京都府と京都市の両教育委員会は29日、2025年度入学の高校入試に向けて、府内の中学3年生を対象に実施した進路志望調査の結果を公表した。全日制の公立高を志望した割合は前年度比0・8ポイント減の52・2%となり過去最低を更新した。 来年3月の卒業予定者は前年度比397入減の2万1522人で、このうち98・7%にあたる2万1248人が通信制を含む高校進学を志望した。私立高志望者は50人増の7289人だった。 全日制公立高志望者の89・9%が受験意向を示している2月の前期選抜の倍率は、鴨沂普通A方式1が6・71倍と最も高く、桂普通A方式6倍、山城普通A方式1が5・42倍、洛北普通A方式1の4・79倍、田辺普通A方式4・75倍と続いた。全日制高で倍率が1倍を切ったのは29校36学科だった。 通信制の志望者の割合は4・3%で11年連続増加し過去最高を更新した。 全日制公立高への志望割合が過去最低となったことについて、府教委高校改革推進室は、私立高生への授業料補助の拡大や私立通信制の多様な教育展開などにより、進路選択の幅が広かっていることが要因と分析している。 同調査では、府内の国公私立中・特別支援学校209校と3分校の生徒の11月10日現在の第1志望状況をまとめた。 2026年4月から京都府立大系属校となる農芸高(南丹市)は、3年ぶりに前年度より志望者数を増やした。府教育委員会高校改革推進室は「魅力が中学生に少しずつ届き始めている。家畜のコンテストなどで優秀な成績を残し、メディアに取り上げられた影響もある」としている。 府内唯一の農業専門学校である農芸高の志望者は、定員85人に対して63人だった。前々年度は54人、前年度は51人にとどまっており、受験生の獲得で明るい兆しが見えた。 一方、系属校化が決まっているもう1校の北桑田高(京都市右京区京北)は普通科と府内唯一の林業専門学科「京都フォレスト科」の合計志望者数は定員90人に対して前年度の38人を下回る34人だった。 両校は系属校化に先立ち、現1年生から推薦枠を設け、教育プログラムの見直しにも着手している。府教委は「府立大と府教委が系属校について協定を結んだのが10月末で、十分周知できていないかもしれない。今後、本格的に教育内容を固めてしつかり広報する。系属校初年となる26年 度入試が勝負の時だ」としている。 ![]() |
発がん性が懸念される有機フッ素化合物 (PFAS)が全国で検出されている問題を巡り、環境省と国土交通省は29日、水道水の全国調査結果を公表した。2024年度に富山県を除く46都道府県の332水道事業でPFASが検出された。検査を実施した全国1745水道事業の2割に相当する。PFASに特化し、小規模事業者にも対象を拡大した大規模調査は初めて。 PFASの代表物質PFOAとPFOSの合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)という国の暫定目標値を超えた水道事業はなかったが、岩倉市水道事業(愛知県)と新上五島町水道事業(長崎県)、むかわ町穂別簡易水道事業(北海道)で47〜49ナノグラムと暫定 目標値に近い数値が検出された。 暫定目標値を巡っては、海外の動向を踏まえ厳格化を求める声もある。米国は2物質の飲料水の規制値について、それぞれ1リットル当た り4ナノグラムと設定。ドイツは28年に2物質を含む4種類のPFAS合計で同20ナノグラムとする方向だ。 調査は5月下旬から9月下旬に実施。対象は給水人口が5千人超の上水道や101〜5千人の簡易水道などで全国の3755事業。20〜24年度に浄水場の出口水や給水栓から出る水の水質を調べた。3595事業から回答あり、24年度に検査を実施したのは1745事業だった。 20〜23年度は京都など12都府県の14水道事業が暫定目標値を超えていた。 現在は暫定目標値を超えても水質改善などの対応は努力義務にとどまる。浅尾慶一郎環境相は29日の閣議後記者会見で、PFASを水道法上の「水質基準」の対象に格上げし、対応を法的に義務付けるかどうか25年春をめどに方向性を示すとした。 国の暫定目標値は超えていないものの、比較的高い数値が検出された地域が散見され、今後のの推移に注意が必要だ。有機フツ素化合物(PFAS)は人工物質で、中長期的には発生源の特定も重要となる。PFASは水質改善などの対応を法的に義務付ける水質基準になっていないことから、検査が十分にされていない側面もある。一度も検査していない事業者もあり、水質基準に引き上げて検査を義務化することが求められる。 ![]() |
「植物が枯れたのはなぜ?」という教諭の問い掛けに「水をやりすぎ」「違う、水が少なすぎだよ」「調べてみる!」など、次々と児童たちの声が飛び交う。東京都渋谷区立神宮前小学校の全学年で平日午後に実施される「シブヤ未来科」 の授業の一こまだ。 同区内の公立小・中学校では本年度から「探究『シブヤ未来科』」のプロジェクトがスタート。総合的な学習の時間を6年生の場合で年間70時間から2倍以上の約150時間に増やし、探究学習に充てる。理科や社会科の内容を掘り下げたり、渋谷という土地柄を生かしてファッション関係の地元企業を取材したりと、子どもたちの興味を引き出すよう工夫し、教育関係者の注目を集める。 探究学習の量を増やすと同時に、どうやって質を上げていくかがポイントだと同区教育委員会事務局の松村信之介さんは指摘。「以前は子どもが主役でない調べ学習で終わってしまったところがあった。これから複雑で多様な時代を切り開いていく一人一人に、自分の個性を生かしてわくわく学び続ける面白さをしっかり伝えたい」 探究学習をサポートする専門の私塾も。ユニークな学びの提供で人気の「探究学舎」は、東京都三鷹市の校舎でリアルな授業を開講する一方、国内外の約1万人の児童・生徒を対象にオンライン授業も実施する。 スクリーンに名画「モナリザ」や落書きのような絵が映し出され、「どれがアート?」と講師が質問。子どもは床に座ったり、歩き回ったりしながら「これはアート」「額がないから違う」などと答える。「それじやあ、アートつて何?」という一言に首をひねる子どもたち…。 こうした授業は「算数発明」「宇宙」「ことば」「戦国英雄」などのテーマごとに開かれ、親も受講でき好評だ。プロデューサーの向敦史さんは「子どもが本当に興味を持って取り組めるようにするのは、とても難しい。『学ぷって楽しいな』ということを、まず手渡ししていきたい」と話す。 全国の探究学習の実施状況や最新動向などを民間でまとめた「探究学習白書」の編集責任者は「国語なら言葉の成り立ち、算数なら計算の意味を深く考えるなど、他の教科の学びと強くつながることで、探究学習はさらに深化していくのではないか」としている。 ![]() |
【キャンベラ共同】オーストラリア議会下院は28日、16歳未満の子どもがインスタグラムやTikTOk(ディックドック)、X(旧ツイッター)などの交流サイト(SNS)を使えないようにする法案を賛成多数で可決した。連邦総督の裁可を経て近く成立する。国家レベルで子どものSNS利用を禁じるのは世界初。保護者の同意があっても認めない。深刻な違反をした場合は事業者に対し最大4950万豪ドル(約50億円)の制裁金を科す。子どもや保護者への罰則はない。施行まで少なくとも1年間の準備期間を設ける。 SNSは、暴力や自殺、違法薬物使用を誘発しかねない有害コンテンツに子どもがさらされたり、学校の集団いじめの温床になったりする弊害が指摘されてきた。 子どものSNS利用を規制しようとする動きはフランスや英国、米国の一部州で始まっている。日本では具体的な動きはないが、政府主導で研究が始まっている。 今回のオーストラリアの法律は事業者に対し、アカウント作成の際に厳格な年齢確認を義務付けた。他に禁止されるのはフェイスブックと写真・動画共有アプリのスナップチャット、掲示板レディット。 政府は、ユーチューブは教育を受けたり心の健康を保ったりすることにも役立つと判断し、禁止対象から外した。学校の送り迎えなど家族の連絡にも使われるワッツアップのような通信アプリも除外した。 年齢確認の方法は決まっていない。アカウント作成に身分証明書が必須になれば、大人も含めた個人情報を事業者が蓄積しかねないとの批判もある。顔認証や通信内容のパターン分析などを組み合わせ、16歳未満であることを割り出す技術も検討されているもようだ。 アルバニージー労働党政権が21日に法案を提出。27日に下院を通過していた。 【キャンベラ共同】子どもを交流サイト(SNS)の有害コンテンツや、中毒性が指摘されるショート動画から遠ざける法制化の取り組みはオーストラリアだけでなく、フランスや英国、カナダ、米国の一部州で急速に進む。日本では具体化する動きは出ていないが、インターネットを利用する未成年者をどのように保護するかを探る研究が政府主導で始まった。 フランス議会は昨年6月、保護者の同意がない限り、15歳未満がSNSを利用できないようにするための法律を承認した。英国では同10月、子どもに有害なコンテンツのアクセス防止策をSNS事菓者に義務付け、違反に制裁金を科す「オンライン安全法」が成立した。 米フロリダ州では今年、14歳未満の子どもが、動画を連続再生するSNSのアカウントを取得するのを禁じる法律が成立。ニューヨーク州でも、18歳未満が動画や写真をアルゴリズムが選んだ順に視聴するには保護者の同意が必要となった。 日本では今月25日、こども家庭庁が中心となって大学教授らでつくる「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ」が初会合を開いた。主要国の事例も参考にして課題を整理するとしている。 ![]() |
【キャンベラ共同】オーストラリア下院は27日、16歳未満の子どもがインスタグラムやTikTOk(ディックドック)、X(旧ツイッタ士などの交流サイト(SNS)を使えないようにする法案を賛成多数で可決した。上院に送られ28日に採決され、可決後、連邦総督の裁可を経て近く成立する見込み。国家レベルで子どものSNS利用を禁じるのは世界で初めてとなる。 暴力や自殺、違法薬物使用を誘発しかねない投稿に子どもが触れないようにするのが狙い。深刻な違反をした場合は事業者に対し、最大950万豪ドル(約49億円)の制裁金を科す。子どもや保護者への罰則はない。 他にフェイスブック、写真・動画共有アプリ、スナップチャット、掲示板レディットが対象となる。ユーチューブは禁止の対象外。法案はアルバニージー政権が21日に提出していた。 パワハラ疑惑などを受け失職した斎藤元彦さんが、兵庫県知事選で再選された。インターネットを中心に真偽不明の情報も飛び交った選挙戦が私たちに突き付けた課題とは何か。「スマホ時代の哲学」の著者で京都市立芸術大講師の谷川嘉浩さんに寄稿してもらった。 日本の選挙で、これほど「真実」が連呼されたことはないだろう。私の周りにも、急に「真実」という言葉を頻繁に使い始めた人がいた。勉強熱心な起業家で、文筆活動にも携わる人物である。 「交流サイト(SNS)で情報を得た若者を中心とする無党派層が、改革反対派にはめられた斎藤氏の再選へと動いた」とか、「亡くなった元県民局長のリーグは名誉毀損をもたらす怪文書だ」などという意見を彼は堂々と語った。 斎藤氏のハラスメントなどについては調査中で、百条委員会も継続しているため、冷静さを優先するなら、第三者の適切な調査結果が出るまでは判断を留保すべきだろう。 しかし、斎藤氏の再選を支持した人の多くは、「マスメディアの偏向がっくり上げた斎藤氏のイメージに違和感がある」と考えるだけでなく、「ネットメディアの情報からすると、ハラスメント疑惑は事実無根である」という意見まで持っているようだ。 冒頭で紹介した知人は、既存メディアから外れたマイナーメディアに期待をかけると言って、ユーチューブやTikTOk(ディックドック)だけでなく、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と関係が深いとされる「世界日報」なども好意的に評価していた。 近代社会では、市民一人一人が自分で調べて考え、意見形成することを前提に選挙制度を設計している。しかし、情報をつなぎ合わせて自分なりの真実を推定して意見を持とうとする真面目さは、疑念や不安をあおられると暴走し、デマや陰謀論にからめ捕られやすくなる。 そのため、全てを自力で処理せず、即断するのを控え、素直に専門知を頼るバランス感覚が必要になる。すぐに判断や意見へと至らずに、分からないことを分からないまま留保してかみ砕く力、「ネガティブケイパビリティ」が必要なのである。 事実(一次情報)を知ること自体が難しいことだが、それを評価・解釈することは、輪をかけて難しい。小野寺拓也、田野大輔著「検証ナチスは『良いこと』もしたのか?」(岩波ブックレッド)で論じられているように、「事実」は適切な方向で「解釈」されねばならない。その「解釈」に専門性が宿っているからである。 「解釈」は専門性が高く難しいため、素人には立ち入りがたい。しかし「解釈」を欠いてしまっては、思考が真実味のあるナラティブ(物語)に乗っ取られ、「事実」から一足飛びに「意見」を持ってしまう。 今回の選挙では、事実性を見定めながらも一足飛びに意見へと行かず、自分の判断や解釈を留保することの困難さと重要性を痛感させられた。 ![]() |
全国の公立小中学校で2023年度、教員の欠員が発生した学校が20%前後に上ったことが、全国公立学校教頭会の調査で明らかになった。欠員が生じた小中学校の4・8%で、副校長や教頭が担任の代替を担っていた。同会は「現場は人員を必要としており、危機的状況が続いている」としている。 調査によると、23年度当初の教員配置で定員を満たさなかったのは、小学校で12・3%、中学校で12・2%。出産や育児に伴う休暇や、療養などによって年度途中に生じた欠員を埋められなかった学校は小学校で9・O%、中学校で7・0%だった。 これらの学校に副校長や教頭の関与を尋ねたところ、「担任の代替」をしたと回答したのは小学校で31・1%、中学校で7・0%。「授業の一部」を担ったのは小学校が41・9%、中学校が44・5%に上った。「授業以外の活動」は小学校で27・0%、中学校で48・5%だった。 24年度当初も、20・9%の小中学校で教員配置に欠員があった。 ![]() |
厚生労働省の2023年国民健康・栄養調査で、職場や学校を除く地域で誰かと食事をする「共食」の機会が過去1年間にあったと答えた20歳以上の男女の割合が19・0%だったことが25日、分かった。同省担当者は「人とのつながりは健康に資する。新型コロナウイルスの影響や生 活の多様化で共食の困難さは増したが、効果的な対策を取りたい」と話す。 政府の健康づくり計画「健康日本21(第3次)」 は、地域の食事会などで共食する人の割合を32年度に30%とする目標値を掲げている。 調査は23年11月に実施し、全国の2921世帯から回答を得た。地域の共食の頻度は「月に1回程度」(4・9%)、「年に1回程度」(4・7%)など。友人・知人との共食の機会があったと回答したのは65・2%で、頻度は「月に1回程度」 (99・2%)、「3ヵ月に1回程度」(15・7%)などだった。 他に、家庭(同居者を含む)での共食が過去1ヵ月にあったと答えたのは86・9%。職場や学校では38・6%だった。 1日の野菜摂取量の平均値は256・0グラムで、現行の調査方法になった1995年以降で最低だった。男女ともに20代が最も少なかった。政府は目標値を350・0グラムとしている。 ![]() |
三井住友信託銀行は25日、資産運用で得られたもうけを全て学校に寄付する仕組みの金融商品を発売すると発表した。同日付で神奈川県鎌倉市と協定を締結。寄付対象は公立の小学校と中学校で、国内金融機関で初の取り組みという。子どもの教育に貢献したいと考えている富裕層の顧客から資金を集め、それを有効活用し体験型授業やIT環境の充実につなげる。 鎌倉市で記者会見した三井住友信託の木屋英樹執行役員は「地域社会の課題解決につながる」と語った。松尾崇市長は「持続可能な教育資金だ」と期待を寄せた。 顧客が預ける資金は500万円からで来年2月28日まで受け付ける。運用期間は2027年9月27日までで運用益を原資に毎年2回寄付する。成果次第で全国に広げていく考えだ。一般的な寄付は単発で終わってしまう課題があるが、運用することで継続的な支援が可能になる。元本が保証さ れているため顧客が損失を被る心配もないという。 商品開発の背景には日本に寄付文化が根付いていないとの問題意識がある。日本ファンドレイジング協会 によると、2020年の個人の寄付総額は米国が約34兆円だったのに対し日本は約1兆2千億円と、宗教観や納税制度の違いはあるものの約30分の1だ。 経済や教育の格差拡大が社会問題化する中で、震災などの有事だけでなく普段から多くの人が寄付するようになれば意義は大きい。 ![]() |
教職員のなり手減少が全国で問題となる中、京都新聞と山陰中央新報社、長崎新聞社、東奥日報社の地方紙4紙でつくる実行委員会が23日、首都圏の学生らに向け、各府県で教員として働くやりがいをアピールするイベント「地方で先生しませんか?」を東京都世田谷区で開いた。京都府や青森県の教育委員会職員らが、受講した約30人にそれぞれの土地の魅力や求める教員像を語った。 府教委の長朿伸哉さんは「京都は教科書に載っていることの本物の教材が身近にある」と話し、歴史や美術だけでなく、祇園祭の山鉾の構造と物理など、多くの教科で学びの動機付けがあると魅力を訴えた。 イベントでは、甲子園に出場した島根県立大社高野球部監督の石飛文太教諭が、生徒と共に夢を追える教員のやりがいを講演。4府県のブースでは、採用スケジュールなどについて学生らへの個別相談も行った。 府教委によると、2025年度の教員採用試験の志願状況は400人程度の募集に対し志願者は126人減の1622人で、減少傾向にある。 ![]() |
台湾有事の際、米軍がミサイル部隊を南西諸島とフィリピンに展開させ、軍事拠点を設ける方針であることが24日、分かった。自衛隊と米軍は12月中に台湾有事を巡り初の共同作戦計画策定を目指しており、ミサイル部隊の展開方針を盛り込む。台湾の武力統一を排除しない中国に対抗する日米の基本構想が明らかになった。有事が起きれば広大なエリアが「戦域化」し、中国による部隊拠点への攻撃で周辺住民が巻き込まれ、犠牲となる恐れがある。日米関係筋への取材で判明した。(以下略) 自衛隊と米軍が台湾有事を想定して策定中の日米共同作戦計画に、南西諸島とフィリピンへの米軍ミサイル部隊展開が盛り込まれることが分かった。部隊展開は軍事的合理性だけに基づいており、「戦域化」する恐れがあるこれらの島々で暮らす住民の存在は考慮されていない。 米政府内では2027年までに中国が台湾を侵攻する可能性があるとの見方が出ている。中国は来年にも3隻目の空母を就役させ、新型のステルス戦闘機も導入予定。日本は米国の焦りに引きずられる形で、共同作戦計画の策定に応じたとみられる。 政府が南西諸島の防衛力強化を推し進める中、沖縄からは「再び戦場にするな」との声が上がる。フィリピン・ルソン島の州知事も「州が(米中という)二つの超大国の戦争に巻き込まれるのを望んでいない」とくぎを刺した。 日本政府内では「台湾有事は日本有事」との認識が広がる。今回判明した共同作戦計画のように、国民の目が届かない場所で米側と着々と軍事面での連携強化を進めている。台湾有事は本当に差し迫った脅威なのか、関与することは国益につながるのか―。政府は真摯に国民に説明する必要がある。 ![]() |
【バクー共同】アゼルバイジャンで開かれていた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は24日、発展途上国の地球温暖化対策のため、先進国が2035年までに官民合わせて少なくとも年3千億ドル(約46兆4千億円)支援するとの目標で合意し、閉幕した。年1千億ドルという現行目標の3倍。世界全体では年1兆3千億ドルに拡大させることも求めた。(以下略) 国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は、発展途上国の地球温暖化対策を支援する新たな資金目標に合意した。大量の温室効果ガスを排出してきた責任に見合う拠出を先進国に求める途上国と、負担軽減を図る先進国の対立が鮮明となり、会期は2日も延長。最後の全体会合でも合意に至った達成感はなく、要求から程遠い幕切れに途上国の憤りが会場に渦巻いた。 「深く失望した」。閉幕予定日の22日に議長国アゼルバイジャンが示した合意文書案に、既に温暖化の深刻な影響下にある小島しよ国グループは怒りをあらわにした。 途上国は年1兆3千億ドル(約200兆円)規模の資金を要求。再生可能エネルギーの導入など温暖化対策のほか、既に生じた異常気象に伴う災害復旧などに多額の資金を必要とするからだ。債務の増大を避けるため、先進国からの無償供与が大半を占めることを望んだが、示された先進国からの資金は年2500億ドルと要求から懸け離れていた上、資金の貸し付けや投資を含むものだった。 特に先進国に起因する温暖化による自然災害に見舞われている低所得国は、自分たちへの割当額を明示するよう強く求めたがかなわず反発。「議長国は他国からのアドバイスを聞き入れないらしい」。各国代表団や非政府組織(NGO)の間に議長采配への不安が渦巻く中、閉幕予定日は早々に過ぎ去った。 延長1日目の朝。「もう文書の改定版はできているらしい」とのうわさが広かった。会合予定を表示する会場のテレビには、夜から全体会合が開かれるとの予告が表示され、成果文書採択への期待が高まった。 だが午後に開かれた議長と主要閣僚の会合は紛糾する。2500億ドルを3千億ドルに上積みする案が示されたが途上国の要求には依然遠く、小島しよ国などが会合の中断を要求。先だって開かれた途上国と先進国が協議する場に呼ばれなかったことも怒りに火を付けた。 一方の先進国側も「現在の(目標の)1千億ドルが3千億ドルになるのは、かなり踏み込んだ数字だ」(浅尾慶一郎環境相)とアピールしたが、さらなる上積みには慎重姿勢。ただ、途上国側も交渉決裂で何も残らなくなる事態は望まなかった。 結局、会期を2日延長した閉幕日の24日未明に出た最終的な合意文書案でも支援額の上積みはなかった。疲労が色濃くにじむ中、閉幕の全体会合が開始。アゼルバイジャンのババエフ議長は議題を読み上げると、異議申し立ての確認時間も取らずつちを振り下ろし、採択を宣言した。 直後、インド代表は「合意は目の錯覚だ。私たちが直面している課題の巨大さに対処できるものではない」と反対を明言。会場に拍手が湧き起こった。「先進国が資金と実施手段を提供する義務を果たさないという不公平を強化するものだ」(ボリビア代表)と失望を表明する声も続いた。 ただ合意成立により、国際協調に背を向けるトランプ米次期政権の誕生を前に気候変動対策が勢いを失う事態は避けられたとみるのは世界自然保護基金(WWF)ジャパンの山岸尚之さんだ。「たとえ不十分だとしても、国際協力をつなぎとめることはできた」(バクー共同) ![]() |
公立小中学校で産休や育休を取得した教員の代替要員について、文部科学省は非正規だけでなく正規の教員を充てた場合も国庫負担の対象とする方針を固めた。同省への取材で23日、分かった。教育員会が代わりを安定的に確保できる環境を整備することで、教員不足の解消につなげる狙 いがある。政令を改正し、2025年度からの適用を目指す。 文科省によると、産育休を取得する教員は年に約2万人。学校現場はその都度、採用試験に不合格となって再チャレンジを目指す教員志望者らを非正規教員として雇用し、穴を埋めている。しかし近年はなり手の減少などで確保が困難になっており、計画通りに教員配置ができない欠員状態が各地の学校で生じている。代替教員を探すことは教委や学校の負担にもなっている。 これまで給与の3分の1が国庫負担となるのは非正規教員が代替した場合に限られていた。正規教員も対象にすると、各教委は産育休取得者を見越して正規教員をあらかじめ多めに採用しておくことができ、欠員が生じてもスムーズに補充できるようになる。 ![]() |
全国知事会は22日、文部科学省が小学6年と中学3年を対象に毎年行う全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の在り方などに関し、47都道府県知事に尋ねたアンケート結果を公表した。53%(25人)が、テスト結果を都道府県・政令指定都市別に公表している現行の方法を支持した一方で、30%(14人)は「全国の状況のみ公表」が望ましいとした。 アンケートは9月に実施。現行の公表方法について「過度な競争や教職員の負担につなかっている」「都市部と地方の教育資源の格差や家庭環境といったスタートラインを無視した単純比較がなされる」との意見もあった。文科省は今後、見直しの是非を検討する。 実施頻度は、74%(35人)が現行の「毎年実施」が適切だとした。「3年に1度」は11%(5人)、「調査不要」はゼロだった。全員対象を維持すべきだとしたのは81%(38人)で、11%(5人)は「パソコン端末を活用して出題・解答する新方式(CBT)の状況を見て判断したい」とした。 学力テストは、国語と算数・数学の2教科が基本。おおむね3年に1度は小中とも理科が加わり、中3は英語を同程度の頻度で実施する。文科省は2027年度から、紙の問題冊子を廃止しCBTに全面移行する方針案を示しており、25年度の中3理科で先行実施する。 ![]() |
全国知事会などは21日、公立学校教員の残業代代わりに給与へ上乗せする「教職調整額」を引き上げる場合、負担が発生する自治体の財源を確保するよう、文部科学省に緊急提言した。引き上げ自体は教員の処遇改善として評価しつつ「財源確保の見通しが示されていない課題がある」と指摘している。 提言は知事会と全国市長会、全国町村会の連名。知事会で教育問題を担当する大村秀章愛知県知事が、文科省で武部新文科副大臣に手渡した。 大村氏は要請後、記者団に「国に財源対策を講じてもらわないと対応できない」と強調。所定外の勤務時間に応じた残業代支給に将来転換する財務省案は「(どこまで残業とするか)線引きが難しく無理だ。現場が混乱する」と反対を訴えた。 調整額を巡っては、深刻化する教員のなり手不足を解消するため、文科省が現在の月給4%相当から13%に引き上げるよう求め、来年度予算編成に向けて今後、調整が本格化する。13%とした場合、年間で自治体の負担は4500億円程度増える。 ![]() |
困窮世帯の小中学生のうち、学校が楽しくないと感じる子どもが28%に上ることが、子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」 (東京)の調査 で分かった。このうち大半の子どもが生活が苦しいと感じていると回答。小河光治代表理事は「経済的支援の大幅な拡充と、子どもの学びを守る支援を政府に求めたい」と訴えた。 小中学生に、学校で楽しいと感じるかどうかを尋ねると「全然楽しくない」(10・9%)と「あまり楽しくない」(17・1%)が計28%。「全然」と答えた子どもの88・3%、「あまり」の85・1%が「生活を苦しいと感じたり、過去に感じたりした経験がある」とした。 小学生の20・3%、中学生の37・8%が「授業が分からない」と答えた。 自由記述には「消えてしまいたい。学校に行きたくない」「塾に行けず学校でしか勉強できないが、授業が理解できないまま進んでしまう」といった声が寄せられた。 調査は昨年11〜12月、生活保護受給世帯や住民税非課税世帯などを対象に行った。 |
自ら死を選ぶ子どもが後を絶たない。命を救うために何ができるか。原因や背景を丁寧に探り、予防策の実効性を高めなければならない。 政府の自殺対策白書によると、2023年の小中高生の自殺は513人に上り、過去最多だった前年の514人と同水準となった。京都府や滋賀県でも20歳以下の自殺は増加傾向にある。 児童生徒の自殺は新型コロナウイルス禍に入った20年に前年比100人増の499人と急増した。日常生活の制限からくるストレスが要因と見られたが、コロナ禍の収束後も高止まりしたままだ。 国や自治体、教育委員会、学校はもとより、社会全体で深刻に受け止め、手を尽くす必要がある。 子どもの自殺の理由は特定するのが難しい上、友人関係や家庭、病気などの複合的な背景があり、周囲にうまく伝えられないことも多い。しかし、本人がSOSのサインを発している場合も少なくないと白書は指摘する。 22〜23年に自殺した小中高生1027人の自殺未遂歴を調べたところ、約2割で経験があり、女子高校生では4割近くに上った。 このうち自殺から過去1年以内に未遂があったケースは過半数を占め、特に小学生と高校生の女子では未遂から1ヵ月以内の自殺者が目立った。身近な大人がこうした兆候を見逃さず、専門家のサポートにつなげていれば、最悪の事態を防げた可能性もある。 10代の死因の1位が自殺であるのは、主要7力国(G7)の中で日本だけだ。政府は昨年、関係省庁が連携して緊急プランをまとめたが、課題とされた多角的な原因分析や具体的な体制整備が急務である。悩みを抱える人に気付き、必要な支援を行う「ゲートキーパ」(命の門番)の養成や、民間団体が行うSNSでの相談窓口の活用、多様な居場所づくりなど、さまざまなアプローチで自殺のリスクを摘み取りたい。 全ての年齢層への対策も欠かせない。23年の自殺者は京滋で計約660人、全国では2万1千人超と深刻なレベルが続いている。 原因では「経済・生活」の増加が目立つ。厚生労働省は「物価高などを背景とした生活苦が要因の可能性がある」と分析する。 06年に制定された自殺対策基本法では「自殺は個人的な問題ではなく社会の問題」と明示された。貧困や孤立に悩む人への支援策をはじめ、生きる希望を紡ぐためのセーフティーネットを築きたい。 ![]() すべての原因を経済に起因するものとは考えないにしても、「お金」がすべての社会は子どもに希望を与えることはできない。 |
京都市は20日、職員給与を引き上げる方針を明らかにした。最も人数が多い事務・技術職の月給の引き上げ幅は平均2・23%(8921円)で、2%を超えるのは1992年以来32年ぶり。市人事委員会の勧告に沿った対応で、引き上げは2年連続。27日開会の11月市議会に財源50億6700万円を盛り込んだ一般会計補正予算案を提出する。 市人事委は毎年、民間との均衡を図るため、無作為に抽出した従業員数50人以上の事業所の平均月給とボーナスを調査し、差額を是正するよう勧告している。強制力はないものの、市は原則として毎年勧告に従っている。 月給の引き上げは4〜12月にさかのぼって適用され、議会で引き上げが認められれば、引き上げ分がまとめて追加支給される。期末・勤勉手当(ボーナス)は0・10ヵ月増の4・60ヵ月分に改定する。平均年間給与(平均年齢41・8歳、地域手当など含む)は18万8千円(2・9%)アップ の677万7千円になる。財源は全額、財政調整基金を充て、本年度末の基金残高は82億5千万円となる見込み。 一方、慢性的な人手不足が課題となっている市バス運転手らの月給は独自に上乗せを行い平均6・42%(1万5370円)、市立校の教員らの月給は府立校との均衡を図るため、平均3・25%(1万3680円)それぞれ引き上げる。市長、副市長給与には反映されない。 初任給も上がる。大卒の上級事務が2万6510円増の24万4310円、高卒が2万3870円増の20万2180円(いずれも地域手当含む)になる。今年4月の採用者にさかのぼって適用される。国家公務員では都道府県単位で原則一律となる地域手当については、市人事委が引き続き検討するとしたことを踏まえ、国家公務員に準じず10%を維持する。 市が11月市議会に提出する議案は一般会計補正予算案を含め72議案。このほかの議案は、障害者就労支援に対する給付費を不正請求したとして、障害福祉サービスの指定取り消しを決めた「MY1stLLC合同会社」(北区)の代表社員に対し、不正請求額に当たる約4千万円の損害賠償を 求めて提訴する議案など。 ![]() |
多様な背景を持つ学生に門戸を開くはずの大学の総合型選抜(旧AO入試)なのに、お金がないと試験で求められる「経験」が得られなくなっているのでは―。そんな危機感を抱いた学習支援団体「BORDER FREE 」(東京)が、高校生にカフェを経営してもらい、無償で社会経験を積ませるプロジエクトを始めた。 面接や小論文などにより、画一的な筆記試験では測れない多様な資質を持つ学生を確保できるとされる総合型選抜。多くの大学で広がりつつある。「主体性を持って取り組んだ経験」などが問われることが多いが、定番の習い事や留学は費用がかかる。受講料がかかる総合型選抜対策の専門塾も乱立し、産業化が進む現状がある。 「教育格差が進む一方だ」と懸念した団体メンバーが、高校生にカフェの運営を任せるプロジェクトを提案。早稲田大2年の小島慶久さん(20)らが、約1ヵ月かけて協力してくれる店舗を探し、東京都新宿区の料理店が10〜12月の日曜日に店舗を無償で貸し出してくれることになった。 プロジェクトには高校生10人が応募。2チームに分かれ、売り上げを競う。各チームが飲み物や料理を考案し、交流サイト(SNS)などを使って広報活動に励んだ。価一格設定や収益予測も行い、売り上げは団体に寄付する。 11月、参加した高校2年の杉山のんさん(17)がエプロン姿でパスタを運んでいた。参加理由を聞くと「経営に興味があった。裕福な同級生はよく海外に行っていて、肌感覚で経済格差を感じるので」という。 小島さんは「お金がないと経験が得られないような現状を変えたい。今後も続けられれば」と話している。問い合わせは小島さん、メールborder.free.2021@gmail.com ![]() |
【エルサレム共同】イスラエル紙ハーレツは16日までに、イスラエル軍が少なくとも来年末までパレスチナ自治区ガザに駐留する計画を進めていると伝えた。軍指揮官らに配られた「2025年の戦闘図表」などに基づき報じた。道路の拡張や前哨基地の建設、インフラ整備が進行中で、実際に軍が長期駐留すれば、国際社会からのさらなる非難は必至だ。 ハーレツによると、イスラエル軍はガザを南北に分ける「ネツァリム回廊」一帯を広範囲に支配し、複数の基地を新設した。夏の終わりまで基地に滞在した将校は、エアコン設備やシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)もあると証言。「屋外で毎晩肉を焼き、ヘルメットもせずにサッカーをした。戦闘地域だとの感覚はなかった」とも話した。 イスラエル軍はガザ北部でジャバリヤなどをガザ市から分断。イスラエルとの境界で新たに開設した検問所付近では道路整備を進め、携帯電話用アンテナも設置している。戦闘に参加する別の将校は「現地の状況からみると、軍が26年までにガザから撤収することはないだろう」と語った。 イスラエル軍は10月上旬以降、ジャバリヤ周辺を包囲し集中的な攻撃を続ける。包囲地域には支援物資が届かず、人道危機はさらに悪化しており、国際社会が懸念を強めている。一方、イスラエルでは連立与党内の極右政党からガザの占領と入植地再建を求める声が上がっている。 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ (HRW)は14日の報告書で、イスラエル軍はガザ住民を強制移動させており、戦争犯罪に当たると指摘。緩衝地帯設置などのため住宅やインフラを意図的に破壊しているとし、合法的に民間人を避難させ被害を抑えているとの軍の主張は大半が虚偽だと批判した。 ![]() |
総務省が国家公務員に支給される地域手当 を、来年度から都道府県単位で原則一律にする方針を打ち出したことに、京都府が困惑している。地方公務員も国家公務員に準拠することが慣例となっており、府は独自に府域を四つのエリアに分けて支給率に差をつけているが、「一律にすることは、民間の給与水準との整合性を図るという本来の趣旨に反するのではないか」として来年度の導入は見送り、在り方を検討する。 地域手当は、民間の給与水準が高い地域に勤務する公務員に支給される。現行制度は市町村ごとに月給の3〜20%を上乗せ支給する仕組みで、民間給与が低い地域には支給されない。地方自治体でも原則、国家公務員に準じて導入されている。 一方、都市部と周辺部を有する京都府は、各地域の民間給与の実情をできるだけ反映させ、かつ府職員の異動先によって地域手当が乱高下しにくくするため市町村別ではなく、2006年度から府域を3区分、13年度からは4区分に分け支給率を設定してきた。現在は京都市が9・4%、宇治、亀岡、城陽、向日、長岡京、八幡、京田辺、大山崎、久御山の9市町が5・4%、木津川、井手、宇治田原、笠置、和束、精華、南山城の7市町村が4・4%、南丹市以北の9市町は3・2%としている。 一方、人事院は今年8月、「近隣市町村との給与格差が大きいと人材確保に支障が出る」との声も踏まえ、支給率を都道府県単位に見直し、4〜20%の5段階とする方針を発表。京都府内は来年度から一律8%になる。 府がこの方針に従った場合、京都市内で働く府職員の地域手当は減額され、それ以外の地域は増額される。西脇隆俊知事は今月1日の定例記者会見で「これまで民間賃金を適切に反映させてきた。一律にすることがきめ細かさの点で良いとは思わない」と疑問を呈した。府人事委員会事務局は今後、地域手当の適切なあり方を検討し、西脇知事に答申する。 他に11道県が京都府と同様、エリアごとに支給率を定めており、兵庫県は「地域特性を考えれば、一律は難しい。率をどうするかを検討したい」としている。奈良県は「スケジュール的に検討する時間がなかった」などとして来年度からの導入は見送るという。 ![]() |
京都府は14日、府外の私立高に通う生徒に対する授業料補助の対象を、滋賀、大阪、奈良の3府県にも広げると発表した。従来は相互支援している兵庫県だけだった。本年度から原則2万円を支給する。 国の高校就学支援金に府が独自で上乗せ補助する「あんしん修学支援事業」の一環。拡充の対象は、世帯所得目安910万円未満で国支援金を受け、3府県内の私立に越境通学する生徒。滋賀県に通う場合のみ世帯所得910万円未満〜590万円の生徒が対象で、約40万円の国の支援が ある世帯所得590万円未満は対象外となる。府文教課は「滋賀県は590万円未満の世帯に独自加算をしていないので、おこがましいことはできない」と説明している。 府などによると本年度は、府内から3府県内の私立へ通う生徒数は滋賀408人、大阪772人、奈良660人。府では授業料補助と並行し3府県との相互支援の協議も進めてきたが、合意には至らなかったという。滋賀県子ども若者政策・私学振興課は「滋賀から京都に通う生徒は約2400人に対し、滋賀に通うのは約400人で状況が異なる」としている。 兵庫県とは2012年度から相互支援を実施し、本年度は兵庫の私立に通う132人に対して世帯所得に応じ年2万2千〜6万円を支給している。府文教課の井関好之課長は「府県を越えて学ぶ生徒の自主的な進学の選択肢を尊重したい。各府県との相互支援の実施については、引き続き調整を行う」としている。 |
京都市立の小学校跡地の活用についてアイデアを発表する探究学習の授業が東山区の京都女子中であった。商業施設や和風カフェ、ホテルなどの練り上げた案を、学校跡地の民間活用を担当する市職員を前に披露した。 学校跡地活用の案を考えたのは2年生の一人。市が学校跡地の活用アイデアを募集していることを知り、6グループに分かれて4月から探究(総合的な学習の時間)の授業で、インターネットで情報収集するなどしてきた。 1992年度以降、統廃合の対象となった市立小中学校は88校あり、25校に再編された。これまで7校の跡地が京都国際マンガミュージアムやホテルに生まれ変わり、現在10校で民間活用が募られている。 5日にあった授業では、2022年4月に市原野小と統合し、閉校となった静原小(左京区)の跡地活用策について、一つのグループは、過疎化防止の観点から、地域の雰囲気を生かしたショツピングモールづくりを提案し、「若者から高齢者まで集客が見込める」と説明した。交通渋滞 や地域の他の店舗の経営の圧迫など想定される課題についても、公共交通の利用促進や、モールへの出店の呼びかけなどの解決策を示した。 他のグループも、ワーキングスペースや老人ホーム、子ども食堂、京野菜栽培などさまざまなアイデアを披露した。 発表を受けて、市資産イノベーション推進室の担当者は「どの班も地域の課題解決に向けた検討がしっかりできていた。コスト計算や利用者の絞り込みもされており、説得力があった」と話していた。 ![]() |
「第50回日本PTA近畿ブロック研究大会・滋賀びわこ大会」(近畿ブロックPTA協議会など主催)が9日、大津市のびわ湖大津プリンスホテルで開かれた。近畿各地のPTA役員や教職員らが集まり、加入者の減少や価値観の多様化などで揺れるPTAの組織のあり方や活動の方向性などを話し合った。(三村智哉) 六つの分科会に分かれて活動の発表や質疑応答などが行われた。PTAの組織運営をテーマにした分科会では、彦根市PTA連絡協議会の西村忠生会長が、PTA役員らが気軽に訪れて、悩みを相談できる同協議会の取り組み「彦(げん)Pカフェ」を紹介した。2〜3ヵ月に1回、土曜 日に開催し、お菓子やお茶を楽しみながら、学級委員の選出や活動の見直しなどの課題について、役員経験者らと改善策を話しあえる、とした。 西村会長は「PTAによって悩みはさまざまで温度差もある。カフェは少しでも役員たちのモヤモヤがなくなるよう開催している。全国でPTAは岐路に立っており、支援し続けたい」と語った。 また、宮津小(宮津市)PTAの中村智幸会長は、加入率低下の対策として行っている組織の見直しについて報告した。運動会やマラソン大会などのサポートは、担当の委員会を廃止して学校から全保護者に協力を呼びかけるように変更。通学班などを支援する地区委員もPTAから切り離して負担を軽減したとした。 また、「加入するメリットが感じられない」との意見が寄せられたことから、イベントに非加入者が参加する際は追加で費用負担をしてもらったり、加入者には優先的にPTAの情報を提供したりしているという。 中村会長は「できる人ができることを無理なくすることが重要。非加入者との不公平感にも対応し、全保護者が納得できる改善策を検討した い」と述べた。 参加者からは「加入・非加入で差をつけることは間違っていると考える人もいて、難しい」との意見も出ていた。 全体会では、日本PTA全国協議会の太田敬介会長があいさつで、7月に同協議会の元役員が背任の疑いで逮捕されたことを受け「全国のPTA会員や教育関係者にご心配とご迷惑をお掛けし、心からおわびします」と陳謝。その上で「これからのPTAは子どもたちの幸せとともに、保 護者や教職員ら大人の幸せも一つの視点として持ち、実践することが大切になる」と呼びかけた。 ![]() |
厚生労働省は12日、労働基準法改正に向けた専門家による研究会を開き、論点をまとめた「議論のたたき台」を提示した。終業から次の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」では、休息を原則11時間とすることを軸に、導入促進に向けた法規制強化の検討が必要だとした。 14日以上の連続勤務を禁じることや、副業の割増賃金 を算定する際に本業と副業の労働時間を合計する現行制度の見直しにも言及した。企業側の負担を減らし、副業を促すとしている。テレワークに適用する「フレックスタイム制」の導入も盛り込んだ。研究会は、たたき台を基に議論を重ねて年度内にも報告書をまとめ、その後、労使参加の労働政策審議会が具体的な議論を進める見通し。 現状、勤務間インターバルの導入は努力義務で、2023年―月時点で導入企業は約6%にとどまっている。たたき台では、休息時間を原則11時間とした上で、適用除外を労使合意などで認めることや、規制の適用に経過措置を設けることで「より多くの企業が導入しやすい形で制度を開始し、段階的に実効性を高めていく形が望ましい」との意見がまとめられた。 12日の研究会では「将来的には、労基法上の規制として検討することが一致できたら望ましい」などの指摘が出た。 休日制度では、労使協定や運用によって長期間の連続勤務も可能となっており、労災認定基準を参考に、14日以上の連続勤務を禁じることを労基法で規定するよう盛り込んだ。 副業の割増賃金では、本業先と副業先の労働時間をそれぞれ把握し、合計して算定しなければならず、制度も複雑で企業の負担が重いとされる。 終業から次の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」は、以前から必要性が訴えられていたものの、導入企業の割合は6%にとどまっている。厚生労働省の専門家による研究会では、規制を強めて導入を促すとする意見の一方で「実効性を高めるイメージができない」との指摘もあった。 制度は1日ごとに休息時間を確保し、過重労働を防ぐのが目的。例えば、11時間のインターバルを設けた企業で、通常午前9時始業の労働者が残業で午後11時まで働いた場合、次の日の始業は午前10時以降となる。2019年の働き方改革関連法の中で導入が企業の努力義務となった。具体的な休息時間数などは明記されていない。 国は労働者30人以上の企業の導入割合を28年までに15%以上とする数値目標を掲げるが、厚労省の調査では23年時点で、導入企業の割合は6%。導入しない理由の約2割は「制度を知らなかった」で、同省は導入促進のための対応を研究会に諮っていた。 研究会の議論では「労働基準法による強行的な義務とする」「抽象的な努力義務規定を具体化する」などの意見が出され、12日の会議でも「11時間というのは科学的根拠がある数字であり、しっかりと打ち出していくことが重要ではないか」といった声が上がった。 一方で「社会が早い段階で受け入れてくれるのか不安もあるので、ステップを刻んだ方がいい」「具体的にどのような制度設計にするのかイメージができず、実効性が上がるかどうか疑問だ」といった、早期の規制導入に慎重な意見もあった。 ![]() |
共働き家庭などの小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の需要が高まる中、京都府内の自治体が待機児童を発生させないよう面積基準の柔軟運用や利用条件の変更など、あの手この手で対策を打っている。ただ、児童が過ごす十分なスペースを確保できなかったり、利用条件を満たさなかったりと、保護者や利用児童に及ぼす「副作用」もあり、現場からは戸惑いの声が上がっている。 向日市は2015年度から5、6年生の受け入れを始めたが、今年5月から新規受け入れを停止し、来年度以降も当面受け入れない方針だ。マンションの増加で子育て家庭が急増し、利用児童数(5月1日現在)は895人と前年度より84人増え、1〜4年生の入会率は38%に上っている。 市によると、5、6年生の利用割合は全体の1割程度と比較的低く「苦渋の決断だが、待機児童を発生させないためには低学年を優先せざるを得ない」(市生涯学習課)という。 市が本年度から就労証明書の様式を変更したことも、一部で波紋を呼んでいる。市は休憩時間を除く実労働時間を「月80時間かつ15日以上」とするが、昨年度までは様式に月の合計時間を書く欄がなく、事実上、月80時間に満たなくても、利用が認められていたケースもあったという。 市は様式変更を「待機児童の問題とは無関係」とするが、この変更で利用を諦める人も出ている。同市の女性(49)はパート勤務だった昨年度、小学1年だった長女を市内の学童保育に預けていたが、本年度は断念。80時間を超えて働けば、所得税が生じ税制上、夫の扶養から外れ手取り収入が減る「103万円の年収の壁」を超える可能性があるためだ。女性は「利用希望者が増えてきたので、市が制限をかけたいのだと思った」と不満を抱く。 13年連続で待機児童ゼロ(4月1日現在)を達成した京都市は、面積基準の柔軟な運用で定員を事実上緩和している。国は面積基準の目安を利用児童1人当たり1・65平方メートル以上としているが、義務ではないため、市は年度当初の登録児童数に過去3年の平均出席率をかけた数字を定員の目安にしている。利用が平均より多い日は1人当たり1・65平方メートルを確保できない恐れもあるが、市は「従来からこの基準で国からも指摘は受けていない」とする。 市内最大規模の登録数約330人を抱える七条第三児童館(下京区)は4施設に分けて児童の受け入れを行っているが、登録数の増加でうち1施設は昨年4月に増設した。出席率約70%を基準に定員を設定しているが、例年、夏休みの7、8月は100%近い日もあり、特に雨天で外遊びができない日などは室内が密になることもあるという。 おやつや勉強など活動内容によって部屋を使い分けたり、職員同士がインターカムによる意思疎通で児童を見守ったりと、「不満がたまらないよう工夫しながら運営している。子どもたちも固まって遊ぶので、そこまで窮屈さはない」(岡田淳子館長)という。 市は「待機児童を出さないことが重要で、子どもを預けられないと親が働けない事態も生じうる。詰め込みではなく子どもの安全に支障がないよう必要な面積は確保している」としている。ただ、子どもが過ごすスペースに余裕がない施設もあり、市議会でも「基準内ではあるが本当に狭い」(自民党市議)、「すし詰め状態」(共産党市議)など、与野党問わず懸念の声が上がっている。 昨年5月1日現在の府内の待機児童数は4市町で66人。京田辺市が31人と最も多く、宇治市21人、与謝野町10人、宮津市4人となっている。 ![]() |
2025年4月に開学を予定する私立のオンライン大学「ZEN大」は12日、教育プログラムや奨学金制度などの概要を発表した。国立大などに比べ授業料を割安に設定し、通学することなく全講義をインターネットで受けられる。学長には若山正人九州大名誉教授が就任予定。 日本財団と共に運営を担う動画配信サービス「ドワンゴ」の川上量生顧問は、東京都内で記者会見し「全ての人に大学進学の機会提供する」と述べた。 定員は1学年3500人で、通信制大学としては放送大の1万5千人に次ぐ規模となる。入試は学力試験を行わず、志望理由と小論文で選考する。授業料は年38万円で、国立大の年53万5800円(標準額)より安価に設定した。 学部は「知能情報社会学部」の1学部のみで、学生は「情報」「文化・思想」など6分野から講義を履修する。世帯年収700万円未満の最大500人を対象に授業料を免除するなど、独自の支援制度を設け、希望者には留学費用も援助する。 ドワンゴは通信制高校「N高」の運営にも携っている。川上氏は、増えている通信制高校の生徒が進学先に選べるような通信制大学は少ないとして「大きな問題意識を持っている」と強調。リスキリング(学び直し)を求める社会人などのニーズに対応しつつも、募集の中心は高校3年生になるとの考えを示した。 私立大学通信教育協会などによると、通信教育を行う大学は現在46。学生数は、ピークの05年度に20万人を突破して以降は減少傾向だったが、新型コロナウイルス禍でオンライン学習が浸透したことなどから、23年度は18万人超に回復した。 文部科学省は12日、少子化の影響を踏まえた2040〜50年の大学入学者数の推計値を公表した。40年は21年に比べ16万7千人少ない約46万人で、50年は42万人台になると見込んだ。現在の入学定員規模が維持された場合、40年の定員充足率は7割程度、50年には6割台になるとした。昨年7月公表の推計値を、少子化の進展を踏まえ更新した結果さらに悪化した。 大学の将来像を議論する12日の中教審特別部会で示された。会議では、設置認可の厳格化や縮小・撤退の支援など大学の規模適正化に向けた取り組みを盛り込んだ答申素案も提示され、今後詳細を詰める。 文科省は、近年は18歳人口の減少傾向が続く中でも大学進学率、進学者数ともに増加傾向だったが、26年以降は大学進学率が上昇した場合でも進学者数は減少するとしている。 入学者数の推計値は、将来の18歳人口に大学進学率をかけ、外国人留学者らを加えて算出。40〜50年は、おおむね43万〜46万人(昨年7月推計値は49万〜51万人)となり、定員充足率は67〜72%(同79〜82%)に落ち込む。 都道府県別の定員充足率は40年のみが公表された。最も高いのは沖縄県の88・8%で、最も低いのは青森県の57・7%。大学が多い東京都は79・1%、大阪府は75・3%で、京都府は72・1%、滋賀県は74・3%だった。 ![]() |
財務省は11日、公立学校教員の給与として残業代の代わりに上乗せする「教職調整額」を、現在の月給4%相当から段階的に10%に増やす案を公表した。授業以外の業務削減を条件とし、賃上げと働き方改革を同時に進める。順調ならその後、所定外の勤務時間に応じて残業代を支払う制度への転換を検討する。ただ文部科学省はあらかじめ決まった額を支給する現行制度が合理的としており、溝は大きい。 教職調整額は教員給与特別措置法(給特法)に基づく制度だ。財務省案は10%に達する時期を2030年度と見込むのに対し、文科省は教員のなり手不足の深刻化を理由に、早ければ26年に一気に13%に増やすよう求めている。両省は年末の25年度予算編成に向けて調整する。まとまらなければ教職調整額の増額自体を見送る可能性もある。 財務省案は、業務削減の対象として部活動や保護者への対応を明示したほか、勤怠管理の徹底も求めた。働き方改革の進捗を年度ごとに点検し、調整額を引き上げるかどうか全国一律で決める仕組みで、一定の条件を満たさなければ見送るとしている。文科省が課題とする教員不足は「教員数の増ではなく、負担感の大きい業務の縮減を優先すべきだ」とした。 残業代支給制度への転換を巡っては、例えば5年間で集中的に勤務実態を改善した上で「労働基準法の原則通り、やむを得ない残業をした場合にそれに応じた手当を支給するのが教員の魅力向上につながるのではないか」と打ち出した。 これに対し、文科省では「教員の仕事はどこまでが職務で、どこまでが自発的活動なのか切り分けが難しい」(阿部俊子文科相)といった懸念が根強い。調整額制度の廃止といった抜本的な見直しに反対にしている。 ![]() |
【バクー共同】世界気象機関(WMO)は11日、2024年1〜9月の世界平均気温を巡り、産業革命前と同程度の1850〜1900年の推定平均気温と比べて上昇幅が1・54度を超え、今年の平均気温は観測史上最も高くなる見込みだとの分析を発表した。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が目指す「1・5度」の目標達成が危機的状況にあることが浮き彫りになった。 WMOはアゼルバイジャン首都バクーでの国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)開幕に合わせて報告書を公開。15〜24年の10年間は観測史上最も高い気温を記録する見通しで、南米ペルー沖の海面水温が上がるエルニーニョ現象が要因としている。 WMOのサウロ事務局長は11日、バクーで記者会見し「今年、世界各地で起きた記録的な大雨や洪水、猛暑や干ばつは新たな現実だ」と指摘。温室効果ガスの排出削減策に加え、気候情報の提供サービスや早期警報システムなどを通じた気候変動に対する監視の強化が急務だと訴え た。 ![]() |
城陽市は上下水道事業を2026年度から10年間、包括的に民間委託する。全国でも数少ない官民連携制度「ウォーターPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)レベル3・5」を京都府内で初めて導入する。企業など事業者の公募を8日から始めた。 市は、上下水道で現在直営している窓口や開閉栓、料金・使用料徴収、未納者への停水などの業務をはじめ、すでに企業に大部分を委託している浄水場・下水施設の維持、委託済みの浄水場の運転管理までを一括委託する。市が見積もる経費の最大額は10年間で約42億3千万円。 民営化と異なり、委託後も水道の運営権は市に残る。予算や料金の決定、水道管や水質の管理、長期計画の策定は引き続き市が担う。 水道の運営形態は直営の「レベル0」から、民間が運営権を持つ「レベル4」まである。国は官民の技術者不足に対応するため、「3・5」と「4」をウォーターPPPと呼び、27年度から下水道耐震化で補助金を出す条件とするなど導入を推進している。 市は浄水場管理を市上下水道部職員OBでつくる企業「アクリエイト京都」に委託しているが、社員の高齢化で同社が25年度末に解散する。水道施設の耐震化を進めるためや、技術者の採用難もあり、5月にレベル3・5導入の方針を示していた。 市上下水道部によると、公共水道事業は上下とも全国で各約1300の自治体・団体が担っている。レベル3・5と4は茨城県守谷市など全国で計8自治体が導入しており、同部は「民間の受け皿不足が将来考えられ、早期に取り組む必要がある」としている。 城陽市は公募型プロポーザル方式で事業者を募っている。ホームページで応募書類を配布しており、来年4月に提案書類を受け付ける。 市のレベル3・5導入をめぐつては、市民団体が説明会開催を求めている。 ![]() |
京都市は7日、2023年の合計特殊出生率が前年比0・07ポイント減の1・08となったと発表した。記録が残る1970年以降過去最低で、減少は7年連続。出生数も過去最少を更新し、改めて少子化に歯止めがかからない現状が明らかとなった。松井孝治市長は取材に対し、「全国的な傾向ではあるが、さらに低下したことは厳しく受け止めないといけない」と述べた。 合計特殊出生率は女性1人が生涯に産む子どもの数を表す。市では、2005年に1・11と底を打った後、16年の1・30まで緩やかな上昇傾向が続いていたが、17年の1・27以降は減少が続いている。 行政区別では、南区が1・26と最も高く、西京区1・20、伏見区1・15、山科区1・15、右京区1・14と続いた。最も低かったのは上京区の0.12で、下京区0・78、東山区0・80、中京区0・94と、市内中心部で1を下回った。出生数は前年比680人減の7692人で、統計が残る1946年以降で最少となった。 厚生労働省が4月に発表した2018〜22年の市区町村別の合計特殊出生率では、東山区が全国最下位となり、上京区がワースト3位、下京区が同4位、中京区が同12位と市中心部が下位に並んだ。 理由について、市の担当者は人口の約1割を大学生が占めることを挙げる。合計特殊出生率は15〜49歳の年齢別の出生率を合計した数値のため、単身の若い世代が多いと低くなる傾向があるという。また、子育て世代の人口流出も一因といい、市は「20、30代から選ばれる子育て施策の推進が重要」とし、対策を強化する方針。 京都市の2023年の合計特殊出生率が1・08と18年ぶりに過去最低を更新した。市は「子育て環境日本一」を掲げ、子育て支援の充実などを図ってきたが、底割れを回避できなかった。今後、第2子以降の保育料無償化なども進める方針だが「特効薬」になる見込みは薄く、幅広い対策が急務になりそうだ。 市は、産み育てやすい環境の整備が少子化対策にもつながるとして、保育士の処遇改善や手厚い配置を目的に毎年50億円以上を民間保育園などへ投じ、4月時点の待機児童(国基準)は14年から毎年ゼロを維持してきた。近年は住宅価格の高騰などで若年層の市外流出が目立つことから、子育て世帯向けに中古住宅の購入補助やリフォームした市営住宅の貸し出しなどの政策も打ち始めている。 それでも出生率は16年(1・30)以降、右肩下がりで、ついに過去最低だった05年(1・11)も下回った。市が15年に策定した地方創生の総合戦略では、市民への意識調査を基に出生率は1・80まで伸びる余地があると算出。その上で最低限、14年の1・26の維持を念頭に将来の人口推計などを描いてきた。まちづくりの前提が崩れており、市幹部は「予想より落ち込んだ。3年以上にわたる新型コロナウイルス禍も大きかった」とこぼす。 子どもが増えない要因を取り除ぐため、市は子育て措作の「経済負担」の軽減を急いでいる。今年2月に就任した松井孝治市長は公約で第2子以降の保育料無償化や子ども通院医療費助成の拡充を掲げ、実現へ府などと調整している。 ただ、出生率低下の要因は複合的だ。市内の婚姻件数は23年が5477件で、05年の8223件から3割余り減っている。出会いの場の減少なども指摘され、市内部からは「まず未婚化を何とかしないと、子育て支援だけでは好転しない」との声も漏れる。経済的に不安定だと結婚に踏み切れないケースもあるとみられる中、市内の非正規雇用率は39・8%(22年)で、政令指定都市の中で比較的高い割合で推移する現状もある。 対策が追いつかない現状に別の市幹部は「地方自治体の努力だけでは限界がある。財政措置を含め国レベルで本当に異次元の対策が必要だ」と行き詰まり感をにじませる。 18年ぶりに過去最低を記録した京都市の合計特殊出生率を巡る現状と対策について、少子化対策に詳しい立命館大の筒井淳也教授(家族社会学)に聞いた。 ◇ 本来、京都市は大学進学で若者を多く受け入れ、製造業やサービス業の雇用も多いため、出生率の維持には有利な自治体だ。それができない理由の一つとして、地価が高く、結婚、出産時に他市に流出してしまっていることが挙げられる。 では人口流出を食い止めるための手だてを取ればいいのかと言えば、私はそう思わない。市内にとどまり、手狭な住居で子どもが1人になるよりは、子育てしやすい他都市に移住し、子どもが2人になる方が国全体の出生率は上がるためだ。子どもは1人でもいいから市内にとどまって産んでほしいという政策を市は取るべきではない。 とはいえ、市内で子育てをしたいという人もいる。保育料の無償化や医療費助成の拡充など子育て支援策を充実させることは、そういった人の負担を減らすためには重要だ。ただ、意外と目配せできていないのが、晩産化に伴って増えている不妊治療と仕事の両立支援だ。従業員が治療のため有給休暇を取得する際の事業者向けガイドラインを作るなどの政策が考えられる。未婚化対策として婚活支援も力を入れるべきだ。 根本的に結婚、出産を後押しするためには若者の雇用の安定化が必要だが、自治体レベルで行うのは難しい。ただ、働き方改革の支援はできるはずだ。市内は中小企業が多く、難解な育休制度の従業員向け説明会をサポートするなど、財源をかけずにできることは多い。 京都市に他地域から通勤してくる人口は、他地域に通勤する人口の2倍いる。他都市から通勤している従業員も多いだろう。市内の中小企業が働きやすくなれば、他の地域で子育てしている人にも恩恵がある。中小企業が多い市には、周辺地域も含めて子どもを増やす視点の政策も求められる。(聞き手・田代真也) ![]() |
日常的に家族などの介護や看護を担う「ケアラー」の支援を推進する条例が6日、京都市議会9月議会で全会一致で可決、成立した。11日に施行する。市は今後、支援していくための具体的な計画を策定する。市議会事務局などによると、同様の条例制定は、京都、滋賀の自治体で初めて。 条例ではケアを「介護、看護、日常生活の世話など必要な援助」と定義。ケアラーは家族といった身近な人に対して、無償でケアを提供する人とした。 ケアについては「家族が担うべきという認識は根強く残っている」と指摘し、ケアラーの支援を社会全体で、切れ目なく実現すべきとした。 基本理念では、ケアラーに対する支援について個々の意向を尊重すると明記。市の責務では、支援を必要とするケアラーを「早期かつ適切に実態を把握する」と定めた。 市の基本的施策では、学校生活や社会生活が困難になったケアラーに対する修学・就業支援のほか、ケアラーの交流の場を提供することや、ケアラー支援を担う人材育成などを盛り込んだ。 学校に対しては、大人に代わって家族の世話をしている「ヤングケアラー」がケアラーに関連するいじめなどで学校生活に支障がでないよう配慮する努力義務を課した。 西村義直議長は条例成立後、「ケアラーが自分らしく希望を持って暮らすことができるよう議会として取り組んでいきたい」と述べた。市議会では5月、各会派の代表者でつくるプロジェクトチームを設置。パブリックコメント(意見公募)などを経て、9月市議会に条例案を全市議共同で提案していた。 全てのケアラーが安心し、希望を持って自分らしく生きることができる社会に−。6日に成立した「京都市ケアラー支援条例」に込められたのは、日常的に家族の介護や看護を担う人たちの願いだった。市民運動をきっかけに生まれた新たな条例に、関係者らは「ケアラーがSOSを発信する根拠となるような条例となった。ここからがスタート」と期待を寄せた。 条例制定を働きかけたのは「認知症の人と家族の会」や「京都障害児者の生活と権利を守る連絡会」など京都を拠点とする当事者団体の代表らでつくる「京都ケアラーネット」。2022年4月の発足以来、有識者を招いた公開学習会などを定期的に開き、市民や議員を巻き込みながら、家族に負担が偏りがちな介護や看護の実情と課題を発信。ケアする人の支援の必要性を訴えてきた。 条例化に向けて市議会が設置したプロジェクトチーム(PT)にも「単なる理念条例にならないように」と、前文や条文の内容について要望 を伝えてきた。議会傍聴席で条例案の採決を見守った共同代表の1人で「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長の津止正敏・立命館大名誉教授は「ケアの意義とケアラー支援の大切さが強調された。施策推進に『財政上の措置を講じるものとする』と踏み込むなど、未来志向の条例ができた」と評価する。 PT会議ではケアラーたちも意見を述べてきた。大学教授の藤澤和謙さん(43)=上京区=もその一人。藤澤さんは「ケアする人だけでなく、ケアされる人のことも考えた条例であるべきだ」と話す。 重症心身障害児の長男(8)は座位がとれず、経管栄養や酸素吸人など介助が欠かせない。人院時は親の付き添いが求められ、仕事や長女(2)の世話に手が回らず、藤澤さんは自分の親に頼らざるを得ないという。他にも災害時、長男を連れての避難が困難など課題は多く「ケアの 必要な人がいるという現実を改めて社会が受け入れ、適切な支援につながれば」と話す。 条例では、施策を巡りケアラーや関係者と協議の場を設けると明記された。ただ、精神障害者の親は社会の偏見から声を上げにくい面がある。 統合失調症の子どもと二十数年間、生活をともにする市内の70代女性は「条例が絵に描いた餅にならないよう、具体的な支援につなげてほしい」と強調する。親亡き後、子どもが一人で生活できるよう、制度を利用する際の申請方法の簡略化や、相談体制の拡充など、求めたいことはたくさんあるといい、「私たちの声に耳を傾け、支援策に反映させてほしい」と願った。 ![]() |
総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)といった、面接や小論文などで合否を決める年内入試を導入する大学が増えている。 2023年春入学者の約半数は年内入試で合格。背景には少子化が進む中、意欲的で多様な学生を早期に確保したい大学側の思惑がある。関係者は「この流れは今後も続く」とし、高校の授業の在り方も変わっていくと指摘する。 「言いたいことを本音で書けましたか」。8月下旬、大手予備校河合塾の講師渡辺まゆみさんが、国立大の総合型受験を目指す高3女子生徒(18)に、オンライン講座で志望理由書の書き方を指導していた。 河合塾では25年入学者向けの年内入試に備え、200人が1月から講座を受講してきた。女子生徒は教職志望で、総合型受験の動機を「他の受験生より教員という職業について考えてきた自負がある。この思いが合格につながるチャンスを生かしたかった」と話す。 講座では、大学での学びや将来の目標、高校生活の振り返りに関する自己分析をサポートしてきた。渡辺さんは「面接で思いを伝えられるようにするためにも(志望書は)生徒自身の言葉で書くことが大切だ」と強調する。 年内入試は9月ごろから出願が始まり、11月ごろから年明けに合格発表があるのが一般的。文部科学省や河合塾によると、年内入試による入学者の割合は、03年春は39%だったが、13年は44%、23年は51%と増加傾向にある。23年は国公立大21%に対し、私立大は59%を占めた。 各大学は、画一的な筆記試験では測れない多様な才能を持った学生を確保しようと、年内入試の比重を年々高めている。 国立大では、東北大が25年後までに全ての入試を総合型に切り替える計画を公表。名古屋犬は25年入学者向けの入試から初めて総合型を実施予定で、担当者は「一般入試での入学者に刺激を与えてほしい」と期待を寄せる。 私立大では、早稲田大が総合型の拡大方針を示している。東洋大は25年入学者の学校推薦型から、基礎学力テストを課す新たな形式を設けた。担当者は「年内入試の課題である基礎的な学力を担保するため」と話す。 理工系学部の女子学生を増やすため「女子枠」を年内入試に組み込む流れも鮮明だ。いずれも26年入学者から、京大は総合型と学校推薦型に、大阪大は学校推薦型に新設する。 河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は、年内入試について「学ぶ意欲に満ちた学生を早く確保できるため、導入する大学は「今後も増えるだろう」と予測。課題を自ら見つけて深め、それらを表現する力が問われているとして「生徒が主体的に活動する探究型の学習を中心に行う高校が増えていくのではないか」と話した。 ![]() |
内閣府は、全国の公立小中学校などのPTAでつくる公益社団法人「日本PTA全国協議会」(東京都)の運営体制に疑義があるとして行政指導した。公益法人担当を兼務する三原じゅん子こども政策担当相が5日、記者会見で明らかにした。疑義の具体的な内容について「詳細は差し控える」とした。 全国協議会を巡っては、正常なガバナンス(組織統治)が機能していないなどとして、下部組織の退会が相次いでいる。 内閣府公益認定等委員会が9月に協議会を立ち入り検査。10月11日付で、運営に関する事実関係の報告を求める行政指導をした。 ![]() |
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部) の役員らが恐喝未遂などで京都府警や滋賀県警などに逮捕、起訴された一連の事件について、労働組合活動と司法権力の関係から考えるシンポジウムが12日午後6時半 から、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で開かれる。 関生支部を巡っては、建設工事現場の安全性の不備を組合側が指摘したことやビラ配りで訴えたこと、就業証明の提出を使用者側に要請したことなどが威力業務妨害や恐喝未遂などの罪に問われた。 京都、大阪両府警、滋賀、和歌山両県警に延べ89人の組合員が逮捕され、裁判が開かれているが、無罪判決が既に5件出ている。関生支部などは一連の逮捕、起訴などは憲法違反として国や京都府などを相手に国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こしている。 シンポジウムは、ストライキなどの労働組合運動を保障した憲法28条や労組法などに基づく組合の行動がなぜ、警察、検察から犯罪視されたのかと、その問題性を考える。 弁護士と労働法の研究者が一連の事件の概要と法的な問題点を報告する。また、ジャーナリストの金平茂紀さん(元TBS)と竹信三恵子さん(元朝日新聞、和光大名誉教授)が「もの言う」労働組合に対する敵視が強まる現状の政治的、社会的背景について問題提起する。 シンボはルポライターの鎌田慧さんや評論家の佐高信さんらがつくる支援する会 が主催する。資料代500円。 ![]() |
小学6年と中学3年を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果分析で、理科や算数・数学の正答率に男女差はほぼないのに、理数系科目が「好き」と答えた児童生徒の割合は、小中とも女子が男子より少ないことが分かった。 分析内容を文部科学省の専門家会議で報告した宮城教育大大学院の田端健人教授(教育学)は「男女差が顕著に出た」と指摘。男女ともに理数系科目への興味や関心を高めてもらうため「日常生活や社会とより結びついた学習内容にするなどの工夫が重要だ」としている。 2012〜22年度のうち、理科のテストを実施した計4回分を対象に、理科と算数・数学の男女別平均正答率を調べた。その結果、いずれの教科も女子の平均正答率が男子より高いものの、実質的な差といえるほどの開きはなかった。 教科に対する興味や関心を尋ねる22年度の質問紙調査も分析した。「理科の勉強は好きですか」との質問に「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と答えた割合は、小6では女子76・6%、男子82・9%で、女子が6ポイント以上低かった。中3では女子58・8%、男子73・9%と、男女差がさらに開いた。算数・数学を「好き」と答えた割合も、女子の方が男子より低かった。 また「理科や科学技術関係の職業に就きたいか」との問いに「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」との回答は、小6の女子で21・2%、男子が32・3%。中3では女子16・2%、男子28・8%だった。 田端教授は「男子も『理数離れ』と言っていい状況。改善できなければ、技術開発の国際競争力低下を招く恐れもある」と話している。 ![]() |
公立学校教員の処遇改善を巡り、残業時間に応じた手当を支払う仕組みを導入する案が政府内で浮上、関係省庁が検討を始めたことが3日分かった。採用すれば、残業代の代わりに一定額を給与に上乗せ支給する現行の「教職調整額」制度は廃止する。教員の長時間労働の解消が課題となる中、勤務時間を反映した賃金体系へ変え、管理職に過重労働を抑える動機が働くようにする狙い。 実現すれば、教員処遇の抜本的な制度転換となる。早期の関連法案提出を求める声がある一方、実効性を確保するには責任者による教員の勤務実態の把握など課題も多い。政府内では異論もあり、調整は難航が予想される。 現在の教員給与特別措置法(給特法)は、公立校教員に残業代を支払わず、代わりに教職調整額を支給すると定める。文部科学省は待遇を見直して教員不足の改善につなけようと、教職調整額を現在の月給4%相当から3倍超の13%に増額する案をまとめ、2025年度当初予算の概算要求で関連費用を計上した。 総務省などは教職調整額を13%に増額した場合、年間の財政負担が国と地方の合計で約5580億円増えると見込む。残業代を通じた管理より、現場の労働時間を減らすことができれば「結果として財政負担が減る」(政府関係者)との思惑もある。 現行制度は時間外勤務を災害時業務などに限定し、事前に定めた金額以上の支払いを認めておらず「定額働かせ放題」との批判が出ていた。政府関係者によると、残業代を支払う方式への切り替えに加え、学校現場の責任者に業務管理を徹底させる仕組みを検討する案が出ている。残業代の支払い状況を分析して業務の効率化につなげる。 教員の処遇改善に関しては、長時間勤務の解消に向け残業代を支払う制度の議論を望む声が教育関係者から出ていた。衆院選で立憲民主党や国民民主党などは、抜本的な制度の見直しを訴えていた。新たな案が浮上したのは与党過半数割れの影響もあったとみられる。 一方、教員の業務は児童や生徒に合わせた授業の準備や自己研さんなど特殊性があり、厳格な時間管理はなじまないとの考えも根強い。25年度予算は現行制度に基づく教職調整額の増額にとどまる可能性もある。 公立学校教員の処遇改善を巡り、残業時間に応じた手当を支払う仕組みを導入する案が政府内で浮上した。学校教員の業務負担が膨らむ中、教員の「働き方改革」は長年の課題になってきた。教員の仕事の特殊性もあり、長時間労働の解消など抜本的な解決につながるかどうかは見通せない。文部科学省は教員給与を大幅増額する別の案を提案。財務省は財政負担増を懸念しており、省庁間の駆け引きも激しくなりそうだ。 「給料増よりも、仕事量を減らしてほしい。量をこなせない先生が辞めていく」。関東地方の小学校で働く30代男性教諭は現場の深刻な現状を打ち明ける。学校教員の業務は、授業準備や部活動、生徒指導などで残業時間は多いままだ。文科省の2022年度の推計によると、残業が1ヵ月の上限である45時間を超えた教諭は小学校で64・5%、中学校で77・0%だった。 「無制限」のまま 文科省は教員の魅力を向上させて、なり手不足を改善させようと、25年度概算要求で、公立校教員に対し、残業代の代わりとして支給する月額給与4%相当の「教職調整額」を13%に増やすことを求めた。しかし学校現場では「残業代を支給する仕組みでなければ、管理職が『無制限に働かせても問題ない』と考える現状のままだ」(公立小の教諭)との意見が少なくない。 新たな残業代を支給する案では、これまでの仕組みで切り離されていた給与と業務削減を、より一体的に考えられる可能性がある。残業代を通して仕事を「見える化」して、業務効率化に連動させる狙いだ。名古屋大大学院の内田良教授(教官社会学)は「残業代方式に切り替えれば、民間企業などのように業務見直しや費用対効果を考える一歩になる」と指摘。外部への業銘委託やIT活用、設備更新も必要だと話す。 難しい切り分け 一方、教職調整額の制度維持の根拠となったのは、教員の職務の特殊性だ。授業準備や教材研究であっても職務なのか自発的活動なのか、精緻な切り分けが困難とされる。 中教審の答申は、教員自身の自発性、創造性に委ねるべき部分が大きいとしている。 さらに不登校や特別な配慮が必要な児童生徒の増加など、学校を取り巻く環境は変化している。文科省幹部は「仮に残業代を支払う形に転換しても、業務の負担軽減とは連動しないのではないか」とし、長時間労働が続く可能性を懸念する。残業時間の削減は、働き方改革や、予算拡大を伴う教員増員で実現すべきだとする。 地方負担額増も 政府内の調整はこれから年末の予算編成に向けて本格化する。文科省は、教員の職務の特殊性から、労働基準法に基づく残業時間管理はなじまないと考えている。教員が抱える業務はその都度異なり、管理職が教員一人一人の状況を管理するのは難しいとの立場だ。 政府の試算では、文科省の主張する通りに公立学校などの教職調整額を月給4%相当から13%に引き上げると、新たな年間の負担額は国が1080億円程度、地方は4500億円程度増えることになる。文科省が政府全体での財源確保を訴える一方、財務省は「文科省が別事業の予算を減ら すなどして財源を捻出すべきだ」とくぎを刺す。年末に向け、財源を加味した議論には不透明感が漂っている。 ![]() |
京都府と滋賀県の中学や高校で、定期テストの採点に人工知能(AI)を活用した補助ソフト を導入し、教員の負担を軽減する取り組みが広かっている。定期テストの採点はミスが許されず、神経をすり減らす業務だが、ソフト活用によって、作業時間を半分から3分の1に減らす効果も表れているという。(生田和史) 現在の採点補助ソフトの主な機能は、採点作業の支援と効率化だ。文章で記された解答の正誤の判断は、基本的に教員に委ねられている。選択式の問題についてはAI自動認識による採点機能もあるが、機能面でまだまだ課題はあるという。 利用は3、4割 実際にソフトを活用する学校を訪れた。京都市左京区の洛北高は、府教育委員会の試行導入に先立って2021年度から、年間5回の定期テストで利用している。 ソフト使用の流れはこうだ。まず生徒名簿を事前登録し、ファイルをつくる。テストの配点の設定を行う。配点の情報を入力するのに30分から1時間弱かかるという。模範解答と生徒の解答用紙をスキャナーにかけ、そのデータをソフトに読み込ませる。従来は教員が生徒ごとに採点していたが、採点補助ソフトを使用した場合は、問題ごとの採点となる。 例えば、「問1」なら生徒全員の解答欄が画面上に一覧表示される。これが大きな特徴の一つで、解答が視認しやい。教員が「正解」、「不正解」、「部分正解」とチェック欄をクリックすることで作業がはかどる。採点終了後は自動的に合計得点が集計される。 国語科の戸田智和教諭(47)は「テストの採点は1クラスでこれまで3〜4時間かかっていたのが、2〜3時間に減った。4クラス担当している ので、12、13時間かかっていたのが10時間を切るまでになった。劇的に改善された訳ではないが、相当助かっている」とソフトの価値を語る。ただ、採点の効率化で失われた部分もあるようで、「これまでは一人一人採点している時は、その生徒の顔を思い浮かべて、丸付けをしていた。『ちゃんと理解しているな』、『なぜここを間違うんだ』と頭の中で生徒と対話ができる良さがあった。ソフトの使用で顔が見えにくくなった」と打ち明ける。 ソフトの使用は義務ではないこともあり、洛北高では全教員の「3、4割」にとどまるという。数学科の藤岡翼教諭(34)も導入当初は使ったが、すぐに従来の丸付けに戻した。配点などの事前設定に時間がかかる割に見返りが少ないという。理由を「数学の問題は、解答欄が大きく、解答欄を一覧で表示できる利点が生かせない」と説明する。 府教委は、教員の働き方改革の推進に向けて、府立高全校(学舎・分校含む)で今春、採点補助ソフトを試行的に導入した。教科主任137人を対象としたアンケートを実施したところ、作業時間については、「かなり減少」23%、「半分程度減少」24%、「少し減少」32%を合わせて、8割弱が肯定的な回答をした。調査結果に確信を持った府教委は来年度の本格導入する意向を示す。 京都市教委は22年度、市立の全中学と義務教育学校(小中一貫校)、高校で府教委とは別の採点補助ソフトを導入した。 先進校の京都市下京区の下京中では、採点業務をする教員約40人のほとんどが使用している。苦手な教員もいるが、得意な教員に教えてもらった り、市教委が公開する解説動画を閲覧したり、使い方を覚えている。オンライン授業の支援や機器の操作を担うICT支援員も2週間に1度来校し、手助けしているという。 一部で自動採点 同中では、採点時間を半分近く減らした教員も少なくない。理科の和田正裕教諭(41)は「テスト採点は生徒の学びの結果に向き合う作業。気が 張るし、集中力も要する。作業時間やプレッシャーの軽減で、採点ミスも少なくなった」と話す。 定期的に機能のアップデートがあるため、採点の自動認識機能も一定活用できているという。アルファベットの「A」「B」「C」、ひらがな、かたかな、「○」「×」などの一文字の解答は認識できるという。和田さんは「昨年度の機能更新では数式の識別も可能となり、本年度は英語の単語も対象となった」と機能改善を歓迎する。 指導顧みる材料 ソフト導入は、作業時間の短縮や採点精度の向上のほか、別の利点も大きい。それがテスト結果の分析だ。AIの活用により、正答率の低い問題の傾向などが詳細に示される。 テスト結果は、生徒個人の学力の到達点をみる指標になるだけでなく、教員が自己の指導を振り返る材料にもなる。英語科の立入靖規教諭(31)は「採点終了後に、学年やクラス、個人ごとの正答率や得点分布などさまざまなデータが一目瞭然となる。生徒の特徴が分かり、きめ細かな指導がしやすくなった」と手応えを語る。 滋賀県教委も、全日・定時制高校、県立中に京都府・市教委とは別の採点補助ソフトを導入している。 ![]() |
【ブリュッセル共同】国際エネルギー機関(IEA )は、2024年版の「世界エネルギー展望」を公表した。太陽光など再生可能エネルギーの普及により、2030年代半ばに原子力を含む低炭素のクリーンエネルギーが「最大のエネルギー供給源になる」との予測を示した。一方、世界の石油需要は30年までにピークを迎え、減少に転じると見通した。 日米欧を中心とした主な石油消費国でつくるIEAは近年、気候変動対策の旗振り役として存在感を高めている。主要産油国でつくる石油輸出国機構(OPFC)は9月、50年の石油需要が23年比で18%増えるかの予測を公表しており、両者で異なるシナリオを発信している。 IEAは、各国が脱炭素化に向けた表明済みの政策を実行するシナリオでは、クリーンエネルギーが30年代半ばに石油を上回って最大のエネルーギ供給源となり、50年時点で全体の約4割に達すると予想した。 クリーンエネルギーへの投資額は24年に約2兆ドル(約300兆円)となり、化石燃料の2倍となる見通しだ。だが、50年に脱炭素化を達成するより厳しいシナリオでは、30年までに年間4・5兆ドルの投資が必要であると訴えた。 IEAのビロル事務局長は、クリーンエネルギーについて「温室効果ガスの排出削減だけでなく、不安定で混乱しがちな燃料への依存を減らすための解決策となる」として、導入を加速する重要性を強調した。 ![]() |
京都市教育委員会は1日、2025年度教員採用試験で合格した小学校教諭3人を先行して採用した。欠員が生じている小学校に速やかに配置するためで、さらに12月には養護教諭1人を採用する。同市で教員の先行採用を実施するのは初めて。 市立学校の教員不足を背景に、同市教委は25年4月1日に採用を予定する教員内定者323人のうち、他自治体で教員のキャリアを積んだり、民間企業で社会人経験があったりする20代の女性教諭4人の了承を得て、採用時期を4〜5ヵ月前倒しすることにした。 市教委教職員人事課は「指導主事による個別指導や赴任校での校内研修を実施し、先行採用の教員も円滑に教師生活をスタートできるよう支援したい」としている。 ![]() |
2023年度に全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒は11年連続で増加し、全体の3・7%に当たる34万6482人で最多を更新したことが31日、文部科学省の問題行動・不登校調査で分かった。22年度から4万7434人(15・9%)増えた。小中高などが認知したいじめは73万2568件で、前年度比7・4%増。うち身体的被害や長期欠席などが生じた「重大事態」は1306件で、初めて千件を超えた。 40人学級に換算すると、1クラス当たり1・5人が不登校となる。文科省は、通学を無理強いしない保護者が増えたことや、特別な配慮が必要な子どもへの学校側の支援が不十分なことが増加の背景にあると分析。いじめについては「学校現場で定義や積極的な認知に対する理解が広がってきた」とした。 不登校の小学生は13万370人(全体の2・1%)、中学生は21万6112人(同6・7%)だった。このうち38・8%に当たる13万4368人は、学校内外で専門的な支援を受けられていなかった。 不登校の理由は、今回から質問項目を見直し、学校側が判断した要因ではなく把握した事実を尋ねた。「学校生活にやる気が出ないとの相談」が最多の32・2%。「不安・抑うつの相談」が23・1%で続いた。障害や日本語指導などへの配慮や支援に関する「相談」も計13・6%あった。 義務教育ではない高校の不登校も6万8770人で最多だった。 いじめ認知件数の学校種別は、小学校58万8930件、中学校12万2703件、高校1万7611件、特別支援学校3324件。全学校の83・6%に当たる3万213校で認知した。重大事態1306件のうち490件は、深刻な被害が生じるまで学校側がいじめを把握できていなかった。 学校が把握した小中高の自殺者は397人。置かれていた状況は「不明」186人、「家庭不和」65人だった。 京都府教育委員会は31日、文部科学省が実施した2023年度の問題行動・不登校調査の府内分の結果を発表した。府内国公私立小中学校の不登校の児童生徒数は、前年度比583人増の6210人となり、2012年度に増加に転じて以降、12年連続で増え、過去最多を更新した。前年度からの増加率は、前回調査の26・0%増から10・4%増と低下し、鈍化がみられた。 府内の不登校の内訳は、小学校が前年度321人増の2291人、中学校は262人増の3919人。千人当たりの不登校数は、小学校が19・2人(全国21・4人)、中学校は60・2人(同67・1人)だった。高校は94人減の1095人となった。府教委は「(学校以外での多様な学びの重要性を記した)教育機会確保法 の施行も背景にあり、学校を休むことへ抵抗感が薄らいでいる。不登校は増加が続く可能性がある」としている。 いじめの認知件数は、前年度比832件増の1万9861件。内訳は小学校が664件増の1万6366件、中学校が325件増の3102件。高校は118件減の269件、特別支援学校は39件減の124件だった。不登校に至るなどの「重大事態」は、15校で16件発生した。 暴力行為の発生件数は、224件増の2572件。内訳は、小学校が110件増の1480件、中学校が66件増の923件、高校が48件増の169件。形態別では、生徒間が157件増の1672件と最多で、器物損壊(544件)、対教師(280件)と続いた。 文部科学省の調査で、不登校の小中学生が初めて30万人を超えた。いかに事前に兆候を把握し、寄り添えるか。各地で学校内の受け皿づくりが進む。ただこうした“居場所”では、子どもの「ありのまま」を受容する姿勢が求められ、学校現場には教育的価値観との間で葛藤も。向き合い方を巡り模索が続いている。 9月、東京都豊島区立西池袋中。放課後、ソファやテントが置かれたスペースで、生徒十数人がトランプやボードゲームをしてくつろいでいた。 地元の認定NPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク 」が昨年5月、不登校予防を目的に校内に開設した「にしまるーむ」。週2〜3回開かれ、午後の授業時間帯は不登校傾向の生徒が利用し、放課後は誰でも使える。 「ここでは何をしても何もしなくてもいい。教室でも家でもない『第三の居場所』が校内にあることが重要」と、スタッフの本間優輔さん(25)。中2の男子生徒(13)は「先生には勉強の話をしないといけない印象があるけど、スタッフとは普段の話ができる」と話し、のんびぴ過ごせる ことで、悩みや本音を打ち明けやすい環境となっている。 文科省調査で、不登校の要因に関し学校側が把握した事実は「やる気が出ない」「生活リズムの不調」といった本人起因の割合が高かった。だが不登校の理由は、学校側と子どもで認識に隔たりがあることも多い。関東地方の公立小教諭(31)は「細かな規律が苦しい子もいる。『正しさ』を押し付けるのではなく、子どもへの理解を深める必要がある」と話す。 子どもの状態はさまざまで、一人一人に合った支援が求められる。民間連携による校内の居場所は、文科省が整備を進める空き教室を活用した「校内教育支援センター」や、年間の授業時間を減らすなど教育課程を柔軟に編成できる「学びの多様化学校(不登校特例校)」と同様、受け皿の役割を担う。 外部の力を取り入れた居場所づくりは高校で始まり、中学でも徐々に広がるが、導入は容易ではない。「にしまるーむ」を始めた西池袋中でも、当初は「学びの場と憩いの場は分けるべきだ」、「遊ばせているだけでは」との声が寄せられたと、八尋崇校長(53)は明かす。 八尋校長は、居場所の意義を認めた上で「卒業後に困らないように、進路や方向性を指導することも必要だ」とし、教員には別の役割があると説明。情報共有など、NPO側との連携の在り方は模索中だと話す。 教育学が専門の上智大の沢田稔教授は、「あなたのままでいい」という福祉的な価値観を学校に取り入れることは、今後重要になるとしながらも「『より良い状態に成長させる』との教育的価値観との間で、ジレンマが生じるのは避けられない」と指摘する。 子どもへの対応の正解は一つではないとして「どちらかの価値観に軸足を定めつつ、もう片方の考え方も頭に置いてその都度アプローチを話し合うしかない。子どもの姿を前に、悩み続けることが大切だ」としている。 2023年度の問題行動・不登校調査では、いじめの認知と「重大事態」の件数も過去最多となった。学校や教育委員会の初期対応に問題があり、事態が深刻化するケースは後を絶たず、文部科学省は重大事態の調査指針を改定し、改善を急ぐ。 13年9月施行の「いじめ防止対策推進法 」は、いじめで子どもの心身に重大な被害が出たり、長期欠席したりするケースを重大事態と定義。学校や教委は、速やかに事実関係を調査しなければならない。 重大事態は増加傾向が続いており、今回は1306件で前回から約4割増。背景について文科省担当者は「法律の理解が進み、学校側の積極的な認定や、保護者の意向を尊重した対応がされるようになった」とする。 一方で、いじめを巡る学校側の初動の在り方は各地で問題化している。北海道旭川市で21年に中学生が自殺した問題 では、学校側が当初いじめと認知せず重大事態としての調査を行わなかったことが判明。横浜市では、女子生徒から相談を受けた中学校がいじめと判断せず、生徒は20年に自殺した。 今回の調査でも、重大事態のうち490件は事前にいじめと認識されておらず、文科省担当者は「初期対応ができず、被害が重大化している」と学校の組織的対応に課題があることを認める。 ![]() |