政府は30日の閣議で2017年版自殺対策白書を決定した。世界保健機関(WHO)のデータベースを基に各国の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を比べると、日本はワースト6位で、特に女性はワースト3位と高い水準だった。一方、15年の死因を5歳ごとの年齢階級別に分析すると、15〜39歳の5階級で1位が「自殺」と判明。若年層の自殺が深刻との見解も示した。 日本の自殺者数は減少傾向だが、人口比では世界的にも依然高水準であることが裏付けられた。政府は今夏、新たな自殺総合対策大綱を閣議決定する。 ![]() |
文部科学省が26日発表した次期学習指導要領の移行措置。小学校での「外国語活動」の前倒しに充当する時間は、総合的な学習の時間(総合学習)の一部でまかなうプランを打ち出した。「時間が確保できるよう現場の選択の幅を広げた」と説明する文科省だが、「主体な学びを掲げながら、中核となる総合学習を削減するのは本末転倒だ」と一貫性のなさに反発する声も上がつている。 「とにかく自分の英語力に自信がない」。東北地方の公立小の50代の女性教諭は打ち明ける。6年生の担任として外国語活動の授業をしたこともあるが、幼稚園から英語を学んできた子どもに発音が違うと指摘されたことも。「英会話教室に通っている子どもも多い。子どもによって英語力に差があり、どう対応したらよいのか悩む」と話す。 . 文科省が示した移行期間中の小3の指導計画のイメージには「あいさつや名前の言い方に慣れ親しむ」「クイズを出したり答えたりする」などの目標例が並ぶ。「英語に慣れ親しむのはよいが、英語が堪能でない自分が授業をしても、本当に子どものためになるのだろうか」と頭を抱える。 2020年度の次期指導要領の全面実施では、小学校は土曜日や夏休みを使うなどして外国語活動の授業.時間を捻出するよう求められている。文科省は18年度からの移行期間中は、さらに総合学習を利用できる選択肢を増やしたと説明する。 ただ、土曜日の授業実施は家庭の理解を得られるか分からない。夏休みは英語に不安を抱える教員らの研修に充てられる見通しだ。他の教科を削るのも難しく、教育関係者の多くは「結局は総合学習を置き換える方向に行くだろう」とみる。 宮城県の20代の女性教諭は、郷土食をテーマに歴史や製法などを子どもたちと学ぶ総合学習の授業実践をしてきた。「晋段の教科の学習を生かして、主体的に学べるのが総合の良さ。時間数を減らされたら、何ができるだろうか」と憤った。 総合学習の創設を推進した元文科省官僚の寺脇研・京都造形芸術大教授は「文科省は次期指導要領について量を減らさず、質を改善 すると説明してきた。両立するなら問題ないが、移行期間の措置は結局、質より量を優発した結果ではないか。欲張りすぎという印象だ」と疑問を呈した。 一方で、英語学習のあり方については「総合の時間を使うなら、外国語活動の中で総合が目指す能動的な学習をすればいい」と述べ,仮に総合を減らしても、次期指導要領の目指す「主体的、対話的で深い学び」は実現可能との見解を示した。 ![]() |
既存の大学や短大とは別に、ITなど成長分野で即戦力の人材育成を目指す新しい高等教育機関「専門職大学」「専門職短大」の創設を盛り込んだ改正学校教育法が24日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。大学制度に新たな教育機関が加わるのは1964年の短大以来で約半世紀ぶり。施行は2019年4月1日。今後、文部科学省が具体的な設置基準を定め、今年10月ごろに設置申請の受け付けを開始、19年春の開学を目指す。 専門職大学・短大はITや農業、観光などの分野で、新たなサービスを生み出し、けん引役を担える人材を育てることを目的に掲げる。既存の大学や専門学校からの移行を想定している。 経済団体などからの要望を受け、政府の教育再生実行会議が創設を提言した。ただ「既存の教育機関との違いが不明確で、屋上屋を架すことになる」といった批判もある。教育の質の確保や、卒業生を受け入れる産業界との連携などが今後の課題となりそうだ。 専門職大学・短大の教育課程は産業界の協力を得て編成。実践重視のカリキュラムとし、卒業に必要な単位の一定割合以上をインターンシップ(就業体験)などの実習に割り当て、実務経験のある教員も多く任用する。 社会人が入学しやすいよう、それまでの実務経験を単位に認定し、4年や2年といった通常の期間よりも短期間で学位を取得、卒業できる制度とする。卒業すれば大学や短大と同様に「学士」「短期大学士」の学位を得られる。 |
菅義偉官房長官は22日の記者会見で、小中学校の夏休みなど長期休暇の一部を学校や地域ごとに別の時期に分散取得する「キッズウイーク」の創設を政府内で検討していると明らかにした。子供の休みに合わせて親が有給休暇を取れるよう促し「休み方改革」につなげたい考えだ。 夏休みのように観光地やレジャー施設が混み合う時期を避けてキッズウイークを設定し、旅行など親子で過ごす時間を確保しやすくする狙い。 菅氏は会見で「子供の健やかな成長、大人の休み方改革、観光や地域振興の面で効果的だ」と意義を強調。政府内で積極的に施策を取りまとめる考えを示した。 |
文部科学省は16日、大学入試改革のほぼ全容を公表した。センター試験から衣替えする新テストは国語と数学で記述式問題を導入し、英語も民間の検定試験に移行する。センター試験が1989年度に始まって以来の大転換だが、受験生はどう対策を練ればいいのか。公表された問題例などから予備校関係者に分析してもらった。 <転勤の多い会社に勤めるサユリさんは自宅近くに駐車場を借りている。管理会社とサユリさんが締結した契約書を読んであとの問いに答えよ> 大学入試センターがモデル例として公表した国語の記述式問題は、一般社会でも目にする駐車場使用契約書を題材に取り上げた。その文面を基に、管理会社からの急な値上げの通告や、突然の転勤を命じられた際の対処をどうすればいいかなどを問う内容だった。 「散々作り込んできた。新機軸だと思う」。大学入試センターの関係者は出来栄えに自属を見せる。記述式の場合は採点方法が大きな課題だが「物語の作者の気持ちを問う問題と違い、法律に関わる契約書は文章にぶれがない。解答がある程度限られてくるので採点もしやすい」と楽観的だ。 駿台教書研究所進学債報事業部の石原賢一部長は「実用性が高く、練られた良問だ」とモデル例を評価しつつ「成績上位層と中間層で正答遂に差がつきそうだ」と分析する。 問題文は3〜4ページにわたり「今の子どもたちは国語力が落ちている。難関大の国語を受けるほどのレベルでなければ、読むだけで一 苦労ではないか」というのが理由だ。 河合塾教育イノベーション本部の近藤治副本部長は、登場人物の立場で意見を書かせる問題に着目。「他者を理解する力が要求される。教師が板書した内容を覚えるだけの一方的な授業ではなく、双方向のやりとりを通じていろいろな考えを知る中で、自分の意見を表現する訓練が求められるだろう」と話した。 一方、2人とも英語の民間移行には懐疑的だ。近藤副本部長は受験生の負担増を懸念。「新テストで求められる『読む・聞く・書く・話す』の4技能のうち、授業で『話す』訓練をしている中高生は少ない。従来型の二次試験と、検定試験の2本立ての対策が必要になる」 石原部長は都市部と地方の“受験格差”が広がらないか心配する。駿台では受験生の英語力を養おうと、留学経験のあるOB、OGたちを集めて受験生と英語で話す場を設ける取り組みを始めたが「こうした対策も地方では難しい」とこぼす。 離島などに住む受験生が多様な検定試験を受けられる保証はあるのか。国は受験料をどこまで補助するのか―。 課題を挙げればきりがない。石原部長は「実際に新テストが始まったら、多くの問題が出てくるだろう」と、前途多難な船出を予測した。 ![]() |
京都市内に21施設ある市営保育所で、入所児童のうち、障害のある子どもの割合が2016年度、過去最も高い18・0%に達した。発達障害の子の増加と、民間に比べて受け入れ体制が整っている市営保育所に通わせたい保護者の希望が、背景にあるとみられる。民間保育所では5%弱。市は財政難を理由に市営保育所の民間移管を進めており、民間保育所でも障害児の受け入れを増やす方針だが、市営と民間の間で差が開く傾向となっている。 16年度、市内の保育所に通った障害児数は、市営では全園児2163人のうち390人を占める。割合、人数ともに過去最多となった。園児数は近年のピークの12年度から297人減ったが、障害児は150人増えた。248施設ある民間傍育所では全園児2万8127人のうち1336人で、12年度から541人増えている。 自閉症など発達障害の子が増えており、園児数に占める障害児の割合は、市営で12年度の9・8%から倍近く伸びた。民間も同期間に3%から4・7%へと伸びたが、差は開いた。 市は14年10月に市営6施設の民間移管を決め、今年1月には崇仁保育所(下京区)の移転、民営化方針を打ち出した。合わせて、民 間保育所の保育士配置基準などを引き上げ、市営と民間の障害児受け入れ割合の差を縮めるとしている。 障害児の保育は専門ノウハウを持つ人が対応し、障害のない子の保育より多くの保育士が関わるため、市幼保総合支援室は「市営で これ以上障害児の割合が高まると、(障害のない子の)通常保育にしわ寄せが出かねない」とする。17年度予算では、障害児を受け入れた保育所で保育士を増やす財源に過去最高の8億5千万円を計上し、民間にも態勢充実を呼び掛ける。 ただ、市営保育所の障害児保育には保護者の高い評価がある。民間保育所の中には、利用を断られるケースもある。市営保育所保護者会連絡会は「市営を最後の頼りにする障害児と親が相当数いる」と指摘した上で、「いまの市営の施設数を維持し、社会的弱者に目を向ける公ならではの役割を果たしてほしい」と、障害児の保育を保障する受け皿の減少を懸念する。 ![]() |
自治体で働く一般職の非常勤職員に期末手当(ボーナス)を支給できるようにする改正地方自治法などが11日の衆院本会議で賛成多数により可決、成立した。施行は2020年4月1日。民間企業の「同一労働同一賃金」を目指す政府方針に沿い、正職員との格差解消につなげる。 改正法は、一般職非常勤職員としてフルタイムで働く人は退職手当も支給できると明記した。一方、パートタイムの人は退職手当の対象外で「格差が残っている」との指摘がある。 一般職非常勤職員を含め、自治体で半年以上勤務する非正規職員は昨年4月時点で64万3千人に上る。 ![]() |
2016年度の京都府学力診断テストで、城陽市情報公開・個人情報保護審査会は9日、小中学校ごとの成績を開示すべきと市教育委員会に答申した。「テスト結果は学力の一部を表したものに過ぎない」としている。市教委は「過度な競争につながる恐れがある」として、これまで通り開示しない方針。 テストは、府教委が小4と中1を対象に独自に取り組み、小4は国語と算数、中1は国語と数学で実施した。市内のNPO法人「行政監視機構」が昨年9月、情報開示請求をした。市教委が学校ごとの設問別平均正答率などを非開示にしたため、同12月に不服を申し立てた。 2016年度の京都府学力診断テストで、城陽市情報公開・個人情報保護審査会は9日、小中学校ごとの成績を開示すべきと市教育委員会に答申した。ただ、市教委は「過度な競争につながる恐れがある」として当面開示しない方針。市内のNPO法人「行政監視機構」は「市教委が諮問した審査会の答申を尊重しないのは仕組みとしておかしい」と反発している。 テストは、府教委が独自に小4と中1を対象に、国語と算数・数学で実施した。同法人の情報開示請求に対し、市教委は「学校の序列化につながる」として学校ごとの設問別平均正答率などを非開示にした。このため、同法人が不服を申し立て、市教委が審査会に諮問した。 審査会は昨年8月、15年度の府学力診断テストについて、「テスト結果は学力の一部を表したものに過ぎない」と学校ごとの成績を開示するよう求める答申をした。16年度分も「この判断を覆すだけの理由は見当たらなかった」とした。 14年度の全国学力テストについて、同法人は市に対し、学校別の成績の開示を求めて提訴し、一審と二審で判断が分かれて最高裁で争っている。同法人の半田忠雄理事長は「今回の答申を謙虚に受け止めてほしい」と話した。市教委学校教育課は「最高裁の確定を見て判断する」とした。 ![]() |