画しており、立て続く事件に関し米政府に抗議する意向だ。知事周辺は「これ以上、県民の人権を踏みにじることは許さないとの強いメッセージを示す必要がある」と強調する。

  ■全国の半数近く

 沖縄では米軍らによる殺人や性的暴行事件が繰り返されてきた。沖縄県によると、1989年から昨年までの35年間で、米軍構成員による不同意性交などの摘発件数は全国で88件。このうち県内が半数近い41件を占めた。

 事件のたびに、米側は綱紀粛正を打ち出す。今年6月に性的暴行事件2件が明らかになると、軍の法執行機関職員によるパトロール拡大などを打ち出したが「ポーズだけでは」(県議)と冷ややかな受け止めが強い。

 6月発覚の2事件を県警は報道発表せず、報告を受けた日本政府も県に伝えていなかった。県側の抗議を受け、政府は7月に情報共有体制を見直したが、5日書類送検さた男の場合、県への連絡は発生から2ヵ月以上後となった。県庁内には「発生の段階で内々に教えてほしかった」との声が漏れる。

  ■防げた可能性

 今回の事件の発生は、2事件が公になる前だった。県関係者は「2事件が、米兵が立件された段階で公表され、県や関係機関が対策を講じていれば防げた可能性はあった」と訴えた。

 国土面積の約O・6‰の沖縄には、国内の在日米軍専用施設の約7割が集中する。頻発する米兵の犯罪は、この過重な基地負担が要因となっていることは明白だ。

 日米両政府は1996年、住宅地に隣接し「世界一危険」とも言われる米軍普天問飛行場(宜野湾市)の返還で合意し、5〜7年での全面返還を実現するとした。だが、返還は2030年代半ば以降となる見通しだ。

 県幹部は「相次ぐ事件は、日本政府が基地負担軽減をおろそかにしてきた代償の一つだ」と指摘した。


大きな問題は治外法権を認めている日米地位協定にある。日本政府はこの改定や運用についてほとんど努力することはない。沖縄を犠牲にする防衛。経済政策である。自民党総裁選挙が喧しいが沖縄問題を口にする候補者は誰もいない。そうした中で、玉城知事の訪米は県独自の外交として大いに評価すべきだ。政権交代に向けて求められる安全保障政策を発表した「新外交イニシアティブ」は、そうした政府を通さない外交の重要性を指摘している。


9月5日 市教委 日本語初期指導、小6に拡大

 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の増加を受け、京都市教育委員会は今月から、来日直後の中学生を集めた日本語初期集中指導教室「わかば」の対象を小学6年に広げた。日本語や学校生活の基本ルールを1ヵ月で集中して学ぶ取り組みで、本年度4回目となる9月開催の教室には小学生5人を含む計13人が通っている。

 「わかば」は、南区の凌風小中・東和校舎で昨年8月から始まり、1年間で計34人が受講した。国籍は中国、ネパール、フィリピンの順に多かった。各小中学校におよそ1、2人ずつ在籍する外国籍生徒が短期間に集中して学び合う意義は大きく、2年目は対象を小学6年まで拡大した。

 教室では日本語指導教員が、電車でお年寄りに席を譲ったり座席に荷物を置いたりする絵を見せて「これはいいですか?」と次々に問うた。生徒らは「いいです」「だめです」などと日本語で元気に答えていた。英語と中国語、フィリピン語の支援員が生徒らの傍らでサポートした。

 1ヵ月かけ、日本語での簡単なやりとりができる程度を目指す。市教委によると、日本語指導が必要な児童生徒数は本年度、8月末までに約320人に上り、昨年度1年間の約300人をすでに上回ったという。


公立学校での外国人子弟の日本語教育は必要。ずいぶん以前から現場からも要求が出されていたが進捗状況はいまいちで「わかば」も昨年開校したばかり。また「わかば」に参加できる子どもは、必要数の10分の1ではこころもとない。また、南区では地域的にも偏っていることから北、東、西での取り組みが必要。


9月4日 大卒就職率 過去20年で最高

 京都、滋賀の主要11大学を2024年春に卒業した学生(学部生)の就職率は前年比1・3ポイント上昇の89・8%となり、04年の調査開始以来最高を記録したことが3日、京都新聞社のアンゲートで分かった。3年連続で上昇し、同率だった19、20年の実績をO・3ポイント上回った。新型コロナウイルス禍からの経済回復と企業の深刻な人手不足を背景に、就職率は高水準で推移している。

 対象は、京都、京都工芸繊維、京都産業、京都女子、京都府立、滋賀、滋賀県立、同志社、同志社女子、立命館、龍谷の11大学。今春卒業した学部生計2万870 6人のうち大学院などに進学した5113人を除き、就職した2万1189人の割合を算出した。

 修士・博士課程を修了した院生の就職率は、2・3ポイント上昇の87・0%だった。

 大学別では7大学が上昇した。最も高かったのは滋賀大の93・9%で、京都産業大が92・3%、京都女子大が92・1%と続いた。

 就職先上位は官公庁や教育委員会、金融機関などが占め、安定を求める傾向が強い。一方で、報酬が高いとされる外資系コンサルティング大手も目立った。

 コロナ禍では一部業界が採用を抑制し、就職率が低下したものの、経済の回復で再び人手不足感が強まったため、企業の新卒採用意欲は旺盛な状況が続く。人材の獲得競争が激化し、採用日程は一段と早期化している。


大卒者の就職率が高いのは喜ばしいし、若者の将来への希望にもつながる。が、かつての「就職氷河期世代」(30歳後半から40歳前半)と言われた人たちは取り残されたまま。人生設計をどうするか、どんな社会を望むのかという問題を考えるときに「就職氷河期世代」の存在を忘れてはいけない。また同日【インサイド】では、「だが、人材の獲得競争が激化し、インターンシップ(就業体験)や面接といった選考活動は早期化に一段と拍車が掛かっている。同志社大は「インターンシップや選考に参加するため、大学の講義や試験、研究を欠席する学生が増えている」と指摘し、国や経済界に配慮を求めている」と指摘している。教員採用の早期化につても同じような懸念があるだろう。


9月4日 住友生命 中学生職業体験 半年間かけ学ぶ

 住友生命保険は、大阪市立天王寺中の2年生約180人を対象に建設用機材を手がけるアルインコなど5社と協力し、職業体験の教育プログラムを実施する。1日限りの職場見学ではなく、半年間かけ各企業が抱える課題の解決策を検討する内容で、探求力やチーム内で助け合う力を養ってもらうことが狙い。

 生徒は事前準備として6〜7月、住友生命などから、業務内容の説明を受けた。プログラムは9月中旬から本格的に始まり、割り振られた企業に「入社」。企業から課題の説明を受ける。1チーム6人くらいのクループで、担当する企業について調べたり、関連施設を訪問したりし、来年2月と3月に解決策を各企業に直接発表する計画だ。


同様の取り組みとして京都市教育委員会は「生き方探究教育」(キャリア教育)を行っている。そこには「社会的・職業的自立に向け必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、社会の中で自分の役割を果たしながら自分らしい生き方を実現していくこと」が目標として上げられているが、働く側(労働者)の視点が欠けているとの指摘もある。大阪市でのプログラムでは民間企業が主導しているという点では一層働かせる側(企業)のニーズが強くなる傾向があるだろう。


9月2日 【インサイド】 感染症、紛争地で流行懸念

 世界の紛争地域で感染症流行への懸念が相次いでいる。パレスチナ自治区ガザでは25年ぶりにポリオ(小児まひ)が確認され、1日に戦時下の予防接種が始まった。 鉱物資源の権益を巡り武装勢力が乱立するアフリカ・コンゴ(旧ザイール)東部ではエムポックス(サル痘)が拡大。いずれも戦闘で衛生環境が悪化し、感染対策が難航 しているのが一因だ。人を介して境界を越える病原体も多く、長引く紛争は公衆衛生上の国際リスクになりかねない。

 「水の汚れがひどく、悪臭がする。高齢者や子どもが病気になっている。そこら中ごみの山だらけなんだ。貧しい人がパンのかけらがないかとあさっている。もうた くさんだ」。ガザ南部に避難するムハンマド・ナセルさん(30)が訴えた。

 ガザでは昨年10月からのイスラエル軍の攻撃で、多数のインフラや医療施設、上下水道に被害が出た。路上に大量のごみが放置され、住民は劣悪な環境で長期の避難生活を余儀なくされている。

 ポリオ予防にはワクチンが有効だ。イスラエルは今回、ワクチン接種のため地区ごとに戦闘を一時休止することで合意した。国連や米国の強い要請を受け入れた形だった。戦時下の接種活動は極めて異例で、予断を許さない状況が続く。


エムポックス コンゴで拡大

 コンゴでは1万8千件超のエムポックス感染が判明した。「難民キャンプ周辺で軍事行動が相次ぎ、対策が難しくなっている」。世界保健機関(WHO)幹部は7月、医療スタッフの安全確保が課題だと明かした。

 反政府勢力「3月23日運動(M23)」などが闘争を続ける東部では、600万人以上が避難を強いられ、難民キャンプは過密状態に。エムポックスは接触で感染するとされ、まん延している。幹部は「子どもへの影響が深刻だ」と指摘した。

 エムポックスはコンゴでのまん延判明後に北欧やアジアでも感染が確認されている。WHOは8月14日、世界的な流行が懸念される感染症として緊急事態を宣言した。

 国軍と準軍事組織、即応支援部隊(RSF)の内戦が続くアフリカ北東部スーダンではコレラが広がる。WHOによると、今年1月〜7月下旬に2410件の感染と 78人の死者が確認された。調査が不十分で、実際はさらに多いとみられる。

 コレラは菌に汚染された水や食べ物を口にして感染する。内戦で水道などのインフラは破壊され、医療は崩壊寸前と言われる。水害で一部地域では衛生状態がさらに 悪化し「コレラが最も流行しやすい状況」(中東メディア)になっている。(エルサレム、ナイロビ、カイロ共同)


戦争は何をもたらすのか。戦う人たちの「正義」だけでは語ることのできない現実がある。「利益を得るのは誰か」を問うことが常に必要。新型コロナ(Covid-19)感染拡大は、人間が環境を破壊したことによってもたらされたということが言われる。戦争は自然と人間の境界(自然との共存)を大きく破壊することが改めて問われる。


9月2日 文科省 学校内「居場所」設置全国で46%

 空き教室を活用して学校内で不登校の児童生徒をサポートする「校内教育支援センター」の全国の公立小中学校での設置率が、7月時点で46・1%(1万2712校)だったことが1日までに、文部科学省調査で分かった。不登校の子どもが最多の30万人近くに上る中、徐々に「居場所」の整備が進むものの地域によってばらつきがある実態が明らかになった。

 文科省はさらに設置を加速するため、来年度予算の概算要求に14億円を計上し整備や支援員配置の費用を補助する。文科省担当者は「効果を発信し、設置拡大に取り組みたい」と話している。

 校内教育支援センターは「校内フリースクール」などとも呼ばれ、クラスの中に入れない子どもの居場所を確保するのが目的。教員や支援員は、児童生徒が自分のペースで生活や学習ができるよう、スクールカウンセラーらと連携しながら支援に当たる。

 学校単位での調査は初めて。公立小中学校約2万7千校のうち、小学校6643校(設置率35・9%)、中学校6069校(同66・9%)で整備されていた。地域によってばらつきが大きく、さいたま市と川崎市は設置率が100%だった一方、徳島県は9・6%、宮崎県は10・9%だった。京都市は65・7%、同市を除く京都府内は38・1%、滋賀県は82・5%だった。

 文科省によると、教育現場からは、人員の確保が難しいことを理由に設置をためらう声がある。このため、概算要求に支援員3千人分の補助として11億3千万円を計上するほか、1600校分の整備費用として2億4千万円を盛り込む。


学校内に「居場所」を設置することは必要なことかも知らないが、そもそも学校が「居場所」でないことはどなのだろうか。また、特別支援学級とは別に「居場所」を作ることは果たして正解なのだろうか。学校現場への対策は、「戦力の逐次投入」との批判もある。


9月2日 文科省 いじめ調査指針を改定

 文部科学省は「いじめ重大事態」の調査に関する指針を改定した。対応の遅れや、説明不足による保護者らとのトラブルが後を絶たないことから、学校などの対応を明確化。調査委員会メンバー選定での中立性確保の考え方や初動の在り方などを整理した。改定は2017年の策定以来初めて。

 いじめ防止対策推進法は、いじめで子どもの心身に重大な被害が出たり、長期欠席したりするケースを重大事態と定義。学校には文科省や自治体への報告が義務付けられており、速やかに事実関係を調べ、被害者側に適切な情報提供をしなければならない。22年度に発生した重大事態は、過去最多の923件だった。

 新しい指針では、保護者らと共通理解が図れるよう、調査を開始する前に行う説明の手順や内容を記載したほか、平時からの体制構築を図り、全ての教職員の理解を深めるよう求めた。

 第三者が調査すべきケースを具体化。その上で、調査委の中立性の考え方として、弁護士会など職能団体からの推薦による委員の人選は「第三者性が確保されていると考えられる」とした。


「調査指針」というよりも「マニュアル」というほうがピンくる。より詳細なマニュアルを作成することでいじめが防げるのかどうか。学校というものや子どもが置かれている状況とはという根源的な問いが必要なのだが、現実の学校はそうしたことよりもマニュアルに沿う対応が求められているのか。


9月2日 旭川市 いじめ再調査委 答申 

 北海道旭川市で2021年、いじめを受けていた中学2年広瀬爽彩さん=当時(14)=が自殺した問題で、市が設置した再調査委員会は1日、いじめと自殺の因果関係を認めた報告書を市に提出して答申した。尾木直樹委員長は「本件の調査で明らかになった出来事は、全国どこでも起こり得る。いじめ対策の道しるべとなることを願う」と述べた。

 再調査では、広瀬さんは19年の入学後、クラス内外で、性的ないじめを含む計7件のいじめを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと認定。恐怖心や自尊感情の低下などが亡くなる直前まで継続しており「いじめが存在しなければ自殺は起こらなかった」と結論付けた。

 背景事情として発達上の特性がある広瀬さんを周囲が遠ざけたことや、思春期の性への関心、インターネット上でのトラブルなどを挙げていた。

 再調査委は今年6月に結果の概要を公表。当初調査に当たった第三社者委員会の報告書とみられる文書が黒塗りがない状態でインターネット上に公開された問題を受け、答申を延期していたが、情報漏えい対策が整ったと判断した。


報告書には「発達上の特性」との記載があるようだが、おそらく「発達障害」を意味しているのだろう。引用の「母親の手記」ではそうした個所がいくつもあるようだが、学校・教育委員会側がその点についてどういった対応を取ったのかは明らかではない。