京都市の門川大作市長は2日、2017年度一般会計当初予算案の規模が2年ぶりに増加し、7669億円になるとの見通しを明らかにした。子育て支援の業務を一元化する「子ども若者はぐくみ局」の4月発足に合わせて子育て環境の充実に重点配分し、保育所の受け入れ枠の拡大や民間保育士の給与アップを図る。 国基準での待機児童ゼロに向け、保育所の受け入れ枠拡大整備に過去最大となる36億2200万円を充てる。16年度から12億5200万円増やし、保育所や認定こども園、小規模保育事業所の新設や増改築を支援することで、18年4月に1081人分の受け入れ枠を増やす。 民間保育士の処遇改善では、市が国基準よりも手厚く独自に計上してきた分の47億7600万円に加え、国の施策に伴う13億7千万円も盛り込む。市内の保育士の平均年収は433万円(国平均315万円)から約30万円増の462万円となる見込みで、人材確保につなげる。 一方、文化庁の京都移転に先立つ4月の「地域文化創生本部(仮称)」設置に合わせ、「文化を基軸とした施策」を推進する。2〜11月に催す「東アジア文化都市」の関連事業に3億3800万円、現代アートや舞台芸術の担い手、裏方の人たちの支援に1億円を充てる。 予算案の規模は、京都府が負担してきた教職員給与費が京都市に移管されることに伴い、16年度から392億円(5・4%)増える。歳入では、市民税の法人分や地方消費税交付金が落ち込み、編成前に349億円の財源不足を見込んだ。事業の見直し、市債の返済に備えた公債償還基金の取り崩しなどで補う。 門川市長は「厳しい財政状況に変わりないが、京都の未来に必要な施策を進めるため、質の高い事業に取り組みたい」と話した。 【教育関係予算】 少人数教育の推進や自学自習の習慣化のためのプログラムの充実、 外国語指導助手(ALT)の増員や道徳の特別教料化に向けた評価の研究をはじめとする学習指導要領改訂に向けた取り組みなど、子どもの学力の定着や向上のため計91億8500万円を計上した。 元教員を教務主任補佐として試行配置し、教職員の多忙化解消を図る事業には990万円を充てた。茶道など伝統文化活動の充実や中学校吹奏ら楽部への外部指導者派遣の拡充など、文化庁移転に向けた文化教育の充実には7千万円を盛り込んだ。 ![]() |
政府の働き方改革実現会議は14日、長時間労働抑制のため、1年間の残業時間の上限を720時間(月平均60時間)とする方向で合意した。一方、焦点となっている繁忙期1カ月当たりの上限では100時間の案を検討しているが、労使の意見の隔たりが大きく、引き続き調整することとなった。 政府は同日、1年間の上限時間を盛り込んだ抑制策を初めて提示し、連合と経団連は受け入れる考えを示した。月の上限時間につい て安倍晋三首相は「胸襟を開いた責任ある議論を労使双方にお願いしたい」と3月までの合意を要請した。 政府は3月にまとめる実行計画に1年間や1ヵ月の上限時間を盛り込む方針で、上限時間を法律に明記し罰則も設ける。 過労死の労災認定基準は、倒れる前の1カ月間に100時間、または2〜6力月にわたり月平均80時間超の残業をした場合、仕事と死亡との関連が強いとしている。政府は健康確保のためこの基準を守る考えだが、過労死遺族らは100時間の上限案を「過労死の容認だ」と批判している。 政府は研究開発職は健康.確保を条件に対象外とし、建設従事者やドライバーは実施時期を遅らせることを検討している。 ![]() |
厚生労働省は14日、保育所の運営指針について、2018年度からの改定案を公表し、3歳以上の幼児を対象に、国旗と国歌に「親しむ」と初めて明記した。 文部科学省が同日公表した幼稚園の教育要領見直し案にも同様の趣旨が盛り込まれた。ただ、保育所は学校教育法に基づく施設ではなく、保護者から幼児を預かる福祉施設であることから、専門家からは「過度の押し付けになってはならない」との懸念も出ている。 パフリックコメント(意見公募)を実施、周知期間を経て、18年4月に施行する。 指針は「保育所保育指針」との名称で、私立も対象。幼児の成長や安全面で配慮する項目について、保育現場での順守や努力を求める内容。現行指針には、国旗や国歌に関する記述はない。新指針案は、3歳以上を対象とした項目で「行事で国旗に親しむ」「国歌、唱歌、わらべうたやわが国の伝統的な遊びに親しむ」と盛り込んだ。厚労省は「国旗掲揚や国歌斉唱を強制するものではない」としている。 幼稚園は学校教育法で義務教育前の基礎を培う場、保育所は児童福祉法で保育を提供する場とそれぞれ位置付けられており、本来の目的は異なる。 ただ、政府は幼保一体化を進めており、厚労省は幼稚園と保育所で整合性のある幼児教育を進めているとして「幼稚園の見直しにな らった」と説明している。 ![]() |
文部科学省は14日、小中学校の次期学習指導要領の改定案を公表した。小学校で外国語活動を3、4年から始め、英語を5、6年で教科化。3〜6年の授業時間が週1こま(45分)増える。短時間授業や夏休み短縮など弾力的な時間割編成を求めるが、各校は時間確保に苦慮しそうだ。小中学校の社会では、竹島(島根県)と尖関諸島(沖縄県)を初めて「固有の領土」と明記。韓国外務省は在韓国日本大使館の鈴木秀生総括公使を呼び抗議した。中国の反発も必至とみられる。 改定案は指導内容を詳しくし、分量は現行の約1・5倍。文科省の合田哲雄教育課程課長は「若い教員が増えたこともあり、きちんと伝わるように書いた。画一的指導を求めるものではない」と説明した。全面実施は小学校が2020年度、中学校は21年度の予定。 各教科で「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を促す。これまでの議論で「アクティブ・ラーニング」と表現していたが、文科省は「多義性がある言葉だ」として、この用語を改定案に入れなかった。 英語の「聞く・話す」が中心の外国語活動は現行の小学5、6年から前倒しする。教科化する英語は「読む・書く」も段階的に指導。家庭や地域など身近な事柄を扱う。 中学校の英語は、授業を原則英語で実施。社会的な話題に範囲を広げ、自分の考えや気持ちを伝え合えるようにする。新たに基本的 な感嘆文や仮定法も教え、指導する英単語数も増やす。 現行指導要領は一部で北方領土を「固有の領土」と記載し、竹島、尖閣諸島は指導要領の解説書で扱っている。文科省は今回、「正当な日本の主張を理解させるため」として法的拘束力のある指導要領に盛り込んだ。 指導要領の基本的な考えを示す「総則では、育成を目指す資質・能力を@知識・技能A思考力・判断力・表現力B学びに向かう力・人間性―と明示。教育課程編成や人材配置など学校運営の改善を月指す「カリキュラム・マネジメント」の取り組みを要請した。 文科省はパブリックコメント(意見公募)を実施し、次期指導要領を3月中に告示、解説書を6月にも公表する。小学校の英語教科化を円滑に進めるため、18〜19年度の移行期間に最低限学ぶ内容も近く示す。 高校の次期指導要領は17年度に告示、22年度の新入生から学年ごとに順次実施する予定。 (2016年12月13日) 【解説】 文部科学省が示した次期学習指導要領改定案は、小学校の英語教科化や「主体的・対話的で深い学び」など多くの内容を盛り込んだ。現時点で考えられる教育の理想を掲げたともいえるが、実現に向けて取り組む余裕が学校にあるのか疑問だ。文科省には教員を支える方策を示し、実現する責務がある。 英語の教科化はグローバル化の流れに沿うものだが、他の学習内容は削減されず、結果として、現行指導要領で既に「限度」とされている授業時間数が、小学3〜6年で増える。短時間学習などで対応したとしても、詰め込み感は否めない。 ![]() |
京都府教育委員会は9日、京都市を除く中学校の英語科教員で、本年度に英語能力試験TOEICを受験した74人のうち、府教委が目標として課した英検準1級に相当する730点以上を獲得したのは16人で、約2割にとどまることを明らかにした。最低点は280点で、500点未満も14人いたという。府教委は「英語科教員の資質が問われかねない厳しい状況だ」としている。 国は、次期学習指導要領で、中学校の英語科の授業は基本的に英語で行うことを盛り込む方向で、2017年度内に中学校教員で英検準1級以上 50%という目標を掲げている。 そのため府教委は、本年度から英検準1級以上を取得していない英語科教員に、英語のコミュニケーション能力を測るTOEICの受験を促し、受験料を負担する事業を約750万円かけて始めた。 対象となる50歳未満の教員は約150人で、本年度は74人が受験した。まず昨年6月に試験実施したところ、4人しか達成できなかった。その後、8月と10月に集中セミナーを3日間実施。その後1月までに追加で8人が合格した。ただ受験者の平均点は、1回目が578点、2回目が588点で、セミナーや自習を経ても10点しか上がっていない。 今回達成しなかった教員は、来年度に再受験させるとともに、個別の課題に応じた自習を促し、支援も行うという。学校教育課は「採用試験に受かっているのだから、英語力はあるはずだが、教師生活の中でさびついているのではないか。中学教員は、多忙化が課題だが、学校にも理解を求め、勉強する体制を整える」としている。 一方、中学教員全体での英検準1級相当の達成率は昨隼度の25・8%から34・5%に増えた。 |
京都府教育委員会は9日、京都市を除く府内の公立小中高校と特別支援学校を対象に独自に行っているいじめ調査の本年度2学期分の結果を発表した。重大な事案は宇治市の中学校で1件あり、現在は解消されているという。いじめを受けたと報告した全体人数は1学期より約1900件減の1万3620人で、小学生では5人に1人だった。 宇治市教委によると、被害者の中学生は複数の生徒から、身体的特徴をからかわれたり、頭をはたかれたりしたために欠席し、2学期の欠席日数が重大事案の目安となる30日を超えた。別室登校などを総て現在は、通常に登校している。生徒の学年や性別、校名は明らかにしていない。 市教委は「保護者からの訴えで学校はいじめを把握し、加害生徒への指導や被害生徒の家庭訪問を重ね、改善に向かった」と説明し た。 . 調査では、被害の程度を3段階に分けており、最も軽微な段階が1万3065件と大半を占めた。解消率は97・6%。学校教育課は「いじめを早期発見し、丁寧な対応に努めてもらっている」としている。 内容(複薮回答)は、からかいや悪口などが7950件と最も多く、軽い暴力が3979件で続いた。パソコンや携帯電話による中傷は小学校で203件、中学校で61件だった。 府教委は、国が義務づける年1回のいじめ調査と別に1、2学期に独自調査を実施している。 |
ひとり親家庭や生活に困っている子どもたちに食事を提供する「子ども食堂」を増やすため、京都府は2017年度から運営団体への補助を始める。企業などから寄付を受けた食品を扱う「フードバンク」などを通じて、すべての運営団体に食材を提供できるシステムを構築する。子どもの貧困が社会問題化しており、生活支援と居場所の確保を図ることで、将来的な進学や就職にもつなげる。 2月定例府議会に提出予定の17年度一般会計当初予算案に、事業費1億4500万円を盛り込んだ。 さまざまな課題を抱える子どもたちに安価か無料で食事を提供する「子ども食堂」は全国で開設が進んでおり、府内には30カ所ある。NPO法人などが運営しているが、個人の寄付や会員の参加費が主な収入源。食材を自費で購入しているケースもあり、台所事情は厳しい。 府は新たに補助制度を創設する。開設費として最大20万円、運営費として年間最大150万円を助成する。フードバンクや農業団体、社会福祉協議会などと連携して、運営団体に食材が行き渡る仕組みをつくる。 また、生活・学習支援に取り組む団体への補助(週2回以上で年間490万円)を拡充し、週3回以上実施する場合に年間675万円を補助する。18歳になり児童養護施設を退所した子どもの自立を支えるため、共同生活する「シェアハウス」の開設費として年間最大400万円を支援する。大学進学や資格取得に集中できる環境を整える。 府は、現在の83カ所ある子ども食堂や生活・学習支援拠点などの居場所を、17年度中に114カ所へと増やすことを目標に掲げる。今後、福祉団体やNPO、市町村など関係機関で、子どもの貧困対策ネットワーク会議を発足させる予定で、府家庭支援課は、「子ども食堂を起点に子どもを巡る課題を把握し、対策に乗り出したい」としている。、 【続報】 小学校4、5年と中学校2年時点での基礎学力定着を図る学習など学力向上対策に1億2600万円を計上した。経済的に困難な子どもに対する補習や家庭訪問を行う取り組みに4100万円、不登校支援に2800万円を盛り込んだ。 高校生の海外留学支援に4100万円かけ、英国などへ中期や短期で留学する生徒125人に費用を助成する。京都の文化力継承のため、郷土芸能や邦楽など文化系の部活動への支援に800万円を充てた。 教職員の長時間労働の改善に向け、モデル地域や府立高で業務時間の管理や、部活動の軽減策を模索する事業に1300万円、教員 を目指す若者の育成に300万円をそれぞれ充てた。 ![]() |
長時間労働の抑制に向け、政府が、残業時間の上限を月平均60時間とする方向で調整に入った。14日に開く働き方改革実現会議で案を示し、3月にまとめる実行計画に盛り込み、労働基準法改正案を国会に提出する方針だ。 過労死や過労自殺、違法残業が絶えない一方、企業側には長時間労働に関する法令違反を改める姿勢が乏しい。罰則付きの上限規制は不可欠だ。ところが、政府案は短期間とはいえ、過労死ラインを超える残業を認める内容になっており、懸念せざるを得ない。 労基法は、労働時間を1日8時間、週40時間までと規定する。企業が労働者に残業させる場合、労使協定(三六協定)を結び、上限時間を定める必要がある。厚生労働省は月45時間の上限を設けているが、特別条項を結べば年6回まで、この上限を超えて残業させることが可能になり、歯止めになっていないと批判されてきた。 政府案は、特別条項による延長を含めた総残業時間を規制する内容だ。延長しても、月平均60時間、年間720時間の上限を超えない ようにさせるという。しかし、現在設けている上限の45時間でなくなぜ60時間なのか。経営側の反発を避けるため一定の幅を持たせたのだろうが、疑問は残る。 さらに、問題は、繁忙期は月100時間、2カ月で月平均80時間など新たな上限を設け、年間を通して調整するとしている点だ。厚労省の脳・心臓疾患に関する労災認定基準は、発症前1カ月におおむね100時間、または2〜6ヶ月にわたり1ヶ月あたりおおむね80時間超の残業があったことを目安にしている。80時間までは大丈夫という基準ではない。「月45時間を超え、残業時間が長くなるほど、業務と発症の関連性が徐々に強まる」とも規定する。 政府案は、過労死の危険が高まる水準の残業を認めることになる。これでは改革の名に値しない。研究開発職などを規制対象外にす ることも検討されているが、安易に例外を設けるべきではない。 働き方改革の効果を上げるためには残業上限に加え、終業から次の始業までに一定の休息時間を義務付ける勤務間インターバル規制の導入も検討すべきだろう。 厚労省が昨年4月から9月に指導した約1万事業所のうち4割を超える事業所で法令違反があり、企業の法令順守意識の低さが改めて明らかになった。企業に適正な労働時間を守らせる体制も整えなければならない。 ![]() |
京都府と京都市の両教育委員会は来年度から、府立高と市立中が連携した学力向上事業を始める。府立高教員が、学力的に困難な生徒が多く通う市立中に派遣され、学習や生徒指導を行う。両教委が協力して中高連携を予算化するのは初めて。 門川大作京都市長が記者会見で一部を明らかにした。府の新年度予算案に、教員の人件費1億5千万円が盛り込まれる見込み。 両教委によると、府教委が新たに24人の教員を採用し、府立高4校に所属しながら、市立中10校程度に2〜3人ずつ派遣するという。中学校では通常の授業や補習で、主に基礎学力の指導を行う。 府と市は、来年度から市立学校の教職員の給与負担が府から市に移譲されることに伴い、小中学校などで少人数教育を進める教員の人件費約7億円の財源移譲を巡って折衝を続けていた。中学校で指導する教員の人件費の一部を府が実質的に負担することで、決着を図ったとみられる。 市教委によると、国の教員定数改善によって5億5千万円分の予算を確保できたため、新年度以降もこれまでと同規模の少人数教育が維持されるという。 ![]() |
全国44の国立の教員養成大学・学部を2016年3月に卒業した人の9月末時点の教員就職率が、前年比1・6ポイント減の58・9%だったことが31日、文部科学省の調査で分かった。教員就職率が60%を下回るのは6年ぶりで、同省は「民間企業の求人が増えたことが影響した」としている。 卒業生1万888人のうち教員になったのは前年比74人減の6412人。そのうち正規採用が4166人(同121人増)、臨時任用が2246人(同195人減)だった。保育士が153人で、教員・保育士以外への就職は同180人増の2374人だった。 大学院などへの進学は1223人、未就職は589人。 教員就職率が最も高かったのは大分大の78・2%で、鳴門教育大76・0%、兵庫教育大74・1%が続いた。最も低かったのは横浜国立大の42・4%。滋賀大は72・4%、京都教育大は59・9%。 国私立の教職大学院25校を16年3月に修了した758人のうち、現職教員を除いた修了者は403人。このうち同年9月末時点で教員になったのは365人で、教員就職率は前年比1・0ポイント減の90・6%だった。 都道府県と政令市の教育委員会などが2015年度に実施した小中高校など公立学校の教員採用試験で、競争率の全国平均が前年度 より0・2ポイント減の5・2倍だったことが31日、文部科学省の調査で分かった。 受験者の総数は17万455人で、前年度より4521人減った。一方で採用者の総数は3万2472人で228人増えた。 競争率を学校種別に見ると、小学校3・6倍、中学校7・1倍、高校7・0倍で、いずれも前年度より下がった。 自治体別の競争率は、鹿児島県が10・9倍で最も高く、沖縄県9・7倍、秋田県8・0倍と続いた。最も低いのは富山県の3・3倍で、山口県3・7倍、滋賀県3・8倍の順だった。京都府は5・8倍、京都市は5・9倍だった。 ![]() |