戦争には疲れた。停戦しか道はない。だがトランプ次期米大統領の仲裁も、欧州の支援も信頼できない―。ロシアの侵攻開始から3年近くが経過したウクライナ。市民は怒りと失意、無力感を抱いている。厳しさを増す現実に直面し、新年に希望を持つのは困難だ。 12月20日朝、首都キーウ(キエフ)で爆発音と地響きが続いた。ロシア軍の弾道ミサイルだ。マリーナ・リヤクさん(41)は焼け焦げた自分の車の前で言った。「怖い。死ぬかと思った」 南部ザポロジエで避難民を支援し、占領地の奪還を訴えてきた。だがこの朝、自分の死を実感し考えを変えた。 「もう戦闘はやめ、外交で状況を改善するしかない」 多くの市民が同じように停戦を願う。キーウの大学院で日本語を学ぶディマさん(22)は新婚。将来を見据え「現実」という言葉を何度も口にした。 「占領地を見捨てることになるが、即時停戦が現実的。戦闘を続ければ家族や友人が死ぬ」 国際社会への不信感は根強い。トランプ氏は「戦争終結」を主張し、欧州各国も停戦監視部隊の派遣を議論する。ディマさんは「言葉だけだ。米欧頼みはだめ」と言う。「北大西洋条約機構(NATO)加盟は恐らくロシアの妨害で失敗する。国力強化を急ぐし かない。軍と兵器の充実だ」 家族を失った人たちは世論の変化に焦る。首都近郊ブチヤは、2022年2月の侵攻開始時に虐殺があった街。 「息子はここで処刑されました」。アレクサンドル・トロフスキさん(69)は、長男スビャトスラフさん=当時(35)=が倒れた地面を指さした。 息子のために最後まで戦うべきだと願うが、高級レストランやスキーリゾートを楽しむ市民の姿を目にし、厭戦世論の広がりを実感する。「私たち以外に誰が国を守るんだ。トランプもNATOも信頼できないのに」 ロシア国境に近い北東部スムイ。戦闘で家を追われた避難民が支援団体に連日押し寄せる。人混みの中でセルギイさん(30)は「この国も俺の人生も行き詰まりだ」と話した。「停戦は解決にはならない。プーチン(ロシア大統領)はどうせまた攻めてくる。国際 支援は言葉だけ。そして俺には力がない」。冷たい無表情に怒りがにじむ。 トナカイ柄のセーターを着たパベルさん(18)は優しい笑顔が印象的。ロシア支配下の東部ドネツクを1人で脱出しスムイにたどり着いた。日本のアニメが大好き。避難民シェルターで暮らし、日本語を学ぶため大学受験の準備をしている。 「ウクライナの将来に関心はない」と話す。14年から続く戦闘の中で育ち、死と破壊を間近に見るうち「何も感じなくなった」という。「現実はなるようにしかならない。僕は日本に行って日本文化に浸りたい。それだけです」(キーウ、スムイ共同) |
戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでは、イスラエル軍の攻撃で昨年10月以降、10万8干人超(ガザ保健当局)の負傷者が出た。医療インフラは崩壊しており、負傷後も十分な治療を受けられない住民は約2万人とされる。知的障害を抱え、会話が不自由な男性 (48)もその一人。母親(65)は持病を抱えながら介護しているが「どうすることもできない」と嘆く。 ガザ中部デールバラハ。11月下旬、自宅の約3平方メートルの部屋に置かれたベッドで、イヤド・アワドさんが、共同通信のガザ通信員を不安そうな表情で見つめた。生まれつきの障害で会話が難しい。手と足には傷がまだ残り、その上に金具が付けられている。 アワドさんは7月上旬、身の回りの世話をしてくれていた父ファディさん(67)と自宅の玄関先に座っていたところ、イスラエル軍が隣の建物を空爆した。アワドさんは危険を察知できずに破片で頭、背中や腕に重傷を負った。ファディさんは破片で即死した。 ガザ各地の病院は攻撃で被害を受けている上、イスラエルが物資搬入を大きく制限しており医療資源が枯渇している。アワドさんはデールバラハの中核病院に運ばれたが、緊急度の高い患者を優先するとして、初期治療だけで後回しにされた。以来ずっと、自宅で横になったままだ。 保健当局によると、アワドさんのように治療が不十分な負傷者はガザ全域で2万〜2万3千人ほど。この他、イスラム組織ハマスとの関連を疑われてイスラエルでの将来の就労が難しくなる可能性を懸念し、身分を明かさない負傷者も約千〜2千人いるという。 アワドさんの弟、タメルさん(38)、イッサさん(32)も軽度の知的障害がある。ファディさんが死亡後、母親は家族の大黒柱となったが、収入はなく支援物資頼り。母親は高血圧を抱えるが、薬が入手できずにいる。 アワドさんの背中の傷はひどくなり、室内には異臭が漂っていた。痛みで動けないため、症状は悪化するばかり。負傷後は笑顔は消え、泣くことが増えたという。 母親は「息子の苦しみを見ると、胸が張り裂けそうになる」と打ち明ける。アワドさんの治療のめどは立っていない。「世界は私の息子や、ガザの大勢の患者を見捨てている」と強い口調で非難した。(デールバラハ共同) ![]() |
不登校の子どもにオンラインの居場所を届けようと、京都市教育委員会が、仮想空間「メタバース」で学習支援を始めた。本年度は実証研究と位置付け、来年1〜3月のオンライン学習に参加する小中学生を募集している。 病気や経済的な理由を除き、2023年度に年間30日以上欠席した不登校の児童生徒は市立小中で3151人。うち113人は出席日数がゼロだった。市内には2ヵ所の不登校特例校があり、長期欠席傾向のある子どもが学校内外で自習できる場所の整備も進められているが、ひきこもり状態にある子の学びや居場所の確保が課題だった。 オンラインの居場所は本年度当初予算に500万円を計上し、京都を中心に近畿で学習塾を展開する「成基」(中京区)に運営を委託。子どもたちは在籍校から貸与されているタブレット端末を使って、好きなキャラクターで自身の分身(アバター)を作って仮想教 室に参加し、理科の実験やプログラミングなどの授業テーマに沿った体験をする。チャット機能を使って授業者の問いかけに答えたり、子ども同士で会話を試みたりすることで、人とつながる楽しさを体感できる。オンラインの居場所から実体験への興味関心につなげていく狙いがある。 10〜12月に、不登校が長期化した小中学生が活動するために市内8ヵ所に設けられている「ふれあいの杜」の通級者約40人の協力を得て試行したところ、26人が継続参加できた。「人が目の前にいないので緊張せず参加できた」「いろんな人の意見を知ることがで きた」との感想があったという。参加した子どもの保護者からも「久しぶりに同年代の子と話した」「授業内容をうれしそうに話してくれる」などの感想が寄せられた。 現在、1月8日〜3月12日の毎週水曜午後1〜3時に参加する児童生徒を募っている。授業テーマは伝統文化や外国語教育を予定する。不安や緊張が高く、登校したくても登校できない市立小4〜中3の40人程度が対象。参加は無料で、希望者は2月末までに在籍する小中学校に相談する。参加状況は在籍校に報告され、各校長の判断で児童生徒の出席日数や評価の対象となる。 ![]() |
文部科学省が全国の教育委員会と小中学校、高校などに、これから計画する修学旅行は、なるべく集中期を避けて実施するよう呼びかけたことが29日分かった。バスや宿泊施設は「2024年問題」と呼ばれた運転手の残業規制や、訪日客急増で人手不足が深刻化。多くの学校が実施する5〜6月や9〜12月を中心に、確保が難しくなっているのが理由だ。閑散期に実施すれば急な旅程変更などが減り、学校にメリットがあるとしている。 各学校が修学旅行を計画し始めるのは、実施の2年ほど前が一般的。強制ではなく、学校が自由に実施時期を決めるのが基本だが、文科省の担当者は「現場で工夫できる部分があればお願いしたい」としている。 遠足や社会科見学、移動教室などを含む校外活動が対象。バスや旅行業界から協力依頼があり、12月12日付で「昨今の深刻な人手不足で、貸し切りバスや宿泊施設の手配が困難になってきている」として、前例にこだわらず、柔軟に実施時期を検討してほしいとの通 知を出した。 公益財団法人「日本修学旅行協会」の抽出調査によると、2023年度の修学旅行で最も多かったのは中学校が5月、高校は10月。集中が起きるのは、授業の年間スケジュールや受験準備、気候など、時期を決めるための判断材料が多くの学校で共通しているため だ。旅行先も東京、大阪、京都、奈良、沖縄などが選ばれやすい。 こうした状況に24年問題などを背景とした人手不足が追い打ちをかけた。協会によると「貸し切りバスが確保できず電車移動に切り替える」「宿泊先が目的地の隣県でしか見つからない」などの事例が出ている。 文科省は閑散期なら同様の事態が減り、計画通りに実施しやすくなるとみている。 修学旅行など、子どもたちの貴重な学びの機会となる学校行事を維持するため、バスや宿泊事業者が綱渡りを強いられている。人手不足に労働規制、訪日客急増など、事業環境が大きく変化したためだ。関係者は「例年通り」の実施が難しくなっているとして、時期の変更など学校側の協力に期待する。 「他のお客さまには大変申し訳ないが、中学生の大事な思い出となるイベントに穴を開けるわけにはいかない」。富山地方鉄道(富山市)は今年5月、高速バス60便を運休した。富山県内の中学校の修学旅行が重なり、運転手を貸し切りバスに振り向けなければ人繰りがつかなくなった。 路線バスの運行も危ぶまれ、運転手経験がある事務系社員の「緊急登板」でやりくりした。児童生徒のため、今後も人手を確保しながら修学旅行の仕事は続けるが「少しでも時期をずらしていただけると助かる」 貸し切りバス185台を保有する東都観光バス(東京都新宿区)は稼働の約半分が学校関連。引き続き教育現場を支えるため、給与体系の見直しなどで人材確保に努めているという。 運転手不足は、新型コロナウイルス禍での離職や、2024年4月に始まった残業時間の上限規制などが要因だ。日本バス協会の試算では30年度の不足数は3万6千人。廃止や減便が目に見えやすい路線バスとは異なり、貸し切りバスは水面下で状況が悪化してい る。 修学旅行で使う旅館やホテルも人手不足が深刻化しており、学校側からの依頼でバスや宿泊先を手配する旅行業者は頭を悩ませる。 日本旅行業協会(JATA)は今年、日本バス協会とタッグを組み、修学旅行を含め校外学習の時期を分散してほしいと国に要望した。これまでは各社の営業担当の調整力で学校側の希望に応えてきたが、現場の努力だけでは限界が来ていると判断した。修学旅行な どの実施時期は、定期試験や受験を考慮する必要があり、大胆な変更はハードルが高い。それでも「集中する木曜日や金曜日を避ける だけでも手配がしやすくなる」とJATA担当者。物価高で修学旅行費も高騰する中、繁忙日を避ければ料金を抑えられる可能性もあ る。 今後の学校現場はどうなるのか。日本修学旅行協会の高野満博事務局長は、バスや宿泊施設の苦境で修学旅行が過渡期に来ているとして「例年通りの実施は、ますます難しくなる可能性がある」とみる。ただ「学校が『手配も大変だし費用もかかるから、いっそ修学旅行そのものを廃止してしまおう』となってしまっては本末転倒だ」と危惧する。修学旅行などの校外学習は、現在の学習指導要領で重視される「探究的な学習」の機会となるほか、家庭間での「体験格差」を埋める意味を持つと考えるためだ。 国土交通省などはバスや宿泊施設の閑散期が分かる資料を作成し、現場に伝えた。高野事務局長は、こうした情報を学校が活用し、時期や行き先の選択肢を増やすことで「修学旅行が持続可能な形に変わっていければいい」と期待を込めた。 ![]() |
2024年度上半期の生活保護申請件数が前年同期比で増加し、困窮する人が増えている実態が浮き彫りになった。食費や光熱費など物価高が追い打ちとなり、苦境が深まっているためだ。最低賃金が引き上げられ、政府は3万円を給付するが生活状況の改善は乏しい。冬休みは給食がなく、昼食やお年玉の捻出に頭を抱える保護者。電気代が払えず暖房を使えない人もいる。民間の支援には限りがあり、年末年始も厳しい暮らしとなる。 「子どもに我慢ばかりさせてつらい」。茨城県の30代の女性が打ち明けた。結婚式場などで清掃のパートをし、手取りは約11万円。児童扶養手当などを受給し、ひとり親として何とか子ども2人を育てている。 スーパーで値札を見ては諦めることが多い。コメは高く、なかなか買えない。支援団体から数力月に1回、5キロのコメを無償で届けてもらっている。コメの節約のため、比較的値段の安いうどんを食卓に出すことが増えた。食べ盛りの小学6年の長男と1年の長女に「好きなものを食べさせてあげたい」といつも思う。 3年からサッカーを習っていた長男には、スパイクやユニホーム代がかさむため5年の時にやむを得ずやめてもらった。新年度から通う中学の制服代などに計10万円が必要。`めどは立たない。 働ける限り働いて子どもを育てると決めており、生活保護は考えていないと言う。「将来のことを考えると不安でたまらない」。睡眠薬を服用しないと眠れない毎日だ。 1日1食 物価高は収まる気配が見えない。総務省が発表したい11月の全国消費者物価指数によると、コメ類は前年同月比で63・6%も上昇し、電気代も9・9%上がった。 ひとり親は、子どもの急な病気への対応などから正社員雇用の壁は厚く、賃金が低い非正規の仕事になりがちだ。 最低賃金は全国平均時給で51円引き上げられた。だが、ひとり親家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)が12月に公表した調査によると、物価高の影響などで「1日1食」の親は20・0%、給食を含め「1日2食」の子どもは30・5%もいる。お年玉やおせち代など正月の費用を捻出できないと回答した親は72・6%に上った。冬休みは学校の給食がなく、子どもの昼食費をどうしようかと悩みは尽きない。 認定NPO法人「キッズドア」(東京)は、新年度に進学を控える子どもがいる困窮家庭約1200世帯に、餅やそばなどを無償で配布。事業責任者の渥美未零さんは「民間の支援には限界がある」と話す。 暖房使えず 高齢者も生活は苦しく、生活保護受給世帯の半数超を占める。若い人より職探しが難しく、体の具合が悪ければ就労できない。政府が低所得世帯に給付する3万円について、相模原市で1人暮らしの無職70代女性は「年金額が低く、3万円では焼け石に水」と嘆く。 弁護士や司法書士らが12月、生活保護を含む困窮者ら向けに全国一斉の電話相談会を開催した。中高年層を中心に「ガスや水道が止まった」「電気代を払えず暖房が使えない」といった切実な訴えが相次いだ。 困窮者の支援団体「反貧困ネットワーク神奈川」の共同代表を務める武井共夫弁護士は「物価高で生活が立ちゆかなくなる人が増えている」と指摘。「生活保護制度だけではなく、その手前でギリギリの生活をしている人へのセーフティーネットが必要だ」と語った。 ![]() |
【テヘラン、カイロ共同】パレスチナ通信などはイスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部ベイトラヒヤのカマルアドワン病院を包囲し、27日に放火したと伝えた。世界保健機関(WHO)によると、同病院は北部にある最後の主要医療施設で、放火によぴ業務が停止 した。イスラエル軍は医療施設を相次いで機能停止に追い込んでおり、一層の人道危機が懸念される。 イスラエル軍は病院がイスラム組織ハマスの拠点として機能していると主張した。中東のテレビ、アルジャジーラは医療関係者の話として、イスラエル軍が病院の数力所に放火。少なくとも5人の医療従事者が放火に巻き込まれたと伝えた。サウジアラビアやイランなど中東諸国はイスラエルを非難した。 一方、ガザ停戦交渉を巡り、米ニュースサイトのアクシオスは27日、主要争点になっているイスラエル軍のガザ駐留や恒久停戦を巡るイスラエルとハマスの溝が埋まらず、協議が停滞していると報じた。米国とイスラエルの当局者の間で、来年1月20日にトランプ次 期米大統領が就任する前の合意は困難だとの見方が出ている。 当局者はアクシオスに、米政府で政権が交代するため、交渉が数力月遅れる可能性を指摘した。ハマスはイスラエル軍のガザ完全撤収や恒久停戦を要求。イスラエルは恒久停戦を否定し、ガザの一部に軍を駐留させるよう求めている。 イスラエル軍は28日もがザを攻撃。アルジャジーラによると、中部マガジ難民キャンプでは、試験に向け勉強をしていた少女(12)を含む9人が死亡した。 ガザ保健当局によると、昨年10月の戦闘開始以降のガザ側死者は4万5千人を超えている。 ![]() |
気象庁は今年の天候まとめ(速報値)を発表し、11月までの日本の平均気温が、平年(1991〜2020年の平均)を1・64度上回ったと明らかにした。これまでの最高は昨年のプラス1・29度で、2年連続で過去最高となることが確実となった。気象庁の担当 者は「異常な高温だったと言える」と述べた。 今月22日までのデータでは、北海道と北陸を除く全ての地域で平均気温が歴代1位となり、平年との差が最も大きかった東北はプラス1・8度。地点別では今月20日時点で全国153のうち8割近い118地点で歴代―位となった。 1898年の統計開始以降、昨年までの平均気温の上位5年を2019〜23年が占めており、気温の上昇傾向が続く。日本近海の海面水温も11月末時点で平年より1・46度高かった。1908年の統計開始以降最高だった2023年のプラス1・1度を上回る見込 み。 気象庁によると、温暖化で気温が底上げされていることに加え、今年は偏西風が平年よぴ北寄りを流れるなどしたため暖かい空気に覆われやすく、夏(6〜8月)が過去最高タイ、秋(9〜11月)も過去最高の平均気温となった。 地点別では、今月20日時点で仙台市や水戸市などで平均気温が平年を2・2度上回った。他に岩手県大船渡市と福島県会津若松市で2・1度高かった。 年間の降水量は東日本太平洋側と沖縄・奄美でかなり多かった。春と夏にかなり多かった東海では1946年の統計開始以降で1位になった。 北日本を中心に高気圧に覆われやすく晴れた日が多かったため、年間日照時間は北日本でかなり多く、東―西日本で多かった。 台風の発生数は26個で、平年(25・1個)並みだった。 ![]() |
京都府と京都市の両教育委員会は27日、公立高付属中全5校の2025年度入試の最終志願状況を発表した。南陽高付属中(木津川市、定員40人)と園部高付属中(南丹市、40人)の2校が前年度より志願者を増やし、残り3校は減らした。 府立では、洛北高付属中(京都市左京区、定員80人)の志願者数が前年度比2人減の194人で志願倍率は2・43倍、福知山高付属中 (福知山市、40人)は11人減の54人で1・35倍となり、それぞれ志願倍率が開校以来最低となった。園部は4人増の38人となったが、0・95倍で3年連続で定員割れとなった。 南陽は9人増の109人で2・73倍だった。4校の志願状況について、府教委高校改革推進室は、「少子化の影響で中学受験をする生徒が減少傾向にある中、 志願者が増えた南陽は今年3月に1期生が高校を卒業して良い進学実績を残し、それが評価されたと思う。園部は定員割れはしたが、志願者が増えており、学校の努力が実を結んだ」と分析している。 定員が公立高付属中で最も多い120人の京都市立の西京高付属中(中京区)の志願者は前年度比16人減の414人で、倍率は3・45倍。5校とも入試は来年1月18日、合格発表は同22日。 ![]() |
2023年度の月平均残業時間が国の指針が定める上限45時間を超えた教諭は、中学校で42・5%に上ることが26日、文部科学省の調査で分かった。過労死ラインとされる80時間超も8・1%。文科省は、減少傾向にあるものの長時間労働が多い状況に変わりはないとして、業務の外部委託や情報通信技術(ICT)の活用による働き方改革を進める。 他の学校種の上限超えは、小学校24・8%、高校28・2%、特別支援学校8・4%。文科省は特に中学教諭が長時間労働になっているのは、部活動指導や不登校対応が要因とみている。 同日公表した23年度実施の公立学校教員の採用試験競争率(倍率)は小中高いずれも過去最低で、教職人気の低迷が浮き彫りとなった。 教諭の残業時間は、都道府県と政令指定都市、市区町村の計1798教育萎員会を通じて調査。初めて出退勤システムなど各学校が把握する客観的な勤務時間データを通年で調べた。政府は29年度までに残業時間を月30時間程度に減らすことを目標に掲げており、文科省は25年度からより詳細な実態把握を進め、勤務時間縮減の進捗度合いをみる指標とする。 残業時間を見える化するため、教諭らの在校時間を公表している教委は、都道府県が85・2%、政令市が85・0%だった一方、市町 村は23・2%にとどまった。 都道府県や政令指定都市の教育委員会などが2023年度に実施した公立学校の教員採用試験競争率(倍率)は、全国平均で小学校が22年度より0・1ポイント減の2・2倍、中学校が0・3ポイント減の4・0倍となるなど、小中高いずれも過去最低だったことが26日、文部科学省の調査で分かった。 特別支援学校なども含めた全体の競争率も0・2ポイント減の3・2倍で最低。高校はO・6ポイント減の4・3倍。小学校は6年連続で 最も低くなり、中学校は1990年度、高校は84年度以来の最低更新だった。 自治体別では、人事権がある都道府県・政令指定都市など68教委のうち、小学校で最も低いのは熊本県、鹿児島県、熊本市の1・2倍。中学校は佐賀県の1・6倍が最低だった。京都府は小学校3・1倍、中学校4・7倍、滋賀県は同2・4倍、3・7倍だった。 教員の長時間労働が是正されず、大量退職も相まって採用倍率の低下に歯止めがかからない。負の連鎖と言える状況で、文部科学省は働き方改革や処遇改善に力を入れる。だが教職の魅力向上に特効薬はなく、識者は授業数削減や人員増など抜本的な対策が必要だと指摘する。 埼玉県吉川市では4月以降、市内の小中学校で計7人が産休や病気休職になった。年度途中ですぐに欠員補充できず、中学校1校では週4こまある英語の一部の授業が2週間にわたり自習に。2学期には非常勤講師を確保できたが、生徒の学びに影響が出たとして市議会で取り上げられた。 産育休などで生じた欠員は、採用試験に落ちて再挑戦を目指す教員志望者らを臨時採用して埋めるのが一般的。だが近年は競争率低下で新卒合格者が増え、確保は簡単ではない。 吉川市の担当者は「退職者への声かけなど、やれることをやるしかない」と話す。 文科省は、大学の教職課程で学びながら民間企業に流れる学生を取り戻そうと、24年度の1次試験を約1力月前倒しし、標準日を6月16日とするよう各教育委員会に要請していた。25年度はさらに早め、5月11日にするよう求めている。 だが早期化の効果は思わしくない。24年に1次試験を早めた高知県では、小学校教員合格者のうち辞退者が7割を超えた。他自治体との併願者がいたことが主因とみられる。 同じぐ前倒しした大分県も一部教科で予定採用人数を満たせず、初めて追加試験を行った。担当者は。「出願段階から23年より少なかった」と、危機感をあらわにする。 教職人気が低迷する背景には「ブラック職場」とも言われる長時間労働がある。23年度に残業時間が月45時間を超えた教諭は、小学校で24・8%、中学校で42・5%。減少傾向にあるものの、デジタル化への対応や不登校の増加で業務は増える一方だ。 慶応大の佐久間亜紀教授(教育学)は、競争率は参考値に過ぎないとした上で「全国的な受験者数減少の背景には、教員の非正規化や授業数の増加による労働条件の切り下げがある」と指摘。「教員数を徐々に増やせるよう、国は計画的な教員定数の改善策を示すべきだ」とした。 ![]() |
不登校の児童、生徒が過去最多に上り、親が離職や休職を余儀なくされる問題が浮かび上がっている。 見守る心身の負担に加え、経済的にも追い込まれてしまいかねない。子どもとともに、親への支援も不可欠だ。 宇都宮市のNPO法人が2月、交流サイト(SNS)上で実施したアンケートでは、保護者約380人のうち、子の不登校をきっかけに「退職した」「休職した」が約2割いた。「早退、遅刻、欠勤が増えた」なども加えると、約7割に仕事への影響があったという。 収入が減った家庭は約4割で、うち月8万円超の減収となつた家庭は3割超に上った。 学校への行き渋りや不登校が始まると、親は学習の遅れへの対応やフリースクールなどの居場所探し、送迎などに時間をとられる。 近年、小学低学年の増加率が高く、うつ症状を患う場合もある。子どもを独りで家に置いていけないと、寄り添いたい親の思いもある。 「職場への連絡や謝罪、学校とのやりとり、子どもの対応などで、精神的にもやりきれない」「収入が減るのは苦しいが、子どものそばにいなくてはと考えていた」…。親からは切実な声が上がる。生活が一変してしまう状況は、見過ごしにできない。 心ならぬ離職は社会的、経済的な損失ともいえる。 防ぐための職場のサポートが重要だ。法定の介護休暇制度で対応できる場合もあるが、一定期間の時短勤務や週休3日制が可能になる制度を設けた企業もある。自宅で子どもを見守りながら働けるテレワークなど、企業側は柔軟な働き方の選択肢を検討してほしい。 フリースクールなど、民間施設を利用する家庭向けの経済的支援も課題だろう。 通学や利用料は大きな負担となっている。京都では舞鶴と亀岡の2市、滋賀では近江八幡や草津など11市町が補助制度を設けているが、限定的だ。どこに住んでいても一定の支援が得られるよう検討してはどうか。 親を孤立させないことが求められる。 文部科学省の調査では、不登校の子どもの約4割が学校内外の機関で専門的な相談や支援を受けていなかった。 先の臨時国会で成立した本年度補正予算には、保護者への相談支援体制を強化する事業が盛り込まれた。当事者の困難と向き合った系統的な支援が必要だ。 昨年、東近江市の市長が「不登校になる大半の責任は親にある」などと発言し、批判を浴びて撤回したが、「甘え」や「サボっている」といった偏見や誤解はいまだにあり、当事者や親を苦しめている。 社会で正しい理解や認識を広げて、共有していくことも欠かせない。 ![]() |
いじめや家庭不和などの理由で自宅や学校に居づらくなった10代たちのたまり場が、地方都市でも生まれている。東京・歌舞伎町の「トー横」、大阪の「グリ下」といった一角などで、若者らがトラブルに巻き込まれ社会問題にもなる中、中学生や高校生らが安心・安全に過ごせる居場所づくりが急がれる。 「家や学校では落ち着いて過ごせない。ここは自由でくつろげる」 福岡市博多区で一般社団法人こどもサポートネットワーク が運営する中高生向けフリースペース「セーブポイント」。中学2年生の女子生徒は笑顔を見せた。施設は「ちょつとホッとできる場所」を掲げ、室内では子ども同士でソファでおしゃべりしたり、テレビゲームに興じたり・勉強机で宿題をする生徒もいる。 2人以上の成人スタッフが常駐し、見守る。理事の永石好さんは「悩みを抱えた一人一人のためにどんな空間にしたらいいか、試行錯誤しながら運営しています」と話す。人間関係で疎外感、孤立感を抱え、「誰かとつながりたい」と居場所を求める子が増えているという。 若者たちが、交流サイト(SNS)などを手掛かりに集まるのが、福岡市中心部の警固公園だ。周辺は繁華街で、大小のトラブルが相次ぐ。福岡市は、中高生の居場所づくりを手がける民間団体の活動を後押ししようと、2024年度から運営方法などを助言するコーディネーターを置いた。 「中高生たちが犯罪の被害に遭わないようにするのに、居場所づくりは重要」と同市こども健全育成課の香月千恵課長は強調する。子どもたちが気軽に利用できるようにと、地区ごとに民間団体を補助する。 大阪・道頓堀にあるグリコ看板付近の遊歩道、通称「グリ下」。この近くに認定NPO法人「D×P(ディーピー)」が23年、若者の新しい居場所としての役割も果たす「ユースセンター」を開設。延べ約6千人が利用した。 予約なしで利用できる。広報担当の岩井純一さんは「訪ねてきた若者の声をしっかり聞く。『こうしたらいい』などと言わず、いっしょに考える。必要なサポートにつなげるようにしています」と話す。 D×Pは、LINEでの相談にも応じる。岩井さんは「居場所を求めるのは、多くがごく普通の子どもたち。トラブルに巻き込まれないように、大人の皆さんが支えてほしい」と訴える。同団体では活動を継続するための寄付を受け付け中だ。 こども家庭庁は、若者のための居場所づくりを全国的に推進している。 |
阿部俊子文部科学相は25日、小中高校で学ぶ内容や授業数を定める学習指導要領の改定を中教審に諮問した。多様な子どもに対応できるよう、学校現場の裁量拡大による教育課程の柔軟化の検討を要請。1こまの授業時間を5分短縮して生じた余剰時間を個別学習に充てることなどを想定している。教員の負担軽減が課題となる中、年間の総授業数は「現在以上に増加させない」とした。 中教審は2026年度中に改定内容を答申する方針。今後、専門部会で本格的な議論を進める。次期指導要領の全面実施は、小学校が30年度、中学校が31年度、高校は32年度以降になる見通し。 諮問は、学ぶ意義を見いだせない子どもや不登校の増加などを踏まえ、画一的な教育から脱した「多様性を包摂する教育の実現」を強調。学校それぞれの課題に応じたカリキュラム編成ができる仕組みの導入を目指す。 具体的には@「小学校45分」「中学校50分」と規定されている1こまの授業時間を5分短縮し、浮いた時間を個別学習や探究的な学びに振り向けるA現在は学年ごとに定めることが多い学習内容区分の弾力性を高め、理解度に応じた授業を受けられるようにする―などを可能にしたい考えだ。 生成人工知能(AI)といったデジタル技術の急速な発達を踏まえ、小中高を通じた「情報活用能力の抜本的向上」を図る方策の検討も要請。情報モラルなどに関する教育の強化も図る。 常態化する教員の長時間労働への対応に関しては、指導要領だけでなく、入試の在り方や教科書の内容・分量なども含め、過度な負担感が生じにくい条件整備を検討するよう求めた。 今回の諮問は教員の負担軽減という条件整備を抜きに、次の時代に合わせた学習指導要領の実施は不可能だと認識していると言え、評価できる。諮問では児童生徒の多様性に応じた柔軟な教育課程の編成など学校の裁量拡大をうたった。一人一人に合わせた学びや探究型の学びに は、授業準備など学校現場のコストがかかる。正規教員の配置拡充による授業の持ちこま数の削減が不可欠だ。情報活用能力の重視は技術が進展する時代では不可避だが、技術への適応だけになってはいけない。人との関わりの大切さなど技術を相対化し批判的に見る視点も同時に育てるべきだ。 ![]() |
2030年代の学校教育を見据え、学習指導要領の改定が諮問された。文部科学省は現場の自由度を高め、それぞれの課題に応じた創意工夫を促したい考えだ。焦点は教員や子どもの負担軽減との両立。学習内容や授業数の削減に踏み込めば、学力低下批判が起きる懸念があり、現状を大きく変えずに新たなことに取り組むという難しい対応を迫られる。 10月上旬、東京都目黒区立駒場小。音楽室で音のクイズを作ったり、教室で速く走る方法の比較をデジタル端末でまとめたりする3〜6年生の姿があった。一人一人が興味を持ったテーマを決めて学ぶ、6時間目の「こまば個人研究」だ。 学ぶ意欲向上狙う 目黒区の多くの小学校では通常1こま45分の授業を40分に短縮。文科省の特例措置を受け、浮いた時間は探究型の学びや基礎学力を伸ばすための個別学習などに充てる。受け身ではなく、児童が自ら計画を立て実行する力を育てるのが狙いだ。 こうした時間は年間で100こま分以上。児童の学びだけでなく、研修や教材研究といった教員の自己研さんにも回せる。秋山美栄子校長は「子どもは自ら学ぶ姿勢が身に付いていると感じる。教員も授業を充実させるための時間が取れるようになった」と話す。 文科省が教育課程の柔軟化を求めるのは現状への危機感からだ。日本の子どもは国際的な学力調査の順位は高いものの、自律的に学ぶ意欲に乏しく、自己肯定感が低いとされる。学校に目を向けると、不登校の小中学生が34万人超。発達障害の可能性がある児童は1クラスに3・6人と推定されるなど、支援を要する子どもも増えている。 現場は削減を要望 こうした課題に対処するため、諮問は多様な個性や特性、背景を持つ子どもに向き合いながら、一人一人の意欲を高める教育課程が必要だと指摘。時間配分を柔軟にし、子どもが自ら学び方を選択できる授業づくりを進める方向性を示した。 約10年に1度のペースで見直される学習指導要領は、改定のたびに内容が増え、教員は小学校英語の教科化やデジタル端末を活用した授業改善などの対応に追われている。教科書のページ数は膨らみ、「終わらせるだけで精いっぱい」(関東地方の小学校30代教諭)との声もある。 小学校高学年の年間標準授業数は00年代は945こまだったが、今では1015こま。高学年では連日6こまが当たり前で、午後にはぐったりしている児童が少なくない。教員にも子どもにも過度な負担になっているとして、現場には授業数や学習内容の削減をするべきだとの意見が根強い。 しかし、諮問は「負担への指摘に真摯に向き合うことが必要」としつつも、年間の授業数は「現在以上に増加させない」との表現にとどめた。 ゆとりのトラウマ 生成人工知能(AI)への対応といった新たな課題が次々と生まれる中、根本的な要因を改善しないまま、余裕がない現場にさらなる努力を強いることになりかねない。 それでも文科省には「ゆとり教育」で巻き起こった学力低下批判の。トラウマがあり、幹部の一人はこうこぼす。「今は教員の働き方が重視されるが、仮に国際調査で子どもの学力が下がれば大批判が起きる。簡単に年間の授業や学習内容を減らすとは言えない」 |
幼稚園から高校まで全て公立校に通った場合、授業料や学習塾代などを合わせた「学習費」の総額は596万円に上ることが25日、2023年度の文部科学省の試算で分かった。前回21年度より22万円増え、比較可能な06年度以降で過去最高。全て私立に通う場合も138万円増の1976万円で過去最高となり、公立の3・3倍だった。 文科省は増加の背景について「新型コロナウイルスの影響が限定的となりい修学旅行や体験活動が再開されたことや物価高などが要因」としている。 試算は全国から抽出した保護者約2万2千人へのアンケートを基に、23年度の1年間に支出した学習費の学年ごとの平均額を15年分合計した。学習費には、授業料のほか、給食費や文房具代、部活動の会費などが含まれる。 塾代は、公立私立ともに小中高で学校外活動費に占める割合が最高だった。 年平均額は、公立小が5万6千円(前回比2万5千円減)、私立小が26万4千円(同9千円減)。公立中23万円(同2万円減)、私立中16万8千円(同7千円減)で、公立高は14万8千円(同2万7千円増)、私立高は11万3千円(同5万9千円減)だった。 ![]() |
京都府の市町村長向けの「府こどもの居場所づくりトップセミナー」が、京都市下京区のホテルであった。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(東京都)の湯浅誠理事長が講演し、子ども食堂が子どもの成長に与える利点や行政の役割として寄付呼びかけなど後方支援が求められることなどを説明した。 子ども食堂の普及に取り組む湯浅さんは、地域のつながりの希薄化などを背景に食堂の数が年々増加し、今年1万力所を超え中学校の数を上回ったことを説明した。「子ども」を名乗りながらも実際は3分の2の食堂が高齢者も参加している実情を紹介し、「多世代交流が行われており、地域コミユニティーづくりにつながっている。行政では子どもと高齢者は担当部署が異なるが、一緒にやれることはないか考えてほしい」と問いかけた。 また、データを示しながら食堂に複数回、長期間通うことによって子どもの自己肯定感や社会性が高まるなどの利点を力説。食堂運営の大部分が寄付など民間資金で賄われている現状を踏まえ、「子ども食堂の生命線は自由と多様性で、行政が予算をかけるとそれらが損なわれる可能性がある。資金力ではなく信用力を生かし、民間企業とつないだり寄付を呼びかけたりなど後方支援に力を入れてほしい」と訴えた。 セミナーは、むすびえと一般社団法人・地方行財政調査会(東京都)が18日に開催し、府内の首長や担当者ら約50人が参加した。 ![]() |
政府は24日、公立中学校の1学級当たりの上限人数を2026年度以降、現在の40人から35人へ順次引き下げることを決めた。公立小中学校の教員に残業代の代わりに支給している「教職調整額」は、現行の基本給の4%を25年度から段階的に引き上げ、30年度に10%へ増額する。阿部俊子文部科学相と加藤勝信財務相が同日の予算折衝で正式合意した。 合意文書ではこれらに加え、教員の負担軽減に向けて働き方改革を推進し、今後5年間で平均残業時間を3割削減して月30時間程度にすることを目標に掲げた。 阿部氏は合意後の記者会見で「公教育の再生に向け、教師を取り巻く環境が抜本的に変わっていく」と述べた。 中学校の35人学級は、26年度から3年かけて中1から順次導入する方針で、教職員定数の改善は計約1万7千人を見込む。先行する小学校は25年度に全学年で35人学級が実現する。 教職調整額は25年度に5%に引き上げ、30年度に10%とする。財務省が求めていた残業時間削減などの条件は付けない。文科省は来年の通常国会に教員給与特別措置法(給特法)の改正案を提出する。1972年の施行以来、増額は初となる。 ただ、27年度以降に働き方改革の進捗や財源確保の状況を確認し、教職調整額の引き上げ方法などを再度検討する。 25年度の教職員定数は、小学校の教科担任制や中学校の生徒指導担当の拡充などにより、現場の課題に応じて政策的に配分する「加配定数」が2190人増となる。文科省は当初、小学3、4年生に教科担任制を広げる方針だったが、まずは教員の負担が重い4年生で実施する。 中学校の35人学級の実現に踏み切ったことは評価できるが、中学は地域への移行かなかなか進まない部活動指導の負担を減らさないと、長時間労働の改善は難しい。授業持ちこま数が多い小学校は教科担任制の推進が欠かせず、今回示された教員定数の改善では小中とも十分とは言えない。学校は授業や生徒指導などの本来業務が増えており、残業を国が目標に掲げた月30時間まで引き下げるには、現場の合理化努力だけでは限界がある。国の責任でしつかり予算を確保し、教員をさらに増やす必要がある。 京都市内の教員からは、「手取り増」につながる教職調整額の引き上げを一定評価しながらも、増員や業務削減を強く求める声が聞かれた。 京都市内の公立中で働く女性教諭(32)は「給与が上がるのはありがたい」としつつ、「教職調整額は何の仕事への対価なのかが分かりにくい。生徒指導、保護者対応など個別に手当を設定する方が、仕事の精選が進むのではないか」と首をひねった。自身は、子どもの人格形成に関われる教員職に魅力を感じ、生徒指導に多くの時間をかけているが、学校がすべき仕事かどうかの線引きがあいまいで、さまざまな業務を残業で対応していることに疑問を抱いているという。 50代の男性校長も「教員が質の高い授業を提供することに専念できるよう、福祉や警察の力を借りられるような環境整備こそ進めてほしい」と注文を付けた。 京都教職員組合(左京区)の中野宏之執行委員長は、教員の処遇改善の流れを評価する一方で、「『定額働かせ放題』の仕組みが維持されたことは問題だ」と指摘する。 同組合が今年11月に府南部の一部の小中学校でアンケートしたところ、「勤務実態に見合った残業代」よりも「定時退勤」を選ぶ教職員が2倍以上多かった。学校現場では残業削減の圧力が強く、自宅に仕事を持ち帰ったり、早出して授業の準備をしたりする教員がいるという、中野さんは「一人一人の授業の持ち時間を減らし、授業の合間に翌日の準備ができるような環境にするためには、増員こそ必要」と訴える。 地方公務員である公立小中高校教員の給与は、3分の1を国が負担し、残り3分の2を都道府県や政令指定都市が負担している。京都市教育委員会教職員人事課は「金額が見合うものかは別として、教職調整額の引き上げは教員の処遇改善につながる。対応する予算を確保していかないといけない」とした。 ![]() |
【エルサレム共同】イスラエル紙ハーレツは24日までに、パレスチナ自治区ガザを南北に分ける「ネツァリム回廊」で、イスラエル軍が民間人 も恣意的に殺害していたと報じた。現役兵士や予備役、指揮官らの証言に基づき伝えた。回廊に立ち入ろうとした人を全て「テロリスト」とみなしたといい、無法状態での攻撃が行われた可能性が高まった。 ハーレツによると、軍将校らは、回廊が「殺害地域」とされ立ち入る者は射殺される」と説明。明確な境界はなく「狙撃兵が見渡せる範囲」 で「われわれは民間人を殺害し、(死者は)テロリストとしてカウントされる」という。 最近除隊した将校は、軍報道官が死者数を発表したことで「部隊間に競争が生まれた」とも明かした。軍がイスラム組織ハマスの戦闘員200人以上を殺害した」と発表したが、実際に戦闘員と確認されたのは10人だけだったこともあった。また、兵士の一人は、16歳ぐらいの少年が射殺され、所持品から戦闘員でなかったと判明したケースがあったと証言した。 ベテラン将校は「師団の指揮官がほぼ無制限の権限を持つようになった」と指摘。建物の空爆や爆撃には軍参謀総長の承認が必要だったが、現在は下級の将校も決定を下しているという。また空軍が当初、未確認の標的や人口密集地への攻撃を拒否する抑止力の役割を持っていたが、徐々 に失っていったとしている。 イスラエル軍はハーレツに対し「この地域での攻撃は、必要な手順に沿って実施されている」とコメントした。 ![]() |
発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が全国で検出されている問題で、環境省は24日、定期的な水質検査と基準値を超えた場合の改善を法律で義務付けることを大筋で決めた。現在は、国が定めた暫定的な目標値を超えても水質改善は努力義務にとどまるが、水道法上の「水質基準」の対象に引き上げて水道事業を担う自治体などに対応を求める。 社宅や病院など特定の居住者へ、飲用や浴用のために給水する「専用水道」では初めての調査結果も公表。京都や大阪など11都府県の44件で暫定目標値を超える値が検出された。自衛隊施設では目標値の30倍が検出された場所もある。 PFASは水や油をはじく製品の加工や、泡消火剤などに使われてきた。国内で製造と輸入は禁じられたが、土壌などに残留し、水道水や井戸水から検出されている。国は暫定目標値を代表物質PFOAとPFOSの合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)としており、基準値も同じ値とする。3ヵ月に1回の検査を基本とする。関連省令を改正し、2026年4月の施行を目指す。 専用水道の20年度から24年度の調査では、回答を得た1929件のうち、10都府県の42件で暫定目標値を超えていた。自衛隊施設で高い数値が出ており、調査後に福岡県など2件でも超過報告があった。具体的な数値が示されたのは一部の国施設だけで、民間施設の詳細や値は示されなかった。 値が最も高かったのは航空自衛隊芦屋基地(福岡県)で、目標値の30倍となる1リットル当たり1500ナノグラム。東京にある陸上自衛隊東立川駐屯地、陸上自衛隊小平駐屯地、府中刑務所、岐阜県の航空自衛隊岐阜基地では1・7〜6・9倍程度たった。 「専用水道」に関する国の調査で、自衛隊施設から暫定目標値を超過する有機フッ素化合物(PFAS)の値が検出された。自衛隊ではかつて消火訓練などでPFASを含む泡消火剤を使用していたとみられ、環境省はPFASが土壌に残り、地下水に浸透した可能性があるとみている。施設を抱える自治体からは「しっかりと対策をしてほしい」などの声が上がった。 防衛省によると、陸海空3自衛隊ではPFASのうち、PFOSやPFOAを含有する消火剤を保有。いずれも発がん性があるとして規制された2021年までに使用をやめ、うちPFOSの消火剤は今年9月末までに全て処分を終えた。PFOAの消火剤も今後、他のものに置き換える見通し。 目標値を超える値が出た陸上自衛隊駐屯地や航空自衛隊基地では、井戸水や湧き水を施設内で暮らす隊員らが専用水道を通して利用。いずれの施設も上水道に切り替えるなどの対策を進めているという。 防衛省の担当者は「健康被害などは把握していない」とする一方「周辺自治体に情報提供し、連携して対応を検討したい」と話した。 ![]() |
京都市山科区役所に、中高生世代のための活動場所「ゆうすぺーすやましな(ゆうすぺ)」がオープンした。くつろげるフリースペースや自習室を設け、平日の週2日開く。学習支援や相談事業も行い、若者に家や学校とも違う新たな居場所を提供する。 区が独自事業として、庁舎―階の旧税務センターに開設した。区内には山科駅の徒歩圏内に市山科青少年活動センターがあるが、区役所が立地する区南部からはアクセスしにくい課題があった。ゆうすぺは南部地域の中高生世代の活動・支援拠点に位置付け、同センターと同じ市ユースサービス協会が運営。NPO法人山科醍醐こどものひろばとも連携する。 開設は毎週月、金曜日の午後3〜6時。名前や連絡先などを登録すれば無料で利用できる。WI−FIや各種ボードゲームを備え、飲食物の持ち込みも可能。常駐するユースワーカーが相談に応じて適切な支援につなげるほか、16席の自習室では大学生ボランティアが学習支援を行う。 20日にあった開所式で山口ひかり区長は、「区の実情にあった事業を市ユースサービス協会と連携して実施できるのは心強い。試行錯誤し良い場所にしたい」と抱負を述べた。ゆうすぺは来年度以降も開設し、利用状況に応じ開設日や時間の拡大も検討するという。 次回は来年1月6日に開く。祝日は休み。学校の長期休暇期間も開設する。 ![]() |
使用済み核燃料を保管する乾式貯蔵施設を福井県の高浜原発構内に新たに設置する関西電力の計画について、原発30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の住民を対象に市民団体が意識調査したところ、8割が計画を知らないとの結果になった。UPZ圏内にあっても原発立地県でない京都府には計画に関わる権限がないが、市民団体は24日、府としての住民説明会開催などを求める要望書を西脇隆俊知事宛で提出した。 「避難計画を案ずる関西連絡会」が6〜111月、UPZ圏内の府北部7市町に暮らす約1万6千世帯の一部を戸別訪問して調査し、857世帯から回答を得た。計画について78%が「知らない」と回答し、電力会社や自治体による住民への説明については82%が「説明するべき」とした。地震と同時に原発事故が起これは避難や屋内退避ができるか尋ねると「できる」11%で、「できない」が49%と、避難の課題も浮き彫りとなった。 福井県では美浜、大飯、高浜の3原発の使用済み核燃料プールが3〜5年後に満杯になる見込みで、関電は、使用済み核燃料を専用容器に収納、保管する新たな乾式貯蔵施設を各原発敷地内に設置する方針。原子力規制委に設置を申請中で、高浜では許可が出れば来年着工、2027年運用開始を予定する。立地県の福井県は申請することを了承するなど計画に関わるが、府には関わる権限がない。 記者会見した同会のアイリーン・美緒子・スミスさん=京都市左京区=は「情報が知らされておらず、住民は置き去りの状態だ。府は住民説明会を開催してほしい」と訴えた。 ![]() |
宇治市の中学生が23日、市立中学校の校則やルールを明文化し、公開するよう求める請願を市議会事務局に提出し、受理された。生徒は、市と市教育委員会に対し「ルールづくりの議論ができる風通しの良い環境を」と訴えている。26日開会の市議会12月定例会で審査される見通し。 市立中学3年の湯浅六花さん(15)。請願では▽校則などを学校ホームページに掲載して生徒が確認できるようにする▽生徒を交えてルールづくりができる土壌をつくる▽生徒が自主的に行動できる雰囲気を市全体でつくる―ことを求めている。 湯浅さんは今年の夏ごろ、自身が通う学校に校則などを記した書類がないことに疑問を持った。2学期に入り髪の毛を染めて登校したところ、禁止の根拠について教師から明確な説明がなかったことから、請願によって市全体の問題として提起することにした。 23日、市役所で開いた会見で「生徒白身が納得した上で守らないと校則やルールに意味がない。時代に合わせて見直しもできるようにしてほしい」と話した。 市教委によると、市立中学校には学校ごとの校則などが存在する。明文化・公開の有無や、作成に当たっての生徒の関与の度合いはそれぞれで異なり、学校の判断に委ねているという。 請願は来年1月下旬の本会議で採決される予定。市議会事務局によると、同市で中学生が請願を出すのは初めてとみられるという。 ![]() |
こども家庭庁と文部科学省は23日、共働きや、ひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童の解消に向け、2024〜25年度に取り組む対応策をまとめた。民間事業者の参入促進や、夏休み中の受け皿整備に対する国の補助を盛り込んだ。 対応策では、待機児童が300人以上いる都道府県が、民間事業者の参入を促す取り組みをする際、国が経費を補助する。学童保育の見学会開催や、大学と連携したインターンシップ派遣などを想定する。 夏休みに、学童保育の事業者が別の場所に一時的な分室を開設した場合、国などが運言質を補助する。 ![]() |
立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の野党3党は23日、公立小中学校の給食費を原則無償化する学校給食法改正案を衆院に共同で提出した。物価高が続く中、保護者の経済的負担を軽減する狙い。衆院での与党過半数割れを踏まえ、野党が連携して来年1月召集の通常国会で政府、与党に実現を迫る考えだ。 提出後、3党の政調幹部はそろって記者団の取材に応じた。立民の城井崇氏は「衆院で可決し、成立まで持っていきたい」と強調した。維新の青柳仁士氏も全会派の賛同を取り付けての成立に意欲を示した。国民の浜口誠氏は「引き続き連携したい」と語った。 改正案は、公立小中学校を設置する地方自治体に対し、国が必要な費用を交付すると規定。施行は来年4月1日とした。年間の経費は約4900億円を見込む。 ![]() |
公立小中学校の教員の基本給に残業代の代わりとして上乗せ支給している「教職調整額」について、政府は現状の4%を2025年度から段階的に引き上げ、30年度までに10%へ増額する方針を固めた。さらに、財源を確保した上で26年度から中学校を順次35人学級とすることも決めた。関係者への取材で21日、分かった。 加藤勝信財務相と阿部俊子文部科学相が24日にも25年度予算案について折衝し、正式決定する。教職調整額は1972年施行の教員給与特別措置法(給特法)で4%と定められており、増額は初となる。 教職調整額を巡っては、文科省と財務省の意見が対立し、調整が続いていた。文科省は来年度に13%ヘー気に増額することを求め、財務省は残業時間の削減を条件に10%まで段階的に増やす案を示していた。自民党の特命委員会は条件なしでの「10%以上」を求めていた。 関係者によると、文科省と財務省は、残業時間の削減といった条件を付けずに教職調整額を段階的に引き上げ、30年度に10%とすることで合意した。 公立小中学校の1学級当たりの上限人数は、小学校が11年度に小一のみ40人から35人になった。小2以降は21年度から順次引き下げられ、25年度に小6が35人となり、全学年での35人学級が実現する。 政府は現在40人となっている中学校について、26年度に中1を35人とし、その後、中2と中3を順次引き下げる方針だ。 ![]() |
2023年度に公立の小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に原則90日を超えて休み「休職」となった教員は、22年度より580人多い7119人となり、3年連続で過去最多となったことが20日、文部科学省の調査で分かった。全教員に占める割合は0.77%(130人に1人)。1ヵ月以上の「病気休暇」取得者を含めると1万3045人(1.42%)に上った。性犯罪や性暴力などで懲戒処分や訓告を受けた教員も320人で最多だった。 精神疾患による休職者は20年度まで5千人前後が続いていたが、その後の3年間で2千人近く増えた。背景には業務の多忙化などがあると指摘されており、教育委員会が把握した要因は「児童生徒への指導に関すること」が26・5%で最も多く、「職場の対人関係」23・6%、「事務的な業務に関すること」13・2%と続いた。 文科省は「厳しく受け止めている」とし、各教委と連携したメンタルヘルス(心の健康)対策のほか、教員定数の改善などによる業務負担軽減をさらに進めるとした。 精神疾患が理由の休職者のうち、年度が変わった今年4月1日時点で復職したのは39・1%に当たる2786人。2903人は休職が続いており、2割に当たる1430人は退職した。 年代別の休職者は、30代が2128人で最多。1ヵ月以上の病気休暇取得者も合わせると30代が3691人で人数は最多だが、各年代の在職者数に占める割合は20代が2・11%(3226人)で最高だった。 採用後1年未満で退職した教員は過去最多の788人。うち269人は精神疾患が理由だった。 性犯罪や性暴力などで懲戒処分や訓告を受けた教員のうち、児童生徒への行為だったのは157人で、停職の2人以外は懲戒免職。体罰で懲戒処分などを受けた教員は22年度から54人減の343人だった。 教員は「子どものために」と、本来は地域や家庭が担うべきことも含めて多くの役割を引き受けてきたが、それが限界を迎えていることの表れだ。私の研究では、児童生徒の不登校率の高さや生活習慣の乱れが、病休率と関係していることが明らかになった。教員の負担が高まることが背景にあるとみており、学校や教育委員会だけでなく、社会全体で危機感を共有する必要がある。精神疾患の増加要因は複雑で、効果が出るまで何年もかかるかもしれないが、検証しながら対策を続けていくしかない。 文部科学省の調査によると、2023年度に性犯罪・性暴力などで懲戒処分や訓告を受けた教員が前年度比79人増の320人と初めて300人台となった。うち児童生徒への行為だったのは38人増の157人。子どもの被害に歯止めがかからず、文科省は教員への予防教育の徹底を図る。 文科省によると、児童生徒への行為の内訳は、最も多いのが「性交」の61人で、次いで「わいせつな行為」40人など。教員の年齢は20 代73人、30代41人、40代19人、50代以上24人だった。東京都練馬区立中の元校長が、過去に勤務した中学校の女子生徒への準強姦致傷罪などで実刑判決を受けた事件も含まれる。 22年施行の「教員による児童生徒性暴力防止法」では、性暴力などで懲戒免職となり免許を失効した元教員の復職を厳しく制限。26年度には、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する「日本版DBS」も始まる予定だ。 前歴のある人が教員になるのを防ぐとともに、新たに加害に走る教員を生まないための取り組みも急務で、文科省は教員への研修などを通じ、交流サイト(SNS)で子どもと私的なやりとりをしないことなどを指導している。 文科省幹部は「各教育委員会と連携し、禁止事項の浸透を図りたい」と話している。 ![]() |
スポーツ庁は20日、小学5年と中学2年の全員を対象とした2024年度全国体力テストの結果を公表した。50び走や握力など実技・8種目の結果を点数化した体力合計点は、小5女子が過去最低を更新した一方、中2男子は23年度より改善し、新型コロナウイルス禍前の水準に戻った。小5男子と中2女子はほぼ横ばいだった。 分析に協力した中京大の中野貴博教授は、中2に比べて小5の改善がみられないと説明。「生活習慣を確立する時期が、コロナ禍と重なったことが影響している可能性がある」とした。 スポーツ庁担当者は「地域のスポーツ環境整備などにより、生活全体を通して運動機会の確保を目指したい」としている。 体力合計点(80点満点)の平均値は小5が男子52・5点(23年度比0・1点減)、女子53・9点(同0・4点減)、中2が男子41・7点(同0・5点増)、女子47・2点(同0・1点増)。 種目別では、小5の「握力」「立ち幅跳び」、中2の「持久走」で、男女とも過去最低を更新。「長座体前屈」は中2男女で過去最高だった。 質問調査も実施。授業以外での運動時間は、1日1時間に相当する「週420分以上」の割合が23年度に比べ小学校で上昇。中学は男子が変わらず、女子は低下した。 テレビやスマートフォン、ゲーム機などの平日1日当たりの視聴時間が「3時間以上」の割合は、小中で男女とも増えた。特に中2の増え幅が大きかった。 京都府教育委員会は20日、2024年度全国体力テストの府内公立小中学校の結果を公表した。全8種目を点数化した合計点の平均値は、中学男子のみ3年連続で上がったものの、小学男女、中学女子は下がった。府教育委員会は「新型コロナウイルス禍で低下した数値が前年度で底を打ったが、まだ上昇軌道には乗っていない」と分析している。 同調査は2008年度から、小学5年生と中学2年生を対象に実施されている。京都では京都市立を含む小学校356校1万8356人、中学は170校1万5958人が受けた。 小学生は、男子はボール投げと50メートル走が全国平均を上回ったものの、前年度より数値が改善したのは、上体起こし、反復横とび、ボール投げの計3種類にとどまった。女子は合計点が過去最低を更新したが、8種目全てで前年度を下回り、50メートル走以外が全国平均以下だった。 中学生は、男子は7種目で前年度を超えて、20メートルシヤトルランと50メートル走が全国平均を上回った。全国平均には及ばなかったが、立ち幅とびが過去最高となった。女子は反復横とびと20メートルシャトルラン、50メートル走の計3種目が全国を上回った。 運動と生活習慣に関する調査では、体育の授業以外に運動を週420分(1日60分)以上行う割合は、小学男子が49・8%、同女子が26・7%、中学男子は76・4%、同女子は56・1%。スマートフォンやゲームなどの映像視聴が平日2時間以上の割合は小学男子64・9%、同女子は58・2%、中学男子80・5%、同女子80・6%といずれも前年度を上回った。 府教委保健体育課は「視聴時間の増加は運動機会や時間の減少につながり、体力や運動能力の発達や、健康的な生活に大きな影響を及ぼす。(自宅でスマホを見て過ごすといった)コロナ禍で定着した習慣はなかなか変わらない。前向きにスポーツに取り組む気持ちを育む授業や、運動習慣の定着を進めていく」としている。 ![]() |
厚生労働省は18日、労働者全体のうち労働組合加入者の割合を示す組織率が、今年6月末時点で推定16・1%と発表した。前年より O・2ポイント下がり、現行の集計方法となった1953年以降の最低を3年連続で更新した。組合員数は前年より2万5千人減少し、99 1万2千人となった。 主要団体の組合員数は、連合が5千人減の681万3千人、全労連が1万3千人減の45万1千人。業種別では宿泊・飲食サービス業 や鉱業で増え、郵政や生協などの複合サービス事業は減少した。パートタイムで働く組合員は5万3千人増えて146万3千人で、過去最多となった。女性は3万2千人増の350万6千人だった。 53年に36・3%だった組織率は、近年低下が続いている。 ![]() |
京都府内の高校を今春卒業した生徒の大学への進学率は前年比1・0ポイント増の74・0%で過去最高を更新した。都道府県別で、74・2%の東京がトップで、京都は前年の1位から2位になった。府が18日、本年度の文部科学省の学校基本調査の結果(確報値)として公表した。 卒業生数は前年比602人減の2万757人で、このうち短大、高校専攻科を含む大学進学者は、同228人減の2万5370人だ った。公立高卒業生の進学率は68・3%(1万665人中7285人)で、私立高卒業生は80・2%(9958人中7982人)だった。国立高は76・9%の103人が進学した。浪人した場合は大学進学者に含まれない。 京都の進学率が全国トップ水準にある理由について、府教委高校教育課は、京都や近隣府県の大学の多さを理由に挙げた上で、「新型コロナ禍以降、奨学金制度を充実させる大学も増えた印象があり、経済的な面でもハードルは下がったのではないか」と分析している。私立高の在籍割合が高い京都の特徴も進学率の押し上げに影響しているという。 東京、京都を除く道府県別の大学等進学率は、神奈川が3位(69・4%)、大阪4位(68・9%)、兵庫5位(68・6%)、埼玉6位(65・9%)と続いており、首都圏や関西圏が上位を占める。滋賀は前年比0・2ポイント増の61・8%で13位。全国平均は61・9%だった。 京都の専修学校(専門課程)への進学者は243人減の2552人で12・3%、就職者は1266人で6・1%だった。 ![]() |
気象庁の森隆志長官は18日の定例会見で、今年の日本の平均気温が昨年を上回り、2年連続で過去最高となる見通しだと明らかにした。昨年は平年値(1991〜2020年の平均)を1・29度上回っていた。 詳しいデータがまとまり次第、各地の平年差などの詳細を明らかにする。1898年の統計開始以降、平均気温の上位5年を201 9〜23年が占めている。今年が記録を更新する見通しとなったことで、近年の上昇傾向が改めて明確になった形だ。 森長官は地球温暖化で気温が底上げされ、今後も暑い年が多いとみられるとした上で「気象庁の季節予報を参考にして備えてもらえ ればありがたい」と述べた。 気象庁によると、地球温暖化の影響に加え、今年は偏西風が平年よぴ北寄りを流れ、暖かい空気に覆われやすかった。夏(6〜8月)、 秋(9〜11月)ともに過去最高の平均気温となった。 日本近海の海面水温の年平均も、昨年(平年値プラス1・1度)を上回り、2年連続で過去最高になる見通しという。 ![]() |
日本学術会議の法人化を巡り、政府有識者懇談会の報告書がおおむね取りまとめられた。会員選考時の「選考助言委員会」の設置など学術会議側の懸念が残る内容で、一部の学者は「そもそも任命拒否問題の議論のすり替えだ」と批判を強める。ただ以前と比べ世論の関心は低く、会員からは「議論を長引かせ続けても将来に悪影響が出るだけだ」とあきらめに似た声も漏れる。 「政府は改革と称する学術会議への介入をやめるべきだ」。学者らが設立した団体「大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム 」は17日、緊急声明を発表し危機感を訴えた。 学術会議の議論は2020年9月の菅義偉元首相による会員候補6人の任命拒否が発端だ。決定過程を国が公表しないのは違法だとして弁護士らが提訴。現在も訴訟が続いている。 政府からの理由の説明がないまま、自民党プロジェクトチーム(PT)で組織の在り方を見直す議論が始まった。学術会議元会長の広渡清吾東京大名誉教授は「社会の批判をそらすために利用した。やり方として卑劣だ」と憤る。 政府は23年4月、学術会議の反発で学術会議法改正案の国会提出を断念した。再断念は避けたい政府に対し、学術会議の光石衛会長は今年7月「懸念が十分に払拭されないなら重大な決意をせざるを得ない」と強い文言でけん制。今年11月には懇談会座長の岸輝雄東京大名誉教授が「政府も譲れるところがないか検討していただきたい」と会合後に迫った。 自民党からも「少数与党という状況の中でやっていかないといけない。ここが正念場だ」との発言が出た。PTの座長を務める井上信治衆院議員は今月17日の会合冒頭、議員らに「学術会議と対立することが目的ではない」と呼びかけた。 岸座長は「両者がずいぶん歩み寄った」と胸を張る。ただ懇談会の報告書は、学術会議の活動を確認する評価委員会の委員や監事を首相任命とするなど、学術会議側が懸念を示した項目は、基本的にはそのまま残る。 長期化する議論に学術会議の会員からも「もうそろそろまとめていいのでは」「けんかを続けていると、予算も減り、下手すれば消滅しかねない」との声が上がり始めていた。 隠岐さや香東京大教授(科学史)は「学術会議が死んでしまう、という思いだ」と現状に苦言を呈す。会員からの声についても「既に独立した判断ができなくなっているのではないか」と指摘する。「報告書では、政府が譲歩したように見えるかもしれないが、今後の活動に政府の意向が通りやすくなるのは間違いない」 ![]() |
経済産業省が17日提示した次期エネルギー基本計画の原案は、原発の復権を強く打ち出した。少数与党で弱体化し、政治的な資源を割く余裕がない石破政権を横目に、経産省が議論を主導。脱炭素化に加え、脆弱な供給体制、人工知能(AI)普及に伴う大量電力消費時代の到来を訴え、念願である原発建て替えの要件緩和にもこぎ着けた。 「今回の狙いは軌道修正だ」。経産省幹部はこう解説する。前回の計画は菅義偉元首相が表明した「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」達成に向け、政治主導で再生可能エネルギーの偏重を迫られたとの思いがある。 現在は閣外の河野太郎行政改革担当相と小泉進次郎環境相(いずれも当時)が再エネの割合を高めるよう水面下で強く働きかけたと、前回のとりまとめ作業を知る関係者は証言する。それが野心的な30年度の再エネ目標36〜38%につながった。 今回は対照的に政治の影が薄かった。自民党総裁選で一時言及した「原発ゼロ」を早々と封印した石破茂首相は「議論に口出ししなかった」(経産省関係者)。政府内には「そもそも関心がない」といった声も漏れる。 その結果、40年度の原発の電源割合は、既存原発のフル活用を事実上意味する2割程度に設定。一方の再エネは4〜5割程度と最大電源に位置付けたものの、30年度目標から大きな上積みがあったとは言い難い。 「戦後最大の難所」。別の経産省幹部は、データセンター増設や半導体産業の強化で電力需要が高まる中、温暖化対策で火力発電所の休廃止も進めなければならない当面のエネルギー事情をこう表現する。再エネは天候に依存するため、安定的な電力供給には原発が欠かせないとの立場だ。 既存原発を廃炉にする際、別の原発敷地での新設を容認する「敷地外」の建て替えにも道筋を付けた。建設には20年程度を要するため、40年度電源への寄与は期待できないが、その先を見据えて経済界が求めてきた。 「将来的に原発に依存しない社会」と訴える連立与党の公明党はこれまで「敷地内」に限って認めてきたが、衆院選で議席数とともに発言力を減らし、容認に転じた。 公明のエネルギー基本計画に対する提言は、経産省との文言調整を重ねた上で「わが党の基本的な方針に変わりはない」と書き込むのにとどまった。 次期エネルギー基本計画も東京電力福島第1原発事故を受け、福島の復興・再生を最重要課題と位置付ける。ただ、地元との話し合いに割かれた時間は短く、住民不在の懸念は尽きない。NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長は「正面から福島の事故に向き合わず、経産省主導で原発の積極活用に踏み込んだ。空虚な議論で終わっている」と指摘する。 経産省内では「やりたいことが粛々と進む」(中堅幹部)と楽観論が広がり、原発新増設を訴える国民民主党との協力を期待する声もある。福島事故後に当時の民主党政権が掲げたのは「30年代に原発ゼロ」。事故から14年近くたつ今、遠ぐかけ離れた未来図が描かれている。 政府が示した新たなエネルギー基本計画の原案では、東京電力福島第1原発事故後初めて原発の「依存度低減」方針を削除し、一定規模の維持につながる「建て替え」を容認した。関西電力美浜原発(福井県)や九州電力玄海原発(佐賀県)が有力視されるが、候補地は少なく、建設費用は巨額で実現は見通せない。 「依存度低減の文言は『足かせ』だった。ステップアップだ」。大手電力関係者は政府の方針転換を歓迎する。 2011年の第1原発事故前、国内の原発は計54基。10年のエネルギー基本計画は「30年までに14基以上の新増設」を掲げたが、事故 後は逆に21基が廃炉に。再稼働も14基にとどまる。14年と18年、21年のエネルギー計画は「依存度低減」を打ち出し、原発建設の動きは途絶えた。 現状のままでは40年度以降、原発の発電能力を示す設備容量は急減するとされる。事故前の規模拡大路線が現実味を失う中、経済産業省が模索したのが、廃炉分を新型炉で補う建て替えだった。 ウクライナ危機や脱炭素実現の機運を背景に、岸田政権は23年、「GX(グリーントランスフォーメーシヨン)基本方針」を閣議決定。廃炉が決まった原発の敷地内に限り建て替えを解禁した。 ただ同一の原発内で廃炉と建て替え作業を並行するのは難しい。新たなエネルギー計画はこの縛りを外し、同じ電力会社であれば別の原発での建て替えも認めた。 玄海原発で2基を廃炉にした九電の場合、代わりを川内原発(鹿児島県)で新設する道が開ける。半導体の受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に進出するなど、高まる電力需要が追い風になるとの見方も出ている。 ![]() |
京都市が今秋、生成AIを導入した。使用しているサービスは、市の内規やマニュアルなどを学習させれば、庁内向けに市独自の回答を得ることができるのが特長という。試行実施したものの、費用対効果や精度の低さなどの理由で導入を見送る自治体もある中、市は「生成AIの活用には一定の習熟が必要。今のうちから職員の生成AIへのリテラシーを上げたい」としている。 市は2022年1月、DX推進のための基本方針を策定。デジタルにできることはデジタルに任せ、市民対応や政策立案など人間でなければできない業務に力を振り向けることで効率化し、生産性向上を目指す。生成AIは昨年から試験的に始め、今年9月30日に導入した。導入費用は660万円。 使用するのは東京都のIT企業が提供する「サテライトAI」で、文書の要約や政策のアイデア出し、翻訳といった基本サービスに加え、「RAG」と呼ばれる機能を備えているのが特長。「チャットGPT」など代表的な生成AIでは市の内規に関する質問をしても、十分な回答を得ることはできないが、この機能があることで市独自の回答を得ることができるという。 例えば、内規を読み込んだ上、庁内向けのチャットポット(自動対話システム)を作れば、内規に関する職員間の問い合わせを減らせるほか、過去の会議の議事録や資料を学習させておけば、次回会議の議題などを提案させることも可能という。個人情報や機密性の高い情報の入力は禁止している。市デジタル化戦略推進室の担当者は「自分なりの仕事のサポーターを作ることができる」と意義を強調する。 府内では京都市に先んじて、舞鶴市が4月に導入した。導入したサービスにRAG機能はないが、あいさつ文の作成や行政計画のたたき台づくりなどで活躍しているといい、市の担当者は「職員によっては既に仕事に不可欠な存在になっている」と話す。 一方、導入を検討していたが、見送った自治体もある。城陽市は昨年、一部部署で無料の生成AIを試験利用したが、本格導入に至っていない。担当者は「市独白の情報を学習させないと使い勝手が悪いが、市の情報を学習させることができるサービスとなると、高額になる。結果、施策としての優先順位は下がる」と説明する。 福知山市も一昨年試験的に活用したが、導入は見送っている。市の担当者は「試験利用で利用した職員は全体の約1割にとどまり、回答の精度も低かった。要約や翻訳にはすごくいいと思うが、全体としては費用対効果が見えにくい」とする。未導入の京都府も「導入したいと考えているが、時期は未定」とする。 ![]() |
京都市の教育課題を松井孝治市長と教育委員らが話し合う「市総合教育会議 」が17日、市役所で開かれた。子どもや社会のウェルビーイング(心身と社会的な健康)をテーマに、学校と地域の在り方や子どもとの向き合い方を話し合った。 市教育委員会によると、本年度の全国学力テストにおける質問紙調査で「人の役に立つ人間になりたいと思うか」の問いに市内の小 6、中3の9割以上が肯定的に答えた一方、「地域や社会をよくするために何かしてみたい」は、小6で84・5%、中3で75・8%にとどまった。 石井英真委員が「世の中に関心がない子どもが多い。大人たちが学びのある面白い人生を送れているかが試されている」と指摘した。子どもが親と先生以外の大人を知らない、外国人と交流する場が少ない、といった点も問題視され、濱崎加奈子委員は「多様な大人の中から、子どもたち自身が面白い大人を発見する時間的余裕も必要だ」と提案した。 松井市長は「部活動の地域移行は、(大人にとっても)学校をサードプレイス(第3の居場所)にするチャンス。学校を地域に開き、 学校が地域の人を元気にしてほしいと考えている」と語った。 ![]() |
岐阜大の研究者と測量会社の技師を兼業していた愛知県の男性=当時(60)=が自殺したのは二つの職場での心理的な負担が重なったのが原因だとして、名古屋北労働基準監督署が負担を総合的に判断し、労災認定していたことが16日、関係者への取材で分かった。2020年改正の労災保険法で複数の勤務先での労働時間や心理的な負担をふに算して総合判断できるようになり、過労自殺への初適用例とみられる。 代理人弁護士によると、男性は19年12月ごろから、岐阜大の研究員と航空測量会社「パスコ」(東京)の技師を兼業し、精神障害を発症して21年5月に自ら命を絶った。 岐阜大では准教授からパワハラを受け、パスコでは橋梁調査の業務全般を1人で担当するなどしていたという。労基署はそれぞれの職場での心理的負荷は「中」だったが、総合的には「強」に当たると判断。 「複数業務を要因とする災害」として、今年4月に労災認定した。厚労省によると、総合評価による労災認定は23年度まで17件あった。うち4件が死亡事案で、いずれも脳や心臓の疾患によるものだった。 代理人の立野嘉英弁護士は「複数の職場から生じるストレスの蓄積について、どのように健康管理することができるか議論を進める必要がある」としている。 ![]() |
15〜34歳の若年正社員のうち「転職したい」と答えた人は31・2%だったことが15日、厚生労働省の2023年若年者雇用実態調査で分かった。5年前の前回18年調査から3・6ポイント増加。初めて30%を超え、転職を希望していない人の割合を上回った。賃金や労働時間の改善を求める人が多かった。若手の定着に向け、事業所には賃上げや働きやすい職場づくりが求められている。 調査は約7800事業所(従業員5人以上)と、そこで働く15〜34歳の約1万3200人が23年10月の状況を回答した。 若年正社員のうち「転職したいと思っている」と回答したのは31・2%。「思っていない」は30・2%だった。残りは「わからない」など。「思っている」との回答は13年25・7%、18年27・6%で増加傾向にある。 23年調査で転職を考える理由(複数回答可)は「賃金の条件がよい会社にかわりたい」が59・9%で最多。「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」50・0%、「仕事が自分に合った会社にかわりたい」41・9%と続いた。 若年正社員を定着させる対策を取っている事業所は73・7%で前回比1・7ポイント増。具体策(複数回答可)では、労働時間短縮や有給休暇の積極的な取得奨励が52・9%で、前回比15・1ポイント増と大きく伸びた。厚労省の担当者は「若い世代でワークライフバランスへの意識が高まり、事業所も環境整備を心がけている」と分析した。 ![]() |
ヘイトスピーチに全国で初めて刑事罰を科した川崎市の条例は、成立5年を迎えた。「死ね」「出て行け」など直接的な差別発言が繰り返されるデモや街頭宣伝は市内で抑えられ、効果を発揮している。一方で、インターネット上の差別書き込みは、根絶にほど遠い。国による法整備が必要との声も上がる。 「条例が機能し、日々の安寧が守られている。このことを実感し、大切な条例を川崎だけにとどめてはいけないとの思いをかみしめた5年だった」。ヘイト被害を受け、反対活動を続けてきた崔江以子さん(51)は7日に市内で開かれた成立5年を記念する集会でこう振り返った。 条例は、公共の場で拡声器を使ったり、ビラを配ったりして、日本以外にルーツを持つ人への差別的な言動を禁止すると規定。違反者には市が勧告し、繰り返した場合は命令を出す。それでも従わなければ氏名などを公表し、刑事告発する。有罪確定となれば、50万円以下の罰金が科される。 市によると、これまで勧告したケースはない。市人権・男女共同参画室の松本聡担当課長は「条例が市民の理解も得て広く周知され、路上や駅前での街宣に抑止効果が働いた結果ではないか」とみる。 課題はネットの投稿だ。条例は、不当な差別に当たるものには市長が必要な措置を講じると定めており、これまでにサイトなどの運営者に480件の削除要請をした。ただ、X(旧ツイッター)など海外企業を中心に、対応がなかったり遅かったりする場合がある。 市民団体「ヘイトスピーチを許さない かわさき市民ネットワーク」の山田貴夫代表(75)は「市長名での要請は個人よりは効果があるが、それでも限界はある。悪質な投稿は選挙でも目立ち、結果にも影響を与えているのではないか」ともどかしさを募らせる。 松本担当課長は「現状は運営者がそれぞれの指針で対応しているが、国が統一的な(削除対象の)ガイドラインを示すべきではないか」と指摘。福田紀彦市長も記者会見で「ネットの問題は一自治体では解決できない。必要であれば国への働きかけを行う」と述べた。 7日の集会では、ネット対策だけでなく、埼玉県南部で増えている在日クルド人を標的にした差別行為もテーマとなった。崔さんは「川崎の宝を埼玉や全国に広げたい。そして、国には包括的な差別禁止法の制定を求めていく」と訴えた。 ヘイトスピーチに全国で初めて刑事罰を科した川崎市の条例が成立5年を迎えたことを受け、市はインターネット上の差別的な投稿が増加傾向にあるとし「差別を生まない土壌を築くため、人権啓発の取り組みを粘ぴ強く進める」とホームページで表明した。 この間、公共の場所でのヘイトスピーチは市内で確認されなくなる効果があったとした。一方で「条例の要件に該当す言動はヘイトスピーチの一部。あらゆるヘイトスピーチが行われていないことを確認しているものではない」と強調した。 ネット上では、特定の市民に向けて「国へ帰れ」「死ね」などと書き込まれたものがあったとし「対象となった方々を深く傷つけるとともに、地域社会に深刻な亀裂を生じさせる恐れがある」と警鐘を鳴らした。 |
京都府教育委員会は12日、2027年度入学から導入予定の府内公立高入試の新制度案を明らかにした。現在の前期選抜と中期選抜 を統合して新「前期選抜」に一本化した上で、各学校・学科が特色に応じて選抜する現在の前期選抜に準じた「独自枠」と、現在の中期 選抜に相当する「共通枠」の2本立てとする。入試制度の見直しは13年ぶり。(生田和史) 独自枠は、1校1学科のみの受験が可能。独自学力試験や中学からの報告書、面接、作文、実技試験などを課し、生徒の資質や能力 を多面的に測る。共通枠では、国社数理英の5教科の筆記試験と報告書で選抜し、最大3校3学科を選択できる。 独自枠と共通枠の両方、または一方だけでも受験が可能だが、両枠を活用すると、最大で4校4学科に出願できる。 新前期選抜の入試は2月中下旬に実施する予定で、初日に共通枠の試験、2日目に独自枠の試験を実施する。合否判定は独自枠を先 に行う。合格発表は、現行の前期選抜より10日程度遅い3月上旬となる。入学定員割れ対策の後期選抜はこれまで通り残すが、実施日程を現在の3月下旬から同中旬に繰り上げる。 2027年度に導入予定の京都府内公立高新入試は、学校選択の自由度や多元的な評価といった現在の制度の利点は残しつつ、受験生の負担軽減に主眼を置いた「マイナーチェンジ」といえる。 府内の公立高入試は、居住地で合格校を割り振る総合選抜を段階的に廃止した上で14年度から、生徒が主体的に志望校を選べる単独選抜へ全面移行した。受験の自由度が高まる一方で、試験日程が細分化しており、近年は受験期間の短縮を求める声が高まっていた。 入試一本化により、定員配分が少ない現在の前期選抜で不合格になる受験生が減るメリットもある。進学実績の高い京都市立の堀川や西京、府立の嵯峨野の専門学科、スポーツや美術、音楽などの各学校・学科については、新制度の「独自枠」のみで入試を実施するとみられ、実施時期以外に現在の入試制度と大きな変更はなさそうだ。 府教委と京都市教委は26日から来年1月31日まで、新入試の受験対象となる現中1生や府民らを対象に新制度案について意見募集を行う。寄せられた意見も踏まえて、3月末までに成案の公表を予定している。 ![]() |
【ニューヨーク共同】国連総会(193力国)は11日、パレスチナ自治区ガザで戦闘を続けるイスラエルやイスラム組織ハマスなど全ての当事者に対して「即時、無条件かつ恒久的な停戦」を求める決議案を日本など158カ国の賛成で採択した。総会決議に法的拘束力はない。イス ラエルは反発しており、停戦実現は依然厳しい状況だ。 イスラエル、米国など9カ国が反対。ウクライナなどが棄権した。アラブ諸国など賛成した国には、イスラエルや後ろ盾の米国に停戦に向けた交渉加速を促す狙いがある。 ![]() |
2028年度をめどに京都市立中学校のクラブ活動を発展的に解消する方針案を打ち出した市教育委員会が、隣接する中学校との合同部活動や民間委託などの実践研究を進めている。少子化を背景に、これまで中学校が丸抱えしてきた部活動を、地域指導者のもとで競技力向上などを図る「エリア制地域クラブ」へと移行させることを視野に入れている。 11月下旬、八条中(京都市南区)のグラウンドで汗を流す陸上部員たちの中に、隣接する七条中(下京区)部員の姿もあった。6月に始まった合同部活動の一環で、部員不足以外の理由で休日に合同部活動を行うのは初の試みだ。ハードルや鉄棒を使ったサーキット練習や筋トレを次々とこなしていく様子に、学校の垣根は見られなかった。 ローテで休日指導 七条中2年の久山晟空さん(14)は「始めの頃は練習メニューの違いにあたふたしたが、教えてもらって慣れた」と振り返りながら、「より多くの人と競い合って高めることができる。顧問とは別の先生から視点の異なるアドバイスももらえる」と前向きにとらえる。八条中2年の吉田茉奈加さん(14)も「大会会場で七条中の生徒に会うと緊張がほぐれる。1年生の時より記録が伸びた」と笑顔を見せた。 少子化を受け、複数の学校が一緒に練習したり、大会に出場したりする合同部活動は、サッカーや野球などの団体競技で拡大している。個人競技でも、陸上部の場合なら、短距離走や長距離走、砲丸投げ、棒高跳びなど多種目に及ぶため、競技経験のある顧問が集まっての指導なら教員が自身の得意分野を生かせるメリットがあるという。 両校の陸上部の顧問計4人は、ローテーションを組んで休日指導に当たっている。八条中顧問の吉藤誠教諭(40)は「部活動指導を負担とは感じていなかったが、プライベートの予定と重なった時に休みやすくなった」と話す。 学校間の調整必要 ただ、人数が多いと役割を分担できる一方、練習予定の作成などで学校間の調整が必要だ。さらにエリア制に移行した場合、実施主体が地域や民間団体になるため「誰が調整役となり、どのように指導者を確保するのか。まだ想像がつかない」とも打ち明ける。 市教委が2日に部活動解消とともに公表した「エリア制地域クラブ活動」創設案では、中学校間の距離を考慮しながら3校程度を一つのエリアとし、種目別に拠点校や地域のスポーツ施設で活動することになる。従来は中学校が担ってきた部活動の運営や指導は地域などに移る。指導費は原則有料になる。 移動手段など課題 休日の部活動の地域連携や地域移行の実践研究は21年度に始まり、本年度は市立中学校72校のうち、26校の58部活で実施されている。民間企業への運営委託のほか、教員の補助として大学やスポーツクラブ、バスケットボールBリーグ1部の「京都ハンナリーズ」から指導者派遣を受ける部活もある。エリア制移行に向けては、教員が地域指導者となる場合の兼職兼業の在り方や、拠点となる学校やスポーツ施設までの生徒の移動手段をどうするかなど課題も多い。 市教委は、文化系の部活動やレクリエーション的にスポーツに親しむ場を想定した学校単位の「放課後活動」も創設し、エリア制との2本立てで部活動の「発展的解消」を目指す案を示している。体育健康教育室の羽田浩体育課長は「仲間とともにスポーツや文化芸術活動に打ち込めるところに部活動の良さがある。地域の指導者も迎えながら、学校単独ではなくエリアで持続可能な新しい枠組みをつくっていきたい」と話す。(岡本早苗) ![]() |
京都市議会は11日、小中学校の給食費無償化を求める決議を全会一致で可決した。国財源による実施を前提にする市に対し、「独自財源確保」による実施も含め、松井孝治市長の任期となる2027年度までに無償化の道筋を付けるよう求めた。 給食費無償化を巡っては共産党市議団が同日閉会した11月議会で、来年4月からの実施に向けた条例案を議員提案していた。一方、年間約40億円とされる追加財源の確保策について、市議団が大型公共事業の抑制などを挙げたため、他会派から「市側との調整が不十分で財源の根拠が乏しい」などと異論が出て否決された。 一方、無償化自体に対しては最大会派の自民党市議団も「国実施が前提だが市も汗をかくべき」(市議団幹部)と否定せず、第2会派の維新・京都・国民市議団も共産案を修正して合意形成を図ろうする動きを水面下でみせた。結果、条例のような拘束力がない決議を全会一致で可決する形で落ち着いた。 決議文では独自に無償化を進める自治体が増えていることに触れ、「京都市として学校給食費の無償化を進めることは極めて重要」と指摘した。 松井市長は2月の市長選の公約で給食費無償化の検討を掲げたが「国に実施を働きかける」ことを意図しており、巨額の財源を理由に市独自の実施には消極的だ。市議会の「総意」に対して松井市長がどう対応するかが注目される。 ![]() |
政府が改定作業中の新たなエネルギー基本計画から、「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除する方向で最終調整に入ったことが11日、分かった。2011年の東京電力福島第1原発事故後のエネルギー基本計画に明記していた。原発のリプレース(建て替え)を容認する方針も明記。同じ電力会社であれば、廃炉が決まった原発の敷地外でも建設できるようにする。 政府は原発事故後、原発の依存度低減を掲げていたが、岸田政権下の22年に決めた「GX(グリーントランスフォーメーション)基 本方針」で原発の最大限活用に方針転換。文言が矛盾すると議論になり、自民党内や経済界などから削除を求める声が上かっていた。 GX基本方針では、建て替えは廃炉を決定した原発の敷地内に限定していた。敷地外も認められれば、例えば九州電力玄海原発(佐 賀県)で廃炉にした基数を九電川内原発(鹿児島県)で建設することが可能になる。公明党は当初、敷地外での建て替えに慎重姿勢だったが、同党幹部は11日、原発の総数は増えないとして容認する意向を示した。 ![]() |
気候変動の影響を抑えるため10〜20代の16人が8月、火力発電事業者に二酸化炭素(CO2)排出削減を求めて提訴した「若者気候訴訟」。名古屋地裁で争われている訴訟の原告団に立命館大の学生2人が加わっている。命に関わる猛暑や災害が身近に迫り、誰にとっても気候変動は人ごとではない。2人は「温暖化の現実に向き合ってほしい」と訴える。(伊藤恵) 国際関係学部3年の堀之内来夏さん(22)と、同4年の下村向日葵さん(21)。被告は、東京電力と中部電力が出資する発電会社JERA(ジェラ)や、関西電力、中国電力など国内最大級のCO2排出事業者とされる10社だ。原告団は「気候変動の被害は企業による人権侵害」と位置づけ、産業革命前からの平均気温上昇を1・5度までに抑えるパリ協定の目標に沿った排出削減義務を各企業が負うと主張している。 2人は今春、NPO法人気候ネットワーク (京都市中京区)代表の浅岡美恵弁護士らが訴訟の準備を進めていると知り、参加を決めた。堀之内さんが温暖化問題に関心を持ったのは、環境保護活動が盛んな米カリフォルニア州の町で過ごした10代にさかのぼる。下村さんも、オーストラリアに留学した高校時代に気候変動対策を求める若者のデモを経験し危機感を抱いた。 一方、日本で気候変動への関心が高まらないことにもどかしさも感じた。堀之内さんは「熱中症対策の二ユースは多いが、根本的なCO2排出に関する報道が少ない。デモで主張するのは意識が高い人だけという空気も感じる」と危ぶむ。下村さんは「裁判の当事者になると就職活動でマイナスに評価されるのでは」と迷った時期も。提訴後は「電化製品を使うな」などと交流サイト(SNS)に心ないコメントも書かれた。 だが、訴訟を機に知り合った仲間の存在に勇気づけられた。「寺の景観をつくるコケが枯れるなど日本文化も影響を受ける」「他の国で若者が声を上げる中、私たちも日本の未来のために行動できると示したい」。8月の記者会見で、2人は自身の体験を基に堂々と意見を述べた。 「たとえアンチコメントでも反応がないより良い。まずは個人でできることを始めてほしい」と堀之内さん。下村さんは「傍聴やSNSで多くの人に訴訟を知ってもらえれば、力になる」と今後を見据える。 国連環境計画の報告によると、国や企業を相手にCO2排出削減を求める「気候訴訟」は、世界各地で2022年末までに2千件以上が提起された。多くは15年のパリ協定採択後に起こされており、研究が進んでCO2排出の気候変動への影響が明らかになったことや、熱波や自然災害で市民が被害を実感し始めたことが背景にあるとみられる。 オランダやドイツ、韓国では国に対策を求める判決が出ている。日本では神奈川、兵庫、宮城の火力発電所の周辺住民が環境悪化や気候変動につながるとして国や電力事業者に稼働差し止めなどを求める訴訟を起こしたが、裁判所に認められた例はない。 近隣住民などに原告を限らない本格的な気候訴訟は今回が日本で初となる。弁護団の浅岡美恵弁護士は「電気を節約するといった個人の対策も大切だが、火力発電を止めるという根本的な対策が必要。訴訟を通じて社会に理解してもらいたい」と強調する。 ![]() |
経済協力開発機構(OECD)は10日、大人が社会生活を送る上で必要な能力を測る「国際成人力調査(PIAAC)」の結果を公表した。日本の平均得点は前回1位だった「読解力」と「数的思考力」が2位、初めて調ぺた「状況の変化に応じた問題解決能力」が1位で、トップ水準を維持した。一方、生活満足度は最下位だった。 PIAACは16〜65歳が対象で、2011年調査に続き2回目。今回はタブレット端末を使用する形式で実施され、31力国・地域が参加した。 日本の平均得点は読解力289点、数的思考力291点で、OECD平均は260点と263点。問題解決能力はフィンランドと日本が276点で1位に並び、OECD平均は251点だった。3分野ともフィンランドが1位を獲得し、トップ5は同じ顔ぶれだった。 成績を段階別に見ると、日本は3分野ともレベル1以下の下位層の割合が最も少なかった。男女別の平均得点は、日本は読解力と問題解決能力で男女に有意な差はなかったが、数的思考力は男性が12点高く、OECD平均より差が大きかった。 高等教育でSTEM(科学、技術、工学、数学)専攻を修了した人の平均得点は、日本でもOECD平均でも3分野いずれもそれ以外の専攻より高かっ た。 調査対象者の学歴や労働環境、意識なども調査。生活満足度が高い人の割合は52%と最も低く、OECD平均の75%を大きく下回った。現在の職業に対して自身のスキルが不足していると回答した25〜65歳の人は29%で、そのうち42%がITスキルの向上が必要とした。 OECDが公表したサンプル問題によると、問題解決力では与えられた地図と条件から最短ルートを選ばせるといった内容だった。 調査では読解力などの一般的なスキルが測られ、日本は前回同様トップ水準を維持した。ただ調査結果からは、日本の成人が現在の仕事に対し、必要以上の学歴はある一方、具体的なスキルは不足しているとの認識を持っていることが浮き彫りになった。これが最下位となった生活満足度の低さにもつながっていると考えられる。日本では長らく一般的なスキルが重視されてきたが、今後はより専門的なスキルを身に付け、仕事に生かせる社会への転換が求められる。国は、専門性を尊重しない企業の働かせ方や、序列的な教育システムなどの変革を進めるべきだ。 ![]() |
【オスロ共同】日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞授賞式に合わせ、ノルウェーの首都オスロを訪れている「高校生平和大使」4人が9日、現地の高校で核兵器廃絶の必要性を伝える「出前授業」を実施した。 4人は広島と長崎、熊本から渡航し、被爆3世や4世もいる。オスロ市内の高校で90分授業を2回実施。計約50人の高校3年生を前に、被爆者である家族の写真を示して原爆の被害を説明したり、一緒に折り鶴を作ったりした。若者世代の平和貢献などをテーマにした議論も行った。 私立九州学院高(熊本市)2年島津陽奈さん(16)は授業後、「言葉の壁はあったが、平和の実現には対話が重要との意見を共有できた。国が違っても考えが同じと学べ良かった」と振り返った。 平和大使は全国から毎年20〜30人程度選ばれ、任期は約1年間。核廃絶を求める署名を集め、国連機関に提出している。 ![]() |
発がん性などが指摘される有機フツ素化合物(PFAS)が京都府内でも国の暫定目標値(1リットル当たり50ナノグラムは10億分の1)を超えて検出されている問題で、府は今年9〜10月、新たに城陽市の8ヵ所の井戸で目標値の2〜6倍、京田辺市の井戸でも2倍近い数値を確認した。確認された井戸などではすでに飲用しないよう呼びかけている。PFASは近年になって有害性が指摘されるようになった物質で、国内法で規制が存在せず汚染源の発生が難しいことから府も対策に手をこまねいている。 水道法上の水質基準ではヒ素や水銀など51の物質について濃度基準などを定めているが、PFASは毒性や環境への影響が確定しておらず目標値を超過しても数値の公表や改善は努力義務にとどまっている。府は2020年度から、飲用水として利用される可能性の高い井戸水について調査を開始。これまで、綾部、宇治、城陽、八幡、京田辺の5市の井戸水で目標値を超える数値を確認している。 城陽市内では今年9、10月に計8ヵ所の井戸水を検査し、1リットル当たり110〜290ナノグラムの高い数値を検出、京田辺市の井戸水では10月に93ナノグラムを検出した。汚染源は特定できていない。府環境管理課は「地下水はどこから来てどう流れているかが分からないので、汚染源の特定は難しい」と頭を悩ませている。 府が環境基準点に指定している河川48力所では、環境省の求めで21年度からPFASの調査も開始し、21〜24年度は八幡市と綾部市でいずれも目標値を上回った。今年は、10月に八幡市の大谷川ニノ橋で目標値2倍の100ナノグラム、8月には綾部市の犀川小貝橋で72ナノグラムを確認している。 また、水道水では、これまでに井戸水を原水とする福知山市と精華町で目標値を超える濃度のPFASを検出した。環境省と国土交通省が11月末に公表した全国の水道水の調査では、本年度は福知山市で13ナノグラム、精華町で39ナノグラムとなり、いずれも目標値は下回った。 全国的にPFASへの不安が高まる中、岡山県の吉備中央町では浄水場で最大1400ナノグラムを検出したことなどを受け、公費による血液検査が始まっている。府内でも綾部市では昨年、犀川に注ぎ込む天野川で2800ナノグラムという高い数値を検出したため、住民は府に対し農地や農作物の調査、住民への血液検査などを求めているが、現時点では、府は「国内で血液中のPFASの濃度を踏まえた医学的な対応基準が定められていない」などとして独自調査の予定はない。 府内各地で高い数値が確認されていることについて府の担当者は「仮に発生源を特定できたとしても、法的根拠がなく、強く指導、対応できない。科学的根拠や科学的知見を積み重ね、国に今後の対応方針を出してもらいたい」としている。 全国各地でPFASの数値が高く出るのは、フライパンや泡消化剤など規制のない時代に製造・使用されたPFASが、最終処分場や工場排水などから河川や地下水に流れ出ている可能性がある。それらを原水として浄水場で除去しきれなかった物質が水道水に混じると体の中に入り、ある程度がんのリスクが上昇する可能性があると指摘されている。 水道水の安全確保は市町村、発生源の特定は都道府県が行う必要がある。府内で目標値を超えている場所が各地で出ているので、数値を超えている所は府も積極的な調査が必要になってくるだろう。また、PFASによる汚染は規制が進まない中で広がっている可能性があり、しっかり確実な検査が行われるよう、国が水質基準に引き上げていく必要がある。 ![]() |
若者の声を政策に反映させようと活動する「日本若者協議会 」が、政治や民主主義を学べる常設型の「民主主義博物館」を東京都内に設置する計画を進めている。若者の政治・社会参加を増やす目的で、来年3月に開館する予定。費用の一部をクラウドファンディング(CF)で募っている。 同協議会は2015年に全国の高校生や大学生らが設立した。各地に支部があり、京都の学生も参加している。教育、子育て、ジェンダー、環境問題などの政策について各政党と協議や提言を行っている。 同協議会によると、欧州では民主主義教育が若い頃から行われ、デモなどの活動にも参加しているという。一方、日本では法律の成立過程や各政党の違い、市民が社会参画する方法などを実践的に学べる場がほとんどなく、若者の政治や社会への参加が進んでいないとして博物館設立を企画した。 博物館では民主主義や人権に関する用語を説明したカードを並べるほか、民主主義の発展史を紹介するパネルを展示する。日本の社会運動を担った人たちへのインタビュー映像も流す。選挙前に市民同士で議論するワークショップも開く予定。土日含め週4日開館し、入場は無料にする方針。 費用の一部をCFサイト「ForGood」で募っている。目標額は100万円で、展示物の制作や内装などの費用に充てる。 文部科学省で記者会見した同協議会の室橋祐貴代表理事(35)は「みんなが気軽に楽しく学び、アクションにつなげていけるような場所にしたい」と協力を呼びかけた。 同協議会に加盟するNPO法人「Mielka(ミエルカ)」(京都市上京区)で学生副代表を務める同志社大2年堀内咲良さん(19)は「民主主義について考えたり話したりできる場所がこれまで少なかった。修学旅行の行き先にもなればいいと思う」と話している。 ![]() |
公立学校教員の処遇改善や長時間労働の是正策を検討する自民党の特命委員会は6日、2025年度予算案の編成に向けた緊急決議案をまとめた。残業代の代わりに月給に上乗せ支給する教職調整額の「10%以上」への引き上げを「確実に実施する」とし、残業時間削減を引き上げの条件とする財務省案を否定した。近く正式な決議として、政府に提出する。 教員の処遇改善を巡っては、文部科学省が現在月給4%の教職調整額を一気に13%へ増額するよう求める一方、財務省は残業時間削減を条件に10%への段階的引き上げを主張している。 特命委の決議案では「長時間勤務縮減のインセンティブ(動機づけ)は給与制度で行うべきではない」と財務省案を批判。長時間勤 務の是正に向け、業務の精選や教員定数の改善のほか、国が縮減目標を明確に定めるよう求めた。 特命委は昨年5月、教職調整額の10%以上への引き上げを柱とする提言をまとめている。 ![]() |
小中高などで勤務する養護教諭の半数近くが、児童生徒から性的指向や性自認に関する相談を受けた際、本人の承諾を得ずに校内で情報を共有した経験があることが5日、宝塚大の日高庸晴教授(社会疫学)の調査で分かった。こうした情報を本人に無断で漏らすことは「アウティング」に当たり、学校現場での情報共有の在り方が問われそうだ。 日高教授は「教員間の情報共有だとしても同意なく他者に話すのは本人を傷つけ、追い詰めることにもなりかねない。共有する必要性を説明し、本人の意向を確認した上で承諾を取るのが前提だ」と話している。 調査は、LGBTQ+(性的少数者)の権利向上などに取り組むNPO法人「グッド・エイジング・エールズ 」の委託で今年1〜3月、9自治体の養護教諭を対象に実施。20〜70代の2172人から有効回答を得た。 「性別違和・トランスジェンダー」の児童生徒と直接関わったことがあると答えた養護教諭は42・4%。「同性愛」の児童生徒と関わった経験は22・3%。ほとんどが相談内容を学級担任や管理職らと共有していたが、本人の承諾を必ず取っていたのは54・3%にとどまった。 承諾を取った場合と取らなかった場合があるとした人は34・9%。10・4%は承諾を取っていなかった。性的少数者について研修などで学んだ教諭は承諾を取る割合が高い傾向にあった。 一方「同性愛について冗談や笑いのネタなどにする児童生徒がいた」との回答が4割に上り、同性愛か異性愛かは本人の希望で選べないのに「選択できる」と誤解している養護教諭が4割いることも確認された。 日高教授は「保健室は子どもにとって大切な居場所の一つとなっているが、養護教諭の間でも性的少数者への理解や取り組みに差がある。知識を学ぶ研修や、適切な対応方法を学校全体で考える機会をつくることが大切だ」と訴えた。 ![]() |
【ワシントン共同】米国で乳牛の感染が相次ぐ高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5NI)は、たった一つの遺伝子変異が加わるだけで人の細胞への結合能力が高まることが分かったと、スクリプス研究所のチームが5日、米科学誌サイエンスに発表した。 人から人へ効率的に広がるには、空気感染しやすくなるなど他の条件も必要。だが今回特定した変異は流行のリスクを大きく高めるもので、チームは「監視を続ける必要がある」と警告した。 ウイルスは表面にあるヘマグルチニンという夕ンパク質を細胞表面の糖鎖という物質に結合させ、細胞に入り込んで増殖する。糖鎖には鳥型と人型があり、鳥のウイルスは人型の糖鎖に結合しにくいため、通常は感染が成立しない。 チームは、鳥のウイルスのタンパク質にいくつ変異が起きると人の細胞に結合するようになるか調べるため、テキサス州の乳牛に感染したウイルスに変異を導入。タンパク質を構成するアミノ酸の1個が変化するだけで、結合相手が鳥の細胞から人の細胞にがらりと変わったという。 ![]() 人間の経済活動が「自然」との境界を犯しつつあるという指摘はCOVID-19で知られるようになった。どこまで自制的にヒトが境界を守れるかは、温暖化とともに大きな課題でもある。 |
国際教育到達度評価学会(IEA)は4日、世界の小4と中2に当たる学年を対象とした2023年国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果を公表した。日本は理科の平均得点が小中ともに前回より下がり、小4は6位に落ちたが、中2理科と小中の算数・数学は5位以内でトップレベルを維持した。算数・数学と理科を「楽しい」「得意」とした割合は、いずれも女子が男子を下回った。 文部科学省は、女子は理系が苦手といったアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)が教育現場にあり、子どもに影響を与えた可能性があるとしている。 TIMSSは4年ごとに実施。1995年調査の国際平均を500点に設定し、結果を比較できるよう統計処理している。前回19年調査からコンピューター利用の調査形式が導入され、日本は今回初めて採用した。参加した国・地域は小4が58、中2が44で、前回と同様、小中全教科で成績上位のほとんどをアジア勢が占め、いずれもシンガポールがトップだった。 日本の平均得点は、小4算数が2点減の591点、中2数学が1点増の595点で過去最高。順位はいずれも前回と同じで小4が5位、中2が4位だった。理科は小4が7点減の555点で6位に下がり、中2は13点減の557点だったが3位を維持した。文科省は理科の得点低下の要因を「日本の子どもになじみのない問題が一定数あった」と分析している。中2理科は他の上位国も下がっていた。 5段階に分けた得点分布は、理科で最上位層(625点以上)の児童生徒の割合いが前回より減り、475点未満の下位層が小4で5ポイント増、中2で7ポイント増となった。 児童生徒への質問調査では、算数・数学、理科が「得意」としたのは小中いずれも1〜9ポイント減。「勉強が楽しい」は小4が算数、理 科とも減少し、中2は数学で増え、理科は横ばいだった。 男女別にみると、平均得点は全教科で男子が高かった。算数・数学、理科を「楽しい」「得意」とした割合は、いずれも女子が3〜13ポイント、2〜21ポイント下回った。 「数学を使う職業に就きたい」中2は男子30%に対し女子14%で、理科も女子は20%と男子より13ポイント低かった。 理数学力の高い水準が維持されたことは評価できる。ただ、小4で「質数の勉強が楽しい」と答えた割合が下がったのは課題だ。この学年は新型コロナウイルスの流行で低学年時に教室で話し合いながらみんなで学ぶことが制限されており、それが影響した可能性がある。学習習慣が定着していく大事な時期に、教科へのネガティブな印象を持たせないようにするには、学校現場が日々の授業で協働的な学びをより意識して充実させていく必要がある。そのためにも、国は教員が心にゆとりを持って指導に当たれる環境整備に努めるべきだ。 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で日本はトップレベルの学力を維持したものの、理数の学習意識に課題があり、特に女子で顕著だった。「好き」「楽しい」を増やし、゛理数離れに歯止めをかけようと、小中学校では実生活に引きつけた授業改善が進む。理工系人材へのニーズが高まる中、培った興味関心を進路選択につなげる工夫も求められる。 「1980年、2020年の年代別人ロピラミッドを見て、23年がどうなっているか予想しよう」。11月、山梨県甲州市立塩山南小6年の算数の授業で池田理恵子教諭(43)が呼びかけた。30人の児童は各自のデジタル端末で過去の年代ごとの人口構成を調べ、傾向を予想。自分の立てた仮説についてクラスメートと議論した。 「一方的に知識を伝えるのではなく、自分で情報を集め分析することで学ぶことへの好奇心が高まる」と池田教諭。議論に入れない子たちには積極的に声をかけ、苦手意識を持たせないよう心がけているという。 文部科学省は子どもの理数への関心を高めようと、日常生活や社会に関連づけて「主体的・対話的」に学ぶ観点での授業改善を促してきた。今回のTIMSSでは、理数の勉強が「日常生活に役立つ」「楽しい」とした割合は中2で増加傾向にあり、文科省幹部は「取り組みの成果が表れ始めている」と一定の手応えを感じている。 その一方で、算数・数学、理科が「得意」との回答は、小4、中2ともに前回から減少。「数学、理科を使うことが含まれる職業に就きたい」とした中2は3割に届かなかった。また、いずれの項目も女子が男子を下回った。 民間調査では、理系に苦手意識を持つ割合は学年が上がるにつれて上昇し、文系選択が増えるとのデータもある。国の統計では、高校の理系選択者は約2割で、性別でみると男子27%、女子16%と開きがあった。国は20年度に35%だった理工系学生を5割程度に引き上げる目標を策定しており、達成には理工系に進む女子の増加は不可欠だ。 文科省は、理数教育を重点化する高校を指定したり、大学での理工系学部新設や「女子枠」設置などの取り組みを財政支援したりしている。別の幹部は「小中段階で興味関心を持ってもらい、それをいかに進路や職業の選択につなげられるかだ」と話す。 滋賀大の加納圭教授(科学コミュニケーション)は、理工系人材を育成するため「産学官一体で実効的な方策を推進するべきで、女性の理系選択を妨げている社会的障壁を取り除くことも必要だ」と指摘した。 ![]() |
中教審の特別部会は4日、急速な少子化を踏まえた大学など高等教育機関の在り方に関する答申案を提示した。大学や学部の設置認可要件を厳格化して安易な新設を抑制し、教育の質が十分担保されない大学には縮小や撤退を促すことを検討すると明記。国立大は学部定員を見直し、大学院教育の重点化を打ち出した。今後2、3年で授業料の仕組みを見直すことも盛り込んだ。 特別部会での議論を踏まえ、中教審が本年度内に答申する。文部科学省は2025年中に制度改革など今後10年程度の工程を示した 政策バッケージを策定したい考えだ。 文科省の推計によると、23年に約63万人いた大学入学者は40年には約46万人になり、現在の定員の7割程度しか埋められなくなる。答申案は、急速な少子化の進行で定員充足率の一層の悪化が見込まれるため、高等教育機関全体の規模の適正化を推進するとした。 留学生や社会人などの受け入れを拡大するとともに、認可審査で財産保有や経営状況などに関する要件の厳格化を検討。教育や運営の状況を審査する認証評価では、学生が在学中にどの程度力を伸ばしたかなどを示し公表する。 地域によって高等教育機関へのアクセスに差が出ないよう、専門人材の輩出や地方就職率などを踏まえ、地域にとって必要とされる地方大に対する支援を検討することも盛り込んだ。 国立大の学部定員については「見直すことも避けることができない状況」と説明。都市部と地方での役割の違いに留意しつつ、適正化を図るとした。 短期的取り組みとして、教育費負担の見直しにも言及し「物価や人件費の変化を考慮した個人・保護者負担の在り方について検討する」とした。 ![]() |
福知山市と京都府京丹波町の猪鼻川で国の暫定目標値を超える有機フツ素化合物(PFAS)が検出された問題で、上流域にある産業廃棄物処分場「瑞穂環境保全センター」 (同町猪鼻)の放流水から目標値の2倍近いPFASが検出されたことが4日、分かった。センターを運営する京都環境保全公社(京都市伏見区)は、福知山市や町に報告するとともに除去対策を強化するなど対応に乗り出した。 市と町、住民でつくる監視委員会の要請を受け、公社が調査した。従来は国の暫定目標値の1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)を下回っていたが、11月8日の調査で92ナノグラムに達したという。 センターは管理型最終処分場で、1984年から京都府や滋賀県、大阪府などから産業廃棄物を受け入れている。埋め立て容量は1 65万立方メートル。放流水は、処理施設で処分場から出る雨水から重金属などを除去して猪鼻川に流しているという。 市では昨年10月に実施した水道水の定期検査で、下流に当たる三和町の芦渕浄水場から供給している水道水から計75ナノグラムのPFASを検出した。市と京丹波町が今年8月に猪鼻川で調べた結果、目標値を上回り、センターとの関連が疑われていた。 センターは、水道水からの検出を受け、3月にPFASの除去能力が高い活性炭を導入するなど処理施設の能力を増強したが、新たに放流水から検出したため、PFASを除去する活性灰の交換頻度を高め、測定を継続する。 公社は、府や京都市、京都の大手企業などが出資している。山下辰彦常務取締役は「搬入廃棄物に原因があるとみられるが、特定 には至っておらず調査する」と述べた。水道水から検出したPFASとの因果関係は不明としたが、猪鼻川での目標値超えについては「当社が原因の一つであると認識している」と述べ、地元の安全を最優先に対策を進める考えを強調した。 福知山市と町は猪鼻川で定期検査を始める方針。町は「関係機関と情報共有しながら対策を考えたい」としている。監視委のメンバーで三和町大身の自治会長の西村悦雄さん(70)は「河川の安全性が分からず、住民は不安を抱いている。原因の徹底究明を求めたい」と話す。 PFASを巡っては、国が全国の水道事業者を対象に行った調査で、実施先の2割に当たる332事業者から検出された。国は水道事業者に検査や公表を義務付けることを検討している。 ![]() |
政府は3日の閣議で、認知症施策の指針となる基本計画を決定した。急速な高齢化で認知症は「いまや誰もがなり得る」とし、みんなが支え合う共生社会の実現に向け取り組みを推進すると明記した。「当事者の意思尊重」を含む四つの重点目標を設定。社会参加の機会確保や認知症の正しい理解の周知といった推進すべき12施策を掲げた。1月施行の認知症基本法に基づく初の策定。 自治体に対し、地域の実情や当事者の意見を反映した認知症施策の計画をまとめるよう求めていく。 認知症の高齢者は2022年の443万人から40年に584万人に増えると見込まれる。計画は「一人一人が自分ごととして理解し、当事者が自分らしい暮らしを続けることを考える時代が来た」と指摘した。 重点目標はほかに、認知症になっても希望を持って暮らし続ける「新しい認知症観」を打ち出し、「地域で安心できる暮らし」「新たな知見や技術の活用」も挙げた。 12施策のうち社会参加に関しては、当事者同士で悩みを話し合う「ピアサポート活動」や、自らの経験に基づく情報を発信する「認知症希望大使」の活動を広める。正しい知識を広めるため、学校での教育や当事者との交流を進める。 予防を重視して早期発見から診断後のケアを一貫して行う支援モデルの確立、地域包括支援センターや企業での相談体制整備、医療や介護の充実、創薬を含む研究推進にも取り組む。 計画策定のための有識者会議では、当事者が参加し意見を述べた。 政府が閣議決定した認知症施策の基本計画は「住み慣れた地域で自分らしく暮らせる」という新たな認知症観を打ち出した。従来の「何もできない」というイメージを払拭するべく、民間施設では当事者の意思や希望を尊重する支援が進む。専門家は、正しい理解を広げるには、当事者と地域住民が日頃から交流できる環境が重要と指摘する。 11月22日、認知症の人が通う相模原市のデイサービス事業所「BLG相模原」。朝会では50〜80代の男女10人に対し、職員が1日の過ごし方として「食事の準備」「生活品の買い物」など複数の選択肢を提示。一人一人から希望を丁寧に聞き取って割り振った。 軽い認知症を患う中野祐美子さん(78)は料理担当に。ピーマンの肉詰めなどを調理した。共働きの娘夫婦と一緒に暮らしているが、昼間は1人で過ごすことが多い。「他の施設では絵画や散歩など、あらかじめ決められたことをするだけ。ここではみんなと協力してしたいことができる」と笑顔を見せた。 「火を使った料理は危ないなど普通にできていたことを周囲から止められ、自信を次第に失っていく」とBLG相模原を運営する前田隆行さん(48)。「何がしたいかという意思を尊重することで前向きになり、体調の維持にもつながる」と語る。 政府の基本計画は、認知症の人を「尊厳のある個人」と捉え「個性や能力を発揮できるようにする」と明記。こうした考え方が浸透するよう、自治体に各地の実情を踏まえた計画作りを促す方針だ。ただ当事者一人一人の希望を実現するには、周囲の理解が欠かせない。 認知症関連の施策に詳しい慶応大の堀田聡子教授は「認知症になると何も分からなくなる、何もできなくなるという古い価値観のままだと、当事者になった場合に希望を失いがちになる。周囲も当事者の行動を過度に制限することになる」と警鐘を鳴らす。 古い価値観を払拭するには、地域住民が当事者と実際に会って交流することが効果的だと指摘。こうした交流の場づくりを地域一体で進めるべきだとしている。 ![]() また、中西正司・上野千鶴子『当事者主権 増補新版』のいう「当事者」が前景に出てきたことは評価できる。 |
京都朝鮮第一初級学校(京都市南区、閉校)がヘイトスピーチを浴びせられた襲撃事件は4日、発生から15年を迎えた。あの日、罵詈雑言が響く現場に居合わせた少女は現在、朝鮮学校の教壇に立つ。「差別の問題を抱えるのは自分たちの代で終わらせたい」。自身の体験を伝えながら、差別のない社会の実現を願う。 京都朝鮮中高級学校(左京区)で日本語を教える辛秀玲(シンスリョン)さん(26)は、襲撃事件が起きた2009年12月4日、現場となった第一初級学校の校舎内にいた。当時、小学5年生。突然、教員にカーテンを全て閉めるよう告げられた。男児がふざけてカーテンを開けると、外に人だかりが見えた。訳が分からず、後日、ユーチューブでヘイトスピーチだったと理解した。「あの中にいたのかと思うとぞっとした」と振り返る。 自身が差別の対象になっている、と初めて実感した出来事だった。在日コリアンが受けてきたこれまでの差別を学ぷにつれ「自分に矛先が向くかもしれない」とおびえながら成長した。 一方、襲撃事件の動画を見返し、気づいたことがあった。同級生の父親たちが駆け付け、教員と一緒に校門で立ちふさがってくれていた。朝鮮学校の統廃合が進み、コミュニティーが弱まっていくのを感じる中、「子どもの居場所を守りたい」と教職の道を選んだ。かつてヘイトからかばってくれた大人たちへの恩返しでもあった。 今もインターネット上には心ない書き込みや動画があふれる。教壇では、自身が被害者となった襲撃事件だけでなく、関東大震災で起きた朝鮮人虐殺や、宇治市のウトロ地区であった放火事件(21年)など差別の歴史を教えている。一方、普通に授業を受け、クラブ活動ができるのは、ヘイトや差別から守ってくれる人たちがいたからだ、とも伝えている。 辛さんは子どもたちに問いかける。「悲しい歴史は知らないといけないが、被害者意識だけに目を向けてほしくない。誰かを守るために何ができるのか、考えられるようになってほしい」 ![]() |
来年4月に開幕する大阪・関西万博に京都府内の小中高生らを無料招待する府の事業について、府が府内全679校を対象に事業の利用意向を調査したところ、丹後の8割が利用を希望した一方、京都市では6割が利用しないと答えるなど、地域差が顕著となった。移動手段確保などの課題が要因とみられる。府全体では「利用する」と「利用しない」の割合が並んだ。 府万博・地域交流課は「交通費など新たな補助は考えていないが、開催時期が近づけば確定的な情報も出てくるので、実際の参加状況は変わるのでは」としている。 府内の子どもたちに校外学習など教育の一環で万博を体験してもらうため、府は私立を含む全小中高校と特別支援学校を対象に、入場料を全額補助する方針。対象人数は約25万人で、3億3400万円の予算を債務負担行為で確保している。会場への交通費は対象外。 調査は9月から10月末に実施し回答率は96%。府全体では「利用する」36%、「利用しない」37%、「検討中」23%だった。 地域別で「利用する」としたのは丹後78%、南丹62%と高かった一方、京都市20%、山城35%と落差が大きかった。「利用しない」との回答は京都市が58%で突出した。 利用する際の万博会場までの交通手段を尋ねると、82%の学校がバスを利用予定と回答。会場までは鉄道駅からシャトルバスへの乗り換える手間や、電車で子どもを引率する不安などが背景にあるとみられる。 自由記述では、事業に参加しない理由として「バスの借り上げ料高騰」「バスの確保や渋滞状況が不明」などの課題を指摘する声も目立った。「府南部では、バス確保の競争が特に激しいと聞く」(福知山市教育委員会)などの事情もあり、学校の参加意欲を低下させているとみられる。 京都府内の学校に対する万博無料招待事業の利用意向調査では、「地方の学校にとっては貴重な体験」と好意的に捉える声がある一方、下見などができない状況もあり「教育的意義があるのか」などと疑問の声もあがる。 「丹後から万博会場までは遠くお金もかかるので、家族全員で参加する家庭は少ないと思う。学校が子どもたちにその機会を提供したい」。与謝野町立山田小の志賀麻理教頭は強調する。児童数は約60人と小規模で、参加対象の4〜6年の30人ほどが中型バス1台で来年10月に訪問予定だ。「人数もそれほど多くないので動きやすい。インターネットは発達したが田舎の学校が世界的なイベントを実際に見学できるのは貴重だ」と期待を込める。 交通費の府補助はなく、行く場合は保護者負担などが増える。そこで独自予算で移動費を補助する自治体もある。万博を生かした誘客に積極的な福知山市では、閉校した市内小学校木造校舎の万博パビリオン活用をはじめ、会場で「大江山の鬼伝説」の出展や福知山音頭の披露などを予定する。子どもたちにも万博を体験してもらうため、市として対象児童・生徒3400人分の貸し切りバス費用として4500万円の債務負担行為を設定した。長岡京市も同様に2800万円を確保している。 万博のホームページ では「子どもたちの五感を刺激し、探究学習に最適」とうたい、府内の学校も校外学習や修学旅行として利用を想定する。ただ、府調査では、「事前の下見ができない」と利用を見送った学校もあった。会場は建設中で学習にどう役立つか分からないだけでなく、現状では移動経路の確認や昼食場所の確保、トイレや救護室の場所も把握できない。加えて3月に起きたメタンガスの爆発事故や南海トラフ巨大地震が発生した場合の対応など、最優先となる安全面の懸念を訴える学校もあった。 京都市のある小学校の校長は「どう学習につながるのかが見えない。これまでのカリキュラムで決められた校外学習の訪問先がある中、時間やお金を捻出して万博を組み込む余裕はない」としている。 (三鼓慎太郎) ![]() |
【釜山共同】プラスチックごみによる環境汚染を防ぐための国際条約作りを進める政府間交渉委員会は2日、条約案への合意を先送りすることを決めた。国連環境総会で2024年末までに合意することを決めていたが、失敗した。25年に再び会合を開くが、難航が予想される。 最大の焦点となっているプラスチックの生産規制を巡り、厳しい規制を求める欧州連合(EU)側と、プラスチックの原料となる石油を産出する中東諸国側との間の溝が埋まらなかった。1日から2日にかけて韓国・釜山で開かれた全体会合でルイス・バジャス議長は「作業は完了からはほど遠い」と述べた。 生産規制を巡っては、パナマやEU、島しよ国など100力国以上が、条約発効後に開く第1回の締約国会議での国際的な削減目標の採択を提案。中東諸国側は「(条約は)あくまで廃棄物対策に絞るべきだ」と反対した。 日本は「できるだけ多くの国が参加する条約を目指す」との立場で提案に名を連ねなかった。環境団体は「後ろ向きだ」と日本を批判した。 青木一彦官房副長官は2日の記者会見で「実効的な枠組みが構築されるよう、早期の交渉妥結に向けて積極的に議論に貢献したい」と述べた。 議長は全体会合に先立ち、新たにまとめた議長案を1日に公表。生産規制は条文に盛り込まない案と、第1回締約国会議で改めて議論するとの両方の選択肢を維持した。 一方、プラごみの削減や環境流出の防止で条文案の整理が進んだ。ストローやレジ袋などの使い捨てプラや、有害との懸念がある特定の化学物質が使われたプラ製のおもちゃの製造を禁止する選択肢が盛り込まれたが、保留を示すかっこが付いたままだった。 プラスチックごみ汚染を防ぐための国際条約の合意は実現しなかった。最大の焦点となった生産規制を巡り、石油の輸出量減少に直結する産油国が猛反発。既に汚染被害が顕在化している島しよ国や欧州連合(EU)との意見対立が最後まで解消できなかった。 「条約はあくまで廃棄物対策に絞るべきで、生産制限は対象外だ」。韓国・釜山で11月25日に始まった政府間交渉委員会。今回5回目で、条約策定に向けた最後の会合となるはずだったが、産油国の主張で会合は当初から空転した。 汚染を抜本的に減らすには生産段階から規制をかける必要があると考え、EUやアフリカ、中南米、島しよ国など100力国以上が、今回会合で生産規制は条約案に盛り込まず、条約の第1回締約国会議で削減目標を設定することを提案。事態の収拾を図った。 だが中東諸国やロシアといった産油国を中心に反対は根強く、現地で交渉を見守ったある専門家は「サウジアラビアが優秀な外交官を韓国に派遣し、条約案から生産規制の条文を削除することに躍起になっている」と話した。 条約策定は国連環境総会(UNEA)で2022年3月に合意。24年末までに条約の策定作業を終えるとの期限を設けた。最初の政府間交渉委は22年に南米ウルグアイで開かれたがヽ当初から難航した。 今回、政府間交渉委で議長を務めたルイス・バジャス氏は、条約の土台となる議長案をたびたび提示。開催国の韓国政府も妥結に向けて奔走 し、1日には趙兌烈外相が釜山入りして交渉委の議長らと会談したが、不調に終わった。 だが本来、条約策定は待ったなしの状況だ。世界で生産されるプラスチックの量は40年に7億トンを超え、20年に比べて1・7倍になるとの推計を経済協力開発機構(OECD)が発表。この間、プラスチックの環境流出は1・5倍になると見積もった。 海流に乗ってプラごみが押し寄せる太平洋の島しよ国の代表らは会期中に相次いで記者会見し、漁業が産業の8割というミクロネシアの代表は「海の汚染が続けば、私たちは魚の代わりにプラスチックを食べることになる」と訴えた。 ある日本政府関係者は「プラスチックは企業から消費者まで影響の範囲が広く、有毒物質と違って、全部禁止できるものではない。合意形成が難しいトピックだ」と指摘。外務省関係者は「各国の意見の中で最も譲れない主張が何か見極めが難しかった」と漏らした。 ![]() |
この10月、ドイツのデュイスブルクを訪問した。人口は現在約50万人。ルールエ業地帯の西部にある都市で、ライン川とルール川の合流点に位置し、世界最大規模の内陸港を持つ交通の要所である。 石炭産業と製鉄産業によって栄えたルールエ業地帯は、1960年代ごろから本格化する石炭から石油へのエネルギー革命によって徐々に衰退に向かう。「ドイツのラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれたこの地域は、中国の広域経済圏構想「一帯一路」の要所に位置付けられることによって息を吹き返し、雇用が生み出された。 私は、ルール大学ボーフムの客員研究員として招かれ、教育や研究に従事していた。この都市で困窮化した移民の子どもたちをケアするさまざまなプロジェクトが進んでおり、貧困問題に詳しい地理学のホーン先生にご案内いただいたのである。 リスペクト 居住者の8割が移民で6割がパスポートを持っていないホーホフェルデ地区に着く。車の半数はナンバープレートにトルコ、ブルガリア、ルーマニアなどの国名があった。別の都市よりも明らかに安いスーパー、トルコ語の看板のパン屋やレストラン、やたらと多い理髪店は地域のコミュニティーの結節点として移民が始めやすい仕事の一つだ。 先生の紹介で地区の小学校の校長、ポッシェン先生に話を伺った。彼女を含め教員やスタッフはいわゆるドイツ人が多いが、通う子どもたちは多彩だ。 白人で問題を抱えていない子どもは全校の4%ほど。いわゆる「発達障害」の子も多いし、親が出稼ぎに行って家にいない家庭もある。教室にはドイツ語、ブルガリア語、トルコ語、ウクライナ語など多数の言語が記されている。 ポッシェン先生はここにいる教員、スタッフ、そして親たちから慕われ、尊敬されている。校舎を歩いていると子どもたちの目の輝きは、日本の都市にいる小学生の数倍まぷしい。その秘密を聞こうと思った。重要なのは教育理念である。まず、学校生活を営むうえでやってはいけないことを教える。 季節のたびに祭りを開催する。セラピー犬も校舎にいた。「大きなファミリーのようなものです。ゴッドマザーね」と彼女は笑った。彼女は子どもに教えるべき最も重要なことは「リスペクト」だと言った。相手を尊重する気持ちである。 「これを伝えられれば、教育としては十分だと思っている」と彼女は言う。肌の色や出身地、身体の特徴にかかわらず、この世に生まれ落ちた目の前にいる人間を尊重し、耳を傾ける。彼女の腕にあった入れ墨には漢字で「一期一会」と記してあった。好きな言葉だという。 民主主義の土台 親のケアも怠らない。毎週木曜日の午前10時から「両親カフェ」という朝ごはん会が小学校の中で開催されている。親たちが当番で料理を作り、小学校の教員とスタッフ、そして、親たちと市役所の福祉担当者が集まって一緒に朝食を取るのだ。パン、卵、豆料理、スープ、サラダ。とてもおいしい。移民にとっての命綱である情報の共有場所としてとても有効だとスタッフの方が語っていた。 小学校の近くで子どもたちの居場所をつくっている「青い家」という施設も訪れた。面白かったのは、そこにあるキッチンだ。社会的な問題を抱えた子どもたちが好きなものを作って、仲間だけではなく、職員にも振る舞う。 「味付けが濃いですね、この子たち」とスタッフのリーダーは笑っていた。彼はルールを重んじるが、一度も怒鳴ったことはない。子どもたちから信頼されている様子がすぐに伝わってきた。自立心を芽生えさせ、民主主義の土台をつくりたいと彼は言っていた。 日本では、闇バイトで強盗や殺人をさせられる中高生が問題になっている。この子たちの居場所はどこだろうか。 日本の政治は子どもたちの教育をあまりにも家族に押し付けて親を追い詰めていないだろうか。 「自助」の押し付け社会からの離脱が日本に求められている、とポッシェン先生の周りで走り回る小学生たちを見ながら思った。 (藤原 辰史 京都大人文科学研究所准教授) ![]() |
京都市教育委員会は2日、市立中学校の管理下で行うクラブ活動を2028年度をめどに解消し、地域指導者のもとで競技力の向上などを目指す「エリア制地域クラブ活動」と、学校単位で実施する「放課後活動」を創設する方針案を示した。生徒が二つの活動から選択したり組み合わせたりして参加することで、多様なスポーツや文化芸術活動に親しめるようにする。 少子化の影響で、京都市立中では、希望する部活動が学校になかったり、少人数のため試合形式での練習ができなくなったりする課題が生じている。部活動指導が教員の長時間労働の要因の一つになっていることもあり、市教委が、部活動の地域移行や地域連携の推進方針を有識者会議で検討している。 同日の会議で示されたエリア制地域クラブ活動は、民間団体が実施主体となり、平日・休日に学校管理外で活動する。3校程度を一つのエリアとし、種目別に拠点校や地域のスポーツ施設で活動する。教職員が勤務時間外で指導者を兼務する場合も想定される。参加は原則有料で、公費補助の仕組みも検討する。 学校主体で行う放課後活動は、校内での居場所も兼ねて平日の放課後に設定し、主に教職員が見守る。学校行事や授業と関連する放送、美術、英語など文化系の部活動に取り組む生徒の活動の場を継続させるほか、レクリエーション的にスポーツに親しむ場面も想定。実費負担のみの原則無料で行う。 方針は来年2〜3月に予定するパブリックコメントを経て決定する。 部活動の地域移行を巡っては、国の方針を受けて休日部活動の地域クラブへの移行を目指す自治体が増える一方、学校管理下の部活動の継続方針を示す熊本市の例もあり、対応が分かれている。 ![]() |
【ロンドン共同】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は2日、世界の軍需企業の2023年販売額に関する報告書を発表した。日本は防衛力強化を背景に、軍需関連の売上高上位100社に入った5社の合計額が、前年比35%増の約100億ドル(約1兆5千億円)に上った。 5社のうち最上位は三菱重工業で、売上高は前年比24%増の約38億9千万ドル。45位から39位に上昇した。日本は他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を進めている。戦闘機やミサイルの需要が増し、5社の国内受注はそれぞれ22年の2〜4倍以上だった。 ウクライナ侵攻を続けるロシアの販売実態は不明な部分も多いとされる。ミサイルや戦闘機、無人機などの増産で、7位の国営企業ロステフが前年比49%増となった。 韓国4社の合計額は、ポーランドなどへの戦闘機や戦車の輸出で前年比39%増。 23年10月にイスラム組織ハマスとイスラエルとの戦闘が始まった中東6社の合計額は18%増加した。 ウクライナや中東の紛争などによって上位100社の4分の3近くは売上高が増加。全体では前年比4.2%増の6320億ドルだった。 ![]() |
不登校支援に力を入れる草津市教育委員会は本年度、全市立小中学校に設ける「校内教育支援センター」の全てに専任教員を配置した。教員不足の折に思い切った取り組みで、利用を希望する子どもの確実な受け入れや、集団生活に不慣れだったり、対人関係に不安を抱えたりする児童 生徒へのきめ細かな対応が可能になったという。(岡本早苗) 昇降口を入ってすぐ、1年生の教室と廊下を挟んだ向かいに、志津南小の校内教育支援センター「オアシス」はある。長机に絵本や児童書が並び、戸棚にはボードゲームやぬいぐるみが置かれていて、普通教室とは雰囲気が異なる。ホワイトボードには、センターをよく利用する児童5人の時間割があった。 記者が訪れた午前10時半、部屋は空っぽだった。「ここで朝の時間を落ち着いて過ごすと、自分の教室で頑張れるようです」と、同小の川岸哲也校長(55)が話す。特に1年生の一学期は保育園、幼稚園との環境の変化に戸惑い、登校渋りが起きやすい。集団登校の列に入れず保護者が手を引いて学校に連れてきたり、昇降口で上靴に履き替えるのを嫌がったりする姿は、多くの学校でみられるという。 昨年度まで、そうした子どもと接するのは主に教育相談担当の教員だった。ただ、出張や病休の教員に代わって授業をするなど他の業務も多い。本年度はセンターの専任教員と教育相談担当らが連携することで、昇降口で児童を迎えたり、登校が確認できない子の自宅に「2、3時間目からでも待ってるよ」と電話をかけたりできるようになり、保護者との信頼関係をつくりやすくなったという。 川岸校長は「学校だけがすべてではないが、学校はいろいろなことを学びやすいのは確か。少しのサポートで友だちと一緒に勉強できるなら背中を押したい。早めのアプローチが不登校の『予防』につながる」と力を込める。 草津市教委は、京都と滋賀の自治体では最も早い2021年度からフリースクールを利用する世帯に利用補助を始めた。フリースクールと学校の交流会を開いたり、オンラインで授業に参加したりすることでも出席扱いとするなど不登校支援を加速させている。 病気などの理由を除き年間30日以上欠席した不登校児童生徒の割合(不登校率)が23年度も県や全国で過去最多を更新する中、草津市は小学校2・04(22年度14・3)%、中学校5・89(同5・92)%と、中学校で初めて減少に転じた。 「ステップルーム」の呼び名でセンターを運営する新堂中は、美術準備室の半分を仕切って使っている。専任教員の見守りのもと、自分のペースで自習する生徒もいれば、授業の合間を縫って訪れた担任教諭と談笑する生徒もいる。不登校傾向のある生徒に利用を限定しておらず、昼食時には7〜8人の生徒でにぎわう日もある。 昨年度まで、利用の際は保護者に申請を求めていた。教育相談の教員らでローテーションを組んで運営を担っていたが、教員を手配できない日は開室できなかったからだ。専任教員が配置された本年度は、毎日開室できるようになり、申請を不要に。利用は増え、明らかに登校できる日が増えた生徒も出てきた。教育相談主任の田中紗瑛教諭(31)は「人と関わり、話をすることで思いやりの力が付く。友だちの影響を受けて学習に 向き合い始める子もいる」と実感を語る。 専任教員の勤務時間が週19時間のために午前中しか在室できないことや、部屋が手狭なため静かに学習したい生徒のスペースを確保しにくいなどの課題はある。同中の北村将校長(56)は「昔は保健室登校などとして心のケアまで養護教諭が担っていた。新型コロナウイルス禍を経て不登校傾向のある生徒がこれだけ増える中、専任の教員と部屋が存在する意義は大きい。今後の充実に期待している」と話している。 不登校の小中学生が2023年度に初めて全国で30万人を超え、子どもの学習機会の確保が急務となっている。学校数の多い京都市内でも、教員らと連携しながら不登校支援を担う「子ども支援コーディネーター」を任用し、校内教育支援センターの運営を進めている。 同市内のセンター設置校は小学校98、中学校53で、公立小中学校における設置率は今年7月時点で65・7%と、全国平均の46・1%を上回って いる。 同市内で最も早い2020年度に子ども支援コーディネーターが配置された市立洛南中(南区)では、「サポートルーム」と呼ばれる校内教育支援センターが定着している。ランチルームを転用した。木調の明るい部屋は、パーティション付きの席や4人がけのダイニングテーブルなど生 徒が好きな場所で自習ができるよう工夫されている。 今でこそ月延ベ100人の利用があるが、1年目はほとんど子どもの姿がなかった。殺風景な空き教室からランチルームに場所を変えた2年目から利用が急増。同中学校区の吉祥院、上鳥羽両小にも同時期にコーディネーターが配置され、小学校でセンターを利用した児童が中学校で抵抗 なく利用できるようになったとも考えられるという。 同中のコーディネーター山本雅幸さん(65)は元校長。「家と教室の間の場所として、安心でき、楽に来られる場所でありたい」と、温かく生徒を見守る。日々の生徒の様子はLINEなどで担任の教諭に伝え、生徒との関係づくりにつなげている。同中の大北康史校長(57)は「学校に行くか行かないかのゼロか100かではなく、30でも50でも来られる場所があればいい」と語る。 同市は本年度、前年度比18人増となる27人の子ども支援コーディネーターを任用した。学校現場から増員の要請が大きいといい、市教育委員 会生徒指導課は「国の補助を利用するなどして充実させていきたい」とする。 センター設置率は、京都市以外の京都府は38・1%だが、別室登校として利用できる部屋は約8割の小中学校で用意できているという。滋賀県は82・5%となっている。 ![]() |