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  • 時間外勤務は月平均13時間.30
  • 教育勅語の教材使用は否定せず.31
  • 3月31日 政府 教育勅語の教材使用は否定せず

     政府は31日、戦前の教育の基本理念を示した教育勅語を学校で取り扱うことに関し「わが国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切だ」とする一方「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」との答弁書を閣議決定した。

     民進党の初鹿明博衆院議員が、1948年に衆院は教育勅語の排除を、参院は失効をそれぞれ決議したことを踏まえ提出した質問主意書に答えた。

     教育勅語は、大阪市の学校法人「森友学園」が運営する「塚本幼稚園」が、園児に暗唱させていた。国会答弁で内容を是認する見解を述べた稲田朋美防衛相を、野党が問題視している。



    3月30日 総務省 時間外勤務は月平均13時間

     総務省は29日、主要自治体を対象に、残業を含む時間外勤務の実態を調べた結果、2015年度は平均で月13・2時間、年間158・4時間だったと発表した。民間企業とほぼ同じ水準だが、過労死ラインと批判される月80時間を超える職員も一部で確認された。政令指定都市の本庁職員は長くなる傾向にあり、総務省は「抑制を呼び掛けたい」としている。

     時間外勤務の調査は初めてで、ワークライフバランスの実現に向けて実態を把握するのが目的。

     対象は47都道府県と20政令市、政令市を除く県庁所在地31市と東京都新宿区。管理職以外の正規職員の時間外勤務を調べた。


    自治体公務員の場合は超勤手当が支給される。しかし、手当支給は青天井ではないためいわゆる「サービス残業」は、この調査の数字ではないだろう。超過勤務で失われた時間は時間で補われなければならないと齊藤純一さんは『不平等を考える』で語る。民主主義にとっての「余暇」の重要性も指摘していることは傾聴に値する。


    3月29日 働き方改革実現会議 「働き過ぎ」初の法規制

     政府は28日、働き方改革実現会議を開き、改革の実行計画をまとめた。人口が減少する中でも生産性を向上させ、多様で柔軟な働き 方が選べる社会づくりが狙い。罰則付きの残業時間の上限規制導入や、正社員と非正規労働者との不合理な差をなくす「同一労働同一賃金」の実現を盛り込んだ。

     上限規制は初めてで、長年の懸案だった長時間労働や非正規の格差の改善に向け一歩踏み出した。

     企業や働く人の自主的な取り組みに委ねた面も多く、個人消費の拡大や生産性の向上に着実につなげられるかが課題だ。厚生労働 相の諮問機関である労働政策審議会で改正案をまとめ、年内に国会提出。早ければ2019年4月から順次施行される見通しだ。

     最大の焦点の残業規制は、上限の原則を月45時間、年360時間と明記し特例で繁忙期の上限を設けた。単月で100時間未満、繁忙が2〜6カ月続くなら月平均80時間以内、年間で計720時間以内とした。

     一方で、自動車の運転業務や建設業、医師は適用を5年間猶予。運転は5年後から上限を年960時間とし、建設は災害時の仮設住宅の建設など復旧・復興に携わる場合は繁忙期の上限を適用しない。医師の規制内容は2年後をめどに結論を出す。研究開発は規制対象から除外した。

     同一労働同一賃金は、昨年12月にまとめた指針案を盛り込んだ。派遣労働者は派遣先企業との同一賃金を求めるが、就業先が変わって賃金が下がることを避けるため、 派遣元企業で十分な処遇が受けられる労使合意があれば例外とした。


    連合の神津里季生会長の話
    政労使努力で実効性担保を

     同一労働同一賃金と長時間労働の抑制は、連合として一番こだわった点だ。大きな一歩であり、政労使が努力して実効性を担保したものにしないといけない。(残業の上限として)月100時間近い数字が残ったことは現時点ではやむを得ない。原則的上限の月45時間が常識であるということにできるだけ早く持って行かないといけない。(高収入の専門職などを労働時間の規制から外す)高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の拡大は長時間労働を助長する懸念があり、反対だ。


    遺族は納得できず

     2015年12月に過労自殺した電通の新入社員高橋まつりさん=当時(24)=の母幸美さん(54)は28日、政府がまとめた働き方改革の実行計画について「繁忙期はほぼ月100時間の残業を認めるという法律には、過労死遺族として全く納得できない」とのコメントを発表した。

     連合と経団連の労使交渉でまとまらず、安倍晋三首相の裁定により「1カ月100時間未満」で決着した繁忙期の上限について「(未満を付けても)ほとんど違いがない。議論を重ねたとは思えない」と指摘。「過労死を予防するための法案なのに、100時間とするのは過労死をさせよ.ということを認める法案でしょうか」と疑問を呈した。

     「このままでは何も変わらないのではないかと危惧します」とした上で、政府に働く人の健康と命を守るための法改正をするよう求めてい る。

     小児科医の夫を過労自殺で亡くした「全国過労死を考える家族の会」東京代表の中原のり子さんは、医師の残業規制が5年間猶予されることについて「見過ごすことができない。5年の間に被災者が出ることを想定しているのか」と批判するコメントを出した。 .


    上限規制がなされたことを成果とする考え方もあるが、納得が行かないという意見は妥当性がある。厚労省が示す「月80時間は過労死ライン」はそこまでなら大丈夫と保障するものでは全くない。逆にレッドゾーンを示すものであるから、極力避けるべきものであるはずだ。ちなみにと「運転は5年後から上限を年960時間」とは月80時間ならOKだとしたこと。高齢運転者が増えるなかでの例外規定は交通事故を必然としているようなもの。また、災害時の建設業も青天井としていることも労務災害を容認していると思える。おそらく規制の対象外になる労働者は、未組織の労働者であり、低賃金の労働者である可能性が高い。連合加盟に労働組合は一定の「歯止め」にはなるのだろうが、それ以外の労働者は素手で戦わざるを得ないのだろうか。連合は、速やかに「勤務間インターバル制」の導入を求める運動に取り組む必要があるだろう。


    3月25日 教科書検定 初の道徳教科書、検定合格

     文部科学省は24日、2018年度から使う教科書の検定結果を公表した。教科化に伴い初めて作られた小学校の道徳教科書は8社が申請した24点全てが合格し、いじめに関する教材を全点が扱った。主に高校2年で使う教科書も全て合格したが、15年成立の安全保障関連法を巡り、集団的自衛権を行使できる「武力行使の新3要件」の詳しい説明や、近現代史や領土問題で政府見解の明記を求める検定意見が付くなど、政府の立場に沿わせる傾向が続いた。

     道徳教科書では、現在使われている文科省作成の副読本「私たちの道徳」に収録されているものを含め、複数社が取り上げた読み物は計113作品。


    「考える道徳」に遠く

     初の検定となった小学校の道徳教科書には、国が先行して作った副読本からの転用が多く、既視感が漂う内容となった。教える価値項目を細かく定めた学習指導要領が教科書会社の創意工夫の余地を狭め、横並びの結果を招くことに。新しい道徳を体現する教材が期待されていたが、公表された検定結果は文部科学省が目標に揚げた「考え、議論する道徳」には遠い。

     「はしの上のおおかみ」「雨のバスていりゅう所で」「ブランコ乗りとピエロ」。来春から使用される小学校の道徳教科書には、文科省作成の副読本「私たちの道徳」から転用された読み物が多数並び、全社が取り上げたものもあった。

     「各社ともかなり引きずられたという印象だ」。文科省幹部はそう語るが、学校現場に「教科書のパイロット版」と受け取らせる状況をつくってきたのはその文科省にほかならない。

     文科省は当初、「私たちの道徳」を教科書代わりにして2015年度から教科化する方向を示していた。14年2月に公表し、その直後に教科化を中教審に諮問。全児童分を配布して活用を促すだけでなく、学校での使用状況も調査した。

     結局は「国定教科書ではないか」との批判を受け断念したが、教科書的な性格を持ったことで、収録された読み物は授業の定番となり、実践や授業研究が蓄積された。編集に関わった大学教授は「そこから取れば間違いない。ベースになるのは仕方がない」とこぼす。

     「国による価値観の押し付け」と非難されながらも、文科省が教科化に踏み切ったのは「全ての教員が一定程度の授業をできるように教科書を導入することが目的だった」(別の文科省幹部)。

     文科省は指導要領や教科書作成の指針となる解説書で、教えるべき内容項目を学年段階ごとに細かく規定し、教科書では各学年で全ての内容項目を満たすよう求めた。

     検定基準にも自然やスポーツ、情報モラルなどを全て取り上げると定め、極端な主張の教科書が申請されないように大枠を縛った。

     その一方で、検定は抑制的だった。教科書会社の編集者は「拍子抜けするほど中身には踏み込んでこなかった」と驚く。

     全24点66冊に付いた検定意見は計244件で、1点当たり約10件と初の検定としてほかなり少ない。しかも、そのほとんどは「内容項目を全て取り上げていない」といった形式的なものだった。

     教科化で文科省が目指すのは、登場人物の気持ちを追うだけの「読み物道徳」や、分かりきったきれい事を子どもに言わせるだけに終始する授業からの脱却だった。

     そのために「考え、議論する」だけでなく、「多面的、多角的」「体験的、問題解決的な学習」などのキーワードを掲げ、さまざまな工夫を教科書にも求めた。

     しかし、別の編集者が「全てを受けとめきれない」と嘆くように、従来通りの読み物ばかりが並び、目に見える変化は「話し合ってみよう」「あなたならどうするか」といった児童への問い掛けを明示した程度だった。

     教員にとっては、ある意味で手取り足取り面倒を見てくれる教科書ができあがった。しかし、道徳に熱心に取り組んできた小学校教員は落胆を隠さない。「まずは教員目らが深く考えることが必要なのに、教科書が表面的で退屈な授業にお墨付きを与えてしまった」


    「いじめ」の扱い工夫

     いじめに関する教材が全点に盛り込まれた小学校の道徳教科書。2011年の大津市の中2男子自殺を機に、国がいじめ対策として教科化を打ち出し、道徳教育の重要性を強調してきたことから、教科書会社は「力を入れた」と口をそろえる。だが「かえっていじめにつながりかねない」との指摘も。いじめを直接扱わずに、間接的にいじめ問題を考えさせる工夫もみられた。

     目立ったのは、友情や寛容さなどを考え、間接的にいじめ防止につなげようとする教材。ある教科書会社は、2人の女の子がふとしたすれ違いから待ち合わせができず、対立してしまうという話を扱い、友達との間で行き違いが生じた場合の対処方法を考えさせる。

     児童が理解しやすいようページを2分割して、2人の立場を時系列で追えるように工夫した。編集者は「ささいなことであっても、いじめにつながる可能性があると考えてほしい」と訴える。

     別の教科書会社では、編集委員らから「実際にいじめがある学級で、生々しい話は使えない」との意見が出たという。「間接的な教材でもいじめをしない心は育つと考えた」と編集者。生命の尊さや公平に接する態度にまつわる題材を多く取り上げることにした。

     学級全体で一人の児童を無視する場面など、いじめを直接扱った教材もあるが、ある編集者は「悪影響を考え、ひどい暴力行為などは避けた」と話す。傍観者の立場から考えさせる教材のほか、いじめ行為が法に触れる場合があることや、被害者、加害者、傍観者に向けたメッセージを紹介したコラムもあつた。

     しかし、こうした取り組みが実効性を持つのか疑問の声もある。ある社の編集者は「教科書で『いじめをなくそう』と伝えても、なくなるものではないだろう」と話す。

     いじめ問題に詳しい教育評論家の武田さち子さんは「道徳は心の問題を扱うため『あの子の価値観は自分たちとは違う』といじめの対象にもなりうる。先生が求める答えを探す子どもが増え、本音が言えないストレスからいじめが始まる恐れもある。道徳でいじめを扱うのは逆効果ではないか」と指摘している。


    安保政策 際立つ政府見解

     来春から高校生が使う教科書では集団的自衛権など安倍政権の外交・安全保障政策に関する記述が詳しくなる。検定では政府見解を盛り込むよう求める文部科学省の姿勢が際立ち、教科書の執筆者らからは疑問の声も上がる。

     「新3要件を入れてはどうか。各社にもお願いしている」。検定を取り仕切る教科書調査官はある出版社との折衝で、集団的自衛権の行使を簡潔に説明していた一文に注文を付けた。

     出版社側は結局「集団的自衛権を認めるために政府が閣議決定した@わが国の存立危機事態Aほかに適当な手段がないB必要最小限度で行う―との武力行使の新基準を加筆した。編集者は「この話題にとても神経質になっているように感じた」と振り返る。

     今回、集団的自衛権行使の要件について修正を求めた検定意見は計6件。文科省の担当者は「法制度なので、詳しく説明するのは当然と言い切るが、集団的自衛権を巡っては多くの憲法学者が違憲と指摘しているだけに、執筆者の一人は「武力行使に関する政府見解の論理はガラス細工のようなもの。無理に教科書に詰め込もうとするとひずみが出る」と憤る。

     「抑制的で事実関係の誤りを指摘するのが中「心だった」(ベテラン執筆者)とされる検定が変わり始めたのは、2012年末に自民党が政権を取り戻してからだ。14年1月に検定基準が改定され政府見解の重視や、南京事件の犠牲者数など「通説がない」事柄については、それを明示するとの項目が新たに加わった。

     政権の意向を反映するような修正は慰安婦問題にも及ぶ。文科省は「政府が以前にアジア女性基金を設立したことに触れた日本史の教科書に「最近の動向について誤解する恐れがある」と意見を付けた。この教科書は日本政府の責任を認め、韓国の財団に10億円を拠出することなどで最終解決したとする15年12月の日韓合意の記述を追加することで検定をパスした。

     ただ、韓国では朴槿恵氏が大統領を罷免された上に、革新系の最大野党や保守系議員に合意見直しを求める動きもあり、日韓関係の火種となる可能性も指摘される。流動的な内容まで学ばせることになるとして疑問を抱く歴史学者は少なくない。

     ある執筆者は文科省の方針を逆手に取ろううとしている。「政府見解の明記が必要なら、ほかの内容を削ってでも反対論も紹介する。見解がいびつならばそれが浮き彫りになるし、生徒の議論の促進にもつながる」


    「18歳選挙権」記述充

     実検定に合格した高校教科書のうち、現代社会と政治・経済の全てに「18歳選挙権」が取り上げられ、投票の意味を考えさせるなど主権者教育を意識した記述が充実した。現代文では新聞を読んで興味や疑問を持ったことを自分で調べてまとめる学習方法も紹介された。

     現代社会のある教科書は、候補者の情報収集や実際の投票方法などを4ページにわたり特集。別の社の政治・経済はQ&A形式で1票の意味を問う生徒に、先生が「投票率が低くなれは、政治家も熱心に投票に行く人々の利害だけを考えるようになる」などと解説した。インターネットを使った選挙運動の注意点や、18歳未満の選挙運動が禁止されていることに触れた教科書もあった。

     一方、教育現場で新聞を活用するNIE (教育に新聞を)の広がりを受け、国語表現で記事の読み比べが推奨され、現代文Bでは「新聞報道は背景や経緯を詳しく伝達したり、解説、記録したりする特徴がある」などの説明も見られた。


    最低限の内容クリア

    (道徳教科化を提言した中教審の専門部会で座長だった押谷由夫・昭和女子大大字院教授の話)

     熱心に取り組んできた教員が少ない現場の実態に合わせ、多くの授業研究の実績がある定番教材を取り入れ、教員側の発問も書き込んだ教科書になった。最低限の内容はクリアしており、「考え、議論する道徳」への第一歩と言える。児童が書き込める別冊のノート形式も良いアイデアだ。全教員が取り組むようになると多様な実践が出てくるはずで、現場の意見を取り入れながら教科書も変わっていく必要がある。


    無難に作成した結果

    (道徳教育に詳しい池田賢市・中央大教授―教育学―の話

     全体として横並びの教科書になったのは、発行社が他社の動向をうかがいつつ無難に作成した結果だ。教科になったとはいえ、教えるべき価値を定めた内容項目が大幅に変わったわけではないため、副読本などに掲載された過去の教材をベースにしたのだろう。質問や展開方法を記載した教科書もあるが、本来授業は教員が目の前の子どもたちを見て工夫すべきで、示すこと自体おかしい。授業が型にはまり、己述式の評価までパターン化する恐れがある。


    政府広報になる恐れ

    (近藤孝弘早稲田大教授―歴史・政治教育学―の話)

     政府が教科書に書かせたいものを書かせるようになれば、教科書が一種の広報のようになる恐れがある。生徒が自立的な判断ができるように育てるのが教育であり、領土や歴史認識などでは、対立する意見や相手国の主張も提供して比較させるなど、多面的に問題を捉えていくべきだ。集団的自衛権行使の新3要件についても字面だけ学んでも意味はなく、同時に憲法上の問題や政治・国際情勢を読み取る力が必要になるだろう。


    アクティブラーニングが話題となっているにもかかわらず、そのことが教科書に反映されていないとの印象を持つ。おそらく、文科省が現場を信頼していない、あるいはそれを望んでいないのではないかと思えてくる。池田賢市さんの指摘する「授業は教員が目の前の子どもたちを見て工夫すべき」だということであり、その条件を整えるのが文教政策だろう。


    3月21日 政府 「共謀罪」きょう閣議決定

     政府は21日、共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定する。今国会に提出する。正当な活動をしている市民団 体などへの適用を懸念する声が出ており、国会では与野党の激しい攻防が予想される。

     政府は2020年東京五輪を見据えたテロ対策のため、国際組織犯罪防止条約の締結を目指している。条約は「重大犯罪の合意」など を犯罪とするよう締結国に要請。政府はこれを「共謀罪」新設の根拠にしている。

     改正案によると、「共謀罪」の適用対象はテロ組織や暴力団、麻薬密売組織などの「組織的犯罪集団」。2人以上で犯罪を計画し、このうち少なくとも1人が資金・物品の手配や関係場所の下見などの「準備行為」をしたときに処罰される。


    全く必要のない法律を制定しようとする政府の意図は「治安維持法」を彷彿とさせる。これによってどれだけ多くの市民の人権が抑圧されてきたのかは歴史的に明らか。「LINEで共謀 逮捕?」という記事が指摘する事態が妄想だとは誰が断言できるのだろうか。


    3月19日 相模原殺傷事件考えるシンポ 「変わるべきは社会」 

     相模原市の障害者殺傷事件を考えるシンポジウムが18日、京都市南区の京都テルサであった。事件が起きた知的障害者施設「津久井やまゆり園」の元職員で専修大講師の西角純志氏が講演し、犠牲者の生を語り継ぐ大切さを訴えた。

     西角氏は、犠牲者の生前の様子を聞き取って、「生きた証(あかし)」を残す活動に取り組んでいる。警察が「遺族の希望」を理由に犠牲者の名前を公表しなかった点に対し、「犠牲者は殺害される以前から語ることができない人にされていた。容疑者に命を奪われ、家族に封印され、社会に忘れ去られようとしている。(犠牲者を)匿名にしたまま裁判に向かうのなら、『生きた証』は証言としての意味を持つ」と述べた。

     犠牲者の園での生活について、西角氏は「出勤してくる職員をいつも小走りで玄関に迎えに来た」「ベッドに横になってCDを聞いていた。お気に入りは演歌だった」「菓子を開ける時のカサカサ音を喜んだ。生き仏のような人。にこにこしていた」「園で50年暮らし、帰りたいと強く思っていた。大好きなお兄さんをひたすら待っていた」と、一人一人の願いや趣味、普段の様子を紹介した。

     津久井やまゆり園に入所していた人たちが地域に戻れるよう支援する団体「ピープルファースト横浜」の報告があり、京滋の障害がある当事者が、施設ではなく、地域で暮らす意義を訴えた。障害者でNPO法人DPI日本会議副議長の尾上浩二氏は、事件後に障害者排除の動きが出ているのではないかと懸念を示し、「変わるべきなのは社会の方だ」と強調した。

     「国際障害者年連続シンポジウム」として、日本自立生活センター(南区)などの実行委員会が主催した。



    3月17日 特別支援学校指導要領案 知的障害児に段階目標

     文部科学省は17日、特別支援学校の小学部と中学部の次期学習指導要領改定案を公表した。知的障害のある児童生徒の指導については、学習内容に応じて小学部で三つ、中学部で二つに分けた各教科の段階ごとに、身に付ける知識や育成する表現力などの目標を新たに明記した。

     障害の程度や学習状況の個人差が大きいことから、児童生徒の個別の指導計画を作成することを求め、その上で必要な場合は、小中学校の指導要領を参考に指導できることとした。また、小学部で、英語の「聞く・話す」が中心の外国語活動も実施できるよう改めた。

     文科省は改定に当たって、児童生徒が障害の有無にかかわらず一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」が進んできていることを踏まえ、小中高校の教育課程との連続性を重視したと説明している。

     視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などのある児童生徒については、障害の特性に応じて指導するよう、配慮事項を詳しく記載。また、全ての児童生徒にキャリア教育を充実させることのほか、地域の団体などと連携し、多様なスポーツや文化芸術活動を体験させることも求めた。

     次期指導要領は小学部が2020年度、中学部が21年度に実施予定。


    「インクルーシブ教育」が進んできている、との文科省の認識はなにを根拠にしているのだろうか。児童・生徒数の減少にもかかわらず特別支援学校が増設されているのはむしろ分離教育がすすんできると考えるべきではないのだろうか。「合理的配慮」が障害を持つ人の側に立ってのものではなく、行政のためのものになっているが故のこと。


    3月17日 府内公立高入試 定員割れ、16校21学科

     京都府内の公立高入試で、合格者数が募集定員を下回る「定員割れ」は、16日に合格発表があった中期選抜と前期選抜、特別入学者選抜を含めて全日制で16校の21学科に上った。定時制は中期選抜を実施した11校全てで定員を下回った。府教育委員会と京都市教委は同日、全日制3校と昼・夜間定時制9校で実施する後期選抜の日程を発表。募集人員は計273人程度で、願書受け付けは17日と21日、試験は23日、合格発表は27日に行われる。

     定員割れは前年度より3校、1学科増えた。内訳は普通科10学科、専門学科11学科で、特に口丹、中丹両地域で半数以上を占めた。


    【定員割れになった全日制公立高の学科】普通化=菟道、西城陽、南陽、北桑田、亀岡(美術・工芸専攻のみ)、園部、須知、大江、東舞鶴、網野。専門学科=京都すばる・会計、京都八幡(南)・介護福祉、京都八幡(南)・人間科学、北桑田・森林リサーチ、亀岡・数理科学、園部・京都国際、農芸・農業学科群、須知・食品科学、綾部(東)・農業・園芸、西舞鶴・理数探究、峰山・産業工学機械系統。高等学校の専門学科にこれだけの細分化が必要なのか、毎年考えてしまう。


    3月16日 「過労死ライン合法化」批判

     政府が進める「1カ月100時間未満」を上限とする残業規制に反対する日本労働弁護団と「全国過労死を考える家族の会」などが15日、国会内で緊急集会を開いた。参加者たちは「過労死ラインの合法化だ」「むしろ残業促進につながる」と規制案への厳しい批判を繰り広げた。

     集会には約250人が参加。過労死や過労自殺で夫や息子を失った5人の女性が「人命に関わることに特例は認められない」「残業100時間の過酷さを分かっているのか」と訴え、家族の会の寺西笑子代表が「私たちの教訓が生かされないことに憤りを感じる。過労死撲滅とは真逆の方向に進む法改悪を阻止したい」と語気を強めると、大きな拍手が湧いた。

     電通社員の過労自殺問題で、遺族代理人を務める川人博弁護壬は「マイナス面がある長時間労働をこのまま続けても、日本経済は維 持発展できるのか」と問題を提起。森岡孝二・関西大名誉教授は「高収入の専門職を残業代の支払い対象から外す高度プロフェッショナル制度が導入されたり、裁量労働制の対象業務が拡大されたりすると、労働時間の規制そのものが骨抜きになってしまう」と危機感を表明した。


    「100時間」の政労使合意に対して当然の批判。ただ、「上限規制」をどう評価するのかという問題はある。いずれにしても、労働組合が労働者を守る立場に立てるかどうかということが最大の課題。制度としては少なくとも「労働インターバル」制を早期に導入すべきである。


    3月15日 経済財政諮問会議で 公教育拡充を政府に提言

     政府は14日、経済財政諮問会議を開き、来日したノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・ステイグリッツ米コロンビア大教授が公教育の拡充により格差是正を図るべきだと提言した。安倍晋三首相は教育機会の充実を重要施策と位置付けており、政府はこの提言も踏まえて教育支出の議論を進める。

     安倍首相は会議で「成長の果実を共有することが大事だという教授の提言はアベノミクスと通じる。貧しい家庭でも高等教育を受けられる制度といった政策を加速化していかなくてはならない」と述べた。

     経済財政諮問会議に海外から有識者が参加するのは初めて。スティグリッツ氏は日本を含む先進国で経済成長の恩恵が上位層の少数の人にしか行き届いておらず、格差が拡大していると指摘。世代を超えた格差の継承を防ぐために公教育を充実させるほか、最低賃金の引き上げや相続税、累進課税の強化で所得の再配分を進めるべきだと説いた。


    ふと一時流行したトマ・ピケティを思いだした。新自由主義が「配分」の問題をすべて「自己責任」として回避してきたことへの行き詰まりへの警告でもあるのだろうか。「アベノミクスと通じる」とはいい難いように思えるのだが、こうした考え方をとらない限り成長が望めない社会になってきているともいえる。それにしても、オスプレイVS貸与型奨学金という比較できないものを比較してみた気になる。


    3月15日 日教組調査 3人に1人、離職中も業務

     臨時教員の3人に1人が、離職中にもかかわらず、補習授業などの業務に携わった経験があることが14日教組のインターネットによる実態調査で分かった。うち3人に2人は、離職中に児童生徒らの個人情報を扱っていたことも判明。多忙化が進む学校現場で、臨時教員が任用期間外でも業務を強いられている実態が浮き彫りになった。

     政府が働き方改革を掲げる中、臨時教員の任用の在り方にも一石を投じそうだ。

     臨時教員の任用は地方公務員法で最長1年までとされているが、翌年度も再び任用されることが多い。教育委員会の多くは継続雇用とみなされないように、年度末などの端境期に数日間の離職期間(空白期間)を設けているが、学校現場からは「その期間にも仕事はあり、実態にそぐわない」との声が上がっていた。

     離職期間中は働いても給与が払われない上、何らかのトラブルがあっても身分保障がなく、臨時教員にとつて不利益が大きい。また、個人情報の取り扱いで問題が起きた場合も、責任の所在が不明確になる恐れがある。

     調査は2月中旬〜3月中旬、3月中旬〜4月中旬の2期にわたって実施。今月13日に1期分を中間集計(回答数1020)した。インターネットとスマートフォンを使い日教組の組合員以外の教職員にも回答を求めた。

     調査結果では離職期間があると答えたのは71・5%。期間は1日が最も多く44・0%、1週間以上20・2%、3日11.4%、2日10・6%の順。33・6%が離職期間に仕事をした経験があり、離職期間中の仕事内容を複数回答で尋ねたところ、児童生徒の指導要緑などの個人情報を取り扱う仕事65・3%、会議など61・5%、補習授業など児童生徒の教育指導30・9%、学校行事など42・6%などとなっていた。


    始業時間や終業時間の管理もほとんど行われていない事が連合の調査でも明らかになっているが、いわば学校は「労働法規の無法遅滞」と化している。管理職だけではなく教育員会にもコンプライアンス(法律遵守)の風土がない。長年にわたる労働組合への敵視がこうした風土を生み出した一因であるといえる。


    3月14日 【表層深層】 抑制策は労使任せ

     残業時間の上限規制を巡る連合と経団連の労使協議が13日決着した。焦点の1カ月当たりの上限は双方のこだわりで折り合いが付かず、安倍晋三首相が「100時間未満」を裁定した。経団連主張の「100時間以下」とわずか「1秒」の違い。批判のある過労死ラインはかろうじて下回ったことになるが、長時間労働抑制への具体策づくりは課題が残ったままだ。

     「ぜひ100時間未満とする方向で検討していただきたい」

     協議結果を報告するため、13日夕に首相官邸を訪れた連合の神津里季生会長と経団連の榊原定征会長に首相は自らの意向を伝えた。

     労使が合意文書に書き込めたのは「100時間を基準値とする」まで。100時間を含む「以下」を主張した榊原氏に、神津氏は100時間を含まない「未満」で譲らず協議は一時、膠着(こうちやく)した。「『未満』に最もこだわった首相」(官邸筋) の意を受けた政府関係者が先週、両氏に接触。首相裁定の受け入れを要請し決着への道筋が付いた。

     首相周辺は「森友学園問題などの暗い話を吹き飛ばすだけでなく、連合と民進党の関係にくさびを打つこともできた」と胸を張った。

     「(過労死ラインの)100時間は受け入れられない。蹴ってもいい」。2月、連合内では不満が噴出した。政府と労使は昨秋から水面下で調整を続けてきたが、「単月100時間」の政府原案が1月に表面化し、過労死遺族や野党に反発が広がったからだ。

     神津氏は反対論を抑え労働界待望の規制導入を優先。周辺は「長年求めたが検討対象にもならなかった。この機は逃せない」と語る。現行制度は事実上、青天井となっており、規制導入と過労死ライン回避の両立は神津氏のこだわりだった。

     産業界全体を代表する榊原氏は上限規制に反対の立場だったが、繁忙時の月100時間確保を条件に経団連だけでなく人手不足に苦しむ中小企業も説得。榊原氏も一歩も引かない姿勢だった。

     広告大手電通の新入社員だった高橋まつりさんの過労自殺を機に、長時間労働抑制への機運が高まり、神津氏のこだわりと政府が目指す方向が合致。首相要請は、榊原氏の立場を守りながら政労使がそれぞれの利を取る妥協点だった。

     労働基準法に上限を明記すると、1秒でも超えれは罰則の対象に。政府関係者は「未満の場合は99時間59分59秒まで働ける」と解説。長時間労働を助長するとの批判が出かねず、労使合意には上限に近い労使協定を結んだ場合でも「月45時間、年860時間の原則に近づける」よう残業抑制に取り組むことも盛り込んだ。

     政府は新たな指針を設け、改善が進まない企業に助言指導を行う方針だ。しかし、その対象は「就業の実態や業務の見直しの状況などに配慮する」にとどまり、実際の取り組みは個別の労使任せ。今後、法案や指針の具体化を急ぐが、遺族が望む実効性を高める取り組みにこそ政府と労使の本気度が問われている。


    今回の合意をどう評価するかは判断が分かれる。過労死ラインを80時間とすると到底100時間は受け入れられない。一方で初めての規制設置の意義を強調する。いずれにしても、労働組合がいわゆる三六協定をどう実効あるもにするのかが問われる。もちろん労働組合のない職場の問題はより深刻なのだが。一方で超勤規制のない教員について考えれば、100時間とは1日5時間ということになる。昨年の連合総研の調査では、平均して教員が職場にいる時間は、11時間30分超(残業時間3時間)で、20日を積み上げると60時間となる。こうした実態を考えると、上限規制は必要だがそれだけでは解決にはならないことが分かる。勤務間インターバル制などと併せた論議が継続的行わなければならない。


    3月9日 市教委 小中学校3学期制へ

     京都市教育委員会は8日、小中学校で2018年度から3学期制に統一すると明らかにした。06年度に全国に先駆けて2学期制を全校導入したが、「成績表の回数が少ない」「季節感が合わない」などと当初から批判があり、実質3学期制を学校ことに選択できるようにしてからも、地域行事に支障を来していたからだ。市教委は「いい方向に模索した結果」とするが、十数年の間に、学期制が次々と変わり、学校現場や地域をほんろうさせる結果となった。

     「20年度実施の次期学習指導要領に向けて教育課程を考える時期なのでぎりぎりのタイミングだった。学習指導や小中連携がしやすくなる」と、京都市立小学校長会の林明宏醍醐小校長は見直しを歓迎する。

     校長会では、2学期制導入後に委員会を作り、検証を進めてきた。その中で、「成績表が2回と少ない」「中学校と学期制が違うため、小中連携がしづらい」といった課題が浮かび、市教委と協議してきた。

     2学期制は、夏休みを短縮し、始・終業式の回数を減らして授業時間数を確保する目的で導入された。当初から「成績評定と進路指導の時期がずれる」「メリハリがつけにくい」など、特に中学校から不満が強く、11年に実質3学期制の「通年制」を取り入れた。

     その後、中学校が次々と通年制に移行し、本年度までに8割超が採用。結果的に多くの地域で、学期が混在する事態となった。夏休みの期間にばらつきが出るなどして、児童生徒が地域行事に参加しにくい状況になり、混乱は深まった。

     長年、8月下旬に夏祭りを行ってきた伏見区の自治会長(43)は10年ごろ、地元小学校の校外研修と日程が重なり、祭りに参加できない児童がいたという。学校からは「2学期制の影響で夏休みが短くなり、校外研修がこの時期になった」と説明された。本年度全国学力テストでの児童生徒へ の調査では「地域の行事に参加しているか」「地域や社会で起こっている問題や出来事に関心があるか」などの項目で、全国平均を1・3〜5・8ポイント下回った。

     ゆとり教育の見直しとも重なり、2学期制は一時、全国に広がったが、近年は3学期制に戻す教委が増えていた。市教委はここ数年、「統一するべき」との市議会や市民の指摘を一貫して否定してきた。しかし昨春一転、市議会で転換を表明し、この日、時期を明言したのは、2学期制のデメリ ットを認識した上で、次期学習指導要領の18年度の先行実施と合わせたためとみられる。

     市教委は「地域連携や小中一貫教育が重視され、学びの方法も変わる中、成績の回数を増やし、児童生徒に丁寧に指導できる3学期制の利点は大きい。夏ごろをめどに3学期制の貝体案を示したい」としている。


    これまでの市教委の体質から「問題点を明らかにする」ことはせず、「いい方向に模索した結果」というのは納得が出来ない。2学期制導入当時「全国ではじめて」「全国で一番」を競うようにして導入してきたのは現市長が教育長の時代。穿った見方をすれば市長選のために学校教育を利用したともとれる。また、反省なしに3学期制にもどす理由は、実は新学習指導要領で「増えた時間数」をどこで確保するかを考量したものか?


    3月1日 日教組 組織率23・6%

     昨年10月1日時点の日教組の組織率は23・6%で前年より0・6ポイント下がり、過去最低を更新したことが1日、文部科学省の調査で分かった。1977年以降、40年連続の低下。日教組以外も含めた教職員団体全体の加入率も1・1ポイント減の35・2%で、41年連続の低下となった。

     調査は大学と高専を除く公立学校の常勤教職員約102万5千人を対象に実施した。教職員団体に加入しているのは約36万人で、このうち日教組は前年より約5400人減の約24万1600人だった。


    日教組に限らず労働組合の組織率が長期低落傾向にあるのは否めない。働く者にとっての必要性が十分見えないのが現状でもあろう。超過勤務を規制するはずの三六協定が事実上青天井となっているのは、労働組合側が兆時間勤務を容認しているとの指摘もある。働き方改革で議論されている超過勤務上限規制について「繁忙期月100時間まで」という使用者側の暴論を押しとどめる事が出来るのかどうかも、信頼回復のメルクマールになるだろう。また、労働者救済の窓口として各組合が機能することも労働組合の意義を高めることになる。