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7月13日 政府 高齢者シェアハウス整備へ

 政府は、過疎地などで高齢者らが安心して暮らせる住まいを確保するため、低料金で入居できるシェアハウスを全国的に整備する方針だ。年内に詳細を詰め、既存施設を利用して今後3年間で100ヵ所を目指す。介護など地域ケアの提供拠点とも位置付ける。地方では、既存の介護施設の維持が危ぶまれており、住まいを失いかねない高齢者への対応が急務となっている。人口減少に対処する地方創生につながる新たな取り組みとして、自治体側は歓迎している。

 政府が想定するのは、単身高齢者や高齢夫婦らの個室を備えた小規模なシェアハウス。社会福祉法人やNPO法人などが運営する。規模を抑えた介護施設や障害者グループホームを併設し、元気な居住者は施設の業務を手伝えるほか、必要になった段階で介護も受けられる。福祉人材が集約されるため、サービス提供の効率化も見込む。

 建物は既存の介護施設の転用や一部活用で賄う。子どもの居場所など、地域住民が集う場としても期待する。整備事業の主体は自治体で、政府は地方創生の交付金で改修費を財政支援する。制度の詳細を詰めるのは関係省庁横断のチーム。円滑な事業運営に必要な規制緩和も検討する。

 介護業界の人材不足は深刻で、人口減少が進む地域では需要も減って採算が悪化し施設を閉鎖するケースがあり、老後の住まいの確保が課題。全国約120の自治体や広域連合が「地域ケアの再生存続の有力な選択肢」と政府方針に関心を寄せ「地域ケアサービス再生存続自治体協議会」を設立しており、月内に総会を開く。制度内容を提案し、反映を狙う。


【インサイド】福祉人材不足に危機感

 過疎地などで高齢者向けシェアハウスを整備する政府構想に、自治体側の期待が高まっている。福祉に携わる人材の不足に拍車がかかり、既存の介護施設の現状維持は難しいとの危機感を抱いているためだ。構想の成否は、現場の意見を制度に反映できるかどうかが鍵を握る。

 「ケアサービス人材が不足し、介護施設や在宅サービス事業などの維持が困難となる」。鳥取県の平井伸治知事と岐阜県飛騨市の都竹淳也市長、北海道ニセコ町の片山健也町長は6月、石破茂首相と官邸で面会し、窮状を訴えた。

 3人は7月に設立総会を開く「地域ケアサービス再生存続自治体協議会」の代表だ。介護施設が閉鎖すれば、地域のケアサービスが崩壊し、人口流出が加速しかねない。シェアハウス構想は有望な対策とみており、検討の加速を求めた。

 高齢者福祉を巡る環境は厳しさを増している。特別養護老人ホーム(特養)は職員が足りず、受け入れを制限する施設がある。各地で整備が進む「サービス付き高齢者向け住宅」の入居には一定の資力が必要になる。このため地元の施設に入れず、本人の意に反して子どものいる都市部に移り住む例もあると都竹市長。「じくじたる思いだ。住み慣れた地域で終生を過ごしたい住民は多い」と語った。

 政府は高齢者向けシェアハウスを「小規模・地域共生ホーム型CCRC」と命名した。もともとのCCRCは、健康的に生涯を過ごせる地域コミュニティーを指す。日本ではこれまで、地方に整備し、都市部の高齢者を呼び込む地域活性化策の色彩が濃かった。今回の構想はそうではなく「地域の存続自体に問題意識がある」(政府関係者)という。

 自治体協議会が政府に求めるのは財政支援のほか、規制緩和だ。平井知事は、介護施設などの補助金は使途などのルールが厳しく「がんじがらめ」になっているとして改善を求めた。

 政府側は前向きに対処する意向だ。「職員の配置基準などの規制を柔軟化しなければ、箱物を整備しても運営は到底できない」と関係者。自治体側の声を聞きながら検討を急ぐ。自治体協議会の参加数は約120。高齢者の住まい確保という課題に直面する過疎地が中心だ。都竹市長は「過 疎地は未来予想図」と話し、都市部を含む全国に波及するとの見方を示した。 


あまり聞きなれないことばだに「総有」というのがある。五十嵐敬喜『 土地は誰のものか』では、「現代総有」が論じられている。いわれてみれば土地は地球ができて以来増えたり減ったりしていないはず。しかし、囲い込み(エンクロージャー)によって土地の私有が個人の権利として立ち上がった。そのことが資本主義の「発展」に大きく貢献したといわれている。シェアハウスは高齢者に限ったものではなく、「自分の家を持てて上がり」というライフサイクル観へのオルタナティブとして要石的な役割を果たす可能性が高い。


7月13日 【教育】 体験重視 シュタイナー教育人気

 芸術や直接体験を重視するドイツ発祥のシュタイナー教育。認定NPO法人が運営する京田辺シュタイナー学校(京田辺市興戸)が、少子化のなかでも生徒数を増やしている。既成の教科書や点数評価は用いず、子どもの成長段階に合わせた12年(小中高相当)の一貫教育が、他にはない魅力となっているようだ。(岡本早苗)

 「長石は見つかりますか」。6年生の「鉱物学」の授業で、教員がルーペを手にした児童に問いかける。「緑っぽい」「キラッとしてるのは石英かな?」。子どもたちが気付きを口にする。机の上に教科書やノート、鉛筆はなく、あるのは各児童が校庭で拾ってきた花こう岩だけ。花こう岩 を構成する鉱物をじっくり観察した後は、5年生で学んだ古代エジプトの歴史を振り返りながら、有名な口セッタ・ストーンはなぜ重くて硬い閃緑岩が使われたのかを皆で考えた。

 シュタイナー学校には、哲学者でもある創始者ルドルフ・シュタイナーの人間観や教育理念に沿った独自のカリキュラムがある。どの学年も毎朝100分のメインレッスンで主要教科を学ぶ。既存の教科書は使わず、エポックノートと呼ばれるノートに授業で学んだことを絵や文字で書きこんでいき、それが自身の教科書になるという。

 授業には、歌や詩、物語が随所に取り入れられている。ペンタトニックフルートと呼ばれる木製のリコーダーを教員と奏で、歌やリズムで体を動かす。各クラスの黒板には、絵本の一場面のような絵がカラーチョークで描かれ、化学の授業で詩を朗読する姿もあった。教育そのものが総合芸 術という考え方に基づき、知識を覚え込むのではなく、子どもが表現することで感情や意思を育んでいくのだそうだ。

 最高学年は「卒業プロジェクト」と呼ばれる研究に取り組む。好きな旅行をテーマに選んだ12年巽由一さん(17)は、旅行記の編集に取り組んでいる。きっかけは同級生と敢行した自転車旅だった。「1年からずっと同じクラスで、家族のように親密なコミュニティー。自分が好きなことに打ち込めた」と振り返った。

 発達段階に沿って子どもとの関わり方を変えていくことから、入学から8年間は一人の担任が持ち上がる。ある児童の通知表を見せてもらうと、点数評価はなく、同じ教員が贈った詩や所見の中に、その子の成長ぷりや励ましの言葉が書き込まれていた。開校時から高等部の教員を務める内海真理子さん(63)は「初めの頃は『どのくらい学力が付いたのか分からない』と不安を口にする保護者もいた。卒業生が社会で活躍するようになり、理解してもらえるようになった」と話す。

 同校には現在、6〜18歳の約280人が通っており、生徒数は開校以来最多となっている。国内にある全日制のシュタイナー学校7校の中では最も多い。


親と教師でつくる環境

 京田辺シュタイナー学校では、教員が授業に専念できるよう、学校の運営やメンテナンスは保護者が自身の専門性を生かして担う仕組みになっている。開校当初から「親と教師でつくる学校」として学びの環境を維持してきた経緯があり、学校への保護者の積極的な参加も特徴の一つだ。

 同校の始まりは、シュタイナー教育に関心を持った数人の親の勉強会だった。土曜日だけの教室を経て、2000年にNPO法人を設立、翌01年に開校した。校長は置かず、認定NPO法人の代表理事は保護者。木造2階建ての校舎は親と教員たちで整備した部分もあるという。

 併設の学童保育所も保護者が運営する。初等部に子ども2人を通わせる中小企業診断士の八木慶子さん(45)=京田辺市=は以前、学童を運営するクループの代表を務めた。今も毎日の参加者を取りまとめる役を担っている。

 担任教員と保護者全員の懇談会は年5回程度、それ以外でも必要に応じて保護者が話し合いの場を持ち、クラスにトラブルがあれば皆で話し合って解決を目指すという。八木さんは「学校づくりに参加することで親が学ぶことはすごく多い。学校づくりは社会をつくることにも通じるので、学校に参加する親の姿を子どもに見せることも大切だと思っている」と話した。


シュタイナー学校の評価については賛否両論があるが、一つの教育の在り方を示すものとしての存在は大きい。ほかにもモンテッソーリ教育フォルケホイスコーレなども同じく評価できるものだろう。
 京田辺シュタイナー学校での保護者の役割は注目すべきだろう。現在多くの学校のPTAが存続の危機に面していて、その改革が模索されている。これまで公立学校では縦割りの強制という形で運営されてきたきたものが時代にそぐわなくなってきているからだろう。PTAを一つのコミュニティとして考えると、参加の自由や運営の自主性、財源の確保などの面からのアプローチの必要性を教えてくれているように思える。


7月12日 全国アンケート 被爆者7割 核再使用懸念

 広島、長崎への原爆投下から今年で80年となるのに合わせ、全国の被爆者に核を巡る現状や自身の体験について尋ねた共同通信のアンケートで「再び核兵器が使用される可能性が高まっている」と考える人が7割近くに上ったことが11日、分かった。ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の核開発を理由に挙げる声が多かった。身をもって核の恐ろしさを訴えてきた被爆者の願いとは裏腹に、不安定な国際情勢から「核の危機」が依然身近にあるとの認識が浮き彫りになった。

 アンケートは日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に参加する組織などの協力を得て、2月以降に約6600人に配布。胎内被爆した79歳から104歳まで1532人から有効な回答を得た。

 68・6%が、再び核兵器が使用される可能性が高まっていると思うとし、「そう思わない」が6・7%、「分からない」が24・7%。理由では「ロシアのプーチン大統領が核使用を示唆した」(86歳女性)や「偏狭なナショナリズムが広がっている」(82歳女性)、「核使用が安易に語られている」(88歳男性)などの記述があった。

 原爆を投下した米国への感情を尋ねた質問への回答は「許せない」が45・7%と最多で「特別な感情はない」が24・3%、「分からない」が16・9%だった。

 一方、日本が日米安全保障条約に基づき米国の「核の傘」の下にいることについての質問には19・6%が「(核の傘から)脱却すべきではない」と答えた。理由は「北朝鮮、中国、ロシアの脅威がある」(82歳男性)、「自国で守るすべがない」(80歳女性)などを挙げた。43・9%が「脱却すべきだが、現時点では時期尚早」とし「今すぐ脱却すべきだ」は24・8%だった。

 日本政府の核廃絶への取り組みは、核兵器禁止条約への不参加などから、評価しないとの意見が7割近くに上った。

 被爆体験を証言した経験は7割超が「ない」と回答。被爆時の記憶も「ない」が45・5%と半数に迫った。


同志社大・三牧聖子教授今こそ核廃絶求める姿勢を

 アンケートで被爆者の約7割が懸念を示すように、世界では多極化が進み、核の使用が現実味を持って語られている。トランプ米政権も広島と長崎への原爆投下になぞらえてイラン核施設への攻撃を正当化し、核なき世界に背を向けていることは明らかだ。そんな米国の「核の傘」に依存した安全は機能するのか。日本は戦後80年にわたって思考停止を続けてきた側面がある。平和国家の役目として、今こそ全ての国に核廃絶を求めてい<姿勢を明確にすべきではないか。 


立命大・君島東彦特命教授市民が平和構築の担い手に

 アンケートで、80年たった今も被爆者の4割以上が原爆を投下した米国を「許せない」と感じているのは注目すぺき点だ。日米関係を重視するのか被爆者の感情に向き合うのか、日本政府の姿勢が問われる。日本が核廃絶を進めるには国内政治の安定とアジア各国との協調の両方が重要。被爆者を含む戦争被害者が連帯して非戦を訴え続けること、被害者だけでなく、市民一人一人が次世代の平和構築の担い手となることが求められる。 


政府の“受忍論”4割が反発

 被爆者アンケートでは、戦争被害は国民が等しく我慢すべきだとする「受忍論」への反発が浮き彫りになった。日本政府が国家補償を拒否する根拠としているが、約4割が「納得できない」と回答。「国が起こした戦争で国民に我慢を求めるのは筋違い」と強く批判した。

 受忍論は1968年、戦時中に海外から日本に引き揚げた人が、残してきた財産の補償を求めた裁判の判決で最高裁が打ち出した。80年には原爆被害者対策の在り方を検討する厚生相(当時)の私的諮問機関も展開した。被団協は、核兵器廃絶と並び国家補償を基本要求に掲げ、昨年のノーベル平和賞授賞式のスピーチでは、代表委員の田中煕巳さんが日本政府が原爆の死者への国家補償を行っていない現状を指弾した。

 アンケートの回答で受忍論を「納得できない」とした理由について、国が起こした戦争であると指摘する意見の他、「戦争の後始末を国家がするのが当然となれば、戦争を始めにくくなる」(86歳男性)と、国に再び戦争をさせないためにも国家補償を求めるべきだとの指摘もあった。


アンケートの回答からは、本来なら受ける必要がなかった被害であるにもかかわらず、国策としての戦争に巻きまれた被爆者の人たちの逡巡が見える。戦後80年の夏は、改めて非戦・不戦を誓う年でなければ。


7月11日 警察庁 中高生間の盗撮550人摘発

 中高生が同級生らを盗撮したとして摘発された人数が、2023年7月に性的姿態撮影処罰法が施行されてから今年5月まで計550人だったことがい11日、警察庁への取材で分かった。うち約4割は校内で発生。中高生にとってスマートフォンやタブレット端末が身近になっており、専門家は「再犯防止のため、カウンセリングなどの早期治療が重要」と訴えた。

 盗撮を巡っては生徒だけではなく、教員らが女子児童を盗撮し、画像や動画を交流サイト(SNS)のグループチャットに投稿、共有する事件も起きている。

 「娘さんが盗撮されました」。24年7月、中学校からの連絡に福岡県の女性は言葉を失った。詳しく状況を聞くと男子生徒が教室にスマホを隠し、体育の着替えを盗撮していたことが分かった。

 教師がロッカー内に置かれていたスマホを見つけ、男子生徒が自分のものと認めたことで発覚。教師が動画を確認したところ、娘を含めた複数の女子生徒が着替えをする姿が写っていた。

 女性によると、別の学年では学校で配布されたタブレットを使った盗撮もあったという。女性は学校側の対応に不信感を持ち、地元の警察署へ被害届を提出した。

 警察庁によると、550人のうち校内で盗撮したのは219人だった。年別で見ると23年7〜12月43人(うち校内10人)、24年366人(同151人)、25年1〜5月は暫定値で141人(同58人)。また「中学生同士」81人、「高校生同士」423人だった。

 埼玉県警は24年、修学旅行先で入浴していた同級生を盗撮したとして、当時公立中の男子生徒を書類送検。東京都内の私立中高一貫校で数十人を盗撮したとして同年に摘発された男子生徒らは、画像をSNSで共有していた。

 性障害専門医療センター代表で医師の福井裕輝さんは「センター立ち上げ当時(11年)と比べて、盗撮再犯防止のための治療に訪れる未成年は約20倍に増えた」と指摘。画像や動画をSNSで友達と共有していた事例も多いとし「インターネットに出回ると完全に削除することは難しい。中には『悪ふざけだった』と話す子もいるが、犯罪だということを自覚してほしい」と強調した。


ICTのリテラシーを高める教育が当初は声高に叫ばれたが今ではその声は小さい。先端技術をどう使うかというリテラシーよりも、「実用」が先行するのはいつの時代でも同じ。改めて「技術」とはなにか、人間に何をもたらすのかを問わねばならない時代なのだろう。イリイチの『コンヴィヴィアリティーのための道具』(ちくま学芸文庫)は必読かも。ちなみに訳者が渡辺京二といのも興味深い。


7月11日 文科省 教員の性暴力「根絶を」

 教員による児童生徒へのわいせつ事案などが全国で相次いで発覚したことを受け、文部科学省は10日、都道府県・政令指定都市教育委員会の教育長らを集めた緊急会議をオンラインで開いた。文科省の望月禎・初等中等教育局長は「教育界を揺るがすような大変ゆゆしき事態。教員による性暴力は根絶しないといけない」と述べ、服務規律の徹底を改めて求めた。

 望月局長は、教員は「児童生徒の模範となり、一生も左右するような存在」と強調。「教育行政に携わる私たちにとって、今は危機的な状況であるということを共有してほしい」と述べた。

 具体的な再発防止策として、教員への研修実施や教室などの定期的な点検を要請し、児童生徒の活動を撮影する際は学校所有のカメラやタブレットを使い、管理職を含む複数名で常に確認できるようにしておくといったことを求めた。

 教員によるわいせつ事案は6月から相次ぎ発覚。女子児童の盗撮画像を交流サイト(SNS)のクループチャットで共有したとして、名古屋市立小の教諭らが逮捕された他、埼玉、広島、福岡の各県でも児童にわいせつな行為をしようとしたり、生徒の着替えを盗撮したりしたなどとして逮捕された。


教員の子どもへの性暴力は断じて許すことはできない。しかし、文科省が言うような対処で「根絶」できるのだろうか。教員間の相互監視と締め付けが厳しくなるだけで効果があるようには思えない。


7月11日 参政党代表発言 「沖縄戦、細かく調べていない」

 参政党の神谷宗幣代表は10日、太平洋戦争末期の沖縄戦を巡り、日本軍による住民殺害は例外的な事例だったとの持論を重ねて強調した。那覇市で記者団に「日本軍は沖縄県民を守りに来た。それが原則だ。中には島民に迷惑をかけ、殺害してしまう人もいた。日本軍イコール悪みたいになるのは良くない」と述べた。

 沖縄戦では、日本兵は住民を集団自決に追い込んだり、スパイ容疑をかけて虐殺したりした。住民にスパイがいたと考えるかと問われ「細かいところまで調べていない。いつの時代もそういうものの中に紛れ込んでいる」と語った。

 これに先立つ街頭演説では、日本軍について「この人たちが戦ってくれたから本土復帰もできたとか、九州に侵攻されずに済んだとか、いろいろなことが考えられる」と言及した。


西田昌司氏の「ひめゆりの塔」発言と全く同じ発言。参政党の「日本人ファースト」には沖縄は含まれていないのだろう。それにしても、歴史への深いまなざしを持たない人たちが政治家を目指すことへの不安は大きい。ちなみに、神谷代表は核武装についての言及もあるという。


7月11日 愛媛大研究チーム ツシマヤマネコからPFAS

 国の天然記念物で絶滅危惧種のツシマヤマネコから、発がん性などが指摘されている有機フツ素化合物(PFAS)が検出されたことが10日、愛媛大などの研究チームによる調査で分かった。有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)も確認、チームはいずれも高濃度としており、健康影響が懸念されるという。

 ツシマヤマネコは長崎県の離島・対馬に生息。愛媛大先端研究院の野見山桂准教授は、PFAS汚染は各地に広まっており、他の野生動物にも影響を与えている恐れがあると指摘。「ツシマヤマネコのみならず、野生動物の保護のために全国的な調査と汚染源の特定が必要だ」と話した。

 チームは、2022〜25年に交通事故などで死んだツシマヤマネコ21匹を、環境省の許可を受けて調査。代表物質とされるPFOAとPFOSを含む37種類のPFASについて、肝臓と腎臓の濃度を分析した。

 その結果、全ての個体からPFASを検出。肝臓は中央値で1グラム当たり約110ナノグラム(ナノは10億分の1)、最大で約360 ナノグラムに達した。腎臓は中央値約60ナノグラム、最大約210ナノグラムだった。性別や年齢、地域による大きな差はなかった。

 肝臓の濃度はほぼ全ての個体で、肝細胞の試験で毒性が出か値た上回っており、肝機能へのリスクが考えられる数値だという。腎臓も高濃度といえるとしている。

 高濃度の個体では、有害物質がたまりやすいとされるシャチに匹敵。ドイツのヨーロッパヤマネコとの比較では中央値で約8倍となり、国際的にみても高い数値だった。原因について、海洋ごみや不法投棄ごみが汚染の一因である可能性があると指摘。餌を通じ、食物連鎖で濃度がより高くなったと考えられる。

またチームは、PCBなどの残留性有機汚染物質(POPS)も調査。ツシマヤマネコ19匹を調べたところ、一部の個体からは極めて高い汚染が確認された。野見山准教授は「生息数の減少と関連している恐れが高い」として八る。


原田浩二府立大教授全国動物調査実施を

 ツシマヤマネコは希少動物ということもあり、今回の分析はとても重要なデータだ。検出された有機フツ素化化合物(PFAS)の濃度 は高いといえ、汚染がすでに至るところへ広がっていることを示している。濃度が高くなれば動物も健康被害が出ることが考えられる。鳥類ではPFASが繁殖能力に影響することが知られており、ほかの野生動物でも繁殖に影響を及ぼす可能性がある。全国でモニタリング調査を 実施し、汚染の実態を調べていくことが必要だ。


国は早急に実態を調査すべきだ。「人新生」と呼ばれる今の時代は「公害」は目に見えない形で進行しているといえるだろう。確証はないけれども野鳥の数が近年減少しているのではとの印象を持っている。


7月10日 参院選 公教育理念 議論乏しく

 高校授業料の無償化拡充により私立の上乗せ分の所得制限が撤廃されることで、私立人気が高まりそうだ。先行した東京都や大阪府では公立離れが起き、危機感を抱く自治体は多い。自民、公明、日本維新の会の3党の議論は、拡充対象をどこまで広げるのかといったことに終始し、公教育の未来像や理念に関するものは乏しかった。

 6月中旬、東京都内で開催された私立中高の合同学校説明会に多くの人が集まった。「個別指導に力を入れている」「部活動で実績がある」。各校の担当者が自分たちの魅力をアピールし、親子が熱心に聞き入った。

 「公立に比べて海外留学のプログラムが充実している」と話すのは、娘と一緒に訪れた女性(45)。別の母親は「上の子が私立だったので、下の子は金銭面から都立しかないと思っていた」というが、無償化拡充で「私立も選択肢に入った」と歓迎する。

 こうした声を反映するように、2024年度から私立の所得制限をなくした東京都では公立離れが進み、今春入学者の都立高入試では全 日制の倍率が前年より下がった。

 私立間の競争も激化しそうだ。これまでは同じ都内の私立高に通っていても隣県在住の生徒に都の制度は適用されなかった。26年度からは国の制度として無償化が拡充されるため、私学関係者は「施設や進学実績が良い都内の私立に、埼玉県などからも受験生が集まる可能性がある」とみる。

 進学率が100%近い高校は「準義務教育」とも呼ばれるが、公立だけで全ての生徒を受け入れるわけではない。私立が受け皿となって進学率上昇を支えてきた面がある。その一方で授業料の公私間格差は大きく、私立への国費投入には「一定の正当性がある」(文部科学省幹部)。

 ただ、高所得世帯では無償化で浮いた授業料分が塾代などに回り、かえって教育格差が広がるとの指摘がある他、公立離れが進めば統廃合で高校がなくなる地域が続出する恐れもある。

 名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)は「教育の機会均等が進む点は望ましい」としつつも、「公立高の維持といった政策とセットで進めなければ、かえって学びの選択肢を狭めることになりかねない。今後の公教育制度をどうするかという理念を、明確に国民に示す必要がある」と話した。


かつて新自由主義的な流れの中で、教育バウチャー制度が議論されたことがあった。そのときにも学校間格差を引き起こすとの議論があった。今回の無償化もほぼそれと同じなのだが、「金額」だけが議論になった。おそらく、この間に「教育は金で買うもの」との認識が一層拡大したののと考えられる。公教育をどう考えるかがまず議論されなくてはならないはずにもかかわらずだ。維新の果たした役割は大きくマイナス効果をもたらしている。


7月10日 内閣府 非公開で学術会議設立委

 日本学術会議を2026年10月に現行の「国の特別機関」から特殊法人に移行させる新法成立を受け、内閣府が新法人発足の準備をする「設立委員会合」を、事前に日程を明らかにせず非公開で開催していたことが9日、分かった。政府は法人化により学術会議の活動の透明性を高めるとしているが、新法人の設立プロセスの情報開示に後ろ向きな姿勢が批判を呼びそうだ。

 内閣府担当者は「率直な意見交換を行う目的。非公開にすることは初会合で了承された」と説明している。新法は、会員選考や運営面で首相任命の有識者らが関わる仕組みを構築するとしており、法人化後の政府介入を懸念する声が上がっている。

 新法では発足前の特例として、学術会議会長は首相任命の有識者2人と協議して会員候補者選考委員会を設置すると規定。6月26日の会合後、内閣府のホームページに掲載された議事録などによると、有識者に政府の総合科学技術・イノベーション会議議員の宮園浩平・東大特別栄誉教授と、日本学士院長の佐々木毅・東大名誉教授を選んだことが報告された。

 選考委員会は、大学や経済団体が25年末から26年春に行う推薦などを基に会員候補者を選ぶ。設立委員は同9月ごろに会員予定者を指名する。

 設立委員は、学術会議の在り方に関する有識者懇談会座長を務めた岸輝雄・東大名誉教授ら計9人。学術会議の光石衛会長や副会長3人も含まれる。

 学術会議の組織見直し議論は、20年に菅義偉首相(当時)が学術会議から推薦された新会員候補者6人の任命を拒否したことをきっかけに浮上。政府は拒否の理由を明らかにしないまま組織改革を進めた。新法では運営の透明性を高めるとして、首相任命の監事や評価委員の新設を規定したが、学術会議は監事らを通じて政府の介入を受ける恐れがあるとしている。


駒込武・京大教授説明責任軽んじる

 学術会議の組織改編に向けた会議を非公開で開催し、結果だけを公表する内閣府の姿勢は、説明責任を軽んじるものだ。政府は法人化で透明性を高めると主張しているが、設立委員や会員選考に関与する首相任命の有識者の選定理由について詳細は明かされておらず、むしろ不透明になっている。学術会議は法人化により、行政の思うような組織につくり替えられることになると懸念している。会合を非公開としたことは、政府が社会の反発を買うことを恐れる姿勢の表れだ。


「設立委員会」が非公開というのは透明性を完全に無視している。委員会がまず行わなければならないのは「菅元首相がなぜ6名の任命を行わなかったのか」ではないだろうか。


7月9日 4か国高校生調査 理科 実験性認識「低い」

 日米中韓4力国の高校生を対象とした科学に関する意識調査で、「社会に出たら理科は必要なくなる」と思う高校生の割合は日本が5割弱で最も高く、理科の実用性や必要性に対する認識が低い傾向があったことが分かった。

 調査は国立青少年教育振興機構などが実施。科学に関する興味・関心や学習活動などについて尋ね、日本では昨年9月〜今年1月に約4900人が回答した。

 調査結果によると、「社会に出たら理科は必要なくなる」との問いに「とてもそう思う」「まあそう思う」と答えたのは日本が45・9%。韓国が33・5%、米国27・6%、中国17・6%だった。

 「理科の学習は面白い」とする高校生の割合は日本が比較的高かった一方、「学校で学習する内容より多くの科学の知識を勉強したい」としたのは42・1%と最も低かった。最も高かったのは中国で56・8%だった。

 また、デジタル技術の活用では、プログラミングをどのぐらいするかで「よくする」「時々する」としたのは日本が最も低い14・0%。最も高い韓国で38・9%だった。学校でプログラミングを学んだとする高校生は日本が最も高かった。

 同機構青少年教育研究センタ客員研究員の青山鉄兵・文教大准教授は「日本の高校生には学校外で科学に触れる機会や、主体的に科学活動に取り組む機会が不足していると考えられる。学校外の教育機関や企業などと連携し、多様で質の高い学びを拡充していくことが求められる」と指摘している。


通産省や文科省が期待しているような結果ではなかったようだ。ただ、「不足」「求められる」とのコメントは現場の負担を大きくするだけになるのではとの危惧を抱く。


7月9日 【インサイド】 差別助長・排外主義に懸念

 石破茂首相が、外国人政策に関する新組織の設置を決めた。受け入れ制度の厳格化や犯罪への断固とした姿勢を示すことで、自民党支持の保守層をつなぎ留めたいとの狙いがにじむ。背景には「日本人ファースト」を掲げ、勢力を伸ばしている参政党への警戒感もありそうだ。急速な人口減が進む日本で、国家の持続的成長の鍵を握る「外国人材活用」。ただ過度な規制強化は差別助長や排外主義につながりかねず、有識者からは慎重な議論を望む声が上がる。

 「司令塔を中心に、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けたさまざまな施策を総合的に推進する」。首相は8日、官邸で居並ぶ閣僚に対し、内閣官房に事務局組織を創設し、政府一丸となって対応すると宣言した。

 新組織は、自民が参院選公約で打ち出した政策の一つ。公約では「違法外国人ゼロ」に向けた取り組みを加速し、外国の運転免許証を日本の免許証に切り替える制度や不動産所有の対応を厳格化すると明記した。新組織では、こうした諸問題への対応策をまず話し合うことになりそうだ。

 外国人政策を巡っては、日本維新の会が外国人比率の上昇抑制などの人口戦略策定を主張。国民民主党も外国人土地取得規制法やスパイ防止法を制定するとした。

 与野党が張り合うように打ち出しを強める裏には、参政への危機感がある。参政は、行き過ぎた外国人受け入れに反対し「日本は日本人で支える国に」と訴える。東京都議選で3議席を獲得し、報道各社の参院選序盤情勢調査でも勢いがみられる。

 ある閣僚は、参政が全45選挙区に候補を擁立している点に触れ「間違いなく自民にとって脅威だ」とうめいた。

 一方、立憲民主党は外国人との「共生」を重視する。公約で「多文化共生社会基本法」制定を約束した。野田佳彦代表は「日本に住み学びたい、働きたいという人が増えるのは良いことだ。そういう国をつくりたい」と札幌市で記者団に語った。

 共産党も外国人労働者に日本人と同等の労働者としての権利を保障するとした。れいわ新選組は外国人労働力を低賃金で受け入れてきた「移民政策」に反対する。

 移民政策に詳しい明治学院大の加藤丈太郎准教授は、参政の主張が受け入れられている要因を「インターネットを通じて自分に近い言説に繰り返し触れる中で、実際には外国人と接していないにもかかわらず、外国人を敵視する人が増えている」と分析する。

 一方、政府の動きを「参政の伸長を受け、政府も『しっかり対応している』と示さなければいけないと拙速に動いているのではないか」とみる。

 排外主義に陥らないよう回避する動きも実際に出ている。国民民主の玉木雄一郎代表は公示日の3日、公約の一部修正を発表した。「外国人に対する過度な優遇を見直す」とした文言を「外国人に対して適用される諸制度の運用の適正化を行う」に改めた。玉木氏は「排外主義的」との指摘を受けた措置だと説明した。

 加藤氏は「外国人をたたいても課題は解決しない。日本として外国人とどう向き合うのかを考えるきっかけにすべきだ」と冷静な議論を求めた。


タレント ネルソン・バビンコイさん平和主義イメージ危うく

 政府の新組織設置表明は、排外主義的な主張を掲げる参政党などに保守層の支持が流れるのを止めるための政治的戦略ではないか。米国では移民摘発が不法滞在者以外にも及び、恐怖が広がっている。同様のことが日本で起こってほしくない。来日20年近くになるが、日本でも外国人を攻撃する言動が広がっている。行き過ぎた愛国心は、平和主義の国というイメージを危うくしないだろうか。少子高齢化に直面する先進国では、移民なしに人口を保つことはできない。コミュニケーションを取りながら文化的な違いを受け入れていくほうが未来は明るいはずだ。   


千葉大 手塚和彰名誉教授 外国人共生の支援組織に

 政府が設置する新組織は各省庁からの寄せ集めでなく、外国人材受け入れの法整備や欧州諸国が直面する移民問題に知見のある人材を活用すべきだ。外国人との共生に向けた支援を推進する必要がある。

 共生社会を掲げるのは簡単だが、外国人には日本語や文化の習得が必要で、公的機関による教育が求められる。外国人を受け入れないことを前提 とした従来の関連法は改正する必要があるものの、対応が追い付いていない。受け入れに慎重な政党が出てくる中、外国人政策をポジティブな取り組みに転換していく姿勢が咀要だ。   


参院選 外国人へ差別差別投稿 根拠曖昧

 外国人との共生の在り方が参院選の一大争点に浮上している。一部の政党が排外主義的な主張を掲げ、政府は在留外国人に対応する事務局組織を設置する方針を表明。呼応するように交流サイト(SNS)では「外国人の犯罪が増えている」「医療費不払いが横行」といった差別的な投稿が広がる。しかし根拠が曖昧なものも多く「危ういポピュリスムに陥っている」と懸念の声が上がる。

 「日本人ファースト」を掲げる参政党の神谷宗幣代表は3日、東京・銀座での街頭演説で「いい仕事に就けなかった外国人が集団で万引などをして大きな犯罪が生まれている」と発言。政治団体「NHK党」の立花孝志党首は4日「黒人やイスラム系の人たちが集団でいると怖い」と語った。

 排外主義的とも言える主張への批判はあまり広がらず、SNSを中心にむしろ賛同の意見も多く見られる。しかし、外国人は本当に迷惑な存在なのか―。警察庁などによると、日本に住む外国人の摘発件数は2023年に微増したものの、22年までは減少傾向にあった。日本人も含めた摘発人数に占める割合は10年ほど前から2%前後で推移し、大きな変化はない。

 厚生労働省が全国約5500の医療機関から回答を得た調査によると、昨年9月の訪日外国人患者数は速報値で1万1372人。このうち医療費を払わなかったのはO・8%の87人にとどまる。

 厚労省によると、国内在住の外国人による国民健康保険(国保)の納付率は、データのある150市区町村の平均で63%(昨年12月末時点)。日本人を含めた全体は93%で、確かに外国人の納付率は低いと言えるが、母国に同様の仕組みがなく、制度を理解できない外国人が多いことも背景に あるとみられる。このため厚労省や出入国在留管理庁は制度の周知に取り組んでいる。

 一方、23年度の国保の被保険者は2378万人で、うち外国人は4%の97万人。23年3月〜24年2月の診療分で国保総医療費は8兆9268億円に上ったが、外国人に払われたのは1%に当たる1240億円だった。

 法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は、空前の物価高で有権者が「やり場のない怒りを外国人にぶつけている」と分析。円安などの本質的な問題に向き合わず「外国人が日本を貧しくしたという議論はあまりに乱暴。差別につながる恐れがある」と強調した。  


【選挙コラム】 拝外主義

 認知症の高齢男性に、フィリピン出身の女性職員(35)が優しく語りかける。女性は東近江市の特別養護老人ホームで働き始めて2年。母国に残した子どもの学費を稼ぐため懸命に働く。意欲的な姿に、施設長も「日本人職員は見習つてほしい」と苦笑するほどだ。

 介護現場に限らず、人手不足の日本の労働市場にとって外国人の存在感が年々増している。京都市内でもコンビニ店員、建設作業員ら働く外国人の姿を見かけない日はない。

 だが、外国人に対する視線は時に冷たい。SNS(交流サイト)では「外国人に税金を使うな」「過度な優遇は見直すべき」など不満の言葉があふれる。こうした声に押されてか、参院選でも各党が「外国人」関連の公約を掲げ、共生の在り方が争点として急浮上している。

 不満の背景にあるのは長引く不況だろう。賃金上昇は物価高のペースに追いつかず、「失われた30年」に終止符を打てたとは思えない。思えば、1988年生まれの私にとって、消費税は物心ついた頃にはすでにあり、モノの値段は安いのがいいのが当たり前。就職活動の頃は、リーマン・ショツクで企業は採用活動を縮小。エントリーシートは50社近く送ったが、面接に進めたのは数社たった。

 努力が報われないと感じられてしまう社会では、しばしば不満や怒りの矛先が自分より立場の弱い人や、外国人へと向かう。だが、排外主義が過ちを生むのは、ナチス・ドイツや関東大震災後の朝鮮人虐殺の例を引き合いに出すまでもなく歴史が証明している。

 京都市内では、外国人観光客の急増に伴うバスの混雑やマナー違反にうんざりしている市民は多い。気をつけたいのは、オーバーツーリズムに対する正当な問題提起が、言葉の選び方一つで、差別や誹諧中傷へといとも簡単に装いが変わることだ。支持を広げたいがあまり、人々の弱さを利用し、 分断を煽ろうとするよこしまな立候補者はいないと信じたい。(田代真也) 


欧州でのポピュリズム政党の躍進、アメリカの自国中心主義のMAGA、イスラエルの独善、ロシアの拡張主義など、21世紀は戦争と排外主義の時代となってしまった。これまでの成長至上主義(GDP増大指向)のグローバルノースが延命のためにグローバルサウスを「収奪」している構造がまさに排外主義を生み出している。これまでも日本では在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチやクルド人へのヘイトクライムなどがあった。しかし、それは一部の排外主義者の行動とみなされていたが。欧州のポピュリズム的政党と同じような参政党によるポピュリズム政党の本格的誕生となるとすれば大きな危惧を抱く。参政党の出自はもともと自民党の右派なのだが、国家観だけでなく健康への関心(有機農法や反ワクチン)も強い。かつて左派の領域もカバーする柔軟性をもっているところが新しく共感を得ているように見える。一言でいえば天皇制と有機農業の結合だろう。5・15事件での橘孝三郎の行動動機との近似性もみうけられる。


7月6日 京滋小学校 午前中5時間授業 広がり

 京都府や滋賀県の公立小学校で、午前中に「5時間授業」を行う取り組みが広がっている。1時限当たり45分の授業時間を5分短縮して40分にすることで、一般的な「4時間授業」に1時限を上乗せしている。1時限当たりの授業時間を削ってできた時間は、午後にまとめて子どもの個別学習などに充てている。多くの実施校では時間割の全体的な見直しで下校時間が30分程度早まっており、教員の働き方改善にもつながっているようだ。

 2025年度に午前中5時間授業を実施しているのは、京都府内は京都市の2校。滋賀県は守山市2校、栗東市1校、東近江市1校、米原市1校、愛荘町2校。現時点で実施していないものの、「検討している」とした自治体も複数あった。

 実施校では、登校時刻や休憩時間の長さは極力変えず、給食時間は数十分遅くなるケースもある。下校時刻は朝学習などの見直しで、20〜30分程度繰り上げている。教員は児童の情報共有や授業研究などに充てる時間に余裕が生まれるため、残業が減っているという。

 草津市は来年度から市立小全14校で導入する方針。毎日午後に20分間の「学びタイム」を新設して、年間を通じた全体の学習時間は変わらないようにする。学びタイムでは児童個別の課題に応じて、基礎基本の定着や発展的な学習に取り組むほか、6時間目の授業と組み合わせて60分授業も想定している。

 同市教育委員会学校教育課は「午前中の5時間授業は詰め込み過ぎとの指摘もあるが、子どもは適応が早い。落ち着いて学習に入れるようにと設けている朝学習の時間をなくすが、どんな影響があるか今秋全校で実施する試行を通じて確かめたい」としている。

 授業の時間短縮や内容の柔軟化を巡っては、中教審が学校現場の裁量を拡大して多様な子どもに対応できるようにするため、学習指導要領の改定を議論している。1時限当たりの授業時間を短くして生まれた時間を、個別学習や探究的な学びに充てることも想定している。


午前中に5時間授業が目新しいもののように見えるがなにやらデジャヴ感がある。45分授業を5分間短縮してというところである。これまでもこうした工夫が流行ったことがあった。これで学びの質の向上や教員の働き方改革になるとは思えない。「積みすぎた箱舟」である教育内容をどの程度削減するかということが本丸ではないか。おそらく研究指定校でない一般校では「時間つぶし」のために何かする程度の取組になるような気がする。


7月5日 中教審 学習態度 評価対象外に

 次期学習指導要領に向けた改定作業を行う中教審特別部会が4日開かれ、文部科学省は児童生徒の成績の付け方を見直す方針を示した。学習評価の観点の一つとしている「主体的に学習に取り組む態度」を直接的に反映させない方向で検討する。学習態度は適切な評価が難しく、教員の負担が重いとの指摘が出ていた。

 現在は教科ごとに@知識・技能A思考・判断・表現B主体的に学習に取り組む態度−の三つの観点を「A・B・C」でそれぞれ評価し、それを総括して「評定」を付ける。評定は小学校は3段階、中学校は5段階。家庭には通知表の形で評定を踏まえた成績が示されることが多い。

 学習態度は、学びに能動的に関わったかどうかや粘り強さなどが評価の軸として示されているが、宿題やノートの提出頻度といった形式で判断するケースが少なくないとされる。

 見直し案では、観点別評価を「知識・技能」と「思考・判断・表現」の二つに再編。学習態度は「思考・判断・表現」を評価する際の要素に組み込み、特に良かった場合は加点する形とする他、総合所見欄などに記す。加点した場合に評定でどう考慮するかは今後議論する。

 特別部会では委員から「知識中心の在り方に戻ると短絡的に受け取られないようにしないといけない」との指摘があった。

 また、文科省は通知表の在り方にも言及。通知表に関する取り決めはないが、文科省によると、3学期制の小学校で学期末ごとに作成しているのが約6割を占める。教員負担を減らすといった面から、学年末だけにすることが可能と明確に示すとした。


【インサイド】主体性の判断に課題

 児童生徒評価の観点の一つである「主体的に学習に取り組む態度」は、現行学習指導要領に改定する際、「関心・意欲・態度」を衣替えする形で組み込まれた。授業中の挙手の回数といった表面的な評価が行われているとの指摘を受けての変更だったが、同様の課題は今も根強く残る。

 大手予備校河合塾が2023年に高校教員らを対象に行った調査によると、約9割が観点別評価に課題を感じると回答。自由記述では「主体性の評価が難しく教員間で格差が生じやすい」「提出物が出ていればA評価とするなど導入目的を果たしていない」といった意見が寄せられた。

 「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、不登校の児童生徒が不利になりやすいが、自宅やフリースクールなどで学習を続ける子どもは少なくない。

 観点別評価から外す今回の文部科学省の方針について、4日の中教審特別部会では委員が「学校が嫌になってしまった子どもにとっても励みになる」と肯定的に評価した。ただ、学習態度を評定にどう反映させるかについては意見が分かれた。

 評定は内申点に直結し、高校入試などに影響を与えるため、文科省は秋以降に専門の作業部会を立ち上げ、慎重に議論を進めるとしている。


1990年代後半から2000年代にかけて実施されたゆとり教育の中で「関心・意欲・態度」が重視されるようになった。当時から評価基準が恣意的なるなどの批判があったが、学びの方向転換への期待とも相まって渋々受けいらられてきた。ゆとり教育批判が噴出し、2016年の文科相が「ゆとり教育との決別」を宣言したことから一気に学力重視へと進みだした。しかし、学習態度の評価はそのまま据え置かれて整合性が取れなくなった。中教審が今更「知識中心の在り方に戻る」のではとの危惧を表明するのは噴飯ものといわねばならない。


7月3日 ガザ 発砲報道が波紋

【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザでの米国とイスラエルが主導する物資配給について、イスラエル紙が兵士の証言を基に、住民へ「軍が意図的に発砲している」と報道し波紋を広げている。5月下旬から始まった配給を巡っては、拠点周辺でガザ住民の殺害が相次ぎ、保健当局は2日、死者は640人と発表。支援団体は「支援を装った虐殺だ」と非難する。

 物資配給は従来、国連中心に約400ヵ所で実施されてきたが、イスラエルは「イスラム組織ハマスが物資を奪う」と主張し、枠組みを変更した。米国と共に設立した「ガザ人道財団」が中部と南部の計4ヵ所で行う。

 6月27日のハーレツによると、配給は通常、毎朝1時間のみ。拠点周辺の任務に就いた兵士らは配給時間前に到着した住民らに発砲したと証言した。明ら かに脅威がない場合も司令官は発砲を命じたとしている。

 ある兵士は「殺りくの場だ。催涙ガスなど群衆を制御する手段は取られず、重機関銃や迫撃砲を用いた」と強調した。別の兵士は「ガザでは命が失われて も何の意味もなさない」と語った。

 イスラエル軍は当初、八ーレツの報道を否定したが、地元メディア「タイムズ・オブ・イスラエル」は、軍が拠点周辺で民間人を殺害したことがあると認めたと伝えた。

 ガザ市の劇作家アリ・アブヤシンさん(60)は電話取材に、長男(36)が拠点付近で銃撃が始まり引き返したと説明した。「住民は最低限の食料を得るのも命がけだ。なぜ世界は黙っているのか」と怒りをにじませた。


イスラエルのイラン攻撃で世界の目はガザから離れてしまった、と住民らは感じているのだろう。イスラエルの戦闘はなんらの政治的な意味もなく、最悪のパレスチナ住民へのジェノサイドであり続けている。


7月3日 アメリカ 対外援助機関を廃止

【ワシントン共同】ルビオ米国務長官は1日、対外援助を担う国際開発局(USAID)を公式に廃止すると発表した。世界各地での事業を同日付で停止した。米国は世界最大の対外援助実施国。その主軸を1961年から担ってきた機関が約64年の歴史に幕を下ろした。途上国で死者が増え、今後5年間で約1400万人の命を脅かすとの分析もある。

 廃止は、政府歳出の削減を公約しているトランプ大統領の政策を象徴する動き。今年1月の政権発足直後から、実業家マスク氏が率いた「政府効率化省」の主導で予算停止や職員削減を進めていた。米国第一の外交方針と合致する事業に限り、国務省に移管する。

 ルビオ氏は声明で、今後の対外援助は「対象を絞り、期間も限ったものになる」と説明した。USAIDの下で「開発目標はほとんど達成されず、地域の不安定化は進み、反米感情が増大した」と訴え、USAIDが「国連や国際非政府組織(NGO)の方ばかりを向き、米国の納税者を顧みなかった」と主張した。

 英医学誌ランセットは、USAIDの大幅な資金削減によって2030年までに世界各地で約1400万人の死者が出て、うち約450万人は5歳未満の幼児になると推計した研究者らの論文を掲載している。

 AP通信によると、政権は対外援助の新年度予算で、これまでの半分以下となる170億ドル(約2兆4千億円)しか要求していない。

 オバマ元大統領とブッシュ(子)元大統領は6月30日に職員たちのオンライン会合にメッセージを寄せた。オバマ氏は、USAID廃止は「途方もない間違いだ」と述べた。ブッシュ氏は、途上国でのエイズ対策を挙げて「あなたたちは米国の力を示してきた」と職員をたたえた。


【インサイド】米のソフトパワー 減退必至

【ワシントン共同】米政府が、途上国で貧困削減や民主化支援に取り組んできた国際開発局(USAID)を廃止した。理念や文化を通じて他国を引きつける「ソフトパワー」の減退は必至で、トランプ大統領は自ら有力な外交手段を手放した。最大の競争相手、中国にとっては影響力拡大の好機になる。

 「米国の良心だった」「USAIDは米国そのものだ」−。米メディアによると、ブッシュ(子)、オバマ両元大統領は廃止前日の6月30日、USAID職員に向けたビデオメッセージで組織廃止を嘆いた。

 USAIDはエイズを含む感染症予防や干ばつ対策、学校建設などに取り組んできたほか、民主派や人権擁護団体を支援。「内政干渉」との批判をはねつけ、自由や法の支配といった民主主義の価値観を浸透させて世界中で「米国ファン」を生む役割を果たしてきた。

 直近の年間予算は連邦政府全体の1%にも満たないが、費用対効果が分かりにくい点などから、歳出削減を公約に掲げたトランプ氏に狙い撃ちされることになった。

 中国にとってはアジアやアフリカで米国が去った空白を埋める絶好の機会となる。既に南アフリカやネパールに援助を申し出ているとも伝えられている。インフラ整備などの経済援助を通じて、自国に有利な世論形成を図るとの見方は強い。

 オバマ氏はUSAIDの役割をたたえ「いずれ、重要性を思い知ることになる」と警鐘を鳴らした。


パックスアメリカーナの終焉との印象は強い。これまで果たしてきたUSAIDの役割は二面性を持っていることは記憶しておかなければならない。民主主義と住民の厚生への援助と同時にアメリカ文化の浸透と資本の収奪を支えてきたのだから。かつてキリスト教宣教師が「遅れた世界」の啓蒙のために海外進出していたことともパラレルではないだろうか。


7月2日 厚労省 被爆者数10万人割れ

 被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者が2024年度末時点で9万9130人(前年度比7695人減)となったことが1日、厚生労働省のまとめで分かった。 10万人を下回るのは、旧原爆医療法施行で手帳交付が始まった1957年度以降初めて。平均年齢は86.13歳で、0.55歳上昇した。今年で戦後80年となり、高齢化する被爆者の医療と介護、体験継承の在り方が問われている。

 厚労省によると、都道府県別では広島の4万8310人が最多。長崎が2万3543人、福岡が3957人と続いた。少ないのは山形6人、秋田12人、岩手15人だった。

 57年度に約20万人だった手帳の所持者数は、80年度に37万2千人を超えて以降、減少傾向が続いた。99年度に30万人を切り、2013年度に20万人を下回った。

 被爆者手帳は@原爆投下時に国指定の区域にいたA投下後2週間以内に広島、長崎市内に入ったB身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあったC母親の胎内にいた―のいずれかに該当すれば被爆者と認定、交付される。医療保険の自己負担分が国費で賄われ、疾病に応じて手当が出る。自らの意思で手帳を申請しない該当者もいる。

 広島で原爆投下後に一定の地域で「黒い雨」を浴びた住民については、広島高裁が21年、訴訟の原告全員を被爆者と認め、国は翌22年から新しい認定基準の運用を始めた。一方、指定区域外で原爆に遭った長崎の「被爆体験者」など、被害を訴えながら被爆者と認定されない人もいる。


「歴史から学ぶことが重要」

 舞鶴引揚記念館(舞鶴市)や滋賀県平和祈念館(東近江市)など、戦争や平和に関連する資料を展示する全国の13施設は1日、戦争の歴史から学ぶことが重要だとする共同声明を出した。

 13施設でつくる「全国関連施設ネットワーク会議」名の声明は、戦争体験者の証言を直接聞く機会が減る中、各施設が戦争の記憶を次世代に引き継ぐための取り組みを続けていることを紹介。戦争への危機感が強まっている今こそ「過去の戦争がいかに多くの人々を苦しめ、大切なものを奪ったのかを歴史から学ぶことが重要である」と述べている。

 東京都内で記者会見した平和祈念展示資料館の増田弘館長は、中高生を将来の語り部として育成する舞鶴引揚記念館の取り組みを紹介し「高齢の語り部に依存することは難しい。施設間でノウハウを共有しながら情報を発信していきたい」と話した。


「被爆者数10万人割れ」とのリードをどう読めばいいのか逡巡してしまう。「80年度に37万2千人」超という数字にも驚いてしまうのだが、実際には直接の死者も含めて大勢の人たちが原爆の被害を受けている。そして、戦争にかかわる「語り部」も高齢化で大きく減少しているという。これまで、被害を受けた側や加害の側の証言が「語り」の中心となってきていた。今後、若い人たちを「語り部」として育てていくことが重要となってくるが、戦争が過去このことではなく現在と地続きであることを知らせていく役割が求められるのではないだろうか。


7月1日 亀岡市会 ひめゆり発言 「遺憾」

 亀岡市議会は30日の本会議で、沖縄戦の慰霊碑「ひめゆりの塔」の展示について「歴史の書き換え」などとした自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)の発言を念頭に、「遺憾の意を表明する」とした決議案を賛成多数で可決した。提案者の一人は自民党籍を持つ市議で、保守系会派からも賛成者が出た。

 議長を除いた市議23人のうち、13人が賛成、9人が反対し、1人が退席して可決された。

 決議は亀岡市内の児童生徒が沖縄や広島を訪問して平和学習をしているとし、「沖縄県民は国内最大の地上戦で多くの方が犠牲になり、筆舌に尽くしがたい苦難を経験された」と言及。西田氏の名や発言内容には触れずに、「国会議員による信じがたい発言や見解があったことで、沖縄県民のみならず多くの方の心を深く傷つけた」と批判し、「史実に基づいた正しい歴史認識」を後世に伝える重妥性を訴えた。

 保守系会派・新清流会(7人)の西口純生市議と躍動〜輪の風〜(4人)の松山雅行市議が共同提案した。自民党籍を持つ西口市議は賛成討論で「国政を預かる京都の国会議員が沖縄戦の悲惨さも知らずに発言した。政治的なことは抜きに、沖縄県民の心情に寄り添うべき」と主張した。

 新清流会は議長を除く6人全員、躍動と共産党議員団(3人)も全員が賛成して多数となった。保守系会派の経政会(4人)は3人が反対し、1人が退席。公明党議員団(3人)、亀岡有志の会(3人)は全員が反対した。

 経政会、公明党、有志の会に所属する市議3人は、西田氏の発言に触れず「正しい歴史認識を引き継ぎ、世界平和の実現に努める」などとした決議案を共同提案し、賛成多数で可決された。


府内の北部自治体議会での決議が相次いでいるが、やや緩慢な印象を受ける。透けて見えるのは参議院選を前にした府北部の西田離れか。