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全領土の武力奪還困難(2024/12/3)

地雷除去費 環境債で調達(2024/12/7)

ロシア、エネ施設攻撃(2024/12/14)

ロシア軍中将、爆発で死亡(2024/12/18)

英、ウクライナに派兵示唆(2024/12/22)

無人部隊で「ロ陣地攻略」(2024/12/23)

北朝鮮兵は「訓練不足」(2024/12/24)

北朝鮮兵「塹壕防御任務」(2024/12/26)

NATO加盟で終戦に支持(2025/1/5)

「戦争ではなく訓練に行くと」(2025/1/13)

「制裁逃れ」の貿易活発(2025/1/14)

参戦隠蔽、組織的命令か(2025/1/15)

トランプ氏、ロに停戦圧力(2025/1/24)

米、戦闘凍結を来週提案か(2025/2/7)

「トランプ流」で終戦介入(2025/2/14)

欧米の亀裂「渡りに船」(2025/2/17)

「なぜ招かない」怒り(2025/2/18)

トランプ氏発言「ばかげている」(2025/2/21)

「ヤルタ会談」再現狙う(2025/2/24)

安保理「紛争終結」初決議(2025/2/25)

ロシア寄りの米 圧力続けて成果(2025/2/27)

子ども2万人、「ロシア化」教育(2025/2/27)

米ウクライナ首脳決裂(2025/3/2)

英仏、仲介も前途多難(2025/3/4)

段階的停戦案を初提示(2025/3/6)

仏「核の傘」で欧州防衛(2025/3/7)

ウクライナ、支援再開要請へ(2025/3/12)


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全領土の武力奪還困難(2024/12/3 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、首都キーウ(キエフ)で共同通信と単独会見した。ロシアが2014年に併合したクリミア半島を含む一部の占領地について、武力での奪還が困難だと率直に認め、外交で全領土回復を目指す必要があると述べた。全領土奪還を掲げ抗戦を続けてきたが、欧米の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)加盟が確約され、ロシアの侵略を抑止する環境が整えば一部領土は戦闘終結後に交渉で取り戻すことを容認する方針に転換した。

 東部でロシア軍が前進し、戦況は極めて厳しいとの認識を表明。「わが軍はクリミアなどの一部領土を奪い返す力が欠けている。これは真実だ。外交解決を探らなければならない」と語った。同時に「ロシアが新たな侵略を仕掛けられないほどウクライナが強くなった時に初めて、外交的手段を考えることができる」と強調した。

 対ロシア戦争の一刻も早い終結を望むとし、ウクライナの安全保障のためNATO早期加盟の道筋を付けることが重要だと強調した。ゼレンスキー氏はNATOに代わってウクライナの安全を守る枠組みは「存在しない」と述べ、加盟交渉入りを強く求めた。

 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟構想に反対し、22年2月に全面侵攻に踏み切ったとされる。ウクライナの最大支援国である米国のトランプ次期大統領の政権移行チームでは、加盟を棚上げする案が検討されており、加盟への道筋は不透明さを増している。

 ゼレンスキー氏はまた、ロシア西部クルスク州に展開中の北朝鮮兵が戦闘で死亡したり負傷したりしていると明らかにした。今後、多数の北朝鮮兵が前線に送り込まれ、ロシア軍の「弾よけ」として使われるのは確実だとの見方を示し、ロ朝が軍事的連携を強める現状に強い懸念を示した。

 日本については、ウクライナを支える米国やドイツと並んで「五大支援国の一つだ」と指摘。「ウクライナは日本が最も困難な時に共にいてくれたことを決して忘れず、絶えず日本と共にある」と強調した。


【解説】劣勢、現実路線にかじ

 ウクライナのゼレンスキー大統領が1日の共同通信との単独会見で、全領土奪還までロシアと徹底して戦い続けるとの旗印を事実上、降ろし た。戦場での劣勢を踏まえ、現実路線にかじを切った。2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以来、戦争遂行に関する最大の方針転換と言える。

 核大国を相手に2年9ヵ月の消耗戦を続けるウクライナは東部戦線でじりじり押し込まれている。ゼレンスキー氏は、ロシアが軍事拠点化を 進めるクリミア半島など一部領土について「奪還する十分な力はない」と認めざるを得なかった。

 各国にウクライナ支援疲れが広がり、水面下で停戦圧力が高まっていることも背景にある。来年1月には早期終戦を唱えるトランプ次期米大 統領が就任し、風当たりがさらに強まる公算が大きい。実現困難な武力での全領土奪還にこだわり続ければ、果てしない戦争を危惧する欧米の支持と支援を失う恐れがある。

 方針転換はトランプ氏に対するメッセージも込められている。ゼレンスキー氏は米国の後押しを受けて北大西洋条約機構(NATO)加盟の 道を確実にした上で、外交により全領土の回復を且指す考えだ。

 ただNATO側では、ロシアとの戦争に巻き込まれる恐れが高まるとして、ウクライナの加盟には否定的な意見が根強い。プーチン大統領が クリミアを話し合いで手放す可能性は限りなく低い。早期終戦の実現は不透明なままだ。(キーウ共同)


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地雷除去費 環境債で調達(2024/12/7 京都新聞)

【キーウ共同】国連開発計画(UNDP)は6日までに、ロシアから侵攻を受けるウクライナの復興に不可欠な地雷除去の資金調達 について、環境保全を目的として投資家から低利で資金を集められる環境債が有効だとする報告書を発表した。農地復興や再生可能エ ネルギー導入と組み合わせることで、経済回復につながると指摘した。

 報告書が勧告した環境債は「サステナビリティー・リンク・ボンド」(SLB)と呼ばれる。一定規模の農地の地雷除去後、耕さずに作物を育てることで環境負荷を低減する農法を展開するなどの具体的な目標を掲げ、西側先進国などから幅広く必要な資金を集めることを目指す。目標未達なら発行体の利払い負担が増すことで達成を促す仕組みだ。

 また、民間資金を活用する官民連携(PPP)方式で、地雷を取り除いた上で太陽光発電施設を建設する案も示した。民間部門は、売電などによる収入から投資資金の回収が期待できるとした。

 報告書によると、今年8年時点でウクライナには国土の約4分の1に当たる14万4千平方キロメートルに地雷や不発弾が埋まる。ウクライナ政府は6月、地雷などによる農業部門の国内総生産(GDP)の損失額は年間110億ドル(約1兆6400億円)と発表。一方、地雷対策には340億ドル以上を要するとの試算もある。


ロシア、エネ施設攻撃(2024/12/14 京都新聞)

【キーウ、モスクワ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、国内にロシア軍の多数のミサイルと無人機による攻撃があったと発表し「エネルギー施設に対する最大規模の攻撃の一つだ」と訴えた。エネルギー最大手DTEKは火力発電所が「深刻な被害」を受けたと明らかにした。

 ロシア国防省は13日、米国製長射程兵器によりロシア南部タガンログの軍用飛行場が11日に攻撃を受けた報復として、ウクライナのエネルギー施設に大規模な攻撃を行ったと発表した。目的を達成し、すべての対象を撃滅したとしている。

 トランプ次期米大統領は19日公表の米誌のインタビューで、ウクライナ軍による長射程兵器でのロシア領攻撃が緊張を高めているとして「大きな過ちだ」と批判した。

 ゼレンスキー氏によると、ロシア軍は巡航ミサイルや弾道ミサイルなど93発を発射し、少なくとも1発は北朝鮮製だったとされる。このうち81発を迎撃したと主張した。200機近くの無人機も飛来したという。

 ウクライナ各地では13日朝、空襲警報が発令された。同国メディアによると、ロシア軍は西部リビウ州や南部オデッサ州など各地を攻撃。東部ハリコフ州には弾道ミサイルを発射、けが人が出ているもようだ。

 ウクライナ空軍は通信アプリに、ロシア西部ニジェゴロド州サワスレイカの空軍基地からミグ31戦闘機が出撃したと投稿した。極超音速ミサイル「キンジャル」が使われた可能性もある。


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ロシア軍中将、爆発で死亡(2024/12/18 京都新聞)

【モスクワ、キーウ共同】モスクワ東部の住宅入り口付近で17日朝、電動キックボードに仕掛けられた爆発物が爆発し、ロシア軍中将 のイーゴリ・キリロフ放射線化学生物学防護部隊長とその補佐官が死亡した。ロシア連邦捜査委員会は殺人とテロ容疑で捜査を開始したと発表した。インタファクス通信などが報じた。ウクライナ治安筋は同国保安庁が特殊作戦で殺害したと共同通信に明らかにした。

 治安筋はキリロフ氏について「戦争犯罪者であり、完全に正当な標的だ」と述ぺた。禁止されている化学兵器でウクライナ軍を攻撃 するよう命令したとして「報復は免れない」と主張した。保安庁は事件発生前日の16日、キリロフ氏がウクライナ東部や南部の前線で、化学兵器の使用を命じた疑いがあると発表していた。キリロフ氏の命令によって化学兵器が使われたケースは、4800件に上るとした。

 爆発はキリロフ氏らが午前6時ごろに自宅を出る際に発生。爆発の威力はTNT火薬200グラム相当だったという。


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英、ウクライナに派兵示唆(2024/12/22 京都新聞)

【ロンドン共同】英国が来年にもウクライナに派兵し、同国軍を訓練する可能性が浮上している。18日に首都キーウ(キエフ)を訪問したビーリー英国防相が、英国内に原則限定していた訓練をウクライナに拡大する可能性を示唆。北大西洋条約機構(NATO)加盟国による本格的な訓練が実現すれば、侵攻開始後で初めてとみられ、ロシアへの圧力となりそうだ。

 英紙タイムズは、NATO軍の事実上の配備開始を意味するとのウクライナ軍筋の見解を伝えた。一方、英国側に死傷者が出れば、英国が戦争に巻き込まれる可能性があるとの懸念を指摘した。

 ウクライナは東部でロシアの猛攻に遭い、苦戦している。兵士の訓練不足が一因との見方があり、西側当局者はタイムズに「前線に近いほうが効率的だ」と述べ、ウクライナで訓練する意義を訴えた。

 侵攻以降、英国は自国でウクライナ兵5万人以上を訓練し、新兵指導の主導的な役割を果たしてきた。


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無人部隊で「ロ陣地攻略」(2024/12/23 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナ軍は22日までに、歩兵部隊の代わりに無人地上車両(UGV)と無人機(ドローン)だけを使った初の地上作戦を実施し、東部ハリコフ州での戦闘でロシア軍陣地を攻略したと発表した。米シンクタンク、戦争研究所は「技術革新を地上作戦に活用する取り組み」とし、兵力で勝るロシア軍への対抗策だと指摘した。

 劣勢が目立つウクライナ軍には、新技術による戦果を強調する思惑がありそうだ。ただ「無人部隊」による作戦の時期や詳しい場所は明らかになっていない。

 ハリコフ州方面に展開する旅団の報道官が20日、作戦の戦果を発表した。ハリコフ北方の村で機関銃を搭載したUGV数十台を動員し、地雷の敷設や撤去も実施。ロシア軍陣地を破壊したと語った。偵察用の無人機が支援した。歩兵は参加しなかった。

 ウクライナメディアは一斉にこの戦果を大きく報道。戦争研究所は、兵員の犠牲をいとわないロシア軍に地上戦で対抗するため、ウクライナ軍は技術革新を重視していると分析した。

 またウクライナ軍は20日、妨害電波を避けるために無線ではなく光ファイバーを利用して操縦するドローンの試験が完了したと発表。「この技術は敵にとって難題となる」と強調した。


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北朝鮮兵は「訓練不足」(2024/12/24 京都新聞)

【スムイ共同】ウクライナ軍砲兵部隊の大尉らが22日。ロシア西部クルスク州で交戦中の「北朝鮮兵とみられる部隊」について証言し「最初の砲撃を受けると(恐怖心から)仲間同士で身を寄せ合うので、狙うのが簡単。実戦経験の不足が明らかだ」などと語った。前線に近いウクライナ北東部スムイで、共同通信の取材に応じた。

 米国防総省によると、ロシア軍には約1万2千人の北朝鮮兵士が合流し、クルスク州などでウクライナ軍との戦闘に加わった。戦場での様子が明らかになるのは異例。

 取材に応じたのは、ウクライナ軍第36独立海兵旅団の砲兵部隊に所属するパベル・サマリン大尉と、オレクサンドル・ボイツク曹長。今年10月からクルスク州で戦闘任務についている。

 サマリン大尉は「(北朝鮮兵は)常に徒歩で移動し、車両も高性能兵器も使用しない。部隊の人数を増やすという点では効果があるかもしれないが、戦力としての効果は薄い」と指摘した。

 2人の証言によると、同州のロシア軍陣地に11月ごろから「アジア系の顔立ちの兵士ら」が頻繁に姿を見せ始めた。偵察用ドローンが撮影した高精度映像で顔を確認した。「(身分証を見ておらず)100%の確証はないが、北朝鮮兵だろう。全員が歩兵。ロシア軍と同じ制服や記章、装備を使用している」という。

 ロシア兵は1列縦隊で行軍するが、北朝鮮兵は横一列で行軍するなど動きに特徴があり、部隊運用は別々とみられる。2人は「(北朝鮮兵は)どこに移動して何をすべきなのか分かっていない印象だ」とも指摘した。

 ウクライナ軍砲兵部隊はドローン映像で敵兵の動きを見ながら照準を定める。最初の砲撃を受けるとロシア兵は拡散して追撃を避けるが、北朝鮮兵は「まったく逆の行動を取る」という。

 サマリン大尉は、北朝鮮兵が加わった背景に「兵士の遺体も収容できず、負傷兵の救出にも苦しむほどのロシア軍の人員不足」があると述べた。


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北朝鮮兵「塹壕防御任務」(2024/12/26 京都新聞)

 ウクライナ軍が8月から越境攻撃を続けるロシア西部クルスク州のスジヤ奪還作戦に参加するロシア軍関係者が25日までに共同通信の取材に応じ、北朝鮮兵が「塹壕の防御任務に就いている」と証言した。ロシア側から北朝鮮兵の任務の内容が明らかになるのは異例。ウクライナのゼレン スキー大統領は1日の共同通信との会見で、北朝鮮兵はロシア兵の「弾よけ」だと指摘。ウクライナ側では「突撃部隊」の役割を担うとの見方が強い。

 スジヤにはウクライナ軍の司令部があり、ロシア軍は奪還を目指している。この関係者は「ようやく北朝鮮兵をこの目で見た」と話し、北朝鮮兵が突撃部隊には組み込まれず、塹壕の防御陣地を守るために使われていると明らかにした。ウクライナ側がドローンで撮影した画像に北朝鮮兵が写り込むのは「塹壕にいるのだから写って当然だ」と述べた。

 ウクライナ側が主張する北朝鮮兵の「練度の低さ」については「まだドローン攻撃から生き延びる方法に慣れておらず、逃げ惑うのを見れば、そのような感想を持つのかもしれない」と指摘。さらに「現代のドローン戦争に放り込まれれば、米軍特殊部隊でも(最初は)ぷざまな格好をさらすと思う」と付け加えた。

 北朝鮮兵の負傷者は前線近くの応急的な医療施設ではなく、負傷程度が軽くても州都クルスクの病院に運ばれていると説明し、ロシア兵よりも厚遇されていることを示唆した。この関係者が所属する部隊には連日、多数の遺体が運び込まれてくるが「北朝鮮兵の遺体は、まだ見たことがない」とも語った。

 ロシアのプーチン政権は北朝鮮がロシアに派兵したことを公式には肯定も否定もしていない。米紙ニューヨークータイムズは23日、複数の米当局者の話として、派兵はロシア側ではなく北朝鮮側の発案で実現したと米情報機関が分析していると報じた。 (共同)


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NATO加盟で終戦に支持(2025/1/5 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナのキーウ(キエフ)国際社会学研究所は3日、ロシアの侵攻に関して昨年12月に行った世論調査結果を発表した。ロシアが東部・南部4州とクリミア半島の占領を継続するものの、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟して真の安全保障を確保するとの戦争終結シナリオに64%が賛成すると回答した。

 昨年6月の調査と比べて17ポイント増加した。「全く受け入れられない」とした回答は21%だった。同研究所は「安全保障を確保し、将来の侵略を防ぐことが優先事項になっている」と分析した。

 別の設問では「平和を早期に実現し独立を保つために、領土の一部を断念してもよい」と回答した人が38%になり、2022年に全面 侵攻が始まって以降の調査で最多となった。「いかなる状況でも領土を断念すべきではない」とした回答は51%だった。調査はウクライナ国内の2千人を対象に電話で行った。


ウクライナ兵多数脱走報道

【キーウ共同】ウクライナの国家捜査局は3日までに、昨年創設された軍部隊から脱走者が相次いでいるとの報道を受け、事実関係の捜査に乗り出した。複数の地元メディアが報じた。

 ウクライナメディア「センサー・ネット」の報道によると、この部隊は昨年3月ごろに新設された「第155機械化旅団」。昨年11月までに1700人以上の兵士が脱走したという。昨年10月に約1900人が訓練のためフランスに派遣された際にも、現地で約50人が脱走したとしている。

 センサー・ネットは、経験の乏しい新兵がフランスでの訓練に派遣されたり、旅団に十分な兵器が配備されなかったりするなど、ゼレンスキー大統領や軍指導部の指揮に問題があったと指摘した。


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北朝鮮兵捕虜「戦争ではなく訓練に行くと」(2025/1/13 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナ保安局は11日、ウクライナ軍がロシア西部クルスク州で捕虜にした北朝鮮兵±2人について、うち1人が事情聴取 に「ウクライナとの戦争ではなく、訓練に行くと考えていた」との趣旨の証言をしたと発表した。北朝鮮軍が兵士らにロシア派遣の理由を説明 しなかった可能性がある。

 保安局は、ベッドに横になった兵士がストローで飲み物を摂取したり、何かを説明したりする様子を撮影した映像を公開した。2人は20 05年生まれのライフル兵と、1999年生まれの前哨狙撃兵だという。

 ライフル兵は聴取に、2021年に北朝鮮軍に入り、戦争ではなく訓練に参加するつもりだったと説明した。

 ロシア南部トウワ共和国で登録された別人名義のロシア軍身分証明書を携行していた。24年秋にロシアで受け取ったという。

 前哨狙撃兵は16年に入隊したといい、身分証明書は持っていなかった。あごを負傷しており、聴取に筆談で回答することもあった。

 2人は、ウクライナ軍の特殊作戦軍とパラシュート部隊がそれぞれ拘束した。うち1人は今月9日に捕虜になった。

 2人ともロシア語やウクライナ語、英語を話さず、保安局は韓国の情報機関、国家情報院の支援を得て朝鮮語で聴取している。いずれもけ がを負い、ウクライナ側が必要な治療を施している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、記者が捕虜に取材できるよう保安局に対応を指示した。「世界は、何が起きているのか真実を知る必要がある」とX(旧ツイッター)に投稿した。


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カスピ海「制裁逃れ」の貿易活発(2025/1/14 京都新聞)

 ロシアとイランが欧米の制裁網をかいくぐり、両国をつなぐ世界最大の湖、カスピ海を通じた貿易を活発化させている。ウクライナに侵攻するロシアを支援するため、イランが武器を供給するルートとも指摘される。両国は17日に包括的戦略パートナーシップ条約に署名し、経済と軍事両面で連携を強化する方針だ。

 イランの首都テヘランから北西約250キロ離れたカスピ海南岸に位置するアンザリ港。1月上旬に訪れると、船尾にロシア国旗を掲げた貨物船が停泊していた。「昨晩に着いたばかりだ」と港湾当局者。貨物船から重機で飼料用トウモロコシをトラックに移し替える作業を、ロシア人とみられる船員がデッキから眺めていた。

 近くにはイラン製りんごジュースを積んだ別のロシア船が停泊。ロシアからは木材を運んできたという。イラン税関当局によると、過去11カ月のロシアからアンザリ港への輸入額は25億ドル(約3900億円)で、前年同期比で46%増加した。

 ロシア製のチョコレートや宝石を扱う貿易商メヘランさん(43)は、第1次トランプ政権が対イラン制裁を再発動した影響で2019年に取引先を欧州からロシアに変えざるを得なくなった。欧州の取引先を失ったが、22年のウクライナ侵攻以降はロシアとの取引が「順調だ」という。`

 欧米メディアはロシアが無人機や弾薬など武器購入にカスピ海を利用していると報道。米CNNテレビは昨年9月、イランの弾道ミサイルを積んだとみられる貨物船が、ロシア南部アストラハンの港に停泊しているのを衛星画像で確認したと報じた。米政府はこの貨物船を制裁対象に加えた。

 カスピ海は、ロシアとイランのほか、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンの旧ソ連3力国にまたがる。旧ソ連3力国には武器取引を阻止する能力も動機もないとみられ、専門家はCNNに「イランにとって輸出リスクはなく、完璧な環境だ」と指摘した。

 イランのペゼシュキアン大統領は17日、モスクワを訪問しプーチン大統領と会談する。パートナーシップ条約を基にエネルギーや農業、軍事分野で協力を深める方針だ。

 イラン政府高官は「互いに軍事技術や情報で支援し合う」と明かす。イラン側は昨年10月のイスラエルの攻撃で破壊されたと指摘されるロシア製の防空システムの供与を見込む。イラン外交筋は「欧米の制裁解除は見込めない。ロシアとの結び付きを強める必要がある」と強調した。   (アンザリ港共同)


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北朝鮮兵参戦隠蔽、組織的命令か(2025/1/15 京都新聞)

【キーウ共同】ロシア西部クルスク州でウクライナ軍との戦闘に従事する北朝鮮兵が、手りゅう弾を顔付近で爆発させて自殺する例が相次いでいることが14日、ウクライナ政府当局者と軍関係者の話で分かった。捕虜になるのを回避し、遺体が収容されても容貌から身元を特定させないためとみられる。軍関係者によると、自殺者は20人近くに上る。政府当局者は「北朝鮮の参戦を隠蔽する狙いだ」と分析した。

 ウクライナ当局は、北朝鮮軍が捕虜回避の自殺を組織的に命令しているとの見方を強めている。韓国情報機関は13日、北朝鮮兵の所持品から捕虜になる前に自決するよう強要するメモが見つかったと明らかにしていた。

 前線に展開するウクライナ兵の目撃証言を聞き取ったウクライナ軍関係者によると、北朝鮮兵は銃弾を撃ち尽くしたり、負傷して退却できなくなったりした時に手りゅう弾で自ら命を絶つという。上官が処刑するケースもあったといい、政府当局者は「北朝鮮指導部の命令とみられ、一種の洗脳だ」と述べた。

 戦場では顔が焼かれた兵士の遺体が複数発見された。北朝鮮兵の可能性が高く、同僚が可燃性の液体をかけて燃やして身元を隠したとみられる。

 ウクライナ軍関係者によると、前線の北朝鮮兵の大半はロシア軍の第810独立海軍歩兵旅団に組み込まれ、クルスク州スジヤの北西に展開。80〜100人ほどの歩兵部隊を編成し、ロシア軍の大砲やドローンによる後方支援を受けながら突撃してくる。機関銃などを携行しているが、戦車や装甲車の支援はなく、無線通信機を持っていないケースもあった。軍関係者は「ドローンを使った現代戦のノウハウがなく、時代遅れで無鉄砲な戦い方をしている。ロシア軍の弾よけとして使われている」と指摘。ただ全般的に士気はロシア兵より高いという。


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トランプ氏、ロに停戦圧力(2025/1/24 京都新聞)

【ワシントン共同】トランプ米大統領は22日、自身の交流サイト(SNS)に投稿し、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領に対して「今すぐ和解し、ばかげた戦争をやめろ」と停戦を強く迫った。「取引が成立しなければ高水準の関税をかけ、制裁を科すしかない」と圧力をかけ、交渉入りを求めた。

 米国は既に、ロシアに広範な制裁を科し、両国間の貿易も縮小している。トランプ氏は「経済が破綻しているロシアに大いに便宜を図る」と制裁緩和をちらつかせて「今こそ取引をする時だ」と強調した。

 また「ロシアを傷つけるつもりはない。プーチン氏とも常に良好な関係を築いてきた」と説明。長引く戦争の終結について「簡単な方法が良い。これ以上命が失われてはならない」と訴えた。トランプ氏は20日の就任演説で「平和を構築する仲裁者」になるとし、プーチン氏との早期の対話に意欲を示していた。

 ロシアのペスコフ大統領報道官は23日、トランプ氏は一期目に最も頻繁に制裁を科した米大統領であり、発言には「新たな要素は特段何もない」と指摘。プーチン氏は対等で互いを尊重した対話の用意があると述べた。

 一方、ウクライナ側には不利な停戦条件をのまされるのではないかとの不安がある。トランプ氏が独自にロシアとの「取引」で便宜を図れば、対ロ制裁で足並みをそろえてきた欧州各国などの反発を招きそうだ。

 トランプ氏は21日、中国の習近平国家主席と17日に電話会談した際、ウクライナ情勢を巡り「あなたが事態を解決すべきだ」と伝え、停戦への働きかけを求めたと明らかにした。習氏が影響力を行使できるのに、十分な役割を果たしていないと不満も示した。


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米、戦闘凍結を来週提案か(2025/2/7 京都新聞)

【ワシントン、キーウ共同】ブルームパーク通信は5日、トランプ米政権でウクライナ・ロシア担当特使を務めるケロッグ氏が、口シアのウクライナ侵攻を終わらせる計画を14〜16日開催のミュンヘン安全保障会議で各国に説明すると報じた。戦闘を凍結し、ロシアの占領地の扱いは定めない一方、再侵攻を防ぐためウクライナの安全を保障するとしている。

 提示される計画は、戦闘凍結の時期や方法、安全保障の具体的な枠組みが焦点となりそうだ。トランプ大統領はウクライナの武器支援を継続する見返りに希少な鉱物資源の供与を求める考えも示しており、停戦までに一定の期間が必要と考えている可能性もある。

 トランプ氏は、ロシアとウクライナの交渉入りを実現させたい考えで、ロシアが停戦協議に応じない場合、制裁を科すとも警告している。ウクライナメディアは5日、ケロッグ氏が20日にウクライナを訪問予定と報道。ゼレンスキー大統領と会談し、停戦協議が議題となる可能性がある。

 ゼレンスキー氏はロシアのプーチン大統領との直接協議について「平和をもたらし、国民を失わない唯一の方法であるならば、交渉に応じる」と主張している。プーチン氏はゼレンスキー氏について任期が切れた「非合法な」大統領だと主張するが、ペスコフ大統領報道官は「交渉は可能」と述べ、双方が歩み寄りの構えも見せている。

 ゼレンスキー氏は北大西洋条約機構(NATO)加盟に代わる安全保障の方法はないとの立場を貫いている。ロシアは反発しており、米国とドイツも早期加盟に慎重姿勢。加盟までの間の代替案として、フランスのマクロン大統領は、欧州各国軍による平和維持部隊のウクライナ駐留案を提唱している。


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「トランプ流」で終戦介入(2025/2/14 京都新聞)

 トランプ米大統領がロシアとウクライナの戦争終結に向けて仲介に乗り出した。自任する「ディールメーカー(交渉の達人)」として、 調停に介入しないとしてきたバイテン前政権の方針を大きく転換。ただロシアへの肩入れが目立つトランプ氏がロシア寄りの終戦構想を進める懸念はぬぐえず、米ロ主導の陰でウクライナが置き去りにされる恐れをはらむ。

 「人々が殺されるのを止めたい」。トランプ氏は12日、ロシアのプーチン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領と相次いで電話会談した後、大統領執務室で終戦実現への意気込みを記者団に語った。

 だが対立する両首脳と平等に接する「調停者」の意識は希薄で、対応の差は歴然だった。「非常に生産的だった」と親しみを込めてプー チン氏との会話を振り返る一方、ゼレンスキー氏については「世論調査の支持率は芳しくない」と冷ややか。ウクライナに投じた軍事支援に関して「金を取り戻す」とも主張、見返りに希少な鉱物資源の供与を求める考えも改めて示した。

 「ウクライナ抜きでウクライナのことは何もしない」。バイテン前米政権はこうした外交原則を掲げウクライナに寄り添った。頭越しでロシアと交渉入りすれば、ウクライナとの信頼関係に加え、欧州の同盟国との結束にひびが入るのは必至だと見ていたからだ。

 だが前政権を目の敵にするトランプ氏は同盟国を軽視し、原則を無視。米ロ主導での交渉に、欧州からは「欧州の関与なくして、ウクライナの公正で持続的な平和はあり得ない」(フランスのバロ外相)などとけん制が相次ぐ。

 ウクライナの主張の多くを退ける形で早期終戦を目指すトランプ政権の方針が鮮明となり、ゼレンスキー政権は厳しい立場に追い込まれている。

 トランプ氏は12日、将来のロシアの侵略を抑止するために不可欠だとウクライナが訴える北大西洋条約機構(NATO)加盟について「現実的ではない」と強調。南部クリミア半島を含むウクライナの全領土回復についても否定的な見方を示し、武力と外交を用いて全領土回復を目指すゼレンスキー政権に冷や水を浴びせた。

 ウクライナを差し置いて米ロが戦争終結の絵を描き、望まない終戦案をのまされるのではないか―。焦るゼレンスキー政権は米国への働きかけを強め、局面打開につなげたい考えだ。

 一方のロシア。「ウクライナのNATO加盟阻止」は約3年前に掲げた侵攻目的の根幹でもあり、ウクライナにNATO加盟断念を迫るようなトランプ氏の発言を歓迎しているとみられる。ただ、ロシア政権幹部の対米関係の見通しは甘くない。トランプ政権要人からロシアに発せられるメッセージはプーチン氏の主張に寄り添う内容が多いが、終戦に向けた具体的な工程は示されていない。米側の出方を慎重に見極める構えで、交渉の行方は見通せない。

 ウクライナは米国やロシアと対等な立場で和平交渉に臨めるのか―。記者団に問われたトランプ氏は「面白い質問だ。ウクライナは和平を実現しなければならない」とだけ述ぺ、回答を避けた。(ワシントン、キーウ、モスクワ共同)


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欧米の亀裂「渡りに船」(2025/2/17 京都新聞)

 トランプ米大統領はロシアとウクライナの3年に及ぶ戦争終結に向け、ロシアのプーチン大統領とトップ対話に臨む構えだ。ウクライナ抜きの和平交渉を辞さない姿勢が鮮明になりつつあり、欧州も蚊帳の外に。戦闘長期化による疲弊が目に見えるロシアには渡りに船の展開だ。プーチン氏はティール(取引)に自信を持つトランプ氏につけ込み、有利な条件を引き出すことを狙う。

 「プーチン氏の勝利」。トランプ氏とプーチン氏が和平交渉の開始で合意した12日の米ロ首脳電話会談実現について、ロシア紙コメルサントはこう題した記事を掲載した。英紙フィナンシャルータイムズも、米ロ首脳の対話は、ロシア側にとって待望の「ギフト」だったと伝えた。

 生活影響

 2022年2月のウクライナ侵攻後、欧米諸国は対ロ制裁を発動。ロシア国内では昨年後半からインフレや通貨安が進み、国民生活への影響が表面化してきた。トランプ氏との対面会談にこぎ着ければ、プーチン氏が侵攻で一歩も譲歩せずに米大統領を交渉の席に着かせることになる。

 トランプ氏はウクライナが訴える北大西洋条約機構(NATO)加盟を現実的ではないと突き放す。ウクライナのNATO非加盟は、ロシアが侵攻目的の一つに掲げたウクライナの「中立化」の実現となる。

 強い焦り

 「私は招待状も見ていない」。米ロ首脳会談の開催に向け、両国高官が近く会合を持つと報じられた15日、ウクライナのゼレンスキー大統領は訪問先のドイツ・ミュンヘンで記者団を前に不快感をあらわにした。米ロがウクライナや欧州なしで和平交渉を進める流れができつつあることに強い焦りがにじむ。

 トランプ政権のウクライナ・ロシア担当特使ケロッグ氏は15日、交渉の場に欧州の席は「ない」と明言。欧州各国との共同歩調を取ってきたバイテン前政権からの転換を改めて鮮明にし、欧州にショックを与えた。

 ケロッグ氏の発言に対して「欧州抜きの議論や交渉はあり得ない」(フィンランドのストゥブ大統領)と反発の声が上がる。米CNNテレビは、トランプ政権のロシアに対する新たなアプローチで生じた「西側諸国の亀裂」は、プーチン氏が待ち続けた瞬間だったと伝えた。


ゼレンスキー大統領米への鉱物供与 安保確約が条件

【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、米国から提示されたウクライナの希少な鉱物資源供与に関する合意文書への署名を拒否した理由について「(将来的な)安全保障への言及がなかった」とし、安保の確約が条件だと説明した。ドイツで開かれたミュンヘン安保会議後、報道陣の取材に応じた。

 トランプ米政権は希少な鉱物資源の50%の所有権を譲渡するよう提案したと報じられている。ゼレンスキー氏は「両国に有益でなければいけない」と強調し、提示された文書はウクライナの利益につながらないとの考えを示した。

 ゼレンスキー氏は一方で「トランプ大統領のチームと協力を開始した」と交流サイト(SNS)に投稿。近く予定される米国のウクライナ・ロシア担当特使ケロッグ氏のウクライナ訪問で真の平和解決策を探るとした。


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ウクライナ市民や兵士「なぜ招かない」怒り(2025/2/18 京都新聞)

【キーウ共同】侵略を受けるウクライナが蚊帳の外に置かれたまま、米ロ間で戦争終結に向けた協議が18日行われた。ウクライナでは「戦場になった国が招かれないのはおかしい」「米国に見捨てられた」と不満や怒りの声が上がる。ただ侵攻開始から3年近くが経過し、閉塞感が漂う。「一刻も早い平和を」と交渉への期待も聞かれた。

 前線で任務に就いてきた兵士たちは「ばかばかしい」と交渉に怒りをあらわにする。

 南部前線の兵士ドミトロさん(35)は「当事国抜きで結ばれた歴史上の過去の合意や条約を考えると、全く期待できない。ロシアが時間を稼いで軍備を増強し有利になるだけだ」と憤る。友好国のみには頼れないとし「和平は武力で獲得するしかない。いずれ核保有が将来の安全保障の手段になるだろう」と語った。

 前線に近い南部ザポロジエ市出身のアクセサリー販売業アントンさん(26)は「トランプ米大統領は自分の損得しか考えておらず、信用できない。ウクライナが見捨てられるのではないか。とても不安だ」と打ち明けた。

 米国から十分な支援がなくても徹底抗戦すべきだと考える人も。年金生活のオレナさん(66)は「米国の力がなくてもウクライナは戦える。勝つまで私は我慢できる」と強調した。

 「ウクライナがドネツク市奪還を諦めても構わない。人命が失われている。戦争を早く終わりにして」。東部ドネツク市出身のアナスタシアさん(32)は、胸に抱いた息子(1)のために交渉で平和を実現してほしいと願った。


欧州首脳 ウクライナ支持トランプ氏発言「ばかげている」(2025/2/21 京都新聞)

 トランプ米大統領が19日、ウクライナのゼレンスキー大統領を「独裁者」呼ばわりしたことに対し、欧州首脳を中心に批判とゼレンスキー氏支持の声が上がった。各地のメディアが伝えた。

 ドイツのショルツ首相は「戦争で通常の選挙ができないことは憲法と法律に沿ったものだ」と訴え、ゼレンスキー氏の正統性を否定することは「危険だ」と反発。ベーアボック外相は「独裁下で生活しなければならないのはロシアやベラルーシの人々だ」と指摘し、トランプ氏の主張を「ばかげている」と一蹴した。

 スウェーデンのクリステシヨン首相は、トランプ氏の表現は「正しくない」と明言し「選挙は平和が訪れ、国民が国を統治できることを意味する。ウクライナほど選挙を望んでいる国はない」と強調した。

 英国のスターマー首相はゼレンスキー氏と電話会談し「民主的に選ばれたリーダーだ」と伝えた。国連のドウジャリク事務総長報道官もトランプ氏の主張を否定した。

 批判の声は米共和党内からも。ベーコン下院議員はプーチン(大統領)がこの戦争を始め、戦争犯罪を犯した独裁者だ」とX(旧ツイッター)で反論した。(共同)


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【インサイド】「ヤルタ会談」再現狙う(2025/2/24 京都新聞)

 ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で3年。プーチン大統領はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟阻止など、侵攻目的の完全達成を目指す姿勢に揺るぎはない。今年は第2次大戦終結から80年。戦勝国の米英ソが戦後の国際秩序を決定づけたヤルタ会談のような舞台を再現し、ロシアに有利な終戦条件を確定させる。ロシアで「21世紀版ヤルタ会談」の議論が始まった。

 「特別軍事作戦は根本的な前進をもたらした。ロシアに戦略的敗北をさせる試みは完全に失敗した」。ヤルタ会談から80年の今月9日。政府系テレビ「第1チャンネル」の特別番組「ヤルタ2・O」で司会者が口火を切ると、著名な国際政治学者ルキヤノフ氏らが戦争の行方を討論した。

 ロシア軍がロシア本土からクリミア半島につながる陸路を占領し、一部ロシア高官からは「軍事作戦の目的は達成した」との主張が出始めた。対ロ交渉に前向きなトランプ米大統領の復帰もあり、終戦条件を会合で決めることを意味する「ヤルタ2・O」という言葉を目にする機会が増えた。

 第2次大戦末期の1945年2月、当時のソ連南部クリミア半島にソ連のスターリン、米国のルーズベルト、英国のチャーチルの3首脳が集ったヤルタ会談では、日本統治下にあった樺太南部や千島列島をソ連領とするのと引き換えに、ドイツ降伏2〜3ヵ月後のソ連の対日参戦で合意。当事国抜きでドイツ分割統治やポーランドの国境画定、中・東欧の政治体制が決まり、3大国の一方的取り決めが戦後の国際社会の構図を決定づけた。

 トランプ氏の1月の大統領就任で交渉の基盤は醸成されつつある。トランプ氏は欧米主要国が3年間対話を拒んできたプ−チン氏との交渉開始に踏み切った。一方でウクライナのゼレンスキー大統領への態度は冷淡だ。トランプ氏は19日「ロシアには切り札がある。ウクライナの多くの領土を占領した」と侵攻の結果を追認するような発言もした。

 かつてソ連崩壊を「地政学的悲劇」と評したプーチン氏。悲願は自身が思い描く「ロシア領」を回復させ、スターリンに連なる戦勝指導者として歴史に名前を刻むことにあるとされる。

 ロシアの終戦条件は侵攻目的と重なる。昨年6月にプーチン氏が示した@ウクライナのNATO加盟断念Aロシアが併合を宣言したクリミアと東部・南部4州をロシア領と条約で確認B4州全域からのウクライナ軍の完全撤退―の3点については、断固として譲れない一線とみられる。

 「ウクライナを排除するとは誰も言っていない」。米口高官交渉が行われた翌19日、プーチン氏は語った。欧州の安全保障におけるロシアの主導権を大国に認めさせた上で、ウクライナにのませるのが狙いだ。

 米口の交渉機運が高まる中、プーチン氏側近の強硬派、パドルシェフ大統領補佐官は1月「ウクライナは今年中に存在しなくなる可能性がある」と主張した。政治学者スタノバヤ氏は「トランプ氏との協議が目的達成につながらなければ、プーチン氏は軍事手段で達成を目指すだろう」とし、安易な妥協には応じないと分析した。(モスクワ共同)


米、新たな鉱物供与案444446640

【キーウ、ワシントン共同】ウクライナメディアは22日、ウクライナに希少な鉱物資源を供与するよう迫るトランプ米政権が、21日に天然資源採掘に関する新たな協定案を提示したと報じた。ウクライナ側にとって「当初より厳しい内容だ」としている。鉱物に加えてガスや石油も対象で、ウクライナが求める安全保障の確約は含まれないという。

 報道によると、トランプ政権はウクライナの資源で得られる収益を使った5千億ドル(約75兆円)規模の基金設立を提案。新たな協定案では基金の全所有権を米国が持つ。ウクライナは基金の資金を自国への投資のみに用いるよう求めている。

 米ブルームパーク通信は22日、ウクライナが米国の提案を受け入れず、900億ドル規模が妥当だと主張したと伝えた。

 トランプ大統領はワシントン近郊で22日開かれた会合で演説し、ウクライナが希少鉱物に関する合意に応じないことへの不満を示した。「合意にかなり近い」とも述べた。米国がウクライナ支援に投じた多大な資金を取り戻すため「レアアース(希土類)であれ石油であれ、得られるものは何でも求める」と話した。

 トランプ政権は、合意しなければウクライナ軍が通信に使う米衛星インターネット接続サービス「スターリンク」を遮断する可能性があると警告したと報じられている。サービス開発企業を率いる実業家マスク氏は22日「誤報だ」と反発した。

 ポーランドのガフコフスキ副首相兼デジタル化相は22日、ウクライナのスターリンク使用料を払っているのはポーランドだと指摘。

 「ポーランドが当事者だ。契約を解除できるとは思えない」と交流サイト(SNS)に投稿した。


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安保理「紛争終結」初決議(2025/2/25 京都新聞)

【ニューヨーク共同】国連安全保障理事会 (15力国)は24日、ロシアのウクライナ侵攻開始後、戦闘終結を求める決議を初めて採択した。「侵攻」や「ウクライナ領土の保全」などの表現を避け「紛争終結」を求める決議案を米国が提出。ロシアなど10力国が賛成し、英仏など欧州5力国はロシア寄りの案だとして棄権した。

 ロシアに肩入れするトランプ米政権と、それを警戒する欧州諸国との亀裂が鮮明になった。今後のウクライナ和平交渉への影響も懸念される。

 安保理に先立ち、国連総会(193力国)は、ウクライナと欧州連合(EU)加盟国が主導した「ウクライナ領土の保全」と「戦闘停止」を求める決議を採択した。米国は反対を呼びかけたが、日本など93力国が賛成した。米国やロシアなど18力国が反対、中国など65力国が棄権した。

 安保理決議には法的拘束力があるが、これまでは常任理事国ロシアが拒否権行使も辞さない構えで、議論は手詰まぴ状態だった。総会決議に拘束力はなく「国際社会の総意」という重みがある。

 欧州側にはウクライナの頭越しにロシアとの協議を始めたトランプ大統領に対し、ウクライナの領土割譲などを取引材料に利用するかもしれないという不信感がある。総会決議でトランプ氏をけん制する狙いだ。

 米国は安保理と同じ内容の決議案を総会にも提出したが、採決前に欧州諸国が文言の修正を提案。「侵攻」や「ウクライナ領土の保全」を書き加えた修正案が採択された。米国のシェイ国連臨時代理大使は「総会決議では、もはや平和追求への総意形成はできない」と批判した。侵攻1年に当たる2023年は、総会でロシア軍の即時撤退を要求する決議を米国も含む141ヵ国の賛成で採択しており分断が加速している。


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ロシア寄りの米 圧力続けて成果(2025/2/27 京都新聞)

 トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が、ウクライナの希少な鉱物資源の共同開発に合意する見通しとなった。ロシア寄りの姿勢を日々鮮明にするトランプ氏が、ウクライナに圧力をかけ続けて勝ち取った成果となった。最大のライバルと位置付ける中国との競争を見据え、希少資源であるレアアース(希土類)で中国への依存を回避したいとの米国の狙いも透ける。

 キーウ(キエフ)で12日、ゼレンスキー氏と会談したベセント米財務長官は、合意文書の草案を提示した。ウクライナ側が詳細を把握したのは会談直前にもかかわらず、その場で署名を求めた。

 強引な手法に、不穏な空気が流れ、ゼレンスキー氏は署名を拒否。会談後の共同記者会見でゼレンスキー氏の表情はさえず、ベセント氏の発言時にそっぽを向くこともあった。

 米提案には、ウクライナの資源で得られる収益を使った5千億ドル(約75兆円)規模の基金を盤立し、米側が所有権を持つことが盛り込まれてい たとされる。「米国のこれまでの支援を資源収益で返済せよ」とのメッセージが込められていた。

 ゼレンスキー氏は米国の支援総額は1千億ドルだと反発。加えて草案には、ウクライナが求めている米国による安全保障の確約はなかった。

 英紙によると、両政府の集中協議の結果、合意草案の最終版では「5千億ドル」の記述は削除された。ただ、安保面で明確な文言は盛り込まれず、署名を迫る米側の圧力に抗しきれなかった可能性がある。合意の見通しが報じられた25日、トランプ氏は記者団に「ビッグティール(大きな取引)だ」 納税者が金を取り戻せる」と歓喜の表情で、満足げに語った。

 一方、鉱物資源を巡るトランプ氏の強硬姿勢は安全保障上の懸念を踏まえたものだとの見方もある。米地質調査所(USGS)によると、20 23年のレアアースの世界生産に占める中国のシェアは約7割。希少資源を握られたままでは激化する中国との競争に勝てず、台湾有事などで対立が深刻となった場合に大きな脅威となりかねない。

 トランプ氏が購入に意欲を見せるデンマーク自治領グリーンランドも、レアアースの宝庫と見なされている。

 ウクライナに戦争開始の責任があると示唆するなど、ロシアのプーチン大統領に同調する言動が目立つトランプ氏。このため米口主導の和平交渉に対し、欧州やウクライナでは懸念や不信がくすぶる。

 トランプ氏は24日、フランスのマクロン大統領との記者会見で、ウクライナの長期的な安全保障は「欧州が中心的な役割を担わなければならな い」と主張。米国が主体的に関与するという覚悟は見えなかった。(キーウ、ワシントン共同)


上智大の前嶋和弘教授2国接近 流れ止まらず

 トランプ米政権としては、戦況で優勢なロシアが矛を収めなければ停戦できないので、ロシアの顔色を見ている。バイテン政権時代とは違う新たな米口関係が始まっており、流れを止めるのは難しい。トランプ大統領の一番の支持層はキリスト教福音派だ。性的少数者の権利擁護や気候変動対策 に後ろ向きな点はロシアと重なり、互いに「文化戦争の同盟国」ともいえる。

 今回の合意でウクライナの安全が保証されるとは限らない。少しの支援で鉱物資源を手に入れるという「トランプ的ディール(取引)」だ。トランプ政権の政策は米国がどうもうかるかがポイントで、理念はない。

 ウクライナのゼレンスキー大統領はトランプ氏を怒らせてしまったので話を元に戻したいというのはあっただろう。武器支援だけでなくインターネットを遮断する可能性があると警告されたと報じられており、妥協せざるを得ない状況だった。(共同)


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子ども2万人、「ロシア化」教育(2025/2/27 京都新聞)

 ロシアがウクライナの子ども2万人を占領地の同国南部クリミア半島などに連れ去り、徹底的な「ロシア化」教育を行っている。ウクライナは帰還に全力を挙げるが、戻ったのは1割未満の1200人程度にとどまる。プーチン政権は本土の教師に高額報酬を約束して現地に派遣。地元教師は迫害され「ウクライナの文化や言語を消滅させる狙いだ」と指摘される。

 「(ロシアが併合したウクライナ南部)ヘルソンとザポロジエは、ずっとロシアの一部であり、ロシア人が住んでいた」。ロシア教育当局によると、支配地域に導入した教材にはこう明記されている。ソ連崩壊後に独立したウクライナの主権を認めず、ネオナチ政権に虐げられていた市民をロシアが救つたとのうそを押し付ける内容だ。

 母国語授業を禁止

 侵攻初期にウクライナ南東部マリウポリからクリミアに連行され、昨年、支援団体の助けで帰還したダニーロさん(12)は「ロシアの先生に『あなたの家族はウクライナ兵に殺された』と何度も聞かされた。最初は疑ったが、だんだん信じてしまった。だけど全てうそだった」と振り返った。

 ロシアの支配地域では、図書館からウクライナの書物が撤去され、ウクライナ語での授業が禁じられている。ウクライナ人の教師はロシアの教育基準に従って「再訓練」を強要され、拒否すると拷問される。

 ザポロジエ州でロシアが「州都」とするメリトポリの教師、オリガ・バラネフスカヤさん(61)はロシア側の指示に抵抗し、昨年5月に逮捕された。爆発物販売の罪をでっち上げられ、懲役6年の実刑判決を受けた。

 娘のアクシニヤさんによると、オリガさんは現在、東部ドネツク州の収容所にいる。糖尿病の持病があり、薬が切れれば命に関わる。今年2月に届いた手紙には「もう闘う気力が残ってない」と書かれていた。

 1週間で月収の倍

 支配地域で教育を担うのはロシア本土から派遣される教師たちだ。ウクライナの非政府組織(NGO)「マス情報研究所」によると、日当約8400ルーブル(約1万4千円)が支給され、1週間程度働けば、教師の平均月収の2倍を稼げる好待遇。「人道支援」と称して、大学の教育学部の学生が無給で派遣されるケースもあるという。

 同研究所は、ロシアの狙いは教育ではなく、ウクライナのアイデンティティーの破壊とみる。ダニーロさんはクリミアで、ロシアの教師にこう言われた。「10年もすれば、ウクライナ語を話す人も、読む人もいなくなる。だからロシア語を学びましょう」(キーウ共同)


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米ウクライナ首脳決裂(2025/3/2 京都新聞)

  【ワシントン、キーウ共同】トランプ米大統領は2月28日、ウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談した。ロシアとの戦争終結に向けた和平交渉を巡り、米側の態度に不満を示したゼレンスキー氏に対し、トランプ氏は米国が支援してきたにもかかわらず「無礼だ」と非難。報道陣の前で激しい口論を繰り広げる異例の展開となり決裂した。予定していたウクライナの鉱物資源の共同開発に関する合意は見送られ、共同記者会見も中止となった。

 トランプ氏がロシア寄りの姿勢を一層強めたり、ウクライナ軍事支援を大幅後退させたりする可能性もある。3年続くウクライナ侵攻の戦況や終結に向けた交渉の先行きは不透明感を増した。

 大統領執務室での会談は冒頭から約50分間報道陣に公開され、世界中に中継された。トランプ氏が戦後の安全保障について「確約していない」と語ると、ゼレンスキー氏は「安全の保証がない停戦は受け入れられない」と不満を表明。ロシアのプーチン大統領を信頼できると主張するトランプ氏に対し、第1次トランプ政権下でもロシアはウクライナを攻撃していたと警鐘を鳴らした。

  開始から約40分後、バンス米副大統領が「大統領執務室で報道陣を前にそんな主張を展開するのは無礼だ」と反発すると険悪な雰囲気になった。トランプ氏もウクライナには和平交渉で「カードがない」と主張。ゼレンスキー氏が交渉に消極的だとして「第3次世界大戦を賭けてギャンブルをしている」と批判し、取引しないなら「われわれは手を引く」と突き放した。

 米メディアによると、ウクライナ側は会談を続ける意向を示したが、レビット米大統領報道官はトランプ氏が退室を求めたと説明。トランプ氏は交流サイト(SNS)に「ゼレンスキー氏は和平の準備ができていないと判断した」と投稿した。

  会談後、ゼレンスキー氏はFOXニュースに出演し、トランプ氏を尊敬しており関係改善は可能との見方を示し「味方をしてほしい」と訴えた。ゼレンスキー氏はFOXで協議継続の必要性を訴えた。


【解説】ロシア利する悪夢の展開

 米ウクライナ首脳が2月28日、衆人環視の中で異例の口論を繰り広げ、予定された資源合意の署名が見送られた。ウクライナ合意を突破口として米国の軍事支援と戦後の安全の保証について確約を得たい考えだったが、最大の後ろ盾との埋めがたい溝が露呈。ロシアを利する悪夢の展開となり、ゼレンスキー大統領の苦境がさらに深まった。

 激しい言い争いが世界中に中継され、両国の信頼関係が大きく損なわれたことを鮮明に印象付けた。ゼレンスキー氏への不信を強めたトランプ米大統領がロシアの主張に一層傾倒し、ウクライナに不利な条件で停戦を求めるシナリオが現実味を帯びる。

 ゼレンスキー氏は「米国の支援なしに生き残りは困難」と理解するが、安全が保証されない限り、欧州の支援に頼って抗戦を続ける構え。泥沼の戦争がさらに長期化する恐れが出てきた。(キーウ共同)


欧州連帯「一人ではない」

 トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の2月28日の会談が激しい口論に発展して決裂したことを受け、欧州各国の首脳は相次ぎ「ウクライナは一人ではない」などと連帯を表明した。米ウクライナ関係の仲裁や米国との対話を呼びかける動きも出始めた。

 フランスのマクロン大統領は「侵略者はロシアで、侵略されたのはウクライナ国民だ」と強調。ウクライナを支援し、ロシアに制裁を科すのは「正しかった」と語った。

 欧州メディアによると、マクロン氏は米ウクライナ首脳会談後、ゼレンスキー氏と電話会談。スターマー英首相もトランプ、ゼレンスキー両氏と電話で話した。仲裁を試みたとみられる。

 欧州連合(EU)のフォンデアライェン欧州委員長はX(旧ツイッター)に、ゼレンスキー氏に「強くあれ、勇敢であれ、恐れるな。あなたは決して一人ではない。平和に向けて協力し続ける」と書き込んだ。

 ドイツのショルツ首相も「ウクライナはドイツや欧州を頼りにできる」と主張。次期首相への就任が確実視されるメルツ氏は「私たちは良い時も試練の時もウクライナの側に立つ。侵略者と被害者を決して混同してはいけない」とトランプ氏を暗に批判した。

 トランプ氏と個人的に良好な関係にあるイタリアのメローニ首相は声明で「西側諸国の分裂はわれわれを弱体化させる」と指摘、米国や欧州諸国などに首脳会談を呼びかけ、率直に協議する必要があると強調した。

 ウクライナやロシアに地理的に近いポーランド、リトアニア、エストニア、ラトビア、ノルウェーの首脳もウクライナヘの連帯を示した。

 一方、ハンガリーのオルバン首相は「今日、トランプ氏は平和のために勇敢に立ち上がった。ありがとう」とXに投稿。親交のあるトランプ氏の交渉姿勢を称賛した。     (共同)


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英仏、仲介も前途多難(2025/3/4 京都新聞)

 ロシアとの戦争終結に向けたウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ米大統領の首脳会談が決裂したことを受け、英国とフランスが2日、戦後のウクライナへの平 和維持部隊派遣を軸とする和平構想を掲げて仲介に動き出した。複数の国が参加意向を示したが、態度を硬化させる米政権との調整も必要で、実現のハードルは高い。

 「欧州にとって極めて重要な時だ」。スターマー英首相は欧州首脳らを集めて2日にロンドンで主催した会合の冒頭、厳しい表情で結束を訴えた。両隣にはゼレンスキー氏とフランスのマクロン大統領。ロシアへの肩入れが露骨に目立ってきたトランプ米政権と欧州との溝が深まる中、関係修復の橋渡し役としての意気込みを示した。

 米国訪問ではトランプ氏らから冷たい仕打ちを受けたゼレンスキー氏だったが、英国では市民らが沿道でウクライナ国旗を振り、温かく迎えた。侵攻当初から率先して支援してきた英国はウクライナからの信頼が厚いと同時に、米国とも歴史的に深いつながりがある。

 英国にとっては欧州連合(EU)離脱後、距離を置く格好となった欧州政界での存在感を取り戻す絶好の機会でもある。スターマー氏は会合後の記者会見で和平構想を巡るトランプ政権との協議にも自信を見せた。

 だが米政権は、欧州各国が「公正な平和」を求める中、南部クリミア半島を含むウクライナの全領土回復の実現性には否定的な立場だ。欧州の部隊によるウクライナ駐留案への支援も確約していない。

 スターマー氏も2日、英BBC放送で「米国の後ろ盾がないと抑止力にならない」と吐露。米国抜きで実効性のあるウクライナ支援を行うことの難しさを認めた。

 一方のゼレンスキー政権。首脳会談決裂により米国の軍事支援が打ち切られる可能性が浮上した。欧州への依存度を高めざるを得ない状況だが「欧州だけで米国分を穴埋めできない」(ウクライナ軍元高官)との見方もある。

 ドイツのキール世界経済研究所によると、米国のこれまでの軍事支援額は667億ドル(約10兆円)に上り、欧州全体の支援額を上回っている。2023年末から24年春にかけて米国の支援が一時停滞した際、ウクライナ軍は前線で砲弾不足に陥り、劣勢を強いられる要因となった。

 米国の支援で特に重要なのが防空システムだ。ロシア軍の弾道ミサイルを撃墜する防空システム「パトリオット」は首都キーウ(キエフ)周辺の重要インフラの防衛に欠かせず、支援が止まれば迎撃弾が枯渇する。

 ロシア領内への攻撃に利用される長射程の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」や、前線で多用されている155ミリ砲弾の提供が止まるのも打撃となる。ロシアは砲弾の増産態勢に入っており、東部前線のウクライナ軍幹部によると、今もロシア軍に砲弾数で圧倒されている。

 ゼレンスキー氏も米国の支援なしにウクライナの生き残りは難しいと認める。ウクライナ軍の元高官は「米国の軍事支援がなくなった場合、持って半年だろう」と分析した。(キーウ、口ンドン、ブリュッセル共同)


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ゼレンスキー氏段階的停戦案を初提示(2025/3/6 京都新聞)

 【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、X(旧ツイッター)で、ロシアとの戦闘終結に向けた段階的な停戦案を提示した。捕虜解放や空・海域での戦闘停止を経て、米国の協力の下、最終的な和平合意を結ぶ内容。ゼレンスキー氏が具体的な停戦プロセスを公言するのは初めて。早期停戦を目指す米国に対し、和平実現の意思を示した形だ。

 ロシアのペスコフ大統領報道官は5日、ゼレンスキー氏が交渉姿勢を示したことについて「肯定的だ」と評価した。一方でウクライナはロシアとの交渉を法律で禁じたままだとし「アプローチは前向きだがニュアンスは変わっていない」と述べた。

 ゼレンスキー氏は、2月28日のトランプ米大統領との会談決裂については「こんな事態になって遺憾だ。今こそ、正しい方向に戻す時だ」と訴え、関係改善に意欲を示した。

 フランスのマクロン大統領は今月、陸上での戦闘を除く1ヵ月間の停戦を提案する考えを表明。陸上の停戦は戦線が長いため監視が困難だとしており、ゼレンスキー氏も陸上での停戦には言及していない。

 ゼレンスキー氏は、第1段階として捕虜解放のほか、ミサイルや無人機によるエネルギーインフラへの攻撃を含む上空での戦闘停止を提案。ロシアが同様の措置を取れば、海上での即時停戦も可能との見方を示した。その後「迅速に手続きを進め、米国と共に強固な最終合意を結びたい」としている。米国との鉱物資源の権益に関する交渉に間しては「鉱物と安全保障に関する協定にいつでも、どんな形式でも署名する用意がある」と強調した。


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仏「核の傘」で欧州防衛(2025/3/7 京都新聞)

【パリ共同】フランスのマクロン大統領は5日、トランプ米政権とロシアの接近を受け、フランスの核兵器の抑止力による欧州各国の防衛を検討する方針を表明した。国民向けテレビ演説で同盟国と「戦略的議論」を始めるとした。トランプ政権が欧州の安全保障に消極的な姿勢を示す中、欧州ではロシアの脅威が急拡大。ドイツも仏英の「核の傘」に期待し、米国の核抑止力に長年依存してきた欧州の安全保障は歴史的転換を迎える可能性がある。

 ただ核を使用する決定権は各国でなく、フランスにあると強調した。フランスは欧州連合(EU)で唯一の核兵器俣有国。6日には欧州の防衛力強化を協議するEU特別首脳会議がブリュッセルで開かれた。核抑止力も議題に上るとみられる。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によると、2024年1月時点の世界の核弾頭総数は1万2121発で、ロシア(5580発)、米国(5044発)、中国(500発)に次ぎフランスは290発で世界4位。

 マクロン氏は欧州と強固な同盟を築いてきた米国について「欧州側にとどまると信じたいが、そうでない場合の備えも必要だ」と述べ、欧米の深刻な亀裂を示唆した。

 国民に「ロシアの脅威は存在し、欧州の国々やフランスにも影響を与えている」と警告し、防衛費増額の必要性やロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援継続に理解を求めた。

 ドイツで次期首相就任が確実視される保守、キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は2月28日付の地元紙のインタビューで、フランスや英国と欧州独自の「核の傘」について協議したいと語った。マクロン氏は5日の演説で「(メルツ氏の)歴史的な呼びかけに応じた」と述べた。

 ロシアとウクライナの和平案を巡り、戦争終結後にフランスや英国など欧州の有志国がウクライナに平和維持部隊を派遣する計画などについて論議するため、来週パリに各国の軍参謀長を集めて会議を開くことも明らかにした。


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【インサイド】ウクライナ、支援再開要請へ(2025/3/12 京都新聞)

【ワシントン、キーウ共同】ウクライナと米国の両政府は11日、サウジアラビア西部ジッダで高官協議を開いた。ロシアの侵攻を受けるウクライナは米国が停止した軍事支援と機密情報提供の再開を要請するとみられる。見返りに米国は、トランプ大統領がこだわる早期和平に向けて領土や安全の保証で譲歩を迫る可能性がある。2月の首脳会談決裂後、両政府高官の対面協議は初めて。

 米国が支援を停止して以降、ロシアは攻撃を激化させ、ウクライナは劣勢に立たされている。ゼレンスキー大統領が提唱する海空の部分停戦案のほか、鉱物資源の権益も議題になりそうだ。

 米側はルビオ国務長官とウォルツ大統領補佐官、ウクライナ側ばイエルマーク大統領府長官やシビハ外相、ウメロフ国防相が出席した。

 イエルマーク氏は11日、協議に先立ち記者団に「安全の保証は大切だが、今最も重要なことはどのように和平プロセスを始めるか協議することだ」と語り、安 全の保証よりも和平交渉を優先させるとの認識を示した。

 ルビオ氏は10日、和平実現に向けて「ウクライナ側に、どのような譲歩の意思があるのか把握する必要がある」と説明し「その上でロシアの立場を見極めたい」と強調。軍事支援の再開は「協議が鍵を握る」と語った。

 鉱物資源の交渉については、ルビオ氏が「詳細を詰める必要がある」と指摘した一方、ウィツトコフ中東担当特使はFOXニュースで「大きく進展すると期待している」と述べた。

 ブルームバーク通信はウィツトコフ氏が今週ロシアを訪問し、プーチン大統領と会談する計画だと報じた。

 ゼレンスキー氏は4日、無人機やミサイルによる攻撃と海域での戦闘を対象にロシアに部分的な停戦を呼びかけた。


【インサイド】戦況悪化 妥協やむなし

【キーウ共同】ウクライナが11日の米国との高官協議で優先したのは、2月の首脳会談決裂で損なわれた信頼の回復だ。決裂後に米国が武器支援と機密情報提供を停止したことで戦況は急激に悪化。ゼレンスキー政権はこれまで米国にロシアの再侵攻を防ぐ「安全の保証」を求めてきたが、国民の命を守るためには、妥協はやむを得ないとの立場に転じたようだ。

 会談直後、英国やフランスなどの欧州主要国はウクライナとの連帯を相次ぎ表明。ウクライナ国民も米大統領に物申す姿勢を高く評価し、ゼレンスキー大統領への信頼度は上昇した。

 しかし米国は、支援停止という「想像以上に厳しい措置」(西側政府高官)を取り、ロシア軍も攻撃を強化。ロシア西部クルスク州では、越境攻撃するウクライナ軍が窮地に陥っている。米誌タイムはウクライナ政府高官の話として、ロシアからウクライナに向かう爆撃機の動きもつかみにくくなったと伝えた。

 トランプ米大統領は鉱物資源の共同開発に関する合意文書署名のため訪米したゼレンスキー氏に「ウクライナには(交渉)カードがない」と断じ、取引しないなら 「われわれは手を引く」と一方的に譲歩を求めた。会談は険悪な雰囲気となり、物別れに終わった。


ロシアに最大無人機攻撃

【モスクワ共同】ロシマ国防省は11日、モスクワ周辺など各地で10日夜から11日未明にかけてウクライナ軍の無人機攻撃があり、計343機を撃墜したと発表した。2022年2月のウクライナ侵攻開始以降で最大のロシアへの無人機攻撃となった。

 地元当局者などによると、首都郊外のモスクワ州で3人が死亡し、15人以上が負傷。同州では住宅や多数の車が損傷した。国防省によると、同州上空で91機、ウクライナ軍の越境攻撃を受けるクルスク州では132機が撃墜された。

 ロシア航空当局によると、攻撃の影響によりモスクワ周辺のシェレメチェボやドモジェドボなどの主要空港で民間機の離着陸が一時停止された。

 ロシアに対する過去の大規模な無人機飛来としては、170機以上を撃墜したと国防省が発表した昨年9月1日未明にかけての攻撃があった。