2024年に生まれた子どもの数(外国人含む)は72万988人だった。統計を取り始めた1899年以降で最少。23年より3万7643人(5・0%)減り、9年連続で最少を更新した。全都道府県で減少した。死亡数が出生数を上回る「自然減」は89万7696人で過去最大。少子化は政府想定より15年速いペースで進んでおり、歯止めがかからない状況だ。 京都府は1万3690人、滋賀県は9240人だった。厚生労働省が27日、人口動態統計の速報値として発表した。今後発表する日本人だけの出生数は初めて70万人を割る可能性が高まっている。 物価高で子育てへの経済的不安が高まったことや、未婚・晩婚傾向が進んだことが背景にあるとみられる。婚姻数が新型コロナウイルス禍で大幅に減ったことも響いた。厚労省は「結婚や子育ての希望を阻む要因が複雑に絡み合っている」と説明した。 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)では、外国人を含む出生数が72万人台になるのは39年と見込んでいた。日本人だけの出生数は、厚労省が6月ごろに発表する。速報値との差が23年と同様の傾向なら、24年は69万人前後にとどまる計算だ。 24年の死亡数は2万8181人増の161万8684人で過去最多。高齢化に伴い、4年連続で増加した。婚姻数は49万9999組。90年ぶりに50万組を割った23年より1万718組増えたが依然低迷している。 人口減で働き手が少なくなれば、企業や自治体はサービスを維持できなくなる恐れがあり、医療や年金といった社会保障制度にも打撃となる。政府は30年までを「少子化反転のラストチャンス」とし、児童手当の拡充など「次元の異なる少子化対策」を打ち出した。石破茂首相は27日、官邸で記者団に「引き続き少子化対策、子育て支援に注力していく」と述べた。 日本人の出生数は第2次ベビーブームのピークだった1973年(約209万人)以降は減少傾向に入り、2016年に100万人を割り込んだ。 政府は、昨年成立した少子化対策関連法に基づき、子育て世帯への経済的支援の拡充や新たな保育サービスを順次本格化させ、出生数の減少を食い止めたい考えだ。2030年までが少子化傾向を反転させるラストチャンスとする中「次元の異なる」とうたった対策の効果が問われる。 経済的支援の柱は児童手当の拡充で、先行して24年10月に始まった。中学生までだった支給を高校生年代に延長し、所得制限を撤廃した。第3子以降は月3万円に倍増した。 低所得のひとり親世帯に支給する児童扶養手当は翌11月から、対象の年収要件を引き上げたほか、子どもが3人以上いる世帯の加算を増額した。 育児休業給付は25年4月から拡充する。両親が共に育休を14日以上取った場合は最大28日間、手取り収入の実質10割に引き上げる。 保育サービスでは、親の就労に関係なく子どもを預けられる「こども誰でも通園制度」を26年4月から全国で開始する。生後6ヵ月〜3歳未満を対象とする。 政府は「30年代に入ると日本の若年人口は現在の倍の速さで急速に減少する」(当時の岸田文雄首相)とめ危機感から対策を策定。結婚や出産の希望をかなえるために賃上げや雇用の安定も鍵となる。 ![]() |
生コンクリートの製造販売会社でつくる協同組合から現金を脅し取るなどしたとして、恐喝罪などに問われた全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部)の前執行委員長武建一被告(83)と、現委員長湯川裕司被告(52)の判決公判が26日、京都地裁であり、川上宏裁判長は 両被告に無罪(求刑懲役10年)を言い渡した。 両被告は、2013〜14年に京都生コンクリート協同組合(京都市南区)に対し、関生支部の7人が在籍していた生コン輸送会社の解散に際して退職金を払う必要があると因縁を付けて解決金を要求し、協同組合加盟社の敷地内に関生支部の組合員を滞在させて生コンの出荷を阻止して、1億5千万円を脅し取ったとする恐喝罪で起訴された。 川上裁判長は判決理由で、武被告の方から1億5千万円を要求した事実は認められず、反対に、協同組合側から解決金を提示したと考えても不自然ではないと判断。関生支部側の一連の行動は、労働問題に関する協定の履行を求めたストライキだったと認定し、「脅迫に当たるとは評価できない」とした。 両被告は協同組合を巡る別の恐喝罪などでも起訴されたが、川上裁判長は「威圧的な言動があったとは認められない」などと認定し、いずれも無罪とした。 京都地検の石井壮治次席検事は「判決内容を精査し適切に対応したい」とコメントした。 武被告は、威力業務妨害などの罪に問われた別事件で21年に大阪地裁で懲役3年、執行猶予5年の判決を受け、確定。湯川被告も別の恐喝未遂罪などで23年に大津地裁で懲役4年の実刑判決を受け、控訴中。 関生支部の湯川裕司執行委員長は、京都地裁での無罪言い渡し後に記者会見し、「しっかり判断してもらい、素直にうれしい」と語った。 公判では、武建一前萎員長や湯川委員長が協同組合に解決金を要求した行為は脅迫だったのか、正当な組合活動だったのかが争点となった。 判決は一連の行為が違法性のないストライキだったと認定した上で、「ストは組合が使用者に圧力をかけて主張を貫徹する行為。使用者がストを避けたいと考えることは当然だ」と判断。関生支部による出荷妨害を恐れて解決金を支払わざるを得なかった状況は脅迫に当たるとした検察側主張を退 けた。弁護団は「(相手側が)ストを恐れて要求に応じるだけでは犯罪にならないと認定された」と評価した。 関生支部側によると、2018年以降、京都府警や滋賀県警などの捜査で関生支部の組合員計57人が逮捕された。一方、この日の判決や、7人に無罪が言い渡された24年2月の大津地裁判決など、無罪判決を受けた人は計12人に上る。湯川委員長は「労組つぶしをされて仲間が減ってしまった。 人質司法で事件がつくられてきた。今回は無罪を得たが失ったものは返って来ない。複雑な心境」とした。 労働法に詳しい吉田美喜夫・立命館大名誉教授は「生コン業界の特殊な労使関係や歴史を踏まえつつ、ストを含めた労働争議によって業務の正常な運営が阻害されるのは当然であり、違法性がない、と認定した判断は妥当だ」と述べた。 ![]() |
国会論争の行方には、地方自治体も注目している。総務省は国税の所得税と同様に、住民税の非課税枠を178万円に引き上げた場合、地方自治体の住民税が4兆円程度の減収になると試算。京都府では府税と市町村税で年間計約850億円の減収になる見通しだ。 内訳は個人府民税は約250億円、市町村税が約600億円。 府の2025年度一般会計当初予算案に計上された個人府民税は891億円で、3割近くの減となる計算だ。減収額はサンガスタジアム京セラ(亀岡市)の総事業費約180億円の1・4倍で、中学校教職員約5千人の年間人件費総額(226億円)を上回る。 京都市の減収額は約340億円か見込まれる。市立中学校給食センター設置の総事業費(441億円)には及ばないものの、市庁舎建て替えの総事業費(370億円)に匹敵する。 また、非課税世帯が増えれば、国民健康保険や障害福祉サービスなど、非課税世帯向け減免措置の対象範囲が広がる可能性もある。利用者にはうれしいが、自治体にとってはさらなる出費が必要で、全国知事会は「地方財政への影響が大きい」と政府に慎重な制度設計を求めている。 「壁」議論には、自治体の減収を含めた副作用をどう解決するかの視点も欠かせない。 ![]() |
文部科学省が2022年度に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、中学3年の数学、理科の全国平均正答率は女子が男子をわずかに上回り、性別による学力差はほとんどみられなかったことが25日、九州大の河野銀子教授らの研究で分かった。一方、教科への関心や興味は女子の方が低かった。 「女子は理科や数学が苦手」との無意識の思い込みや偏見は根強く、理系の大学や職場の選択を阻む一因となっている。河野教授は「女子の理数系の学力は男子と変わらないという正しい知識を周囲の大人が持ち、学びや進学を応援していくことが大切だ」と話している。 研究グループは文科省から集計結果の貸与を受け、中学3年の約93万人分の正答率を男女別に分析した。全国平均正答率(国公私立)で、数学は男子51・8%、女子52・1%とほぼ差がなく、理科は男子49・1%、女子50・3%と女子がわずかに高かった。 一方、教科に対する興味や関心を尋ねる質問紙調査で、数学が好きかとの問いに肯定的な回答をしたのは男子で65%程度、女子で50%程度だった。「理科や数学の授業内容がよく分かる」「授業で学習したことを生活の中で活用できないか考える」と答えた割合も男子が女子より10ポイントほど高かった。 河野教授は、女子の理系進学が少ない要因は学力ではなく、理系の勉強を好きと思えないなど意識の問題が影響しているとみられるとして「女子が関心を持てるような授業の工夫が必要だ」と指摘している。 研究結果は3月に刊行される九州大の学術情報誌「ポリモルフィア」に掲載される。 数学や理科の学力に男女差はほとんどないにもかかわらず、四年制大学の理工系学部に進学する女性の割合は男性より圧倒的に少ない。文部科学省統計によると、2024年春の学部ごとの女性比率で理学部は28・3%、工学部は16・7%。多様な学生を増やすため理工系入試に「女子枠」を導入する大学が目立つようになり、政府もこうした分野の女子学生を金銭面などで支援するとしている。 小中学校段階ではこれまでも、女子が理数教科に興味を持ちづらい傾向が出ていた。23年に実施された世界の小4と中2に当たる学年を対象とした国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)によると、日本の小中学生で算数・数学と理科を「楽しい」「得意」とした割合は、いずれも女子が男子を下回った。 大学進学にも影響。経済協力開発機構(OECD)の調査では、21年時点の大学など高等教育機関の卒業・修了生に占める女性割合が、日本は「工学・製造・建築」の分野で16%と加盟38力国で最下位だった。 文科省は「意識面が進学に影響している」として、今後の全国学力テストで各教科への関心について男女別分析に力を入れる方針だ。現行の第4期教育振興基本計画に「理工農系に進学する女子学生への修学支援を進める」とも明記している。 文科省によると、今シーズンの国公立大入試では30校が理工系学部に女子枠を導入。女性向けのインターンシップやオープンキャンパスを開催するなど、理系の学びに関心を持ち具体的な進路をイメージできるような取り組みがある。 ![]() |
自民、公明両党が日本維新の会と高校授業料無償化や社会保険料の負担軽減策を巡って正式合意した。少数与党の石破政権にとって「難所」を乗り越えたものの、2025年度予算案への賛成と引き換えに野党の歳出圧力に折れざるを得ない構図が鮮明化。財政再建の議論は置き去りとなっている。 高校授業料の無償化は、25年度から国公私立で年収を問わず年11万8800円を全世帯に支給し、26年度は私立に通う世帯への支援金上限額を引き上げる予定だ。25年度分に必要な経費は約1千億円で、基金を取り崩すなどして財源に充てるとみられる。 政府が国会に提出した現行の25年度予算案では、一般会計の歳出総額が115兆5415億円と当初予算ベースで過去最大を更新。歳入の2割弱となる21兆8580億円を赤字国債で賄う計画で、税収が増加傾向とはいえ、借金依存は深刻だ。今後は日銀の利上げに伴う国債の利払い費の膨張も危ぶまれる。 高校授業料の無償化を巡っては、公立と私立の格差を拡大させるとの懸念が自民党内で出たが、予算案の成立を最優先とする石破政権は維新の要求に「満額回答」(政府関係者)で応じた。 夏の参院選を控え、各党から有権者にアピールしやすい支出拡大や減税策が相次ぐ。経済官庁幹部は「ばらまきが終わらない」と吐き捨てるように言った。 ![]() |
京都府教育委員会は25日、京都市立を除ぐ府内公立全小中学校、高校、特別支援学校を対象とした2024年度2学期分のいじめに関する調査結果を公表した。認知件数は、前年同期比で158件減の8633件だった。いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」は全日制府立高で3件あった。 認知件数の内訳は、小学校が、前年同期比87件減の7615件、中学校は47件減の786件、高校は23件減の162件、特別支援学校は1件減の70件と全校種で減少した。このうち、解消は小学校123件、中学校24件、高校10件、特別支援学校10件で、いじめ行為が継続している「要指導」は小学校1062件、中学校117件、高校47件、特別支援学校は12件だった。 いじめの内容は、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が全校種で最多で、「軽くぷつかられたり、遊ぷふりをしてたたかれたり、蹴られたりする」や「仲間はずれ、集団による無視をされる」などが目立った。 3件あった重大事態について1件は生徒の生命、心身や財産に重大な被害が生じた疑いがある1号事案に該当し、暴力行為や金品の強要があったという。残り2件は、冷やかしやからかいなどを言われた事で年間30日以上の欠席になる2号事案という。府教委は「いずれも既にいじめは止まっている。学校の初期対応に問題はなかった」としている。 |
2024年度に全国の公立小中学校が立てた年間授業計画で、標準時間数の1015こまを大きく上回り1086こま以上の学校が小学5年(1こま45分)で17・7%、中学2年(同50分)で15・2%に上ることが24日、文部科学者の調査で分かった。22年度からは小中とも20ポイントほど減ったものの依然多く、文科省は教員の負担につながるとして本当に必要な時間数か精査が必要としている。 学習指導要領は年35週以上授業を行うとし、年1086こまは35週の計画なら週31こまを超える。平日5日間のみで消化するなら1日7こま授業が1回超となり、児童生徒の負担は大きい。。 教育関係者からは、学習指導要領が定める学習内容が多すぎる「カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)」が背景にあるとの指摘がある。次期指導要領に向けた改定作業で一つの焦点になりそうだ。 調査は全ての公立小中学校に実施。計画による年間授業時間数の平均は、小5が年1059・1こま(22年度比19・2こま減)、中2は年1058・4こま(同15・5こま減)だった。 年1086こま以上の学校のうち、小5は24・8%、中2は27・5%が、標準を上回った授業時間の使い方について具体的な想定をしていなかった。 想定があるとした学校では、小5で35・7%、中2で34・6%が「学級閉鎖など不測の事態に備えるため」とした。ただ文科省は、感染症などにより授業時間数が標準を下回っただけでは法令違反ではないとして、適正な計画を促している。 週当たりの授業時間数も調査。小4以上では29こま以上の学校が多い中、28こま以下としたのは小4〜6で22・3〜31・7%と、22年度に比べ10・1〜14・1ポイント増えた。文科省は、週当たりのこま数を減らすなどの工夫が求められるとしている。 ![]() |
【キーウ共同】ロシアのウクライナ侵攻から24日で3年。ウクライナは国土の約2割を占領され、両軍とも数十万人規模の死傷者を出す激戦で、第2次大戦後の欧州で最悪規模の戦争となった。双方が条件を譲ることはなく、和平への出口は見えない。トランプ米政権はウクライナに寄り添った前政権の方針を大転換してロシアに接近、頭越しに協議を開始した。ウクライーナは苦境に立たされ、米欧の亀裂も拡大。混迷は深まっている。 和平達成の成果を急ぐトランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー政権が求める北大西洋条約機構(NATO)加盟は「現実的ではない」と突き放す。一方で報道によると、戦争終結後にロシアが再侵攻した場合は加盟を自動的に認める案も検討。ただロシアが譲歩する可能性は低く、ウクライナの安全保障の枠組みは宙に浮いている。 トランプ氏はウクライナへの厳しい姿勢を強め、ゼレンスキー大統領を「選挙を経ていない独裁者」と批判。「ウクライナは戦争を始めるべきではなかった」とまで述べ、侵攻国ロシアに肩入れ。ウクライナに希少な鉱物資源供与も迫り、不利な条件を突き付けている。 ゼレンスキー氏は今月、。戦死したウクライナの兵士が4万6千人、負傷者は38万人と明らかにした。ロシア側の死傷者も数十万人に達しているとみられ、両軍とも疲弊は深刻だ。 ロシア軍は昨年秋以降、ウクライナ東部ドネツク州で支配地域を急拡大。州西部の要衝ポクロウシクに迫り、州全域の占領も視野に入れる。ウクライナ軍も昨年8月、ロシア西部クルスク州への越境攻撃を始め、一時は約1300平方キロを制圧したが、ロシアが約3分の2を奪還した。 ウクライナ軍は欧米の武器供与に頼るが、最大支援国である米国の支援継続は不透明に。一方、ロシアには昨年秋に北朝鮮が兵±1万人超を派遣し、ロシア軍部隊と共にクルスク州でウクライナ軍と交戦。イランも無人機や弾道ミサイルをロシアに供与しているとされる。 ![]() |
国公立大が2次試験の後期日程を縮小し、学校推薦型選抜(旧推薦入試)や総合型選抜(旧AO入試)ヘシフトする動きを強めている。京都府内では今回の2025年度一般入試から、京都大と京都工芸繊維大で後期日程がなくなった。学力試験にとどまらず多角的に生徒の資質を評価し、多様な人 材を早期に確保する狙いがあるという。 京都工繊大は、今年から応用化学課程など5課程で後期日程の募集を停止し、全ての課程で後期をなくした。前年度に計74人だった後期の募集人員は46人分を前期、24人分を学校推薦型、4人分を総合型へと振り分けた。学校推薦型は、志望理由書などの出願書類と大学入学共通テストの成績から評価し、総合型は面接やリポート作成、グループディスカッションなどで合否を決める。 私立大も含めて導入が進む学校推薦型、総合型は「年内入試」とも呼ばれ、11月ごろから年明けに合格発表があるのが一般的だ。京都工繊大も学校推薦型の合格発表日は2月12日、総合型は昨年11月13日と、一般入試より時期が早い。同大学入試課は今回の変更について「進学先を決定する時期が早期化する中で、本学を第1志望にしてくれた多様な学生を広く受け入れる狙い」とする。 京都大は09年度に前期へ完全に一本化。16年度に法学部の特色入試として後期が「復活」したが、今回再び廃止となった。法学部後期の募集人員20人は全て学校推薦型に変更となった。 文部科学省のデータによると、国公立大の前期日程の募集人員はこの10年間、計8万人前後でほぼ横ばい。一方、25年度の後期日程の募集人員は計1万5465人で、各大学は10年前から計約4千人分を絞り込み、年内入試の比重を高めている。 河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は「後期日程は制度的に第2志望になるケースも多い。学校推薦型や総合型は原則、第1志望でチャレンジするので、大学側にとっては意欲的な学生を早期に確保できる点が大きい。今後も同様の傾向が続くだろう」と分析している。 ![]() |
中教審は21日、急速な少子化を踏まえた大学など高等教育機関の在り方を阿部俊子文部科学相に答申した。地方の進学機会を確保した上で、大学数を適正規模に縮小しながら、教育の質向上を目指すのが柱。経営が厳しい大学に撤退や縮小を促すことや、学生の在学中の成長などを指標に数段階で大学を格付けする、新たな評価制度への移行を提言した。 文科省は答申を受け、今夏をめどに今後10年程度の政策工程を示す方針だ。 答申によると、2024年に約63万人だった大学進学者数は40年に約46万人となり、現在の定員の7割程度しか埋まらなくなる。 答申は「各大学が適正な規模の在り方の検討を進めることが重要」と指摘。財務状況や定員充足率によっては撤退や統合・再編の支援が必要だとし た。 その上で、個別の経営判断だけに委ねれば学びの機会がなくなり、地域社会に大きな影響が出かねないとの懸念も表明。各地域に、大学や自治体、産業界が教育機会の確保や人材育成の在り方など将来像を議論する「地域構想推進プラットフォーム」の構築を求めた。 大学の新設抑制のため、設置認可要件の厳格化にも言及した。 新たな評価制度では、学部・研究科ごとに教育の質を数段階で示すことを検討。受験生らが偏差値ではなく、各大学の教育力を比較できるようなシステムづくりを目指す。 国立大に対しては、学部の定員規模の見直しが避けられないとし、大学院教育に定員や資源の重点化を図るべきだとした。(記事は21日夕刊) 少子化時代の高等教育の在り方を巡る中教審の答申は、経営難の大学に“退場”を強く促す内容となった。定員割れに苦しむ地方の私立大は、生き残りへ教育内容の充実や地域との連携を模索する。大学の存亡は地域社会にも大きな影響を及ぼす。教育機関の数や規模の適正化を図りながら、いかに学びの機会を維持するのか。バランスが課題となりそうだ。 「ここに『り』を置けば『リス』ができますね」。昨年11月、大分県豊後大野市で開かれた社会福祉法人のイベント。出展した日本文理大(大分市)の学生が、ベトナム人技能実習生や地元住民らと日本語を学ぶゲームを楽しむ姿があった。高齢化が進む豊後大野市で、空き家を活用した交流拠点作りを目指すフィールドワークの一環だ。 一時は定員割れから脱したものの、2021年度から再び定員が埋まらない状況が続く。自治体や地元企業と連携して地域課題の解決に取り組む授業に力を入れており、橋本堅次郎学長は「独自性を高め地域に必要とされないと、合併統合の波にのみ込まれる」と危機感を口にする。 日本私立学校振興・共済事業団によると、24年春に定員割れした私大は59・2%に上り、1989年度以降で最高となった。定員充足率は東北や中国、四国(宮城、広島を除く)で8割を切るなど、特に地方で学生不足が深刻だ。 答申は、急速な少子化の影響で、大学進学者数が40年には現在の定員の7割程度にまで落ち込むと予測。定員充足率や財務状況が厳しい大学が再編・統合を進めやすくしたり、一定の基準に満たない場合は規模縮小や撤退への指導を強化したりすることを求めた。 だが24年度の都道府県別の四年制大学進学率は、大都市圏で6〜7割に上る一方、東北や九州の多くの県が4割台にとどまる。大学が少ないと進学率が低迷するとも指摘され、地方私大の淘汰が進めば格差拡大につながる恐れがある。 地元の人材確保にも大きな影響が出る。日本文理大では、県内就職者数が14年度からの10年間で1・4倍に。地域への人材の供給源でもあり、連携する大分県の担当者は「学生の新鮮な視点や活力が必要だ」と話す。 そのため答申は、現在各地で取り組みが進む産学官連携を発展させた「地域構想推進プラットフォーム」の構築も提言。地元の大学・短大や自治体、企業に、縮小や再編を含めた教育機会の確保や人材育成の方策を自ら検討することを求めた。 「ライバルでもある当事者同士で、規模などを議論するのは無理がある」。地方の私大関係者からは疑問視する声も上がるが、文部科学省幹部は「深刻な定員割れが想定される以上、今後はウィンウィンの関係から移行せざるを得ない」と語る。 文科省は地域の取り組みを支援するため、連携して政策立案などを担う「地域大学振興室」を4月に新設する。別の幹部は「地域と大学が両輪で発展する方法を考えたい」と意気込む。 筑波大の金子元久特命教授(高等教育論)は「大学側には、入試など学力チェックの在り方や授業内容を充実させる努力が求められている。その上で、教育の質を高めた大学には適正な資源配分が行われる制度にしていくことが重妥だ」と話した。 ![]() |
京都府が府議会2月定例会に提出した「人権尊重の共生社会づくり条例案」について、京都弁護士会(岡田一毅会長)は、ヘイトスピーチなどの差別的行為への対処に関する内容を盛り込むよう求める会長声明を出した。 条例案は、差別禁止や罰則規定を定めない理念条例で、市民団体などからも修正を求める声が上がっていた。 声明では、ヘイトスピーチ解消法が「地方公立団体は地域の実情に応じた施策を講じるよう努める」と定めている点を指摘。朝鮮学校襲撃やウトロ放火などの事件が京都で起きた経緯を踏まえ、不当な差別的行為を明確に禁止する条文を盛り込むよう要請した。差別的行為の防止措置や相談体制整備などの具体的な対策の記載も求めた。 京都市中京区の京都弁護士会館で21日にあった記者会見で、同弁護士会の諸富健弁護士は「法律家団体として根拠を示し声明を出した。今回のような抽象的で実効性に欠けた条例が成立してしまうと、今後の他市町村の制定にマイナスの影響が働く」と訴えた。 ![]() |
全国の八つのPTA改革事例を紹介する本「PTA、こうやって変えました! 脱強制・改革の超実践的ノウハウ」が刊行された。本書で紹介される大津市の保護者組織「はなぞの会」と、編集した 一般社団法人「全国PTA連絡協議会」(東京都)の両団体代表に、PTAを時代に合った組織に変えるためのポイントを聞いた。(三村智哉) はなぞの会は、大津市立志賀小のPTAが、2020年に解散して新たに発足した。地域の住民や団体も参加するのが特徴で、木戸地泰孝会長(43)は「市がコミュニティースクールを導入したのを機に、地域とともに子どもたちを育もうと考えた」と語る。 登下校の見守りがより地域と連携してできるようになったほか、「こんなことがやりたい」という思いが実現できる組織になったという。実際、保護者の発案で、お化け屋敷のイベントや給食試食会、性教育講座などが行われた。 企画をしたい人たちには、運営委員になってもらう。途中からの加入も可能だという。現在は役員、運営委員に、男性も含めて12人が参加している。 木戸地さんは「やらなければならないことは決めておらず、やりたい人の声を受けて事業計画を決めている。より会費を直接、子どものために還元できるようになった」と実感する。改革に向けて「活動が本当に必要か、恐れずにゼロペースで見直することが大事。やめても必要であれば、またやろうとする人が出てくる」と助言する。 本では他に、ボランティア制の導入など先進的に活動する東京都の「嶺町小PTO」や、1970年代から任意加入の徹底を推進する奈良市PTA連合会なども取り上げている。 編集した全国PTA連絡協議会の長谷川浩章代表理事(62)は「各団体はいずれも、課題を認識して、いち早く話し合いを持ち、行動を起こしていた。協力する仲間もおり、改革にはタイミングも重要だった」と、行動と仲間の大切さを語る。 一方で「それまで続けてきた活動を変えたり、やめたりしても、その状態が続くことにこだわらない人も多かった。後の人たちに活動を押しつけず、その時の人たちで考えればいいという姿勢だった」と話す。 その上で「活動を効率化した結果、人間関係がギスギスしては本末転倒。本書で『こんな学校もあるんだ』と知って、楽しく活動できるための参考に してもらいたい」と呼びかけた。 学芸出版社刊、1980円。 ![]() |
自民、公明、日本維新の会の3党の教育無償化と社会伴険料引き下げに関する合意文書の原案の全容が19日、判明した。私立高校に通う世帯への支援金上限額を巡り、2026年度に現行の年39万6千円から「45万7千円をべース」に引き上げると明記。給食無償化について「まずは小学校を念頭に26年度の制度化を目指す」とした。維新は教育無償化は大筋で受け入れる方向だが、社会保険料改革の内容が不十分だと指摘し、20日も詰めの協議を続ける。 少数与党の自公は、維新の政策を受け入れる代わりに25年度予算案への賛同を得たい考えだ。石破茂首相は17日の衆院予算委員会で、高校の就学支援金制度を拡充すると表明しており、原案は首相答弁に沿った内容となっている。 原案によると、高校無償化の先行措置として、25年度から国公私立で年収を問わず全世帯に年11万8800円を支給するため「25年 度予算案を修正する」と記した。 その後、今年夏の経済財政運営の指針「骨太方針」策定までに無償化の大枠を示し、26年度予算案編成過程で実現すると説明した。私立への支援金は26年度に所得制限を撤廃。「直近の全国平均授業料45万7千円」をペースに検討し安定した恒久財源の確保策と併せて実現すると盛り込んだ。 給食無償化は、中学校への拡大についてもできる限り速やかに実現すると強調。低所得世帯向けの奨学給付金制度の拡充も明記した。財源は「徹底した行財政改革を行い、歳出、歳入両面の措置により確保する」と主張。維新が法的な担保を求めていることを踏まえ、制度拡充への手順を定めた「プログラム法」を議員立法で取りまとめるとした。 維新は役員会を開き、予算案の賛否と原案を議論。社会保険料改革で維新が掲げる医療費総額の年間4兆円削減の数値目標を書き込むべきだ、などの異論が続出した。 |
原発を最大限活用すると打ち出した政府のエネルギー基本計画のパブリックコメント(意見公募)を巡り、10件以上投稿した46人だけで計39 40件の意見を寄せていたことが19日、経済産業省の調べで分かった。要旨を入力するだけで類似内容の文章をすぐに作成できる生成人工知能(AI)を活用したとみている。全意見の約1割に当たり、反原発の訴えが大半だった。 多様な意見を取り入れることが目的の意見公募で生成AIによる大量投稿が頻発すれば、本来は政策に反映されるべき意見が埋もれてしまう恐れがある。特定意見の総数が注目され、民意が偏っていると受け止められる可能性もある。 AIの普及前には同調者を募って同じような主張を寄せることがあった。政府は意見公募にAI使用を禁止しておらず、言論の自由の観点から同内容の大量投稿に問題はないとの見方もある。 経産省は、X(旧ツイッター)やLINE(ライン)で、生成AIを使ってパブコメ案を作成しているやりとりを確認。投稿数を増やすために複 数人でシフトを組んでいる事例も見つけた。 同内容の複数投稿には「水素発電を推進 原子力発電反対」や「原発再稼働 新設には絶対反対です!!!」などがたった。大量投稿はほとんどが偽名で、「止めよ原発」や「腐った者達」といった同じ名前からされていた。1人の最大投稿数は457件たった。 パブリックコメント(意見公募)は、そもそも多数決で物事を決める仕組みではない。政策決定の過程で、少数派の意見や想定外の視点を反映させる制度だ。生成人工知能(AI)を活用した意見作成はとても簡単で、少し手を入れればAIを使った投稿なのかどうかを断定することは難しい。AIによる類似した文章が大量に寄せられると、貴重な意見が埋没しかねない。もちろん規制すれば自由に意見を出せなくなる懸念がある。しかし、同じ行為が続けば行政側の事務負担の増加につながり制度自体が形骸化する恐れもある。 ![]() |
政府は18日、エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画を閣議決定した。脱炭素電源を拡大し温室効果ガス排出削減と経済成長の両立を目指す。東京電力福島第1原発事故を踏まえた原発の依存度低減は撤回。原発頼みが鮮明で、国民負担による建設支援策も浮上。再生可能エネルギーは最大電源とするが課題は残る。温暖化に懐疑的なトランプ米大統領が脱炭素の機運に水を差す懸念も消えない。 「原発回帰への歯止めが崩れ、利用の在り方が変わる」。環境省幹部は新たなエネルギー基本計画から「原発依存度を可能な限り低減する」との文言が削られたことを、こう解説する。動いたのは経済産業省だ。計画には悲願の原発「建て替え」も明記。視線はすでに建設支援に向いている。 原発は脱炭素の主力とされ、2040年度の電源構成で2割程度とする目標。ただ建設費は巨額で、計画は「事業者が新たな投資をちゅうちょする懸念」を強調。国の予算措置があるGX(グリーントランスフォーメーション)推進機構の融資支援を視野に入れる。 建設費を電気料金に上乗せして回収する制度も探る。表向きは「何も決まっていない」(経産省幹部)が、同省の有識者会議では「料金転嫁し国民に負担してもらう」との意見が大勢だ。NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長は「国民生活に直結する。国会の場で議論されるべきだ」と訴える。 再生エネは40年度に4〜5割に増やし最大電源に位置付けるが、足元では22・9%(23年度)止まりだ。主力と期待される洋上風力発電は「40年までに3千万〜4500万キロワット」と従来目標と同水準。風力発電は羽根や駆動部分など主要部品を輸入に頼り、物価高によるコスト増がのしかかる。世界的にも撤退や事業縮小が相次ぐ上、トランプ氏は開発制限を指示しており、逆風が強まる。 政府の切り札が次世代技術のペロプスガイド太陽電池で、40年に約2千万キロワット導入を目指す。適地が少なく環境破壊の懸念もある従来の太陽光発電と異なり、建物の壁や窓にも設置できる。積水化学工業は昨年、量産を開始すると発表。実用化が焦点だ。 火力は現状の約7割から抑制するが、40年度でも3〜4割を使う。特に二酸化炭素(CO2)排出が多い石炭火力の段階的廃止に踏み込まず、どの程度残るかも不明だ。 温暖化対策計画は温室効果ガス排出の「35年度に13年度比60%減、40年度に73%減」を掲げるが、猛暑や豪雨など極端な気象現象が頻発する中、パリ協定が求める水準を下回っているとして環境団体などから批判が集まる。 計画案は昨年11月に公表。その約3週間前、米大統領選で気候変動対策に後ろ向きなトランプ氏が返り咲きを決めた。「高い目標を追い求める緊張感が低下したのは否めない」(環境省幹部)。法政大の高橋洋教授(エネルギー政策)はトランプ氏再登板で「日本も(温暖化対策を)急がなくていいという雰囲気は出てくるだろう」と指摘。日本の脱炭素戦略は米国の動向きに影響されそうだ。 ![]() |
京都府は、これまで乳幼児から高校生までの子どもがいる母子家庭を対象に支給していた奨学金を、新年度から父子家庭にも拡充する。 性別による不公平をなくし、ひとり親家庭全体の自立支援を目指す狙い。一方、給付対象の子どもは中学生までに引き下げる。昨年10月か ら児童手当が高校生にも支給されるようになったことなどが理由という。 府では子どもの教育などに関わる経済的負担を減らそうと、京都市を除く府内在住の母子家庭を対象にした返済不要、所得制限なしの 奨学金支給事業を1974年度から実施している。都道府県が独自に給付型奨学金を設けているのは全国的にも珍しいという。2023年 度の支給実績は約1万2千人だった。 今回はジェンダー平等の観点から制度を見直し、男女の区別をなくした。対象は乳幼児から中学卒業までの子どもがいるひとり親家庭で、支給額は変更なく、子どもの年齢に応じて年1万1千〜4万3千円を給付する。また、制服購入などに充ててもらう高校入学支度金を1万円増額し4万5千円にする。 一方、これまで高校生のいる母子家庭は年6万4千円を支給されていたが、新年度から対象から外れる。府は、高校生年代まで年12万円の児童手当が支給されるようになったことや、低所得のひとり親世帯に支給する児童扶養手当の年収要件引き上げなど、国の制度が充実したことを理由としている。 2020年の国勢調査によると、府内の母子家庭は7457世帯、父子家庭は1135世帯。府は新たな支給対象となる父子家庭の子どもは 約1500人いると見込む一方、母子家庭の高校生(23年度実績で約2500人)を対象外とすることで、総事業費は前年度から約7千万円減となる。新年度当初予算に3億2800万円を計上する。府家庭・青少年支援課は「子どもが生まれ育った環境に左右されず成長できるようひとり親家庭をサポートしていきたい」としている。 |
日本維新の会の前原誠司共同代表は16日のフジテレビ番組で、高校授業料を助成する就学支援金制度を巡り、私立に対する年63万円への増額にこだわらない姿勢を示した。「金額については柔軟に対応したい」と述べた。私立を対象に支援金を加算する場合の「年収590万円未満」の所得制限撤廃を2026年度とする自民、公明両党案も容認した。自公に譲歩した形で、25年度予算案修正に向けた3党交渉は大詰めを迎える。 維新は私立の所得制限を25年度に撤廃し、支援金を年63万円に増額するよう主張していた。前原氏は今週中に予算案への賛否を決めるとしており、維新内での意見集約も焦点となる。自公は予算案の3月中の成立を目指し、維新の政策を受け入れる代わりに賛成を取ぴ付けたい考え。自公と国民民主党による「年収の壁」見直しを巡る協議もヤマ場となる。 自公案は、25年度から公立、私立とも年収にかかわず年11万8800円を支給し、私立に通う年収590万円未満の世帯に年39万6千円まで加算される支援金に関しては、26年度に所得制限を撤廃するとの内容。上限額も引き上げるとした。 前原氏は番組で、低所得層や公立の農業高校、水産高校などに対する支援の必要性に言及。年63万円まで支援金を増額する場合に必要な6千億円の予算の一部を振り向け、私立への増額幅を圧縮することもあり得るとした。自公は3党協議で、低所得層向けの奨学給付金制度の拡充や公立の質を確保するための支援策を併せて提案している。 前原氏は所得制限の撤廃時期について、今年4月に入学する高校生を例に挙げ「今の制度で願書を出して試験を受けている。25年度に私立も無償になるという前提で選んでいない」と説明。自治体によっては条例改正が必要な場合もあるとして「26年度スタートは理解してい」と語った。 共同通信社の世論調査で、所得制限のない高校の授業料無償化への賛否を年代別に見ると、若年層(30代以下)は賛成80・9%、反対8・6%、中年層(40〜50代)は賛成67・8%、反対29・6%だった。高年層(60代以上)は賛成42・6%、反対51・1%と逆転した。若い世代ほど無償化を望む傾向となった。 性別では、男女とも60・8%が賛成と回答した。賛否を政党支持層別に見ると、高校授業料無償化を目指し自民、公明両党と政策協議を行っている日本維新の会は賛成73・8%(反対23・5%)となった。自民は54・3%(41・0%)、公明は74・4%(21・8%)だった。他の野党では立憲民主党48・5%(47・2%)、国民民主党63・9%(33・6%)、れいわ新選組94・6%(5・4%)などとなった。 ![]() |
SNSを見るなど、一人と不特定多数のオンラインコミュニケーションが若年者の孤独感を増加させることが分かったと、理化学研究所などの国際共同研究チームが報告した。 若年者のスマホなどデジタル端末の利用時間は、他の年齢層に比べて大幅に長い。メンタルヘルスが近年悪化していることの原因だとする指摘もあり、欧米などではSNSの利用を規制する動きも出ている。 一方で、これまでの研究では、悪影響を与えるとの報告けでなく、悪影響はあるものの大きくはないとの報告や、良い効果があるとの報告も公表されてきた。研究チームは、研究結果が一致していないのは、デジタル端末をどう利用しているかを適切に分けて調べていなかったことなどが要因だとみて、詳細な分析を試みた。 若年層418人(平均年齢24歳)を、21日間にわたり追跡調査。参加者には毎晩、デジタル端末の利用時間と内容、コミュニケーションの時間と種類、精神状態などを記録してもらった。 これらの関係を分析したところ、SNSの投稿、閲覧など、1人と不特定多数の間のオンライン交流は孤独感の増加と関連しており、SNSの閲覧時間が長いほど増加が見られた。女性ではより悪影響が大きかった。 半面、メッセージのやりとりやオンライン通話など、1対1のオンライン交流は幸福感の向上と関連。特に親しい人とのメッセージのやりとりの効果が大きかった。 ただし、幸福感を最も増していたのは対面の交流で、1対1のオンライン交流の5倍以上の効果があった。また、デジタル端末利用のメンタルヘルスへの悪影響は、利用そのものの影響より、対面交流時間を減らすことを通じての影響の方が大きいことも分かった。 研究チームの赤石れい・理研ユニットリーダーは「SNSをたくさん使ったら、対面交流が減らないよう気を付ける」などの対策が現時点では考えられるとしつつ、オンラインコミュニケーションの影響についてさらに詳しい分析が必要だと話している。 ![]() |
高校生が政治家を招いて、各政党の政策を比較する催し「ミライ選挙」が16日、京都市左京区の同志社高で開かれた。来場者約150人が衆参国会議員の主張に耳を傾けた。 同高の生徒らでつくる「ミラコエ」が企画。自民党、立憲民主党、日本維新の会、れいわ新選組、共産党の国会議員が教育制度や憲法 改正など五つのテーマで討論した。 参加者との質疑では「教育予算をなぜ増やせないのか」「自衛隊を9条に明記したら日本の安全保障環境はどう変わるか」などの質問に各議員が答えた。 ミラコエ代表の同志社高3年谷*埜(こうや)さん(18)は「政治に興味を持つことは恥ずかしいことではない。若者が政治を身近に感じ、議論できる風潮をつくりたい」と話していた。(*は「日」の下に「天」) ![]() |
中教審作業部会は14日、デジタル教科書を紙と同様に検定や無償配布の対象となる正式な教科書に位置付けるとの中間まとめ案を大筋で了承した。一部を紙で、残りをデジタルで作る「ハイブリッド」形式の教科書も認める。次期学習指導要領が小学校で全面実施される予定の2030年度からの導入が望ましいとした。 導入後は各教育委員会が紙、デジタル、ハイブリツドの3形式から選択する。導入する学年や教科は、教委や教科書会社が教科の特性や児童生徒の発達段階に応じて検討することが重要とした。今後、教員の指導力向上策や検定の方法・対象範囲を議論し、年内にも最終案をまとめる方針。 現行のデジタル教科書は、紙の教科書の代替教材として同じ内容をタブレツ卜端末で読めるようにしたもの。音声、動画の再生や立体図形の表示といった機能があり、文部科学省は小学5年〜中学3年の英語と算数・数学で導入している。 現在の紙の教科書は、ほとんどが2次元コード(QRコード)を掲載し、その先のデジタルコンテンツは「教材」との位置付けで検定の対象外。QRコードの増加は教科書会社や教える教員の負担増につながっているとの指摘がある。 こうした点を踏まえて中間まとめ案は、デジタルが正式な教科書となった際の検定では、QRコードの先は「教科書の一部として認められるコンテンツに限定されるべきだ」と明記した。14日の作業部会では、教科書会社の委員から「どこまでが教科書で、どこからが教材なのかを今後詰める必要がある」などの意見が出された。 デジタルを正式な教科書と位置付ける中教審作業部会の中間まとめ案は、教科書の一部を紙で、一部をデジタルで作るハイブリッドも認 めるとした。既にデジタル化競争が激しい教科書業界からは、新たな負担を懸念する声も。使いこなす教員の力量も問われることになり、子どもたちの主体的な学びの実現へ課題は多い。 2月上旬、茨城県つくば市立島名小。5年生の社会の授業で、児童22人が自然災害の起きる仕組みや被害から身を守る取り組みを学んでいた。各自が紙の本やデジタル教材などを使って情報を集め、話し合いを行った。 ▼選択肢 同市では2021年度から、紙の教科書や教材とデジタルを併用した授業を実施。担任の宮本豪教諭(38)によると、当初は紙の教材を選ぶ子も多かったが、さまざまな角度から資料写真を見られるなど、使い勝手の良さからデジタルを選ぶ児童が徐々に増えた。「学び方の選択肢が増え、一人一人に合った学習がしやすくなった」と話す。 中間まとめ案は、デジタル化進展に伴う新たな学びの実現のため、教科書の在り方として紙とデジタルのほか、両者を組み合わせたハイブリッドも提示。一例として、英語では長文を紙に掲載し、音声をデジタルにすることなどを挙げた。 学校現場では依然、紙での学びを重視する声もあることを考慮した形で、文部科学省幹部は「紙とデジタルどちらかを迫るものでは決してない。ハイブリッドは有力な選択肢となる」と話す。 ▼創意工夫 だが教科書会社には困惑も広がる。既に紙の教科書でも、2次元コード(QRコード)が増加。その先のデジタル教材の質と量が採択に影響するとして、各社が拡充を競っているのが実情だ。 今後は紙だけでなく、デジタルやハイブリッドでも創意工夫が求められ、それだけコストもかさむ。14日の作業部会では業界団体から「コストを転嫁できない」として、国が定める価格上限の見直しを求める意見もあった。ある教科書会社の担当者は「力を入れられるのは、予算が豊富で体力がある会社だけだ」と声を落とす。 予算の都合上、一人一人に紙、デジタル、ハイブリッドの全教科書を無償供与することは現実的ではなく、各教育委員会は導入が見込まれる30年度から、どれを使うか選択することになる。 神奈川県内の市立小の30代男性教諭は、デジタル化への対応は学校や教員によって差があると指摘。「タブレットを使わず紙だけの先生もかなりおり、現場は混乱するかもしれない」と話す。 文科省幹部も「デジタルを使いこなせるかどうかは、教員の力量によるところが大きい」と認める。その上で「どこの学校にいても子どもたちに差が生じないよう、指導力向上の策はしっかり検討していく」とした。 ![]() |
米国の総合大学の日本校「テンプル大ジャパンキャンパス」(東京都)と京都府、京都市が14日、連携協定を締結した。テンプル大は今年、同市伏見区にサテライトキャンパスを開設しており、府内の小中高生の英語学習を大学生が支援するなど、教育や観光分野で交流を進めるという。 テンプル大はペンシルベニア州立で、1884年創立。1982年に東京都にジャパンキャンパスを開校し、現在は大学院生を含め約2800人が学ぶ。今年1月、国内2拠点目を旧京都聖母女学院短期大の建物に設け、東京で学ぶ学生ら約100人が一般教養などの学習で利用している。 連携協定は大学側から提案した。具体的には、小中高校への大学生の派遣、英語教諭を対象としたスキルアップ研修や、ホテルなど観光関連事業者での大学生の職業体験実施などを検討しているという。 市役所であった締結式で、西脇隆俊知事、松井孝治市長と協定書を交わしたジャパンキャンパスのマシユー・ウィルソン学長は「グローバルな視野を持つ人材育成を進めたい」と話し、松井市長は「学生が住んでいただくことで地域の刺激になり、文化交流ができる」と意義を語った。 ![]() |
忙しすぎる教員の負担軽減や、なり手不足の根本的な対策とは言い難い。 政府は、公立小中学校の教員に、残業代の代わりに支給している「教職調整額」を基本給の4%から段階的に引き上げることを柱とした教員給与特別措置法(給特法)改正案など関連法案をまとめ、国会に提出した。 2026年1月から毎年1%ずつ引き上げ、31年に10%とする。 調整額は1972年の給特法施行以来、半世紀余り据え置かれてきた。教員の勤務時間は把握が難しいとして、当時の平均残業時間の月8時間相当が続く。 だが、昨年度の月平均残業時間が上限の45時間を超えた教諭は小学校で2割超、中学校で4割に上る。過労死ラインとされる80時間超も中学校で8%いた。現実との乖離は大きく、代償にもなりえていなかった。 法案は併せて、教育委員会に教員の業務量や勤務時間の適正化といった働き方改革の実施計画の策定と公表を義務付けるとした。 ただ、「定額働かせ放題」と批判の強い調整額の枠組みが維持されたままで、長時間労働の抜本是正につながるかは疑問だ。 見直しに向け、現場からは調整額廃止を求める声が強かったが、残業代支給に伴う予算増に財務省が難色。文部科学省が求めた調整額13%への引き上げも、削られた経緯がある。 政府方針では残業時間を5年間で約3割減らし、月30時間程度との目標を定めたが、具体策は示されていない。罰則がなく、管理職に残業を抑制する動機が働かないとの指摘もある。京都教職員組合が府南部の一部学校で実施したアンケートでは、「勤務実態に見合った残業代」より「定時退勤」を望む教職員が2倍に上った。 教員の長時間労働は「やりがい搾取」「ブラック職場」と揶揄され、なり手不足の要因となっている。全国で志願倍率が1倍ににと どまる教委が増え、質の低下が懸念される。 精神疾患で休職する教員は2023年度で7千入超と過去最多になった。京都府は81人、滋賀県は73人、京都市は86人に上った。 過重な業務量を減らし、人員増による負担軽減が急務だ。現場任せでは限界があり、文科省は授業数の削減や事務作業を担う支援員 の増員などに踏み込むべきではないか。教員の心身の健康を守ることが、教育の充実につながることを忘れてはならない。 ![]() |
京都府人権尊重の共生社会づくり条例案が、府議会2月定例会に提出された。昨年12月の骨子案には、複数 の市民団体やパブリックコメント(意見公募)で実効性のある差別禁止規定などを盛り込むよう要望が上がっ ていたが、提案された条例案はほぼ骨子案通りの内容となった。(三鼓慎太郎) 条例案では「人権尊重の共生社会」実現のため府民と事業者に対し、理解や協力するよう努力義務を課した。「差別禁止」や「罰則」などの定めはない理念条例とした。 条例案策定にあたって昨年12月から今年1月に実施したパブコメでは、「差別を許さないという視点を入れて」など97の個人・団体から225件の意見が集まった。在日コリアンの人権問題に取り組む市民団体などからも「ヘイトスピーチの抑止にならない」と、朝鮮学校襲撃やウトロ放火など京都で起きた事件について記載するよう声が上がっていた。 府によると提案した条例案ではパブコメを参考に、「人権尊重の共生社会づくり」について、「人権、信条、性別、社会的身分、門地等により不当に差別されることなく、かけがえのない個人として相互に人権を尊重し合いながら支え合う」などと定義付けたという。 府は「ヘイトスピーチは許されないが、今回の条例は特定の課題に焦点を当てたものではなく、『人権尊重の共生社会づくり』に向けた機運醸成が目的」と理解を求めた。 市民らでつくる「住民自治で差別を許さない人権条例を求める市民有志の会」が、京都府人権尊重の共生社会づくり条例案の修正を求め、府に対し要望書と2211筆の署名を提出した。 要望書では、条例案が府内で過去にヘイトクライムの被害に遭った当事者の声を聞かずに作られたことや、パブコメの期間が年末年始を挟み短かったことなど制定過程を問題視。被害者の声を聞く場の設置や条例案に差別を許さない姿勢を明記するよう訴えた。12日、要望書などを提出した同会世話人の蒔田直子さん=京都市左京区=は「条例案をいったん取り下げ修正し、提案し直してほしい」と訴えた。 ![]() |
私立京都成章高(京都市西京区)で有期雇用の常勤講師だった40代男性が、無期雇用への転換直後に事務職に配置転換されたことなどは不当だとして、同高を運営する学校法人「明徳学園」に地位確認と約1490万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、京都地裁であった。斎藤聡裁判長は、専任教員と同じ業務を担っていたのに賃金が低いのは違法と認め、約45O万円の支払いを命じた。地位確認の訴えは却下した。 判決によると、男性は2010年4月に契約期間1年の常勤講師として採用された。22年2月に無期転換を申し込み、4月から無期契約となったが、事務職員への配転を命じられた。 斎藤裁判長は、男性が常勤講師だった時期は正規雇用の専任教員との間に明らかな職務内容の差はなかったと判断。不合理な賃金格差を禁じる労働契約法などに反するとし、消滅時効が完成していない19年以降の賃金差の支払いを命じた。 一方、採用時に職種を限定する合意はなかったなどとして、配転は有効と結論付けた。 男性は会見で「配転が有効とされ、不満が残るが、専任教員とほぼ同じ仕事をしていたと認められたことはうれしい」と述べた。私立学校の教員でつくる「私学教員ユニオン 」(東京)の佐藤学代表は、「学校がコストカットを狙い、賃金の低い講師に正規教員と同様の働き方をさせる動きが広がっている。判決が差別解消に向けた大きな転換点になってほしい」と評価した。 明徳学園は「判決内容を精査した上で、控訴するかどうか判断したい」とコメントした。 教員の賃金を巡っては、公立の学校も私立と同様の問題をはらんでいる。京都府の場合、職務レベルの区分が、非正規の講師は正規教員の教諭に比べて低く、給与面にも大きく反映されている。 文部科学省の2024年度調査によると、京都府(京都市除く)の公立小中学校の非正規教員の割合は12・7%を占める。京都教職員 組合の中野宏之執行委員長(62)は「小学校の場合、講師でも教諭でも同様に担任を持つ。仕事内容はほとんど変わらないにもかかわらず、経験年数が同じでも月給に数万円の差が生まれる。講師は有期契約で雇用が不安定で、校長から『来年は来なくてもいい』と告げられると仕事を失ってしまう」と問題点を指摘する。 同組合は、講師も経験年数にかかわらず、教諭と同様の職務レベルの区分にすることや、有期雇用契約を無期に転換することなどを求めている。 ![]() |
日本のサケ漁獲数の大半を占める北海道で深刻な不漁が続いている。北海道によると、最多の2003年は5647万匹だったが近年は3割ほどに落ち込み、24年は記録が残る1989年以降で2番目に少ない1562万匹。研究者は、温暖化の影響でサケが回遊中の食料争いに敗れ、放流された川に帰れなくなっているといい「このままでは来世紀には日本のサケがいなくなる」と警鐘を鳴らす。 観光客や近隣住民でにぎわう札幌市中央区の二条市場。海産物販売店「マルイチ水産」は今冬、サケの加工食品「さけとば」を2割値上げした。「10年以上値段を据え置いていたが、この不漁では仕方ない」。店長沼畑桂さん(57)はあきらめ顔だ。他店の男性従業員(75)は、イクラに例年の3倍の値段を付けることもあるとし「『今シーズンは控える』という客もいる」とこぼす。 日本のサケ漁は、卵を人工ふ化させて放流する事業が軌道に乗り、90〜00年代にかけて最盛期を迎えた。北海道や東北地方で放流された稚魚は春ごろ海へ出て、夏まで沿岸部で過ごす。秋になると北方のオホーツク海に移動し、その後はベーリング海、アラスカ沖と季節ごとに移動を繰り返しながら成長し、4年ほどで日本へ帰ってくる。 食料争いに敗北か このサイクルに異変が生じている。北海道大の帰山雅秀名誉教授(海洋生態学)の研究によると、温暖化による海水温上昇で、低水温を好むカラフトマスがベーリング海で急増。サケと同じ動物プランクトンを食べるため、サケが食料争いに敗れ、成長できずに数を減らしているという。 回帰するサケが減り、人工ふ化させる卵も確保しづらくなってきた。岩手県さけ・ます増殖協会(盛岡市)は、23年度にふ化させた約6千万個の卵のうち、約4千万個を北海道から譲り受けていたが、道内の卵不足で、24年度の譲り受けはゼロになったという。 漁業者も手をこまねいてばかりではない。同協会は22年度から、放流する稚魚のサイズを従来の約2倍の2〜3グラム程度とした。放流前に成長させた方が生存率が高いと見込んだためだといい、担当者は「結果が分かるまでには数年かかるが、できることからやってみなくては」と話す。 根本原因に温暖化 帰山氏は、こうした取り組みは一定の効果があり得るとみる。一方で、温暖化という根本の原因を解決しない限り、サケの減少傾向を食い止めることは難しいとも指摘。「漁業資源が確保できないというレベルにとどまらず、種の保存が危ぶまれるほどの事態だと捉えてほしい」と訴えた。 ![]() |
今季一番の寒気が居座り続け、日本の広い範囲を大雪が襲った。寒気の強さや広がり、期間の長さを総合すると「数年に1度」(気象庁幹部)の事態で、災害救助法が適用された自治体も出た。各地で除雪に追われ、住人らからは疲弊の声が上がる。専門家は高い海面水温など 地球温暖化が影響したとし、今後も起こる恐れがあると警鐘を鳴らす。 「これほど長く降り続くとは」。富山県朝日町の担当者は驚きを隠さない。4日から積雪が急増し、一時は74センチと平年の6倍以上に。水をまく消雪装置だけでは対応しきれず、集落の孤立を懸念して除雪車を出動させた。 偏西風が蛇行 気象庁によると、広く大雪となったのは、偏西風が日本付近で南に大きく蛇行し、北からの冷たい空気が南下したためだ。冬型の気圧配置が強まり、大雪の目安となる上空約1500メートルで氷点下9度以下の寒気が日本の多くを覆った。 強い寒気が日本海を通ると雪雲が発達しやすく、陸地では雲の中の雪が解けないまま地上に達する。普段は雪が少ない地域でも降った他、大陸からの冷たい風が合流してできる日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)による雪雲が流れ込み、日本海側に局地的な大雪をもたらした。 北日本付近の上空には低気圧の一種の「寒冷渦」が発生。偏西風の流れから外れているためなかなか動かず、日本に寒気を呼び込み続けた。 まれなリスク 気象庁などが2020年に公表した日本の気候変動に関する報告書は、地球温暖化が進むと雨になることが増えるため多くの地域で雪は減る、と予測する一方で「平均的な降雪量が減少したとしても、ごくまれに降る大雪のリスクが低下するとは限らない」とする。 日本海の海面水温は平年より3度以上高い場所も目立ち、三重大の立花義裕教授(気象学)は、多くの水蒸気が供給され、雪雲の発達が促されたと指摘する。昨年の夏や秋の記録的な高温により海が温められたことなどが背景にあるという。 北極付近の気温が上がれば偏西風の流れが遅くなり蛇行しやすくなる、との見方も示した上で「温暖化により、今回のような大雪が起きやすくなる」と強調。二酸化炭素(CO2)の排出削減に取り組まなければ「夏だけでなく冬も災害の危険が高まと認識し、政府は対策を進めるべきだ」と述べた。 ![]() |
【ブリュッセル共同】トランプ米大統領が国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)職員らに制裁を科す大統領令に署名したことを受 け、ICCの赤根智子所長は7日「裁判所の独立性と公平性を損ない、罪のない犠牲者から正義と希望を奪うことを求めるものだ。断固拒否する」と非難する声明を発表した。 フランスやドイツ、英国など約80力国も7日「国際的な法の支配を脅かすものだ」と批判する共同声明を出した。国連のハク事務総長副報道官は国際社会とって「ICCは不可欠で、独立性が認められなければならない」と反発した。赤根氏はICC職員が「管轄権の範囲内で特定の個人の行為が国際犯罪に当たるかどうかを判断する任務に日々取り組んでいる」と強調し「世界の全ての国にICC擁護で団結することを呼びかける」と訴えた。ロイター通信はカーン主任検察官が最初の制裁対象になる見通しだと報じた。 ![]() |
「昼食の持ち込みはパンかおにぎりのみとする」「ヘアゴムの色は目立たない色とする」−。「ブラック校則」とまでは言えなくとも、必要以上に行動を制限したり、合理的な理由が説明しづらかったりする校則を生徒たちが主体となって見直す動きが京都市立中学校で活発化している。各学校は、生徒たちが話し合いで自分たちのルールを決めるという作業に教育的な意味合いを見いだしているようだ。(岡本早苗) 昨年12月24日に京都市西京区役所で開かれた区内8市立中の生徒会交流会。各校の生徒指導担当の教員が作成した校則の例文資料を基に、生徒が意見を交わした。憲法に前文があるように、校則にも前文がある方がよい、と考えた教員が「学校はさまざまな生徒の共生の場であり、安心して学ぶために校則が必要だ」との趣旨の前文も示した。服装や校内でのルールも記した。 社会に合わせ改善 生徒からは「前文にある『校則を守ることで(中略)たくましい人間に育っていけるはずです』という一文は押し付けがましく感じる」 「『華美ではないもの』という書き方だと、何がよくて何がだめなのかの境界が分かりにくい」「『安心して過ごせる服装・行動を自己判断』としながら、『整髪料は禁止』とするのは、矛盾していないか」などと、活発な意見が出た。大枝中3年岩崎夕稀さん(15)は「生徒総会で話し合い、靴下や髪ゴムの色指定をなくした。今後も社会の変化に合わせて校則を改善していければ」と話した。 議論を見守っていた大原野中の宇野宏文校長は「自分が中学生のころは生徒が校則をつくるなんて考えられなかった。自分たちで校則を考える経験をした生徒たちが大人になった時、どんな社会になるのか楽しみだ」と語った。 市教委「考え方」公表 全国で校則の見直しが広がったきっかけの一つが、2017年に大阪府立高生が地毛の黒染めを強要されたとして府を提訴したことだった。「ブラック校則」が話題になり、文部科学省は21年6月、各教育委員会に校則の内容を点検するよう通知。22年には教員用の生徒指導の手引き「生徒指導提要」が改訂された。京都市教委は市立小中高の校則や学校の決まりをホームページで順次公表し、24年4月に「校則の制定や見直しについての基本的な考え方」をまとめた。 基本的な考え方によると、校則を見直す際の確認のポイントは、学校教育目標や目指す生徒像に沿っているか▽人権や多様な価値観に配慮できているか▽健康や安全面に配慮ができているか▽社会通念に照らして合理的な制定理由があるか▽あいまいな表現や分かりにくいもの、細かすぎるもの、不必要に限定する表現がないか―の5点。 具体的には「男子はスラックス、女子はスカート」「女子の長い髪は結ぶ」といった性別に基づく決まりや、「ひざかけは教室でのみ使用できる」「下着の色は白とする」など合理的な理由が説明しにくい表現を改めるよう助言した。見直しに向けた生徒の意見集約については、継続的に実施する必要性も言及している。 校則の見直しを巡っては、当初は教職員や地域住民から、ルールが緩くなると秩序が乱れるのではないかと心配する声もあったが、市教委生徒指導課の水野博之首席指導主事は「ルールを決めてほしいという声が生徒側から出てくることもあり、一概に校則をなくすという動きにはなっていない。生徒たちが自分たちで決め、それが尊重される経験は学習活動上、有意義だ」と強調する。 黒子の先生は必要 京都教育大の片山紀子教授(生徒指導)は「校則作りに積極的に関わることで、子どもたちは民主主義を学ぶことができるし、校則を守ろうという気持ちも芽生える。そこに生徒たちによる自己決定というプロセスが組み込まれているからだ。ただ、経験が少ない中学生にとっては難しい面もあり、先生たちが黒子となってサポートすることが大切だ。保護者に説明する際も子どもたちが決めた校則ということであれば説得力も増すだろう」と話している。 ![]() |
政府は7日、教員の処遇改善や長時間労働是正に向けた教員給与特別措置法(給特法)改正案など関連法案を閣議決定した。公立学校教員に残業代の代わりに基本給の4%相当を支給している「教職調整額」を2026年1月から毎年1%ずつ引き上げ、31年1月に10%とする。1972年の給特法施行以来、増額は初。 負担が重い学級担任への手当も加算し、深刻ななり手不足の解消を目指す。また、新たな職位として、若手のサポートや学校内外の関係者との調整役を担う「主務教諭」を設ける。 常態化する長時間労働の是正に向けては、26年度から教育委員会に対し、教員の業務量や勤務時間の適正化といった働き方改革の実施計画の策定と公表を義務付ける。計画の実施状況の公表も義務化し、自治体の首長と教委で構成する「総合教育会議」に報告する。 阿部俊子文部科学相は、閣議後記者会見で「国会の審議を通じて内容や必要性を丁寧に説明し、速やかな成立を目指したい」と述べた。 京都市の2025年度一般会計当初予算案のうち市教育委員会分は、1126億500万円が計上された。今春開校する洛西陵明小中(西京区)の整備が終わった影響などで、前年度比3・5%減となった。 新規事業として、教職員がやりがいのある職場で働けるよう環境整備に取りかかる。学校業務を精査するための実態把握のほか、教職員のウェルビーイング(幸福)の調査と分析にかかる費用に6千万円を充てた。 図書館に求められる新たな機能を探るために、誰もが快適に過ごせる空問つくりを一部図書館で試行、効果を検証をする。図書館に関する市民の意識調査のため、1500万円を計上した。 引き続き取り組む中学校の部活動地域展開には900万円を充てて、休日に限定した取り組みを平日にも拡大させる。市内10力所程度で、学校の管理外で生徒が参加できる仕組みづくりも始める。 ![]() |
将来の夢の実現を目指すための海外留学を支援する府教育委員会の事業「海外探Q留学」が2024年度に始まった。留学費用の一部を府教委が補助する仕組みを活用し、20人の高校生が海外に飛び出し、スポーツの技能を高めたり、環境保護活動に携わったりした。 同事業が支援の対象とするのは、企業・大学訪問、インターンシップ▽環境活動・ボランティア▽スポーツ・芸術―で、留学期間は7月〜1月末まで1〜6週間以内。定員は20人程度で、留学費用のうち最大30万円、経済的に厳しい家庭については最大60万円を補助する。高校生を対象とした語学留学以外の支援制度は珍しいという。 24年度に制度を活用して渡航した生徒20人は、アメリカやカナダ、カンボジア、フィリピンなど計8力国に渡った。多くの生徒は留学費用の総額が60〜100万円だった。 ケニアのサバンナで環境保護活動を行った洛北高2年の河野一輝さん(17)は、野生のキリンや野鳥の個体調査や植林などを経験。「環 境保護といえば、人間が積極的に関与するものだと思っていたが、現地では見守る程度で自然に委ねて驚いた」と経験を語った。プロのダンサーになる夢に向けて、本場の米ロサンゼルスで技術を学んだ綾部高2年の鈴木悠輝さん(17)は「基礎から習得する日本とは違い『まず、やってみよう』というスタイルに驚いた。ダンスで自分をより表現できるようになった」と自身の成長に胸を張った。 このほか、フェンシングの五輪選手を目指して米国で行われた合宿に参加したり、フィジーで防災対策について関係者にインタビューを実施したりした活動もあった。 府教委高校教育課は「やりたいことを自分で決めて渡航することに意義がある。自分で決めたことだからつらい事があっても努力する。この留学を通じて、夢をかなえる手助けをしたい。誰にも夢はあるはずだ。海外体験で価値観を揺さぶり、人間的にも成長してほしい」としている。 京都市教委も来年度から、府市協調でグローバルな人材育成に取り組むため、市立高生を対象に同支援制度を創設する。 ![]() |
誰のため、何を目指し、どんな影響があるのか。継続する財源はあるのか。党利党略でなく、大局的な視点での議論を求めたい。 高校の授業料無償化を巡る協議が、自民、公明両党と日本維新の会で続いている。 所得制限のない高校授業料の無償化を看板政策に掲げる維新が、2025年度の予算案を賛成する条件として実現を求める。 与党は段階的に実質無償化となる所得制限の撤廃案を提示したが、維新がこだわるのは私立高も含めた早期の「完全無償化」だ。子どもの希望や能力に応じ、進学先を選択できる機会が広がると主張する。物価高が続く中、家計の負担軽減にもつながるという。 経済格差を埋める無償化は、国が一定進めてきた。公立高に子が通う年収910万円未満の世帯を対象とし、授業料に相当する年11万8800円を支援。私立高(全日制)も同額で、さらに年収590万円未満の世帯に39万6千円を上限に助成する。所得制限による対象外は3割弱という。 完全無償化で新たに恩恵を受けるのは高所得者層であり、高額な私学授業料を賄う予算がかさむ。 浮いた費用を塾代に回し、教育格差が拡大するとの懸念もある。私立の中には同族経営や企業の系列などもあり、一律に公費投入を増やすのが妥当なのか。 維新の吉村洋文代表が知事を務める大阪府や、東京都が独自に始めた完全無償化は、その余波が広がっている。大阪では私立高を第1希望とする志願者が過去20年で初めて3割を超え、府立高の約半数が定員割れに陥った。東京でも都立高の志願者が減っている。 同じ無償ならばと、特色ある教育や施設環境を整えた私立への希望者が増えたようだ。私立は大阪市や京都市など都市部に集中しており、地方から生徒が流出し、過疎に拍車をかける恐れがある。公立高の再編や中学受験の過熱にもつながりかねない。 全国で完全無償化を実施するには年約6千億円が必要とされるが、恒久財源を確保する見通しも立っていない。 今夏の参院選に向けた党の実績づくりで拙速に進めるようなら、将来に禍根を残すだろう。 維新は立憲民主、国民民主の3党で公立小中学校の給食費を無償化する法案を出している。年5千億円近くを要する。限られた財源の中、子どもの貧困や格差の是正を目指すなら、まずこちらの実現を最優先にしてはどうか。 ![]() |
京都府と京都市の両教育委員会は6日、2025年度の府内公立高入試前期選抜の志願状況を発表した。全日制の志願倍率は平均2・00倍で、前年度より0・02ポイント下がり、過去最低を更新した。少子化による影響のほか、広域通信制高の人気拡大が主な要因とみている。 前期選抜は全日制と定時制の計58校(学舎・分校含む)が実施する。各学科の定員のうち前期選抜が占める割合は、おおむね普通科は30%、職業学科・総合学科は70%、堀川・西京・嵯峨野などの普通科系専門学科は100%。全日制の募集人員は前年度比58人減の5249人で、志願者は1万496人だった。定時制は40人を募集し、19人が志願した。府内の公立中学卒業予定者は前年度より442人少ない1万8459人で、このうち、全日制・定時制の前期選抜志願者の合計は57・0%と前年度と変わらなかった。 全日制の学科別の倍率は、普通科2・49倍(前年度2・54倍)、専門学科1・49倍(1・48倍)、総合学科0・95倍(1・01倍)だった。最も倍率の高かったのは、鴨折普通科・A方式1型の5・98倍で、田辺普通科・A方式の5・43倍、日吉ヶ丘普通科・A方式4・92倍、桂普通科・A 方式の4・86倍、山城普通科・A方式1型4・83倍と続いた。志願倍率が1倍を下回る全日制の定員割れは、15校19学科21方式で、前年度の19校24学科25方式からやや減った。 26年度の京都府立大系属校化が決まっ。ている農芸高の前期志願者は前年度より16人多い70人、北桑田が普通科と京都フォレスト科を 合わせて3人多い37人で、それぞれ増やした。府教委は「特に少子化の影響が大きい北桑田はよく踏ん張った。系属校効果が表れているのではないか」としている。 試験は京都堀川音楽を除いて17,18日に実施され、合格発表は25日にある。 ![]() |
「平和を構築する仲裁者」を自任するトランプ米大統領が4日、パレスチナ自治区ガザを長期所有するという「驚愕の構想」(米メディア)をぷち上げた。デンマーク自治領グリーンランド購入などの主張と同様に唐突感は否めず、実現性に加えて「平和なガザ」につながるのかどうかも不明だ。住民を置き去りにした姿勢に、ガザでは反感が広がる。 「住民がガザに戻るのは代替策がないからだ」。4日夕、ホワイトハウスの一室。トランプ氏は、イスラエルのネタニヤフ首相と会談後の共同記者会見で、ガザ住民を域外の安全な場所に再定住させ、荒廃した市街地が再び住めるようになるまで米国が「長期的に保有」すると突然表明した。 色めき立つ記者から、ガザ復興後に住民の帰還を想定しているのかどうか問われると「世界中の人々が住むことになると思い描いている」と回答。ガザ住民や周辺国からも支持を得ちれると強気を貫いた。 これに先立ちトランプ氏は、イスラエルの敵国イランへの「最大限の圧力」政策を復活させる大統領覚書にも署名。ネタニヤフ氏は「イスラエルにとって最高の友人だ」と破顔。イスラエルメディアは訪米について「大勝利」だと報じた。 1期目同様、トランプ氏が露骨にイスラエルに肩入れする背景には、イスラエル支援を信仰上の義務と捉え、昨年の大統領纒での圧勝を下支えしたキリスト教福音派の期待に応えたいとの思考があるとみられる。 就任後、グリーンランド購入やパナマ運河の管理権奪回、カナダを51番目の州にするという突拍子もない構想を示してきたが、一部で成果が出つつあることが影響した可能性も。パナマは中国を危険視するトランプ氏に譲歩し、中国の構想「一帯一路」から離脱する意向を示した。 親イスラエル政策を進めてきたトランプ氏は同国で抜群の人気を誇る。不安定な政治基盤に苦しむネタニヤフ氏には、トランプ氏という後ろ盾を得て求心力を高めたいとの考えがあり、蜜月関係の誇示には双方の思惑が一致した。 トランプ氏が今回の構想を事前にパレスチナ自治政府や周辺のアラブ諸国に打診した形跡はない。中東和平の仲介役を務めてきた歴代米政権の姿勢を逸脱した発言には波紋が広がる。 15ヵ月以上に及んだガザの戦闘は1月19日に停戦合意が発効し、恒久停戦に向けた交渉は始まったばかり。イスラエルとイスラム組織ハマスの相互不信は根強く、「ガザ所有」と「住民の移住」を訴えたトランプ氏の発言で、交渉を仲介してきた米国への信頼が失墜する恐れもある。 ガザでは、歴史も住民も顧みない発言に戸惑いと怒りの声が噴出。北部ガザ市のソウラニさん(45)は、「トランプ氏はガザが地獄だと言うが、米国の武器もガザを破壊した」と憤る。 ガザには1948年のイスラエル建国で発生した難民も多く住んでいる。「さらにどこかへ移住しろと言うのか。トランプ氏は人の気持ちや郷土に対する理解が全くない」と非難した。(ワシントン共同) ![]() |
大手企業を中心にバブル期並みの賃上げがあった2024年も、実質賃金はプラスに届かなかった。プラス転換を阻んだ物価高は、低賃金で働く人々の家計を圧迫し続ける。非正規労働者でつくる団体は「最重要の社会的課題」と訴えて賃上げを求めている。 「この先の生活がとても不安」。大手輸送会社のパート女性(59)はため息をつく。女性は横浜市内の配送拠点でパートとして1日5時間、週5日働いているが、24年に上がった時給は3円。暖房の設定温度を20度から18度に下げ、食品は少しでも安いものを選ぶ。「頑張りたい と思えるよう、もっと時給を上げてほしい」と話した。 厚生労働省の5日の発表では、パートタイム労働者の給与も過去最高の3・8%の伸びだった。しかし、アルバイトや契約社員らが個人で加盟する労働組合28団体が行った調査では、53・1%が24年4月から賃金が上がっていないと答えた。 大手と比べ、中小零細ではパートの賃上げに消極的な企業も多かったとみられる。首都圏青年ユニオンの尾林哲矢執行委員長は東京都内で開いた記者会見で「非正規の賃金底上げは最重要の社会的課題だ」と強調した。 政府が「物価高に負けない賃上げの実現」を掲げ、24年の春闘では大手、中小を含め賃上げに踏みる企業が相次いだ。 しかし厚労省が毎月発表する勤労統計調査で、5人以上の事業所の基本給など「所定内給与」を前年同月比で見ると、最高は12月の2・7%増。消費者物価指数の上昇率を上回ることは一度もなかった。政府関係者は「円安が続いたのが誤算だった」と振り返る。 今年の春闘では「雇用を支える中小企業が鍵になる」(経済同友会の新浪剛史代表幹事)とされる。石破茂首相も「昨年の勢いで大幅な賃上げを促す」と強気だが、これまでの賃上げで中小企業には息切れ感も漂う。 実質賃金は24年、ボーナス支給の底上げ効果があった月しかプラスに届かなかった。今後安定的にプラスを維持するには、中小企業や非正規労働者の賃上げが欠かせない。法政大経営大学院の山田久教授(労働経済)は全体として緩やかな改善傾向は続くと見るが「生活向上を実感できるにはまだ道半ば。プラス定着ははっきりしない」。 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、賃上げの伸びしろは限定的で既に壁に直面していると分析する。「政府も企業も賃上げを叫んでいるが、それほど上がりそうもない。行き過ぎた円安を修正して、物価上昇率が徐々に下がっていくことが重要だ」と話した。 ![]() |
7年前に活動を終えた在日コリアンのための識字教室「オモニハッキヨ」で使われていた教材が、自主夜間学校「いいあす京都」(京都市北区)へ託された。学びの機会を奪われた人たちが日本語を読み書きできるように、と手作りされたテキストには、識字教育を巡る京の市民活動の歩みが詰まっている。先達の精神を受け継いだ夜間学校は「学ぶ場がある大切さを再認識した」と思いを新たにしている。 朝鮮の言葉で「お母さんの学校」を意味するオモニハッキヨは、有志の若者らによって1978年に南区東九条で始まった。日本の植 民地支配を背景に渡日し、貧困と労働に追われて日本語が満足に読み書きできなかった在日コリアン1世や2世が通った。一方、生徒数は減り、2018年、40年の活動に幕を閉じた。 当時、利用されたテキストはプリント形式で習熟度別にファイルにまとめられている。朝鮮の民話や戦後も日本で暮らした経過の聞き取り記録、東日本大震災のリポートなど、きまざまな事例を題材にした文章が並び、文中の漢字には読み仮名が振られている。いずれもボランティアが手書きで仕上げた。 テキストを通じ、文字を学んだオモニたちからは、「広告看板の意味が理解できるようになり、うれしくて踊り出した」「目的地とするバスの停留所が分かり、どこでも行先を選べるようになった」などの声が寄せられたという。教え手だった蒔田直子さん(70)=左京区=は「識字を通じて差別を跳ね返し、自由を手にする喜びを一緒に実感してきた」と振り返る。 教材をはじめ、「字がよめることは よの中が明るくなります」と当時の「生徒」が記した作文や活動写真などの資料は、活動終了後、地域の集会所「マダンセンター」で保管されてきた。ただ、活用の機会はなく、代表だった地元の音楽家・朴実さん(81)が「生きた教材としていいあす京都で使ってほしい」と願い、1月に引き継がれた。 誰でも自由に通えるいいあす京都は23年5月、府部落解放センターを会場に開校した。不登校の生徒や日本語に不慣れな外国人、十 分な教育を受けられなかった高齢者らが在籍し、大学生ら講師と互いに学びの大切さをかみしめている。川端宏幸代表(63)は「学びの意義を追求したオモニハッキヨの精神は私たちの活動に通じる。よりよい社会を切り開こうとした思いを受け継ぎたい」と話す。 寄贈された教材ファイル約90冊は今後、日本語を学ぶ人の授業で活用する。託された他の関連資料は、京都部落問題研究資料センター(北区)で公開する。 ![]() |
海藻を増やして地球温暖化を防ごう―。京都府は新年度、海藻などが茂る藻場の保全活動に初めて乗り出す。海水温の上昇で藻場は減少傾向にあり、海藻などが吸収する炭素「ブルーカーボン」をクレジット(排出枠)として企業に売買し、その収益を使って保全活動に取り組むことで、生態系の保全と二酸化炭素(CO2)削減の「一石二鳥」を目指す。 府によると、ワカメやアカモクなどが茂る藻場は減っており、海水温の上昇でガンガゼなど南方のウニが増え、海藻の食害も相次いでいる。藻場は魚やタコなどのすみかや産卵場所になっており、昨秋には府内の漁業者から「タコがとれない」との声も上がっていたという。 ブルーカーボンは森林に比べて吸収率が高く、CO2を長期間蓄積できるため、藻場の増加は地球温暖化防止にも役立つ。ブルーカーボンをクレジットとして企業間で売買する排出量取引は全国で広がっており、府も取り組みを始めることにした。 新年度は舞鶴市、宮津市、京丹後市、伊根町、、府内の漁協などと地域協議会を立ち上げ、藻場の生育状況調査や海藻種苗の投入、海藻を食害するウニなどの除去を行う。魚や海藻を食べて支援する「ブルーシーフード」の普及活動にも取り組む。3年間は府が財政支援し、 2028年度からは地域協議会がブルーカーボンの売却益を基に、自律的に運営できるようにする。 25年度一般会計当初予算案に500万円を計上した。厳しい財政状況の下、財源は企業版ふるさと納税の寄付のみといい、府水産課の担当者は「今後も取り組みを続けられるよう、企業の皆さんのご協力をお願いしたい」と支援を求めている。 ![]() |
京都府内唯一の農業専門高である農芸高(南丹市)と、府内唯一の林業専門学科がある北桑田高(京都市右京区京北)は2026年度、京都府立大系属校になる。府立大へ優先的に進学できる「系属校枠」が新たに設定される。系属校化は両校での学びにどのような変化をもたらすのだろうか。山あいにある学びやを訪ねた。 (生田和史) 昨年11月の午後、農芸高では、作業着の生徒が、乳牛に水を浴びせて世話をする姿があった。 「動物資源コース」2年の中村蒼空さん(17)=京都市左京区=は「牛の世話は乳搾り一つとっても奥深く、難しい。世話は同じ作業の連続に見えるが、発情や体調が悪いなどの変化があり、その兆候が分かるようになった」と、同高での実践的な学びに充実感を得ている様子。「大学進学後は酪農家になり、(山で牛を放牧する)山地酪農に取り組みたい」と夢を語った。 同高では1年の2学期から、肉用牛や鶏を飼育する「畜産流通」、米や露地野菜を栽培する「作物」、植物の培養や環境問題などを学ぶ 「生物工学」など八つの専門コースに分かれて、実践的な学びを深めている。 系属校化について、森善彦副校長(57)は「大学の研究的な要素が交わることで、学びの幅が広がる。実践を中心とした学びとの化学反応で、新しい教育が生まれたらうれしい」と期待を寄せる。計画されている研究室訪問や大学教員による授業は、生徒たちがより深い学びを志す動機付けや探究的な学びの充実につながることも期待される。 系属校化されるもう1校の北桑田高は、普通科に加えて、林業を生産から加工まで一貫して学べる「京都フォレスト科」、があるのが大きな特徴だ。 同科3年の柴田一さん(18)は、四国地方の国立大への進学が決まっており、「将来、放置林の解決などについて取り組みたい」と意欲 を見せつつ、系属校化への感想を聞かれると、「大学での学びに触れられるのは面白そう。ただ、実習の授業が減らないようにしてほしい」と在籍校への愛着を語った。同高は人工林、府立大大は天然林をそれぞれ演習林として保有しており、系属校化により双方の資源を生かした学びも視野に入る。 農芸高、北桑田高の両校では系属校化を見据えた教育内容の検討も進んでいる。 北桑田高では、系属枠の対象となっている普通科でも森林に関する学びの時間を増やす予定だ。細尾勝副校長(47)は「森林についての興味関心を引き出すカリキュラム編成にしたい」とする。府立大側からは、普通科に比べて一般教科の学習が少ない専門学科に対して、一定の学力の担保を求められており、京都フォレスト科では、英語や数学の学習を充実させる。農芸高も、夏休みなどを利用して一般教科を多く学べるように工夫するという。 農芸高と北桑田高は定員割れの状況にあり、適正規模を大きく下回る状況が続く。このままでは教育の質の低下も懸念されるが、系属校化で反転攻勢できるのか。 受験生が自由に志望校を選択できる「単独選抜」へ全面移行した2014年度から24年度までの両校の募集定員と合格者数をみると、農芸高は、16年度に定員110人に対し4人の定員割れが生じ、24年度は定員100人に対して合格者数56人だった。北桑田高は14年度、普通科と京都フォレスト科(19年度入試まで森林リサーチ科)を合わせた定員110人に対して合格者数は80人だったが、24年度は定員90人に対し、合格者数は44人と定員割れが拡大している。 多くの生徒が寮で生活する農芸高は、在籍生徒のうち地元の口丹通学圈(亀岡市、南丹市、京丹波町、京都市右京区京北)からの進学者は4割にとどまり、京都市や乙訓地域が5割を超す。昨年11月の府内中3生の進路志望調査では、志望者が増え、明るい兆しもみえた。府立大の教員や学生が滞在できる拠点の整備を府教委に求めているという。湯川佳秀校長(57)は「府内の大学でも農学部の新設が相次いでおり、農や食の分野は伸びしろがある。滞在拠点があれば、より交流が深まる」と期待する。 現在3学年合わせて在籍生徒数約140人の北桑田高は、少人数を逆手に取って、きめ細かな教科指導で難関大への進学に導くなど、生徒の多様なニーズに対応することを心がけているという。地元の京都市右京区京北や南丹市美山町からの進学が現状では6、7割を占めているが、少子化で生徒数の減少が加速しており、田中良泰校長(57)は「これ以上、生徒が減ると教育の質が維持できなくなる」と危機感を隠さない。同 高は、系属校化を進学者の確保につなげるため、JR二条駅からのスクールバス運行や、寮の収容人数の拡大も府教委に要望している。 前川明範・府教育長は昨年12月の取材に対して「高校の魅力化を図るために施設設備などは進めたいと思っているが、府立高全体を見通した中で進めていく」と答えている。 |
発がん性が指摘される有機フツ素化合物(PFAS)を巡り、各地で問題となっている水の汚染について、22道府県が汚染源特定の調査を「すでに実施している」か「検討の意向がある」と回答したことが1日、共同通信のアンケートで分かった。一方、PFASの血中濃度を調べる自治体独自の検査を検討しているところはなかった。国が厳格化にかじを切った水質管理では汚染源特定に5割近くが積極的な姿勢を見せたものの、国が消極的な健康影響の調査には多くが足踏みする現状が明らかになった。 アンケートは47都道府県の水質管理や健康の担当課を対象に、昨年11〜12月に実施。全ての都道府県から回答を得た。 調査を「すでに実施」としたのは京都など17道府県、「検討の意向がある」は滋賀など5県。具体的には「暫定目標値を超過した井戸の周辺の工場に対する使用履歴調査」(福井)や「高濃度かつ継続的に検出された河川の上流へのさかのぼり調査」(京都)との記述があった。「特定に至らなかった」(神奈川)との回答もあった。 調査を「未定」「検討していない」としたのは24県。残りの東京は「該当項目なし」とした。 血液検査は岡山県吉備中央町が昨年公費で初めて実旛し、米国学術機関が健康リスクが高まるとした値を上回った人が8割超との結果が今年1月に明らかになった。ただ今回は「国が血中濃度の基準値などを示していない中で独自に実施するには課題がある」(沖縄)とするなど、国に先行した実施を検討している自治体はゼロだった。 健康被害への懸念では、「ある」「どちらかと言えばある」と答えたのは5県。26府県が「分からない」、11府県が「ない」「どちらかと言えばない」と回答した。そのほかの自治体は明確な回答を示さなかった。 いずれも理由として、国が専門家会合や手引などで、現状では科学的知見が十分ではないとしている点を多くの自治体が指摘。国の動きを注視しているとした。一方で「製造・輸入等の原則禁止が行われている。健康被害の恐れを否定できる状況ではない」(群馬)との意見もあった。 PFASに詳しい群馬大の鯉淵典之教授は健康被害への自治体の姿勢を「まだ後ろ向き」と評価。「予防原則の観点に立つべきだ。住民が正しく理解し、適切にリスクに対処できるような取り組みを進めてほしい」と話した。さらに、血液検査によるデータの蓄積も重要だとした。 ▽アンケ−卜の方法 47都道府県の水質管理や健康の担当課を対象に、2024年11〜12月にオンライン上で実施した。全ての自治体から回答を得た。質問事項はPFASに関する水質調査や汚染源特定、血液検査について、実施または検討の有無や、健康被害への懸念の有無などを選択式と記述式で尋ねた。 一部の選択項目について、東京や北海道など一部自治体は選択肢ではなく「該当項目なし」「回答不可」と個別の回答を寄せた。 有機フツ素化合物(PFAS)が人体に及ぼす影響について、国内の評価や対応は道半ばだ。国の専門機関が初の評価書をまとめたものの、健康リスクへの言及は限定的で、国は対策に二の足を踏む。しかし、海外では発がん性や肝障害などとの関連について踏み込んだ指摘がなされ、水質対策も日本の一歩先を行く。専門家は対応の遅さに苦言を呈する。 内閣府の食品安全委員会は昨年、PFASの影響をとりまとめた評価書を公表した。肝機能への影響や脂質代謝の異常、出生時の体重低下について、関連は否定できないとしたが「証拠が不十分」などと説明。発がん性も、代表的な物質PFOAと腎臓がんなどとの関連を示唆する研究はあるが「証拠は限定的」とするにとどめている。 一方で国際的には影響を積極的に評価する動きが広がる。世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関は2023年、PFOAを4段階中最も高い「発がん性がある」グループに分類した。同じグループにはアスベスト(石綿)も含まれる。欧州環境機関も腎臓がんや肝障害、甲状腺疾患などへの影響を指摘する。 飲料水の基準も海外はより厳しい。米国では昨年4月、PFAS2種類について各1リットル当たり4ナノグラム(ナノは10億分の1)と設定。ドイツは4種類の合計でで同20ナノグラムとする方針だ。日本は2種類合計で1リットル当たり50ナノグラムで、努力義務にとどまる「暫定目標値」から法的な義務を伴う水道法上の「水質基準」の対象にする方針は決まったものの、値には開きがある。 健康影響の評価を巡り、PFASの摂取量を知る手段が血液検査だ。岡山県吉備中央町が実施した全国初の公費検査では、7種類のPFASの合計が平均で1ミリリットル当たり151・5ナノグラムとなった。日本は基準がなく、山本雅則町長は米国学術機関が示した数値と比較し「高い」と指摘。国の対応が必要と訴える。 ただ環境省は人体に影響を与えるメカニズムは解明されておらず、血中濃度に関する基準を定めることは困難との姿勢を崩していない。青木一彦官房副長官も、自治体による血液検査への支援を否定。専門家は「健康への影響が出ると分かった時点では時すでに遅しとなりかねない」と懸念を示す。 ![]() |