h2207
 
  • 【新連載6/6】ブカツのゆくえ
  • 文化系の部活も 25年度地域移行.26
  • 平和祈念館 来館3千人超.28
  • 中学理科 正答率5割切る.29
  • 「日本が戦争可能性」48%.31
  • 7月31日 全国世論調査 「日本が戦争可能性」48%

     京都新聞社加盟の日本世論調査会は30日、郵送方式で実施した平和に関する全国世論調査の結果をまとめた。日本が今後、戦争をする可能性があるとした人は「大いに」と「ある程度」を合わせ計48%に上った。一昨年は計32%、昨年は計41%と連続で増加し、2年前から16ポイント上昇。可能性がないとしたのは「あまり」「全く」の計52%で措抗した。ロシアによるウクライナ侵攻に関心があるとの回答は計91%。現実に繰り広げられる戦争の光景などから、危機感が一層高まっていることがうかがえる。

     10年以内に核兵器が戦争に使われる可能性があると答えた人も計59%を占めた。日本が批准していない核兵器禁止条約を巡っては「参加するべきだ」とした回答は51%だった。

     戦争回避に最も重要と思う手段は「平和に向け日本が外交に力を注ぐ」の32%が最多で、戦争放棄を掲げた日本国憲法の順守の24%、軍備の大幅増強の15%が続いた。

     日本が戦争をする最も可能性が高いと思う形は「他国同士の戦争に巻き込まれる」が50%、「他国から侵攻を受ける」の42%を合わせ大半を占めた。最も可能性が高いと思う相手国は中国が38%と一番多かった。中国が10年以内に、台湾に軍事侵攻する可能性があるとした回答は「大いに」と「ある程度」を合わせ計75%に上った。

     ウクライナ侵攻では、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性に言及。そうした状況でも、米国と核兵器を日本領土内で共同運用する「核共有」を巡る議論を「進めるべきだ」とする回答は20%にとどまり、「進めるべきではない」の56%を大きく下回った。非核三原則を「堅持するべきだ」は75%に達した。

     憲法の平和主義に基づく専守防衛の方針を「維持するべきだ」とした人も60%。自衛目的で相手領域内のミサイル発射基地などを破壊する「敵基地攻撃能力」を日本が持つことには、賛成36%、反対33%、分からない30%と意見が三分した。。

     8月15日の全国戦没者追悼式では2012年の第2次安倍政権発足以降、アジア諸国への加害と反省への首相の言及は途絶えている。今年の追悼式で「言及するべきだ」が46%に対し「必要はない」は52%だった。

     調査は今年6〜7月、18歳以上の男女3千人を対象に実施した。


    【インサイド】若年層ほど 脅威身近に

     日本が今後、戦争をする可能性があるかを尋ねたところ、可能性があると回答した人は計48%に上った。年層別に見ると、高年層(60代以上)が計45%で最も低く、次いで中年層(40〜50代)の計48%。若年層(30代以下)は計53%で、若い層ほど戦争の脅威を感じていることが明らかになった。若年層だけが「あまり」と「全く」を合わせ可能性がないとした回答計46%を上回っていた。

     男女差も顕著だった。男性は可能性があるとした回答が計54%で、可能性がないとした計46%を上回り、全体の結果と逆転した。一方、女性は可能性が「ある」としたのは計43%、「ない」との回答は計57%だった。

     年層別と掛け合わせると、男性若年層で可能性があるとした回答が計57%に対し、女性高年層は計39%で20ポイント近く差があった。

     10年以内に核兵器が戦争に使われる可能性を巡っても年層別では同じ傾向が見られた。高年層では、可能性があるとした人が「大いに」と「ある程度」を合わせて計53%だったのに対して、若年層は計66%。可能性がないとした計34%を大きく引き離した。男女別では両性とも可能性があるとした人が多数を占めた。

     一方で、全体では計91%が関心があるとしたロシアのウクライナ侵攻を巡っては、中高年層が計92〜96%と高い割合だったのに比べ、若年層は計78%と年層によるギャップが大きかった。


    非核三原則堅持・専守防衛維持が支持されていることに一定の安心感を持つが、片や「敵基地攻撃能力」の保有については意見が三分している。理念としては戦後の平和主義が維持されてはいるが、現実問題では不安がるというように読み取れる。また、世代間での意識のギャップも気になるところで、若年層の意識が「希望は戦争」でなければと思う。生活不安を抱える若年層へのシンパシーをどれほど「団塊の世代」が共有しているかもきになるところ。


    7月29日 全国学テ 中学理科 正答率5割切る

     文部科学省は28日、小学6年と中学3年の全員対象で4月に実施した2022年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。4年ぶり実施の理科では、実験や観察で得られたデータを分析して解釈するといった新学習指導要領が重視する領域で課題が見られた。難易度が異なるため単純比較できないが、中3理科の平均正答率は前回より大幅に低下し50%を下回った。

     学校へのアンケートで、新型コロナウイルスが拡大した21年度に理科で実験・観察をする授業の頻度が大幅に減少したことも判明。回数が少ない児童生徒の方が正答率は若干低いが、文科省は「統計上、有意な差ではない」としている。

     各教科の平均正答率は、小6が国語65・8%、算数63・3%、理科63・4%。中3が国語69・3%、数学52・0%、理科49・7%。都道府県別は、多くの教科で秋田、石川、福井が上位となった。上位と下位の差は10ポイント程度だった。

     中3の全3教科と小6理科は、新指導要領に基づく初の出題。小中とも国語は「書くこと」に課題があり、算数・数学はデータ活用が苦手だった。理科は問題解決や探究的な力を見る設問でつまずきがあり、前回18年度より小6は若干上昇したが、中3は16・8ポイント低下。問題を作成した国立教育政策研究所は低下の要因を「教科書にない場面設定の出題も多く、対応できなかった可能性がある」としている。


    京都「勉強好き」全国下回る

     京都府内(京都市含む)は、、対象の小学6年生、中学3年生ともに全教科で平均正答率が全国平均並みかそれ以上だった。小中とも全教科で「勉強は好き」とした割合が全国平均を下回り、学ぶ意味や楽しさを伝えることが課題となっている。

     平均正答率は、全国平均値は小数第1位まで、都道府県ごとの値は過度な競争をあおらないよう四捨五入された整数で公表された。

     府内の平均正答率と全国平均は小6国語は68%(全国平均65・6%)、算数は65%(同63・2%)、理科・は64%(同63・3%)、中3国語は69%(同69・0%)、数学は52%(同51・4%)、理科は49%(同49・3%)。

     全教科の合計の全国順位は小6は6位、中3は18位たった。

     児童生徒への調査では、「国語の勉強は好きですか」の問いで、「(どちらかといえば)当てはまる」とした割合が、小6で55・5%と全国を3・7ポイント下回り、中3も57・9%と全国より4・Oポイント低かった。算数(数学)や理科でも全国を下回った。府教委は「主体的、意欲的に勉強に取り組めるよう探究型学習などに力を入れたい」とした。

     京都市教委も市立小中学校の調査結果を公表した。小中ともに全教科で全国平均並みかそれ以上だった。平均正答率は小6国語が70 %、算数が65%、理科が66%、中3国語が69%、数学が53%、理科は50%。全教科の合計では、20の政令指定都市の中で小学校は1位、中学校は8位だった。


    水戸部修治・京女大教授日常即した設定 学びに

     結果については、過去の調査と大きな差異はない印象だ。新型コロナウイルスの感染拡大による休校の影響もあまり出ていないように見えるが、それは各地で子どもたちが積極参加できるような授業改善が進んでいることも一因だろう。一方、登場人物の心情や作品 内容の理解はできているものの、自分の考えを表現する力には依然課題が残る。学びの実践では、より日常に即した場面設定をすることで子どもの目的意識が明確になり、文章の推敲や引用の意味についても理解が進むのではないか。


    【インサイド】“リケジョ”増加 対策も喫緊

     28日に結果公表された全国学力テストでは、4年ぶりに実施した理科で活用力に課題があることが改めて浮き彫りになった。学校現 場では実験や観察といった体験を通じた学びに力を入れてきたが、新型コロナウイルスによって停滞気味に。「理系女子を増やす」と いう新たな対応も迫られている。

     「色が変わった!」。11日東京都江戸川区立東小岩小の理科室。6年生の児童約30人から歓声が上がった。六つのグループに分かれて植物の葉の働きを調べる実験で、薬品をかけるとでんぶんに反応して黒く変色し、養分が作られる様子を目で見て確認できた。

     東小岩小では2021年度、グループでの実験を大幅に制限し、各自の机で水溶液を作るといった1人でできる実験に切り替えた。 テレビ会議システムを使い、教員が別室で実演する様子を教室の児童へ配信する工夫も重ねた。久田瑞恵教諭(39)は「手を動かすと理科が苦手な子も興味を持つ。これからも極力実験を取り入れみい」と話す。

     宮城県教育委員会は、高い専門性を持った元教員らを派遣す「科学巡回指導」を毎年度15校程度で行ってきたが、21年度はコロナ禍で学校からのキャンセルが相次いだ。

     22年度は例年並みの実施を予定し、今月7日には登米市立米山東小で行われた。校庭に集まった全児童約120人の前で、指導員が気球を浮かべたり、児童らがペットボトルロケットを発射したり。6年生の浅田紗英さん(11)は「みんなで実験するといろんな意見が聞けて面白い」と喜んだ。

     こうした指導は学習意欲の向上などへの効果が大きい。ただ、全国学力テストと同時実施した学校へのアンケートでは、21年度に「実験・観察をほとんど、または全く行わなかった」のは、中学校で1・4%に上り、4年前の調査の4倍強に達した。

     政府の教育未来創造会議は5月、高校生の「理系離れ」が特に女子で深刻だとして、「理系女子」を増やすとの目標を掲げた。今後、大学の理工系学部に進む女子生徒の割合を、現状の7%から男子と同等の28%程度に高めたい考えだ。

     そのためには小中学校から「理科好き」の女子をいかに増やすかが重要となる。千葉県の公立小で6年生を教える30代男性教諭は、ここでも鍵は実験や観察だとみる。グループでの実験は、活発な男子が主役になりやすく、女子は記録係に回ることも多いという。

     「機会の不平等を是正しなければ女子の関心が育ちにくくなる」と、役割を定期的に入れ替えている。

     三崎隆・信州大教授(理科教育)は「五感を使って理科の面白さや不思議を知ることは一生の学びになる。理科好きを増やすために、教員が効果的な実験・観察の授業方法を学ぶといった支援が必要だ」と指摘した。


    小学校教員の多くは「理科が嫌い」だという。その大きな理由に「実験準備に時間がかかる」ということだ。理科の専科教員も配置はされているが十分足りているとはいえない。学テの結果ら「リケジョを増やせ」ということはいえるとしても、その裏付けはないに等しい。また、即戦力として「リケジョ」を求める教育政策にも不信感を持つ。


    7月28日 ウトロ 平和祈念館 来館3千人超

     太平洋戦争時の京都飛行場建設を機に朝鮮人労働者が集住し、子孫が多く暮らす宇治市伊勢田町ウトロ地区で4月末にオープンした「ウトロ平和祈念館」の来館者が早くも3千人を超えた。想定以上の伸びを支える要因の一つが団体客の存在。地区には以前も、差別や貧困と長年闘ってきた歴史を学ぶ研究者グループが訪れていたが、開館を機に団体客が増え、教職員や国際交流協会の研修、旅行会社のツアーなど裾野が広かっている。昨夏に発生した放火事件現場も見学するなど、祈念館が平和と人権を知る拠点になりつつある。

     「ウトロは戦争で生まれたまちで、歴史的な背景も知ってほしい。そして朝鮮の人への差別や偏見はそれ以前から作られており、今のヘイトスピーチにまでつながっている」。祈念館で7月中旬、横浜市の旅行会社が主催した「平和ツアー」の参加者23人が、ガイドした金秀煥(スファン)副館長(46)の話に聞き入った。

     参加者はパネル展示などで、戦前の日韓併合を機に多くの朝鮮人が来日してウトロにも集まった経緯や、戦後の厳しい生活環境や差別、その状況に声を上げた住民と日本人や韓国人支援者の連携に理解を深めた。地区のフィールドワークでは、放火現場に残る焼け焦げた家屋などを見た。

     和歌山県串本町から参加した中澤美智代さん(60)は「地区から立ち退きを求められた訴訟で負けてもへこたれず、募金などの協力を得て、土地の一部を買い取ったたくましさがすごいと思った」と語り、横浜市の一色由紀子さん(79)は「放火現場で、偏見の怖さを目の当たりにした。正しい歴史を知る大切さを感じた」と話した。

     祈念館は地域住民や支援者でつくる「ウトロ民間基金財団」が建設し、4丹30日にオープン。新型コロナ前も地区へは研究者グループや大学のゼミなどで年間約1千人の訪問があったが、祈念館の来館者は3ヵ月足らずで3倍の3千入を突破した。在日コリアンの歴史やコミュニティーを伝える施設は日本国内にあまりなく、祈念館は「想定以上の来館者数だ」と驚く。

     祈念館は、それまで地区を訪れるきっかけがなかった個人客を全国から取り込んだのに加え、団体の客層も多様化させた。7月中旬までに近畿地方を中心に25団体が利用し、学校の教職員、地方議会関係者や人権擁護委員、社会福祉協議会などの研修が相次ぐ。

     8月には、沖縄県の小学生や大阪の高校生グループの訪問予約も入っている。金副館長は「人権学習の場を求める人がこれだけいることに社会の成熟を感じる一方で、放火事件などからは人権意識への底なしの劣化と二極化を感じる。若い世代にも多く訪れてもらい、差別のない次世代につなげてほしい」と願う。

     開館は金・土・日・月曜日。火曜は団体のみ。同館0774(26)9222



    7月26日 文化庁 文化系の部活も 25年度地域移行

     合唱や吹奏楽など公立中学の文化系部活動の在り方を話し合う文化庁の有識者会議が25日に開かれた。運動部と同じく2025年度 までに休日の指導を地域団体へ委ねる改革案について議論。大きな反対はなく、8月上旬に提言としてまとめる。委員から「実現には地域住民の理解が不可欠」といった意見が出た。  提言案では、23〜25年度を「改革集中期間」に設定して自治体に推進計画の策定を求める。スポーツ庁の有識者会議が6月に公表した提言と同じスケジュールで部活改革を進める方針。  地域での受け皿は文化団体や民間教室、芸術系大学などを想定。練習場所は公民館や生涯学習センターが考えられ、吹奏楽部では重い楽器を運ぶ必要があるため小中高校や廃校となった施設の利用も進める。



    7月23日 政府 「弔意の強制」過去にも懸念

     政府は安倍晋三元首相の国葬を9月27日に実施すると決めた。元首相の葬儀を巡っては、過去にも「弔意の強制」につながりかねないとの懸念が出ていた。閣議決定を根拠に国会での議論を素通りし、性急に結論を出した政府の姿勢に疑問の声が出ている。

     1967年10月31日、東京・北の丸公園の日本武道館で吉田茂元首相の国葬が営まれた。安倍氏の国葬は戦後の首相経験者として2例目となる。

     戦前、政治家や軍人の国葬は国に貢献したとして天皇の「おぼしめし」によって行われてきた。1926年に国葬令が制定され、海軍軍人の東郷平八郎や首相を2度務めた西園寺公望らが対象となった。国葬令は戦後、政教分離を定めた現行憲法の施行により失効。政府は今回、吉田氏同様に閣議決定を根拠とし、費用を国が全額負担する。

     吉田氏の国葬では、政府が追悼ムードの醸成に腐心した様子がうかがえる。官報などによると、黙とうの実施や「歌舞音曲を伴う行事」の自粛を各省庁に要請。学校や会社にも協力を求めた。国葬後の国会で野党は、テレビ・ラジオが「吉田一色」になったと指摘し、「哀悼の意を表することと政治的な問題を評価することは別だ」と疑問を投げかけた。

     2020年10月に実施された中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬でも、政府の対応が議論を呼んだ。文部科学省は国立大学や都道府県の教育委員会などに弔意の表明を要望する通知を出し、教育基本法が定める政治的中立性が脅かされるとの批判が出た。政府は「強制ではない」と強調。弔旗や半旗の掲揚は大学によって対応が別れた。

     安倍氏の国葬を巡っては、立憲民主党の泉健太代表が党会合で「同調圧力を求めるのはいかがか、との声が上がっている」と、教育機関への弔意要求に反対を表明。末松信介文部科学相は、学校を休みにすることは「想定していない」と語り、弔意を示すよう求めるかどうかに関しては「政府全体の方針に沿って対応する」と述べた。


    立共れ社反対、維国は容認

     立憲民主、共産、れいわ新選組、社民各党は22日、安倍晋三元首相の国葬実施決定に反対を表明した。日本維新の会と国民民主党は、国会での議論や国葬にする基準の説明が必要とした上で容認する考えを示し、立場が割れた。共産の田村智子政策委員長は会見で「世論調査では賛成と反対が二分している。弔意の押し付けにつながるものだ」と批判した。


    かつて「君が代・日の丸」を卒業式・入学式でどう扱うのかが問題となった。斉唱や掲揚が人々の内心の自由を侵すことに対する懸念からだった。教育行政はそれを問題とせず強行する姿勢を取った。いまでも、教員の口元を観察し「歌っている」を判断しているというところもあるらしい。政治的な評価も定まらない人物を国葬として扱うのは異例といってもいい。「声を聞く」としていた岸田首相も権力の座についてしまえばそれまでということなのか。人の死を政治的に利用しようとする魂胆が見え見えだろう。


    7月19日 文科省 通信制高校の教員基準新設

     文部科学省は18日までに、通信制高校の指導体制を充実させるため、必要な教員数の基準を新設する方針を決めた。不登校経験などさまざまな背景を持つ生徒が通信制に在籍するようになり、きめ細かな指導に向けて規制を強化する。同省の有識者会議が8月にまとめる提言に改革の方針を盛り込み、2023年度以降の運用開始を目指す。

     現在は生徒数に対する教員数の基準はなく、大規模な私立通信制では100人超の生徒を教員1人が受け持つ事例もある。一方、公立通信制では予算上は「生徒80大当たぴ教員1人」の配置を目安としており、これを軸に新基準を検討する。

     通信制高校の生徒は約22万人に上る。生徒の半数が小中で不登校だったとの抽出調査があり、学習意欲が低いケースも少なくないという。今後は教員数を増やし、来校を促して一対一の面接指導を手厚くする。有識者会議の委員には「1人の教員が10人程度にじっくり向き合う環境が理想的だ」との声もある。


    学園法人角川ドワンゴ学園N高等学校・S高等学校を始めとする私学の労働争議は、予想外の広がりをもって展開されている。公立学校の勤務条件改善にむけての取り組みが膠着状態の中で、給特法に関わらない私学での取り組みは熾烈ではあるがその分より本質的な争議になっている。


    7月19日 共同通信 小中生10年で100万人減

     少子化の影響で、小中学校に通う児章生徒が大幅に減っている。 2020年は全国で約956万人と、10年より100万人近く減少。国の統計を基に、10年間で児童生徒力130%以上減った自治体数を共同通信が調べたところ、全国1892市区町村のうち346に上ることが判明した。特に郡部では過疎化も相まって学校の統廃合や休校が加速。小中学校は20年に2万9793校と、10年間で約3千校も減った。

     児童生徒数が極端に少ない小規模校は、多数が参加する部活動ができないなど学習機会の確保が課題で、自治体は工夫や発想の転換で豊かな学びを提供することが求められる。教育の質の向上や合理化のため、小中一貫の「義務教育学校」や複数の自治体が共同で設置する「組合立学校」など学校の形態も多様化している。

     文部科学省は毎年、教育機関数や在籍者数、進学の動向などを集計し「学校基本調査」として公表している。共同通信はこれを基に、児童生徒数や、国立・公立・私立小中学校数の増減率を市区町村別で算出した。

     児章生徒数の減少率が最も高かったのは99%減少した福島県大熊町だが、東京電力福島第1原発事故という特殊な要素が大きい。それ以外では、奈良県上北山村が81%減。10年の36人から7人になった。群馬県南牧村では65%減、長野県王滝村が64%減と過疎の村が目立つ。

     町では育森県今別町が57%減、市では北海道歌志内市が56%減だった。

     京都府では笠置町が57人から24人に減り57%減。滋賀県は高島市が4401人が3284人となり、25%減だった。

     一方、237市区町村では増加した。東京都や大阪府、愛知県、福岡県など大都市圈が多いが、石川県野々市市は4045人から4842人(20%増)、長野県南箕輪村は1413人から1501人(6%増)と堅調に増加した自治体もある。都市部のベッドタウンとして発展したほか、子育て世帯を支援する取り組みが評判を呼んだケースもある。

     京都府では、木津川市が30%増、滋賀県は豊郷町が20%増えている。

     都道府県別の減少率では青森と福島が25%以上、秋田、岩手が20%以上と東北地方が目立つ。増加は東京だけだった。


    【表層深層】人口増 支援充実で活路

     大都市を除く大半の自治体は、小中学校の児童生徒数が減っている。ただ、こうした流れに逆行して増加を続ける市区町村もある。ベッドタウンとして開発が進んだ街や、独自の子育て支援策が評価されて転入につながる事例も。「縮小」しつつある日本で、子育てのしやすさや教育環境の充実が自治体の振興に寄与していえるといると言えそうだ。

     東京から高速バスで3時間余り。中央アルプスの麓にある長野県南箕輪村は総面積が40平方キロほどの小さな農村だが、人口は右肩上がり。村によると、1975年に7664人だった住民は85年に1万人を超え、今年6月時点で1万5890人となった。

     なぜ人口が増えているのか。藤城栄文村長(42)は「子育て世帯支援の取り組みが話題になり、移住してくる人が多い」と胸を張る。学齢期の子供を連れた転入も多く、児童生徒の数は2010年の1413人から20年は1501人になった。

     村は近隣市町村に先駆け、05年度から段階的に保育料を引き下げたほか、18歳までの医療費を無料に。不妊・不育治療への助成金も出す。村内には保育園から大学院までの教育機関がそろい、就学前の子供と親が自由に過ごせる施設もある。

     村長自身も東京から17年に移住した4児の父親だ。隣接する伊那市出身の妻の里帰り出産をきっかけに、村が子育てしやすい環境と知った。「子供が増え続けている。教育にも力を入れていきたい」と抱負を語る。

     藤城村長が強調する施策は、村独自の女性の就業支援事業だ。就職を望む村内の女性を対象に、専門の相談員が「どういう働き方をしたいか」などを聞き取り、企業の求人と合致させる。16年に事業を始めてから270人以上が周辺の製造業などに就職した。

     相談員の堀綾子さんによると、移住者や30〜40代の女性からの相談が多い。「子育てが一段落した時など人生の段階に応じて仕事を探せるのが利点。小中学生がいる家庭も移住に踏み切りやすくなる」と意義を語った。

     千葉県流山市も人口が増えている。強みは手厚い子育て世帯支援と東京まで電車で20分という地の利だ。児童生徒数は10年の1万2275人から20年の1万6673人に増加。子供を送迎保育ステーションに預けると、バスで保育園に送迎してくれるサービスなどが共働き家庭に支持された。

     福岡県新宮町は福岡市のベッドタウンとして開発が進み、新興住宅地が広がる。駅前の大型商業施設を中心とした街づくりが奏功して子育て世帯が流入、10年に2356人だった児童生徒数は20年には4325人に大幅に増えた。

     子供の増加は地域活性化につながる一方で、課題も伴う。例えば教育施設の不足だ。南箕輪村の南部小学校では教室が足りなくなり、増築して6教室を確保した。別の小中学校の給食センターは給食提供能力が十分ではなく、新センターの建設を始めた。

     子供が減る自治体が多い中、村の教育関係者はこうした支出について「将来を担う子供たちへの投資」と前向きに捉えている。南部小の伊藤幹高校長は「児童の増減は予測が難しいが、教育の質を下げるわけにはいかない。この村で学んで良かったと思ってもらえるよう教育環境を整えてあげたい」と話した。


    「子育て環境」を整えることも子ども人口の増加につながるが、親の仕事をどう保障するということも大いに関係するだろう。高度経済成長期には大規模企業を誘致することが地方の活性化につながるとされたが、未だにそこへ期待する自治体はあるのだが、現在ではそれは見当違いの方策だ。例えば、エネルギーの地産地消のための仕事をつくるなどの妥当な政策ではないだろうか。また、(生活)協同組合的な参加型の企業を目指す必要もある。記事の例で言えば、給食センターではなく自校調理のための要員確保をシェアーすることも考えられるのではないか。


    7月17日 「京都市立校 半裸検診即時中止を」

     「盗撮は最悪の事態で許せない。京都市立学校で行われている半裸健診も、とにかく早くやめるべき」。岡山市内の中学校の定期健康診断で下着姿の生徒を盗撮していたとして医師が京都府警に逮捕された事件を受け、京都市立中のある教員が京都新聞社に怒りの声を寄せた。京都新聞社は2020年、一部の自治体や学校の健診で、児童生徒に上半身裸にさせていることに対する保護者の疑問や校医の見解を報じたが、いまだに健診を巡る不安の声は絶えない。今回は、現場の教員の声や専門家の意見から、安心安全な健診の在り方についてあらためて考えたい。(大西幹子)

     京都市教育委員会は、学校の定期健診時に児童生徒の上半身を脱衣させるよう、市立の全ての幼小中高校と総合支援学校に通知している。市学校医会と協議した結果といい、脱衣の理由を「見逃しのない診察をするため」と説明する。

     一方、京都市を除ぐ京都府内では、脱衣をさせない学校も一定ある。府医師会が京都市を除く府内全公立小中学校を対象に行った2018年度アンケートによると、背骨のゆがみを診る検査を男女とも上半身脱衣で実施したのは小学校で70・9%。だが生徒の心身が大きく変化する中学校では32・1%にとどまる。他の政令指定都市でも、一律に脱衣で健診を行っている自治体は少数だ。

     京都新聞社に声を寄せた教員は訴える。「思春期の生徒が半裸を強制される気持ちの悪い独自ルールに、生徒からは毎回助けを求められ、保護者からは苦情が来る。ただ教育委員会が方針を変えないため『決まりなので』と返すしかない。私たちは生徒の心を守ってやれないのでしょうか」

     この教員は以前から「半裸健診」を問題視し、養護教諭に相談してきた。だが現状は変わらず、管理職や養護教諭から「生徒から反対意見が出ても教師は同調したり共感したりしないように」と言われたという。健診の在り方を疑問視する教員は他にもいるが、職場ではこの話題を持ち出してはいけない雰囲気で、声を上げづらいと漏らす。

     市立高教員も「裸を嫌がって生徒が逃げたり、脱がない生徒に校医が声を荒らげたりという話はこれまで何度も聞いた」と話す。半裸にさせる必要性については「学校側は疾患を見逃さないためと言うが、効率よく健診を済ませたいというのが本音。少なくとも私は必要性を理解していません」ときっぱり。

     「会社の健診とか、大人には同じことやらないでしょう。子ども相手だったら無理強いが許されると思っているのか』と指摘した。


    力関係の中の強制、見直せ

     「今回の盗撮事件を、逮捕された医師個人の問題で済ませるべきでない。学校健診は昔から性的なトラブルを抱えやすい場だった」と指摘するのは、学校の性被害防止に取り組むNPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク(大阪府守口市)の亀井明子代表だ。健診をめぐる課題と対策について、亀井代表に聞いた。

     −健診に関する相談は。

     「毎年十数件寄せられる。ある生徒は、かかりつけ医でもある校医に久しぶりに健診で会った時、胸に聴診器を当てられたタイミングで『大きくなったね』という声を掛けられ、非常に不安に思ったという。触診に違和感を持つたという声も少なくない」

     「私は中学校教員だった20年以上前から健診での性被害に問題意識を持っていた。『校医にいやらしい目で見られた』と打ち明ける生徒がいたり、特定の生徒だけ診察が長いのでは、という相談があったりした。今でも裸で健診をさせている学校があるのは驚きだ」

     「生徒が健診の悩みを打ち明けると「自意識過剰だ」で済まされると聞く。

     「自意識過剰は性被害者によく向けられる言葉だが、私は二次加害と考える。それによって被害の声を上げづらくなる」

     −今回の盗撮を、、医師個人の資質の問題だと捉える意見もある。

     「それは違う。教員によるセクハラもそうだが、学校での性加害は、弱い立場にある生徒が、嫌でも断れないという力関係の中で起きている。健診の脱衣も力関係の中で強制され、児童生徒と保護者の不安や、盗撮のような性被害のリスクにっながってぃる。盗撮は職業や場所に関係なく起こる。どこにどんな問題が潜んでいるか分からないという視点で、学校は健診の在ぴ方を見直すべきだ」


    【記者コラム】脱聖域 生徒・保護者の声聞いて

     今回、健診での盗撮事件と脱衣健診の在り方を関連させて記事を書くことに初めは迷いがあった。以前取材した校医たちに、「盗撮は逮捕された医師個人の問題だ」と批判されそうだと思ったからだ。

     ただ教員の声を聴くうち、思っていた以上に健診でさまざまな問題が起きていることを知った。ある高校の校医は女子生徒の診察中に本来触れる必要のない性的な部位を触ったため教職員から疑問の声が上がったものの、管理職が「正当な診察方法」と主張してその場を収めたという。またある中学校では性的虐待を受けて脱衣に非常に抵抗のある生徒に対しても裸になることを強いた。

     これらは「見逃しのない丁寧な診察」という大義のもと、問題として扱われず表面化もしていない。そして盗撮事件のように表面化しても、「特殊なケース」「ほとんどの医師は善意でやっている」で済まされてしまいがちだ。健診の聖域化により現場の問題が共有されなければ、不安やトラウマを抱える児童生徒は今後もなくならない。

     教育委員会や校長は今のやり方が、学校のリスク管理や子どもの心の健康という側面から見て問題がないかを検討する必要がある。そして校医の見解だけでなく、児童生徒や教員、保護者の意見にも耳を傾け、健診の在り方を議論すべきだろう。(大西幹子)


    内田良・『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』 (光文社新書)が話題になってからもう10年もたつ。しかし、まだこうした問題を現場は解決できていない釈然としない。虫歯予防とされている「フッ素洗口」についても、現場から疑問の声も上がっているがほとんど顧みられていない。教育委員会は、医師会などとの関係が悪化することを極端に嫌う。校医などの医療関係者の確保が難しくなることを恐れてのことか。


    7月16日 京都市 子ども食堂・食品配送に支援金

     原油価格や物価の高騰を受け、京都市は子ども食堂や子育て世帯への食品配送に取り組む団体が安定的に活動を続けられるよう支援金を支給する。交付額は子ども食堂を運営する団体が10万円、食品配送に取り組む団体が50万円。

     市内に本拠地がある団体やグループが対象で、利用者負担が無料か低額であることが条件。子ども食堂は月に複数回開催し、1回当たり平均5食以上を提供していることも要件で、月1回程度の場合は交付額が5万円となる。食品配送は1回当たり平均20世帯以上に配っている必要がある。

     市によると、市内では約100の団体やグループが子ども食堂を運営している。食品配送は3団体が行っている。交付額が異なる理由について、市は「食品配送の方が対象世帯数が多く、―回の提供にかかる経費も高い」と説明する。  。

     既に申請を受け付けており、手続き終了から約1ヵ月で支援金を受け取れるという。期限は12月28日まで。問い合わせは市子ども家庭支援課075(746)7625



    7月16日 京都市 休園基準 感染「2人以上」

     京都市は15日、新型コロナウイルス対策本部会議を市役所で開き、保育園や幼稚園で感染者が1人でも確認された場合、クラス単位で休園としていたこれまでの基準について「2人以上」に見直すと発表した。また、3年ぶりの山鉾巡行を控えた祇園祭については、感染対策を徹底した上で観覧するよう呼びかけた。

     市によると、直近1週間当たりの新規感染者数(8〜14日)は5753人で前週比の2・42倍と急拡大し、年代別では20代までの若者が半数を占める。一方、3回目のワクチン接種率は10代が約21%、20代と30代が40%台にとどまっており、市は新たに啓発CMをテレビで放送するなどして接種を呼びかけている。8月中旬には3回目未接種の約48万人に案内はがきを送るという。

     今後、感染者増加に伴い保育園や幼稚園、学童クラブなどの休園・休所が懸念される中、市などは19日から休園の判断基準を変更す ることを決定。。保護者の負担軽減なども踏まえ、従来は感染者が1人でも確認されればクラス単位で休園としていたが、同じ日に2人以上確認された場合に切り替える。

     祇園祭については、歩行者天国となる15、16日に山鉾周辺35力所に立つプラカード隊が「お願い基本的な感染防止対策の徹底」と書かれたビブスを着用。観覧誘導を行うとともに感染防止も周知する。

     新型コロナに感染し、自宅からオンラインで会議に参加した門川大作市長は「第7波に入ったと認識している。祇園祭の参加に当たっては基本的な感染対策と熱中症対策を徹底し、楽しんでいただきたい」と述べた。


    あの人出の中「基本的な感染対策」がとれると本当に判断しているのか。市民にコロナの実情がどれだけ伝わっているのだろうか、いまや感染対策ということばは枕詞になっているように思える。


    7月15日 安倍氏の功罪 冷静に判断を

    作家 高村 薫さん

     安倍晋三元首相が演説中に銃撃されて命を失うという劇的な事件に、国民は過剰反応し、興奮状態にある。日本では死者にむち打つなという風潮が強いが、民主主義を軽んじる振る舞いを繰り返した安倍氏の功罪は、冷静に判断されるべきだ。

     安倍氏の国会軽視は甚だしかった。うその答弁を積み重ね、憲法に基づき野党が臨時国会召集を求めても、はねつけた。憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権を容認する閣議決定のために、内閣法制局長官を自分にとって都合の良い人物に代えさえした。

     そうした手法がもたらした最悪の形が、学校法人「森友学園」への国有地払い下げに端を発した財務省の公文書改ざん問題だった。元首相の名を冠した経済政策「アベノミクス」は進めることもやめることもできず、着地点を見失っている。

     自分と考えを同じくする人と、それ以外とを区別し、多様性を認めない非民主主義的な手法は政治をゆがめた。だが事件は一定の批判すら吹き飛ばしてしまった。こうした過剰反応こそ民主主義への脅威だ。事件と安倍氏の功罪を分けて考えることこそ、民主主義国家のあるべき姿のはずだ。

     事件では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と安倍氏の関係が取り沙汰ざれている。信者からの過剰な献金など、多くの問題を起こしてきた団体であり、ビデオメッセージを送るなどの行いは、余りに無定見だったのではないか。犯行は容認できないが、信者の子ども世代の生きづらさ、苦しみを強く感じる。

     恨みを持つ犯人の前に大物政治家が現れ、警備が十分にできていなかったために事件は起きた。強烈な殺意を抱き、銃を自作するなど周到な準備をしていた点は、2019年の京都アニメーション放火殺人事件や21年の大阪・北新地のビル放火殺人事件に通じる。

     いずれの事件も、疎外されたら浮かび上がれない社会のありようが底流にあるように思える。原因がなくならない限り、同様の事件が繰り返されるリスクはある。



    7月13日 泉南市 中1自殺 市が調査せず放置

     大阪府泉南市で3月、中学1年の男子生徒=当時(13)=が自殺し、国の指針で定めた市教育委員会の調査が事実上ストップしていることが12日、関係者への取材で分かった。いじめの有無や教師の対応の検証を求める遺族と市教委の信頼関係が構築されず、有識者による第三者機関が改善を促す報告書を作成したが、市長は受け取りを拒否。死亡から4ヵ月近くたっても具体的な対応が取られずに放置される異例の事態になっている。

     政府は来年4月に「こども家庭庁」を創設。国や自治体は子どもや保護者の声を施策に反映させることが求められるが、第三者機関を設置している一部の先進自治体であっても制度が形骸化しており、行政の姿勢が問われそうだ。

     母親によると、男子生徒は小学校時代から他の児童や教師との関係に悩み、断続的に不登校だった。中学進学後、同級生から陰口を言われたことを担任に相談したが状況は改善せず、昨年9月末ごろからほぼ登校しなくなった。今年3月18日に家を出たまま行方が分からなくなり、翌19日に自宅近くで亡くなっているのが見つかった。現場の状況から自殺とされた。

     共同通信の取材に対し、市教委は3月下旬に死亡を把握し、事実関係の基本調査に着手したと説明。しかし3、4、5月の教育委員会の会議では報告や審議が全くされていない。市教委事務局は「母親と連絡が取れず、死因などを確認できないため」としている。

     市の条例に基づき設置されている第三者機関「泉南市子どもの権利条例委員会」は5月上旬に母親から相談を受け、同19日に聞き取りを実施。6月には市教育長に対し、2度にわたり、教育委員会での審議の実施などを求める「意見表明」を行った。さらに母親との対話の仲介も申し出た。権利委は一連の経緯や提言を盛り込んだ報告書を市長に7月1日に提出する予定だったが、受け取りを拒否された。

     権利委の会長を務める千里金蘭大の吉永省三名誉教授は「市教委内部で必要な情報が共有されず機能不全に陥っている。第三者機関の意見も行政が拒否したらおしまいで、強制力を持たせる制度改正が必要だ」と指摘した。


    「こども六法」読み自ら電話相談

     今年3月、大阪府泉南市で命を絶った中学1年の男子生徒(13)は、学校に居場所を見つけられず、他の生徒や教師との人間関係に悩みながらも、何とか通おうともがいていた。母親(48)は「何があってそこまで絶望したのか。それを知りたいんです」と訴える。

     幼い頃からリーダーシップと正義感のある子だった。転校生には仲間に入りやすいよう声を掛けたり、学校を案内したりした。面倒見が良く「将来は教師になりたい」と語ることもあった。

     学校に行きたがらなくなったのは小学3年の頃。2歳上の兄に対する悪口を耳にしたことがきっかけだった。学校にも相談したが、母親は「まともに取り合ってもらえなかった」と振り返る。年を追うごとに欠席する日が増え、6年時にはほとんど登校しなかった。

     中学入学後は一念発起して通う時期もあったが、昨夏ごろから再び周囲の陰口に悩まされる。担任の教師に直訴したが、納得のいく答えは得られなかった。「明日から学校行かんから」。母親にそう宣言し、嫌なことがあったと示唆したが、詳しいことを聞いても何も話さなかった。

     不登佼の間もじっとひきこもっていたわけではない。厚さ2センチほどの「こども六法」を読み込み、相談ダイヤルに電話をかけた。

     「子どもの権利ってのがあるんやで」「相手に苦痛を与える行為は、ちょっとしたことでも『暴行』なんや」。身を守るための知識を得ることに必死だった。

     3月中旬の夜、寝る準備をしていた母親に肩たたきをしながら「ママには借りがあるからな」と大人びたことを口にした。亡くなったのはその2日後。遺書も残さず、自宅近くの池のほとりでひっそりと命を絶った。

     母親は「何があの子を追い詰めたのか。それを明らかにしてほしい」と語るが、学校や市教委への不信感は拭えない。葬儀の前後には、何度か電話や自宅訪問があったが「その後はぱったりと連絡が途絶えた。電話が鳴るようになったのは、子どもの権利条例委員会に相談するようになってからですよ」と憤る。

     「あの子のこと、なかったことにしないでほしい」。息子のベッドの枕元で見つかった「こども六法」を手にそう訴えた。


    子どもの自殺の報を見ていつも心が痛む。自殺願望を振り切ってそこから生還する手立てはないのだろうか。市長が報告書の受け取りを拒否した経緯がつまびらかではないが、まずは受け取ることからしか始まらないだろう。しかし、それ以前に学校、教育委員会はすべきことがあったはず。


    7月13日 【取材ノート】 地域ぐるみの道徳教育

     社会の規範を大人が子どもに授ける。そんな印象をもたれがちな旧来の道徳教育を更新しようと、南丹市が進める取り組みが全国的に注目されている。「地域道徳」の名の通り、保護者や住民を交えて教科書の内容を議論することや、住民と連携した体験学習に力を入れる。子どもを「正答」への忖度に陥らせず、多様な意見に触れ「価値観を磨き合う」ことを重視。地域との関わりの中、主体的に道徳心を育むことが期待される。

     狭い公園でキャッチボールをする中学生を読書中の大人が注意した―。道徳の教科書に示されたシチュエーションについてどう思うか、児童と大人が班ごとに分かれて意見を述べ合う。5月下旬、同市八木町の八木西小5年で行われた地域道徳の授業だ。

     「危ない遊びはしない」といった「模範解答」を児童が述べたが、ある母親が「本は家で読める。キャッチボールは公園でしかできない」と別の見方を提示。お互いに思いやるべきとの点では一致したが、最後まで特定の結論は出さなかった。視察した市教委の担当者は「ストライクゾーンに収まれば、一つの答えに絞る必要がない」と、狙い通りの展開に手応えを語った。

     道徳は小学校で2018年度、中学校で19年度に正式教科になり、文部科学省は「考え、議論する道徳」を掲げた。市教委も見直しを図り、小中学生へのアンケートから従来の道徳教育を「頭で分かっても、実践力が伴わない」と分析。子どもに主体的に考えてもらうための授業を模索するなかで、地域道徳の考え方にたどり着いた。

     道徳性は生活全般に欠かせないことから、多様な価値観の大人との交流を計画。昨年度は保護者参加型の授業を各校で年1回ほど行い、本年度からは住民も加わった。

     道徳の教材を地域に見いだす例も多い。文化や自然の継承に努める住民の思いは教科書以上に深い印象を与えるとして、丹波音頭などの体験を積極的に道徳教育に組み入れていることも特徴だ。先進的な事例として、国の「道徳教育の抜本的改善・充実事業」にも指定されている。

     ただ、6月末にあった校長らの会合では「体験を議論につなげるのが難しい」と悩みも上がった。市教委も「どんな力を体験で育むのか、きっちり位置づけることが課題」とする。出席した京都産業大の柴原弘志教授(道徳教育)は、議論は二項対立に限らず「多様な考えに気付くことが大切」と助言。体験を通じた納得と、議論で自己を客観視することが成長につながると取り組みを評価し、持続可能にするため「大人も学びがあるようにすべき」と述べた。

     道徳教育は、価値観を認め合うという理念が期待される一方、愛国心などの押しつけにつながることも警戒すべきだ。だからこそ、学校任せにせず、広く市民が関わることで、「考え、議論する―」の実現に近づくのではないか。(南丹支局 田中恒輝)


    こうした学習の目的をどこに置くかは難しい課題だが、あえてそこに目をつむることも必要かも。最も重視しなければならないのは、大人も子どもも「対話すること」の大切さと難しさだろう。「対話」を成立させるのはとりもなおさず「他者への信頼と他者からの承認」だからだ。これは一時期の学習では身に付きにくい。おそらく、現在の学校教育の在り方そのものへの異議申し立てからはじまるのだろう。


    7月10日 安倍元首相銃撃 戦前と状況酷似、危惧

    【寄稿】中島岳志東京工業大教授

     最も恐れていたことが起きてしまった。私はこの15年ほど、大正半ばから昭和初期に頻発したテロ・クーデター事件を研究してきた。特に犯行を行った青年の内面に焦点を当て、事件が起きるまでのプロセスを追うと同時に、事件後の世界がどのように変容していったのかを追究してきた。

     なぜそんな研究をしてきたのか。それは類似の事件が、いま起こりかねないと危惧してきたからだ。大正半ば、第1次世界大戦終結で成り金の時代が終わり、不況が押し寄せた。その後、不景気は長期化し、世の中は深刻な格差社会になった。

     このころ、若い世代を中心に不遇感と鬱屈が充満した。一部の人間に富が集中する不満とともに、世間に認められず、不幸を抱え込む境遇へのいら立ちが募った。

     そんな中、起きたのが1921年9月の安田財閥の創始者、安田善次郎刺殺事件だった。犯人は朝日平吾。当時31歳で、定職に就いていなかった。彼は若き日に実母を亡くして家庭不和を経験し、大学中退後、陸軍に入隊。数年で除隊した後、大陸に渡って飛躍のチャンスをつかもうとしたが、うまくいかなかった。

     承認欲求が満たされず、家族とも折り合いが悪い中、次第に政治運動や労働運動に関与した。政党を立ち上げようとしたが挫折。財閥の有力者に労働者救済を提案したものの、相手にされず、世の中への不満が膨らみ、テロに及んだ。

     事件は大きく報道され、社会的動揺をもたらした。テロは連鎖し、―力月余り後の11月4日、時の首相・原敬が暗殺された。犯人は18歳の中岡艮一。彼は朝日平吾に影響を受けたと供述した。

     こうした非合法の暴力が相次ぐと、それを押さえつけようとする国家の治安維持権力が起動する。25年には治安維持法が制定され、共産主義者の一斉摘発や右翼活動家への監視が強化された。

     30年には浜口雄幸首相が銃撃され、約9ヵ月後に死亡。32年は血盟団事件、五・一五事件が相次いだ。政党政治は終焉を迎え、軍部や警察権力が強化され、言論の自由は圧迫されていった。

     この一連のプロセスと今日の状況は、似ているところがある。世の中が動揺し、萎縮。すれば、テロが有効と認識し、行動に移す人間が出てきかねない。私たちは事件に毅然と立ち向かい、平然とこれまでの日常を続ける必要がある。テロによって何も変わらないことが、テロの連鎖を抑止する最大の行為となる。

     気を付けなければならないのは、治安維持権力の強化だ。私たちが恐怖心を抱くと、さまざまな監視や取り締まりを求めるようになる。既に「テロ等準備罪」を盛り込んだ法律や特定秘密保護法が成立し、デジタル庁も発足した。これらが起動すると、監視権力を気にする国民は言論を自粛し始めるだろう。重要な岐路に立たされている今こそ、過剰反応せず、冷静な対応が求められる。


    民主主義、平和が銃によって脅かされるなどこの21世紀に起こるなどと想像しなかったといわれるが、私たち日本人が世界をきちんと見ていなかったのではないか。民主主義、平和は向こうからやってくるものではない。安倍元首相の銃撃はまさに私たちの足元から立ち上がった事件だろう。しかし、そのことによって「安倍政治」の8年間が美化されてはならない、いまの世の中を作ったのは白石聡(『長期腐敗体制』角川新書)がいうようにまさにこの「安部政治」なのだから。


    7月8日 参議院選挙 教育充実 各党アピール

     10日投開票の参院選で、与野党が教育無償化など教育予算の充実を盛んに打ち出している。激戦の京都選挙区(改選数2)では教育無償化を巡って「本家争い」も勃発。家計負担の軽減や少子化対策、生産性向上など、幅広い社会課題の解決につながる利点があり、有識者は各党の活発な政策競争を評価する。

     「無償化」の文言を公約に多く並べているのは、野党だ。立憲民主党は公約の3本柱に教育無償化を掲げ、国公立大学の授業料や小中学校給食の無償化を主張。日本維新の会も六つの重点政策に教育の完全無償化を盛り込んだ。

     「大阪では幼稚園、保育園の無償化が広かっている。小中学校の給食費は無償になり、中学生には塾代助成で1万円のクーポン券を渡している。私立高の授業料無償化は47都道府県で先頭を走っている」。6月下旬、京都市内の繁華街で演説した維新幹部は、改革によって生み出した財源で大阪府・市の教育を充実させたと実績を強調した。。

     こうした宣伝に立民は敏感に反応する。京都選挙区の現職候補は、そもそも「高校無償化」の制度をつくったのは旧民主党政権だとアピール。国の制度に上乗せして私立高の授業料を独自に減免している自治体は大阪だけではないとし、「京都府は私学の助成金をちゃんとつけている。大阪と京都の無償化は全く差がないどころか、年収ペースでは京都の方が手厚い」と反論する。

     共産党は大学、専門学校の学費半額や入学金の廃止、義務教育費用の無償化を訴え、国民民主党は「教育国債」を発行して関連予算を倍増させ高校までの教育完全無償化をうたう。れいわ新選組や社民党も教育無償化に言及している。

     ただ、野党側が街頭演説で詳細な財源確保策などに踏み込んで説明する場面はあまりない。

     一方、与党はこれまでの実績に即した現実的なメニューを公約に掲げる。党の改憲4項目に教育の充実を盛り込む自民党は、2020年に低所得層の大学生らを対象に導入した授業料減免や返済不要の給付型奨学金を中間所得層にまで拡充するとした。「こども・子育てマニフェスト」を作成した公明党は、O〜2歳児の保育料無償化や、私立高の授業料無償化の対象拡充に取り組むとしている。

     岸田文雄首相も、国の子ども関連予算の倍増を唱える。ただ、5月の衆院予算委員会で野党議員からいつまでに倍増するかを問われたが、具体的な期限を示さなかった。

     なぜ各党はこぞって教育に力を入れるのか。文部科学省の官僚だった京都産業大の惣脇宏教授(教育政策)は、世界的にみて日本は授業料が高く、さらに大学などでは私的支出の割合も高いことから「親の教育費負担が限界になりつつあるという認識が広がっている」と指摘。教育分野への公的支出によって家計の負担が和らぎ、第2、第3子をもうけたり、消費活動が活発化したりするほか、高度なスキルを身に付けた人材が増え、労働生産性の向上も期待されるという。

     惣脇教授は「特にここ10年ほどの間、各政党はさまざまな政策提案をしている。さらに充実させるべきとの考え方が今回もあるのだろう」と背景をひもとく。


    大阪vs京都教育施策充実度比較

     参院選では日本維新の会の幹部が連日京都入りし、大阪で実現した教育改革のアピールを繰り返している。だが、京都で何も手が打たれていないわけではない。京都府、京都市と大阪府、大阪市で比べてみたところ施策によって充実度合いに差があるようだ。

     まず各都道府県が国の補助に上乗せするかたちで取り組んでいる私立高校の「無償化」だ。大阪府は年収約590万円未満の世帯は授業料の負担をゼロにしているが、京都府もそれに近い制度設計になっている。ただ年収約590万円以上の世帯の負担軽減については大阪府がやや手厚い傾向にあり、担当者は「全国トップクラス」と誇る。単純比較はできないが大阪府は独自に年約150億円、京都府は約32億円の予算を投じている。

     地方議会で話題になりやすい中学校給食はどうか。大阪市では学校内調理による全員給食を導入しており、新型コロナウイルス禍で2020年度から時限的に無償化している。京都市は家庭からの弁当持参か配達式の給食かを生徒・保護者が自由に選択してもらう方式で、市教委は「弁当を作りたいという保護者らの声もある」と説明する。

     京都市がやや手厚い施策を施しているのが、乳幼児教育だ。3〜5歳児の保育料は2019年から国の施策で無償化されているが、0〜2歳児は自治体で差があり、国基準の75%に当たる保育料を支払う必要がある大阪市に対し、京都市は71%に抑えている。


    「無償化」を教育論として考えるなら民主党時代の「高校無償化」をどう評価するを考えなくてはならない。「ウェルビーイング(well-being)」に係る政策は、原則的に普遍主義的ではなくてはならない。それを所得制限で線引きを導入することは、このケースで言えば「子ども」にも一定の責任を負わせることになる。貧困が原因で進学をあきらめるなどはその例だろう。民主党の政策の普遍主義を自公政権は変更したがそこには哲学がなかったように思える。


    7月5日 【インサイド】 「脱衣の健診は必要か」

     小中学校の定期健康診断での上半身脱衣については、「恥ずかしい」などと不安を感じる思春期の女子もいることから、是非を巡る議論が続いてきた。医師の間でも、必要性の見解が分かれているのが現状だ。医師による盗撮事件が発覚したことで、健診の在り方を見直すべきという声も上がっている。

     定期健診は、学校保健安全法で毎年実施すると定められ、脊柱の異常や心疾患、肺疾患などの早期発見を目的とする。正確な診断のため脱衣が必要という意見がある一方、人権上の課題もあることから文部科学省は昨年3月、全国の都道府県教委などに、正確な診察と児童生徒のプライバシー保護を両立するよう通知した。京都市教委は、男女とも上半身裸で受けることが原則だとし、「配慮を求める児童生徒に個別対応などを工夫する」という方針だ。

     学校での性被害防止を進めるNPO法人「SSHP全国ネットワーク」(大阪府守口市)には、学校健診での脱衣や触診に不安を感じたという相談が男女問わず年十数件ある。亀井明子代表は「学校の集団健診が本当に必要か考えるべき。子どもの『健診休』を作り、不安の少ないかかりつけ医で受診するなどの方法もある」と話す。

     学校医の経験がある川村孝・京都大名誉教授(予防医学)は、「心疾患や肺疾患など医学的に聴診が必要なケースはあるが、服の下から聴診器を入れれば可能。毎年全員に行うかどうかも含め、実施方法の検討が必要では」と議論を促す。


    岡山県の医師が中学校の定期健康診断で女生徒の上半身を盗撮した事件で逮捕された。子どもが性的な被害にあうことは大きなトラウマになることを関係者は熟知していなければならない。こうした事件は言語道断だが、まずは関係者の倫理的な姿勢が必要。


    7月1日 市教委 大文字駅伝 休止を正式決定

     京都市教育委員会は30日、小学生が市内を走る市小学校「大文字駅伝」を当面の間休止することを正式に決めたと発表した。

     同駅伝は以前から、練習の過熱化や児童の体に及ぼす悪影響が指摘されていた。新型コロナウイルス感染拡大で中止になったのを機に、市小学校長会など主催団体が在り方検討会議を立ち上げて検証してきた。

     市教委が8日の市議会で休止の方針を報告したのを受け、検討会議が最終報告で当面の間の休止を確認した。さらに、同駅伝に代わる校内1000メートル記録会と全市1000メートル交流会の実施を今後の方向性として示した。9月には新たな取り組みの詳細が決まるという。


    「在り方検討会議」でどのような議論がなされたのか、それを受けて同のような方向を進めるのかが市民にはわからない。議事録などはあるのだろうか?