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  • 【3/3回】「性」問う 教員の挑戦
  • 自民、門川氏5選推さず.25
  • 「ステマ」広告 法規制へ.26
  • 精神疾患休職教員 最多5897人.27
  • 公式戦1勝 難しくてもやりがいを.28
  • 園部高付属中 初めて定員下回る.28
  • 「難関大挑戦」顕著に.30
  • 12月30日 河合塾 「難関大挑戦」顕著に

     本格的な大学入試シーズンの幕開けとなる来年1月の大学入学共通テストを控え、受験生は追い込みに励む。大手予備校河合塾によると、少子化に伴い志願者総数が各大学の入学定員の合計と並ぶ「大学全入時代」に入りつつあり、受験生の題関校への挑戦志向が顕著に。理系では医、歯、薬、獣医といった資格につながる学部、文系では法、経済といった学部の志望者が多そうだ。新型コロナウイルス禍で強まっていた地元志向には陰りが見える地域もある。

     河合塾が今年10月に実施した全国模試を分析したところ、国公立では東大や京大、大阪大のほか、筑波大や広島大、熊本大など難関校とされる大学の志望者が多い。私立でも、早稲田や慶応、MARCH(明治、青学、立教、中央、法政)といった大規模校が人気だ。

     大学全入時代を目前に、以前より難関校のハードルが低くなったとみて、志望者が集まったとみられる。高校側からも「特に私立大は倍率が下がっている。滑り止めは大丈夫なので、第一志望はより高い目標にチャレンジするよう指導している」(高校教諭)との声が漏れる。

     学部別にみると、全国模試の受験者は減っているにもかかわらず、国公立では医学部を志望する人が前年比105%、獣医111%、薬108%、データサイエンスなど新学部設置が相次ぐ情報系が107%、法・政治が101%と伸びた。私立でも同様だ。これまでは文系の割合が多かった女子の理系志向が特に強まっているという。コロナ禍で3年間の高校生活を送った受験生が多く、茨城県立藤代高の進路指導を担当する吉田真弘教諭は「男女間で志望学部の 違いはなくなってきている。コロナや景気悪化で、将来を見通せなくなり、職業に直結する学部を選ぶ子どもが増えた」と実感を語る。

     河合塾の分析では、コロナ禍で低かった首都圏の大学を目指す受験生の割合が、東北で上昇。中国・四国では近畿への進学希望が大きく増えている。地元の大学を目指す受験生の割合は、北海道、東北でコロナ禍前の水準まで低下した。

     河合塾の近藤治主席研究員は「コロナへの警戒感が薄まり、大都市圈の大学を避ける意識はなくなりつつある。女性の社会進出を背景に、女子が理系を含めたさまざまな分野を志望する傾向が特に強い。難関校に人気が集まる状況も含め、今後もこうした動きは続くだろう」と話した。



    12月28日 府・市教委 園部高付属中 初めて定員下回る

     京都府と京都市の両教育委員会は27日、公立高付属中5校の2023年度入試の志願者数を発表した。3校で志願者数が前年度を上回った一方で、園部高付属中が公立高付属中で初めて定員を下回った。

     府立では、南陽高付属中(木津川市、定員40人)の志願者数が前年度比4人増の123人で倍率は3・08倍、福知山高付属中(福知山市、同40人)も9人増の82人で2・05倍とやや増加。洛北高付属中(左京区、同80人)は26人減の242人で3・03倍、園部高付属中(南丹市、同40人)は20人減の37人でO・93倍だった。

     園部高付属中の定員割れについて、府教委は、競合する京都市内の私学などへの志向が強いほか、「中学受験は早い段階からの意識や動機付けが必要だが、同校では新型コロナウイルス感染症対策で学校説明会の対象児童を高学年に限定したことも影響したのでは」と分析する。

     京都市立の西京高付属中(中京区、同120人)は志願者が44人増えて461人となり、倍率は3・84倍だった。

     5校とも入試は来年1月14日、合格発表は同18日にある。


    付属中への志願率は府南部の人口密集地が高い。都市と地方との様々な「格差」が要因なのだろうか。あるいは、大学進学率向上を目指す付属校教育の在り方が問題なのか。都市と競合するような地方の在り方に問題はないのか、など感がさせられる。


    12月28日 市立高合同部活 公式戦1勝 難しくてもやりがいを

     京都市立高校の合同活動の背景には、部員数の減少という共通した課題がある。少子化に加え、有望な選手は私学に集まる傾向が強まっている。京都工学院は部員6人で、来年の新人大会は京都八幡と初めて連合チームを組むことになった。

     部員減は戦績にも影響し、今年の全国高校選手権京都大会では紫野を除く5校が初戦敗退。公式戦で勝つことが難しくても、やりがいを持ってサ ッカーに取り組んでほしい、との顧問らの思いがあった。また互いに協力することで他校の教員に指導を委ねることができ、「働き方改革」も狙う。

     一方で、新たな活動費が必要となるため部員から千円ずつ集めたほか、ユニホーム費の一部をスポンサーの支援で賄った。来年度は部員の負担減に向けてスポンサー増を目指すなど試行錯誤が続く。

     少子化に伴う部活動の維持はサッカーに限らず全国的な課題で、国は中学校の部活動運営を地域団体に任せる改革を進めている。ただ、地域移行には懸念の声もある。今回の取り組みに参加した6校をはじめ、京都の市立高校は、中学で学校の部活に所属した中体連出身の選手が多い。ある顧問は「地域移行によって、中学の部活動の熱量が下がりかねない。市立高校で部活を続けようとする生徒も減るのでは」と心配する。

     堀川の木村彰吾監督は「今後も部員が減るのは目に見えている。生徒がサッカーをやり切ったと感じられるような環境をつくり、中学生を呼び込みたい」と話している。


    中・高の学校が部活を担ってきた歴史は長いが故に、地域団体が指導することへ舵を切るのも難しい。しかし、こうした変革を進めていく上では旧弊を克服するという学校現場の感覚が必要だろう。学校ごとのチームでの競技ではなく年齢で区切る地域チームで競い合うことも多くの事例があり参考になるはず。いずれにしても「やりたいスポーツの機会がない」という問題は残る。


    12月27日 文科省 精神疾患休職教員 最多5897人

     2021年度に公立小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は20年度より694人多い5897人で、過去最多だったことが26日、文部科学省の人事行政状況調査で分かった。全教員に占める割合は0・64%(156人に1人)となる。精神疾患で1ヵ月以上の病気休暇を取得した人を合わせると計1万944人で、初めて1万人を超えた。

     都道府県別で最多は東京都の701人。京都府は63人、滋賀県は71人だった。

     文科省は、新型コロナウイルス対策で忙しくなり、教員間でコミュニケーションを取る機会が減ったことも影響したとみている。

     性暴力やセクハラで懲戒処分や訓告を受けた教員は14人多い215人で、9年連続200人台だった。

     精神疾患の休職者はこの15年ほど5千人前後で高止まりしていた。21年度は年代別で、20代1164人、30代1617人、40代1478人、50代以上1638人。20年度比の伸び率は20代が最も高くなった。男女別では女性3491人、男性2406人だった。

     学校種別で見ると小学校2937人、中学1415人、高校742人、特別支援学校772人など。また、22年4月1日時点で復職したのは2473人で、2283人が休職を続け、1141人は退職していた。

     性暴力などの処分を受けた教員のうち、児童生徒に対する行為は93人だった。文科省は、子どもが被害者の場合は教育委員会に原則懲戒免職にすることを要請してきたが、懲戒免職となったのは88人で、残り5人は停職にとどまった。

     215人の具体的行為の内訳は「体に触る」67人、「盗撮・のぞき」47人、「性交」26人など。また、勤務時間外の行為が131人で最も多く、休み時間が27人、放課後が15人と続いた。

     体罰で処分を受けた教員は20年度比53人減の340人だった。


    小川正人・東大名誉教授の話業務削減と支え合いを

     精神疾患を理由に休職した教員は6千人目前まで迫り、一気に増えた印象だ。新型コロナウイルス禍で新たな仕事が増えたことで、学校の働き方改が進みつつあることの実感は得にくかったのではないか。心身ともに余裕がなくなり、同僚同士で支え合ったり、上司が部下を支援したりする良好な職場環境を築けなかった可能性が高い。業務削減と職場の風通しを良くする取り組みを両輪で進めるぺきだ。


    【インサイド】悩み共有、早期対応が鍵

     「心の病」で学校を休む公立校の教員が増えている。文部科学省が働き方改革を促す一方で、いじめや不登校といった学校を取り巻く課題は減らず、新型コロナウイルス対策が追い打ちをかけた。専門家は、悩みを周囲と共有し、問題に早期対応できる体制の構築が不可欠と訴える。

     「我慢せずに周りに助けを求めればよかった」。関西地方の公立小に勤める30代男性教員はうつ病で約2ヵ月休職した昨年の経験を振り返る。いじめに関する保護者対応に追われ、家庭でも妻の出産準備で忙しかった。

     「うちの子どもがいじめられている。なぜ注意しないのか」。学校と保護者で見解の相違があり、話し合いをする毎日。だが、教員歴15年の“プライド”がSOSを出すのに邪魔をした。うつ病となって5月下旬から休職し、本格復帰は2学期。その後は一部授業を同僚が担い、休憩室で横になる時間を確保できるよう学校から配慮を受けて乗り切った。

     男性教員は「机の消毒やマスク着用の指導など、全員がコロナで多くの仕事を抱え、悩みを気軽に話せる雰囲気ではなかった」とも説明する。

     文科省調査では、若手ほど精神疾患による休職の割合が高い傾向が出ている。さらに、どの年代でも赴任から2年未満での休職が目立ち、学校に慣れるまでに経験豊富な同僚が支える体制が必須となっている。

     富山県の公立小のベテラン教員によると、2022年春に配属された新人2人のクラスが、児童の私語などでいずれも授業が成立しなくなった。学校は、児童を巡るトラブルの情報共有を徹底する対策を取り、学級運営について教員の話し合いを重ねて新人を孤立させないように腐心した。

     現在、1クラスは落ち着きを取り戻しつつあるという。ベテラン教員は「最初から学級運営のノウハウを持つ若手はいない。一人で悩ませないことが重要」と強調する。


    教員の精神疾患は「働き方改革」の議論にもかかわらず減少の傾向はみられない。加えてコロナ禍は、子どもに教員にも大きな影響を与えている。確かに「業務削減と支え合い」は必要なのだが、業務削減できる環境(量と人員)と支え合うことのできる環境(学校運営とこころのゆとり)をどう整えるのかに踏み込まないと解決は難しい。教育行政はそうした視点で現場を見る必要があるだろう。学校という船は積み荷が多すぎて沈没寸前という状況だろう。


    12月26日 消費者庁 「ステマ」広告 法規制へ

     政府が法規制に乗り出すステルスマーケティング(ステマ)を巡っては、過去に芸能人や有名企業の宣伝活動がステマだと批判され、謝罪に至った事例もある。近年はインターネットで直接商品に触れずに購入したり店を訪れる前に評判を検索したりすることが当たり前となり、ロコミの影響力が増す中、ステマの規制も求められていた。

     注目を浴びた例の一つが、2012年に飲食店のランキングサイト「食ベログ」で、「やらせ業者」による順位操作が明らかになった事案だ。業者が「おいしい」と好意的な投稿をする見返りに、店側から報酬を得ていたことが発覚した。

     今年2月には、動画投稿アプリTikTok(ティックドック)の日本の運営会社が、交流サイト (SNS)上で影響力を持つインフルエンサー20人に計約7600万円を支払い、コンテンツをツイッターに投稿してもらうように依頼していたとして謝罪した。同社によると、一部にはアプリのインストールを促すような依頼も含まれていた。

     消費者庁が昨年11月、豊胸効果をうたったサプリが景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、2社に再発防止を命令した事例では、SNSで商品の効果を宣伝する投稿がされていたが、企業側は投稿者に商品モニターであることを隠すように指示していたという。


    ステマの効果は驚くべきものがあるそうだ。スマホが当たり前のツールとされている世代にとってインターネット上の情報への懐疑心は薄い。法的な規制は当然だが、この問題は消費者庁の対応範囲の問題ではないことを見ておかないといけない。10日の記事「世論工作研究着手」からは、公権力が「ステマ」を利用するときの怖さが見えてくる。


    12月25日 厚労省 自民、門川氏5選推さず

     自民党京都府連の西田昌司会長(参院京都選挙区)は24日までに京都新聞社のインタビュー取材に応じ、2024年2月に任期満了を迎える京都市長選で、現在4期目の門川大作市長(72)が立候補しても、「多選」を理由に支援しない意向を明らかにした。自民は市議会の最大会派で、これまで門川氏の選挙を支援していた。

     自民は門川氏の初当選から3回の選挙で党本部推薦を出し、前回20年2月の選挙は党要綱で都道府県と政令指定都市の首長選での党本部推薦を「3期まで」と定めていることから、府連として推薦した。門川氏は次期市長選への態度を明らかにしていない。

     西田氏は「門川市長の実績は評価しているが、5期は長すぎる。いくら立派な人でも長くやれば組織に問題が出る」と理由を述べた。その上で「公明党とともに国や府と連携できる候補者を探し、立憲民主党など他党とも連携できる枠組みをつくりたい」と語り、候補者選定を進めていく考えを示した。

     次期京都市長選を巡っては、共産党や日本維新の会も候補擁立を検討している。 


    これで門川市長の立候補はほぼなくなった。維新の京都進出を食い止めたい自公が新たな候補者を擁立することになると、自公VS維新VS共産という「激戦」が予想される三すくみの市長選となる可能性が大きい。この選択肢でリベラル派(?)は満足できるのだろうか。


    12月24日 23年度予算案 歳出改革置き去り

     政府が決定した2023年度予算案は歳出総額が114兆円を超え、未曽有の規模に膨らんだ。5年間で防衛力を抜本的に強化する大方針の下、今後も巨額の財政支出が続くのは確実で、財源確保に向けた増税の検討も進む。その一方で歳出改革の機運は高まらず、支出の無駄を減らして国民負担を抑える議論は置き去りにされたままだ。

     近年の予算編成は高齢化による社会保障費の膨張をどう抑えるかが最大の焦点だったが、今回は様変わりした。23年度の防衛費は前年度から2割以上増額する。27年度には海上保安庁など関連予算も含めて国内総生産(GDP)比で2%、金額にして11兆円程度と突出した存在に。公共事業費や教育・科学振興費のほぼ2倍の水準となる計算だ。


    【雇用】学び直し 支援を推進

     岸田政権が掲げる「人への投資」の一環として、従業員のリスキリング(学び直し)に取り組む企業や、キャリアアップを目指す労働者に対する支援を進める。関連経費は22年度当初比491億円増の1510億円を計上した。

     従業員が高度デジタル技術や新たな事業展開に必要な知識を習得するため、職業訓練を実施した企業への助成金として505億円を盛り込んだ。厚生労働相が指定した教育訓練を受ける人に対し、受講費用の一部を支給する給付制度に117億円。デジタル分野の講座を拡大する。

     新型コロナウイルス対応で悪化した雇用保険財政の安定に向け、23年4月から保険料率を見直す。「失業等給付」の部分を0.2%引き上げ0.8%とし、保険科率全体を1.55%とする。


    【子ども】保育環境の充実457億円

     全ての子どもが家庭や保育所などで安心して過ごせる環境を充実させるための関連事業に457億円を計上した。「無園児」と呼ばれる保育所や幼稚園を利用していない未就園児を週1〜2日預かるモデル事業を新設。少子化による空き定員を活用するとともに、保護者と子どもの孤立化を防ぐ。

     相次ぐ施設での虐待や事故を受け、登園やプール活動時など多くの人手が必要な時間帯への支援員の配置を充実させる。

     保育士らの処遇改善や施設整備などに計1兆5966億円を盛り込んだ。現場の負担を軽減するため、大規模保育所の保育士配置を手厚くできるようにする。

     放課後児童クラブ(学童保育)で働く職員の処遇改善や受け皿整備については、2019億円を充てる。


    【教育】不登校急増で支援強化

     新型コロナウイルス禍で急増する不登校の児童生徒への支援を強化するため、スクールカウンセラーの配置充実やオンライン相談体制の整備に82億円を盛り込んだ。公立小中学校の教職員給与に充てる義務教育費国庫負担金は1兆5216億円とし、小4の35人学級化を進める。

     教員の長時間労働の一因と指摘されている部活動を地域団体などに委ねる改革を推進する事業は28億円を計上。校内の消毒作業や実験準備を担う「スクール・サポート・スタッフ」などの配置促進に91億円を確俣した。

     高等教育機関に進学する低所得世帚の子どもに授業料減免と給付型奨学金をセットで行う修学支援制度は、22年度当初比2.2%増の5311億円を確保。新たに9億円で、がん医療の専門人材育成に取り組む。


    【環境・脱炭素】脱炭素加速へ支援拡充

     政府目標の50年脱炭素社会実現に向け、自治体への交付金や民間への支援を拡充する。

     政府に先駆けて30年度までの脱炭素化に取り組む自治体を重点支援する交付金に350億円を計上。うち320億円は太陽光や風力といった再生可能エネルギー設備導入などを後押しする。 30億円は、再エネを活用して地域の電力を賄うことを可能にする供給網の整備支援に充てる。

     民間企業を支援する官民ファンド「脱炭素化支援機構」へは、財政投融資で22年度当初比倍増の400億円を拠出する。

     他国の脱炭素を技術支援し、削減できた排出量を両国で分け合う「2国間クレジット制度」に136億円。二酸化炭素排出量の少ないプラスチックや金属のリサイクル設備の導入支援として50億円を確保した。


    【防衛】継戦能力や無人機強化

     過去最大の6兆8219億円を計上した。 22年度当初の1.26倍。弾薬の経費に8283億円(契約ベース、以下同)を充て、戦闘継続能力(継戦能力)強化を図る。稼働できない機体の部品を他機の修理に流用する「共食い整備」の解消に向け、装備品の維持・整備に2兆355億円を盛り込んだ。戦闘での人的被害を縮小するため、偵察や攻撃に使用する無人機を取得する。

     新たな国家安全保障戦略に反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記したことを踏まえ、長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」取得など関連費用に、約1兆4千億円を計上。防空能力強化のため新造する

     「イージス・システム搭載艦」に2208億円を確保した。防衛装備品の費用を複数年度で分割払いする「後年度負担」は過去の残高を合わせて10兆7174億円となった。


    【原発】次世代型原発の開発支援

     脱炭素を目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」に盛り込んだ、次世代型原発の開発・建設への取り組みとして、高温ガス炉と高速炉の実証炉研究開発の支援に、123億円を盛り込んだ。

     日本原子力研究開発機構の高温ガス炉「高温工学試験研究炉」(HTTR、茨城県)での水素製造に必要な研究開発や、高速炉の技術開発の基盤と位置付ける、高速実験炉「常陽」(茨城県)の運転再開に向けた準備に107億円を計上。廃炉作業中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の敷地内に新設する試験研究炉の詳細設計には、5億円を充てる。

     原発立地自治体に対する電源立地地域対策交付金は、22年度当初予算より15億円増の745億円とした。


    【復興】復興庁予算は過去最低

     東日本大震災からの復興事業が進み、復興庁予算は22年度当初比4.6%減の5523億円と、過去最少を更新した。福島復興の目玉として来年4月に発足する「福島国際研究教育機構」(浪江町)の研究開発費や人件費、施設整備費に145億円を計上した。

     東京電力福島第1原発予想による帰還困難区域のうち、先行的に除染している「特定復興再生拠点区域」外については、福島県の大熊、双葉両町で23年度に初めて除染を開始する。除染や意向確認など帰還準備の加速化に60億円を盛り込んだ。

     原発処理水の海洋放出を見据え、風評払拭に向けた水産事業者支援に41億円。除染土の中間貯蔵施設の管理費用などは1786億円とした。心のケアなどに使える被災者支援総合交付金は102億円。


    今年度予算の最大の問題点はやはり「防衛費」だろう。曲がりなりにも国是となってきた「専守防衛」の枠を大きく外れる形の予算編成だ。もう一つは「原発ゼロ」への道筋を打ち捨てたこと。安倍政権の継承どころではない戦後日本の在り方の大転換にもかかわらずほとんど議論が行われない形での岸田政権の予算編成。国民・市民としては様々な場面で「NO」ということの意味が問われる。


    12月24日 スポーツ庁 小中学生 体力最低

     スポーツ庁は23日、小学5年と中学2年の全員が対象の2022年度全国体力テストの結果を公表した。50メートル走や上体起こしなど実技8種目を点数化した体力合計点が小中で男女とも過去最低。持久力が必要な種目で成績低迷が目立ち、新型コロナウイルス拡大後の子どもの体力低下が鮮明となった。運動機会が以前より減ったままで、体を動かす習慣を身に付けることが課題だ。

     体力合計点(80点満点)の平均値は小5男子52・3点、小5女子54・3点、中2男子40・9点、中2女子47・3点となり、昨年度よりO・2〜1・1ポイント低下。男子よりも女子が悪化した。

     種目別では、20メートルの距離を何回走れるか測る「20メートルシヤトルラン」が小5男子45・9回、小5女子37・0回でいずれも昨年度より1 回ほど少ない。中2の持久走は男子(1500メートル)が3・7秒、女子(1000メートル)が5・7秒遅くなった。

     一方、柔軟性を測る長座体前屈の記録は向上傾向で、握力やボール投げはほぼ横ばいだった。

     1日1時間に相当する「週420分以上」の運動をしている児童生徒の割合を調べると、小中とも昨年度から増加した。小5男子50・1%、小5女子29・2%などだった。ただ、感染拡大前の水準には戻っていない。

     身長と体重から算出し肥満とされた割合は小5男子14・5%、小5女子10・0%、中2男子11・4%が過去最多。中2女子は7・5%だった。


    【府内】平均下回る

     京都府教育委員会は23日、2022年度全国体力テストの府内公立小中学校(京都市立含む)の結果を公表した。全8種目を点数化した体力合計点の平均値は低下傾向にあり、全国平均を下回った。小学校は男女とも過去最低だった。

     小学校の調査対象である5年生の結果を種目別に見ると男女ともに同じ傾向で、前屈は過去最高値を記録。ただ、持久力が必要な20メートルシヤトルランは男子で45・01回、女子で35・06回になり、いずれも新型コロナウイルス禍前の2019年より5回近く減って過去最低となった。50メートル走は男子9・39秒、女子9・62秒で全国平均を上回るものの、前年度よりは低下。反復横飛びや立ち幅跳びは全国平均を下回っている。

     中学校の調査対象である2年生では、女子の体力合計点は過去最低となった。男子は前年度より上がったが、全国平均には及ばなかった。種目別では立ち幅跳びで男女とも全国平均を下回るものの、男子の数値は年々上かっており過去最高の194・8センチとなった。50メートル走は男子で8秒、女子で8・87秒と過去最低となった。

     運動と生活習慣に関する調査では、テレビやスマートフォン、ゲームなどの映像を視聴する時間が2時間以上の割合は中学で増加。コロナ禍前の2019年と比較すると男子が7・1ポイント増の78・6%、女子が7・8ポイント増の77・1%だった。

     一方、運動時間は中学男子以外で前年と比べ増加。運動やスポーツが好きだと答えた割合も全体として増えていた。府教委は「運動好きの子どもを増やすことを重視しており、その点については成果だと考えている」としている。


    中2女子以外で「肥満傾向」が増加していることが気になる。スポーツへの関心が高まることとは反対に食生活の格差の反映かとも読み取れる。


    12月23日 北区住民 「柏野小、翔鸞小に統合を」

     京都市北区の柏野小について、隣接する翔鸞小(上京区)に統合するよう求める要望書を地元住民らが市教育委員会に提出した。市教委は、通学路の見直しや新校での教育課程の検討など統合に向けた具体的な進備を始める。

     要望内容は▽翔鸞小の校名は変更せず、2025年4月に柏野小を翔鸞小に統合▽統合校の必要な施設整備▽通学路が変わる柏野小児童の通学安全対策▽柏野小の跡地活用における地元意向の反映−など。

     両校の関係者でつくる「柏野・翔鸞小学校統合準備委員会」のメンバーが20日、市総合教育センター(下京区)を訪れ、鎌田雅睦代表が稲田新五教育長に要望書を手渡した。鎌田代表は「より良い形で統合できるように、協力をお願いしたい」と求め、稲田教育長は「地域や俣護者に『統合して良かった』と思ってもらえる学校づくりに向け、全力で取り組みを進める」と応じた。

     柏野小の児童数は本年度110人で、翔鸞小が186人。少子化の進展で、25年度にそれぞれ105人、172人に減る見込み。両校の保護者らが統合について協議を続け、11月の統合準備委員会で最終合意に至った。


    少子化で市内の学校の統廃合が進む。これまで市中心部の統廃合が大半だったが、南区、伏見区そして北区で2ヵ所目となる。今回の統合では「小中一貫校」の計画はなさそうだが、問題は跡地利用。経済優先の市政でホテルに転売されるケースがめだつが、ここではそれも不可能。ではどうする?本格的な地域コミュニティー作りのグランドビジョンを作成し、若い世代の流入を期待する方向で考えるべきではないか。


    12月22日 府内大学進学率初の7割超

     今年3月に卒業した京都府内の高校生(国立、公立、私立)の大学進学率は前年だ1・5ポイント増の71.3% で、1950年度の調査結果公表以来、初めて70%を超えた。文部科学省の学校基本調査の確報値として府が21日発表した。

     大学進学率は、少子化により大学入学が容易になり、全国的に高まっている。府教育委員会は「生徒個別に応じた進路指導の結果だと言える。京都を含む関西圏は大学が多く、大学進学をイメージしやすいことも影響しているのではないか」と分析している。      ゛

     卒業生は2万1821人(前年比228人減)で、このうち大学進学者(短大、高校専攻科含む)は1万5568人(同169人増)だった。大学進学率は、私立高が78・9%、公立高が64・8%。専修学校(専門課程)への進学者は2884人(同149人減)で13・2%、就職者は1456人(同149人減)で6・7%だった。

     都道府県別の大学進学率は71・5%の東京都が7年ぶりに1位となり、2位が前年まで6年連続で首位の京都府だった。大阪府が66・6%、兵庫県と神奈川県66・0%と続き、大学が多く立地する首都圏や関西圏が多くを占めた。全国平均は59・5%だった。



    12月20日 厚労省 障害児進路 95%が不安

     2020年夏に京都市内で重度の知的障害者の長男を母親が殺害した事件を受け、障害児を育てる親らでつくる団体が、市内の知的障害の子を持つ親を対象としたアンケートを行った。7割がケアを負担と感じていたほか、学齢期の子を持つ家庭では9割以上が進路に不安を抱いていた。経済的困窮や預け先に悩んでいる実態も明らかとなり、市に調査を求める要望書を提出した。

     事件は20年7月、左京区の自宅で50代の母親が重度の知的障害がある長男=当時(17)=の首を絞めて殺害し、無理心中を図った。母親は長男と2人暮らしで、うつ病を抱えながら長男の進路に思い悩んでいた。昨年12月の京都地裁判決は「同情の余地が大きい」として懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)を言い渡した。

     事件を機に、障害児の親らでつくる団体「子どもと親のSOSをキャッチする仕組みを考える実行委員会」(北区)が発足。自立や親の生活支援を考えてきた。今回は初のアンケート(今年4〜6月実施)で、主に重度の知的障害がある児童や成人がいる家庭の485人を対象に実施した。

     事件の家族と同様に18歳以降の進路について、「大いに不安がある」と回答したのは72%で、「少し不安がある」(23%)と合わせて9割超が不安を抱き、グループホームなどの施設に関して8割近くの人が「不足」と感じていた。当事者が50代以上であっても「親・きょうだい」と同居しているとの回答は7割あり、「老障介護」の実態が浮き彫りにな。た。

     「ケアを負担に感じているか」との問いに71%が負抑と感じていた。ケアの交代者がいない場合は、約8割の人が「とても負担」と感じていた。介助に追われる影響で、母親の就労率は同年代に比べて低水準にとどまっており、フルタイム勤務は8・2%で、全体の約6割が「経済的ゆとりがない」という結果だった。

     団体は11月28日、市に入所施設などの整備をはじめ、障害児家庭の経済状況や健康状態の把握に向けた調査の実施を申し入れた。市役所で記者会見した団体メンバーの田中智子佛教大教授は「長期にわたり緊張感のあるケアを担っている実情が明らかになった。相談体制や施設整備に関する支援も薄く、早急な手だてが必要」と指摘した。事件で亡くなった男子生徒と同級生の長男がいる竹口宏樹さん(48)は「帰宅後の支援や卒業後の進路は十分にない。実態を知ってもらい、同じ境遇で悩む人が前を向けるよう支援拡充につなげたい」と話す。

     団体は25日午後2時から、中京区の佛教大二条キャンパスでシンポジウムを開く。資料代300円。申し込みはNPO法人福祉広場のホームベージか実行委事務局090-1444-0046。


    【障害者結婚に不妊処置】北海道が施設立ち入り

     北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホーム(GH)で、、結婚や同棲を希望する知的障害者が不妊処置を受けていた問題で、道は19日、職員を施設に派遣し、樋口英俊理事長や職員から聞き取りを実施した。結婚後の就労支援の継続に、処置を受けることが条件となっていたかどうかや、同意確認の方法について実態解明を急ぐ。樋口理事長は記者会見を開き「産むことを望んだ場合は、支援できない」との考えを持っていることを明らかにした。

     GHを利用する障害者が出産、子育てをすることを法律は想定しておらず、厚生労働省は道の報告を受け、対応策の検討に入る。松野博一官房長官は19日の記者会見で「本人の意に反して不妊手術や受胎調節などを条件とすることがあれば不適切だ」と述べた。

     道の立ち入り調査は19日午後、約3時間にわたり実施。福祉担当の職員ら8人が樋口理事長らから事情を聴いた。道の担当者は「聞き取ったことを踏まえ、慎重に検討していく」としている。

     樋口理事長は記者会見で、不妊処置を受けている8組のうち2組が結婚、6組が同棲していることを明らかにした。処置について「条件とは、ひと言も言っていない。結婚するための要件を出し合おうということだ」と主張した。

     結婚を希望する場合は「子どもがいじめられた特に親の責任を果たせるのか。子どもに『なぜ産んだのか』と言われたらどうするのか。全部説明し、選択してもらう」と述べ、処置を受けるかどうかの判断は障害者側に委ねていると強調した。

     施設側が手術などを実施する病院を探したり、職員が病院に同行したりしていたことも判明。函館を中心に札幌圏まで行くことがあったといい、同福祉法人の幹部職員は「保護者から頼まれたら、連れて行くということはあったかもしれない」と述べた。

     樋口理事長は7月以降、共同通信の取材に「ルールが一つある。結婚は反対しないが、そこで授かる生の保証はできない。それが駄目だったら他を当たって。そこはきっちりやっている」などと発言じていた。


    首相官邸ホームページに「誰もが暮らしやすい社会を目指して」との文書が掲載されている(2020年)。やや曖昧な表現ではあるがそこでは障害を「社会モデル」としてとらえている。つまり、障害は個人に属するものではなく社会の側にあるとの認識だ。しかし、依然として「個人モデル」としての考え方は根強く残っている。それだけではないだろうが「社会モデル」を制度的に支えることが必要。


    12月18日 日本スポーツサポート機構 自販機 部活指導の報酬に

     引退したプロスポーツ選手のキャリア支援をする日本スポーツサポート機構(大阪市)が“飲み物を買うと部活動を支援できる自動販売機”を考えた。売り上げの一部を中学や高校の運動部を指導する元プロ選手の報酬に充て、学校や生徒は無償で指導を受けられる仕組みだ。取り組みの背景には、部活動が教員の負担になっていることと、プロスポーツの短い選手寿命がある。

     部活支援自販機で売る飲み物の値段は、通常の自販機と変わらず、買う側に追加の負担を求めない。ただ、1本ごとに10円を、購入者からの寄付として飲料メーカーが日本スポーツサポート機構に提供する。

     全国の中学高校で運動部の顧問を務める教員ら約5千人から2021年に回答を得た日本スポーツ協会(東京)の調査によれば、部活指導で一番の課題を尋ねると、中学で31.8%、高校で33.8%が、他の校務が忙しく思うように指導できないと答え、共に最多だった。スポーツ庁の有識者会議は今年6月、公立中の休日の指導を外部へ委ねるよう提言している。

     また、指導教科と担当競技経験の関連を尋ねた設問では、指導する競技の経験がな<体育教員でもない、という指導者が中学で26.9%、高校で25.3%だった。

     一方で、日本スポーツサポート機構によれば、プロ野球やサッカーJリーグの平均引退年齢は20代半ば。その後の生き方に悩む人も多い。機構は、経験や知識を生かしてもらう場として部活に注目。元選手を指導者として学校に派遣するプロジェクトを19年から始動させ、20年春には大阪市教育委員会と連携協定を結んだ。

     機構は、元選手への報酬原資をこれまで協賛企業からの寄付金で賄ってきたが、新たな手段として自販機を思い付いた。今後、大阪府内に約100台の設置を目指す。実現すれば300回分の派遣ができる。渡邊貴也代表(50)は「生徒の技術向上、元選手のセカンドキャリア、学校側の負担減。三方良しとなればいい」と語る。


    部活の在り方が変化の兆しを見せている。子どもの育成についてすべて学校に委ねてきた教育の在り方を問うことでもある。また、「金メダル」獲得を至上目標としてきたスポーツ政策の問題をも表面化していると見える。かつて女子プロ野球の選手に柔道整体術を必修としたことがあったが、選手の引退後の在り方を見据えたものだっただろう。連載『ブカツは今』を参照。


    12月16日 文科省 教員残業代 論点整理へ

     文部科学省は15日、公立学校教員に時間外勤務手当を支給しないと定めた教職員給与特別措置法(給特法)の見直しに向け、課題を整理する有識者会議を設けると発表した。20日に初会合を開く。論点や法律的な問題点をまとめ、来春以降に始める法改正を含めた議論に反映させる。

     文科省は来春、教員の残業時間などを調べた2022年度の「教員勤務実態調査」を公表する。多忙化が指摘される教員の勤務状況を明確にした上で、中教審が働き方改革や処遇改善について、法改正も含めて検討する見通しとなっている。

     給特法では教員に給与月額の4%相当の「教職調整額」を支給する代わりに、時間外手当の支給を認めていない。有識者会議では、仮に時間外手当を支給する場合に生じる法的な問題が何なのかや、労働基準法などとの整合性が議題になるとみられる。

     また、各地の働き方改革の実践例を基に有効な勤務時間短縮方法を考え、保護者対応や部活動指導といった業務を教員がどこまで担うべきなのかも検討する見込み。

     給特法を巡っては、埼玉県の公立小教諭が、時間外労働をしたのに残業代を支払われないのは違法だとして県に支払いを求めて提訴したが、一、二審ともに請求が棄却されている。ただ、一審さいたま地裁の裁判長は主文言い渡し後、給特法について「もはや教育現場の実情に適合ていない」と述べた。


    今回の議論は給特法改正時の付帯決議に基づくものだが、給特法の維持を前提に議論するとなれば成果はほとんど期待できないだろう。そうした文科省の方針にあらがうのが埼玉県で起きたいわゆる「田中まさお裁判」 だ。この裁判は提訴の法的な枠組みが従来のものとは異なっていることと「公共訴訟」として組織的な支援を受けていないこととが異色とされている。埼玉大准教授 高橋哲の著書『聖職と労働のあいだ』 はそのあたりをつまびらかにしている。本文中で同様の訴訟が各地で起こる可能性をも示唆している。給特法成立以前の超勤訴訟運動が起こっていた時代を彷彿とさせる。


    12月14日 星野リゾート 子どもの想像力 ホテルで育て

     星野リゾート(長野県軽井沢町)は13日、大阪市に16日開業するホテル「星野リゾートリソナーレ大阪」を報道陣に公開した。既存の外資系ホテルの一部を改装、共同で運営する珍しい形態となる。子どもの想像力の育成をテーマに、プロが使う筆や絵の具などに触れられる共有施設「アトリエ」や、壁や窓にクレヨンで自由に描ける客室が特長という。

     大阪湾の人工島・咲洲にあるハイアットリージェンジー大阪(大阪市住之江区)の23、24、26階に計64室が入り、最上階の28階に約470平方メートルのアトリエを設けた。宿泊者はハイアットのラウンジを利用でき、レストランではコース仕立ての子ども用メニューもある。

     アトリエには少なくとも5人程度のスタッフが常駐する。プロジェクターを使った影絵のような遊びや、粘土をこねたり型抜きしたりする、さまざまな体験ができる。

     大型展示場「インテックス大阪」に近い八イアットはビジネス客の利用が多く、新型コロナウイルス感染拡大で稼働率が落ち込んでいた。担当者は「家族連れを呼び込むため、子ども向け施設が充実していることが競争力になる」と話した。


    教育がビジネスになるということを地で行くような事業。新たな市場を開拓することが企業にとっては最も重要な課題だが、教育産業以外の民間企業が教育に参入ということになる。これまでもリゾート施設などが子どもの想像力を育むなどと銘打って事業を拡大している。こうした動きに格差社会の広がりを感じるのだが、富裕層へのサービスを抑制することが格差社会の改善でもないだろう。悩ましいところでもある。


    12月13日 文科省 公立小中の発達障害8.8%

     公立小中学校の通常学級に、注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害のある児童生徒が8・8%在籍していると推定されることが13日、文部科学省の調査で分かった。2012年の前回調査から2・3ポイント増えた。教員の判断を基にしており、35人学級なら3人ほどが該当す る。

     小学校で10・4%、中学で5・6%となり、学年が進むごとに割合が下がる傾向が出た。初めて調査した高校は2・2%。

     文科省は「発達障害の児童生徒が増加したのではなく、教員側の理解が深まり『該当する』との判断が増えた」と分析。小中の該当者のうち約7割は、学校から「特別な教育支援が必要」との判断を受けておらず、文科省は少人数指導など支援策を充実させる。

     調査は今年初め、一部の公立小中高で抽出した約7万5千人から、学習や対人関係の面で困難を抱える子の数を集計した。専門家ではなく担任が文科省作成の基準に該当するかどうかを判断し、知的発達の遅れは除外。文科省は、一部の基準を変えたため前回との単純比較は難しいとしている。

     小中では「書く」「聞く」「計算する」など特定分野の学習に困難を示す学習障害(LD)の可能性があるのは6・5%、注意力欠如などを 特徴とするADHDとみられるのは4・0%、知的発達に遅れのない高機能自閉症の傾向があるのは1・7%だった。複数項目に該当する場合がある。


    【有識者】「学校全体での効果的な支援体制が重要」(NHK)

     国の有識者会議の座長で、全国特別支援教育推進連盟の宮崎英憲理事長は今回の結果について「今まで見過ごされてきた子どもたちにも目が向けられ把握が進んだとみられる。およそ1割は何らかの形で学びに困難さのある子どもが在籍している前提で、教育現場が対応する必要がある時代になっている」と指摘しています。

     そのうえで「担任の先生だけでなく学校全体が連携してより効果的な支援体制を作っていくことが重要だ。通常の学級に在籍しながら一部を別室で学ぶ『通級指導』の充実が求められる。併せて通常の学級の担任が、さまざまな困難のある子を抱えながら、クラス当たりの人数が多く苦労している点も課題で、今後、検討が必要だ。学校現場や教育委員会、国などが一体となり、充実した教育をどう進めていくかが問われている」としています。


    【永岡文科相】「年度内に『通級指導』の充実取りまとめる」(NHK)

     永岡文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「今まで見過ごされてきた困難のある子どもたちにより目を向けやすくなり、理解が深まったことが1つの理由として考えられる。また、子どもたちの学習や生活の習慣を取り巻く環境の変化による影響も可能性として考えられる。今回の調査結果を踏まえて、通常学級に在籍しながら一部の授業は別に受ける『通級指導』の充実について年度内に取りまとめる」と述べました。


    「発達障害」というカテゴリーがなんとも分かりづらい。学級経営がどのようになされているかによって、「障害」ともそうでないとも分類されてしまう。常識的に考えて生物学的な発生率が極端に変わるはずはないのだから、教育のシステムが変わってきたというべきだろう。インクルーシブ教育をメインストリームとするなら、それを保障できる環境の整備が必要。必ずしも「通級指導」の充実だけではない。


    12月13日 犯罪白書 少年非行増、刑法犯は減

     新型コロナウイルス下の犯罪動向調査で、2020年春は前年と比べ刑法犯全体の認知件数が目立って減った一方、少年の検挙人数は前年同月比で20年3月に3割以上増え、4、5月も大きな減少は見られなかったことが、13日公表の22年版犯罪白書で分かった。3月は一斉休校の時期で、法務省は「かえって非行の機会が増えたなど、少年特有の事情があった可能性も考えられる」と分析している。

     法務省法務総合研究所が、コロナ下の各種統計を分析した。刑法犯の認知件数は20年3〜5月に前年同月比3・5%〜32・1%減少。一方で、少年の検挙人数は3月が35・0%増、4月O・4%増、5月4・4%減だった。

     刑法犯認知件数は21年3月まで、前年同月比で減少率が14%を超える月が続いた。多くを占める窃盗の減少が主な要因とみられ、白書は原因を「外出自粛要請で、ターゲットとなる留守宅や通行人などが減ったことが考えられる」と指摘。飲食店の時短営業で飲酒機会が限られ、飲酒運転の取り締まり件数も減った。

     水際対策の影響で、違法薬物密輸入の検挙件数も減り、20年は覚醒剤が前年比83・1%減。大麻は郵送の手口が多く、15・1%減にとどまった。サイバー犯罪は21年に23・6%増えた。テレワーク導入が増え、VPN(仮想専用線)機器の脆弱性が悪用された可能性があるとした。

     持続化給付金など、経済対策で設けられた制度を悪用した犯罪の検挙件数は、21年末までに計2907件。自主返還したものを除き、立件された被害額は計約30億円に上る。

     法務省は、今後、水際措置の緩和で入国者が大幅に増えることに留意し、有効な犯罪予防策を継続すべきだと指摘した。



    12月10日 防衛省 世論工作研究着手

     防衛省が人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが9日、複数の政府関係者への取材で分かった。インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有事で特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標としている。

     防衛省が姿を隠したまま世論誘導を図るのは、一般の投稿を装い宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」の手法と重なる。同省は「企業のコマーシャル技術と同じで違法性はない」と説明するが、研究であったとしても、憲法が保障する個人の尊重(13条)や思想・良心の自由(19条)に抵触する懸念があり、丁寧な説明が求められる。

     中国やロシアなどは、人間心理の操作やかく乱を図る「情報戦」に活発に取り組む。防衛省は、戦闘形態を一変させるゲームチェンジャーになるとみて、日本も、この分野の能力獲得が必要だと判断した。改定される安全保障関連3文書にも、情報戦への対処力向上を盛り込む。

     複数の政府関係者によると、防衛省が構想する世論操作は、、まずAI技術を駆使してSNSにあふれる大量の「ビッグデータ」を収集・分析し、どのような対象に工作をするのがふさわしいかなどの全体計画を策定。ネットで発信力があり、防衛問題でも影響力がありそうなインフルエンサーを特定する。

     さらに、インフルエンサーが頻繁に閲覧するSNSやサイトに防衛省側の情報を流し、インフルエンサーが無意識に有利な情報を出すよう仕向けるという。防衛省が望むトレンドができれば、爆発的な広がりになるようSNSで情報操作を繰り返す。

     2022年度予算の将来の装備品を検討する調査研究費を充てた。9月に委託企業公募の入札を実施。10月に世界展開するコンサルタント会社の日本法人に決定した。この会社は米軍の情報戦活動にも携わる。研究は23年度以降も3年間ほど続ける。


    【憲法学者の志田陽子さんの話】民主主義に反する恐れ

     人間の精神・思考は、思いのほかコントロールを受けやすい。第2次世界大戦中のドイツや日本では、情報と文化芸術の統制を一体化させた形で行われた歴史がある。日本国憲法が採用する民主主義は「表現の自由」や「思想・良心の自由」と合わせ、人々がこうした統制から自由な立場で自ら物事を考え、社会や国の在り方を決めることを理念としてきた。

     「世論工作の研究」が、外国がそのような戦術を開発していることを受け、日本国民を防御する研究であるなら、憲法の趣旨に反するとは言えない。しかし日本がそうした技術を国内向けの戦術として使うことを企て、研究を進めるというのであれば、憲法が保障する精神的自由にも民主主義にも反する。


    【解説】「ソフトな思想統制」批判

     防衛省が人工知能(AI)技術を駆使して、国内世論を誘導する工作の研究に着手した。中国やロシアが急速に「情報戦」を活発化させている動きをにらんだものだが、政府関係者からも「ソフトな思想統制につながりかねない」との批判が出ている。戦前の反省から「個人の尊重」や「思想・良心の自由」を掲げる憲法の下で許容されるのか。厳しく問われるべきだ。

     政府・防衛省は数年前から「戦略的コミュニケーション」(Strategic Communication)として、防衛政策を進めるに当たり、国民世論が有利に動くよう手法や内容を選択して情報発信するようになった。例えば、日本周辺の中国軍やロシア軍の動向を詳しく集中的に発表して、関心が安全保障に向くように働きかける手法だ。

     ある政府関係者は、AIを使用する国内世論の誘導工作についても「表面化していないが各国の国防、情報当局が反戦や厭戦の世論を封じ込めるためにやっていることだ」として、日本も取り組むべきだという。

     しかし今回研究に着手した世論操作は、防衛省・自衛隊が姿を現した上で、起きた事象を発信し、関心を引きつけようとする戦略的コミュニケーションとは決定的に違う。企業が姿を見せない「ステルスマーケティング(ステマ)」と似た性質がある。防衛省・自衛隊による世論誘導工作は、軍事組織が国民の内心の領域に知らぬ間に直接介入する危うさをはらむ。

     戦前・戦中には「大本営発表」のように、軍部が都合がいい情報だけを流し国民を欺いた。無謀な戦争に突き進み、国を滅ぼした反省を忘れてはならない。


    【元航空自衛隊空将尾上定正さんの話】透明性確保が必要

     中国やロシアは多様な言論があふれる民主主義の弱点を突いて情報戦を展開しており、それに対抗することを迫られている。国民の情報リテラシーを向上させるため、政府として戦略的に情報を発信することは必須だ。メディアの協力も欠かせない。さらに国民の理解を促して世論をきちんと誘導するため、影響力があるインフルエンサーを使う方法を研究することも当然と考える。しかし、テレビが一瞬の映像で潜在意識に働きかけるサブリミナル的手法を禁じているように一定の基準が必要で、透明性を確保する必要がある。防衛省・自衛隊が関与していることを明示することは重要で、ステルスマーケティング(ステマ)のようにしてはいけない。


    侵略か国防かを問わず戦争の中での情報戦は何が真実なのかを見極めることが極めて難しいことを、2月24日のロシアのウクライナ侵攻以降いやというほど目にしている。防衛省がこうした研究に取り組むことの怖さを感じる。何らかの法的な縛りが必要で、今以上の情報公開請求権を市民の側がもたなければならない。また、教育活動においてもAIを積極的に活用していこうとする方向がすでに始まっている。いわゆるSociety5.0と連動した教育改革は市民の判断力を奪う可能性もある。


    12月9日 京都府 教育環境整備に新交付金

     京都府の西脇隆俊知事は8日の府議会代表質問で、子育て環境の充実に向けて市町村に交付する「子どもの教育のための総合交付金(仮称)」を、来年度に創設する考えを明らかにした。市町村が幅広い事業に使える財源とする方針で、地域の実情に合わせた教育環境の整備を図る。

     自民党の荻原豊久府議の質問に答えた。西脇知事は「府が一律の施策を展囲するだけでなく、地域の実情に応じたきめ細かか施策を展開することによって、大きな効果を発揮できる」と答弁した。交付金の規模は明らかにしなかった。

     府教育委員会によると、教育に特化した交付金を設けるのは初めて。交付金は4月の知事選で西脇氏が公約に掲げていた。

     具体的な制度は今後詰めるが、府教委によると、小中学生への学習環境整備事業が中心で、市町村側から給食の栄養士の追加配置や不登校の児童生徒への支援など具体的な事業内容を府側に申請し、交付する仕組みを検討しているという。人口や子どもの数に応じて配分する方式では市町村が独自で行う事業の財源を付け替えるだけになって、教育環境の新規充実につながらない可能性があるためだ。

     交付金を支出した事例を市町村間で共有することで教育施策の底上げにもつなげたいという。対象には京都市も含める方向で検討している。

     府教委は今夏、市町村の教育長と懇談の場を設け、地元食材を給食に取り入れたり、配慮を要する子どもの学習環境向上に充てたりする事業への支援を求める声が上がったという。府教委担当者は「市町村の前向きな施策を後押ししたい」とする。


    いわばひも付きでない交付金は市町村の自治的な政策を後押しすることになる。どのように利用されるかに期待が寄せられるが、住民の意見をどのように集約していくのかが「自治」の中身を問うことになるだろう。規模の大きい市で「どこに消えたのか分からない」ということになっては意味がない。


    12月8日 大学入試センター 峰山高に共通テスト会場

     大学入試センターは7日までに、来年1月14、15日に実施される大学入学共通テストの試験場を発表した。京丹後市峰山町の峰山高が京丹後地域で初めての会場に指定され、志願者数は208人となっている。

     同センターがホームページで明らかにした。峰山高では試験監督などの運営を京都府立大(京都市左京区)の教員らが担い、近隣の府立高の教員も補助監督や警備業務をする。

     丹後地域には試験場となり得る大学がなく、昨年度まで受験生らは京都市内に泊まりがけで出向き、京都大などで試験を受けていた。

     慣れない環境で受験する精神的な負担だけでなく、宿泊費などで4万円を超える経済的負担も強いられることから、地元高校のPTAが昨秋、府に試験環境の改善を要望。府議会の一船質問でも取り上げられたほか、今年8月には丹後2市2町の首長が府立大を訪れて峰山高での試験の実施を求めていた。



    12月8日 京大法学部 学校推薦選抜導入

     京都大は7日、2025年度入試で法学部の特色入試(定員20人)を学校推薦型選抜へ変更すると発表した。これに伴って同学部の後期日程は廃止となり、全学部で後期日程がなくなった。

     新方式では法学部で学びたいことなどを記述する「学びの設計書」などの提出書類で1次選考とする。2次選考は小論文試験で、大学入学共通テストの指定教科・科目の成績を踏まえて最終合格者を決定する。

     学校が推薦できる人数は各校2人までで、男子の上限を1人とした。既に学校推薦型を導入済みの経済学部も規定を今回変更し、男子の推薦人数に上限を設けた。「女子生徒の受験を促す目的」(入試企画課)としている。



    12月6日 【PTAのゆくえ】PTA上部組織 意義揺らぐ

     PTAの上部組織が揺れている。京都府内では伊根町の全小中学校PTAが、与謝地方や府単位のPTA組織から3月に脱退していたことが分かった。滋賀県では草津市PTA連絡協議会が6月に解散。全国組織からの退会を決めたり、検討したりする動きもあり、時代に合った上部組織の形や役割が問われている。

     関係者によると、伊根町の3小中学校PTAは3月末で与謝地方PTA連絡協議会から退会した。府PTA協議会からも市町村としては初めて抜けたという。背景には上部組織の役員負担の重さがあったといい、今後は各校のPTA活動の充実に力を入れるという。

     また草津市PTA連絡協議会は、以前から複数の学校単位のPTA(単P)が脱会し、新型コロナウイルス禍で活動も休止していたため解散に至ったという。

     日本PTA全国協議会(日P)については、5月に京都市PTA連絡協議会が脱退を検討したが、理事投票で否決された。ただ、7月には東京都小学校PTA協議会が来年3月末での退会を決定。堺市PTA協議会も退会を検討中で、来年1月に役員投票で判断する予定という。同協議会の吉原極会長は「日Pに加入するメリットを感じず、全国大会ありきの姿勢や意見を吸い上げない体制に疑問があった」とし「上部組織は入る利点があるべき。われわれもPTA会員や子どものために魅力ある活動をしたい」と語った。


    上部組織への「白紙委任」が検討される時代になったということだろう。PTAの組織化にもっとも力を入れてきたのは、教育行政だといっても過言ではない。様々な教育施策への同意を調達するためには最も合理的な組織だったといえる。例えば、教職員の定数改善要求の集会などでは文科省や左右の教職員組合とともに日Pなども参加しており、財務省への要求集会となっている。今後こうした要求をどのように組織していくのかは、単にPTAだけの課題ではなく行政も他人事ではない対応を取る必要が出てくる。


    12月6日 帝国データ調査 学び直し 企業の半数実施

     成長分野など新たな事業に向けた従業員の「リスキリング(学び直し)」を実施する企業が半数だったことが5日、帝国データバンクの調査で分かった。中小企業に比べ、大企業の方が実施する割合が大きかった。デジタル技術を習得するという内容が多い。

     9月に2万6494社を対象に調査し、1万1621社の回答を得た。学び直しに取り組んでいる企業は48・1%。特に取り組んでいない企業が41・5%、分からないが10・3%だった。

     学び直しの内容を複数回答で尋ねると「新しいデジタルツールの学習」が48・4%で最多。「経営層による新しいスキルの学習、把握」「従業員のデジタルスキルの把握、可視化」も目立った。

     実施状況を従業員数別に見ると、従業員が多いほど実施している。千人超が74・0%と最も多く、5人以下が37・3%で最も少なかった。

     政府は人への投資を重点政策に掲げる。岸田文雄首相は10月の所信表明演説で、5年間で1兆円を学び直しに投資する方針を表明。さまざまな支援策を用意しているものの、あまり知られておらず、認知度の向上が普及への鍵となっている。


    学校を卒業してからもう一度学ぶことのニーズは高い。しかし、成長分野の学び直しへの支援だけではでは、学ぶことの意義は薄れる。新たなキャリア形成のために法学や教育学、あるいは歴史学などの広い分野での支援が必要であり、そのために一時的に休職することを保障するシステムが求められる。公務員の休職制度も幅広く認められるように改善すべきではないか。


    12月2日 奨学金返済 中小、奨学金返済支援広がる

     奨学金制度が普及する中、働く若者の負担となっている返済を企業や行政が支援する動きが京都で広がっている。京都府が中小企業と返済資金を折半し、従業員に支給する制度の導入企業は今年、200社を突破した。人手不足に悩む中小企業にとっても採用や人材定着につながるメリットがあり、府はさらなる利用促進を図る。(森静香)

     「奨学金返済は36歳までずっと続く。生活する上で会社や府の支援はかなり大きい」。呉服製造卸の藤井絞(京都市中京区)に勤める中畔智章さん(29)は、会社から月1万5千円支給される手当てを奨学金の返済に充てている。

     府の奨学金返済支援制度は、府内で働く入社6年内の従業員に対し、中小企業が返済資金を支給する場合に、最大半額を府が補助する仕組み。支給額は上限年18万円(4〜6年目は12万円)で、満額なら6年で計90万円を受け取れる。

     同社は2018年に制度を導入した。独自の取り組みとして、入社4〜6年目も自社負担で年18万円の支給額を維持するほか、7年目以降も返済 完了までは支給を続けている。藤井浩一社長(50)は「昇給やボーナスが多い業界ではないが、何十年もかけて奨学金を返す若者を支えるのは会社の務め」と話す。

     日本学生支援機構によると、奨学金を受給する大学生(昼間部)の割合は20年度で49・6%。1990年代は約2割で推移していたが、授業料の高額化や、世帯当たりの所得の低下により制度の利用が急増し、2010年代以降は約5割で高止まりしている。その半面、20〜24歳の年間平均給与(20年、国税庁調べ)は260万円と、00年比約9万円減少。奨学金の返済に伴う経済的な困窮や、延滞は社会問題化している。

     このため近年はUターン就職者らの返済を中小企業と一緒に支援する岡山県などのように、自治体が旗振り役となって返済支援に取り組む事例が増えている。人口減少に伴い深刻化する企業の人手不足と、若者の経済的負担の軽減という二つの課題を一挙に解決する「一石二鳥」の効果が期待できるためだ。

     府も同様に、制度が地元中小企業の人材確保につながることを目指す。労働政策課は「支援対象者は5年で800人を超えた。制度に魅力を感じて中小企業に就職する若者を今後も増やしたい」として来年度で30O社の導入を目標に掲げる。


    大学進学が当たり前になりつつあるが、卒業生が最も負担と感じるのが奨学金の返済だといわれている。それに対応した府の制度は有効かもしれない。しかし、学費の高騰をどう押させるかや大学生の生活保護を認めるか、あるいは失業保険として進学給付をおこなうかなど取り組まなければならない課題は多い。政府は5年後に43兆円(現行23・5兆円)にするという。自民党防衛族はそれでも不足だという。これだけ巨額の防衛費が必要なのかとの本格的な議論がほとんどされないまま臨時国会が終わろうとしている。教育にかける公的な資金が最も不足しているのが日本だといわれるなか、緊急避難的には府の措置も歓迎されるのだろうが本質的な解決にはなっていない。