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4月29日 沖縄 米兵事件「人権向き合え」

 日本が主権を回復した1952年のサンフランシスコ平和条約発効から73年となった28日、米軍統治下に残され「屈辱の日」と呼ぶ沖縄県で、過重な基地負担の解消を求める集会が開かれた。今月、米兵の性暴力事件が新たに判明したばかりで「女性の人権に向き合って」と声が上がった。

 例年市民の集会が行われ、この日も雨が降る中、那覇市の県庁前に約60人が集まった。基地で成人女性に性的暴行をしたとして、不同意性交などの疑いで海兵隊員が書類送検された事件を受け、再発防止を求める声が相次いだ。沖縄平和運動センターの共同代表多和田栄子さん(77)は「事件を決して許さず、声を上げて抗議していきたい」と強調。小学校教員伊佐久仁子さん(58)=宜野湾市=は取材に「何度も事件が繰り返されて悲しい。この島に基地は要らない」と声を落とした。

 沖縄には今も在日米軍専用施設の約7割が集中。航空機の騒音に加え、近年は新たな無人偵察機も配備され、住民の不安が高まっている。


【社説】首相は公式に平和発信せよ

 「昭和」の日に考えたい。

 その始まりから、今年で100年である。最初の20年は日本が無謀な戦争に突き進み、敗戦に至る痛苦の時代だった。

 アジアをはじめ多くの国に軍隊を進め、人命を奪い、奪われた果てに、究極の非人道兵器である原爆を国土に受け、無条件降伏した。

 それから80年。今また世界は大量虐殺を伴う二つの戦火に揺らぐ。戦後、国際社会を先導してきた米国の大統領は、独善と横暴の道をひた走る。

 こんな時だからこそ、首相は「日本の戦後」を永続させるため、国内外に決意を示し、世界の平和へ行動する姿勢を正面から語らねばならない。

 戦後50年以降の歴代内閣と同じく、石破茂首相は8月に迎える節目に合わせ、閣議決定による「談話」の公表を検討していた。しかし、見送る考えを固め たという。代わりに有識者から意見を聴取し、先の大戦を検証した上で首相の「見解」を示す方向とされる。

 安倍晋三首相による戦後70年談話で「謝罪外交」に区切りがついたとして、自民党内に新たな談話は不要との意見があり、政権基盤の弱い石破氏が火種に なるのを避けたとみられる。

 そんな内向きな理屈に閉じこもり、個人的な見方で済ませようというなら、惨禍の上に積み上げてきた平和の歩みが、後退しているとも見られかねない。

 国民と世界にこそ、向き直ってもらいたい。

 ロシアのウクライナ侵略、イスラエルのガザ攻撃などで理不尽な暴力が、あまたの人命を奪い続けている。核保有の拡大や脅しがまかり通り、トランプ米 大統領をはじめとする「自国第一主義」が国際社会の分断を深めている。

 日本も先の大戦で国内外に甚大な犠牲者を生んだ。村山富市首相の戦後50年談話は、「植民地支配と侵略」への「痛切な反省」と「心からのおわび」を表 明した公式見解として、国際社会からも評価された。小泉純一郎首相の60年談話も、その内容を踏襲した。

 70年の安倍談話は「反省とおわび」に言及する一方、次世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とした。

 石破氏は3月の自民党大会で、「なぜわが国は戦争に突っ込んでいったのか」「(戦没者)230万人の6割は、疫病や餓死で尊い命を落とした」「国民 は逃げてはならず、消火義務を課せられた」などと問題意識を示していた。

 私的な諮問や聴取ではなく、政府として先の大戦の検証に取り組んではどうか。

 過去の過ちを直視して刻み、平和国家として世界貢献できる日本の独自性を示すことは、広く国益にもかなう。新たな外交や安全保障の土台にもなろう。

 首相は考え直すべきだ。


沖縄では4月28日を「屈辱の日」としているが、本土では4月29日は「昭和の日」、かつての天皇誕生日だ。どちらが正しいのかということではなく、この認識の違いを心にとどめておかなくてはならない。【社説】で求められている首相の「平和発言」は膨大な防衛予算よりもはるかに効果の大きい「防衛」論だろう。


4月28日 政府 5歳児検診、普及支援

 政府は、発育や健康状態を確認する乳幼児健診を巡り、発達障害の早期発見に有効として「5歳児健診」の普及に向け自治体への支援強化に乗り出し。20 25年度から自治体に対する補助を引き上げたほか、子どもを見る保健師らの研修費も後押しする。5歳前後は言語能力や社会性が高まる時期に当たり、言葉の 遅れなどから発達障害の特性を認知しやすく、就学前に適切な支援につなげる狙い。医師の確保や、健診後の支援体制の構築が課題となる。

 1歳半と3歳児の健診、小学校入学の半年前ごろに行われる「就学時健診」は自治体の義務としているのに対して、5歳児健診は任意で23年度に行った自治体は14%にとどまる。こども家庭庁は28年度までに全国での100%実施を目指す。

 健診は地域の保健センターなどで、原則無料で受けられる。身長や体重の測定に加え「片足で5秒以上立てるか」「しりとりができるか」「順番を待つことができるか」といった問診を行い、運動機能や情緒面、社会性の発達を確認する。

 自治体への費用助成は、これまでの子ども1人当たり3千円から5千円に引き上げた。健診を行う医師の養成に向け医師会などへの研修費を支援。発達障害のある子どもをサポートする保健師や心理士向けの研修費も新たに補助する。

 発達障害の可能性がある場合は、必要に応じて専門的な医療機関や障害児通所施設、教育委員会などにつなげ、特性に応じた支援を受けられるようにする。5歳児健診の実施によって、不登校が減少したとの調査結果もある。

 こども家庭庁が5歳児健診を実施していない自治体に理由を尋ねたところ、「医師の確保が困難」や「実施方法が分からない」のほか。「福祉・教育・医療などの連携によるフォローアップ体制の構築が難しい」といった声が寄せられた。


【インサイド】サポート必要な子ども増

 政府が5歳児健診を推奨ずるのは、子どもの発達障害などの特性が早期に分かれば、医療や福祉を含む地域での連携が可能となり、本人や家族の困り事を減らすことにつながるからだ。自治体は就学を見据え、円滑な支援につなげようと健診後もフォローの場を設けるなど工夫する。サポートを必要とする子どもは増えており、医療や教育現場の体制整備は欠かせない。

 「ぐーぱーぐーぱー。まねっこできるかな?」。4月中旬、埼玉県幸手市の5歳児健診で、子ども6人が保育士の動きや指示に合わせて手足や体を動かしていた。運動機能や理解力、コミュニケーション能力などを確認するためだ。

 幸手市は2024年度から5歳健診を始めた。保健師による問診後、身長や体重を測定。他の子どもと一緒に「けんけんぱ」や、ルールに沿った遊びができ るかどうか観察する。

 必要に応じて「就学プレ教室」を案内。作業療法士らとの遊びを通じて得意・不得意を詳しく把握する。発達の個別相談のほか、就学後にスムーズに支援を受けられるよう早い時期から教育委員会に相談するよう助言。市の担当者は「就学前に保護者が子どもの特性に気付き、支援につながるきっかけとしたい」と意義を語る。

 群馬県藤岡市は、5歳児健診で発達の特性が分かった子どもに対し、児童精神科の医師らが「2次健診」を行う。希望すれば、コミュニケーション能力を向上させるトレーニングなどを受けられ、個別相談の場もある。

 文部科学省の22年調査によると、公立小中学校の通常学級に発達障害のある児童生徒は推定8・8%在籍。12年の前回調査から2・3ポイント増加した。小学校だけで見ると推定10・4%だ。

 発達障害のある子どもを対象として、通常学級に通いながら週に数時間程度、少人数で友達との関係づくりなどを学ぶ「通級指導」もある。ただ、教員不足などを背景に、希望しても受けられない事例が相次ぐ。適切なサポートが行われないと、日常生活に支障を来す不安障害や不登校など「2次障害」が懸念される 事態になりかねない。

 慶応大医学部特任助教で児童精神科医の黒川駿哉さんは「何よりもまず、教員の待遇を改善し、子どもが特性に応じて安心して学べる場を増やすことも含め、支援の受け皿を整えることが重要だ」と話す。

 発達障害が一般的に知られるようになって受診希望者が増える中、児童精神科医の不足も深刻。初診までに半年から1年以上待つことも少なくない。黒川さんは「専門医の受診までに、自治体などで心理士が発達に関するアセスメント(評価)を行い、(子どもの特性に合った支援を行う)療育につなげることが必要。本人や家族に対する切れ目のない支援が求められる」と語った


発達障害を持つ子どもの支援は必要なのだが果たして児童健診の対象とすべきものかは議論の余地がある。「就学前に適切な支援につなげる狙い」をその目的としているが、ここでいう「適切」とは何を意味するのだろうか。社会的適応を求めることがその「適切」な支援にあたるとすれば、結局発達障害は当該者の「欠陥」となる。つまり、インクルーシブな社会を建前にはしているが「医学モデル」をいまだに支持しているということだ。日本の福祉や教育が「医学モデル」によって対策されていることはこれまでも幾度となく指摘・批判されてきている。しかし、見直す気配はうかがえない。2019年に国連委出された「パラレルレポート」でも指摘されているし、それに対する「初回報告に対するパラレルレポートの分析」も参考資料とすることができる。


4月26日 環境省 PFAS指針超え 京都など22都府県

 環境省は25日、2023年度に実施した全国の河川や地下水の水質測定の結果を公表した。発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)は、回答が得 られた39都道府県の約2千地点のうち、京都など22都府県の242地点で国の暫定指針値を超えていた。最大値は大阪府摂津市の地下水で、520倍となる1リットル当たり2万6千ナノグラム(ナノは10億分の1)だった。

 242地点のうち新たに指針値超えが確認されたのは42地点で、9都府県にある。過去に超過が確認され、継続測定しているのが97地点。過去の汚染範囲を特定するための調査が103地点。PFASは工場や米軍基地、自衛隊施設の周辺で検出される事例が多いが、同省は測定地点の詳細を明らかにしていない。

 汚染源を特定したと自治体が判断しているのは岡山県吉備中央町など4例だけ。飲み水にも使われていた場所では、既に取水源の切り替えや飲用制限などの 対応が取られているという。

 環境中の水に関する暫定指針値は、代表物質PFOAとPFOSを合わせて1リットル当たり50ナノグラムで、水道水に関する暫定目標値と同じ。広島県東広島市の地下水で1万5千ナノグラム、綾部市の河川で4600ナノグラム、沖縄県宜野湾市の地下水で2200ナノグラムなど、各地で高い値が確認された。

 水質汚濁防止法に基づく環境省調査と各自治体の独自調査を基にPFOSとPFOAの合計値を整理した。任意調査のため8県からは回答が得られなかっ た。前回22年度調査で指針値超えは京都など16都府県111地点だったが、調査条件が異なるため単純比較はできない。


西脇知事綾部・天野川で検出 国に対応提示要求

 京都府内では、綾部市の天野川で国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノグラム)を超える4600ナノグラムを検出した。同市によると、2023年8月と9月に採水した際に、それぞれ2800ナノグラム、6300グラムの数値が出ており、公表数値は平均値だという。環境省は今月21日、PFASの濃度低減の技術実証を同市などで実施すると発表し、今後の数値の推移が注目される。

 西脇隆俊府知事は、25日の定例会見で「国には、科学的知見を積み上げた上で、今後どう対応するのかを示すよう要望している。府としても、できる限り府民の不安が出ないよう努めたい」と述べた。


PFASについての情報が少ないことが不安を余計に煽ることになる。国は早急に汚染源を確認する作業をすすめる、あるいは公表すべきだ。かつての水俣病の教訓を生かさなければならない。それにかかわって宇沢弘文の『自動車の社会的費用』は1978年の出版だが、古典的な価値を持つ書物だ。今読み返しても得られる教訓は多い。なお本文中綾部・天野川での数値が「それぞれ2800ナノグラム、6300グラム」となっているのは「それぞれ2800ナノグラム、6300ナノグラム」の誤りではないか?


4月26日 首相 「氷河期」支援3本柱

 石破茂首相は25日、バブル経済崩壊後に就職難だった40〜50代が中心の「就職氷河期世代」について、就労・処遇改善、社会参加、住宅確保を含む高齢期 を見据えた支援を3本柱として対策を強化するよう関係閣僚に指示した。氷河期世代は、希望の職に就けずに非正規雇用や低賃金で働く人も多く、老後の備えなどに不安があるとされる。

 首相は、氷河期世代支援に関する関係閣僚会議の初会合で「さまざまな困難を抱えておられる方々が大勢いる。ニーズに応じた支援は待つたなしの課題だ」と述べた。検討結果を6月に取りまとめて、経済財政運営の指針「骨太方針」に盛り込む意向を示した。

 検討項目として、賃金上昇に向けたリスキリング(学び直し)の後押しや農業・建設業・物流業での就労拡大、地方創生交付金の活用を通じた就労拡大、公務員や教員としての積極的な採用などを挙げた。

 氷河期世代が高齢化していくことから、家計改善や資産形成に加え、住まいの確保への支援を求めた。高齢者が住宅の賃貸契約を断られる場合も多く、低年金の人は家賃負担が家計を圧迫するとの懸念が背景にある。

 政府は2020〜24年度を集中期間に位置付け、全国のハローワークを通じ、就職相談から職場定着までの一貫した支援や、ひきこもりの自立支援などを してきた。

 政府によると、氷河期世代で不本意ながら非正規雇用で働いていたり、無職が続いていたりして支援が必要な人は約80万人に上る。


バブル崩壊(1990年ころから)で各企業・自治体は新卒採用を控えることで生産性の向上を図った。その結果この世代の人たちの多くは非正規職員として低賃金で働くことを余儀なくされた。その後いわゆる「失われた30年」となるが、その間企業の内部留保は増え続けた(生産性は向上した)が賃金の上昇にはならなかった。ただ、正規職員の身分を保持した人たちは定期昇給によって一定の安定を得られていたといわれている。新自由主義の流れにあって「自己責任論」が喧しくなり、非正規で働くことは本人の責任とされてきた。政治も企業も労働組合も一定の責任はあるはず。


4月25日 沖縄 沖縄と東京で性暴力に抗議

 沖縄県の米軍基地で成人女性に性的暴行をしたとして、不同意性交などの疑いで20代海兵隊員が書類送検されていたことを受け、沖縄や東京で24日、性暴力根絶を訴えるデモが行われた。沖縄では昨年から米兵による性暴力事件が相次ぎ「基地の中も外も危険にからめ捕られている」と怒りの声が上がった。

 「性暴力許さない」「#なかったことにしないで」。那覇市の県庁前では、約30人が色とりどりの花とプラカードを手に立ち「サイレントスタンディング」で静かに抗議した。

 性被害に遭った女性の支援を続ける高里鈴代さん(85)は、再発防止策として今月18日に沖縄市の繁華街で実施された県警と米軍の合同パトロールについて「基地の中でやるべきだ」と憤った。

 東京・霞が関の外務省前では約30入が集まるデモがあった。「米兵犯罪止めろ」「沖縄の声を聞け」と、横断幕などを手にシュプレヒコールを上げた。主催者の1人で会社員の奥誠之さん(33)=東京都=はマイクを握り「性暴力の被害者を増やし続け、日米の安全保障となぜ言えるのか」と怒りをぶつけた。


トランプ大統領の言動の一つひとつに振り回されている世界だが、日本は自動車輸出との引き換えに防衛費の増額が取りざたされている。辺野古や女性をないがしろしながら、日米地位協定一つ変更できない政府が守ろうとしている国益とは沖縄の犠牲の上にあるという認識を持たなければならない。


4月25日 長岡京市教委 児童生徒の心に寄り添う

 長岡京市は本年度、子どもの心身の健康を記録する「健康観察アプリ」を、全14市立小・中学校の小学3年に〜中学3年の児童生徒を対象に本格導入する。これまでの試行実施で子どもが自分の状態を客観視し、教員らに相談しやすいといった成果がみられたためで、不登校やひきこもりにつながる「SOS」の早期発見を目指す。(山田修裕)

 健康観察アプリで子の「SOS」発見

 市内の市立学校では23年秋以降、全4中学校や一部の小学校で、アプリの活用に試験的に取り組んできた。本年度導入されるのはそのうちの一つで、1人1台のタブレット端末を用いて児童生徒自身が「今の体の具合」と「今の気分」を記録。大人に話を聞いてほしいと思った際は教員らを指定してリクエストできる仕組みだ。

 試行実施した際の児童生徒へのアンケートでは、「自分の調子の良しあしに気づけるようになった」との答えが小学校で75・6%、中学校で61・1%となった。「困ったときに自分の気持ちを誰かに伝えてもよいと思うようになった」は小学校が59・5%、中学校が54・4%だった。「先生がより気にかけてくれるようになった」も小学校で50・4%、中学校44・7%あった。本年度は対象を拡大させ、学校側も子どもの変化に早く気付き、対応できるようにする。

 市教育支援センターは「試行実施では、教員からも『子どもたちに話しかけやすくなった』という声がある。多感な時期の子どもたちのサインを見逃さないための『感度』を向上させたい」としている。      

 通いたくなる学校へ

 長岡京市教育支援センターは本年度、「学校風土調査」を市立の小・中学校計4校で試行実施する。不登校の児童生徒が全国的に増加する中、研究機関と連携して学校の「雰囲気」の可視化を図り、課題を改善して通いたくなるような学校づくりを目指す。これまで取り組んできた支援体制の整備との「両輪」で、学校に行きづらいなどと感じる子どもに寄り添いたい考えだ。

 同市立小中の全児童生徒に対する不登校者の割合は、全国平均より少ないものの増加傾向で、2023年度は100人あたり2・65人。

 同センターはこれまで、教室に入りづらい子どもの居場所となる校内教育支援センターの整備や健康観察アプリの試行実施など、悩みを抱える児童生徒の学びの継続を支援する体制づくりを行ってきた。本年度は「多様な学び・SOS早期発見部会」を立ち上げてこれらを引き継ぐとともに、「明日も行きたくなる学校部会」を新設し、学校風土調査にも取り組むことにした。

 調査では、市が包括連携協定を結ぶ大阪大大学院・連合小児発達学研究科の片山泰一教授が代表理事を務める「子どもの発達科学研究所」(大阪市)が開発した尺度を用い、市立小3校、市立中1校で取り組む。「授業が楽しい」「いじめを注意してもらえた」「決まり事に納得がいく」といった質問に無記名で回答してもらい、どの項目が当該校の「強み」または「弱み」か―という風土を分析。同研究所のフィードバックを受け、教員らが課題改善に取り組む。

 調査は年2回行い、結果を見て他校にも展開したいという。同センターは「数値が『独り歩き』したり学校間で比較、競争させたりするものではない」とした上で、「学校に行きづらい児童生徒だけでなく、どの子にとっても学校が過ごしやすい場所になるようにしたい。『見える化』された課題の改善に取り組むことで、『風土』がより向上するようにしたい」と話している。


「個別・最適な学び」が推進される中で、1人1台の端末が学校に浸透してきている。これまでとは違い個人の情報がデジタル化されることにより、学びや健康が極めて個人の問題だと考えられるようになってきていると思える。確かに、一層の個別化が教育の分野だけではなく社会全般のあり様となっていることからそれは分かる。しかし、同時に言われる「協同」が掛け声だけになっているのではないか。学びから協働性がなくなれば学校という場がそもそも必要でなくなる可能性もある。


4月25日 文科省 私大再編へ 指導を強化

 急速な少子化の進行を踏まえ、文部科学省は私立大の規模適正化や経営安定に向けた方策に関する議論を本格化させた。経営改善を促す学校法人を100法人ほどに拡大して指導を強め、学部新設時の審査基準を厳格化する。24日の検討会議では、私立大を取り巻く現状や、撤退・再編の促進に向けた具体的な取り組みなどを確認した。

 文科省は、破綻リスクがあるなど経営難の学校法人に対し、経営改善計画を提出させるといった指導を実施しており、2025年度の対象は42法人。26年度からは経営が悪化傾向にある法人にも対象を広げて100法人程度とし、改善しない場合は募集停止や法人解散などの判断を促す。

 また円滑な撤退を支援するため、弁護士や公認会計士らによる専門家チームを新設する。


本紙1面で「府内4年制で初 ノートルダム女子大29年閉学へ」と報じられている。今後こうした大学が増加するだろうが、都市よりも地方の大学にその傾向は顕著に表れるだろう。ここにきて文科省は再編や撤退を促そうとしているが、そもそも私大の認可を進めてきた政策への反省はない。


4月24日 知事会 公立高校への支援強化要請

 全国知事会は23日、公立高の環境改善に向けた財政支援の充実などを文部科学省に緊急提言した。自民、公明、日本維新の会の3党が2026年度から私立高の就学支援金を拡充すると合意したことを受け、公立離れが進むとの懸念を示した。

 提言は、人口集中地域に多い私立への進学者が増えることで、公立の小規模化や再編統合が加速化すると指摘。空調設備や教育デジタル化など教育環境整備に向けた財政支援を求めた。

 知事会で教育問題を担当する大村秀章愛知県知事が阿部俊子文科相に提言を手渡した。大村氏は面会後、記者団に「子どもたちの学校選択に影響が出ないよう早く制度の骨格を示すべきだ」と強調した。


3党が合意した高校教育無償化をめぐって、懸念を表明する団体が多く出ている。教育を「社会的共通資本」とするなら、そこへ私的な競争を持ち込むことでまさに「コモンズの悲劇」を生み出す政策ではないかとの懸念もある。


4月24日 自民保守グループ 首相戦争検証「中止を」

 自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表・青山繁晴参院議員)は23日、総会を国会内で開き、戦後80年の節目に石破茂首相が調整している先の大戦の検証について、中止を求める方針を確認した。首相官邸に申し入れる方向で日程を調整する。

 首相宛ての要請文では安倍晋二元首相が発表した戦後70年談話で「謝罪外交を明確に終えることになった」と強調。「有識者による戦争検証は中国や韓国に対してわが国を非難する口実を再び与える可能性が高い」と懸念を示した。


日本の戦争責任についての議論を「謝罪外交」とする一部保守派の議論は容認できない。東アジアにおける不安定さは、日米同盟によってもたらされているといってもいいかもしれない。それを一層の軍備強化で補うことは大きなジレンマを呼び込む。石破首相が就任以前に構想した「アジア版NATO」の議論は尻切れトンボになってしまったが、再考の余地はないのだろうか。


4月23日 万博 乙訓全公立小中校が参加

 13日に開幕した大阪・関西万博で、乙訓地域2市1町にある公立の全小中学校が府の無料招待事業を利用して参加を予定している。いずれの市町も「数十年に1回しかない貴重な学習機会」ととらえるが、参加する学年は市町によって異なる。地元の企業では参加対象から外れた児童に無料チケットをプレゼントする動きも見られている。

 向日市は、全小中の小学5、6年と中学2年が4月から9月にかけて順次万博会場を訪れる。市教育委員会は「『命』をテーマにするなど探求的な学びのよい機会」と指摘。各学校に意向を募った結果、中学3年は修学旅行との兼ね合いで見送るなどして参加学年が決まったという。

 長岡京市は全小中の小学4年から中学3年までが参加する。市教委は「何十年に1回しかない機会。国際的な場で今後の学習の意欲につながる」と期待。こちらも各校に参加の判断を委ね、学校で学んでいることとの関連性などを考慮して参加学年が決まったという。

 大山崎町は小学5、6年と中学1年が5月から参加を予定。こちらも参加学年は学校ごとに「学習の効果や移動の安全性などを総合的に判断した結果」(町教委)と説明。「貴重な機会を可能な限り活用して、子どもたちの成長につなげていきたい」としている。

 府が招待事業で補助するのは入場料だけのため、3市町とも移動のバス代は独自補助を実施。その結果、万博に参加する子どもの家庭の負担はないという。一方、万博での校外学習を巡っては、昨年3月に起こったメタンガスの爆発事故や熱中症など安全面を懸念する市民の声もある。各市教委の担当は「これから各学校が下見にも行くので、十分対策をとっていきたい」(向日市)、「万博協会の情報を基に、本当に危険であれば再検討することになる」(長岡京市)と話していた。


なんとも言いようのない「貴重な学習機会」との理由。メディアの発達で受け身的な「見学」ではなく相互的な「交流」の機会も多く作れるはず。移動するバス代を自治体が負担するというが、公立学校としての公平性を毀損することはないのか。


4月23日 松井市長 教育の質 向上に力

 京都市の松井孝治市長が22日、大阪市で開かれた関西プレスクラブの会合で講演した。国が進める高校の授業料無償化に触れ、「最近は日本全体が無償化合戦で、何かタダにしたらいいのかとなっている」と指摘した上で、「京都の芸術文化をもっと学校や児童館の取り組みに入れて、(教育の)値打ちを上げていきたい」と質の向上を重視する考えを強調した。

 高校授業料の無償化では、2026年度から私立も所得制限をなくすため国費が充てられる方針だが、松井市長は「お金があるならやればいいが、公教育をおろそかにしてはいけない。公教育にもっと資源を投入しなくてはいけない」と述べ、京都府と市で連携して公立高の探究型学習を拡充する意向を示した。

 参加者からの質疑では大学政策について問われ、「(京都の)大学間で日本語教師を取り合うのをやめて、日本語や日本文化は大学コンソーシアム京都の共同講座にしてはどうか。そのためには具体的に協力をしたい」と述べた。


高校の授業料無償化についての見識は一定評価することができるものだろう。公立学校の質の向上は必要なのだが、その質が何を意味するのかは定かではない。また、公立高校の「定員割れ」についてはどうした考えを持つのかも「質」として問われなければならない。


4月20日 府教委 「学級開き」など質向上へ講師

 京都府教育委員会は、新年度のスタートで新たな担任とクラスメートが顔を合わせる「学級開き」をはじめとした学級・学校運営の校内研修会に、大学教員らを派遣する取り組みを今夏にも始める。教員の若返りでベテランの技能や経験が後進に十分に継承されず、さまざまな教育課題に 適切に対応できないケースもあるためで、外部の知見を生かして魅力ある学級や学校運営につなげる。

 学級・学校運営において特に重妥視されているのが「学級開き」で、教員が年間を通じて最も力を入れる場面の一つ。新しいクラスの当初数日間の運営がスムーズであれば、教員と児童生徒に厚い信頼感と一体感が醸成されることが期待できる一方、かじ取りを誤れば、学級崩壊やいじ め、不登校といった課題につながりやすいとされる。

 府内の公立小中学校を対象とした研修会では、京都教育大や愛知教育大の研究者、他府県で先駆的な授業を展開する教員、府教委の指導主事らが講師となり、学級開きなど各学校が望むテーマで講演したり、教員の質問に応じたりする。本年度は10校程度で開く予定。研修の内容は他校にも伝え、優れた知見や現場のノウハウを教員間で広く共有してもらう。

 近年は、新型コロナウイルス禍の教育活動や人同士の接触の制限の影響で、対人関係を築くことが苦手な子どもが増え、学級経営が難しくなっているとの指摘もある。府教委学校教育課は「取り組みを通じて、学校が児童生徒にとってより居心地の良い場所にしたい。教員が落ち着いて授業に臨めるほか、不登校やいじめの未然防止にもつながる」と期待する。


【教育】「学級開き」年間運営の鍵に

 「黄金の3日間」とも呼ばれ、1年間の学級運営の成否を占う「学級開き」。新年度のスタートに学校を挙げて力を入れている京都市北区の金閣小を訪ね、担任を受け持つ教員と子どもたちの出会いの場を取材した。(生田和史)

 「『やる時はやる』すてきな四年生になりましょう」

 4年い組の教室に、期待と不安を抱えて足を踏み入れた児童を黒板に書かれたメッセージが出迎えた。

 黒板のメッセージはこう続く。「今のだんかいでどこまでできるかためしてみます!どの指令まで先生がいなくてもみんなでできるかな?」

 指令の内容は、自分のロッカーや自席を見つける、朝の読書活動に使う本を学級文庫から選ぶ、静かに着席して読書するといった4項目。子どもたちは黒板を見ながら教室内を動き回っていた。

 子どもの様子を教室の外から見守っていた新担任の林雅也教諭(44)が頃合いをうかがって登場した。「指令1〜3まではできたが、指令4の読書はたち歩いていた人が少しいた。残念。でも、明日からもできることです」と児童を励ました。

 続いて、林さんがまず自己紹介した。電子黒板を使って好きな食べ物や特技などを説明し、「字を書くのが得意です。(みんなが書いた)漢字の直しは厳しいです。でも先生のクラスになるとみんな字がきれいになります」というと、クラスがどっと沸く。児童の自己紹介では、発せられた言葉を丁寧に拾い、話題を広げて、言葉のキャッチボールを楽しむ。緊張がほぐれて、教室の雰囲気が和んできた。

 2時間目の学年集会の後、3時間目は「最高で最強の4年い組にするためのひけつ!」と題七て、自分や友達を大切にする、正直になる、ルールやマナーを守るなどの注意事項を確認。高さがそれぞれ異なる教室内の机と椅子を児童の体格に合うように配置し直すゲームにも挑戦したところ、目標時間の7分より十数秒早くミッションを達成できた。初めての共同作業を終えた児童はどこか満足そう。林さんは「しゃべらずに集中して取り組むと早くできるという達成感を味わってもらう意味があった」とゲームの狙いを記者に説明してくれた。

 竹林海晴さん(9)は「今日はわくわくした気持ちでこの日を迎えた。先生は雰囲気を盛り上げるような言葉で楽しませようとしていた。面白そうな先生だ。早くクラスメートと仲良くなりたい」と、新たな学校生活への期待感をにじませた。林さんは「子どもたちも話をよく聞いてくれ、やる気に満ちていた」と手応えを感じているようだった。

 金閣小では2年前から年6回程度、採用5年目くらいの若手教員を集めて研修会「金閣塾」を開く。8日には佐藤剛校長(52)が講師を務めて、学級開きをテーマに自身の経験を伝えた。佐藤さんは「学級開きの前にどんな学級にしたいか、決まり事をどう徹底させるか1年間の思いがないといけない。学級開きは楽しいだけでは十分ではなく、学習規律を伝えられないと何でもOKの風潮になり、学級のたがが外れる恐れがある。 最初が肝心だ」と力を込める。


教員の働き方改革の一環なのだろうか。記事を読んで最近見た映画『小学校』(英語タイトルは「The  Making of a  JAPANESE」)を思い出した。そこに登場する6年生担当の先生が、子どもの前で「殻を破ってください」とダチョウの卵のようなものを自分の頭にぶつけるシーンがあった。おそらく「学級開き」だったのだろう。カメラは何のコメントもなくその先生の傷つき血のにじんでいた頭部をクローズアップしていた。この映画はThe Making of a Japanese techerでもある。


4月19日 【論考】 教育は収益を求める「投資」か

哲学者・朱喜哲

 教育に関わる仕事をしていると、やはり春から新しい一年が始まるという感覚がある。そしてこの時期は、学校や教育を巡る報道が目に留ま る。

 最近話題になったのは、自民、公明両党と日本維新の会が合意した高校授業料の無償化だ。この4月からまず公立高が無償化し、来年には私立高も対象となる。

 子育て世代に限らず、今後の教育の在り方を左右する決定だが、予算を成立させる政治日程の都合ありきで、議論が尽くされたとは言いがた い。とりわけ、無償化によって公立高の定員割れが進むことを懸念する声は大きい。

   定員割れの衝撃

 私の住む大阪府では、国に先駆けて2010年から独自の支援を拡充させ、教育改革を推進してきた。一連の政策は、私立を含む高校授業料の無償化、公立高の学区制の撤廃などによって教育における「自由競争」を強化し、生徒に幅広い選択肢を提供することが目的だとされた。

 15年にわたる「改革」の結果、公立高の定員割れが常態化し、直近の入試では府内142校のうち79校が定員割れとなった。大阪は伝統的に公立高への支持が強いが、かつての人気校まで定員割れを起こしたことが衝撃をもって報じられた。

 これが注目されるのは、定員割れが3年続いた公立高を再編整備、すなわち統廃合の対象にするという大阪府独自のルールゆえだ。公教育に市場原理を持ち込み、自由競争を促すという趣旨で12年に導入された条例に基づき、多くの公立高が淘汰されてきた。

 しかし、センセーショナルな報道を前に立ち止まって考えるべきは、「定員割れ」が即座に「不人気」や「不要」を意味するわけではないという端的な事実だ。

  選択肢奪う「公」

 そもそも定員は現状に合っていたのか。それは、労働環境の過酷さが指摘される教職員の過度な負担を前提にしたものではなかったか。少子化を受けて教育行政を縮小するとして、それはただ閉校という極端な手段によって進めることなのか。生徒を一人一人指導できる少人数学級の設置 や、学校の規模縮小など、地域のニーズに寄り添ったやり方をなぜ模索できないのか。

 高田一宏著「新自由主義と教育改革」によると、大阪の教育改革で閉校に追い込まれているのは、中学までの学習内容の学び直しを重視するなど、「セーフティーネット」の役割を担う高校であるという。

 学力や生活に不安を抱える生徒の選択肢を奪う公教育とは、どのような意味で「公」と言えるのか。大阪から学ぶべきことは、教育と学校の在り方について、全てを「自由な市場競争」にさらせばどうなるのか、ということだろう。

 公教育が切り詰められる中、生徒は別の選択肢を求めつつある。角川ドワンゴ学園が運営する通信制高校N高グループの生徒数は合計3万人 を超えたという。これほど多くのこどもたちが地域の高校につながらず、新興の通信制を選んでいるという事実は重い。

 制度疲労に陥った公共セクターが、かつての役割を担いきれず、民間セクターがその「ニーズ」に応えて市場を席巻するという状況が教育に起きている。しかし、民間の私企業はやはり私益を追求せざるをえない。対価なしにサービスは提供できず、採算が取れなければ撤退する。経済合 理性を超えて個別のニーズに対応することもない。

 教育とは「未来への投資」だと言われる。しかし社会という単位で考えたとき、それはリターンを計測して「効果を最大化」するような営みなのだろうか。

 20世紀を代表する政治哲学者ジョンーロールズは、社会とは「皆で取り組む命がけの挑戦」だと説く。いつだってほころんでいて、かろうじて回っているに過ぎない私たちの社会を共に担う新たな一員として、ちょうど一人分の責任を担い、一人分の権利を行使できる「一人前」にこども たちを育てる「挑戦」こそ教育ではないのか。

 だとすれば、私たちおとなは、一人でも多くのこどもたちが、社会から見捨てられたと感じたり、社会を憎悪したりせずに済むように、命がけで知恵と力を尽くさなければならない。


朱さんの論考は基本的に賛成できる。私的な印象だが、高田一宏著『新自由主義と教育改革 』は、大阪維新の会を批判せんがための論考に落ちいっている(もちろん実態はその指定通りなのだが)印象がぬぐえない。解放教育や同和教育の批判的総括抜きに大阪の人権教育の伝統というふうに論じている点は、誤解を招きやすいと思える。


4月18日 全国学テ 200万人参加

 小学6年と中学3年を対象に毎年実施している全国学力・学習状況調査(全国学力テスト) が17日、各地で一斉に行われた。国公私立の小中学校計約2万8千校の約200万人が参加し、国語と算数・数学に加え、3年ぶりの理科を実施。日常の題材に引きつけ、資料を読み解き考える力を問う設問が多く見られた。

 中学理科は、デジタル端末を使いオンラインで出題・解答する新方式(CBT)を初めて導入。ネットワークの負荷軽減のため14日から分散実施した。他の教科は従来通り紙の筆記試験だった。

 文部科学省によると、CBTは動画を使った出題が可能となるほか、児童生徒ごとに異なる問題を割り当ててデータを幅広く収集できるといった利点がある。

 中学理科は、公開問題と非公開問題の計26問で構成。公開問題は、10問のうち6問が全員共通で、残る4問は実施日により異なる問題を出した。ドライアイスの中でマグネシウムが燃焼する動画を見て、どのような化学変化か起きたかを考え、原子や分子のモデルを移動させる設問があった。

 全国学力テストは、国語と算数・数学を毎年、理科と中学英語は3年に1回程度実施する。文科省は今回の中学理科を皮切りに、2026年度は中学英語でもCBTを導入し、27年度からは全教科で紙の問題冊子を廃止する方針。

 今回から結果公表の方法なども変更。現場の分析時間を確保するため、学校などへのデータ返却を従来より10日程度早めた7月中旬とした上で、正答率の全国平均は例年通り7月に公表し、都道府県・政令指定都市別は8月以降に遅らせる。


【小学校算数】面積求め方、文章で表現

 大問1は野菜の出荷や消費をテーマとし、児童が会話して疑問を解消していく流れの出題だった。全国のブロッコリー出荷量のうち、ある都道府県が占める割合の変化を示したグラフと、出荷量そのものの変化が分かる棒グラフの二つを登場させ、増減について文章で説明させる設問があった。

 大問2は、図形の面積を求める方法を理解しているのかを問うた。五角形の面積を求める出題では「三角形と台形」のように、二つの図形に分解して考える方法を提示。計算結果の数値を答えさせるのではなく、公式などを使ってどのような順序で面積を求めるのか、文章で表現させた。

 大問4は日常生活における疑問の解決が主題で、プッシュ型容器に入ったハンドソープが残り何回使えるのかを考えさせた。全体の重さ、容器のみの重さ、プッシュー回分の液体の重さが把握できれば、残りの使用回数が導けると理解するための設問となった。 


【小学校理科】全大問で実験・観察

 全ての大問が実験や観察に基づく出題で、結果を考察、説明させた。児童が自然現象に親しむ中で問題を見いだし、科学的な言葉や概念で考える力があるかを見る狙いがある。

 大問1では、赤玉土の粒の大きさによって水の染み込み方が変わることを調べるため、実験条件を正しく設定させた上で、結果の考察を記述させた。その実験結果から予想を立てる思考力も問うた。

 大問2は、電気の性質を利用したものづくりが題材。アルミニウムや鉄などの性質を正しく理解しているかどうかといった知識や、正しい回路を選ぶ力を測った。

 ヘチマやレタスの発芽を取り上げた大問3では、発芽に関する実験を設計させた。発芽には水や空気、温度が関係していることを理解し、実験で変える条件と変えない条件を整理する力が求められた。大問4は水がテーマ。温度による状態変化を「蒸発」「水蒸気」などと概念的に理解している必要があった。


【中学校理科】実験動画やアニメ登場

 オンラインで出題・解答するCBT方式により、実験や観察に関する動画やアニメーション画像が登場した。生徒ごとに異なる出題も可能になり、生徒が解答した26問のうち、公開問題では6問が共通で、4問が実施日で異なる問題だった。非公開問題では幅広い内容や難易度の問題を出し、生徒ごとに異なるものを解いた。

 共通だったのは、水がテーマの大問。理科の実験で精製水を使う理由を考えさせる授業の場面を設定し、科学的に探究させた。日常生活や社会と関連付けながら水に関する事象を多面的にとらえる必要があり、理科の知識や技能を活用することができるかどうかを見た。水道水の蒸留や微生物の動く様子がアニメーション画像や動画で示された。火を使う実験をテーマにした大問では、ドライアイスの中でマグネシウムが燃焼する動画が盛り込まれた。


【中学校国語】推敲させる目新しい出題

 ウェブページやスライドなど、さまざまな資料から出題された。生徒に文章を推敲させ、解答用紙に書かせる目新しい出題もあった。

 大問1は、中学校で開催する美術展の案内文が題材になった。学校のウェブページ上のお知らせを参考にして生徒が作成したチラシが示され、ウェブページにはない情報をチラシに加えた意図を選択肢から選ばせた。目的に応じて伝えたいことを明確にできるかどうかを見た。

 大問2は、学校の活動を地域に広げるアイデアを、スライドを用いてスピーチするという設定。内容をより分かりやすくするため、どのような助言をするかを問う設問では、工夫の仕方を三つから一つ選び、助言内容を具体的に書かせた。

 大問4は、職場体験でお世話になった生花店に書いたお礼の手紙を、推敲するという内容。下書きを読んで修正した方がいい部分を1つ選んで修正させ、その理由も書かせた。正答が複数あり、読み手の立場に立って文章を整えられるかどうかが問われた。


学力テストを全国で悉皆で実施しなければならない必然性はないことは置くとして、学テが現場に及ぼす影響は非常に大きいといえる。今回の出題の傾向は確かに現実の生活とつながった問題であり、「生きた知識」を問う形になっている。その典型は中学校理科の動画からの出題だろう。しかし、実際の場面ではこの動画のように環境を完璧に統制することはできない。そこにどのような問題があるのかはそれぞれのケースによって異なるだろう。それを科学的な「概念」として理解することに出題意図と齟齬はないのだろうか。


4月18日 京都教職員組合 給特法改正反対 府内教員ら訴え

 教員の処遇改善や長時間労働是正を柱とした教員給与特別措置法(給特法)改正案などの関連法案の国会審議入りを受けて、京都教職員組合は京都市内で法案に反対する街頭宣伝を行った。小中高の教員らが「『定額働かせ放題』の解決にならない」、「教員の数を増やして」などと市民に訴えた。

 同改正案は、公立学校教員に残業代の代わりに支給する基本給4%の「教職調整額」について2026年1月から段階的に引き上げ、31年1月に10%にする。また、若手のサポートなどを担う新たな職位「主務教諭」を設ける内容。

 16日夕の街頭宣伝では、右京区の阪急西院駅前で教員ら26人が参加した。小学校教員の女性は、給食を食べる時間は5分に過ぎず、放課後は事務作業や明日の授業準備などで忙しく子どもとしつかり向き合えないとして、「もっと先生がいたら、子どもに寄り添え、もっと分かる授業ができるのに」と現場の窮状を説明した。保護者の女性も、子が通う中学で年度途中に複数の教員が病欠したとして、「先生が大変だと、子どもも良い環境で教育が受けられない。親として黙っていられない」と声を上げた。

 参加者は、通行人に給特法改正案の見直しを要求する署名を求めたり、改正案の問題点を指摘したチラシを手渡すなどして、訴えへの理解を求めた。


全労連系の教員組合である京教祖の給特法改正反対要旨は、@教員増A時間外労働抑制のための超勤手支給B主任教諭導入反対となっている。かつて「超勤手支給」を求めて給特法反対をあげて戦った教員を「暴力教員」あるいは「トロツキスト」として批判し、教職調整額の支給を受け入れてきた歴史をどう見ればいいのだろうか。明確に「給特法廃止」をうたっていないのはその影響でもあるのだろうか。連合系の日教組も同様にかつてそれを受け入れてきた過去から「給特法廃止」を明確に打ち出せていない。


4月17日 パレスチナ イスラエル拷問か「捕虜」49人死亡

 パレスチナ自治区ガザの戦闘で、イスラエル軍に連行されたパレスチナ人が少なくとも49人拘束下で死亡したことが分かった。軍から記録を入手したイスラエルの非政府組織(NGO)が16日までに共同通信に明らかにした。連行されたのが市民かイスラム組織ハマスに関連する人物だったかどうかは不明だが、事実上の「戦争捕虜」が多数死亡した可能性が出ている。拷問で死亡したとみられるケースもあるという。

 NGOは「人権のための医師団・イスラエル」で、情報公開制度に基づき軍の記録を入手。NGOによれば、イスラエル軍は拘束するパレスチナ人に、ジュネーブ条約が保護を義務付ける「戦争捕虜」の地位を与えないよう、国内法の「不法戦闘員法」などを適用、司法手続きなしの無期限拘束を続ける。

 NGOのナジ・アッバス氏は「前例のない規模で死者が出ている。国際人道法違反は明確で、改善には国際社会の圧力が必要だ」と訴えた。

 パレスチナメディアによると、戦闘開始後に軍に連行されたガザのパレスチナ人は今年1月時点で計3400人以上。NGOは今年2月、ガザから連行された医療関係者に関する報告書を公表。拘束されている医療関係者は250人を超え、うち20人以上に軍基地などで面会した。

 報告書によると、殴打などの拷問のほか、「ディスコルーム」と呼ばれる大音量の音楽が流れる部屋への監禁、天井からのつり下げ、医療放置などが確認された。 (共同)


ロシアとイスラエルの戦闘は、戦争の理不尽さを世界に示している。なぜ殺さなければならいのか。その問いはいつでもどこでも忘れられてはならにものだ。


4月16日 児童虐待 通報対応 児相パンク状態

 児童虐待を疑われた保護者の無罪判決が全国で相次いでいる。日弁連刑事弁護センターの調査などによると2018年以降で計13件に上る。このうち4件に関わり、自治体を相手取った国家賠償請求訴訟にも携わる秋田真志弁護士(61)=大阪弁護士会所属=に、具体的な事例に基づき捜査当局や児童相談所(児相)の課題を聞いた。(小野俊介)

 SBS仮説を医師盲信

 【事例@】2014年に生後1ヵ月の長女に対する虐待疑いで逮捕・起訴された女性のケ−スでは、2歳の長男が誤って長女を床に落としてしまったことが原因なのにもかかわらず、検察は女性が長女を強く揺さぶったことによる「乳幼児揺さぷられ症候群(SBS)」が原因と主張。一審の大阪地裁判決は有罪だったが、二審の大阪高裁は長男の行為で硬膜下血腫が生じた可能性は排斥できないと認定して逆転無罪とした。

 「問題は、SBS仮説を多くの医師が盲目的に信じてしまっていることだ。低位落下やつかまり立ちからの転倒、あるいは内因でも出血は起こるという多数の報告がある。多くの医師は揺さぶられたに違いないという思い込みでSBSと診断し、捜査当局や児相がそれに基づいて行動することで多くの冤罪を生んできたが、海外ではSBS仮説に十分な科学的根拠がないと指摘されている」

 別意見聞かず思考停止

 【事例A】2018年に母親が生後1ヵ月の乳児を誤って床に落としてしまい頭蓋骨骨折。児相の鑑定依頼を受けた医師が「虐待が疑われる」と診断し、児相は母親を呼び出している隙に、乳児を一時保護し、その後、児相は約5か月の面会制限を含む約8ヵ月にわたる親子分離を行った。母親が起こした民事裁判では長期の親子分離と面会制限を違法と認め、被告の大阪府に賠償を命じた。

 「(事例Aの)鑑定書も科学的根拠がない上、児相はセカンドオピニオンをとっていなかった。『別の意見が出たとしても元の意見も消えるわけではない』と言っていたが、思考停止に陥っている。特に、乳児期の子どもとの親子分離は愛着形成に大きな影響を及ぼすのに、児相にはそうした配慮が十分でない」

 「児童虐待による死亡事件が全国で相次ぎ、児相が強い批判を受けたこともあり、虐待通報への対応に追われて児相がパンク状態になっている。一時保護は虐待の有無や危険性を見極めて、親元に返すことも視野に慎重に評価・検討すべきなのに、児相にはその余裕がない。『疑わしきは親子分離』である上、親子再統合のプロセスも整っていない。ひとぴ親家庭や要配慮者は、親子分離されやすく、再統合されにくくなっているのではないか」

 「過去の間違った虐待認定は、悪しき先例として新たな誤りの原因となる悪循環になりかねない。児相の対応や体制を見直すべきだ」


児童虐待のおける親子分離は必要な措置ではある。しかし、復帰のプログラムがあってこその行政的な措置でなければならない。担当弁護士がいうように「児相がパンク状態」であることは、コロナ禍でも問題とされた。新自由主義的な「小さな政府」論がこうした事態を招いているとは言えないのだろうか。改めて、宇沢弘文の『社会的共通資本』の教えるところを吟味したい。


4月16日 NPOなど パブコメ制限動き批判

 政府がパブリックコメント(意見公募)の「大量投稿」を問題視し、意見募集や集約方法を制限する恐れがあるとして、環境やエネルギー問 題に取り組む非政府組織(NGO)など13団体が15日、東京都千代田区の日本記者クラブで会見を開き、「投稿を制限するのではなく、多様な市民参加のプロセスを確保すべき」と訴えた。

 脱原発社会の実現を目指す市民団体「原子力市民委員会」の座長を務める大島堅一龍谷大教授は生成人工知能(AI)などを使っての大量投稿は問題だとした一方、「意見集約という点ではパブリックコメントは国民が参加できる唯一の機会」と指摘。討論型世論調査や公聴会を例に挙げ「国民的な議論を制度化し、市民参加を保証してほしい」と求めた。

 気候変動問題に取り組むNPO法人「気候ネットワーク」(京都市中京区)の桃井貴子東京事務所長は「集まりすぎたからと言って制約をかける方向性は問題。市民参加のプロセス自体が弱いという認識をずつと持っている」と語った。

 ほかの参加者からは「国は政策を数年かけて議論しており、最終段階のパブコメで政策を変更することは考えていない」と制度の形骸化を指摘する声が上がった。また、これまで市民意見がどのように政策に反映されたか検証すべきといった意見もあった。


パブリックコメントの制度は必要なものだが、どれくらい政策に反映ているのかという疑念はぬぐえない。多数の意見が寄せらたとする数字をみるだけでも問題関心の大きさがわかる場合もある。各団体が主張するように並行してそれ以外の恣意的でない運営の下での意見開陳の機会が設けられるべきだろう。


4月15日 全国学テ 中学理科、初のオンライン

 小学6年と中学3年を対象に毎年実施している全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が14日、始まった。この日は中学理科が実施され、デジタル端末を使いオンラインで出題・解答する新方式(CBT)を初めて導入。ネットワークの負荷軽減のため、学校を17日までの4日間に分散させた。国語と算数・数学、小学校理科は17日に従来通り紙で行う。

 国公私立の小中計約2万8千校の約200万人が参加予定。14日の中学理科は約2300校で行われた。

 文部科学省によると、CBTでは動画や音声を使った新たな出題形態が可能となるほか、児童生徒ごとに異なる問題を割り当てることで、データを幅広く収集できるといった利点がある。

 文科省が昨年公開した中学理科のサンプル問題では、自転車で坂を下りブレーキをかけて止まる動画を見て、働いた力を選択式で解答した上で何が起きたかを記述する設問などがあった。

 全国学力テストは、国語と算数・数学は毎年度、理科と中学英語は3年に1回程度実施される。文科省は今回の中学理科を皮切り、2026年度は中学英語でCBTを導入。27年度からは全教科に広げ、紙の問題冊子を廃止する方針だ。


テストが紙かどうかが重要なことなのだろうか。トレンドとしてはデジタル化されたものが主流になっているし、多くの若い人が紙を読まない傾向にあるのは事実だ。同時に、デジタルは複製が安易にできるということで「フェイク」も氾濫している。こうした傾向に掉さすことが教育の目的なのだろうか。そして、悉皆のテストが必要なのかをも何度も何度も問わないといけない。


4月15日 京都市 住民集う自治会館完成

 京都市東山区の元新道小跡地の活用計画で、跡地と一体的な整備が進められていた近くの宮川町歌舞練場の敷地内に、地元の自治会館が完成した。一帯では歌舞練場の建て替えが完了し、ホテルの建設工事も着々と進む。エリア内の全施設がオープンするのは今冬となる見込み。

 自治会館は地上3階、地下2階、延べ床面積1419平方メートル。新道小の校歌にちなみ「永久に茂らん交流館」と名付けられた。

 児童館や地域住民の活動の場となる他、災害時には避難所にもなる。3階に防災倉庫を設け、テントや非常食を備蓄している。

 地域関連の施設としては、ホテル建設が進む新道小跡地に、学校の記憶を伝える交流施設や地元消防団棟も開所する予定だ。

 新道小は1869(明治2)年に下京第二十六番組小として開校した。児童数減少で2011年に閉校したが、その後も地元の交流の場や児童館、避難所とされていた。建物の老朽化に伴い、20年に市とNTT都市開発(東京)が再整備に向けた基本協定を締結した。歌舞練場と一体的に開発する計画とし、設計監修を建築家の隈研吾氏が担った。

 新道小跡地では、シンガポールの高級ホテル「カペラホテルグループ」の宿泊施設が今冬にオープンする見込み。大正期の「大屋根」を継承し、建て替えられた歌舞練場では今月下旬から稽古を再開し、一般向けの公演は11月からを予定している。

 新道自治連合会の福永敏三会長(77)は「番組小時代の先輩たちの思いを引き継ぎ、新たな施設を次世代に継承していく。歌舞練場とホテルを含めた地域全体の活性化にも期待したい」と語った。


門川元市長の負の遺産ともいうべき「小学校跡地をホテルに」が最終章に近づいているのか。清水、白川、植柳などが高級ホテルとなっている。そして、消防団の施設があるが、それが住民自治にどれほど貢献するのだろうか。


4月14日 文科省試算 高校無償化恩恵都市部で大きく

 高校授業料の無償化を巡り、所得制限の撤廃などで拡充した場合に追加で必要となる経費約4千億円のうち、文部科学省の試算では首都圏4都県の高校生への支給額が3割超を占めることが13日、関係者への取材で分かった。人口規模に加え、高所得者層や学費の高い私立高が多いことが要因。地方は既に多くが支給対象にな。つており、無償化拡充で新たに恩恵を受ける世帯は都市部に多いことが裏付けられた。

 国は2025年度から世帯年収910万円未満の所得制限を撤廃し、全ての高校生に11万8800円の就学支援金を支給。公立は完全無償となった。26年度からは私立の上乗せ分の所得制限もなくし、支給上限を39万6千円から45万7千円に引き上げる方針だ。

 文科省が23年度の支給総額3922億円をベースに機械的に試算した結果、26年度以降の総額は約8千億円と倍増。追加経費約4千億円のうち、埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県が1405億円と35・7%を占め、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡を加えた9都府県では59・2%となる。総額では、9都府県の割合が23年度の46・1%から52・7%に上昇し5割を超えた。

 都道府県ごとの支給総額を23年度と比べると、東京が3・4倍の1007億円、神奈川が2・5倍の482億円になるなど都市部で増え幅が大きい一方、秋田1・4倍(31億円)、徳島1・4倍(23億円)などと地方は小さい傾向があった。京都は2・O倍(193億円)、滋賀は1・8倍(75億円)。

 23年度に支援金を受給した生徒は全国平均で73・2%だが、都道府県別では東京が最少の52・6%になるなど首都圏4都県はいずれも平均を下回った。一方で私立高に通う割合は東京など都市部が高い傾向にある。こうしたことが都市部の支給額の伸びにつながった。

 無償化を巡ってば、子どもの進路の選択肢が広がるとの期待がある一方、公立離れを招くといった懸念が出ている。


慶応大の中室牧子教授競争より制度設計重要

 全世帯が対象の高校の授業料無償化は、高所得者層がより恩恵を受けやすいとされる。ただ、公立を不合格になり、私立を選ばざるを得なかった中間層の生徒の救済になることを考えると、格差拡大につながるとは一概には言い切れない。この政策の狙いは、公私立間の競争を促して教育の質を高めることにあると考えるが、両者は入試制度など条件が異なり、適正な競争となるか疑問だ。無償化が行われている海外の国では、生徒への教育効果が大きくないことを示す実証研究もある。制度設計が非常に重要で、より丁寧の検討を重ねるべきだ。


維新の無償化に対する疑義が広がっている。私学が「中間層の生徒の救済」になるという論は納得しがたい。そもそも定数内不合格者を出してきた公立学校のシステムが問題であり、進学だけを高校の価値のメルクマールとしてきたことへの反省が必要ではないか。


4月13日 【教育】高校授業料無償化 京滋の私立中高連会長に聞く

 政府が進める高校授業料の無償化を巡り、私立高に通う生徒の世帯収入に関係なく、2026年度からは国の就学支援金を45万7千円に引き上げることで自民、公明、日本維新の会の3党が合意した。京都府や滋賀県の私立高校にはどんな影響があるのか。京都、滋賀それぞれの私立中学高等学校連合会長に聞いた。(岡本早苗)


京都府・佐々井宏平会長公私が互いに切磋琢磨

 −国による高校授業料無償化拡大の受け止めは。

 高校進学の際に選択の幅が広がるということは、公教育を担う私学にとっても良い機会と考える。それぞれの建学の精神を体現する授業を用意し、学習環境を充実させようとすれば学費にも反映されるが、一度見に行ってみようという機運にはなると思う。

 ―府の連合会は、公費で賄う授業料の上限を定める大阪府のキャップ制による授業料無償化には反対してきた。

 授業料の無償化は賛成だ。ただ、行政が授業料にキャップをかけるということになれば、これまで各校が培ってきた教育の独自性が阻まれかねない。 国が就学支援金を引き上げると私学は授業料を値上げをするのではないかという懸念があるようだが、学費を上げるとなれば各学校が責任を持って説明し、京都府に届けを出した上で進めていく。うちの高校では海外留学の費用を抑えるために教職員がビザ申請もするなど涙ぐましい努力をしている。決して安易に引き上げようとは思っていないことを信じてほしい。

 ―京都府はこれまでから「あんしん修学支援」で私立高進学を後押ししてきた。

 2011年度に全国に先駆けて制度を立ち上げてもらい、年収590万円未満の家庭に対して最高65万円までの修学支援があるというのはすごく大きい。中学3年生が国公私立問わず自分の適性を伸ばせる学校選びができるようになった。私学も選ばれ続けられるよう、教育内容を洗練させてきた。

 −私立高まで支援金の所得制限を撤廃することには否定的な意見もある。公立高の定員割れを懸念する声もあるが。

 生徒1人当たりにどれくらいの公費をかけているかでいえば、私立は公立の4分の1ほどでしかない。さまざまな才能を持った子どもたちが、自分の適性に合った学校選びができることが大切ではないか。

 ただ、決して私立だけ良くなればいいとは思っていない。「京都の子は京都で育てる」を理念に、「公私協調」で互いが切磋琢磨することで京都の教育力を上げてきた。公立高も2027年度から新入試制度を始めるなど改革に取り組んでいる。少子化が進む中、私立も公立もスピード感を持って魅力を磨いていく必要があるだろう。


滋賀県・竹林幸祥会長県外への生徒流出懸念

   −私立高生徒の就学支援金引 き上げ議論をどのように受け止めているか。

 「制服代も補助があるのか」「授業料は満額支援なのか」といった問い合わせが連合会に届いている。私立に目を向けていただくという意味では追い風になるかもしれないが、支援金はあくまで私立高授業料の平均額で学費の全額ではなく、中途半端に感じる。支援金が引き上げられたら併願の受験生は増えるかもしれないが、実際の入学者が増えるかどうかも見通せず、手放しでは喜べない。

 −経済的な理由で私立高進学を諦めていた生徒の選択肢になるのでは。

 正直なところ、行きやすくなったからという理由だけで選んでほしくない気持ちがある。学習指導要領に沿って授業をするのは公立と同じだが、私学はそれぞれ建学の精神にのっとって教育をしている。公立と私立で安定してすみわけができていることが大切で、地域の公立高が定員割れしていていいのかという思いもある。

 ―課題は何か。

 近畿の私学連合会で調べたところ、近年は約800人が県内から京都府内の私立高に進学している。国が支援金を引き上げると、京都の私立高を選ぶ生徒がさらに増えるかもしれない。都道府県をまたいで進学する生徒が増えるのは地域の未来にどんな影響を及ぼすかを考えるべきだ。滋賀の私学の魅力をもっと知ってもらわないといけないと思っている。

 滋賀県の生徒1人当たりの私学振興助成金は都道府県別で40位台と少ない。私学も公教育の一端を担っていると自負しているが、少子化や物価高で学校運営は厳しさを増している。生徒負担を抑えられるよう、学校に対する経常費補助も一層検討してほしい。


私学の高校も大学と同じように都市と地方では学生の確保にかかわって問題があるように見える。無償化によって公私の選択幅が増えたと同時に地域選択の幅も増えたということだが、都市への集中を促すことになってしまうだろう。また、軒並み私学は「建学の精神」と建前では言うが現実は「進学」という商品を高額で売り込むという戦略をとっている。


4月12日 パレスチナ ガザ停戦交渉「進展」

【ワシントン、エルサレム共同】トランプ米大統領は10日、パレスチナ自治区ガザの停戦交渉が進展しつつある」と述べた。ホワイトハウスでの閣議中、記者団の質問に答えた。イスラエルメディアによると、ウィツトコフ米中東担当特使は、イスラム組織八マスが人質解放に「近く合意する」との見方を示した。

 詳細は明らかになっていないが、膠着する停戦交渉が前進した可能性がある。イスラエルやハマス、交渉を仲介するカタールとエジプトは見解を示していない。

 報道によると、ウィツトコフ氏はイスラエル人人質の家族と面会した際に「重要な取引が持ち上かっている」と語った。外交筋の話として、トランプ氏がイスラエルのネタニヤフ首相に対し、ガザヘの攻撃を継続できる期間は残り数週間しかないと伝えたとしている。

 一方、イスラエルでは交渉による人質解放を訴える声が拡大し、複数の主要紙は10日、空軍予備役約千人が署名した停戦合意を求める書簡を掲載した。海軍将校ら約150人もネタニヤフ氏らに停戦を呼びかける書簡を送った。ネタニヤフ氏は査間署名者を予備役から外すとしたザミール軍参謀総長の決定を支持。11日には、軍情報部門の予備役ら250人以上が同様の書簡を公表した。


停戦を「重要な取引」とする米国政府の考え方に大きな違和感を覚える。加えて「数週間」の攻撃を容認する姿勢も全く支持できない。しかし、イスラエルの市民は戦争継続を望んでいないという書簡はわずかな希望だ。


4月11日 衆院 教員給与増法案 審議入り

 教員の処遇改善や長時間労働是正に向けた教員給与特別措置法(給特法)改正案など関連法案が10日、衆院本会議で審議入りした。公立学校教員に残業代の代わりに基本給の4%相当を支給している「教職調整額」を2026年1月から毎年1%ずつ引き上げ、31年1月に10%とする。1972年の給特法施行以来、増額は初めて。

 石破茂首相は教員の業務見直しなどを進め、5年間で残業時間を「月30時間程度に縮減する」と説明。「給与面と併せて徹底的な働き方改革を進め、教師の処遇改善を図る」と述べた。

 法案は、負担軽減と給与増を両面で進めることで、なり手確保を図るのが狙い。負担が重い学級担任への手当を加算するほか、新たな職位として、若手のサポートや学校内外の関係者との調整役を担う「主務教諭」を設ける。

 26年度からは教育委員会に対し、教員の業務量管理や健康確保をするための計画策定と実施状況の公表を義務付ける。

 文部科学省の調査によると、23年度の月平均残業時開か国の指針上限の45時間を超えた教諭は小学校24・8%、中学校42・5%に上る。現行の教職調整額を支給する制度では管理職に残業を抑制する動機が働かないとして、残業代を支払う制度への転換を求める声も根強い。


「教員給与増法案」ではなく「教員残業廃止法案」でbなければならないはず。このままでは、6%の教職調整額増で「主務教諭」の制度を受け入れ、一層の労働強化を強いられること。また、働き方改革を地方自治体に丸投げすること。になってしまう。改めて、関係労組は「給特法廃止」を俎上にあげて議論しなければならない。前回の給特法改正の折にある労組幹部は「この時期を逃せば給特法の廃止は望めない」と言っていたことを思い出す。


4月9日 サイバー法案 個人データ収集 なお懸念

 「能動的サイバー防御」導入に向けた関連法案は与党と主要野党が賛成し、衆院を通過した。政府は衆院での審議で、サイバー攻撃を検知するための通信情報収集に関し、メール本文などは対象外とする一方、メールアドレスに氏名が含まれる場合など、個人が特定されるデータを収集するケースがあると答弁。将来的に「国内間の通信」も収集対象に拡大する可態に含みを持たせた。個人情報が侵害される懸念は、なお残っている。

 「運用が適切に行われなければ、政府による監視対象が、なし崩し的に拡大する懸念がある」。8日の衆院本会議で、賛成討論に立った立憲民主党の 藤岡隆雄氏は能動的サイバー防御の必要性を認めつつ、運用によっては個人情報や「通信の秘密」を侵害しかねない危険性を指摘した。

 政府は、通信情報に関し、メール本文といった「コミュニケーションの本質に関わる情報」は収集対象から除き、インターネットの住所に当たるIPアドレス(識別番号)など付随的なものに限定して収集・分析するとしている。石破茂首相は衆院内閣委員会の質疑で「攻撃に関係する機械的な情報のみ選別した上で分析する。公共の福祉の観点から必要やむを得ない限度にとどまる」と説明した。

 ただ政府側はメールアドレスに氏名が含まれる場合に加え、個人の携帯電話番号、LINE(ライン)アカウント名も一時的に収集する情報の対象に なり得ると答弁。平将明サイバー安全保障担当相は「データを変換する措置でプライバシーに配慮する」と理解を求めた。

 サイバー攻撃に関連する通信の99・4%が国外からのため、新制度では「外国と外国」「外国と国内」を行き来する通信のみ監視し、国内間のやりとりは対象外とした。だが立民の岡田克也氏が3日の内閣委で「将来はどう考えるのか」と確認を求めると、平氏は「もし必要となれば、その時点で検討され るべきものだ」と明確には否定しなかった。内閣官房の幹部は、サイバー空間で攻撃の手口が加速度的に変化しているとして「数年後を予測するのは困難だ。現時点で不要な情報も、将来は必要になる可能性がある」と解説した。

 警察や自衛隊による攻撃元サーバーの無害化措置を巡る国会の関与の在り方も論戦になった。無害化措置は第三者機関の「サイバー通信情報監理委員 会」の事前承認により適正性を確保する仕組みだ。野党は、措置を取った場合は速やかに国会へ報告するよう要請したが、中谷元・防衛相は「攻撃者が措置を認知して対策を講じるなど利する恐れがある」として応じなかった。

 立民などは監理委による国会報告の対象に「通信情報の取り扱いに関する検査結果の概要」を明示するなどの法案修正を求め、結局、与党側も受け入 れた。

 審議に参加した自民党議員は「国会関与を強める方向で修正したが、チェック機能が働くかどうかは運用してみないと分からない。引き続き注視する 必要がある」と指摘した。


東大の入試問題を30分以内に回答することができるコンピュータの計算速度にどれだけ人間の議論がついていけるのか。相当に注意しないと個人データを権力が取集していることを監視することは法規制だけではできないかもしれない。


4月9日 府教委 府立高 特色応じ整備

 京都府教育委員会は、老朽化が進む府立高の施設整備の方向性を定める「府立高校魅力化推進施設・設備整備基本構想」をまとめた。学校の社会的な役割や目指す学校像を明記したスクール・ミッションに沿った魅力づくりや、災害時に避難所として活用する体育館の空調整備を進める。統廃合に伴う大規模改築や改修の方針なども示し、私立高に比べて見劣りするとの指摘もある施設面の充実を図る。

 構想では教育環境充実のために、大きく三つの特色を示した。各校のミッションに応じた整備について、探究的な学びに重きを置く学校では、発表やグループ学習がしやすいように大型スクリーンや壁面ホワイトボード、可動式の机や椅子を導入した教室を整備する。国際教育の推進を掲げる学校は国際交流ルームを、地域社会との連携を重視する学校では住民が自由に出入りできるスペースなどをそれぞれ設ける。

 単位制や昼間定時制などに教育課程を転換する学校については、感覚過敏の生徒のために、気持ちを落ち着かせるクールダウンスペースや、周囲の刺激が少ない個別学習室などを備える。スポーツや文化芸術活動に力を入れる学校では、私立高で広がるトレーニングルームの設置や、楽器の購入、防音ルームの整備を検討する。

 高校再編は府内5通学圏内ごとに学校の統廃合が行われる見通しで、再編対象校は大規模な改築や改修のほか、交通手段の確保を進める。安心・安全で快適な施設づくりでは、体育館や特別教室の空調整備、生徒からの要望が多いトイレの洋式化などに対応する。

 基本構想を策定した高校改革推進室は「一番の狙いは府立高全体の教育の質を底上げすること。教育の充実は教員の質を高めるだけでなく、施設の充実も大切だ。構想に基づき府立高の魅力化を進めたい」としている。



4月8日 パレスチナ 戦災孤児 1万7千人

【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザで2023年10月にイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まって7日で1年半となった。自治政府統計局やガザ保健当局によると、これまでにガザで約3万9千人の子どもが親を亡くし、うち約1万7千人が孤児となった。戦闘開始後に死亡した子どもは1万5千人を上回り、52人は栄養失調で亡くなった。1月に発効した停戦は3月に事実上崩壊した。人道危機が長期化するが、停戦交渉は膠着している。

 ガザ保健当局は「食料搬入が認められなければ栄養失調による死者はさらに増える」と訴えた。国連児童基金(ユニセフ)によると、イスラエル軍の攻撃や度重なる退避通告で、子どもの精神的ケアの支援も縮小を余儀なくされている。

 一方、イスラエルのネタニヤフ首相は米東部時間6日、米ワシントンに到着した。同7日にトランプ大統領と「相互関税」やガザ情勢を巡り会談。ネタニヤフ氏は6日の声明で、トランプ氏と「個人的に特別な関係」を築いていると述べ、会談の成果に期待感を示した。

 イスラエル軍は6日、ガザからロケット弾約10発が発射され、半数を迎撃したと発表した。軍はガザの口ケット発射装置を破壊した。パレスチナ通信は7日、イスラエル軍がガザ各地を空爆し、ジャーナリストを含む10人が死亡したと報じた。

 ガザ保健当局は7日、戦闘開始後のガザ側死者が5万752人になったと発表した。イスラエル軍が3月18日にガザ攻撃を再開して以降の死者は1391人となった。

 イスラエルは3月2日以降、ガザヘの支援物資搬入や電力供給を順次停止。ガザの人道状況は悪化の一途をたどっている。


医療者への攻撃の報告「誤り」

【エルサレム共同】ロイター通信は6日、パレスチナ自治区ガザでパレスチナ赤新月社の職員ら15人が死亡した攻撃について、イスラエル軍が当初の説明を訂正し「報告者の誤り」との見方を示したと伝えた。イスラエル軍の説明に反して、救急車が赤色灯をつけて走っていた動画が見つかった。国際社会では意図的に医療従事者を狙ったとの批判が高まっている。

 イスラエル軍は当初、救急車が無灯火で走行し、不審な動きをしていたと主張していた。

 ロイターによると、イスラエル軍は「報告にライト点灯の記載はなかった」とし、報告者の誤りだった可能性を示した。調査を続けるという。

 ガザ最南部ラフアでは3月23日未明、複数の救急車が医療挿勤中に攻撃を受け、30日に地中に埋められた職員ら15人の遺体が見つかった。破壊された車両も一緒にに埋まっていた。


イスラエル軍に限らず軍の報告や発表が全くあてにならないことは自明のことなのだが、イスラエル軍のこの発表は責任を現場に押し付ける意図が明らか。何度も書くしかないのだが、戦争の建前ではなく現実がこれなのだろう。沖縄島しょ部住民12万人の避難計画も、防衛議論も絵にかいた餅であることを知らなければならない。


4月8日 高校無償化 本当に負担減?

 高校教育に関わる家庭の経済的負担軽減を図る目的で、高校授業料無償化が2026年度から本格実施される。25年度は公立高の授業料相当額の年11万8800円が保護者の年収に関係なく国公私立の高校で無償化されるが、現状は公私立ともに授業料以外の負担が大きく、家計の負担軽減や教育格差の是正効果は限定的との指摘が識者から出ている。

 高校授業料無償化は、授業料に充てるための就学支援金を国が支給し、無償化する制度。2月にまとまった自民、公明、日本維新の会の3党合意によると、26年度からは私立の就学支援金で所得制限を撤廃し、上限額が年39万6千円から45万7千円に引き上げられる。

 京都府の場合、私立高校に通う生徒には国の支援金に上乗せして学費を支援しており、年収590万円未満の世帯には年間最大65万円、年収590万〜910万円未満の世帯で、きょうだいが2人以上同時通学している場合は年間39万6千〜26万4千円を支給している。

 滋賀県は、子どもを私立高に通わせる年収590万〜910万円未満の多子世帯に補助金を上乗せし、年間23万7600円を支援している。国が所得要件を撤廃すれば、両府県とも従来は補助がなかった年収910万円以上の世帯も支援金を受け取れるようになる。

 春から私立高に進学する長女と小学生の次女を育てる大津市の女性(47)は「私学に行きたいという子どもの夢を後押しできるのはありがたい」と話しつつ、「出産一時金が増額された時は病院から請求される出産費用も増えた。支援金の上限額が引き上げられれば、私立は授業料を値上げするのではないか」といぷかしむ。

 そもそも高校の授業料は、生徒の保護者が支払う教育費全体からみるとごく一部だ。文部科学省の学習費調査(2023年度)によると、子どもを全日制高校に通学させる保護者が支出した年間の学習費は、生徒1人当たりの平均が公立で59万7752円、私立で103万283円。このうち授業料が占める割合は公立7・6%、私立22・6%に過ぎない。公立では通学関係費(16・6%)や図書・学用品など(10・4%)の割合の方が大きく、学習塾代や家庭教師代など学校外の勉強にかかった「補助学習費」は33・8%と、授業料の約4倍に上る。

 高校授業料無償化で所得制限を撤廃する流れについて、大阪教育大の田中真秀准教授(教育行財政学)は「高校の選択肢が広がることや教育格差の是正に貢献しているように見えるが、実際には授業料以外にも学校教育には多くの費用がかかる。教育に関心の高い家庭は授業料無償化により浮いた費用を塾等の他の教育費に充て、結果的に格差を広げる懸念がある。しっかり検証していく必要がある」と指摘する。(岡本早苗)


原則的には所得制限なしの高校無償化は正しいのだが、そもそも日本の教育は公的な支出が少なく各生体の負担が大きな部分を占めていることはOECD調査でも明らかになっている。そしてその多くが「授業料の4倍にあたる補助学習費」として支出されているのは誰もが知っているだろう。支給される11万8800円がどこにむけられるかは想像がつく。つまり世帯間格差を一層助長することになる。そして、公立学校の存在意義が一層希薄になる。


4月6日 イスラエル “ハマスと協議通じ人質解放を”

イスラム組織ハマスとの停戦協議の行き詰まりから、イスラエル軍がガザ地区への攻撃を続ける中、イスラエルでは多くの市民が連日集会を開き、ハマスとの協議を通じて人質の解放を実現するよう訴えています。

イスラエルは、ハマスとの停戦の延長に向けた協議の行き詰まりから、先月18日からガザ地区への空爆や地上部隊による攻撃を再開し、ハマスへの圧力を強めています。

ガザ地区の保健当局は5日、イスラエル軍の攻撃で過去24時間に60人が死亡したと発表しています。

一方、イスラエル国内では、人質の命を危険にさらすとして攻撃再開に反対する市民などが連日集会を開いています。

最大の商業都市テルアビブでは5日、多くの市民が集まり、ハマスとの協議を通じてすべての人質の解放を実現するよう政府に訴えていました。

参加していた女性は「人質を取り戻す唯一の方法は戦争を終わらせることだ。私たちはハマスとの協議をしなければいけない」と話していました。

3月に公表された地元メディアの世論調査では、すべての人質の解放と引き換えにハマスとの恒久的な停戦を支持する人は69%にのぼり、支持しないと回答した21%を上回っています。

ネタニヤフ首相は、7日にもアメリカを訪問してトランプ大統領と会談し、ガザ地区での停戦についても話し合うとみられていて、会談が停戦協議の進展につながるのかが焦点となっています。(NHK  6時27分)


ガザへの空爆がどれだけの政治的な意味を持って行われているのか大きな疑問。政治的な意味合いが明確であれば戦争をしてもよいということにはならないのだが、ネタニヤフ政権の維持のためだけの戦争には一部の正義もない。イスラエル市民が訴える「協議」をなによりも優先させるのが政治ではないか。


4月6日 府立高 福知山高 定員割れなぜ?

 京都府内の2025年度公立高入試で、府立高では有数の進学校である福知山高(福知山市)が、募集定員に対して入学志願者が2割以上下回り、教育関係者に大きな衝撃が走っている。名門校の定員割れの背景には、府北部の急速な少子化や私立高との競争の激化、中学生の高校選びの多様化などさまざまな要因が浮かび上がる。

 京都大3人、大阪大3人、神戸大5人、東北大、東京科学大、名古屋大各1人…。今春の卒業生の合格実績を記した資料(速報値、過年度生除く)には、難関国公立大の名がずらりと並ぶ。学年全体でみても4割強にあたる109人が国公立大に現役合格した。

 高い進学実績の一方で、生徒募集では苦戦を強いられている。2014年度以降、年度別では8回にわたって定員割れがあり、欠員は1〜31人で推移。25年度の欠員数は、進学コースである専門学科の文理科学科(入学定員40人)が10人、普通科(同160人)が43人に拡大した。

 府教育委員会や高校、地元進学塾関係者は、定員割れの大きな原因として人口減を挙げる。福知山市、舞鶴市、綾部市の中丹通学圏で15歳人口は18年度は約1800人だったが、24年度は約1600人で5クラス分に当たる約200人が減った。府教委の推計では、10年後の34年度には1188人に先細る。

 生徒が私立高に流出しているとの指摘もある。人口約7万4千人の福知山市は、私立高3校がひしめく「激戦区」だ。中丹通学圏の中学3年の進路状況は18年度に府内の公立高が69%、私立高29%だつたのが、23年度には公立高が63%と6ポイント減少し、私立高は逆に4ポイント増の33%となった。府内在住の私立高生の授業料を助成する「府あんしん修学支援制度」拡充もあり、私立高進学の経済的なハードルは下がっている。国の高校無償化も私学志向に拍車をかける可能性がある。

 交通の利便性も影響している可能性がある。同高はJR福知山駅から約3キロと遠いが、私立高は駅に近い場所の立地だったり、スクールバスを走らせたりして、通学しやすさをアピールしている。

 中学生や保護者の意識の変化も関係しているようだ。地元の塾関係者は「進学する高校を早く決めたいという受験生や保護者の意向は近年ますます強まっている。私立高は入試が早く有利だ。受験生からは『福知山高は勉強一色でつまらない』とのイメージも持たれている。このままだと定員割れは止まらない」と指摘する。

 「勉強一色」との指摘に対して、福知山高の藤田浩校長は「部活動にもしっかり取り組んでいるし、ボランティアや環境活動に励む生徒もおり、高校生活を楽しんでいる。勉強だけではないはずだ」とした上で、「進路実現のためには、日々の学習で鍛錬することが必要だ。そういう意味では『大変だ』と感じる生徒もいるだろう。しかし、卒業時に志望校合格を果たした多くの生徒が『3年間しんどかったが、進路実現できたのはみんながいたから』と口にする。切磋琢磨できる仲間や環境がある」と強調する。

 府教委関係者は「しっかり勉強させたい学校と高校生活を楽しみたい生徒とのミスマッチがあるのかもしれない。進学実績を上げても中学生や保護者に響きにくくなっている」と語る


【教育】医療系進学で魅力高め

 府北部地域の医師不足解消を目指して、京都府立福知山局(福知山市)は、医学部医学科をはじめ、薬学部、看護学部など医療への道を志す生徒の後押しに力を入れてきた。同高の取り組みは実を結び、医療従事者の輩出で成果を挙げているという。(生田和史)

 同高によると、2024年度(過年度生含む)の医学部医学科の合格実績は、筑波大や京都府立医科大、滋賀医科大、島根大など9人。薬学部でも6人の 合格を出した。

 同高が医療系への進学に注力するのは、府北部の医師不足にある。10万人当たりの医師数は、22年12月時点で丹後医療圏は209・4人、中丹医療圈で223・9人で、全国平均の262・1人を下回る状況が続く。現状を改善するために、13年度には医学部進学志望者らを対象にした特別講座「医学進学プログラム」を開始。現役医師の講演、病院見学、面接の練習など通にてモチベーションを高めてきた。15年度には付属中も開設し、中高一貫教育で学習面の指導を強化してきた。

 同高の12年度の卒業生である医師の川尻隆治さん(30)は現在、舞鶴医療センター(舞鶴市)の脳神経外科に勤務する。脳梗塞、脳出血、脳腫瘍の患者の診察や手術に当たる。府北部では常勤医師がいる脳神経外科がある病院は少なく、福井県、兵庫県の患者も訪れる。休日は少なく急な呼び出しもあるが、医師としてのやりがいを感じているという。

 親族に医師がいない川尻さんは高校入学当時、理系の大学への進学を漠然と思い浮かべていた。担任の勧めで医学部に興味を抱き、探究学習「みらい学」 で北部の医師不足について調べるなどして医師になる思いを固め、府立医科大に現役合格。高校時代を振り返り「受験に必要な勉強を塾に頼らず、学校だけで完結させようというのが根底にあった。難関大合格に向けて授業内容は練られていた。同じ方向を向く級友が多く、一つの目標に向かい、頑張った経験は財産になった」と振り返る。

 15年度の卒業生である医師の樟莉子さん(27)は、徳島大医学部に現役合格。兵庫県明石市の明石医療センターで総合内科の専攻医(旧後期研修医)として日々、研さんを積んでいる。患者は主に高齢者で心臓や腎臓、肝臓など複数の臓器が悪いケースが多く、「一つの疾患のみある患者はそういない。複数の疾患を持つ患者を複合的にしっかり診られるようになるのが目標です」と語る。

 樟さんは、同高の医学進学プログラムの1期生。川尻さん同様に親族に医師はいなかったが、プログラムに参加して医師や医学部に進学した先輩の話を聞くことで、「医師のイメージがつかめ、医学部進学を現実の目標として考えられるようになった」という。

 2人は「難関大を目指して頑張るという雰囲気がある数少ない環境だ。入学して後悔はないので、ぜひ『福高』を目指してほしい」と地元の中学生にエー ルを送る。


進学実績を上げれば高校の価値が上がる、という考え方が通用しなくなる?。そんなことを考えさせられる福知山高の定員割れ。受験生の側に「進学」だけを高校選択の理由とする傾向に変化が生まれてきたのか。従来のインプットがアウトプットを生むような時代ではなくなってきたのかもしれない。


4月5日 市教委 西京 洛西陵明小中で開校式

 京都市西京区の洛西陵明小中の開校式が4日、同小中で開かれた。児童生徒や学校関係者ら70O人が出席し、地域を代表する竹のように、真つすぐ目標に向かって学ぶ決意を新たにした。

 同小中は、洛西ニューウン内の福西小、竹の里小、西陵中が統合して開校にた。市内産木材や竹材を活用し、楕円状の多目的ホールなどを有した新校舎は、 2022年に竹の里小と統合した福西小跡地に建設された。総事業費は約81億円。

 式典では向段新校長だ 開校を宣言し、4年川村蘭さん(9)、7年北川明日嘉さん(12)、9年楠ひなたさん(14)が誓いの言葉を述べた。楠さんは、地 域の特色の一つである竹林を例に挙げ「困難に直面しても折れることなく、未来に向かってしなやかに伸び続けていく」と誓った。

 ほかにも、竹を描いた中央に洛西陵明の頭文字「R」を配置した新たな校旗や、校歌が披露され、開校を祝うテープカットも行われた。式典後には、校舎の内 覧もあり、出席者らが木の香りのする廊下や天井の高い教室を見学した。



4月4日 市教委 伏見 栄桜小中で開校式

 京都市伏見区の栄桜(えいおう)小中で3日、開校式があった。同区の石田小、小栗栖宮山小、小栗栖中の統合による新設校で、9年間を共に学ぶ施設一体型の小中一貫教育校としての一歩を踏み出した。

 新校舎は、2022年に石田小と統合した小栗栖小跡地に建設された。1、2階に大小の体育館、3階にプールがあり、普通教室には市内産木材を使用。中庭に面した図書館やランチルームもあり、総工費は約80億円。

 式典では、山本力也校長が開校を宣言し、新しい校歌や校旗を披露。9年森下空舞さん(14)は、地域の象徴として親しまれる山科川の桜を挙げて「厳しい 冬を乗り越え、美しく咲く桜のように、困難を乗り越えることのできる強く清らかな心を培っていく」と誓った。

 同小中では、自分の考えを整理して表現する「100字作文」や、5〜7年の算数・数学に習熟度別の少人数学習を取り入れて学力向上を図る。宿泊学習を 共にするなどして異学年交流も進めるという。


開睛小中学校の設立以来、小中一貫教育の義務教育学校が統廃合のトレンドとなっている。廃校となった跡地の利用は様々だが住民がその利用に関してどこまで参加できるのかは不透明。これまでは地元の有力者が「地域の声」を代表してるという形をとっているが、「自治」の観点からいえば問題が多い。番組小学校設立を市民の自治の結果とするならば、大都市での「学区」をどのように自治組織として再編していくのかも課題となるだろう。


4月2日 情プラ法 SNS中傷に対応を義務化

 交流サイト(SNS)で後を絶たない誹謗中傷投稿への対応を運営事業者に義務付ける「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」が1日、施行された。被害申告の窓口や削除の基準を事業者が明示し、被害者らの訴えに基づいて削除の必要性を迅速に判断しなければならない。

 法律に違反した企業には最大で1億円の罰金が科される。海外事業者に対しては言語の壁で申し出を諦める利用者が多いことから、日本語で申請できる窓口を設けさせる。回答は受理から7日以内と定め、政府は被害者の「泣き寝入り」を防ぐ効果を期待する


自分の情報が不当に公表されている事に対して異議申し立てを行うことが容易になるということは、遅きに失したとはいえ重要な法律。学校現場での情報教育で是非周知させてほしい。


4月1日 府・市教委 教職員異動4193人

 京都府と京都市の両教育委員会は31日、4月1日(退職者は3月31日)付で発令する公立学校教職員4193件の人事異動を発表した。定年延長により2年ぶりに定年退職の発令があったため、府教委は324件増の2402件、京都市教委は104件増の1791件と前年度を上回った。

 府教委は若手教員の育成に力を入れる。定年退職した元教員を非常勤講師として小中高校に配置し、採用1年目の教員の授業準備や生徒指導をサポートする。60歳で役職定年となった校長らを「人材育成担当教員」として配置する府立高を増やして15校とし、5年目までの若手教員や講師の巡回指導を実施する。

 京都市教委は、1年を通して産育休を取得する教職員の代わりに初めて正規の教諭30人を配置する。教員不足などで代替の講師を確保するのが困難になっており、教諭の代替を可能とする国の制度改正を踏まえた。発達障害があったり、日本語指導が必要だったりする児童生徒を支援する教員も増やす。

 両教委とも女性管理職の積極的な登用を進めており、府教委は、小中高校や特別支援学校の女性管理職割合が28・6(前年度28・0)%と過去最大だった。京都市教委は幼稚園の女性管理職を含む割合が28・3(同29・9%)だった。

 定年を65歳まで段階的に引き上げる定年延長が2023年度に導入されたことにより、24年度に61歳となった教職員が定年を迎えた。府教委の退職者428 人中207人、京都市教委の退職者257人中104人が定年退職者で、全体の異動件数を押し上げた。