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  • 市立中全員制給食へ予算.26
  • 大学入試科目「改善が必要」.26
  • 教員働かせ放題どう改革?.28
  • スポーツ暴力相談過去最多.30
  • 府内労組 組織率15.8%.31
  • 1月31日 京都府 府内労組 組織率15.8%

     京都府は、労働組合に加入している府内の労働者の割合(推定組織率)が2022年6月末時点で15・8%となり、前年から0・5%減少したと発表した。19年に過去最低の15・1%となった後、2年連続で微増が続いていたが、3年ぶりに減少に転じた。新型コロナウイルス禍による企業業績の悪化が組合活動にも影響した可能性がある。

     労働組合数は1149組合で、前年より34組合(2・9%)減少。加入組合員数も3759人(2・1%)減り、17万5634人となった。

     産業別で最も減少率が大きかったのは「不動産業・物品賃貸業」の7・0%で、「公務」5・6%、「卸売業・小売業」と「サービス業」4・9%、「運輸業・郵便業」の4・8%と続いた。府によると、運輸業・郵便業では新型コロナ禍による業績悪化で一部組合が解散したことが影響したという。約5万6千人の組合員を抱える製造業では0・9%増えた。

     府が推定組織率の算定を始めたのは1971年。当初は38・7%だったが、88年に30%を切り、2006年には20%を下回った。以降、低下傾向が続き、19年 に過去最低の15・1%となったが、20年は15・5%、21年は16・3%と増加が続いていた。

     一方、パートタイム労働者の組合員は前年に比べ2・2%減少し、1万8981人となった。14年から調査を始め、19年に過去最多の1万9801人となった が、その後は減少が続いている。

     府労働政策課は「推定組織率減少の要因は分析できていないが、低迷していることに変わりはない。各組合と意見交換しながら、働きやすい環境づくりに府としても取り組みたい」としている。


    30日の共同通信世論調査は「物価上昇に見合う給与引き上げ」の実現可能性を問うた。その結果「実現する」16.5%、「実現しない」80.7%だった。本来労使交渉において賃金が確定するはずなのだが、「政治春闘」と呼ばれる形での政府介入が続く中での賃金確定は労働組合の力をますます弱くしていく。政府は賃金交渉に介入するよりも労組が活動しやすいような環境を整備することに尽力すべきだ。例えば、企業における労働組合組織率の下限を法的に決めるなど。


    1月30日 スポーツ協会 スポーツ暴力相談過去最多

     スポーツ界の暴カパワハラ問題で、日本スポーツ協会が設置した窓口への相談件数が2022年度は、18日時点で過去最多290件に上り、内訳では体罰など暴力が減る一方、暴言が増加傾向でパワハラ(無視、差別、罰走など)と合わせて過半数を占めることが29日、分かった。13年4月の「暴力行為根絶宣言」への契機となった柔道女子代表の暴力指導問題発覚から30日で10年。被害者は小中高生で6割を超える実態も判明し、不適切な指導が根強く残る現状が浮かび上がった。

     日本スポ協が統計を取り始めた14年度以降、相談件数は新型コロナウイルスの影響でスポーツ現場の人的交流が停滞した20、21年度を除いて年々増加しており、関係者によると、22年度は最終的に初めて300件を超える見通し。22年度の内訳(12月31日時点)では「言葉の暴力」とも呼ばれる暴言が34%と最も多く、暴力や暴言以外のパワハラが29%で続いた。過去最も多かった殴る、蹴るといった暴力は14%で、15年度の38%に比べて大幅に減少した。

     相談窓口を統括している合田雄治郎弁護士は「暴力をなくそうという機運はあるが、決してなくなってはいない」と指摘した上で「言葉の暴力などが増えて陰湿化している」と背景を説明した。

     また窓口に寄せられる被害者の約4割が小学生で最多となり、中学生と高校生はともに約1割。通報者の内訳でみると、約6割が被害者の保護者からで、日本スポ協は当事者が安心して窓口を活用できるように昨年7月に子ども向けのウェブサイトを開設した。

     日本スポ協は暴力根絶宣言から10年の節目となる23年度を再発防止へ向けた「イベント強化期間」と指定。日本オリンピック委員会(JOC)や全国高校体育連盟など5団体で実行委員会を設立し「アスリートによるリレーメッセージ」や「保護者向けの研修」などの事業を計画している。


    【南部さおり教授の話】殴る・蹴るの代わりの暴言

     殴る、蹴るといった暴力が相談窓口の割合で減ったのは、体罰が良くないものという認識が指導者、生徒側にも広く浸透したことがある。暴力に代わり、生徒たちをコントロールする方法で増えたのが暴言ということになっているのではないか。暴言とは「おまえのせいで負けた」とか、試合の結果に対して責めるような言葉だ。分かりやすい暴力の代わりに「罰走」みたいな肉体的に痛めつける過剰なトレーニングもよく耳にするが、これも練習の一環と言い逃れができる。暴力根絶へ長いスパンで考えると、部活動の地域移行や外部指導者の改革もあり、これまでとは違う局面で、さまざまな課題がまた出てくると思う。


    【続報】指導の現場が「陰湿化」

     日本スポーツ協会が暴カパワハラ問題で設置した窓口への相談件数が、2022年度は過去最多の300件超となる見通しとなった。内訳で見ると、13年4月の「暴力行為根絶宣言」から約10年で殴る、蹴るといった暴力が減る一方、指導の現場では暴言が最多で増加傾向にあり、心に傷を負わせるような「陰湿化」の課題に直面する。被害者は小学生が4割と最も多く、指導者に依存しがちな保護者への理解を求める指摘も出ている。

     「もうバレーするな」「そんなんだからいつまでも小学生だ、幼稚園児だ」「使えない」―。18年に自殺した岩手県立不来方高(矢巾町)の男子バレー ボール部員は、県教育委員会から懲戒処分を受けた当時の顧問から暴言を浴び続けていた。

     日本スポ協への相談内訳で22年度は暴力が14%に対し、暴言がパワハラ(無視、差別、罰走など)と合わせて6割超に上った。禅問答のように問い詰め 「おまえは頭が悪い」という例もあり、暴力等相談室の品治恵子係長は「証拠が残りにくい、証明しづらいものが増えている」と分析した。

     日本スポーツ法支援・研究センターの理事を務め、14年から窓口を統括する合田雄治郎弁護士は暴力等に及ぶ指導が@子どものために暴力が良いことだと確信する「確信犯型」A適切な指導が分からず即効性のある暴力に訴える「指導方法不明型」B感情をコントロールできない「感情爆発型」C暴力行為を楽しむ「暴力嗜好型」―の四つに分類できると説明する。

     その中で10年前を契機に「確信犯型」から「指導方法不明型」ヘシフトしていると分析。調査では「いけないと分かっているがやってしまった」という 声も多く、部活動の地域移行が推進される中で「子どもを指導するのは相当なスキルが必要。教える側が研修等で常に勉強し続けることが重要だ」と警鐘を鳴らす。

     日本スポ協などが23年度に実施する再発防止事業のメインターゲットは保護者と子どもだ。「問題が根深いのはたたく指導者を擁護する保護者がいること」と合田弁護士。全国大会出場などの実績に目を向けるあまり、指導者の判断に任せ、子どもを含めて暴力的指導に事実上まひしているケースがあるという。

     日本体育大の南部さおり教授は「八ラスメントへの意識は浸透してきたが、変われない指導者もやはりいる。子どもの場合、理屈で諭すより手っ取り早く怖がらせたり、嫌な思いをさせたりして、自分の思い通りにコントロールしやすい」と指摘。子どもが成長し、指導者となった際に負の連鎖を断ち切るためにも、品治係長は「小さな芽からつぷしていかないといけない」と強調した。


    子どもへの期待が暴力を生む結果になってしまう?こうした問題はスポーツだけには限らない。大人と子どもの関係が非対称であることから常に問題は起こりうる。女性や障害者との関係でも同じだろう。J・C・トロントは『ケアするのは誰か?』でケアという考え方が新しい民主主義のかたちを作り出すと言っている。示唆的な著書だと思う。


    1月28日 文科省有識者会議 教員働かせ放題どう改革?

     公立学校の教員に残業代を支払わないと定めた教職員給与特別措置法(給特法)の見直しに向け、文部科学省は昨年末、有識者会議を設置し検討作業に着手した。多忙化に苦しむ学校現場から「『定額働かせ放題』を招いている」との批判がやまず、ようやく重い腰を上げた形。ただ、改革の方向性は定まっておらず、教員が願う長時間労働の是正につながるかどうかは不透明だ。

     「こんな働き方では結婚や子育ては考えられないです」。埼玉県の公立小に勤務する男性教諭(63)は、若手の同僚が漏らした一言に心を痛めた。同僚は登校の見守りのため午前6時台に出勤し、授業後も翌日の準備などで午後9時過ぎまで居残る毎日だった。

     男性教諭は2018年、「常態化する長時間労働を変える一石を投じたい」と県に残業代の支払いを求めて提訴。一、二審は敗訴したが「訴訟を通じて教員のブラック労働ぷりを社会全体に知ってもらえた」と語る。現在は最高裁に上告中だ。

     1972年施行の給特法は教員の勤務形態が特殊だとして、残業代の代わりに月給4%相当の「教職調整額」を支給すると規定。4%は当時の残業時間だった月8時間分でしかなく「新型コロナウイルス対策や不登校の子への支援など、業務が増え続ける現状に見合わない」との不満は多い。

     過酷な働き方のせいで教員のなり手が減り、病気休職などの穴を埋められない「教員不足」の要因になっているとの指摘も。少なくない。22年12月、国会内の登記参加した岐阜県立高の西村祐二教諭(43)は「お金が欲しいのではない。残業を減らすために給特法を見直して」と訴えた。

     文科省は、23年春にまとまる教員の残業時間に関する調査結果を待って、待遇改善の検討を慎重に進めるつもりだった。ところが元文科相で自民党政調会長の萩生田光一氏が22年11月に給特法の見直しを検討する党の特命委員会を立ち上げると状況が一変。「党が動いているのに、何もしないわけにはいかない」(文科省幹部)と、翌12月から有識者会議で給特法を巡る論点整理を始めた。

     ただ、公立小中学校の教員給与に充てる義務教育費国庫負担金は年約1兆5千億円で、残業代を出すとなれば大幅に増えるとみられる。文科省内では「調整額を引き上げるくらいが限界。それすら財務省が抵抗するだろう」との見方が根強い。

     文科省内には萩生田氏の豪腕に期待する声もあるが、ある同省関係者は「自民党内も意見はばらばら。党の提言も『抜本的な見直しが必要』といった表現にとどまるのでは」とみる。

     名古屋大の内田良教授(教育社会学)は「調整額を引き上げるだけでは、勤務時間の管理が緩い現状は変わらない」と指摘。「給特法を廃止して残業に対価を支払う仕組みにすれば、管理職が責任感を持って長時間労働の是正に取り組むようになる」と期待した。


    「教員の長時間労働」縮減対策として給特法の廃止は必須の条件。ただ、教育関係者の中にある「教員像」をどのように対象化できるかも大きなカギとなる。部活についても「学校での部活に意味がある」とする考え方は根強い。有識者会議がこうした部分にまで踏み込んだ議論ができるかどうかも注視したい。


    1月26日 文科省 大学入試科目「改善が必要」

     文部科学省は25日、国公私立大が実施する入試の改善を促す指針案を公表した。1年生の授業履修に必要な科目が課されない点を改めることや、英語民間試験の活用が柱。一部で数学を課さない経済学部や、生物を課さない医学部などがあることが念頭にあるとみられる。文科省が入試内容の改善に関する指針を策定するのは初めて。

     25日の中教審分科会に案が示された。2022年度中にも正式決定するが、強制力はない。

     指針案は、入試で各大学が1年目の授業に必要な科目を設定することが「第一の選択肢」と強調。こうした科目を課さないなら、入学後に補習を行うべきだとした。学力試験がない場合は、高校の調査書や民間試験を活用するよう求めた。

     良質な作間が困難になっている大学には、過去問を複数校で相互利用することを提案。作間に当たり、機密を保った上で外部専門家を登用したり、元高校教員らに問題の点検を依頼したりすることも選択肢に挙げた。

     総合型選抜(旧AO入試)などの普及で学力試験がないケースが増えたとの指摘や、受験科目が少なければ高校生の学習の幅が狭くなるとの懸念があるとして、文科省は改善が必要と判断した。


    一条校が公教育をになうとはいえここまで文科省が私学の入試に手をつうこんでもいいものなのかと疑問がわく。また、21年に頓挫した大学入試共通テストの英語の民間試験導入を復活させようとする意図が見える。私学も経営戦略ではなく教育・研究戦略のもとで学生の選抜をすべきではないか。


    1月26日 市教委 市立中全員制給食へ予算

     京都市教育委員会は25日、市立中での全員制給食の実施に向けた調査費を新年度予算に盛り込む方針を明らかにした。詳細は2月市議会で説明するとしている。

     同日開かれた市議会教育福祉委員会で稲田新吾教育長が答弁した。岸田文雄首相が「次元の異なる少子化対策」を打ち出したことを受け、「子どもたちの成長と子育て家庭の支援のため、全員制中学校給食の実施を視野に入れた調査に関する予算を計上できるよう調整を図りたい」と述べた。

     京都市立中の全員制給食は、財政負担などが壁となり実現できていない。現在は、家庭からの持参弁当か給食弁当かを選べる「選択制給食」を導入している。

     ただ、給食弁当の割合(喫食率)は3割に満たない一方で、同市の施設一体型小中一貫校では全員制給食が実施されており、学校間の格差も指摘されていた。


    中学生の給食制度が必要なのはコロナ感染拡大下においても明らかになった。しかし、結論への拙速な議論は禁物。問題点は多岐にわたる。配食業者の処遇、自校調理かセンター化か、小学校での調理と中学校への配送、民間業者の参入の可否など多くの課題があるのだから。地方選や首長戦を前にした政党や行政のパフォーマンスではいけない。かつて中学校への給食制度が導入されたときには、食育の観点から自校調理を求める声があったにもかかわらず最も安易な選択制の配食制度となった経緯も反省材料だろう。


    1月23日 総務省 非正規公務員ボーナス拡充

     総務省は。自治体で働く単年度契約の非正規職員(会計年度任用職員)のボーナスを拡充する方針を固めた。公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当で構成。会計年度任用職員には期末手当しか支給できないが、正規職員や国の非正規職員と同じく両方を支給できるようにする。格差是正が狙い。地方自治法改正案を通常国会に提出、早ければ2024年度から適用する。関係者が22日明らかにした。

     会計年度任用職員は20年4月時点で約62万人。業務は新型コロナウイルス対応など多岐にわたり、自治体運営に欠かせない。総務省は格差を是正すれば、業務への意欲が高まって行政サービスが向上し、住民にもメリットがあるとみている。

     会計年度任用職員の制度は20年度に導入され、併せて在職期間などに応じた期末手当を支給できるようになった。一方で勤務成績を考慮する勤勉手当は「検討課題」(当時の政府説明)とされ、支給に必要な法制度が未整備のままだった。

     具体的には、約55万人いるパートタイムの会計年度任用職員に対し、勤勉手当を支給ずる規定が地方自治法にない。約7万人いるフルタイムは、総務省通知で「勤勉手当は支給しないことが基本」とされている。

     総務省は法律と通知を改め、パートタイムにもフルタイムにも支給できるようにする。

     手当の水準は各自治体が決める。ある県のケースを見ると、昨年末に支給された正規職員の冬のボーナスは、期末手当が月給の1・20ヵ月分、勤勉手当が月給の0・95ヵ月分。会計年度任用職員の水準も同程度にすれば、夏と冬を合せて一定の収入増が見込める。

     勤勉手当の支給で自治体の人件費負担は重くなるが総務省は負担を軽減するため、財政支援する方向で調整する。


    非正規職員の待遇改善は歓迎できるのだが、そもそも非正規職員の役割はなにかということを考慮しないといけない。正規職員の穴埋めとして非正規が使われるているのが常態となっている。地公法では臨時的任用は、特別な職が発生して場合を想定しているのだから。教員の場合は明らかに定数改善が行われていないことへの補償として使われているケースがほとんどだろう。


    1月22日 教員精神疾患で休職 深刻

     精神疾患で仕事を休む教員が増えている。文部科学省の全国調査によると2021年度は過去最多で、京滋でも増加傾向だ。新型コロナウイルス禍による業務の増加、教育ニーズの変化、保護者対応、問題を抱え込みがちな学校文化―。休職増加の背景にあるものを学校関係者や専門家の話から考える。(大西幹子)

     京都府内の中学校に勤める男性教諭は2年前、不眠や吐き気、ベッドから起き上がれないなどの症状で精神科に通うようになり、仕事を休んだ。

     発症のきっかけは複数あったと感じている。顧問を務める部活動でのトラブル、新型コロナウイルス禍で重なった保護者対応―。同僚との不仲もあり、管理職に相談したが曖昧な対応だった。

     体調は万全ではないが、約半年後に復帰した。教員仲間や家族の支えがあり、もう一度担任を持ちたいと思えるようになったからだ。ただ教職現場の全体を見渡すと、復帰の希望を見いだせず、そのまま退職する人も少なくないという。男性教諭は「教員不足が叫ばれている中、深刻な問題だと思う」と話す。

     都道府県と政令都市を対象とする文部科学省の調査によると、2021年度に精神疾患で休職した教員と1ヵ月以上の病気休暇を取得した教員の合計は、京都府(京都市を除く)が132人、滋賀県が160人、京都市が140人。比較できるデータのある17年度比では、京都府と滋賀県は約1・5倍、京都市が約1・3倍に増えている。

     また京都市は、全教員に対する割合が1・89%と全国で最も高く、メンタルヘルスの問題を抱えやすい現状が見て取れる。

     どのような属性の教員がどのような状況で休むのか。京都市教育委員会によると、年齢別の休職者数は50代が最も多い。休む理由は複合的だが業務関連では、児童生徒や保護者への対応の難しさ▽異動先の新しい環境に適応できない▽職場の人間関係▽働き過ぎ―に分けられるという。

     市教委は精神疾患で休む教員の割合が高く、さらに増えている理由について「一人一人、事情が異なるので分からない」としつつ、「業務負担の軽減などを進め、教員がいきいきと働ける環境をつくっていきたい」としている。


    京都市割合 全国ワースト

     精神疾患の教員が増えている現状を、専門家はどう見ているのか。精神科医の森孝宏・京都教育大保健管理センター教授に聞いた。

          ◇

     精神疾患の患者はあらゆる職種で増えているが、教員は特に増加している印象だ。文部科学省の資料によると、2011年までの10年間で患者全体の増加は1・23倍だったのに対し、教員は1・96倍に上った。この傾向は今も続いているのではないか。

     教員は、児童生徒や保護者の思いを受け止め自分の感情をコントロールする「感情労働」の仕事だ。特に担任を持つ教員は、1年間交代せずに数十人の子どもや保護者に関わり続けるといった業務の特殊性がある。クレーム対応や相談窓口など他職種の感情労働と比べても、メンタルヘルスの問題を抱えやすいと言える。

     教員の感情労働の量は時代の変化とともに増えている。かつての子どもたちは家庭教育や友達との遊びの中で人とうまく付き合うスキルを身に付けていたが、人間関係や親子関係が希薄になり、その埋め合わせや社会性の教育が学校に求められるようになった。コロナ禍でますますその傾向が強まったように思う。

     感情労働以外にも、教育分野のIT化への対応など新たな業務が増加している。日本の教員は、仕事を何でも引き受けてしまいがちだと感じる。本人のやりがいに配慮しつつ、教員でなくてもできる仕事はなるべく他に任せる環境を整えていくべきだろう。


    「感情労働」という考え方はホックシールドの『管理される心―感情が商品になるとき』(世界思想社 2000年)によって広がったのが今から20年も前。教員の自殺が増え始めるのもこのころのこと。当時と今も教員の精神疾患を取り巻く状況はあまり変化していない。この「感情労働」を単なる個人の問題として考えるのは禁物で、教員の労働を縛る「官僚制」との関係を見る必要がある。京都府と京都市の罹患率の差は「官僚制」の指標になってるとみてもよいのだろう。


    1月22日 政府 安保戦略 国民に「決意」要求

     政府は、防衛力の抜本的強化を柱とする新たな国家安全保障戦略を実施に移すため、世論説得に乗り出す。安保戦略では、中国の対外姿勢を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と表現し、国防への「決意」を国民に求めた。野党は、挙国一致の下で戦争に突き進んだ歴史から「反省を忘れてはならない」(立憲民主党の泉健太代表)と懸念を強める。23日召集の通常国会で論戦の焦点の一つになりそうだ。

     昨年12月に閣議決定された安保戦略は、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を盛り込み「国家としての力の発揮は国民の決意から始まる」と明記。「国民がわが国の安全保障政策に自発的、主体的に参画できる環境を政府が整えることが不可欠だ」と指摘した。憲法が保障する思想・良心の自由の観点から批判が広がっており、岸田文雄首相の答弁が注目される。

     「国民の決意」について松野博一官房長官は20日の記者会見で「総合的な国力を最大限活用して着実に(戦略を)実施するためには、国民の理解と協力が不可欠という趣旨だ」と説明。

     「国民の皆さまと共に今後努力していく」と述べ、官民一体での国防態勢構築に意欲を示した。

     浜田靖一防衛相は会見で、政府による環境整備の具体的手法について「安保政策を国民に丁寧に説明する」と強調。林芳正外相は「安保戦略は国力の要素の一つに外交力を掲げる。外務省としても国民と共に努力する」と語った。政府は通常国会での審議を通じ、防衛力強化や「国民の決意」の重要性を繰り返し説明し、世論への浸透を図りたい考えだ。

     野党側からは問題視する声が上がる。泉氏は、戦争に協力しなければ「非国民」とされた歴史に言及。政府の防衛費増額方針も挙げ「国民に増税を強いて、国防の決意をただ強いるのであれば、危うい道に踏み込みかねない」と警鐘を鳴らした。


    【解説】透ける挙国一致の発想

     政府が国防への「決意」を国民に求めた国家安全保障戦略からは、日本人であれば中国、北朝鮮、ロシアに一丸となって向き合うのが当然だとする「挙国一致」の発想が透ける。近隣諸国への敵意とナショナリズムをあおり、世論を危険な方向へ導く懸念が拭えない。

     安保戦略は、中国など周辺国への警戒感を示し、厳しい安保環境の中で国力を発揮するため「国民の決意」を訴えた。中国の覇権主義的な動きや、北朝鮮の拉致・核・ミサイル問題への対応が必要なのは当然だ。だが、政府がいたずらに危機意識を刺激すれば国民感情が悪化し、一触即発ムードを醸成しかねない。

     憲法が保障する思想・良心の自由の観点からも問題は大きい。大多数の国民が「決意」を共有した場合、同調圧力の下で異論は封じられ、国家主義的な動きに歯止めがかからなくなる展開も。日本で暮らす中国出身者や在日コリアンヘの憎悪や差別を助長し、人権侵害をもたらす事態も想定される。安保戦略は、国民の協力について「自発的、主体的な参画」をうたったが、日本には戦前、軍国主義を突き進んだ苦い経験がある。


    テレビ朝日の「徹子の部屋」でタモリさんが「新しい戦前になるんじゃないでしょうか」と話したことに関心が高まった。この間の政府の独断専行を見ているとそう思える。ロシアのウクライナ侵攻を見ていると「トマホーク500発」を備えても「国を守る」ことはできないと思える。価格も1基1〜2億円という総額で500〜1000億円に上る。訓練や維持の経費をくわえれば更なる費用も発生する。1000億円で「国民の決意」買おうというのだろうか。


    1月21日 警察庁 22年自殺者2万1584人

     2022年の自殺者数が2万1584人となったことが20日、警察庁の自殺統計(速報値)に基づく厚生労働省のまとめで分かった。21年の確定値と比べ577人増え、2年ぶりの増加。新型コロナウイルス流行前は10年連続で減り、19年に約2万人となったが、コロナ禍で千人ほど増えたまま高止まりの状況が続く。京都府は前年比0・8%減の373人、滋賀県は同9・2%増の260人。

     厚労省担当者は「40〜60代の男性のほか、失業者や年金生活者らで増加が目立つ。著名人の自殺の影響もあったのではないか」と分析している。

     男女別では、男性が前年比604人増の1万4543人で13年ぶりの増加。女性は同27人減の7041人だが、コロナ禍前よりは千人近く多い。毎年3月発表の確定値は速報値から増える傾向にあり、女性も前年を上回る可能性がある。

     職業別は11月までの暫定値として公表。失業者の自殺は1038人に上り、前年同期の581人に比べ約1・8倍に増加。年金や雇用保険で生活している人は5347人で、705人増えた。原因・動機別(暫定値)は健康問題が1万1125人と最多で、次いで家庭問題が4214人。

     コロナ禍で増加が目立つ小中高生の自殺者数(同)は前年同期比3入減の441人となり、内訳は小学生15人、中学生118人、高校生308人だった。

     人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)は前年からO・5人増え17・2人。男性は23・8人(1・O人増)、女性は10]・9人(O・1人減)。都道府県別で最も高かったのは山梨(24・3人)で、低かったのは徳島(12・5人)。京都は14・6人で4番目に低く、滋賀は18・4人と全国 平均より高かった。

     京都府は相談窓口「自殺ストップセンター」を本年度から24時間365日体制に拡充し、受付件数は前年度の2倍超に増えた、という。府担当者は「深夜にも相談が寄せられている。自殺抑止に一定の効果があったのではないか」としている。ストップセンター0570(783)797。


    【インサイド】ゲートキーパー¢カ在感

     2022年の自殺者数は速報値で2万1584人となり、新型コロナウイルス流行前に比べ約千人増の水準が続く。悩みを抱える人が増える中、重要なのが「ゲートキーパー」と呼ばれる存在だ。身近で見守り、小さな変化を見逃さず声がけし、支援にっなげる。保健師などの専門職でなくてもその役割を担うことができ、官民で養成の取り組みが進む。

     「家族が失業してしまった」「テレワークばかりで職場の人とうまく関係が築けない」。交流サイト(SNS)で相談を受け付けるNPO法人「東京メンタルヘルスースクエア」にはさまざまな悩みが寄せられる。

     1日に寄せられる相談は200〜250件ほど。「多くの人が心のサポートを求めている状況」と新行内勝善カウンセリングセンター長は話す。コロナ流行前は数人だった相談員を、20人以上に大幅に増やして対応している。

     新行内さんは強調する。「『回りに迷惑をかけたくない』と抱え込むケースもある。助けを求めてもいいんだという考えを広げていくべきです」

     悩みに寄り添い、孤独や孤立を防ぐには、SOSを察知し声がけをするゲートキーパーの存在が重要だ。身近にいて話し相手になり、専門的な支援が必要ならそれが受けられるよう背中を押す。特別な研修や資格はいらない。

     「大変な仕事ではありません。それぞれの立場で、できることをできる範囲ですれば良いのです」。東京都練馬区内で17日、ゲートキーパーに関する勉強会が開かれ、NPO法人「ゲートキーパーTONARINO」の森本圭花理事長が呼びかけた。コロナ禍で、周囲の人をサポートしたいという人が増え、養成講座などへの問い合わせが多くなったという。「普段一緒にいるからこそ、気付けるサインがある」と森本さん。ゲートキーパーの認知度向上を訴え「気軽に声をかけ合える社会になってほしい」と語る。

     厚生労働省が21年に実施した調査では、ゲートキーパーについて「内容まで知っている」「聞いたことがある」と答えたのは計約12%にとどまった。同省は23年度から、自治体などが養成講座を開く際に使える新たな教材を作成するほか、ゲートキーパーの負担が重くならないよう支援する事業も実施。同省担当者は「裾野を広げていきたい」と説明する。

     自治体でも取り組みが進む。岩手県は人口10万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」が全国で高水準だとして01年から、久慈地域で、行政や医療機関に加え住民も連携し、地域全体で自殺を防ぐネットワークを整備。ゲートキーパー養成を主要対策の一つに据え、力を入れてきた。

     現在は県内全域に拡大し、20年ほど前に500人前後だった自殺者は減少傾向となり22年は速報値で262人。県で自殺対策を担う千葉順子特命課長は「特効薬はない。地道に対策を継続することが大切だ一と活した。


    コロナ禍は私たちの生活に様々な変化をもたらした。自殺という問題もその中の大きな一つである。「ゲートキーパー」の人的支援の役割は大きい。ただ、ステレオタイプ的な考え方かもしれないが、「身近に相談できる人」がいるいないもある種の格差があるのではと思える。経済を回すためにコロナ対策を変更することは慎重であるべきではないか。


    1月17日 金融機関ら 金融教育は小学生から

     証券会社が小学生向けの金融経済教育を充実させている。2022年度から必修科目となった高校では投資など資産形成の知識を身につけるのに対し、小学生にはお金の使い方や価値について親しみながら学べる工夫を凝らしている。

     三菱UFJモルガンースタンレー証券 は22年4月、小学校向けに開発した教材の提供を始めた。クループでの議論を中心に全6回の授業を約1ヵ月かけて行う。「誕生日には高くてもケーキを買う」など状況で物の価値が変わることを学ぶ。

     さいたま市立春岡小学校の5年生を対象に、22年12月に実施した出張授業では、時間を手に入れるため料金を払ってタクシーで移動するなど、お金の有効な使い方について意見を出し合った。

     お金について子どもに学ばせたいという親も増えている。楽天証券は22年12月、親子向けオンラインセミナーを初開催した。定員500組に対し2倍を超える応募があり抽選となった。「世界に流通するお金は何種類か」といったクイズを交えながら、お金の役割や使い方を伝えた。

     講師を務めた金融教育ベンチャー「マネネ」 (東京)。森永康平社長は「親世代はお金の話を人前ですることにネガティブな印象を持ち、家庭で話題にしづらい風潮がある。子どもたちに考える機会を与えたい」と話した。

     は22年12月、職業体験ができるテーマパーク「キッザニア東京」で貸し切りイベントを開き、約千人の親子が参加した。投 資先を調査して顧客に紹介する体験ができるブースを出展しており、中田誠司社長は「投資は世の中を良くする好循環を生み出す可能性があると学んでもらいたい」と強調した。


    「金融教育が必要」と言われると「そうかな」と思うけれども、キャリア教育と同じように「消費者」(いわば小規模な金融市場)の立場を強調するものになっている。昨年5月岸田文雄首相が掲げた「資産所得倍増プラン」は「貯蓄から投資へ」を掲げお金の流通量を増やすことで経済成長をとのことらしい。アベノミクスと何等の違がるとすれば庶民の懐に直接手を入れることだろう。必要なお金の教育がるとすれば、すべてを「お金」に換算する社会の在り方をこそ子どもたちは学ぶべきだろう。労働がお金に換算されている不合理を。


    1月15日 「考える会」 不登校の実態アンケート

     京都市内の支援団体や保護者でつくる「京都の不登校について考える会」が、行き渋りを含めた不登校の児童生徒がいる保護者らを対象にしたアンケートの結果をまとめた。欠席期間が1年以上との回答が約8割を占め、子どもが自宅で過ごすことによる光熱費や食費、教育費の増加など保護者の大きな経済的負担の実態が浮き彫りになった。  (生田和史)


    欠席1年超8割/食・光熱・教育費など経済負担大

     調査は、不登校の子どもの実態を把握し、当事者の声を行政施策に反映してもらうのが狙いで、昨年10月15〜31日までに実施した。対象は、市内の小中高などに在籍する不登校の児童生徒の保護者と、過去に不登校だったケースの保護者で、計158件の回答が寄せられた。

     現在、子どもの不登校に対応中とした保護者は10O件で、行き渋り・不登校期間は「3年以上」が36%と最多だった。「2〜3年未満」が23%、「1年未満」が21%、「1年以上から2年未満」は20%と続いた。学年が変わっても登校できない子どもが約8割で、不登校が長期化している現状 がうかがえた。

     日々の過ごし方については、「自宅中心で、時々学校や支援機関に行く」が32%、「安心できる居場所や買い物へ出かける」が29%。「時々休みながら、学校に通う」が20%だった。

     不登校のきっかけは「先生」が53%、「学校の環境が合わない」が42%、「学校の制度が合わない」が38%、「友達」が36%で、人間関係の悩みや学校という居場所になじめないことが大きな要因に挙がった。不登校の原因として指摘されることの多い「インターネットやゲーム」は5%と低かった。

     再登校しにくい主な理由は、「勉強の事」が47%と最多で、学習の遅れが登校しづらさに拍車をかけているとみられる。

     保護者の経済的負担が増えた項目は、「食費」が76%、「光熱費」が57%、「学習面のフォロー」が51%など。―力月の負担額は「1万円以下」が27%、「2万円」が22%。収入減については「ない」が48%と半数近くを占めたものの、「5万円まで」が24%、「10万円まで」が13%だった。経 済的な理由で諦めたことは、「フリースクールへの通学」が43%、「塾など学習サポート」が41%と続いた。

     58件の回答があった経験ある保護者対象でも、おおむね同様の傾向だった。


    不登校特例校の情報少ない/適応教室拡充して

     アンケートでは、京都市教育委員会の不登校施策について、不登校特例校の積極的な情報開示や適応指導教室の拡充などを求める意見が寄せられた。

     市教委は、不登校の児童生徒が無理なく通学できるように、柔軟な教育課程が組める不登校特例校の2中学校(洛風、洛友)や市教育相談総合センター(こどもパトナ)、同センターに所属する機関で、在籍校への登校や社会的自立を目指す適応指導教室「ふれあいの杜」(市内5ヵ所)をそれぞれ運営している。

     洛風、洛友中は「知っている」が82%だった一方、「在籍する学校から十分な情報が得られていない」が90%に及び、「募集要項の一般公開を求める」が89%となった。

     不登校特例校への進学が選びにくい理由として、「情報が少なく、中の様子が分かりにくい」が68%、「学校に合わなければ、地域の学校に戻れない」が45%、「通えるか不安」が44]%だった。

     こどもパトナの存在は89%と広く認知されている一方で、利用は「ある」が43%、「ない」が57%で半数に満たなかった。パトナから継続的に受けている支援については「ない」が74%と大半で、「保護者のカウンセリング」が22%、「子どものカウンセリング」が8%、「ふれあいの杜」が7%だった。

     「ふれあいの杜」を利用しない理由については、「子どもが関心を示さない」が47%、「新しい環境になじむのが困難」が33%だった。要望として、現行では小学4年生からの利用になっているが「低学年からの受け入れ」、5ヵ所だけでなく「各校内に分室を設けてほしい」などの意見があった。

              ◇

     行き渋り・不登校アンケートの結果で明らかになった課題を受けて、同会は、当事者の家庭への経済的支援や学習こ綾一保障など八つのテーマで提言をまとめた。

     具体的な内容は▽市内全域で当事者の児童生徒や保護者を対象とした実態調査の実施▽校内に通常の教室とは別の居場所の設置▽フリースクールへの通学助成▽保護者への支援▽全ての子どもが教育を受ける権利を保障するインクルーシブ教育の推進?など。

     同会の西尾美里さんは「当事者が声をあげることで、『明日も行きたくなる学校』を実現していきたい」と話している。


    アンケート結果からうかがい知ることができることはいくつかある。学校という観点からは、原因が学校という組織や機構が当事者に適したものにはなっていない。また、行政の施策も当事者のニーズに適したものではないということ。国は子どもに就学義務を求めている以上その受け皿としての「学校」を子どものニーズに合うもにしていく義務がある。


    1月13日 【インサイド】非常勤多く、受け皿整備課題

     国家資格としての公認心理師の誕生によって、心理専門職全体の地位向上が期待されている。これまで主流の臨床心理士はあくまで民間資格であるため、今後は公認心理師を目指す学生が増えることが予想される。ただ、スクールカウンセラーなど資格を生かした就業形態は非常勤であるケースが多く、受け皿の整備も大きな課題だ。

     公認心理師の主な業務は、相談などによる対人支援で臨床心理上と大きな違いはないが、医療や福祉、学校などとの連携の必要性が特に強調されている。これまで5回実施された資格試験の合格率は平均約50%で、計約7万1千人がパスしている。

     日本公認心理師協会が2020年に実施したアンケートによると、スクールカウンセラーや病院職員などとして勤務する公認心理師の約4割が非常勤で、そのうち約半数が「希望する常勤の求人がない」ことを理由に挙げた。一方、「自分の都合に良い時間に働きたい」などとして非常勤を選んでいる人も多く、同協会は「全体として雇用が極めて厳しい、という現状ではない。力のある心理専門職はどこでも求められているので、求人にふさわしく対応できる人は今でも不足していると考えている」としている。

     公認心理師は、日本臨床心理士会など既存団体の国への働きかけもあって設けられた。京都文教大臨床心理学部教授も務める濱野清志・京都府臨床心理士会会長は「公認心理師の制度は、カウンセラーなどとして仕事をする上での大きな地盤となる。社会の需要が高まる中で、心理職という仕事の必要性を理解してもらい、構築していく必要がある」と話している。


    本紙では、2018年に国家資格「公認心理師」制度が導入されたことを契機に、2005年ノートルダム、08年文教大、09年同大、16年立命館、23年度新設の龍大、橘大で心理学部の開設が進んでいると報道している。鬱やPTSDなどの心理に関わる問題が多発するとの状況から需要が増えているとのことだろう。ただ、こうした問題が個々人の心理の問題としてとらえられることに危惧を感じる。仏教の縁起を持ち出すまでもなく人間は多くの関係の網目の中で生きているのであり、そうした関係性を見つめることで問題解決とすること重要だと思われる。


    1月12日 厚労省 学童保育充実へモデル事業

     共働き世帯の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の充実を目指し、厚生労働省は学童保育と「放課後子ども教室」との一体化を進めている。一体運用の拡大に向けたモデル事業を始め、対策を強化。子どもの学びや遊びの機会を増やすことを狙う。

     女性の就業率上昇を背景に学童保育の重要性が高まる。就学後に子どもの預け先に困って親が離職を迫られる「小1の壁」は社会問題となってきた。国は2023年度末までに計約30万人分の保育受け入れを目指す「新・放課後子ども総合プラン」を18年9月に策定。待機児童解消を進めるとともに学童保育を充実させようとしている。

     放課後子ども教室は、学習支援や交流活動を提供する場。親の就労状況と関係なく全ての子が対象になる。全国に1万6511カ所(2022年1月時点)開かれ、ボランティアらが支える。厚労省は教室を学校内で実施し、学童保育に通う子も参加できるようにする仕組みを目指している。

     だが学童保育と一体型で運営している施設は5869ヵ所(22年5月時点)にとどまる。政府目標は1万力所であるものの、遠く及ばない。人材や設備が不足していることが主な要因で、国からの支援が不十分だとの指摘もある。

     一体型のモデル事業は22年12月に始まった。市町村で関係者が協議の場を設け、効果的な方法を検証。国が費用を補助する。厚労省はうまくいった事例を収集し、共有していく方針だ。


    幼稚園と保育園の一体化を目指した「子ども園」と同じような感覚なのだろうか。文科省と厚労省の綱引きの場面が増える懸念があり、子どもの厚生が置き去りにされる懸念も。こうした局面こそ「子ども家庭庁」の仕事ではないのか。プランには「両事業を新たに整備等する場合には、学校施設を徹底的に活用することとし、新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施することを目指す」とあるが、施設管理などの経費など運営が学校の新たな負担にはならないのだろうか。


    1月12日 京都市 向島中跡に総合病院

     京都市は、民間譲渡を検討している元向島中(伏見区)の売却先候補に、社会福柾法人浩照会(同区)を代表とする事業体を選んだ。同法人の運営する総合病院の移転先になるほか、分譲住宅や地域交流施設などの一体整備が計画されており、市は向島ニュータウンの再生の契機になると期待している。

     同中は2019年に閉校し、跡地は昨年9月までまちづくり拠点として地域住民に利用されてきた。売却するのは旧校舎を含めた市有地約1万6千平方メートルで、市は地域住民の意見を取り入れた「まちづくりビジョン」に基づき、多世代の共生などを活用の条件にして事業者を公募。有識者らでつくる選定委員会の審査を経て、応募のあった2件から選んだ。

     同法人によると、計画では老朽化が進む伏見桃山総合病院(同区)を移転するかたちで病院を整備する。現状の病床数(199床)を維持した上で、急性期医療への対応を充実させる。施設内には特別養護老人ホームも新設する予定。病院や老人ホームで新たに約200人の雇用も見込む。

     さらに区画内には事業体に加わる不動産会社トレジヤーホーム(山科区)が分譲住宅を約40戸建設し、近鉄向島駅から約500メートルの立地を生かし、子育て世帯などの呼び込みを図る。地域住民らが利用できる集会所や広場も設ける。

     売却額は事業体の出した希望額の7億500万円になる予定で、市が設定した最低価格とほぼ同額。2月議会に関連議案を提案し、可決されれば今春に売買契約を結ぶ。病院の着工は23年秋〜24年春で完成まで2年ほどかかり、住宅は23年9月に造成を開始し、24年春から分譲を始める見通し。

     1970年代に大規模団地が開発されたニュータウンは少子高齢化が進み、世代交代が課題になっている。同法人は「多世代が良さを感じる環境をつくり、ニュータウンのカンフル剤になれるようにしたい」としている。


    廃校跡地をどう利用するかは常に問題となっているが、旧市内の跡地は多くがホテルとなっている。向島ではそうした方向に向かわなかったのは幸いと言えるのだが、地域(コミュニティー)の拠点としての学校という機能がどう生かしていくのかの一貫した方向性が見えない。財源確保のために他所でも売却の方針があるようだが、地域再生の拠点作りとの意識は市側には薄いようだ。


    1月12日 過熱忌避へ、小学生大会の決断

     昨年12月、冬の空気が冷たい午前8時すぎ。京都市上京区の正親小のグラウンドをぐるぐると、子どもたちが息を切らして走っていた。6年生25人が2グループに分かれ、それぞれ1000メートルの記録を計った。友だちから応援を受け、目標タイムを超えようと全員が走りきった。

     今年2月に京都市小学校「大文字駅伝」に代えて初めて行われる「京キッズRUN」に向けた校内記録会だった。男子4分20秒、女子4分40秒の標準記録をクリアすれば、京都市内の各校につき男女最大4人ずつが本大会に出場できる。記録会の様子を見守っていた正親小の阿部正人校長は「子どもたちの目は真剣そのもの。参加は強制ではないので、一人一人が1秒でも速くなりたいという自分の目標に向かって走れることが良い」と話す。

     京都市は昨年6月、30年以上続けてきた大文字駅伝の休止を発表。小学6年生が公道を走る全国でも珍しい大会だったが、練習の過熱化による体への悪影響や、運営に携わる教職員の負担など課題が指摘され、たけびしスタジアム京都(右京区)で個人記録を競う形式の京キッスRUNに衣替えした。

     大文字駅伝は学校対抗の駅伝形式のため、児童数の多い大規模校が有利という現実もあった。市内のある校長は「小規模校にとって予選突破が難しかったことは確か。教員の間にも温度差があり、強い選手だけを見て他はほったらかしという例もあったと聞く」と打ち明ける。

            ◇

     毎年1月に開催される全国女子駅伝の関連イベントとして親しまれてきた「少女ミニ駅伝」も今回から内容が一新され、「少女チャレンジRUN」として再スタートを切る。

     従来の少女ミニ駅伝は、ペアを組んだ2人がおおむね1500メートルずつ走って順位を競った。新たな少女チャレンジRUNでは、小学5、6年の個人が1000メートルのタイムを計る「記録会」と、気楽に走る「フアンラン」の2種目を実施する。

     主管する京都陸協の三上真さんによると、内容変更に際した議論では「1500メートルが本当に小学生に適した距離なのか。長距離を走るための練習を過熱させるようなことは避けよう」との意見で一致したという。全国の都道府県代表チームが参加する「全国小学生クロスカントリーリレー研修大会」が2019年を最後に終了したことも、距離短縮やレースの過熱化防止の流れに影響したとされる。

     大会が盛り上がり、注目されて規模が拡大するにつれ、出場選手や応援する側の勝利への欲求が高まるのは必然だ。心身とも成長過程にある小学生年代では特に注意が必要で、子どもたちにとって大切なことは何か、考えなければならない。

     京キッズRUNの校内記録会に参加した正親小6年の飯田璃空さんはこう話してくれた。「初めは走るのは得意じゃなかったけど、体力がつくとどんどん楽しくなって、今度の大会にも出たくなってきた」  


    連載記事「ブカツは今 C脱勝利至上主義」からの記事だが、同時に41回全国駅伝参加チームに対して京都新聞社が実施たアンケートは、興味深い。スポーツと学校あるいは教員(大人)の子どもに対する考え方を検討する材料になる。また、学校の働き方改革が遅々として進まない状況も浮かび上がるようにみえる。


    1月10日 厚労省調査 障害者雇用「代行」急増

     法律で義務付けられた障害者雇用を巡り、企業に貸農園などの働く場を提供し、就労を希望する障害者も紹介して雇用を事実上代行するビジネスが急増していることが9日、厚生労働省の調査や共同通信の取材で分かった。十数事業者が各地の計85力所で事業を展開。利用企業は全国で約800社、働く障害者は約5千人に上る。

     大半の企業の本業は農業と無関係で、障害者を雇うために農作物の栽培を開始。作物は販売せず、社員に無料で配布するケースが多い。違法ではないが「障害者の法定雇用率を形式上満たすためで、本当の意味での雇用や労働とは言えない」との指摘が相次ぎ、国会も問題視。厚労省は3月までに対応策を打ち出す方針だ。

     多くの企業は障害者に適した仕事を用意し、法定率に見合った人数を雇うのに苦労している。

     代行ビジネスは2010年ごろに現れ、事業者、農園数とも年々増加。@事業者が働きたい障害者と指導役を募集し、企業に紹介A企業が障害者らと雇用契約を結び、事業者に人材紹介料や農園の利用料などを支払う―仕組みだ。農園には複数の企業の障害者が集められ、給与は各企業から支払われる。働くのは知的、精神障害者が多い。

     事業者によって運営方法や料金は異なる点もあり、厚労省は昨年1月から全国の労働局を通じて実態を調査。農園は昨年11月末現在、首都圏、愛知県、大阪府、九州を中心に85力所あった。京都は1ヵ所、滋賀はなかった。利用企業は東京など大都市圈が多く、大手の有名企業も複数利用している。

     背景には、障害者雇用促進法に基づき一定規模の企業に義務付けられる雇用率が近年、引き上げられてきたことがある。10年前は1・8%だったが現在は2・3%。法定率を満たしていないと、企業は法令順守を問われるほか、官公庁の入札で不利になることもある。

     障害者側にとっても福祉目的の作業所での工賃が全国平均で月約1万6千円にとどまる一方、企業に雇用されれば十数万円の月給が得られ、金銭面ではメリットがある。

     ただ障害者団体からは批判が多く、衆参両院は昨年12月に成立した改正法の付帯決議で、代行ビジネスを利用しないよう企業の指導などを検討することを政府に求めた。


    【表層深層】意義薄い働く場℃^否

     近年、各地に広がる貸農園での障害者雇用「代行」ビジネス。実施事業者は「障害者の働く場を剔出」とうたい、企業は法定雇用率を達成できるというメリットがある。一方、企業の拠点とは離れた農園に障害者が集められ、実際に働いた人からは「一日の大半が休憩時間だった」との証言も。農作業は本業とは関係なく、作物も販売しないという手法には「ビジネス事業者にお金を払い、雇用率を買うようなもの」と疑問が投げかけられている。

     「雇用創出を通じて、ノーマライゼーション社会を実現」「農園を活用したSDGS(持続可能な開発目標)」。貸農園での障害置雇用を支援する事業者最大手の「エスプールプラス」はPR資料でこう訴える。

     同社は2010年からこの事業をスタート。首都圏や愛知、大阪で30力所以上の農園を運営し、昨年10月末時点で利用企業は約500社、働く障害者は約3千人に上る。

     農園の多くは広い敷地にビニールハウスが並び、利用企業ごとに区画を分けて主に野菜を栽培。農作物は子ども食堂や社員食堂で活用されることもあるが、大半は福利厚生として利用企業の社員に無料で配ったり、障害者が持ち帰ったりする。

     利用する大手金融グループの担当者は「農作業が特性に合う障害者もいて、野菜を食べた社員からの感謝の言葉で喜んでいる。一般社員が農園で一緒に作業する研修も実施しており、『心のバリアフリー』に役立っている」と意義を強調。

     「社員が定期的に農園を訪れており、『代行』とか『雇用率を買っている』という批判は当たらない」と話す。障害者への給与は「農産物ではなく、研修の機会を提供してもらっていることへの対価だ」と説明した。

     ただエス社の企業向け資料では「人材発掘から雇用継続アドバイスまで一貫サポート」を掲げ、「企業負担100%削減」との言葉も見られた。

     「仕事はとにかく楽だった」。6年ほど前、エス社の農園で働いたことがある千葉県内の50代男性は振り返る。発達障害あり、エス社の募集広告を見て応募。雇用元はエス社に決められ、都内の機械メーカーだった。

     水やりや収穫などの仕事はすぐに終わってしまい、大半が休憩時間がったという。自身への月給約11万円とは別に、企業が人材紹介料や農園利用料としてエス社に数百万円以上を支払っていることを後に知り「イメージアップのために雇用率をお金で買っていると言われても否定できないのでは」と話す。

     一方、知的障害のある子どもの親からは「障害年金だけでは生活できない。良い話だと思う」との声もあり、評価は分かれる。エス社に批判への見解を尋ねたが「取材はお断りする」との回答があった。

     障害置雇用に詳しい慶応大の中島隆信教授は「本来は企業の本業に貢献する形での雇用が望ましく、あるべき姿とは言えない。いくら正当化しても、結局は法定雇用率のクリアが目的であることは明らかだ」と指摘。その上で「障害者雇用の質に問題があるケースは代行ビジネスに限らない。多様な人が働けるよう配慮することは、企業の成長につながる。企業は『障害査雇用はコストではなく成長への投資』と意識を変える必要がある』と話している。


    障害者にもメリットがある「代行業」。なんとも悲しい状況だろうか。支援学校の企業版のように見えてくる。インクルーシブな社会と表で言われていても実質的にはエクスクルーシブな社会だと思い知らされる。少なくとも学校教育でのインル−シブを進める努力をしなければ。


    1月8日 洛風、洛友中 学校らしくなく&s安除く

     全国的に不登校の児童生徒が増える中、各地で設置が進む「不登校特例校」が注目を集めている。柔軟な教育課程や校則が既存の学校のイメージに当てはまらず、「学校らしくない学校」とも称される。全国に先駆けて誕生した京都市の洛風、洛友中の実践を取材した。(生田和史)

     洛風中(中京区)は2004年10月、国の特区指定を受けて旧初音中跡地に開校した。現在、1〜3年生計40人の定員に対して45人(1年14人、2年9人、3年22人)が市内全域から通学している。

     早起きが苦手な生徒などに合わせて、始業時間は午前9時半からと通常の学校に比べて1時間遅い。授業時間は、生徒が無理なく学べるように、学習指導要領に定められた年間1015の授業時間の7割強にあたる770時間に設定。授業数は単純に減らしているのではなく、社会と理科を合わせた「科学の時間」や技術家庭科と美術、音楽を統合した「創造工房」などの授業を設け、重複部分を省略しており、必要な学習内容はカバーできているという。

     授業は学年ごとに受けるが、ホームルームなどの時間は、1〜3年生を縦割りにした4グループに分けて過ごしている。学年の枠を超えて交流することで、社会性を養う狙いがある。華道や茶道、施設見学といった体験学習も増やしている。教室は「ウイング」、カウンセリングルームは「凪」などとネーミングでも学校色を抑えている。

     校則はあるものの、「してはいけない」と否定的な表現は控えられ、生徒を理不尽に締め付ける「ブラック校則」と見受けられるような決まりも制服もない。定期テストは設けておらず、単元テストなどで評価している。年間30日以上の長期欠席をする生徒はおらず、ほとんどが通学できているという。

     進学先は定時制や通信制の高校が8割、全日制が2割。森廣伸一校長は「不登校の原因はさまざまで、不安を取り除き、学校を居場所と感じてもらうことが大切だ。保護者も子どもの将来を心配するが、学校に行ってくれることで安心してもらっている」と話す。

     洛風中の開校から3年後の07年に旧郁文中跡地に誕生した洛友中(下京区)は、夜間中学(夜間部)と不登校を経験した生徒が通う昼間部を併設するのが大きな特徴だ。

     昼間部は、始業時間を洛風中よりさらに遅い午後1時半に設定する。現在は1年2人、2年4人、3年9人が在籍。うち10人が登校できており、5人が休みがちという。課外活動だけ参加する生徒もいる。

     夜間部には19人が通う。中学を卒業できなかった人や学び直しをしたい人が対象で、50〜70代の女性が大半を占める。かつては韓国・朝鮮国籍の人たちが多かったが、近年は中国やネパールの生徒が増えている。

     午後5時から始まる5校時と、6校時は、昼間部と夜間部の生徒が重なり合う時間帯で、音楽・技術家庭、美術・保健体育をともに学ぶ時間を設けている。元気で明るく、学びに積極的な夜間部の「先輩」が、昼間部の生徒に好影響を与えるからだ。

     例えば、「勉強は義務」と捉えていた昼間部の生徒が、夜間部の「先輩」の姿を目の当たりにして、単に義務ではない学びの本質に気付くこともあるという。このため、始業式や修了式、球技大会、修学旅行なども合同で実施している。

     間野郁夫校長が、日々の教育で大事にしているのは「子どもたちを認め、自信を育てること」だという。「生徒には、課題を直さないといけないという関わり方はしない。遅刻しても、早引きしても子どもたちを受け入れる。これまでいろいろつらい経験をしてきたはずだから」



    1月7日 首相 少子化対策3月末に方針

     岸田文雄首相は6日、小倉将信こども政策担当相と官邸で会い、少子化対策強化のため関係官庁の局長級らでつくる会議設置を指示した。月内に初会合を開く。小倉氏がトップを務め、児童手当拡充や学童保育、産後ケア、仕事と育児の両立などの支援策を包括的に議論する。3月末をめどに、たたき台となる方針を取りまとめる。具体的な財源確保策明不は4月以降になる見通し。自民党で消費税増税論が出ている。

     首相は「将来的な子ども予算倍増に向け大枠を提示したい」と小倉氏に語った。

     同党税制調査会幹部の甘利明前幹事長は5日のBSテレ東番組で「将来の消費税(増税)も含め、地に足をつけた議論をしなければならない」と述べ、少子化対策の財源として将来的な消費税率の引き上げも検討対象になるとの認識を示した。6日には取材に「いずれ安定的に少子化対策をしていくという時に、消費税論議は必ずある」と話した。

     これに対し、松野博一官房長官は6日の記者会見で消費税増税に関し「当面触れることは考えていない」と語った。

     新設する政府会議は内閣府、厚生労働、文部科学両省など関係官庁の局長級らで構成する方針。学識経験者、親などの子育て当事者、若者から意見を聞く機会も設ける。児童手当といった経済支援策以外に、一時預かりなどのサービス拡充、子育てしやすい働き方改革が主なテーマとなる。

     政府は新会議のたたき台を踏まえ、4月の「こども家庭庁」発足後から財源を含む議論を加速する。首相は4日の年頭記者会見で「異次元の少子化対策」を掲げ、将来的な子ども予算倍増に向け、6月策定の経済財政運営の指針「骨太方針」までに大枠を示すと言明した。


    『新型格差社会』(朝日新書)の著者・山田昌弘は、日本の社会を格差社会として、仕事格差―結婚格差―家庭格差―教育格差の循環を断ち切らないと「希望社会」は実現できないとしている。少子化対策だけをターゲットにする政策では成果を上げることはできないということだ。非正規労働者が4割(総務省2021年)という中で、実質賃金3.8%減(2022年11月)のダブル格差とでも言うべき状況。その上「増税」では、少子化対策が格差促進対策になってしまうのではないだろうか。


    1月5日 自治労連 非正規公務員半数 年収「200万円未満」

     京都自治体労働組合総連合(京都自治労連)が、府内で働く非正規雇用の公務員「会計年度任用職員」を対象にしたアンケート結果をまとめた。約半数が年収200万円未満と答え、正規職員とほぼ同じ仕事をしている職員や、保育士など資格を有する専門職でも3割が200万円未満と回答した。労連は「制度が官製ワーキングプアを生み出している」と指摘する。

     会計年度任用職員は、自治体ごとに異なっていた勤務条件などの統一を目的に2020年4月に導入された。人件費抑制で自治体が正規職員を減らした影響で増加傾向にある一方、専門性や勤務時間など正規職員に近い働き方をしている人も多く、給与差が問題になっている。

     アンケートは昨年7月〜9月に実施し、府や京都市など16自治体で働く545人(男性118人、女性416人、無回答11人)が回答した。年収では「200万円未満」が53・4%を占めた。また、主な生計維持者を「自分」とした156人のうち、約半数が年収200万円未満だった。

     業務内容は「正規職員の補助」が47%。「正規職員とほぼ同じ仕事をしている」と答えた人や、保育士や精神保健福祉士など資格を要する専門職は計41%に上り、うち3人に1人は年収が200万円未満と答えた。フルタイム(週40時間)とほぼ変わらない勤務時間(週34・5時間以上)の人は全体の4割超を占めた。

     自由記述では「正規職員と同じ仕事量なのに賃金が見合っていない」などと待遇への不満が目立った。また、単年度契約が基本で再任用は原則2回までとなっていることから「継続雇用の不安を感じながら働いている」と不安を訴える声も寄せられた。

     京都自治労連の担当者は「非正規職員の窮状が浮かび上がった。専門性や同一労働・同一賃金の考え方を含めて、自治体に待遇改善を求めていきたい」としている。


    自治体だけではなく学校も多くの非正規職員によって支えられているのが現状。そのうちの常勤講師は正規教員と同じ仕事をし非常勤講師は短時間勤務となている。それらの人たちは法的には一時的な業務の補充(休職などによる代替教員など)のはずが、20年以上もそうした状態で働いている人もいる。ミサイルに支払う予算を非正規の待遇改善に使うことは、人間の安全保障になることを改めて考えるべきであろう。ロシアのウクライナ侵攻による戦争が1年近く続いているが、一旦開戦されれば「戦争の終」は極めて不透明になる。また、戦争の口実はどちらにも正義を呼び込んでしまう。年頭に当たって「不戦の誓い」を国是とすることを改めて主張しておきたい。