手足が不自由で電動車いすを使う香川県の公立中3年の男子生徒(15)が、設備面などを理由に入学を断られた県内の私立高を腕試しで受験する際、交渉に当たった中学校長から「合格しても入学しない」との確約を求められていたことが30日、分かった。生徒と保護者は約束の上で1月に受験し、合格通知を受け取った。その後、公立高に合格した。 文部科学省は改正障害者差別解消法に基づく対応指針で、正当な理由なく障害者だけに条件を付けるのは不当な差別に当たるとしており、保護者は中学校長の対応に不満を募らせている。 中学校長は取材に「公立高の腕試しで受験することを私立高に示す意図があった。受験を認めてもらうためには致し方なかった」と話している。 文科省の指針は、障害者との対話を通じて相互理解を深め、対応策を検討するととを求める。指針を知らなかった保護者は、私立高と直接対話する機会がないまま、中学校長の求めに応じて約束していた。「一方的に我慢を強いられ、中学校長からも『受けさせてもらえて良かったね』という雰囲気を感じた」と振り返 る。 保護者によると、昨年夏、中学校長を通じて私立高に入学可否を問い合わせたが、校舎にエレベーターがないことなどを理由に「受け入れは難しい」と回答があった。秋ごろ、公立高を第1志望に切り替え、私立高の試験だけでも受けられないか打診した。 中学校長はこうした経緯を認め「受け入れ可否にかかわらず、試験結果だけで合否を判断してほしいと生徒側が希望していたため、確約が必要だと考えた。私 立高にも伝えたが、求められたわけではない」と説明した。 ![]() 障害者差別解消法:障害の有無を問わず、分け隔てなく暮らせる社会の実現を目指し、2016年に施行された。障害を理由とした不当な差別を禁止し、障害者の申し出に応じて過重な負担にならない範囲で生活上の困り事や障壁を取り除く「合理的配慮」の提供を国や自治体に義務付けた。民間事業者は努力義務だったが、24年4月に義務化された。事業者の違反に直ちに罰則が科されることはないが、改善が困難な場合、国は報告を求めることができ、助言や指導、勧告の対象になる。 |
文章や画像、音声などを作り出せる生成人工知能(AI)が社会に浸透していく中、教育現場はどう向き合うべきか。教員の負担軽減などへの期待の一方、子どもたちへの影響は未知数な部分もある。生成AIを用いた授業を行った東京都内の小学校を取材した。 1月、東京都西東京市立上向台小で行われた4年生の道徳の授業。王子の像と、献身的なツバメとの友情や自己犠牲を描いた童話を題材に、生成AIを活用して「幸福とは何か」などを考えた。 授業は元小学校教諭でベネッセ教育総合研究所の庄子寛之主任研究員が担当。終盤、対話型生成AI「チャットGPT」を使った。児童らが出した意見の感想などをAIに聞いた後、貧しい人々のために王子とツバメが犠牲になる結末について、庄子さんが「自分が死んでも人を助けることは正しいこと?」と尋ねた。 すると、AIは「助け合いは素晴らしいことですが、自分を犠牲にしすぎないことが大切」との意見やその理由、気持ちを周囲の人にどう伝えるかを助言。児童らは画面を真剣に見つめ「自分にできることを大切にしたい」などと感想を話した。 授業での生成AI活用のメリットについて、庄子さんは「同じような答えになりがちな時に、AIが少し外れた意見を出すことが刺激になり、学びが深まる。いわば新しい視点を与えてくれる“転入生”みたいな存在です」と話す。 この日、生成AIの利用は10分程度だった。「通常の授業の流れを軸に、使うポイントを絞ることが大切。あくまでもツールの一つです」と庄子さん。年齢制限があることなど「ルールや注意点を順守させることも重要」と付け加えた。 校務に活用する教員も。同校の斉藤友恵教諭は「書類など文章のひな型作りに使い、便利さを感じています」。別の教員も時間割作成などに役立てているという。 酒見裕子校長は「今はまだ使えない小学生でも、授業を通じて生成AIを使って何ができるか、正しく知ることが将来につながると思います」。 文部科学省は昨年12月小中高校など向けの指針を改定、公表。小学生による直接的な利用は「発達の段階などを踏まえたより慎重な見極めが必要」とする一方、校務での活用は働き方改革への期待などから「有用」とする。模索は続きそうだ。 生成AIに詳しい国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は「子ども一人一人に適した教材づくりなど、これまでできなかったことが可能になる」と指摘。「悪用すれば子ども自身が被害者や加害者になる可能性もある。やって良い、悪いを自ら区別できる教育が必須。大人も含め、リスクを正しく知ることが大切です」と強調した。 ![]() |
日本財団は27日、発達特性が原因で約100万人の大学生らが学生生活や就職活動で強い困難を感じている可能性があるとの調査結果を発表した。同財団や大学関係者らは発達特性に関する周囲の理解や支援の充実を訴えている。 日本学生支援機構の調査によると、大学や短大、高等専門学校に在籍する発達障害のある学生は2023年度には約1万千人おり、10年前に比べて約300人増えた。同財団は学生生活や就職活動での困難の実態を把握するため、全国の20〜25歳の若者にインターネットを通じて調査し、約1万7千人から回答を得た。 調査では「必要な単位の把握や履修登録などの手続きが難しく、1人でできなかった」「アルバイトで複数の指示をこなすことができずパニックになることがあった」など32項目を設定した。そのうち、8項目以上当てはまった人を「困り感が強い若者」と定義し、14%が対象となった。全国の20〜25歳の人数から考えると、推計で約100万人に上るとしている。 困り感が強い若者に多く当てはまった項目内容として、「少人数で話し合う時にほとんど話せなかった」「提出物の期限などをよく忘れた」「掃除や整理整頓が極端に苦手」などがあったという。 調査に携わった京都大学生総合支援機構の村田淳准教授はオンラインで参加し、障害がある人の働き方のバリエーションを増やすべきだと指摘。「企業や支援機関、行政が三つどもえになり、多様な人が多様な社会進出を目指せるメカニズムを構築することが必要」と話した。 ![]() |
環境省は26日、発がん性が指摘される有機フツ素化合物(PFAS)で浄水場や水源のダムなどが汚染された問題を受け、PFAS除去に使った活性炭を適切に保管・処理するよう都道府県と政令市に通知した。水の浄化にPFASを吸着する活性炭を使ったり、使用済み活性炭を再生・処分したりする管内の業者に周知するよう求めた。 通知は地方自治法に基づく、法的拘束力のない「技術的助言」。活性炭は化学物質の吸着材として広く使われており、同省は関連業者に保管実態などを調査した上で対応を検討した。吸着させたPFASが保管場所で雨水などに触れて溶け出し、新たな汚染が起きることを防ぐ狙いがある。 企業が活性炭の再利用を外部委託する場合、PFASを含むことを事前に明示し、受け入れ可能かどうかを確認することを求める。長期保管する場合、雨水が当たらない対策を取り、PFAS漏出がないか定期的な確認を求める。汚染の恐れがある事案が起きた場合、保管者は自治体と情報共有することが望ましいとした。廃棄物として処理する場合、代表物質のPFOAなら1100度以上での焼却を推奨するなど環境省ガイドラインに沿った対応の徹底を求める。 PFASは水に溶けやすく、自然環境中では分解されにくい特徴がある。国はPFASの水質基準値を、代表物質PFOAとPFOS合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)とし、法律で検査を義務付ける方針。今回はこの値を超える水を処理した事業用活性炭が対象となる。岡山県吉備中央町では、業者が使用済み活性炭を保管容器が破損した状態で山中に放置し、溶け出したPFASが土壌や地下水に浸透。浄水場を汚染したとされる。 ![]() |
京都府教育委員会は2025年度、大規模災害の発生時に被災した府内外の学校を支援する「京都府災害時学校支援チーム」(D−EST京都)を立ち上げる。災害時に教職員でつくるチームを派遣して、教育活動の早期再開や児童生徒の心のケアにあたる。 D―ESTは、Disaster Education Support Teamの略で、災害派遣医療チーム(DMAT)の学校版。取り組みは文部科学省が推進しており、都道府県にも設置を促している。現在、宮城、三重、兵庫、岡山、熊本の5県が設置済みだという。 府教委は南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率が「80%程度」とされる中、支援態勢の構築を決めた。 チームは府内の公立学校の教職員や府教委職員で構成する。活動内容は、児童生徒の学習支援やトイレ指導、授業再開に向けた準備の手伝いなどを想定する。24年1月の能登半島地震では、学校が避難所に指定されるケースが多く、教職員が避難所運営や住民の対応にあたり、授業再開に支障が出た。平時は、勤務校の防災対策・教育推進のりリーダー役のほか地域連携などを担う。 当初、22人でスタートする。メンバーは活動の先進県である岡山県の養成研修に参加したり、能登半島地震で被災地支援に入ったりした経験がある。6月から、京都市を除ぐ府内の公立小中高、特別支援学校の教員らを対象に府独自の養成研修を行い、27年度には200人態勢とする。 21日に上京区の府教育委員会で行われた委嘱状の交付式で、前川明範教育長は「災害発生時には対応の要で、被災者の希望の光となる存在だ。府教委の防災対策のリーダーとしての自覚と子どもたちの学びを止めないとの強い決意をもって、活動してほしい」と訓示した。 チーム員に委嘱された南部智彦・社会教育課総括社会教育主事(小学校教員)は、能登半島地震の被災地支援で派遣された経験を振り返り、「子どもたちを含む地域との連携が学校教育の早期再開に大切だと感じた。現状をしっかり把握して、適切な対応ができるようにしたい」と抱負を述べた。 ![]() |
文部科学省は25日、2026年度から主に高校1年生が使用する教科書の検定結果を公表した。専門教科を除き、合格した11教科236点のうち235点(99 %)が2次元コード(QRコード)を載せ、小中学校に続いてデジタル教材での学びが広がる。生徒が自ら問いを立て主体的に進める探究型の学習を促す内容も充実した。現行の学習指導要領に対応した2回目の検定。 中教審は現在、タブレット端末で利用するデジタル教科書を紙と同様に正式な教科書とする方向で議論しており、教科書のデジタル化は今後、加速するとみられる。 QRコードからは、英語の発音練習や理科の実験動画などの多様な教材に接続・される。全24点が合格した英語コミュニケーションーTは、QRコードの数が計1527個、1点当たり63・6個と前回の1・3倍に。東京書籍の公共は接続先のデジタル教材が18倍の316点となった。 生成人工知能(AI)は幅広い科目で言及され、仕組みや利用方法だけでなく、リスクや課題も記述。性の多様性や男女共同参画は公民と家庭科の全点が掲載し、選択的夫婦別姓は家庭科の全点が取り上げた。実用的文章を扱う「現代の国語」は小説を載せた教科書が6社9点に増えた。 探究型の学習は、再生可能エネルギーや災害対策といった題材で課題解決方法を考えさせる内容などが盛り込まれた。 今回の検定では、申請された高校の教科書全253点が合格。専門教科を除いた平均ページ数は321ページで、前回から2・9%増加した。 デジタル教科書の正式化を巡り、文科省は小学校で次期学習指導要領が全面実施される30年度からの導入を目指している。教科書の一部を紙で、残りをデジタルで作る「ハイブリッド」形式も認める方向で、リンク先のコンテンツの扱いや検定範囲などが課題となる。 全253点が合格 中学技術で不合格 2024年度検定の対象は主に高校1年生が使用する教科書で、商業などの専門教科を含め、申請された253点全てが合格した。これとは別に、23年度検定で不合格になった中学の技術・家庭(技術分野)の1点が再申請したが、不合格となった。 専門教科を除いた高校教科書に付けられた検定意見は6470件で、前回より2955件減少。教科別では理科の2658件が最も多く、家庭科の974件、英語の920件と続いた。 不合格はイスペットの教科書で、教科書検定審議会は「欠陥が多く、教科書として適切性を欠いている」とした。 全国7会場で検定資料公開 文部科学省は教科書検定での記述の修正過程などが分かるよう、5月から全国7会場で関係資料を公開する。申請段階の教科書、教科書検定審議会の検定意見書や議事要旨などが閲覧できる。 会場と公開期間は次の通り。開場時間や休館日は各会場で異なる。 教科書研究センター(東京都江東区)5月19〜30日▽岩手県立図書館(盛岡市)6月10〜16日▽埼玉教育会館(さいたま市)6月18〜22日▽新潟市立中央図書館(新潟市)6月6〜10日▽和歌山県立図書館(和歌山市)6月13〜18日▽香川県教育センター(高松市)7月8〜15日▽長崎県庁(長崎市)6月12〜16日 デジタルの導入で教材が多様化し、学び方の選択肢は広がる。例えば、中学までの学習内容の復習など、紙の教科書では紙幅の都合で掲載しづらかった内容にも触れられるようになると、生徒は自分に適した教材を選んで習熟度に合わせた学びがしやすくなる。一方で、教員は2次元コード(QRコード)のリンク先を確認した上で教え方を考える必要があり、学校現場の負担が懸念される。中教審作業部会はデジタルを正式な教科書に位置付ける案を示したが、現場の教員や子どもの声に耳を傾 け、慎重に議論を進めるべきだ。 新しい高校の教科書では、多くの教科で性の多様性やダイバーシティーに関する記述が盛り込まれた。家庭科は全ての教科書が取り上げ、選択的夫婦別姓や同性婚、LGBTQ(性的少数者)、ジェンダーギャップ(男女格差)について記載。多様な家族の在り方を考え、全ての人が自分らしく生きるために、議論を促すエ夫がみられた。 「あなたにとって、名字はどんな意味を持っているだろうか」。第一学習社の家庭基礎は、選択的夫婦別姓に関する国の世論調査結果を掲載し、生徒に問いかけた。結婚するとどちらかが姓を変えなければならず、変更する配偶者は多くの手続きが必要となると指摘し、夫婦の姓をどうしたいか考え、他の生徒の意見も聞くよう求めた。 実教出版の家庭基礎は、2023年時点で36力国・地域で同性婚が認められ、パートナーシップ制度がある国も多いと説明。同制度の課題を紹介した上で、法律で同性婚を認めている国と認めていない国のどちらが自分の考えに近いかを問いかけた。 事実婚といった新たな家族の在り方や性の多様性に関する記述も多く、保健体育の教科書にはダレントのはるな愛さんが登場した。 ジェンダーギャップでは、家庭科の複数の教科書が給与や家事労働時間に男女格差があるとの国の統計を掲載。東京書籍の家庭基礎は「1960年代以降『男は仕事、女は家事・育児』という性別役割分業意識が一般化し強まっていった」とその背景を指摘した。 大修館書店は「あなたのジェンダーチェック」と題し、「力仕事は男性がするものだ」「『おふくろの味』というように料理は女性がするものだ」といったリストを提示し、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)について考えさせた。 教育とジェンダーに詳しい九州大の河野銀子教授は「高校生段階から日本の社会課題に関する客観的なデータや国際比較を知ることは重要。人によって考えが異なる問題について、他者の意見を聞き、自分の考えをまとめることは社会を生きる上で力となる」と話した。 【情報T】生成AI 活用とリスク プログラミングなどを学ぶ必修科目の情報Iの教科書で、発展著しい生成人工知能(AI)が大きく取り上げられた。各社は活用方法だけでなく、著作権侵害といったリスクも記述。選挙期間中に交流サイト(SNS)で拡散するフェイクニュースについて扱った教科書は影響の大きさを考えさせ、注意を促した。 開隆堂出版は「生成AIと仲良くなろう」と題し、6ページにわたって特集した。AIに文章で指示を与え、動画やゲームをつくる方法を解説しただけでなく、注意点として氏名や生年月日の入力を避けること、生成された文章は正確性の確認が欠かせないことを挙げた。 画像生成AIを取り上げ、著作権侵害について考えさせたのは実教出版。大量の画像が容易に作成できるため、著作権侵害の増加が予想されるとの意見を紹介し、規制の在り方を生徒に考えさせた。別の教科書は「リポートをAIが出力したのか生徒が書いたのか評価が困難」と身近な問題点を指摘した。 文部科学省は2024年12月に示した小中高校向けの指針で「リスクや懸念に対策を講じた上で利活用を検討すべきだ」としており、同省担当者は「各社がこの指針を踏まえた」と分析した。 SNSと選挙を巡っては、24年い11月の兵庫県知事選で真偽不明の情報が拡散し問題となった。東京書籍の教科書は、トランプ米大統領が初めて当選した16年の大統領選で「ローマ教皇がトランプ氏支持を表明した」との誤った情報が出回ったことを例示し、SNSの活用には注意が必要と呼びかけた。 【公民】「核軍縮に消極的」を修正 今回の教科書検定でも、公民分野で政府側の立場や見解と異なる記述に文部科学省が検定意見を付けて修正させるケースが相次いだ。日本が核軍縮に「消極的」と説明した文章が大きく変わり、太平洋戦争中の徴用工の問題に関連した「連行」との表現も「動員」に変更された。 「政治・経済」の1冊は、安全保障や核軍縮などの説明に4ページを充てた。ただ「日本はなぜ核軍縮に消極的な姿勢を示し、さらには防衛費を増大する方向に転換したのでしょうか」との文章に、文科省は「誤解の恐れがある」と修正を求めた。 その際に、核不拡散に関する外務省の基本的な考え方を教える必要があることを教科書会社に伝えた。結果として「日本はなぜ防衛費の増大を決断したのでしょうか」との説明だけが残った。 選挙制度に関し、有名人が票を集める「人気投票」になることへの是非も題材となった。検定申請の段階では「ある有名人が『国会議員のスキャンダルを暴く』ことを公約に掲げて当選」などと、2022年の参院選で問題となった実例が紹介されていた。文科省が、選挙制度の意義を丁寧に説明するよう求めたため、教科書会社側が記述を大幅に変えて合格となった。 著名人の現職参院議員や元議員らの実名を掲載した一覧表に「政治的援助となる恐れがある」と検定意見が付き、表ごと削除された。 徴用工についての「朝鮮半島から日本に連行された」との記載は「政府の統一的見解に基づいた記述がされていない」との理由から「連行」が「動員」に変わった。21年に閣議決定された答弁書に基づく検定意見だった。 学習指導要領が授業で取り扱うよう定める竹島や尖閣諸島は、全ての地理歴史、公民の教科書が扱った。従来どおり「固有の領土」と明記するよう求める検定意見が散見された。 【現代の国語】出版社困惑 半数が小説掲載 実用的な文章を扱う必修科目「現代の国語」は、18点のうち9点が小説を掲載した。文部科学省が「小説が入る余地はない」などとしていた2020年度の初検定では、小説を載せた第一学習社の教科書が合格し、シェア1位に。掲載を見送った他社からは不満が噴出した。今回の検定では、小説を載せた教科書会社が目立った。 掲載されたのは、芥川龍之介の「羅生門」や太宰治の「富嶽百景」など、教科書に長年掲載されてきた作品が多い。第一学習社は夏目漱石の「夢十夜」を読み、母校の中学生向けに紹介文を書くという学習活動を盛り込んだ。小説は“資料”という体裁だ。 一方で、小説を「書く」や「話す」の活動に十分位置付けられていないと判断された教科書は、「指導要領の内容に照らし、扱いが不適切」との検定意見が付いた。 高校の国語は『現代の国語』と、小説や古文・漢文を学ぶ「言語文化」の2科目が必修。文科省は初検定前の説司会で「『現代の国語』に小説が入る余地はない」と強調していたという。 これを受け多くの社が「小説を載せたら不合格になる」と掲載を見送った。だが、あえて載せ合格した第一学習社は一時「従来の『現代文』教科書のイメージで使用可能」と宣伝し、採択でシェアトップに。「正直者がばかを見た」(編集者)などと、他社には不信感が残る結果となった。 文科省は、小説の掲載は「本来想定されていないが、『書く』『話す』で取り上げることを禁じているものではない」とし、当初の説明と異なることについては「考え方が十分伝わっていなかった」と釈明した。 ![]() |
陸海空3自衛隊を一元的に指揮する防衛省の常設組織「統合作戦司令部」が24日、発足した。司令官は米軍と運用・作戦面での調整も担当。中国やロシア、北朝鮮が日本周辺で軍事的圧力を強めており、日米の一体化をさらに進め、共同対処能力の向上を図る。 自衛隊の統合運用を推進し、大規模災害を含め即応力を高める狙いもある。 戦後80年の節目に平時から3自衛隊を束ねる強大な権限を持つ自衛官中心の組織が始動した。政治が軍事に優先する文民統制の観点から適切な部隊運用がなされているかどうか厳格な監視が必要となる。 米側も日本政府との合意に基づき、在日米軍司令部の権限を強化して「統合軍司令部」に再構成し、統合作戦司令部のカウンターパートにする計画を進めている。一方、米メディアは卜ランプ政権が支出削減策の一環で在日米軍強化の停止を検討していると報道。日本政府が進める米軍との連携強化に大きく影響する可能性がある。 東京・市谷の防衛省で24日、記念行事があり、中谷元・防衛相は編成完結式で「司令部新設はわが国の安全保障上、極めて大きな意義を持つ」と訓示。初代司令官の南雲憲一郎空将(59)は記者会見で「日米同盟を基軸に、より望ましい安全保障環境の構築に寄与したい」と述べた。 司令部は約240人態勢。今後は防衛相命令に基づき、司令官が平時から部隊の状況を把握する。有事の際には戦力配分から作戦実行まで受け持ち、領域横断作戦を展開。反撃能力(敵基地攻撃能力)を持つ長射程ミサイルも運用予定だ。統幕長は防衛相の補佐が中心的な職務となる。 陸海空3自衛隊の指揮を一手に担う統合作戦司令部が新設された背景には、有事への対応が複雑化していることがある。軍事的合理性の観点から常設司令部の設置は理にかなっている面もあるだろう。ただ部隊の運用情報は機密性が高い。司令官による権限行使の適正性をどのように国民に示すのか。政府には重い課題が突きつけられている。 司令官は陸海空自トップの各幕僚長と同等の将官で、自衛隊の新たな「顔」となる。ただ各幕僚長とは異なり定例の記者会見は予定されておらず、司令官の考え方や情勢認識を国民が把握するのは難しい。他国と武力衝突のリスクを招くような運用は決して許されない。民主主義国家の要諦である文民統制がきちんと機能しているのかどうか、国民が適切に判断するためにも、政府は説明責任を果たさないといけない。 防衛省の常設組織「統合作戦司令部」が始動した。陸海空3自衛隊の一元指揮だけでなく、米軍と運用・作戦面でのカウンターパートも担う。日米の軍事面での結束がより強まる見通しだ。一方、制服組と呼ばれる自衛官には、有事の際に部隊運用に集中できるよう、政治と「距離」を取りたいとの思惑も。組織の膨張が意思決定を遅らせるとの懸念が残り、想定通りに機能するかどうかは予断を許さない。 司令部新設は2022年策定の安全保障関連3文書に明記された。14年閣議決定の集団的自衛権の行使容認、15年成立の安保関連法など、軍拡を進める中国、ロシアなどを念頭に進めてきた日米同盟強化の一環だ。自衛隊にはこれまで部隊運用に特化した組織がなかった。関係者によると、台湾有事への危機感を強める米側から、運用・作戦面での連携窓口が整備されていないという不満が何度も伝えられていた。ある制服組の高級幹部は「これで米とのパイプがより太くなる。情報共有も一 気に進むだろう」とみる。 米側も在日米軍司令部の権限を強化して「統合軍司令部」とする計画を進めている。だがトランプ政権が日米間の合意を覆し、在日米軍強化の停止を検討していると米メディアが報じた。別の幹部は「突然、何を言い出すか分からない政権だ。この先もずっと歩調を合わせられるだろうか」と本音を漏らす。 自衛隊内には、米軍との一体化とは別の狙いを指摘する声もある。「東日本大震災などの大規模災害が起きると、政治対応に追われ、部隊運用どころではなかった」。自衛隊幹部が打ち明けた。 これまで部隊運用を担ってきたのは制服組トップの統合幕僚長だった。防衛相補佐という役割を兼ね、首相官邸で状況を説明しながら、部隊から警戒監視活動などの報告も受けていた。事態の緊迫度が高まるにつれ、統幕長の負担が増す構図で、周辺国の軍事活動や災害が重なる「複合事態」ではパンクしかねないとの指摘があった。 幹部は「これからは政治の対応は統幕長に任せ、司令官は部隊運用に集中する。政治の相手をしなくてよくなったのが最大のメリット」と語る。 ただ司令部幹部は自衛官が中心で、背広組の文官は「司令官補佐官」のみ。「1人では何もできない」。ある防衛省関係者は文民統制への影響を口にした。 ![]() |
2023年10月にパレスチナ自治区ガザで戦闘が始まって以降、ガザ側の死者が5万人を超えた。イスラエル軍は今月18日に大規模攻撃を再開し、つかの間の停戦は事実上崩壊した。「誰も止めようとしない」「次は自分が死ぬ番だ」。さらなる被害拡大が懸念され、疲労困憊の住民。実際の死者数ははるかに多いとの分析もあり、専門家は人口比での死者数が「桁外れ」だと指摘する。 「もう逃げる気力がない」。ガザ最南部ラフアで避難生活を送るナジアさん(34)が電話取材に声を絞り出した。イスラエル軍は23日、ナジアさん家族7人が暮らす周辺に退避を通告した。攻撃を拡大するとの意思表示だ。中東メディアは、荷物を抱え、徒歩でラフアから北部に逃げる大勢の住民の様子を伝えた。 ナジアさんの両親は続く避難生活に疲れ切り、一家は退避を断念したという。だが、生きるためには飲み水や食料を確保しなければならない。ナジアさんは「泣く気力すらない」と訴えた。 戦闘前のガザの人口は222万人ほどで、約44人に1人が死亡した計算になる。世界の紛争の戦死者を調査している英ロンドン大のマイケル・スパガット教授は、死者の人口比は「桁外れの多さだ」と強調。イスラエルがガザ境界を封鎖していることで「住民の移動はガザ内に限られ、攻撃から逃れるのは非常に困難だ」と指摘し「ほかの紛争でも類を見ない状況だ」と説明した。 死者数は、イスラエル軍がガザ北部の包囲を進めた23年11月6日に1万人を上回った。南部に攻勢を強めた12月に2万人、24年2月に3万人、8月に4万人をそれぞれ超えた。スパガット氏は、特に死者数が急増したのは戦闘開始から6〜8週間、空爆による被害が大きかったとの見方を示す。依然がれきの下敷きになっている人も多いとみられ、死者数はさらに膨らむ恐れがある。 ロンドン大衛生熱帯医学大学院などの研究チームは今年1月、ガザ保健当局の発表は実際の死者数より約40%少ない可能性があると英医学誌ランセットに発表した。昨年6月までの死者数が対象だが、死者のうち59%を女性や子ども、高齢者が占めると推定。民間人被害を回避していると主張するイスラエル軍の説明には疑義が生じる。 「5万人の中には、私の娘2人がいる」。北部ガザ市の親戚宅に身を寄せるニダルさん(31)は、力のない声で電詰取材に応えた。 ニダルさんは、攻撃を再開したイスラエル軍と、ガザ住民の犠牲を止められないハマスの双方を批判した。その上で「国際社会も無関心だ」と無力感をあらわにする。「死者がたとえ10万人になっても、ガザで誰が死んだか、世界は気にしないだろう」(エルサレム共同) 【エルサレム共同】イスラエル軍は23日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスにある南部最大のナセル病院を空爆し、AP通信によると、手術を受けたばかりの少年(16)と、イスラム組織ハマスの政治部門メンバーが死亡した。イスラエル軍はハマスを狙った「正確な攻撃」と主張。18日の攻撃再開後も多くの民間人が巻き込まれており、批判が強まりそうだ。 ガザ停戦が事実上崩壊する事態を招いたイスラエル軍の攻撃再開から25日で1週間。米国のウィツトコフ中東担当特使は23日、FOXテレビのインタビューで、ガザ停戦が事実上崩壊したのはハマスに責任があると一方的に非難した。 ガザ保健当局は24日、2023年10月の戦闘開始以降のガザ側死者が5万82人になったと発表した。うち1万5600人以上が子ども。18日の攻撃再開後の死者は730人になった。 ガザ保健当局は24日、ナセル病院への空爆で「大規模な火災が起き、医療機器が破壊された」と説明。イスラエル軍は21日にはガザ地区唯一のがん治療専門病院を爆破した。国際人道法は医療機関への攻撃を禁止している。中東メディアによると、24日も各地で空爆や地上攻撃が続き、20人以上が死亡した。 ![]() |
与野党は23日のNHK番組で、2026年度から私立を含めて本格実施される高校授業料無償化を巡り議論した。自民党の柴山昌彦氏は、教育の質確保などのため関連予算を「抜本的に増やす」と意欲を表明。立憲民主党の津村啓介氏は、都市部と地方で格差が拡大しかねないと懸念を示した。 柴山氏は、無償化について「いろいろな学校に行ける選択肢を子どもたちに与えるもので、一歩前進だ」と評価した。毎年6千億円程度の財源が必要となるため、教育予算を確保する方策として「教育国債は非常に魅力的だ」と述べた。 津村氏は、無償化に伴う副作用も大きいと指摘。私立に通う世帯への就学支援金の上限額が45万7千円に引き上げられる点を踏まえ「都市部の私立と地方の公立の格差が拡大する設計になっている」と語った。 日本維新の会の斎藤アレツクス氏は、自治体の財政力によって教育政策に差があるとして「地域閣格差を埋め、機会の均等を確保するためには全国的な教育無償化が重要だ」と意義を強調した。 共同通信社の世論調査で高校授業料の無償化を巡り、私立も所得制限なく支援することへの賛否を政党支持層別に見ると、自民党支持層と日本維新の会支持層で反対がそれぞれ53・4%、60・8%と多数を占めた。公明党支持層は反対が29・7%。高校授業料の無償化は維新が主張し、2026年度から私立を含めて本格実施することで、この3党が合意した経緯がある。 このほか支持政党別の反対の割合は、立憲民主党61・7%、国民民主党72・2%、れいわ新選組54・2%、共産党61・7%となった。「支持する政党はない」を選んだ無党派層も50・1%が反対と答えた。 年代別の反対の割合は、若年層(30代以下)51・1%、中年層(40〜50代)58・2%、高年層(60代以上)58・4%だった。 ![]() |
【エルサレム共同】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザで攻撃を拡大する中、イスラエルの人質家族らが交渉継続による解放実現を政府に訴えている。悪化する戦況に家族らは焦燥感を募らせる。18日のガザ大規模空爆以降、国内では相次いでデモが発生。参加者は「人質の命はまだ救える」「首相は退陣を」と声を上げた。 イスラエル国会やエルサレムのネタニヤフ首相宅周辺には18日以降、数千人規模のデモ隊が集結。警察との小競り合いも起き、警察は鎮圧のためデモ隊に放水した。 イスラム組織ハマスはガザで依然59人の人質を拘束中とみられる。死亡した人も多いとされる。 「戦闘をやめ交渉に復帰することが全ての人質を連れ戻す唯一の方法だ」。2023年10月のハマスの奇襲で拉致され、その後殺害されたとみられる人質男性の妹は18日、デモで訴えた。「人質は想像を絶する恐怖に耐えている。救うため全力を尽くさなければならない」と語り、政府へのいらだちを隠さなかった。 ネタニヤフ氏は、ハマスが人質解放を拒否したなどとして攻撃を再開し、軍事圧力を強化。停戦交渉については「戦火の下でのみ続ける」と主張する。16日には自身の側近の金銭疑惑を捜査中だった国内治安機関長官の解任の意向を表明。自らに疑惑が及ぶのを避けようとしたとみられる一方、ガザ攻撃で人質を危険にさらしており、デモ参加者は「『独裁国家』は国民を守れない」と吐き捨てるように話した。 ![]() |
イスラエルがパレスチナ自治区ガザヘの攻撃を再開した。ネタニヤフ首相はイスラム組織ハマスが米国の停戦案を拒否したためだと主張するが、政権存続のための極右偏重が実情で、恒久停戦がまた遠のいた。「平和の使者」を自称し仲介役を担うトランプ米大統領はガザとウクライナの二正面で難題を抱えることになる。 「この数カ月間伝えてきたように、これは正当な措置だ」。イスラエルの極右政党「ユダヤの力」のベングビール党首は18日、ガザ攻撃再開を歓迎した。対パレスチナ強硬派で1月のガザ停戦合意に反対し、政権を離脱していたが、今回の大規模空爆後、復帰を表明した。ネタニヤフ氏が必要としていたのが、まさにこのベングビール氏の支持だった。 今月末までに2025年の予算案の承認を国会で得なければ、ネタニヤフ内閣は解散・総選挙に追い込まれる。史上最も右寄りの政権は、連立に参加する宗教政党や極右政党の利害が複雑に絡み合う。徴兵制を巡っても対立が生じており、「ユダヤの力」の協力がなければ予算案承認が見通せない状況だ。 イスラエルとハマスが合意した停戦第1段階の期限は今月1日に切れた。双方はその後の交渉の進め方で対立。暫定的な停戦延長を主張するイスラエルに対し、ハマスは恒久停戦につながる第2段階への即時移行を要求。「ユダヤの力」が恒久停戦に向けた協議に反対している以上、ネタニヤフ氏にハマスの要求に応じる選択肢はなかった。 第1段階が期限を迎えて以来、停戦合意は曖昧な状態に陥った。イスラエルとハマスの非難合戦が続く中、突然、米国がハマスと異例の直接交渉に乗り出した。ハマスは米国人の人質解放に前向きな姿勢を示し、イスラエルを無視して米国に秋波を送った。直接交渉は1度きりとみられるが、頭越しの交渉にイスラエルは米国に対する懸念を深めた。 ネタニヤフ氏は攻撃再開について「ハマスを標的とした攻撃で、人質奪還も目的としている」と正当化するが、国内でも動揺が拡大。ガザでは依然59人の人質が いるとみられている。人質の家族会は「恐怖が現実人になった。衝撃と怒りを感じている」と表明し「政府は人質を見捨てることを選んだ」と指弾した。 トランプ氏は1月20日の2期目就任前からガザ停戦を実現したと豪語し、自身の外交成果と誇示してきた。蜜月関係にあるネターニヤフ氏に寄り添うように「人質を解放しなければ地獄が訪れる」といった発言を繰り返し、ハマスけん制を続けている。 レピット大統領報道官は今回の攻撃に関し、FOXニュースで「イスラエルから相談を受けた」と明かし「米国を恐怖に陥れようとする勢力は代償を払う」とハマスに警告した。 ただ卜。トランプ政権が現在、最も時間と労力を割く外交課題はロシアとウクライナの戦争終結に向けた和平交渉。米ニュースサイト、アクシオスの記者は「ガザ の戦闘が再開すれば、米政権はその停戦交渉にも巻き込まれることになる」と指摘。同時並行の対応が迫られれば交渉力がそがれるリスクがあると分析した。(エルサレム、ワシントン共同) イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザヘの大規模空爆を実施した背景には、トランプ米大統領の存在があるだろう。米国がイスラム組織ハマスとイスラエルの停戦交渉を仲介する中、トランプ氏はハマスが人質を解放しない場路、イスラエルの攻撃を容認していた。 停戦合意の第1段階は今月1日に期限を迎えたが、イスラエルのネタニヤフ首相には元々、恒久停戦につながる第2段階には進む気がなかった。連立を組む極右勢力が戦闘継統を主張し、政権維持のために配慮する必要があるためだ。実際、イスラエルは2月に始まった停戦交渉に代表団を送らないこともあった。 イスラエルでは最近、ハマスが体制な立て直し再び越境攻撃を計画しているとの見方も流布されており、イスラエル側はガザ攻撃のタイミングを計っていたのではないか。今回の攻撃では犠牲者が増えたが、住民に避難指示を呼びかける前に人口密集地を爆撃した可能性がある。 ただイスラエル国民の間には厭戦感が広かっており、予備役招集に応じない人も増加、職業軍人の中には退役を選ぶ人も出始めている。戦闘が再開しても、イスラエルが以前のように大規模な地上部隊を展開することは難しいだろう。ハマスも将来の展望を描けておらず、戦闘が再びずるずると続く恐れがある。(共同) ![]() |
国土交通省が18日発表した京都府内の公示地価で、商業地が前年から7・9%上昇し、上昇率は東京都に次ぐ全国2位だった。特に京都市南区の京都駅南側は 伸びが際立ち、京都駅一帯で見られる力強い地価上昇が南下している状況を示した。けん引するのは増加の一途にあるインバウンド(訪日客)需要で、多くの在日コリアンが暮らす地域にも土地売買や開発の波が押し寄せている。 京都駅八条口から徒歩5分の南区東九条上殿田町では、キャリーケースを引いて歩く外国人観光客の姿が絶えない。特に八条通に面した商業地の地価上昇率は1年で21・9%に達し、京都府内で最も高かった。 地価を強力に押し上げるのが、観光需要だ。日本政府観光局によると、2024年の訪日客数は過去最多の3686万人に上り、新型コロナウイルス禍前の記録を塗り替えた。人気の旅行先である京都は空港がなく、訪日客の多くが東海道新幹線京都駅に降り立つ。このため八条口近くでは、今なお大小の宿泊施設の新規開業が続く。 京都駅周辺の地価は近年、目を見張るペースで上昇している。23年に京都市立芸術大が西京区から駅北東に移転し、京都中央郵便局の再開発も決まった。京都の玄関口で官民の開発投資が集中し、公示地価調査の京都府代表幹事を務めた不動産鑑定士の村山健一氏は「地域が変わるという期待感が大きい。京都駅一帯の地価水準は(府内トップの)四条河原町に迫る勢いがある」と認める。 地価上昇の波が京都駅から南下していることについて、村山氏は「宿泊施設の適地が少なくなり、土地需要は九条通辺りまで広がっている」とみる。さらに駅南側は「まだ割安感がある」ため、伸びしろが大きいという。今回の調査で京都駅の北と南の最高地価を比べると、南側が4割低かった。 市内で一棟貸しの宿泊施設を10軒以上運営する「樂安居」(南区)は、駅南側の東九条地域で新たな施設を来年2月に開業する。担当者は「四条河原町より価格が安く、この地域で探していた」と話す。会社のオーナは台湾出身。記録的な円安で、日本の不動産は海外から「お買い得」に映る。投資マネーも流入し、特に訪日客の多いエリアは地価が跳ね上がる。 地価が高騰する東九条地域は、多くの在日コリアンが生活する地域だ。地元で生まれ育ち、東九条西山王町の自治会長を務める朴実さん(81)は「庶民的だった街が変わってしまった」と複雑な心境を語る。 長屋がひしめき、住民が肩を寄せ合って暮らした地域は今、マンションやホテルが次々と誕生する。最近もゲストハウスを開業する外国籍のオーナーがあいさつにやって来た。空き家の民家はすぐに買い手が付き、開発計画の紙が張られる。「住民がどんどん減っている。土地の値段も上がり、ここで暮らすのは大変になる」。朴さんは変貌する古里の街並みを見つめ、寂しそうにつぶやいた。 ![]() |
北海道旭川市で2021年、いじめを受けていた市立中2年広瀬爽彩さん=当時(14)=が自殺した問題を巡り、遺族側が市に約1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟で、学校などが広瀬さんのわいせつ被害や自殺未遂を認識しながら「いじめから目を背けて(広瀬さんの方に)責任転嫁し、漫然と放置した」と遺族側が主張していることが17日、関係者への取材で分かった。 訴状の詳しい内容が判明するのは初めて。いじめが起きてからの学校現場や市教育委員会の具体的な対応はこれまで明らかになっておらず、今後の審理が注目される。市は17日、「訴状の内容確認や整理を踏まえ、弁護士と相談しながら真摯に丁寧に対応していく」とコメントした。市は既にいじめがあったことを認め、精神科医らの専門的知見の活用などを柱とする再発防止策をまとめている。 関係者によると、遺族側は訴状で、広瀬さんが19年6月22日に川で自殺未遂をした翌日、教頭らが広瀬さんの携帯を見て、先輩から性的な画像を要求されたやりとりなどを確認していたと指摘。担任が5日後の市教委との協議で、学年で孤立していたことやトイレで吐くなどの体調不良が出ていることも共有したが、孤立はいじめでなく自閉スペクトラム症(ASD)に由来するとの認識を示したとしている。 いじめ防止対策推進法がいじめの定義とする「被害者の心身の苦痛」が明らかだったのに、学校は「発達特性と家庭環境の問題が原因という誤った見立てに固執し、いじめが原因と認めようとしなかった」と主張。市教委が認知を嫌ったのは「社会の重大な関心事となるのを避けるため」で、学校側が注意義務を尽くしていれば自殺は起きなかったとしている。 市の再調査委員会は24年6月に調査結果を公表。広瀬さんは入学後から性的要求など7件のいじめを受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。「い じめがなければ自殺は起こらなかった」と結論付けた。 ![]() |
学校法人東大寺学園(奈良市)が教員に残業代の一部を支払わなかったとして、奈良労働基準監督署は17日、労働基準法違反の疑いで、法人としての学園と校長(64)ら計3人を書類送検した。 書類送検容疑は、学園の中学と高校の教員計36人の、昨年10月分の時間外・休日労働に伴う残業代の一部、計約130万円を支払わなかった疑い。学園によると、残業代の大半が部活動に伴うものだったという。 2023年12月、教員の時間外労働を把握せず、割増賃金を払っていないとして、署から是正勧告を受けた。署によると、昨年11月に再度調査し、未払いが判 明した。 学園は取材に「事実を重く受けとめ、今後は制度改革によって法令を順守していく」とコメントした。約130万円は既に支払ったとしている。 ![]() |
京都府内で働く外国人労働者が昨年10月時点で前年比22・0%増の3万4786人と過去最多を更新したことが、京都労働局の調査で分かった。2割の伸びは2年連続で、直近3年で1・6倍に拡大した。ネパールやスリランカなど南アジア出身者の増加が目立っている。 同局によると、新型コロナウイルス禍に伴う渡航制限で外国人労働者が一時減少した2021年は0・9%減の2万1356人だったが、22年に増加に転じ、23年は前年から22・8%伸びた。外国人を雇用する事業所も24年10月は11・5%増の5837カ所と過去最多となった。 国籍別のトップはベトナムで、13・3%増の8863人。2位は中国で9・2%増の6519人となり、両国で全体の4割を占めた。増減率でみると、ミャンマーが約2倍の1841人に急増し、ネパールが1・7倍の2870人、スリランカが1・6倍の1188人、インドネシアが1・5倍の2472人となった。 こうした背景には、記録的な為替の円安に伴い、日本の賃金水準が先進国の中で相対的に低下している現状がある。日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると、 東アジアで韓国や台湾が海外人材の受け入れを強化し、ベトナム人労働者が一部流れているという。一方で日本での就労のハードルは欧米よりも低く、自国に比べて賃金が高いため、東南アジアの一部や南アジアからの労働力が流入している。 ネパール出身でジェトロの「高度外国人材スベシヤリスト」を務めるエンピ・カンデル氏によると、母国の経済が停滞し、月給は円換算で2万〜3万円が相場という。「金銭的に魅力のある海外に働きに出ようとする意欲が高い」と指摘し、日本は有力な出稼ぎ先の一つという。 一方、カンデル氏は安易な雇用に警鐘を鳴らす。日本語の習熟度を考慮せずに採用し、社内の支援体制が乏しければ離職につながるとする。不法就労や犯罪に結びつく恐れもあるといい、「企業は採用計画や育成体制を整えて受け入れることが重要だ」と訴えている。 ![]() |
都道府県の2025年度当初予算案は、人口減少対策として女性に限らず、進学などで大都市に出た若者らの地元就職を促す事業も目立つ。帰郷しない本音を探る意識調査も予定され、若者流出の背景を詳しく分析しようとする地域もある。一方、東京も財政力を武器に若者向けの事業を充実させており、地域間による人材奪い合いの様相を呈している。 愛媛は「愛媛版ワーキングホリデー」を創設。就職活動前の大学生らが、県内企業で就労体験できる仕組みで、期間中の宿泊費や交通費を県が補助。「良さを知ってもらい、就職先の候補にしてほしい」(担当者)として、地域での行事や子育て家庭へのホームステイなどの体験も計画している。 「海外進出する企業も、学生に人気の製造業もあるのに」。富山県の働き方改革・女性活躍推進室の担当者は、県を離れた女子学生への聞き取りで、県内企業の実績が認識されていない実態を知った。25年度は意識調査を本格化し、県内企業が選ばれるための方策を探る。 岡山は、大阪など関西圏へ進学した女子学生に特化したUターン促進事業を開始する。県外に進学した後に地元で就職した先輩との交流会や、聞き取り調査を実施。担当者は「生の声から必要な施策を見極めたい」と意気込む。国も東京一極集中の是正につなげようと、東京圏の大学や大学院に進学した若者が地方で就職するため、自治体が行う事業を財政面で補助。25年度は新たに、転居にかかる費用や、家業を継いだり地方公務員になったりした人への支援も補助対象に加える。 ただ国の制度では対象から外れる人もおり、宮崎は、―社目の就職先を短期間で辞めた「第二新卒」に向けて創設する給付金の対象を幅広くする。移住後に非正規で働く人や、東京圈を含め都市圈での居住期間が5年未満の人たちだ。担当者は「自由な働き方を好む今の若い人たちに合った形にした」と説明する。 一方、若年層の転入が多い東京は近年、子育て支援などを充実。25年度は、都内で教員や技術系公務員となった人の奨学金返還を支援する。ある自治体関係者は、潤沢な予算を背景とする都の事業に「地方が到底できないことばかり」とため息を漏らし、自治体だけの取り組みでは地域間の競争になってしまい、限界があると訴えた。 ![]() |
生活保護費の基準額引き下げは生存権を保障する憲法などに違反するとして、京都市の受給者ら32人が国や市に減額処分取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判 決で、大阪高裁は13日、請求を退けた一審京都地裁判決を変更し、原告全員の減額処分を違法として取り消した。原告1人当たり1万円の損害賠償請求は退けた。 同種訴訟は29都道府県で起こされ、各地の一、二審判決で判断が分かれている。高裁段階での原告側勝訴は3件目。 佐藤哲治裁判長は判決理由で、生活保護世帯と一般世帯との間の消費構造に「無視できない相違がある」と指摘。物価の下落で保護堪爾の可処分所得の増加があったとはいえず、引き下げにより「実質的な購買力を維持することができない」とし、厚生労働相の判断は裁量権の逸脱や過誤があるとした。 判決後に大阪市内で開かれた原告側の集会で、原告の一人は生活費の節約を努力してきたと振り返り「判決には高揚した」と喜びを語った。 判決などによると、国は2008〜11年に物価が下落したとして13年8月からの3年間で基準額を平均6・5%引き下げ、保護費計約670億円を削減した。 21年9月の一審判決は、国の財政事情などを考慮する必要があり、引き下げの判断に裁量権の逸脱や乱用があるとは言えないと判断していた。 厚労省は「判決内容の詳細を精査し、関係省庁や自治体と協議した上、今後適切に対応したい」とのコメントを出した。 ![]() |
学校法人光華女子学園は12日、京都光華女子大(短期大学部、大学院含む)と京都光華中学・高校(いずれも京都市右京区)を、2026年度入学生から男女 共学化すると発表した。大学は共学化に合わせて「京都光華大」と名称変更し、新学部も設置する。(以下略) 85年もの「女子教育」の伝統を持つ光華女子学園が中高大をそろって共学化する背景には、共学志向の高まりがある。少子化で学生・生徒の獲得競争が激しさを増す中、女子校は特に厳しい状況に置かれている。 「教育の質を確保するには一定の学生数が必要だが、手を打たなければ難しい」 光華女子学園の阿部恵木理事長は12日の会見で、京都府内の私立大入学者数が15年後には光華女子大の入学定員の14倍に相当する7千人も減る、とする国の推計を挙げながら共学化を決断した経緯を述べた。 同学園の幼稚園と小甲高校、大学はここ数年、定員割れが続き、2024年度の学園全体の入学者は4年前から2割以上も減少。抜本的な改革を打ち出す必要に迫られていた。系列校全体の共学化で校種間の内部進学を促進するとともに、一貫教育によるブランドカを強化する狙いだ。 少子化が進み、全国で私立大の6割が定員割れに陥っているとされる。女子大は特に深刻で、京都でも光華女子大を除く5校のうち3校は定員充足率が6割台にとどまる。 2000年代以降、共学化に踏み切る大学が目立つようになる。文系2学部の女子大だった京都橘大(京都市山科区)は05年度の共学化以降、20年間で文理9学部の総合大学に拡大。女子大には設置が少ない理系の学部学科も充実させてきた。 共学化の流れは高校も同様だ。京都西山高(向日市)は男子生徒の受け入れを始めた22年度を境に志願者数が増加に転じ、今春は過去10年で最多となった。森川弘仁校長は「増加分は単純に男子の人数で、女子教育で培った教育活動が男子にも受け入れられた。部活動をする生徒が8割を超え、学校の活気も増した」と話す。 ただ、女子教育には一定のニーズがあるとの意見も根強い。 平安女学院中高(上京区)の今井千和世校長は共学志向の高まりを実感しつつ、「異性を意識して行動を控えることなく挑戦できるから、自己肯定感が高ま。(女性の社会進出を阻む)『ガラスの天井』がある現状においては、女子校が存在する意味はある」と強調する。 京都光華高に娘が通う50代の母親は「多感な思春期に、娘は安心感や落ち着きに魅力を感じて進路を決めた。クラスの中で気構えず、誰とでも分け隔てなく接することができると話している。共学化は寂しいが、決まった以上は学校に協力できるよう努めたい」と話している。 ![]() |
京都府は、小学生以下の子どもに実施している虫歯予防事業「フツ化物洗口」への補助制度の対象を、新年度から中学生までに拡充する。府内では一部市町が独自に中学校でも実施しており、地域によって対象年齢が異なることが課題となっていた。 西脇隆俊知事が12日の府議会予算特別委員会総括質疑で明らかにした。 フツ化物洗口は低濃度のフツ化ナトリウム溶液を少量口に含んでブクブクうがいすることで歯の表面を覆うエナメル質を強化し、虫歯への抵抗力を高める取り組み。永久歯が生える4〜14歳の間に継続実施すると効果が大きい。府ではこれまで、小学生以下の子どもを対象に学校などで実施する市町村(京都市除く)へ経費を補助していた。 一方、亀岡市や南丹市など6市町では独自予算で中学校でも実施し、府内で格差があることに対し府議会で議論されてきた。 新年度からは府の補助対象に中学生も加える。6市町の中学生約3千人分の予算を確保し、今後、他の自治体にも実施を打診していく。 歯の健康は全身の病気のリスク軽減にもつながるため、西脇知事は「若い時期から口腔ケアに関心を持ってもらい、高齢期まで歯と口の健康を保つことにつながるよう取り組む」と述べた。荒巻隆三議員が質問した。 ![]() |
スポーツ庁は12日、公立中学校の部活動改革に関する有識者会議の作業部会を闘き、民間クラブの部活動で保護者が負担する金額の目安を、国が示すように求めることを確認した。地域間の格差を防ぎ、公平性を保つことが目的。自治体などからの要望を踏まえたもので、5月に取りまとめる提言に「検討する必要がある」と盛り込まれる見通し。 運動部活動を地域スポーツクラブなどに委ねる「地域移行」においては、保護者の費用負担が課題の一つとなっている。スポーツ庁の担当者は「公的負担の在り方と併せて、考えていきたい」と述べた。 地域スポーツクラブに関する作業部会はこの日で終了。文化庁の作業部会の内容と共に、有識者会議で提言を取りまとめる。 ![]() |
野村証券などを傘下に持つ野村ホールディングス(HD)は12日、脱炭素を推進する銀行の国際的な枠組みからの脱退を明らかにした。米国で気候変動に懐疑的なトランプ政権が発足したことが影響した。国内の金融機関では三井住友フィナンシャルグループ(FG)に続く動きとなる。 野村HDによると、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」に12日、脱退すると届け出た。同社は「各国・地域で適切な政策を取るため」と説明している。 ![]() |
小学6年と中学3年を対象に毎年実施している全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果公表について、文部科学省は11日、都道府県・政令指定都市別 に平均正答率を出す現行方法を継続する案を作業部会に示した。公表時期は全国平均を7月のままとし、自治体別は8月以降に遅らせる。学校への調査結果のデータ返却を現在より10日程度早めて7月中旬とし、現場の分析時間を確保する。 これまではデータ返却と結果公表の間隔が短く、2024年度はいずれも7月下旬だった。現場の分析時間が不足する一方、平均正答率の順位にばかり注目が集まり、自治体間の過度な競争を懸念する声があった。 案によると、夏休み前の7月中旬に学校ヘデータを返却し、各教育委員会には下旬に提供。全国の平均正答率や全体の分析結果などはこれまで通り7月に公表する。都道府県・政令市別の結果公表は8月以降とし、自治体が特徴を把握しやすいよう、表やグラフを充実させる。 文科省は25年度調査から公表方法を変更したい考え。作業部会では、委員から「平均正答率が出る以上、そこが着目されるのでは」といった意見が出た。 ![]() |
【京大准教授 藤原辰史】 パレスチナのガザを「所有」し、中東のリビエラにする、ガザの住民たちはエジプトやヨルダンに住めばいい、と米国のトランプ大統領が言う。イスラエルの首相は共同記者会見でそれを支持する。 大統領は自身の交流サイト(SNS)にリゾート地と化したガザの様子を人工知能(AI)に描かせた映像を投稿。首相と共に海岸で、水着で寝転がる。米テスラの 社長が金をばらまく。大統領は半裸の女性と踊る。彼の黄金像が輝く。徹底的に破壊した街に侮辱と愚弄の言葉を投げつけるものだ。反トランプ派のアカウントの乗っ取りだと思ったが違った。 世界の劣化 ガザの被害者たちへの「弱いものいじめ」。これはまさに、私たちの世界における劣化の典型例だ。2023年10月、ハマスをはじめとするガザ地区の党派の連合体が蜂起した時には既に、ガザはイスラエルの長年の空爆と厳しい経済封鎖で食料も医療品も尽き、国際援助なしには生存が不可能な限界地帯だった。 政治経済学者のサラーロイは、著書「ホロコーストからガザヘ」の中で、イスラエルが一連の外交政策の中で占領問題の責任から逃れ、国際機関が救うべき「人道問題」にすり替えたことを批判している。 イスラエルが米国からも購入した大量の爆弾を落としてきたその地域で、自分が半裸で寝そべる映像を発信できるのは、どんな精神構造だろう。 ハマスの振るう強権によってガザの民心は離れつつあるが、住民たちがイスラエルに近いパレスチナ解放機構(PLO)主流派のファタハに愛想をつかせて選挙でハマスを選んだことも事実だ。 そもそもイスラエルが建国以後、ガザの住民から土地も水源も家も奪い、他国へ追放していることを「テロ」と呼ばないのであれば、そして、暴力以外に抵抗する 方法がないほど追い詰めることが非難されないのであれば、そこでの蜂起を「テロ」と呼ぶ権利は私たちにはない。そこをリゾート地にして住民を追放することこそ、 幟慄すべき暴力として非難されるべきだ。 二枚舌 ユダヤ人、スラブ人、ロマや障害者を愚弄したヒトラーでさえ、空爆で破壊し占領した地域で金をばらまく映像を作らせたことはない。そんな映像を作れば自分の人品が疑われる程度のことは彼もわきまえていた。今、ナチス登場時にも匹敵する速度で、理念と人間性の破壊が一気に進んでいる。 それが、1938年9月、現地の人々抜きで英仏独伊の指導者らがチェコスロバキア・ズデーテン地方をドイツに割譲することを決めたあのミュンヘン会談に匹敵する程度にまで進んでいることは、ゼレンスキー・ウクライナ大統領に対する公開の場での侮辱からも分かるだろう。 ただ、トランプ政権を擁護するつもりはまったくないが、世界全体の幼稚化に道をつけた大きな原因の一つは、コロナ以降ますます明らかになった欧州諸国の相対的な経済力の低下と、それを背景とした、民主主義を名乗る国々の「二枚舌」だと思う。 昨年は中東やアフリカから地中海・欧州に向かう難民のうち約3千人が死亡または行方不明になったのに、ウクライナの難民はペットとともに歓迎された。映画「グリーンーボーダー」(邦題「人間の境界」)では、ベラルーシのルカシェンコ大統領が招いてポーランド国境に送り込んだ北アフリカ諸国やシリアからの難民が、双方の国境警備隊などから暴力を受けた一方で、ウクライナの難民が丁重に扱われた史実がテーマとなっている。 そのような欧州の国々がロシアや米中に人権を守れというのは説得力に欠ける。入管で他国での迫害から逃れてきた人々を人間扱いしない日本も同様だ。そんな国々では、自身の欲望に忠実な「一枚舌」が力を持つのは必然である。 今後も世界の荒天は続くだろう。外交は下劣になり、行き場のない怒りは容易に暴力に発展するだろう。粗暴は伝染する。政治が野蛮化する空気の中で自分の思想 的変質を止めるのは意外に難しい。トランプ主義と二枚舌外交の双方を否定し、力を振りかざす論理とは異なる理念の再構築に即座に着手せねば、もう世界はもたない。日本はその事業にまい進すべきだ。 ![]() |
三原じゅん子こども政策担当相は7日の参院予算委員会で、こども家庭庁がホームページに掲載している一部資料で発達障害などを「心身の異常」と表記しているのは問題と指摘され、陳謝して見直す考えを示した。 「異常という言葉は医療分野で使われる場合があるが、資料は国民に説明するためのものだ。不快に感じ、つらい思いをした人がいたら率直におわびする」と述べた。石破茂首相も「この言葉を政府として使うことは、改めていかねばならない」と語った。 立憲民主党の古賀千景氏が「こども家庭庁では『発達の異常』という表現がたくさん使われている」と指摘し、改めるよう求めた。 こども家庭庁は、2024年度補正予算の乳幼児健診の支援事業を紹介するホームページ上の資料で「発達障害など心身の異常の早期発見」などと表記している。 ![]() |
京都府教育委員会は6日、少子化の影響で小規模化が進む府立高について、府内全域で学校再編を検討する方針を明らかにした。統廃合や全日制から昼間定時制への変更など、さまざまなパターンを想定している。 府議会文化生活・教育常任委員会で「府立高再編整備の考え方」を示した。再編を検討する基準として、南部地域の通学圏では、2024年度の1年生の学級規模が6学級(240人)未満、北部地域では3学級(120人)未満の学校がそれぞれ複数存在する場合とした。 この基準に該当するのは、南部地域の通学圏である「京都市・乙訓」で5校、「山城」では3校。北部地域では「丹後」で4校、「中丹」で2校、「口丹」で4校となり、全5通学圏が学校再編の対象となった。 1987年度に約4万人だった府内公立中の3年生は、2024年度に1万8千人と半分以下に減ったが、全日制高の学校数は48校と変わっていない。小規模化が進むと習熟度別の指導や多様なクラブ活動が難しくなり、教育活動の停滞を招く恐れがある。 再編のかたちとしては、複数校を統合して新校を開設▽既存校に統合▽全日制を昼間定時制や単位制の学校に変更―などを想定。地域での学校の役割や生徒の通学事情などを総合的に考慮する。基準に該当する学校だけが必ずしも統廃合の対象になるわけではないという。 今後、府教委が作成した原案を基に、各通学圏ごとに関係自治体と協議して再編の実施計画をまとめる。府教委の相馬直子指導部長は「学校再編は、少子化や多様な学習ニーズに対応するために避けられない。高校改革によって学校の特色化や魅力化を進めていきたい」としている。 ![]() |
【ワシントン共同】トランプ米大統領が国防総省ナンバー3の政策担当次官に指名したエルブリッジ・コルビー元国防副次官補は4日、日本は防衛費を国内総生産(GDP)比3%に増やすべきだと求めた。外交圧力をかける可能性にも言及。石破茂首相は5日の参院予算委員会で「日本が決める。他国に言われて決めるものではない」と述べた。 人事承認に向けた米上院軍事委員会の公聴会に臨んだコルビー氏が書面で証言した。トランプ政権が日本政府に対し「建設的だが圧力を伴う手法」で、防衛力増強に向けた政策変更を迫るべきだと訴えた。公聴会で台湾はGDP比10%に増額すべきだと主張した。 ヘグセス国防長官や国防 副長官候補のファインバーグ氏は国防分野の経験が浅く、コルビー氏が政策決定で影響力を握るとの見方が多い。 日本は防衛費と関連経費を2027年度にGDP比2%に増やす方針。コルビー氏は「大歓迎だ」と評価した一方、中国や北朝鮮の脅威に直接さらされている日本の増額がGDP比2%にとどまるのは「ほとんど理解できない」とし、増額のペースも「あまりに遅すぎる」と懸念した。 在日米軍と自衛隊の指揮・統制枠組みを向上させる日米の取り組みを「加速させ、深めるべきだ」とも主張。韓国軍が有事の際に在韓米軍の指揮下に入ることに触れ、この仕組みに「近づける必要がある」と説明した。 コルビー氏は米国と中国の軍事バランスが「急激に悪化した」との認識を示し、中国が台湾を武力統一すれば「大惨事」になると懸念。台湾への軍事装備供与を加速させ、台湾の防衛能力の向上を急ぐ姿勢を示した。 AP通信によると、台湾の防衛費は現在GDP比2・45%前後で、10%はその約4倍に当たる。 ![]() |
京都府と京都市の両教育委員会は5日、2025年度の府内公立高入試中期選抜の志願者数を発表した。同選抜を実施する全日制53校の志願倍率は0・05ポイント減のO・94倍となり、3年連続で1倍を下回って過去最低となった。府教委は、少子化のほかに、多様な生徒の受け皿として人気を集める広域通信制高の台頭の影響が大きいとみている。 全日制の志願者数は、定員6006人に対し前年度比392人減の5635人。学科別の志願者数と倍率は、普通科が5316人で0・98倍(前年度1・03倍)となり、現行の入試制度が始まった2014年度以来初めての定員割れとなった。専門学科が307人で0・64倍(同0・66倍)、総合学科は12人で0・12倍(同0・21倍)。 定時制8校の定員458人に対し、志願者数は普通科100人、専門学科2人、総合学科はゼロだった。 最も志願倍率が高かったのは、開建ルミノベーション科の1・72倍で、宮津天橋宮津学舎の建築科1・63倍、丹後緑風網野学舎の企画経営科1・60倍、京都工学院プロジェクトエ学科橋宮津学舎の建築科1・63倍、丹後緑風網野学舎の企画経営科1・60倍、京都工学院プロジェクトエ学科(まちづくり分野)1・45倍、鴨沂普通科1・41倍と続いた。堀川は1・30倍、嵯峨野は1・30倍、桃山は1・19倍、紫野は1・38倍(いずれも普通科)だった。 試験は7日にあり、合発表は18日。 京都府内の公立高で、中期選抜の募集定員に志願者数が達していない「定員割れ」が広がっている。現行の入試制度になった2014年度では中期選抜の実施校の約3割だったが、25年度は約6割にまで倍増している。 京都の公立高入試は14年度、居住地で合格校を割り振る「総合選抜」から、受験生が志望校を選べる「単独選抜」に全面移行した。受験を早く終わらせたいとの思いから志望者が前期選抜に集中する一方で、中期選抜の全日制志願倍率は14年度の1・14倍を最高に徐々に低下し、25年度はO・94倍まで下がった。中期選抜の募集定員に志願者数が達しなかった学校は、14年度の20校24学科から25年度は33校48学科に拡大した。 定員割れは当初、主に丹後や中丹、口丹に限られていたが、近年は全通学区に広がっていた。25年度に定員に達したのは、京都市・乙訓通学圏にある京都市立高、府立高普通科にほぼ限られており、京都市内においても洛北といった伝統校ですら定員を満たしていない実情にある。 ただ、志願者数は第1志望だけの集計であり、中期選抜は3校まで志望校の選択が可能なことから、府教委は「京都市・乙訓通学圏では、定員はほぼ充足する見込み」とする。 志願者数が募集定員に満たない学校が拡大した要因について、府教育委員会高校改革推進室は「少子化に合わせて、定員数を減らしてこなかったことが大きい」とした上で、広域通信制高への進学者も無視できないとする。 府教委によると、・府内公立中学生の進路状況は14年3月に府内の公立高全日制61・0%、私立高全日制28・6%、通信制高2・4%だった。これに対して、24年3月は公立57・0%と4ポイント減少、私立28・6%と変わらなかった一方、通信制は6・3%に増えた。 国の高校授業料無償化により、「公立離れ」がさらに加速するとの見方もあるが、進学塾「京進」の担当者は「京都の私学は初年度の納入金が100万円を超える学校もある。公立志望の中学生が私学に一定程度流れることはあると思うが、無償化ですぐに大きな影響は出ないだろう」としている。 ![]() |
【インサイド】 春夏合わせて全国最多76度の甲子園出場を誇る龍谷大平安高硬式野球部を30年以上率いた原田英彦監督が、部員への暴行を理由に指揮官を退いた。原田氏は厳しい指導で甲子園通算31勝の実績を残す一方、体罰に対する社会の目が厳しくなっても指導法を変えることができなかった。 「なかなか怒れないし、難しいです。今は精神的に鍛えるやり方ができない」。昨年7月の全国選手権京都大会で敗れた直後、原田氏はそう語った。最近の取材では度々、指導法について愚痴をこぼしていた。 規律の厳守を求める伝統校−。原田氏は龍谷大平安高を象徴する存在だった。練習や試合で気を抜いたり、礼節を欠いたりする行動には厳しい姿勢を貫いた。だが「新型コロナウイルス禍から変わった。(部員が)上下関係を教わっていない。先輩にため口を使うとか、下級生なのに(雑用に)動かないとか。教えてやらないかんのですけど …」。部員との感覚の隔たりは広がっていった。 関係者によると、体罰も辞さない指導は以前から行われていたという。学校の聞き取りに対し、原田氏は「体罰は駄目だと分かっていたが、選手を何とかしてやりたいという思いが強く体罰に至った」と説明したという。今夏の全国選手権を最後に定年で退任する予定だったといい、最後の夏に懸ける思いも暴行につながったのではないか。 京都府立大出身で著書に「体罰と日本野球」がある高知大の中村哲也准教授(スポーツ史)は「過去にも体罰をした経験があるから今回も大丈夫、その方が規律を守らすのに効果的だと考えたのではないか。寮はブラックボックスになりやすく体罰が起こりやすい」と見る。 部活動では今も暴力に頼った指導が根強く残る。文部科学省の統計によると、全国の高校で部活動中に起きた体罰は、2014〜19年度は毎年100件を超えていた。20、21年度は新型コロナウイルス禍で減少したものの、22年度以降は再び増加に転じた。中村准教授は、少子化に伴う部員減で以前に比べて少なくなったとしつつも「部員不足に困らない強豪校には昔ながらの慣習が残りやすい」と指摘。原田氏を含め、選手時代に体罰を受けた経験のある指導者が教え子に体罰を振るう「『体罰の再生』が起きている」とする。 再発防止策について山脇護校長は「他校の事例も聞いて検討する」と具体策は示さなかった。規律を重んじながらも、暴力、暴言といったハラスメントから脱却できるか。京都の名門野球部に大きな変革が求められている。 ![]() |
全国の私立大577校のうち、入学金や授業料などを合わせた初年度納入額を2025年度に値上げするのは、約2割に当たる107校に上ることが4日、民間企業の調査で分かった。物価高などが要因とみられ、家計の学費負担増の傾向が鮮明になった。 学費検索サイト「学費ナビ」を運営する「アイガー」 (東京)が、サイトに登録された大学577校の学費を調べた。私立大では入学金や授業料の他に施設設備費などを支払う。同じ大学でも学部・学科によって学費は異なる。 調査結果によると、初年度納入額を引き下げた大学も22校あったが、うち11校は卒業までにかかると想定される総額でみると、改定前より高くなっており実質的な値上げだった。 学問系統別では、初年度納入額の値上げ幅の平均は、理学系約4万9千円、工学系約5万2千円、人文科学系約4万7千円、社会科学系約4万4千円、教育系約4万4千円など。実験や実習が多い理系の方が大きい傾向があった。 同社は、少子化で大学間の競争が激化しており「学生を呼び込むために初年度の学費を据え置く一方、設備更新といった出費に伴い2年次以降の学費を値上げした大学もある。物価高の影響で、値上がり傾向は続くとみられる」としている。 文部科学省の調査によると、私立大で初年度に納付する入学料。授業料、施設設備費の合計は、23年度は平均136万5281円だった。 ![]() |
京都市教育委員会は、2025年度実施の教員採用試験で、前年度比1・3倍の410人を募集する。公立中学校の1学級当たりの上限人数を26年度から35人(現状40人)に引き下げる国の定数改善を踏まえ、中学校教諭を前年度の1・7倍採用するほか、産休・育休代替者の確保のため小学校や高校、総合支援学校でも増やす。平成以降最大の採用予定数で、400人を超えるのは11年度以来14年ぷり。 市教委によると、採用予定数は小学校が30人増の180人、中学校が50人増の120人、高校が5人増の20人、総合支援学校が20人増の70人など。 25年度実施と同様に採用数3割増だった24年度の受験倍率は3・9倍で、確認できる10年度以降初めて4倍を下回った。23年度の全国平均3・2倍より高いものの、採用数を大幅に増やす25年度はさらなる倍率低下が見込まれるという。 受験者増に向け、市教委は初めて東京都内で採用説明会を開くほか、福祉や医療、情報通信技術、日本語教員などの資格所有者を幅広く1次試験の加点対象に追加する。教職員人事課は「進学などで東京に行った人が京都に戻る流れをつくり、いろいろな技能を持つ人を採用したい」とする。 実施要綱は4日午前、専用サイト「京都で先生になろう!」に掲載する。筆記試験は6月14日で、―週間以上早めた24年度と同時期とする。 ![]() |
児童相談所による子どもの一時保護の際に人工知能(AI)で虐待リスクを判定するシステムの開発を進めてきたこども家庭庁は3日までに、当初予定の2024年度の導入を見送ることを決めた。児相職員の判断を補助する目的だったが、試行段階で約6割の判定に疑義があった。「精度が十分とは言えず、誤った判断を招く危険がある」と説明している。 こども庁によると、システムは実際の虐待事例約5千件を学習させたAIを搭載し、傷の有無や保護者の態度など計91項目のうち当てはまるものを選択すると0〜100の点数が出る仕組み。一時保護の判断の質向上や、児相職員の業務負担軽減のため開発してきた。 24年度、試作版を10自治体の児相で検証。過去の虐待事例100件を入力したところ、判定の正確性が疑われるケースが約6割に上った。中には、直ちに一時保護すべき事案だったのに、体にあざが残らなかったことなどからリスクが著しく低い2〜3点と出た例もあった。 こども庁は今後、児童や保護者との面談記録といった文字情報をAIが学習するシステムを構築し、児相の負担の大きい記録業務の効率化を図る。 ![]() |
高校授業料無償化が自民、公明、日本維新の会の3党で合意されたことを受け、京都府の西脇隆俊知事は28日の定例記者会見で、私立高希望者の増加が予想されることを踏まえ「公立高の定員割れを助長しないようしないといけない」と危機感を示した。 合意書では2025年度から国公私立で年収を問わず全世帯に年11万8800円を支給。私立に通う世帯には26年度から所得制限を撤廃し、上限額を現行の年39万6千円から45万7千円に引き上げることが明記されている。 ただ、国に先行して無償化を実現した大阪府では、設備などが優れる私学の人気が高まり、公立を選ぶ生徒が減る「公立離れ」が課題となっている。 京都府内は無償化前だが、府教育委員会・京都市教委の調査によれば25年度進学の府内中学3年生の内、全日制公立高の志望割合は52・2%で過去最低を更新。すでに公立を選ばない生徒が増えている。府内の私立高の数は43校と全国でも比較的多く、授業料が無償化されれば大阪同様、公立離れが加速する可能性がある。 会見で西脇知事は「教育の機会均等の観点から全国一律に支援してほしいというわれわれの要望に沿ったもので、一定評価している」と無償化自体は評価した上、「教育環境を充実させるためそれぞれの学校が切磋琢磨することが重要だが、制度の運用によって公立高での定員割れなど悪影響が出ないよう十分な配慮が必要だ」と国に対応を求めた。 ![]() |
京都市は28日、元新洞小(左京区)の跡地活用に向けた公募型プロポーザルについて、契約候補事業者に西松建設(東京都)を選定したと発表した。学生寮や有料老人ホームを建設する計画で、60年間の貸し付け契約を同社と結ぶ。完成時期は未定という。 新洞小は新東洞院通仁王門上ルにあり、敷地は約7千平方メートル。1869(明治2)年開校の上京第三十三番組小が前身で、児童数の減少を受け2013年に錦林小との統合に伴い閉校した。校舎本館は1929年築で、現在、地元の住民団体が会議室などとして使用している。 事業計画では、学生寮は190室を整備し、特定の大学ではなく、さまざまな大学の学生が入寮できるようにする。留学生も受け入れる。有料老人ホームは90室を設ける。運営は学生寮がジェイ・エス・ビー(下京区)、有料老人ホームがベネッセスタイルケア(東京都)が担う。いずれも校舎本館北側に整備する。 校舎本館は外観の面影を残しつつ新本館に建て替え、地域住民が利用できる集会ペースや体育館、倉庫などを設ける。敷地南側には芝生を張ったオープンスペースを設け、学生や高齢者、地位住民ら多様な人が交流する場やにぎわいの創出を目指す。学生寮、有料老人ホーム、新本館はいずれも4階建て(高さ約15メートル)で、貸付額は年4350万円の予定。 提案は昨年9月に受け付けていた。大学教授や地元住民らでつくる選定委員会は「小学校の歴史と記憶を継承し、将来にわたって地域コミュニテブーの拠点となる」などと評価した。市によると、ほかにもう1者から提案があった。3月に市と西松建設で基本協定書を締結し、地元住民を交えて協議会を開催する。 市が閉校した小学校跡地の民間活用を始めたのは2012年。これまでに活用が決まった7校中5校がホテルとなり、学生寮や有料老人ホームとしての活用は新洞小が初めて。市資産イノベーション推進室は「公募でホテルがだめという条件は付けていない。地域の活性化や次世代の活力を生み出すというテーマを地域と決め、結果的に今回の提案になった」としている。 ![]() |